説明

フラッシュメモリ劣化判定装置およびフラッシュメモリの劣化判定方法

【課題】
装置に組み込まれた実運用中のフラッシュメモリの劣化状況を自動で定期的に判定し、継続使用の有無を判断することで、劣化による装置故障を未然に防ぐことを目的とする。
【解決手段】フラッシュメモリの書換え動作を繰り返すことで劣化し、データの消去時間が長くなることを利用し劣化を判定する。電源電圧値によっても消去時間は変化するため、電圧を推奨範囲内で変動させながら、初期化した実運用メモリの消去時間を各電圧値で測定する。この測定を自動で定期的に行ない、劣化有りと判定された場合はコントローラへアラームを挙げる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラッシュメモリ劣化判定装置およびフラッシュメモリの劣化判定方法に係り、オンボード上で使用しているフラッシュメモリの劣化状況を判断するフラッシュメモリ劣化判定装置およびフラッシュメモリの劣化判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フラッシュメモリは、不揮発性の半導体メモリである。フラッシュメモリは、現在ではパソコンや携帯電話から交換機や伝送装置、サーバやルータに至るまで様々な情報通信装置に使用されている。フラッシュメモリのメモリセルは、N−MOSトランジスタのゲート下部に薄い絶縁酸化膜で覆われたフローティングゲートを有する。フラッシュメモリは、フローティングゲートに電荷をチャージ/ディスチャージすることによってデータを保持する。フローティングゲートは、絶縁されていることから電源を切っても電荷を保持し続けることができる。
【0003】
フラッシュメモリは、使用前に全メモリセルを消去(論理値として0に)しておく必要があり、全フローティングゲートに電荷がチャージされていない(ディスチャージ)状態としておく。電荷をディスチャージするためには、ゲートを低電位とし、Pウェル(シリコン基板側)に高電圧を印加することでフローティングゲートにチャージされている電荷を抜く。
【0004】
書き込み動作は、論理値が0のデータを書き込む場合には既にフローティングゲートの電荷はディスチャージされているため何も行なわれない。論理値1を書き込む場合にはゲートとドレインに高電圧を印加することでフローティングゲートに電荷をチャージする。
【0005】
一方、読み出し動作時は、ゲートに電圧(書き込み時に比較し十分低い)を印加した時にドレイン側に流れる電流により、論理値を判断する。フローティングゲートに電荷がチャージされている場合、電流が流れず論理値1と判断できる。逆に電荷がチャージされていない場合、電流が流れるため論理値0と判断できる。
【0006】
フラッシュメモリの動作において、消去および書き込み時にメモリセルに高電圧が印加されるため、繰り返しの動作により絶縁酸化膜が劣化してしまう。このため、繰り返しの動作により、正しい論理値を保持することができなくなってしまう。そのため、書換え回数に制限が設けられている。
【0007】
近年では、微細化の技術によって、フラッシュメモリの集積度は向上している。しかし、一方で絶縁酸化膜の薄膜化により書換え回数制限が低下しており、装置の寿命に影響を及ぼしている。
【0008】
この劣化による寿命低下を事前に予測する方法として特許文献1では、メモリセルの絶縁酸化膜が劣化することによってデータ消去時間が長くなる特性を利用し、セクタの消去時間から劣化を判定している。この判定方法は、特許文献1の第2図のフローチャートによる。測定された消去時間とテーブルデータに保存されている前回までで最も短かった消去時間を比較し、保存されている消去時間より短かった場合、保存している消去時間が更新される。逆にその保存されている消去時間より長く、その差が基準値を越えている場合は劣化と判断される。さらに、テスト時は別セクタの消去時間も測定し、セクタ間の消去時間の差が基準値を越えている場合でも劣化と判断し警告を出す。
【0009】
また、特許文献2においては、同様にセクタの消去時間から劣化を判定しており、セクタの消去時間が判断基準値より長い場合は他のセクタを使用するように指示する。特許文献2は、最大の劣化状態にある時の消去時間に達した場合アラームを挙げる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−267761号公報
