パレタイズ装置
【課題】パレタイズ装置において、簡単な構成により、ワークやパレットに寸法ばらつきがあっても、パレタイズ時のワーク間の干渉やパレタイズされたワーク間の隙間の発生を防止して柔軟に、且つ高速にパレタイズ可能とする。
【解決手段】本装置1は、ワークを把持するハンド部2と、ハンド部2を移動させるアーム部3と、積載したワークの位置情報を取得する計測部5と、前記情報を記憶する記憶部6と、各部の動作を制御する制御部10と、を備えている。制御部10は、ワークを把持したハンド部2を移動させてパレットにワークを積載した際に、計測部5によってそのワークの積載位置を取得して記憶部6に記憶させ、次のワークをパレットに積載する際に、記憶部6に記憶されている積載位置に基づいて、ワークの積載予定位置を決定する。既積載ワークの積載位置を基準にするので、ワークやパレットの寸法変動に対応でき干渉や隙間の発生を防止できる。
【解決手段】本装置1は、ワークを把持するハンド部2と、ハンド部2を移動させるアーム部3と、積載したワークの位置情報を取得する計測部5と、前記情報を記憶する記憶部6と、各部の動作を制御する制御部10と、を備えている。制御部10は、ワークを把持したハンド部2を移動させてパレットにワークを積載した際に、計測部5によってそのワークの積載位置を取得して記憶部6に記憶させ、次のワークをパレットに積載する際に、記憶部6に記憶されている積載位置に基づいて、ワークの積載予定位置を決定する。既積載ワークの積載位置を基準にするので、ワークやパレットの寸法変動に対応でき干渉や隙間の発生を防止できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークを順次搬送してパレット上に整列積載するパレタイズ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ワークの輸送やハンドリングのためにパレットにワークを積載する、いわゆるパレタイズのための装置、すなわちパレタイズ装置が生産工場や流通運送業界などで盛んに用いられている。このようなパレタイズ装置を自動運転する場合に、ワーク相互の干渉を防ぐと共に、ワークを相互間の隙間がないようにパレットに整列積載することが望まれる。そこで、パレット上での予め計算したワークの目的位置と、ワークの押し付け移動量とから計算したパレット上の位置にワークを載置し、その後、先にパレタイズされているワークに向けて、後のワークを押し付けるように移動する装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、パレタイズ装置がワークを位置ずれなく把持してパレット上に積載することにより、パレット上でのワーク相互の干渉や隙間の発生を防止するために、パレタイズする前にワークの姿勢や位置を補正するための位置決めステーションを設けたパレタイズ装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許2549139号(特開平1−222879号公報)
【特許文献2】特開平8−85627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1や特許文献2に示されるようなパレタイズ装置においては、以下のような問題がある。すなわち、特許文献1のパレタイズ装置は、パレット上でのワークの目的位置をどのように計算するかについての開示がなく、不明である。もし、既定のパレットの位置と既定のワーク寸法とから目的位置を計算するのであれば、ワークの寸法ばらつきの累積により、ワーク同士の相互干渉やワーク間の隙間の発生などの問題が生じることになる。また、特許文献2のパレタイズ装置は、ワークを位置ずれなく把持するには効果があるものの、ワークの寸法変動には対処することができず、また、位置決めステーションにおける処理時間発生の問題もある。
【0006】
本発明は、上記課題を解消するものであって、簡単な構成により、ワークやパレットに寸法ばらつきがあっても、パレタイズ時のワーク間の干渉やパレタイズされたワーク間の隙間の発生を防止して柔軟に、且つ高速にパレタイズできるパレタイズ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するために、請求項1の発明は、ワークをその供給場所から順次搬送してパレット上に整列して積載するパレタイズ装置であって、ワークを把持するハンド部と、前記ハンド部を移動させるアーム部と、パレットにおけるワークの積載位置の情報を取得するための計測部と、前記積載位置を記憶するための記憶部と、前記各部の動作を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、ワークを把持した前記ハンド部を前記アーム部によって移動させてパレットにワークを積載した際に前記計測部によってそのワークの積載位置を取得して前記記憶部に記憶させ、次のワークをパレットに積載する際に、前記記憶部に記憶されている積載位置に基づいて、ワークの積載予定位置を決定するものである。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載のパレタイズ装置において、ワーク寸法を測定するワーク測定部をさらに備え、多段に積載可能なワークをパレットに多段に積載する場合に、前記制御部は、前記ワーク測定部によって測定されたワーク寸法が、積載を予定している段におけるパレットの未積載部の寸法よりも大きいときに当該ワークを上の段に積載するように前記ハンド部を制御するものである。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2に記載のパレタイズ装置において、ワーク寸法が未積載部の寸法よりも大きい場合に、前記未積載部には当該未積載部の寸法よりも小さい寸法のワークを選択して積載するものである。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1または請求項2に記載のパレタイズ装置において、前記ハンド部はワークを把持するための少なくとも長短2種類の爪を有し、長い爪は、前記積載予定位置から所定のクリアランスを設けてパレットにワークを載置して短い爪を引き抜いた後、前記ワークを押して前記クリアランスを詰めるために用いられるものである。
【0011】
請求項5の発明は、請求項4に記載のパレタイズ装置において、前記制御部は、前記クリアランスを詰める際に、ワークを押す爪に作用する反力を応力センサによって計測し、所定値以上の反力が計測された位置をワークの積載位置とするものである。
【0012】
請求項6の発明は、請求項4または請求項5に記載のパレタイズ装置において、ワークはパレット上への積載時の底面形状が積載姿勢によって異なる直方体であり、前記制御部は、パレットの未積載部の寸法に応じて積載時のワークの底面の選択を行うものである。
【0013】
請求項7の発明は、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載のパレタイズ装置において、パレットは、ワーク整列方向両端部にワーク転倒防止部材を有し、前記制御部は、前記ワーク転倒防止部材の後端側付近に整列される最後のワークを、先に積載されているワーク側に傾けた状態で積載予定位置の上方から下降させ、前記先に積載されているワークの上方後端角部の回りに回転させることによりワークを正立させてパレットに積載するように前記ハンド部を制御するものである。
【0014】
請求項8の発明は、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載のパレタイズ装置において、パレットは、ワーク整列方向両端部にワーク転倒防止部材を有し、前記ワーク転倒防止部材の後端側付近に整列される最後のワークの積載を滑らかに行うための誘い込み板をパレット側に備えるものである。
【0015】
請求項9の発明は、請求項1に記載のパレタイズ装置において、前記制御部は、ワークを前記積載予定位置までワーク整列方向に沿って移動させた後、所定の距離だけ戻した位置に載置するように前記ハンド部を制御するものである。
【0016】
請求項10の発明は、請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載のパレタイズ装置において、前記制御部は、パレット上でワークをワーク整列方向に沿って移動させる際に、前記ハンド部に備えたワークを押す側の爪に作用する反力を応力センサによって計測し、所定値以上の反力が計測された位置を前記移動の完了位置とし、前記完了位置を判断するための前記反力に対する所定値は、ワークの強度に応じて設定するものである。
【0017】
請求項11の発明は、請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載のパレタイズ装置において、ワーク寸法を測定するワーク測定部をさらに備え、前記制御部は、前記ワーク測定部によって測定されたワーク寸法と予め記憶している標準のワークの寸法とを比較することにより、ワークの品種の異同を判断するものである。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明によれば、現実のワークの積載位置を把握すると共に、その積載位置情報を次のワークの積載にフィードバックするので、既に積載されているワークの積載位置を基準にして、個々のワークやパレットの寸法ばらつきに対応でき、パレタイズ時のワーク間の干渉やパレタイズされたワーク間の隙間の発生を防止して柔軟に、且つ高速にパレタイズできる。
【0019】
請求項2の発明によれば、事前に積載の可不可を判断して積載可能な寸法のワークを選択して積載するようにできるので、ワークに寸法ばらつきがあっても柔軟に対処して、パレットにおける未積載空間を発生することなくパレタイズでき、積載ミスを無くすことができる。また、装置が自律的に柔軟に対処するので、装置が立ち往生したり作業員を呼んだりすることなく、高速に対処できる。
【0020】
請求項3の発明によれば、ワークの寸法ばらつきなどにも柔軟に対処して、パレットにおける未積載空間を発生することなくパレタイズでき、積載ミスを無くすことができる。
【0021】
請求項4の発明によれば、ワーク間に短爪が挟まれないように短爪を逃がしてワークを移動させることができ、ワーク同士の密着整列が可能となる。また、爪を開閉する場合などにおいて、開閉のためのクリアランス確保を考慮する必要がなくなる。
【0022】
請求項5の発明によれば、クリアランスのばらつきに左右されることなく適切にワークを押して整列させることができる。また、ワークに加えた過度の力によってワークやハンド部を損傷させてしまう、ということを防止できる。
【0023】
請求項6の発明によれば、個々のワークやパレットの寸法ばらつきに柔軟に対処して、ワークを適切に、すなわち隙間を生じさせることなく、パレット上に積載できる。
【0024】
請求項7の発明によれば、ワーク積載のためのクリアランスが小さい場合に、ワークの角部との干渉を回避して確実に積載できる。
【0025】
請求項8の発明によれば、ワーク積載のためのクリアランスが小さい場合に、ワークとワーク転倒防止部材の角部との干渉を回避して確実に積載できる。
【0026】
請求項9の発明によれば、多段積みの場合に、ワーク寸法のばらつきなどによって発生する前方ワークの下部近傍における下段ワークの角部の出っ張りなどを避けてワークを載置できるので、ワークが斜め置きされて転倒するなどという不具合を防止できる。所定距離戻すことによって生じた隙間は、次のワークによる詰め動作によって順次詰めることができるので、ワークやパレットに寸法ばらつきがあっても稠密に積載することができる。
【0027】
請求項10の発明によれば、ワークやハンド部を破損することなく、適切に移動させることができ、ワーク間の隙間の発生を防止して稠密に積載することができる。
【0028】
請求項11の発明によれば、ワークの品種の異同を判断するので、1つのパレットに異品種のワークが混載されるのを防止するようにできる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るパレタイズ装置の斜視図。
【図2】同上装置のブロック構成図。
【図3】(a)は同上装置のハンド部の斜視図、(b)は(a)のAA線断面図。
【図4】同上装置によるワークの移動を示す斜視図。
【図5】同上装置によるワークの移動を示す側面図。
【図6】同上装置によるワークのパレット積載を段階的に示す斜視図であり、(a)はコンベアからワークを取り出した状態の斜視図、(b)はパレットにワークを降ろす状態の斜視図、(c)はハンド部の短爪を引き抜いた状態の斜視図、(d)はハンド部の長爪でワークを整列させた状態の斜視図、(e)はワーク積載が終わってハンド部を引き抜いた状態の斜視図。
【図7】(a)は同上装置により整列させるパレット直上の最初のワークをその軌跡と共に示す側面図、(b)は同じく2番目のワークをその軌跡と共に示す側面図。
【図8】図7(a)(b)の変形例を示し、(a)は同上装置により整列させるパレット直上の最初のワークをその軌跡と共に示す側面図、(b)は同じく2番目のワークをその軌跡と共に示す側面図。
【図9】(a)は第2の実施形態に係るパレタイズ装置のハンド部分とコンベア上のワークの斜視図、(b)は同ハンド部によりワークをパレットに載置する様子を示す斜視図。
【図10】(a)は第3の実施形態に係るパレタイズ装置のハンド部分とコンベア上のワークの斜視図、(b)は同ハンド部によりワークを水平に把持した状態の斜視図、(c)は同ハンド部により把持したワークを回転した状態の斜視図。
【図11】同上装置によるワークのパレット積載を段階的に示す斜視図であり、(a)はパレットにワークを降ろす状態の斜視図、(b)はワークを下ろした状態の斜視図、(c)はハンド部の短爪を引き抜いた状態の斜視図、(d)はハンド部の長爪でワークを整列させた状態の斜視図、(e)はワーク積載が終わってハンド部を引き抜いた状態の斜視図。
【図12】(a)は第4の実施形態に係るパレタイズ装置のハンド部分の斜視図、(b)は同ハンド部によりワークを把持してコンベアから取り出した状態の斜視図。
【図13】同上装置によるワークのパレット積載を段階的に示す斜視図であり、(a)はパレットにワークを降ろす状態の斜視図、(b)はワークを下ろしてハンド部の短爪を引き抜いた状態の斜視図、(c)はハンド部の長爪でワークを整列させた状態の斜視図、(d)はワーク積載が終わってハンド部を引き抜いた状態の斜視図。
【図14】第5の実施形態に係るパレタイズ装置によるワークのパレットへの積載を段階的に示す側面図であり、(a)はパレット上方からワークを傾けて降ろす状態の側面図、(b)は既積載のワークの横でワークを回転する様子を示す側面図、(c)は正立させたワークをさらに下降させた状態の側面図、(d)はワーク積載が終わった状態の側面図。
【図15】図14(b)に示した状態におけるワーク相互の位置関係を説明する側面図。
【図16】第6の実施形態に係るパレタイズ装置によるワークのパレットへの積載を示す側面図。
【図17】第7の実施形態に係るパレタイズ装置によるワークのパレットへの積載を示す側面図であり、(a)は積載前の側面図、(b)は積載後の側面図。
【図18】同上装置によるワーク積載の他の例を示す積載されたワークとパレットの側面図。
【図19】第8の実施形態に係るパレタイズ装置によるワークのパレットへの積載を示す側面図であり、(a)は積載前の側面図、(b)は積載後の側面図。
【図20】第9の実施形態に係るパレタイズ装置のハンド部によるワークの把持とパレットに載置されるときのワークの姿勢の例を示す側面図であり、(a)はワークが回転されない場合の側面図、(b)はワークが90゜回転される場合の側面図、(c)はワークが180゜回転される場合の側面図、(d)はワークが270゜回転される場合の側面図。
【図21】同上装置によって整列積載されたワークとパレットの側面図。
【図22】(a)は図21における隙間に載置するワークの積載の様子を説明する側面図、(b)は他のワークについての側面図。
【図23】第10の実施形態に係るパレタイズ装置による処理のフローチャート。
【図24】(a)〜(d)は同上装置によるワークの積載手順を時系列的に示す側面図、(a1)(b1)(d1)は(a)(b)(d)に対応する不具合例を示す側面図。
