説明

プリプレグ、多層プリント配線板およびフレキシブルプリント配線板

【課題】樹脂のフローを抑制しながら、接着性、回路の埋め込み性に優れると共に、加工時の発塵を防ぎ、歩留りが良好なプリプレグ、およびプリント配線板を提供する。
【解決手段】繊維基材にエポキシ樹脂組成物を含むワニスを含浸、乾燥してなるプリプレグであって、前記エポキシ樹脂組成物が(A)エポキシ樹脂〔ただし、(B)のウレタン変性エポキシ樹脂を除く〕、(B)ウレタン変性エポキシ樹脂、(C)エポキシ樹脂硬化剤および(D)硬化促進剤を必須成分として含むことを特徴とするプリプレグ〔成分(A)〜(D)の合計量は100質量部で、合計量中成分(B)の配合量は15〜90質量部である〕、同プリプレグを使用した多層プリント配線板および同プリプレグを使用したフレキシブルプリント配線板である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板の材料として用いられる、繊維基材にエポキシ樹脂組成物を含浸、乾燥してなるプリプレグ、ならびに多層プリント配線板およびフレキシブルプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プリント配線板は、高密度実装化と共に薄型化が求められている。これに伴いフレキシブル配線板やフレックスリジッド配線板が採用されている。また、層間接続ビアを形成したフレックスリジッド配線板の採用も増加してきている。
層間接続ビアを形成したフレックスリジッド配線板における課題について、図を用いて簡単に説明する。図1はフレキシブル配線板上にリジッド配線板をプリプレグにより貼り合わせる手順と断面の形状を示す模式図であり、図2はビルドアップ型フレックスリジッド配線の手順と断面の形状を示す模式図である。
【0003】
まず、図1(a)に示したように、ベースフィルム1の表裏に配線パターン2を形成し、次いで、当該配線パターン2を保護するために、当該ベースフィルム1の表裏にカバーレイ3を積層することによって、図1(b)に示したフレキシブル配線板4を得る。
次に、図1(c)に示したように、当該フレキシブル配線板4の表裏に、後に屈曲可能な屈曲部10に相当する部位を刳り貫いたプリプレグ(絶縁接着剤層)5と、片面に配線パターン2が形成されたリジッド基板7とを順次配置し、加熱・加圧積層することによって一体化形成する。
次に、図1(d)に示したように、所望の位置にスルーホール9を形成する。
さらに、図1(e)に示したように、一般的なサブトラクティブ法にて外層の配線パターン2を形成し、次いで外層の配線パターン2を保護するソルダーレジスト11を形成した後、外形加工を行うことによって、屈曲部10を有するフレックスリジッド配線板を得るというものである。ここで図3は層間接続ビアA周辺の拡大図である。
【0004】
一方、ビルドアップ型フレックスリジッド配線の製造方法では、図2(c)に示したように、リジッド基板7の代わりに、銅箔12とプリプレグ5を積層し、次いで図2(d)に示したように、層間接続ビア加工を行い、さらに層間接続ビア6にメッキ13を施し、図2(e)に示したように、回路パターン形成するという工程を順次繰り返して積み重ねていく。ここで図4は、このようにして形成した層間接続ビアB周辺の拡大図である。
フレックスリジッド配線板の製造方法としては、以上に説明したようなものであるが、接着シートとして使用されるプリプレグ5の樹脂フローが大きいと、屈曲部10にプリプレグ5の樹脂が流れ込んで、樹脂フロー部8が形成されるため、屈曲性が低下してしまうという不具合があった。
【0005】
そこで、粘度が10,000〜50,000poiseの樹脂をガラス基材に含浸して半硬化させたプリプレグ(特許文献1参照)や樹脂組成物にゴムを含有したプリプレグ(特許文献2、3参照)を使用して積層することによって、屈曲部10への樹脂フローの抑制を図る技術が開示されている。
ここで、繊維基材にエポキシ樹脂組成物を含浸、乾燥してなるプリプレグや多層配線板において、複数種類の異なるエポキシ樹脂を用いて各種特性を調整することが多数提案されている(たとえば、特許文献4〜11参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−176836号公報
