説明

フーリエ変換分光測光でのノイズキャンセル

分光光度計で得られる光学スペクトルの信号対ノイズ比を増加させる。干渉計は、光源ビームに干渉効果を導入する。二重ビーム構成は、干渉効果を有する光源ビームをリファレンスビームとサンプルビームに分岐する。リファレンスビームは、リファレンス物質と相互作用して、リファレンス検出器によって検出される。サンプルビームは、サンプル物質と相互作用して、サンプル検出器によって検出される。サンプルの光学スペクトルは、検出されたリファレンスビームと検出されたサンプルビームとの差分に基づいている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ガス、液体または固体などのサンプルの基本的性質は、ある波長の光に影響を与える傾向(傾向の欠如)である。サンプルが光を吸収、散乱または透過する傾向の特徴付けは、分光測光のための基礎である。分光測光の例示の応用は、化学および生物学のサンプル分析を含む。他の例示の応用は、製造した製品の試験、空気や水の品質試験を含む。
【背景技術】
【0002】
定量分光測光の何れの応用の1つの重要な態様は、サンプルを数値的に特徴付ける能力である。定量分光測光は、サンプルの性質を明らかにし、1つのサンプルを相互に差別化することを可能にする。特に、分光測光の態様は、サンプルの光学スペクトルを決定し、サンプルを広く特徴付けして識別するためにしばしば適用される。例えば、分光測光の態様は、サンプルを同定したり、他のサンプルと識別するために、サンプルの吸収スペクトル及び/又は透過スペクトルを決定するために使用できる。サンプルの吸収スペクトルは、特定の波長範囲についてサンプルで吸収される光の割合を示す。サンプルの透過スペクトルは、特定の波長範囲についてサンプルを通過する光の割合を示す。波長範囲は、紫外(UV)、可視、赤外(IR)の範囲の1つ又はそれ以上を含んでもよい。
【0003】
吸収スペクトルや透過スペクトルなどの光学スペクトルを取得できる2つの一般的な方法は、(i)分散スキャニング(以下、DSと称する)と、(ii)フーリエ変換(以下、FTと称する)である。両方の方法は、サンプル光ビームとサンプルとの間の相互作用を促進することと、相互作用から生ずる光(例えば、透過光、反射光、散乱光)を検出することとを含む。同様に、両方の方法は、光ビームとリファレンスまたはサンプルとの間の相互作用を促進することと、相互作用から生ずる光(例えば、透過光、反射光、散乱光)を検出することとを含む。両方の方法の場合、サンプルについての検出光とリファレンスについての検出光との比率から光学スペクトルが得られる。DS法によれば、サンプル光ビームおよびリファレンス光ビームはそれぞれ、単色光と称される1つの特定波長(または極めて狭い波長帯)を有する光を含む。こうして光学スペクトルを得るためには、DS法は、特定波長(または極めて狭い波長帯)を選択すること、光とのサンプルおよびリファレンスの相互作用を促進すること、生じた光を検出すること、そして、波長範囲内の各特定波長についてプロセスを繰り返すことを含む。
【0004】
一方、FT法によれば、サンプル光ビームおよびリファレンス光ビームは、複数の波長を有する光(例えば、多色光)を含む。光学スペクトルを得るためには、FT法は、サンプル光ビームおよびリファレンス光ビームを変調すること、光とサンプルおよびリファレンスとの間の相互作用を促進することと、生じた光を検出すること、フーリエ変換テクニックを検出光に適用することを含む。FT法、その測定機器および動作については詳しく後述する。
【0005】
一般に、DS法およびFT法は、全体の光スペクトル(例えば、電磁気スペクトル)に適用できる。しかしながら、FT法は、赤外および近赤外の応用のためのDS法より一般には好ましい。それは、DS法と比べて実質的に向上した信号対ノイズ比をもたらすからである。さらに、FT法は、サンプルおよびリファレンスを、複数の光ビームではなく、1つの光ビームだけに露出することで光学スペクトルを得るため、光学スペクトルは、一般に、DS法ではなくFT法を用いてほぼより短時間で得られる。こうしてスペクトルを素早く得る必要がある場合や、サンプルのある物理的特徴を増強する必要がある場合は、FT法は、しばしばDS法よりも望ましいものになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
光学スペクトルをDS法またはFT法を用いて得ることに関係なく、分光測光の感度、精度(precision)および正確さ(accuracy)が重要である。分光測光の感度は、類似した吸収特性を有するサンプル間の小さな差を検出する能力に直接関係する。感度が高いほど、検出できる差が小さくなる。分光測光の精度は、同一サンプルを別々の時間で同じ測定を繰り返す能力の関数として考えられる。分光測光の正確さは、サンプル組成の数値測定を正しく決定する能力の関数として考えられる。後者は、例えば、サンプル中にある未知の元素を定量化しようとした場合に重要である。所定の濃度範囲に渡って、定量化は、あるレベルの精度および正確さによって特徴付けられる。しかしながら、濃度範囲のある臨界的な下限未満では、精度および正確さの両方とも悪い影響を受ける。この下限は、特定の分光測光機器の検出限界である。感度が増加すると、検出限界は減少する。高いレベルの精度および正確さを維持するとともに、感度の改善が望ましい。
【0007】
例えば、FT法において、光源パワーの変動は、検出器で発生する信号にノイズを生じさせる。ノイズは、最終的には光学スペクトル(例えば、透過スペクトル)まで存続する。追加または代替として、FT法では、種々のノイズは、デジタル化誤差およびトラッキング誤差を含む。特に、デジタル化誤差は、デジタイザ(即ち、アナログデジタル変換器などの電子モジュール)の有限の分解能の結果であり、比較的小さい吸収ピークを示すのに充分な正確さとともに、検出器で発生する信号をデジタル化するデジタイザの能力を制限する。このノイズは、アナログデジタル変換の段階で電子信号に導入される。トラッキング誤差は、干渉計によって入力光ビームに導入された変調タイミングと関連した、不整合サンプリングの結果である。ノイズは、最終的には光学スペクトル(例えば、透過スペクトル)まで存続する。こうしたノイズ源は、こうしたノイズ源を明らかにするのに必要な感度を提供できない従来の装置では、伝統的に考慮されていない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(サマリー)
本発明の実施形態は、光強度の超高感度測定を生み出す分光測光システムを提供することによって、従来の分光光度計の1つ又はそれ以上の不具合を克服している。特に、本発明の態様は、フーリエ変換法によって得られる光学スペクトルにおいて信号対ノイズ比を増加させる。本発明の実施形態は、サンプルビームおよびリファレンスビームを生成する二重ビーム構成を有する分光測光システムを含む。二重ビームは同じ光源から導出されるため、光源と関連したノイズ、即ち、比較的速いランダム変動および遅いドリフトの両方が、両方のビーム中にコヒーレントで出現するようになる。本発明の態様は、コヒーレントノイズを都合良くキャンセルして、分光測光システムで行う測定の感度を増加させる。
【0009】
このサマリーは、概念の選択を、詳細な説明で後述する簡略化した形態で導入するために設けられる。このサマリーは、権利請求する主題の重要な特徴または本質的な特徴を特定することを意図しておらず、権利請求する主題の範囲を決定する際の補助として用いることも意図していない。
【0010】
他の特徴は、以下の記述において部分的に明らかとなり、指摘しているであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】単一ビーム構成を有する分光測光システムを示す例示のブロック図である。
【図2】例示のインターフェログラムのプロットである。
【図3】背景スペクトルについての例示のスペクトル強度プロットである。
【図4】サンプルスペクトルについての例示のスペクトル強度プロットである。
【図5】例示の透過スペクトルプロットである。
【図6】本発明の実施形態に係るフーリエ変換法を採用するための二重光ビーム構成を有する分光測光システムを示すブロック図である。
【図7】本発明の実施形態に係る干渉計の動作を示すブロック図である。
【図8】本発明の実施形態に係る、サンプルおよびリファレンスを透過した光を検出するための分光測光システムの一部を示すブロック図である。