【特許文献2】特開平11−297079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
フラッシュメモリは、装置の寿命を決定付けてしまう部品の一つである。フラッシュメモリを繰り返し書換えることによるメモリセルの劣化が原因で、装置に不具合を発生させてしまうことがある。そのため、どのフラッシュメモリメーカでも書換え回数を制限している。しかし、書換え回数を超えた使い方をした場合や部品自体に欠陥があり寿命が早まってしまった場合、前もって検出することができない。したがって、書換え回数からだけでは、誤った寿命判定をしてしまう虞がある。高信頼化、長寿命化する装置は、より正確にフラッシュメモリの寿命を判断する必要がある。現実問題として、書換え回数を管理することは装置にとって負担であり、ほとんどの場合、装置毎のフラッシュメモリの使い方をもとに書換え回数を見積もって使っている。装置を延命させた場合やフラッシュメモリの使い方(アクセス頻度など)を途中で変更した場合、当初の見積もりよりも書換え回数が増えてしまうことがある。すなわち、フラッシュメモリ劣化による事故につながりかねない。特許文献1で用いられている寿命を消去時間で判断する方法の場合、消去するために印加する電圧の値によって消去時間が変動してしまう。つまり、電圧値を一定にして測定しない方法では測定バラつきが大きく、その結果から寿命を判断することは危険である。
【0012】
また、フラッシュメモリは、書換えを行なうにつれて消去時間は長くなっていく。しかし、劣化が進行していない状態であっても、フラッシュメモリの全領域を均一にはアクセスしていないため測定結果はバラついてしまう。消去時間が長くなる方向にバラついた場合、劣化有りと誤判定してしまう可能性がある。逆に劣化が進行している場合においても、消去時間が短くなる方向にバラついた場合、劣化を検出することができない。
【0013】
図1を参照して、書換え回数と消去時間の関係を説明する。図1において、横軸は書き換え回数、縦軸はセクタ当たりの消去時間(秒)である。左から5番目の測定のように、平均値的には劣化していない領域であっても、測定バラつきにより消去時間が大きく見えてしまう場合がある。
【0014】
特許文献1は、前回まで測定した中での最小消去時間と今回測定した時間との差分を基準値と比較して劣化を検出する手法である。しかし、消去時間は個体差があるため基準値を決めることは困難である。さらに、前回まで測定した中での最小消去時間が非常に長く、装置で定めている消去時間の限度値に近かった場合、限度値を超えてしまっても差分が小さいため劣化を検出できない可能性がある。
【0015】
一方、特許文献2では、最大の劣化状態にある時の消去時間に達した場合アラームを挙げる。しかし、この手法は、限度値へ達しなければ劣化と判定しないため、劣化の進行状況を事前に検出することができない。図1に示す通り、劣化が始まると急激に消去時間が増加するため、未然に劣化の兆候を検出する必要がある。
【0016】
本発明は、上記の課題を解決するためにフラッシュメモリの電源電圧を制御し、複数の電圧ポイントで消去時間を測定することにより、より精度を高く劣化を判定する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記の課題を解決するため、本発明では、劣化判定対象である不揮発性の実運用メモリとそのメモリを制御するコントローラ、メモリに電源を供給する電源供給部より構成され、それらを用いて実運用メモリのデータ消去時間を測定し劣化有無を判定する。
【0018】
まず、劣化テストを実施する前に、予め「劣化判定基準値」と「限度値」の2つの値を設定する(劣化判定基準値と限度値を総称して「基準値」とする)。「劣化判定基準値」では、今回と前回との消去時間の測定値の差分(消去時間増加方向をプラス)について、許容できる最大値として設定する。劣化判定基準値により、劣化の兆候をとらえることができ、劣化しきってしまい装置に障害が発生する前に劣化が始まったことを知ることができるため、未然に障害を防止できる。「限度値」は、メモリを使用する装置として許容できる最大の消去時間を設定する。限度値を設定することで、劣化判定基準値をすり抜けてしまうような緩やかな劣化に対しても、劣化を判定することができる。
【0019】
