説明

フィルム洗浄装置

【課題】ドライアイス洗浄時に乱気流の発生を抑えつつ異物の除去が可能なフィルム洗浄装置を提供する。
【解決手段】ロール状に巻かれたウェブフィルムWを巻き出す巻出し装置2と、ウェブフィルムWを液体で洗浄する第1洗浄部31、第2洗浄部33と、洗浄したウェブフィルムWを乾燥する第1乾燥部32、第2乾燥部34と、乾燥したウェブフィルムWに対して気体とともにパウダー状のドライアイスを吹き付ける吹付けノズル41を有し、吹付けノズル41でドライアイスを吹き付けてウェブフィルムWを洗浄するドライアイス洗浄部4と、ドライアイス洗浄したウェブフィルムWをロール状に巻き取る巻取り装置6と、を備え、吹付けノズル41は、ドライアイスの吹付け方向がウェブフィルムの洗浄面に対して斜めに傾けて設置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムを洗浄するフィルム洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
粒状のドライアイスを吹き付けてフィルムに付着した異物を除去する洗浄装置が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特開2008−12387号公報
【特許文献2】特開2006−309158号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ドライアイスの吹付け時の衝撃力や、急激な温度変化、昇華による風圧によりフィルムに付着した異物が除去されるが、吹付けによる乱気流が発生して一旦除去された異物がフィルムに再付着するおそれがある。
【0004】
そこで、本発明はドライアイス洗浄時に乱気流の発生を抑えつつ異物の除去が可能なフィルム洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のフィルム洗浄装置は、ロール状に巻かれたフィルム(W)を巻き出す巻出し部(2)と、前記フィルムを液体で洗浄する洗浄部(31、33)と、洗浄したフィルムを乾燥する乾燥部(32、34)と、乾燥したフィルムに対して気体とともにパウダー状のドライアイスを吹き付ける吹付け部材(41)を有し、前記吹付け部材でドライアイスを吹き付けてフィルムを洗浄するドライアイス洗浄部(4)と、ドライアイス洗浄したフィルムをロール状に巻き取る巻取り部(6)と、を備え、前記吹付け部材は、ドライアイスの吹付け方向が前記フィルムの洗浄面に対して斜めに傾けて設置されていることにより上記課題を解決する。
【0006】
本発明のフィルム洗浄装置によれば、吹付け部材によりパウダー状のドライアイスがフィルムに吹き付けられて、吹付け時の衝撃力、ドライアイスの急激な温度変化及び昇華による風圧により、フィルム表面に付着した異物が除去される。吹付け部材の吹付け方向がフィルムの洗浄面に対して斜めに傾いているので、乱気流の発生が抑制される。従って、乱気流による除去された異物の再付着を低減できる。
【0007】
本発明のフィルム洗浄装置の一形態において、前記吹付け部材の吹付け方向と前記フィルムの洗浄面の接線(T)方向とのなす角度が、15度〜75度の範囲であってもよい。この形態によれば、乱気流の発生を効果的に抑制することができる。
【0008】
本発明のフィルム洗浄装置の一形態において、前記吹付け部材が複数設けられて前記フィルムの幅方向(d)に対して傾いた方向(da)に並び、かつ前記ドライアイスの吹付け方向が前記フィルムの進行方向と同一にならないようにして前記吹付け部材が設置されていてもよい。この形態によれば、ロール状フィルムであってもドライアイス吹付けにより除去する異物を短時間でフィルム端部から落とすことが可能となり、異物の再付着を起こり難くすることができる。
【0009】
本発明のフィルム洗浄装置の一形態において、前記ドライアイス洗浄部には、前記フィルムを挟んで前記吹付け部材と反対の位置に、パウダー状のドライアイスを吹き付ける第2吹付け部材(41b)が設けられていてもよい。この形態によれば、フィルムの表裏面側からドライアイスを吹き付けてフィルムを洗浄することができる。
【0010】
第2吹付け部材を設けた形態において、前記吹付け部材の吹付け方向と前記第2吹付け部材の吹付け方向とが前記フィルムを挟んで対称となるように、前記吹付け部材及び前記第2吹付け部材が設けられていてもよい。この形態によれば、吹付け部材及び第2吹付け部材の吹付け方向がフィルムを挟んで対称となるようにして設けられた場合には、ドライアイスの吹付けにより発生する気流が乱れることなく、乱気流が抑制される。
