説明

プラズマを発生させるための方法及び装置

例えば加工面に材料を蒸着させるため、加工面用のプラズマを発生させるための装置を提供する。本装置は、イオン化ガスを収容する収容部と、マイクロ波を第1端から第2端まで移動させ、当該第2端からガス内にマイクロ波を放射できるように各々が構成された複数のプラズマ励起デバイスと、ガス内に磁場を発生させるための手段とを含む。マイクロ波源が、励起デバイスの第1端にマイクロ波を供給する。使用の際に、マイクロ波の電界ベクトルの方向が磁力線と平行でない領域が前記ガス内に存在し、磁場の磁束密度をBとし、マイクロ波の周波数をfとしたときに、B=πmf/eの関係を実質的に満たし、ここで、mは電子の質量であり、eは電子の電荷である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマを発生させるための方法及び装置に関し、更に、一度発生させたプラズマにより、加工面を、例えば材料を加工面に蒸着することによって処理する方法及び装置に関する。更に詳細には、電子サイクロトロン共鳴によってプラズマを発生させるためのマイクロ波エネルギの使用に関する。本発明は様々な形態の表面処理、例えばエッチング、化学的処理または熱化学的処理、噴霧、クリーニング、消毒、汚染除去、又はプラズマを取り出すことによるイオンビームの発生に適用できるが、以下の説明は蒸着に関する。特に重要なある分野は、プラズマCVD(化学気相蒸着)として周知のプロセスで、シラン先駆物質、例えばSiH4の解離によってシリコン薄膜を蒸着することである。
【背景技術】
【0002】
プラズマを励起して電子サイクロトロン共鳴(以下、「ECR」と呼ぶ)を起こす技術分野において、共鳴は、静的磁場又は偽静的磁場内の電子の旋回の周波数が、印加された加速電界の周波数と等しい場合に得られる。この共鳴は、磁場Bについて、このBに関して以下の関係を持つ励起周波数fで生じる。
B=2πmf/e・・・(1)
ここで、m及びeは、電子の質量及び電荷である。
【0003】
プラズマを電子サイクロトロン共鳴周波数で励起する場合、電子は、電界と同相で旋回し、外部励起源からエネルギを連続的に受け取り、ガスをイオン化するのに必要な閾値エネルギに達する。この状態を満たすため、先ず第1に、電子の旋回の半径が十分に小さいこと、詳細には、共鳴状態が存在する、即ち電界及び方程式(1)を満たす磁界が同時に存在する空間のその領域に、電子の旋回をとどめることができること、及び電子に対する静的磁界勾配に関し、電子の旋回中に磁場をほぼ一定にできるのに十分に小さいことが必要とされる。第2に、旋回の周波数を、電子と、原子及び/又は分子等の中性のエレメントとの間の衝突周波数に対して十分に大きいままにすることが必要とされる。換言すると、プラズマを励起して電子サイクロトロン共鳴を起こすための最良の状態は、ガスの圧力が比較的低く、励起周波数fが高い場合に得られるものと考えられる。このことは、更に、磁場の強さBが高くなければならないということを意味する。
【0004】
従来のECRでの主な問題点は、大きな領域に亘って密度が実質的に均一なプラズマを発生させることができないということである。このことは、大きな加工面に実質的に均一な材料層を蒸着するのに使用できないということを意味する。この問題点を解決するため、分布電子サイクロトロン共鳴(DECR)として知られる技術が開発された。この技術は、複数のプラズマ励起デバイスをネットワークにした装置を使用する。これらのプラズマ励起デバイスは、集合して、密度が実質的に均一なプラズマを加工面に発生させる。個々のプラズマ励起デバイスは、各々、マイクロ波エネルギのワイヤ照射装置によって形成される。この照射装置の一端は、マイクロ波エネルギ発生源に連結されており、反対端には、電子サイクロトロン共鳴に対応する強さの一定の磁場を持つ少なくとも一つの表面を形成するための少なくとも一つの磁気双極子が装着されている。双極子は、磁極間の電子サイクロトロン共鳴振動に合わせて電子を加速させ、照射装置の端部から遠方の双極子の側部にプラズマ拡散ゾーンを形成するように、マイクロ波照射装置の端部に取り付けられている。個々の励起デバイスは、加工面に対して均一なプラズマを発生させるよう、互いに対して配置されるとともに加工面の近くに配置されている。
