説明

ハイブリッド車両及び内燃機関の制御装置

【課題】1クラッチ方式のハイブリッド車両における欠点を改善する。
【解決手段】車両の駆動源として用いるエンジン11とモータ12とを直結し、排気通路24のうちの触媒25の上流側に排気シャッタ26を設け、燃料カット要求が発生したときに、排気シャッタ26を閉じて排気流量を絞った後に燃料カットを実行する。これにより、燃料カット直後に高温の触媒25に流入する未燃焼の空気量を大幅に低減して、燃料カット直後に触媒25内で発生する反応熱を大幅に低減し、触媒25の劣化を抑制する。モータ12のみで車両を駆動するモータ走行モードのときに、触媒25の上流側の排気シャッタ26を閉じて、モータ走行モード中にエンジン11から排出された未燃焼の空気が触媒25に流入する量を大幅に低減すると共に、スロットルバルブ22をアイドル開度より大きい開度まで開いて、エンジン11のポンプ損失を低減して燃費を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気通路に排気シャッタを設けたハイブリッド車両及び内燃機関の制御装置に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の排気通路に排気シャッタを設ける場合、特許文献1(特開2009−156133号公報)、特許文献2(特開2005−299408号公報)に記載されているように、排気通路のうちの触媒上流側に排気シャッタを設けたものと、触媒下流側に排気シャッタを設けたものとがある。
【0003】
触媒上流側に排気シャッタを設けた特許文献1では、排気昇温制御を行う場合に、吸気温度に応じて目標アイドル回転速度を決定して、触媒上流側の排気シャッタを閉じて、触媒への排気の流入を絞った状態でアイドル運転を行うようにしている。
【0004】
一方、触媒下流側に排気シャッタを設けた特許文献2では、昇温運転中に触媒下流側の排気シャッタを閉じて触媒周辺に高温の排気ガスを滞留させることで触媒の昇温を促進するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−156133号公報
【特許文献2】特開2005−299408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1では、排気昇温制御を行う場合に、触媒上流側の排気シャッタを閉じるため、触媒を昇温できない。排気シャッタは、全閉時でも完全に閉じることはなく、少し開いて排気の一部を排出するようになっているため、排気昇温制御時に触媒を昇温できないと、排気シャッタの開口から流出する排気を触媒で浄化できず、エミッションが悪化する。
【0007】
また、特許文献2では、昇温運転中に触媒下流側の排気シャッタを閉じるため、昇温運転中に内燃機関回転速度が上昇して排気流量が増加すると、排気通路内の排気圧力が高くなり過ぎて内燃機関の排気残留率(内部EGR率)が過大となり、内燃機関の燃焼状態が悪化する等の不具合が発生する可能性がある。
【0008】
また、車両の駆動源として内燃機関とモータとを併用するハイブリッド車両では、駆動系の構成を簡単化するために、駆動系を1クラッチ方式で構成したものがある。このような1クラッチ方式のハイブリッド車両では、内燃機関とモータとが直結されているため、モータのみで車両を駆動するモータ走行モードのときに、内燃機関の運転(燃焼)が停止されていても、モータの回転によって内燃機関が連れ回されてしまう。このため、モータ走行モード中に空気が内燃機関に吸入されて未燃焼のまま排出されて触媒に流入し続けてしまい、その結果、モータ走行モード中に触媒の放熱が促進されて触媒温度が低下してしまい、内燃機関の再始動後の排気浄化率が低下して、エミッションが悪化する。しかも、モータ走行モード中にモータの回転によって内燃機関が連れ回されるため、内燃機関の摩擦損失やポンプ損失が発生してモータの出力の一部が無駄に使われてしまい、結果的に燃費が悪化することになる。
【0009】
また、内燃機関の運転中に、モータ走行モードへの切換要求や、減速時、アイドルストップ要求等により燃料カット要求が発生すると、内燃機関への燃料噴射をカットして内燃機関の運転(燃焼)を停止させるようにしているが、燃料カット直後に高温の触媒に多量の酸素を含む未燃焼の空気が流入するため、触媒に吸蔵されているリッチ成分(HC,CO等)と酸素との反応が促進されて、その反応熱により触媒温度が瞬間的に上昇して、触媒の劣化が進んでしまう。
【0010】