【0011】
本発明のフィルム洗浄装置の一形態において、前記ドライアイス洗浄部には、前記フィルムを挟んで前記吹付け部材と対向する位置に、前記フィルムを支持する支持部材(42)が設けられていてもよい。この形態によれば、支持部材によって支持されたフィルムに対してドライアイスを吹き付けて、フィルムを洗浄することができる。
【0012】
本発明のフィルム洗浄装置の一形態において、前記ドライアイス洗浄部には、吹付け部材の周囲の空気を吸引する吸引機構が設けられていてもよい。この形態によれば、吸引機構により吹付け部材の周囲の空気を吸引することで、乱気流を抑制することができる。従って、一旦除去された異物が乱気流によって再付着することを防止することができる。
【0013】
本発明のフィルム洗浄装置の一形態において、前記ドライアイス洗浄部には、前記フィルムを除電する除電装置が設けられていてもよい。この形態によれば、除電装置によりフィルムを除電することにより、一旦除去された異物がフィルムの帯電により誘引されることを防止することができる。
【0014】
本発明のフィルム洗浄装置の一形態において、前記フィルムの厚さが20〜200[μm]の範囲にあってもよい。この形態によれば、フィルムに傷等のダメージを付加することなく、また、ロールフィルムの搬送にも支障なく、フィルムに付着した異物を除去することができる。
【0015】
本発明のフィルム洗浄装置の一形態において、前記フィルムが、単一材料、または2種類以上の複合材料からなっていてもよい。この形態によれば、各構成のフィルムを洗浄することができる。
【0016】
なお、以上の説明では本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記したが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0017】
以上、説明したように、本発明のフィルム洗浄装置においては、吹付け部材によりパウダー状のドライアイスがフィルムに吹き付けられて、吹付け時の衝撃力、ドライアイスの急激な温度変化及び昇華による風圧により、フィルム表面に付着した異物が除去される。吹付け部材の吹付け方向がフィルムの洗浄面に対して斜めに傾いているので、乱気流の発生が抑制される。従って、乱気流による除去された異物の再付着を低減できる
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1に本発明の一形態に係るフィルム洗浄装置の概略図を示す。フィルム洗浄装置1は、ロール状のウェブフィルムWを巻き出す巻出し部としての巻出し装置2と、巻き出したウェブフィルムWを超音波で液体洗浄する超音波洗浄部3と、ウェブフィルムWに対して気体とともにパウダー状のドライアイスを吹き付けて洗浄するドライアイス洗浄部4と、ウェブフィルムWの異物、傷等の欠陥の有無を検査する検査部5と、ウェブフィルムをロール状に巻き取る巻取り部としての巻取り装置6とを備えている。巻出し装置2は、ロール状に巻かれたウェブフィルムWを巻き出す。ウェブフィルムWは、ロール状に巻かれた状態で巻出し装置2に供給され、巻出し装置2と巻取り装置6との間を複数のガイドローラに掛け回されて図示しない駆動源により動力を得て搬送される。
【0019】
超音波洗浄部3は、ウェブフィルムWに対して1回目の洗浄をする第1洗浄部31と、第1洗浄部31で洗浄したウェブフィルムWを乾燥する第1乾燥部32と、ウェブフィルムWに対して2回目の洗浄をする第2洗浄部33と、第2洗浄部33で洗浄したウェブフィルムWを乾燥する第2乾燥部34とを備えている。第1洗浄部31には、ウェブフィルムWを洗浄液に浸すための洗浄槽35と、洗浄液に超音波振動を付与する超音波発振器36a、36b(区別しない場合は参照符号36で代表することがある。)とが設けられている。洗浄槽35には、洗浄液が貯留される。第1洗浄部31は、ウェブフィルムWの搬送経路が洗浄槽35内に進入するように構成される。ウェブフィルムWは、洗浄槽35で洗浄液に浸けられる。超音波発振器36aはウェブフィルムWの表面側に、超音波発振器36bはウェブフィルムWの裏面側にそれぞれ設けられる。超音波発振器36として、周知の各種発振器を利用することができる。超音波発振器36は、洗浄液中に超音波を伝播させる。なお、超音波発振器36は、ウェブフィルムWの表面側、あるいは裏面側のいずれか一方に設けられていてもよい。第2洗浄部33は第1洗浄部31と同様の構成であるため、同様の符号を付して説明を省略する。
【0020】