【図9】本発明の実施形態に係る、サンプルで内部反射した信号を検出し、リファレンスで内部反射した信号を検出するための分光測光システムの一部を示すブロック図である。
【図10】本発明の実施形態に係る、サンプルで鏡面反射した信号を検出し、リファレンスで鏡面反射した信号を検出するための分光測光システムの一部を示すブロック図である。
【図11】本発明の実施形態に係る、サンプルで拡散反射した信号を検出し、リファレンスで拡散反射した信号を検出するための分光測光システムの一部を示すブロック図である。
【図12】本発明の実施形態に係る分光測光システムにおいて、サンプル電圧信号およびリファレンス電圧信号を平衡化するための回路構成を示すブロック図である。
【図13】本発明の実施形態に係る分光測光システムにおいて、サンプル電流信号およびリファレンス電流信号を平衡化するための回路構成を示すブロック図である。
【図14】本発明の実施形態に係るトリプルビームスプリッタ構成を有する分光測光システムを示すブロック図である。
【0012】
図面において、対応する参照符号は対応する部分を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の態様は、種々のソースからの可能性のある干渉(例えば、ノイズ)に対処する分光測光を提供する。種々のノイズ源は、光源のノイズ変動、ビーム経路中の浮遊粒子、調査対象となる液体中の泡および浮遊粒子、光検出器表面からの反射などを含む。
【0014】
図1は、FT法を実行するための測定機器100を示す。FT測定機器100は、先行技術で広く知られているように、単一ビーム構成を有する。このFT測定機器の動作は、光源101が、干渉計104に入る多色光102を出力する。干渉計104は、出力ビーム106として反射する干渉効果を導入する。特に、干渉計104は、入力光ビーム102の個別の波長成分をそれぞれ変調する。入力光ビーム102は、ある範囲の波長を含んでいるため、光ビーム全体への干渉計の効果は、入力光ビーム102内の全ての波長成分についての変調の合計として記述できる。その結果、複雑なパターンを有する出力ビーム106となり、これはインターフェログラムと称され、入力光ビーム102に含まれる各周波数(または波長成分)を符号化(encoding)している。出力ビーム106は、サンプル/リファレンス室108に入り、サンプル物質またはリファレンス物質と相互作用する。例えば、出力ビーム106は、サンプル/リファレンス物質を通過したり、反射したりする。従って、生じたビーム109は、得られたインターフェログラムに対応し、これはサンプル/リファレンス物質の光学特性を、入力光ビーム102に含まれていた各周波数(または波長成分)において特徴付ける。生じたビーム109は、検出器110に入射する。検出器110は信号を発生し、これは経路111に沿って送られる。この信号は生じたビーム109を表すものであり、得られたインターフェログラムを表す。
【0015】
FT測定機器100は、一般に、スペクトルデータを表示及び/又は解析するコンピュータ114を含んだり、あるいはこれと連結して使用される。従って、検出器信号は、経路111を経由し、電子モジュール112を通じてコンピュータ114に送られる。特に、検出器110からの信号111は、特定のサンプリング周波数でデジタル化され、コンピュータ114によって処理され、得られたインターフェログラムを計算する。
【0016】
図2は、コンピュータ114で計算、表示される例示のインターフェログラムを示す。例えば、コンピュータ114は、得られたインターフェログラムに対して離散フーリエ変換演算(DFT)を実行し、サンプル/リファレンス室108に配置されたサンプル/リファレンス物質に関する光学スペクトルを計算する。
【0017】
透過スペクトルを得るには、FT測定機器100は、説明した手順を2回実行する。即ち、背景スペクトル(G)を取得し、サンプルスペクトル(G)を取得し、取得した2つのスペクトル(GとG)を比較する。背景スペクトル(GB)は、リファレンススペクトルとも称され、リファレンス条件下で検出器110に向かう光のスペクトルである。図3は、例示の背景スペクトルGについてのスペクトル強度プロットを示す。サンプルスペクトル(G)は、サンプル/リファレンス室108にサンプルが存在した状態で検出器110に向かう光のスペクトルである。図4は、例示のサンプルスペクトルGについてのスペクトル強度プロットを示す。リファレンス条件は、光ビーム106と相互作用するためのサンプル/リファレンス室108に存在するリファレンス(または背景)を含む。一般に、リファレンスおよびサンプルは、固体、液体または気体の形態を有してもよい。リファレンスは、サンプルを分析するために使用できる属性を有するように選択される。例えば、リファレンスは、固体、液体または気体でもよく、特定の成分を除いてサンプルとほぼ同一である。リファレンススペクトルとサンプルスペクトルとの比較は、特定の成分についての情報を明らかにする。スペクトルの差は、この特定の成分に起因しているためである。代替として、リファレンスは、サンプル/リファレンス室108に追加の物質が存在しない場合、空気からなる。サンプル/リファレンス室108に追加の物質が存在しない場合、背景スペクトル(G)においてサンプルに起因した効果は存在しない。こうしてリファレンススペクトルとサンプルスペクトルとの比較は、その1つの成分だけではなく、サンプル物質に関する情報を明らかにする。
【0018】
透過スペクトルは、背景に対してサンプルスペクトルを割り振ることによって取得される(即ち、G/G)。スペクトルは離散しているため、表示された全ての周波数について、比率は周波数ごとに慎重に把握される。図5は、図3でプロットした例示の背景スペクトルおよび図4でプロットした例示のサンプルスペクトルに基づいた透過スペクトルを示す。透過率は、サンプルによる吸収がない場合、単位元(または100%)として定義される。こうして1未満の透過率の値は、透過率の値の周波数(または波長)におけるサンプルによる吸収を示す。
【0019】
上述したように、光学スペクトルがDS法およびFT法を用いて得られることに関係なく、分光測光の感度、精度(precision)および正確さ(accuracy)が重要である。例えば、FT法において、光源パワーの変動は、検出器110で発生する信号にノイズを生じさせる。ノイズは、最終的には光学スペクトル(例えば、透過スペクトル)まで存続する。追加または代替として、FT法では、種々のノイズは、インターフェログラムでのデジタル化誤差および干渉計104を用いたトラッキング誤差を含む。特に、デジタル化誤差は、デジタイザ(即ち、アナログデジタル変換器などの電子モジュール)の有限の分解能の結果であり、比較的小さい吸収ピークを示すのに充分な正確さとともに、検出器で発生する信号をデジタル化するデジタイザの能力を制限する。このノイズは、アナログデジタル変換の段階で電子信号に導入される。トラッキング誤差は、干渉計によって入力光ビームに導入された変調タイミングと関連した、不整合サンプリングの結果である。ノイズは、最終的には光学スペクトル(例えば、透過スペクトル)まで存続する。こうしたノイズ源は、こうしたノイズ源を観測できるのに必要な感度を提供できない従来の装置では、伝統的に考慮されていない。
【0020】
本発明の実施形態は、サンプルビームおよびリファレンスビームを備えた二重ビーム構成を有する分光測光システムを含む。二重ビーム構成によれば、二重ビームは同じ光源から導出されるため、光源と関連した実験ノイズ、即ち、比較的速いランダム変動および遅いドリフトの両方が、両方のビーム中にコヒーレントで出現するようになる。本発明の実施形態は、キャンセル技術の使用によってコヒーレント実験ノイズのレベルを低減し、感度を向上させる。サンプル検出器およびリファレンス検出器は、サンプルビームおよびリファレンスビームを表す信号をそれぞれ発生する。コヒーレント変動は、適切な電子回路の使用によって発生信号の差をとることによってキャンセルされる。
【0021】
一実施形態において、本発明は、DS法を採用するための二重光ビーム構成を有する分光測光システムを含む。こうした実施形態は、'726出願に詳細に説明されている。さらに、分光測光システムで発生するノイズに関する態様は、米国特許第6,741,348号(発明の名称: Ultrasensitive Spectrophotometer)に記載されており、この開示内容は参照によりここに組み込まれる。
【0022】