【0005】
このようなDECR装置は、米国特許第6,407,359号(欧州特許第1075168号に対応する)に記載されており、ここに説明した装置の更に詳細な議論を以下に述べる。
【0006】
しかしながら、欧州特許第1075168号に記載のDECR装置には、従来のECR装置を越える利点があるが、それでもその利点には制限がある。ある制限は、所定のマイクロ波周波数fについて、上掲の方程式を満たす磁場の磁束密度Bが一つしかなく、またはその逆であるということである。欧州特許第1075168号に記載の特定の値は、f=2.45GHzであり、B=875G(ガウス)(0.0875テスラ)である。この制限により問題が生じる。これは、マイクロ波スペクトル内の特定の帯域しか、工業的用途に使用できず、他の帯域は、様々な種類の通信に対して免許が付与されているためである。欧州特許第1075168号に記載の2.45GHzの周波数は、利用可能帯域(2.4GHz乃至2.5GHz)に含まれるため、適している。しかしながら2.45GHzを使用した875Gの磁場は、現在実施されている最も高い値である。プラズマの包含の程度を望ましからぬ程に低下させることなく、非常に低い磁場を使用することはできないが、幾分低い磁場を使用することが可能であり、実際上の観点から見て望ましい。しかしながら、これを行うための試みは、磁場の磁束密度が低いと、上掲の方程式が要求する周波数を産業的に利用できないということである。逆に、プラズマの密度を更に高めるためには、2.45GHzよりもかなり高い周波数を使用するのが望ましい。しかしながら、上掲の方程式は、その場合、対応する高い磁界を求める。これは、産業的に利用可能であっても、少なくとも発生させるのが困難であり且つ費用が掛かり、実際上不可能である。
【0007】
従来使用されたDECR装置の第2の制限は、基板への薄膜の蒸着に使用した場合、均一であり幾つかの目的に対して満足のいく薄膜を大きな領域に亘って形成できるが、均一性が所望の程度に達しないということである。かくしてこの技術を使用して蒸着した薄膜は、個々のアンテナ位置の各々の下で(厚さにおいて、及び最も可能性があるのは薄膜の構造において)同質でない。本発明者は、アンテナ位置の下に見える干渉縞を発生させることによって、これらの非同質性を観察してきた。この説明によってまとめようとするものではないが、本発明者は、この非同質性を、コーティングが施される基板の表面まで延びる静的磁力線によるものであると考えている。薄膜の蒸着中、個々のアンテナを取り囲み且つ基板の表面まで下方に延びる明るいシェルが観察される。これらのシェル内で発せられる光は、その他のプラズマ容積における光よりも遥かに強い。このことは、シェル内のある種の励起レベルが比較的高いということを示す(これは、発光により基底状態に戻る)。これは、更に、おそらくは、薄膜先駆物質の高度の解離を伴い、これにより薄膜蒸着物の非同質性が説明される。
【特許文献1】米国特許第6,407,359号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
非同質性の問題を解決するための1つの明らかな方法は、アンテナと基板との間の距離を大きくし、プラズマ密度が高いシェルを基板から遠ざけ、更に多くの種の拡散を行うことである。しかしながら、これは蒸着効率の大幅な損失、及びこのことによる蒸着速度の大幅な低下を伴う。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、加工面用のプラズマを発生させるための装置において、イオン化ガスを収容するよう構成される収容部と、マイクロ波を第1端から第2端まで移動させ、当該第2端からガス内にマイクロ波を放射できるように各々が構成されており、第2端の領域のガス内に磁場を発生させるための手段を各々備えた、複数のプラズマ励起デバイスと、励起デバイスの第1端にマイクロ波を供給するように連結されたマイクロ波源とを備え、磁場の磁束密度をBとし、マイクロ波の周波数をfとしたときに、
B=πmf/e・・・(2)
