説明

バッテリー容量推定装置、その方法及びプログラム

【課題】移動経路で消費されるバッテリー容量を高精度に推定できるバッテリー容量推定装置、その方法及びプログラムを提供すること。
【解決手段】バッテリー容量推定装置は、地図情報を記憶する記憶手段と、地図情報における障害物の混雑の度合いを示す混雑度に基づいて、地図情報に対して安全率を設定する安全率設定手段と、記憶手段に記憶された地図情報において、現在位置から目的位置までの移動経路を算出する移動経路算出手段と、移動経路算出手段により算出された移動経路と、安全率設定手段により設定された地図情報の安全率と、に基づいて、移動経路で消費されるバッテリー容量を推定する容量推定手段と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両やロボットなどが移動経路を移動した際に消費するバッテリー容量を高精度に推定するバッテリー容量推定装置、その方法及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在位置から目的位置までの移動経路を探索し、その移動経路の走行に消費されるバッテリー容量を算出し、検出されたバッテリー残量と目的位置までの走行に要するバッテリー容量との差が所定閾値以下になると警告を行うロボットが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−285547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に示すロボットにおいては、例えば、移動経路の人や物などの混雑の度合いを十分に考慮していない。一般に、混雑の度合いが高い領域では、人や物などに対する回避動作が頻繁に行われ、通常よりバッテリー容量の消費量が大きくなる。一方、混雑の度合いが低い領域では、人や物などに対する回避動作はあまり行われず、バッテリー容量の消費量は低く抑えられる。このため、上記ロボットにおいては、移動経路で消費されるバッテリー容量の推定に誤差が生じる虞がある。
【0005】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、移動経路で消費されるバッテリー容量を高精度に推定できるバッテリー容量推定装置、その方法及びプログラムを提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明の一態様は、地図情報を記憶する記憶手段と、前記地図情報における障害物の混雑の度合いを示す混雑度に基づいて、該地図情報に対して安全率を設定する安全率設定手段と、前記記憶手段に記憶された前記地図情報において、現在位置から目的位置までの移動経路を算出する移動経路算出手段と、前記移動経路算出手段により算出された前記移動経路と、前記安全率設定手段により設定された前記地図情報の安全率と、に基づいて、前記移動経路で消費されるバッテリー容量を推定する容量推定手段と、を備える、ことを特徴とするバッテリー容量推定装置である。
【0007】
この一態様において、前記地図情報は複数の走行領域に分割されており、前記安全率設定手段は、前記各走行領域における障害物の混雑度に基づいて、該各走行領域に対して安全率を夫々設定してもよい。
【0008】
この一態様において、前記容量推定手段は、前記各走行領域内の移動経路において標準的に消費されるバッテリー容量に、前記安全率設定手段により設定された前記各走行領域に対応する前記安全率を夫々乗算して、前記移動経路で消費されるバッテリー容量を算出してもよい。
【0009】
また、この一態様において、前記安全率設定手段は、前記各走行領域に対して、走行する時間帯毎、年月日毎、曜日毎、天候毎、又はコンディション毎に前記安全率を夫々設定してもよい。
【0010】
さらに、この一態様において、前記各走行領域に存在する障害物を検出する障害物検出手段を更に備え、前記安全率設定手段は、前記障害物検出手段により検出された前記各走行領域の障害物に基づいて、該各走行領域に対して安全率を夫々設定してもよい。
【0011】
さらにまた、この一態様において、前記安全率設定手段は、前記障害物検出手段により検出された前記各走行領域の障害物の数及び/又は運動状態に基づいて、該各走行領域に対して安全率を夫々設定してもよい。
【0012】
さらにまた、この一態様において、前記安全率設定手段は、前記障害物検出手段により検出された前記障害物の数が増加するに従って、又は障害物の運動量が増加するに従って、前記安全率を高く設定してもよい。