他の実施形態では、図6のブロック図で示されており、本発明は、FT法を採用するための二重光ビーム構成を有する分光測光システム600を含む。特に、分光測光システム600は、干渉計602とモジュール606とを含む。干渉計602は、光源608で発生した光源ビーム609を受けて、干渉効果を有する出力ビーム610を出力する。
【0023】
光源608で発生した光ビーム609は、複数の波長を有する(例えば、多色光)。種々の光源が先行技術で知られており、それぞれ特定の波長範囲を有する光を発生する。本発明の実施形態は、UV(紫外)から遠IR(赤外)までのスペクトル範囲全体に渡って実施できるため、光源608はそれ相応に選択される。例えば、光源608は、アルゴンランプ、キセノンランプ、水素ランプ、重水素ランプ、タングステンランプ、アークランプ、中空カソードランプ、ネルンスト・ランプ(Nernst glower)、ニクロム線、グローバー(globar)、発光ダイオード(LED)およびレーザのうち1つ又はそれ以上を含む。図示した実施形態によれば、光源608は、分光測光システム600の外部にあり、分光測光システム600と連結して使用される。代替の実施形態では、光源608は、分光測光システム600に含まれているが、モジュール606の外部にある。例えば、分光測光システム600は、光源608と干渉計602とを収容した他のモジュールを含んでもよい。光源608は、モジュール606とは外部の場所にあるため、多くのタイプの光源によって生成される熱の悪影響が回避される。
【0024】
干渉計602は、入力光ビーム609の光波に干渉効果を導入して、入力光ビーム609に時間依存の光パワー分布を生じさせるデバイスを備える。干渉計602は、種々の構成を有することができる。例えば、マイケルソン干渉計は1つの構成であり、光ビームを2つの経路に分岐して、その光ビームを反射させて戻し再結合することによって入力光ビームに干渉パターンを生じさせる。
【0025】
図7は、本発明の実施形態(例えば、図6で示した実施形態)に係るマイケルソン干渉計の動作を示す。特に、入力光ビーム609は、左側から干渉計602に入ってビームスプリッタ702に入射し、透過ビーム704と反射ビーム706を生成する。透過ビーム704は、本実施形態では、可動ミラー708に入射し、反射して戻って(ビーム710)、ビームスプリッタ702に向かう。同様に、反射ビーム706は、固定ミラー712に入射し、反射して戻って(ビーム714)、ビームスプリッタ702に向かう。ビーム710,714は、後述するような方法でビームスプリッタ702で結合し、干渉計出力ビーム610を生成する。2つのビーム(一方はベクトル704,710で示し、他方はベクトル706,714で示す)は、最初にビームスプリッタ702から現れる。
【0026】
各ビームは、ビームスプリッタ702からミラー(708,712)へ進行し、再びビームスプリッタ702へ戻る。ビーム706,714で表されるビームFは、ビームスプリッタ702と固定ミラー712との間の一定距離を進行する。ビーム704,710で表されるビームMは、ビームスプリッタ702と可動ミラー708との間の可変距離を進行し、この距離は可動ミラー708の位置とともに変化する。一定の進行距離と可変の進行距離との差は、リターデーション(retardation)(δ)である。リターデーションがゼロとは、可動ミラー708および固定ミラー712がビームスプリッタ702から正確に等距離にあるときの位置として定義される。δは、2×(固定ミラー712に対して等距離にある位置からの可動ミラー708の変位)を表す。
【0027】
干渉計の動作によれば、入力光ビーム609は、ビームスプリッタ702を介して分岐され、2つのビームF,Mを形成する。固定ミラー712および可動ミラー708でそれぞれ反射した後、ビームF,Mはビームスプリッタ702で再結合し、干渉計出力ビーム610を形成する。2つのビームF,Mは、異なる距離を進行するため、一般に、ビームスプリッタ702に戻るときに、ビームF,Mの間に時間依存の位相差が存在する。時間依存の位相差は、干渉計出力ビーム610に干渉効果を生じさせる。特に、入力光ビーム609の個々の波長λの成分は、1/2[1+cos(νt)]の式に従って変調される。ここで、周波数νは、ν=2×V/λで与えられ、Vは可動ミラー708の速度である。
【0028】
入力光ビーム609は、ある範囲の波長をカバーしているため、入力光ビーム609全体への干渉計602の効果は、入力光ビーム609中の全ての波長成分に関する変調の合計として記述できる。出力ビーム610は、インターフェログラムと称される複雑なパターンを有し、入力光ビーム609に含まれる各周波数(または波長成分)を符号化(encoding)している。インターフェログラムは、I(δ)で表される。ここで、I(δ)=Σ(δ)である。例えば、δ=0は、両方のビームF,Mでの全周波数がビームスプリッタ702に同相で戻って来ることを意味する。この条件が生ずると、全ての波長成分について完全な建設的干渉が存在し、インターフェログラムは最大になる(I(0))。
【0029】
図6に戻って、モジュール606は、ビームスプリッタ612およびミラー618を有する光学システムと、サンプル検出システム620と、リファレンス検出システム622と、検出器回路を有する電子モジュール640とを含む。光学システムは、干渉計602からの出力ビーム610を受ける。特に、出力ビーム610は、ビームスプリッタ612に入射する。ビームスプリッタ612は、出力ビーム610を第1ビーム614と第2ビーム616に分岐して、第1ビーム614および第2ビーム616を別々の経路に向ける。特に、第1ビーム614はサンプル検出システム620に向けられ、第2ビーム616はミラー618に向けられる。ミラー618は、第2ビーム616をリファレンス検出システム622に向ける。従って、第1ビーム614は、モジュール606を通過する際、概してサンプルビームと称される(例えば、614,628)。同様に、第2ビーム616は、モジュール606を通過する際、概してリファレンスビームと称される(例えば、616,619,630)。サンプルビームおよびリファレンスビームは、ノイズキャンセルに用いられる2重ビームである。
【0030】
サンプル検出システム620は、サンプルを有するサンプル室624を含む。リファレンス検出システム622は、リファレンスを有するリファレンス室626を含む。ある実施形態では、サンプル室624及び/又はリファレンス室626は、物質(例えば、サンプル、リファレンス)を収容するためのセル(例えば、サンプルセル、リファレンスセル)をさらに含む。リファレンスおよびサンプルは、固体、液体または気体の形態を有する物質である。リファレンスは、既知のサンプル属性に基づく属性を有するように選択してもよい。例えば、リファレンスは、サンプルから欠落していることが判っている1つ又はそれ以上の成分を有するように選択した固体、液体または気体(空気を含む)でもよい。成分の差に起因して、リファレンスおよびサンプルは、特定の波長で異なるように光と相互作用(例えば、吸収、通過、反射、屈折など)するようになる。従って、スペクトルの差は特定成分に起因していることから、サンプルスペクトルとリファレンススペクトルの間の差は、特定成分に関する情報を明らかにする。
【0031】
図6に示す実施形態に従って、入射リファレンスビーム619は、リファレンスと相互作用して、ある方向の出力リファレンスビーム630を生じさせる。例えば、入射リファレンスビーム619(またはその一部)は、リファレンスを特定方向に透過してもよい。こうして相互作用(透過)は、特定方向(例えば、入射リファレンスビーム619の方向とほぼ同じ方向)の透過リファレンスビーム(またはその一部)を含む出力リファレンスビーム630を生じさせる。他の例では、入射リファレンスビーム619(またはその一部)は、リファレンスによって特定方向(例えば、入射リファレンスビーム619の方向とほぼ反対の方向)に反射してもよい。こうして相互作用(反射)は、特定方向の反射リファレンスビームを含む出力リファレンスビーム630を生じさせる。さらに他の例では、入射リファレンスビーム619の一部はリファレンスを第1方向に透過してもよく、入射リファレンスビーム619の他の部分はリファレンスによって第2方向に反射してもよい。こうして相互作用(透過および反射)は、第1方向のリファレンスビームの透過部分を含む出力リファレンスビーム630、および第2方向のリファレンスビームの反射部分を含む他の出力リファレンスビーム630を生じさせる。
【0032】
