説明

ブレーキ装置及びこれを備えた軌道系車両

【課題】メンテナンスコストの低減を図ることができるとともに、常用ブレーキの故障時であっても非常ブレーキを作動させることが可能なブレーキ装置及び該ブレーキ装置を備えた軌道系車両を提供する。
【解決手段】空気バネ310の圧力に基づいて、圧縮空気源300の空気圧から非常ブレーキ時のブレーキ圧に相当する応荷重圧を生成する応荷重弁10と、常用ブレーキ時に圧縮空気源300の空気圧を出力する一方、非常ブレーキ時に応荷重圧力を出力する切換弁40と、常用ブレーキ時に切換弁40から供給される空気圧を調圧してブレーキ圧として出力するとともに、非常ブレーキ時に切換弁40から供給される応荷重圧をブレーキ圧として出力する圧力制御弁60とからブレーキ装置1を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両等の軌道系車両のブレーキ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1には、常用ブレーキ指令信号に応じたブレーキ指令圧を出力する電磁弁と、この電磁弁が出力するブレーキ指令圧を制御圧として容量増幅を行うことで常用ブレーキのブレーキ圧を生成する中継弁とを備えたブレーキ装置が開示されている。
【0003】
さらに、このブレーキ装置は、乗客の重量を含む車両の全重量に応じた容量増幅を行い応荷重圧を生成する応荷重弁を備えている。非常ブレーキ時には応荷重圧が中継弁に制御圧として入力されることで、中継弁が当該応荷重圧の容量増幅を行って非常ブレーキのブレーキ圧を生成する。
また、例えば特許文献2には、鉄道車両のブレーキ装置に用いられる弁装置として、中継弁よりも簡易な構成をなす圧力制御弁が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4310149号公報
【特許文献2】特開平11−265219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来のブレーキ装置では、常用ブレーキ時、非常ブレーキ時にブレーキシリンダに供給されるブレーキ圧がいずれも中継弁によって生成されるため、万が一中継弁に故障が発生すれば、常用ブレーキの作動はおろか非常ブレーキを作動させることもできなくなってしまう。しかしながら、フェールセーフの観点からは、常用ブレーキが故障したとしても非常ブレーキを常時作動することが可能なシステムを構築することが好ましい。
【0006】
一方、中継弁は、常用ブレーキ、非常ブレーキ双方に供される分だけ使用回数は高く、故障を未然に防ぐためにはメンテナンス頻度を高くする必要がある。さらに、中継弁は、排気弁棒や弁等の可動部を数多く有し、構造が複雑な分だけメンテナンスコストが増加してしまう。
【0007】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであって、メンテナンスコストの低減を図ることができるとともに、常用ブレーキを作動させることができない場合であっても非常ブレーキを作動させることが可能なブレーキ装置、及び、このブレーキ装置を備えた軌道系車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は以下の手段を提供している。
即ち、本発明に係るブレーキ装置は、空気バネの圧力に基づいて、圧縮空気源の空気圧から非常ブレーキ時のブレーキ圧に相当する応荷重圧を生成する応荷重弁と、常用ブレーキ時に前記圧縮空気源の圧縮空気圧を出力する一方、非常ブレーキ時に前記応荷重圧を出力する切換弁と、常用ブレーキ時に前記切換弁から供給される前記圧縮空気圧を調圧してブレーキ圧として出力するとともに、非常ブレーキ時に前記切換弁から供給される前記応荷重圧をブレーキ圧として出力する圧力制御弁とを備えることを特徴とする。
【0009】
このような特徴のブレーキ装置においては、常用ブレーキ時には圧縮空気源の圧縮空気圧が切換弁を介して圧力制御弁に供給される。圧力制御弁ではこの圧縮空気圧に調圧を施すことによって常用ブレーキ時のブレーキ圧を生成し出力する。
一方、非常ブレーキ時には、応荷重弁によって圧縮空気源の圧縮空気圧から生成される応荷重圧が、切換弁を介して圧力制御弁に供給される。この応荷重圧は、非常ブレーキ時のブレーキ圧に相当する。そして、圧力制御弁では、この応荷重圧に調圧を施すことなく、ブレーキ圧として出力する。
このように、応荷重弁、切換弁及び圧力制御弁によって常用ブレーキ時、非常ブレーキ時に適切なブレーキ圧を生成することができるため、構造が複雑で使用頻度の高い中継弁を使用しない分、メンテナンスコストの低減を図ることができる。
さらに、常用ブレーキ時のブレーキ圧を生成する圧力制御弁が故障し、入力される圧力に対して調圧を施すことができなくなった場合であっても、応荷重弁が非常ブレーキ時のブレーキ圧に相当する応荷重圧を生成し、圧力制御弁が当該応荷重弁をそのまま出力することによって、非常ブレーキ時のブレーキ圧を出力することができる。
【0010】
また、本発明に係るブレーキ装置において、前記圧力制御弁は、前記切換弁の出力圧が一次側圧力として供給される第一室と、前記ブレーキ圧としての二次側圧力が生成される第二室と、パイロット圧としての前記一次側圧力が導入された際に、前記第一室及び第二室間の連通路を閉塞するとともに、パイロット圧としての大気圧が導入された際に前記第一室及び第二室間の連通路を開放する第一弁部と、パイロット圧としての前記二次側圧力が導入された際に前記第二室及び大気間の連通路を閉塞するとともに、パイロット圧としての大気圧が導入された際に前記第二室及び大気間の連通路を開放する前記第二弁部と、励磁されることで前記第一弁部に前記一次側圧力を供給する一方、消磁されることで前記第一弁部に大気圧を供給する第一電磁弁と、励磁されることで前記第二弁部に大気圧を供給する一方、消磁されることで前記第二弁部に前記二次側圧力を供給する第二電磁弁とを有することを特徴とする。
【0011】
このような圧力制御弁は、二次側圧力を任意に増圧及び減圧することができるとともに、故障時、特に、第一電磁弁及び第二電磁弁の励磁が不可能となった場合であっても一次側圧力をそのまま二次側圧力として出力することができる。
即ち、二次側圧力を増圧する際には、第一電磁弁を消磁することで第一室及び第二室間の連通路を開放する。すると、当該連通路を介して第一室の空気が第二室に導入され二次側圧力が増圧する。また、この際、第二電磁弁を消磁すると第二室及び大気間の連通路が閉塞されることで第二室内の空気が大気へ排出されることが妨げられる。これにより、二次側圧力の低下が阻止される。そして、二次側圧力が所望の圧力に達した際には、第一電磁弁を励磁することにより第一弁部に一次側圧力を導入し、第一室及び第二室間の連通路を閉塞する。これにより、第二室への一次側圧力の導入が停止され、二次側圧力の増加が停止する。
一方、二次側圧力を減圧する際には、第二電磁弁を励磁することで第二室及び大気間の連通路を開放する。すると、当該連通路を介して第二室の空気が大気に放出されることで二次側圧力が減圧される。
このように、第一電磁弁、第二電磁弁を消励磁することで、二次側圧力を任意の圧力に設定することができる。
さらに、第一電磁弁及び第二電磁弁が励磁不可能となった場合には、第一室及び第二室間の連通路が開放状態となるとともに、第二室及び大気間の連通路が閉塞状態となることで、一次側圧力がそのまま第二室に導入される。これにより、一次側圧力を二次側圧力として出力することができる。
【0012】