の関係を実質的に満たし、ここで、mは電子の質量であり、eは電子の電荷であり、使用時に、マイクロ波の伝播ベクトルの方向が磁場の線と平行でない領域がガス内に存在する、装置が提供される。
【0010】
従来のECRは、マイクロ波が伝播し、プラズマが発生する領域での磁力線が、マイクロ波の伝播方向とほぼ平行に発生するという、全体として正しい仮定に基づいている。このような状態では、減衰、即ちマイクロ波エネルギの吸収が起こるものと考えられ、従って、上掲の方程式(1)が実質的に満たされたときにのみ、プラズマが発生するものと考えられ、方程式(2)が実質的に満たされたときに起こるものとは考えられてこなかった。本発明は、DECR装置には、マイクロ波の伝播方向と磁力線の方向との間の角度がゼロから大きく離れるような大きな領域がガス中にあり、又はマイクロ波の伝播方向が磁力線に対して垂直な成分を持つ大きな領域がガス中にあるという理解に基づく。こうした状況では、方程式(2)を実質的に満たす周波数及び磁場の組み合わせでマイクロ波の減衰が起こるということを示すことができる。
【0011】
従来のECRによってプラズマを発生させる場合、電子サイクロトロン共鳴自体に加えて他の減衰機構が含まれることは明らかであるということを加えておかなければならない。同様に、本発明によってプラズマを発生させる場合、方程式(2)により示される、形態が修正された電子サイクロトロン共鳴自体に加え、他の減衰機構が含まれるということは明らかである。
【0012】
本発明者は、本発明で使用した周波数での特定のプラズマ挙動についての従来技術の報告を承知している。これは、1992年に刊行されたプラズマ産業科学技術第1号(Plasma Services Sci. Technol,1)の、第7頁乃至第12頁の、Oleg A.Popov、Sergei Y.Shapoval、及びMerle D.Yoder Jr.の「ECRによる、磁場での2.45GHzマイクロ波プラズマ」という表題の文献である。しかしながら、Popovの文献に記載された加工は、従来のECR装置を使用しており、マイクロ波が伝播してプラズマが発生する領域での磁力線は、マイクロ波の伝播方向と実質的に平行である。上文中に説明したように、この領域では、存在するものと考えられる唯一の減衰機構は、従来のECR減衰であり、方程式(1)が満たされた場合にのみ作用する。従って、Popovの文献を読んだ当業者は、方程式(1)によって定義された以外の周波数で良好な性能がもたらされるとは考えないであろうし、実際、本発明者はこれが行われたことはないと考えている。
【0013】
例として、本発明の方法は、上文中に説明した従来技術で使用された2.45GHzの周波数を使用できるが、磁界は437.5G、即ち従来技術の875Gの値の半分に過ぎない。別の例では、875Gよりも高い、1035Gの磁場を使用することができ、産業的使用に利用可能なマイクロ波スペクトル帯域内の5.8GHzのマイクロ波周波数を使用することができる。5.8GHzのマイクロ波周波数を使用することは、高密度のプラズマの発生に関して有利であるが、1035Gの磁場を使用することとは異なり、プラズマによって蒸着させた薄膜の非同質性の問題に対処していない。
【0014】
本発明について、添付図面を参照して、以下に更に詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、図1乃至図3に示す従来技術の装置を使用して実施できる(しかしながら、本発明が必要とするBとfとの間の関係に非常に重要な差がある)。この装置を、欧州特許第1075168号の記載に基づいて、以下に説明する。しかしながら、装置は、マイクロ波の伝播方向が磁力線と平行でないプラズマ発生領域があるのであれば、多くの他の形態をとってもよいということが理解されるべきである。
【0016】
