パターン形成方法及びモールド
【課題】既存のリソグラフィ−技術よりも小さい寸法を有した様々な形状のパターンが形成できるようにする。
【解決手段】ガイドパターン702が形成された中性層801上に、例えば2種類のブロック鎖A及びブロック鎖Bから構成されたブロック共重合体(ジブロック共重合体)よりなるブロック共重合体薄膜703を形成する。中性層801は、表面自由エネルギーが、用いるブロック共重合体の各ブロック鎖の表面自由エネルギ−の範囲内に存在する材料から構成する。また、ブロック鎖Bは、ガイドパターン702の表面への親和性が高く、ブロック共重合体薄膜703をミクロ相分離させた場合、ブロック鎖Bが選択的にガイドパターン702の表面に接触するものとする。
【解決手段】ガイドパターン702が形成された中性層801上に、例えば2種類のブロック鎖A及びブロック鎖Bから構成されたブロック共重合体(ジブロック共重合体)よりなるブロック共重合体薄膜703を形成する。中性層801は、表面自由エネルギーが、用いるブロック共重合体の各ブロック鎖の表面自由エネルギ−の範囲内に存在する材料から構成する。また、ブロック鎖Bは、ガイドパターン702の表面への親和性が高く、ブロック共重合体薄膜703をミクロ相分離させた場合、ブロック鎖Bが選択的にガイドパターン702の表面に接触するものとする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミクロ相分離構造のより精密な配向制御を行うことでより微細なパターンを形成するパターン形成方法及びこのパターン形成方法により形成されたモールドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、大規模集積回路(LSI)のさらなる微細化に伴い、大きさが50nmを切るような構造体を加工する技術が実現しつつある。これらの加工技術の解像性や精度は、主にリソグラフィー技術により決定付けられる。リソグラフィー技術とは、少なくとも次の工程を有するものである。被加工基板の上に感光性樹脂膜を形成した後、感光性樹脂膜の上の所定の領域のみに感光性樹脂膜が感光する放射線源、例えば、紫外線、X線、電子線、イオン線などを選択的に照射し、さらに必要ならば熱処理を行うことにより、照射領域に化学的な変化をもたらし、潜像を形成する。このようにして潜像を形成した後、現像液に浸漬する。照射領域内における感光性樹脂の化学的変化により、照射領域と非照射領域との現像液に対する溶解速度の違いが生じ、この溶解速度の遅い領域が、パターンとして残る。照射領域が溶解除去されるものをポジ型感光性樹脂と呼び、非照射領域が溶解除去されるものをネガ型感光性樹脂と呼ぶ。現像後に残存するパターンをエッチングのマスクとして用いることにより、照射領域の形状を下地の基板に転写することができる。
【0003】
ところで、米国半導体協会が発表している国際半導体ロードマップ2005年版によれば、2020年には、線幅14nmでパターンピッチ28nmの繰り返しパターンの形成が必要になるとされている。しかしながら、現在量産に用いられている、エキシマレーザーリソグラフィーにおいては、線幅65nm,パターンピッチ130nmの密集(繰り返し)パターンを作製するのが限界である。また、既存の露光法のうちで最も解像性の高い電子線露光法を用いても、ピッチ23nmのパターン形成が限界である。しかしながら、将来の高機能デバイスとして期待されている単電子トランジスタ,量子コンピューター,及び発光素子などの電子デバイスを十分高温で動作させるためには、10nm程度以下のサイズのナノ構造を、このサイズと同等の距離に近接させて形成することが要求されている。このような高解像かつ高密度なパターンの形成は、既存のリソグラフィー技術のようなトップダウン技術で作製するのは現時点では困難である。
【0004】
上述したような状況の中で、分子の自己組織化などの、いわゆるボトムアップ技術を用いて微細パターンを形成しようとする試みが始まっている。このようなボトムアップ技術を利用する手法として最も着目を浴びている方法が、ブロック共重合体の自己組織化構造の1つであるミクロ相分離構造をエッチングのマスクとして用いる方法である。例えば、特許文献1では、ブロック共重合体を基板の上に塗布してミクロ相分離構造を形成した後、オゾンに暴露し、特定のブロック鎖により形成されたブロック相を選択的に除去し、この後残存するパターンをエッチングマスクとして下地基板に転写する方法が開示されている。
【0005】
また、ミクロ相分離構造を形成した後、ドライエッチング又はエネルギー線の照射により特定のブロック相を選択的に除去し、残存するパターンをエッチングマスクとして利用し、電気化学セル及び中空糸フィルターなどを製造する方法が提案されている。
また、電界を用いてミクロ相分離構造を配向させ、ナノシリンダー構造を形成する方法が提案されている。これらのような微細加工の手法は、ブロック共重合体リソグラフィーと呼ばれている。
【0006】
ブロック共重合体リソグラフィーをデバイス製造及び他の応用に用いるためには、ミクロ相分離により形成された自己組織化ナノ構造を特定の領域のみに形成し、かつ所望の方向へ配列させることが必須となる。これらの位置制御及び配向制御を実現するために、以下に示すような種々の方法が提案されている。
【0007】
従来技術1として、溝構造を配列のガイドパターンとして用いた、埋込み型のブロック共重合体の自己組織化ナノ構造の配列方法について説明する。この技術では、先ず、基板の表面にあらかじめ溝構造を作製しておき、作製してある溝構造内のみで埋込型の自己組織化ナノ構造を形成させると、これらが溝構造の側壁に沿って配列する。埋込み構造とは、ブロック共重合体の1つのブロック成分からなるドットやシリンダー(円柱)構造を、もう片方のブロック成分が取り囲み、膜内に埋め込まれている構造である。
【0008】
例えば、非特許文献1では、ナノインプリント法により、ノボラック樹脂膜に金型を押し付けて溝構造を作製し、この中で、ポリスチレンとポリメチルメタクリレートからなるブロック共重合体のミクロ相分離構造を形成し、40nm程度のポリスチレンの埋込み型のドット構造を配列させる方法を開示している。さらに、非特許文献2では、電子線露光法とドライエッチング法により、シリコン酸化膜の溝構造を作製し、この中で、ポリスチレンとポリフエロセニルジメチルシラン(PFS)からなるブロック共重合体のミクロ相分離構造を形成し、20nm程度のPFSの埋込み型のドット構造を配列させる方法を開示している。
【0009】
加えて、非特許文献2では、溝構造の幅を調節することにより、ドット配列の列数を制御する方法を開示している。さらに、非特許文献3では、60度の角をもつ2次元の溝構造を水素化シルセスキオキサンを用いて作製し、上記埋込み型のドットを上記角の部分に配置させる方法を開示している。
【0010】
また、非特許文献4では、フォトリソグラフィーとドライエッチングにより、シリコン窒化膜の溝構造を形成し、その中で、ポリスチレンとポリエチレンプロピレンからなるブロック共重合体のミクロ相分離を形成し、23nmピッチのポリスチレンの埋込み型のシリンダー構造を基板表面及び溝構造の側壁に沿って配向させる方法を開示している。
【0011】
次に、従来技術2として、溝構造を用いた、貫通型のブロック共重合体の自己組織化ナノ構造の配列方法について説明する。従来技術1とほぼ同様であるが、基板の上に溝構造を形成した後、この表面を化学修飾することによって、基板表面の表面自由エネルギーを、ブロック共重合体の各ブロック鎖の表面自由エネルギーの中間の値に制御する工程が加わることが、従来技術2の特徴である。この工程により、特定のブロック鎖が基板表面に偏析することなく、基板表面に垂直に配向した自己組織化ナノ構造を形成することができる。
【0012】
例えば、非特許文献5の技術では、あらかじめ溝構造を形成しておき、さらに、形成した溝構造の表面に自己組織化単分子膜を形成することにより、溝構造表面の表面自由エネルギーを調節する。この後、溝構造の中でポリスチレンとポリメチルメタクリレートからなるブロック共重合体のミクロ相分離構造を形成し、基板表面に対して垂直方向に配向した自己組織化シリンダー構造を形成するようにしている。また、非特許文献6の技術では、上記同様に溝構造を形成し、さらに、形成した溝構造の表面に、ポリスチレンとポリメチルメタクリレートのランダム共重合体を化学的に結合させて、溝構造表面を修飾する。この後、溝構造の中で、ポリスチレンとポリメチルメタクリレートからなるブロック共重合体のミクロ相分離構造を形成し、基板表面に対して垂直方向に配向させるようにしている。
【0013】
次に、従来技術3として、化学修飾ナノパターンを用いた、ブロック共重合体の自己組織化ナノ構造の配列方法について説明する。この技術では、形成するミクロ相分離構造と同等のサイズ及びピッチ間隔をもつ、厚さ数nmの極薄の化学修飾パターンを基板表面にあらかじめ形成しておく。この際、パターン部分は、各ブロック鎖と親和性の高い材料、すなわち各ブロック鎖の表面自由エネルギーと近い表面自由エネルギーをもつ材料で形成されている。この後、パターンの上に、ポリスチレンとポリメチルメタクリレートからなるブロック共重合体のミクロ相分離構造を形成し、48nmピッチのラメラ構造を基板に対して垂直に配向させるようにしている(特許文献2及び非特許文献7参照)。さらに、2次元状の化学修飾パターンを用いることにより、2次元のラインパターンを形成する方法も提案されている(非特許文献8参照)。
【0014】
【特許文献1】U.S.Patent 5,948,470
【特許文献2】U.S.Patent 6,746,825,B2
【非特許文献1】K.Asakawa et al., "Nano-patterning for patterned medhia using block-copolymer", Journal of Photopolymer Science and Technology, Vol.15, pp.465-470,2002.
【非特許文献2】J.Y.Cheng et al., "Nanostructure engineering by templated self-assembly of blockcopolymers", Nature materials, Vol.3, pp.823-828, 2004.
【非特許文献3】J.Y.Cheng et al., "Pattern Registration Between Spherical Block-Copolymer Domains and Topographical Templates", Advanced Materials, Vol.18, pp.597-601, 2006.
【非特許文献4】D.Sundrani et al.,"Guiding Polymers to Perfection: Maicroscopic Alignment of Nanoscale Domains", Nano Letters, Vol.4, pp.273-276, 2004.
【非特許文献5】X.Yang et al.,"Nanoscopic templates using self-assembled cylindrical diblock copolymers for patterned media", Journal of Vacuum Science and Technology, B22, pp.3331-3334, 2004.
【非特許文献6】S.Xiao et al.,"Graphoepitaxy of cylinder-foaming block copolymers for use as templates to pattern magnetic metal dot arrays", Nanotechnology, Vol.16, pp.S324-S329,2005.
【非特許文献7】S.O.Kim et ai.,"Epitaxial self-assembly of block copolymers on lithographically defined nanopatternd substrates", Nature, Vol.424, pp.411-414, 2004
【非特許文献8】M.P.Stpukovich et al.,"Directed Assembly of Block Copolymer Blends into Nonregular Device-Oriented Structures", Science, Vol.308, pp.1422-1446, 2005.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、従来技術1に示した手法では、埋込み型の自己組織化ドット又はシリンダー構造の単純な繰り返し構造にしか適用することができないという問題があった。また、これらの埋込み型構造では、転写マスクのパターンサイズに相当する横方向のサイズと深さ方向のサイズが等しいことから、高々アスペクト比が1しか得られない。このような低アスペクト比の転写マスクでは、エッチング耐性が不十分となる。さらに、パターンサイズが小さくなるとともに、エッチング速度の局所的なバラツキやナノ構造の深さ方向のサイズバラツキを無視することができず、忠実な転写は困難となる。従って、従来技術1に示した手法では、パターンを忠実に転写できないという問題があった。
【0016】
また、従来技術1に示した手法では、あらかじめ基板に溝構造を作製する必要があり、作製プロセスが煩雑となる問題があった。さらに、非特許文献3で開示された方法では、溝構造の材料として、水素化シルセスキオキサンを用いているが、溝構造の側壁のラフネスを低減する目的のみで使用されており、酸化膜で形成した溝構造を用いるのと本質的に変わらず、上記の問題は解消していない。
【0017】
次に、従来技術2に示した手法では、自己組織化シリンダー構造を用いたドットやホール構造の作製にしか適用できないという問題があった。また、溝構造の底面と側面の表面親和性を別々に制御することができないため、非特許文献5に示されているように、溝構造側壁部分で、2つのドメインが共存してしまい、溝構造内にシリンダー構造を完全に分離して形成することができないという問題があった。また、非特許文献4では、シリンダー構造を溝構造内に完全分離して形成しているが、用いるブロック共重合体ごとに、表面修飾材料、方法、形成条件を見出さなければならず、多大な労力がかかるという問題があった。なお、非特許文献4では、表面修飾材料、方法、形成条件は一切開示されていない。また、あらかじめ基板に溝精造を形成する必要があり、従来技術1と同様に、作製プロセスが複雑となる問題があった。
【0018】
また、従来技術1,2に示した手法では、周期的な構造を形成することは可能であるが、周期的でなく、かつ複雑な形状をもった2次元パターンを形成すること、さらにはドットとラインを自己整合的に形成することは不可能であった。
【0019】
次に、従来技術3に示した手法では、アスペクト比が高く、かつ2次元の複雑な形状のラインパターンを形成することができるものの、得られるラインパターンのサイズは、化学修飾パターンのサイズとほぼ同じである。従って、化学修飾パターンを形成するのに用いる既存のリソグラフィー技術の解像度を超えることができないという問題があった。さらに、得られるパターン形状は、ガイドパターンである化学修飾パターンのレイアウトと同じであり、ガイドパターンと異なる形状のパターンを形成することはできないという問題があった。
【0020】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、既存のリソグラフィー技術よりも小さい寸法を有した様々な形状のパターンが形成できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明に係るパターン形成方法は、基板の上に互いに異なる表面自由エネルギーを持つ少なくとも2つのブロック鎖から構成されたブロック共重合体よりなる薄膜を形成し、ブロック共重合体をミクロ相分離することでパターンを形成するパターン形成方法において、基板の上のブロック共重合体が接触する面が、2つのブロック鎖の表面自由エネルギーの中間の値の表面自由エネルギーとされた状態とする第1工程と、基板の上に、側面の表面自由エネルギーが2つのブロック鎖の一方の表面自由エネルギーに近い表面自由エネルギーとされた複数のガイドパターンが形成された状態とする第2工程と、ガイドパターンの間の基板の上に、ブロック共重合体よりなる薄膜が形成された状態とする第3工程と、薄膜を構成するブロック共重合体がミクロ相分離されて、2つのブロック鎖の相よりなる2つのパターン領域が薄膜に形成された状態とする第4工程とを少なくとも備えるようにしたものである。この結果、例えば2つのガイドパターンの対向する側面の間に、基板の法線方向の面で分離されて2つのパターン領域が、ミクロ相分離による寸法レベルの間隔で交互に配列され、かつ、各パターン領域はガイドパターンの延在方向に配向される。
【0022】
また、上記パターン形成方法において、第1工程では、基板の上に2つのブロック鎖の表面自由エネルギーの中間の値の表面自由エネルギーとされた中性層を形成することで、基板の上のブロック共重合体が接触する面が、2つのブロック鎖の表面自由エネルギーの中間の値の表面自由エネルギーとされている状態とし、第3工程では、中性層の上に接して薄膜が形成された状態とするとよい。この場合、中性層は、ブロック共重合体を構成する各ブロック鎖のモノマーを含む共重合体から形成すればよい。
【0023】
また、中性層は、少なくとも2つ以上のモノマー成分からなる共重合体を含んで形成し、ガイドパターンは、中性層が含むいずれかのモノマー成分からなるホモポリマーを含んで形成し、ブロック共重合体は、中性層が含むモノマー成分からなるブロック鎖を含んでいるようにすればよい。例えば、中性層が含む1つのモノマーは、スチレンであり、ガイドパターンは、ポリスチレンを含んで形成し、ブロック共重合体は、ポリスチレンからなるブロック鎖を含んでいればよい。
【0024】
また、ガイドパターンは、少なくともブロック共重合体のいずれかのブロック鎖と同じモノマー成分からなるポリマーを含んだ状態に形成することで、側面の表面自由エネルギーが2つのブロック鎖の一方の表面自由エネルギーに近い表面自由エネルギーとされた状態とすればよい。
【0025】
また、上記パターン形成方法において、ガイドパターンの表面に化学修飾層を形成することで、ガイドパターンの側面が、2つのブロック鎖の一方の表面自由エネルギーに近い表面自由エネルギーとされた状態とし、この後、ブロック共重合体よりなる薄膜が形成された状態とするようにしてもよい。
【0026】
この場合、化学修飾層は、少なくともブロック共重合体のいずれかのブロック鎖のモノマー成分を含むポリマーから形成し、化学修飾層を形成するポリマーは、少なくとも分子末端に水酸基又はカルボキシル基を持つようにすればよい。
【0027】
上記パターン形成方法において、中性層は、少なくとも2つ以上のモノマー成分からなる共重合体を含んで形成し、ガイドパターンは、少なくともポリシロキサンを含む感光性樹脂を用いて形成し、化学修飾層は、中性層が含むいずれか1のモノマー成分からなるブロック鎖を含み、かつ少なくとも分子末端に水酸基又はカルボキシル基を持つポリマーから形成し、ブロック共重合体は、中性層が含むモノマー成分からなるブロック鎖を含んでいるようにすればよい。
【0028】
例えば、中性層が含む1つのモノマーは、スチレンであり、化学修飾層は、少なくとも分子末端に水酸基又はカルボキシル基を持つポリスチレンを含んで形成し、ブロック共重合体は、ポリスチレンからなるブロック鎖を含んでいるようにすればよい。また、中性層が含むモノマーは、スチレン及びメチルメタクリレートであり、化学修飾層は、少なくとも分子末端に水酸基又はカルボキシル基を持つポリスチレン、もしくは、少なくとも分子末端に水酸基又はカルボキシル基を持つポリメチルメタクリレートの一方を含んで形成し、ブロック共重合体は、ポリスチレンとポリメチルメタクリレートのブロック共重合体から構成されているようにしてもよい。なお、ポリシロキサンは、水素化シルセスキオキサンであればよい。
【0029】
また、上記パターン形成方法において、複数のガイドパターンは、互いに平行に配置されているものであればよい。また、複数のガイドパターンは、多角形状に配置され、薄膜は、多角形状の2次元的な閉空間内に形成されるようにしてもよい。
【0030】
上記パターン形成方法において、上記工程に加えて、薄膜のいずれかのパターン領域を選択的に除去してマスクパターンが形成された状態とする第5工程と、マスクパターンを用いて基板の上に新たなパターンが形成された状態とする第6工程とを備える。
【0031】
また、本発明に係るモールドは、上述したパターン形成方法により形成されたモールドであって、新たなパターンが形成された基板より構成されているものである。このモールドによれば、既存のリソグラフィー技術よりも小さい寸法を有した様々な形状の転写用のパターンを備えることがで、このモールドを用いたインプリントにより既存のリソグラフィー技術よりも小さい寸法のパターン形成が可能となる。
【発明の効果】
【0032】
以上説明したように、本発明では、基板の上のブロック共重合体が接触する面は、ブロック共重合体を構成する互いに異なる表面自由エネルギーをもつ2つのブロック鎖の表面自由エネルギーの中間の値の表面自由エネルギーとし、ガイドパターンの側面は、2つのブロック鎖の一方の表面自由エネルギーに近い表面自由エネルギーとし、このようにしたガイドパターンの間の基板の上に、上記ブロック共重合体よりなる薄膜が形成された状態とするようにした。この結果、本発明によれば、既存のリソグラフィー技術よりも小さい寸法を有した様々な形状のパターンが形成できるようになるという優れた効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
はじめに、バルク状態のブロック共重合体のミクロ相分離について間単に説明する。なお、高分子もしくはポリマーとは、モノマー分子が、重合反応により、長く鎖状につながったものである。単一のモノマーが重合してできた高分子をホモポリマー、2種類以上のモノマーが重合してできた高分子を共重合体と呼ぶ。さらに、2種類以上の異なるモノマーがランダム配列している高分子をランダム共重合体、2種類の異なるモノマーが交互に配列している高分子を交互共重合体と呼ぶ。また、異なる2種類以上のホモポリマーが、直線的に化学した高分子をブロック共重合体と呼ぶ。
【0034】
一般に、2種類以上のホモポリマーを混合すると、均一に混合することは稀であり、異なるホモポリマー同士が反発する結果、同種のホモポリマー同士が凝集して相分離を起こす。ブロック共重合体においても同様な相分離を起こすが、異なるホモポリマーが分子内で化学的に結合しているため、相の大きさは大きくなることができず、ブロック共重合体の大きさと同程度となる。このようなブロック共重合体の相分離は、ミクロ相分離と呼ばれ、数nmから100nm程度の相領域が形成される。
【0035】
ミクロ相分離したドメインの形状は、ブロック共重合体の重合度,各ブロック鎖の化学的性質,及び各ブロック鎖の体積分率などに大きく依存する。以下、ジブロック共重合体を例に挙げて説明する。ジブロック共重合体とは、2種類のホモポリマーが結合した共重合体であり、2種類のブロック鎖A及びブロック鎖Bから構成される。
【0036】
図1に、上述したブロック共重合体のミクロ相分離の相図を示す。図1において、横軸は、ブロック鎖Aの体積分率を表し、縦軸はχNを表す。χは、ブロック鎖Aとブロック鎖Bの相互作用パラメーターと呼ばれる定数であり、χの値が大きいほど相溶性が低く、相分離しやすい。また、Nは重合度であり、Nが大きいほど相分離しやすい。従って、両者の積χNは、相分離のしやすさの指標として用いられており、χNの値が大きいほど相分離しやすく、逆にχNの値が小さくなりすぎると、もはや相分離せずに無秩序構造となる。
【0037】
χNの値が十分大きく相分離が起きる場合、ミクロ相分離したドメインの形状は各ブロック鎖の体積分率に大きく依存する。例えば、ブロック鎖Aの体積分率が0から0.5に変化する場合、ドメイン形状は、無秩序構造,球状構造,シリンダー構造,ラメラ構造の順に変化していく。さらに、ブロック鎖Aの体積分率が0.5から1.0に増加する場合、ラメラ構造,シリンダー構造,球状構造,無秩序構造と逆の順に変化していく。
【0038】
次に、薄膜状態でのブロック共重合体のミクロ相分離について、簡単に説明する。薄膜状態では、ブロック鎖同士の相互作用に加えて、界面とブロック鎖との相互作用を考慮する必要がある。平坦な基板の上に、ジブロック共重合体膜を形成してミクロ相分離を誘起した場合、基板表面と親和性の高いブロック鎖が、選択的に基板表面に接触する。一方、薄膜表面では、表面自由エネルギーの小さいブロック鎖が表面に露出しやすい。
【0039】
図2に、ラメラ構造をとるブロック共重合体の構成例を示す。ここでは、ブロック鎖Aの方が、ブロック鎖Bよりも表面自由エネルギーが低い場合を考える。ブロック鎖Aが基板201の表面との親和性が高い場合、図2(a)に示すように、ブロック共重合体薄膜203は、膜厚がnLに量子化された対称構造をとる。ここで、nは整数、Lは、ブロック共重合体を相分離させたときの、繰り返し周期の幅である。ジブロック共重合体の場合、A相204→A相204→B相205→B相205→A相204→A相204→B相205→B相205・・・の順に相分離し、連続した2つのA相204と2つのB相205により、繰り返しの単位(ミクロ相分離構造)が構成される。この繰り返しの単位がLである。
【0040】
図2の場合、ブロック鎖Aが基板201の表面との親和性が高いため、基板201の表面より、A相204が開始されるため、ミクロ相分離構造は、A相204→B相205→B相205→A相204の順に積層されたものとなり、これらミクロ相分離構想が積層されるブロック共重合体薄膜203は、相が積層される方向に対称な構造となる。
【0041】
一方、ブロック鎖Bが基板201の表面との親和性が高い場合、図2(b)に示すように、基板201に接触してB相205から開始され、この上にA層204が形成され、この上に、A相204→B相205→B相205→A相204の順に積層されたミクロ相分離構造が繰り返される構造となる。このように、ブロック鎖Bが基板201の表面との親和性が高い場合、ブロック共重合体薄膜203aは、膜厚が(n+1/2)Lに量子化された非対称構造をとる。このように、ラメラ構造の各ドメイン界面が基板の表面と平行に配向している構造をパラレルラメラ構造と呼ぶこととする。
【0042】
図3に、ドットあるいはシリンダー構造をとるブロック共重合体の構成例を示す。ここでは、ブロック鎖Bがドットやシリンダーを形成し、かつブロック鎖Aの方が、ブロック鎖Bよりも表面自由エネルギーが低い場合を考える。ブロック鎖Aが基板表面と親和性が高い場合、図3(a)に示すように、ブロック共重合体薄膜303は、ブロック鎖Bからなるドットあるいはシリンダー構造のB相305がブロック鎖AからなるA層304に埋め込まれた構造のミクロ相分離構造が繰り返され、膜厚がnLに量子化された対称構造となる。この場合、繰り返しの単位(L)となる1つのミクロ相分離構造では、A層304は、連続した2つのA相から構成され、これら連続した2つのA相に挟まれて、ドットあるいはシリンダー構造のB相305が配置されているものと考えることができる。