第1洗浄部31及び第2洗浄部33では、ウェブフィルムWに対して超音波洗浄が行われる。超音波洗浄は、キャビテーション効果及び加速度効果の二種類の効果により洗浄作用が得られる。キャビテーション効果とは、超音波により液体に生じた真空の気泡が破裂することによる衝撃波を利用した洗浄効果のことである。洗浄液に超音波を照射すると、洗浄液が激しく揺さぶられ、局所的に無数の高圧力領域と低圧力領域とが生じ、低圧力領域では小さな真空の空洞が発生する。この空洞がキャビテーションで、再び圧力が高くなってキャビテーションが押しつぶされるとき、洗浄液中に衝撃波を発生させる。この衝撃波が、ウェブフィルムWに付着した異物を剥離させる。また、超音波の振動加速度が速いため、加速度による効果としてウェブフィルムWから異物を振り切り離す効果がある。例えば、28[kHz]の超音波で1000[G]の加速度が発生する。
【0021】
第1洗浄部31では、100[kHz]未満の周波数の超音波が設定される。第2洗浄部33では、100[kHz]以上の周波数の超音波が設定される。第1洗浄部31では、一例として、周波数が28〜50[kHz]の範囲となる低周波の超音波を洗浄液に照射する。キャビテーション効果を利用して、比較的大きな異物が除去されて、ウェブフィルムWが洗浄される。一方、第2洗浄部33では、一例として、周波数が120〜2000[kHz]の範囲となる高周波を洗浄液に照射する。これにより、キャビテーションの発生がほとんどなく、振動加速度によるウェブフィルムWへの傷等のダメージが加えられることがない。よって、微細な異物までも除去することが可能となる。また、第1洗浄部31及び第2洗浄部33の洗浄液の温度は、10〜80[℃]の範囲で設定され、特に、20〜50[℃]の範囲で設定されることが好ましい。これにより、フィルムに負担を付加することなく洗浄することができる。第1洗浄部31及び第2洗浄部33の超音波のエネルギー出力は、0.5〜10[W/cm]の範囲に設定されていることが好ましい。これによれば、ウェブフィルムWに傷等のダメージを付加することなく、ウェブフィルムWに付着した異物を除去することができる。0.5[W/cm]未満であると十分に異物除去することができず、10[W/cm]を超えるとウェブフィルムWに傷が入り易くなる。
【0022】
第1洗浄部31及び第2洗浄部33の洗浄時間の合計は、60秒〜30分の範囲に設定され、特に、60秒〜20分の範囲に設定されることが好ましい。一例として、第1洗浄部31の洗浄時間は30秒〜15分の範囲に設定し、第2洗浄部33の洗浄時間は30秒〜30分の範囲に設定する。ウェブフィルムWの厚さが20〜200[μm]の範囲に設定されていることが好ましい。これにより、ウェブフィルムWに傷等のダメージを付加することなく、また、ロールフィルムの搬送にも支障なく、ウェブフィルムWに付着した異物を除去することができる。20[μm]未満の厚さであるとウェブフィルムWに傷が入り易く、特にピンホール及びフィルム中の気泡などの欠陥がある場合は、そこをきっかけとしてウェブフィルムWが破断する恐れが高くなる。一方、200[μm]を超える厚さとなると経験的にウェブフィルムWの表裏面で洗浄度の違いが確認されている。なお、洗浄液として、水、有機溶剤、洗浄剤、界面活性剤等を利用することができ、特に、純水、イソプロピルアルコール、酢酸ブチル、エタノール等のアルコール系や、アルカリ性洗浄剤を利用することが好ましい。例えば、第1洗浄部31では洗浄液としてアルカリ性洗浄剤等の薬剤が使用された洗浄工程が、第2洗浄部33では洗浄液として純水が使用されたリンス工程が実施される。溶解度パラメータについては、特許文献3にも記載されているが、理論上は異物と洗浄液との値を近づけるのが好ましい。しかしながらウェブフィルムW上の異物としては埃、繊維、フィルム粕、オイルミストなど様々が確認されており、各異物に溶解度パラメータが合った洗浄液を適用するのは実用的ではない。本発明者らは鋭意検討した結果、超音波発振器36a、36bがウェブフィルムWの両面に設けられ、超音波発振器36a、36bがそれぞれ同出力、同周波数を有し、且つ同期させることで、洗浄液の溶解度パラメータの適正範囲を広げられることを確認した。すなわち、本発明の形態によれば、溶解度パラメータが50(MPa)1/2以下の洗浄液であれば洗浄剤として十分適用できる。
【0023】