図1及び図2は、加工面Su(「加工」は広い意味である)に対してプラズマを発生させるための装置1を示す。加工面は、例えば、様々な表面処理を受け入れるのに適した表面によって形成できる。従来の方法では、装置1は、概略的に示される密閉の収容部1を有し、ここにガスを導入したりガスをポンプで排出したりするためのデバイスが装着される。このデバイスは、ここに図示しないが、当該技術分野で周知である。このデバイスにより、イオン化されるべきガスの圧力を、ガスの性質及び励起周波数に応じて、所望の値、例えば約10-2Pa乃至2×10-1Paに維持できる。しかしながら、10-2Paより小さい(例えば約10-4Pa程度)、又は2×10-1Paより大きい(例えば約5×10-1Pa程度、又は場合によっては1Pa又はそれより大きな値)のガス圧を使用してもよい。ガスは、例えば、反応性ガスとしてのSiH4又はH2を、非反応性ガスとしてのHe、Ne、又はArとともに含んでいてもよい。ガス供給システムは、プロセス仕様に従って、反応器内へ、代表的には1sccm(毎秒当たりの標準立方センチメートル)乃至1000sccmの範囲内の適切なガス流を確保しなければならない。
【0017】
プラズマチャンバには、基板ホルダが設けられている。基板ホルダの機能は、適切な作動条件のプラズマチャンバ内に基板Suを保持することである。典型的には、基板を、必要な蒸着温度、典型的には室温乃至600℃の温度まで加熱する。これは、基板ホルダ内で高温の流体を循環させることによって行ってもよいが、基板ホルダに埋め込んだ電気加熱抵抗器によって行ってもよい。基板ホルダの別の機能は、基板に向かうイオンのエネルギを制御するように、基板を分極できることである。分極は、RF又はDCのいずれであってもよく、基板ホルダを電気的に絶縁することを必要とする。分極は、電気的に絶縁された基板ホルダを適切なRF発生器又はDC発生器に、RF分極の場合には適切な適合回路で連結することによって行われる。
【0018】
プラズマ発生装置1は、互いに間隔が隔てられた一連の個々のプラズマ励起デバイス3を備えている。これらのプラズマ励起デバイス3は、加工面Suと近接して配置されており、加工面Suに対して均一なプラズマを発生させるように共に作動する。個々のプラズマ励起デバイス3の各々は、ワイヤの形態で実施された、即ち細長い、マイクロ波エネルギ照射装置4によって構成される。各ワイヤ照射装置4は、一方の端がマイクロ波エネルギ源Eに(好ましくは、同軸の構造4’を介して)接続されている。マイクロ波エネルギ源は、収容部1の外部に配置される。しかしながら、別の態様では、単一のマイクロ波エネルギ源Eで全ての照射装置4にマイクロ波を供給してもよいし、照射装置よりも少数の複数のエネルギ源を使用してもよい。各ワイヤ照射装置4は、有利には、同軸のチューブ4’によって取り囲まれたチューブの形態であり、このことにより、マイクロ波エネルギをその自由端41まで伝播できる。この際、マイクロ波の放射を阻止し、照射装置間のマイクロ波の結合を阻止する。マイクロ波エネルギがプラズマに適正に伝達されるようにするため、プラズマ励起デバイスに供給する各マイクロ波ワイヤは、好ましくは、プラズマ励起デバイスからの反射出力を最少にし又は少なくとも減少させる、適切なデバイスを備えている。図3に更に詳細に示すように、各マイクロ波照射装置4は、その自由端41が少なくとも一つの永久磁石5に連結されるように設計されている。図3では、磁石は、その磁軸が磁石自体の長さ方向軸線と平行な状態で示してある。これは、図5を参照して以下に更に詳細に説明するのと対応する。この構成の一の特定の形態では、全てのプラズマ励起デバイスの磁石は同じ方向に向いており(単極形態)、即ちこれらの磁石のN極が上側にあり且つS極が下側にあるか或いはその逆である。別の態様では、各磁極のうちの幾つかが上側にあり且つ各磁極のうちの幾つかが下側にある(多極形態)。多極形態の一例は格子形態であり、これは、図2に示すように一方の端部から見た場合、デバイスの任意の所定の列又は行に沿って通過するとき、極性の磁極が交互に連続的に変化する。更に別の例では、所定の列(又は行)の全ての磁石の極性が同じであるが、行(又は列)が交互の極性になっている。しかしながら、以下に更に詳細に説明するように、磁石の磁軸が磁石の長さ方向軸線と平行でない構成を使用してもよい。
【0019】