【0043】
一方、ブロック鎖Bが基板表面との親和性が高い場合、図3(b)に示すように、基板301に接触してブロック鎖BからなるB相305aが形成され、この上に、ブロック鎖AからなるA層304aが形成され、この上に、B相305がA層304に埋め込まれたミクロ相分離構造が繰り返される構造となる。このように、ブロック鎖Bが基板表面との親和性が高い場合、ブロック共重合体薄膜303aは、(n+1/2)Lに量子化された非対称構造をとることになる。
【0044】
次に、第3として、溝構造内でのブロック共重合体薄膜のミクロ相分離について、簡単に説明する。先ず、溝構造内での、ドットあるいはシリンダー構造をとるブロック共重合体のミクロ相分離の様子を、図4を用いて説明する。図4に示すように、溝構造401は、凹部401aの幅Ws、凸部401bの幅Wgとされている。このように形成された溝構造401の上に、ブロック鎖Bが基板表面との親和性が高く、かつブロック鎖Aの方がブロック鎖Bよりも表面自由エネルギーが低いブロック共重合体の膜を適当な膜厚に形成し、ミクロ相分離を誘起する。このことにより、先ず、溝構造401の表面に接触してブロック鎖BからなるB相405aが形成され、この上にブロック鎖AからなるA相404aが形成される。
【0045】
また、凹部401aでは、膜厚が(3/2)Lに量子化され、A相404aに続き、ドットあるいはシリンダー構造のB相405がA層404の中に埋め込まれた構造が形成される。この構造では、A層404は、連続した2つのA相から構成され、これら連続した2つのA相に挟まれて、ドットあるいはシリンダー構造のB相405が配置されているものと考えることができる。
【0046】
一方、凸部401bの上には、膜厚が(1/2)Lに量子化され、ドットあるいはシリンダー構造のB相が形成されることがない。このように、溝構造内での、埋込み型のドットあるいはシリンダー構造の形成は、膜厚の量子化が非常に有効に働いて、溝構造内のみに自己組織化構造が形成される。さらに、溝構造の溝(凸部)の延在方向に沿って、ドット構造やシリンダー構造を配列又は配向させることができる。
【0047】
しかしながら、従来技術で述べたように、埋込み型のドットあるいはシリンダー構造では、十分なエッチング耐性が得られないため、高解像性パターンの転写マスクとしては、不適当である。転写マスクとしては、界面が基板表面の法線方向に配向したシリンダー構造やラメラ構造を用いることにより、アスペクト比が高く、十分なエッチング耐性をもった転写マスクをとして用いることができる。
【0048】
次に、溝構造内での、ラメラ構造をとるブロック共重合体のミクロ相分離の様子を、図5を用いて説明する。ブロック鎖Bが基板表面との親和性が高く、かつブロック鎖Aの方が、ブロック鎖Bよりも表面自由エネルギーが低いものを用いた場合を説明する。図5に示すように、溝構造501は、凹部501aの幅Ws、凸部501bの幅Wgとされている。このように形成された溝構造501の上に、上記構成のブロック共重合体の膜を適当な膜厚に形成し、ミクロ相分離を誘起すると、前述同様に、凹部501aでは膜厚が(3/2)Lに量子化され、凸部501bの上では膜厚が(1/2)Lに量子化される。
【0049】
ラメラ構造をとる場合、各相の界面は基板表面と平行に配向し、凹部501aでは、B相505a,A相504,及びこの上のA相504に続き、2つのB相からなるB相505が形成される。このように、A相とB相とが基板表面の法線方向に配列されないため、ラメラ構造を下地基板に転写することは不可能である。
【0050】
ラメラ構造の界面を基板表面に垂直に配向させるためには、特定のブロック鎖が選択的に基板表面に接触しないように、基板表面の表面自由エネルギーを、ブロック共重合体を構成するいずれのブロック鎖の表面自由エネルギーとも異なる値にすればよい。例えば、ブロック共重合体を構成するブロック鎖Aとブロック鎖Bの表面自由エネルギーの中間の値に、基板表面の表面自由エネルギーの値を設定する中性化処理を行えばよい。この中性化処理により、どちらかのブロック鎖が選択的に基板の表面と接して形成されることが抑制され、両ブロック鎖が基板表面に共存することができるようになる。結果として、ラメラ構造の各ドメイン界面が基板表面に対して垂直に形成されやすくなる。この構造をラテラルラメラ構造と呼ぶこととする。
【0051】
ところが、表面を中性化した溝構造内では、次に示すように、基板表面(凹部底面)に平行な方向には、ランダムに配向してしまう。表面を中性化処理した溝構造内での、ラメラ構造をとるブロック共重合体のミクロ相分離の様子を図6を用いて説明する。基板601の表面に中性化処理による中性層602が形成された状態とし、この状態で、溝構造内にブロック鎖Aとブロック鎖Bとからなるブロック共重合体の膜を適当な膜厚に形成し、ミクロ相分離を誘起する。中性層602の表面は、ブロック鎖Aとブロック鎖Bの表面自由エネルギーの中間の値の表面自由エネルギーとされている。
【0052】
このような状態では、ミクロ相分離したブロック鎖AによるA層603及びブロック鎖BによるB層604は、凹部底面に対して垂直に配向するが、また同時に、溝構造の側壁に対しても、界面が垂直に配向する。この結果、溝構造の側壁に沿って配向する原動力がなくなり、溝構造の側壁形状とは無関係にランダム配向する。
【0053】
従って、ラメラ構造を溝構造の側壁に沿って配向させるためには、溝構造の凹部底面と側壁面の表面自由エネルギーを独立に制御する必要がある。発明者らは、この問題を解決すべく、鋭意検討を重ねた結果、この問題を解決する方法を見出した。本発明では、いずれのブロック鎖とも異なる表面自由エネルギーの状態の基板の上に、いずれかのブロック鎖の表面自由エネルギーの状態と等しくされた表面自由エネルギーを備えるガイドパターンを形成するようにした。この状態で、ブロック共重合体薄膜を形成してミクロ相分離を誘起することで、形成されるラメラ構造がガイドパターンに配向させるようにした。
【0054】
以下に、本発明のパターン形成方法について、より詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図7は、本発明の実施形態に係るパターン形成方法を説明するための工程図である。図7に示す例では、下地となる基板701の表面に中性層801を形成し、この上にブロック共重合体のミクロ相分離構造を配向させるためのガイドパターン702を形成することで溝構造を実現し、かつガイドパターン702を、ブロック共重合体のブロック鎖のいずれかと類似したホモポリマーを含んだ材料から構成することにより、基板表面の表面自由エネルギー及びガイドパターン側壁の表面自由エネルギーを各々個別に制御し、ミクロ相分離構造のより精密な配向(及びこの制御)を実現するようにしたものである。
【0055】
先ず、図7(a)に示すように、基板701を準備する。ここでは、基板701は、単なる基台として用いるため、材質は、金属,半導体,絶縁体など、特に材料を選ばずに用いることができる。また、基板701の形状は、特に問わないが、配向制御を行う領域においては、平坦な領域が存在することが望ましい。
【0056】
次に、図7(b)に示すように、基板701の平坦な領域の表面上に中性層801を形成する。中性層801は、表面自由エネルギーが、用いるブロック共重合体の各ブロック鎖の表面自由エネルギーの範囲内に存在する材料から構成する。例えば、2つのブロック鎖からなるブロック共重合体を用いる場合、2つのブロック鎖の表面自由エネルギーの中間の値の表面自由エネルギーとされていればよい。中性層801を形成する第1の方法としては、ブロック共重合体を構成する各モノマーからなる共重合体の薄膜から構成すればよい。このような共重合体薄膜として、用いるブロック共重合体の各ブロック鎖の組成に応じたランダム共重合体を用いればよい。この場合のブロック鎖の組成比は、実験結果に応じて最適化して用いればよい。また、ブロック共重合体の組成比が1:1に近い場合は、交互共重合体も用いることができる。
【0057】
これらの薄膜は、ブロック共重合体の塗布液を塗布する際に、塗布液の溶剤に完全に溶解しないよう、可能な範囲で高分子量のものを用いるのが好ましい。少なくとも10万以上、この好ましくは20万以上、より好ましくは50万以上の分子量をもつ共重合体が好ましい。また、これらの共重合体と少なくとも架橋剤を含む薄膜を形成した後、加熱処理,光及び放射の照射などを用い、共重合体同士を架橋させることにより、有機溶剤に不溶化させることもできる。この場合は、分子量10万以下のランダム共重合体あるいは交互共重合体を用いることができる。さらに、分子末端に、基板701の表面上に存在する水酸基と反応して結合する官能基をもつランダム共重合体あるいは交互共重合体からなる薄膜を形成し、基板701の表面に化学的に結合させて表面グラフトポリマー層を形成することにより、後の工程で用いる有機溶剤に対して不溶化させることが望ましい。上記官能基としては、例えば、水酸基(−OH)、カルボキシル基(−COOH)を用いることができる。
【0058】
中性層801を形成する第2の方法として、シランカップリング剤を用い、液相あるいは気相化学吸着法により、基板701の表面に自己組織化単分子膜を形成する方法を用いることができる。この場合は、吸着分子の被覆率を、吸着時間及び吸着温度を変えることにより、形成された中性層801の表面自由エネルギーを制御することが可能である。また一旦基板701の表面全体を表面修飾した後、紫外線,X線,及び電子線などの放射線を照射することにより、自己組織化単分子膜を部分的に分解し、表面自由エネルギーの制御を行ってもかまわない。シランカップリング剤としては、末端に、ハロゲン基,アルコキシ基,シラザン基をもつものを用いることができる。
【0059】
次に、図7(c)に示すように、上述のことにより形成した中性層801の上に、配向のための、互いに並行とされた複数のガイドパターン702を形成する。ガイドパターン702の主な機能は、ブロック共重合体の特定のブロック鎖を選択的にガイドパターン702の側壁表面に接触させることにある。このためには、特定のブロック鎖のガイドパターン側壁への親和性が高ければ高いほど良い。このためには、ガイドパターン702の側壁表面の表面自由エネルギーが、接触させたいブロック鎖の表面自由エネルギーに近いことが好ましい。ここでは、表面自由エネルギーを表面張力と置き換えてもかまわない。
【0060】
表面張力を測定する手法として、水滴の接触角を測定する方法が挙げられる。例えば、ガイドパターン702の表面上及び特定のブロック鎖の成分からなる薄膜上での水滴の接触角が等しければ、両者の表面張力は等しく、言い換えれば、両者の表面自由エネルギーは等しい。このとき、特定のブロック鎖のガイドパターン702の表面への親和性が高く、特定のブロック鎖が選択的にガイドパターン702の表面に接触することになる。以下の説明では、濡れ性の評価指標として、統一して表面自由エネルギーを用いて記述する。
【0061】
さらには、ガイドパターン702の材料として、ガイドパターン702に選択的に接触させたい特定のブロック鎖と類似(同じ)の成分からなるポリマーであることが好ましく、さらに好ましくは、これらのポリマーが感光性樹脂(レジスト)であることが、より好ましい。ガイドパターンが、ブロック共重合体のいずれかのブロック鎖と同じモノマー成分からなるポリマーを含んでいれば、ガイドパターン702の表面(側面)の表面自由エネルギーは、ブロック共重合体の一方のブロック鎖の表面エネルギーに近い状態となる。
【0062】
次に、ガイドパターン702として、ポリマー材料を用いた場合について説明する。基板701の上にポリマー材料膜を形成した後、この上にさらに感光性樹脂(レジスト)膜を形成し、露光・現像を行い、レジストパターンを形成する。次いで、形成したレジストパターンをマスクに、上記ポリマー材料膜をエッチングしてポリマー材料からなるガイドパターン702を形成する。このときエッチングしすぎると、下地の中性層801も除去されてしまうので、エッチング条件を慎重に選ぶ必要がある。また、インプリントリソグラフィー技術を用いて、モールド上に形成したポリマー材料からなるパターンを基板701の上に移植することで、ガイドパターン702が形成された状態としても良い。
【0063】
次に、ガイドパターン702として、感光性を有するレジストを用いた場合について説明する。基板701上に上記レジストの膜を形成した後、露光及び現像を行い、レジストパターンを形成する。この際、現像は、有機溶剤あるいは弱アルカリ現像液を用いて、レジスト溶解させるだけであるため、下地の中性層801にプラズマなどによるダメージを与えることなく、ガイドパターン702を形成することが可能となる。ガイドパターン702としては、ポジ型レジスト及びネガ型レジストともに用いることができる。なお、中性層801が、露光によりダメージを受けやすい材料の場合は、ポジ型レジストよりもネガ型レジストの方が好ましい。ネガ型の場合は、ガイドパターン702を形成しようとする領域に露光がされ、現像後に中性層801が露出する領域には露光しなくて済む。このため、ガイドパターン702が配置されない露出される領域における中性層801への、露光によるダメージが低減できる。
【0064】
また、後の工程であるミクロ相分離形成工程において熱処理を行うため、ガイドパターン702に用いる材料は、熱処理中においてもパターン形状が変形しないように、できるだけ軟化温度が高い材料であることが望ましい。一般には、架橋することにより軟化温度が高くなるため、架橋型ネガ型レジストの方がより好ましい。
【0065】
ガイドパターン702の材料としては、例えば、ポリスチレン、ポリ(α−メチルスチレン)、クロロメチル化ポリスチレン、ポリシロキサン、水素化シルセスキオキサン、カリックスアレン誘導体、フラーレン誘導体などのネガ型電子線レジストを挙げることができる。また、ポリメチルメタクリレート、ポリ(t−ブチルメタクリレート)、ポリメチルメタクリレートとポリメチルメタクリル酸の共重合体、ポリメチルメタクリレートとポリスチレンの共重合体、ポリメチルメタクリレートとポリ(α−メチルスチレン)の共重合体、ポリ(α−クロロアクリレート)とポリ(α−メチルスチレン)の共重合体などのポジ型電子線レジストを挙げることができる。さらに、電子線レジストに限らず、各種光源の波長に対応したg線用、i線用、KrF用、ArF用、EUV用のフォトレジストも用いることができる。より好ましくは、後の工程で用いるブロック共重合体のいずれかのブロック鎖と同じモノマーからなるポリマーを含んでいることが望ましい。
【0066】
次に、ガイドパターン702の線幅について述べる。一般に、段差をもつ表面にポリマーなどの薄膜を形成する場合、段差の部分でポリマー薄膜の膜厚が厚くなりやすい。これに対し、薄膜形成後の熱処理により、例えばポリマーをガラス転移点以上の温度として流動化させることにより、平坦化することができる。この平坦化の程度は、凸部の幅、すなわちガイドパターン702の幅が狭いほど大きくなる。ブロック共重合体薄膜中のミクロ相分離は、膜厚に大きく依存する場合もあるので、ブロック共重合体薄膜の膜厚はできるだけ均一であることが好ましい。従って、ガイドパターン702の線幅は、できるだけ細い方が好ましい。
【0067】
次に、図7(d)に示すように、ガイドパターン702が形成された中性層801上に、例えば2種類のブロック鎖A及びブロック鎖Bから構成されたブロック共重合体(ジブロック共重合体)よりなるブロック共重合体薄膜703を形成する。ここでは、ブロック鎖Bが、ガイドパターン702の表面への親和性が高く、ブロック共重合体薄膜703をミクロ相分離させた場合、ブロック鎖Bが選択的にガイドパターン702の表面に接触するものとする。なお、ブロック共重合体薄膜703は、ブロック共重合体を有機溶媒に溶解した溶液(塗布液)を用い、スピン塗布法,キャスト法,ディップ法を用いて形成すればよい。塗布液を用いて薄膜を形成するためには、膜厚均一性の優れたスピン塗布法を用いるのが好ましい。
【0068】
また、ブロック共重合体薄膜703のブロック共重合体を構成するブロック鎖(ブロック鎖A,ブロック鎖B)としては、先ず、ポリメタクリル酸エステル誘導体ポリマー鎖として、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(n−プロピルメタクリレート)、ポリ(n−ブチルメタクリレート、ポリ(i−ブチルメタクリレート)、ポリ(t−ブチルメタクリレート)、ポリ(ネオペンチルメタクリレート)、ポリ(シクロヘキシルメタクリレート)、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(2−ヒドロキシプロピルメタクリレート)、ポリ(トリフルオロエチルメタクリレート)などを用いることができる。
【0069】
また、ブロック共重合体を構成するブロック鎖としては、ポリアクリル酸エステル誘導体ポリマー鎖として、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(エチルアクリレート)、ポリ(t−ブチルアクリレート)、ポリ(n−ブチルアクリレート)、ポリ(ネオペンチルアクリレート)、ポリ(n−ノニルアクリレート)、ポリ(n−オクチルアクリレート)、ポリ(2−エチルヘキシルアクリレート)、ポリ(1−エトキシエチルアクリレート)、ポリ(ヒドロキシエチルアクリレート)などを用いることができる。
【0070】
また、ブロック共重合体を構成するブロック鎖としては、ポリスチレン誘導体ポリマー鎖として、ポリスチレン、ポリ(α−メチルスチレン)、ポリ(2−ビニルピリジン)、ポリ(4−ビニルピリジン)、ポリ(4−ヒドロキシスチレン)、ポリ(t−ブチルスチレン)、ポリ(t−ブトキシスチレン)、ポリ(4−アミノメチルスチレン)、ポリ(4−メチオキシスチレン)、ポリ(p−クロロメチルスチレン)などを用いることができる。
【0071】
また、ブロック共重合体を構成するブロック鎖としては、ポリジエン誘導体ポリマー鎖として、ポリ(1,2付加ブタジエン)、ポリ(1,4付加ブタジエン)、ポリ(1,2付加イソプレン、ポリ(1,4付加イソプレン)、ポリ(1,4付加水素化イソプレン)、ポリ(イソブチレン)などを用いることができる。
【0072】
また、ブロック共重合体を構成するブロック鎖としては、ポリシロキサン鎖として、ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリ(ジフェニルシロキサン)、ポリ(メチルフエニルシロキサン)などを用いることができる。他に、ブロック共重合体を構成するブロック鎖としては、ポリ(フエロセニルジメチルシラン)、ポリアクリロニトリル、ポリアクリルアミド、ポリ(N,N−ジメチルアクリルアミド)、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリ(エチレンオキサイド)、ポリ(プロピレンオキサイド)、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸などを用いることができる。
【0073】
また、ブロック共重合体薄膜703には、A−B型ジブロック共重合体に限らず、上述したブロック鎖の組み合わせからなる、A−B−A型トリブロック共重合体、A−B−C型トリブロック共重合体などを用いることができる。各ブロック鎖の体積分率がほぼ等しいブロック共重合体、すなわちA−B型ジブロック共重合体、A−B−A型トリブロック共重合体の場合は、各ブロック鎖の体積分率が50%程度のブロック共重合体を用いれば、後に説明するミクロ相分離工程において、ラメラ構造を形成することができる。また、A−B−C型トリブロック共重合の場合は、各ブロック鎖の体積分率が33%程度のブロック共重合体を用いれば、後に説明するミクロ相分離工程において、ラメラ構造を形成することができる。また、A−B型ジブロック共重合体、A−B−A型トリブロック共重合体の場合は、ブロック鎖Aの体積分率が30%程度のブロック共重合体を用いれば、形成面の法線方向に伸びるシリンダー構造を形成することができる。
【0074】
次に、ブロック共重合体の分子量について説明する。分子量100,000g/mol程度のブロック共重合体を用いると、50nm周期程度のラメラ構造あるいはシリンダー構造が形成される。このように、50nm周期にミクロ相分離構造が形成できれば、以下に説明するように、50nm周期の微細なパターンが形成可能である。また、分子量80,000g/mol程度以下のブロック共重合体を用いることで、40nm以下の周期のミクロ相分離構造が形成可能であり、既存のリソグラフィー技術では形成が難しい解像度のパターンが形成可能となる。
【0075】
さらに、分子量40,000g/mol程度以下のブロック共重合体を用いることで、周期が30nm以下のミクロ相分離構造が形成可能となり、分子量20,000g/mol程度以下のブロック共重合体を用いることで、周期が20nm以下のミクロ相分離構造が形成可能となる。なお、上述の分子量は、例えば、よく知られたサイズ排除クロマトグラフィーによる分子量分布測定で測定された数平均分子量である。
【0076】
次に、ブロック共重合体の塗布について説明する。先ず、塗布液に用いる有機溶剤としては、用いるブロック共重合体を構成する各ブロック鎖と相溶性の高いものを用いることが好ましい。このような有機溶剤としては、トルエン、ベンゼン、クロロベンゼン、エチルベンゼン、オルトジクロロベンゼン、アニソール、2−メトキシエチルアセテート、2−エトキシエチルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、クロロホルム、酢酸エチル、酢酸シクロヘキシル、エタノール、イソプロパノールを挙げることができる。
【0077】
次に、ガイドパターン702及びブロック共重合体薄膜703の膜厚について説明する。ブロック共重合体薄膜703の膜厚は、ミクロ相分離構造の周期Lもしくは、周期Lの整数倍にできるだけ近い方が望ましい。また、ガイドパターン702の高さ(膜厚)は、ブロック共重合体薄膜703の膜厚と少なくとも同程度以上であることが望ましい。さらに、ガイドパターン702の高さにバラツキが存在する場合には、ガイドパターン703の高さは、ブロック共重合体薄膜703の膜厚よりも、3σ以上高い方が望ましい。ここで、σは、ガイドパターン702の高さの標準偏差である。
【0078】
次に、図7(e)に示すように、ミクロ相分離を誘起し、各ガイドパターン702の間に、ブロック共重合体を構成しているブロック鎖Aより構成されたドメインであるブロック鎖A領域(パターン領域)704とブロック鎖Bより構成されたドメインであるブロック鎖B領域(パターン領域)705とが交互に配列された状態とする。各領域は、基板701表面の平面方向に分離された状態となる。
【0079】
ここで、ガイドパターン702の表面への親和性は、ブロック鎖Bの方が高いので、ガイドパターン702の側壁面より、ブロック鎖B相705a,ブロック鎖A相704a,ブロック鎖A相704a,ブロック鎖B相705a,ブロック鎖B相705a,ブロック鎖A相704a,ブロック鎖A相704a・・・の順に、相分離した各相が配列されていく。ブロック鎖A領域704は、2つのブロック鎖A層704aから構成され、ブロック鎖B領域705は、2つのブロック鎖B層705aから構成されている。
【0080】
次に、ミクロ相分離を誘起してミクロ相分離構造を形成することについて説明する。ブロック共重合体薄膜703を形成した後、熱処理を行うことにより、ミクロ相分離を誘起した後、直ちに自然放冷もしくは強制冷却することにより、上述したミクロ相分離構造を形成する。熱処理方法としては、オーブンやホットプレートを用いて行うことができる。この熱処理において、酸化によるブロック共重合体薄膜703の劣化を防ぐため、窒素やアルゴンなどの反応性の低いガス雰囲気で行うのが好ましい。
【0081】
また、上記熱処理の温度は、少なくともブロック共重合体のガラス転移温度以上かつ分解温度以下であることが好ましい。また、ブロック共重合体の相分離系が、低温側では相溶しているが、温度を上げると相分離を起こす下限臨界共溶温度型相図をもつ場合は、下限臨界共溶温度以上の温度で熱処理するのが好ましい。一方、ブロック共重合体の相分離系が、低温側ではミクロ相分離しているが、温度を上げると相溶する上限臨界共用温度型相図を持つ場合は、上限臨界共用温度以下の温度で熱処理するのが好ましい。
【0082】
このようにして形成したブロック共重合体のミクロ相分離構造は、図7(f)に示すように、ガイドパターン702の間に交互に配列されたブロック鎖A領域704及びブロック鎖B領域705が、ガイドパターン702の延在する方向に配向された状態となる。言い換えると、各領域は、ガイドパターン702と同じ方向に延在した状態となる。なお、図7(f)は、図7(e)のff線断面図である。前述したように、分子量20,000g/mol程度以下のブロック共重合体を用いれば、周期が20nm程度のミクロ相分離構造が形成されるので、各々幅10nmのブロック鎖A領域704とブロック鎖B領域705とからなる微細なパターンが得られる。なお、各ガイドパターン702の間の間隔(対辺間の距離)は、nL(ミクロ相分離の周期の自然数倍)とすればよい。但し、対辺間の距離Wsは、正確にnLである必要はなく、ある範囲内で同様な効果が得られる。経験的には、(n−0.25)L<Ws<(n+0.25)L(nは自然数)とされていればよい。
【0083】
次に、本発明のパターン形成方法に係る他の実施の形態について説明する。
(第2の実施形態)
図8は、本発明の第2の実施形態に係るパターン形成方法を説明するための工程図である。図8に示す例では、図7に示したパターン形成方法に加えて、ガイドパターンの表面に化学修飾層を形成し、ミクロ相分離構造がより配向しやすくなるようにしたものである。また、化学修飾層を形成することにより、ガイドパターンの材料に依存することなく、ミクロ相分離させるブロック共重合体に適用可能な材料の選択幅を増大させることが可能となる。
【0084】
先ず、図8(a)に示すように、基板701を準備する。次に、図8(b)に示すように、基板701の平坦な領域の表面上に中性層801を形成する。次に、図8(c)に示すように、上述のことにより形成した中性層801の上に、配向のためのガイドパターン702を形成する。以上のことは、図7を用いて説明したパターン形成方法と同様である。
【0085】
次に、図8(d)に示すように、ガイドパターン702の表面に、化学修飾層901を形成する。ガイドパターン702の表面のみに化学修飾層901を形成するためには、化学修飾する分子をガイドパターン702の表面に化学的に結合させる必要がある。化学修飾層901としては、例えば、自己組織化単分子膜や表面グラフトポリマーが挙げられる。これらの化学修飾層901の主成分として、後の工程で用いるブロック共重合体のいずれかのブロック鎖であり、かつガイドパターンに接触させたい方のブロック鎖からなるポリマー鎖を含むことが望ましい。こうすることにより、化学修飾層901の表面の表面自由エネルギーは、ブロック共重合体の一方(所望)のブロック鎖の表面エネルギーに近い状態となり、確実に所望のブロック鎖をガイドパターン702の側壁に形成された化学修飾層901に接触させることが可能となる。
【0086】
