説明

ピンホールカメラを有する撮像光学検査デバイス

本発明は、サンプル(5)を検査する撮像光学検査装置に関する。前記検査装置は、照射面内でサンプル表面の指定の部分を非平行光(4)で照射する光源(3)と、前記部分から反射される反射光(4’)の経路及び/又は前記サンプル部分内のサンプル(5)の厚さ全体を通って進む透過光(4”)の経路内に配置された、少なくとも照射面内に延びる少なくとも1つのピンホール(7)と、前記ピンホール(7)を通過する光(4’、4”)の経路内に配置されて前記光(4’、4”)を遮断するように構成された、少なくとも1つの線に沿って光強度分布を感知することが可能な少なくとも1つのスクリーン及び/又は少なくとも1つの位置敏感型検出器システム(8)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像光学検査デバイス/装置に関し、詳細には、孔/開口(以下、「ピンホール」)カメラを有する反射光測定、ポラリメトリ、又はエリプソメトリ装置に関する。本発明による撮像光学検査装置は、様々な材料、たとえば基板上に物理的及び/又は化学的に堆積させた(薄)膜(複数可)の広範で非破壊的、並びに迅速且つ簡単な(認定)検査(複数可)を実行するのに非常に好ましい。具体的には、本発明による撮像光学検査装置は、様々なサンプルの局所的な光学特性を測定し、また得られたデータに基づいて、検査されるサンプルの物性を迅速且つ確実に写像するのに適している。
【背景技術】
【0002】
光にさらされた物質が入射光の特性を大いに変えることはよく知られている。基本的に、視覚はこの特徴に基づいている。角度又はスペクトル(ときとして、主に動物の場合は偏光)に依存する形で反射光の輝度を処理することによって、我々の脳は、外界に関する情報を与える。このようにして、周囲の様々な構成要素を特定できるようになる。
【0003】
反射光測定は、より「科学的」な視覚の方法であり、光学検査技法の最も一般的な種類の1つである。反射光測定は、入射角及び反射角に応じて(並びに任意選択で光のスペクトルに応じて)、調査すべきサンプルの表面から反射される光の輝度の変化を求め(多くの場合、前記光はまた、サンプル自体と相互に作用してから出ていく)、次いで得られたデータに基づいて、サンプル自体を認定する。場合によっては、入射光及び反射光の相対的な偏光状態を調査できると有利である。この分野は、ポラリメトリによって扱われる。ポラリメトリのある特別な分野がエリプソメトリであり、エリプソメトリでは、偏光の角度依存性を考慮する。さらに、分光エリプソメータでは、偏光の波長依存性も同様に調査することができる。これらはすべて、調査すべきサンプルの組成及び表面品質に特徴的であり、場合によってはサンプルの表面付近のバルク特性にも特徴的な情報である。
【0004】
最新の装置を用いても、反射測定は、局所的な形で、すなわちステップごとにサンプルの単一のとても小さく明確に画定された部分(点)だけで、厳密に平行な光ビーム(原則的に発散はゼロである)を利用することによって、また任意に選択できるが変化しない所与の入射(反射)角で実行される。次いで、たとえばサンプル位置を変更することによって、サンプルのさらなる点で測定を繰り返すことができる。広い領域にわたる平均値だけが重要なわけではない場合、広範な領域を局所的に特徴づける分析のためには、多数の様々な点で別々の一連の測定を実施する必要がある。これには非常に時間がかかる。したがって、従来の反射率計構造は、広い領域にわたる迅速なサンプル分析にはまるで不適当である。
【0005】
現在では、以前可能であったものよりはるかに多くの数のデータを位置に依存する形で同時に測定できるような、複数の独立した光センサから形成され、またリアルタイム信号を、前記信号を測定目的にも適したものにする精度で生成する、位置敏感型直線検出器列及び2次元検出器アレイが利用可能である。検出器アレイの素子の既知の位置を使用して、時間(走査)、又は角度(回転)、又はスペクトル(色分散)、又はさらにはサンプルのトポグラフィ(撮像)を測定することができる。
【0006】
したがって、単一の検出器ではゆっくりとしか実施できない局所的な測定に関連する問題は、いわゆる撮像反射光測定(及び/又はポラリメトリ若しくはエリプソメトリ)によって、単一のステップで得られるサンプル表面全体の画像(すなわち、1組の位置に依存する反射データ)を用いて解消することができる。そのような解決策の重要な要素は、前述の検出器の列又はアレイであるが、所与の課題に合わせた適当な照射システムを提供することも、等しく重要である。
【0007】