【図25】(a)(b)(c)は同上装置によるワークの押し込み動作を時系列的に示す側面図。
【図26】(a)〜(e)は同上装置によるワークの積載手順を時系列的に示す斜視図。
【図27】第1,3,4,10の実施形態における応力センサの使用方法に係る長爪の押し込み量と反力の関係図。
【図28】第11の実施形態に係るパレタイズ装置のブロック構成図。
【図29】(a)は同上装置による処理のフローチャート、(b)はその変形例のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態に係るパレタイズ装置について、図面を参照して説明する。
【0031】
(第1の実施形態)
図1は第1の実施形態に係るパレタイズ装置1の外観を示し、図2は同装置のブロック構成を示し、図3(a)(b)は同装置のハンド部2の構造を示す。これらの図により装置の構成を説明し、その後、図4〜図8を参照して装置の動作を詳細に説明する。なお、図1、図2は、他の実施形態においても基本的な装置構成が同様であるので、他の実施形態においても随時参照される。
【0032】
パレタイズ装置1は、ワークWを供給場所から順次搬送して、予め所定位置に設置された可搬式のパレット7上に隙間なく整列させて積載する装置、すなわちパレタイズする装置である。ワークWは、長尺の箱、例えばダンボール箱であり、コンベア9によって供給され、そのストッパ91によって位置決めされて静止している。パレタイズ装置1は、コンベア9上に位置決めされているワークWの長手方向の両端を把持して搬送する。そのため、パレタイズ装置1はコンベア9に向かって左右に一対の構成とされている。パレット7は、左右一対で構成されたパレタイズ装置1の中央線上の床面に配置されている。
【0033】
パレタイズ装置1は、ワークWを把持するハンド部2と、回転部23を介してハンド部2を保持すると共に移動させるアーム部3と、アーム部3を走行移動させる搬送部4と、パレット7におけるワークWの積載位置の情報を取得するための計測部5と、前記積載位置の情報を記憶するための記憶部6と、各部の動作を制御する制御部10と、を備えている。これらは、記憶部6と制御部10とを除いて、各部がそれぞれ左右2対構成とされている。
【0034】
ここで、説明の便のために、地上に固定されたxyz直交座標系を設定する。x方向はハンド部2から見てコンベア9に向かう水平方向、y方向はハンド部2から見てパレット7に向かう水平方向、z方向は垂直上方とする。すると、左側のハンド部2については、左手系のxyz座標系となり、右側のハンド部2については、右手系のxyz座標系となる。ハンド部2についても、同様に、左右のXYZ座標系が設定される。また、左右一対のハンド部2は、互いに左右勝手違い関係になっている。
【0035】
ハンド部2は、人の手のひらに相当する平板状のハンドベース部20と、ハンドベース部20から立設するそれぞれ板状の長爪21と、短爪22と、を備えている。長爪21と短爪22とは、それぞれ2個ずつが互いに直交して、直方形の対向する隅部をそれぞれ挟む態様で配置されている。すなわち、ハンド部2は、ワークWを把持するための4本の爪を有し、長い爪と短い爪が2本ずつ隣り合う位置に取り付けられている。
【0036】
上述の2つの長爪21は共にハンドベース部20に固定されている。2つの短爪22は、共に可動爪であり、例えばエアシリンダや油圧シリンダから成る開閉駆動部2aによってハンドベース部20に平行に移動することができる(図2、図3(a))。短爪22を、開閉駆動部2aによって、矢印X1,Z1で示すように、移動することにより、長爪21と短爪22間の距離を変えてハンド部2を開閉でき、ワークWを把持したり、解放したりできる。短爪22の移動距離、すなわちストロークは、把持するワーク寸法の最小から最大までをカバーできるストロークであり、品種により寸法が異なるワークWに対応できるようになっている。本実施形態では、4本の爪のうち、長爪21を固定し短爪22を可変としたが、4本の爪を全て可動とすることもできる。
【0037】
また、ハンド部2は、上述の短爪22の移動位置を検出するための距離センサ2bを備えている(図2、図3(b))。短爪22の肉厚a、および距離センサ2bと長爪21との距離bを既知とし、距離センサ2bと短爪22の距離dを測定値として、長爪21と短爪22との間の距離Lが、L=b−a−dと求められる。従って、ハンド部2がワークWを把持しているときの距離Lを求めると、ワークWの断面寸法(図1のワークWについて示したLa,Lb)を測定することができる。つまり、距離センサ2bを用いて、ワークWの寸法を測定するワーク測定部が構成される。
【0038】
また、上述の長爪21の少なくとも一方には、長爪21に作用する外力を測定するための応力センサ1aが設けられている。応力センサ1aは、歪ゲージなどを用いて構成することができる。また、応力センサ1aとして、市販されている6軸力センサやロードセルを使用することができる。
【0039】
アーム部3は、床面近くから垂直に設けられた支柱部材31と、支柱部材31から片持ち梁のように張り出した水平部材32と、水平部材32から垂下保持されている垂直部材33とを備えている(これらを総称してアームベース部30)。水平部材32は、上下駆動部3a(図2)によって、支柱部材31に沿って上下動される。垂直部材33は、接離駆動部3bによって、水平部材32に沿って水平動される。
【0040】
回転部23は、垂直部材33に対してハンド部2のハンドベース部20を、矢印R,R1で示すように、y軸(Y軸)回りに回転自在に保持している。また、回転部23は、不図示の回転駆動部によって、ハンド部2を所定の回転角度に保持することができる。
【0041】
搬送部4は、床面に配設された2本のレール41上を搬送駆動部4aによって移動する搬送ベース部40を備えている。搬送ベース部40は、上述の支柱部材31、従って、アーム部3、回転部23、ハンド部2の全体をその上部に保持している。従って、搬送部4がレール41に沿って移動することにより、ハンド部2がレール41に沿って移動する。
【0042】
上記の構成から、ハンド部2は、4軸について移動または回転することができる。これらの軸は、回転部23によるワークWを回転させるためにハンド部2を回転させる軸、アーム部3によるワークWを上下に移動させる軸、ワークWの長さ寸法に対応できるように左右のハンド部2の間隔を変える軸、および、搬送部4によるワークWをコンベア9とパレット7との間で移動する軸の4軸で構成されている。
【0043】
計測部5は、ハンド部2の長爪21の位置を、xyz座標系による3次元空間における座標値として把握できるように構成されている。座標値の取得は、各駆動部、つまり、上下駆動部3a、接離駆動部3b、搬送駆動部4a、および回転部23の回転駆動部による各部の平行移動量や回転移動量を計測し、積算することによって行われる。例えば、各駆動部がモータ駆動の場合、モータの回転数をロータリエンコーダで取得したり、パルスモータの制御パルスを計数したりして、対応する移動量を算出することができる。
【0044】
パレット7は、長尺のワークWを多段積みできるように、パレット本体70に、ワーク転倒防止部材71を備えて構成されている。パレット本体70の長さは、ワークWの長さに合わせてあり、パレット本体70の幅は、空き空間を生じることなく複数個のワークWを効率的に整列可能な寸法に合わせてある。また、ワーク転倒防止部材71は、パレット本体70に積載されたワークWの転倒を防止するものであり、折り畳み式のポールなどで構成される。このワーク転倒防止部材71は、必要に応じて設けることができる。
【0045】
制御部10は、CPUやメモリや外部記憶装置や表示装置や入力装置などを備えた一般的な構成を備えた電子計算機、組込用の制御コンピュータ、シーケンサなどを用いて構成することができる。また、記憶部6は、制御部10に内蔵した記憶装置を用いるようにしてもよい。
【0046】
上述のような構成を有するパレタイズ装置1は、その制御部10が、各部のセンサや計測部5からの信号や情報を受け取り、各駆動部を制御することにより、自律的にパレタイズ動作を行う。制御部10は、自律的なパレタイズ動作のために、計測部5、応力センサ1a、距離センサ2bからの出力情報をリアルタイムで取得する。例えば、後で詳述するが、距離センサ2bでワークWの寸法Laを取得し、応力センサ1aによるワークWの整列情報、計測部5からの移動情報から、図1に示すパレット本体70上のワーク積載位置である点p1の位置を取得することができる。
【0047】
また、制御部10は、寸法Laからパレットの端部点p0の位置を逆算することもできる。パレットの両端部点p0,p2間の距離、すなわちパレット本体70の幅は、予め既定値として制御部10に入力して記憶部6に記憶させておくことができる。従って、制御部10は、点p0,p1,p2の位置情報から、パレット本体70における未積載空間、つまり点p1,p2間の距離を取得することができる。
【0048】
上記のことから、制御部10は、ワークWを把持したハンド部2をアーム部3と搬送部4とよって移動させてパレット7にワークWを積載した際に、計測部5によってそのワークWの積載位置(点p1)を取得して記憶部6に記憶させ、次のワークWをパレット7に積載する際に、記憶部6に記憶されている積載位置に基づいて、ワークWの積載予定位置を決定することができる。
【0049】
本実施形態のパレタイズ装置1によれば、現実のワークWの積載位置、すなわち点p1の位置を把握すると共に、その積載位置情報を次のワークWの積載にフィードバックするので、既に積載されているワークWの積載位置を基準にして、個々のワークWやパレット7の寸法ばらつきに対応でき、パレタイズ時のワーク間の干渉やパレタイズされたワーク間の隙間の発生を防止して自律的に、柔軟に、且つ高速にパレタイズすることができる。
【0050】
次に、図4〜図8を参照して、パレタイズ装置1によるワークWの移動とパレタイズ動作を詳細に説明する。前出の図1〜図3も適宜参照する。
【0051】
図4は、パレット7に積載されたワークW0、パレット7への移動中のワークW、およびコンベア9のストッパ91側に静止した待ち状態のワークWを、ワークに注目して示している。この図に示す例では、各ワークW0,W,Wは、略同じ姿勢を保った状態で、平行移動されてパレタイズされる。
【0052】
パレタイズ装置1に供給されるワークWは、コンベア9上を移動し、コンベア9の端面のストッパ91位置で水平に停止している。ストッパ91で位置決めされた長尺のワークW、例えば、製品を梱包したダンボール箱は、不図示の左右2箇所のハンド部2でピッキングされる。ワークW2の把持(チャッキング)は、不図示の4本の爪で行われる。
【0053】
図5は、パレタイズ動作に伴うハンド部2の軌跡を示す。装置の左右対称性により、軌跡は、xz面内で考えれば十分である。図中の点P1〜P5の位置は、ハンド部2の特定部位が通過すべき点、すなわちティーチングポイントを示す。本例では、2本の長爪21側のワークWのコーナ部がハンド部2の特定部位とされている。ティーチングポイントは、パレタイズ装置1、従ってハンド部2の標準の動作を維持するための空間基準位置である。点P1〜P5の各位置は、既定値の場合もあり、設定値の場合もあり、また、測定値の場合もある。通常、ワークWを順次パレタイズする作業の進行と共に、点P3,P4,P5の位置は、当然変化する。
【0054】
ハンド部2は、ストッパ91で位置決めされた点P1におけるワークWを把持する際に、既知のコンベア9の傾き角度に合わせて、回転部23(図1)によって所定角度回転される。また、ハンド部2が、ワークWを把持して点P2まで持ち上げる間に、または持ち上げた後に、ワークWの姿勢が水平に戻される。制御部10は、標準的なワークの場合、ハンド部2従ってワークWを、点P3、さらに点P4まで移動させる。点P3,P4のx座標値は、同じx4である。
【0055】
次に、制御部10は、各駆動部を制御して応力センサ1aが装備されている長爪21によって、点P4から点P5(座標値x5)に向けてワークWを押す。距離Δx=x4−x5が、押し代(または、クリアランス)である。このとき、先に積載されているワークW0から長爪21への反力が応力センサ1aによって計測される。制御部10は、その計測値が所定の値を超えた段階でワークWを移動させる隙間が無くなったと判断してハンド部2の移動を停止し、そのときの点P5の座標を記憶部6に記憶させる。各点の位置座標は、計測部5によって取得される。
【0056】
以上の動作をまとめると、次のようになる。すなわち、パレタイズ装置1において、ハンド部2はワークWを把持するための少なくとも長短2種類の爪を有し、長爪21は、積載予定位置(点P5の位置)から所定のクリアランスΔxを設けてパレット7にワークWを載置して短爪22を引き抜いた後、ワークWを押してクリアランスΔxを詰めるために用いられる。
【0057】
また、制御部10は、クリアランスΔxを詰める際に、ワークWを押す爪(長爪21)に作用する反力を応力センサ1aによって計測し、所定値以上の反力が計測された位置をワークWの積載位置とする。反力判定に用いる所定値は、ワークWの重量、強度、ハンド部2の強度などを考慮して、実測値に基づいて決めることができる。
【0058】
上述のハンド部2の動作を、より具体的に説明する。ハンド部2は、図6(a)に示すように、ワークWを把持してコンベア9からパレット上に移動する。その移動位置は、図6(b)に示すように、パレット7上のワークW0から所定のクリアランスΔxだけ離れた位置である。ワークWを把持したハンド部2は、矢印z1で示すように下降される。
【0059】
次に、図6(c)に示すように、ハンド部2は、その短爪22を広げた後(開閉駆動部2a等は図示省略)、短爪22がワークWから外れて長爪21だけがワークWに懸かった状態とされる。すなわち、ハンド部2は、矢印y1の方向に引き抜かれ、短爪22が逃がされる。このとき、ワークWは下側の長爪21によって支えられた状態にある。
【0060】
次に、図6(d)に示すように、ハンド部2は、矢印x1の方向に移動され、ワークWは、応力センサ1aを備えた長爪21によってワークW0に向けて押されて、上述のクリアランスΔxが詰められる。ハンド部2による押し動作は、応力センサ1aからの計測値に基づいて制御され、停止される。その後、図6(e)に示すように、ハンド部2が矢印y2方向に引き抜かれ、ワークWがワークW0の横に、隙間なく、パレタイズされた状態となる。
【0061】
次に、ワーク寸法のばらつきへの対応について説明する。標準的な寸法のワークの場合、図7(a)に示すように、最初にパレット7に積載するワークW0は、パレット本体70上の点P4の位置に下降され、点P5の位置まで横押しされてパレタイズされる。パレット本体70の端部の点P0の位置(x座標値x0、以下同様)は既知とされ、点P4のx座標値x4は、点P0を基準点として、点P0のx座標値x0から十分余裕を設けた位置に設定される。つまり、距離DをD=x4−x0とすると、距離DはワークW0の幅寸法の変動の上限値よりも大きく取ればよい。
【0062】
最初のワークW0を積載した後は、点P5の位置が点P0に代わって基準点となる。点P5の位置は、計測部5によって計測された座標値によって知られる。そこで、図7(b)に示すように、2番目のワークWを下降させる点P7の位置は、点P5から十分余裕を設けた位置に設定される。つまり、x7=x5+Dとされる。以下、同様である。
【0063】
上記において、ワークWが、パレット本体70の表面に整列される例を示したが、パレット7にワークWを多段に積載することもできる。そこで、各段毎に、上記手順が繰り返される。
【0064】
図8(a)に示すワークW0は、非標準的な寸法のワークであり、上述した標準的なワークの寸法よりも、x方向寸法がΔL0大きいワークである。ワークの寸法は、ハンド部2に設けた距離センサ2bによって、短爪22の移動量を測定して取得される。そして、最初のワークW0に対する点P4の設定は、ΔL0分補正して設定される。例えば、上述の距離Dを補正して、x4=x0+(D+ΔL0)とすればよい。
【0065】