磁石の中身が詰まっている場合には、電子の経路の少なくとも一部がワイヤ照射装置4と遭遇し、かくして、電子の一部がワイヤ照射装置4によって集められ、これによって電子の損失が生じる。この欠点は、図3に示すように磁軸上に中央穴8を持つ、軸線方向に磁化した円筒形磁石5を使用することによってなくなる。この実施形態では、磁力線の一部7’が磁石の中央穴8を通過する。更に、磁極は、もはや点ではなく、磁石の回転軸線を中心とした円を描き、ここに向かって磁力線7及び7’が収束する。かくして、照射装置4の外殻の直径が、磁極が描く円の直径と等しい場合には、電子サイクロトロン共鳴によって加速された電子は、磁力線7’に従った軌跡を描くことができない。その結果、ワイヤ照射装置4の端部41は磁極を通過しない。従って、唯一使用可能な磁力線は、磁石の外側の磁力線7であり、従って、電子の経路が二つの対称な箇所P1とP2との間でワイヤ照射装置4と出会うことはない。その結果、電子が失われることがなく、エネルギ効率に関して最適の性能を得ることができる。
【0020】
各軸線方向穴8は、冷却流体供給パイプ9を設置できるようにするのに使用できる。冷却流体供給パイプ9は、有利には、磁石5が取り付けられる支持体としても機能する。このパイプ9は、端部が、磁石とジャケット12との間に形成された収容部11と連通したチューブの形態で実施される。ジャケット12は、磁石から所定の距離をおいて磁石を取り囲んでいる。収容部11は、供給パイプ9と、チューブによって形成されたワイヤ照射装置4との間に形成された冷却流体戻しパイプ13に開いている。かくして、磁石5は、冷却流体を磁石の周囲で循環できる保護ジャケット12によって封入されている。例として、磁石が封入された材料及びワイヤ照射装置を構成する材料は、導電性が良好な非磁性材料(非磁性金属)である。しかしながら、汚染の理由により、デバイスの適正な作動を妨げることなく、誘電体によって取り囲んでもよい。
【0021】
図4及び図5は、磁石及びこれらの磁石によって得られる磁場の二つの可能な構成を例として示す。図4では、磁石は、多磁極構成をなしており、一つの磁石のN極がその隣接した磁石のS極に面している。磁軸は磁石の長さ方向軸線に対して垂直であり、及び従って、移動方向を図4に示すようなマイクロ波の電界ベクトルに対して垂直である。例として、前記磁石の各々は、磁場の強さが2000G(ガウス)の円筒形磁石であり、長さが8cmで直径が4cmである。
【0022】
磁石の端部から約4cm離して配置したラインLを図4に示す。このラインは、マイクロ波が発生する電界に対して垂直な、このラインの全長に亘る磁場がほぼ一定であり、約437.5Gの値を持つことを示す。ラインLに沿った磁力の強さは、本発明によれば、実質的に、第1共鳴で、2.45GHzのマイクロ波で減衰するのに必要な強さである。
【0023】
別の例を図5に示す。この例では、磁軸が磁石の長さ方向軸線に対して垂直である(磁石自体は電界ベクトルと平行である)。磁石は、更に、多磁極構成であり、一つの磁石のN極が隣接した磁石のS極と同じ側にあるが、この例では、磁軸が磁石の長さ方向軸線と平行である。各磁石は図4に示す磁石と寸法が同じであるが、磁場の強さは1000Gである。
【0024】
この場合も、図示のラインLに沿った磁場はほぼ一定であり、強さは437.5Gであり、第1共鳴で、2.45GHzのマイクロ波で減衰する必要条件を満たす。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】欧州特許第1075168号に記載されており且つ図示されるプラズマ発生装置を示す概略正面図である。
【図2】図1の装置の平面図である。
【図3】図1及び図2の装置で使用された個々のプラズマ励起デバイスのうちの一つの実施形態の更に詳細な図である。
【図4】本発明で使用できる、磁石のある配置によって発生した磁力線を示す図である。
【図5】本発明で使用できる、磁石の別の配置によって発生した磁力線を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工面用のプラズマを発生させるための装置において、
イオン化ガスを収容するよう構成される収容部と、
マイクロ波を第1端から第2端まで移動させ、当該第2端から前記ガス内にマイクロ波を放射できるように各々が構成された複数のプラズマ励起デバイスと、
前記ガス内に磁場を発生させるための手段と、
前記励起デバイスの前記第1端にマイクロ波を供給するように連結されたマイクロ波源とを備え、