ウェブフィルムWの密度が1.00〜2.10[g/cm]の範囲に設定されていることが好ましい。これにより、ウェブフィルムWに傷等のダメージを付加することなく、ウェブフィルムWに付着した異物を除去することができる。密度が1.00〜2.10[g/cm]の範囲にあるウェブフィルムWには、例えばポリエステルフィルム(密度1.40)、ポリエチレンナフレタートフィルム(密度1.38)、延伸硬質塩ビフィルム(密度1.40)、ポリカーボネートフィルム(密度1.20)、トリアセテートフィルム(密度1.30)、ポリイミドフィルム(密度1.43)、ポリスチレンフィルム(密度1.03)、アクリルフィルム(密度1.19)、ナイロンフィルム(密度1.1)、フェノールフィルム(密度1.3)、エポキシフィルム(密度1.17)、ガラスとアクリルフィルムの1対1複合フィルム(密度1.8)、などが挙げられる。ウェブフィルムWの密度が1.00[g/cm]未満であると洗浄工程において溶媒に対してフィルムが浮くために浸漬洗浄には適さない。2.10[g/cm]を超えると、この場合はガラスなどの無機材料の複合割合が高い高分子複合材料に相当し、洗浄工程において高分子複合材料から無機材料の剥離が起こり易くなる。
【0024】
第1乾燥部32は、エアナイフ室32aと、エアナイフ室32a内に設けられ、ウェブフィルムWの表面及び裏面に設けられたエアナイフ32bとを有する。エアナイフ室32aは、独立して設置されている。エアナイフ32bは、エアの噴射口が互いに対向するようにして設置され、同程度の圧力で同時にエアを噴射する。このエアは除塵されている。これにより、大気中からの異物の再付着を防ぐことができる。エアナイフ室32aに設けられたエアナイフ34bから噴射されるエアがウェブフィルムWと接触する噴射領域がウェブフィルムWの幅方向に対して傾いて形成されている。図2に、ウェブフィルムWとエアナイフ32bとの位置関係を示す。図2は、ウェブフィルムWの上面から第1乾燥部32を見た図である。ウェブフィルムWの幅方向dに対してエアナイフ32bの長軸方向が傾いているため、エアナイフ32bがエアを噴射する噴射領域がウェブフィルムWの幅方向dに対して傾いている。これにより、ウェブフィルムWのようにロール状フィルムであってもエアナイフ32bで切った水を短時間でフィルム端部から落とすことが可能となり、水跡が残り難くすることができる。第2乾燥部34も第1乾燥部32と同様にして構成される。ウェブフィルムWの両面から均一に水分が除去されるには、液面から垂直にウェブフィルムWが引き上げられていることが好ましい。
【0025】
第1洗浄部31及び第2洗浄部33には、洗浄液循環手段があってもよい。洗浄液循環手段は、第1及び第2洗浄部31、33における洗浄液を回収し、再利用するもので、例えば洗浄部下方に設置したドレインパイプから洗浄液を洗浄タンクに集め、フィルターで濾過して送液ポンプにより再度洗浄部へ供給する方法が考えられる。フィルターは、洗浄液中の固形分や油分、汚れ分を分離するもので、例えば、繊維状あるいは中空繊維状タイプのフィルターを例示することができる。送液ポンプは、耐薬品性があることが好ましく、プランジャーポンプ、ダイヤフラムポンプ等を例示することができる。
【0026】
ドライアイス洗浄部4には、気体とともにパウダー状のドライアイスを吹き付ける吹付け部材としての吹付けノズル41aと、第2吹付け部材としての吹付けノズル41bと、が設けられている。吹付けノズル41a、41b(参照符号41で代表することがある。)は、同様の構成を有する部材で、ウェブフィルムWを挟んで吹付けノズル41aと反対の位置に吹付けノズル41bが設けられている。吹付けノズル41は、ペンシル型のノズルで、気体とともにパウダー状のドライアイスをウェブフィルムWに対して吹き付ける。なお、吹付け圧力は、0.1〜1.0[MPa]の範囲で使用され、特に、0.05〜0.5[MPa]の範囲で使用されることが好ましい。
【0027】
図3にウェブフィルムWの側方から見た吹付けノズル41とウェブフィルムWとの位置関係を示す。吹付けノズル41によるドライアイスの吹付け角度は、ウェブフィルムWの洗浄面の接線方向と吹付けノズル41の吹付け方向とのなす角度が15〜75度の範囲に設定され、特に、35〜65度の範囲が好ましい。吹付け角度が15度未満となると、吹付けによる衝撃力が不足し、十分な洗浄効果が得られない。一方、吹付け角度が75度を越えると、噴射されたドライアイスがウェブフィルムWの洗浄面に衝突することで生じる乱気流の程度が大きく、一旦除去された異物が再付着するおそれがある。なお、吹付けノズル41a、41bは、ウェブフィルムWの搬送方向下流側及び上流側のいずれの側に傾けてもよく、各ノズル41a、41bの吹付け角度は、15〜75度の範囲であれば、個別に設定してもよい。各ノズル41a、41bの吹付け方向は共に天井方向、床方向のいずれでも良いが、床方向の方が除去した異物の舞い上がりが少なく、異物の再付着を低減できるため好ましい。各ノズル41a、41bの吹付け方向がウェブフィルムWに対して対称となるように各ノズル41a、41bが設けられていてもよい。