また、図8(b)に示すように、次のワークWのx方向寸法がΔL大きい場合には、点P7の設定は、ΔL分補正して設定される。例えば、上述の距離Dを補正して、x7=x5+(D+ΔL)とすればよい。以下、同様である。また、ワークが標準か非標準かは、ΔL0やΔLと距離Dとを比較して決めることができ、補正するかどうかも所定の判断基準に基づいて行うことができる。
【0066】
本実施形態のパレタイズ装置1によれば、パレット上の現実のワークの積載位置を計測部5によって把握すると共に、その積載位置情報を次のワークの積載にフィードバックするので、ワーク寸法変動の累積による影響を受けずにパレタイズできる。つまり、既に積載されているワークの積載位置を基準にして、個々のワークやパレットの寸法ばらつきに対応でき、パレタイズ時のワーク間の干渉やパレタイズされたワーク間の隙間の発生を防止して柔軟に、且つ高速にパレタイズできる。
【0067】
また、アーム部3によるハンド部2の移動機能を備えたパレタイズ装置1によれば、短爪を逃がしてワークを移動させることができるので、ワーク同士の密着整列が可能となる。また、爪を開閉する場合などにおいて、開閉のためのクリアランス確保を考慮する必要がなくなる。
【0068】
また、ハンド部2に応力センサ1aを備えたパレタイズ装置1によれば、クリアランスのばらつきに左右されることなく適切にワークを押して整列させることができる。また、ワークに加えた過度の力によってワークやハンド部を損傷させてしまう、ということを防止できる。
【0069】
(第2の実施形態)
図9(a)(b)は第2の実施形態に係るパレタイズ装置のハンド部分によるパレタイズの様子を示す。本実施形態は、図9(a)に示すように、第1の実施形態における長尺のワークと比較して短いワークをパレタイズ対象のワークとするパレタイズ装置に関する。すなわち、ワークWをその長さ方向の両端で把持する必要がなく、本実施形態のパレタイズ装置1は、ハンド部2を片側だけ用いるものである。この場合、パレット7の寸法形状も、図9(b)に示すように、第1の実施形態におけるパレット7とは異なっている。
【0070】
他の点については、第1の実施形態と同様である。このような短尺のワークWをパレタイズするパレタイズ装置1は、第1の実施形態におけるパレタイズ装置1の左右いずれかのハンド部2等を用いて実現することができる。また、初めから片側のハンド部2等だけを備えた、短尺ワークW専用のパレタイズ装置1とすることもできる。
【0071】
(第3の実施形態)
図10(a)〜(c)、図11(a)〜(e)は第3の実施形態に係るパレタイズ装置のハンド部分によるパレタイズの様子を示す。本実施形態のパレタイズ装置は、ハンド部2の長爪21がワークWの長さ程度に長く、また、ハンド部2を水平方向から下向き垂直方向に傾動する上下回動部(不図示)を備える点が、第2の実施形態と異なり、他の点は同様である。
【0072】
このパレタイズ装置は、図10(a)(b)(c)に示すように、コンベア9上のワークWをハンド部2で把持して下向きに回転した後、図11(a)〜(e)に示すように、パレット(不図示)上に、ワークWを2次元配列することができる。
【0073】
図11(a)(b)に示すように、ハンド部2に把持されたワークWは、既にパレタイズされているワークW0に隣接する破線で示すワークW1の位置に向けて、矢印z1方向に下降され、載置される。次に、図11(c)に示すように、ハンド部2の短爪22が開かれて把持が解放され、ハンド部2が矢印z2方向に引き上げられて、短爪22がワークWよりも上方に逃がされる。その後、図11(d)に示すように、ハンド部2を矢印x1方向、y1方向に移動することにより、ワークWを2つの長爪21で水平方向に押して移動する。
【0074】
上述のハンド部2の動作により、ワークWが、既にパレタイズされているワークW0に密着するようにパレタイズされる。2つの長爪21には、それぞれ応力センサ1aが備えられており、その出力信号により、ハンド部2の移動停止制御が行われる。ワークWがパレタイズされた後、図11(e)に示すように、ハンド部2が矢印z3方向に引き上げられ、次のワークのパレタイズが行われる。
【0075】
ワーク積載位置情報の取得やクリアランスの設定方法などは、第1および第2の実施形態と同様である。また、計測部5は、ワーク積載位置情報として、x座標値だけでなく、y座標値も取得し、これらの情報は、記憶部6に記憶され、制御部10によって、ワークを2次元整列するために用いられる。
【0076】
本実施形態のパレタイズ装置によれば、現実のワークの積載位置を把握すると共に、その積載位置情報を次のワークの積載にフィードバックでき、既に積載されているワークの積載位置を基準にして、ワークを2次元整列させてパレタイズできる。また、個々のワークやパレットの寸法ばらつきに対応できるので、パレタイズ時のワーク間の干渉やパレタイズされたワーク間の隙間の発生を防止して柔軟にパレタイズできる。
【0077】
(第4の実施形態)
図12(a)(b)は第4の実施形態に係るパレタイズ装置のハンド部分を示し、図13(a)〜(d)は同装置によるパレタイズ動作を示す。本実施形態のパレタイズ装置は、第1の実施形態におけるパレタイズ装置1のハンド部2における長爪21の1つが固定の短爪22とされている点が、第1の実施形態と異なり、他の点は同様である。
【0078】
図13(a)は、ワークWを把持したハンド部2がパレット7に向けて矢印z1方向に下降中の状態を示し、図13(b)は、ワークWを下ろしてハンド部2の短爪22を矢印y1方向に引き抜いた状態を示す。この状態で、ワークWは、その底面をパレット7のパレット本体面に接触させて載置した状態となっている。
【0079】
また、図13(c)は、応力センサ1aを備えた長爪21によってワークWを横押しして整列させた状態を示し、図13(d)はワーク積載が終わってハンド部2を引き抜いた状態を示す。
【0080】
(第5の実施形態)
図14(a)〜(d)は第5の実施形態に係るパレタイズ装置によるワークのパレットへの積載を段階的に示す。本実施形態は、第1の実施形態におけるパレタイズ装置1を用いて、パレット上の狭い空間、例えばダンボール箱から成るワークWが変形しながら隙間に積載されるような空間(未積載部)に、ワークを積載する際の動作を説明するものである。この狭い空間とは、図14(a)に示すように、パレット7における先に積載されたワークW0と、ワーク整列方向後端部におけるワーク転倒防止部材71との間の空間Sである。
【0081】
このような空間SにワークWを変形させることなく、滑らかに積載するために、制御部10は、ワークWを傾けて下降させる。すなわち、制御部10は、ワーク転倒防止部材71の後端側付近に整列される最後のワークWを、先に積載されているワークW0側に角度θだけ傾けた状態で積載予定位置の上方から、矢印z1方向に下降させる。角度θとワークW0,Wの位置関係については、後述する(図15参照)。
【0082】
制御部10は、図14(b)に示すように、ワークWの下部が、ワークW0とワーク転倒防止部材71との間に進入した時点で、下降を止め、先に積載されているワークW0の上方後端角部の回りに角度θだけ戻し回転してワークWを正立させる。この戻し回転の前または後に、短爪22を逃がすために、ハンド部が、短爪22の長さに所定の余裕を持たせた距離だけ、引き抜かれる。
【0083】
その後、図14(c)に示すように、ワークWは正立された状態で矢印z2方向に下降され、ハンド部が引き抜かれる。すると、図14(d)に示すように、ワークWが自重で落下して、ワークWのパレタイズが終了する。
【0084】
次に、図15によって、ワークW0の上方後端角部Qの位置と、ワークWの中心位置Gとの関係を説明する。これは、ワークWをどの位置P3から下降させればよいか、また、どの位置で下降を停止して回転を始めればよいかを決めるものである。すなわち、ワークW0の整列方向後端から中心位置Gまでのx方向距離Dx、および、積載面の位置から中心位置Gまでのz方向距離Dzが求められる。
【0085】
ここで、ワークWの幅寸法La、高さ寸法Lb、ワークW0の高さ寸法Lc、ワークWの回転角度θ、ワークWが上方後端角部Qに接触したときのワークWの底面から接触点間での距離δが、それぞれ測定値、または設定値であって既知であるとする。例えば、δやθは設定値(設計値)であり、La,Lb,Lcはハンド部の距離センサ2bによって測定される測定値である。
【0086】
上述の既知の値を用いて、Dx,Dzが下式のように求められる。
Dx=(La/2)cosθ−(Lb/2)sinθ+δsinθ、
Dz=(La/2)sinθ+(Lb/2)cosθ+δcosθ+Lc。
【0087】
本実施形態のパレタイズ動作によれば、ワーク積載のためのクリアランスが小さい場合(ワークを積載できるが積載のための余裕が少ない場合)に、ワークの角部との干渉を回避して確実に積載できる。
【0088】
(第6の実施形態)
図16は第6の実施形態に係るパレタイズ装置によるパレタイズ動作を示す。本実施形態のパレタイズ装置は、第1の実施形態におけるパレタイズ装置1を用いてワークを積載する際に、積載を滑らかに行うために用いる誘い込み板8をパレット7側に備えるものである。すなわち、先に積載されたワークW0とワーク整列方向後端部におけるワーク転倒防止部材71との間のワーク積載のためのクリアランスが小さい空間にワークを積載する際に、誘い込み板8が有効に用いられる。
【0089】
本実施形態のパレタイズ装置によれば、ワーク積載のためのクリアランスが小さい場合に、ワークWとワーク転倒防止部材71の角部(エッジ)との干渉を回避して確実に積載できる。本実施形態の誘い込み板8は、上述の第5の実施形態におけるパレタイズ動作時により効果的に、併用することができる。
【0090】
(第7の実施形態)
図17(a)(b)は第7の実施形態に係るパレタイズ装置によるパレタイズ動作を示す。本実施形態のパレタイズ装置は、第1の実施形態におけるパレタイズ装置1を用いてワークを積載するものであり、多段に積載可能なワークを、パレットに多段に積載する場合に関する。
【0091】
すなわち、制御部10は、図17(a)に示すように、距離センサ2bなどを用いて構成されるワーク測定部によって測定されたワークWの寸法Laが、積載を予定している段におけるパレット7の1段目の未積載部の寸法αよりも大きいときに(α≦La)、図17(b)に示すように、そのワークWを上の段、つまり2段目に、積載するようにハンド部2を制御する。この寸法La,αの大小比較の判断は、ワークWの種類によって変更することができる。例えば、ダンボール箱のワークであって、少々の変形が許容されるワークの場合は、ある許容値βを導入して、α+β≦Laなどの式によって判断することができる。ここで、例えば、β=5mmの場合、この寸法βが、各ワークの変形や移動によって吸収されることになる。
【0092】
上述のようなパレタイズ動作は、多段積載の場合にも適用できる。すなわち、図18に示す例の場合、2段目の最後に積載予定のワークWを2段目には積載せずに、3段目に積載している。また、図17(a)(b)における1段目の最後や、図18における2段目の最後の未積載空間には、この空間に積載可能な寸法のワークWが得られたときに、すなわち、未積載部の寸法よりも小さい寸法のワークが選択されて積載される。それまでは、ワークWは、上の段に順次整列積載される。
【0093】
本実施形態のパレタイズ動作によれば、事前に積載の可不可を判断して積載可能な寸法のワークを選択して積載するようにできるので、ワークに寸法ばらつきがあっても柔軟に対処して、パレットにおける未積載空間を発生することなく、また、パレタイズ動作を停止することなく、パレタイズ動作を続行でき、積載ミスを無くして効率的にワークを積載することができる。
【0094】
(第8の実施形態)
図19(a)(b)第8の実施形態に係るパレタイズ装置によるパレタイズ動作を示す。本実施形態のパレタイズ装置は、第1の実施形態におけるパレタイズ装置1と同様のものであり、形状寸法と姿勢に融通性を有するワークを効率的に積載するものである。すなわち、ワークWが、パレットに積載可能となる底面を複数有し、その底面形状が積載姿勢によって異なる場合に、制御部10は、パレットの未積載部の寸法に応じて積載時のワークの底面の選択を行ってワークを積載する。
【0095】
図19(a)において、積載予定のワークWの寸法が、横寸法La、縦寸法Lbであり、パレット7における未積載部の寸法αに対して、Lb<α<Laの関係があるとする。寸法La,Lbはハンド部2の距離センサ2bによって測定される。また、寸法αは、既知のパレット寸法と、計測部5により計測されたワークの積載位置とから求められる。ワークWは、正立した姿勢では、パレタイズできないが、横にするとパレタイズできる。そこで、制御部10は、図19(b)に示すように、ワークWを横に回転した状態でパレタイズする。
【0096】
本実施形態のパレタイズ動作によれば、個々のワークやパレットの寸法ばらつきに柔軟に対処して、ワークを適切に、すなわち隙間を生じさせることなく、パレット上に積載できる。
【0097】
(第9の実施形態)
図20(a)〜(d)は第9の実施形態に係るパレタイズ装置のハンド部によるワークの把持とパレットに載置されるときのワークの姿勢の例を示す。本実施形態は、第1の実施形態におけるパレタイズ装置1のハンド部2の使用方法に関する。すなわち、ワークWの選択可能な積載向きが複数存在する場合に、制御部10は、パレット上でワークWを横押しする時点で、ハンド部2の長爪21の位置が押す側の位置となるように、予めハンド部2を回転させてからワークWを把持させる。この場合、特定の長爪21で常にワークを横押し移動させるようにできるので、必要最小限、すなわち1つの長爪21について応力センサ1aを備えればよく、コストダウンができる。
【0098】
そこで、ハンド部2は、ワークWが回転されない場合には、図20(a)に示すように把持し、ワークが90゜回転される場合には、図20(b)に示すように把持して回転し、ワークが180゜回転される場合には、図20(c)に示すように把持して回転し、ワークが270゜回転される場合には、図20(d)に示すように把持して回転する。
【0099】
上述のハンド部2の使用法によると、図21に示すような、パレット7へのワークW1〜W10の積載が実現される。この積載例では、積載効率を高くするために縦置きと横置きを混在させ、また、ワークの重量バランスを考慮して180゜向きを反転させて積載されている。
【0100】
上述のワーク積載例において、ワークW1〜W4、W6,W8,W9は、長爪21によって横押しされて積載される。また、ワークW5,W7,W10は、第5の実施形態における積載方法、またはその応用によって積載される。例えば、ワークW7は、図22(a)に示すように傾けられて積載され、ワークW10は、図22(b)に示すように傾けられて積載される。
【0101】
図21に示した積載例は、ワークの縦横の寸法が大きく異なる例を示している。もし、縦横の寸法の差がわずかの場合には、第8の実施形態における積載方法を応用した積載を実現できる。例えば、ある積載段において、ワークを順番に整列積載する際に、リアルタイムで取得されるワーク寸法と、パレット上の未積載空間と、の関係から、残りの幾つかのワークを横倒しにすることにより、稠密に積載できる、ということを予測できる。
【0102】
そこで、制御部10は、第8の実施形態のように最後のワークだけを横倒しにするのではなく、複数のワークを横倒しにして積載する。途中のワークを横倒しにして積載する場合には、上述のように、長爪21で横押しできるように、予めハンド部2を回転させた上で、ワークを把持すればよい。
【0103】
本実施形態のように、ワークの向きを自在に選択して、稠密積載を実現したり、パレット上のワーク全体の重心位置を考慮して積載できるのは、パレタイズ装置1が、計測部5を備え、距離センサ2bによるワーク測定部を備えて、パレットにおけるワーク積載位置や、未積載部の寸法や、ワーク寸法を測定して把握できることによる。このような寸法を把握することにより、これらの情報を以降の積載にフィードバックすることができ、次ワークのみならず、次々ワーク等の積載位置や積載方法を前もって設定できるようになる。
【0104】
(第10の実施形態)