次に、化学修飾層901として、自己組織化単分子膜を用いる方法について説明する。ガイドパターン702の材料と自己組織化単分子膜材料の組み合わせとして、主のものは、金属と有機硫黄分子、酸化膜と有機シラン分子が良く知られている。前者の組み合わせについては、ガイドパターン702を、Au,Ag,Cu,Pt,及びPdなどの金属から形成し、この表面に、分子末端にチオール(SH)基をもつ有機硫黄分子の自己組織化単分子膜を形成する。金属からなるガイドパターン702は、例えば、よく知られたリフトオフ法などにより形成すればよい。
【0087】
また、後者の組み合わせについては、例えば、ネガ型レジストであるポリシロキサン材料よりガイドパターン702を形成すればよい。ポリシロキサンは、電子線,X線,及び紫外線などの照射により架橋反応が起こり、シロキサン(Si−O)のネットワーク構造が形成され、この表面には水酸基が存在する状態となる。従って、このように形成されたガイドパターン702の表面には、シランカップリング剤を用いて、液相あるいは気相化学吸着法により、自己組織化単分子膜を形成することが可能である。
【0088】
シランカップリング剤としては、例えば、末端にハロゲン基,アルコキシ基,アセトキシ基,及びシラザン基をもつものを用いることができる。なお、ガイドパターン材料と自己組織化単分子膜材料の組み合わせは、上述した2つに限定されるものではなく、ガイドパターンが形成可能な材料であれば、他の組み合わせを用いてもかまわない。下地の中性層801には、反応性の官能基が存在しないため、上述した自己組織化単分子膜は、ガイドパターン702表面のみに形成されることとなる。
【0089】
次に、化学修飾層901として、表面グラフトポリマーを用いる方法について説明する。ガイドパターン材料としては、例えば、ネガ型レジストであるポリシロキサン材料が挙げられる。ポリシロキサンは、電子線,X線,紫外線の照射により架橋し、シロキサン(Si−O)構造が形成される。従って、シリコン酸化膜と同様に、架橋したシロキサン構造表面にも水酸基が存在する。表面グラフトポリマー材料としては、分子末端に水酸基、あるいはカルボキシル基をもつポリマーを用いる。これらのポリマーを有機溶剤に溶解したポリマー溶液を、ガイドパターン702が形成された基板701の上にスピン塗布し、加熱を行う。
【0090】
この加熱により、ガイドパターン702の表面に存在する水酸基と、表面修飾ポリマーの末端に存在する水酸基あるいはカルボキシル基とが、脱水縮合する。この脱水縮合のとき、中性層801の表面には水酸基が存在しないため、脱水縮合反応はガイドパターン702の表面のみで起こる。この後、有機溶剤で、未反応の表面修飾ポリマーを溶解除去すれば、ガイドパターン702の表面に化学的に結合した表面修飾ポリマーのみ残存し、ガイドパターン702表面のみに、表面グラフトポリマーよりなる化学修飾層901が形成されることとなる。
【0091】
次に、図8(e)に示すように、第1の実施形態と同様に、ブロック共重合体薄膜703を形成した後、ミクロ相分離を誘起する。この結果、図7を用いて説明したパターン形成方法と同様に、化学修飾層901が形成されたガイドパターン702の間に、ブロック鎖A領域704とブロック鎖B領域705とが交互に配列された状態が得られる(図8(f),図8(g))。
【0092】
次に、本発明の実施の形態に係る他のパターン形成方法について説明する。
(第3の実施形態)
図9,図10は、第3の実施形態に係るパターン形成方法を説明するための工程図である。以下に示すパターン形成方法は、図7及び図8を用いて説明したパターン形成方法により形成されたミクロ相分離構造を、下地の基板701に転写し、特定のブロック鎖からなるミクロ相分離ドメインの形状を反映したパターンを、基板701に形成するようにしたものである。
【0093】
はじめに、図7を用いて説明したパターン形成方法により形成されたミクロ相分離構造を転写する場合について説明する。先ず、図9(a)に示すように、基板701を用意し、次に、図9(b)に示すように、基板701の上(表面)に中性層801が形成された状態とし、次に、図9(c)に示すように、中性層801の上にガイドパターン702が形成された状態とする。次に、図9(d)に示すように、ガイドパターン702が形成された中性層801の上に、ブロック共重合体薄膜703が形成された状態とする。次に、図9(e)に示すように、ミクロ相分離を誘起し、各ガイドパターン702の間に、ブロック鎖A領域704とブロック鎖B領域705とが交互に配列された状態とする。以上のことは、図7(a)〜図7(e)を用いて説明したパターン形成方法と同様である。
【0094】
次に、ブロック鎖B領域705などブロック鎖Bより構成された部分を選択的に除去し、図9(f)に示すように、各ガイドパターン702の間の領域に、ガイドパターン702の延在方向に配列(配向)されたブロック鎖A領域704からなるパターンが形成され、これらよりなるマスクパターンが形成された状態とする。この場合、形成されるマスクパターンは、ブロック鎖B領域の部分に、下層にまで貫通する開口領域を備えたものとなる。
【0095】
ここで、特定のブロック鎖の領域のみを選択的に除去することについて、より詳細に説明すると、先ず、第1の方法として、ブロック鎖Aとブロック鎖Bとのエッチング速度の差を利用する方法が挙げられる。例えば、ブロック共重合体薄膜703を、エッチング速度が異なる2種類以上のブロック鎖からなるブロック共重合体より構成しておけば、ミクロ相分離した状態の各領域に対して所定条件のドライエッチングを行うと、エッチング速度の速いブロック鎖の領域が先に除去され、エッチング速度の遅いブロック鎖の領域が残存する。この結果として、ミクロ相分離構造を反映した、周期パターンが形成されるようになる。この残存したパターンを転写マスクとして用いることができる。
【0096】
次に、エッチング速度が異なるブロック鎖について説明する。一般に、ポリマー中の酸素原子の含有率が低くないほど、例えば酸素ガスプラズマを用いたドライエッチングのエッチング速度が減少することが知られている。また、芳香族環をもつポリマーあるいは、シリコン原子を含むポリマーは、ドライエッチング速度が遅いことが知られている。従って、ドライエッチング速度の遅いブロック鎖として、酸素をできるだけ含まないポリマーを用いるか、もしくは芳香族環を含むポリマーを用いるか、又はシリコン原子を含むポリマーを用いることで、前述した選択的な除去が可能となる。
【0097】
ドライエッチング速度の遅いブロック鎖としては、例えば、ポリスチレン誘導体ポリマー鎖、ポリジエン誘導体ポリマー鎖、ポリシロキサンポリマー鎖を用いることができる。一方、ドライエッチング速度の速いブロック鎖としては、例えば、ポリメタクリルエステル誘導体ポリマー鎖、ポリアクリル酸エステル誘導体ポリマー鎖を用いることができる。これらの、ドライエッチング速度の遅いポリマーからなるブロック鎖とのドライエッチング速度の速いポリマーからなるブロック鎖を含むブロック共重合体を用いれば、前述したドライエッチング法により、選択的に一方のブロック鎖の領域を除去することで、ミクロ相分離構造を反映したパターンが形成可能である。
【0098】
次に、上記のエッチングの方法について説明すると、エッチング方法としては、不活性ガスを利用したスパッタリング現象による物理的なドライエッチングや、酸素,塩素系,及びフッ素系などの反応性ガスを用いた反応性イオンエッチング(RIE)を用いることができる。また、プラズマの生成法として、電子サイクロトロン共鳴(ECR)によるプラズマや、誘導結合によるプラズマ(ICP)などがある。
【0099】
また、エッチングガスとしては、Ar,H2,N2,O2,CO,CO2,CF4,CHF3,CH2F2,C2F6,C3F6,C4F8,NH3,Cl2,BCl3,及びSF6などの、よく知られたドライエッチングに使用するガスを単独もしくは混合して用いることができる。なお、ドライエッチング速度の速いブロック鎖とドライエッチング速度の遅いブロック鎖のエッチング速度の比は、少なくとも1以上であることが望ましい。忠実な転写を行うには、エッチング速度の比が大きければ大きいほど良い。従って、異なるブロック鎖のエッチング速度比は、2以上であることがより好ましい。
【0100】
特定のブロック鎖を選択的に除去する第2の方法として、感光性を備えたブロック鎖より構成されたブロック共重合体を用いる方法が挙げられる。このようなブロック共重合体をミクロ相分離させた後、露光もしくは露光・現像を行うことで、感光性を備えたブロック鎖のみを選択的に除去することができる。感光性を備えるブロック鎖としては、放射線崩壊型のものを用いることが好ましい。放射線崩壊型であれば、露光のみで選択的に除去することが可能である。
【0101】
放射線崩壊型の感光性をもつブロック鎖として用いることができるポリマーとしては、ポリメチルメタクリレート、ポリ(α−クロロアクリレート)、ポリブチルメタクリレート、ポリ(フルオロブチルメタクリレート)、ポリ(グリシジルメタクリレート)、ポリ(ブテン−1−スルフォン)、ポリ(スチレンスルフォン)などが挙げられる。また、露光に用いる放射線としては、紫外線,X線,電子線,及びイオン線を用いることができる。ただし、露光及び現像を行って感光性を備えるブロック鎖を除去する場合、乾燥時に、現像液もしくはリンス液の表面張力により、残存したブロック鎖からなるパターンの形状が崩れるなど変形する可能性がある。従って、露光のみで特定のブロック鎖を分解し、除去する方法の方が、微細パターン形成には好ましい。
【0102】
以上に説明したいずれかの方法により、各ガイドパターン702の間の領域、ブロック鎖A領域704からなるパターンが配列(配向)された状態とした後、図9(g)に示すように、残存したブロック鎖A領域704からなるパターンをマスクとし、この下の各層をエッチング加工する。例えば、ドライエッチング法、又はウエットエッチング法を用いることで、残存したブロック鎖A領域704からなるパターンをマスクとし、このパターン形状を下層の基板701に転写すればよい。
【0103】
なお、ここで、基板701の材料について説明すると、本例では、中性層801を用いているため、基板701は、上記のマスクを用いた選択的なエッチングが可能な材料から構成されていればよい。例えば、金属,半導体,及び絶縁体など、特に材料を選ばずに用いることができる。なお、基板701は、この上に中性層801が形成可能な材料から構成されている必要がある。
【0104】
基板701に適用可能な金属材料としては、Au、PtAu、AuZn、AuGe、AuZnNi,AuGeNiなどのAu系の合金、また、Al、Cr、Ti、TiN、Zn、Sn、W、Mo、Taなどを用いることができる。また、半導体材料としては、Si、poly−Si、GaP、GaAs、GaAsP、GaAlAs、InPなどを用いることができる。また、絶縁体材料としては、ガラス、石英、サファイア、SiO2、SiNx、TiO2、Al203などを用いることができる。
【0105】
次に、パターン転写のためのエッチングについて、より詳細に説明する。パターン転写のためのエッチングとしては、ドライエッチングやウエットエッチングを用いた下地基板(基板701)への転写が挙げられる。ドライエッチングの場合は、スパッタリング現象による物理的なドライエッチングや、酸素,塩素系,及びフッ素系などの反応性ガスを用いた反応性イオンエッチング(RIE)を用いることができる。また、プラズマの生成法として、電子サイクロトロン共鳴(ECR)によるプラズマや、誘導結合によるプラズマ(ICP)などがある。例えば、基板701がシリコンから構成されている場合は、Cl2,SF6,Cl2+O2などのガスを用いたドライエッチングでパターンの転写が可能である。なお、リフトオフを用いることで、基板701の上に金属などのパターンを形成することも可能である。
【0106】
また、基板701が、酸化シリコン,ガラス,及び石英などから構成されている場合、フッ酸を用いたウエットエッチングにより、上記パターンの転写が可能である。また、基板701が、単結晶シリコンから構成されていれば、水酸化カリウム(KOH)やテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)などのアルカリ性のエッチング液を用いたウエットエッチングにより、異方性エッチングを行うこともできる。
【0107】
以上のようにして、基板701にパターンが転写された後、残存するブロック鎖A領域704,ガイドパターン702及び中性層801を除去し、図9(h)に示すように、平行に配列された複数の溝711からなるパターンが、基板701の上に形成された状態とする。例えば、材質が有機材料の場合には、酸素プラズマへの暴露によりこれらの除去が可能である。また、材質が無機材料の場合には、材質に合わせたウエットエッチング法により除去すればよい。
【0108】
以上の工程により、ブロック共重合体のミクロ相分離構造であり、線条に形成されたガイドパターン702の延在方向に配向した周期的なラインの構造であるラテラルラメラ構造を、下地の基板701に転写することができる。このように、上述したパターン形成方法は、ラメラ構造の横方向配向の形状とされたパターン形成に非常に有効であるが、当然のことながら、垂直シリンダー構造が配列したパターン形成にも同様に適用することができる。また、上述したパターン形成方法により、例えば、溝711からなるパターンが形成された基板701より構成されたインプリント用のモールドを形成することが可能である。
【0109】
次に、図8を用いて説明したパターン形成方法により形成されたミクロ相分離構造を転写する場合について説明する。先ず、図10(a)に示すように、基板701を用意し、次に、図10(b)に示すように、基板701の上(表面)に中性層801が形成された状態とし、次に、図10(c)に示すように、中性層801の上にガイドパターン702が形成された状態とする。次に、図10(d)に示すように、ガイドパターン702の表面に、選択的に化学修飾層901が形成された状態とする。
【0110】
次に、図10(e)に示すように、化学修飾層901に覆われたガイドパターン702が形成された中性層801の上に、ブロック共重合体薄膜703が形成された状態とする。次に、図10(f)に示すように、ミクロ相分離を誘起し、各ガイドパターン702の間に、ブロック鎖A領域704とブロック鎖B領域705とが交互に配列された状態とする。以上のことは、図8(a)〜図8(f)を用いて説明したパターン形成方法と同様である。
【0111】
次に、ブロック鎖B領域705などブロック鎖Bより構成された部分を、前述同様に選択的に除去し、図10(g)に示すように、各ガイドパターン702の間の領域に、ガイドパターン702の延在方向に配列(配向)されたブロック鎖A領域704からなるパターンが形成され、これらよりなるマスクパターンが形成された状態とする。この場合、形成されるマスクパターンは、ブロック鎖B領域の部分に、下層にまで貫通する開口領域を備えたものとなる。
【0112】
次に、図10(h)に示すように、残存したブロック鎖A領域704からなるパターンをマスクとし、前述同様に、この下の各層をエッチング加工する。この後、前述同様に、残存するブロック鎖A領域704,化学修飾層901,ガイドパターン702及び中性層801を除去し、図10(i)に示すように、平行に配列された複数の溝711からなるパターンが、基板701の上に形成された状態とする。このパターン形成方法においても、溝711からなるパターンが形成された基板701より構成されたモールドを形成することが可能である。
【0113】
次に、本発明の実施の形態に係る他のパターン形成方法について説明する。上述では、所定の方向に延在する直線状の線条パターンよりガイドパターンを構成し、これに配向する周期的な線状のパターンを形成する場合について説明したが、これに限るものではない。図11に示すように、直線の線条パターンを組み合わせて多角形状にガイドパターンを構成し、このガイドパターンの2次元的な閉空間内に、ガイドパターンに配向する環状のパターンを形成することも可能である。例えば、図11(a)の平面図に示すように、正方格子状のガイドパターン1101を用い、この中に、ブロック鎖Aとブロック鎖Bとから構成されたブロック共重合体薄膜を形成し、これをミクロ相分離する。なお、ガイドパターン1101に対してブロック鎖Bの方が親和性が高いものとし、ブロック共重合体は、ミクロ相分離により周期Lのラメラ構造を発現するものを用いる。
【0114】
このことにより、ガイドパターン1101の格子内の基板(図示せず)の上に、ブロック鎖Aからなるブロック鎖A領域1102と、ブロック鎖Bからなるブロック鎖B領域1103とが、格子形状を反映して同心枠形状のラテラルラメラ構造に交互に形成され、中央部には、ドット(垂直配向シリンダー)状のブロック鎖A領域1102が形成される。図11(a)の例では、ガイドパターン1101の対向する側面の間隔Wsが、5L程度となっている。なお、Wsの大きさは、5Lに限定されるわけではなく、nL(nは整数)であれば、ラテラルラメラ構造が形成される。また、格子内の中央部に形成されるドットは、nが奇数の場合にはAブロック鎖から構成され、nが偶数の場合はBブロック鎖から構成される。また、格子の形状は、矩形に限らず、図11(b)に示すように、六角格子状のガイドパターン1101aであっても同様である。
【0115】
また、ガイドパターンの形状は、格子状でなく、多角形1個でも同様な効果が得られる。また、格子の形状は、四角形や六角形に限定されるものではなく、任意の多角形において、同様な効果が得られる。ただし、平行な対辺が存在する偶数の辺をもつ多角形格子の方が、対辺間の距離WsをnLに設定すればよいので、設計が容易となる。また、対辺間の距離Wsは、正確にnLである必要はなく、ある範囲内で同様な効果が得られる。経験的には、ポリメチルメタクリレート(PMMA)とポリスチレン(PS)からなるブロック共重合体を用いた場合、L=28nm、Ws=3Lで、Wsのバラツキが6nmの範囲で同心円(枠)状のストライプパターンが形成された。さらに、ガイドパターンの形状は、任意の多角形に限定されるものではなく、閉ループ構造をとっていれば、閉ループ構造の形をある程度反映した同心の枠状のパターンを形成することができる。
【0116】
また、以下に説明するように、屈曲したガイドパターンを用いても良い。以下、屈曲したガイドパターンの角(屈曲部)を利用した配向制御によるパターン形成方法の例を説明する。図12(a)は、基板1100の上に形成された2つのL字型のガイドパターン1101を用いる場合を示している。また、図12(b)は、基板1100の上に形成された4つのL字型のガイドパターン1101aの4つの角を向き合わせ、これらによる十字型の領域を備える場合を示している。どちらにおいても、対向するガイドパターン側面の間隔は、周期Lの3倍程度としていいる。
【0117】
このように構成されたガイドパターン1101及びガイドパターン1101aを用い、ガイドパターンの間に、Aブロック鎖及びBブロック鎖からなるジブロック共重合体の薄膜を形成し、ミクロ相分離により周期Lのラメラ構造を発現させる。図12(a)のL字型のガイドパターンでは、ミクロ相分離を誘起すると、直線部分では、Aブロック鎖領域1102とBブロック鎖領域1103とが交互に現れる3周期のラテラルラメラ構造が、ガイドパターン1101に沿って配向する。また、角の領域では、局所的に対辺の間の距離が1.4倍程度に広くなるため、この空間を埋めるために、ブロック鎖Bからなるドット(垂直配向シリンダー)構造1103aが自己組織的に形成される。
【0118】
このように、局所的にガイドパターン間の距離を変えると、距離を変更した部分(屈曲部分)に形成されるラメラ構造の中に、ドットのような変則的な構造を自己組織化に誘起することが可能である。ガイドパターンの形状は、L字である必要はなく、ガイドパターン間の距離が局所的に変化しているのであれば構わない。例えば、直線領域においては、対辺の間の距離をnL(nは3以上の整数)、距離を変更した領域においては、ガイドパターン間の距離を(n+1)Lに設定すれば、距離を変更した領域にのみ、ドットを形成することができる。確実に形成させるためには、ガイドパターン間の距離を、自己組織化しやすい3Lに設定するのが好ましい。距離を変更する領域の長さは、長くなると配向が乱れやすくなるため、直線領域でのガイドパターン間の距離と同程度であることが望ましい。
【0119】
同様に、図12(b)の十字型のガイドでは、ミクロ相分離を誘起すると、直線部分では、Aブロック鎖領域1102とBブロック鎖領域1103とが交互に現れる3周期のラテラルラメラ構造が、ガイドパターン1101aに沿って配向する。また、交差の領域では、局所的に対辺の間の距離が1.4倍程度に広くなるため、この空間を埋めるために、ブロック鎖Bからなるドット(垂直配向シリンダー)構造1103aが自己組織的に形成される。このように、図12(b)のような、十字型のガイドを用いれば、1つのドット相に対して、4本のライン相を、ラメラ周期Lの半分の距離だけ離して近接させることが可能となる。
【0120】
また、上述したように、ミクロ相分離により得られた構造を下地の基板1100に転写し、得られたラインに各々電極を接続し、ソース電極,ドレイン電極,サイドゲート電極として用いれば、量子ドット及び近接ゲートを自己整合的に形成することが可能である。
【実施例】
【0121】
以下、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0122】
(実施例1)
先ず、直径が4インチの円板状のシリコン基板を、硫酸/過酸化水素水(体積比3/1)の混合溶液に4分間浸漬した後、水洗・乾燥し、シリコン基板の表面に約2nmの酸化膜を形成した。次に、形成した酸化膜の上に、中性層を形成した。形成した中性層の材料として、以下のようにして作製(調整)したポリメチルメタクリレート(PMMA)とポリ(α−メチルスチレン)(PαMSt)の交互共重合体の架橋膜を用いた。数平均分子量Mn:114,000、多分散度1.96の交互共重合体100重量部に対し、架橋剤として1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリアセトキシメチルベンゼンを30重量部、熱酸発生剤としてシクロヘキシルメチル(2−オキソシクロヘキシル)スルフォニウムトリフルオロメタンスルフォネートを10重量部混合し、これらを2−メトキシエチルアセテートに溶解する。この後、作製した溶液を0.2μm径のフィルターで濾過し、濃度1重量%の交互共重合体溶液を調整した。
【0123】
この交互共重合体溶液を、洗浄後のシリコン基板にスピン塗布した後、ホットプレート上で200℃・2分間の処理を行い、厚さ10nm程度の架橋ポリマー膜からなる中性層を形成した。この後、本基板をトルエン溶液にて10分間超音波洗浄を行い、未反応物質を溶解除去した。
【0124】
次に、配向のためのガイドパターンを形成した。配向ガイドパターンの材料として、電子線ネガ型レジストであるポリスチレンを用いた。数平均分子量Mn:48,000、多分散度1.06のポリスチレンをモノクロロベンゼンに溶解した後、0.2μm径のフィルターで濾過し、濾過したポリスチレンレジスト溶液を作製した。このポリスチレンレジスト溶液を、上記中性層を形成した後に塗布し、厚さ40nmのポリスチレン薄膜を形成し、ホットプレート上で、120℃・2分間の加熱処理を行った。
【0125】
この後、加熱処理を加えたポリスチレン膜に対し、加速電圧100kVの電子線を露光量9mC/cm2で露光し、次いで、キシレンにて30秒間現像を行い、この後、2プロパノールにて30秒間リンスを行った。このようにして形成されたポリスチレンレジストによるガイドパターンを走査電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、線幅43nm、パターンピッチ100nm程度の直線状パターンが形成されていることが確認された。
【0126】
次に、形成したガイドパターンの間に、以下のブロック共重合体の薄膜を形成した。ブロック共重合体として、数平均分子量Mn:36000、多分散度1.07のPMMA(Mn:18000)とポリスチレン(Mn:18000)の対称ジブロックコポリマーを用いた。このブロック共重合体をトルエン溶液に溶解した後、0.2μm径のフィルターで濾過し、ブロック共重合体溶液を調整した。このブロック共重合体溶液を、ガイドパターンが形成されたシリコン基板の上にスピン塗布した後、ホットプレート上で110℃・2分間の加熱処理を行い、ガイドパターンの間に膜厚29nmのブロック共重合体薄膜を形成した。
【0127】
上述した構成では、先ず、中性層は、2つのモノマー成分からなる共重合体を含んだものとされている。なお、2つ以上のモノマー成分からなる共重合体を含んで中性層を形成しても良い。また、ガイドパターンは、中性層が含むモノマーであるスチレンを成分としたホモポリマー(ポリスチレン)から構成されている。なお、ガイドパターンは、中性層が含むいずれかのモノマー成分からなるホモポリマーから構成されていればよい。また、ブロック共重合体は、中性層を構成しているモノマー成分からなるブロック鎖より構成されている。
【0128】
これらのように、中性層,ガイドパターン,及びブロック鎖を構成することで、基板の上のブロック共重合体が接触する面(中性層)が、2つのブロック鎖の表面自由エネルギーの中間の値の表面自由エネルギーとされ、基板の上に、側面の表面自由エネルギーが2つのブロック鎖の一方の表面自由エネルギーに近い表面自由エネルギーとされた複数のガイドパターンが形成された状態が得られる。
【0129】
この後、窒素雰囲気下のオーブンにより、155℃・16時間の加熱処理を行った後、オーブンから取り出し、室温にて自然放冷を行った。シリコン基板のブロック共重合体薄膜を形成した面を原子間力顕微鏡(AFM)の位相像にて観察したところ、PMMA相によるPMMA領域(パターン領域)とポリスチレン相によるポリスチレン領域(パターン領域)とが交互に繰り返している28nmピッチのラメラ構造が1μm以上の長さに渡って配向している状態が観察された。
【0130】
(比較例1)
実施例1おいて、中性層を形成せずに同様な検討を行った。本比較例1においては、中性層が形成されないため、基板表面には酸化膜が露出している。従って、酸化膜と親和性が高いPMMA相が選択的に酸化膜表面に接触しやすく、パラレルラメラ構造が形成され、ラテラルラメラ構造は形成されない。基板の上のガイドパターン領域をAFMにて観察したところ、ラテラルラメラ構造は観察されず、表面にはポリスチレン相のみが露出しているだけであった。
【0131】
(実施例2)
実施例1と全く同様にして、PMMAとポリスチレンのブロック共重合体のラテラルラメラ構造を、直線状ガイドパターンに対して配向させ、PMMA領域とポリスチレン領域とが交互に繰り返している28nmピッチのラメラ構造が、ガイドパターンに配向している状態を形成した。この後、電子サイクロトロン共鳴(ECR)エッチング装置にて、シリコン基板を酸素プラズマに暴露し、PMMA領域を選択的にエッチングする。この際のエッチングの条件は、反応ガスはO2ガスで、流量は例えば10sccm程度、プラズマ生成のためのマイクロ波パワーは例えば300W程度、エッチング時間は例えば12秒程度である。なお、sccmは流量の単位であり、0℃・1気圧の流体が1分間に1cm3流れることを示す。上述したエッチングにより、PMMA領域、さらに、この下層の中性層がエッチングされ、下地の酸化膜表面が露出する。このエッチングにより、残存するポリスチレン領域と、PMMA領域が除去されたことによる貫通領域とからなるマスクパターンが形成されたことになる。