前記磁場の磁束密度をBとし、前記マイクロ波の周波数をfとしたときに、
B=πmf/e
の関係を実質的に満たし、ここで、mは電子の質量であり、eは電子の電荷であり、
使用時に、前記マイクロ波の伝播ベクトルの方向が前記磁場の線と平行でない領域が前記ガス内に存在する、装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置において、
各プラズマ励起デバイスは、個々の磁石と関連している、装置。
【請求項3】
請求項2に記載の装置において、
前記プラズマ励起デバイスは、それらの個々の磁石とともに、デバイスの列及び行を構成する配列をなすよう配置されている、装置。
【請求項4】
請求項3に記載の装置において、
前記配列は、矩形の配列である、装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のうちのいずれか一項に記載の装置において、
前記磁石は、その磁軸が前記マイクロ波の移動方向とほぼ平行となるよう配置されている、装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のうちのいずれか一項に記載の装置において、
前記磁石は、その磁軸が前記マイクロ波の移動方向に対してほぼ垂直となるよう配置されている、装置。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の装置において、
各列及び各行内において、磁石が交互に互いに逆方向に向いている、装置。
【請求項8】
請求項5又は6に記載の装置において、
前記磁石は、全て同じ方向に向いている、装置。
【請求項9】
請求項5又は6に記載の装置において、
各列内で、磁石が同じ方向に向いており、各行内で、磁石が交互に互いに逆方向に向いている、装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のうちのいずれか一項に記載の装置において、
マイクロ波を全ての励起デバイスに供給するように、共通のマイクロ波源が連結されている、装置。
【請求項11】
請求項1乃至9のうちのいずれか一項に記載の装置において、
前記マイクロ波源は、前記励起デバイスのうちの少なくとも一つに各々供給する複数のサブ供給源を含む、装置。
【請求項12】
加工面用のプラズマを発生させるための方法において、
イオン化ガスを、このガス用の収容部に供給する工程と、
マイクロ波を、マイクロ波源から、複数のプラズマ励起デバイスの各々の第1端に供給し、マイクロ波を前記第1端から第2端へ移動させ、この第2端から前記ガス内にマイクロ波を放射させる工程と、
前記ガス内に磁場を発生させる工程とを含み、
前記磁場の磁束密度をBとし、前記マイクロ波の周波数をfとしたときに、
B=πmf/e
の関係を実質的に満たし、ここで、mは電子の質量であり、eは電子の電荷であり、
使用時に、前記マイクロ波の伝播ベクトルの方向が前記磁場の線と平行でない領域が前記ガス内に存在する、方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法において、
請求項2乃至11のうちのいずれか一項に記載の装置を使用する、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−506204(P2009−506204A)
【公表日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−527523(P2008−527523)
【出願日】平成18年8月21日(2006.8.21)
【国際出願番号】PCT/IB2006/002253
【国際公開番号】WO2007/023350
【国際公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(502053328)ダウ・コーニング・コーポレイション (12)
【氏名又は名称原語表記】DOW CORNING CORPORATION
【住所又は居所原語表記】2200 West Salzburg Road, Midland, MI 48611ー0994, U.S.A.
【Fターム(参考)】