説明

ハイブリッド車両の制御装置

【課題】排気再循環を実行しているときに加速要求がなされた場合に、排気再循環を実行していないときに比べて加速感が悪化してしまうことを抑制することのできるハイブリッド車両の制御装置を提供する。
【解決手段】パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、等パワー曲線と燃費動作線との交点となるエンジン動作点に基づいて目標エンジン回転数と目標エンジントルクとを設定して排気再循環機構115を備えたエンジン110を制御する。パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、排気再循環が実行されているか否かに応じて燃費動作線を変更し、排気再循環が実行されているときには目標エンジン回転数が高くなるようにする。パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、排気再循環が実行されているときは、排気再循環が実行されていないときよりもエンジン動作点の単位時間当たりの変化量を小さくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はハイブリッド車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
2つのモータジェネレータとエンジンとを備えるハイブリッドシステムを搭載したハイブリッド車両が知られている。こうしたハイブリッド車両にあっては、エンジンが出力する動力の一部を利用して第1のモータジェネレータを駆動し、そこで発電された電力を利用して第2のモータジェネレータを駆動することによってエンジンの駆動力に第2のモータジェネレータの駆動力を加えて駆動輪を駆動することがある。
【0003】
こうしてエンジンが出力する動力の一部を第1のモータジェネレータに分配するととともに、第2のモータジェネレータからの動力により駆動をアシストすることにより、エンジン回転数を調整し、エンジンを効率のよい運転領域で運転させつつ、所望の駆動力を得ることができる。
【0004】
こうしたハイブリッド車両を制御する制御装置は、アクセルの操作量などに基づいて算出される要求パワーに基づいてエンジンパワー指令値を算出し、エンジンパワー指令値に基づいて目標エンジントルクと目標エンジン回転数を設定する。なお、目標エンジン回転数と目標エンジントルクは、図6及び図7に示されるようなマップを参照して設定される。具体的には、良好な燃費が得られるエンジン動作点を結んだ燃費動作線と、等パワー曲線とが交わるエンジン動作点におけるトルクとエンジン回転数に基づいて目標エンジン回転数と目標エンジントルクが設定される。
【0005】
なお、こうしたハイブリッドシステムに搭載されるエンジンには、排気の一部をエンジンの気筒内に還流させる排気再循環機構を備えているものもある。特許文献1には、排気再循環機構を通じて排気の一部を気筒内に還流させる排気再循環が実行されているときには、目標エンジン回転数がより高い値に設定されるように燃費動作線を変更するハイブリッド車両の制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008‐296764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記のように排気再循環を実行しているときに目標エンジン回転数がより高い値に設定されるように燃費動作線を変更するようにした場合には、図6に示されるように出力するパワーが等しい場合であっても、排気再循環を実行しているときには排気再循環を実行していないときと比べてエンジン回転数が高くなる。
【0008】
そのため、排気再循環を実行しているときには、図6に示されるようにエンジン回転数が排気再循環を実行していないときよりも上限値に近くなり(図6におけるX1<X2)、加速時にエンジン回転数が上限値に到達しやすくなる。
【0009】
その結果、エンジン回転数が上限値に達し、それ以上はエンジン回転数が上昇しない状態でモータジェネレータの駆動力を増大させることにより加速が継続され、加速しているにも拘わらずにエンジン回転数が上昇しない状況が生じるようになる。この場合には、良好な加速感が得られず、運転者に違和感を与えてしまうおそれがある。
【0010】
また、ハイブリッド車両にあっては、アクセルの操作量が極めて大きい場合など、加速要求が大きい場合に、燃費動作線上のエンジン動作点よりも低いエンジン回転数で大きなトルクを出力させるエンジン動作点を結んだ出力重視動作線に沿ってエンジン動作点を変更するようにすることもなされている。出力重視動作線に沿ってエンジン動作点を変更する制御に移行するときには、図7に矢印で示されるように等パワー曲線に沿ってエンジン動作点を出力重視動作線上まで移動させ、その後、出力重視動作線に沿ってエンジン動作点を変更する。
【0011】
等パワー曲線に沿って出力重視動作線上までエンジン動作点を移動させるときには、エンジン回転数が低下することになるが、図7に示されるように排気再循環を実行しているときは排気再循環を実行していないときと比較して出力重視動作線に到達するまでのエンジン回転数の低下量が大きくなる(図7におけるX4>X3)。
【0012】
そのため、排気再循環を実行しているときには、加速要求がなされているにも拘わらず、エンジン回転数が大幅に低下することになる。そのため、この場合にも良好な加速感が得られず、運転者に違和感を与えてしまうおそれがある。
【0013】
この発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は上記のように、排気再循環を実行しているときに加速要求がなされた場合に、排気再循環を実行していないときに比べて加速感が悪化してしまうことを抑制することのできるハイブリッド車両の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、エンジンパワー指令値に対応する等パワー曲線と燃費動作線との交点となるエンジン動作点に基づいて目標エンジン回転数と目標エンジントルクとを設定して排気再循環機構を備えたエンジンを制御するハイブリッド車両の制御装置であり、排気の一部を気筒内に還流させる排気再循環が実行されているか否かに応じて前記燃費動作線を変更し、排気再循環が実行されているときには排気再循環が実行されていないときよりも設定される目標エンジン回転数が高くなるようにするハイブリッド車両の制御装置であって、排気再循環が実行されているときは、排気再循環が実行されていないときよりもエンジン動作点の単位時間当たりの変化量を小さくすることをその要旨とする。
【0015】
上記構成によれば、排気再循環が実行されているときには、排気再循環が実行されていないときよりもエンジン動作点の単位時間当たりの変化量が小さくされる。そのため、排気再循環が実行されているときには排気再循環が実行されていないときよりもエンジン回転数が変化しにくくなる。
【0016】
その結果、排気再循環が実行されてエンジン回転数が高められ、エンジン回転数が上限値に近くなっている状況であっても、加速に伴って上昇するエンジン回転数が上限値に到達するまでにかかる時間を長くすることができ、車速の上昇とともにエンジン回転数が上昇する期間を確保することができる。
【0017】
また、排気再循環を実行している場合には、排気再循環を実行していない場合と比較して出力重視動作線に沿ってエンジン動作点を変更する制御に移行するときのエンジン回転数の低下量が大きくなる。これに対して上記構成によれば、エンジン回転数が変化しにくくなるため、エンジン回転数がゆっくりと低下するようになる。そのため、加速要求に伴って出力重視動作線に沿ってエンジン動作点を変更する制御に移行するときにエンジン回転数が急に大きく低下するようになることを抑制することができる。
【0018】
したがって、上記請求項1に記載の発明によれば、排気再循環を実行しているときに加速要求がなされた場合に、排気再循環を実行していないときに比べて加速感が悪化してしまうことを抑制し、良好な加速感を得ることができるようになる。
【0019】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置おいて、排気再循環が実行されているときに、排気再循環が実行されていないときよりもエンジンパワー指令値の単位時間当たりの変更量を小さくすることにより、エンジン動作点の単位時間当たりの変化量を小さくすることをその要旨とする。
【0020】
請求項2に記載されているように、排気再循環が実行されているときに、排気再循環が実行されていないときよりもエンジンパワー指令値の単位時間当たりの変更量を小さくするようにすれば、排気再循環が実行されているときに排気再循環が実行されていないときよりもエンジン動作点の単位時間当たりの変化量を小さくする構成を具現化することができる。
【0021】
したがって、上記請求項2に記載の発明によれば、上記請求項1に記載の発明と同様に排気再循環が実行されてエンジン回転数が高められ、エンジン回転数が上限値に近くなっている状況であっても、加速に伴って上昇するエンジン回転数が上限値に到達するまでにかかる時間を長くすることができ、車速の上昇とともにエンジン回転数が上昇する期間を確保することができる。
【0022】
要するに、排気再循環を実行しているときに加速要求がなされた場合に、排気再循環を実行していないときに比べて加速感が悪化してしまうことを抑制し、良好な加速感を得ることができるようになる。