更に、近年は、内燃機関の燃費効率向上のために、内燃機関を小型化して、ポンプ損失の少ない高負荷域を多用する傾向があるが、このような高負荷域を多用する内燃機関に、吸気側と排気側の圧力差を利用して排気の一部を吸気側に還流するEGRシステムを設けた場合、多用する高負荷域で、吸気側と排気側の圧力差が小さくなって十分なEGR量を確保できない。
【0011】
そこで、本発明は、上述した課題の少なくとも1つを解決することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、車両の駆動源として内燃機関とモータとを併用し、前記内燃機関の吸気通路にスロットルバルブを設ける一方、該内燃機関の排気通路に排気浄化用の触媒を設け、前記モータのみで車両を駆動するモータ走行モードのときに該モータの回転によって前記内燃機関が連れ回されるように前記車両の駆動系を構成したハイブリッド車両において、前記排気通路のうちの前記触媒の上流側に設けられた開閉動作可能な排気シャッタと、前記モータ走行モード中に前記スロットルバルブをアイドル開度より大きい開度まで開くと共に前記排気シャッタを閉じる制御手段とを備えた構成としたものである。
【0013】
前述したように、従来の1クラッチ方式のハイブリッド車両では、モータ走行モード中にモータの回転によって連れ回される内燃機関から排出される未燃焼の空気によって触媒が冷却されて触媒温度が低下してしまい、内燃機関の再始動後の排気浄化率が低下する。しかも、モータ走行モード中にモータの回転によって内燃機関が連れ回されるため、内燃機関の摩擦損失やポンプ損失が発生してモータの出力の一部が無駄に使われてしまい、結果的に燃費が悪化することになる。
【0014】
これに対し、請求項1に係る発明では、モータ走行モード中にスロットルバルブをアイドル開度より大きい開度まで開くことで、内燃機関のポンプ損失を低減できると共に、触媒上流側の排気シャッタを閉じることで、モータ走行モード中に内燃機関から排出された未燃焼の空気が触媒に流入することを防止又は低減して、触媒温度の低下を抑制でき、燃費向上と内燃機関の再始動後の排気浄化率向上とを実現できる。
【0015】
この場合、請求項2のように、モータ走行モード中に可変バルブ装置によって内燃機関のバルブオーバーラップ(吸気・排気バルブが両方とも開いている期間)を増大させると共に排気シャッタを閉じるようにしても良い。モータ走行モード中にバルブオーバーラップを増大させても、内燃機関のポンプ損失を低減する効果が得られる。
【0016】
また、請求項3のように、内燃機関の排気通路に排気浄化用の触媒を設け、燃料カット要求に応じて前記内燃機関への燃料噴射を停止する燃料カットを実行する制御手段を備えた内燃機関の制御装置において、前記排気通路のうちの触媒上流側に設けられた開閉動作可能な排気シャッタを備え、前記制御手段は、燃料カット要求が発生したときに、触媒上流側の排気シャッタを閉じて排気流量を絞った後に燃料カットを実行するようにすると良い。このように、燃料カット開始前に触媒上流側の排気シャッタを閉じて排気流量を絞れば、燃料カット直後に高温の触媒に流入する未燃焼の空気量(酸素量)を大幅に低減できる。これにより、燃料カット直後に触媒内で発生する反応熱を大幅に低減でき、燃料カット直後の触媒温度の上昇を抑えて触媒の劣化を抑制することができる。
【0017】
この場合、請求項4のように、燃料カット要求が発生したときに触媒上流側の排気シャッタを最小開度まで閉じ、排気シャッタの最小開度時(全閉時)の開口面積がスロットルバルブの最小開度時(全閉時)の開口面積より小さくなるように構成すると良い。このようにすれば、燃料カット中に触媒に流入する空気量を確実に減少させることができ、燃料カット中の触媒温度の低下を抑制して燃料カット復帰後の排気浄化率を向上できる。
【0018】
また、請求項5のように、内燃機関及び/又は触媒の暖機要求が発生しているときに、触媒下流側の排気シャッタを最小開度から中間的な開度までの範囲で内燃機関の運転条件に応じて制御するようにしても良い。このようにすれば、内燃機関の暖機要求や触媒の暖機要求が発生しているときに、触媒周辺に高温の排気ガスを滞留させながら排気通路内の排気圧力が高くなり過ぎないように排気シャッタの開度を調整して排気シャッタの開口から流出する排気流量を調整することが可能となり、暖機性能を確保しながら、内燃機関の排気残留率(内部EGR率)を適正範囲内に制御して、内燃機関の燃焼状態の悪化等を防止することができる。
【0019】