【特許文献2】特開2005−213352号公報
【特許文献3】特開2007−326929号公報
【特許文献4】特開平7−196769号公報
【特許文献5】特開2001−151991号公報
【特許文献6】WO2002/006399号公報
【特許文献7】特開2006−28274号公報
【特許文献8】特開2006−182991号公報
【特許文献9】特開2008−88400号公報
【特許文献10】特開2008−291056号公報
【特許文献11】特開2009−212097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1から3に記載されたようなプリプレグを使用してフレキシブル配線板とリジッド配線板とを接着した場合、屈曲部への樹脂フローは抑制されても、配線パターンへの埋め込み性が十分ではなかった。特に図3や図4に示すようにメッキによって内層回路が厚くなった部分への樹脂の埋め込み性の改善が要求されている。
さらに、図2のようなビルドアップ型のプリント配線板の工程では硬化したプリプレグに層間接続ビアを形成するため、耐薬品性が不十分であった。
また、特許文献4〜11に記載されている複数のエポキシ樹脂の組み合わせでも回路の埋め込み性、加工時の発塵性、ハンダリフロー耐熱性や保存安定性を低下させることなく、プリプレグ端面開口部からの樹脂のフローを抑制することはできなかった。
本発明は、上記の欠点を解消するためになされたもので、プリプレグの開口部端面からの樹脂のフローを抑制しながら、接着性、回路の埋め込み性および保存安定性に優れると共に、加工時の発塵を防ぎ、歩留まりが良好なプリプレグ、多層プリント配線板およびフレキシブルプリント配線板を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は下記
(1)繊維基材にエポキシ樹脂組成物を含むワニスを含浸、乾燥してなるプリプレグであって、前記エポキシ樹脂組成物が(A)エポキシ樹脂〔ただし、(B)のウレタン変性エポキシ樹脂を除く〕、(B)ウレタン変性エポキシ樹脂、(C)エポキシ樹脂硬化剤および(D)硬化促進剤を必須成分として含むことを特徴とするプリプレグ〔成分(A)〜(D)の合計量は100質量部で、合計量中成分(B)の配合量は15〜90質量部である〕、
(2)(A)成分のエポキシ樹脂の配合量が(A)〜(D)成分100質量部中5〜80質量部である上記(1)に記載のプリプレグ、
(3)半硬化した前記エポキシ樹脂組成物の50℃から180℃における最低溶融粘度が5000から35000Pa・sである上記(1)または(2)に記載のプリプレグ、
(4)前記(A)成分のエポキシ樹脂がナフタレン型エポキシ樹脂および/またはビフェニル骨格型エポキシ樹脂である上記(1)〜(3)のいずれかに記載のプリプレグ、
(5)前記繊維基材がガラスクロスである上記(1)〜(4)のいずれかに記載のプリプレグ、
(6)上記(1)〜(5)のいずれかに記載のプリプレグにより絶縁層が形成されてなる多層プリント配線板および
(7)上記(1)〜(5)のいずれかに記載のプリプレグにより接着されてなるフレキシブルプリント配線板を提供する。
【発明の効果】
【0009】
特定量のウレタン変性エポキシ樹脂と他のエポキシ樹脂を併用することにより、プリプレグの開口部端面からの樹脂フローを防止し、回路埋め込み性、ハンダリフロー耐熱性、保存安定性に優れたプリプレグを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】フレキシブル配線板上にリジッド配線板をプリプレグにより張り合わせるフレックスリジッド配線板において、各層を積層する手順と断面の形状を示す模式図である。
【図2】ビルドアップ型フレックスリジッド配線板において、各層を積層する手順と断面の形状を示す模式図である。
【図3】図1のフレックスリジッド配線板における層間接続ビアA周辺の拡大図である。