【0013】
なお、この一態様において、前記容量推定手段により推定された前記バッテリー容量が所定量以上となるとき、警告を行う警告手段を更に備えていてもよい。
【0014】
他方、上記目的を達成するための本発明の一態様は、地図情報における障害物の混雑の度合いを示す混雑度に基づいて、該地図情報に対して安全率を設定する工程と、前記地図情報において、現在位置から目的位置までの移動経路を算出する工程と、前記算出された移動経路と、前記設定された地図情報の安全率と、に基づいて、前記移動経路で消費されるバッテリー容量を推定する工程と、を含む、ことを特徴とするバッテリー容量推定方法であってもよい。
【0015】
また、上記目的を達成するための本発明の一態様は、地図情報における障害物の混雑の度合いを示す混雑度に基づいて、該地図情報に対して安全率を設定する処理と、前記地図情報において、現在位置から目的位置までの移動経路を算出する処理と、前記算出された移動経路と、前記設定された地図情報の安全率と、に基づいて、前記移動経路で消費されるバッテリー容量を推定する処理と、をコンピュータに実行させるプログラムであってもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、移動経路で消費されるバッテリー容量を高精度に推定できるバッテリー容量推定装置、その方法及びプログラムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態1に係る移動体の概略を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係るバッテリー容量推定装置の概略的なシステム構成を示すブロック図である。
【図3】複数の走行領域に分割された地図情報の一例を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係るバッテリー容量推定装置の処理フローの一例を示すフローチャートである。
【図5】(a)朝時間帯に設定された各走行領域の安全率の一例を示す図である。(b)昼時間帯に設定された各走行領域の安全率の一例を示す図である。(c)夜時間帯に設定された各走行領域の安全率の一例を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態2に係るバッテリー容量推定装置の処理フローの一例を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施の形態3に係るバッテリー容量推定装置の概略的なシステム構成を示すブロック図である。
【図8】格子状に分割された地図情報における各走行領域の一例を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態3に係るバッテリー容量推定装置の処理フローの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
実施の形態1.
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。本実施の形態1に係るバッテリー容量推定装置1は、例えば、車両やロボットなどの移動体100が移動経路を走行した際に消費するバッテリー容量を高精度に推定できるものである。移動体100は、例えば、図1に示す如く、移動体本体101と、自律的移動を行うためのレーザレンジセンサやカメラなどの障害物センサ102と、バッテリー103と、バッテリー103から電力の供給を受けて回転駆動するモータ(不図示)と、モータにより駆動される一対の車輪104と、を有する構成であるが、これに限らず、移動可能な任意の構成でよい。
【0019】
図2は、本発明の実施の形態1に係るバッテリー容量推定装置の概略的なシステム構成を示すブロック図である。バッテリー容量推定装置1は、記憶部2と、安全率設定部3と、移動経路算出部4と、容量推定部5と、を備えている。
【0020】
ここで、バッテリー容量推定装置1は、例えば、制御処理、演算処理等を行うCPU(Central Processing Unit)と、CPUによって実行される制御プログラム、演算プログラム等が記憶されたROM(Read Only Memory)と、処理データ等を記憶するRAM(Random Access Memory)と、を有する、マイクロコンピュータを中心にハードウェア構成されている。
【0021】