さらに、本発明に係るブレーキ装置は、前記二次側圧力を検出する圧力センサをさらに有し、前記圧力センサの検出する前記二次側圧力と外部から入力される常用ブレーキ指令の指令圧力とを比較する圧力比較部と、該圧力比較部による前記二次側圧力及び前記指令圧力の比較結果に基づき前記第一電磁弁及び前記第二電磁弁を消励磁する調圧部とを有する制御装置をさらに備えることを特徴とする。
【0013】
このように、制御装置が二次側圧力を検出する圧力センサと常用ブレーキ指令の指令圧力とを比較して、この比較結果に基づき第一電磁弁及び第二電磁弁を消励磁することで、指令圧力に応じたブレーキ圧としての二次側圧力を生成することができる。
【0014】
さらに、本発明に係るブレーキ装置において、前記圧力制御弁は、励磁されることで前記第一弁部に前記一次側圧力を供給する副第一電磁弁と、前記第二電磁弁と直列的に配置され、励磁されることで前記第二電磁弁による前記第二弁部への前記二次側圧力の供給を停止して、前記第二弁部に大気圧を供給する副第二電磁弁とをさらに有し、前記制御装置は、外部から入力される副電磁弁操作指令に基づいて、前記副第一電磁弁及び前記副第二電磁弁を消励磁する遠隔操作部をさらに有することを特徴とする。
【0015】
このような特徴のブレーキ装置によれば、第一電磁弁及び第二電磁弁が故障して励磁できなくなった場合であっても、副第一電磁弁及び副第二電磁弁を遠隔操作により消励磁することで、ブレーキ圧としての二次側圧力の生成や当該ブレーキ圧の開放を行うことができる。これにより、冗長性をもったシステムを実現することが可能となる。
【0016】
また、本発明に係るブレーキ装置は、車輪の速度を検出する速度センサをさらに備え、前記制御装置は、前記速度センサの検出する前記車輪の速度に基づいて、前記車輪が滑走しているか否かを判定する滑走判定部と、前記車輪が滑走していると前記滑走判定部が判定した際に、前記第一電磁弁を励磁するとともに前記第二電磁弁を励磁する滑走解除部とをさらに有することを特徴とする。
【0017】
ここで、応荷重弁及び中継弁を備えた従来のブレーキ装置において滑走制御、即ち、車輪滑走時にブレーキ圧を開放させる制御を行おうとした場合、別個に滑走防止弁等を設ける必要があり、コストが増加してしまう他、ブレーキ装置自体の大型化を招きコストが増加してしまうという問題がある。
これに対して本発明のブレーキ装置においては、制御装置による車輪が滑走しているか否かの判定に基づいて第一電磁弁及び第二電磁弁を励磁することでブレーキ圧の開放を行うことができる。これによって、別個に滑走防止弁を設けずとも、圧力制御弁を利用して容易に滑走制御を行うことができる。
【0018】
さらに、本発明に係る軌道系車両は、上記いずれかに記載のブレーキ装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明のブレーキ装置及び軌道系車両によれば、応荷重弁、切換弁及び圧力制御弁を組み合わせてブレーキ装置を構成したことにより、中継弁を用いることなく常用ブレーキ時、非常ブレーキ時に適切なブレーキ圧を生成することができる。また、圧力制御弁の第一電磁弁及び第二電磁弁が故障して励磁不可能となった場合であっても、当該圧力制御弁が応荷重圧をそのまま出力することによって、非常ブレーキ時のブレーキ圧を出力することができる。したがって、コストの低減を図ることができるとともに、常用ブレーキを作動させることができない場合であっても非常ブレーキを作動させることが可能なブレーキ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施形態のブレーキ装置の概略構成図である。
【図2】実施形態の応荷重弁の概略構成図である。
【図3】実施形態の切換弁の概略構成図である。
【図4】実施形態の圧力制御弁の概略構成図である。
【図5】実施形態の制御装置の機能ブロック図である。
【図6】制御装置の制御フローを説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明のブレーキ装置の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1に示すように、ブレーキ装置1は、弁本体ブロック2と、該弁本体ブロック2内に一体に収容された応荷重弁10、切換弁40、圧力制御弁60、複式逆止弁140及び圧力センサ150と、弁本体ブロック2の外部に設けられた速度センサ160及び制御装置200とによって構成されている。本実施形態のブレーキ装置1は、軌道系車両としての鉄道車両に搭載される。
【0022】
弁本体ブロック2は、内部に空気が流通する管路が形成されており、該弁本体ブロック2に一体に設けられた管座の表面に上記管路の一部が開口することで圧縮空気源接続ポート3、一対の空気バネ接続ポート4、ブレーキシリンダ接続ポート5、保安ブレーキ接続ポート6が形成されている。
【0023】
圧縮空気源接続ポート3には、弁本体ブロック2の外部に設けられた圧縮空気源300が接続されており、これによって圧縮空気源300の圧縮空気圧(SR圧)が圧縮空気源接続ポート3を介して弁本体ブロック2の管路内に導入される。
また、空気バネ接続ポート4には、それぞれ鉄道車両の台車上にて車両本体を支持する空気バネ310が接続されており、一対の空気バネ310の圧力(AS1圧、AS2圧)が弁本体ブロック2の管路に導入される。これらAS1圧及びAS2圧は乗客を含む車両の重量に応じた圧力を有している。
なお、これらAS1圧及びAS2圧は、車両の複数の台車にそれぞれ設けられた空気バネ310毎の圧力であってもよいし、複数の空気バネ310の平均圧力であってもよい。例として、一車両が4つの台車を備え、各台車に1つの空気バネ310が設けられている場合には、2つの台車における空気バネ310の平均圧力をAS1圧とし、残りの2つの台車における空気バネ310の平均圧力をAS2としてもよい。
【0024】
さらに、ブレーキシリンダ接続ポート5には、車輪340に対して押圧される制輪子330を操作するブレーキシリンダ320が接続されている。これにより、ブレーキ装置1内で生成されたブレーキ圧(BC圧)がブレーキシリンダ320に導入されるようになっている。
そして、保安ブレーキ接続ポート6には、保安ブレーキが接続されており、常用ブレーキが故障した際に保安ブレーキの圧力(HB圧)が保安ブレーキ接続ポート6を介して弁本体ブロック2の管路に導入されるようになっている。
【0025】
次に応荷重弁10について説明する。この応荷重弁10は、弁本体ブロック2内の管路を介してSR圧、AS1圧及びAS2圧が供給され、AS1圧及びAS2圧を制御圧としてSR圧から非常ブレーキ時のBC圧に相当する応荷重圧(VL圧)を生成し出力する。本実施形態の応荷重弁10は、図2に示すように応荷重弁本体11と増圧電磁弁31とによって構成されている。
【0026】
応荷重弁本体11は、軸線Pを中心として延在しており、軸線P方向一方側(図2における上側)から軸線P方向他方側(図2における下側)に向かって順次隣り合うように配置された第一室12、第二室13、第三室14、第四室15、第五室16及び第六室17を備えている。
【0027】
第一室12及び第二室13は第一ダイアフラム21によって仕切られており、第二室13及び第三室14は第二ダイアフラム22によって仕切られている。また、第三室14及び第四室15は第三ダイアフラム23によって仕切られており、第四室15及び第五室16は第四ダイアフラム24によって仕切られている。なお、第一ダイアフラム21、第二ダイアフラム22、第三ダイアフラム23及び第四ダイアフラム24はそれぞれ弾性変形可能な皮膜状をなす部材である。