図23乃至図26は第10の実施形態を示す。本実施形態は、ワークを積載予定位置までワーク整列方向に沿って移動させた後、所定の距離だけ戻した位置に載置する点が、上述した他の実施形態と異なっている。すなわち、図23のフローチャートに示すように、制御部10は、パレット上の所定位置にワークを搬送し(S1)、既に積載済みのワークまたは転倒防止部材71にワークを押しつけ(S2)、その後、ワークとハンド部とを所定距離だけ後退させて(S3)、パレット上にワークを載置し(S4)、処理続行または終了する(S5)。具体的に、図24(a)に示すように、パレット7上にワークW1〜W7が既に積載されており、ワークW3の上面であってワークW6,W7の手前にワークW8を載置する場合を説明する。制御部10は、図24(b)に示すように、短爪22を広げて引き抜いた後、ワークW8をワークW6,W7に押し付けて積載予定位置まで移動させる。すると、本図のように、ワークW2の上面がワークW3の上面よりも高い場合、ワークW2の角部Qが突出した状態となる。次に、制御部10は、図24(c)に示すように、ワークW8を所定の距離δだけ後退させ、図24(d)に示すように、長爪21を引き抜いてワークW8をワークW3の上に載置する。このとき、ワークW8は、ワークW2の突出した角部Qを避けて、ワークW3上に正立した状態で載置されている。
【0105】
ところが、図24(a1)(b1)に示すように、ワークW8を後退させることなく積載予定位置に載置すると、図24(d1)に示すように、ワークW8は、ワークW2の突出した角部Qに乗り上げてしまって、傾いた状態で載置される。このような角部Qへの乗り上げが発生すると、最悪の場合、傾いたワークが落下したり、転倒したりして、その後の作業を正常に継続できなくなる虞がある。本実施形態は、このような不具合発生を回避することができる。
【0106】
所定の距離δの隙間は、図25(a)(b)に示すように、次に載置されるワークW9による押し込み動作によって詰められる。このときワークW2の突出した角部Qによる障害は、ワークW2,W8の変形によって解消される。後からのワークW9は、図25(c)に示すように、ワークW8から距離δ離れたところに載置される。各整列方向における最後のワークは隣のワークが無いため隙間が残るので、問題になる場合は、ワークを載置(落下)した後で、さらにハンド部2で押すようにすることもできる。
【0107】
上述のパレタイズ処理に対する例外処理とワーク積載の他の例について説明する。図26(a)〜(d)に示すように、既にパレット7上に積載されているワークは全て互いに、隙間なく詰められた状態にある。これは、パレット本体70に直接ワークを載置する場合や、ワーク転倒防止部材71に接して載置する場合には、上述のワークW2の突出した角部Qがないので、所定の距離δだけ後退させる処理を省略する例外処理がなされたことによる。2段目のワークW0に続く2個目としてワークWを積載する場合、ハンド部2が順次、矢印z1,y1,x1,x2に示すように移動され、最後に、図26(e)に示すように、矢印y2方向に移動されてワークWがワークW0から距離δ離れた位置に積載される。矢印y1方向にハンド部2を移動する前には、短爪22が広げられている。また、ハンド部2の2つの長爪21のうち、ワークを押す側の長爪には、ワークを押したときの反力を計測する応力センサ1aが設けられている。この応力センサ1aは、図26(b)(c)に示すように、矢印x1方向にワークWを移動させてワークW0との隙間を詰める際に、隙間Δxが詰められた(Δx=0)ことを判断するために用いられる。ワークWを押す長爪21に作用する反力を応力センサ1aによって計測し、所定値以上の反力が計測された位置がΔx=0とされ、その位置から所定の距離δだけ戻した位置がワークWの積載位置とされる。
【0108】
本実施形態によれば、上段積みの場合に下段のワークの角部の出っ張りなどを避けてワークを載置できるので、ワークが斜め置きされて転倒するなどという不具合を防止できる。所定距離戻すことによって生じた隙間は、次のワークによる詰め動作によって順次詰めることができるので、ワークWやパレット7に寸法ばらつきがあっても、パレタイズされたワーク間の隙間の発生を防止して稠密に積載することができる。ワーク整列方向における最後のワークは隣のワークが無いため隙間が残るが、問題になる場合には、ワークを載置した(落下させた)後で、さらにハンド部2で押すようにすることもできる。
【0109】
(第1,3,4,10の実施形態における応力センサについて)
図27を参照して、応力センサ1aによって計測した反力と比較する閾値(所定の値)について説明する。長爪21によってワークWを他の物体に押し当てる場合に、他の物体に接触後の押し込み量(反力Fがゼロから上昇し始めてからの移動量)と、応力センサ1aによって計測される反力との関係は、押し当てられる他の物体が何か、また、どのように分布しているかなどによって異なる特性を示す。例えば、相手がポール状の転倒防止部材の場合、転倒防止部材が存在しないワークの左右端ではワークが曲がりやすく、反力が小さく測定されると考えられる。実測結果によると、他のワークに対してワークWを押し当てる場合は直線aのような特性を示し、転倒防止部材71にワークWを押し当てる場合は直線bのような特性を示す。また、ワークWの強度が異なると、当然、異なる特性のデータが得られる。従って、反力の測定値から、ワークWが何に押し当てられているか、また、どのような強度のワークWかなどを判別できることが分かる。
【0110】
そこで、押し込み完了の判断、つまり、ワークWを押し込んで移動させて隙間やクリアランスが詰められたかどうかの判断を、反力の測定値と所定値(閾値)とを比較して判断することができる。より一般的には、制御部10は、パレット上でワークをワーク整列方向に沿って移動させる際に、ハンド部2に備えたワークを押す側の爪に作用する反力を応力センサによって計測し、所定値以上の反力が計測された位置を移動の完了位置(押し込み完了位置)とし、完了位置を判断するための反力に対する所定値は、ワークの強度に応じて設定する。この判断を効果的に行うために、品種の違いによるワークWの強度の違いや、ワークWを押し当てる相手の違いに応じて閾値を設定したり、切り替えたりする。ワークWの強度は、ワークWの品種によって剛体に近いものや柔軟なものがあるが、品種毎に一定と考えられる。そこで、品種毎に、所定の押し込み量dについて閾値Fa,Fbを設定しておき、パレタイズ時に閾値Faと閾値Fbとを適宜切り替えればよい。閾値Faと閾値Fbとを設定する押し込み量dは異ならせてもよい。制御部10は、ワークWを押し付ける相手がワークであるか転倒防止部材であるかを常に把握しているので、閾値Fa,Fbの切り替えを確実に行うことができる。このような閾値Fa,Fbの切り替えと、押し込み完了の判断により、パレタイズ装置1がパレタイズするワークWを、変形させたり、傷つけたりすることなく、適切に押し込み完了点を把握して、ワーク間の隙間の発生を防止してパレット上に稠密にワークWを積載することができる。
【0111】
(第11の実施形態)
図28、図29(a)(b)は第11の実施形態を示す。本実施形態は、図28に示すように、ワーク寸法を測定するワーク測定部50をさらに備えており、制御部10は、ワーク測定部50によって測定されたワーク寸法と、予め記憶部6に記憶している標準のワークの寸法とを比較することにより、ワークの品種の異同を判断する。他の点については、上述した第1乃至第10の実施形態と同様である。ワーク測定部50は、上述した第1の実施形態におけるワーク測定部と実質的に同じであり、短爪22の距離センサ2bからの情報に基づいて、ワークWの縦横の寸法を取得、すなわち測定する。第1の実施形態においては、ワーク寸法は、ワークWの寸法にばらつきがあるか否かを計測するために用いられている。本実施形態では、ワークの品種の異同を判断する。これは、品種の異同が不明の場合などに効果を発揮するものであり、逆に、どのような寸法のワークWが、現在把持されるのか不明の場合と考えられる。そこで、ワークWを把持する場合には、短爪22を最も広げた位置である、最大ストロークの位置から把持を開始し、ハンド部2がワークWを把持しているときの距離センサ2bからの情報に基づいてワークWの断面寸法を測定する。
【0112】
パレタイズの処理は、図29(a)に示すように行われる。制御部10は、ハンド部2を制御してワークWを把持させ(S11)、ワークWの寸法を取得し(S12)、寸法比較を行い(S13)、所定の許容範囲内で寸法が同じで有れば品種が前回のワークと同じと判断し(S14でYes)、パレットに積載する(S16)。寸法が異なっていて、品種が前回のワークと同じでないと判断された場合には(S14でNo)、制御部10は、パレット交換の指示を外部に出力し、交換されたパレットにワークを積載する(S16)。その後、作業終了でなければ(S17でNo)、ステップ(S11)からの処理を繰り返し、作業終了であれば(S17でYes)、処理を終了する。
【0113】
上述のフローチャートにおける寸法測定と比較を含む処理は、全てのワークについて行っているが、通常、ワークの品種切替は、予めパレタイズ装置1に通知または入力されるので、必ずしも、毎回行う必要はない。品種異同の判断が必要になるのは、品種切替の通知や入力がなされた時点に対して、例えば工程間の距離が長く、品種切替の通知や入力がなされた後に、品種切替前の最終ワークが到着するといったタイムラグが発生する場合などである。そこで、図29(b)に示すように、まず品種変更ありか否かを判断し(#1)、品種変更があれば(#1でYes)、パレット交換を含む上記同様の処理を行い(S12〜S17)、品種変更がなければ(#1でNo)、ワークWを把持し(#2)、そのままパレットに積載すればよい(S16)。この場合、短爪22を最大ストロークまで広げて行う寸法測定と判断処理のための時間を短縮でき、パレタイズの効率を上げることができる。本実施形態によれば、ワークWの品種の異同を判断するので、1つのパレット7に異品種のワークWが混載されるのを防止することができる。
【0114】
なお、本発明は、上記した各実施形態の構成に限られることなく種々の変形が可能である。例えば、各実施形態の構成を互いに組み合わせた構成とすることができる。また、短爪22の開閉機構として、シリンダを用いて短爪22を平行移動させる例を示したが、これに限らず、ヒンジを用いて短爪22を回動開閉したり、また、これらの開閉を組み合わせたりすることができる。また、爪の数は、互いに対向する少なくとも1つの固定長爪21と1つの可動短爪22の2つとすることもできる。ハンド部2の他の構成例として、把持用の上下2つの爪と押し動作のための側方の1つの爪とを備え、上側の爪が可動爪という構成とすることもできる。この場合、3つの爪の長さは同じ長さとすることができ、押される側には爪を備えていないので、押し動作の前の短爪の引き抜きなどの途中動作は行う必要がない。
【0115】
また、ワークを整列方向に沿って移動させて、押して、詰め込む動作の完了位置の判断は、必ずしも応力センサによる反力の計測値に基づかなくてもよく、記憶部に記憶されている積載位置に基づいて判断するだけでもよい。また、ワーク形状は箱形状に限らず、少なくとも底面と左右面とを有して整列積載できれば良く、また、多段積みするワークの場合には、さらに上下に重ねるための上面を有するワークであれば、パレタイズの対象とすることができる。
【0116】
また、パレットの長さは、例えば、第1の実施形態において、ワークWの長手方向の長さと同じ例を示したが、必ずしも同じである必要はない。また、ワーク測定部は、距離センサ2bによって構成する例を示したが、これに限らず、画像処理によってワーク寸法を取得したり、遮光型センサを複数並べて光の透過具合から段階的にワーク寸法を測定したりするようにしてもよい。
【0117】
また、計測部5は、ロータリエンコーダや制御パルスを計数によらずに、レーザ距離計によって各移動部の移動位置を測定したり、レーザレーダや画像処理によって位置情報を取得してハンド部2の長爪21の位置を計測するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0118】
1 パレタイズ装置
10 制御部
1a 応力センサ
2 ハンド部
21 長爪
22 短爪
2b ワーク測定部(距離センサ)
3 アーム部
5 計測部
50 ワーク測定部
6 記憶部
7 パレット
71 ワーク転倒防止部材
8 誘い込み板
W,W0〜W10 ワーク
Q 角部
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークを順次搬送してパレット上に整列積載するパレタイズ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ワークの輸送やハンドリングのためにパレットにワークを積載する、いわゆるパレタイズのための装置、すなわちパレタイズ装置が生産工場や流通運送業界などで盛んに用いられている。このようなパレタイズ装置を自動運転する場合に、ワーク相互の干渉を防ぐと共に、ワークを相互間の隙間がないようにパレットに整列積載することが望まれる。そこで、パレット上での予め計算したワークの目的位置と、ワークの押し付け移動量とから計算したパレット上の位置にワークを載置し、その後、先にパレタイズされているワークに向けて、後のワークを押し付けるように移動する装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、パレタイズ装置がワークを位置ずれなく把持してパレット上に積載することにより、パレット上でのワーク相互の干渉や隙間の発生を防止するために、パレタイズする前にワークの姿勢や位置を補正するための位置決めステーションを設けたパレタイズ装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許2549139号(特開平1−222879号公報)
【特許文献2】特開平8−85627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1や特許文献2に示されるようなパレタイズ装置においては、以下のような問題がある。すなわち、特許文献1のパレタイズ装置は、パレット上でのワークの目的位置をどのように計算するかについての開示がなく、不明である。もし、既定のパレットの位置と既定のワーク寸法とから目的位置を計算するのであれば、ワークの寸法ばらつきの累積により、ワーク同士の相互干渉やワーク間の隙間の発生などの問題が生じることになる。また、特許文献2のパレタイズ装置は、ワークを位置ずれなく把持するには効果があるものの、ワークの寸法変動には対処することができず、また、位置決めステーションにおける処理時間発生の問題もある。
【0006】
本発明は、上記課題を解消するものであって、簡単な構成により、ワークやパレットに寸法ばらつきがあっても、パレタイズ時のワーク間の干渉やパレタイズされたワーク間の隙間の発生を防止して柔軟に、且つ高速にパレタイズできるパレタイズ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するために、請求項1の発明は、ワークをその供給場所から順次搬送してパレット上に整列して積載するパレタイズ装置であって、ワークを把持するハンド部と、前記ハンド部を移動させるアーム部と、パレットにおけるワークの積載位置の情報を取得するための計測部と、前記積載位置を記憶するための記憶部と、前記各部の動作を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、ワークを把持した前記ハンド部を前記アーム部によって移動させてパレットにワークを積載した際に前記計測部によってそのワークの積載位置を取得して前記記憶部に記憶させ、次のワークをパレットに積載する際に、前記記憶部に記憶されている積載位置に基づいて、ワークの積載予定位置を決定するものである。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載のパレタイズ装置において、ワーク寸法を測定するワーク測定部をさらに備え、多段に積載可能なワークをパレットに多段に積載する場合に、前記制御部は、前記ワーク測定部によって測定されたワーク寸法が、積載を予定している段におけるパレットの未積載部の寸法よりも大きいときに当該ワークを上の段に積載するように前記ハンド部を制御するものである。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2に記載のパレタイズ装置において、ワーク寸法が未積載部の寸法よりも大きい場合に、前記未積載部には当該未積載部の寸法よりも小さい寸法のワークを選択して積載するものである。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1または請求項2に記載のパレタイズ装置において、前記ハンド部はワークを把持するための少なくとも長短2種類の爪を有し、長い爪は、前記積載予定位置から所定のクリアランスを設けてパレットにワークを載置して短い爪を引き抜いた後、前記ワークを押して前記クリアランスを詰めるために用いられるものである。