写真又は録画(すなわち、時間に依存する一連の写真)を取得するときは、必然的に、大きなサンプル(すなわち、カメラ角度内に入るサンプルの一部分)の複数の写真が取り込まれ、したがって、この手法によれば、「光学画像形成装置(反射率計)」は、既に長い間存在してきている。しかし、これらの装置は、画像形成のために、光路修正デバイス、集束系、いわゆるレンズ(及び/又は場合によっては非平面鏡)を使用する。変動する光学厚さ及び/又は平面でない反射表面の屈折媒体に基づいた画像形成システムの本質は、簡単且つ理想的な場合、幾何光学の言葉で言えば、物体平面のすべての単一の点が画像平面のそれぞれの点に別々に撮像されることである。前記画像形成システムを用いて、単一の物体点から様々な角度で現れる光線を収集し、次いでこれらの光線を1つの画像点に集めることによって、明るさが高められる。選択された物体点から様々な角度で現れる光がそれぞれの画像点で合計(積分)されるので、角度情報を平均することから、光路修正素子を備える従来の光学画像形成システムは、原則的に、反射光の角度に依存する分析には不適当である。
【0008】
実際には、この厳密な基準が常に欠点になるわけではない。たとえば、無限距離に位置する点光源と見なすことができる太陽光がシー(see)の表面に反射した光が取り込まれるとき、ほぼ完全な画像形成反射率計が適用される。ほぼ無限距離に位置する物体(ここではシーの表面)の点から画像平面のそれぞれの点に入射する光の収集角度範囲が、レンズの直径により非常に小さな画角に制限されるからである。すなわち、画像形成検出のための臨界角度範囲は、光源に対するサンプルの距離及び画像形成システムの開口によって決定される。
【0009】
これに反して、研究室及び/又は業務上の条件(反射測定を行うことが好ましい)では、サンプルと光源はどちらも検出器に近接しており、したがって角度を積分する光学撮像を用いた画像形成反射光測定を使用することはできない。
【0010】
非常にまれな場合(比較的大きな寸法の厳密に平面の表面から)、評価できる画像を得ることができ、すなわち画像形成反射光測定がうまくいくこともあるが、そのような場合、直径が大きく完全に平行な光ビームが使用されるべきである。そのような解決策は、たとえば、平行光ビームを使用して薄膜サンプルの厚さを測定するエリプソメータを開示する米国特許第5754296号明細書に記載されている。
【0011】
German Publication Pamphlet No.DE 197 45 945 A1は、反射光測定、具体的には集束された光を用いたサンプルのエリプソメトリ測定について例示している。前記測定処理は、単一のステップで比較的広い範囲の入射角を包含するが、試験される表面の寸法は激減する。とても小さいサンプル領域からの「画像」しか得ることができず、その寸法は適用される光の波長程度になる。さらに、光学素子の焦点での偏光及びビーム分配のカオス的な挙動が、測定及び次のデータの評価を大いに妨げる。
【0012】
Hungarian Patent Appl.No.0037290は、実際の撮像エリプソメータを開示する。このエリプソメータでは、サンプルが点光源によって照射されており、発散する光を投影する結果、角度依存性は維持されるが、スクリーン上に又は検出器アレイ上に直接、焦点の合っていない画像が形成される。この装置の深刻な欠点は、この装置では平面のサンプルしか実質的に測定/認定できないことである。前記装置のさらなる欠点は、個々の素子によって生じる内部光の散乱のために干渉する背景を除去することができず、したがって、比較的高いノイズの存在下でサンプルの測定/認定を実行しなければならないことである。
【0013】
集束系を用いて実現される撮像(たとえば、写真など)は、実際には、限りある寸法の測定システム内では反射の厳密な角度依存性を測定できなくなるため、極端な場合にしか画像形成反射率計で適用するのに適さないであろうということが、容易に理解されるであろう。
【0014】
実行された研究を考慮すると、それ自体知られたピンホール(孔/開口)カメラ(「カメラオブスキュラ」)が、画像形成反射率計を実現する理想的な手段を提供するという結論に達した。(話を簡単にするために、以下では、光学系の術語によれば正確な用語であるはずの「円形の開口」という用語ではなく、国際的な文献で広く受け入れられている「ピンホール」という用語を使用することとする。)その機能の核心は、物体から反射された光を、厳密に角度に依存する形でスクリーン、写真乾板、又は検出器に到達させることである。
【0015】