【0023】
なお、排気再循環が実行されているときにエンジンパワー指令値の単位時間当たりの変更量を小さくする具体的な方法としては、排気再循環が実行されているときにエンジンパワー指令値の単位時間当たりの変更量に上限値を設定し、単位時間当たりの変更量を制限するといった構成を採用することができる。また、排気再循環が実行されているときに排気再循環が実行されていないときよりもエンジンパワー指令値の単位時間当たりの変更量の上限値を小さくするという構成を採用することによっても、排気再循環が実行されているときにエンジンパワー指令値の単位時間当たりの変更量を小さくすることができるようになる。
【0024】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置において、排気再循環が実行されているときに、排気再循環が実行されていないときよりもエンジン回転数の単位時間当たりの変化量を小さくすることにより、エンジン動作点の単位時間当たりの変化量を小さくすることをその要旨とする。
【0025】
請求項3に記載されているように、排気再循環が実行されているときに、排気再循環が実行されていないときよりもエンジン回転数の単位時間当たりの変化量を小さくするようにした場合にも、排気再循環が実行されているときに排気再循環が実行されていないときよりもエンジン動作点の単位時間当たりの変化量を小さくする構成を具現化することができる。
【0026】
したがって、上記請求項3に記載の発明によれば、上記請求項1に記載の発明と同様に排気再循環が実行されてエンジン回転数が高められ、エンジン回転数が上限値に近くなっている状況であっても、加速に伴って上昇するエンジン回転数が上限値に到達するまでにかかる時間を長くすることができ、車速の上昇とともにエンジン回転数が上昇する期間を確保することができる。
【0027】
要するに、排気再循環を実行しているときに加速要求がなされた場合に、排気再循環を実行していないときに比べて加速感が悪化してしまうことを抑制し、良好な加速感を得ることができるようになる。
【0028】
なお、排気再循環が実行されているときにエンジン回転数の単位時間当たりの変化量を小さくする具体的な方法としては、排気再循環が実行されているときにエンジン回転数の単位時間当たりの変化量に上限値を設定し、単位時間当たりの変化量を制限するといった構成を採用することができる。また、排気再循環が実行されているときに排気再循環が実行されていないときよりもエンジン回転数の単位時間当たりの変化量の上限値を小さくするという構成を採用することによっても、排気再循環が実行されているときにエンジン回転数の単位時間当たりの変化量を小さくすることができるようになる。
【0029】
請求項4に記載の発明は、加速要求が大きいときには燃費動作線上のエンジン動作点よりも低いエンジン回転数で大きなトルクを出力させるエンジン動作点を結んだ出力重視動作線に沿ってエンジン動作点を変更するハイブリッド車両の制御装置であり、排気再循環が実行されているときには、排気再循環が実行されていないときよりも出力重視動作線に沿ったエンジン動作点の制御に移行する際のエンジン回転数の単位時間当たりの変化量を小さくすることにより、エンジン動作点の単位時間当たりの変化量を小さくする請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置である。
【0030】
排気再循環が実行されているときに排気再循環が実行されていないときよりもエンジン動作点の単位時間当たりの変化量を小さくする構成を具現化する方法として、請求項4に記載されているように、排気再循環が実行されているときに、排気再循環が実行されていないときよりも出力重視動作線に沿ったエンジン動作点の制御に移行する際のエンジン回転数の単位時間当たりの変化量を小さくするという構成を採用することもできる。
【0031】
上記請求項4に記載の発明によれば、排気再循環が実行されているときには、出力重視動作線に沿ったエンジン動作点の制御に移行する際にエンジン回転数がゆっくりと低下するようになる。そのため、加速要求に伴って出力重視動作線に沿ってエンジン動作点を変更する制御に移行するときにエンジン回転数が急に大きく低下するようになることを抑制することができる。
【0032】
したがって、排気再循環を実行しているときに加速要求がなされた場合に、排気再循環を実行していないときに比べて加速感が悪化してしまうことを抑制し、良好な加速感を得ることができるようになる。
【0033】
なお、排気再循環が実行されているときに出力重視動作線に沿ったエンジン動作点の制御に移行する際のエンジン回転数の単位時間当たりの変化量を小さくする具体的な方法としては、排気再循環が実行されているときに出力重視動作線に沿ったエンジン動作点の制御に移行する際のエンジン回転数の単位時間当たりの変化量に上限値を設定し、単位時間当たりの変化量を制限するといった構成を採用することができる。また、排気再循環が実行されているときに排気再循環が実行されていないときよりも出力重視動作線に沿ったエンジン動作点の制御に移行する際のエンジン回転数の単位時間当たりの変化量の上限値を小さくするという構成を採用することによっても、出力重視動作線に沿ったエンジン動作点の制御に移行する際のエンジン回転数の単位時間当たりの変化量を小さくすることができるようになる。
【0034】
請求項5に記載の発明は、エンジンパワー指令値に対応する等パワー曲線と燃費動作線との交点となるエンジン動作点に基づいて目標エンジン回転数と目標エンジントルクとを設定して排気再循環機構を備えたエンジンを制御するハイブリッド車両の制御装置であり、排気の一部を気筒内に還流させる排気再循環が実行されているか否かに応じて前記燃費動作線を変更し、排気再循環が実行されているときには排気再循環が実行されていないときよりも設定される目標エンジン回転数が高くなるようにするハイブリッド車両の制御装置であって、加速要求が大きいときには燃費動作線上のエンジン動作点よりも低いエンジン回転数で大きなトルクを出力させるエンジン動作点を結んだ出力重視動作線に沿ってエンジン動作点を変更するハイブリッド車両の制御装置であり、出力重視動作線に沿ってエンジン動作点を変更する制御へと移行させるか否かを判定するための閾値を排気再循環が実行されているか否かに応じて変更し、排気再循環が実行されているときは排気再循環が実行されていないときよりも出力重視動作線に沿ってエンジン動作点を変更する制御へと移行しやすくすることをその要旨とする。
【0035】
出力重視動作線に沿ってエンジン動作点を変更する場合には、等パワー曲線と燃費動作線とに基づいてエンジンを制御する場合よりも低いエンジン回転数でトルクが出力されるようになる。そのため、エンジン回転数の上昇が抑制されるようになり、車速の上昇とともにエンジン回転数が上昇する期間を確保することができる。
【0036】
上記構成によれば、排気再循環が実行されているときには、出力重視動作線に沿ってエンジン動作点を変更する制御へと移行させるか否かを判定するための閾値が変更され、排気再循環が実行されていないときよりも出力重視動作線に沿ってエンジン動作点を変更する制御へと移行しやすくなる。
【0037】
すなわち、上記請求項5に記載の発明によれば、排気再循環を実行しているときに加速要求がなされた場合に出力重視動作線に沿ってエンジン動作点を変更する制御へと移行しやすくなるため、排気再循環を実行していないときに比べて加速感が悪化してしまうことを抑制し、良好な加速感を得ることができるようになる。
【0038】
請求項6に記載の発明は、アクセルの操作量が基準とする操作量よりも大きいときに出力重視動作線に沿ってエンジン動作点を変更する制御へと移行させる請求項5に記載のハイブリッド車両の制御装置であり、排気再循環が実行されているときに、排気再循環が実行されていないときよりも基準とする操作量を小さくするハイブリッド車両の制御装置である。
【0039】
出力重視動作線に沿ってエンジン動作点を変更する制御へと移行させるか否かを判定するための閾値としてアクセルの操作量に基準とする操作量を設定し、アクセルの操作量が当該基準とする操作量よりも大きいときに出力重視動作線に沿ってエンジン動作点を変更する制御へと移行させるようにしている場合には、請求項6に記載されているように排気再循環が実行されているときに、排気再循環が実行されていないときよりも基準とする操作量を小さくするようにすればよい。
【0040】
こうした構成を採用すれば、排気再循環が実行されているときには、排気再循環が実行されていないときよりも出力重視動作線に沿ってエンジン動作点を変更する制御へと移行しやすくなる。
【0041】
請求項7に記載の発明は、要求パワーが基準とする値よりも大きいときに出力重視動作線に沿ってエンジン動作点を変更する制御へと移行させる請求項5に記載のハイブリッド車両の制御装置であり、排気再循環が実行されているときに、排気再循環が実行されていないときよりも前記基準とする値を小さくするハイブリッド車両の制御装置である。
【0042】
出力重視動作線に沿ってエンジン動作点を変更する制御へと移行させるか否かを判定するための閾値としてアクセルの操作量や車速などに基づいて算出される要求パワーに基準とする値を設定し、要求パワーが当該基準とする値よりも大きいときに出力重視動作線に沿ってエンジン動作点を変更する制御へと移行させるようにしている場合には、請求項7に記載されているように排気再循環が実行されているときに、排気再循環が実行されていないときよりも基準とする値を小さくするようにすればよい。