この場合、請求項6のように、排気通路のうちの排気シャッタの上流側に、排気熱を回収する排気熱回収手段を設けた構成としても良い。このようにすれば、内燃機関の暖機時や触媒の暖機時に排気熱を排気熱回収手段で効率良く回収することができ、燃費を向上できる。
【0020】
前述したように、近年は、内燃機関の燃費効率向上のために、内燃機関を小型化して、ポンプ損失の少ない高負荷域を多用する傾向があるが、このような高負荷域を多用する内燃機関に、吸気側と排気側の圧力差を利用して排気の一部を吸気側に還流するEGR装置を設けた場合、多用する高負荷域で、吸気側と排気側の圧力差が小さくなって十分なEGR量を確保できない可能性がある。
【0021】
この対策として、EGR装置を設けた内燃機関では、請求項7のように、排気通路のうちのEGR通路の接続口より下流側に排気シャッタを設け、要求EGR量に応じて排気シャッタの開度を制御するようにしても良い。排気シャッタの開度が小さくなるほど、排気通路内の排気圧力が高くなり、吸気側と排気側の圧力差が大きくなってEGR量が増加する。このような関係から、例えば、要求EGR量が多くなるほど、排気シャッタの開度を小さくすれば、要求EGR量が多くなるほど、吸気側と排気側の圧力差を大きくしてEGR量を増加させるという制御が可能となり、高負荷域を多用する内燃機関でも、要求EGR量に応じたEGR量を確保できる。
【0022】
上記請求項7に係る発明は、高負荷域を多用する内燃機関に適用すれば良く、例えば、過給機付きの内燃機関(請求項8)に適用しても良いし、気筒数が3気筒以下の内燃機関(請求項9)に適用しても良い。一般に、過給機付きの内燃機関や3気筒以下の小排気量の内燃機関は、高負荷域が多用されるため、上記請求項7に係る発明を適用する効果が大きい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は本発明の実施例1の1クラッチ方式のハイブリッド車両の駆動系の構成を概略的に示す図である。
【図2】図2は実施例1の排気シャッタ制御プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】図3は実施例2の1クラッチ方式のハイブリッド車両の駆動系の構成を概略的に示す図である。
【図4】図4は実施例2の排気シャッタ制御プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための形態を具体化した2つの実施例1,2を説明する。
【実施例1】
【0025】
本発明の実施例1を図1及び図2に基づいて説明する。
まず、図1に基づいて1クラッチ方式のハイブリッド車両の駆動系の構成を説明する。
【0026】
車両の駆動源としてガソリンエンジン等のエンジン11(内燃機関)とモータ12が搭載され、該エンジン11のクランク軸とモータ12の回転軸とが直結されている。モータ12の回転軸は、クラッチ13を介してCVT等の自動変速機14の入力軸と切り離し可能に連結され、該自動変速機14の出力軸が駆動軸15に連結され、その回転がディファレンシャルギヤ16を介して車軸17に伝達され、車輪18が回転駆動される。尚、モータ12は、バッテリ19から供給される電力によって駆動される。
【0027】
走行モードは、エンジン11とモータ12の両方で車両を駆動するエンジン/モータ走行モードと、エンジン11のみで車両を駆動するエンジン走行モードと、モータ12のみで車両を駆動するモータ走行モードの3種類があり、走行状態やバッテリ19の充電状態に応じて走行モードが切り換えられる。いずれの走行モードでも、エンジン11とモータ12とが一体的に回転し、モータ走行モードのときには、エンジン11の運転(燃焼)が停止されているが、モータ12の回転によってエンジン11が連れ回される。
【0028】
エンジン11の吸気通路21には、スロットルバルブ22が設けられ、このスロットルバルブ22がモータ23によって開閉駆動されてスロットルバルブ22の開度(スロットル開度)が電子制御される。
【0029】
一方、エンジン11の排気通路24には、排気浄化用の触媒25が設けられ、該排気通路24のうちの触媒25の上流側に排気シャッタ26が設けられ、該排気シャッタ26がモータ等のアクチュエータ27によって開閉駆動される。排気シャッタ26は、少なくとも、全開位置(最大開度)と全閉位置(最小開度)とに切り換えられものであれば良く、勿論、開度を3段階以上又は連続的に切り換えるものであっても良い。
【0030】