同様に、入射サンプルビーム614は、サンプルと相互作用して、ある方向の出力サンプルビーム628を生じさせる。例えば、入射サンプルビーム614(またはその一部)は、サンプルを特定方向に透過していもよい。こうして相互作用(透過)は、特定方向(例えば、入射サンプルビーム614の方向とほぼ同じ方向)の透過サンプルビームを含む出力サンプルビーム628を生じさせる。他の例では、入射サンプルビーム614(またはその一部)は、サンプルによって特定方向(例えば、入射サンプルビーム614の方向とほぼ反対の方向)に反射してもよい。こうして相互作用(反射)は、特定方向の反射サンプルビームを含む出力サンプルビーム628を生じさせる。さらに他の例では、入射サンプルビーム614の一部はサンプル第1方向に透過してもよく、入射サンプルビーム614の他の部分はサンプルによって第2方向に反射してもよい。こうして相互作用(透過および反射)は、第1方向のサンプルビームの透過部分を含む出力サンプルビーム628、および第2方向のサンプルビームの反射部分を含む他の出力サンプルビーム628を生じさせる。
【0033】
リファレンス検出システム622およびサンプル検出システム620はそれぞれ、出力(例えば、サンプルまたはリファレンス)ビーム628,630を検出するための検出器(例えば、リファレンス検出器634、サンプル検出器632)をさらに含む。一実施形態では、検出器628,630は、出力ビーム628,630のAC成分を専ら検知して、干渉計602のビームスプリッタ702による非理想的な挙動によって生ずる効果(DC成分として現れる)を最小化する。例えば、干渉計602での非理想的なビームスプリッタ702は、均等でなすパワーを有するビーム704,706をもたらす。従って、弱い方のビームにおいてほぼ全てのパワー(全部ではない)が干渉効果を受け、一方、強い方のビームでの余分なパワーは、干渉効果によって影響されずに残る。ビームスプリッタ702は、本質的にDC(例えば、ゆっくり変化するAC)である余分な光パワー部分を分岐し、その結果、ある部分が、干渉計からの出力ビーム610に含まれ、最終的には出力(例えば、サンプルおよびリファレンス)ビーム628,630に含まれる。干渉効果のない光パワーは、同様に干渉計からの出力ビーム610に含まれ、最終的には出力(例えば、サンプルおよびリファレンス)ビーム628,630にコヒーレントとなるノイズを運ぶことがある。出力(例えば、サンプルまたはリファレンス)ビーム628,630のAC成分だけを検出することによって、干渉効果のない光パワーは、サンプルに関する光学スペクトル(例えば、透過スペクトル)を得るためには使用されない。検出器(632,634)は、干渉効果のない光パワーによって運ばれるコヒーレントノイズを検出するが、ノイズは、後述するようにしてキャンセルされる。
【0034】
リファレンス検出器634は、出力リファレンスビーム630の方向に基づいて出力リファレンスビーム630を充分に検出する。一実施形態では、リファレンス検出器634は、リファレンスを透過した光を示す方向の光を充分に検出する。こうしてこの実施形態では、リファレンス検出器634は、出力ビーム630が透過リファレンスビームの少なくとも一部を含む場合、出力リファレンスビーム630を検出する。他の実施形態では、リファレンス検出器は、リファレンスで反射した光を示す方向の光を充分に検出する。こうしてこの実施形態では、リファレンス検出器634は、出力ビーム630が反射リファレンスビームの少なくとも一部を含む場合、出力リファレンスビーム630を検出する。
【0035】
同様に、サンプル検出器632は、出力サンプルビーム628の方向に基づいて出力サンプルビーム628を充分に検出する。一実施形態では、サンプル検出器632は、サンプルを透過した光を示す方向の光を充分に検出する。こうしてこの実施形態では、サンプル検出器632は、出力ビーム628が透過サンプルビームの少なくとも一部を含む場合、出力サンプルビーム628を検出する。他の実施形態では、サンプル検出器632は、サンプルで反射した光を示す方向の光を充分に検出する。こうしてこの実施形態では、サンプル検出器632は、出力ビーム628が反射サンプルビームの少なくとも一部を含む場合、出力サンプルビーム628を検出する。
【0036】
リファレンス検出システム622およびサンプル検出システム620は、検出される出力ビーム630,628の方向を特に適合するように構成してもよい。図8を参照して、一実施形態では、リファレンスおよびサンプル検出システム622,620は、物質(例えば、リファレンス、サンプル)から透過した光を検出することに適合するように構成される。図示したリファレンスおよびサンプル検出システムはそれぞれ、部屋(例えば、サンプル室801S、リファレンス室801R)と、図6で上述した検出器(例えば、サンプル検出器810S、リファレンス検出器810R)とを含む。さらに、検出システムは、次の要素の1つ又はそれ以上を含む。即ち、第1集光レンズ802、第2集光レンズ805、物質を収容するセル804、光トラップ806。該要素は、図示したように互いに向きがほぼ一致している。検出システムによれば、(サンプルまたはリファレンス)ビーム812は、部屋801の壁にある集光レンズ802を経由して部屋801に入る。集光ビームは、物質セル804に入り、そこで物質と相互作用する。物質が集光ビーム814またはその何れかの部分を透過した(即ち、集光ビーム814が物質を通過した)場合、出力ビーム816は、透過した集光ビーム(またはその一部)を含むことになる。透過ビームは、物質804を通過する方向を有するため、検出器810は、集光ビーム814が物質に入る場所とは反対に、物質に隣接して配置される。物質を通過した後、出力ビーム816は、第2集光レンズ805を通過し、検出器810に入射する。出力ビーム816は検出器810に入射し、検出器810は出力ビーム818の一部を反射し、これは光トラップ806に向かう。検出器810は、部屋801に入るビームの一般的な方向に対してある角度(例えば、45度)で搭載され、出力ビーム818の反射部分が光トラップ806に向くようにする。光トラップ806は、光を捕捉する。捕捉された光は、吸収度の値を決定するために解析してもよい。
【0037】
図9を参照して、他の実施形態では、リファレンスおよびサンプル検出システム622,620は、物質(例えば、リファレンス、サンプル)で内部反射した光を検出することに適合するように構成される。図示したリファレンスおよびサンプル検出システムの各々は、部屋(例えば、サンプル室901S、リファレンス室901R)と、図6で上述した検出器(例えば、サンプル検出器910S、リファレンス検出器910R)とを含む。さらに、検出システムは、次の要素の1つ又はそれ以上を含む。即ち、内部反射光学素子(例えば、相互作用面904を含むプリズム902)、集光レンズ908、物質(例えば、リファレンス、サンプル)を相互作用面904に供給するための入口916および出口918を有する閉じた相互作用空間914。図示したサンプル検出システムによれば、サンプル室901Sに入った(例えば、集光レンズを介して)後に、サンプルビーム900Sは、プリズム902Sに入る。サンプルビーム900Sは、プリズム902Sを通過して、相互作用面904に入射する。サンプルは、相互作用面904の位置またはその上にある。サンプルビーム900Sは、相互作用面904およびサンプルと相互作用し、これにより全内部反射を受ける。従って、出力サンプルビーム906Sは、変化した方向(例えば、90°回転)のサンプルビーム900Sを含む。出力サンプルビーム906Sは、プリズムを出て、集光レンズ908Sを通って、光トラップ911Sを含むチャンバ内に搭載されたサンプル検出器910Sに、図8に関して説明したような方式(非垂直)で入射する。サンプルは、入口916Sおよび出口918Sを有する閉じたサンプル空間914Sを伴う面904Sに供給される。入口916Sおよび出口918Sの両方ともモジュール606の外部と接続され、浮遊ダスト粒子と関連したベースラインノイズを導入するモジュール開放を必要とせずに、サンプルをサンプル室901Sに導入可能にする。サンプルビーム901Sと同様な方法で、リファレンスビーム901Rは、リファレンスと相互作用し、検出器910Rによって検出される。
【0038】