記憶部2は、記憶手段の一具体例であり、図3に示すような複数の走行領域S1〜S4に分割された地図情報などの任意の情報を記憶することができる。また、記憶部2は、例えば、磁気ディスク装置、光ディスク装置、RAM等により構成されている。なお、図3に示す地図情報の各走行領域S1〜S4は一例であり、分割数や分割形状は任意でよく、任意の分割方法が適用可能である。
【0022】
安全率設定部3は、安全率設定手段の一具体例であり、記憶部2に記憶された地図情報を読み込み、読み込んだ地図情報の各走行領域S1〜S4に対して安全率を夫々設定する。また、安全率設定部3は、各走行領域S1〜S4における障害物の混雑の度合いを示す混雑度に基づいて、各走行領域S1〜S4に対して安全率を設定する。
【0023】
ここで、混雑度とは、例えば、人や物などの移動体100の走行を妨げる障害物の混雑度合い(単位領域内に占める障害物の数、障害物の密度)を指し、安全率とはその領域を安全に走行するための安全係数を指す。一般に、混雑度が増加するに従って安全率も増加する。
【0024】
例えば、地図情報が病院内である場合を想定する(図3)。この場合、安全率設定部3は、ロビー、メイン廊下などの人や物等の障害物の往来が激しい走行領域S1に対して、混雑度が高いため高い安全率α1を設定する。また、安全率設定部3は、通常の廊下などの人や物等の障害物が時折存在する走行領域S2に対して、混雑度が中位であるため中位の安全率α2(α2<α1)を設定する。さらに、安全率設定部3は、病室内などの人や物等の障害物がほとんど存在しない走行領域S3に対して、混雑度が低いため低い安全率α3(α3<α2<α1)を設定する。
【0025】
なお、安全率設定部3は、例えば、各走行領域の混雑度と、予め記憶部2に設定された混雑度と安全率との関係を示すマップ情報と、を用いて、各走行領域の安全率を夫々設定する。ここで、マップ情報は、例えば、混雑度が増加するに従って安全率も増加し、逆に、混雑度が減少するに従って安全率も減少するように設定されているが、これに限らず、ユーザが任意に設定変更できる構成となっている。
【0026】
また、各走行領域の混雑度は、例えば、予め記憶部2に設定されており、安全率設定部3によって記憶部2から読み込まれる構成であってもよく、また、ユーザが入力装置を介して入力する構成であってよく、さらに、検出センサ等を用いて自動検出する構成であってもよい。安全率設定部3は、設定した各走行領域の安全率を容量推定部5に対して出力する。
【0027】
移動経路算出部4は、移動経路算出手段の一具体例であり、記憶部2に記憶された地図情報において、現在位置Pから設定された目的位置Gまでの移動体100の移動経路Lを算出する(図3)。移動経路算出部4は、周知の経路探索アルゴリズムを用いて記憶部2に記憶された地図情報に基づいて、例えば、現在位置Pから目的位置Gまでの最短経路を移動経路Lとして算出する。移動経路算出部4は、算出した移動体100の移動経路Lを容量推定部5に対して出力する。
【0028】
容量推定部5は、容量推定手段の一具体例であり、移動経路算出部4により算出された移動体100の移動経路と、安全率設定部3により設定された各走行領域の安全率と、に基づいて、移動経路で消費されるバッテリー容量を推定する。例えば、容量推定部5は、各走行領域内の移動経路において標準的に消費されるバッテリー容量に、安全率設定部3により設定された各走行領域に対応する安全率を夫々乗算して、移動経路で消費されるバッテリー容量を算出する。
【0029】
より具体的に、図3に示すように移動体100が現在位置(走行領域S1)から走行領域S2を経由して目的位置(走行領域S3)までの移動経路Lを走行する場合を想定する。この場合、容量推定部5は、下記(1)式を用いて、移動経路で消費されるバッテリー容量V(%)を算出する。
【0030】
バッテリー容量V(%)={((走行領域S1内の経路長X1(m))×安全率α1)+((走行領域S2内の経路長X2(m))×安全率α2)+((走行領域S3内の経路長X3(m))×安全率α3)}×(1m移動に標準的に消費されるバッテリー容量(%)) (1)式
【0031】
なお、上記(1)式において、経路長X1+経路長X2+経路長X3=全経路長Xとする。また、上記移動経路で消費されるバッテリー容量Vの算出方法は一例であり、任意の算出方法を適用することができる。
【0032】