【0043】
こうした構成を採用すれば、排気再循環が実行されているときには、排気再循環が実行されていないときよりも出力重視動作線に沿ってエンジン動作点を変更する制御へと移行しやすくなる。
【0044】
請求項8に記載の発明は、要求トルクが基準とする値よりも大きいときに出力重視動作線に沿ってエンジン動作点を変更する制御へと移行させる請求項5に記載のハイブリッド車両の制御装置であり、排気再循環が実行されているときに、排気再循環が実行されていないときよりも前記基準とする値を小さくするハイブリッド車両の制御装置である。
【0045】
出力重視動作線に沿ってエンジン動作点を変更する制御へと移行させるか否かを判定するための閾値としてアクセルの操作量や車速などに基づいて算出される要求トルクに基準とする値を設定し、要求トルクが当該基準とする値よりも大きいときに出力重視動作線に沿ってエンジン動作点を変更する制御へと移行させるようにしている場合には、請求項8に記載されているように排気再循環が実行されているときに、排気再循環が実行されていないときよりも基準とする値を小さくするようにすればよい。
【0046】
こうした構成を採用すれば、排気再循環が実行されているときには、排気再循環が実行されていないときよりも出力重視動作線に沿ってエンジン動作点を変更する制御へと移行しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】この発明にかかるハイブリッド車両の制御装置であるパワーマネジメントコントロールコンピュータと、その制御対象であるハイブリッドシステムとの関係を示す模式図。
【図2】エンジンパワー指令値の単位時間当たりの変更量の上限値を変更する処理の流れを示すフローチャート。
【図3】エンジン回転数の単位時間当たりの変化量の上限値を変更する処理の流れを示すフローチャート。
【図4】出力重視制御への切換時のエンジン回転数の単位時間当たりの変化量の上限値を変更する処理の流れを示すフローチャート。
【図5】出力重視制御への切換閾値を変更する処理の流れを示すフローチャート。
【図6】エンジン回転数の上限値と、排気再循環が実行されているときのエンジン動作点並びに排気再循環が実行されていないときのエンジン動作点との関係を示すマップ。
【図7】出力重視動作線上のエンジン動作点と、排気再循環が実行されているときのエンジン動作点並びに排気再循環が実行されていないときのエンジン動作点との関係を示すマップ。
【発明を実施するための形態】
【0048】
(第1の実施形態)
以下、本発明にかかるハイブリッド車両の制御装置をハイブリッドシステムの出力制御を行うパワーマネジメントコントロールコンピュータとして具体化した第1の実施形態について、図1及び図2を参照して説明する。
【0049】
図1に示すように本実施形態にかかるハイブリッドシステム100は、エンジン110と2つのモータジェネレータ120,150とを動力分割機構130並びにリダクションギア140を介して連結することによって構成されている。
【0050】
なお、第1のモータジェネレータ120及び第2のモータジェネレータ150は、いずれも内部に永久磁石が埋め込まれたロータと三相コイルが巻回されたステータとを備える周知の同期発電電動機である。
【0051】
動力分割機構130は、外歯歯車のサンギア131と、このサンギア131を取り囲む内場歯車を備えるリングギア132と、サンギア131及びリングギア132の双方に噛合する複数のプラネタリギア133とを備える遊星歯車機構である。それぞれのプラネタリギア133はプラネタリキャリア134によって連結され、自転自在且つ公転自在に支持されている。プラネタリキャリア134は図1の右下に示されるようにダンパ112を介してエンジン110のクランクシャフト111に連結されている。サンギア131は第1のモータジェネレータ120に連結されている。リングギア132にはカウンターギア160が噛合されており、リングギア132の動力はこのカウンターギア160とファイナルギア170を介してディファレンシャル180に伝達される。
【0052】
また、図1の左下に示されるようにリングギア132には、リダクションギア140を介して第2のモータジェネレータ150が接続されている。リダクションギア140は動力分割機構130と同様にサンギア141と、複数のプラネタリギア143を備える遊星歯車機構である。しかし、リダクションギア140にあってはプラネタリキャリア144が固定されている。そのため、リダクションギア140のプラネタリギア143は自転自在であるものの公転不能になっている。なお、第2のモータジェネレータ150はサンギア141に連結されている。
【0053】
このように構成されたハイブリッドシステム100にあっては、プラネタリキャリア134から入力されるエンジン110からの動力が動力分割機構130を通じてサンギア131側とリングギア132側に分配されることになる。なお、リングギア132の歯数に対するサンギア131の歯数の比であるプラネタリ比は「ρ」であり、動力はこのプラネタリ比に応じて分配される。
【0054】
リングギア132は、動力分割機構130を通じて入力されるエンジン110の動力と、リダクションギア140を通じて入力される第2のモータジェネレータ150の動力とを統合してディファレンシャル180に伝達する。これにより、ハイブリッドシステム100から出力された動力は、ディファレンシャル180を介して左右の駆動輪190L,190Rに分配される。
【0055】
第1のモータジェネレータ120及び第2のモータジェネレータ150はインバータ210及びコンバータ220を介してバッテリ200に接続されている。インバータ210は第1のモータジェネレータ120と第2のモータジェネレータ150のそれぞれに対して6個の絶縁ゲートバイポーラトランジスタにより3相ブリッジ回路を構成している。これにより、インバータ210では、半導体スイッチング素子として絶縁ゲートバイポーラトランジスタをON・OFFすることにより、直流電流を三相交流電流に変換したり、三相交流電流を直流電流に変換したりすることができる。
【0056】
コンバータ220はリアクトルと2つの絶縁バイポーラトランジスタとにより構成されており、一方の絶縁バイポーラトランジスタをON・OFFすることにより、バッテリ200から供給される電力を昇圧してインバータ210に供給する。また、他方の絶縁バイポーラトランジスタをON・OFFすることにより、インバータ210から供給される電力を降圧してバッテリ200に供給することもできる。
【0057】
これにより、第1のモータジェネレータ120によって発電された交流電流は、インバータ210に伝達されるとともに同インバータ210によって直流電流に変換され、コンバータ220を通じて降圧された後にバッテリ200に充電される。
【0058】
また、エンジン110の始動時には、バッテリ200から供給される直流電流がコンバータ220を通じて昇圧された後にインバータ210によって交流電流に変換されて第1のモータジェネレータ120に供給される。
【0059】
第2のモータジェネレータ150も、第1のモータジェネレータ120と同じくインバータ210及びコンバータ220を介してバッテリ200に接続されている。そして、発進時や低速時、加速時にはバッテリ200から供給される直流電流がコンバータ220で昇圧された後にインバータ210によって交流電流に交換されて第2のモータジェネレータ150に供給される。
【0060】
第1のモータジェネレータ120は、エンジン110の始動時にはエンジン110をクランキングするスタータモータとして機能する一方、エンジン110の運転中にはエンジン110の動力を利用して発電を行う発電機として機能する。
【0061】
また、定常走行時や加速時には、第1のモータジェネレータ120によって発電された交流電流がインバータ210を介して第2のモータジェネレータ150に供給される。こうして供給された電流によって第2のモータジェネレータ150が駆動されると、その動力はリダクションギア140に伝達される。そして、リダクションギア140に伝達された動力がディファレンシャル180を介して駆動輪190L,190Rに伝達される。
【0062】
また、アクセル操作がなされていないときや、ブレーキ操作がされているときのような減速時には、駆動輪190L,190Rから伝達される動力により第2のモータジェネレータ150が駆動される。このとき、第2のモータジェネレータ150が発電機として機能し、発電することで、駆動輪190L,190Rから第2のモータジェネレータ150に伝達された動力が電力に変換される。こうして変換された電力は、インバータ210によって交流電流から直流電流に変換され、コンバータ220を通じて降圧された後にバッテリ200に充電される。
【0063】
すなわち、アクセル操作がなされていないときや、ブレーキ操作がされているときのような減速時には、運動エネルギーを電気エネルギーに変換してバッテリ200に蓄える回生制動を行うことにより、エネルギーを回収するようにしている。
【0064】
こうしたハイブリッドシステム100の制御は、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500から出力される制御信号に基づいて実行される。パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、ハイブリッドシステム100の各部を制御するための各種演算処理を実施する中央演算処理装置(CPU)、制御用のプログラムやデータが記憶された読み込み専用メモリ(ROM)、演算処理の結果などを一時的に記憶するランダムアクセスメモリ(RAM)などを備えて構成されている。