また、第五室16と第六室17との間は、これら第五室16と第六室17とを互いに連通する連通孔26aを備えた仕切り板26によって仕切られている。
【0028】
第一室12には、該第一室12内外を連通するとともに一対の空気バネ接続ポート4のうちの一方と管路を介して接続された第一空気バネ圧導入口12aが形成されている。この第一空気バネ圧導入口12aを介して第一室12内に常にAS1圧が導入されるようになっている。
また、第二室13には、該第二室13内外を連通するとともに一対の空気バネ接続ポート4のうちの他方と管路を介して接続された第二空気バネ圧導入口13aが形成されている。この第二空気バネ圧導入口13aを介して第二室13内に常にAS2圧が導入されるようになっている。
【0029】
第三室14内には、第一室12側の端部、即ち、軸線P一方側の端部が第二ダイアフラム22に接続されるとともに第六室17側の端部、即ち、軸線P他方側の端部が第三ダイアフラム23に接続されたコイルスプリング25が設けられている。これにより、第二ダイアフラム22が第六室17側に変位した際には、コイルスプリング25を介して当該変位が第六室17側に向かう力として第三ダイアフラム23に伝達される。
また、第五室16には、該第五室16を内外に連通する応荷重圧出力口16aが形成されている。応荷重弁10によって生成されるVL圧はこの応荷重圧出力口16aから出力される。
【0030】
第六室17は、その軸線P方向他方側の端部に大気と連通する圧力排出口17aが形成されており、さらに、第六室17内外を連通するとともに管路を介して圧縮空気源接続ポート3に接続された圧縮空気圧導入口17bが形成されている。
また、この第六室17内には、軸線P方向にスライド可能な可動弁座27が設けられている。この可動弁座27は、軸線P方向一方側の端部に仕切り板26における連通孔26aの縁部と密着可能とされたリング状の弁座本体27aを備え、さらに、該弁座本体27aから軸線P方向他方側に向かって該軸線Pを中心として筒状に延びる仕切り筒体27bを備えている。
【0031】
第六室17は仕切り筒体27bによって二室に区画されており、該仕切り筒体27bの内側の空間が圧力排出口17aが存在する圧力排出室17cとされ、仕切り筒体27bの外側の空間が圧縮空気圧導入口17bが存在する圧力導入室17dとされている。
そして、この可動弁座27はコイルスプリング等の付勢部材17eによって軸線P方向一方側に付勢されている。これにより、可動弁座27に外力が作用しない限り弁座本体27aが仕切り板26の連通孔26aの縁部と密着するようになっている。また、この状態においては、連通孔26aは第五室16と第六室17における圧力排出室17cとを連通状態とし、第六室17の圧力導入室17dは第五室16及び圧力排出室17cと隔離されている。
【0032】
そして、この応荷重弁本体11内には、該応荷重弁本体11の軸線P方向一方側から挿入されて軸線P方向他方側に向かって延びる弁棒28が設けられている。
この弁棒28は、第一ダイアフラム21及び第二ダイアフラム22とはそれぞれ軸線P方向に独立して移動可能とされる一方、第三ダイアフラム23及び第四ダイアフラム24とは互いに接続されており、これら第三ダイアフラム23及び第四ダイアフラム24の移動に連動して弁棒28が軸線P方向に移動するようになっている。
【0033】
また、弁棒28の先端、即ち、軸線P方向他方側の端部には、軸線Pを中心として該軸線P方向他方側に向かって拡径する円錐状をなす弁本体28aが設けられている。この弁本体28aの直径は上記連通孔26aの内径よりも小さく設定されており、これにより連通孔26aを軸線P方向に通過できるようになっている。また、弁本体28aの先端、即ち、軸線P方向他端側の端部は、弁棒28が軸線P方向他方側に移動した際に可動弁座27の弁座本体27aに軸線P方向一方側から当接するようになっている。弁本体28aが弁座本体27aに当接した際には、弁座本体27aのリング状の内側が閉塞されることで圧力排出室17cと第五室16との連通状態が閉塞される。そして、この状態から弁棒28がさらに軸線P方向他方側に移動すると、可動弁座27が図示しない付勢部材の付勢に抗して軸線P方向他方側に押し込まれることによって、該可動弁座27が軸線P方向他方側にスライドする。これにより、弁座本体27aが連通孔26aの縁部から離間するとともに、仕切り筒体27bが軸線P方向他方側に移動することで第五室16と圧力導入室17dとの閉塞状態が解除され、即ち、第五室16と圧力導入室17dとが連通孔26aを介して連通状態となる。
【0034】
増圧電磁弁31は、大気と連通する排出口33を備えた前室32と、該前室32及び応荷重弁本体11の第四室15と連通する中間室34と、該中間室34及び応荷重弁本体11の第五室16と連通する後室35とを備えている。また、増圧電磁弁31には、消励磁されることにより、前室32及び中間室34間の連通路又は中間室34及び後室35間の連通路のいずれか一方を連通状態とし他方を閉塞状態とする電磁弁本体36が設けられている。この電磁弁本体36は、消磁状態においては後室35内に設けられたコイルスプリング37に付勢されることで中間室34及び後室35間の連通路を閉塞し、前室32及び中間室34間の連通路を連通状態としている。そして、励磁状態においては、前室32及び中間室34間の連通路を閉塞し、中間室34及び後室35間の連通路を開放する。
【0035】
次に切換弁40について説明する。この切換弁40は、切換弁本体41とパイロット電磁弁50とを備えている。
この切換弁本体41は、図3に示すように、パイロット室42と、該パイロット室42の一方側に隣接する応荷重圧導入室43と、該応荷重圧導入室43の一方側に隣接し出力口44aが形成された出力室44と、該出力室44の一方側に隣接する圧縮空気圧導入室45とを備えている。
パイロット室42は、管路を介して圧縮空気源接続ポート3に接続されており、これによってパイロット室42にはSR圧がパイロット圧として導入される。
応荷重圧導入室43は、管路を介して応荷重弁10の応荷重圧出力口16aを接続されている。これによって、応荷重圧導入室43には、応荷重弁10の出力であるVL圧が導入される。
また、圧縮空気圧導入室45は管路を介して圧縮空気源接続ポート3に接続されている。これによって、圧縮空気圧導入室45には、SR圧が導入される。
なお、応荷重圧導入室43と出力室44とは第一連通孔46を介して互いに連通されており、さらに、圧縮空気圧導入室45と出力室44とは第二連通孔47を介して互いに連通されている。
【0036】
そして、この切換弁本体41の内部には、パイロット室42から応荷重圧導入室43、出力室44及び圧縮空気圧導入室45にわたって延びる弁棒48が設けられている。この弁棒48の延在方向の略中央には、弁体48aが設けられており、弁棒48がその延在方向に移動することで弁体48aが第一連通孔46又は第二連通孔47のいずれか一方を閉塞するようになっている。また、弁棒48の一端はパイロット室42内に導入されており、該弁棒48の一端にパイロット室42内の圧力が付与されるようになっている。
【0037】
パイロット電磁弁50は、圧縮空気源接続ポート3と切換弁本体41のパイロット室42とを接続する管路に設けられており、消磁されている際には、当該管路を開放状態としてパイロット室42にパイロット圧としてSR圧を導入する一方、励磁されることによって、当該管路を閉塞するとともにパイロット室42の圧力を大気に開放する。
なお、このパイロット電磁弁50は、車両の電源がオンとなることに伴って励磁された状態となる。
【0038】