測定する際、メモリに印加する電圧をメモリの動作保証範囲内で最小値から最大値まで一定刻みで印加させ、それぞれの電圧値での消去時間を測定する。そして複数回測定した消去時間の平均値を算出し、その値を「測定値」とする。その測定値と前回の劣化テストで得た測定値との差分を算出し、その差分と劣化判定基準値を比較する。比較の結果、測定値の差分が劣化判定基準値より小さい場合は、次に測定値と限度値を比較し、測定値の方が小さい場合は劣化無しと判断し、1回のテストを終了する。その他の場合は劣化有りと判断し、アラームを挙げる。また、初回テスト時は、前回の測定値が存在しないので、限度値を利用した測定方法のみで劣化の有無を判断する。また、この一連の動作を実運用中に自動で定期的に実施する。
【0020】
上述した課題は、フラッシュメモリの内容を一時的に保持するメモリと、フラッシュメモリの消去時間を測定する測定部と、この測定部の測定結果から前回の測定結果を減算して第1の基準値と比較し、さらに測定結果と第2の基準値とを比較する比較部と、この比較部の比較結果に基づいてフラッシュメモリの劣化を判断する制御部とからなるフラッシュメモリ劣化判定装置により、達成できる。
【0021】
また、フラッシュメモリの内容を一時的にメモリにコピーするステップと、フラッシュメモリの入力電圧を変えながら、フラッシュメモリの消去時間を測定するステップと、消去時間の平均値を演算するステップと、平均値から前回の平均値を減算して第1の基準値と比較する第1の比較ステップと、平均値と第2の基準値とを比較する第2の比較ステップと、第1の比較ステップと第2の比較ステップの比較結果に基づいてフラッシュメモリの劣化を判断するステップとからなるフラッシュメモリの劣化判定方法により、達成できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明では、消去時間を測定し「劣化判定基準値」と「限度値」の2段階で比較し判定を行なう。劣化が急速に進んだ場合は、前回のテストとの差分が大きくなることから「劣化判定基準値」で検出でき、緩やかに劣化が進む場合においても消去時間の「限度値」に達した際に劣化を検出できることから、様々な劣化の進行に対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】書き換え回数と消去時間の関係を示すグラフである。
【図2】センター側装置のブロック図である。
【図3】劣化テストを実施する回路構成である。
【図4】コントローラの処理ブロック図である。
【図5】実運用メモリの劣化判定のフローチャートである。
【図6】電圧を変化させながら測定するフローチャートである。
【図7】劣化判定のフローチャートである。
【図8】PLDを用いた劣化テストを実施する回路構成である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、実施例を用い図面を参照しながら詳細に説明する。なお、実質同一部位には同じ参照番号を振り、説明は繰り返さない。
【0025】
図2を参照して、光アクセスシステムのセンター側装置の構成を説明する。図2において、センター側装置200は、複数のインターフェース盤209と、バックボード210と、コントロール盤211と、スイッチ盤212とから構成される。インターフェース盤209は、主信号処理部201と、電源供給部202と、制御部204と、外部出力部205と、表示部206と、FROM(Flash Read Only Memory)207と、光モジュール208とから構成される。制御部204は、コントローラ203を含む。センター側装置200は、コンソール213と接続されている。なお、コントローラ203は、制御部204と独立であってもよい。
【0026】
スイッチ盤212とコントロール盤211および複数枚のインターフェース盤209は、バックボード210を介して接続されている。コントロール盤211は、装置外部のコンソール213と繋がっている。コンソール213は、情報の入出力を行なう。
【0027】
光モジュール208は、O/E変換部およびE/O変換部である。光モジュール208は、主信号の入出力を行なう。制御部204は、インターフェース盤209を制御する。FROM207は、制御部204のプログラムおよびデータを格納する。外部入出力部205は、インターフェース盤209の状態をコントロール盤211に通知する。外部入出力部205は、コントロール盤211より制御信号を受け付ける。表示部206は、外部入出力部205と接続され、インターフェース盤209の状態を表示する。電源供給部202は、各部に電源を供給する。コントローラ203は、FROM207の劣化テストを制御する。