図10を参照して、他の実施形態では、サンプルおよびリファレンス検出システム622,620は、物質(例えば、リファレンス、サンプル)で鏡面反射(specularly reflected)した光を検出することに適合するように構成される。図示したリファレンスおよびサンプル検出システムの各々は、部屋(例えば、サンプル室1001S、リファレンス室1001R)と、図6で概説した検出器(例えば、サンプル検出器1010S、リファレンス検出器1010R)とを含む。さらに、検出システムは、次の要素の1つ又はそれ以上を含む。即ち、反射相互作用面1002(例えば、ミラー)、集光レンズ1008、物質(例えば、リファレンス、サンプル)を相互作用面1002に供給するための入口1016および出口1018を有する閉じた相互作用空間1014。図示したサンプル検出システムによれば、サンプルビーム1000Sは、壁1004Sの平滑な相互作用面1002Sに入射する。サンプルとの相互作用が、相互作用面1002Sで生ずる。特に、サンプルビーム1000S(またはその一部)は、サンプルによって鏡面反射して、出力ビーム1006Sを生じさせる。出力サンプルビーム1006Sは、集光レンズ1008Sによって、入射ビームに対して非垂直の角度で(図9に関して上述したように)、光トラップ1011Sを含むチャンバ内に搭載されたサンプル検出器1010Sに集光される。図10で示すように、相互作用面1002Sとの入射角および面1002Sからの反射角は共に45°であり、その結果、鏡面反射プロセスは、合計90°だけサンプルビームの方向を変化させる。しかしながら、他のいろいろな角度も使用できる。サンプルセルは、壁1004Sに対して封止され、これを相互作用空間1014Sの一部として含む、光学的に透明な閉じた相互作用空間1014Sを含む。入口1016Sおよび出口1018Sが、図9に関して説明したように、相互作用空間1014Sへのサンプル導入を可能にする。固体の壁1004Sは、相互作用空間の片側を形成しており、反射相互作用面1002Sはサンプルと接触していてもよい。特に、相互作用面1002Sに引き付けられ保持された、気相からの物質による光吸収を研究することは興味深い。サンプルビーム1001Sと同様な方法で、リファレンスビーム1001Rは、リファレンスと相互作用し、検出器1010Rによって検出される。
【0039】
図11を参照して、さらに他の実施形態では、サンプルおよびリファレンス検出システム622,620は、物質(例えば、リファレンス、サンプル)で拡散反射(diffusely reflected)した光を検出することに適合するように構成される。図示したリファレンスおよびサンプル検出システムの各々は、部屋(例えば、サンプル室1101S、リファレンス室1101R)と、図6で概説した検出器(例えば、サンプル検出器1110S、リファレンス検出器1110R)とを含む。さらに、検出システムは、次の要素の1つ又はそれ以上を含む。即ち、つや消し(matte)相互作用面1102、集光ミラー1108、物質(例えば、リファレンス、サンプル)を相互作用面1102に供給するための入口1116および出口1118を有する閉じた相互作用空間1114。図示したサンプル検出システムによれば、サンプルビーム1100Sは、サンプル室1101Sに入り、壁1104Sのつや消し相互作用面1102Sに入射する。光は、矢印で示すように、ある範囲の方向に渡って散乱する。出力サンプルビームは、散乱光の一部1106Sを含み、これはミラー1108Sによって、光トラップ1111Sを含むチャンバ内に搭載されたサンプル検出器1110Sに集光される。閉じたサンプル相互作用空間1114Sは、壁1104Sによって片側が仕上げられ、入口1116Sおよび出口1118Sを介して供給されたサンプルは、図9に関して上述したように、相互作用面1102Sと相互作用できる。サンプルビーム1101Sと同様な方法で、リファレンスビーム1101Rは、リファレンスと相互作用し、検出器1110Rによって検出される。
【0040】
図6を再び参照して、リファレンスおよびサンプル検出器634,632は、個々のリファレンスまたはサンプルビームの検出部分を表す信号をそれぞれ発生する。一実施形態では、リファレンスおよびサンプル検出器634,632は、出力(リファレンスまたはサンプル)ビーム(630,628)のパワーに正確に比例して変化する電流をそれぞれ発生する。例えば、リファレンスおよびサンプル検出器634,632は、光を検出し光電流を出力するためのフォトダイオードなどを含む。代替の実施形態では、リファレンスおよびサンプル検出器634,632は、出力(リファレンスまたはサンプル)ビーム(630,628)のパワーに正確に比例して変化する電圧をそれぞれ発生する。例えば、リファレンスおよびサンプル検出器634,632は、例えば、電圧を出力する積分バッファ増幅器を含む。他の例示の検出器は、光電子増倍管、光電管、光電セル、電荷転送素子、熱電対、ボロメータ、焦電セル及び/又は赤外検出器を含む。
【0041】
リファレンスおよびサンプル検出器で発生したリファレンスおよびサンプル信号638,636は、電子モジュール640へ伝送される。電子モジュール640は、リファレンス信号638に比例したリファレンス電圧、サンプル信号636に比例したサンプル電圧、およびリファレンス信号638とサンプル信号636との差分に比例した差分電圧を出力するための検出器回路を含む。さらに、電子モジュールは、第1変換器と第2変換器を含む。変換器はデジタイザとも称される。第1変換器は、差分電圧を所定の周期でアナログ信号からデジタル信号へ変換する。第2変換器は、リファレンス電圧を所定の周期でアナログ信号からデジタル信号へ変換する。第1変換器および第2変換器は、同時(即ち、ほぼ同時に)差分電圧およびリファレンス電圧を変換する。差分電圧およびリファレンス電圧のほぼ同時の変換は、ドリフト効果を有利に最小化する。デジタル差分信号およびデジタルリファレンス信号642は、プロセッサ644(例えば、マイクロプロセッサ、コンピュータ、コントローラなど)に伝送される。
【0042】
プロセッサ644は、一実施形態では、デジタル差分信号(即ち、差分電圧)に基づいてサンプルのスペクトルを決定するように構成される。この実施形態では、プロセッサ644は、デジタル差分信号およびデジタルリファレンス信号に基づいてサンプルの透過スペクトルを決定するように構成される。特に、プロセッサ644は、デジタル差分信号から差分インターフェログラムI(δ)を決定する。同様に、プロセッサ644は、デジタルリファレンス信号からリファレンスインターフェログラム(即ち、背景インターフェログラム)I(δ)を決定する。差分インターフェログラムおよびリファレンスインターフェログラムは、次のように関連している。I(δ)=I(δ)−I(δ)。ここで、I(δ)はサンプルインターフェログラムである。
【0043】
プロセッサ644は、I(δ)のフーリエ変換を計算し、次式が得られる。
DFT{I(δ)}=DFT{I(δ)}−DFT{I(δ)}=G(ν)−G(ν)
【0044】
さらにプロセッサ644は、I(δ)のフーリエ変換を計算し、次式が得られる。
DFT{I(δ)}=G(ν)
【0045】
こうしてプロセッサ644は、背景スペクトルG(ν)=G(ν)を取得する。
【0046】
DFT{I(δ)}/DFT{I(δ)}=[G(ν)−G(ν)]/G(ν)であることから、透過スペクトル[G(ν)/G(ν)]は、次の関係[G(ν)−G(ν)]/G(ν)+1に従って、あるいは、DFT{I(δ)}/DFT{I(δ)}+1で示すように取得される。
【0047】
表記は、プロセッサ644がG(ν)で表される全ての離散周波数について点別に分割することを意味する。他の実施形態では、第2変換器は、サンプル電圧信号をデジタルサンプル信号へ変換し、プロセッサ644は、デジタル差分信号およびデジタルサンプル信号に基づいてサンプルのスペクトルを決定するように構成される。さらに他の実施形態では、電子モジュールは、サンプル電圧信号をデジタル信号へ変換するための第3変換器をさらに含み、プロセッサ644は、デジタル差分信号と、デジタルサンプル信号及び/又はデジタルリファレンス信号に基づいてサンプルのスペクトルを決定するように構成される。
【0048】