次に、圧力制御弁60について説明する。この圧力制御弁60は、常用ブレーキ時に切換弁40から供給されるSRを調圧してBC圧として出力するとともに、非常ブレーキ時に切換弁40から供給されるVL圧をそのままBC圧として出力する役割を有している。
本実施形態の圧力制御弁60は、図4に示すように、弁装置本体70、第一電磁弁100、副第一電磁弁110、第二電磁弁120及び副第二電磁弁130から構成されている。
【0039】
弁装置本体70は、第一室71、第二室72、第一弁部80、第二弁部90とを備えている。
第一室71は、該第一室71内外を連通するとともに切換弁40における切換弁本体41の出力口44aと管路を介して接続された一次側圧力導入口71aを備えている。これにより、第一室71内には、一次側圧力導入口71aを介して切換弁本体41の出力圧が供給される。
【0040】
第二室72は、第二室72内外を連通するとともに、管路を介してブレーキシリンダ接続ポート5と接続された二次側圧力出力口72aを備えている。これにより、第二室72内で生成された二次側圧力が、二次側圧力出力口72aを介してブレーキシリンダ接続ポート5に導入される。
また、第一室71及び第二室72間には、これらを互いに連通する連結連通路(連通路)73が設けられており、さらに、第二室72には、該第二室72内外を連通して大気と接続された大気連通路(連通路)74が設けられている。
【0041】
第一弁部80は、第一室71に隣接するように設けられている。この第一弁部80は、上記連結連通路73の第一室71側の開口を閉塞するように設けられた弾性変形可能な皮膜状をなす第一ダイアフラム81と、該第一ダイアフラム81を介して第一室71と仕切られた第一パイロット室82とを備えている。また、第一弁部80は、第一パイロット室82内部に、上記第一ダイアフラム81を第一室71側に向かって、即ち、連結連通路73の第一室71側の開口に向かって付勢するコイルスプリング83を備えている。
【0042】
さらに、第一弁部80は、第一パイロット室82内外を連通する第一パイロット圧導入口84を備えている。この第一パイロット圧導入口84は第一供給通路85を介して、第一室71と切換弁本体41の出力口44aとを接続する管路に接続されている。これにより、第一パイロット室82内には、上記一次側圧力が第一パイロット圧導入口84を介して導入されるようになっている。
この第一弁部80は、パイロット圧としての一次側圧力が第一パイロット室71に導入された際に、第一室71及び第二室72間の連結連通路73を閉塞する一方、パイロット圧としての大気圧が第一パイロット室82に導入された際には第一室71及び前記第二室72間の連結連通路73を開放する。
【0043】
第二弁部90は、第二室72に隣接するように設けられている。この第二弁部90は、上記大気連通路74の開口を閉塞するように設けられた弾性変形可能な皮膜状をなす第二ダイアフラム91と、該第にダイアフラムを介して第二室72と仕切られた第二パイロット室92とを備えている。また、第二弁部90は、第二パイロット室92内部に、上記第二ダイアフラム91を第二室72側に向かって、即ち、大気連通路74の開口に向かって付勢するコイルスプリング93を備えている。
【0044】
さらに、第二弁部90は、第二パイロット室92内外を連通する第二パイロット圧導入口94を備えている。この第二パイロット圧導入口94は第二供給通路95を介して、第二室72とブレーキシリンダ接続ポート5とを接続する管路に接続されている。これにより、第二パイロット室92内には、上記二次側圧力が第二パイロット圧導入口94を介して導入されるようになっている。
この第二弁部90は、パイロット圧としての二次側圧力が第二パイロット室92に導入された際に第二室72及び大気間の大気連通路73を閉塞する一方、パイロット圧としての大気圧が第二パイロット室92に導入された際に第二室72及び大気間の大気連通路73を開放する。
【0045】
第一電磁弁100は、上記第一供給通路85に設けられており、消励磁されることにより該第一供給通路85を開閉する。具体的には、この第一電磁弁100が励磁された際には、第一電磁弁100が第一供給通路85を開放して上記第一パイロット室82への一次側圧力の導入を許容する一方、第一電磁弁100が消磁された際には、第一電磁弁100が第一供給通路85を閉塞して第一パイロット室82への一次側圧力の導入を禁止する。
第一電磁弁100は、上記第一供給通路85に設けられている。この第一電磁弁100は、消磁されている状態においては、第一電磁弁100の上流側の第一供給通路85を閉塞するとともに下流側の第一供給通路85を大気に連通させる。これによって、第一パイロット室82内に大気圧を供給する。一方、第一電磁弁100は、励磁されている状態においては、該第一電磁弁100の上流側及び下流側の第一供給通路85を連通させて上記第一パイロット室82への一次側圧力の導入を許容する。
【0046】
副第一電磁弁110は、第一供給通路85における第一電磁弁100と第一パイロット圧導入口84との間に設けられている。また、この副第一電磁弁110には、第一電磁弁100の上流側の第一供給通路85から分岐して延びるバイパス路111が接続されている。
そして、この副第一電磁弁110は、消磁されている状態においては、第一供給通路85における第一電磁弁100と第一パイロット圧導入口84との間を開放状態とする一方、励磁された際には、第一供給通路85における第一電磁弁100と第一パイロット圧導入口84との間を閉塞状態とするとともにバイパス路111を介して第一パイロット室82に一次側圧力を導入する。
【0047】
第二電磁弁120は、上記第二供給通路95に設けられている。この第二電磁弁120は、消磁されている状態においては、第二電磁弁120は第二供給通路95を開放して上記第二パイロット室92への二次側圧力の導入を許容する。これに対して第二電磁弁120が励磁された際には、この第二電磁弁120の上流側の第二供給通路95を閉塞するとともに下流側の第二供給通路95を大気に連通させる。これによって、第二パイロット室92内に大気圧を供給する。
【0048】
副第二電磁弁130は、上記第二供給通路95における下流側に設けられており、上記第二電磁弁120と同様の構成をなしている。即ち、副第二電磁弁130は、消磁されている際には、第二電磁弁120は第二供給通路95を開放する一方、励磁された際には、下流側の第二供給通路95を大気に連通して第二パイロット室92内に大気圧を供給する。
【0049】
次に複式逆止弁140について説明する。
図1に示すように、複式逆止弁140は、保安ブレーキ接続ポート6、ブレーキシリンダ接続ポート5及び圧力制御弁60の弁装置本体70における二次側圧力出力口72a(図3参照)の3つに接続されている。そして、保安ブレーキ接続ポート6から供給されるHB圧と二次側圧力出力口72aから供給される圧力制御弁60の二次側圧力とのうち、圧力の高い方を保安ブレーキ接続ポート6に供給する。
これにより、通常時、即ち、保安ブレーキが非作動の場合には、圧力制御弁60の二次側圧力がブレーキシリンダ接続ポート5に供給される一方、保安ブレーキが作動して保安ブレーキ接続ポート6にHB圧が供給された際には、当該HB圧は圧力制御弁60の二次側圧力よりも常に高い圧力となるため、ブレーキシリンダ接続ポート5にはHB圧が供給される。
【0050】
次に圧力センサ150及び速度センサ160について説明する。
圧力センサ150は、複式逆止弁140とブレーキシリンダ接続ポート5との間の管路に設けられえており、当該管路の圧力を検出している。なお、この管路には、ブレーキシリンダ320に対して供給される圧力、即ち、BC圧が存在している。したがって、圧力センサ150は、常にBC圧を検出している。この圧力センサ150が検出したBC圧の値は制御装置200へと入力される。