【0028】
図4に、ウェブフィルムWのフィルム面側から見た吹付けノズル41とウェブフィルムWとの位置関係を示す。吹付けノズル41a、41bは、それぞれ、ウェブフィルムWの幅方向dに対して傾いた並び方向daに並んでいる。つまり、一対の吹付けノズル41a、41bが並び方向daに複数設けられている。ウェブフィルムWの幅方向dに対して吹付けノズル41の並び方向daが傾いているため、ウェブフィルムWのようにロール状フィルムであってもドライアイス吹付けにより除去した異物を時間でフィルム端部から落とすことが可能となり、異物の再付着を起こり難くすることができる。更に、吹付けノズル41はウェブフィルムWの幅方向dに揺動することが好ましく、これによりフィルム全面にドライアイスを均一に吹き付けることができる。
【0029】
ドライアイス洗浄部4では、高圧の液化炭酸ガスを自由膨張させることにより生成したパウダー状のドライアイスを、圧縮空気又は窒素ガスを利用したアシストガスにより加速させてウェブフィルムWに吹き付ける。なお、ドライアイスは、0.02〜1.0[mm]の範囲の粒径のものが使用され、特に、50〜500[μm]の範囲の粒径が好ましい。液化炭酸ガスの流量は、20〜500[g/min]の範囲で使用され、特に、50〜300[g/min]の範囲で使用されることが好ましい。アシストガスの流量は、10〜900[L/min]の範囲で使用され、特に、50〜400[L/min]の範囲で使用されることが好ましい。
【0030】
ドライアイス洗浄部4は、アシストガスを加熱するヒーターを有していてもよい。ヒーターによりアシストガスの温度をコントロールすることができる。加熱したアシストガスをドライアイスとともにウェブフィルムWに吹き付けることで、吹付けノズル41a、41bの吐出口の結露を防止し、かつウェブフィルムWの温度低下によるダメージを低減することが可能となる。なお、アシストガスの温度は、20〜80[℃]の範囲で使用され、特に、25〜65[℃]の範囲で使用されることが好ましい。
【0031】
ドライアイスは、ウェブフィルムWに接触すると、固体から気体に昇華する。その際の体積膨張により約5.27[kgf/cm]の圧力が発生することにより強力な洗浄効果が得られる。このため、ドライアイスによる傷が生じることなくウェブフィルムWは洗浄される。一方、ウェブフィルムWの異物に対しては急激な冷却作用が生じるため、ウェブフィルムWから剥がれやすくなり、洗浄の効果が高まる。ドライアイス洗浄部4は、吹付けノズル41の周辺に空気を吸引する吸引機構を設けてもよい。ドライアイスの吹付けや昇華による風圧が乱気流の原因となるため、吸引機構により吹付けノズル41の周囲の空気を吸引することで、乱気流を抑制することができる。従って、一旦除去された異物が乱気流によって再付着することを防止することができる。吸引機構は、吹付けノズル41の下方位置に設けてもよい。また、ドライアイス洗浄部4は、ウェブフィルムWを除電する除電装置を設けてもよい。除電することにより、一旦除去された異物がウェブフィルムWの帯電により誘引されることを防止することができる。なお、除電装置としては、電圧印加式の除電装置が好ましく、一例として、Richmond Static Control Services Inc.製のPulser Flow Controller PFC−20(商標)を利用することができる。
【0032】
ドライアイス洗浄部4はフィルム乾燥部としても使用してもよい。フィルムに対して気体とともにパウダー状のドライアイスを吹き付けることにより、フィルム表面の水分をドライアイスによって氷にし、吹き飛ばすことができる。更に、常温による水分除去が可能であるため、熱乾燥によるフィルムの変形、変質を防ぐことができる。
【0033】
検査部5には、CCDセンサが設けられている。CCDセンサにより、ウェブフィルムWの異物や傷等の欠陥の有無が検査される。巻取り装置6は、ウェブフィルムWをロール状に巻き取る。
【0034】