角度積分の結果、光学ビーム成形技法(たとえば、大きな開口を有する光学系によって実行される撮像など)に基づいた解決策は、撮像の明るさを増大させ、また集束特性のため、ある程度の焦点範囲でより良好な分解能の「より鋭い」画像を与える。前述の2重の利点によって、これらの解決策が、写真及びたとえば天文観察の分野に導入された。光の損失(分解能が高い場合に、孔の寸法が非常に小さい結果現れる)が非常に大きいピンホールカメラによって実現される画像形成と比較すると、細部がより詳しく、また明るさが著しく大きい画像を、「レンズ」によって得ることができる。しかし、「撮像」という用語は、厳密には、光路修正光学系の場合だけに使用できることに留意されたい。ピンホールカメラの機能の核心的な特徴は、方向に関して修正されていない光線、すなわち、いわゆる「まっすぐな」光線だけが、スクリーン/検出器に到達できることである。したがってピンホールカメラは、物体の直線投影を実現し、その結果、画像も得られる。したがって、ピンホールカメラを使用する処理は、画像形成処理と見なすこともできるが、当業者には明らかなように、そのような解決策は、光学系における従来の「撮像」とは、概念の点で大きく異なる。前記差異の核心は、単に角度積分が欠けていることである。これは、本発明の観点からは非常に重要な要件であり、その「代償」として、明るさが乏しくなる。
【0016】
著しい量の光に損失にも関わらず、検出器感度が向上し、また利用可能な光源の輝度が迅速に増大したため、現在、写真及び/又は光学検出の目的でピンホールカメラを有するシステムを使用することは、実際的で且つ妥当なこととなった。ピンホールカメラにより、すべての単一の物体点から所与の角度で伝播する単一の「光線」(実際の幾何形状によって画定され、非常に小さな角度領域を有する)だけが、検出器システムのそれぞれの領域に到達することができる。したがって、所与の物体点は、一度に単一の入射(反射)角でしか検出できないが、各物体点には異なる角度が属する。したがって、単一の写真として取り込まれた画像は、システムのカメラ角度に対応するより広い角度領域にわたって、角度に依存する反射データを供給する。測定システム及びサンプルを互いに対して単に移動させることによって、各物体点を指定の検査領域内に入れることができ、すなわち、簡単且つ迅速な方法で、角度に依存する撮像全体を実現することができる。
【0017】
ピンホールカメラの場合、集束は存在せず、従来の意味の「精細度」は存在しないことをここで強調するべきである。したがって、光がそこからピンホールを通って入ってくるすべての構成要素が、所与の角度分解能で画像内に現れる。照射源も検出される角度範囲内に入る場合(たとえば平面のサンプルを検査するときは原則的に不可避であるため)、照射源の「画像」をサンプルの画像から分離することはできず、測定技法に関係する著しい問題をもたらす可能性がある。したがって、従来のピンホールカメラは、光学反射率計ではない。実行された調査を考慮するとさらに、ピンホールカメラに基づいた光学反射率計の適用可能性はまた、サンプルを照射するのに使用される特別な光源(多くの場合、実際の問題に合わせるべきである)に関してかなり厳密に制限されるものであるという結論に達した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
上記を鑑みると、本発明は、広い表面を有するサンプルを迅速且つ確実に分析するのに適した撮像光学検査デバイス/装置を提供することを目的とする。具体的には、本発明の目的は、様々なサンプルの広範な表面の局所的な光学特性を非破壊的に測定し、並びに得られたデータに基づいて、検査されるサンプルの物性を迅速且つ確実に写像する働きをする反射率計、ポラリメータ、又はエリプソメータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、ピンホールカメラ及び同時に非平行(すなわち、発散又は収束する)サンプル照射によって実現される画像形成を使用するとともに、サンプルの表面で生じる反射及び/又はサンプルの材料を通った透過の偏光依存性及び/又は波長依存性を測定することによって、上記の目的を実現できるという認識に基づいている。このようにして、単一の画像において、いくつかの入射角で、比較的広い表面を同時に検査することができる。
【0020】
撮像光学検査装置を提供する上記の目的は、請求項1に記載の検査装置によって実現される。本発明による検査装置の可能なさらに好ましい実施形態は、請求項2〜13に定義される。
【0021】