【0051】
速度センサ160は、車輪340の回転数を検出するセンサであって、当該車輪340の回転数と車輪340の直径とから車両の進行速度が算出される。本実施形態においては、例えば、一車両の複数の輪軸毎の車輪340の回転数を検出しており、この検出値が制御装置200へと入力される。
なお、この速度センサ160としては、例えば速度発電機を用いることができ、該速度発電機の発電量から車輪340の回転数を求めることができる。
【0052】
次に制御装置200について説明する。図5に制御装置200の機能ブロック図を示す。
本実施形態の制御装置200は、圧力センサ150の出力が入力される圧力比較部210と、該圧力比較部210の出力が入力される調圧部220と、速度センサ160の出力が入力される滑走判定部230と、滑走判定部230の出力が入力される滑走解除部240と、調圧部220及び滑走解除部240の出力が入力される電磁弁制御部270と、副電磁弁操作指令が入力される遠隔操作部250と、非常ブレーキ指令が入力されるパイロット電磁弁消磁部260とを備えている。
【0053】
圧力比較部210は、圧力センサ150から入力されるBC圧、即ち、圧力制御弁60の二次側圧力と、運転手のブレーキレバーの操作に基づいて入力される常用ブレーキ指令の指令圧力とを比較する。
調圧部220は、圧力比較部210の比較結果に基づき、第一電磁弁100及び第二電磁弁120を消励磁制御する信号を出力する。
即ち、圧力比較部210により二次側圧力の方が指令圧力よりも小さいと判断された場合には、第一電磁弁100を消磁するとともに第二電磁弁120を消磁する信号、即ち、増圧制御指令を出力する。また、圧力比較部210により二次側圧力と指令圧力とが同等と判断した場合には、第一電磁弁100を励磁するとともに第二電磁弁120を消磁する信号、即ち、圧力保持指令を出力する。さらに、圧力比較部210により二次側圧力が指令圧力よりも大きいと判断した場合には、第一電磁弁100を励磁するとともに第二電磁弁120を励磁する信号、即ち、減圧制御指令を出力する。
【0054】
滑走判定部230は、速度センサ160の出力に基づいて、車輪340が滑走しているか否かを判定する。具体的には、例えば複数の輪軸毎の車輪340の速度を平均化することにより基準速度を求め、当該基準速度から予め定めた閾値を逸脱している速度の車輪340があった際には、当該車輪340が滑走状態であると判定する。
【0055】
滑走解除部240は、滑走判定部230により特定の車輪340が滑走していると判定された際には、圧力制御弁60の第一電磁弁100を励磁するとともに第二電磁弁120を励磁する信号、即ち、滑走制御指令を出力する。
【0056】
電磁弁制御部270では、調圧部220から出力される信号(増圧制御指令、圧力保持指令、減圧制御指令)と滑走解除部240から出力される滑走制御指令とのうち、滑走制御指令を優先的に第一電磁弁100及び第二電磁弁120に出力する。電磁弁制御部270に調圧部220からの信号のみが入力されている際には、当該調圧部220からの信号を第一電磁弁100、第二電磁弁120に出力する。
【0057】
遠隔操作部250は、例えば車両の運転手等の操作に基づいて副電磁弁操作指令が入力された際に、副第一電磁弁110及び副第二電磁弁130の消励磁を行う。
また、パイロット電磁弁消磁部260は、ブレーキハンドルの操作に基づいて非常ブレーキ指令が入力された際に、パイロット電磁弁50に対して消磁される指令を出力する。
【0058】
次に、以上のような構成のブレーキ装置1の作用について説明する。
まず、応荷重弁10の動作について説明する。
応荷重弁10では、応荷重弁本体11の第一室12及び第二室13内にそれぞれ空気バネ310よりAS1圧及びAS2圧が導入されると、第一室12内の圧力と第二室13内の圧力の一部が第一ダイアフラム21を介して相殺されることで、これら第一室12と第二室13との圧力を平均化した圧力、即ち、AS1圧及びAS2圧の平均圧が第二ダイアフラム22に対して軸線P方向他方側に向かって付与される。
これにより第二ダイアフラム22が軸線P方向他方側に変位すると、コイルスプリング25を介して第三ダイアフラム23も軸線P方向他方側に変位し、これに伴って第三ダイアフラム23に接続された弁棒28も軸線P方向他方側に変位する。
【0059】
すると、弁棒28の先端の弁本体28aが可動弁座27に当接して弁座本体27aを軸線P方向他方側に移動させることにより、圧力排出室17cと第五室16との連通状態が閉塞され、さらに、圧力導入室17dと第五室16との閉塞状態が解除され、即ち、圧力導入室17dと第五室16とが互いに連通した状態となる。これにより、圧力導入室17dのSR圧が第五室16に導入される。
【0060】
ここで、上記のように可動弁座27が軸線P方向他方側に移動することで第五室16に導入された圧力により、第四ダイアフラム24には軸線P方向一方側に向かっての力が付与される。これにより、第四ダイアフラム24に接続された弁棒28に対しても、第五室16に導入された圧力に基づく軸線P方向一方側に向かう力が作用する。このように第五室16に導入された圧力に基づいて弁棒28に作用する軸線P方向一方側に向かう力の大きさが、AS1圧及びAS2圧の平均圧に基づいて弁棒28に作用する軸線P方向他方側に向かう力の大きさを上回ると、弁棒28が軸線P方向一方側に移動することにともなって、可動弁座27も軸線P方向一方側に移動する。そして、弁座本体27aによって第五室16と圧力導入室17dとの連通状態が閉塞される。これによって、第五室16の増圧が停止され、即ち、第五室16にはAS1圧及びAS2圧の平均圧に応じた分だけの圧力のみが導入される。したがって、応荷重弁本体11のみでは、第五室16の圧力上昇はAS1圧及びAS2圧の平均圧に基づいて制限される。
【0061】
これに対して本実施形態では、応荷重弁本体11の第五室16に導入された圧力は、増圧電磁弁31の作用によりさらに増圧される。
即ち、第五室16に導入された圧力は、増圧電磁弁31の後室35にも導入される。この際、増圧電磁弁31の電磁弁本体36が励磁されると、後室35と中間室34とが連通状態となり、即ち、応荷重弁本体11の第五室16の圧力が増圧電磁弁31の後室35及び中間室34を介して応荷重弁10の第四室15に導入される。これにより、第四ダイアフラム24を介して第五室16の圧力が第四室15の圧力によって一部相殺されるため、第五室16の圧力に基づいて弁棒28に対して軸線P方向一方側に作用する力の大きさが減少する。これにより、第五室16の圧力がさらに増圧されない限り、弁棒28を軸線P方向一方側に向かって移動させることはできない。結果として、第五室16には、AS1圧及びAS2圧の平均圧よりも高い圧力を導入することができるようになる。
【0062】
このように、第五室16の圧力は、AS1圧及びAS2圧の平均圧に応じて変化し、さらに増圧電磁弁31による第四室15への圧力の導入量によって決定される。本実施形態においては、電磁弁本体36が励磁されることによって、第五室16の圧力が非常ブレーキ時のBC圧相当の圧力になるまで増圧される。そして、このように増圧された圧力が、第五室16の応荷重圧出力口16aからVL圧として出力される。
以上のようにして、応荷重弁10では、AS1圧及びAS2圧に応じてSR圧から非常ブレーキ時のBC圧に相当するVL圧を生成し出力する。
【0063】