【0065】
また、図1に示すように、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500には、バッテリ監視ユニット250、モータ制御ユニット300、エンジン制御ユニット400が接続されている。
【0066】
バッテリ監視ユニット250には、バッテリ200とコンバータ220との間の電力ラインに設けられた電流センサ230からの電流値信号、バッテリ温度センサ240からのバッテリ温度信号などが入力される。バッテリ監視ユニット250は、こうしたセンサから入力されたバッテリ200の状態に関するデータを必要に応じてパワーマネジメントコントロールコンピュータ500に送信する。なお、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、バッテリ監視ユニット250から送信される電流センサ230の検出値の積算値に基づいてバッテリ200の充電残量を演算する。
【0067】
モータ制御ユニット300は、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500からの出力要求に従い、インバータ210とコンバータ220を制御し、第1のモータジェネレータ120及び第2のモータジェネレータ150を制御する。また、モータ制御ユニット300には第1のモータジェネレータ120の回転数Nm1を検出する回転センサ320と第2のモータジェネレータ150の回転数Nm2を検出する回転センサ350が接続されている。モータ制御ユニット300は、これら回転センサ320,350によって検出された回転数Nm1,Nm2の情報など、車両制御に必要な情報をパワーマネジメントコントロールコンピュータ500に送信する。
【0068】
エンジン制御ユニット400は、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500からの出力要求に従い、エンジン110における燃料噴射制御や、点火時期制御、吸入空気量制御などを行う。また、エンジン110には排気の一部を吸気通路に還流させることにより、排気を気筒内に還流させる排気再循環機構115が設けられている。エンジン制御ユニット400は、この排気再循環機構115を制御して気筒内に排気を還流させる排気再循環を実行したり、停止したりするほか、排気再循環実行中に気筒内に還流させる排気の量の調整を行う。
【0069】
エンジン制御ユニット400には、吸入空気量を検出するエアフロメータ410や、クランクシャフト111の回転速度であるエンジン回転数Neを検出するクランクポジションセンサ420が接続されている。また、エンジン制御ユニット400には、スロットルバルブの開度を検出するスロットルポジションセンサ430や、エンジン110の冷却水温であるエンジン水温THWを検出する水温センサ440なども接続されている。エンジン制御ユニット400は、必要に応じてこれらのセンサによって検出された情報をパワーマネジメントコントロールコンピュータ500に送信する。
【0070】
バッテリ監視ユニット250、モータ制御ユニット300、エンジン制御ユニット400の他にも、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500には、アクセル操作量を検出するアクセルポジションセンサ510、シフトレバーの操作位置を検出するシフトポジションセンサ520、車速を検出する車速センサ530などが接続されている。
【0071】
パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、アクセル操作量や車速などに基づいてリングギア132に出力すべき要求パワーP*や要求トルクTr*を算出する。
そして、この要求パワーP*や要求トルクTr*に対応する要求動力がリングギア132に出力されるように、エンジン110、第1のモータジェネレータ120、第2のモータジェネレータ150を制御する。
【0072】
具体的には、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、アクセル操作量や車速、各モータジェネレータ120,150の回転数Nm1,Nm2、バッテリ200の充電残量などを読み込み、まず、バッテリ200の充電残量に基づいて充電の必要度合いに応じて充電要求パワーPb*を算出する。なお、充電要求パワーPb*は充電を行うために必要なパワーである。
【0073】
そして、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500はアクセル操作量と車速に基づいて駆動輪190L,190Rに連結されたリングギア132に出力すべき要求トルクTr*と要求パワーP*とを設定する。なお、要求トルクTr*はアクセル操作量と車速と要求トルクTr*との関係が予め定められた演算マップを参照することにより算出され、要求パワーP*は要求トルクTr*にリングギア132の回転数Nrを乗じたものに充電要求パワーPb*を加算することによって設定される。
【0074】
パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、こうして設定した要求パワーP*をエンジン110から出力すべき要求エンジンパワーPe*として設定する。そして、この要求エンジンパワーPe*に基づいてエンジンパワー指令値Peを設定し、設定したエンジンパワー指令値Peを出力要求としてエンジン制御ユニット400に出力する。
【0075】
なお、ここでは、エンジンパワー指令値Peの単位時間当たりの変更量に上限値を設けており、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500はこの上限値を用いて要求エンジンパワーPe*の値を制限した値をエンジンパワー指令値Peとしてエンジン制御ユニット400に出力する。すなわち、要求エンジンパワーPe*の変更量が小さく、単位時間当たりの変更量が上記の上限値以下である場合には、要求エンジンパワーPe*の値をそのままエンジンパワー指令値Peに設定してエンジン制御ユニット400に出力する。一方で、要求エンジンパワーPe*の変更量が大きく、単位時間当たりの変更量が上記の上限値よりも大きい場合には、エンジンパワー指令値Peを上記の上限値と等しい変更量で変更してエンジン制御ユニット400に出力する。要するに要求エンジンパワーPe*の単位時間当たりの変更量が上記の上限値よりも大きい場合には、エンジンパワー指令値Peの単位時間当たりの変更量が上限値と等しい値に制限され、エンジンパワー指令値Peが一定の変化速度で変化しながら要求エンジンパワーPe*の値に近づくようになる。
【0076】
エンジン制御ユニット400はパワーマネジメントコントロールコンピュータ500から出力されたエンジンパワー指令値Peに基づいてエンジン110の目標エンジントルクTe*と目標エンジン回転数Ne*を設定する。
【0077】
具体的には図6や図7に示されるようなマップを参照し、良好な燃費が得られるエンジン動作点を結んだ燃費動作線と、等パワー曲線とが交わるエンジン動作点におけるエンジントルクTeとエンジン回転数Neが目標エンジントルクTe*、目標エンジン回転数Ne*として設定される。
【0078】
なお、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、目標エンジン回転数Ne*及び目標エンジントルクTe*を設定する際に用いる燃費動作線を、排気再循環が実行されているか否かに応じて変更するようにしている。
【0079】
具体的には、排気再循環が実行されているときには、図6及び図7に示されるように排気再循環が実行されていないときの燃費動作線よりも低トルク側に設定された燃費動作線を選択し、目標エンジン回転数Ne*がより高い値に設定されるように目標エンジン回転数Ne*、目標エンジントルクTe*の設定に使用する燃費動作線を変更する。
【0080】
また、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、加速要求が大きいときには、図6及び図7に示されるように燃費動作線上のエンジン動作点よりも低いエンジン回転数Neで大きなエンジントルクTeを出力させるエンジン動作点を結んだ出力重視動作線に沿ってエンジン動作点を変更する出力重視制御を実行する。
【0081】
パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、下記の条件(X)、(Y)、(Z)の少なくとも1つが成立している場合に加速要求が大きいと判断し、目標エンジン回転数Ne*、目標エンジントルクTe*の算出制御を燃費動作線に基づく燃費重視の算出制御から出力重視動作線に基づく出力重視制御に移行させる。
【0082】
・条件(X):アクセルの操作量が基準とする操作量「E」よりも大きい。
・条件(Y):要求パワーP*が基準とする値「F」よりも大きい。
・条件(Z):要求トルクTr*が基準とする値「G」よりも大きい。
【0083】
なお、出力重視動作線に沿ってエンジン動作点を変更する出力重視制御に移行するときには、図7に矢印で示されるように等パワー曲線に沿ってエンジン動作点を出力重視動作線上まで移動させ、その後、出力重視動作線に沿ってエンジン動作点を変更する。
【0084】
パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、このように燃費動作線や出力重視動作線に基づいて算出された目標エンジン回転数Ne*とリングギア132の回転数Nrとプラネタリ比とを用いて、第1のモータジェネレータ120の目標回転数Nm1*を算出する。そして、第1のモータジェネレータ120の回転数Nm1をこの目標回転数Nm1*に一致させるために必要な第1のモータジェネレータ120のトルクTm1を算出し、これを第1のモータジェネレータ120のトルク指令値Tm1*とする。その上で、このトルク指令値Tm1*とプラネタリ比に基づいて第2のモータジェネレータ150のトルク指令値Tm2*を算出する。
【0085】
こうしてトルク指令値Tm1*,Tm2*を算出すると、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500はこれらを出力し、各モータジェネレータ120,150を駆動する。
【0086】
これにより、エンジンパワー指令値Peに見合うエンジンパワーがエンジン110から出力されるとともに、エンジン110から出力されるエンジンパワーが各モータジェネレータ120,150によりトルク変換されてリングギア132に要求トルクTr*に見合ったトルクが出力されるようになる。
【0087】
こうした制御を行うことにより、エンジン110が出力する動力の一部を利用して第1のモータジェネレータ120を駆動し、そこで発電された電力を利用して第2のモータジェネレータ150を駆動することによってエンジン110の動力に第2のモータジェネレータ150の動力を加えて駆動輪190L,190Rを駆動することになる。こうしてエンジン110が出力する動力の一部を第1のモータジェネレータ120に分配するととともに、第2のモータジェネレータ150の動力によって駆動をアシストすることにより、エンジン回転数Neを目標エンジン回転数Ne*に一致させるように調整し、エンジン110を効率のよい運転領域で運転させつつ、要求の動力が得られるようになる。
【0088】
また、要求される動力が大きい加速時などには、バッテリ200から第2のモータジェネレータ150に電力を供給し、第2のモータジェネレータ150によるアシスト量を増大させてより大きな動力を出力する。
【0089】
更に、バッテリ200の充電残量が少ないときには、エンジン110の運転量を増大させ、第1のモータジェネレータ120における発電量を増大させることにより、バッテリ200に電力を供給する。
【0090】
一方で、バッテリ200の充電残量が十分に確保されている場合には、エンジン110の運転を停止して要求される動力に見合う動力を第2のモータジェネレータ150のみからリングギア132に出力するモータ運転も可能である。例えば、エンジン110の効率が悪い低負荷の領域ではエンジン110の運転を停止し、第2のモータジェネレータ150の動力のみによって走行する。また、車両停止中にもエンジン110を停止し、燃料消費量の低減を図る。
【0091】
なお、エンジン110の効率が悪い低負荷の領域や車両停止中であってもバッテリ200の充電残量が少ない場合にはエンジン110を運転させ、エンジン110の動力で第1のモータジェネレータ120を駆動することによって発電を行い、発電によって生じた電力をバッテリ200に充電する。なお、この場合には要求エンジンパワーPe*として充電要求パワーPb*が設定されることになる。
【0092】
ところで、上記のように排気再循環を実行しているときに目標エンジン回転数Ne*がより高い値に設定されるように燃費動作線を変更するようにした場合には、図6に示されるように出力するエンジンパワーが等しい場合であっても、排気再循環を実行しているときには排気再循環を実行していないときと比べてエンジン回転数Neが高くなる。
【0093】
そのため、排気再循環を実行しているときには、図6に示されるようにエンジン回転数Neが排気再循環を実行していないときよりも上限値に近くなり(図6におけるX1<X2)、加速時にエンジン回転数Neが上限値に到達しやすくなる。
【0094】
その結果、エンジン回転数Neが上限値に達し、それ以上はエンジン回転数Neが上昇しない状態で第2のモータジェネレータ150の駆動力を増大させることにより加速が継続され、加速しているにも拘わらずにエンジン回転数Neが上昇しない状況が生じるようになる。この場合には、良好な加速感が得られず、運転者に違和感を与えてしまうおそれがある。
【0095】
そこで、本実施形態にかかるパワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、排気再循環が実行されているか否かに応じてエンジンパワー指令値Peの単位時間あたりの変更量の上限値を変更するようにしている。
【0096】
以下、本実施形態にかかるエンジンパワー指令値Peの単位時間当たりの変更量の上限値を変更する処理について図2を参照して説明する。
図2に示される処理は、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500が稼働しているときに所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0097】
この処理が開始されるとパワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、図2に示されるようにまずステップS100において排気再循環が実行されているか否かを判定する。
【0098】
ステップS100において、排気再循環が実行されていない旨の判定がなされた場合(ステップS100:NO)には、ステップS120へと進む。そしてパワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、エンジンパワー指令値Peの単位時間当たりの変更量の上限値を「A」に設定する。なお、この値「A」の大きさはエンジン110の応答性に基づいて設定されている。すなわち、この値「A」の大きさはエンジンパワー指令値Peの単位時間当たりの変化量が実際にエンジン110が応答し得ないような極めて大きな値にならないように設定されている。
【0099】
一方、ステップS100において、排気再循環が実行されている旨の判定がなされた場合(ステップS100:YES)には、ステップS110へと進む。そしてパワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、エンジンパワー指令値Peの単位時間当たりの変更量の上限値を「a」に設定する。なお、この値「a」の大きさはエンジン110の応答性に基づいて設定されている「A」よりも小さくされている。すなわち、ここでは、エンジンパワー指令値Peの単位時間当たりの変更量の上限値が「A」よりも小さな「a」に設定されることになる。
【0100】
こうして排気再循環が実行されているか否かに応じてエンジンパワー指令値Peの単位時間当たりの変更量の上限値を設定するとパワーマネジメントコントロールコンピュータ500はこの処理を一旦終了する。
【0101】
パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、こうして排気再循環が実行されているか否かに応じて上限値を変更する処理を繰り返し実行し、排気再循環が実行されているときには、排気再循環が実行されていないときよりもエンジンパワー指令値Peの単位時間当たりの変更量を小さくするようにしている。
【0102】
(作用)
以下、こうした上限値の変更を行うことによる作用について説明する。
排気再循環が実行されているときには、排気再循環が実行されていないときよりもエンジンパワー指令値Peの単位時間当たりの変更量の上限値が小さくされ、エンジンパワー指令値Peの単位時間当たりの変更量が小さくされる。すなわち、エンジンパワー指令値Peの変化が抑制されるようになる。そのため、エンジンパワー指令値Peに基づいて変更されるエンジン動作点の単位時間当たりの変化量も小さくされ、排気再循環が実行されているときには排気再循環が実行されていないときよりもエンジン回転数Neが変化しにくくなる。
【0103】
以上説明した第1の実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
(1)上述したようにエンジンパワー指令値Peの単位時間当たりの変更量が小さくされることにより、排気再循環が実行されているときには排気再循環が実行されていないときよりもエンジン回転数Neが変化しにくくなる。
【0104】
そのため、排気再循環が実行されてエンジン回転数Neが高められ、エンジン回転数Neが上限値に近くなっている状況であっても、加速に伴って上昇するエンジン回転数Neが上限値に到達するまでにかかる時間を長くすることができ、車速の上昇とともにエンジン回転数Neが上昇する期間を確保することができる。
【0105】
したがって、排気再循環を実行しているときに加速要求がなされた場合に、排気再循環を実行していないときに比べて加速感が悪化してしまうことを抑制し、良好な加速感を得ることができるようになる。
【0106】
なお、上記第1の実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することもできる。