スペクトルはデジタル差分信号から得られるため、デジタルリファレンス信号およびデジタルサンプル信号に含まれるコヒーレントノイズがほぼキャンセルされる。例えば、図6に示した実施形態600によれば、干渉計610からの出力ビームはモジュール606に供給され、ビームスプリッタ612によって第1および第2ビーム(614,616)に分岐される。干渉計出力に含まれるノイズは、サンプルおよびリファレンスと相互作用するサンプルおよびリファレンスビーム(614,619)においてコヒーレントである。同様に、コヒーレントノイズは、検出器(634,632)で検出される出力ビーム(630,628)に存在するようにになる。コヒーレントノイズは、両方の検出器634,632で検出されることから、ノイズは、差分インターフェログラムI(δ)においてほぼキャンセルされる。さらに、デジタル差分信号からスペクトルを取得した結果、デジタル処理でのコヒーレントノイズは最小化される。上述のように、デジタル化誤差(即ち、ノイズ)は、バンド幅および分解能(および、追加の要因)に依存している。特に、デジタル化誤差は、デジタイザ(即ち、電子モジュール、例えば、変換器)の有限の分解能の結果であり、比較的小さい吸収ピークを示すのに充分な正確さとともに、検出器で発生する信号をデジタル化するデジタイザの能力を制限する。デジタル差分信号からスペクトルを取得することは、必要なデジタイザ分解能を最小化する。それは比較的小さい信号(ほぼ同じ2つの出力信号の差分)であるためである。こうして大きな中心信号、または「バースト」(例えば、図4)は、かなり小さな信号に減少する。背景に関するI(δ)は極めて小さくでき、弱く吸収するサンプルでは、サンプルに関するI(δ)も極めて小さく、サンプルおよび残りの背景の両方からの弱い振動だけを含む。従って、I(δ)に必要なデジタル分解能は比較的低い。例えば、それは、I(δ)またはI(δ)よりも10倍〜100倍低いであろう。こうしてデジタル化ノイズは、I(δ)において効率的に除去される。
【0049】
以下に説明する本発明の追加の実施形態は、本発明の分光測光システム600で得られる光学スペクトルの信号対ノイズ比をさらに増加させるための特徴を含む。この特徴は、上述した分光測光システム600に対して個別または組合せで適用してもよい。1つの追加の実施形態は、リファレンスおよびサンプルビームを平衡化させて、ノイズキャンセルを最適化するための特徴を含む。上述したように、I(δ)=I(δ)−I(δ)。こうしてノイズキャンセルの程度は、I(δ)の減少とともに増加する。極限I(δ)→0では、コヒーレントノイズが完全にキャンセルされる。追加の実施形態は、検出器信号を平衡化させることを意図する。
【0050】
サンプルおよびリファレンスインターフェログラムから得られる下記式(1)の透過スペクトルを、差分およびリファレンスインターフェログラムを用いて得られる下記式(2)の透過スペクトルと比較することによって、コヒーレントノイズキャンセルの程度は、
検出器信号の平衡度に等しいことは明らかである。
【0051】
【数1】

【0052】
特に、透過スペクトルG(ν)/G(ν)でのノイズは、RMS(root mean square)偏差σによって与えられる。標準的な方法(即ち、VおよびVに基づく透過スペクトル)によって得られる透過スペクトルについてのノイズは、σ(SM)で示される。このノイズは、σ(G)/G=σ(V)/Vおよびσ(G)/G=σ(V)/Vという前提に基づいて、透過式(1)から評価される。ここで、σ(G),σ(G),σ(V),σ(V)は、サンプルスペクトル、リファレンススペクトル、サンプルについての読み取り電圧、リファレンスについての読み取り電圧におけるRMS偏差をそれぞれ指す。
【0053】
式(1)から、V≒V、σ(SM)=21/2|σ(V)/V|であることから、下記の式が得られる。
【0054】
【数2】

【0055】
本発明の態様(即ち、Vに基づく透過スペクトル)によって記述されるノイズキャンセル法についてのRMSノイズは、σ(NC)で示される。透過式(2)からは、上記で用いたものと同じ前提として、下記の式が得られる。
【0056】
【数3】

【0057】
ノイズキャンセルに関して、差分電圧は、背景電圧ノイズとは、|σ(V)/V|=|σ(V)/V|によって関連しているという追加の前提を用いて、ノイズキャンセル法についてのRMSノイズは、下記の式で与えられる。
【0058】
【数4】

【0059】
ノイズ低減率は、σ(NC)/σ(SM)として表現され、上記式からの置換は、ノイズ低減率が|V/V|であることを示す。多重スキャンおよび信号平均化のテクニックを適用して背景信号のノイズを最小化する場合でも、同じノイズ低減率が適用されることに留意する。
【0060】
本発明の実施形態は、種々の平衡化手順(protocol)を想定する。最も重要な実施形態において、平衡化手順は、通常はノイズで見えにくい極めて小さなピークの観測を可能にするように設計される。こうした応用では、背景信号は平衡化され、V≒0になる。これは、例えば、図13に示す回路を用いて、V≒0になるまでポテンショメータ1310を調整することによって達成される。高い平衡度は、サンプルスペクトルにおいても維持されるようになる。吸収効果(ピーク)が極めて小さいからである。こうして実施形態によれば、信号が平衡化されと、背景インターフェログラムは最小化され、その結果、背景スペクトルでのノイズキャンセルは最大になる。さらに、サンプル信号もサンプルインターフェログラムについてほぼ最小化されるため、サンプルスペクトルにおいても高い程度のノイズキャンセルが達成される。その結果、高い程度のノイズキャンセルが、計算した透過スペクトルにおいて存在するようになる。
【0061】
各検出器信号は、ビームパワーおよび検出器感度の両方に依存する。実際、検出器信号は僅かに異なっており、この場合、必要な程度の信号平衡化を達成するために、ある調整が必要になるかもしれない。例えば、10倍のノイズ低減は、10%未満の信号不平衡を必要とし、一方、100倍のノイズ低減は1%未満の信号不平衡を必要とする。検出器信号の平衡化は、後述するように、強い方のビームを部分的に阻止することによって、及び/又は、電子モジュール640に調整特性を組み込むことによって達成できる。
【0062】
図6と図12を参照して、さらに他の実施形態では、サンプルおよびリファレンス信号は、「電圧モード」で平衡化される。特に、電子モジュール640は、サンプル増幅器1204と、サンプルフィルタ(例えば、可変利得要素)1206と、リファレンス増幅器1212と、リファレンスフィルタ(例えば、可変利得要素)1214と、差動増幅器1210とをさらに含む。図12で示す回路によれば、リファレンスおよびサンプル検出器634,632で発生した信号638,636は、電圧信号である。リファレンス検出器634で発生した電圧信号638は、リファレンス増幅器1212によって増幅され、リファレンスフィルタ1214によって調整されて所定の信号平衡度を達成する。調整されたリファレンス電圧信号(V)1216は、変換器(例えば、第2変換器)を経由して、I(δ)を得るためのプロセッサ644へ伝送される。調整されたリファレンス電圧信号(V)1216は、差動増幅器1210の反転入力にも伝送される。サンプル検出器632で発生した電圧信号636は、サンプル増幅器1204によって増幅され、サンプルフィルタ1206によって調整されて所定の信号平衡度を達成する。調整されたサンプル電圧信号(V)1208は、差動増幅器1210の非反転入力に伝送される。差動増幅器1210は、差分電圧(V)1218を発生する。差分電圧(V)1218は、第1変換器を経由してI(δ)を得るためのプロセッサ644へ伝送される。他の実施形態では、調整されたサンプル電圧信号(V)1208は、さらに変換器(例えば、第3変換器)を経由して、I(δ)を得るためのプロセッサ644へ伝送される。
【0063】
図6と図13を参照して、他の追加の実施形態では、サンプルおよびリファレンス信号は「電流モード」で平衡化される。特に、。特に、電子モジュール640は、加算点1304と、3つの電流−電圧増幅器(即ち、第1増幅器1306、第2増幅器1314、第3増幅器1308)と、ポテンショメータ1310と、抵抗器1312とをさらに含む。実施形態によれば、リファレンスおよびサンプル検出器634,632(例えば、フォトダイオード)で発生した信号638,636は、電流信号(例えば、光電流)であり、これらは加算点1304で効率的に引き算され、差分電流Iを生じさせる。差分電流Iは、第1電流−電圧増幅器1306の反転入力に伝送され、V1316を生じさせる。さらに、リファレンス電流Iは、第2電流−電圧増幅器1314に伝送され、リファレンスV1318を生じさせる。リファレンスおよびサンプル信号638,636は、サンプル検出器632で発生した電流信号を第3電流−電圧増幅器1308に伝送することによって平衡化され、出力電圧を生じさせる。出力電圧は、ポテンショメータ1310を通じて降下し、抵抗器1312を介して加算点1304へ追加電流として伝送される。追加電流は、サンプル検出器で発生した電流(I)を補う。従って、ポテンショメータ1310は、IとI(リファレンス検出器で発生した電流)を平衡化するように調整される。図13で示す電子モジュールの構成は、サンプル電流636がリファレンス電流638より小さい場合、検出器信号638,636を平衡化するために設計される。他の実施形態では、電子モジュールの構成は、サンプル電流636がリファレンス電流638より大きい場合、検出器信号638,636を平衡化するために設計される。これは、図13の回路の簡単な変更によって達成される。