なお、本実施形態においては、増圧電磁弁31の作用により増圧されたVL圧が出力される構成としたが、必ずしも増圧電磁弁31を機能させなくともよい。即ち、増圧電磁弁31を消磁状態とすることにより、AS1圧及びAS2圧に応じた所定の圧力をVL圧として出力することとしてもよい。このように増圧電磁弁31の消励磁を制御することにより、車両の種類や速度に応じて非常ブレーキ時の圧力を可変とすることができる。これにより、例えば、車両の速度が速い際には非常ブレーキ時のBC圧を大きくし、車両の速度が遅い際には非常ブレーキ時のBC圧力を小さくすることができる。
【0064】
次に、切換弁40の動作について説明する。
この切換弁40においては、切換弁本体41の出力室44から、VL圧又はSR圧のいずれか一方が出力される。即ち、パイロット電磁弁50が消磁されている際には、切換弁40のパイロット室にSR圧が導入される。すると、切換弁本体41の圧縮空気圧導入室45に導入されたSR圧とパイロット室42のSR圧とが相殺される。この際、応荷重圧導入室43に導入されたVL圧が弁体48aを押圧することで第一連通孔46が開放され、第二連通孔47が閉塞される。これによって、VL圧が出力室44から出力される。
【0065】
一方、パイロット電磁弁50が励磁された際、即ち、車両の電源がオンとなった際には、パイロット室42のSR圧が排出される。すると、VL圧及びSR圧の双方が互いに逆向きに作用する弁体48aは、SR圧の方がVL圧に比べて大きいため応荷重圧導入室43側に変位する。これにより、第一連通孔46が閉塞されるとともに第二連通孔47が連通状態となり、SR圧が出力室44から出力される。
このように、本実施形態の切換弁40は、パイロット電磁弁50の消磁時にはVL圧を出力し、パイロット電磁弁50の励磁時にはSR圧を出力する。
【0066】
次に、圧力制御弁60の動作について説明する。
本実施形態の圧力制御弁60は、二次側圧力を任意に増圧及び減圧することができる。 即ち、二次側圧力を増圧する際には、第一電磁弁100を消磁状態するとともに第二電磁弁120を消磁状態とする。
第一電磁弁100を消磁状態とすると、第一弁部80内、即ち、第一パイロット室82内に大気圧が導入される。すると、第一パイロット室82内の大気圧よりも第一室71内の一次側圧力の方が大きいことにより、第一ダイアフラム81は第一パイロット室82に向かって変位する。これにより、連結連通路73の閉塞状態が解除され、当該連結連通路73を介して第一室71内の一次側圧力が第二室72内へと順次導入されている。
【0067】
また、第二電磁弁120を消磁状態とすると、第二弁部90内、即ち、第二パイロット室92内に二次側圧力が導入される。すると、第二室72内の圧力と第二パイロット室92内の圧力が釣り合うことにより、第二ダイアフラム91はコイルスプリング93の付勢力に従って第二室72側に変位した状態となる。これによって、大気連通路74が閉塞状態となって第二室72の圧力が大気へ排出されてしまうことが妨げられ、二次側圧力の低下が阻止される。
【0068】
一方、例えば二次側圧力が所望の圧力に達した場合、該二次側圧力を一定の圧力に保持するには、第一電磁弁100を励磁状態とすることにより第一弁部80に一次側圧力を導入し、第一室71及び第二室72間の連結連通路73を閉塞する。さらに第二電磁弁120は消磁状態とし、第二室72内の圧力の大気への排出を阻止する。これにより、第二室72への一次側圧力の導入の停止に伴って二次側圧力の増加が停止され、二次側圧力が一定に保持される。
【0069】
そして、二次側圧力を減圧する際には、第一電磁弁100を励磁状態とすることで第一室71から第二室72への一次側圧力の導入を阻止するとともに、第二電磁弁120を励磁することで第二室72及び大気間の連通路を開放する。すると、当該連通路を介して第二室72の空気が大気に放出されることで二次側圧力が減圧される。
このように、第一電磁弁100、第二電磁弁120を消励磁することで、二次側圧力を任意の圧力に設定することができる。
【0070】
なお、この圧力制御弁60においては、第一電磁弁100及び第二電磁弁120の制御系統が故障してこれらの励磁が不可能となった場合であっても一次側圧力をそのまま二次側圧力として出力することができる。
即ち、第一電磁弁100及び第二電磁弁120がともに消磁の際には、第一室71及び第二室72間の連通路が開放状態となるとともに、第二室72及び大気間の連通路が閉塞状態となる。これによって、一次側圧力がそのまま第二室72に導入され、一次側圧力を二次側圧力として出力される。
【0071】
次に、ブレーキ装置1全体の動作について説明する。
まず、常用ブレーキを作動させる場合について、図6に示すフローチャートに沿って説明する。常用ブレーキは、運転手のブレーキハンドルの操作により常用ブレーキ指令が制御装置200に入力されることにより作動する。また、本実施形態においては、常用ブレーキ時に車輪340に滑走が生じている場合には、常用ブレーキの作動に優先して滑走制御がなされる。なお、常用ブレーキ時には、切換弁40を介して圧力制御弁60には一次側圧力としてSR圧が導入されている。
【0072】
図6に示すように、まず制御装置200の圧力比較部210が、常用ブレーキ指令が入力されたか否かを判断する(S1)。常用ブレーキ指令が入力されていないと判断した場合、圧力比較部210は常用ブレーキ指令が入力されるまで待機する。
一方、常用ブレーキ指令が入力されたと判断した場合には、圧力比較部210が指令圧力P1と圧力センサ150が検出する検出圧力P2との大小を比較する(S2)。そして、この結果が調圧部220に入力される。
【0073】
圧力比較部210によって指令圧力P1の方が検出圧力P2よりも大きいと判断された場合、調圧部220は増圧制御指令を生成する(S3)。また、圧力比較部210によって指令圧力P1と検出圧力P2が同等であると判断された場合、調圧部220は圧力保持指令を生成する(S4)。そして、圧力比較部210によって指令圧力P1の方が検出圧力P2よりも小さいと判断された場合、調圧部220は減圧制御指令を生成する(S5)。これら増圧制御指令、圧力保持指令及び減圧制御指令は電磁弁制御部270に入力される。
【0074】
続いて、制御装置200の滑走判定部230によって、車輪340に滑走が生じているか否かが判定される(S6)。滑走判定部230により滑走が生じていると判定された場合、滑走解除部240によって滑走制御指令が生成される(S7)。この滑走制御指令は電磁弁制御部270に入力される。一方、滑走判定部230により滑走が生じていないと判定された場合には、滑走制御指令は生成されない。
【0075】
その後、電磁弁制御部270によって、滑走制御指令が入力されたか否かが判定される(S8)。滑走制御指令が入力されていないと判断された場合、電磁弁制御部270は、調圧部220が生成した指令、即ち、増圧制御指令、圧力保持指令又は減圧制御指令のいずれかを第一電磁弁100及び第二電磁弁120に出力する(S9)。一方、滑走制御指令が入力されていると判断した場合、電磁弁制御部270は滑走制御指令を第一電磁弁100及び第二電磁弁120に出力する(S10)。
以上のように、制御装置200による制御ステップが実行される。
【0076】
上記制御装置200の制御ステップにより、第一電磁弁100及び第二電磁弁120に対して増圧制御指令が入力された場合、第一電磁弁100が励磁状態とされるとともに第二電磁弁120は消磁状態とされる。これにより、上述した圧力制御弁60の作用により、一次側圧力であるSR圧が第二室に導入されることで二次側圧力が増圧される。
【0077】