具体的には、本発明による検査装置では、調査中のサンプルから反射された光又はサンプルを通って透過された光は、さらなる分析のために、ピンホールカメラを通って、光路内に配置された位置敏感型検出器アレイ(膜、カメラ、光検出器の列又はアレイなどとすることができる)へ導かれる。スクリーン上で前記光を遮断すること、次いで、光学投影後、スクリーン上に現れる画像を電子的手段又は従来の画像記録手段によって記録することも可能である。本発明の核心は、サンプル表面の位置及び角度を維持する投影/拡大(画像と見なすことができる)が、さらなる光学素子を使用しないで、ピンホールカメラによって提供されることである。平面のサンプルの場合のように、ピンホールカメラを適用するので、実際に必要な測定の角度範囲は、調査中の表面に垂直な単一の断面で平面の幾何学的位置に分解されて現れる。上記の目的を実現するには、前記平面に位置する単一の列の検出器でも十分である。明らかなように、平面のサンプルを通常検査する場合、従来の平行(平行)ビームによって照射が提供され、またピンホールカメラが使用されるとき、そのような装置は従来の反射率計、エリプソメータに対応するはずであるため、サンプル全体上の反射データを単一の点からしか得ることができない。したがって、画像形成によって提供される利点はすべて失われるであろう。したがって、サンプルのすべての単一の点から画像を得るには、非平行照射を使用する必要がある。理想的には、調査すべき検出された角度範囲のすべての方向に対応する角度から各物体点を照射するべきである(無限の寸法の均一の拡散照射、典型的な例では閉ざされた曇り空)。しかし、少なくともピンホールカメラの取込みの角度範囲内では、物体点の照射は、特別に設計された収束する光源によって提供されるべきである。光検出器の検出角度は、検出器寸法及びサンプル距離に応じて制限されるので、いくつかのカメラ検出器システム及び/又はスクリーンを同時に使用することによって、前記検出角度を著しく増大させることができる。
【0022】
本発明による検査装置では、ピンホールは、測定すべき角度範囲の円錐角度の二等分線に沿って配置されることが好ましい。この場合、対称な角度範囲にわたって測定を実行できるからである。
【0023】
本発明による検査装置では、位置敏感型検出器システム(検出器の列若しくはアレイ)及び/又はスクリーンは、測定すべきサンプルと実質的に平行な平面内に配置されることが好ましく、それによって、サンプルの測定される部分の幾何学的に精密な画像が得られる。
【0024】
本発明による検査装置では、非平行照射が、拡散一次又は二次光源(二次光源は、たとえば照射された光沢のない表面の形)によって提供されることが好ましい。この光源は、検出器システム及び/又はスクリーンの寸法並びにピンホールから検出器システムまでの距離によって指定される検出円錐角度範囲によって切り取られる領域を光源の位置で完全に覆うような寸法を有し、またそのようなピンホールからの距離に位置する。このようにして、サンプルの全試験部分内で、必要な均一の拡散照射を提供することができる。
【0025】
本発明による検査装置では、明るさを増大させるために、前記検出された円錐角度に対応する収束する照射が優先的に使用され、その結果、適切な光学ビーム成形手段を挿入することによって、照射は、サンプルによって反射された後、ピンホール内に「集束」される。単一の波長だけで測定が実行される場合、湾曲した表面のレンズを使用することもできる。しかし、分散の影響を受けない湾曲した(軸上又は軸外)放物面鏡又は球面鏡を使用することがはるかに好ましい。この後者タイプの光学ビーム成形手段が使用されるとき、マルチスペクトルの場合でも、ピンホールカメラによる撮像で、照射の明るさを最適に利用することができる。
【0026】
さらに、本発明による検査装置では、光源からサンプルまで延びる光路及びサンプルから検出器システムまで延びる光路のうちの少なくとも1つの中に偏光子が挿入された場合も好ましい。このようにして、最適のコントラストのサンプルに依存する偏光状態を確保することができる(無作為に又は円形偏光させた光源の場合)。この状態を使用して、(簡単な反射及び/若しくは透過タイプの撮像に対する)検査の感度を最大にすることができ、又はこの状態により、最大量の情報をもたらすエリプソメトリ測定の性能に対して最小の要件が簡単に満たされる。もちろん、大部分の場合、入射ビームと反射及び/又は透過ビームの両方に可動偏光子を配置することが好ましい。
【0027】
本発明による検査装置はまた、複数の波長で実施すべき測定を実行するのに適している。そのような場合、時間的スペクトル分解が適用され、すなわち所与の瞬間に、所与の波長(単一の色成分)の光ビームだけが光源の幾何学的位置から放出されることが好ましい。2つ以上の単色光源が存在するときは、これは、たとえば照射する光源の位置にある前記光源を時間制御された交互の形で変更することによって到達することができる。多色(たとえば、白色)光源が使用されるときは、これは、光源又は検出器システムの前の光路内に様々な透過特性の色フィルタを時間制御された交互の形で次々に挿入することによって到達することができる。音響光学偏向器も、同様に使用することができる。
【0028】