ところで、移動体の移動経路に存在する人や物など障害物の混雑度によって、その移動体の走行に消費されるバッテリー容量は大きく影響されるため、移動経路で消費されるバッテリー容量の推定に誤差が生じる虞がある。これは、混雑度が高い走行領域において、移動体は人や物など障害物の回避動作を頻繁に行い、一方、混雑度が低い走行領域において、人や物などの障害物の回避動作をあまり行わないためである。
【0033】
そこで、本実施の形態1に係るバッテリー容量推定装置1において、上述の如く、容量推定部5は、移動経路算出部4により算出された移動体100の移動経路と、安全率設定部3により設定された各走行領域における障害物の混雑度に応じた安全率と、に基づいて、移動経路で消費されるバッテリー容量を推定する。これにより、各走行領域の混雑度を考慮して、移動経路で消費されるバッテリー容量を高精度に推定することができる。
【0034】
次に、本実施の形態1に係るバッテリー容量推定装置の推定方法について、詳細に説明する。図4は、本発明の実施の形態1に係るバッテリー容量推定装置の処理フローの一例を示すフローチャートである。
【0035】
安全率設定部3は、記憶部2から予め複数の走行領域に分割された地図情報と、各走行領域の混雑度と、を読み込み(ステップS101)、読み込んだ地図情報の各走行領域に対して、各走行領域の混雑度に応じた安全率を夫々設定し(ステップS102)、設定した各走行領域の安全率を容量推定部5に対して出力する。なお、各走行領域の混雑度は、地図情報に含まれる構成であってもよい。その場合、安全率設定部3は、記憶部2から地図情報のみを読み込む。
【0036】
また、移動経路算出部4は、記憶部2に記憶された地図情報において、現在位置から設定された目的位置までの移動体100の移動経路を算出し(ステップS103)、算出した移動体100の移動経路を容量推定部5に対して出力する。なお、本(ステップS103)は、上記(ステップS101)及び(ステップS102)と同時又は先に処理されてもよい。
【0037】
容量推定部5は、移動経路算出部4により算出された移動体100の移動経路と、安全率設定部3により設定された各走行領域の安全率と、に基づいて、移動経路で消費されるバッテリー容量を推定する(ステップS104)。
【0038】
以上、本実施の形態1に係るバッテリー容量推定装置1において、容量推定部5は、移動経路算出部4により算出された移動体100の移動経路と、安全率設定部3により設定された各走行領域における障害物の混雑度に応じた安全率と、に基づいて、移動経路で消費されるバッテリー容量を推定する。これにより、各走行領域の混雑度を考慮して、移動経路で消費されるバッテリー容量を高精度に推定することができる。また、上述のように移動経路で消費されるバッテリー容量を高精度に推定することで、移動体100は現在位置から目的位置まで安全かつ確実に移動することが可能となり、そのタスクを確実に実行することが可能となる。
【0039】
なお、上記実施の形態1において、地図情報には1つの走行領域が形成される構成でもよく、また、安全率及びバッテリー容量Vが適宜(リアルタイムに)更新される構成でもよい。
【0040】
実施の形態2.
本発明の実施の形態2に係るバッテリー容量推定装置1において、安全率設定部3は、各走行領域に対して、移動体100が走行する時間帯毎に安全率を設定する。例えば、図5(a)に示す如く、安全率設定部3は、移動体100の走行時間帯が朝時間帯(6:00〜10:00)の場合に、走行領域S1に対して安全率α3を設定し、走行領域S2に対して安全率α1を設定し、走行領域S3に対して安全率α3を設定する。また、図5(b)に示す如く、安全率設定部3は、移動体100の走行時間帯が昼時間帯(10:00〜20:00)の場合に、走行領域S1に対して安全率α1を設定し、走行領域S2に対して安全率α1を設定し、走行領域S3に対して安全率α3を設定する。さらに、図5(c)に示す如く、安全率設定部3は、移動体100の走行時間帯が夜時間帯(20:00〜6:00)の場合に、走行領域S1に対して安全率α3を設定し、走行領域S2に対して安全率α3を設定し、走行領域S3に対して安全率α2を設定する。
【0041】
なお、上述の各走行領域に対する安全率の設定方法は一例であり、本実施の形態2において、ユーザが安全率及び走行領域を任意に設定変更できる構成となっている。また、安全率設定部3は、移動体100の走行時間を、例えば、移動体100に搭載された時計装置からの信号あるいは時刻情報を含む外部信号を受信して、取得することができる。
【0042】