フィルム洗浄装置1の動作を説明する。ウェブフィルムWは、巻出し装置2から巻き出されて第1洗浄部31に搬送される。ウェブフィルムWは、洗浄層35に浸けられて超音波洗浄される。ウェブフィルムWは超音波発振器36a、36bにより、表裏面側からそれぞれ超音波が発振されて洗浄される。第1洗浄部31では、100[kHz]未満の周波数の超音波が使用される。最初の洗浄工程が異物除去効果の高い低周波の超音波洗浄工程であるため、第1洗浄部31では大きな異物が取り除かれる。洗浄後は第1乾燥部32で、エアナイフ32bにより高圧のエアを帯状に噴射し、ウェブフィルムWの水切りをする。エアナイフ32bのエアの噴射領域が、ウェブフィルムWの幅方向dに対して傾いて形成されているので、ウェブフィルムWのようにロール状フィルムであってもエアナイフ32bで切った水を短時間でフィルム端部から落とすことが可能となり、水跡を残り難くすることができる。
【0035】
次に、第2洗浄部33にて、100[kHz]以上の周波数の超音波による洗浄工程が実施される。第1洗浄部31で大きな異物が除去されているので、第2洗浄部33では、小さな異物が除去されることにより、十分な洗浄効果を得ることができる。第1洗浄部31及び第2洗浄部33での洗浄工程の合計時間が60秒から30分の範囲に設定することで、第1洗浄部31の洗浄時間を短く設定しても第2洗浄部33による洗浄で異物を十分に除去することができる。従って、合計した洗浄時間が60秒以上であっても、ウェブフィルムWに対して洗浄による傷等のダメージはない。また、第1洗浄部31及び第2洗浄部33の超音波発振器36とウェブフィルムWとの距離をW、洗浄液中での超音波速度をU、かつ1000[m/s]<U<2000[m/s]とし、第1洗浄部31及び第2洗浄部33における超音波周波数をH、正の整数n、としたときに、式W=U÷H×nを満たすようにしてもよい。Uは超音波周波数や洗浄液の種類、温度により範囲をもつ。上記式の意味するところは、超音波発振器36とウェブフィルムWとの距離は超音波一波長の整数倍であることであり、実験によると、まだ理論的には説明できないが、結果として波長の整数倍にある試料はよく汚れが落ちることが確認できている。
【0036】
第2乾燥部34で第1乾燥部32と同様に水切りした後、ウェブフィルムWは、ドライアイス洗浄部4に搬送される。ドライアイス洗浄部4では、第1洗浄部31及び第2洗浄部33で除去されずに残留した異物に対して、パウダー状のドライアイスが衝突することにより、それら異物が除去される。吹付けノズル41a、41bが、それぞれウェブフィルムWの表裏面側から同程度の強さでドライアイスを吹き付ける。吹付けノズル41a、41bの吹付け角度は、ウェブフィルムWの洗浄面の法線方向に対して15〜75度の範囲に設定されているので、ドライアイスの吹付けや昇華による風圧により生じる乱気流の発生を抑えることができる。従って、一旦除去された異物の乱気流による再付着を低減することができる。また、吹付けノズル41a、41bは、ウェブフィルムWの表面及び裏面のそれぞれに複数設けられてウェブフィルムWの幅方向dに対して傾いた並び方向daに並んでいるので、ウェブフィルムWのようにロール状フィルムであってもドライアイス吹付けにより除去した異物を時間でフィルム端部から落とすことが可能となり、異物の再付着を起こり難くすることができる。ドライアイス洗浄により、フィルム乾燥効果も得られる。ウェブフィルムWに対して気体とともにパウダー状のドライアイスを吹き付けることにより、フィルム表面の水分をドライアイスによって氷にし、吹き飛ばすことができる。更に、常温による水分除去が可能であるため、熱乾燥によるフィルムの変形、変質を防ぐことができる。吹付けノズル41がウェブフィルムWの幅方向dに揺動することで、ウェブフィルムW全面にドライアイスを均一に吹き付けることができる。
【0037】
検査部5では、CCDセンサによるウェブフィルムWの欠陥の有無が検査される。フィルム洗浄装置1には、ラベラが設けられていてもよく、欠陥が検出された場合には、ラベラにより欠陥のある箇所を示すようにウェブフィルムWにラベルが貼られる。これにより、次工程で欠陥のある箇所を避けてウェブフィルムWを処理することができる。その後、ウェブフィルムWは巻取り装置6によりロール状に巻き取られる。
【0038】
本発明は、上述した形態に限定されることなく、種々の形態にて実施することができる。例えば、本形態では、吹付けノズル41a、41bを2つ設置した例で説明したが、吹付けノズルは1つであってもよい。図5に吹付けノズル41の設置に係る変形例の概略図を示す。変形例に係る吹付けノズル41cは、吹付けノズル41a、41bと同様の構成のノズルで、吹付けノズル41cに対向する位置には、ウェブフィルムWを支持する支持部材としての支持ロール42が設けられている。支持ロール42により裏面側からウェブフィルムWが支持され、吹付けノズル41cによるドライアイス洗浄が行われる。この場合においてもウェブフィルムWの洗浄面の接線方向Tと吹付けノズル41cの吹付け方向とのなす角度が15〜75度の範囲に設定され、特に、35〜65度の範囲が好ましい。ドライアイスの吹付けや昇華による風圧により生じる乱気流の発生を抑えることができる。従って、一旦除去された異物の乱気流による再付着を低減することができる。なお、支持部材として支持ロール42の他に、ガイド等用いてもよい。また、支持ロール42の軸線方向に沿って並ぶように複数の吹付けノズル41cを設けてもよい。