本発明による検査装置はまた、同じ瞬間に複数の波長で実施すべき測定を実行するのに適している。そのような場合、幾何学的スペクトル分解が、それ自体知られた分散手段(プリズム、格子、音響光学分解器など)によって実行され、したがって、多色光源によって放出される光ビームの経路内に、好ましくは測定すべきサンプルの表面に対する法線と平行な平面内にスリットが配置され、またこの平面に垂直な平面内でスペクトル分解が実行されることが好ましい。このようにして、同時角度及び波長分解が実現される。スペクトルを分解する光学手段は、ピンホールと検出器システムの間に延びる光路内に配置されるべきであり、また個々の波長での検出を保証するために、前記検出器システムは、2次元検出器システム(たとえば、光検出器アレイ)の形で提供されなければならない。
【0029】
本発明による検査装置では、調査中の前記サンプルは、平面内で少なくとも1つの線に沿って移動できるように配置されることが好ましい。このようにして、サンプルの各点が、検出される角度範囲のそれぞれの角度に対して各点を検出できる位置を、少なくとも1つの線に沿って、少なくとも一度、確実に占めることを保証することができる。したがって、検出角度に対する比較的複雑な走査を、簡単な移動に変えることができる。
【0030】
本発明の解決策のさらなる利点、並びに本発明の解決策を適用することによって解決できるさらなる技術上の問題は、添付の図面に関連して行う本発明の以下の説明から、明らかになるであろう。図面では、本発明について、いくつかの好ましい実施形態を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】調査中のサンプルの品質を迅速に検査するのに適した本発明による撮像光学検査装置の一実施形態を示す、検査すべきサンプルの表面に垂直な断面を示す図である。
【図2A】サンプルによって反射される光ビームを用いて広いサンプル表面を迅速に検査するのに適した本発明による撮像光学検査装置の別の実施形態を示す、検査すべきサンプルの表面に垂直な断面を示す図である。
【図2B】サンプルによって透過される光ビームを用いて広いサンプル表面を迅速に検査するのに適した本発明による撮像光学検査装置の可能なさらなる実施形態を示す、検査すべきサンプルの表面に垂直な断面を示す図である。
【図3A】図1に示す検査装置によって取得した、シリコン(Si)ウェーハ上に塗布されたポリSi/SiO膜層構造のポリSi副層の厚さ図である。
【図3B】図1に示す検査装置によって取得した、シリコン(Si)ウェーハ上に塗布されたポリSi/SiO膜層構造のSiO副層の厚さ図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、試験すべき物質の迅速な品質検査に適した、本発明による撮像光学検査デバイスの可能な簡単な実施形態を示す。ここでは、本発明による照射一次光源1が、広い表面の広範なLEDアレイによって提供される。このLEDアレイは、複数の個々のLED素子を含み、また任意選択で多色である。その一次光2は、仮想光源3として機能する光沢のない均一化する光拡散板を通って伝播する。検査すべきサンプル5が、適切に準備されたサンプルホルダ(図示せず)内に配置される。反射表面と見なすことができるサンプル5の表面は、前記拡散板によって生成された非平行(すなわち、平行でない)光4によって照射される。サンプル5によって反射された非平行光4’は、所望の寸法のピンホール7を通って進み、この場合、位置敏感型検出器システム8の感知表面に入射する。前記位置敏感型検出器システム8は、CCDアレイによって提供されることが好ましいが、他の適切な手段、たとえば少なくとも単一の線に沿って光強度分布を検出するのに適した光検出器と置き換えることもできる。ピンホール7は単に、サンプル5の検査される表面部分によって反射された円錐状の光4’の経路内に配置され、したがって、円錐状の光ビームの対称軸上に、又はもっと正確に言えば、サンプル5の表面に垂直な図1に示す断面的な図では、光ビーム4、4’の二等分線6上にくる。ピンホール7をこうして配置すると、対称の角度範囲にわたって測定を実行することができる。前記二等分線6(図1では点鎖線の曲線で示す)はまた、仮想光源3から、前記サンプル5の検査される表面部分によって反射されて、ピンホール7を通って検出器システム8の感知表面まで延びる光路を画定する。
【0033】
当業者には明らかなように、サンプル5に入射する光4の偏光面は、照射側に位置する偏光子9によって設定されることが好ましく、一方反射光4’の偏光は、検出器側に位置する検光子として使用される偏光子10によって決定される。前記偏光子9、10は、それぞれ仮想光源3とサンプル5の間、及びサンプル5と検出器システム8の間に延びる前記光路の様々な断面に配置される。偏光子9、10は、膜偏光子であることが好ましいが、異なるタイプの偏光子も同様に使用することができる。