排気シャッタ26は、全閉位置でも完全に閉じることはなく、少し開いて排気の一部を排出するようになっているが、排気シャッタ26の最小開度時(全閉時)の開口面積がスロットルバルブ22の最小開度時(全閉時)の開口面積より小さくなるように構成されている。
【0031】
以上説明したハイブリッド車両の駆動系を制御する制御装置28は、1個又は複数個のマイクロコンピュータによって構成され、走行状態やバッテリ19の充電状態に応じて走行モードを切り換えると共に、その走行モードに応じて、エンジン11、モータ12、クラッチ13、自動変速機14を制御して車両の駆動状態を制御する。更に、制御装置28は、特許請求の範囲でいう制御手段として機能し、後述する図2の排気シャッタ制御プログラムを実行することで排気シャッタ26の開閉動作を制御する。
【0032】
ところで、エンジン11を運転する走行モード(エンジン/モータ走行モード又はエンジン走行モード)で運転しているときに、モータ12のみで車両を駆動するモータ走行モードに切り換える場合は、燃料カット要求が発生し、エンジン11への燃料噴射を停止する燃料カットを実行してエンジン11の運転(燃焼)を停止させる。また、エンジン11の運転中にも燃料カット要求が発生する場合がある。例えば、(1) 減速時の燃料カット、(2) エンジン回転速度が許容回転速度を越えたときの高回転時の燃料カット、(3) アイドルストップ時の燃料カット等がある。これらの燃料カット直後に高温の触媒25に多量の酸素を含む未燃焼の空気が流入すると、触媒25に吸蔵されているリッチ成分(HC,CO等)と酸素との反応が促進されて、その反応熱により触媒温度が瞬間的に上昇して、触媒25の劣化が進んでしまう。
【0033】
この対策として、本実施例1では、燃料カット要求が発生したときに、触媒25の上流側の排気シャッタ26を最小開度まで閉じて排気流量を絞った後に燃料カットを実行するようにしている。このように、燃料カット開始前に触媒25の上流側の排気シャッタ26を最小開度まで閉じて排気流量を絞れば、燃料カット直後に高温の触媒25に流入する未燃焼の空気量(酸素量)を大幅に低減できる。これにより、燃料カット直後に触媒25内で発生する反応熱を大幅に低減でき、燃料カット直後の触媒温度の上昇を抑えて触媒25の劣化を抑制することができる。
【0034】
本実施例1では、燃料カット要求が発生したときに触媒25の上流側の排気シャッタ26を最小開度まで閉じるが、排気シャッタ26の最小開度時(全閉時)の開口面積がスロットルバルブ22の最小開度時(全閉時)の開口面積より小さくなっているため、燃料カット直後に触媒25に流入する空気量を確実に減少させることができる。
【0035】
尚、燃料カット要求が発生したときに排気シャッタ26を閉じる開度は最小開度に限定されず、それより少し開いた所定開度であっても良く、或は、燃料カット要求が発生したときのエンジン回転速度、吸入空気量等のエンジン運転状態に応じて排気シャッタ26を閉じる開度を変化させるようにしても良い。
【0036】
モータ走行モード中は、モータ12の回転によってエンジン11が連れ回されて吸入空気が未燃焼のままエンジン11から排出され続けるため、モータ走行モード中にエンジン11から排出される未燃焼の空気が触媒25に流入し続けると、触媒25が冷却されて触媒温度が低下してしまい、エンジン11の再始動後の排気浄化率が低下する。しかも、モータ走行モード中にモータ12の回転によってエンジン11が連れ回されることで、エンジン11のポンプ損失やポンプ損失が発生してモータ12の出力の一部が無駄に使われてしまい、結果的に燃費が悪化することになる。
【0037】
そこで、本実施例1では、モータ走行モード中に、触媒25の上流側の排気シャッタ26を最小開度に閉じた状態に維持すると共に、スロットルバルブ22をアイドル開度より大きい所定開度まで開くようにしている。モータ走行モード中に触媒25の上流側の排気シャッタ26を最小開度に閉じた状態に維持すれば、モータ走行モード中にエンジン11から排出された未燃焼の空気が触媒25に流入する量を大幅に低減できて、触媒温度の低下を抑制でき、エンジン11の再始動後の排気浄化率を向上できる。
【0038】
尚、モータ走行モード中に排気シャッタ26を閉じる開度は、最小開度に限定されず、それより少し開いた所定開度であっても良く、或は、モータ走行モード中のエンジン回転速度、吸入空気量等のエンジン運転状態に応じて排気シャッタ26の開度を変化させるようにしても良い。
【0039】