【0039】
2種類以上の複合材料からなるウェブフィルムWとしては、例えば、多官能アクリレート樹脂をガラス繊維に含浸した後に紫外線硬化装置により連続的に硬化して得られる複合フィルムや、単一材料からなるフィルムの少なくとも片面に膜厚30〜100[nm]のSiOxやITOなどの成膜を行った積層フィルムが挙げられる。これら複合材料からなるウェブフィルムWの場合は、ガラスや無機膜が含まれているため、単一材料からなるフィルムと比較し、脆い欠点があり、特にフィルム厚さ方向の力により傷が入り易い。超音波洗浄やドライアイス洗浄はまさにフィルム厚さ方向の力がかかる洗浄である。本発明によれば、超音波周波数、超音波エネルギー、洗浄時間、フィルム膜厚、を適切な範囲に設定するため、フィルムへの負担低減と異物除去が可能となり、これら複合材料からなるフィルムの場合でも、問題なく傷なく洗浄することができる。吹付けノズル41は、ウェブフィルムWの幅に応じて、単数あるいは複数個を適宜の間隔で設けてよい。吹付けノズル41の並び方向daがウェブフィルムWの幅方向dに対して傾いている例で説明したが、並び方向daが幅方向dと平行であってもよい。
【実施例】
【0040】
図6に示す表を参照して、本形態のフィルム洗浄装置1の実施例について説明する。図6は、実施例の評価結果を示す表Taである。ウェブフィルムWには単一材料からなる100[μm]厚さのポリエステルフィルム(品名:コスモシャインA4300,メーカー:東洋紡績(株))を用い、洗浄液にはアルカリ洗浄液3wt%(品名:セミコクリーン23、メーカー:フルウチ化学(株))を用いた。実施例1〜5では、第1洗浄部31での洗浄における超音波の周波数を40[kHz]に設定し、第2洗浄部33での洗浄における超音波の周波数を140[kHz]に設定してウェブフィルムWの洗浄処理を行った。第1洗浄部31及び第2洗浄部33での合計洗浄時間は、実施例1〜5でそれぞれ90秒、18分、10分、10分、10分とし、ドライアイス洗浄部4での吹付けノズル41の吹付け角度は、実施例1〜3ではドライアイスの吹付けなし、実施例4では30度、実施例5では70度にそれぞれ設定してドライアイスによる洗浄を行った。比較例1は、第1洗浄部31での洗浄における超音波の周波数を40[kHz]に設定し、第1洗浄部31のみで洗浄を10分間行い、比較例2は、第2洗浄部33での洗浄における超音波の周波数を140[kHz]に設定し、第2洗浄部33のみで洗浄を10分間行い、それぞれ、ドライアイスによる洗浄は行わなかった。比較例3は、第1洗浄部31での洗浄における超音波の周波数を40[kHz]に設定し、第2洗浄部33での洗浄における超音波の周波数を140[kHz]に設定して、第1洗浄部31及び第2洗浄部33での合計洗浄時間を10分、ドライアイスの吹付け角度を90度に設定してドライアイスによる洗浄を行った。
【0041】
[評価方法]
異物個数:各実施例及び比較例における洗浄工程終了後のウェブフィルムWを異物検出器(品名:SCANTEC7000C2sys2、メーカー:長瀬産業(株))に通して検査を行い、300×300[mm]面積あたりの15[μm]以上の埃、繊維、フィルム片等の異物を計数した。
ウェブフィルムWの傷:投光器を用いた目視による傷を確認した。
【0042】
比較例1によると、低周波による洗浄のみの場合には、残った異物の数は少ないが傷が発生した。比較例2は高周波による洗浄のみのため、残った異物の数が多く、洗浄が十分になされていない可能性がある。比較例1、2と比べると、実施例1〜3は、良好に洗浄が行われていることがわかる。低周波と高周波の超音波洗浄を組み合わせることで、60秒以上の洗浄時間であっても傷の発生がなく、しかも良好に異物を除去することができる。
【0043】
比較例3は、ドライアイス洗浄部4の吹付けノズル41の吹付け角度が90度、つまり、ウェブフィルムWに対して直角にドライアイスを吹き付けた場合で、残った異物の数が多く、傷も発生している。吹付けによる乱気流の影響が大きく、一旦除去された異物が再付着して、その際に傷も発生しているものと考えられる。実施例4、5では、乱気流の発生が抑えられ、良好に異物が除去されている。ドライアイスを吹き付けない実施例3と比べても、残った異物の個数が少なく、ドライアイス洗浄により、良好に異物が除去されていることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一形態に係るフィルム洗浄装置の概略図。