・排気再循環が実行されているときにエンジンパワー指令値Peの単位時間当たりの変更量を小さくする具体的な方法としては、その他、上記のように上限値を小さくする構成に替えて排気再循環が実行されているときにのみエンジンパワー指令値Peの単位時間当たりの変更量に上限値を設定する方法を適用することもできる。すなわち、排気再循環が実行されていないときにはエンジンパワー指令値Peの単位時間当たりの変更量に上限値を設けず、変更量を制限しない一方、排気再循環が実行されているときには単位時間当たりの変更量に上限値を設け、単位時間当たりの変更量を制限するといった構成を採用することもできる。
【0107】
こうした構成を採用した場合にも、排気再循環が実行されているときには排気再循環が実行されていないときよりもエンジンパワー指令値Peの単位時間当たりの変更量が小さくされ、エンジン回転数Neが変化しにくくなるため、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
(第2の実施形態)
以下、本発明にかかるハイブリッド車両の制御装置をハイブリッドシステムの出力制御を行うパワーマネジメントコントロールコンピュータとして具体化した第2の実施形態について、図3を参照して説明する。
【0108】
第1の実施形態にあっては、排気再循環が実行されているか否かに応じてエンジンパワー指令値Peの単位時間当たりの変更量の上限値を変更することにより、排気再循環が実行されているときには、排気再循環が実行されていないときよりもエンジン動作点の単位時間当たりの変化量を小さくするようにしていた。これに対して本実施形態のパワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、エンジンパワー指令値Peの単位時間当たりの変更量の上限値を変更する構成に替えて、排気再循環が実行されているか否かに応じてエンジン回転数Neの単位時間当たりの変化量の上限値を変更するようにしている。
【0109】
本実施形態は、その他の構成については第1の実施形態と同一であるため、以下、第1の実施形態と同様の部分についてはその説明を割愛し、第1の実施形態と異なる部分について詳しく説明する。
【0110】
本実施形態のパワーマネジメントコントロールコンピュータ500にあっては、エンジン回転数Neの単位時間当たりの変化量に上限値を設け、エンジン回転数Neの単位時間当たりの変化量を制限するようにしている。すなわち、目標エンジン回転数Ne*の変化量が小さく、単位時間当たりのエンジン回転数Neの変化量が上記の上限値以下ですむ場合には、エンジン回転数Neが目標エンジン回転数Ne*に一致するように変更される。一方で、目標エンジン回転数Ne*の変化量が大きく、エンジン回転数Neを目標エンジン回転数Ne*に一致させるように変化させると単位時間当たりのエンジン回転数Neの変化量が上記の上限値よりも大きくなってしまう場合には、エンジン回転数Neを上記の上限値と等しい変化量で変化させる。要するにエンジン回転数Neの単位時間当たりの変化量が上記の上限値よりも大きくなってしまう場合には、エンジン回転数Neの単位時間当たりの変化量が上限値と等しい値に制限され、エンジン回転数Neが一定の変化速度で変化しながら目標エンジン回転数Ne*に近づくようになる。
【0111】
本実施形態にかかるパワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、排気再循環が実行されているか否かに応じてこの上限値、すなわちエンジン回転数Neの単位時間あたりの変化量の上限値を変更するようにしている。
【0112】
以下、本実施形態にかかるエンジン回転数Neの単位時間当たりの変化量の上限値を変更する処理について図3を参照して説明する。
図3に示される処理は、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500が稼働しているときに所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0113】
この処理が開始されるとパワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、図3に示されるようにまずステップS200において排気再循環が実行されているか否かを判定する。
【0114】
ステップS200において、排気再循環が実行されていない旨の判定がなされた場合(ステップS200:NO)には、ステップS220へと進む。そしてパワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、エンジン回転数Neの単位時間当たりの変化量の上限値を「B」に設定する。なお、この値「B」の大きさはエンジン110の応答性に基づいて設定されている。すなわち、この値「B」の大きさはエンジン回転数Neの単位時間当たりの変化量が実際にエンジン110が応答し得ないような極めて大きな値にならないように設定されている。
【0115】
一方、ステップS200において、排気再循環が実行されている旨の判定がなされた場合(ステップS200:YES)には、ステップS210へと進む。そしてパワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、エンジン回転数Neの単位時間当たりの変化量の上限値を「b」に設定する。なお、この値「b」の大きさはエンジン110の応答性に基づいて設定されている「B」よりも小さくされている。すなわち、ここでは、エンジン回転数Neの単位時間当たりの変化量の上限値が「B」よりも小さな「b」に設定されることになる。
【0116】
こうして排気再循環が実行されているか否かに応じてエンジン回転数Neの単位時間当たりの変化量の上限値を設定するとパワーマネジメントコントロールコンピュータ500はこの処理を一旦終了する。
【0117】
パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、こうして排気再循環が実行されているか否かに応じて上限値を変更する処理を繰り返し実行し、排気再循環が実行されているときには、排気再循環が実行されていないときよりもエンジン回転数Neの単位時間当たりの変化量を小さくするようにしている。
【0118】
(作用)
以下、こうした上限値の変更を行うことによる作用について説明する。
排気再循環が実行されているときには、排気再循環が実行されていないときよりもエンジン回転数Neの単位時間当たりの変化量の上限値が小さくされ、エンジン回転数Neの単位時間当たりの変化量が小さくされる。すなわち、エンジン回転数Neの変化が抑制され、排気再循環が実行されているときには排気再循環が実行されていないときよりもエンジン回転数Neが変化しにくくなる。
【0119】
以上説明した第2の実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
(1)上述したようにエンジン回転数Neの単位時間当たりの変化量が小さくされることにより、排気再循環が実行されているときには排気再循環が実行されていないときよりもエンジン回転数Neが変化しにくくなる。
【0120】
そのため、排気再循環が実行されてエンジン回転数Neが高められ、エンジン回転数Neが上限値に近くなっている状況であっても、加速に伴って上昇するエンジン回転数Neが上限値に到達するまでにかかる時間を長くすることができ、車速の上昇とともにエンジン回転数Neが上昇する期間を確保することができる。
【0121】
したがって、排気再循環を実行しているときに加速要求がなされた場合に、排気再循環を実行していないときに比べて加速感が悪化してしまうことを抑制し、良好な加速感を得ることができるようになる。
【0122】
なお、上記第2の実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することもできる。
・排気再循環が実行されているときにエンジン回転数Neの単位時間当たりの変化量を小さくする具体的な方法としては、その他、上記のように上限値を小さくする構成に替えて排気再循環が実行されているときにのみエンジン回転数Neの単位時間当たりの変化量に上限値を設定する方法を適用することもできる。すなわち、排気再循環が実行されていないときにはエンジン回転数Neの単位時間当たりの変化量に上限値を設けず、変化量を制限しない一方、排気再循環が実行されているときには単位時間当たりの変化量に上限値を設け、単位時間当たりの変化量を制限するといった構成を採用することもできる。
【0123】
こうした構成を採用した場合にも、排気再循環が実行されているときには排気再循環が実行されていないときよりもエンジン回転数Neの単位時間当たりの変化量が小さくされ、エンジン回転数Neが変化しにくくなるため、上記第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。
(第3の実施形態)
以下、本発明にかかるハイブリッド車両の制御装置をハイブリッドシステムの出力制御を行うパワーマネジメントコントロールコンピュータとして具体化した第3の実施形態について、図4を参照して説明する。
【0124】
第1の実施形態にあっては、排気再循環が実行されているか否かに応じてエンジンパワー指令値Peの単位時間当たりの変更量の上限値を変更することにより、排気再循環が実行されているときには、排気再循環が実行されていないときよりもエンジン動作点の単位時間当たりの変化量を小さくするようにしていた。これに対して本実施形態のパワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、エンジンパワー指令値Peの単位時間当たりの変更量の上限値を変更する構成に替えて、排気再循環が実行されているか否かに応じて出力重視制御へ移行する際のエンジン回転数Neの単位時間当たりの変化量の上限値を変更するようにしている。