【図4】図2のビルドアップ型フレックスリジッド配線板における層間接続ビアB周辺の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のプリプレグに用いられるエポキシ樹脂組成物における(A)成分のエポキシ樹脂〔後で述べる(B)成分のウレタン変性エポキシ樹脂を除く〕としては、分子量は20000未満の、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂が挙げられる。なお、本発明でいう分子量はGPCで測定した標準ポリスチレン換算の重量平均分子量である。
(A)成分のエポキシ樹脂としては、グリシジルエーテル系エポキシ樹脂が好適に用いられ、より具体的には、ナフタレン型多官能エポキシ樹脂、ビフェニル骨格型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられ、これらは単独又は2種以上混合して使用することができる。また、この(A)成分のエポキシ樹脂には、グリシジルエーテル系の変性エポキシ樹脂も含まれる。変性エポキシ樹脂として例えば、BT樹脂(ビスマレイミド・トリアジン樹脂)変性エポキシ樹脂などを使用することができる。中でも、ナフタレン型多官能エポキシ樹脂およびビフェニル骨格型エポキシ樹脂が好ましい。これらのエポキシ樹脂は市販品をそのまま使用することができる。
ナフタレン型多官能エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、DIC(株)製、エピクロンHP−4032(エポキシ当量150)、同HP−4700(エポキシ当量160)、エピクロンHP-4032D(エポキシ当量141)、エピクロンHP-4032H(エポキシ当量250)、エピクロンEXA4750(エポキシ当量182)、エピクロンEXA4700(エポキシ当量163)、などを挙げることができる。
また、ビフェニル骨格型エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、日本化薬(株)製、NC-3000H(エポキシ当量290)、油化シェルエポキシ(株)製、エピコート(登録商標)エピコートYX4000(エポキシ当量180〜192)、同YX−4000H(エポキシ当量195)、油化シェルエポキシ(株)製、YL6121(エポキシ当量175)などを挙げることができる。
ビスフェノールA型エポキシ樹脂の市販品としては、エピコート825(エポキシ当量172〜178)、エピコート828(エポキシ当量184〜194)、エピコート834(エポキシ当量230〜270)、エピコート1001(エポキシ当量450〜500)、エピコート1002(エポキシ当量600〜700)、エピコート1003(エポキシ当量670〜770)、エピコート1004(エポキシ当量875〜975)、エピコート1007(エポキシ当量1750〜2200)、エピコート1009(エポキシ当量2400〜3300)、エピコート1010(エポキシ当量3000〜5000)〔以上、油化シェルエポキシ(株)製〕、エポトートYD−128(エポキシ当量184〜194)、エポトートYD−011(エポキシ当量450〜500)、エポトートYD−014(エポキシ当量900〜1000)、エポトートYD−017(エポキシ当量1750〜2100)、エポトートYD−019(エポキシ当量2400〜3000)、エポトートYD−022(エポキシ当量4000〜6000)、〔以上、東都化成(株)製〕、エピクロン840(エポキシ当量180〜190)、エピクロン850(エポキシ当量184〜194)、エピクロン1050(エポキシ当量450〜500)、エピクロン3050(エポキシ当量740〜860)、エピクロンHM−101(エポキシ当量3200〜3900)〔以上、DIC(株)製〕、スミエポキシELA−128(エポキシ当量184〜194)〔住友化学工業(株)製〕、DER331(エポキシ当量182〜192)〔ダウケミカル(株)製〕などが挙げられる。