【図2】ウェブフィルムとエアナイフとの位置関係を説明する図。
【図3】ウェブフィルムの側方から見た吹付けノズルとウェブフィルムとの位置関係を説明する図。
【図4】ウェブフィルムのフィルム面側から見た吹付けノズルとウェブフィルムとの位置関係を説明する図。
【図5】吹付けノズルの設置に係る変形例の概略図。
【図6】実施例の評価結果を示す表。
【符号の説明】
【0045】
1 フィルム洗浄装置
2 巻出し装置(巻出し部)
3 超音波洗浄部(洗浄部)
4 ドライアイス洗浄部
6 巻取り装置(巻取り部)
41a、41c 吹付けノズル(吹付け部材)
41b 吹付けノズル(第2吹付け部材)
W ウェブフィルム(フィルム)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール状に巻かれたフィルムを巻き出す巻出し部と、前記フィルムを液体で洗浄する洗浄部と、洗浄したフィルムを乾燥する乾燥部と、乾燥したフィルムに対して気体とともにパウダー状のドライアイスを吹き付ける吹付け部材を有し、前記吹付け部材でドライアイスを吹き付けてフィルムを洗浄するドライアイス洗浄部と、ドライアイス洗浄したフィルムをロール状に巻き取る巻取り部と、を備え、
前記吹付け部材は、ドライアイスの吹付け方向が前記フィルムの洗浄面に対して斜めに傾けて設置されていることを特徴とするフィルム洗浄装置。
【請求項2】
前記吹付け部材の吹付け方向と前記フィルムの洗浄面の接線方向とのなす角度が、15度〜75度の範囲であることを特徴とする請求項1に記載のフィルム洗浄装置。
【請求項3】
前記吹付け部材が複数設けられて前記フィルムの幅方向に対して傾いた方向に並び、かつ前記ドライアイスの吹付け方向が前記フィルムの進行方向と同一にならないようにして前記吹付け部材が設置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のフィルム洗浄装置。
【請求項4】
前記ドライアイス洗浄部には、前記フィルムを挟んで前記吹付け部材と反対の位置に、パウダー状のドライアイスを吹き付ける第2吹付け部材が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のフィルム洗浄装置。
【請求項5】
前記吹付け部材の吹付け方向と前記第2吹付け部材の吹付け方向とが前記フィルムを挟んで対称となるように、前記吹付け部材及び前記第2吹付け部材が設けられていることを特徴とする請求項4に記載のフィルム洗浄装置。
【請求項6】
前記ドライアイス洗浄部には、前記フィルムを挟んで前記吹付け部材と対向する位置に、前記フィルムを支持する支持部材が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のフィルム洗浄装置。
【請求項7】
前記ドライアイス洗浄部には、吹付け部材の周囲の空気を吸引する吸引機構が設けられていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のフィルム洗浄装置。
【請求項8】
前記ドライアイス洗浄部には、前記フィルムを除電する除電装置が設けられていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のフィルム洗浄装置。
【請求項9】
前記フィルムの厚さが20〜200[μm]の範囲にあることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のフィルム洗浄装置。
【請求項10】
前記フィルムが、単一材料、または2種類以上の複合材料からなることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載のフィルム洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−291678(P2009−291678A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−145555(P2008−145555)
【出願日】平成20年6月3日(2008.6.3)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】