【0028】
主信号は、インターフェース盤209の光モジュール208を通して端末などと送受信される。インターフェース盤209からの複数の主信号は、スイッチ盤212にて多重/分離され公衆網などと接続されている。制御部204は、主信号処理部201を制御し、主信号の状態を収集する。不揮発メモリであるFROM207は、制御部204のプログラムを格納し、状態のデータを格納する。
【0029】
FROM207は、消去・書換えを繰り返すと特性が劣化しデータを正しく保持できなくなる。このため、本実施例ではFROM207の劣化テストを行ない、劣化判定を行なう。通常動作時に装置の動作を停止することなくテストを行なうため、制御部204は、劣化テスト中はFROM207へのアクセスを行なわない。コントローラ203は、またテストシーケンスを制御する。
【0030】
次に、劣化テストを実施する上で、主に劣化判定テストを行なう回路であるコントローラ203を内蔵している制御部204、FROM207の電圧を制御するための電源供給部202、劣化判定対象であるFROM207を図2のインターフェース盤209の中から抜き出し、その回路構成について図3を参照して、説明する。図3において、センター側装置200が通常通り運用されており、FROM207が実運用動作をしている場合、制御部204がFROM207にアクセスする。制御部204は、FROM207に格納されている実運用データの読み出しや書換えを制御されたタイミングで行なっている。
【0031】
劣化テストが実行されるとき、まずコントローラ203は、制御部204へ割込み要求を送る。制御部204は、受入れ可能な状態であれば、FROM207とのアクセスを停止し、コントローラ203へ劣化テスト準備完了の応答をする。コントローラ203は、この信号を受けることでFROM207とのアクセスを開始し、劣化テストを実行する。また、コントローラ203から制御部204へ割込みを行なった際にFROM207が実稼働中で劣化テスト実行不可だった場合、コントローラ203は、ある一定の間隔をおいて再度制御部204へ割込み要求を送出する。したがって、制御部204とコントローラ203とが同時にFROM207へアクセスすることは無い。
【0032】
本実施例では、劣化テストを行なう際FROM207へ印加する電圧の制御も必要としている。そのため、コントローラ203は、FROM207への印加電圧を制御している電圧供給部202とも接続されている。この回路構成によって、コントローラ203は、FROM207とアクセスを開始すると同時に電源供給部202の制御も行なう。
【0033】
図4を参照して、劣化テストの制御を行なうコントローラ203の内部構造を説明する。図4において、コントローラ203は、電圧制御部401と、FROM制御部402と、比較部403と、パラメータ格納部404と、消去時間測定部405と、割込み制御部406と、FROMインターフェース部407と、経過時間監視部408とから構成されている。
【0034】
FROM制御部402は、劣化判定の制御を行なう。FROMインターフェース部407は、FROM制御部402の制御信号とFROM207を仲介する。電圧制御部401は、電源供給部202の電圧を制御する。消去時間測定部405は、FROM207の消去時間を測定する。比較部403は、消去時間と基準値を比較する。パラメータ格納部404は、基準値やテスト毎に測定データを格納する。割込み制御部406は、コントローラ203内部の劣化テスト開始および終了時に制御部204へアクセス切り換えの割込み要求を送る。そして、経過時間監視部408は、前回の劣化テストからの経過時間をカウントし定期的に試験を実施する。制御部204がFROM207とアクセスしている場合、コントローラ203は停止している。この経過時間監視部408は、劣化テストを実施するためのトリガであるため、前回の劣化テスト終了時からの経過時間をカウントし続けている。
【0035】
経過時間監視部408は割込み制御部406と接続されており、前回の劣化テスト終了時から一定時間が経過したら、劣化テストを再び開始するために割込み制御部406へ信号を送る。この割込み制御部406は、劣化テスト開始および終了の信号を制御部204へ割込みで送ることと、制御部204からの応答をFROM制御部402へ伝える。本実施例は劣化測定を行なう際、FROM207へ印加する電圧を変化させることと、FROM207のデータ消去時間を測定することを必要としており、それらの制御をFROM制御部402で行なっている。電源供給部202の電圧を制御するために電圧制御部401がFROM制御部402と接続されている。FROM207の消去時間を測定するために、FROM制御部402とFROMインターフェース部407の間に消去時間を計測する消去時間測定部405が設けられている。