【0125】
本実施形態は、その他の構成については第1の実施形態と同一であるため、以下、第1の実施形態と同様の部分についてはその説明を割愛し、第1の実施形態と異なる部分について詳しく説明する。
【0126】
本実施形態のパワーマネジメントコントロールコンピュータ500にあっては、燃費動作線に沿ってエンジン動作点を変更する制御から出力重視動作線に沿ってエンジン動作点を変更する出力重視制御へ移行する際のエンジン回転数Neの単位時間当たりの変化量に上限値を設けている。すなわち、燃費動作線上のエンジン動作点から等パワー曲線に沿って出力重視動作線上までエンジン動作点を変化させる際のエンジン回転数Neの単位時間あたりの変化量に上限値を設けている。
【0127】
本実施形態にかかるパワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、排気再循環が実行されているか否かに応じてこの上限値、すなわち出力重視制御へ移行する際に等パワー曲線に沿ってエンジン動作点を出力重視動作線上まで変化させる際のエンジン回転数Neの単位時間あたりの変化量の上限値を変更するようにしている。
【0128】
以下、本実施形態にかかる出力重視制御への切換時のエンジン回転数Neの単位時間当たりの変化量の上限値を変更する処理について図4を参照して説明する。
図4に示される処理は、出力重視制御への切換時に所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0129】
この処理が開始されるとパワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、図4に示されるようにまずステップS300において排気再循環が実行されているか否かを判定する。
【0130】
ステップS300において、排気再循環が実行されていない旨の判定がなされた場合(ステップS300:NO)には、ステップS320へと進む。そしてパワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、出力重視制御への切換時のエンジン回転数Neの単位時間当たりの変化量の上限値を「D」に設定する。なお、この値「D」の大きさはエンジン110の応答性に基づいて設定されている。すなわち、この値「D」の大きさはエンジン回転数Neの単位時間当たりの変化量が実際にエンジン110が応答し得ないような極めて大きな値にならないように設定されている。
【0131】
一方、ステップS300において、排気再循環が実行されている旨の判定がなされた場合(ステップS300:YES)には、ステップS310へと進む。そしてパワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、出力重視制御への切換時のエンジン回転数Neの単位時間当たりの変化量の上限値を「d」に設定する。なお、この値「d」の大きさはエンジン110の応答性に基づいて設定されている「D」よりも小さくされている。すなわち、ここでは、出力重視制御への切換時のエンジン回転数Neの単位時間当たりの変化量の上限値が「D」よりも小さな「d」に設定されることになる。
【0132】
こうして排気再循環が実行されているか否かに応じて出力重視制御への切換時のエンジン回転数Neの単位時間当たりの変化量の上限値を設定するとパワーマネジメントコントロールコンピュータ500はこの処理を一旦終了する。
【0133】
パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、こうして排気再循環が実行されているか否かに応じて上限値を変更する処理を繰り返し実行し、排気再循環が実行されているときには、排気再循環が実行されていないときよりも出力重視制御への切換時のエンジン回転数Neの単位時間当たりの変化量を小さくするようにしている。
【0134】
(作用)
以下、こうした上限値の変更を行うことによる作用について説明する。
排気再循環が実行されているときには、排気再循環が実行されていないときよりも出力重視制御への切換時のエンジン回転数Neの単位時間当たりの変化量の上限値が小さくされ、エンジン回転数Neの単位時間当たりの変化量が小さくされる。すなわち、出力重視制御への切換時のエンジン回転数Neの変化が抑制され、排気再循環が実行されているときには排気再循環が実行されていないときよりもエンジン回転数Neが変化しにくくなる。
【0135】
以上説明した第3の実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
(1)上述したように出力重視制御への切換時のエンジン回転数Neの単位時間当たりの変化量が小さくされることにより、排気再循環が実行されているときには、出力重視動作線に沿ったエンジン動作点の制御に移行する際にエンジン回転数Neがゆっくりと低下するようになる。そのため、加速要求に伴って出力重視動作線に沿ってエンジン動作点を変更する制御に移行するときにエンジン回転数Neが急に大きく低下するようになることを抑制することができる。
【0136】
したがって、排気再循環を実行しているときに加速要求がなされた場合に、排気再循環を実行していないときに比べて加速感が悪化してしまうことを抑制し、良好な加速感を得ることができるようになる。
【0137】
なお、上記第3の実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することもできる。
・排気再循環が実行されているときに出力重視制御への切換時のエンジン回転数Neの単位時間当たりの変化量を小さくする具体的な方法としては、その他、上記のように上限値を小さくする構成に替えて排気再循環が実行されているときにのみエンジン回転数Neの単位時間当たりの変化量に上限値を設定する方法を適用することもできる。すなわち、排気再循環が実行されていないときには出力重視制御への切換時のエンジン回転数Neの単位時間当たりの変化量に上限値を設けず、変化量を制限しない一方、排気再循環が実行されているときには単位時間当たりの変化量に上限値を設け、単位時間当たりの変化量を制限するといった構成を採用することもできる。
【0138】
こうした構成を採用した場合にも、排気再循環が実行されているときには排気再循環が実行されていないときよりも出力重視制御への切換時のエンジン回転数Neの単位時間当たりの変化量が小さくされ、エンジン回転数Neが変化しにくくなるため、上記第3の実施形態と同様の効果を得ることができる。
(第4の実施形態)
以下、本発明にかかるハイブリッド車両の制御装置をハイブリッドシステムの出力制御を行うパワーマネジメントコントロールコンピュータとして具体化した第4の実施形態について、図5を参照して説明する。
【0139】
第1の実施形態にあっては、排気再循環が実行されているか否かに応じてエンジンパワー指令値Peの単位時間当たりの変更量の上限値を変更することにより、排気再循環が実行されているときには、排気再循環が実行されていないときよりもエンジン動作点の単位時間当たりの変化量を小さくするようにしていた。これに対して本実施形態のパワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、エンジンパワー指令値Peの単位時間当たりの変更量の上限値を変更する構成に替えて、排気再循環が実行されているか否かに応じて出力重視制御への切換閾値を変更するようにしている。
【0140】
本実施形態は、その他の構成については第1の実施形態と同一であるため、以下、第1の実施形態と同様の部分についてはその説明を割愛し、第1の実施形態と異なる部分について詳しく説明する。
【0141】
本実施形態のパワーマネジメントコントロールコンピュータ500にあっては、排気再循環が実行されているか否かに応じて出力重視制御への切換閾値、すなわち加速要求が大きいことを判定するための条件(X)〜(Z)における基準とする値を変更するようにしている。
【0142】
以下、本実施形態にかかる出力重視制御への切換閾値を変更する処理について図5を参照して説明する。
図5に示される処理は、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500が稼働しているときに所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0143】
この処理が開始されるとパワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、図5に示されるようにまずステップS400において排気再循環が実行されているか否かを判定する。
【0144】
ステップS400において、排気再循環が実行されていない旨の判定がなされた場合(ステップS400:NO)には、ステップS420へと進む。そしてパワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、出力重視制御への切換閾値を高い値に設定する。具体的には、条件(X)における基準とするアクセルの操作量を「E」に設定し、条件(Y)における基準とする要求パワーP*の値を「F」に設定するとともに、条件(Z)における基準とする要求トルクTr*の値を「G」に設定する。
【0145】