ビスフェノールF型エポキシ樹脂の市販品としては、エピコート806(エポキシ当量160〜170)、エピコート807(エポキシ当量160〜175)、エピコートE4002P(エポキシ当量610)、エピコートE4003P(エポキシ当量800)、エピコートE4004P(エポキシ当量930)、エピコートE4007P(エポキシ当量2060)、エピコートE4009P(エポキシ当量3030)、エピコートE4010P(エポキシ当量4400)〔以上、油化シェルエポキシ(株)製〕、エピクロン830〔エポキシ当量165〜180、DIC(株)製〕、エポトートYDF−2001(エポキシ当量450〜500)、エポトートYDF−2004(エポキシ当量900〜1000)〔以上、東都化成(株)製〕などが挙げられる。
ノボラック型エポキシ樹脂の市販品としては、エピコート152(エポキシ当量172〜179)、エピコート154(エポキシ当量176〜181)〔以上、油化シェルエポキシ(株)製〕、DER438(エポキシ当量176〜181)〔ダウケミカル社製〕、アラルダイトEPN1138(エポキシ当量176〜181)〔チバ社製〕、アラルダイトEPN1139(エポキシ当量172〜179)〔チバ社製〕、エポトートYCPN−702(エポキシ当量200〜230)〔東都化成(株)製〕、BREN-105(エポキシ当量262〜278)〔日本化薬(株)製〕などが挙げられる。
【0012】
(A)成分のエポキシ樹脂の配合量は、樹脂組成物〔(A)〜(D)成分〕100質量部中5〜80質量部であり、10〜70質量部であることがより好ましい。
(A)成分の配合量が5質量部以上であれば、良好な回路の埋め込み性及び接着性が発揮されると共に、リフロー耐熱性が良好となる。一方、80質量部以下であれば、成形時のプリプレグ端面からの樹脂フローが抑えられると共に、発塵性が良好であるため製造工程での歩留り低下を引き起こすことがない。
【0013】
本発明のプリプレグに用いられる(B)成分のウレタン変性エポキシ樹脂とは、エポキシ樹脂骨格中にウレタン結合が導入されている樹脂をいうものとする。このウレタン変性エポキシ樹脂の製造方法については、特に限定されず、エポキシ基と水酸基の両方を分子内に有する化合物の水酸基と、ウレタンプレポリマーのイソシアネート基とを反応させてウレタン結合をエポキシ樹脂中に導入する方法などを挙げることができる。
ウレタンプレポリマーとは、U−(NCO)mのような一般式で表わし得るポリイソシアネート化合物と、R−(OH)nのような一般式で表わし得るポリヒドロキシ化合物とを反応させて得られるポリマーをいう。ここで、U及びRは、それぞれ、炭化水素鎖、あるいはポリエーテル鎖、ポリエステル鎖などであるが、必ずしもこれらのものに限定されるものではない。mおよびnはそれぞれ2以上の整数である。
例えば、上記ポリイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネートなどの2個以上のイソシアネート基を有する化合物を挙げることができる。
上記ポリヒドロキシ化合物としては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ひまし油誘導体、ポリテトラメチレングリコール、ラクトンポリオールなどの2個以上のヒドロキシル基を有する化合物を挙げることができる。
【0014】
上記のようにして得られたウレタンプレポリマーと、エポキシ基及び水酸基の双方を分子内に有する化合物の水酸基とを反応させれば(B)成分のウレタン変性エポキシ樹脂が得られる。
例えば、直鎖状ウレタン変性エポキシ樹脂としては、グリシドール、エポキシ基を有するレゾールなどの水酸基とウレタンプレポリマーとを反応させたもの;分岐型ウレタン変性エポキシ樹脂としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂などの水酸基とウレタンプレポリマーとを反応させたもの;アクリルウレタン変性エポキシ樹脂としては、ヒドロキシ(メタ)アクリレートの水酸基とウレタンプレポリマーとを反応させたものを挙げることができる。
上記のようなウレタン変性エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、ADEKA(株)製のアデカレジンEPUシリーズ(商品番号EPU−6、EPU−15、EPU−16A、EPU−16B、EPU−17T−6、EPU−4−75X、EPU−75X、EPU−86、EPU−73、EPU−78、EPU−11)やDIC社製のエピクロンTSRシリーズ(エピクロンTSR−243、エピクロンTSR−250−80BX)等を挙げることができる。