上述したように、通常、時間帯によって各走行領域の混雑度は刻々と変化するため、移動体100の実際の走行時刻における混雑度を考慮して各走行領域の安全率を最適に設定することで、移動経路で消費されるバッテリー容量をより高精度に推定することができる。
【0043】
なお、本実施の形態2において、他の構成は上記実施の形態1と略同一であるため、同一部分に同一符号を付して詳細な説明は省略する。図6は、本発明の実施の形態2に係るバッテリー容量推定装置の処理フローの一例を示すフローチャートである。
【0044】
安全率設定部3は、記憶部2から予め複数の走行領域に分割された地図情報と、時間帯毎の各走行領域の混雑度と、を読み込む(ステップS201)。次に、安全率設定部3は、移動体100の走行時間を移動体100の時計装置から取得する(ステップS202)。
【0045】
その後、安全率設定部3は、地図情報と、時間帯毎の各走行領域の混雑度と、移動体100の走行時間と、に基づいて、各走行領域に対して安全率を夫々設定し(ステップS203)、設定した各走行領域の安全率を容量推定部5に対して出力する。
【0046】
移動経路算出部4は、記憶部2に記憶された地図情報において、現在位置から設定された目的位置までの移動体100の移動経路を算出し(ステップS204)、算出した移動体100の移動経路を容量推定部5に対して出力する。なお、本(ステップS204)は、上記(ステップS201)乃至(ステップS203)と同時に又は先に処理されてもよい。
【0047】
容量推定部5は、移動経路算出部4により算出された移動体100の移動経路と、安全率設定部3により設定された各走行領域の安全率と、に基づいて、移動経路で消費されるバッテリー容量を推定する(ステップS205)
【0048】
以上、本実施の形態2に係るバッテリー容量推定装置1によれば、移動体100の実際の走行時刻における走行経路の混雑度を考慮して、各走行領域の安全率を最適に設定することができる。これにより、移動経路で消費されるバッテリー容量をより高精度に推定することができる。
【0049】
なお、上記実施の形態2において、安全率設定部3は、各走行領域に対して、移動体100が走行する時間帯毎に安全率を設定しているが、これに限らず、例えば、移動体100が走行する年月日毎、曜日毎、天候毎、コンディション毎(気温毎、湿度毎、不快指数毎など)等、に設定してもよい。これにより、移動体100が実際に走行する時の年月日、曜日、天候、コンディション等に応じた混雑度を考慮して、各走行領域の安全率を最適に設定することができ、移動経路で消費されるバッテリー容量をより高精度に推定することができる。
【0050】
実施の形態3.
本発明の実施の形態3に係るバッテリー容量推定装置1は、各走行領域に実際に存在する障害物を検出する障害物センサ6を更に備えている(図7)。障害物センサ6は、検出した各走行領域の障害物を安全率設定部3に対して出力する。安全率設定部3は、障害物センサ6により検出された走行領域毎の障害物の数(混雑度)に基づいて、各走行領域に対して安全率を夫々設定する。
【0051】
ここで、地図情報は、例えば、格子状に分割されており、各走行領域は複数又は単一の格子状エリアから構成されている(図8)。安全率設定部3は、格子状エリアからなる走行領域毎にカウントされた障害物の数に応じて、各走行領域に対して安全率を夫々設定する。このように、各走行領域を格子状エリアで構成することで、各走行領域を簡易に設定しまた変更することができる。
【0052】
障害物センサ6は、障害物検出手段の一具体例であり、例えば、移動体100に設けられたレーザレンジセンサ、超音波センサ、レーダセンサ、カメラ、又はこれらの組合せにより構成されている。
【0053】
安全率設定部3は、例えば、障害物センサ6により各走行領域内で検出された障害物の数が5個未満のとき、その走行領域に安全率α3を設定する。また、安全率設定部3は、例えば、障害物センサ6により各走行領域内で検出された障害物の数が5個以上10個未満のとき、その走行領域に安全率α2(α3<α2)を設定する。さらに、安全率設定部3は、例えば、障害物センサ6により各走行領域内で検出された障害物の数が10個以上のとき、その走行領域に安全率α1(α3<α2<α1)を設定する。
【0054】
なお、本実施の形態3において、他の構成は上記実施の形態1及び2と略同一であるため、同一部分に同一符号を付して詳細な説明は省略する。図9は、本発明の実施の形態3に係るバッテリー容量推定装置の処理フローの一例を示すフローチャートである。