また、本実施例1では、モータ走行モード中にスロットルバルブ22をアイドル開度より大きい所定開度まで開くことで、エンジン11のポンプ損失を低減でき、燃費を向上できる。ここで、スロットルバルブ22の開き開度は、負圧がなくなる(又は十分に小さくなる)程度の開度に設定すれば良く、従って、スロットルバルブ22を全開位置(最大開度)まで開いても良い。
【0040】
また、エンジン11のバルブタイミング、バルブリフト量、作用角のうちの少なくとも1つを変化させる可変バルブ装置が搭載されている場合は、モータ走行モード中に可変バルブ装置によってエンジン11のバルブオーバーラップ(吸気・排気バルブが両方とも開いている期間)を増大させるようにしても良い。モータ走行モード中にバルブオーバーラップを増大させても、エンジン11のポンプ損失を低減する効果が得られる。ここで、バルブオーバーラップを増大する方法は、吸気バルブタイミングを進角させたり、排気バルブタイミングを遅角させたり、リフト量や作用角を増加させれば良い。尚、モータ走行モード中にバルブオーバーラップの増大制御とスロットルバルブ22の開き制御のいずれか一方のみを実施しても良いし、両方を組み合わせて実施しても良い。
【0041】
また、モータ走行モード以外の走行モードでも、エンジン11の運転中に減速時や高回転時等に燃料カットが実行されるが、これらの燃料カット中にエンジン11から排出された未燃焼の空気が触媒25に流入し続けると、触媒25が冷却されて触媒温度が低下してしまい、燃料カット復帰後(噴射再開後)の排気浄化率が低下する。
【0042】
そこで、本実施例1では、モータ走行モード以外の走行モードで、燃料カットを実行しているときに触媒25の上流側の排気シャッタ26を最小開度に閉じた状態に維持する。これにより、燃料カット中にエンジン11から排出された未燃焼の空気が触媒25に流入する量を大幅に低減して、触媒温度の低下を抑制でき、燃料カット復帰後(噴射再開後)の排気浄化率を向上できる。燃料カット中に排気シャッタ26を最小開度より少し開いた所定開度まで閉じるようにしても良く、或は、燃料カット中のエンジン回転速度、吸入空気量等のエンジン運転状態に応じて排気シャッタ26の閉じ開度を変化させるようにしても良い。
【0043】
以上説明した本実施例1の排気シャッタ制御は、制御装置28によって図2の排気シャッタ制御プログラムに従って次のようにして実行される。
【0044】
図2の排気シャッタ制御プログラムは、制御装置28の電源オン期間中に所定周期で繰り返し実行され、特許請求の範囲でいう制御手段としての役割を果たす。本プログラムが起動されると、まず、ステップ101で、燃料カット要求が発生しているか否かを判定する。燃料カット要求が発生するタイミングは、エンジン11の運転中に、モータ走行モードへの切換要求が発生したとき、減速時、エンジン回転速度が許容回転速度を越えたとき、アイドルストップ要求が発生したときのいずれかである。上記ステップ101で、燃料カット要求が発生していないと判定されれば、ステップ107に進み、排気シャッタ26を全開位置に駆動又は維持して本プログラムを終了する。
【0045】
一方、上記ステップ101で、燃料カット要求が発生していると判定されれば、ステップ102に進み、排気シャッタ26を全閉位置(最小開度)に駆動する。この後、ステップ103に進み、排気シャッタ26の全閉動作が完了するまで待機する。
【0046】
その後、排気シャッタ26の全閉動作が完了した後に、ステップ104に進み、燃料カットを実行してエンジン11の運転(燃焼)を停止させる。燃料カット中は、排気シャッタ26を全閉位置(最小開度)に維持する。
【0047】
この後、ステップ105に進み、モータ12のみで車両を駆動するモータ走行モードであるか否かを判定し、モータ走行モードではないと判定されれば、そのまま本プログラムを終了する。
【0048】
これに対し、上記ステップ105で、モータ走行モードであると判定されれば、ステップ106に進み、スロットルバルブ22をアイドル開度より大きい所定開度まで開いて、モータ走行モード中のエンジン11のポンプ損失を低減する。
【0049】
以上説明した本実施例1では、燃料カット要求が発生したときに、触媒25の上流側の排気シャッタ26を閉じて排気流量を絞った後に燃料カットを実行するようにしたので、燃料カット直後に高温の触媒25に流入する未燃焼の空気量(酸素量)を大幅に低減できて、燃料カット直後に触媒25内で発生する反応熱を大幅に低減でき、燃料カット直後の触媒温度の上昇を抑えて触媒25の劣化を抑制することができる。
【0050】