【0015】
(B)成分のウレタン変性エポキシ樹脂の配合量は、樹脂組成物100質量部中15〜90質量部であり、20〜85質量部であることがより好ましい。
この配合量が15質量部以上であれば、良好な回路の埋め込み性及び接着性が発揮されると共に、リフロー耐熱性が良好となる。一方、90質量部以下の場合には成形時のプリプレグ端面からの樹脂フローが抑えられると共に、発塵性が良好であるため製造工程での歩留低下を引き起こすことがない。
【0016】
本発明のプリプレグに用いる(C)成分の硬化剤としては、エポキシ樹脂の硬化剤として用いられる公知のものが使用できる。
具体的には、ジエチレントリアミン、テトラエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等の脂肪族アミン系硬化剤、イソホロンジアミン等の脂環式アミン系硬化剤、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、フェニレンジアミン等の芳香族アミン系硬化剤、無水フタル酸、無水ピロメリト酸、無水トリメリト酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等の酸無水物系硬化剤、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物、ジシアンジアミド、三フッ化ホウ素アミン錯塩、硼弗化錫、硼弗化亜鉛等の硼弗化物、オクチル酸錫、オクチル酸亜鉛等のオクチル酸塩等が挙げられ、好ましくは脂肪族アミン系硬化剤、芳香族アミン系硬化剤、イミダゾール化合物、ジシアンジアミド、硼弗化物、及びオクチル酸塩、芳香族アミン系硬化剤、ジシアンジアミド、及びイミダゾール化合物である。これらの硬化剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
(C)成分の配合量は、(A)および(B)成分のエポキシ当量、接着剤組成物の硬化状態、特性のバランス等を考慮して決められるが、概ね(A)および(B)成分100質量部に対して0.1〜40質量部であり、0.5〜30質量部であることがより好ましい。
この配合量が0.1質量部以上であれば、良好なライフ特性及び反り、ハンドリング性向上効果が発揮されると共に、エポキシ樹脂が十分に硬化し、半田耐熱性及び耐溶剤性が良好となる。一方、40質量部以下の場合には組成物が十分に硬化し、半田耐熱性等信頼性を損なうことがない。
【0018】
本発明においては、(D)成分の硬化促進剤を用いる。硬化促進剤としては、通常のエポキシ樹脂用の硬化促進剤として用いられる第三級アミン、2−エチル−4−イミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物、芳香族アミン、三フッ化ホウ素錯化合物、トリフェニルホスフィン等が挙げられる。好ましくは三フッ化ホウ素錯化合物である。その三フッ化ホウ素錯化合物としては、三フッ化ホウ素モノメチルアミン錯体、三フッ化ホウ素ピペリジン錯体、三フッ化ホウ素トリエタノールアミン錯体、三フッ化ホウ素ベンジルアミン錯体、三フッ化ホウ素イミダゾール錯体等が挙げられる。これらの硬化促進剤は単独又は2種以上混合して用いることができる。
本発明に用いる(D)硬化促進剤の配合量は、(A)成分および(B)成分のエポキシ樹脂100質量部に対して、硬化促進剤は0.01〜5質量部の範囲であることが好ましい。
【0019】
本発明のプリプレグにおける接着剤組成物は上述した(A)〜(D)成分を必須成分とするが、本発明の目的に反しない限度において、必要に応じて、さらにエラストマー、無機充填材、劣化防止剤等を添加配合することができる。
エラストマーとしては、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、カルボキシル基含有NBR、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体(SBS)、その部分水添物やSBSのエポキシ化物(ESBS)等が挙げられ、カルボキシル基含有NBRを使用することが好ましい。