【0055】
まず、移動体100は各走行領域の障害物を検出するために各走行領域を走行し、障害物センサ6は各走行領域内に実際に存在する障害物を検出し(ステップS301)、検出した各走行領域の障害物を記憶部2に記憶させる(ステップS302)。なお、障害物センサ6は、各走行領域内に存在する障害物を安全率設定部3に対して出力してもよい。
【0056】
例えば、移動体100がタスクの実行を開始すると、安全率設定部3は、記憶部2から複数の走行領域に予め分割された地図情報と、障害物センサ102により検出された各走行領域の障害物の数と、を読み込み(ステップS303)。そして、安全率設定部3は、読み込んだ地図情報と、各走行領域の障害物の数と、に基づいて、各走行領域に対して安全率を夫々設定し(ステップS304)、設定した各走行領域の安全率を容量推定部5に対して出力する。
【0057】
また、移動経路算出部4は、記憶部2に記憶された地図情報において、現在位置から設定された目的位置までの移動体100の移動経路を算出し(ステップS305)、算出した移動体100の移動経路を容量推定部5に対して出力する。なお、本(ステップS305)は、上記(ステップS301)乃至(ステップS304)と同時に又は先に処理されてもよい。
【0058】
容量推定部5は、移動経路算出部4により算出された移動体100の移動経路と、安全率設定部3により設定された各走行領域の安全率と、に基づいて、移動経路で消費されるバッテリー容量を推定する(ステップS306)。
【0059】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【0060】
例えば、上記実施の形態3において、安全率設定部3は、障害物センサ6により検出された各走行領域の障害物の運動量に応じて、各走行領域の安全率を増減させてもよい。安全率設定部3は、例えば、障害物センサ6により検出された各走行領域の障害物の運動量が増加するに従って、各走行領域の安全率を増加させてもよい。これは、一般に障害物の運動量が増加するに従って、移動体の回避動作が増加するからである。これにより、各走行領域の安全率をより最適に設定することができる。
【0061】
また、上記実施の形態3において、安全率設定部3は、障害物センサ6により検出された各走行領域の障害物の特性に応じて、各走行領域の安全率を増減させてもよい。安全率設定部3は、例えば、障害物センサ6により検出された各走行領域の人の年齢が高年齢又は低年齢である場合に、各走行領域の安全率を増加させてもよい。これは、障害物が高年齢又は低年齢の人である場合に、移動体100は、より余裕をもって回避動作を行う必要があるためである。これにより、各走行領域の安全率をより最適に設定することができる。
【0062】
さらに、上記実施の形態において、容量推定部5により推定された移動経路で消費されるバッテリー容量が所定量以上となり、バッテリーが容量不足(バッテリー切れ)になると判断されたとき、その旨を警告装置7により警告してもよい(図7)。これにより、ユーザはバッテリーの容量不足を確実に認識することができる。
【0063】
なお、警告装置7は、警告手段の一具体例であり、例えば、警告音を発生するスピーカ、警告灯を点灯/点滅させるライト、搭乗者が接触する部分(ハンドル、ステップ、シートなど)に警告振動を発生させる振動装置、警告表示を行う表示装置、管理者等が監視する監視装置に対して警告信号を送信する通信装置、などが含まれる。
【0064】
また、上記実施の形態において、図4、6、及び9の処理を、CPUにコンピュータプログラムを実行させることにより実現することも可能である。この場合、コンピュータプログラムは、記録媒体に記録して提供することも可能であり、また、インターネットその他の通信媒体を介して伝送することにより提供することも可能である。
【0065】
さらに、記憶媒体には、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD、ROMカートリッジ、バッテリバックアップ付きRAMメモリカートリッジ、フラッシュメモリカートリッジ、不揮発性RAMカートリッジ等が含まれる。さらにまた、通信媒体には、電話回線等の有線通信媒体、マイクロ波回線等の無線通信媒体等が含まれる。
【符号の説明】
【0066】
1 バッテリー容量推定装置
2 記憶部
3 安全率設定部
4 移動経路算出部
5 容量推定部
6 障害物センサ