【0132】
次いで、反応性イオンエッチング(RIE)装置にて、残存するポリスチレン領域からなる上記マスクパターンを用い、露出した酸化膜部分をエッチングする。この際のエッチング条件は、例えば、反応ガスは、例えばCF4/Arガスで、流量は、例えば各々40sccm/120sccm程度、真空度は、例えば6Pa程度、高周波(RF)の自己バイアス電圧は、例えば400V、エッチング時間は、例えば10秒程度で行った。このエッチングにより、酸化膜の層がエッチングされ、下地のシリコン基板の表面が露出する。
【0133】
次に、ECRエッチング装置にて、残存するポリスチレン領域よりなる上記マスクパターンを用い、露出したシリコン基板表面をエッチングする。この際のエッチング条件は、反応ガスは、例えばC12/O2/SF6ガスで、流量は、例えば15sccm/1.5sccm/1.5sccm程度で、マイクロ波パワーは、例えば400W程度で、エッチング時間は、例えば60秒程度で行った。
【0134】
この後、アッシング装置にて残存するポリマー(マスクパターン)を剥離し、さらに、濃度1%の弗酸溶液にて、酸化膜を除去した。このようにしてパターンが転写されたシリコン基板を、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、ピッチ28nm程度、深さ50nm程度の直線状のシリコンパターンが形成されている様子が観察された。
【0135】
次いで、パターンが転写されたシリコン基板を2cm角に切り出してチップを形成し、このチップを硫酸/過酸化水素水(体積比3/1)の混合溶液に4分間浸漬した後、水洗・乾燥して、シリコン基板よりなるチップの表面に約2nmの酸化膜を形成した。次いで、チップを、オクタデシルトリクロロシランのヘキサデカン溶液に24時間浸漬した後、テトラヒドロフランによる洗浄と乾燥とを行い、上記パターンが形成されているチップの表面に離型層を形成して、インプリント用のモールドを作製した。
【0136】
(実施例3)
下地基板として、主表面が(110)面とされた単結晶シリコンよりなる基板を用いた以外は実施例1と全く同様にし、PMMAとポリスチレンのブロック共重合体のラテラルラメラ構造を、<112>軸と平行に形成したガイドパターンに対して配向させた。このようにして上述同様のPMMA領域とポリスチレン領域と形成した後、ECRエッチング装置にて、基板を酸素プラズマに暴露し、PMMA領域を選択的にエッチングする。この際のエッチングの条件は、反応ガスはO2ガスで、流量は例えば10sccm程度、マイクロ波パワーは例えば300W程度、エッチング時間は、例えば12秒程度である。このエッチングにより、PMMA領域、さらにこの下層の中性層がエッチングされ、下地の酸化膜表面が露出する。このエッチングにより、残存するポリスチレン領域と、PMMA領域が除去されたことによる貫通領域とからなるマスクパターンが形成されたことになる。
【0137】
次に、RIE装置にて、上記マスクパターンをマスクにして、露出した酸化膜部分をエッチングする。この際のエッチング条件は、例えば、反応ガスは、例えばCF4/Arガスで、流量は、例えば各々40sccm/120sccm程度、真空度は、例えば6Pa程度、高周波(RF)の自己バイアス電圧は、例えば400V、エッチング時間は、例えば10秒程度で行った。このエッチングにより、酸化膜層がエッチングされ、下地のシリコン基板表面が露出する。
【0138】
次に、上記マスクパターン及び酸化膜のパターンをマスクに、水酸化カリウム溶液よりなるエッチング液を用い、下地シリコン基板の異方性ウエットエッチングを行った。エッチング条件は、エッチング液における水酸化カリウムの濃度は、例えば20重量%、エッチング温度は、例えば10℃、エッチング時間は、例えば4分間である。
【0139】
このようにして異方性エッチングをした後、アッシング装置にて残存するポリマー(マスクパターン)を剥離し、さらに、濃度1%の弗酸溶液にて、酸化膜を除去した。このようにしてパターンが転写された基板を、SEMで観察したところ、ピッチ28nm程度、深さ30nm程度の直線状のシリコンパターンが表面に形成されていた。
【0140】
この後、基板を2cm角に切り出してチップを作製し、硫酸/過酸化水素水(体積比3/1)の混合溶液に4分間浸漬した後、水洗・乾燥して、チップの表面に約2nmの酸化膜を形成した。このチップを、オクタデシルトリクロロシランのヘキサデカン溶液に24時間浸漬した後、テトラヒドロフラン洗浄、乾燥を行い、表面に離型層を形成して、インプリント用のモールドを作製した。
【0141】
(実施例4)
洗浄後の4インチ径のシリコン基板を、濃度が1%の弗酸水溶液に1分間浸漬した後、水洗・乾燥し、シリコン基板の表面から自然酸化膜を除去し、シリコン表面を露出させた。次に、中性層を形成した。中性層としては、PMMAとポリスチレンの交互共重合体の架橋膜を用いた。数平均分子量Mnl235000、多分散度1.85の交互共重合体100重量部に対して、架橋剤として、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリアセトキシメチルベンゼン30重量部、熱酸発生剤として、シクロヘキシルメチル(2−オキソシクロヘキシル)スルフォニウムトリフルオロメタンスルフォネート10重量部を混合し、2−メトキシエチルアセテートに溶解した後、0.2μm径のフィルターで濾過して、濃度1重量%の交互共重合体溶液を調整した。この交互共重合体溶液を、洗浄後の基板にスピン塗布した後、ホットプレート上で200℃・2分間の処理を行い、厚さ7nm程度の架橋ポリマー膜を形成した。その後、本基板をトルエン溶液にて10分間超音波洗浄を行い、未反応物質を溶解除去することで、中性層を形成した。
【0142】
次に、配向のためのガイドパターンを中性層の上に形成した。ガイドパターンの材料として、電子線ネガ型レジストである水素化シルセスキオキサン(HSQ)を用いた。HSQのメチルイソブチルケトン(MIBK)溶液(商品名=Fox−16、ダウコーニング社製)を、さらにMIBKで希釈したHSQ溶液を調整した。このHSQ溶液を中性層が形成された基板の上にスピン塗布した後、ホットプレート上で、110℃・1分間の加熱処理を行い、厚さ40nmのHSQ薄膜を形成した。この後、HSQ膜に対して、加速電圧100kVの電子線を露光量5mC/cm2で露光した後、2.38%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)溶液を用いて、60秒間のパドル現像を行い、中性層の上にガイドパターンを形成した。
【0143】
形成されたガイドパターンをSEMで観察したところ、線幅24nm、1辺の長さが100nm以上の種々の長さをもつ六角形状のパターンが形成されていることが、確認された。
【0144】
次に、ガイドパターンの表面に化学修飾層を形成した。この化学修飾層の材料として、ポリマー末端にヒドロキシル基をもつポリメチルメタクリレート(PMMA)を用いた。数平均分子量Mn;3000、多分散度:1.06である。PMMAをトルエン溶液に溶解させた後、0.2μm径のフィルターで濾過して、濃度2重量%の当該PMMA溶液を調整した。このPMMA溶液を、パターン基板の上にスピン塗布して、50nm程度のPMMA膜を形成し、窒素雰囲気下のオーブンで、170℃・48時間の加熱処理を行った。
【0145】
この加熱中に、ガイドパターンであるHSQ表面上に存在するシラノール(Si−OH)基とPMMAの末端に存在する水酸(−OH)基が脱水反応を起こし、PMMAがガイドパターン表面に固定される。一方、下地の中性層表面にはシラノール基は存在しないので、PMMAは固定されない。従って、ガイドパターンの表面のみにPMMAの分子層からなる化学修飾層を形成することができる。この後、上記基板をトルエン溶液にて10分間超音波洗浄を行い、未反応のPMMAを溶解除去した。
【0146】
次に、化学修飾層が形成されたガイドパターンの間に、ブロック共重合体の薄膜を形成した。ブロック共重合体として、数平均分子量Mn:43000、多分散度1.3のPMMA(Mn:33000)とポリスチレン(Mnl10000)の非対称ジブロックコポリマーを用いた。このブロック共重合体をトルエン溶液に溶解した後、0.2μm径のフィルターで濾過して、濃度1重量%の当該ブロック共重合体溶液を調整した。このブロック共重合体溶液を、上記ガイドパターンが形成された基板の上にスピン塗布した後、ホットプレート上で110℃・2分間の加熱処理を行い、膜厚32nmのブロック共重合体薄膜を形成した。
【0147】
この後、窒素雰囲気下のオーブンで、175℃・16時間の加熱処理を行った後、オーブンから取り出し、室温にて自然放冷を行った。このようにして、基板の上に形成されたミクロ相分離構造をAFMの位相像にて観察したところ、六角形状のガイドパターンより構成される枠の内側に、PMMA相からなるドット(PMMA領域)が31nmピッチで六方格子状配列している様子が観察された。
【0148】
(比較例2)
実施例4おいて、中性層を形成せずに、同様な検討を行った。本比較例2においては、中性層が形成されないため、基板の表面には酸化膜が露出している。従って、酸化膜と親和性が高いPMMA相が選択的に酸化膜表面に接触しやすく、パラレルシリンダー構造が形成され、垂直配向シリンダー構造は形成されない。基板の上に形成されたガイドパターン領域をAFMにて観察したところ、ドット構造は観察されず、表面にはポリスチレン相のみが露出しているだけであった。
【0149】
(実施例5)
実施例4と全く同様にして、PMMAとポリスチレンのブロック共重合体による垂直配向シリンダー構造を、六角形状のガイドパターンの内側に、ガイドパターンに沿って六方格子上に配列させた。この後、電子サイクロトロン共鳴(ECR)エッチング装置にて、基板を酸素プラズマに暴露し、PMMA相よりなるドット(シリンダー構造)の部分を選択的にエッチングする。この際のエッチングの条件は、反応ガスはO2ガスで、流量は例えば10sccm程度、マイクロ波パワーは例えば200W程度、エッチング時間は、例えば10秒程度である。このエッチングにより、PMMA相よりなるドットの部分、さらに、この下層の中性層がエッチングされ、ポリスチレン相からなるホールパターン(マスクパターン)が形成される。なお、ホールパターンの開口部の底には、下地のシリコン基板が露出するが、O2プラズマへの暴露により、露出している表面にはプラズマ酸化膜が形成されている。
【0150】
次に、反応性イオンエッチング(RIE)装置にて、残存するポリスチレン相よりなるホールパターンをマスクにし、露出した酸化膜部分をエッチングする。この際のエッチング条件は、例えば、反応ガスは、例えばCF4/CHF3/Arガスで、流量は、例えば各々40sccm/80sccm/120sccm程度、真空度は、例えば6Pa程度、高周波(RF)の自己バイアス電圧は、例えば400V、エッチング時間は、例えば10秒程度で行った。このエッチングに処理より、ホールパターンの開口部の底に存在するプラズマ酸化膜が除去される。
【0151】
次に、ECRエッチング装置にて、残存するポリスチレン相よりなるホールパターンをマスクにし、この開口部の底部に露出したシリコン基板表面をエッチングする。この際のエッチング条件は、反応ガスは、例えばCl2/O2/SF6ガスで、流量は、例えば15sccm/1.5sccm/1.5sccm程度で、マイクロ波パワーは、例えば400W程度で、エッチング時間は、例えば60秒程度で行った。
【0152】
この後、アッシング装置にて残存するポリマーを剥離し、さらに、濃度1%の弗酸溶液にて、酸化膜を除去した。このようにしてパターンが転写された基板を、SEMで観察したところ、サイズ9nm程度、ピッチ29nm程度、深さ50nm程度のホールパターンが、六方格子状に配列している様子が観察された。
【0153】
次に、上記ホールパターンが形成された基板を2cm角に切り出してチップとし、硫酸/過酸化水素水(体積比3/1)の混合溶液に4分間浸漬した後、水洗・乾燥し、切り出したチップの表面に約2nmの酸化膜を形成した。このチップを、オクタデシルトリクロロシランのヘキサデカン溶液に24時間浸漬した後、テトラヒドロフラン洗浄、乾燥を行い、表面に離型層を形成して、インプリント用のモールドを作製した。
【0154】
(実施例6)
4インチ径のシリコン基板を、硫酸/過酸化水素水(体積比3/1)の混合溶液に4分間浸漬した後、水洗・乾燥して、シリコン基板の表面に約2nmの酸化膜を形成した。次に、中性層を形成した。形成した中性層の材料として、ポリマー末端に、各々α−ヒドロキシル基、及びω−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジン−1−オキシル(TEMPO)基をもつポリメチルメタクリレートとポリスチレンのランダム共重合体の単分子膜を用いた。数平均分子量Mn:11600、多分散度は1.7、ポリスチレンのモル比は64%程度である。このランダム共重合体をトルエンに溶解した後、0.2μm径のフィルターで濾過して、濃度1重量%の当該ランダム共重合体のトルエン溶液を調整した。
【0155】
このランダム共重合体溶液を、洗浄後の基板にスピン塗布し、30nm程度の膜厚をもつランダム共重合体膜を形成した。この後、窒素雰囲気下のオーブンで、140℃・48時間の加熱処理を行った。加熱中に、既に形成されている酸化膜の表面に存在するシラノール基と、ランダム共重合体の末端に存在する水酸基が脱水反応を起こし、ランダム共重合体が基板表面に固定される。この後、シリコン基板をトルエン溶液にて10分間超音波洗浄を行い、未反応のランダム共重合体を溶解除去すれば、酸化膜の上に中性層が形成される。
【0156】
次に、中性層の上に配向のためのガイドパターンを形成した。このガイドパターンの材料として、電子線ネガ型レジストである水素化シルセスキオキサン(HSQ)を用いた。HSQのメチルイソブチルケトン(MIBK)溶液(商品名:Fox−16、ダウコーニング社製)を、さらにMIBKで希釈してHSQ溶液を調整した。このHSQ溶液を中性層が形成された基板の上にスピン塗布し、ホットプレート上で、110℃・1分間の加熱処理を行い、厚さ40nmのHSQ薄膜を形成した。この後、形成したHSQ膜に対して、加速電圧100kVの電子線を露光量5mC/cm2で露光した後、2.38%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)溶液を用いて、60秒間のパドル現像を行った。
【0157】
このようにして形成されたHSQ薄膜よりなるガイドパターンをSEMで観察したところ、線幅24nm、対辺の間の距離が100nm以上で、かつ種々の長さをもつ、図12に示したようなL字型あるいは十字型のパターンが形成できていることを確認できた。
【0158】
さらに、ガイドパターンの表面に形成する化学修飾層の材料として、ポリマー末端に水酸基をもつ、数平均分子量Mn:3000、多分散度:1.06のポリスチレンを用いた。ポリスチレンをトルエン溶液に溶解させた後、0.2μm径のフィルターで濾過して、濃度2重量%の当該ポリスチレン溶液を調整した。このポリスチレン溶液を、パターン基板上にスピン塗布して、50nm程度のポリスチレン膜を形成し、窒素雰囲気下のオーブンで、110℃・48時間の加熱処理を行った。加熱中に、ガイドパターン表面のみにポリスチレンの分子層を形成することができる。その後、本基板をトルエン溶液にて10分間超音波洗浄を行い、未反応のポリスチレンを溶解除去した。
【0159】
次に、ポリスチレンの分子層よりなる化学修飾層が形成されたガイドパターンの間に、ブロック共重合体の薄膜を形成した。ブロック共重合体として、数平均分子量Mn:36000、多分散度1.07のPMMA(Mnl18000)とポリスチレン(Mn:18000)の対称ジブロックコポリマーを用いた。このブロック共重合体をトルエン溶液に溶解した後、0.2μm径のフィルターで濾過して、ブロック共重合体溶液を調整した。このブロック共重合体溶液を、上記ガイドパターンが形成された基板の上にスピン塗布した後、ホットプレート上で110℃・2分間の加熱処理を行い、膜厚29nmのブロック共重合体薄膜を形成した。
【0160】
この後、窒素雰囲気下のオーブンで、195℃・16時間の加熱処理を行った後、オーブンから取り出し、室温にて自然放冷を行った。このようにして形成したミクロ相分離構造を原子間力顕微鏡(AFM)の位相像にて観察した。L字型のガイドパターンでは、直線領域では、直線状のポリスチレン領域が2本配向しており、角領域では、2本のポリスチレン領域に挟まれて、さらにドット状のポリスチレン相が形成できており、図12(a)と同様なミクロ相分離構造が形成できていることが確認された。
【0161】
さらに、十字型ガイドパターンでは、十字の中央部に、ドット状のポリスチレン相が形成され、4本のライン状のポリスチレン領域がドットに近接して形成できており、図12(b)と同様なミクロ相分離構造が形成できていることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0162】
【図1】ブロック共重合体のミクロ相分離の状態を示す相図である。
【図2】ラメラ構造をとるブロック共重合体の構成例を示す構成図である。
【図3】ドットあるいはシリンダー構造をとるブロック共重合体の構成例を示す構成図である。
【図4】溝構造内でのブロック共重合体薄膜のミクロ相分離の構成例を示す構成図である。
【図5】溝構造内でのブロック共重合体薄膜のミクロ相分離の構成例を示す構成図である。
【図6】溝構造内でのブロック共重合体薄膜のミクロ相分離の構成例を示す構成図である。
【図7】本発明の実施形態に係るパターン形成方法を説明するための工程図である。
【図8】本発明の実施形態に係る他のパターン形成方法を説明するための工程図である。
【図9】本発明の実施形態に係る他のパターン形成方法を説明するための工程図である。
【図10】本発明の実施形態に係る他のパターン形成方法を説明するための工程図である。
【図11】本発明の実施形態に係る他のパターン形成方法を説明するための平面図。
【図12】本発明の実施形態に係る他のパターン形成方法を説明するための平面図。
【符号の説明】
【0163】
701…基板、702…ガイドパターン、703…ブロック共重合体薄膜、704…ブロック鎖A領域、704a…ブロック鎖A相、705…ブロック鎖B領域、705a…ブロック鎖B相、801…中性層、901…化学修飾層。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミクロ相分離構造のより精密な配向制御を行うことでより微細なパターンを形成するパターン形成方法及びこのパターン形成方法により形成されたモールドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、大規模集積回路(LSI)のさらなる微細化に伴い、大きさが50nmを切るような構造体を加工する技術が実現しつつある。これらの加工技術の解像性や精度は、主にリソグラフィー技術により決定付けられる。リソグラフィー技術とは、少なくとも次の工程を有するものである。被加工基板の上に感光性樹脂膜を形成した後、感光性樹脂膜の上の所定の領域のみに感光性樹脂膜が感光する放射線源、例えば、紫外線、X線、電子線、イオン線などを選択的に照射し、さらに必要ならば熱処理を行うことにより、照射領域に化学的な変化をもたらし、潜像を形成する。このようにして潜像を形成した後、現像液に浸漬する。照射領域内における感光性樹脂の化学的変化により、照射領域と非照射領域との現像液に対する溶解速度の違いが生じ、この溶解速度の遅い領域が、パターンとして残る。照射領域が溶解除去されるものをポジ型感光性樹脂と呼び、非照射領域が溶解除去されるものをネガ型感光性樹脂と呼ぶ。現像後に残存するパターンをエッチングのマスクとして用いることにより、照射領域の形状を下地の基板に転写することができる。
【0003】
ところで、米国半導体協会が発表している国際半導体ロードマップ2005年版によれば、2020年には、線幅14nmでパターンピッチ28nmの繰り返しパターンの形成が必要になるとされている。しかしながら、現在量産に用いられている、エキシマレーザーリソグラフィーにおいては、線幅65nm,パターンピッチ130nmの密集(繰り返し)パターンを作製するのが限界である。また、既存の露光法のうちで最も解像性の高い電子線露光法を用いても、ピッチ23nmのパターン形成が限界である。しかしながら、将来の高機能デバイスとして期待されている単電子トランジスタ,量子コンピューター,及び発光素子などの電子デバイスを十分高温で動作させるためには、10nm程度以下のサイズのナノ構造を、このサイズと同等の距離に近接させて形成することが要求されている。このような高解像かつ高密度なパターンの形成は、既存のリソグラフィー技術のようなトップダウン技術で作製するのは現時点では困難である。
【0004】
上述したような状況の中で、分子の自己組織化などの、いわゆるボトムアップ技術を用いて微細パターンを形成しようとする試みが始まっている。このようなボトムアップ技術を利用する手法として最も着目を浴びている方法が、ブロック共重合体の自己組織化構造の1つであるミクロ相分離構造をエッチングのマスクとして用いる方法である。例えば、特許文献1では、ブロック共重合体を基板の上に塗布してミクロ相分離構造を形成した後、オゾンに暴露し、特定のブロック鎖により形成されたブロック相を選択的に除去し、この後残存するパターンをエッチングマスクとして下地基板に転写する方法が開示されている。
【0005】
また、ミクロ相分離構造を形成した後、ドライエッチング又はエネルギー線の照射により特定のブロック相を選択的に除去し、残存するパターンをエッチングマスクとして利用し、電気化学セル及び中空糸フィルターなどを製造する方法が提案されている。
また、電界を用いてミクロ相分離構造を配向させ、ナノシリンダー構造を形成する方法が提案されている。これらのような微細加工の手法は、ブロック共重合体リソグラフィーと呼ばれている。
【0006】
ブロック共重合体リソグラフィーをデバイス製造及び他の応用に用いるためには、ミクロ相分離により形成された自己組織化ナノ構造を特定の領域のみに形成し、かつ所望の方向へ配列させることが必須となる。これらの位置制御及び配向制御を実現するために、以下に示すような種々の方法が提案されている。
【0007】
従来技術1として、溝構造を配列のガイドパターンとして用いた、埋込み型のブロック共重合体の自己組織化ナノ構造の配列方法について説明する。この技術では、先ず、基板の表面にあらかじめ溝構造を作製しておき、作製してある溝構造内のみで埋込型の自己組織化ナノ構造を形成させると、これらが溝構造の側壁に沿って配列する。埋込み構造とは、ブロック共重合体の1つのブロック成分からなるドットやシリンダー(円柱)構造を、もう片方のブロック成分が取り囲み、膜内に埋め込まれている構造である。
【0008】
例えば、非特許文献1では、ナノインプリント法により、ノボラック樹脂膜に金型を押し付けて溝構造を作製し、この中で、ポリスチレンとポリメチルメタクリレートからなるブロック共重合体のミクロ相分離構造を形成し、40nm程度のポリスチレンの埋込み型のドット構造を配列させる方法を開示している。さらに、非特許文献2では、電子線露光法とドライエッチング法により、シリコン酸化膜の溝構造を作製し、この中で、ポリスチレンとポリフエロセニルジメチルシラン(PFS)からなるブロック共重合体のミクロ相分離構造を形成し、20nm程度のPFSの埋込み型のドット構造を配列させる方法を開示している。
【0009】
加えて、非特許文献2では、溝構造の幅を調節することにより、ドット配列の列数を制御する方法を開示している。さらに、非特許文献3では、60度の角をもつ2次元の溝構造を水素化シルセスキオキサンを用いて作製し、上記埋込み型のドットを上記角の部分に配置させる方法を開示している。
【0010】
また、非特許文献4では、フォトリソグラフィーとドライエッチングにより、シリコン窒化膜の溝構造を形成し、その中で、ポリスチレンとポリエチレンプロピレンからなるブロック共重合体のミクロ相分離を形成し、23nmピッチのポリスチレンの埋込み型のシリンダー構造を基板表面及び溝構造の側壁に沿って配向させる方法を開示している。
【0011】
次に、従来技術2として、溝構造を用いた、貫通型のブロック共重合体の自己組織化ナノ構造の配列方法について説明する。従来技術1とほぼ同様であるが、基板の上に溝構造を形成した後、この表面を化学修飾することによって、基板表面の表面自由エネルギーを、ブロック共重合体の各ブロック鎖の表面自由エネルギーの中間の値に制御する工程が加わることが、従来技術2の特徴である。この工程により、特定のブロック鎖が基板表面に偏析することなく、基板表面に垂直に配向した自己組織化ナノ構造を形成することができる。
【0012】
例えば、非特許文献5の技術では、あらかじめ溝構造を形成しておき、さらに、形成した溝構造の表面に自己組織化単分子膜を形成することにより、溝構造表面の表面自由エネルギーを調節する。この後、溝構造の中でポリスチレンとポリメチルメタクリレートからなるブロック共重合体のミクロ相分離構造を形成し、基板表面に対して垂直方向に配向した自己組織化シリンダー構造を形成するようにしている。また、非特許文献6の技術では、上記同様に溝構造を形成し、さらに、形成した溝構造の表面に、ポリスチレンとポリメチルメタクリレートのランダム共重合体を化学的に結合させて、溝構造表面を修飾する。この後、溝構造の中で、ポリスチレンとポリメチルメタクリレートからなるブロック共重合体のミクロ相分離構造を形成し、基板表面に対して垂直方向に配向させるようにしている。
【0013】
次に、従来技術3として、化学修飾ナノパターンを用いた、ブロック共重合体の自己組織化ナノ構造の配列方法について説明する。この技術では、形成するミクロ相分離構造と同等のサイズ及びピッチ間隔をもつ、厚さ数nmの極薄の化学修飾パターンを基板表面にあらかじめ形成しておく。この際、パターン部分は、各ブロック鎖と親和性の高い材料、すなわち各ブロック鎖の表面自由エネルギーと近い表面自由エネルギーをもつ材料で形成されている。この後、パターンの上に、ポリスチレンとポリメチルメタクリレートからなるブロック共重合体のミクロ相分離構造を形成し、48nmピッチのラメラ構造を基板に対して垂直に配向させるようにしている(特許文献2及び非特許文献7参照)。さらに、2次元状の化学修飾パターンを用いることにより、2次元のラインパターンを形成する方法も提案されている(非特許文献8参照)。
【0014】
【特許文献1】U.S.Patent 5,948,470
【特許文献2】U.S.Patent 6,746,825,B2
【非特許文献1】K.Asakawa et al., "Nano-patterning for patterned medhia using block-copolymer", Journal of Photopolymer Science and Technology, Vol.15, pp.465-470,2002.