【0036】
本実施例の劣化判定方法は、この消去時間測定部405で測定された値と予め設定している基準値を比較して判断する。この手法を実現させるために、基準値や測定したデータを格納するためのパラメータ格納部404がある。パラメータ格納部404は、劣化テストに先立ってFROMデータをコピーする。このコピーは、FROMデータを復元するために利用する。比較部403は、パラメータ格納部404に格納している基準値と消去時間測定部405で測定された値を比較する。比較部403は、あくまで比較のみを行ない、その判定はFROM制御部402で行なわれる。
【0037】
図5を参照して、FROMの劣化判定方法を説明する。本テストは、装置起動時または前回の劣化テストからn時間経過した際に実行される。図5において、まず初めにの割込み制御部406は、制御部204へ割込み要求を送信する(S101)。実運用中のFROM207が劣化テスト可能な状態であれば、制御部204は、FROM207との通常動作を停止し、テスト許可を送信する。コントローラ203は、テスト許可を受信する(S102:YES)。コントローラ203は、FROM207の内容をパラメータ格納部404にコピーする(S103)。コントローラ203は、劣化テストを実施するための準備として判定対象のFROM207を初期化(チップ消去)する(S104)。消去時間を測定する際、各メモリセルの状態が1か0かによって時間は変化してしまうことから、テストの条件を同一にするためにチップ消去(オール1)をしている。コントローラ203は、FROM207の消去時間を測定し、その測定結果をパラメータ格納部404へ格納する(S106)。
【0038】
次に、コントローラ203は、そのパラメータ格納部404に格納した測定結果と予め格納している劣化判定を行なうための基準値を取り出し、比較部403で差分を算出する。その差分をFROM制御部402へ送り、測定値が基準値内であるか判定する(S107)。
【0039】
判定結果が基準値内だった場合(S107:YES)、異常無しなので、コントローラ203は、FROM207のデータを劣化テスト前の状態へ復元する。FROM制御部402は、コントローラ203とFROM207のアクセスを停止する。完全にFROM207とのアクセスが停止したら、割込み制御部406は、制御部204へ割込み要求を行ない、劣化テスト終了を通知する。FROM制御部402は、テスト結果を制御部204に通知する。制御部204は、コントローラ203から劣化テスト終了の通知を受け、FROM207とのアクセスを再開させる(S108)。
【0040】
劣化テスト終了後、コントローラ203は動作を停止しているが、経過時間監視部408は、劣化テスト終了時からの経過時間をカウントしており、n時間が経過したとき(S109:YES)ら割込み制御部406へ信号を送り、再度劣化テストを開始させる。この一連の劣化テストを繰り返し実施していくことにより、回路稼働中にオンボード上でFROM207の劣化テストを定期的に自律で実施することができる。
【0041】
判定結果が基準値を超えた場合(S107;NO)、コントローラ203は、基準値内だった場合と同様に、まずFROM207のデータを劣化テスト前の状態へ復元する(S111)。FROM制御部402は、FROMインターフェース部407を介してコントローラ203とFROM207のアクセスを停止する。そして、制御部204へ割込み要求を行ない、劣化テスト終了を通知する。割込み制御部406は、制御部204へ劣化発生のアラームを挙げ(S112)、ステップ109に遷移する。制御部204は、通知を受け入れると、劣化発生の情報を外部へ通知するために外部出力部205からバックボードを介してコントロール盤211へ劣化の情報を送る。コントロール盤211は、劣化発生の通知が出されている各インターフェース盤からの情報を収集し、コンソール213を通して装置の管理者へ異常が伝えられる。また、アラームとして、インターフェース盤209上でも装置の外側から確認できる表示部206が設けられているので、表示部206の図示しないLEDを点灯させることで劣化有無を通知できる。