【0034】
サンプル5は、たとえば継続的に動く生産ライン上に図1の検査装置が取り付けられるような形で、サンプル5自体の平面内で少なくとも1つの線に沿って移動させることができる。前記移動により、サンプル5の各点が、非平行光4の検出円錐角度範囲11のすべての可能な角度値を少なくとも一度、確実に通過するようにする。前記円錐角度範囲11は、ピンホール7の寸法、及びピンホール7と位置敏感型検出器システム8の間の距離によって決定される。幾何学的に精密な撮像を実現するために、位置敏感型検出器システム8は、サンプル5と実質的に平行な平面内に配置されることが好ましい。さらに、検出された信号の処理/評価及び/又は前記信号の任意選択の記憶/表示のために、位置敏感型検出器システム8は、処理装置(図面には図示せず)、好ましくはコンピュータに接続される。
【0035】
図2Aは、同じくサンプル表面によって反射される光ビームを用いて、広い表面にわたって試験すべき物質の簡単且つ迅速な品質検査/測定を実現する、本発明による撮像光学検査装置の別の実施形態を表す。ここでは、本発明による一次光源1は、光ファイバの出口開口によって提供される。一次光は、仮想光源として機能する球面鏡12上に成形される。反射表面と見なすことができるサンプル5の表面は、球面鏡12によって反射された非平行光4によって照射される。サンプル5によって反射された非平行光4’に球面鏡12の軸外位置が与える(歪み)効果が、二等分線6上に配置された円筒鏡13によって補正/補償される。円筒鏡13によって反射された後、前記非平行光4’は、光路内に配置されたピンホール7を通って進み、位置敏感型検出器システム8に入射する。前記位置敏感型検出器システム8は、たとえばCCDアレイによって提供されることが好ましい。この場合、前記二等分線6によって画定される光路は、光ファイバの出口開口から、球面鏡12、サンプル5の検査される表面部分、及び円筒鏡13によって反射されて、ピンホール7を通って位置敏感型検出器システム8の感知表面まで延びる。
【0036】
当業者には明らかなように、図1に示す実施形態と同様に、ここでもサンプル5に入射する光4の偏光面は、照射側に位置する偏光子9によって設定されることが好ましく、一方サンプル5によって反射された光4’の偏光は、検出器側に位置する検光子として使用される偏光子10によって決定される。前記偏光子9、10は、膜偏光子であることが好ましいが、異なるタイプの偏光子も同様に使用することができる。
【0037】
サンプル5は、たとえば継続的に動く生産ライン上に図2Aに示す検査装置が取り付けられるような形で、サンプル5自体の平面内で少なくとも1つの線に沿って移動させることができる。前記移動により、前記サンプル5の各点が、非平行光4の検出円錐角度範囲11のすべての可能な角度値を少なくとも一度、確実に通過するようにする。前記円錐角度範囲11は、ピンホール7の寸法、及びピンホール7と位置敏感型検出器システム8の間の距離によって決定される。さらに、検出された信号の処理/評価及び/又は前記信号の任意選択の記憶/表示のために、位置敏感型検出器システム8は、処理装置(図面には図示せず)、好ましくはコンピュータに接続される。
【0038】
図2Bは、サンプル5の物質を通って進んだ(すなわち、透過した)光4”を用いて、広い表面にわたって試験すべき物質の簡単且つ迅速な品質検査/測定を実現する、本発明による撮像光学検査装置のさらなる実施形態を示す。本実施形態は、ここではサンプル5によって透過された光4”が、ピンホール7を通って進み、位置敏感型検出器システム8に入射するという点で、図2Aに示す検査装置とは異なる。このため、前記サンプル5を支持するサンプルホルダ14は、検査に使用される光の波長で透過性を有する材料から作製されることが好ましく、及び/又は、図2Bに示すように、前記サンプルホルダ14は、細い支持フレームとして形成されることが好ましい。
【0039】
図2A及び2Bに示す検査装置の実施形態を組み合わせた場合、サンプル5によって反射される光4’及びサンプル5によって透過される光4”を同時に使用して前記サンプルを検査することもできることに留意されたい。
【0040】
点光源/偏光子/ビーム成形(集束)光学手段/サンプル/ビーム成形(補正)光学手段/検光子/ピンホール/検出器の基本的な概念に対応する図2A及び2Bに示す構造の主要な利点は、同時に測定すべきサンプル表面の寸法が、使用される偏光子の直径には制限されないことである。前記構造の幾何学的「拡大」は、より大きな寸法を有するビーム成形光学手段(すなわち、より大きな半径の球面鏡)を適用することによって簡単に実現することができる。