【非特許文献2】J.Y.Cheng et al., "Nanostructure engineering by templated self-assembly of blockcopolymers", Nature materials, Vol.3, pp.823-828, 2004.
【非特許文献3】J.Y.Cheng et al., "Pattern Registration Between Spherical Block-Copolymer Domains and Topographical Templates", Advanced Materials, Vol.18, pp.597-601, 2006.
【非特許文献4】D.Sundrani et al.,"Guiding Polymers to Perfection: Maicroscopic Alignment of Nanoscale Domains", Nano Letters, Vol.4, pp.273-276, 2004.
【非特許文献5】X.Yang et al.,"Nanoscopic templates using self-assembled cylindrical diblock copolymers for patterned media", Journal of Vacuum Science and Technology, B22, pp.3331-3334, 2004.
【非特許文献6】S.Xiao et al.,"Graphoepitaxy of cylinder-foaming block copolymers for use as templates to pattern magnetic metal dot arrays", Nanotechnology, Vol.16, pp.S324-S329,2005.
【非特許文献7】S.O.Kim et ai.,"Epitaxial self-assembly of block copolymers on lithographically defined nanopatternd substrates", Nature, Vol.424, pp.411-414, 2004
【非特許文献8】M.P.Stpukovich et al.,"Directed Assembly of Block Copolymer Blends into Nonregular Device-Oriented Structures", Science, Vol.308, pp.1422-1446, 2005.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、従来技術1に示した手法では、埋込み型の自己組織化ドット又はシリンダー構造の単純な繰り返し構造にしか適用することができないという問題があった。また、これらの埋込み型構造では、転写マスクのパターンサイズに相当する横方向のサイズと深さ方向のサイズが等しいことから、高々アスペクト比が1しか得られない。このような低アスペクト比の転写マスクでは、エッチング耐性が不十分となる。さらに、パターンサイズが小さくなるとともに、エッチング速度の局所的なバラツキやナノ構造の深さ方向のサイズバラツキを無視することができず、忠実な転写は困難となる。従って、従来技術1に示した手法では、パターンを忠実に転写できないという問題があった。
【0016】
また、従来技術1に示した手法では、あらかじめ基板に溝構造を作製する必要があり、作製プロセスが煩雑となる問題があった。さらに、非特許文献3で開示された方法では、溝構造の材料として、水素化シルセスキオキサンを用いているが、溝構造の側壁のラフネスを低減する目的のみで使用されており、酸化膜で形成した溝構造を用いるのと本質的に変わらず、上記の問題は解消していない。
【0017】
次に、従来技術2に示した手法では、自己組織化シリンダー構造を用いたドットやホール構造の作製にしか適用できないという問題があった。また、溝構造の底面と側面の表面親和性を別々に制御することができないため、非特許文献5に示されているように、溝構造側壁部分で、2つのドメインが共存してしまい、溝構造内にシリンダー構造を完全に分離して形成することができないという問題があった。また、非特許文献4では、シリンダー構造を溝構造内に完全分離して形成しているが、用いるブロック共重合体ごとに、表面修飾材料、方法、形成条件を見出さなければならず、多大な労力がかかるという問題があった。なお、非特許文献4では、表面修飾材料、方法、形成条件は一切開示されていない。また、あらかじめ基板に溝精造を形成する必要があり、従来技術1と同様に、作製プロセスが複雑となる問題があった。
【0018】
また、従来技術1,2に示した手法では、周期的な構造を形成することは可能であるが、周期的でなく、かつ複雑な形状をもった2次元パターンを形成すること、さらにはドットとラインを自己整合的に形成することは不可能であった。
【0019】
次に、従来技術3に示した手法では、アスペクト比が高く、かつ2次元の複雑な形状のラインパターンを形成することができるものの、得られるラインパターンのサイズは、化学修飾パターンのサイズとほぼ同じである。従って、化学修飾パターンを形成するのに用いる既存のリソグラフィー技術の解像度を超えることができないという問題があった。さらに、得られるパターン形状は、ガイドパターンである化学修飾パターンのレイアウトと同じであり、ガイドパターンと異なる形状のパターンを形成することはできないという問題があった。
【0020】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、既存のリソグラフィー技術よりも小さい寸法を有した様々な形状のパターンが形成できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明に係るパターン形成方法は、基板の上に互いに異なる表面自由エネルギーを持つ少なくとも2つのブロック鎖から構成されたブロック共重合体よりなる薄膜を形成し、ブロック共重合体をミクロ相分離することでパターンを形成するパターン形成方法において、基板の上のブロック共重合体が接触する面が、2つのブロック鎖の表面自由エネルギーの中間の値の表面自由エネルギーとされた状態とする第1工程と、基板の上に、側面の表面自由エネルギーが2つのブロック鎖の一方の表面自由エネルギーに近い表面自由エネルギーとされた複数のガイドパターンが形成された状態とする第2工程と、ガイドパターンの間の基板の上に、ブロック共重合体よりなる薄膜が形成された状態とする第3工程と、薄膜を構成するブロック共重合体がミクロ相分離されて、2つのブロック鎖の相よりなる2つのパターン領域が薄膜に形成された状態とする第4工程とを少なくとも備えるようにしたものである。この結果、例えば2つのガイドパターンの対向する側面の間に、基板の法線方向の面で分離されて2つのパターン領域が、ミクロ相分離による寸法レベルの間隔で交互に配列され、かつ、各パターン領域はガイドパターンの延在方向に配向される。
【0022】
また、上記パターン形成方法において、第1工程では、基板の上に2つのブロック鎖の表面自由エネルギーの中間の値の表面自由エネルギーとされた中性層を形成することで、基板の上のブロック共重合体が接触する面が、2つのブロック鎖の表面自由エネルギーの中間の値の表面自由エネルギーとされている状態とし、第3工程では、中性層の上に接して薄膜が形成された状態とするとよい。この場合、中性層は、ブロック共重合体を構成する各ブロック鎖のモノマーを含む共重合体から形成すればよい。
【0023】
また、中性層は、少なくとも2つ以上のモノマー成分からなる共重合体を含んで形成し、ガイドパターンは、中性層が含むいずれかのモノマー成分からなるホモポリマーを含んで形成し、ブロック共重合体は、中性層が含むモノマー成分からなるブロック鎖を含んでいるようにすればよい。例えば、中性層が含む1つのモノマーは、スチレンであり、ガイドパターンは、ポリスチレンを含んで形成し、ブロック共重合体は、ポリスチレンからなるブロック鎖を含んでいればよい。
【0024】
また、ガイドパターンは、少なくともブロック共重合体のいずれかのブロック鎖と同じモノマー成分からなるポリマーを含んだ状態に形成することで、側面の表面自由エネルギーが2つのブロック鎖の一方の表面自由エネルギーに近い表面自由エネルギーとされた状態とすればよい。
【0025】
また、上記パターン形成方法において、ガイドパターンの表面に化学修飾層を形成することで、ガイドパターンの側面が、2つのブロック鎖の一方の表面自由エネルギーに近い表面自由エネルギーとされた状態とし、この後、ブロック共重合体よりなる薄膜が形成された状態とするようにしてもよい。
【0026】
この場合、化学修飾層は、少なくともブロック共重合体のいずれかのブロック鎖のモノマー成分を含むポリマーから形成し、化学修飾層を形成するポリマーは、少なくとも分子末端に水酸基又はカルボキシル基を持つようにすればよい。
【0027】
上記パターン形成方法において、中性層は、少なくとも2つ以上のモノマー成分からなる共重合体を含んで形成し、ガイドパターンは、少なくともポリシロキサンを含む感光性樹脂を用いて形成し、化学修飾層は、中性層が含むいずれか1のモノマー成分からなるブロック鎖を含み、かつ少なくとも分子末端に水酸基又はカルボキシル基を持つポリマーから形成し、ブロック共重合体は、中性層が含むモノマー成分からなるブロック鎖を含んでいるようにすればよい。
【0028】
例えば、中性層が含む1つのモノマーは、スチレンであり、化学修飾層は、少なくとも分子末端に水酸基又はカルボキシル基を持つポリスチレンを含んで形成し、ブロック共重合体は、ポリスチレンからなるブロック鎖を含んでいるようにすればよい。また、中性層が含むモノマーは、スチレン及びメチルメタクリレートであり、化学修飾層は、少なくとも分子末端に水酸基又はカルボキシル基を持つポリスチレン、もしくは、少なくとも分子末端に水酸基又はカルボキシル基を持つポリメチルメタクリレートの一方を含んで形成し、ブロック共重合体は、ポリスチレンとポリメチルメタクリレートのブロック共重合体から構成されているようにしてもよい。なお、ポリシロキサンは、水素化シルセスキオキサンであればよい。
【0029】
また、上記パターン形成方法において、複数のガイドパターンは、互いに平行に配置されているものであればよい。また、複数のガイドパターンは、多角形状に配置され、薄膜は、多角形状の2次元的な閉空間内に形成されるようにしてもよい。
【0030】
上記パターン形成方法において、上記工程に加えて、薄膜のいずれかのパターン領域を選択的に除去してマスクパターンが形成された状態とする第5工程と、マスクパターンを用いて基板の上に新たなパターンが形成された状態とする第6工程とを備える。
【0031】
また、本発明に係るモールドは、上述したパターン形成方法により形成されたモールドであって、新たなパターンが形成された基板より構成されているものである。このモールドによれば、既存のリソグラフィー技術よりも小さい寸法を有した様々な形状の転写用のパターンを備えることがで、このモールドを用いたインプリントにより既存のリソグラフィー技術よりも小さい寸法のパターン形成が可能となる。
【発明の効果】
【0032】
以上説明したように、本発明では、基板の上のブロック共重合体が接触する面は、ブロック共重合体を構成する互いに異なる表面自由エネルギーをもつ2つのブロック鎖の表面自由エネルギーの中間の値の表面自由エネルギーとし、ガイドパターンの側面は、2つのブロック鎖の一方の表面自由エネルギーに近い表面自由エネルギーとし、このようにしたガイドパターンの間の基板の上に、上記ブロック共重合体よりなる薄膜が形成された状態とするようにした。この結果、本発明によれば、既存のリソグラフィー技術よりも小さい寸法を有した様々な形状のパターンが形成できるようになるという優れた効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
はじめに、バルク状態のブロック共重合体のミクロ相分離について間単に説明する。なお、高分子もしくはポリマーとは、モノマー分子が、重合反応により、長く鎖状につながったものである。単一のモノマーが重合してできた高分子をホモポリマー、2種類以上のモノマーが重合してできた高分子を共重合体と呼ぶ。さらに、2種類以上の異なるモノマーがランダム配列している高分子をランダム共重合体、2種類の異なるモノマーが交互に配列している高分子を交互共重合体と呼ぶ。また、異なる2種類以上のホモポリマーが、直線的に化学した高分子をブロック共重合体と呼ぶ。
【0034】
一般に、2種類以上のホモポリマーを混合すると、均一に混合することは稀であり、異なるホモポリマー同士が反発する結果、同種のホモポリマー同士が凝集して相分離を起こす。ブロック共重合体においても同様な相分離を起こすが、異なるホモポリマーが分子内で化学的に結合しているため、相の大きさは大きくなることができず、ブロック共重合体の大きさと同程度となる。このようなブロック共重合体の相分離は、ミクロ相分離と呼ばれ、数nmから100nm程度の相領域が形成される。
【0035】
ミクロ相分離したドメインの形状は、ブロック共重合体の重合度,各ブロック鎖の化学的性質,及び各ブロック鎖の体積分率などに大きく依存する。以下、ジブロック共重合体を例に挙げて説明する。ジブロック共重合体とは、2種類のホモポリマーが結合した共重合体であり、2種類のブロック鎖A及びブロック鎖Bから構成される。
【0036】
図1に、上述したブロック共重合体のミクロ相分離の相図を示す。図1において、横軸は、ブロック鎖Aの体積分率を表し、縦軸はχNを表す。χは、ブロック鎖Aとブロック鎖Bの相互作用パラメーターと呼ばれる定数であり、χの値が大きいほど相溶性が低く、相分離しやすい。また、Nは重合度であり、Nが大きいほど相分離しやすい。従って、両者の積χNは、相分離のしやすさの指標として用いられており、χNの値が大きいほど相分離しやすく、逆にχNの値が小さくなりすぎると、もはや相分離せずに無秩序構造となる。
【0037】
χNの値が十分大きく相分離が起きる場合、ミクロ相分離したドメインの形状は各ブロック鎖の体積分率に大きく依存する。例えば、ブロック鎖Aの体積分率が0から0.5に変化する場合、ドメイン形状は、無秩序構造,球状構造,シリンダー構造,ラメラ構造の順に変化していく。さらに、ブロック鎖Aの体積分率が0.5から1.0に増加する場合、ラメラ構造,シリンダー構造,球状構造,無秩序構造と逆の順に変化していく。
【0038】
次に、薄膜状態でのブロック共重合体のミクロ相分離について、簡単に説明する。薄膜状態では、ブロック鎖同士の相互作用に加えて、界面とブロック鎖との相互作用を考慮する必要がある。平坦な基板の上に、ジブロック共重合体膜を形成してミクロ相分離を誘起した場合、基板表面と親和性の高いブロック鎖が、選択的に基板表面に接触する。一方、薄膜表面では、表面自由エネルギーの小さいブロック鎖が表面に露出しやすい。
【0039】
図2に、ラメラ構造をとるブロック共重合体の構成例を示す。ここでは、ブロック鎖Aの方が、ブロック鎖Bよりも表面自由エネルギーが低い場合を考える。ブロック鎖Aが基板201の表面との親和性が高い場合、図2(a)に示すように、ブロック共重合体薄膜203は、膜厚がnLに量子化された対称構造をとる。ここで、nは整数、Lは、ブロック共重合体を相分離させたときの、繰り返し周期の幅である。ジブロック共重合体の場合、A相204→A相204→B相205→B相205→A相204→A相204→B相205→B相205・・・の順に相分離し、連続した2つのA相204と2つのB相205により、繰り返しの単位(ミクロ相分離構造)が構成される。この繰り返しの単位がLである。
【0040】
図2の場合、ブロック鎖Aが基板201の表面との親和性が高いため、基板201の表面より、A相204が開始されるため、ミクロ相分離構造は、A相204→B相205→B相205→A相204の順に積層されたものとなり、これらミクロ相分離構想が積層されるブロック共重合体薄膜203は、相が積層される方向に対称な構造となる。
【0041】
一方、ブロック鎖Bが基板201の表面との親和性が高い場合、図2(b)に示すように、基板201に接触してB相205から開始され、この上にA層204が形成され、この上に、A相204→B相205→B相205→A相204の順に積層されたミクロ相分離構造が繰り返される構造となる。このように、ブロック鎖Bが基板201の表面との親和性が高い場合、ブロック共重合体薄膜203aは、膜厚が(n+1/2)Lに量子化された非対称構造をとる。このように、ラメラ構造の各ドメイン界面が基板の表面と平行に配向している構造をパラレルラメラ構造と呼ぶこととする。
【0042】
図3に、ドットあるいはシリンダー構造をとるブロック共重合体の構成例を示す。ここでは、ブロック鎖Bがドットやシリンダーを形成し、かつブロック鎖Aの方が、ブロック鎖Bよりも表面自由エネルギーが低い場合を考える。ブロック鎖Aが基板表面と親和性が高い場合、図3(a)に示すように、ブロック共重合体薄膜303は、ブロック鎖Bからなるドットあるいはシリンダー構造のB相305がブロック鎖AからなるA層304に埋め込まれた構造のミクロ相分離構造が繰り返され、膜厚がnLに量子化された対称構造となる。この場合、繰り返しの単位(L)となる1つのミクロ相分離構造では、A層304は、連続した2つのA相から構成され、これら連続した2つのA相に挟まれて、ドットあるいはシリンダー構造のB相305が配置されているものと考えることができる。
【0043】
一方、ブロック鎖Bが基板表面との親和性が高い場合、図3(b)に示すように、基板301に接触してブロック鎖BからなるB相305aが形成され、この上に、ブロック鎖AからなるA層304aが形成され、この上に、B相305がA層304に埋め込まれたミクロ相分離構造が繰り返される構造となる。このように、ブロック鎖Bが基板表面との親和性が高い場合、ブロック共重合体薄膜303aは、(n+1/2)Lに量子化された非対称構造をとることになる。
【0044】
次に、第3として、溝構造内でのブロック共重合体薄膜のミクロ相分離について、簡単に説明する。先ず、溝構造内での、ドットあるいはシリンダー構造をとるブロック共重合体のミクロ相分離の様子を、図4を用いて説明する。図4に示すように、溝構造401は、凹部401aの幅Ws、凸部401bの幅Wgとされている。このように形成された溝構造401の上に、ブロック鎖Bが基板表面との親和性が高く、かつブロック鎖Aの方がブロック鎖Bよりも表面自由エネルギーが低いブロック共重合体の膜を適当な膜厚に形成し、ミクロ相分離を誘起する。このことにより、先ず、溝構造401の表面に接触してブロック鎖BからなるB相405aが形成され、この上にブロック鎖AからなるA相404aが形成される。
【0045】
また、凹部401aでは、膜厚が(3/2)Lに量子化され、A相404aに続き、ドットあるいはシリンダー構造のB相405がA層404の中に埋め込まれた構造が形成される。この構造では、A層404は、連続した2つのA相から構成され、これら連続した2つのA相に挟まれて、ドットあるいはシリンダー構造のB相405が配置されているものと考えることができる。
【0046】
一方、凸部401bの上には、膜厚が(1/2)Lに量子化され、ドットあるいはシリンダー構造のB相が形成されることがない。このように、溝構造内での、埋込み型のドットあるいはシリンダー構造の形成は、膜厚の量子化が非常に有効に働いて、溝構造内のみに自己組織化構造が形成される。さらに、溝構造の溝(凸部)の延在方向に沿って、ドット構造やシリンダー構造を配列又は配向させることができる。
【0047】
しかしながら、従来技術で述べたように、埋込み型のドットあるいはシリンダー構造では、十分なエッチング耐性が得られないため、高解像性パターンの転写マスクとしては、不適当である。転写マスクとしては、界面が基板表面の法線方向に配向したシリンダー構造やラメラ構造を用いることにより、アスペクト比が高く、十分なエッチング耐性をもった転写マスクをとして用いることができる。
【0048】
次に、溝構造内での、ラメラ構造をとるブロック共重合体のミクロ相分離の様子を、図5を用いて説明する。ブロック鎖Bが基板表面との親和性が高く、かつブロック鎖Aの方が、ブロック鎖Bよりも表面自由エネルギーが低いものを用いた場合を説明する。図5に示すように、溝構造501は、凹部501aの幅Ws、凸部501bの幅Wgとされている。このように形成された溝構造501の上に、上記構成のブロック共重合体の膜を適当な膜厚に形成し、ミクロ相分離を誘起すると、前述同様に、凹部501aでは膜厚が(3/2)Lに量子化され、凸部501bの上では膜厚が(1/2)Lに量子化される。
【0049】
ラメラ構造をとる場合、各相の界面は基板表面と平行に配向し、凹部501aでは、B相505a,A相504,及びこの上のA相504に続き、2つのB相からなるB相505が形成される。このように、A相とB相とが基板表面の法線方向に配列されないため、ラメラ構造を下地基板に転写することは不可能である。
【0050】
ラメラ構造の界面を基板表面に垂直に配向させるためには、特定のブロック鎖が選択的に基板表面に接触しないように、基板表面の表面自由エネルギーを、ブロック共重合体を構成するいずれのブロック鎖の表面自由エネルギーとも異なる値にすればよい。例えば、ブロック共重合体を構成するブロック鎖Aとブロック鎖Bの表面自由エネルギーの中間の値に、基板表面の表面自由エネルギーの値を設定する中性化処理を行えばよい。この中性化処理により、どちらかのブロック鎖が選択的に基板の表面と接して形成されることが抑制され、両ブロック鎖が基板表面に共存することができるようになる。結果として、ラメラ構造の各ドメイン界面が基板表面に対して垂直に形成されやすくなる。この構造をラテラルラメラ構造と呼ぶこととする。
【0051】
ところが、表面を中性化した溝構造内では、次に示すように、基板表面(凹部底面)に平行な方向には、ランダムに配向してしまう。表面を中性化処理した溝構造内での、ラメラ構造をとるブロック共重合体のミクロ相分離の様子を図6を用いて説明する。基板601の表面に中性化処理による中性層602が形成された状態とし、この状態で、溝構造内にブロック鎖Aとブロック鎖Bとからなるブロック共重合体の膜を適当な膜厚に形成し、ミクロ相分離を誘起する。中性層602の表面は、ブロック鎖Aとブロック鎖Bの表面自由エネルギーの中間の値の表面自由エネルギーとされている。
【0052】
このような状態では、ミクロ相分離したブロック鎖AによるA層603及びブロック鎖BによるB層604は、凹部底面に対して垂直に配向するが、また同時に、溝構造の側壁に対しても、界面が垂直に配向する。この結果、溝構造の側壁に沿って配向する原動力がなくなり、溝構造の側壁形状とは無関係にランダム配向する。
【0053】
従って、ラメラ構造を溝構造の側壁に沿って配向させるためには、溝構造の凹部底面と側壁面の表面自由エネルギーを独立に制御する必要がある。発明者らは、この問題を解決すべく、鋭意検討を重ねた結果、この問題を解決する方法を見出した。本発明では、いずれのブロック鎖とも異なる表面自由エネルギーの状態の基板の上に、いずれかのブロック鎖の表面自由エネルギーの状態と等しくされた表面自由エネルギーを備えるガイドパターンを形成するようにした。この状態で、ブロック共重合体薄膜を形成してミクロ相分離を誘起することで、形成されるラメラ構造がガイドパターンに配向させるようにした。
【0054】
以下に、本発明のパターン形成方法について、より詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図7は、本発明の実施形態に係るパターン形成方法を説明するための工程図である。図7に示す例では、下地となる基板701の表面に中性層801を形成し、この上にブロック共重合体のミクロ相分離構造を配向させるためのガイドパターン702を形成することで溝構造を実現し、かつガイドパターン702を、ブロック共重合体のブロック鎖のいずれかと類似したホモポリマーを含んだ材料から構成することにより、基板表面の表面自由エネルギー及びガイドパターン側壁の表面自由エネルギーを各々個別に制御し、ミクロ相分離構造のより精密な配向(及びこの制御)を実現するようにしたものである。
【0055】
先ず、図7(a)に示すように、基板701を準備する。ここでは、基板701は、単なる基台として用いるため、材質は、金属,半導体,絶縁体など、特に材料を選ばずに用いることができる。また、基板701の形状は、特に問わないが、配向制御を行う領域においては、平坦な領域が存在することが望ましい。
【0056】
次に、図7(b)に示すように、基板701の平坦な領域の表面上に中性層801を形成する。中性層801は、表面自由エネルギーが、用いるブロック共重合体の各ブロック鎖の表面自由エネルギーの範囲内に存在する材料から構成する。例えば、2つのブロック鎖からなるブロック共重合体を用いる場合、2つのブロック鎖の表面自由エネルギーの中間の値の表面自由エネルギーとされていればよい。中性層801を形成する第1の方法としては、ブロック共重合体を構成する各モノマーからなる共重合体の薄膜から構成すればよい。このような共重合体薄膜として、用いるブロック共重合体の各ブロック鎖の組成に応じたランダム共重合体を用いればよい。この場合のブロック鎖の組成比は、実験結果に応じて最適化して用いればよい。また、ブロック共重合体の組成比が1:1に近い場合は、交互共重合体も用いることができる。
【0057】
これらの薄膜は、ブロック共重合体の塗布液を塗布する際に、塗布液の溶剤に完全に溶解しないよう、可能な範囲で高分子量のものを用いるのが好ましい。少なくとも10万以上、この好ましくは20万以上、より好ましくは50万以上の分子量をもつ共重合体が好ましい。また、これらの共重合体と少なくとも架橋剤を含む薄膜を形成した後、加熱処理,光及び放射の照射などを用い、共重合体同士を架橋させることにより、有機溶剤に不溶化させることもできる。この場合は、分子量10万以下のランダム共重合体あるいは交互共重合体を用いることができる。さらに、分子末端に、基板701の表面上に存在する水酸基と反応して結合する官能基をもつランダム共重合体あるいは交互共重合体からなる薄膜を形成し、基板701の表面に化学的に結合させて表面グラフトポリマー層を形成することにより、後の工程で用いる有機溶剤に対して不溶化させることが望ましい。上記官能基としては、例えば、水酸基(−OH)、カルボキシル基(−COOH)を用いることができる。