エラストマーを添加することにより、多層プリント配線板やフレキシブルプリント配線板のリジッド部分に適度な弾性を付与することができる。
無機充填材としては、水酸化アルミニウム、酸化チタン、炭酸カルシウム、シリカ等が挙げられ、中でも、優れた寸法安定性を付与し、多層プリント配線板やフレキシブルプリント配線板の接続信頼性を向上させることができるという観点から水酸化アルミニウムを使用することが好ましい。
劣化防止剤としては、ヒンダードアミン系の紫外線劣化防止剤、フェノール系熱劣化防止剤、ヒンダートフェノール系酸化防止剤、リン酸系安定剤、イオウ系酸化防止剤等が挙げられる。
さらに、シクロフォスファゼンオリゴマーや鎖状アミドホスファゼンオリゴマー、鎖状アニリドホスファゼンオリゴマー、鎖状プロポキシホスファゼンオリゴマー、鎖状フェノキシホスファゼンオリゴマー、環状アミドホスファゼンオリゴマー、環状アニリドホスファゼンオリゴマー、環状プロポキシホスファゼンオリゴマー、環状フェノキシホスファゼンオリゴマー、環状アミノフェノキシホスファゼンオリゴマー、環状ヒドロキシフェノキシホスファゼンオリゴマーのようなポリマー型の難燃剤を添加することもできる。
以上に述べたエポキシ樹脂組成物をメチルエチルケトン、トルエン、アセトン、エチルセロソルブ、メチルセロソルブ、シクロヘキサノン等の好適な有機溶剤で希釈して無機充填材等が分散された樹脂溶液(ワニス)となし、これを繊維基材に含浸、乾燥することにより本発明のプリプレグを製造することができる。
ワニスの濃度は、樹脂成分と無機充填剤とが合計量で40〜70質量%になるように調整するのがよい。濃度が40質量%未満の場合には、繊維基材に必要な樹脂量を含浸させることが困難となり、逆に濃度が70質量%を超えると、粘度が高過ぎるために繊維基材に対する含浸性が著しく低下するおそれがある。
ワニスを繊維基材に含浸させた後の半硬化したエポキシ樹脂組成物の50℃から180℃における最低溶融粘度は5000から35000Pa・sであることが好ましい。
粘度が5000Pa・s以上であることにより、プリプレグ端面開口部からの樹脂のフローを抑制することができ、35000Pa・s以下であることにより、繊維基材への含浸が十分に行なわれ、回路埋め込み性が優れたエポキシ樹脂組成物となる。
なお、半硬化したエポキシ樹脂組成物というのは、120〜190℃程度の温度で3〜15分間程度乾燥(実質的に溶剤を含まない)させることによって、Bステージと称される状態のプリプレグ中の樹脂組成物を意味する。
【0020】
本発明で用いる繊維基材としては、ガラスクロス、ガラスマット等の無機繊維基材、芳香族ポリアミド繊維、セルロース繊維、ポリエステル繊維等の有機繊維基材が挙げられ、これらは単独又は2種以上を混合して使用することができる。
なかでも繊維基材としてはガラスクロスであることが好ましく、このガラスクロスとしては特に種類を限定することなく使用することができるが、IPC−EG−140に規定される平織りEガラスクロス等を使用することが好ましく、プリプレグの薄さが要求されるフレックスリジッド配線板用途では1080タイプや1037タイプといった30〜50μmの厚さのものが特に好ましい。
本発明のプリプレグは、繊維基材にエポキシ樹脂組成物を含むワニスを含浸したものであり、その厚さは、繊維基材の厚みよりも少し厚い程度のものとなる。したがって、本発明のプリプレグとしては、30〜60μmの厚さであることが好ましいものとなる。
繊維基材に対するエポキシ樹脂組成物(ワニスから有機溶剤が除去されたもの)の含浸量は両者の合計量中50〜80質量%になるように調整するのが好ましい。
【0021】
上記のように、繊維基材にワニスを含浸させ、120〜190℃程度の温度で3〜15分間程度乾燥させることによって、Bステージと称される半硬化状態のプリプレグを作製することができる。