【0011】
請求項5の発明は、請求項4に記載のパレタイズ装置において、前記制御部は、前記クリアランスを詰める際に、ワークを押す爪に作用する反力を応力センサによって計測し、所定値以上の反力が計測された位置をワークの積載位置とするものである。
【0012】
請求項6の発明は、請求項4または請求項5に記載のパレタイズ装置において、ワークはパレット上への積載時の底面形状が積載姿勢によって異なる直方体であり、前記制御部は、パレットの未積載部の寸法に応じて積載時のワークの底面の選択を行うものである。
【0013】
請求項7の発明は、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載のパレタイズ装置において、パレットは、ワーク整列方向両端部にワーク転倒防止部材を有し、前記制御部は、前記ワーク転倒防止部材の後端側付近に整列される最後のワークを、先に積載されているワーク側に傾けた状態で積載予定位置の上方から下降させ、前記先に積載されているワークの上方後端角部の回りに回転させることによりワークを正立させてパレットに積載するように前記ハンド部を制御するものである。
【0014】
請求項8の発明は、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載のパレタイズ装置において、パレットは、ワーク整列方向両端部にワーク転倒防止部材を有し、前記ワーク転倒防止部材の後端側付近に整列される最後のワークの積載を滑らかに行うための誘い込み板をパレット側に備えるものである。
【0015】
請求項9の発明は、請求項1に記載のパレタイズ装置において、前記制御部は、ワークを前記積載予定位置までワーク整列方向に沿って移動させた後、所定の距離だけ戻した位置に載置するように前記ハンド部を制御するものである。
【0016】
請求項10の発明は、請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載のパレタイズ装置において、前記制御部は、パレット上でワークをワーク整列方向に沿って移動させる際に、前記ハンド部に備えたワークを押す側の爪に作用する反力を応力センサによって計測し、所定値以上の反力が計測された位置を前記移動の完了位置とし、前記完了位置を判断するための前記反力に対する所定値は、ワークの強度に応じて設定するものである。
【0017】
請求項11の発明は、請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載のパレタイズ装置において、ワーク寸法を測定するワーク測定部をさらに備え、前記制御部は、前記ワーク測定部によって測定されたワーク寸法と予め記憶している標準のワークの寸法とを比較することにより、ワークの品種の異同を判断するものである。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明によれば、現実のワークの積載位置を把握すると共に、その積載位置情報を次のワークの積載にフィードバックするので、既に積載されているワークの積載位置を基準にして、個々のワークやパレットの寸法ばらつきに対応でき、パレタイズ時のワーク間の干渉やパレタイズされたワーク間の隙間の発生を防止して柔軟に、且つ高速にパレタイズできる。
【0019】
請求項2の発明によれば、事前に積載の可不可を判断して積載可能な寸法のワークを選択して積載するようにできるので、ワークに寸法ばらつきがあっても柔軟に対処して、パレットにおける未積載空間を発生することなくパレタイズでき、積載ミスを無くすことができる。また、装置が自律的に柔軟に対処するので、装置が立ち往生したり作業員を呼んだりすることなく、高速に対処できる。
【0020】
請求項3の発明によれば、ワークの寸法ばらつきなどにも柔軟に対処して、パレットにおける未積載空間を発生することなくパレタイズでき、積載ミスを無くすことができる。
【0021】
請求項4の発明によれば、ワーク間に短爪が挟まれないように短爪を逃がしてワークを移動させることができ、ワーク同士の密着整列が可能となる。また、爪を開閉する場合などにおいて、開閉のためのクリアランス確保を考慮する必要がなくなる。
【0022】
請求項5の発明によれば、クリアランスのばらつきに左右されることなく適切にワークを押して整列させることができる。また、ワークに加えた過度の力によってワークやハンド部を損傷させてしまう、ということを防止できる。
【0023】
請求項6の発明によれば、個々のワークやパレットの寸法ばらつきに柔軟に対処して、ワークを適切に、すなわち隙間を生じさせることなく、パレット上に積載できる。
【0024】
請求項7の発明によれば、ワーク積載のためのクリアランスが小さい場合に、ワークの角部との干渉を回避して確実に積載できる。
【0025】
請求項8の発明によれば、ワーク積載のためのクリアランスが小さい場合に、ワークとワーク転倒防止部材の角部との干渉を回避して確実に積載できる。
【0026】
請求項9の発明によれば、多段積みの場合に、ワーク寸法のばらつきなどによって発生する前方ワークの下部近傍における下段ワークの角部の出っ張りなどを避けてワークを載置できるので、ワークが斜め置きされて転倒するなどという不具合を防止できる。所定距離戻すことによって生じた隙間は、次のワークによる詰め動作によって順次詰めることができるので、ワークやパレットに寸法ばらつきがあっても稠密に積載することができる。
【0027】
請求項10の発明によれば、ワークやハンド部を破損することなく、適切に移動させることができ、ワーク間の隙間の発生を防止して稠密に積載することができる。
【0028】
請求項11の発明によれば、ワークの品種の異同を判断するので、1つのパレットに異品種のワークが混載されるのを防止するようにできる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るパレタイズ装置の斜視図。
【図2】同上装置のブロック構成図。
【図3】(a)は同上装置のハンド部の斜視図、(b)は(a)のAA線断面図。
【図4】同上装置によるワークの移動を示す斜視図。
【図5】同上装置によるワークの移動を示す側面図。
【図6】同上装置によるワークのパレット積載を段階的に示す斜視図であり、(a)はコンベアからワークを取り出した状態の斜視図、(b)はパレットにワークを降ろす状態の斜視図、(c)はハンド部の短爪を引き抜いた状態の斜視図、(d)はハンド部の長爪でワークを整列させた状態の斜視図、(e)はワーク積載が終わってハンド部を引き抜いた状態の斜視図。
【図7】(a)は同上装置により整列させるパレット直上の最初のワークをその軌跡と共に示す側面図、(b)は同じく2番目のワークをその軌跡と共に示す側面図。
【図8】図7(a)(b)の変形例を示し、(a)は同上装置により整列させるパレット直上の最初のワークをその軌跡と共に示す側面図、(b)は同じく2番目のワークをその軌跡と共に示す側面図。
【図9】(a)は第2の実施形態に係るパレタイズ装置のハンド部分とコンベア上のワークの斜視図、(b)は同ハンド部によりワークをパレットに載置する様子を示す斜視図。
【図10】(a)は第3の実施形態に係るパレタイズ装置のハンド部分とコンベア上のワークの斜視図、(b)は同ハンド部によりワークを水平に把持した状態の斜視図、(c)は同ハンド部により把持したワークを回転した状態の斜視図。
【図11】同上装置によるワークのパレット積載を段階的に示す斜視図であり、(a)はパレットにワークを降ろす状態の斜視図、(b)はワークを下ろした状態の斜視図、(c)はハンド部の短爪を引き抜いた状態の斜視図、(d)はハンド部の長爪でワークを整列させた状態の斜視図、(e)はワーク積載が終わってハンド部を引き抜いた状態の斜視図。
【図12】(a)は第4の実施形態に係るパレタイズ装置のハンド部分の斜視図、(b)は同ハンド部によりワークを把持してコンベアから取り出した状態の斜視図。
【図13】同上装置によるワークのパレット積載を段階的に示す斜視図であり、(a)はパレットにワークを降ろす状態の斜視図、(b)はワークを下ろしてハンド部の短爪を引き抜いた状態の斜視図、(c)はハンド部の長爪でワークを整列させた状態の斜視図、(d)はワーク積載が終わってハンド部を引き抜いた状態の斜視図。
【図14】第5の実施形態に係るパレタイズ装置によるワークのパレットへの積載を段階的に示す側面図であり、(a)はパレット上方からワークを傾けて降ろす状態の側面図、(b)は既積載のワークの横でワークを回転する様子を示す側面図、(c)は正立させたワークをさらに下降させた状態の側面図、(d)はワーク積載が終わった状態の側面図。
【図15】図14(b)に示した状態におけるワーク相互の位置関係を説明する側面図。
【図16】第6の実施形態に係るパレタイズ装置によるワークのパレットへの積載を示す側面図。
【図17】第7の実施形態に係るパレタイズ装置によるワークのパレットへの積載を示す側面図であり、(a)は積載前の側面図、(b)は積載後の側面図。
【図18】同上装置によるワーク積載の他の例を示す積載されたワークとパレットの側面図。
【図19】第8の実施形態に係るパレタイズ装置によるワークのパレットへの積載を示す側面図であり、(a)は積載前の側面図、(b)は積載後の側面図。
【図20】第9の実施形態に係るパレタイズ装置のハンド部によるワークの把持とパレットに載置されるときのワークの姿勢の例を示す側面図であり、(a)はワークが回転されない場合の側面図、(b)はワークが90゜回転される場合の側面図、(c)はワークが180゜回転される場合の側面図、(d)はワークが270゜回転される場合の側面図。
【図21】同上装置によって整列積載されたワークとパレットの側面図。
【図22】(a)は図21における隙間に載置するワークの積載の様子を説明する側面図、(b)は他のワークについての側面図。
【図23】第10の実施形態に係るパレタイズ装置による処理のフローチャート。
【図24】(a)〜(d)は同上装置によるワークの積載手順を時系列的に示す側面図、(a1)(b1)(d1)は(a)(b)(d)に対応する不具合例を示す側面図。
【図25】(a)(b)(c)は同上装置によるワークの押し込み動作を時系列的に示す側面図。
【図26】(a)〜(e)は同上装置によるワークの積載手順を時系列的に示す斜視図。
【図27】第1,3,4,10の実施形態における応力センサの使用方法に係る長爪の押し込み量と反力の関係図。
【図28】第11の実施形態に係るパレタイズ装置のブロック構成図。
【図29】(a)は同上装置による処理のフローチャート、(b)はその変形例のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態に係るパレタイズ装置について、図面を参照して説明する。
【0031】
(第1の実施形態)
図1は第1の実施形態に係るパレタイズ装置1の外観を示し、図2は同装置のブロック構成を示し、図3(a)(b)は同装置のハンド部2の構造を示す。これらの図により装置の構成を説明し、その後、図4〜図8を参照して装置の動作を詳細に説明する。なお、図1、図2は、他の実施形態においても基本的な装置構成が同様であるので、他の実施形態においても随時参照される。
【0032】
パレタイズ装置1は、ワークWを供給場所から順次搬送して、予め所定位置に設置された可搬式のパレット7上に隙間なく整列させて積載する装置、すなわちパレタイズする装置である。ワークWは、長尺の箱、例えばダンボール箱であり、コンベア9によって供給され、そのストッパ91によって位置決めされて静止している。パレタイズ装置1は、コンベア9上に位置決めされているワークWの長手方向の両端を把持して搬送する。そのため、パレタイズ装置1はコンベア9に向かって左右に一対の構成とされている。パレット7は、左右一対で構成されたパレタイズ装置1の中央線上の床面に配置されている。
【0033】
パレタイズ装置1は、ワークWを把持するハンド部2と、回転部23を介してハンド部2を保持すると共に移動させるアーム部3と、アーム部3を走行移動させる搬送部4と、パレット7におけるワークWの積載位置の情報を取得するための計測部5と、前記積載位置の情報を記憶するための記憶部6と、各部の動作を制御する制御部10と、を備えている。これらは、記憶部6と制御部10とを除いて、各部がそれぞれ左右2対構成とされている。
【0034】
ここで、説明の便のために、地上に固定されたxyz直交座標系を設定する。x方向はハンド部2から見てコンベア9に向かう水平方向、y方向はハンド部2から見てパレット7に向かう水平方向、z方向は垂直上方とする。すると、左側のハンド部2については、左手系のxyz座標系となり、右側のハンド部2については、右手系のxyz座標系となる。ハンド部2についても、同様に、左右のXYZ座標系が設定される。また、左右一対のハンド部2は、互いに左右勝手違い関係になっている。
【0035】
ハンド部2は、人の手のひらに相当する平板状のハンドベース部20と、ハンドベース部20から立設するそれぞれ板状の長爪21と、短爪22と、を備えている。長爪21と短爪22とは、それぞれ2個ずつが互いに直交して、直方形の対向する隅部をそれぞれ挟む態様で配置されている。すなわち、ハンド部2は、ワークWを把持するための4本の爪を有し、長い爪と短い爪が2本ずつ隣り合う位置に取り付けられている。
【0036】
上述の2つの長爪21は共にハンドベース部20に固定されている。2つの短爪22は、共に可動爪であり、例えばエアシリンダや油圧シリンダから成る開閉駆動部2aによってハンドベース部20に平行に移動することができる(図2、図3(a))。短爪22を、開閉駆動部2aによって、矢印X1,Z1で示すように、移動することにより、長爪21と短爪22間の距離を変えてハンド部2を開閉でき、ワークWを把持したり、解放したりできる。短爪22の移動距離、すなわちストロークは、把持するワーク寸法の最小から最大までをカバーできるストロークであり、品種により寸法が異なるワークWに対応できるようになっている。本実施形態では、4本の爪のうち、長爪21を固定し短爪22を可変としたが、4本の爪を全て可動とすることもできる。
【0037】
また、ハンド部2は、上述の短爪22の移動位置を検出するための距離センサ2bを備えている(図2、図3(b))。短爪22の肉厚a、および距離センサ2bと長爪21との距離bを既知とし、距離センサ2bと短爪22の距離dを測定値として、長爪21と短爪22との間の距離Lが、L=b−a−dと求められる。従って、ハンド部2がワークWを把持しているときの距離Lを求めると、ワークWの断面寸法(図1のワークWについて示したLa,Lb)を測定することができる。つまり、距離センサ2bを用いて、ワークWの寸法を測定するワーク測定部が構成される。
【0038】
また、上述の長爪21の少なくとも一方には、長爪21に作用する外力を測定するための応力センサ1aが設けられている。応力センサ1aは、歪ゲージなどを用いて構成することができる。また、応力センサ1aとして、市販されている6軸力センサやロードセルを使用することができる。
【0039】
アーム部3は、床面近くから垂直に設けられた支柱部材31と、支柱部材31から片持ち梁のように張り出した水平部材32と、水平部材32から垂下保持されている垂直部材33とを備えている(これらを総称してアームベース部30)。水平部材32は、上下駆動部3a(図2)によって、支柱部材31に沿って上下動される。垂直部材33は、接離駆動部3bによって、水平部材32に沿って水平動される。
【0040】
回転部23は、垂直部材33に対してハンド部2のハンドベース部20を、矢印R,R1で示すように、y軸(Y軸)回りに回転自在に保持している。また、回転部23は、不図示の回転駆動部によって、ハンド部2を所定の回転角度に保持することができる。