しかも、本実施例1では、モータ12のみで車両を駆動するモータ走行モードのときに触媒25の上流側の排気シャッタ26を閉じると共に、スロットルバルブ22をアイドル開度より大きい所定開度まで開くため、モータ走行モード中にエンジン11から排出された未燃焼の空気が触媒25に流入する量を大幅に低減できて、触媒温度の低下を抑制でき、エンジン11の再始動後の排気浄化率を向上できると共に、エンジン11のポンプ損失を低減でき、燃費を向上できる。
【0051】
また、モータ走行モード以外の走行モードで、燃料カットを実行しているときに、触媒25の上流側の排気シャッタ26を閉じた状態に維持するため、燃料カット中にエンジン11から排出された未燃焼の空気が触媒25に流入する量を大幅に低減できて、触媒温度の低下を抑制でき、燃料カット復帰後(噴射再開後)の排気浄化率を向上できる。
【0052】
尚、燃料カット要求が発生したときに触媒25の上流側の排気シャッタ26を閉じて排気流量を絞った後に燃料カットを実行する技術は、図1に示すような1クラッチ方式のハイブリッド車両に限定されず、他の方式のハイブリッド車両にも適用でき、更には、車両の駆動源をエンジンのみとする車両にも適用できる。
【実施例2】
【0053】
上記実施例1では、排気通路24のうちの触媒25の上流側に排気シャッタ26を設けたが、図3及び図4に示す本発明の実施例2では、排気通路24のうちの触媒25の下流側に排気シャッタ31を設け、該排気シャッタ31をモータ等のアクチュエータ32によって開閉駆動するようにしている。
【0054】
更に、排気通路24のうちの排気シャッタ31の上流側に、排気熱を回収する排気熱回収器33(排気熱回収手段)が設けられている。この排気熱回収器33は、エンジン11の冷却水循環回路(図示せず)に設けられ、排気と冷却水との間で熱交換して冷却水の温度を上昇させる。
【0055】
エンジン11は、燃費効率の良い高負荷域を多用するエンジンであり、例えば、過給機付きのエンジン又は気筒数が3気筒以下の小排気量のエンジンであり、EGR装置34が搭載されている。EGR装置34は、排気通路24を流れる排気の一部を吸気通路21に還流させるEGR通路35と、このEGR通路35を流れるEGR量を制御するEGRバルブ36とから構成されている。排気通路24とEGR通路35との接続口37の位置は、排気シャッタ31の上流側であれば何処でも良い。図3の構成例では、EGR通路35の接続口37の位置は、排気熱回収器33の下流側であるが、排気熱回収器33の上流側であっても良く、更には、触媒25の上流側であっても良い。その他の構成は、前記実施例1と実質的に同じである。
【0056】
本実施例2では、エンジン暖機要求又は触媒暖機要求が発生しているときに、触媒25の下流側の排気シャッタ31を最小開度から中間的な開度までの範囲でエンジン運転条件(エンジン回転速度、吸入空気量等)に応じて制御して、排気通路24内の触媒25側に高温の排気ガスを滞留させながら排気通路24内の排気圧力が高くなり過ぎないように排気シャッタ31の開度を調整して排気シャッタ31の開口から流出する排気流量を調整するようにしている。
【0057】
近年は、エンジン11の燃費効率向上のために、エンジン11を小型化して、ポンプ損失の少ない高負荷域を多用する傾向があるが、このような高負荷域を多用するエンジン11に、吸気側と排気側の圧力差を利用して排気の一部を吸気側に還流するEGR装置34を設けた場合、従来構成では、多用する高負荷域で、吸気側と排気側の圧力差が小さくなって十分なEGR量を確保できない可能性がある。
【0058】
この対策として、本実施例2では、排気通路24のうちのEGR通路35の接続口37より下流側に排気シャッタ31を設け、要求EGR量に応じて排気シャッタ31の開度を制御するようにしている。一般に、排気シャッタ26の開度が小さくなるほど、排気通路24内の排気圧力が高くなり、吸気側と排気側の圧力差が大きくなってEGR量が増加する。このような関係から、例えば、要求EGR量が多くなるほど、排気シャッタ31の開度を小さくすれば、要求EGR量が多くなるほど、吸気側と排気側の圧力差を大きくしてEGR量を増加させるという制御が可能となり、高負荷域を多用するエンジン11でも、要求EGR量に応じたEGR量を確保できる。
【0059】
以上説明した本実施例2の排気シャッタ制御は、制御装置28によって図4の排気シャッタ制御プログラムに従って次のようにして実行される。
【0060】