【0041】
本発明による検査装置で使用されるピンホール7の実際の直径に対する下限は、回折限界(≒100μm)によって設定される。ピンホール7の直径に対する上限は、単一のステップで試験すべきサンプル5の表面部分の寸法及び検査が実行される所望の分解能によって実質的に決定される。前記検査装置の場合、たとえば、ピンホール7及び検出器システム8の互いに対する適切な配置並びに/又はピンホール7及び検出器システム8の共通の筐体内への収容によって、干渉する背景をほぼ完全になくすことができることにも留意されたい。この後者の場合、前記共通の筐体の光を採り入れる開口を、ピンホール7自体によって提供することもできる。
【0042】
図3A及び3Bは、直径約75mmのシリコン(Si)ウェーハ上に塗布されたポリSi/SiO膜層構造のポリSi副層(図3A)及びSiO副層(図3B)の完全なエリプソメトリの厚さ図を示す。前記図は、図1の検査装置によって取得した。ここでは、3つの異なる波長(637nm、523nm、460nm)で、また小さな帯域幅(それぞれ15nm、30nm、20nm)で発光する高輝度のLEDアレイ(Luxeon Lumiled)が光源1として使用され、一方位置敏感型検出器システム8は、Electrim 2000N型のコンピュータ制御式モノクロデジタルカメラによって提供された。デジタルカメラのCCDアレイの画素数は652×494であり、各画素の物理的寸法は7.5μm×7.5μmである。サンプル5の表面上の角度制限された方位分解能は、0.5〜1mmであった。適用されるCCDアレイの分解能がはるかに高いので、CCDアレイのそれぞれの画素で平均することによって、測定の精度を高めることができる。さらに、従来のエリプソメータで同じ方位分解能を実現するには、数百個の点を測定するべきであるため、本発明による検査装置により、概して約2桁速く測定を実行することが可能になる。
【0043】
本発明による撮像光学検査装置(具体的には、反射率計、ポラリメータ、又はエリプソメータ)の良い影響は、主として、測定されたデータの画像表示に見られる。光線追跡の歪みなく動作するピンホールカメラを有する検査装置により、調査中のサンプルの広い表面にわたって、広い角度範囲で同時測定が可能になる。描画とは、複数のサンプル点の同時測定を意味し、したがって、本発明による検査装置は、測定時間を少なくとも2桁低減させる。測定時間の前記低減により、生産ライン上(すなわち、研究室内ではない)で検査装置をリアルタイムで適用することが可能になる(すなわち、サンプリングだけに基づくものではない)。これは実際に、明らかに著しい経済的な利点である。
【0044】
光源とサンプルの間に延びる光路内でピンホールの位置を変えることによって、検出器/スクリーン上で生成される画像の寸法を容易に制御できることにも留意されたい。ピンホールをサンプルに近付けた場合、画像の寸法は徐々に増大し、逆も同様である。
【0045】
本発明による撮像光学検査装置を使用して、比較的広いサンプル表面にわたって、高速且つ厳密な形で、基板上に堆積させた(薄)膜(複数可)の品質及び様々な物理的/化学的パラメータを測定できることが好ましい。したがって、当該の装置は、堆積させた層(複数可)の厚さ(複数可)及び光学屈折率(複数可)(並びに、それによる層の組成及び/若しくは構造)並びに/又は前記パラメータの変化を検査するのに非常に好ましい。
【0046】
当業者には明らかなように、以下の1組の特許請求の範囲に記載の保護の範囲を逸脱することなく、本発明による撮像光学検査装置に様々な修正を行うことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル(5)を検査する撮像光学検査装置において、照射面内でサンプル表面の指定の部分を非平行光(4)で照射する光源(3)と、前記部分から反射される反射光(4’)の経路及び/又は前記サンプル部分内の前記サンプル(5)の厚さ全体を通って進む透過光(4”)の経路内に配置された、少なくとも前記照射面内に延びる少なくとも1つのピンホール(7)と、前記ピンホール(7)を通過する前記光(4’、4”)の経路内に配置されて前記光(4’、4”)を遮断するように構成された、少なくとも1つの線に沿って光強度分布を感知することが可能な少なくとも1つのスクリーン及び/又は少なくとも1つの位置敏感型検出器システム(8)とを備えることを特徴とする、光学検査装置。
【請求項2】