【0058】
中性層801を形成する第2の方法として、シランカップリング剤を用い、液相あるいは気相化学吸着法により、基板701の表面に自己組織化単分子膜を形成する方法を用いることができる。この場合は、吸着分子の被覆率を、吸着時間及び吸着温度を変えることにより、形成された中性層801の表面自由エネルギーを制御することが可能である。また一旦基板701の表面全体を表面修飾した後、紫外線,X線,及び電子線などの放射線を照射することにより、自己組織化単分子膜を部分的に分解し、表面自由エネルギーの制御を行ってもかまわない。シランカップリング剤としては、末端に、ハロゲン基,アルコキシ基,シラザン基をもつものを用いることができる。
【0059】
次に、図7(c)に示すように、上述のことにより形成した中性層801の上に、配向のための、互いに並行とされた複数のガイドパターン702を形成する。ガイドパターン702の主な機能は、ブロック共重合体の特定のブロック鎖を選択的にガイドパターン702の側壁表面に接触させることにある。このためには、特定のブロック鎖のガイドパターン側壁への親和性が高ければ高いほど良い。このためには、ガイドパターン702の側壁表面の表面自由エネルギーが、接触させたいブロック鎖の表面自由エネルギーに近いことが好ましい。ここでは、表面自由エネルギーを表面張力と置き換えてもかまわない。
【0060】
表面張力を測定する手法として、水滴の接触角を測定する方法が挙げられる。例えば、ガイドパターン702の表面上及び特定のブロック鎖の成分からなる薄膜上での水滴の接触角が等しければ、両者の表面張力は等しく、言い換えれば、両者の表面自由エネルギーは等しい。このとき、特定のブロック鎖のガイドパターン702の表面への親和性が高く、特定のブロック鎖が選択的にガイドパターン702の表面に接触することになる。以下の説明では、濡れ性の評価指標として、統一して表面自由エネルギーを用いて記述する。
【0061】
さらには、ガイドパターン702の材料として、ガイドパターン702に選択的に接触させたい特定のブロック鎖と類似(同じ)の成分からなるポリマーであることが好ましく、さらに好ましくは、これらのポリマーが感光性樹脂(レジスト)であることが、より好ましい。ガイドパターンが、ブロック共重合体のいずれかのブロック鎖と同じモノマー成分からなるポリマーを含んでいれば、ガイドパターン702の表面(側面)の表面自由エネルギーは、ブロック共重合体の一方のブロック鎖の表面エネルギーに近い状態となる。
【0062】
次に、ガイドパターン702として、ポリマー材料を用いた場合について説明する。基板701の上にポリマー材料膜を形成した後、この上にさらに感光性樹脂(レジスト)膜を形成し、露光・現像を行い、レジストパターンを形成する。次いで、形成したレジストパターンをマスクに、上記ポリマー材料膜をエッチングしてポリマー材料からなるガイドパターン702を形成する。このときエッチングしすぎると、下地の中性層801も除去されてしまうので、エッチング条件を慎重に選ぶ必要がある。また、インプリントリソグラフィー技術を用いて、モールド上に形成したポリマー材料からなるパターンを基板701の上に移植することで、ガイドパターン702が形成された状態としても良い。
【0063】
次に、ガイドパターン702として、感光性を有するレジストを用いた場合について説明する。基板701上に上記レジストの膜を形成した後、露光及び現像を行い、レジストパターンを形成する。この際、現像は、有機溶剤あるいは弱アルカリ現像液を用いて、レジスト溶解させるだけであるため、下地の中性層801にプラズマなどによるダメージを与えることなく、ガイドパターン702を形成することが可能となる。ガイドパターン702としては、ポジ型レジスト及びネガ型レジストともに用いることができる。なお、中性層801が、露光によりダメージを受けやすい材料の場合は、ポジ型レジストよりもネガ型レジストの方が好ましい。ネガ型の場合は、ガイドパターン702を形成しようとする領域に露光がされ、現像後に中性層801が露出する領域には露光しなくて済む。このため、ガイドパターン702が配置されない露出される領域における中性層801への、露光によるダメージが低減できる。
【0064】
また、後の工程であるミクロ相分離形成工程において熱処理を行うため、ガイドパターン702に用いる材料は、熱処理中においてもパターン形状が変形しないように、できるだけ軟化温度が高い材料であることが望ましい。一般には、架橋することにより軟化温度が高くなるため、架橋型ネガ型レジストの方がより好ましい。
【0065】
ガイドパターン702の材料としては、例えば、ポリスチレン、ポリ(α−メチルスチレン)、クロロメチル化ポリスチレン、ポリシロキサン、水素化シルセスキオキサン、カリックスアレン誘導体、フラーレン誘導体などのネガ型電子線レジストを挙げることができる。また、ポリメチルメタクリレート、ポリ(t−ブチルメタクリレート)、ポリメチルメタクリレートとポリメチルメタクリル酸の共重合体、ポリメチルメタクリレートとポリスチレンの共重合体、ポリメチルメタクリレートとポリ(α−メチルスチレン)の共重合体、ポリ(α−クロロアクリレート)とポリ(α−メチルスチレン)の共重合体などのポジ型電子線レジストを挙げることができる。さらに、電子線レジストに限らず、各種光源の波長に対応したg線用、i線用、KrF用、ArF用、EUV用のフォトレジストも用いることができる。より好ましくは、後の工程で用いるブロック共重合体のいずれかのブロック鎖と同じモノマーからなるポリマーを含んでいることが望ましい。
【0066】
次に、ガイドパターン702の線幅について述べる。一般に、段差をもつ表面にポリマーなどの薄膜を形成する場合、段差の部分でポリマー薄膜の膜厚が厚くなりやすい。これに対し、薄膜形成後の熱処理により、例えばポリマーをガラス転移点以上の温度として流動化させることにより、平坦化することができる。この平坦化の程度は、凸部の幅、すなわちガイドパターン702の幅が狭いほど大きくなる。ブロック共重合体薄膜中のミクロ相分離は、膜厚に大きく依存する場合もあるので、ブロック共重合体薄膜の膜厚はできるだけ均一であることが好ましい。従って、ガイドパターン702の線幅は、できるだけ細い方が好ましい。
【0067】
次に、図7(d)に示すように、ガイドパターン702が形成された中性層801上に、例えば2種類のブロック鎖A及びブロック鎖Bから構成されたブロック共重合体(ジブロック共重合体)よりなるブロック共重合体薄膜703を形成する。ここでは、ブロック鎖Bが、ガイドパターン702の表面への親和性が高く、ブロック共重合体薄膜703をミクロ相分離させた場合、ブロック鎖Bが選択的にガイドパターン702の表面に接触するものとする。なお、ブロック共重合体薄膜703は、ブロック共重合体を有機溶媒に溶解した溶液(塗布液)を用い、スピン塗布法,キャスト法,ディップ法を用いて形成すればよい。塗布液を用いて薄膜を形成するためには、膜厚均一性の優れたスピン塗布法を用いるのが好ましい。
【0068】
また、ブロック共重合体薄膜703のブロック共重合体を構成するブロック鎖(ブロック鎖A,ブロック鎖B)としては、先ず、ポリメタクリル酸エステル誘導体ポリマー鎖として、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(n−プロピルメタクリレート)、ポリ(n−ブチルメタクリレート、ポリ(i−ブチルメタクリレート)、ポリ(t−ブチルメタクリレート)、ポリ(ネオペンチルメタクリレート)、ポリ(シクロヘキシルメタクリレート)、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(2−ヒドロキシプロピルメタクリレート)、ポリ(トリフルオロエチルメタクリレート)などを用いることができる。
【0069】
また、ブロック共重合体を構成するブロック鎖としては、ポリアクリル酸エステル誘導体ポリマー鎖として、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(エチルアクリレート)、ポリ(t−ブチルアクリレート)、ポリ(n−ブチルアクリレート)、ポリ(ネオペンチルアクリレート)、ポリ(n−ノニルアクリレート)、ポリ(n−オクチルアクリレート)、ポリ(2−エチルヘキシルアクリレート)、ポリ(1−エトキシエチルアクリレート)、ポリ(ヒドロキシエチルアクリレート)などを用いることができる。
【0070】
また、ブロック共重合体を構成するブロック鎖としては、ポリスチレン誘導体ポリマー鎖として、ポリスチレン、ポリ(α−メチルスチレン)、ポリ(2−ビニルピリジン)、ポリ(4−ビニルピリジン)、ポリ(4−ヒドロキシスチレン)、ポリ(t−ブチルスチレン)、ポリ(t−ブトキシスチレン)、ポリ(4−アミノメチルスチレン)、ポリ(4−メチオキシスチレン)、ポリ(p−クロロメチルスチレン)などを用いることができる。
【0071】
また、ブロック共重合体を構成するブロック鎖としては、ポリジエン誘導体ポリマー鎖として、ポリ(1,2付加ブタジエン)、ポリ(1,4付加ブタジエン)、ポリ(1,2付加イソプレン、ポリ(1,4付加イソプレン)、ポリ(1,4付加水素化イソプレン)、ポリ(イソブチレン)などを用いることができる。
【0072】
また、ブロック共重合体を構成するブロック鎖としては、ポリシロキサン鎖として、ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリ(ジフェニルシロキサン)、ポリ(メチルフエニルシロキサン)などを用いることができる。他に、ブロック共重合体を構成するブロック鎖としては、ポリ(フエロセニルジメチルシラン)、ポリアクリロニトリル、ポリアクリルアミド、ポリ(N,N−ジメチルアクリルアミド)、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリ(エチレンオキサイド)、ポリ(プロピレンオキサイド)、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸などを用いることができる。
【0073】
また、ブロック共重合体薄膜703には、A−B型ジブロック共重合体に限らず、上述したブロック鎖の組み合わせからなる、A−B−A型トリブロック共重合体、A−B−C型トリブロック共重合体などを用いることができる。各ブロック鎖の体積分率がほぼ等しいブロック共重合体、すなわちA−B型ジブロック共重合体、A−B−A型トリブロック共重合体の場合は、各ブロック鎖の体積分率が50%程度のブロック共重合体を用いれば、後に説明するミクロ相分離工程において、ラメラ構造を形成することができる。また、A−B−C型トリブロック共重合の場合は、各ブロック鎖の体積分率が33%程度のブロック共重合体を用いれば、後に説明するミクロ相分離工程において、ラメラ構造を形成することができる。また、A−B型ジブロック共重合体、A−B−A型トリブロック共重合体の場合は、ブロック鎖Aの体積分率が30%程度のブロック共重合体を用いれば、形成面の法線方向に伸びるシリンダー構造を形成することができる。
【0074】
次に、ブロック共重合体の分子量について説明する。分子量100,000g/mol程度のブロック共重合体を用いると、50nm周期程度のラメラ構造あるいはシリンダー構造が形成される。このように、50nm周期にミクロ相分離構造が形成できれば、以下に説明するように、50nm周期の微細なパターンが形成可能である。また、分子量80,000g/mol程度以下のブロック共重合体を用いることで、40nm以下の周期のミクロ相分離構造が形成可能であり、既存のリソグラフィー技術では形成が難しい解像度のパターンが形成可能となる。
【0075】
さらに、分子量40,000g/mol程度以下のブロック共重合体を用いることで、周期が30nm以下のミクロ相分離構造が形成可能となり、分子量20,000g/mol程度以下のブロック共重合体を用いることで、周期が20nm以下のミクロ相分離構造が形成可能となる。なお、上述の分子量は、例えば、よく知られたサイズ排除クロマトグラフィーによる分子量分布測定で測定された数平均分子量である。
【0076】
次に、ブロック共重合体の塗布について説明する。先ず、塗布液に用いる有機溶剤としては、用いるブロック共重合体を構成する各ブロック鎖と相溶性の高いものを用いることが好ましい。このような有機溶剤としては、トルエン、ベンゼン、クロロベンゼン、エチルベンゼン、オルトジクロロベンゼン、アニソール、2−メトキシエチルアセテート、2−エトキシエチルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、クロロホルム、酢酸エチル、酢酸シクロヘキシル、エタノール、イソプロパノールを挙げることができる。
【0077】
次に、ガイドパターン702及びブロック共重合体薄膜703の膜厚について説明する。ブロック共重合体薄膜703の膜厚は、ミクロ相分離構造の周期Lもしくは、周期Lの整数倍にできるだけ近い方が望ましい。また、ガイドパターン702の高さ(膜厚)は、ブロック共重合体薄膜703の膜厚と少なくとも同程度以上であることが望ましい。さらに、ガイドパターン702の高さにバラツキが存在する場合には、ガイドパターン703の高さは、ブロック共重合体薄膜703の膜厚よりも、3σ以上高い方が望ましい。ここで、σは、ガイドパターン702の高さの標準偏差である。
【0078】
次に、図7(e)に示すように、ミクロ相分離を誘起し、各ガイドパターン702の間に、ブロック共重合体を構成しているブロック鎖Aより構成されたドメインであるブロック鎖A領域(パターン領域)704とブロック鎖Bより構成されたドメインであるブロック鎖B領域(パターン領域)705とが交互に配列された状態とする。各領域は、基板701表面の平面方向に分離された状態となる。
【0079】
ここで、ガイドパターン702の表面への親和性は、ブロック鎖Bの方が高いので、ガイドパターン702の側壁面より、ブロック鎖B相705a,ブロック鎖A相704a,ブロック鎖A相704a,ブロック鎖B相705a,ブロック鎖B相705a,ブロック鎖A相704a,ブロック鎖A相704a・・・の順に、相分離した各相が配列されていく。ブロック鎖A領域704は、2つのブロック鎖A層704aから構成され、ブロック鎖B領域705は、2つのブロック鎖B層705aから構成されている。
【0080】
次に、ミクロ相分離を誘起してミクロ相分離構造を形成することについて説明する。ブロック共重合体薄膜703を形成した後、熱処理を行うことにより、ミクロ相分離を誘起した後、直ちに自然放冷もしくは強制冷却することにより、上述したミクロ相分離構造を形成する。熱処理方法としては、オーブンやホットプレートを用いて行うことができる。この熱処理において、酸化によるブロック共重合体薄膜703の劣化を防ぐため、窒素やアルゴンなどの反応性の低いガス雰囲気で行うのが好ましい。
【0081】
また、上記熱処理の温度は、少なくともブロック共重合体のガラス転移温度以上かつ分解温度以下であることが好ましい。また、ブロック共重合体の相分離系が、低温側では相溶しているが、温度を上げると相分離を起こす下限臨界共溶温度型相図をもつ場合は、下限臨界共溶温度以上の温度で熱処理するのが好ましい。一方、ブロック共重合体の相分離系が、低温側ではミクロ相分離しているが、温度を上げると相溶する上限臨界共用温度型相図を持つ場合は、上限臨界共用温度以下の温度で熱処理するのが好ましい。
【0082】
このようにして形成したブロック共重合体のミクロ相分離構造は、図7(f)に示すように、ガイドパターン702の間に交互に配列されたブロック鎖A領域704及びブロック鎖B領域705が、ガイドパターン702の延在する方向に配向された状態となる。言い換えると、各領域は、ガイドパターン702と同じ方向に延在した状態となる。なお、図7(f)は、図7(e)のff線断面図である。前述したように、分子量20,000g/mol程度以下のブロック共重合体を用いれば、周期が20nm程度のミクロ相分離構造が形成されるので、各々幅10nmのブロック鎖A領域704とブロック鎖B領域705とからなる微細なパターンが得られる。なお、各ガイドパターン702の間の間隔(対辺間の距離)は、nL(ミクロ相分離の周期の自然数倍)とすればよい。但し、対辺間の距離Wsは、正確にnLである必要はなく、ある範囲内で同様な効果が得られる。経験的には、(n−0.25)L<Ws<(n+0.25)L(nは自然数)とされていればよい。
【0083】
次に、本発明のパターン形成方法に係る他の実施の形態について説明する。
(第2の実施形態)
図8は、本発明の第2の実施形態に係るパターン形成方法を説明するための工程図である。図8に示す例では、図7に示したパターン形成方法に加えて、ガイドパターンの表面に化学修飾層を形成し、ミクロ相分離構造がより配向しやすくなるようにしたものである。また、化学修飾層を形成することにより、ガイドパターンの材料に依存することなく、ミクロ相分離させるブロック共重合体に適用可能な材料の選択幅を増大させることが可能となる。
【0084】
先ず、図8(a)に示すように、基板701を準備する。次に、図8(b)に示すように、基板701の平坦な領域の表面上に中性層801を形成する。次に、図8(c)に示すように、上述のことにより形成した中性層801の上に、配向のためのガイドパターン702を形成する。以上のことは、図7を用いて説明したパターン形成方法と同様である。
【0085】
次に、図8(d)に示すように、ガイドパターン702の表面に、化学修飾層901を形成する。ガイドパターン702の表面のみに化学修飾層901を形成するためには、化学修飾する分子をガイドパターン702の表面に化学的に結合させる必要がある。化学修飾層901としては、例えば、自己組織化単分子膜や表面グラフトポリマーが挙げられる。これらの化学修飾層901の主成分として、後の工程で用いるブロック共重合体のいずれかのブロック鎖であり、かつガイドパターンに接触させたい方のブロック鎖からなるポリマー鎖を含むことが望ましい。こうすることにより、化学修飾層901の表面の表面自由エネルギーは、ブロック共重合体の一方(所望)のブロック鎖の表面エネルギーに近い状態となり、確実に所望のブロック鎖をガイドパターン702の側壁に形成された化学修飾層901に接触させることが可能となる。
【0086】
次に、化学修飾層901として、自己組織化単分子膜を用いる方法について説明する。ガイドパターン702の材料と自己組織化単分子膜材料の組み合わせとして、主のものは、金属と有機硫黄分子、酸化膜と有機シラン分子が良く知られている。前者の組み合わせについては、ガイドパターン702を、Au,Ag,Cu,Pt,及びPdなどの金属から形成し、この表面に、分子末端にチオール(SH)基をもつ有機硫黄分子の自己組織化単分子膜を形成する。金属からなるガイドパターン702は、例えば、よく知られたリフトオフ法などにより形成すればよい。
【0087】
また、後者の組み合わせについては、例えば、ネガ型レジストであるポリシロキサン材料よりガイドパターン702を形成すればよい。ポリシロキサンは、電子線,X線,及び紫外線などの照射により架橋反応が起こり、シロキサン(Si−O)のネットワーク構造が形成され、この表面には水酸基が存在する状態となる。従って、このように形成されたガイドパターン702の表面には、シランカップリング剤を用いて、液相あるいは気相化学吸着法により、自己組織化単分子膜を形成することが可能である。
【0088】
シランカップリング剤としては、例えば、末端にハロゲン基,アルコキシ基,アセトキシ基,及びシラザン基をもつものを用いることができる。なお、ガイドパターン材料と自己組織化単分子膜材料の組み合わせは、上述した2つに限定されるものではなく、ガイドパターンが形成可能な材料であれば、他の組み合わせを用いてもかまわない。下地の中性層801には、反応性の官能基が存在しないため、上述した自己組織化単分子膜は、ガイドパターン702表面のみに形成されることとなる。
【0089】
次に、化学修飾層901として、表面グラフトポリマーを用いる方法について説明する。ガイドパターン材料としては、例えば、ネガ型レジストであるポリシロキサン材料が挙げられる。ポリシロキサンは、電子線,X線,紫外線の照射により架橋し、シロキサン(Si−O)構造が形成される。従って、シリコン酸化膜と同様に、架橋したシロキサン構造表面にも水酸基が存在する。表面グラフトポリマー材料としては、分子末端に水酸基、あるいはカルボキシル基をもつポリマーを用いる。これらのポリマーを有機溶剤に溶解したポリマー溶液を、ガイドパターン702が形成された基板701の上にスピン塗布し、加熱を行う。
【0090】
この加熱により、ガイドパターン702の表面に存在する水酸基と、表面修飾ポリマーの末端に存在する水酸基あるいはカルボキシル基とが、脱水縮合する。この脱水縮合のとき、中性層801の表面には水酸基が存在しないため、脱水縮合反応はガイドパターン702の表面のみで起こる。この後、有機溶剤で、未反応の表面修飾ポリマーを溶解除去すれば、ガイドパターン702の表面に化学的に結合した表面修飾ポリマーのみ残存し、ガイドパターン702表面のみに、表面グラフトポリマーよりなる化学修飾層901が形成されることとなる。
【0091】
次に、図8(e)に示すように、第1の実施形態と同様に、ブロック共重合体薄膜703を形成した後、ミクロ相分離を誘起する。この結果、図7を用いて説明したパターン形成方法と同様に、化学修飾層901が形成されたガイドパターン702の間に、ブロック鎖A領域704とブロック鎖B領域705とが交互に配列された状態が得られる(図8(f),図8(g))。
【0092】
次に、本発明の実施の形態に係る他のパターン形成方法について説明する。
(第3の実施形態)
図9,図10は、第3の実施形態に係るパターン形成方法を説明するための工程図である。以下に示すパターン形成方法は、図7及び図8を用いて説明したパターン形成方法により形成されたミクロ相分離構造を、下地の基板701に転写し、特定のブロック鎖からなるミクロ相分離ドメインの形状を反映したパターンを、基板701に形成するようにしたものである。
【0093】
はじめに、図7を用いて説明したパターン形成方法により形成されたミクロ相分離構造を転写する場合について説明する。先ず、図9(a)に示すように、基板701を用意し、次に、図9(b)に示すように、基板701の上(表面)に中性層801が形成された状態とし、次に、図9(c)に示すように、中性層801の上にガイドパターン702が形成された状態とする。次に、図9(d)に示すように、ガイドパターン702が形成された中性層801の上に、ブロック共重合体薄膜703が形成された状態とする。次に、図9(e)に示すように、ミクロ相分離を誘起し、各ガイドパターン702の間に、ブロック鎖A領域704とブロック鎖B領域705とが交互に配列された状態とする。以上のことは、図7(a)〜図7(e)を用いて説明したパターン形成方法と同様である。
【0094】
次に、ブロック鎖B領域705などブロック鎖Bより構成された部分を選択的に除去し、図9(f)に示すように、各ガイドパターン702の間の領域に、ガイドパターン702の延在方向に配列(配向)されたブロック鎖A領域704からなるパターンが形成され、これらよりなるマスクパターンが形成された状態とする。この場合、形成されるマスクパターンは、ブロック鎖B領域の部分に、下層にまで貫通する開口領域を備えたものとなる。
【0095】
ここで、特定のブロック鎖の領域のみを選択的に除去することについて、より詳細に説明すると、先ず、第1の方法として、ブロック鎖Aとブロック鎖Bとのエッチング速度の差を利用する方法が挙げられる。例えば、ブロック共重合体薄膜703を、エッチング速度が異なる2種類以上のブロック鎖からなるブロック共重合体より構成しておけば、ミクロ相分離した状態の各領域に対して所定条件のドライエッチングを行うと、エッチング速度の速いブロック鎖の領域が先に除去され、エッチング速度の遅いブロック鎖の領域が残存する。この結果として、ミクロ相分離構造を反映した、周期パターンが形成されるようになる。この残存したパターンを転写マスクとして用いることができる。
【0096】
次に、エッチング速度が異なるブロック鎖について説明する。一般に、ポリマー中の酸素原子の含有率が低くないほど、例えば酸素ガスプラズマを用いたドライエッチングのエッチング速度が減少することが知られている。また、芳香族環をもつポリマーあるいは、シリコン原子を含むポリマーは、ドライエッチング速度が遅いことが知られている。従って、ドライエッチング速度の遅いブロック鎖として、酸素をできるだけ含まないポリマーを用いるか、もしくは芳香族環を含むポリマーを用いるか、又はシリコン原子を含むポリマーを用いることで、前述した選択的な除去が可能となる。
【0097】
ドライエッチング速度の遅いブロック鎖としては、例えば、ポリスチレン誘導体ポリマー鎖、ポリジエン誘導体ポリマー鎖、ポリシロキサンポリマー鎖を用いることができる。一方、ドライエッチング速度の速いブロック鎖としては、例えば、ポリメタクリルエステル誘導体ポリマー鎖、ポリアクリル酸エステル誘導体ポリマー鎖を用いることができる。これらの、ドライエッチング速度の遅いポリマーからなるブロック鎖とのドライエッチング速度の速いポリマーからなるブロック鎖を含むブロック共重合体を用いれば、前述したドライエッチング法により、選択的に一方のブロック鎖の領域を除去することで、ミクロ相分離構造を反映したパターンが形成可能である。
【0098】
次に、上記のエッチングの方法について説明すると、エッチング方法としては、不活性ガスを利用したスパッタリング現象による物理的なドライエッチングや、酸素,塩素系,及びフッ素系などの反応性ガスを用いた反応性イオンエッチング(RIE)を用いることができる。また、プラズマの生成法として、電子サイクロトロン共鳴(ECR)によるプラズマや、誘導結合によるプラズマ(ICP)などがある。
【0099】
また、エッチングガスとしては、Ar,H2,N2,O2,CO,CO2,CF4,CHF3,CH2F2,C2F6,C3F6,C4F8,NH3,Cl2,BCl3,及びSF6などの、よく知られたドライエッチングに使用するガスを単独もしくは混合して用いることができる。なお、ドライエッチング速度の速いブロック鎖とドライエッチング速度の遅いブロック鎖のエッチング速度の比は、少なくとも1以上であることが望ましい。忠実な転写を行うには、エッチング速度の比が大きければ大きいほど良い。従って、異なるブロック鎖のエッチング速度比は、2以上であることがより好ましい。