【0064】
図14は、光学システムが、リファレンスおよびサンプルビームを平衡化し、コヒーレントノイズキャンセルを最適化するためのトリプルビームスプリッタ構成をさらに含む追加の実施形態を示す。上述のようなノイズキャンセルは、干渉計602からの出力ビーム610を第1および第2ビーム(614,616)に分岐する構成要素(例えば、ビームスプリッタ)は、波長依存のない50:50分岐比を有することを前提とする。これは、ビームスプリッタが理想的であることを必要とするため、単一のビームスプリッタを用いて達成することが困難であるかもしれない。図示した実施形態は、ほぼ波長依存のない50:50分岐比を示す3つのビームスプリッタを用いた構成を提供する。
【0065】
図14に示す実施形態では、モジュール606は、第1のビームスプリッタ612(ここでは1402として示す)に加えて、第2および第3のビームスプリッタと、第1および第2の光トラップとをさらに含む。ミラー618は、本実施形態では必要としない。図示したように、モジュール606は、追加の構成要素を収容するように構成される。第1ビームスプリッタ1402、第2ビームスプリッタ1408、第3のビームスプリッタ1418は、実質的に整合している。図示した実施形態によれば、干渉計602からの出力ビーム610は、モジュール1400に入る(例えば、モジュール1400の左方向から)。出力ビーム610は、第1ビームスプリッタ1402に入射し(例えば、45°の入射角)、第1透過ビーム1404と第1反射ビーム1406を出力する。第1透過ビーム1406は第2ビームスプリッタ1408に入射し(例えば、45°の入射角)、第2透過ビーム1410と第2反射ビーム1412を出力する。第2透過ビーム1410は、第1光トラップ1414に捕捉される。第2反射ビーム1412は、リファレンス検出システム1416に入る。第1反射ビーム1406は、第3ビームスプリッタ1418に入射し(例えば、45°の入射角)、第3透過ビーム1420と第3反射ビーム1422を出力する。第3反射ビーム1422は、第2光トラップ1424に捕捉される。第3透過ビーム1420は、サンプル検出システム1416に入る。第2反射ビーム1412および第3透過ビーム1420は、サンプルおよびリファレンス検出器1426に入射する。
【0066】
図示した実施形態において3つのビームスプリッタの使用は、干渉計からの出力ビームに存在する光パワーの半分より大きい損失をもたらす。その正確な量は、特定のビームスプリッタの特性に依存する。約50/50(T/R)の分岐比を持つビームスプリッタは、光損失を最小化する。光損失にも関わらず、トリプルビームスプリッタ構成は、整合した3つのビームスプリッタを用いた場合、出現する2つのビーム(例えば、第2反射ビーム1412および第3透過ビーム1420)は全ての波長で等しいパワーになるという大きな利点を有する。さらに、出現する2つのビーム(例えば、第2反射ビーム1412および第3透過ビーム1420)はまた、全ての波長で等しい偏光および位相を有する。このことはリファレンスおよびサンプルビームの平衡化を著しく簡単化する。予備の測定および計算は、現実的な条件下(機械加工の許容誤差および市販のビームスプリッタ)で、ビームパワーは、UVから遠IRまで全ての波長に渡って0.5%よりかなり小さく異なるだけであることを示しており、これは、光源ノイズキャンセルを、検出器(例えば、フォトダイオード)のショットノイズ限界よりはるかに低く確保するのに充分である。
【0067】
他の追加の実施形態では、第1ビームスプリッタ1402、第2ビームスプリッタ1408、第3のビームスプリッタ1418の代わりに、モジュールは、リファレンスおよびサンプルビームを平衡化し、コヒーレントノイズキャンセルを最適化するためのミラープリズムを含む。この実施形態によれば、出力ビームは、プリズムの2つのミラー面からの反射によって、名目上等しいパワーの第1および第2ビームに分割される。第1および第2ビームは、180°で分岐する。従って、第1および第2ミラーは、第1および第2ビームを反射して、第1および第2ビームが平行な方向に向くように配置される。頂点による光の散乱の可能性のため、ミラープリズムの領域は出力ビームから遮蔽される。第1および第2ビームのパワー比は、プリズムを移動したり、特にアパーチャを位置決めすることによって調整可能である。
【0068】
他の追加の実施形態によれば、上述した可動ミラーのトラッキング誤差は最小化される。可動ミラーのトラッキング誤差は、I(δ)およびI(δ)の両方の横座標においてノイズを生じさせる。任意の時点での誤差と、瞬間の傾斜[dI(δ)/d(δ)]との乗算は、その時点での縦座標誤差を与える。定性的には、I(δ)縦座標の大きさがキャンセルを用いて劇的に減少する場合、瞬間の傾斜[dI(δ)/d(δ)]は、対応して減少するようになり、I(δ)のコヒーレントノイズレベルで大きな減少になる。
【0069】
他の実施形態によれば、多重スキャンの信号平均化を用いて、種々のソースからのノイズを低減する。信号平均化は、N1/2に比例した信号対ノイズ比を改善する。ここで、Nは、平均化したスキャン数である。例えば、10倍だけ信号対ノイズ比を改善するためには、100回スキャンを平均化する。好都合には、上述したキャンセル法は、コヒーレントノイズを低減し、そのため所定の信号対ノイズ比は、既知のFT測定機器を用いたものより少数のスキャンで達成できる。こうして本発明は、データ収集のための任意の期間中について、より良好な最終信号対ノイズ比を達成する。さらに、本発明を用いて高速な処理を検討できる。スペクトルがより迅速に取得でき、スペクトル変化が短い時間スケールで見られるためである。
【0070】
本発明の態様によれば、モジュール(例えば、封止ハウジング)606は、熱ドリフトを最小化するように構成される。一体化(unitary)ハウジング構成は、コンパクトで機械的かつ熱的に安定した、本発明に係る装置を提供でき、上述した何れのタイプの測定も適用できる。熱安定化は主として、一体化した固体金属ハウジングで達成される。高い熱伝導率を有する材料、例えば、アルミニウムが用いられる。装置コンポーネントの搭載および配置を提供するための形状および深さになるように、中空部分が切り出されている。固体金属のカバープレートは、ハウジングを封止し、ハウジングはカバープレートを含む全ての面で断熱(insulate)される。優れた機械的安定性も、ハウジングの一体化構造によって提供される。固体の一体化金属ハウジングは、比較的大きい熱容量をコンパクトなパッケージで提供でき、比較的コンパクト(即ち、小型)な装置を可能にする。
【0071】
ここで図示し説明した本発明の実施形態における動作の実行順序または性能は、他に言及しない限りは本質的ではない。即ち、動作は、他に言及しない限りは任意の順序で実行してもよく、本発明の実施形態は、ここで開示したものよりも追加または少数の動作を含んでもよい。例えば、他の動作の前、同時または後に特定の動作を実行または実施することは、本発明の態様の範囲内である。
【0072】
本発明の態様または実施形態の要素を導入する際、冠詞"a" "an" "the"および"said"は、1又はそれ以上の要素が存在していることを意味することを意図する。用語「備える(comprising)、含む(including)、有する(having)」は、包含的であることを意図し、列挙した要素とは別の追加の要素が存在してもよいことを意味する。
【0073】
本発明の態様を詳細に説明したが、添付請求項で定義されたような本発明の態様の範囲から逸脱することなく、変更および変形が可能であることは明らかであろう。本発明の態様の範囲から逸脱することなく、上記の構成、製品および方法において種々の変化が可能であるため、上記説明に含まれており、添付画面で示された全ての事項は、例示として解釈すべきであり、限定する意味ではないことを意図している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から光源ビームを受けて、干渉効果を導入するための干渉計と、