前記光源(3)が、一次光源(1)によって放出された少なくとも1つの波長の光によって照射される光拡散板の形で提供され、前記一次光源(1)が、空間的に広範な表面を有する発光体の形で提供されることを特徴とする、請求項1に記載の光学検査装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つのスクリーン及び/又は前記少なくとも1つの位置敏感型検出器システム(8)が、検査すべき前記サンプル(5)と実質的に平行に配置されることを特徴とする、請求項2に記載の光学検査装置。
【請求項4】
前記光源(3)が、一次点光源(1)によって少なくとも1つの波長で放出される光の前記経路内に配置されて前記光によって照射されるビーム成形光学手段(12)の平面でない反射表面によって提供されることを特徴とする、請求項1に記載の光学検査装置。
【請求項5】
前記ビーム成形光学手段(12)が前記非平行光(4)に与える歪み効果を少なくとも部分的に補償する少なくとも1つの光学手段(13)が、前記サンプル(5)によって反射される前記光(4’)の経路及び/又は前記サンプル(5)によって透過される前記光(4”)の経路内に配置されることを特徴とする、請求項4に記載の光学検査装置。
【請求項6】
非平行光(4)による前記照射を提供する前記光源(3)の空間的な延長が、前記スクリーン及び/又は前記検出器システム(8)の物理的寸法並びに前記ピンホール(7)と前記検出器システム(8)の間の距離の組合せによって画定される検出円錐角度範囲(11)によって前記光源(3)の位置で切り取られた領域を完全に覆うように選択されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の光学検査装置。
【請求項7】
前記光源(3)から前記サンプル(5)まで延びる前記光路及び前記サンプル(5)から前記位置敏感型検出器システム(8)まで延びる前記光路のうちの少なくとも1つ内に偏光子(9、10)が挿入されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の光学検査装置。
【請求項8】
前記一次光源(1)が単色LEDからなり、所与の波長で発光する前記LEDが同時に発光し、次いで前記発光が、すべての発光波長で、制御された形で次々に発生することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の光学検査装置。
【請求項9】
前記一次光源(1)が多色光源の形で提供され、非平行光(4)による前記照射を提供する前記光源(3)と前記サンプル(5)の間に延びる前記光路内に、音響光学偏向器が配置され又は様々な所与の透過特性の色フィルタが挿入され、前記色フィルタの前記挿入が、制御された形で時間的に交互に行われることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の光学検査装置。
【請求項10】
前記サンプル(5)の前記表面に対する法線と平行な平面内で前記サンプル(5)の前に、非平行光(4)による前記照射を提供する前記光源(3)によって放出される前記光(4)の前記経路内に、少なくとも1つの細長いスリットが挿入され、前記ピンホール(7)と前記検出器システム(8)の間に延びる前記光路内にスペクトル光学分解器が配置され、また前記位置敏感型検出器システム(8)が2次元検出器アレイの形で提供されることを特徴とする、請求項9に記載の光学検査装置。
【請求項11】
前記スペクトル光学分解器が、プリズム、光学格子、及び音響光学偏向器のうちの少なくとも1つによって形成されることを特徴とする、請求項10に記載の光学検査装置。
【請求項12】
前記サンプル(5)が、前記サンプル(5)の平面内で少なくとも1つの線に沿って移動できるように配置されることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の光学検査装置。
【請求項13】
前記検出円錐角度範囲(11)の二等分線(6)上に配置された単一のピンホール(7)を備えることを特徴とする、請求項6に記載の光学検査装置。

【図1】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate


【公表番号】特表2010−528281(P2010−528281A)
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−508914(P2010−508914)
【出願日】平成20年5月23日(2008.5.23)
【国際出願番号】PCT/HU2008/000058
【国際公開番号】WO2008/142468
【国際公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(509323392)
【出願人】(509323406)
【Fターム(参考)】