このようなプリプレグを1枚あるいは所要枚数重ねると共に、この片側表面あるいは両面に銅箔等の金属箔を重ね、これを加熱加圧成形することによって、金属箔張り積層板を得ることができる。このときの成形条件は、一般的には成形温度150〜300℃、成形圧力20〜70kg/cm2 、成形時間10〜60分が好ましい。また、予めプリプレグを所要枚数重ねて加熱加圧成形しておき、次に得られたこの積層品の片面又は両面に金属箔を重ねて再び加熱加圧成形することによって、金属箔張り積層板を製造するようにすることもできる。そしてこの金属箔張り積層板の表面の金属箔をプリント加工して回路形成等をすることによって、多層プリント配線板やフレキシブルプリント配線板を得ることがきる。
より具体的には、このプリプレグを絶縁層として用い、図1または図2に示されるような、ベースフィルム1に配線パターン2が形成され、カバーレイ3で被覆されているフレキシブル配線板4の両側に、リジッド配線板を積層してスルーホールめっきすることにより樹脂フロー部8の少ない多層プリント配線板やフレキシブルプリント配線板を作製することができる。
【実施例】
【0022】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0023】
〔実施例1〕
(プリプレグの作製)
成分(A)のエポキシ樹脂として、ナフタレン型多官能エポキシ樹脂〔DIC(株)製、商品名:HP−4700、エポキシ当量160〕31.3質量部、成分(B)のウレタン変性エポキシ樹脂〔ADEKA(株)製、商品名:アデカレジンEPU−4、エポキシ当量800〕31.3質量部、成分(C)のエポキシ樹脂硬化剤としてジシアンジアミド〔ジャパンエポキシレジン(株)製、商品名:DICY−7〕2.5質量部、成分(D)の硬化促進剤としてイミダゾール系硬化剤〔四国化成(株)製、商品名:C11Z−A〕0.3質量部、適度な弾性を付与するためのエラストマーとしてカルボキシル基含有アクリロニトリルブタジエンゴム〔JSR(株)製、商品名:ニポール1072〕をメチルエチルケトンで固形分が20質量%になるように溶解したものを7.2質量部、難燃剤として水酸化アルミニウム〔昭和電工(株)製、商品名:H−421〕17.5質量部、難燃剤としてシクロフォスファゼンオリゴマー〔大塚化学(株)製、商品名:SPB−100、融点100℃〕10.0質量部を、メチルエチルケトン/トルエン=6/4の混合溶剤に溶解希釈しワニスを調製した。このワニスを厚さ30μmのガラスクロス〔旭シユエーベル(株)製、商品名:A106/AS891AW〕に含浸、180℃で3分間乾燥することで、厚さ45μm、樹脂質量比率58%の半硬化したエポキシ樹脂組成物を含むプリプレグを作製した。
【0024】
(フレックスリジッド基板の作製)
フレキシブル両面銅張板〔京セラケミカル(株)製、商品名:TLF−W−521MH〕の両面を回路形成した後、両面にカバーレイフィルム〔京セラケミカル(株)製、商品名:TFA−560AGM−1225〕を重ね合わせ、熱プレスにより160℃、4MPaの条件で1時間加熱加圧接着して内層用のフレキシブル配線板を得た。
別途、厚さ0.1mm、銅箔35μmのガラスエポキシ両面銅張積層板〔京セラケミカル(株)製、商品名:TLC−W−551〕の片面に回路形成して、外層用のリジッド配線板を得た。
前記外層用のリジッド配線板の回路形成面に、前記プリプレグを位置合わせし、さらに前記内層用のフレキシブル配線板を位置合わせして仮固定した。
その後、熱プレスにより160℃、2.5MPaの条件で1時間加熱加圧接着し、フレックスリジッド基板を製造し、下記方法にてプリプレグの特性を評価し、結果を表1に示した。
【0025】
(評価方法)
<粘度>
各例で調製したワニスをフローテスター〔(株)島津製作所製、CFT−500型〕を用いて、開始温度50℃、終了温度180℃、昇温速度5℃/分、荷重400N、ダイ長さ(L)/ダイ径(D)=10mm/1mmという条件で、エポキシ樹脂組成物の半硬化した状態の最低溶融粘度を測定した(表1中では、最低溶融粘度と記す)。
<引張弾性率>
セイコーインスツルメント(株)製、EXSTER6000 DMAを用いて、銅箔を除去した試料を5mm×30mmに切断し、室温から昇温速度5℃/分で250℃までの1Hzにおける引張り弾性率を測定した。
<開口部からの樹脂フロー>