干渉計から干渉効果を有する光源ビームを受けるための封止されたハウジングと、
干渉効果を有する光源ビームをリファレンスビームおよびサンプルビームに分岐し、リファレンスビームおよびサンプルビームを別個の経路に向けるための、ハウジング内にある光学システムと、
ハウジング内にあるリファレンス室であって、リファレンスビームと相互作用するためのリファレンスを含み、前記相互作用は、ある方向の出力リファレンスビームを生じさせるようにしたリファレンス室と、
出力リファレンスビームの方向に基づいて、出力リファレンスビームの少なくとも一部を検出し、検出光を表すリファレンス信号を発生するためのリファレンス光検出器と、
ハウジング内にあるサンプル室であって、サンプルビームと相互作用するためのサンプルを含み、前記相互作用は、ある方向の出力サンプルビームを生じさせるようにしたサンプル室と、
出力サンプルビームの方向に基づいて、出力サンプルビームの少なくとも一部を検出し、検出光を表すサンプル信号を発生するためのサンプル光検出器と、
リファレンス信号に比例したリファレンス電圧および、リファレンス信号とサンプル信号との差分に比例した差分電圧を出力するための検出器回路と、
差分電圧に基づいてサンプルのスペクトルを決定するように構成されたプロセッサとを備える分光測光システム。
【請求項2】
プロセッサはさらに、リファレンス電圧に基づいてサンプルのスペクトルを決定するように構成されている請求項1記載の分光測光システム。
【請求項3】
プロセッサはさらに、サンプル電圧に基づいてサンプルのスペクトルを決定するように構成されている請求項1記載の分光測光システム。
【請求項4】
リファレンスは、リファレンスビームの少なくとも一部を特定方向に反射し、
出力リファレンスビームは、前記特定方向のリファレンスビームの前記反射部分を含む請求項1記載の分光測光システム。
【請求項5】
リファレンスは、リファレンスビームの少なくとも一部を特定方向に透過し、
出力リファレンスビームは、前記特定方向のリファレンスビームの前記透過部分を含む請求項1記載の分光測光システム。
【請求項6】
サンプルは、サンプルビームの少なくとも一部を特定方向に反射し、
出力サンプルビームは、前記特定方向のサンプルビームの前記反射部分を含む請求項1記載の分光測光システム。
【請求項7】
サンプルは、サンプルビームの少なくとも一部を特定方向に透過し、
出力サンプルビームは、前記特定方向のサンプルビームの前記透過部分を含む請求項1記載の分光測光システム。
【請求項8】
検出器回路は、可変利得要素を含み、前記可変利得要素はリファレンス信号およびサンプル信号を平衡化するようにした請求項1記載の分光測光システム。
【請求項9】
検出器回路は、リファレンス信号およびサンプル信号を平衡化するようにフィードバックを有する加算点を含む請求項1記載の分光測光システム。
【請求項10】
差分電圧に基づいてサンプルのスペクトルを決定するように構成されたプロセッサは、差分電圧からインターフェログラムを発生し、インターフェログラムのフーリエ変換を計算するように構成されたプロセッサを含み、
前記スペクトルは、インターフェログラムのフーリエ変換の関数である請求項1記載の分光測光システム。
【請求項11】
差分電圧を所定の周期でアナログ信号からデジタル信号へ変換するための第1変換器と、
リファレンス電圧を所定の周期でアナログ信号からデジタル信号へ変換するための第2変換器と、
サンプル電圧を所定の周期でアナログ信号からデジタル信号へ変換するための第3変換器とをさらに備える請求項1記載の分光測光システム。
【請求項12】
光源から光源ビームを受けて、干渉効果を導入するための干渉計と、
封止されたハウジングと、
ハウジング内に設けられ、干渉計の出力と光学的に連結され、透過側と反射側を有する第1ビームスプリッタと、
ハウジング内に設けられ、前記第1ビームスプリッタの透過側と光学的に連結した第2ビームスプリッタと、
ハウジング内に設けられ、前記第1ビームスプリッタの反射側と光学的に連結した第3ビームスプリッタと、
ハウジング内に設けられ、前記第2および第3ビームスプリッタの一方と光学的に連結したリファレンス検出システムと、
ハウジング内に設けられ、前記第2および第3ビームスプリッタの他方と光学的に連結したサンプル検出システムとを備える分光測光装置。
【請求項13】
前記リファレンス検出システムおよび前記サンプル検出システムは、前記第2ビームスプリッタの反射側および前記第3ビームスプリッタの透過側と光学的に連結している請求項12記載の分光測光装置。
【請求項14】
前記中空部分の一部として形成され、前記第2ビームスプリッタから透過した光および前記第3ビームスプリッタから反射した光を捕捉するように配置された光トラップをさらに備える請求項12記載の分光測光装置。
【請求項15】
前記リファレンスおよびサンプル検出システムから反射した光を捕捉する、追加の光トラップをさらに備える請求項12記載の分光測光装置。
【請求項16】
前記リファレンス検出システムおよび前記サンプル検出システムは、
相互作用面を有するプリズムと、
検出器と、
前記プリズムから出力されたビームを前記検出器に集光するレンズと、
気体または液体を相互作用面に供給するための入口および出口を有する、閉じた相互作用空間と、をそれぞれ備える請求項12記載の分光測光装置。
【請求項17】
前記リファレンス検出システムおよび前記サンプル検出システムは、
反射相互作用面と、
検出器と、
前記反射相互作用面から出力されたビームを前記検出器に集光するレンズと、
気体または液体を反射相互作用面に供給するための入口および出口を有する、閉じた相互作用空間と、をそれぞれ備える請求項12記載の分光測光装置。
【請求項18】
前記リファレンス検出システムおよび前記サンプル検出システムは、
つや消し相互作用面と、
検出器と、
前記つや消し相互作用面から出力された散乱出力を前記検出器に集光するレンズまたはミラーと、
気体または液体を相互作用面に供給するための入口および出口を有する、閉じた相互作用空間と、をそれぞれ備える請求項12記載の分光測光装置。
【請求項19】
サンプル物質に関する光学スペクトルを決定するための方法であって、
外部光源から、複数の波長を有する光を含む光源ビームを受けること、
光源ビームをリファレンスビームおよびサンプルビームに分岐すること、
リファレンスビームを、リファレンス物質を有するリファレンスセルに向けて、前記リファレンス物質はリファレンスビームと相互作用し、前記相互作用は、ある方向の出力リファレンスビームを生じさせること、
サンプルビームを、サンプル物質を有するサンプルセルに向けて、前記サンプル物質はサンプルビームと相互作用し、前記相互作用は、ある方向の出力サンプルビームを生じさせること、
出力リファレンスビームの少なくとも一部および、出力サンプルビームの少なくとも一部を検出すること、
出力リファレンスビームの検出部分を表すリファレンス信号および、出力サンプルビームの検出部分を表すサンプル信号を発生すること、
リファレンス信号に比例したリファレンス電圧および、リファレンス信号とサンプル信号との差分に比例した差分電圧を発生すること、
差分電圧に基づいてサンプルのスペクトルを決定すること、を含む方法。
【請求項20】
光源ビームに干渉効果を導入することをさらに含み、
差分電圧に基づいてサンプルのスペクトルを決定することは、差分電圧からインターフェログラムを発生し、インターフェログラムのフーリエ変換を計算することを含む請求項19記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公表番号】特表2010−538266(P2010−538266A)
【公表日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−523037(P2010−523037)
【出願日】平成20年8月20日(2008.8.20)
【国際出願番号】PCT/US2008/073659
【国際公開番号】WO2009/029446
【国際公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(501305844)ザ・キュレーターズ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・ミズーリ (12)
【氏名又は名称原語表記】THE CURATORS OF THE UNIVERSITY OF MISSOURI
【Fターム(参考)】