図4の排気シャッタ制御プログラムは、制御装置28の電源オン期間中に所定周期で繰り返し実行され、特許請求の範囲でいう制御手段としての役割を果たす。本プログラムが起動されると、まず、ステップ201で、触媒暖機要求が発生しているか否かを判定し、触媒暖機要求が発生していると判定されれば、ステップ204に進み、排気シャッタ26を小開度(又は最小開度)に駆動する。この際、排気シャッタ26を閉じる開度をエンジン運転条件(エンジン回転速度、吸入空気量等)に応じてマップ等により変化させても良い。
【0061】
一方、上記ステップ201で、触媒暖機要求が発生していないと判定されれば、ステップ202に進み、エンジン暖機要求が発生しているか否かを判定し、エンジン暖機要求が発生していると判定されれば、ステップ205に進み、排気シャッタ31の目標開度を、調整可能範囲の中間的な領域でその時点のエンジン運転条件(エンジン回転速度、吸入空気量等)に応じてマップ等により設定した後、ステップ207に進み、排気シャッタ31を上記ステップ205で設定した目標開度に駆動する。
【0062】
上述したステップ201と202で、いずれも「No」と判定された場合、つまり触媒暖機要求とエンジン暖機要求のどちらも発生していないと判定された場合は、ステップ203に進み、EGR要求が発生しているか否かを発生し、EGR要求が発生していると判定されれば、ステップ206に進み、排気シャッタ31の目標開度を、調整可能範囲の中間的な領域で要求EGR量に応じてマップ等により設定した後、ステップ207に進み、排気シャッタ31を上記ステップ206で設定した目標開度に駆動する。
【0063】
これに対し、上記ステップ203で、EGR要求が発生していないと判定されれば、ステップ206に進み、排気シャッタ26を全開位置(最大開度)に駆動する。
【0064】
以上説明した本実施例2では、エンジン暖機要求が発生しているときに、触媒25の下流側の排気シャッタ31を最小開度から中間的な開度までの範囲でエンジン運転条件(エンジン回転速度、吸入空気量等)に応じて制御するようにしているため、エンジン暖機要求が発生しているときに、排気通路24内の触媒25側に高温の排気ガスを滞留させながら排気通路24内の排気圧力が高くなり過ぎないように排気シャッタ31の開度を調整して排気シャッタ31の開口から流出する排気流量を調整することが可能となり、暖機性能を確保しながら、エンジン11の排気残留率(内部EGR率)を適正範囲内に制御して、エンジン11の燃焼状態の悪化等を防止することができる。
【0065】
しかも、本実施例2では、排気通路24のうちの排気シャッタ31の上流側に、排気熱を回収する排気熱回収器33を設けているため、暖機時に排気熱を排気熱回収器33で効率良く回収することができ、燃費を向上できる。
【0066】
また、本実施例2では、排気通路24のうちのEGR通路35の接続口37より下流側に排気シャッタ31を設け、要求EGR量に応じて排気シャッタ31の開度を制御するようにしているため、燃費効率が高い高負荷域を多用するエンジン11でも、要求EGR量に応じて吸気側と排気側の圧力差を大きくしてEGR量を増加させるという制御が可能となり、要求EGR量に応じたEGR量を確保できる。
【0067】
尚、EGR通路35の接続口37より下流側に設けた排気シャッタ31の開度を要求EGR量に応じて制御する技術は、触媒25の上流側に排気シャッタを設けた構成のものにも適用して実施できる。
【0068】
また、本実施例2で説明した技術は、図1に示すような1クラッチ方式のハイブリッド車両に限定されず、他の方式のハイブリッド車両にも適用でき、更には、車両の駆動源としてエンジンのみを用いる車両にも適用できる。
【0069】
その他、本発明は、触媒25の上流側と下流側にそれぞれ排気シャッタを設けて、上記実施例1の技術と実施例2の技術を組み合わせて実施しても良い等、種々変更して実施できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0070】
11…エンジン(内燃機関)、12…モータ、13…クラッチ、14…自動変速機、15…駆動軸、18…車輪、21…吸気通路、22…スロットルバルブ、23…モータ、24…排気通路、25…排気浄化用の触媒、26…排気シャッタ、27…アクチュエータ、28…制御装置(制御手段)、31…排気シャッタ、32…アクチュエータ、33…排気熱回収器(排気熱回収手段)、34…EGR装置、35…EGR通路、36…EGRバルブ、37…接続口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の駆動源として内燃機関とモータとを併用し、前記内燃機関の吸気通路にスロットルバルブを設ける一方、該内燃機関の排気通路に排気浄化用の触媒を設け、前記モータのみで車両を駆動するモータ走行モードのときに該モータの回転によって前記内燃機関が連れ回されるように前記車両の駆動系を構成したハイブリッド車両において、