【0042】
従来の測定方法では、FROM207の消去時間を測定し、劣化すると消去時間が遅くなることを利用した判定方法を用いている。しかし、測定する際にFROM207に印加する電圧の値によっても消去時間は変動する。このため、ある一点の電圧値で一度だけ測定した場合、その劣化状態で測定できる消去時間のワースト値を検出することは難しい。
【0043】
本実施例では、電圧の値を動作範囲内で変化させ、各電圧値で消去時間を測定する。そこで、電圧値によって消去時間が変化する特性を利用した測定方法を図6を参照して、説明する。
【0044】
図6において、まず、コントローラ203内の電圧制御部401は、電源供給部302の電圧を制御し、FROM207へ印加させる電圧を動作範囲内の最小値に設定する(S601)。そして、その電圧値でFROM207の消去時間について、消去時間測定部405は、測定し、測定値をパラメータ格納部404へ格納する(S602)。次に、コントローラ203は、その時の電圧が動作範囲内の最大値であるか判定する(S603)。最大値でなければ印加電圧をa[V]上げて(S604)、再度消去時間を測定し、パラメータ格納部404へ測定値を格納する。この「a[V]上昇→消去時間の測定→パラメータ格納部404へ格納」の動作を電圧が動作範囲内の最大値になるまで繰り返すことにより、パラメータ格納部404には異なった電圧値で測定された複数の値が格納されることになる。電圧を最小値から最大値の範囲で変動させ各ポイントで消去時間を測定することにより、動作電圧範囲内で測定した消去時間の平均値を算出することができる。平均値を用いることで測定バラつきによる誤判定を防止する。そして、コントローラ203は、パラメータ格納部404に格納されている複数の測定値を平均化した値を測定値とする(S605)。
【0045】
最後に、この時点では印加電圧がまだ最大値に設定されたままであるため、電圧制御部401より電源供給部の変化させた電圧を劣化テスト前の状態へ戻し(S606)、図5の劣化判定(S107)へリターンする。
【0046】
次に、図7を参照して、劣化判定方法の詳細を説明する。本実施例では、「劣化判定基準値」および「限度値」と測定値を比較し劣化を判定する。「劣化判定基準値」は、今回と前回との消去時間の測定値の差分(消去時間増加方向をプラス)について、許容できる最大値を設定する。「限度値」は、メモリを使用する装置として許容できる最大の消去時間を設定する。
【0047】
この2つの基準値は、予めパラメータ格納部404の不揮発性メモリ領域に格納し、劣化判定の際、初回を除いて毎回測定値と比較される。予め格納する基準値は、判定対象であるFROM207の部品仕様や装置仕様等を考慮し設定する。
【0048】
図7において、コントローラ203は、パラメータ格納部404に前回の測定値があるか判定する(S701)。YESのとき、比較部403は、前回の測定値と今回の測定値の差分と、予め設定されている「劣化判定基準値」を比較を行なう(S702)。その比較結果について、FROM制御部402は、差分の方が小さいか判定する(S703)。YESのときおよびステップ701でNOのとき、比較部403は、今回の測定値と「限度値」とを比較する(S704)。FROM制御部402は、今回の測定値の方が小さいか判定する(S705)。YESのとき、FROM制御部402は、劣化なしと判定して、図5のステップ108に遷移する。一方、ステップ703またはステップ705でNOのとき、FROM制御部402は、劣化有りと判定して、図5のステップ111に遷移する。
【0049】
「劣化判定基準値」との比較を実施することにより、劣化の兆候をとらえることができ、劣化しきってしまい装置に障害が発生する前に劣化が始まったことを知ることができるため、未然に障害を防止できる。また、緩やかに劣化していき「劣化判定基準値」をすり抜けてしまった場合でも、「限度値」を設けることでその値以上であれば適確に劣化を検出することができる。劣化判定の際、この2段階の基準値を設けることにより、劣化の進行が緩やかな場合、急速な場合どちらにも対応することが可能となる。
【0050】
図3の回路構成において、制御部204へ劣化テストの制御部であるコントローラ203を内蔵せず、PLD(Programmable Logic Device)を新たに実装し、コントローラ203の機能を持たせることも可能である。図8は、図3に示す回路構成から制御部204に内蔵しているコントローラ203を取り除き、新たにPLD901を設けた回路構成である。図8において、PLD901は、制御部204、電源供給部202、FROM207のそれぞれと接続されており、上述したコントローラ203が制御部204に内蔵されている場合と同様の劣化テストが可能である。