また、上記制御装置200の制御ステップにより、第一電磁弁100及び第二電磁弁120に対して圧力保持指令が入力された場合、第一電磁弁100が励磁状態とされるとともに第二電磁弁120は消磁状態とされる。これにより、上述した圧力制御弁60の作用により、SR圧の第二室への導入が停止されるとともに大気連通路74は閉塞され、二次側圧力が一定に保持される。
【0078】
そして、上記制御装置200の制御ステップにより、第一電磁弁100及び第二電磁弁120に対して減圧制御指令が入力された場合、第一電磁弁100が励磁状態とされるとともに第二電磁弁120も励磁状態とされる。これにより、上述した圧力制御弁60の作用により、SR圧の第二室への導入が停止されるとともに大気連通路74が開放され、二次側圧力が減圧される。
【0079】
このように、常用ブレーキ指令の指令圧力に一致するように二次側圧力が調整され、BC圧として出力される。このBC圧はブレーキシリンダ接続ポート5を介してブレーキシリンダ320に導入され、該ブレーキシリンダ320の動作によって制輪子330が車輪340に押し付けられる。
【0080】
一方、第一電磁弁100及び第二電磁弁120に滑走制御指令が入力された場合、減圧制御指令が入力された場合と同様、第一電磁弁100が励磁状態とされるとともに第二電磁弁120も励磁状態とされる。これにより、上述した圧力制御弁60の作用により二次側圧力が減圧され、ブレーキシリンダ320に供給されるBC圧が開放される。即ち、制輪子330による車輪340の押さえ付けが開放されることにより、車輪340の滑走状態が解除される。
【0081】
次に、非常ブレーキを作動させる場合について説明する。
運転手のブレーキハンドルの操作により非常ブレーキ指令が制御装置200に入力されると、該制御装置200のパイロット電磁弁消磁部260が、切換弁40のパイロット電磁弁消磁部260に対して消磁指令を出力する。これにより、車両の電源のオンとともに励磁状態とされていたパイロット電磁弁50が消磁され、圧力制御弁60には一次側圧力としてSR圧ではなくVL圧が導入される。
【0082】
また、非常ブレーキ指令が制御装置200に入力された際には、圧力制御弁60の第一電磁弁100及び第二電磁弁120には何ら指令が入力されることなく、両者とも消磁状態とされている。これにより、第一室71と第二室72との間の連結連通路73は開放状態とされるとともに第二室72の大気連通路74は閉塞状態とされ、一次側圧力が二次側圧力として出力される。即ち、圧力制御弁60に入力されるVL圧がそのまま二次側圧力、即ち、BC圧としてブレーキシリンダ320に入力される。ここで、本実施形態においては、圧力制御弁60において生成されるVL圧は、非常ブレーキ時のBC圧相当の圧力を有している。したがって、このVL圧がブレーキシリンダ320に導入されることで、非常ブレーキを作動させることができる。
【0083】
次に、圧力制御弁60の遠隔制御について説明する。
本実施形態においては、例えば第一電磁弁100や第二電磁弁120が故障してBC圧を開放できなくなってしまった場合、即ち、固着してしまった場合であっても、遠隔制御によりBC圧を開放することができる。
即ち、固着が発生した際には、例えば運転手の操作によって副電磁弁操作指令が送出される。この副電磁弁操作指令は、制御装置200における遠隔操作部250に入力され、遠隔操作部250は副第一電磁弁110及び副第二電磁弁130にこれらを励磁させる指令を出力する。
【0084】
副第一電磁弁110が励磁されると、上述したように第一パイロット室82に一次側圧力を導入され、さらに、第二副第二電磁弁130が励磁され第二パイロット室92に大気圧が導入される。これによって、圧力制御弁60においては、第一室71から第二室72への圧力の導入が停止されるとともに第二室72における大気連通路74が開放され、二次側圧力が減少する。これによって、二次側圧力、即ち、BC圧を開放することができ、車輪340の固着を解除することができる。
また、このような固着時のみならず、第一電磁弁100及び第二電磁弁120の故障によりこれらを励磁できなくなった場合には、副第一電磁弁110及び副第二電磁弁130を適宜遠隔操作することにより、圧力制御弁60に所望の二次側圧力を生成することができる。
【0085】
以上説明したように、ブレーキ装置1においては、常用ブレーキ時にはSR圧が切換弁40を介して圧力制御弁60に供給される。圧力制御弁60ではこのSR圧に基づいて調圧を行うことによって常用ブレーキ時のBC圧を生成し出力する。一方、非常ブレーキ時には、応荷重弁10によってSR圧から生成されるVL圧が切換弁40を介して圧力制御弁60に供給される。VL圧は、非常ブレーキ時のBC圧に相当する。そして、圧力制御弁60では、この応荷重圧に調圧を施すことなく、BC圧として出力する。
【0086】
このように、本実施形態のブレーキ装置1は、応荷重弁10、切換弁40及び圧力制御弁60によって常用ブレーキ時、非常ブレーキ時に適切なBC圧を生成することができるため、構造が複雑で使用頻度が高くなる中継弁を使用しない分、メンテナンスコストの低減を図ることができる。
さらに、常用ブレーキ時のBC圧を生成する圧力制御弁60が故障し、入力される圧力に対して調圧を施すことができなくなった場合であっても、応荷重弁10が非常ブレーキ時のBC圧に相当する応荷重圧を生成し、圧力制御弁60が当該応荷重弁10をそのまま出力することによって、非常ブレーキ時のBC圧力を出力することができる。
したがって、コストの低減を図ることができるとともに、常用ブレーキの故障時であっても非常ブレーキを作動させることが可能なフェールセーフの観点から優れたブレーキ装置1を実現することができる。
【0087】
また、上記構成の圧力制御弁60に加えて、二次側圧力を検出する圧力センサ150と常用ブレーキ指令の指令圧力との比較結果に基づき第一電磁弁100及び第二電磁弁120を消励磁する制御装置200を備えたことにより、適切な常用ブレーキ時のBC圧力としての二次側圧力を生成することができる。
【0088】
さらに、第一電磁弁100及び第二電磁弁120が故障して励磁できなくなった場合であっても、副第一電磁弁110及び副第二電磁弁130を遠隔操作により励磁することでBC圧力を開放することができる。また、この遠隔操作によって副第一電磁弁110及び副第二電磁弁130の消励磁を適宜行うことにより、所望の二次側圧力を生成することができる。これにより、冗長性をもったシステムを実現することが可能となる。
【0089】
ここで、応荷重弁10及び中継弁を備えた従来のブレーキ装置1において滑走制御、即ち、車輪340滑走時にBC圧を開放させる制御を行うには、別個に滑走防止弁等を設ける必要がある。そのため、コストが増加してしまう他、ブレーキ装置1自体の大型化を招いてしまう。
これに対して本実施形態のブレーキ装置1においては、制御装置200による車輪340の滑走判定に基づいて第一電磁弁100及び第二電磁弁120を消励磁することで、容易にBC圧の開放を行うことができる。したがって、別個に滑走防止弁を設けずとも、圧力制御弁60を利用して容易に滑走制御を行うことができる。
【0090】
また、圧力制御弁60は従来の中継弁以上の給排能力を有しているため、ブレーキシリンダ320に対するBC圧供給の立ち上がりは中継弁を使用した際よりも早いものとなる。したがって、車輪340が滑走した際にBC圧を開放することで当該滑走から復帰した場合に、再びBC圧をブレーキシリンダ320に供給して必要なブレーキ力を発生させるまでの時間を短縮することができる。これによって、ブレーキ力の損失を低減することが可能となる。