【0100】
特定のブロック鎖を選択的に除去する第2の方法として、感光性を備えたブロック鎖より構成されたブロック共重合体を用いる方法が挙げられる。このようなブロック共重合体をミクロ相分離させた後、露光もしくは露光・現像を行うことで、感光性を備えたブロック鎖のみを選択的に除去することができる。感光性を備えるブロック鎖としては、放射線崩壊型のものを用いることが好ましい。放射線崩壊型であれば、露光のみで選択的に除去することが可能である。
【0101】
放射線崩壊型の感光性をもつブロック鎖として用いることができるポリマーとしては、ポリメチルメタクリレート、ポリ(α−クロロアクリレート)、ポリブチルメタクリレート、ポリ(フルオロブチルメタクリレート)、ポリ(グリシジルメタクリレート)、ポリ(ブテン−1−スルフォン)、ポリ(スチレンスルフォン)などが挙げられる。また、露光に用いる放射線としては、紫外線,X線,電子線,及びイオン線を用いることができる。ただし、露光及び現像を行って感光性を備えるブロック鎖を除去する場合、乾燥時に、現像液もしくはリンス液の表面張力により、残存したブロック鎖からなるパターンの形状が崩れるなど変形する可能性がある。従って、露光のみで特定のブロック鎖を分解し、除去する方法の方が、微細パターン形成には好ましい。
【0102】
以上に説明したいずれかの方法により、各ガイドパターン702の間の領域、ブロック鎖A領域704からなるパターンが配列(配向)された状態とした後、図9(g)に示すように、残存したブロック鎖A領域704からなるパターンをマスクとし、この下の各層をエッチング加工する。例えば、ドライエッチング法、又はウエットエッチング法を用いることで、残存したブロック鎖A領域704からなるパターンをマスクとし、このパターン形状を下層の基板701に転写すればよい。
【0103】
なお、ここで、基板701の材料について説明すると、本例では、中性層801を用いているため、基板701は、上記のマスクを用いた選択的なエッチングが可能な材料から構成されていればよい。例えば、金属,半導体,及び絶縁体など、特に材料を選ばずに用いることができる。なお、基板701は、この上に中性層801が形成可能な材料から構成されている必要がある。
【0104】
基板701に適用可能な金属材料としては、Au、PtAu、AuZn、AuGe、AuZnNi,AuGeNiなどのAu系の合金、また、Al、Cr、Ti、TiN、Zn、Sn、W、Mo、Taなどを用いることができる。また、半導体材料としては、Si、poly−Si、GaP、GaAs、GaAsP、GaAlAs、InPなどを用いることができる。また、絶縁体材料としては、ガラス、石英、サファイア、SiO2、SiNx、TiO2、Al203などを用いることができる。
【0105】
次に、パターン転写のためのエッチングについて、より詳細に説明する。パターン転写のためのエッチングとしては、ドライエッチングやウエットエッチングを用いた下地基板(基板701)への転写が挙げられる。ドライエッチングの場合は、スパッタリング現象による物理的なドライエッチングや、酸素,塩素系,及びフッ素系などの反応性ガスを用いた反応性イオンエッチング(RIE)を用いることができる。また、プラズマの生成法として、電子サイクロトロン共鳴(ECR)によるプラズマや、誘導結合によるプラズマ(ICP)などがある。例えば、基板701がシリコンから構成されている場合は、Cl2,SF6,Cl2+O2などのガスを用いたドライエッチングでパターンの転写が可能である。なお、リフトオフを用いることで、基板701の上に金属などのパターンを形成することも可能である。
【0106】
また、基板701が、酸化シリコン,ガラス,及び石英などから構成されている場合、フッ酸を用いたウエットエッチングにより、上記パターンの転写が可能である。また、基板701が、単結晶シリコンから構成されていれば、水酸化カリウム(KOH)やテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)などのアルカリ性のエッチング液を用いたウエットエッチングにより、異方性エッチングを行うこともできる。
【0107】
以上のようにして、基板701にパターンが転写された後、残存するブロック鎖A領域704,ガイドパターン702及び中性層801を除去し、図9(h)に示すように、平行に配列された複数の溝711からなるパターンが、基板701の上に形成された状態とする。例えば、材質が有機材料の場合には、酸素プラズマへの暴露によりこれらの除去が可能である。また、材質が無機材料の場合には、材質に合わせたウエットエッチング法により除去すればよい。
【0108】
以上の工程により、ブロック共重合体のミクロ相分離構造であり、線条に形成されたガイドパターン702の延在方向に配向した周期的なラインの構造であるラテラルラメラ構造を、下地の基板701に転写することができる。このように、上述したパターン形成方法は、ラメラ構造の横方向配向の形状とされたパターン形成に非常に有効であるが、当然のことながら、垂直シリンダー構造が配列したパターン形成にも同様に適用することができる。また、上述したパターン形成方法により、例えば、溝711からなるパターンが形成された基板701より構成されたインプリント用のモールドを形成することが可能である。
【0109】
次に、図8を用いて説明したパターン形成方法により形成されたミクロ相分離構造を転写する場合について説明する。先ず、図10(a)に示すように、基板701を用意し、次に、図10(b)に示すように、基板701の上(表面)に中性層801が形成された状態とし、次に、図10(c)に示すように、中性層801の上にガイドパターン702が形成された状態とする。次に、図10(d)に示すように、ガイドパターン702の表面に、選択的に化学修飾層901が形成された状態とする。
【0110】
次に、図10(e)に示すように、化学修飾層901に覆われたガイドパターン702が形成された中性層801の上に、ブロック共重合体薄膜703が形成された状態とする。次に、図10(f)に示すように、ミクロ相分離を誘起し、各ガイドパターン702の間に、ブロック鎖A領域704とブロック鎖B領域705とが交互に配列された状態とする。以上のことは、図8(a)〜図8(f)を用いて説明したパターン形成方法と同様である。
【0111】
次に、ブロック鎖B領域705などブロック鎖Bより構成された部分を、前述同様に選択的に除去し、図10(g)に示すように、各ガイドパターン702の間の領域に、ガイドパターン702の延在方向に配列(配向)されたブロック鎖A領域704からなるパターンが形成され、これらよりなるマスクパターンが形成された状態とする。この場合、形成されるマスクパターンは、ブロック鎖B領域の部分に、下層にまで貫通する開口領域を備えたものとなる。
【0112】
次に、図10(h)に示すように、残存したブロック鎖A領域704からなるパターンをマスクとし、前述同様に、この下の各層をエッチング加工する。この後、前述同様に、残存するブロック鎖A領域704,化学修飾層901,ガイドパターン702及び中性層801を除去し、図10(i)に示すように、平行に配列された複数の溝711からなるパターンが、基板701の上に形成された状態とする。このパターン形成方法においても、溝711からなるパターンが形成された基板701より構成されたモールドを形成することが可能である。
【0113】
次に、本発明の実施の形態に係る他のパターン形成方法について説明する。上述では、所定の方向に延在する直線状の線条パターンよりガイドパターンを構成し、これに配向する周期的な線状のパターンを形成する場合について説明したが、これに限るものではない。図11に示すように、直線の線条パターンを組み合わせて多角形状にガイドパターンを構成し、このガイドパターンの2次元的な閉空間内に、ガイドパターンに配向する環状のパターンを形成することも可能である。例えば、図11(a)の平面図に示すように、正方格子状のガイドパターン1101を用い、この中に、ブロック鎖Aとブロック鎖Bとから構成されたブロック共重合体薄膜を形成し、これをミクロ相分離する。なお、ガイドパターン1101に対してブロック鎖Bの方が親和性が高いものとし、ブロック共重合体は、ミクロ相分離により周期Lのラメラ構造を発現するものを用いる。
【0114】
このことにより、ガイドパターン1101の格子内の基板(図示せず)の上に、ブロック鎖Aからなるブロック鎖A領域1102と、ブロック鎖Bからなるブロック鎖B領域1103とが、格子形状を反映して同心枠形状のラテラルラメラ構造に交互に形成され、中央部には、ドット(垂直配向シリンダー)状のブロック鎖A領域1102が形成される。図11(a)の例では、ガイドパターン1101の対向する側面の間隔Wsが、5L程度となっている。なお、Wsの大きさは、5Lに限定されるわけではなく、nL(nは整数)であれば、ラテラルラメラ構造が形成される。また、格子内の中央部に形成されるドットは、nが奇数の場合にはAブロック鎖から構成され、nが偶数の場合はBブロック鎖から構成される。また、格子の形状は、矩形に限らず、図11(b)に示すように、六角格子状のガイドパターン1101aであっても同様である。
【0115】
また、ガイドパターンの形状は、格子状でなく、多角形1個でも同様な効果が得られる。また、格子の形状は、四角形や六角形に限定されるものではなく、任意の多角形において、同様な効果が得られる。ただし、平行な対辺が存在する偶数の辺をもつ多角形格子の方が、対辺間の距離WsをnLに設定すればよいので、設計が容易となる。また、対辺間の距離Wsは、正確にnLである必要はなく、ある範囲内で同様な効果が得られる。経験的には、ポリメチルメタクリレート(PMMA)とポリスチレン(PS)からなるブロック共重合体を用いた場合、L=28nm、Ws=3Lで、Wsのバラツキが6nmの範囲で同心円(枠)状のストライプパターンが形成された。さらに、ガイドパターンの形状は、任意の多角形に限定されるものではなく、閉ループ構造をとっていれば、閉ループ構造の形をある程度反映した同心の枠状のパターンを形成することができる。
【0116】
また、以下に説明するように、屈曲したガイドパターンを用いても良い。以下、屈曲したガイドパターンの角(屈曲部)を利用した配向制御によるパターン形成方法の例を説明する。図12(a)は、基板1100の上に形成された2つのL字型のガイドパターン1101を用いる場合を示している。また、図12(b)は、基板1100の上に形成された4つのL字型のガイドパターン1101aの4つの角を向き合わせ、これらによる十字型の領域を備える場合を示している。どちらにおいても、対向するガイドパターン側面の間隔は、周期Lの3倍程度としていいる。
【0117】
このように構成されたガイドパターン1101及びガイドパターン1101aを用い、ガイドパターンの間に、Aブロック鎖及びBブロック鎖からなるジブロック共重合体の薄膜を形成し、ミクロ相分離により周期Lのラメラ構造を発現させる。図12(a)のL字型のガイドパターンでは、ミクロ相分離を誘起すると、直線部分では、Aブロック鎖領域1102とBブロック鎖領域1103とが交互に現れる3周期のラテラルラメラ構造が、ガイドパターン1101に沿って配向する。また、角の領域では、局所的に対辺の間の距離が1.4倍程度に広くなるため、この空間を埋めるために、ブロック鎖Bからなるドット(垂直配向シリンダー)構造1103aが自己組織的に形成される。
【0118】
このように、局所的にガイドパターン間の距離を変えると、距離を変更した部分(屈曲部分)に形成されるラメラ構造の中に、ドットのような変則的な構造を自己組織化に誘起することが可能である。ガイドパターンの形状は、L字である必要はなく、ガイドパターン間の距離が局所的に変化しているのであれば構わない。例えば、直線領域においては、対辺の間の距離をnL(nは3以上の整数)、距離を変更した領域においては、ガイドパターン間の距離を(n+1)Lに設定すれば、距離を変更した領域にのみ、ドットを形成することができる。確実に形成させるためには、ガイドパターン間の距離を、自己組織化しやすい3Lに設定するのが好ましい。距離を変更する領域の長さは、長くなると配向が乱れやすくなるため、直線領域でのガイドパターン間の距離と同程度であることが望ましい。
【0119】
同様に、図12(b)の十字型のガイドでは、ミクロ相分離を誘起すると、直線部分では、Aブロック鎖領域1102とBブロック鎖領域1103とが交互に現れる3周期のラテラルラメラ構造が、ガイドパターン1101aに沿って配向する。また、交差の領域では、局所的に対辺の間の距離が1.4倍程度に広くなるため、この空間を埋めるために、ブロック鎖Bからなるドット(垂直配向シリンダー)構造1103aが自己組織的に形成される。このように、図12(b)のような、十字型のガイドを用いれば、1つのドット相に対して、4本のライン相を、ラメラ周期Lの半分の距離だけ離して近接させることが可能となる。
【0120】
また、上述したように、ミクロ相分離により得られた構造を下地の基板1100に転写し、得られたラインに各々電極を接続し、ソース電極,ドレイン電極,サイドゲート電極として用いれば、量子ドット及び近接ゲートを自己整合的に形成することが可能である。
【実施例】
【0121】
以下、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0122】
(実施例1)
先ず、直径が4インチの円板状のシリコン基板を、硫酸/過酸化水素水(体積比3/1)の混合溶液に4分間浸漬した後、水洗・乾燥し、シリコン基板の表面に約2nmの酸化膜を形成した。次に、形成した酸化膜の上に、中性層を形成した。形成した中性層の材料として、以下のようにして作製(調整)したポリメチルメタクリレート(PMMA)とポリ(α−メチルスチレン)(PαMSt)の交互共重合体の架橋膜を用いた。数平均分子量Mn:114,000、多分散度1.96の交互共重合体100重量部に対し、架橋剤として1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリアセトキシメチルベンゼンを30重量部、熱酸発生剤としてシクロヘキシルメチル(2−オキソシクロヘキシル)スルフォニウムトリフルオロメタンスルフォネートを10重量部混合し、これらを2−メトキシエチルアセテートに溶解する。この後、作製した溶液を0.2μm径のフィルターで濾過し、濃度1重量%の交互共重合体溶液を調整した。
【0123】
この交互共重合体溶液を、洗浄後のシリコン基板にスピン塗布した後、ホットプレート上で200℃・2分間の処理を行い、厚さ10nm程度の架橋ポリマー膜からなる中性層を形成した。この後、本基板をトルエン溶液にて10分間超音波洗浄を行い、未反応物質を溶解除去した。
【0124】
次に、配向のためのガイドパターンを形成した。配向ガイドパターンの材料として、電子線ネガ型レジストであるポリスチレンを用いた。数平均分子量Mn:48,000、多分散度1.06のポリスチレンをモノクロロベンゼンに溶解した後、0.2μm径のフィルターで濾過し、濾過したポリスチレンレジスト溶液を作製した。このポリスチレンレジスト溶液を、上記中性層を形成した後に塗布し、厚さ40nmのポリスチレン薄膜を形成し、ホットプレート上で、120℃・2分間の加熱処理を行った。
【0125】
この後、加熱処理を加えたポリスチレン膜に対し、加速電圧100kVの電子線を露光量9mC/cm2で露光し、次いで、キシレンにて30秒間現像を行い、この後、2プロパノールにて30秒間リンスを行った。このようにして形成されたポリスチレンレジストによるガイドパターンを走査電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、線幅43nm、パターンピッチ100nm程度の直線状パターンが形成されていることが確認された。
【0126】
次に、形成したガイドパターンの間に、以下のブロック共重合体の薄膜を形成した。ブロック共重合体として、数平均分子量Mn:36000、多分散度1.07のPMMA(Mn:18000)とポリスチレン(Mn:18000)の対称ジブロックコポリマーを用いた。このブロック共重合体をトルエン溶液に溶解した後、0.2μm径のフィルターで濾過し、ブロック共重合体溶液を調整した。このブロック共重合体溶液を、ガイドパターンが形成されたシリコン基板の上にスピン塗布した後、ホットプレート上で110℃・2分間の加熱処理を行い、ガイドパターンの間に膜厚29nmのブロック共重合体薄膜を形成した。
【0127】
上述した構成では、先ず、中性層は、2つのモノマー成分からなる共重合体を含んだものとされている。なお、2つ以上のモノマー成分からなる共重合体を含んで中性層を形成しても良い。また、ガイドパターンは、中性層が含むモノマーであるスチレンを成分としたホモポリマー(ポリスチレン)から構成されている。なお、ガイドパターンは、中性層が含むいずれかのモノマー成分からなるホモポリマーから構成されていればよい。また、ブロック共重合体は、中性層を構成しているモノマー成分からなるブロック鎖より構成されている。
【0128】
これらのように、中性層,ガイドパターン,及びブロック鎖を構成することで、基板の上のブロック共重合体が接触する面(中性層)が、2つのブロック鎖の表面自由エネルギーの中間の値の表面自由エネルギーとされ、基板の上に、側面の表面自由エネルギーが2つのブロック鎖の一方の表面自由エネルギーに近い表面自由エネルギーとされた複数のガイドパターンが形成された状態が得られる。
【0129】
この後、窒素雰囲気下のオーブンにより、155℃・16時間の加熱処理を行った後、オーブンから取り出し、室温にて自然放冷を行った。シリコン基板のブロック共重合体薄膜を形成した面を原子間力顕微鏡(AFM)の位相像にて観察したところ、PMMA相によるPMMA領域(パターン領域)とポリスチレン相によるポリスチレン領域(パターン領域)とが交互に繰り返している28nmピッチのラメラ構造が1μm以上の長さに渡って配向している状態が観察された。
【0130】
(比較例1)
実施例1おいて、中性層を形成せずに同様な検討を行った。本比較例1においては、中性層が形成されないため、基板表面には酸化膜が露出している。従って、酸化膜と親和性が高いPMMA相が選択的に酸化膜表面に接触しやすく、パラレルラメラ構造が形成され、ラテラルラメラ構造は形成されない。基板の上のガイドパターン領域をAFMにて観察したところ、ラテラルラメラ構造は観察されず、表面にはポリスチレン相のみが露出しているだけであった。
【0131】
(実施例2)
実施例1と全く同様にして、PMMAとポリスチレンのブロック共重合体のラテラルラメラ構造を、直線状ガイドパターンに対して配向させ、PMMA領域とポリスチレン領域とが交互に繰り返している28nmピッチのラメラ構造が、ガイドパターンに配向している状態を形成した。この後、電子サイクロトロン共鳴(ECR)エッチング装置にて、シリコン基板を酸素プラズマに暴露し、PMMA領域を選択的にエッチングする。この際のエッチングの条件は、反応ガスはO2ガスで、流量は例えば10sccm程度、プラズマ生成のためのマイクロ波パワーは例えば300W程度、エッチング時間は例えば12秒程度である。なお、sccmは流量の単位であり、0℃・1気圧の流体が1分間に1cm3流れることを示す。上述したエッチングにより、PMMA領域、さらに、この下層の中性層がエッチングされ、下地の酸化膜表面が露出する。このエッチングにより、残存するポリスチレン領域と、PMMA領域が除去されたことによる貫通領域とからなるマスクパターンが形成されたことになる。
【0132】
次いで、反応性イオンエッチング(RIE)装置にて、残存するポリスチレン領域からなる上記マスクパターンを用い、露出した酸化膜部分をエッチングする。この際のエッチング条件は、例えば、反応ガスは、例えばCF4/Arガスで、流量は、例えば各々40sccm/120sccm程度、真空度は、例えば6Pa程度、高周波(RF)の自己バイアス電圧は、例えば400V、エッチング時間は、例えば10秒程度で行った。このエッチングにより、酸化膜の層がエッチングされ、下地のシリコン基板の表面が露出する。
【0133】
次に、ECRエッチング装置にて、残存するポリスチレン領域よりなる上記マスクパターンを用い、露出したシリコン基板表面をエッチングする。この際のエッチング条件は、反応ガスは、例えばC12/O2/SF6ガスで、流量は、例えば15sccm/1.5sccm/1.5sccm程度で、マイクロ波パワーは、例えば400W程度で、エッチング時間は、例えば60秒程度で行った。
【0134】
この後、アッシング装置にて残存するポリマー(マスクパターン)を剥離し、さらに、濃度1%の弗酸溶液にて、酸化膜を除去した。このようにしてパターンが転写されたシリコン基板を、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、ピッチ28nm程度、深さ50nm程度の直線状のシリコンパターンが形成されている様子が観察された。
【0135】
次いで、パターンが転写されたシリコン基板を2cm角に切り出してチップを形成し、このチップを硫酸/過酸化水素水(体積比3/1)の混合溶液に4分間浸漬した後、水洗・乾燥して、シリコン基板よりなるチップの表面に約2nmの酸化膜を形成した。次いで、チップを、オクタデシルトリクロロシランのヘキサデカン溶液に24時間浸漬した後、テトラヒドロフランによる洗浄と乾燥とを行い、上記パターンが形成されているチップの表面に離型層を形成して、インプリント用のモールドを作製した。
【0136】
(実施例3)
下地基板として、主表面が(110)面とされた単結晶シリコンよりなる基板を用いた以外は実施例1と全く同様にし、PMMAとポリスチレンのブロック共重合体のラテラルラメラ構造を、<112>軸と平行に形成したガイドパターンに対して配向させた。このようにして上述同様のPMMA領域とポリスチレン領域と形成した後、ECRエッチング装置にて、基板を酸素プラズマに暴露し、PMMA領域を選択的にエッチングする。この際のエッチングの条件は、反応ガスはO2ガスで、流量は例えば10sccm程度、マイクロ波パワーは例えば300W程度、エッチング時間は、例えば12秒程度である。このエッチングにより、PMMA領域、さらにこの下層の中性層がエッチングされ、下地の酸化膜表面が露出する。このエッチングにより、残存するポリスチレン領域と、PMMA領域が除去されたことによる貫通領域とからなるマスクパターンが形成されたことになる。
【0137】
次に、RIE装置にて、上記マスクパターンをマスクにして、露出した酸化膜部分をエッチングする。この際のエッチング条件は、例えば、反応ガスは、例えばCF4/Arガスで、流量は、例えば各々40sccm/120sccm程度、真空度は、例えば6Pa程度、高周波(RF)の自己バイアス電圧は、例えば400V、エッチング時間は、例えば10秒程度で行った。このエッチングにより、酸化膜層がエッチングされ、下地のシリコン基板表面が露出する。
【0138】
次に、上記マスクパターン及び酸化膜のパターンをマスクに、水酸化カリウム溶液よりなるエッチング液を用い、下地シリコン基板の異方性ウエットエッチングを行った。エッチング条件は、エッチング液における水酸化カリウムの濃度は、例えば20重量%、エッチング温度は、例えば10℃、エッチング時間は、例えば4分間である。
【0139】
このようにして異方性エッチングをした後、アッシング装置にて残存するポリマー(マスクパターン)を剥離し、さらに、濃度1%の弗酸溶液にて、酸化膜を除去した。このようにしてパターンが転写された基板を、SEMで観察したところ、ピッチ28nm程度、深さ30nm程度の直線状のシリコンパターンが表面に形成されていた。
【0140】
この後、基板を2cm角に切り出してチップを作製し、硫酸/過酸化水素水(体積比3/1)の混合溶液に4分間浸漬した後、水洗・乾燥して、チップの表面に約2nmの酸化膜を形成した。このチップを、オクタデシルトリクロロシランのヘキサデカン溶液に24時間浸漬した後、テトラヒドロフラン洗浄、乾燥を行い、表面に離型層を形成して、インプリント用のモールドを作製した。
【0141】
(実施例4)
洗浄後の4インチ径のシリコン基板を、濃度が1%の弗酸水溶液に1分間浸漬した後、水洗・乾燥し、シリコン基板の表面から自然酸化膜を除去し、シリコン表面を露出させた。次に、中性層を形成した。中性層としては、PMMAとポリスチレンの交互共重合体の架橋膜を用いた。数平均分子量Mnl235000、多分散度1.85の交互共重合体100重量部に対して、架橋剤として、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリアセトキシメチルベンゼン30重量部、熱酸発生剤として、シクロヘキシルメチル(2−オキソシクロヘキシル)スルフォニウムトリフルオロメタンスルフォネート10重量部を混合し、2−メトキシエチルアセテートに溶解した後、0.2μm径のフィルターで濾過して、濃度1重量%の交互共重合体溶液を調整した。この交互共重合体溶液を、洗浄後の基板にスピン塗布した後、ホットプレート上で200℃・2分間の処理を行い、厚さ7nm程度の架橋ポリマー膜を形成した。その後、本基板をトルエン溶液にて10分間超音波洗浄を行い、未反応物質を溶解除去することで、中性層を形成した。
【0142】
次に、配向のためのガイドパターンを中性層の上に形成した。ガイドパターンの材料として、電子線ネガ型レジストである水素化シルセスキオキサン(HSQ)を用いた。HSQのメチルイソブチルケトン(MIBK)溶液(商品名=Fox−16、ダウコーニング社製)を、さらにMIBKで希釈したHSQ溶液を調整した。このHSQ溶液を中性層が形成された基板の上にスピン塗布した後、ホットプレート上で、110℃・1分間の加熱処理を行い、厚さ40nmのHSQ薄膜を形成した。この後、HSQ膜に対して、加速電圧100kVの電子線を露光量5mC/cm2で露光した後、2.38%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)溶液を用いて、60秒間のパドル現像を行い、中性層の上にガイドパターンを形成した。
【0143】
形成されたガイドパターンをSEMで観察したところ、線幅24nm、1辺の長さが100nm以上の種々の長さをもつ六角形状のパターンが形成されていることが、確認された。