【0051】
PLD901を新たに設ける利点として、劣化テストの制御を別デバイスで行なうため、制御部204へ負荷を与えずに劣化テストを実施することができる。また、FROM207が動作していない状態であれば、制御部204が稼働中であっても実運用動作を停止させることなく、劣化テストを実施することができる。
【0052】
本実施例では、消去時間を測定し「劣化判定基準値」と「限度値」の2段階で比較し判定を行なう。劣化が急速に進んだ場合は、前回のテストとの差分が大きくなることから「劣化判定基準値」で検出でき、緩やかに劣化が進む場合においても消去時間の「限度値」に達した際に劣化を検出できることから、様々な劣化の進行に対応できる。
【0053】
また、消去時間は、メモリに印加する電圧値によって変化する。本実施例では、電圧を動作範囲内の最小値から最大値まである間隔で変化させ、各ポイントで消去時間を測定し、複数回測定した消去時間の平均値を算出する。これにより、測定した電圧範囲内での平均値を把握できるため、使用ブロックの偏りや測定誤差等による測定値のバラつきで起こり得る誤判断を防ぐことができる。
【0054】
さらに、消去時間から部品の劣化を判断できるので部品メーカの書換え回数制限の規定に囚われることなく使用できる。劣化の兆候が見られた場合に部品交換などのための警告を出すこともでき、装置の保守性向上にもつながる。
【符号の説明】
【0055】
201…主信号処理部、202…電源供給部、203…コントローラ、204…制御部、205…外部出力部、206…表示部、207…FROM(不揮発性メモリ)、208…光モジュール、209…インターフェース盤、210…バックボード、211…コントロール盤、212…スイッチ盤、213…コンソール、401…電圧制御部、402…FROM制御部、403…比較部、404…パラメータ格納部、405…消去時間測定部、406…割込み制御部、407…FROMインターフェース部、408…経過時間監視部、901…PLD(Programmable Logic Device)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フラッシュメモリの内容を一時的に保持するメモリと、前記フラッシュメモリの消去時間を測定する測定部と、この測定部の測定結果から前回の測定結果を減算して第1の基準値と比較し、さらに前記測定結果と第2の基準値とを比較する比較部と、この比較部の比較結果に基づいて前記フラッシュメモリの劣化を判断する制御部とからなることを特徴とするフラッシュメモリ劣化判定装置。
【請求項2】
請求項1に記載のフラッシュメモリ劣化判定装置であって、
さらにフラッシュメモリの入力電圧を制御する電源供給部を備え、
前記測定部は、複数の入力電圧で前記フラッシュメモリの消去時間を測定し、それらの平均値を前記測定結果とすることを特徴とするフラッシュメモリ劣化判定装置。
【請求項3】
請求項1に記載のフラッシュメモリ劣化判定装置であって、
前記測定部と前記比較部と前記制御部とは、プログラマブルロジックデバイスで構成されていることを特徴とするフラッシュメモリ劣化判定装置。
【請求項4】
フラッシュメモリの内容を一時的にメモリにコピーするステップと、
前記フラッシュメモリの入力電圧を変えながら、前記フラッシュメモリの消去時間を測定するステップと、
前記消去時間の平均値を演算するステップと、
前記平均値から前回の平均値を減算して第1の基準値と比較する第1の比較ステップと、
前記平均値と第2の基準値とを比較する第2の比較ステップと、
前記第1の比較ステップと前記第2の比較ステップの比較結果に基づいて前記フラッシュメモリの劣化を判断するステップとからなることを特徴とするフラッシュメモリの劣化判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−22618(P2012−22618A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−161888(P2010−161888)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】