【0041】
搬送部4は、床面に配設された2本のレール41上を搬送駆動部4aによって移動する搬送ベース部40を備えている。搬送ベース部40は、上述の支柱部材31、従って、アーム部3、回転部23、ハンド部2の全体をその上部に保持している。従って、搬送部4がレール41に沿って移動することにより、ハンド部2がレール41に沿って移動する。
【0042】
上記の構成から、ハンド部2は、4軸について移動または回転することができる。これらの軸は、回転部23によるワークWを回転させるためにハンド部2を回転させる軸、アーム部3によるワークWを上下に移動させる軸、ワークWの長さ寸法に対応できるように左右のハンド部2の間隔を変える軸、および、搬送部4によるワークWをコンベア9とパレット7との間で移動する軸の4軸で構成されている。
【0043】
計測部5は、ハンド部2の長爪21の位置を、xyz座標系による3次元空間における座標値として把握できるように構成されている。座標値の取得は、各駆動部、つまり、上下駆動部3a、接離駆動部3b、搬送駆動部4a、および回転部23の回転駆動部による各部の平行移動量や回転移動量を計測し、積算することによって行われる。例えば、各駆動部がモータ駆動の場合、モータの回転数をロータリエンコーダで取得したり、パルスモータの制御パルスを計数したりして、対応する移動量を算出することができる。
【0044】
パレット7は、長尺のワークWを多段積みできるように、パレット本体70に、ワーク転倒防止部材71を備えて構成されている。パレット本体70の長さは、ワークWの長さに合わせてあり、パレット本体70の幅は、空き空間を生じることなく複数個のワークWを効率的に整列可能な寸法に合わせてある。また、ワーク転倒防止部材71は、パレット本体70に積載されたワークWの転倒を防止するものであり、折り畳み式のポールなどで構成される。このワーク転倒防止部材71は、必要に応じて設けることができる。
【0045】
制御部10は、CPUやメモリや外部記憶装置や表示装置や入力装置などを備えた一般的な構成を備えた電子計算機、組込用の制御コンピュータ、シーケンサなどを用いて構成することができる。また、記憶部6は、制御部10に内蔵した記憶装置を用いるようにしてもよい。
【0046】
上述のような構成を有するパレタイズ装置1は、その制御部10が、各部のセンサや計測部5からの信号や情報を受け取り、各駆動部を制御することにより、自律的にパレタイズ動作を行う。制御部10は、自律的なパレタイズ動作のために、計測部5、応力センサ1a、距離センサ2bからの出力情報をリアルタイムで取得する。例えば、後で詳述するが、距離センサ2bでワークWの寸法Laを取得し、応力センサ1aによるワークWの整列情報、計測部5からの移動情報から、図1に示すパレット本体70上のワーク積載位置である点p1の位置を取得することができる。
【0047】
また、制御部10は、寸法Laからパレットの端部点p0の位置を逆算することもできる。パレットの両端部点p0,p2間の距離、すなわちパレット本体70の幅は、予め既定値として制御部10に入力して記憶部6に記憶させておくことができる。従って、制御部10は、点p0,p1,p2の位置情報から、パレット本体70における未積載空間、つまり点p1,p2間の距離を取得することができる。
【0048】
上記のことから、制御部10は、ワークWを把持したハンド部2をアーム部3と搬送部4とよって移動させてパレット7にワークWを積載した際に、計測部5によってそのワークWの積載位置(点p1)を取得して記憶部6に記憶させ、次のワークWをパレット7に積載する際に、記憶部6に記憶されている積載位置に基づいて、ワークWの積載予定位置を決定することができる。
【0049】
本実施形態のパレタイズ装置1によれば、現実のワークWの積載位置、すなわち点p1の位置を把握すると共に、その積載位置情報を次のワークWの積載にフィードバックするので、既に積載されているワークWの積載位置を基準にして、個々のワークWやパレット7の寸法ばらつきに対応でき、パレタイズ時のワーク間の干渉やパレタイズされたワーク間の隙間の発生を防止して自律的に、柔軟に、且つ高速にパレタイズすることができる。
【0050】
次に、図4〜図8を参照して、パレタイズ装置1によるワークWの移動とパレタイズ動作を詳細に説明する。前出の図1〜図3も適宜参照する。
【0051】
図4は、パレット7に積載されたワークW0、パレット7への移動中のワークW、およびコンベア9のストッパ91側に静止した待ち状態のワークWを、ワークに注目して示している。この図に示す例では、各ワークW0,W,Wは、略同じ姿勢を保った状態で、平行移動されてパレタイズされる。
【0052】
パレタイズ装置1に供給されるワークWは、コンベア9上を移動し、コンベア9の端面のストッパ91位置で水平に停止している。ストッパ91で位置決めされた長尺のワークW、例えば、製品を梱包したダンボール箱は、不図示の左右2箇所のハンド部2でピッキングされる。ワークW2の把持(チャッキング)は、不図示の4本の爪で行われる。
【0053】
図5は、パレタイズ動作に伴うハンド部2の軌跡を示す。装置の左右対称性により、軌跡は、xz面内で考えれば十分である。図中の点P1〜P5の位置は、ハンド部2の特定部位が通過すべき点、すなわちティーチングポイントを示す。本例では、2本の長爪21側のワークWのコーナ部がハンド部2の特定部位とされている。ティーチングポイントは、パレタイズ装置1、従ってハンド部2の標準の動作を維持するための空間基準位置である。点P1〜P5の各位置は、既定値の場合もあり、設定値の場合もあり、また、測定値の場合もある。通常、ワークWを順次パレタイズする作業の進行と共に、点P3,P4,P5の位置は、当然変化する。
【0054】
ハンド部2は、ストッパ91で位置決めされた点P1におけるワークWを把持する際に、既知のコンベア9の傾き角度に合わせて、回転部23(図1)によって所定角度回転される。また、ハンド部2が、ワークWを把持して点P2まで持ち上げる間に、または持ち上げた後に、ワークWの姿勢が水平に戻される。制御部10は、標準的なワークの場合、ハンド部2従ってワークWを、点P3、さらに点P4まで移動させる。点P3,P4のx座標値は、同じx4である。
【0055】
次に、制御部10は、各駆動部を制御して応力センサ1aが装備されている長爪21によって、点P4から点P5(座標値x5)に向けてワークWを押す。距離Δx=x4−x5が、押し代(または、クリアランス)である。このとき、先に積載されているワークW0から長爪21への反力が応力センサ1aによって計測される。制御部10は、その計測値が所定の値を超えた段階でワークWを移動させる隙間が無くなったと判断してハンド部2の移動を停止し、そのときの点P5の座標を記憶部6に記憶させる。各点の位置座標は、計測部5によって取得される。
【0056】
以上の動作をまとめると、次のようになる。すなわち、パレタイズ装置1において、ハンド部2はワークWを把持するための少なくとも長短2種類の爪を有し、長爪21は、積載予定位置(点P5の位置)から所定のクリアランスΔxを設けてパレット7にワークWを載置して短爪22を引き抜いた後、ワークWを押してクリアランスΔxを詰めるために用いられる。
【0057】
また、制御部10は、クリアランスΔxを詰める際に、ワークWを押す爪(長爪21)に作用する反力を応力センサ1aによって計測し、所定値以上の反力が計測された位置をワークWの積載位置とする。反力判定に用いる所定値は、ワークWの重量、強度、ハンド部2の強度などを考慮して、実測値に基づいて決めることができる。
【0058】
上述のハンド部2の動作を、より具体的に説明する。ハンド部2は、図6(a)に示すように、ワークWを把持してコンベア9からパレット上に移動する。その移動位置は、図6(b)に示すように、パレット7上のワークW0から所定のクリアランスΔxだけ離れた位置である。ワークWを把持したハンド部2は、矢印z1で示すように下降される。
【0059】
次に、図6(c)に示すように、ハンド部2は、その短爪22を広げた後(開閉駆動部2a等は図示省略)、短爪22がワークWから外れて長爪21だけがワークWに懸かった状態とされる。すなわち、ハンド部2は、矢印y1の方向に引き抜かれ、短爪22が逃がされる。このとき、ワークWは下側の長爪21によって支えられた状態にある。
【0060】
次に、図6(d)に示すように、ハンド部2は、矢印x1の方向に移動され、ワークWは、応力センサ1aを備えた長爪21によってワークW0に向けて押されて、上述のクリアランスΔxが詰められる。ハンド部2による押し動作は、応力センサ1aからの計測値に基づいて制御され、停止される。その後、図6(e)に示すように、ハンド部2が矢印y2方向に引き抜かれ、ワークWがワークW0の横に、隙間なく、パレタイズされた状態となる。
【0061】
次に、ワーク寸法のばらつきへの対応について説明する。標準的な寸法のワークの場合、図7(a)に示すように、最初にパレット7に積載するワークW0は、パレット本体70上の点P4の位置に下降され、点P5の位置まで横押しされてパレタイズされる。パレット本体70の端部の点P0の位置(x座標値x0、以下同様)は既知とされ、点P4のx座標値x4は、点P0を基準点として、点P0のx座標値x0から十分余裕を設けた位置に設定される。つまり、距離DをD=x4−x0とすると、距離DはワークW0の幅寸法の変動の上限値よりも大きく取ればよい。
【0062】
最初のワークW0を積載した後は、点P5の位置が点P0に代わって基準点となる。点P5の位置は、計測部5によって計測された座標値によって知られる。そこで、図7(b)に示すように、2番目のワークWを下降させる点P7の位置は、点P5から十分余裕を設けた位置に設定される。つまり、x7=x5+Dとされる。以下、同様である。
【0063】
上記において、ワークWが、パレット本体70の表面に整列される例を示したが、パレット7にワークWを多段に積載することもできる。そこで、各段毎に、上記手順が繰り返される。
【0064】
図8(a)に示すワークW0は、非標準的な寸法のワークであり、上述した標準的なワークの寸法よりも、x方向寸法がΔL0大きいワークである。ワークの寸法は、ハンド部2に設けた距離センサ2bによって、短爪22の移動量を測定して取得される。そして、最初のワークW0に対する点P4の設定は、ΔL0分補正して設定される。例えば、上述の距離Dを補正して、x4=x0+(D+ΔL0)とすればよい。
【0065】
また、図8(b)に示すように、次のワークWのx方向寸法がΔL大きい場合には、点P7の設定は、ΔL分補正して設定される。例えば、上述の距離Dを補正して、x7=x5+(D+ΔL)とすればよい。以下、同様である。また、ワークが標準か非標準かは、ΔL0やΔLと距離Dとを比較して決めることができ、補正するかどうかも所定の判断基準に基づいて行うことができる。
【0066】
本実施形態のパレタイズ装置1によれば、パレット上の現実のワークの積載位置を計測部5によって把握すると共に、その積載位置情報を次のワークの積載にフィードバックするので、ワーク寸法変動の累積による影響を受けずにパレタイズできる。つまり、既に積載されているワークの積載位置を基準にして、個々のワークやパレットの寸法ばらつきに対応でき、パレタイズ時のワーク間の干渉やパレタイズされたワーク間の隙間の発生を防止して柔軟に、且つ高速にパレタイズできる。
【0067】
また、アーム部3によるハンド部2の移動機能を備えたパレタイズ装置1によれば、短爪を逃がしてワークを移動させることができるので、ワーク同士の密着整列が可能となる。また、爪を開閉する場合などにおいて、開閉のためのクリアランス確保を考慮する必要がなくなる。
【0068】
また、ハンド部2に応力センサ1aを備えたパレタイズ装置1によれば、クリアランスのばらつきに左右されることなく適切にワークを押して整列させることができる。また、ワークに加えた過度の力によってワークやハンド部を損傷させてしまう、ということを防止できる。
【0069】
(第2の実施形態)
図9(a)(b)は第2の実施形態に係るパレタイズ装置のハンド部分によるパレタイズの様子を示す。本実施形態は、図9(a)に示すように、第1の実施形態における長尺のワークと比較して短いワークをパレタイズ対象のワークとするパレタイズ装置に関する。すなわち、ワークWをその長さ方向の両端で把持する必要がなく、本実施形態のパレタイズ装置1は、ハンド部2を片側だけ用いるものである。この場合、パレット7の寸法形状も、図9(b)に示すように、第1の実施形態におけるパレット7とは異なっている。
【0070】
他の点については、第1の実施形態と同様である。このような短尺のワークWをパレタイズするパレタイズ装置1は、第1の実施形態におけるパレタイズ装置1の左右いずれかのハンド部2等を用いて実現することができる。また、初めから片側のハンド部2等だけを備えた、短尺ワークW専用のパレタイズ装置1とすることもできる。
【0071】
(第3の実施形態)
図10(a)〜(c)、図11(a)〜(e)は第3の実施形態に係るパレタイズ装置のハンド部分によるパレタイズの様子を示す。本実施形態のパレタイズ装置は、ハンド部2の長爪21がワークWの長さ程度に長く、また、ハンド部2を水平方向から下向き垂直方向に傾動する上下回動部(不図示)を備える点が、第2の実施形態と異なり、他の点は同様である。
【0072】
このパレタイズ装置は、図10(a)(b)(c)に示すように、コンベア9上のワークWをハンド部2で把持して下向きに回転した後、図11(a)〜(e)に示すように、パレット(不図示)上に、ワークWを2次元配列することができる。
【0073】
図11(a)(b)に示すように、ハンド部2に把持されたワークWは、既にパレタイズされているワークW0に隣接する破線で示すワークW1の位置に向けて、矢印z1方向に下降され、載置される。次に、図11(c)に示すように、ハンド部2の短爪22が開かれて把持が解放され、ハンド部2が矢印z2方向に引き上げられて、短爪22がワークWよりも上方に逃がされる。その後、図11(d)に示すように、ハンド部2を矢印x1方向、y1方向に移動することにより、ワークWを2つの長爪21で水平方向に押して移動する。
【0074】
上述のハンド部2の動作により、ワークWが、既にパレタイズされているワークW0に密着するようにパレタイズされる。2つの長爪21には、それぞれ応力センサ1aが備えられており、その出力信号により、ハンド部2の移動停止制御が行われる。ワークWがパレタイズされた後、図11(e)に示すように、ハンド部2が矢印z3方向に引き上げられ、次のワークのパレタイズが行われる。
【0075】
ワーク積載位置情報の取得やクリアランスの設定方法などは、第1および第2の実施形態と同様である。また、計測部5は、ワーク積載位置情報として、x座標値だけでなく、y座標値も取得し、これらの情報は、記憶部6に記憶され、制御部10によって、ワークを2次元整列するために用いられる。
【0076】
本実施形態のパレタイズ装置によれば、現実のワークの積載位置を把握すると共に、その積載位置情報を次のワークの積載にフィードバックでき、既に積載されているワークの積載位置を基準にして、ワークを2次元整列させてパレタイズできる。また、個々のワークやパレットの寸法ばらつきに対応できるので、パレタイズ時のワーク間の干渉やパレタイズされたワーク間の隙間の発生を防止して柔軟にパレタイズできる。
【0077】
(第4の実施形態)
図12(a)(b)は第4の実施形態に係るパレタイズ装置のハンド部分を示し、図13(a)〜(d)は同装置によるパレタイズ動作を示す。本実施形態のパレタイズ装置は、第1の実施形態におけるパレタイズ装置1のハンド部2における長爪21の1つが固定の短爪22とされている点が、第1の実施形態と異なり、他の点は同様である。
【0078】
図13(a)は、ワークWを把持したハンド部2がパレット7に向けて矢印z1方向に下降中の状態を示し、図13(b)は、ワークWを下ろしてハンド部2の短爪22を矢印y1方向に引き抜いた状態を示す。この状態で、ワークWは、その底面をパレット7のパレット本体面に接触させて載置した状態となっている。
【0079】
また、図13(c)は、応力センサ1aを備えた長爪21によってワークWを横押しして整列させた状態を示し、図13(d)はワーク積載が終わってハンド部2を引き抜いた状態を示す。