前記排気通路のうちの前記触媒の上流側に設けられた開閉動作可能な排気シャッタと、 前記モータ走行モード中に前記スロットルバルブをアイドル開度より大きい開度まで開くと共に前記排気シャッタを閉じる制御手段と
を備えていることを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項2】
車両の駆動源として内燃機関とモータとを併用し、前記内燃機関のバルブオーバーラップを変化させる可変バルブ装置を設ける一方、排気通路に排気浄化用の触媒を設け、前記モータのみで車両を駆動するモータ走行モードのときに該モータの回転によって前記内燃機関が連れ回されるように前記車両の駆動系を構成したハイブリッド車両において、
前記排気通路のうちの前記触媒の上流側に設けられた開閉動作可能な排気シャッタと、 前記モータ走行モード中に前記可変バルブ装置によって前記内燃機関のバルブオーバーラップを増大させると共に前記排気シャッタを閉じる制御手段と
を備えていることを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項3】
内燃機関の排気通路に排気浄化用の触媒を設け、燃料カット要求に応じて前記内燃機関への燃料噴射を停止する燃料カットを実行する制御手段を備えた内燃機関の制御装置において、
前記排気通路のうちの前記触媒の上流側に設けられた開閉動作可能な排気シャッタを備え、
前記制御手段は、燃料カット要求が発生したときに前記排気シャッタを閉じて排気流量を絞った後に燃料カットを実行することを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項4】
前記内燃機関の吸気通路にスロットルバルブが設けられ、
前記制御手段は、燃料カット要求が発生したときに前記排気シャッタを最小開度まで閉じ、
前記排気シャッタの最小開度時の開口面積が前記スロットルバルブの最小開度時の開口面積より小さくなるように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項5】
内燃機関の排気通路に排気浄化用の触媒を設けた内燃機関の制御装置において、
前記排気通路のうちの前記触媒の下流側に設けられた開閉動作可能な排気シャッタと、 前記内燃機関及び/又は前記触媒の暖機要求が発生しているときに前記排気シャッタを最小開度から中間的な開度までの範囲で該内燃機関の運転条件に応じて制御する制御手段と
を備えていることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項6】
前記排気通路のうちの前記排気シャッタの上流側に、排気熱を回収する排気熱回収手段が設けられていることを特徴とする請求項5に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項7】
内燃機関の排気通路を流れる排気の一部を該内燃機関の吸気通路に還流させるEGR通路を設けた内燃機関の制御装置において、
前記排気通路のうちの前記EGR通路の接続口より下流側に設けられた開閉動作可能な排気シャッタと、
要求EGR量に応じて前記排気シャッタの開度を制御する制御手段と
を備えていることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項8】
前記内燃機関は、過給機付きの内燃機関であることを特徴とする請求項7に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項9】
前記内燃機関は、気筒数が3気筒以下の内燃機関であることを特徴とする請求項7又は8に記載の内燃機関の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−144205(P2012−144205A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−5603(P2011−5603)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】