一方、ステップS400において、排気再循環が実行されている旨の判定がなされた場合(ステップS400:YES)には、ステップS410へと進む。そしてパワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、出力重視制御への切換閾値を低い値に設定する。具体的には、条件(X)における基準とするアクセルの操作量を「E」よりも小さな「e」に設定し、条件(Y)における基準とする要求パワーP*の値を「F」よりも小さな「f」に設定するとともに、条件(Z)における基準とする要求トルクTr*の値を「G」よりも小さな「g」に設定する。
【0146】
こうして排気再循環が実行されているか否かに応じて出力重視制御への切換閾値を設定するとパワーマネジメントコントロールコンピュータ500はこの処理を一旦終了する。
パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、こうして排気再循環が実行されているか否かに応じて切換閾値を変更する処理を繰り返し実行し、排気再循環が実行されているときには、排気再循環が実行されていないときよりも出力重視制御への切換閾値を小さくするようにしている。
【0147】
(作用)
以下、こうした上限値の変更を行うことによる作用について説明する。
排気再循環が実行されているときには、出力重視動作線に沿ってエンジン動作点を変更する制御へと移行させるか否かを判定するための閾値である上記切換閾値が変更され、排気再循環が実行されていないときよりも出力重視動作線に沿ってエンジン動作点を変更する制御へと移行しやすくなる。
【0148】
以上説明した第4の実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
(1)出力重視動作線に沿ってエンジン動作点を変更する場合には、等パワー曲線と燃費動作線とに基づいてエンジン110を制御する場合よりも低いエンジン回転数NeでエンジントルクTeが出力されるようになる。そのため、エンジン回転数Neの上昇が抑制されるようになり、車速の上昇とともにエンジン回転数Neが上昇する期間を確保することができる。
【0149】
上記第4の実施形態によれば、排気再循環を実行しているときには出力重視制御へと移行しやすくなるため、排気再循環を実行していないときに比べて加速感が悪化してしまうことを抑制し、良好な加速感を得ることができるようになる。
【0150】
なお、上記第4の実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することもできる。
・アクセルの操作量、要求パワーP*、要求トルクTr*の全てについて基準とする値を小さくする構成を示したが、いずれかについての基準の値を小さくするようにしてもよい。すなわち、排気再循環が実行されているときに、排気再循環が実行されていないときよりも出力重視制御へ移行しやすくすることができるのであれば、どの切換閾値を小さくするようにしてもよい。
【0151】
その他、上記各実施形態に共通して変更可能な要素としては次のようなものがある。
・各実施形態に記載された構成を組み合わせることもできる。例えば、排気再循環が実行されているときに、エンジン回転数Neの単位時間当たりの変化量を小さくするとともに、出力重視制御への切換閾値を小さくするようにしてもよい。
【符号の説明】
【0152】
100…ハイブリッドシステム、110…エンジン、111…クランクシャフト、112…ダンパ、115…排気再循環機構、120…第1のモータジェネレータ、130…動力分割機構、131…サンギア、132…リングギア、133…プラネタリギア、134…プラネタリキャリア、140…リダクションギア、141…サンギア、143…プラネタリギア、144…プラネタリキャリア、150…第2のモータジェネレータ、160…カウンターギア、170…ファイナルギア、180…ディファレンシャル、190L,190R…駆動輪、200…バッテリ、210…インバータ、220…コンバータ、230…バッテリ電流センサ、240…バッテリ温度センサ、250…バッテリ監視ユニット、300…モータ制御ユニット、320,350…回転センサ、400…エンジン制御ユニット、410…エアフロメータ、420…クランクポジションセンサ、430…スロットルポジションセンサ、440…水温センサ、500…パワーマネジメントコントロールコンピュータ、510…アクセルポジションセンサ、520…シフトポジションセンサ、530…車速センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンパワー指令値に対応する等パワー曲線と燃費動作線との交点となるエンジン動作点に基づいて目標エンジン回転数と目標エンジントルクとを設定して排気再循環機構を備えたエンジンを制御するハイブリッド車両の制御装置であり、
排気の一部を気筒内に還流させる排気再循環が実行されているか否かに応じて前記燃費動作線を変更し、排気再循環が実行されているときには排気再循環が実行されていないときよりも設定される目標エンジン回転数が高くなるようにするハイブリッド車両の制御装置であって、
排気再循環が実行されているときは、排気再循環が実行されていないときよりもエンジン動作点の単位時間当たりの変化量を小さくする
ことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置おいて、
排気再循環が実行されているときに、排気再循環が実行されていないときよりもエンジンパワー指令値の単位時間当たりの変更量を小さくすることにより、エンジン動作点の単位時間当たりの変化量を小さくする
ことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置において、
排気再循環が実行されているときに、排気再循環が実行されていないときよりもエンジン回転数の単位時間当たりの変化量を小さくすることにより、エンジン動作点の単位時間当たりの変化量を小さくする
ことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項4】
加速要求が大きいときには燃費動作線上のエンジン動作点よりも低いエンジン回転数で大きなトルクを出力させるエンジン動作点を結んだ出力重視動作線に沿ってエンジン動作点を変更するハイブリッド車両の制御装置であり、
排気再循環が実行されているときには、排気再循環が実行されていないときよりも出力重視動作線に沿ったエンジン動作点の制御に移行する際のエンジン回転数の単位時間当たりの変化量を小さくすることにより、エンジン動作点の単位時間当たりの変化量を小さくする
請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項5】
エンジンパワー指令値に対応する等パワー曲線と燃費動作線との交点となるエンジン動作点に基づいて目標エンジン回転数と目標エンジントルクとを設定して排気再循環機構を備えたエンジンを制御するハイブリッド車両の制御装置であり、排気の一部を気筒内に還流させる排気再循環が実行されているか否かに応じて前記燃費動作線を変更し、排気再循環が実行されているときには排気再循環が実行されていないときよりも設定される目標エンジン回転数が高くなるようにするハイブリッド車両の制御装置であって、
加速要求が大きいときには燃費動作線上のエンジン動作点よりも低いエンジン回転数で大きなトルクを出力させるエンジン動作点を結んだ出力重視動作線に沿ってエンジン動作点を変更するハイブリッド車両の制御装置であり、
出力重視動作線に沿ってエンジン動作点を変更する制御へと移行させるか否かを判定するための閾値を排気再循環が実行されているか否かに応じて変更し、排気再循環が実行されているときは排気再循環が実行されていないときよりも出力重視動作線に沿ってエンジン動作点を変更する制御へと移行しやすくする
ことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項6】
アクセルの操作量が基準とする操作量よりも大きいときに出力重視動作線に沿ってエンジン動作点を変更する制御へと移行させる請求項5に記載のハイブリッド車両の制御装置であり、
排気再循環が実行されているときに、排気再循環が実行されていないときよりも基準とする操作量を小さくする
ことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項7】
要求パワーが基準とする値よりも大きいときに出力重視動作線に沿ってエンジン動作点を変更する制御へと移行させる請求項5に記載のハイブリッド車両の制御装置であり、
排気再循環が実行されているときに、排気再循環が実行されていないときよりも前記基準とする値を小さくする
ことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項8】
要求トルクが基準とする値よりも大きいときに出力重視動作線に沿ってエンジン動作点を変更する制御へと移行させる請求項5に記載のハイブリッド車両の制御装置であり、
排気再循環が実行されているときに、排気再循環が実行されていないときよりも前記基準とする値を小さくする
ことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−18448(P2013−18448A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155106(P2011−155106)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】