【0080】
(第5の実施形態)
図14(a)〜(d)は第5の実施形態に係るパレタイズ装置によるワークのパレットへの積載を段階的に示す。本実施形態は、第1の実施形態におけるパレタイズ装置1を用いて、パレット上の狭い空間、例えばダンボール箱から成るワークWが変形しながら隙間に積載されるような空間(未積載部)に、ワークを積載する際の動作を説明するものである。この狭い空間とは、図14(a)に示すように、パレット7における先に積載されたワークW0と、ワーク整列方向後端部におけるワーク転倒防止部材71との間の空間Sである。
【0081】
このような空間SにワークWを変形させることなく、滑らかに積載するために、制御部10は、ワークWを傾けて下降させる。すなわち、制御部10は、ワーク転倒防止部材71の後端側付近に整列される最後のワークWを、先に積載されているワークW0側に角度θだけ傾けた状態で積載予定位置の上方から、矢印z1方向に下降させる。角度θとワークW0,Wの位置関係については、後述する(図15参照)。
【0082】
制御部10は、図14(b)に示すように、ワークWの下部が、ワークW0とワーク転倒防止部材71との間に進入した時点で、下降を止め、先に積載されているワークW0の上方後端角部の回りに角度θだけ戻し回転してワークWを正立させる。この戻し回転の前または後に、短爪22を逃がすために、ハンド部が、短爪22の長さに所定の余裕を持たせた距離だけ、引き抜かれる。
【0083】
その後、図14(c)に示すように、ワークWは正立された状態で矢印z2方向に下降され、ハンド部が引き抜かれる。すると、図14(d)に示すように、ワークWが自重で落下して、ワークWのパレタイズが終了する。
【0084】
次に、図15によって、ワークW0の上方後端角部Qの位置と、ワークWの中心位置Gとの関係を説明する。これは、ワークWをどの位置P3から下降させればよいか、また、どの位置で下降を停止して回転を始めればよいかを決めるものである。すなわち、ワークW0の整列方向後端から中心位置Gまでのx方向距離Dx、および、積載面の位置から中心位置Gまでのz方向距離Dzが求められる。
【0085】
ここで、ワークWの幅寸法La、高さ寸法Lb、ワークW0の高さ寸法Lc、ワークWの回転角度θ、ワークWが上方後端角部Qに接触したときのワークWの底面から接触点間での距離δが、それぞれ測定値、または設定値であって既知であるとする。例えば、δやθは設定値(設計値)であり、La,Lb,Lcはハンド部の距離センサ2bによって測定される測定値である。
【0086】
上述の既知の値を用いて、Dx,Dzが下式のように求められる。
Dx=(La/2)cosθ−(Lb/2)sinθ+δsinθ、
Dz=(La/2)sinθ+(Lb/2)cosθ+δcosθ+Lc。
【0087】
本実施形態のパレタイズ動作によれば、ワーク積載のためのクリアランスが小さい場合(ワークを積載できるが積載のための余裕が少ない場合)に、ワークの角部との干渉を回避して確実に積載できる。
【0088】
(第6の実施形態)
図16は第6の実施形態に係るパレタイズ装置によるパレタイズ動作を示す。本実施形態のパレタイズ装置は、第1の実施形態におけるパレタイズ装置1を用いてワークを積載する際に、積載を滑らかに行うために用いる誘い込み板8をパレット7側に備えるものである。すなわち、先に積載されたワークW0とワーク整列方向後端部におけるワーク転倒防止部材71との間のワーク積載のためのクリアランスが小さい空間にワークを積載する際に、誘い込み板8が有効に用いられる。
【0089】
本実施形態のパレタイズ装置によれば、ワーク積載のためのクリアランスが小さい場合に、ワークWとワーク転倒防止部材71の角部(エッジ)との干渉を回避して確実に積載できる。本実施形態の誘い込み板8は、上述の第5の実施形態におけるパレタイズ動作時により効果的に、併用することができる。
【0090】
(第7の実施形態)
図17(a)(b)は第7の実施形態に係るパレタイズ装置によるパレタイズ動作を示す。本実施形態のパレタイズ装置は、第1の実施形態におけるパレタイズ装置1を用いてワークを積載するものであり、多段に積載可能なワークを、パレットに多段に積載する場合に関する。
【0091】
すなわち、制御部10は、図17(a)に示すように、距離センサ2bなどを用いて構成されるワーク測定部によって測定されたワークWの寸法Laが、積載を予定している段におけるパレット7の1段目の未積載部の寸法αよりも大きいときに(α≦La)、図17(b)に示すように、そのワークWを上の段、つまり2段目に、積載するようにハンド部2を制御する。この寸法La,αの大小比較の判断は、ワークWの種類によって変更することができる。例えば、ダンボール箱のワークであって、少々の変形が許容されるワークの場合は、ある許容値βを導入して、α+β≦Laなどの式によって判断することができる。ここで、例えば、β=5mmの場合、この寸法βが、各ワークの変形や移動によって吸収されることになる。
【0092】
上述のようなパレタイズ動作は、多段積載の場合にも適用できる。すなわち、図18に示す例の場合、2段目の最後に積載予定のワークWを2段目には積載せずに、3段目に積載している。また、図17(a)(b)における1段目の最後や、図18における2段目の最後の未積載空間には、この空間に積載可能な寸法のワークWが得られたときに、すなわち、未積載部の寸法よりも小さい寸法のワークが選択されて積載される。それまでは、ワークWは、上の段に順次整列積載される。
【0093】
本実施形態のパレタイズ動作によれば、事前に積載の可不可を判断して積載可能な寸法のワークを選択して積載するようにできるので、ワークに寸法ばらつきがあっても柔軟に対処して、パレットにおける未積載空間を発生することなく、また、パレタイズ動作を停止することなく、パレタイズ動作を続行でき、積載ミスを無くして効率的にワークを積載することができる。
【0094】
(第8の実施形態)
図19(a)(b)第8の実施形態に係るパレタイズ装置によるパレタイズ動作を示す。本実施形態のパレタイズ装置は、第1の実施形態におけるパレタイズ装置1と同様のものであり、形状寸法と姿勢に融通性を有するワークを効率的に積載するものである。すなわち、ワークWが、パレットに積載可能となる底面を複数有し、その底面形状が積載姿勢によって異なる場合に、制御部10は、パレットの未積載部の寸法に応じて積載時のワークの底面の選択を行ってワークを積載する。
【0095】
図19(a)において、積載予定のワークWの寸法が、横寸法La、縦寸法Lbであり、パレット7における未積載部の寸法αに対して、Lb<α<Laの関係があるとする。寸法La,Lbはハンド部2の距離センサ2bによって測定される。また、寸法αは、既知のパレット寸法と、計測部5により計測されたワークの積載位置とから求められる。ワークWは、正立した姿勢では、パレタイズできないが、横にするとパレタイズできる。そこで、制御部10は、図19(b)に示すように、ワークWを横に回転した状態でパレタイズする。
【0096】
本実施形態のパレタイズ動作によれば、個々のワークやパレットの寸法ばらつきに柔軟に対処して、ワークを適切に、すなわち隙間を生じさせることなく、パレット上に積載できる。
【0097】
(第9の実施形態)
図20(a)〜(d)は第9の実施形態に係るパレタイズ装置のハンド部によるワークの把持とパレットに載置されるときのワークの姿勢の例を示す。本実施形態は、第1の実施形態におけるパレタイズ装置1のハンド部2の使用方法に関する。すなわち、ワークWの選択可能な積載向きが複数存在する場合に、制御部10は、パレット上でワークWを横押しする時点で、ハンド部2の長爪21の位置が押す側の位置となるように、予めハンド部2を回転させてからワークWを把持させる。この場合、特定の長爪21で常にワークを横押し移動させるようにできるので、必要最小限、すなわち1つの長爪21について応力センサ1aを備えればよく、コストダウンができる。
【0098】
そこで、ハンド部2は、ワークWが回転されない場合には、図20(a)に示すように把持し、ワークが90゜回転される場合には、図20(b)に示すように把持して回転し、ワークが180゜回転される場合には、図20(c)に示すように把持して回転し、ワークが270゜回転される場合には、図20(d)に示すように把持して回転する。
【0099】
上述のハンド部2の使用法によると、図21に示すような、パレット7へのワークW1〜W10の積載が実現される。この積載例では、積載効率を高くするために縦置きと横置きを混在させ、また、ワークの重量バランスを考慮して180゜向きを反転させて積載されている。
【0100】
上述のワーク積載例において、ワークW1〜W4、W6,W8,W9は、長爪21によって横押しされて積載される。また、ワークW5,W7,W10は、第5の実施形態における積載方法、またはその応用によって積載される。例えば、ワークW7は、図22(a)に示すように傾けられて積載され、ワークW10は、図22(b)に示すように傾けられて積載される。
【0101】
図21に示した積載例は、ワークの縦横の寸法が大きく異なる例を示している。もし、縦横の寸法の差がわずかの場合には、第8の実施形態における積載方法を応用した積載を実現できる。例えば、ある積載段において、ワークを順番に整列積載する際に、リアルタイムで取得されるワーク寸法と、パレット上の未積載空間と、の関係から、残りの幾つかのワークを横倒しにすることにより、稠密に積載できる、ということを予測できる。
【0102】
そこで、制御部10は、第8の実施形態のように最後のワークだけを横倒しにするのではなく、複数のワークを横倒しにして積載する。途中のワークを横倒しにして積載する場合には、上述のように、長爪21で横押しできるように、予めハンド部2を回転させた上で、ワークを把持すればよい。
【0103】
本実施形態のように、ワークの向きを自在に選択して、稠密積載を実現したり、パレット上のワーク全体の重心位置を考慮して積載できるのは、パレタイズ装置1が、計測部5を備え、距離センサ2bによるワーク測定部を備えて、パレットにおけるワーク積載位置や、未積載部の寸法や、ワーク寸法を測定して把握できることによる。このような寸法を把握することにより、これらの情報を以降の積載にフィードバックすることができ、次ワークのみならず、次々ワーク等の積載位置や積載方法を前もって設定できるようになる。
【0104】
(第10の実施形態)
図23乃至図26は第10の実施形態を示す。本実施形態は、ワークを積載予定位置までワーク整列方向に沿って移動させた後、所定の距離だけ戻した位置に載置する点が、上述した他の実施形態と異なっている。すなわち、図23のフローチャートに示すように、制御部10は、パレット上の所定位置にワークを搬送し(S1)、既に積載済みのワークまたは転倒防止部材71にワークを押しつけ(S2)、その後、ワークとハンド部とを所定距離だけ後退させて(S3)、パレット上にワークを載置し(S4)、処理続行または終了する(S5)。具体的に、図24(a)に示すように、パレット7上にワークW1〜W7が既に積載されており、ワークW3の上面であってワークW6,W7の手前にワークW8を載置する場合を説明する。制御部10は、図24(b)に示すように、短爪22を広げて引き抜いた後、ワークW8をワークW6,W7に押し付けて積載予定位置まで移動させる。すると、本図のように、ワークW2の上面がワークW3の上面よりも高い場合、ワークW2の角部Qが突出した状態となる。次に、制御部10は、図24(c)に示すように、ワークW8を所定の距離δだけ後退させ、図24(d)に示すように、長爪21を引き抜いてワークW8をワークW3の上に載置する。このとき、ワークW8は、ワークW2の突出した角部Qを避けて、ワークW3上に正立した状態で載置されている。
【0105】
ところが、図24(a1)(b1)に示すように、ワークW8を後退させることなく積載予定位置に載置すると、図24(d1)に示すように、ワークW8は、ワークW2の突出した角部Qに乗り上げてしまって、傾いた状態で載置される。このような角部Qへの乗り上げが発生すると、最悪の場合、傾いたワークが落下したり、転倒したりして、その後の作業を正常に継続できなくなる虞がある。本実施形態は、このような不具合発生を回避することができる。
【0106】
所定の距離δの隙間は、図25(a)(b)に示すように、次に載置されるワークW9による押し込み動作によって詰められる。このときワークW2の突出した角部Qによる障害は、ワークW2,W8の変形によって解消される。後からのワークW9は、図25(c)に示すように、ワークW8から距離δ離れたところに載置される。各整列方向における最後のワークは隣のワークが無いため隙間が残るので、問題になる場合は、ワークを載置(落下)した後で、さらにハンド部2で押すようにすることもできる。
【0107】
上述のパレタイズ処理に対する例外処理とワーク積載の他の例について説明する。図26(a)〜(d)に示すように、既にパレット7上に積載されているワークは全て互いに、隙間なく詰められた状態にある。これは、パレット本体70に直接ワークを載置する場合や、ワーク転倒防止部材71に接して載置する場合には、上述のワークW2の突出した角部Qがないので、所定の距離δだけ後退させる処理を省略する例外処理がなされたことによる。2段目のワークW0に続く2個目としてワークWを積載する場合、ハンド部2が順次、矢印z1,y1,x1,x2に示すように移動され、最後に、図26(e)に示すように、矢印y2方向に移動されてワークWがワークW0から距離δ離れた位置に積載される。矢印y1方向にハンド部2を移動する前には、短爪22が広げられている。また、ハンド部2の2つの長爪21のうち、ワークを押す側の長爪には、ワークを押したときの反力を計測する応力センサ1aが設けられている。この応力センサ1aは、図26(b)(c)に示すように、矢印x1方向にワークWを移動させてワークW0との隙間を詰める際に、隙間Δxが詰められた(Δx=0)ことを判断するために用いられる。ワークWを押す長爪21に作用する反力を応力センサ1aによって計測し、所定値以上の反力が計測された位置がΔx=0とされ、その位置から所定の距離δだけ戻した位置がワークWの積載位置とされる。
【0108】
本実施形態によれば、上段積みの場合に下段のワークの角部の出っ張りなどを避けてワークを載置できるので、ワークが斜め置きされて転倒するなどという不具合を防止できる。所定距離戻すことによって生じた隙間は、次のワークによる詰め動作によって順次詰めることができるので、ワークWやパレット7に寸法ばらつきがあっても、パレタイズされたワーク間の隙間の発生を防止して稠密に積載することができる。ワーク整列方向における最後のワークは隣のワークが無いため隙間が残るが、問題になる場合には、ワークを載置した(落下させた)後で、さらにハンド部2で押すようにすることもできる。
【0109】
(第1,3,4,10の実施形態における応力センサについて)
図27を参照して、応力センサ1aによって計測した反力と比較する閾値(所定の値)について説明する。長爪21によってワークWを他の物体に押し当てる場合に、他の物体に接触後の押し込み量(反力Fがゼロから上昇し始めてからの移動量)と、応力センサ1aによって計測される反力との関係は、押し当てられる他の物体が何か、また、どのように分布しているかなどによって異なる特性を示す。例えば、相手がポール状の転倒防止部材の場合、転倒防止部材が存在しないワークの左右端ではワークが曲がりやすく、反力が小さく測定されると考えられる。実測結果によると、他のワークに対してワークWを押し当てる場合は直線aのような特性を示し、転倒防止部材71にワークWを押し当てる場合は直線bのような特性を示す。また、ワークWの強度が異なると、当然、異なる特性のデータが得られる。従って、反力の測定値から、ワークWが何に押し当てられているか、また、どのような強度のワークWかなどを判別できることが分かる。
【0110】