7 警告装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地図情報を記憶する記憶手段と、
前記地図情報における障害物の混雑の度合いを示す混雑度に基づいて、該地図情報に対して安全率を設定する安全率設定手段と、
前記記憶手段に記憶された前記地図情報において、現在位置から目的位置までの移動経路を算出する移動経路算出手段と、
前記移動経路算出手段により算出された前記移動経路と、前記安全率設定手段により設定された前記地図情報の安全率と、に基づいて、前記移動経路で消費されるバッテリー容量を推定する容量推定手段と、を備える、ことを特徴とするバッテリー容量推定装置。
【請求項2】
請求項1記載のバッテリー容量推定装置であって、
前記地図情報は複数の走行領域に分割されており、
前記安全率設定手段は、前記各走行領域における障害物の混雑度に基づいて、該各走行領域に対して安全率を夫々設定する、ことを特徴とするバッテリー容量推定装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載のバッテリー容量推定装置であって、
前記容量推定手段は、前記各走行領域内の移動経路において標準的に消費されるバッテリー容量に、前記安全率設定手段により設定された前記各走行領域に対応する前記安全率を夫々乗算して、前記移動経路で消費されるバッテリー容量を算出する、ことを特徴とするバッテリー容量推定装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のうちいずれか1項記載のバッテリー容量推定装置であって、
前記安全率設定手段は、前記各走行領域に対して、走行する時間帯毎、年月日毎、曜日毎、天候毎、又はコンディション毎に前記安全率を夫々設定する、ことを特徴とするバッテリー容量推定装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のうちいずれか1項記載のバッテリー容量推定装置であって、
前記各走行領域に存在する障害物を検出する障害物検出手段を更に備え、
前記安全率設定手段は、前記障害物検出手段により検出された前記各走行領域の障害物に基づいて、該各走行領域に対して安全率を夫々設定する、ことを特徴とするバッテリー容量推定装置。
【請求項6】
請求項5記載のバッテリー容量推定装置であって、
前記安全率設定手段は、前記障害物検出手段により検出された前記各走行領域の障害物の数及び/又は運動状態に基づいて、該各走行領域に対して安全率を夫々設定する、ことを特徴とするバッテリー容量推定装置。
【請求項7】
請求項6記載のバッテリー容量推定装置であって、
前記安全率設定手段は、前記障害物検出手段により検出された前記障害物の数が増加するに従って、又は障害物の運動量が増加するに従って、前記安全率を高く設定する、ことを特徴とするバッテリー容量推定装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のうちいずれか1項記載のバッテリー容量推定装置であって、
前記容量推定手段により推定された前記バッテリー容量が所定量以上となるとき、警告を行う警告手段を更に備える、ことを特徴とするバッテリー容量推定装置。
【請求項9】
地図情報における障害物の混雑の度合いを示す混雑度に基づいて、該地図情報に対して安全率を設定する工程と、
前記地図情報において、現在位置から目的位置までの移動経路を算出する工程と、
前記算出された移動経路と、前記設定された地図情報の安全率と、に基づいて、前記移動経路で消費されるバッテリー容量を推定する工程と、を含む、ことを特徴とするバッテリー容量推定方法。
【請求項10】
地図情報における障害物の混雑の度合いを示す混雑度に基づいて、該地図情報に対して安全率を設定する処理と、
前記地図情報において、現在位置から目的位置までの移動経路を算出する処理と、
前記算出された移動経路と、前記設定された地図情報の安全率と、に基づいて、前記移動経路で消費されるバッテリー容量を推定する処理と、をコンピュータに実行させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−203773(P2011−203773A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−67642(P2010−67642)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】