【0091】
さらに、中継弁を用いて滑走制御を行う場合には、一般に中継弁への指令圧のみを検出する。そのため、滑走状態から復帰した後は、中継弁のヒステリシスの分だけ目標とするBC圧との誤差が出てしまうという欠点がある。これに対して本実施形態では、圧力制御弁60の二次側圧力、即ち、BC圧を直接的に検出しているため、滑走から復帰時でも目標BC圧に近い圧力を生成することができる。
【0092】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の技術的思想を逸脱しない限り、これらに限定されることはなく、多少の設計変更等も可能である。
例えば、応荷重弁10は、本実施形態のように応荷重弁本体11と増圧電磁弁31とを備えた構成のみならず、AS1圧及びAS2圧の大きさに応じて非常ブレーキ時のBC圧に相当するVL圧を生成、出力可能であれば他の構成であってもよい。
【0093】
また、切換弁についても、本実施形態のように切換弁本体41とパイロット電磁弁50とを備えた構成のみならず、VL圧とSR圧とのいずれを圧力制御弁60に対して出力するものならば他の構成であってもよい。この際、車両の電源が切れた際には、VL圧が圧力制御弁60に供給される構成とする方がフェールセーフの観点から好ましい。
【0094】
さらに、本実施形態においては、1つの圧力制御弁60を設けた構成としたが、圧力制御弁60を複数設けてもよい。この場合、圧力制御弁60で生成される二次側圧力、即ち、BC圧が供給されるブレーキシリンダ320も、圧力制御弁60の数に応じて複数設けられる。
【0095】
なお、実施形態においては、ブレーキ装置1を軌道系車両としての鉄道車両に備えた例について説明したが、これに限定されることなく、予め定められた軌道上を走行する軌道系車両ならば他のものに備えてもよい。
【符号の説明】
【0096】
1…ブレーキ装置、2…弁本体ブロック、3…圧縮空気源接続ポート、4…空気バネ接続ポート、5…ブレーキシリンダ接続ポート、6…保安ブレーキ接続ポート、10…応荷重弁、11…応荷重弁本体、12…第一室、12a…第一空気バネ圧導入口、13…第二室、13a…第二空気バネ圧導入口、14…第三室、15…第四室、16…第五室、16a…応荷重圧出力口、17…第六室、17a…圧力排出口、17b…圧縮空気圧導入口、17c…圧力排出室、17d…圧力導入室、21…第一ダイアフラム、22…第二ダイアフラム、23…第三ダイアフラム、24…第四ダイアフラム、25…コイルスプリング、26…仕切り板、26a…連通孔、27…可動弁座、27a…弁座本体、27b…仕切り筒体、28…弁棒、28a…弁本体、31…増圧電磁弁、32…前室、33…排出口、34…中間室、35…後室、36…電磁弁本体、37…コイルスプリング、40…切換弁、41…切換弁本体、42…パイロット室、43…応荷重圧導入室、44…出力室、44a…出力口、45…圧縮空気圧導入室、46…第一連通孔、47…第二連通孔、48…弁棒、48a…弁体、50…パイロット電磁弁、60…圧力制御弁、70…弁装置本体、71…第一室、71a…一次側圧力導入口、72…第二室、72a…二次側圧力出力口、73…連結連通路(連通路)、74…大気連通路(連通路)、80…第一弁部、81…第一ダイアフラム、82…第一パイロット室、83…コイルスプリング、84…第一パイロット圧導入口、85…第一供給通路、90…第二弁部、91第二ダイアフラム、92…第二パイロット室、93…コイルスプリング、94…第二パイロット圧導入口、95…第二供給通路、100…第一電磁弁、110…副第一電磁弁、111…バイパス路、120…第二電磁弁、130…副第二電磁弁、140…複式逆止弁、150…圧力センサ、160…速度センサ、200…制御装置、210…圧力比較部、220…調圧部、230…滑走判定部、240…滑走解除部、250…遠隔操作部、260…パイロット電磁弁消磁部、270…電磁弁制御部、300…圧縮空気源、310…空気バネ、320…ブレーキシリンダ、330…制輪子、340…車輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気バネの圧力に基づいて、圧縮空気源の空気圧から非常ブレーキ時のブレーキ圧に相当する応荷重圧を生成する応荷重弁と、
常用ブレーキ時に前記圧縮空気源の圧縮空気圧を出力する一方、非常ブレーキ時に前記応荷重圧を出力する切換弁と、
常用ブレーキ時に前記切換弁から供給される前記圧縮空気圧を調圧してブレーキ圧として出力するとともに、非常ブレーキ時に前記切換弁から供給される前記応荷重圧をブレーキ圧として出力する圧力制御弁とを備えることを特徴とするブレーキ装置。
【請求項2】
前記圧力制御弁は、
前記切換弁の出力圧が一次側圧力として供給される第一室と、
前記ブレーキ圧としての二次側圧力が生成される第二室と、
パイロット圧としての前記一次側圧力が導入された際に、前記第一室及び第二室間の連通路を閉塞するとともに、パイロット圧としての大気圧が導入された際に前記第一室及び前記第二室間の連通路を開放する第一弁部と、
パイロット圧としての前記二次側圧力が導入された際に前記第二室及び大気間の連通路を閉塞するとともに、パイロット圧としての大気圧が導入された際に前記第二室及び大気間の連通路を開放する前記第二弁部と、
励磁されることで前記第一弁部に前記一次側圧力を供給する一方、消磁されることで前記第一弁部に大気圧を供給する第一電磁弁と、
励磁されることで前記第二弁部に大気圧を供給する一方、消磁されることで前記第二弁部に前記二次側圧力を供給する第二電磁弁とを有することを特徴とする請求項1に記載のブレーキ装置。
【請求項3】
前記二次側圧力を検出する圧力センサをさらに有し、
前記圧力センサの検出する前記二次側圧力と外部から入力される常用ブレーキ指令の指令圧力とを比較する圧力比較部と、
該圧力比較部による前記二次側圧力及び前記指令圧力の比較結果に基づき前記第一電磁弁及び前記第二電磁弁を消励磁する調圧部とを有する制御装置をさらに備えることを特徴とする請求項2に記載のブレーキ装置。
【請求項4】
前記圧力制御弁は、
励磁されることで前記第一弁部に前記一次側圧力を供給する副第一電磁弁と、
前記第二電磁弁と直列的に配置され、励磁されることで前記第二電磁弁による前記第二弁部への前記二次側圧力の供給を停止して、前記第二弁部に大気圧を供給する副第二電磁弁とをさらに有し、
前記制御装置は、
外部から入力される副電磁弁操作指令に基づいて、前記副第一電磁弁及び前記副第二電磁弁を消励磁する遠隔操作部をさらに有することを特徴とする請求項3に記載のブレーキ装置。
【請求項5】
車輪の速度を検出する速度センサをさらに備え、
前記制御装置は、
前記速度センサの検出する前記車輪の速度に基づいて、前記車輪が滑走しているか否かを判定する滑走判定部と、
前記車輪が滑走していると前記滑走判定部が判定した際に、前記第一電磁弁を励磁するとともに及び前記第二電磁弁を励磁する滑走解除部とをさらに有することを特徴とする請求項3又は4に記載のブレーキ装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のブレーキ装置を備えることを特徴とする軌道系車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−131267(P2012−131267A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−283193(P2010−283193)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】