【0144】
次に、ガイドパターンの表面に化学修飾層を形成した。この化学修飾層の材料として、ポリマー末端にヒドロキシル基をもつポリメチルメタクリレート(PMMA)を用いた。数平均分子量Mn;3000、多分散度:1.06である。PMMAをトルエン溶液に溶解させた後、0.2μm径のフィルターで濾過して、濃度2重量%の当該PMMA溶液を調整した。このPMMA溶液を、パターン基板の上にスピン塗布して、50nm程度のPMMA膜を形成し、窒素雰囲気下のオーブンで、170℃・48時間の加熱処理を行った。
【0145】
この加熱中に、ガイドパターンであるHSQ表面上に存在するシラノール(Si−OH)基とPMMAの末端に存在する水酸(−OH)基が脱水反応を起こし、PMMAがガイドパターン表面に固定される。一方、下地の中性層表面にはシラノール基は存在しないので、PMMAは固定されない。従って、ガイドパターンの表面のみにPMMAの分子層からなる化学修飾層を形成することができる。この後、上記基板をトルエン溶液にて10分間超音波洗浄を行い、未反応のPMMAを溶解除去した。
【0146】
次に、化学修飾層が形成されたガイドパターンの間に、ブロック共重合体の薄膜を形成した。ブロック共重合体として、数平均分子量Mn:43000、多分散度1.3のPMMA(Mn:33000)とポリスチレン(Mnl10000)の非対称ジブロックコポリマーを用いた。このブロック共重合体をトルエン溶液に溶解した後、0.2μm径のフィルターで濾過して、濃度1重量%の当該ブロック共重合体溶液を調整した。このブロック共重合体溶液を、上記ガイドパターンが形成された基板の上にスピン塗布した後、ホットプレート上で110℃・2分間の加熱処理を行い、膜厚32nmのブロック共重合体薄膜を形成した。
【0147】
この後、窒素雰囲気下のオーブンで、175℃・16時間の加熱処理を行った後、オーブンから取り出し、室温にて自然放冷を行った。このようにして、基板の上に形成されたミクロ相分離構造をAFMの位相像にて観察したところ、六角形状のガイドパターンより構成される枠の内側に、PMMA相からなるドット(PMMA領域)が31nmピッチで六方格子状配列している様子が観察された。
【0148】
(比較例2)
実施例4おいて、中性層を形成せずに、同様な検討を行った。本比較例2においては、中性層が形成されないため、基板の表面には酸化膜が露出している。従って、酸化膜と親和性が高いPMMA相が選択的に酸化膜表面に接触しやすく、パラレルシリンダー構造が形成され、垂直配向シリンダー構造は形成されない。基板の上に形成されたガイドパターン領域をAFMにて観察したところ、ドット構造は観察されず、表面にはポリスチレン相のみが露出しているだけであった。
【0149】
(実施例5)
実施例4と全く同様にして、PMMAとポリスチレンのブロック共重合体による垂直配向シリンダー構造を、六角形状のガイドパターンの内側に、ガイドパターンに沿って六方格子上に配列させた。この後、電子サイクロトロン共鳴(ECR)エッチング装置にて、基板を酸素プラズマに暴露し、PMMA相よりなるドット(シリンダー構造)の部分を選択的にエッチングする。この際のエッチングの条件は、反応ガスはO2ガスで、流量は例えば10sccm程度、マイクロ波パワーは例えば200W程度、エッチング時間は、例えば10秒程度である。このエッチングにより、PMMA相よりなるドットの部分、さらに、この下層の中性層がエッチングされ、ポリスチレン相からなるホールパターン(マスクパターン)が形成される。なお、ホールパターンの開口部の底には、下地のシリコン基板が露出するが、O2プラズマへの暴露により、露出している表面にはプラズマ酸化膜が形成されている。
【0150】
次に、反応性イオンエッチング(RIE)装置にて、残存するポリスチレン相よりなるホールパターンをマスクにし、露出した酸化膜部分をエッチングする。この際のエッチング条件は、例えば、反応ガスは、例えばCF4/CHF3/Arガスで、流量は、例えば各々40sccm/80sccm/120sccm程度、真空度は、例えば6Pa程度、高周波(RF)の自己バイアス電圧は、例えば400V、エッチング時間は、例えば10秒程度で行った。このエッチングに処理より、ホールパターンの開口部の底に存在するプラズマ酸化膜が除去される。
【0151】
次に、ECRエッチング装置にて、残存するポリスチレン相よりなるホールパターンをマスクにし、この開口部の底部に露出したシリコン基板表面をエッチングする。この際のエッチング条件は、反応ガスは、例えばCl2/O2/SF6ガスで、流量は、例えば15sccm/1.5sccm/1.5sccm程度で、マイクロ波パワーは、例えば400W程度で、エッチング時間は、例えば60秒程度で行った。
【0152】
この後、アッシング装置にて残存するポリマーを剥離し、さらに、濃度1%の弗酸溶液にて、酸化膜を除去した。このようにしてパターンが転写された基板を、SEMで観察したところ、サイズ9nm程度、ピッチ29nm程度、深さ50nm程度のホールパターンが、六方格子状に配列している様子が観察された。
【0153】
次に、上記ホールパターンが形成された基板を2cm角に切り出してチップとし、硫酸/過酸化水素水(体積比3/1)の混合溶液に4分間浸漬した後、水洗・乾燥し、切り出したチップの表面に約2nmの酸化膜を形成した。このチップを、オクタデシルトリクロロシランのヘキサデカン溶液に24時間浸漬した後、テトラヒドロフラン洗浄、乾燥を行い、表面に離型層を形成して、インプリント用のモールドを作製した。
【0154】
(実施例6)
4インチ径のシリコン基板を、硫酸/過酸化水素水(体積比3/1)の混合溶液に4分間浸漬した後、水洗・乾燥して、シリコン基板の表面に約2nmの酸化膜を形成した。次に、中性層を形成した。形成した中性層の材料として、ポリマー末端に、各々α−ヒドロキシル基、及びω−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジン−1−オキシル(TEMPO)基をもつポリメチルメタクリレートとポリスチレンのランダム共重合体の単分子膜を用いた。数平均分子量Mn:11600、多分散度は1.7、ポリスチレンのモル比は64%程度である。このランダム共重合体をトルエンに溶解した後、0.2μm径のフィルターで濾過して、濃度1重量%の当該ランダム共重合体のトルエン溶液を調整した。
【0155】
このランダム共重合体溶液を、洗浄後の基板にスピン塗布し、30nm程度の膜厚をもつランダム共重合体膜を形成した。この後、窒素雰囲気下のオーブンで、140℃・48時間の加熱処理を行った。加熱中に、既に形成されている酸化膜の表面に存在するシラノール基と、ランダム共重合体の末端に存在する水酸基が脱水反応を起こし、ランダム共重合体が基板表面に固定される。この後、シリコン基板をトルエン溶液にて10分間超音波洗浄を行い、未反応のランダム共重合体を溶解除去すれば、酸化膜の上に中性層が形成される。
【0156】
次に、中性層の上に配向のためのガイドパターンを形成した。このガイドパターンの材料として、電子線ネガ型レジストである水素化シルセスキオキサン(HSQ)を用いた。HSQのメチルイソブチルケトン(MIBK)溶液(商品名:Fox−16、ダウコーニング社製)を、さらにMIBKで希釈してHSQ溶液を調整した。このHSQ溶液を中性層が形成された基板の上にスピン塗布し、ホットプレート上で、110℃・1分間の加熱処理を行い、厚さ40nmのHSQ薄膜を形成した。この後、形成したHSQ膜に対して、加速電圧100kVの電子線を露光量5mC/cm2で露光した後、2.38%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)溶液を用いて、60秒間のパドル現像を行った。
【0157】
このようにして形成されたHSQ薄膜よりなるガイドパターンをSEMで観察したところ、線幅24nm、対辺の間の距離が100nm以上で、かつ種々の長さをもつ、図12に示したようなL字型あるいは十字型のパターンが形成できていることを確認できた。
【0158】
さらに、ガイドパターンの表面に形成する化学修飾層の材料として、ポリマー末端に水酸基をもつ、数平均分子量Mn:3000、多分散度:1.06のポリスチレンを用いた。ポリスチレンをトルエン溶液に溶解させた後、0.2μm径のフィルターで濾過して、濃度2重量%の当該ポリスチレン溶液を調整した。このポリスチレン溶液を、パターン基板上にスピン塗布して、50nm程度のポリスチレン膜を形成し、窒素雰囲気下のオーブンで、110℃・48時間の加熱処理を行った。加熱中に、ガイドパターン表面のみにポリスチレンの分子層を形成することができる。その後、本基板をトルエン溶液にて10分間超音波洗浄を行い、未反応のポリスチレンを溶解除去した。
【0159】
次に、ポリスチレンの分子層よりなる化学修飾層が形成されたガイドパターンの間に、ブロック共重合体の薄膜を形成した。ブロック共重合体として、数平均分子量Mn:36000、多分散度1.07のPMMA(Mnl18000)とポリスチレン(Mn:18000)の対称ジブロックコポリマーを用いた。このブロック共重合体をトルエン溶液に溶解した後、0.2μm径のフィルターで濾過して、ブロック共重合体溶液を調整した。このブロック共重合体溶液を、上記ガイドパターンが形成された基板の上にスピン塗布した後、ホットプレート上で110℃・2分間の加熱処理を行い、膜厚29nmのブロック共重合体薄膜を形成した。
【0160】
この後、窒素雰囲気下のオーブンで、195℃・16時間の加熱処理を行った後、オーブンから取り出し、室温にて自然放冷を行った。このようにして形成したミクロ相分離構造を原子間力顕微鏡(AFM)の位相像にて観察した。L字型のガイドパターンでは、直線領域では、直線状のポリスチレン領域が2本配向しており、角領域では、2本のポリスチレン領域に挟まれて、さらにドット状のポリスチレン相が形成できており、図12(a)と同様なミクロ相分離構造が形成できていることが確認された。
【0161】
さらに、十字型ガイドパターンでは、十字の中央部に、ドット状のポリスチレン相が形成され、4本のライン状のポリスチレン領域がドットに近接して形成できており、図12(b)と同様なミクロ相分離構造が形成できていることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0162】
【図1】ブロック共重合体のミクロ相分離の状態を示す相図である。
【図2】ラメラ構造をとるブロック共重合体の構成例を示す構成図である。
【図3】ドットあるいはシリンダー構造をとるブロック共重合体の構成例を示す構成図である。
【図4】溝構造内でのブロック共重合体薄膜のミクロ相分離の構成例を示す構成図である。
【図5】溝構造内でのブロック共重合体薄膜のミクロ相分離の構成例を示す構成図である。
【図6】溝構造内でのブロック共重合体薄膜のミクロ相分離の構成例を示す構成図である。
【図7】本発明の実施形態に係るパターン形成方法を説明するための工程図である。
【図8】本発明の実施形態に係る他のパターン形成方法を説明するための工程図である。
【図9】本発明の実施形態に係る他のパターン形成方法を説明するための工程図である。
【図10】本発明の実施形態に係る他のパターン形成方法を説明するための工程図である。
【図11】本発明の実施形態に係る他のパターン形成方法を説明するための平面図。
【図12】本発明の実施形態に係る他のパターン形成方法を説明するための平面図。
【符号の説明】
【0163】
701…基板、702…ガイドパターン、703…ブロック共重合体薄膜、704…ブロック鎖A領域、704a…ブロック鎖A相、705…ブロック鎖B領域、705a…ブロック鎖B相、801…中性層、901…化学修飾層。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上に互いに異なる表面自由エネルギーを持つ少なくとも2つのブロック鎖から構成されたブロック共重合体よりなる薄膜を形成し、前記ブロック共重合体をミクロ相分離することでパターンを形成するパターン形成方法において、
前記基板の上の前記ブロック共重合体が接触する面が、2つの前記ブロック鎖の表面自由エネルギーの中間の値の表面自由エネルギーとされた状態とする第1工程と、
前記基板の上に、側面の表面自由エネルギーが2つの前記ブロック鎖の一方の表面自由エネルギーに近い表面自由エネルギーとされた複数のガイドパターンが形成された状態とする第2工程と、
前記ガイドパターンの間の前記基板の上に、前記ブロック共重合体よりなる前記薄膜が形成された状態とする第3工程と、
前記薄膜を構成する前記ブロック共重合体がミクロ相分離されて、2つの前記ブロック鎖の相よりなる2つのパターン領域が前記薄膜に形成された状態とする第4工程と
を少なくとも備えることを特徴とするパターン形成方法。
【請求項2】
請求項1記載のパターン形成方法において、
前記第1工程では、前記基板の上に2つの前記ブロック鎖の表面自由エネルギーの中間の値の表面自由エネルギーとされた中性層を形成することで、前記基板の上の前記ブロック共重合体が接触する面が、2つの前記ブロック鎖の表面自由エネルギーの中間の値の表面自由エネルギーとされている状態とし、
前記第3工程では、前記中性層の上に接して前記薄膜が形成された状態とする
ことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項3】
請求項2記載のパターン形成方法において、
前記中性層は、前記ブロック共重合体を構成する各ブロック鎖のモノマーを含む共重合体から形成する
ことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項4】
請求項3記載のパターン形成方法において、
前記中性層は、少なくとも2つ以上のモノマー成分からなる共重合体を含んで形成し、
前記ガイドパターンは、前記中性層が含むいずれかの前記モノマー成分からなるホモポリマーを含んで形成し、
前記ブロック共重合体は、前記中性層が含む前記モノマー成分からなるブロック鎖を含んでいる
ことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項5】
請求項3記載のパターン形成方法において、
前記中性層が含む1つの前記モノマーは、スチレンであり、
前記ガイドパターンは、ポリスチレンを含んで形成し、
前記ブロック共重合体は、ポリスチレンからなるブロック鎖を含んでいる
ことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のパターン形成方法において、
前記ガイドパターンは、少なくとも前記ブロック共重合体のいずれかのブロック鎖と同じモノマー成分からなるポリマーを含んだ状態に形成することで、前記側面の表面自由エネルギーが2つの前記ブロック鎖の一方の表面自由エネルギーに近い表面自由エネルギーとされた状態とする
ことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のパターン形成方法において、
前記ガイドパターンの表面に化学修飾層を形成することで、前記ガイドパターンの側面が、2つの前記ブロック鎖の一方の表面自由エネルギーに近い表面自由エネルギーとされた状態とし、この後、前記ブロック共重合体よりなる薄膜が形成された状態とする
ことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項8】
請求項7記載のパターン形成方法において、
前記化学修飾層は、少なくとも前記ブロック共重合体のいずれかのブロック鎖のモノマー成分を含むポリマーから形成し、
前記化学修飾層を形成する前記ポリマーは、少なくとも分子末端に水酸基又はカルボキシル基を持つ
ことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項9】
請求項8記載のパターン形成方法において、
前記中性層は、少なくとも2つ以上のモノマー成分からなる共重合体を含んで形成し、
前記ガイドパターンは、少なくともポリシロキサンを含む感光性樹脂を用いて形成し、
前記化学修飾層は、前記中性層が含むいずれか1の前記モノマー成分からなるブロック鎖を含み、かつ少なくとも分子末端に水酸基又はカルボキシル基を持つポリマーから形成し、
前記ブロック共重合体は、前記中性層が含む前記モノマー成分からなるブロック鎖を含んでいる
ことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項10】
請求項9記載のパターン形成方法において、
前記中性層が含む1つの前記モノマーは、スチレンであり、
前記化学修飾層は、少なくとも分子末端に水酸基又はカルボキシル基を持つポリスチレンを含んで形成し、
前記ブロック共重合体は、ポリスチレンからなるブロック鎖を含んでいる
ことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項11】
請求項9記載のパターン形成方法において、
前記中性層が含む前記モノマーは、スチレン及びメチルメタクリレートであり、
前記化学修飾層は、少なくとも分子末端に水酸基又はカルボキシル基を持つポリスチレン、もしくは、少なくとも分子末端に水酸基又はカルボキシル基を持つポリメチルメタクリレートの一方を含んで形成し、
前記ブロック共重合体は、ポリスチレンとポリメチルメタクリレートのブロック共重合体から構成されている
ことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項12】
請求項9〜11のいずれか1項に記載のパターン形成方法において、
ポリシロキサンは、水素化シルセスキオキサンである
ことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載のパターン形成方法において、
複数の前記ガイドパターンは、互いに平行に配置されている
ことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれか1項に記載のパターン形成方法において、
複数の前記ガイドパターンは、多角形状に配置され、
前記薄膜は、前記多角形状の2次元的な閉空間内に形成される
ことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載のパターン形成方法において、
前記薄膜のいずれかの前記パターン領域を選択的に除去してマスクパターンが形成された状態とする第5工程と、
前記マスクパターンを用いて前記基板の上に新たなパターンが形成された状態とする第6工程と
を備えることを特徴とするパターン形成方法。
【請求項16】
請求項15記載のパターン形成方法により形成されたモールドであって、
前記新たなパターンが形成された前記基板より構成されている
ことを特徴とするモールド。
【請求項1】
基板の上に互いに異なる表面自由エネルギーを持つ少なくとも2つのブロック鎖から構成されたブロック共重合体よりなる薄膜を形成し、前記ブロック共重合体をミクロ相分離することでパターンを形成するパターン形成方法において、
前記基板の上の前記ブロック共重合体が接触する面が、2つの前記ブロック鎖の表面自由エネルギーの中間の値の表面自由エネルギーとされた状態とする第1工程と、
前記基板の上に、側面の表面自由エネルギーが2つの前記ブロック鎖の一方の表面自由エネルギーに近い表面自由エネルギーとされた複数のガイドパターンが形成された状態とする第2工程と、
前記ガイドパターンの間の前記基板の上に、前記ブロック共重合体よりなる前記薄膜が形成された状態とする第3工程と、
前記薄膜を構成する前記ブロック共重合体がミクロ相分離されて、2つの前記ブロック鎖の相よりなる2つのパターン領域が前記薄膜に形成された状態とする第4工程と
を少なくとも備えることを特徴とするパターン形成方法。
【請求項2】
請求項1記載のパターン形成方法において、
前記第1工程では、前記基板の上に2つの前記ブロック鎖の表面自由エネルギーの中間の値の表面自由エネルギーとされた中性層を形成することで、前記基板の上の前記ブロック共重合体が接触する面が、2つの前記ブロック鎖の表面自由エネルギーの中間の値の表面自由エネルギーとされている状態とし、
前記第3工程では、前記中性層の上に接して前記薄膜が形成された状態とする
ことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項3】
請求項2記載のパターン形成方法において、
前記中性層は、前記ブロック共重合体を構成する各ブロック鎖のモノマーを含む共重合体から形成する
ことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項4】
請求項3記載のパターン形成方法において、
前記中性層は、少なくとも2つ以上のモノマー成分からなる共重合体を含んで形成し、
前記ガイドパターンは、前記中性層が含むいずれかの前記モノマー成分からなるホモポリマーを含んで形成し、
前記ブロック共重合体は、前記中性層が含む前記モノマー成分からなるブロック鎖を含んでいる
ことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項5】
請求項3記載のパターン形成方法において、
前記中性層が含む1つの前記モノマーは、スチレンであり、
前記ガイドパターンは、ポリスチレンを含んで形成し、
前記ブロック共重合体は、ポリスチレンからなるブロック鎖を含んでいる
ことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のパターン形成方法において、
前記ガイドパターンは、少なくとも前記ブロック共重合体のいずれかのブロック鎖と同じモノマー成分からなるポリマーを含んだ状態に形成することで、前記側面の表面自由エネルギーが2つの前記ブロック鎖の一方の表面自由エネルギーに近い表面自由エネルギーとされた状態とする
ことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のパターン形成方法において、
前記ガイドパターンの表面に化学修飾層を形成することで、前記ガイドパターンの側面が、2つの前記ブロック鎖の一方の表面自由エネルギーに近い表面自由エネルギーとされた状態とし、この後、前記ブロック共重合体よりなる薄膜が形成された状態とする
ことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項8】
請求項7記載のパターン形成方法において、
前記化学修飾層は、少なくとも前記ブロック共重合体のいずれかのブロック鎖のモノマー成分を含むポリマーから形成し、
前記化学修飾層を形成する前記ポリマーは、少なくとも分子末端に水酸基又はカルボキシル基を持つ
ことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項9】
請求項8記載のパターン形成方法において、
前記中性層は、少なくとも2つ以上のモノマー成分からなる共重合体を含んで形成し、
前記ガイドパターンは、少なくともポリシロキサンを含む感光性樹脂を用いて形成し、
前記化学修飾層は、前記中性層が含むいずれか1の前記モノマー成分からなるブロック鎖を含み、かつ少なくとも分子末端に水酸基又はカルボキシル基を持つポリマーから形成し、
前記ブロック共重合体は、前記中性層が含む前記モノマー成分からなるブロック鎖を含んでいる
ことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項10】
請求項9記載のパターン形成方法において、
前記中性層が含む1つの前記モノマーは、スチレンであり、
前記化学修飾層は、少なくとも分子末端に水酸基又はカルボキシル基を持つポリスチレンを含んで形成し、
前記ブロック共重合体は、ポリスチレンからなるブロック鎖を含んでいる
ことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項11】
請求項9記載のパターン形成方法において、
前記中性層が含む前記モノマーは、スチレン及びメチルメタクリレートであり、
前記化学修飾層は、少なくとも分子末端に水酸基又はカルボキシル基を持つポリスチレン、もしくは、少なくとも分子末端に水酸基又はカルボキシル基を持つポリメチルメタクリレートの一方を含んで形成し、
前記ブロック共重合体は、ポリスチレンとポリメチルメタクリレートのブロック共重合体から構成されている
ことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項12】
請求項9〜11のいずれか1項に記載のパターン形成方法において、
ポリシロキサンは、水素化シルセスキオキサンである
ことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載のパターン形成方法において、
複数の前記ガイドパターンは、互いに平行に配置されている
ことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれか1項に記載のパターン形成方法において、
複数の前記ガイドパターンは、多角形状に配置され、
前記薄膜は、前記多角形状の2次元的な閉空間内に形成される
ことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載のパターン形成方法において、
前記薄膜のいずれかの前記パターン領域を選択的に除去してマスクパターンが形成された状態とする第5工程と、
前記マスクパターンを用いて前記基板の上に新たなパターンが形成された状態とする第6工程と
を備えることを特徴とするパターン形成方法。
【請求項16】
請求項15記載のパターン形成方法により形成されたモールドであって、
前記新たなパターンが形成された前記基板より構成されている
ことを特徴とするモールド。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−36491(P2008−36491A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−211745(P2006−211745)
【出願日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
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