そこで、押し込み完了の判断、つまり、ワークWを押し込んで移動させて隙間やクリアランスが詰められたかどうかの判断を、反力の測定値と所定値(閾値)とを比較して判断することができる。より一般的には、制御部10は、パレット上でワークをワーク整列方向に沿って移動させる際に、ハンド部2に備えたワークを押す側の爪に作用する反力を応力センサによって計測し、所定値以上の反力が計測された位置を移動の完了位置(押し込み完了位置)とし、完了位置を判断するための反力に対する所定値は、ワークの強度に応じて設定する。この判断を効果的に行うために、品種の違いによるワークWの強度の違いや、ワークWを押し当てる相手の違いに応じて閾値を設定したり、切り替えたりする。ワークWの強度は、ワークWの品種によって剛体に近いものや柔軟なものがあるが、品種毎に一定と考えられる。そこで、品種毎に、所定の押し込み量dについて閾値Fa,Fbを設定しておき、パレタイズ時に閾値Faと閾値Fbとを適宜切り替えればよい。閾値Faと閾値Fbとを設定する押し込み量dは異ならせてもよい。制御部10は、ワークWを押し付ける相手がワークであるか転倒防止部材であるかを常に把握しているので、閾値Fa,Fbの切り替えを確実に行うことができる。このような閾値Fa,Fbの切り替えと、押し込み完了の判断により、パレタイズ装置1がパレタイズするワークWを、変形させたり、傷つけたりすることなく、適切に押し込み完了点を把握して、ワーク間の隙間の発生を防止してパレット上に稠密にワークWを積載することができる。
【0111】
(第11の実施形態)
図28、図29(a)(b)は第11の実施形態を示す。本実施形態は、図28に示すように、ワーク寸法を測定するワーク測定部50をさらに備えており、制御部10は、ワーク測定部50によって測定されたワーク寸法と、予め記憶部6に記憶している標準のワークの寸法とを比較することにより、ワークの品種の異同を判断する。他の点については、上述した第1乃至第10の実施形態と同様である。ワーク測定部50は、上述した第1の実施形態におけるワーク測定部と実質的に同じであり、短爪22の距離センサ2bからの情報に基づいて、ワークWの縦横の寸法を取得、すなわち測定する。第1の実施形態においては、ワーク寸法は、ワークWの寸法にばらつきがあるか否かを計測するために用いられている。本実施形態では、ワークの品種の異同を判断する。これは、品種の異同が不明の場合などに効果を発揮するものであり、逆に、どのような寸法のワークWが、現在把持されるのか不明の場合と考えられる。そこで、ワークWを把持する場合には、短爪22を最も広げた位置である、最大ストロークの位置から把持を開始し、ハンド部2がワークWを把持しているときの距離センサ2bからの情報に基づいてワークWの断面寸法を測定する。
【0112】
パレタイズの処理は、図29(a)に示すように行われる。制御部10は、ハンド部2を制御してワークWを把持させ(S11)、ワークWの寸法を取得し(S12)、寸法比較を行い(S13)、所定の許容範囲内で寸法が同じで有れば品種が前回のワークと同じと判断し(S14でYes)、パレットに積載する(S16)。寸法が異なっていて、品種が前回のワークと同じでないと判断された場合には(S14でNo)、制御部10は、パレット交換の指示を外部に出力し、交換されたパレットにワークを積載する(S16)。その後、作業終了でなければ(S17でNo)、ステップ(S11)からの処理を繰り返し、作業終了であれば(S17でYes)、処理を終了する。
【0113】
上述のフローチャートにおける寸法測定と比較を含む処理は、全てのワークについて行っているが、通常、ワークの品種切替は、予めパレタイズ装置1に通知または入力されるので、必ずしも、毎回行う必要はない。品種異同の判断が必要になるのは、品種切替の通知や入力がなされた時点に対して、例えば工程間の距離が長く、品種切替の通知や入力がなされた後に、品種切替前の最終ワークが到着するといったタイムラグが発生する場合などである。そこで、図29(b)に示すように、まず品種変更ありか否かを判断し(#1)、品種変更があれば(#1でYes)、パレット交換を含む上記同様の処理を行い(S12〜S17)、品種変更がなければ(#1でNo)、ワークWを把持し(#2)、そのままパレットに積載すればよい(S16)。この場合、短爪22を最大ストロークまで広げて行う寸法測定と判断処理のための時間を短縮でき、パレタイズの効率を上げることができる。本実施形態によれば、ワークWの品種の異同を判断するので、1つのパレット7に異品種のワークWが混載されるのを防止することができる。
【0114】
なお、本発明は、上記した各実施形態の構成に限られることなく種々の変形が可能である。例えば、各実施形態の構成を互いに組み合わせた構成とすることができる。また、短爪22の開閉機構として、シリンダを用いて短爪22を平行移動させる例を示したが、これに限らず、ヒンジを用いて短爪22を回動開閉したり、また、これらの開閉を組み合わせたりすることができる。また、爪の数は、互いに対向する少なくとも1つの固定長爪21と1つの可動短爪22の2つとすることもできる。ハンド部2の他の構成例として、把持用の上下2つの爪と押し動作のための側方の1つの爪とを備え、上側の爪が可動爪という構成とすることもできる。この場合、3つの爪の長さは同じ長さとすることができ、押される側には爪を備えていないので、押し動作の前の短爪の引き抜きなどの途中動作は行う必要がない。
【0115】
また、ワークを整列方向に沿って移動させて、押して、詰め込む動作の完了位置の判断は、必ずしも応力センサによる反力の計測値に基づかなくてもよく、記憶部に記憶されている積載位置に基づいて判断するだけでもよい。また、ワーク形状は箱形状に限らず、少なくとも底面と左右面とを有して整列積載できれば良く、また、多段積みするワークの場合には、さらに上下に重ねるための上面を有するワークであれば、パレタイズの対象とすることができる。
【0116】
また、パレットの長さは、例えば、第1の実施形態において、ワークWの長手方向の長さと同じ例を示したが、必ずしも同じである必要はない。また、ワーク測定部は、距離センサ2bによって構成する例を示したが、これに限らず、画像処理によってワーク寸法を取得したり、遮光型センサを複数並べて光の透過具合から段階的にワーク寸法を測定したりするようにしてもよい。
【0117】
また、計測部5は、ロータリエンコーダや制御パルスを計数によらずに、レーザ距離計によって各移動部の移動位置を測定したり、レーザレーダや画像処理によって位置情報を取得してハンド部2の長爪21の位置を計測するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0118】
1 パレタイズ装置
10 制御部
1a 応力センサ
2 ハンド部
21 長爪
22 短爪
2b ワーク測定部(距離センサ)
3 アーム部
5 計測部
50 ワーク測定部
6 記憶部
7 パレット
71 ワーク転倒防止部材
8 誘い込み板
W,W0〜W10 ワーク
Q 角部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークをその供給場所から順次搬送してパレット上に整列して積載するパレタイズ装置であって、
ワークを把持するハンド部と、
前記ハンド部を移動させるアーム部と、
パレットにおけるワークの積載位置の情報を取得するための計測部と、
前記積載位置を記憶するための記憶部と、
前記各部の動作を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、ワークを把持した前記ハンド部を前記アーム部によって移動させてパレットにワークを積載した際に前記計測部によってそのワークの積載位置を取得して前記記憶部に記憶させ、次のワークをパレットに積載する際に、前記記憶部に記憶されている積載位置に基づいて、ワークの積載予定位置を決定することを特徴とするパレタイズ装置。
【請求項2】
ワーク寸法を測定するワーク測定部をさらに備え、
多段に積載可能なワークをパレットに多段に積載する場合に、
前記制御部は、前記ワーク測定部によって測定されたワーク寸法が、積載を予定している段におけるパレットの未積載部の寸法よりも大きいときに当該ワークを上の段に積載するように前記ハンド部を制御することを特徴とする請求項1に記載のパレタイズ装置。
【請求項3】
ワーク寸法が未積載部の寸法よりも大きい場合に、前記未積載部には当該未積載部の寸法よりも小さい寸法のワークを選択して積載することを特徴とする請求項2に記載のパレタイズ装置。
【請求項4】
前記ハンド部はワークを把持するための少なくとも長短2種類の爪を有し、
長い爪は、前記積載予定位置から所定のクリアランスを設けてパレットにワークを載置して短い爪を引き抜いた後、前記ワークを押して前記クリアランスを詰めるために用いられることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のパレタイズ装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記クリアランスを詰める際に、ワークを押す爪に作用する反力を応力センサによって計測し、所定値以上の反力が計測された位置をワークの積載位置とすることを特徴とする請求項4に記載のパレタイズ装置。
【請求項6】
ワークはパレット上への積載時の底面形状が積載姿勢によって異なる直方体であり、
前記制御部は、パレットの未積載部の寸法に応じて積載時のワークの底面の選択を行うことを特徴とする請求項4または請求項5に記載のパレタイズ装置。
【請求項7】
パレットは、ワーク整列方向両端部にワーク転倒防止部材を有し、
前記制御部は、前記ワーク転倒防止部材の後端側付近に整列される最後のワークを、先に積載されているワーク側に傾けた状態で積載予定位置の上方から下降させ、前記先に積載されているワークの上方後端角部の回りに回転させることによりワークを正立させてパレットに積載するように前記ハンド部を制御することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載のパレタイズ装置。
【請求項8】
パレットは、ワーク整列方向両端部にワーク転倒防止部材を有し、
前記ワーク転倒防止部材の後端側付近に整列される最後のワークの積載を滑らかに行うための誘い込み板をパレット側に備えることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載のパレタイズ装置。
【請求項9】
前記制御部は、ワークを前記積載予定位置までワーク整列方向に沿って移動させた後、所定の距離だけ戻した位置に載置するように前記ハンド部を制御することを特徴とする請求項1に記載のパレタイズ装置。
【請求項10】
前記制御部は、パレット上でワークをワーク整列方向に沿って移動させる際に、前記ハンド部に備えたワークを押す側の爪に作用する反力を応力センサによって計測し、所定値以上の反力が計測された位置を前記移動の完了位置とし、
前記完了位置を判断するための前記反力に対する所定値は、ワークの強度に応じて設定することを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載のパレタイズ装置。
【請求項11】
ワーク寸法を測定するワーク測定部をさらに備え、
前記制御部は、前記ワーク測定部によって測定されたワーク寸法と予め記憶している標準のワークの寸法とを比較することにより、ワークの品種の異同を判断することを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載のパレタイズ装置。
【請求項1】
ワークをその供給場所から順次搬送してパレット上に整列して積載するパレタイズ装置であって、
ワークを把持するハンド部と、
前記ハンド部を移動させるアーム部と、
パレットにおけるワークの積載位置の情報を取得するための計測部と、
前記積載位置を記憶するための記憶部と、
前記各部の動作を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、ワークを把持した前記ハンド部を前記アーム部によって移動させてパレットにワークを積載した際に前記計測部によってそのワークの積載位置を取得して前記記憶部に記憶させ、次のワークをパレットに積載する際に、前記記憶部に記憶されている積載位置に基づいて、ワークの積載予定位置を決定することを特徴とするパレタイズ装置。
【請求項2】
ワーク寸法を測定するワーク測定部をさらに備え、
多段に積載可能なワークをパレットに多段に積載する場合に、
前記制御部は、前記ワーク測定部によって測定されたワーク寸法が、積載を予定している段におけるパレットの未積載部の寸法よりも大きいときに当該ワークを上の段に積載するように前記ハンド部を制御することを特徴とする請求項1に記載のパレタイズ装置。
【請求項3】
ワーク寸法が未積載部の寸法よりも大きい場合に、前記未積載部には当該未積載部の寸法よりも小さい寸法のワークを選択して積載することを特徴とする請求項2に記載のパレタイズ装置。
【請求項4】
前記ハンド部はワークを把持するための少なくとも長短2種類の爪を有し、
長い爪は、前記積載予定位置から所定のクリアランスを設けてパレットにワークを載置して短い爪を引き抜いた後、前記ワークを押して前記クリアランスを詰めるために用いられることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のパレタイズ装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記クリアランスを詰める際に、ワークを押す爪に作用する反力を応力センサによって計測し、所定値以上の反力が計測された位置をワークの積載位置とすることを特徴とする請求項4に記載のパレタイズ装置。
【請求項6】
ワークはパレット上への積載時の底面形状が積載姿勢によって異なる直方体であり、
前記制御部は、パレットの未積載部の寸法に応じて積載時のワークの底面の選択を行うことを特徴とする請求項4または請求項5に記載のパレタイズ装置。
【請求項7】
パレットは、ワーク整列方向両端部にワーク転倒防止部材を有し、
前記制御部は、前記ワーク転倒防止部材の後端側付近に整列される最後のワークを、先に積載されているワーク側に傾けた状態で積載予定位置の上方から下降させ、前記先に積載されているワークの上方後端角部の回りに回転させることによりワークを正立させてパレットに積載するように前記ハンド部を制御することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載のパレタイズ装置。
【請求項8】
パレットは、ワーク整列方向両端部にワーク転倒防止部材を有し、
前記ワーク転倒防止部材の後端側付近に整列される最後のワークの積載を滑らかに行うための誘い込み板をパレット側に備えることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載のパレタイズ装置。
【請求項9】
前記制御部は、ワークを前記積載予定位置までワーク整列方向に沿って移動させた後、所定の距離だけ戻した位置に載置するように前記ハンド部を制御することを特徴とする請求項1に記載のパレタイズ装置。
【請求項10】
前記制御部は、パレット上でワークをワーク整列方向に沿って移動させる際に、前記ハンド部に備えたワークを押す側の爪に作用する反力を応力センサによって計測し、所定値以上の反力が計測された位置を前記移動の完了位置とし、
前記完了位置を判断するための前記反力に対する所定値は、ワークの強度に応じて設定することを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載のパレタイズ装置。
【請求項11】
ワーク寸法を測定するワーク測定部をさらに備え、
前記制御部は、前記ワーク測定部によって測定されたワーク寸法と予め記憶している標準のワークの寸法とを比較することにより、ワークの品種の異同を判断することを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載のパレタイズ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【公開番号】特開2010−58978(P2010−58978A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−74815(P2009−74815)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
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