実施例又は比較例において、屈曲部に相当する部位を刳り貫いたプリプレグの開口部端面から、屈曲部として露出しているフレキシブル配線板表面(図1の8)への樹脂フローを100倍の実体顕微鏡で測定し、下記基準で判定した。
○:0.5mm未満
△:0.5mm以上、1mm未満
×:1mm以上
<回路埋め込み性>
前記フレックスリジッド基板の外層側銅箔を前面エッチングして、目視にて50μmの導体間隙に樹脂が完全に充填している場合を○、充填不十分またはボイドが確認できる場合を×として評価した。
<発塵性>
所定の打ち抜きジグ(ビク型)を用いプレス打ち抜き加工後の抜き端部からのレジン白化部の最大長さ(mm)を測定し、1mm未満を○、1mm以上を×として判定した。
<接着性>
JIS C5016 8.1導体の引き剥がし強さ(測定方法A)と同様にして、プリプレグとポリイミドフィルムとの90°方向の接着力(N/cm)を測定した。
<リフロー耐熱性>
前記フレックスリジッド基板を、ベーキング処理(125℃、4時間)、加湿処理(40℃、湿度90%、96時間)の前処理を施し、リフロー処理(プレヒート温度180℃、100秒、リフロー温度250℃、30秒、ピーク温度260℃)を行い、基板にフクレ等の異常が無かったものを○、フクレが発生したものを×として評価した。
<保存安定性>
300×500mmにカットしたプリプレグを50枚重ね、20℃の環境下で19.6Nの荷重をかけ1日放置後、プリプレグ間で樹脂の接着(ブロッキング)がない場合を○、プリプレグ間で樹脂の接着(ブロッキング)がある場合を×として評価した。
【0026】
〔実施例2〜7〕
配合組成を表1の通りとして実施例1と同様にプリプレグを作製した後、フレックスリジッド基板を作製し、プリプレグの特性を評価し、結果を表1に示した。
【0027】
[比較例1〜5]
配合組成を表1の通りとして実施例1と同様にプリプレグを作製した後、フレックスリジッド基板を作製し、プリプレグの特性を評価し、結果を表1に示した。
実施例2から7および比較例1〜5で使用した前記以外の材料は下記の通りである。
(A)エポキシ樹脂:日本化薬(株)製のビフェニル骨格型エポキシ樹脂(商品名:NC-3000H、エポキシ当量290)
(A)エポキシ樹脂:ジャパンエポキシレジン(株)製のビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名:エピコート1001、エポキシ当量470)
(B)エポキシ樹脂:ADEKA(株)製のウレタン変性エポキシ樹脂、アデカレジンEPU-11(商品名、エポキシ当量225)
【0028】
【表1】

【0029】
表1の結果より、成分(B)の配合量がゼロか少ない比較例1および2においては、半硬化した状態の粘度が高過ぎ、プリプレグ端面開口部からの樹脂フロー、発塵性、および接着性に劣っており、成分(B)の配合量が多い比較例3においては、回路埋め込み性、リフロー耐熱性および保存安定性に劣っていることが確認される。
【符号の説明】
【0030】
1:ベースフィルム
2:配線パターン
3:カバーレイ
4:フレキシブル配線板
5:プリプレグ
6:層間接続ビア
7:リジッド配線板
8:樹脂フロー部
9:スルーホールメッキ
10:屈曲部
11:ソルダーレジスト
12:銅箔
13:メッキ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維基材にエポキシ樹脂組成物を含むワニスを含浸、乾燥してなるプリプレグであって、前記エポキシ樹脂組成物が(A)エポキシ樹脂〔ただし、(B)のウレタン変性エポキシ樹脂を除く〕、(B)ウレタン変性エポキシ樹脂、(C)エポキシ樹脂硬化剤および(D)硬化促進剤を必須成分として含むことを特徴とするプリプレグ〔成分(A)〜(D)の合計量は100質量部で、合計量中成分(B)の配合量は15〜90質量部である〕。
【請求項2】
(A)成分のエポキシ樹脂の配合量が(A)〜(D)成分100質量部中5〜80質量部である請求項1に記載のプリプレグ。
【請求項3】
半硬化した前記エポキシ樹脂組成物の50℃から180℃における最低溶融粘度が5000から35000Pa・sである請求項1または2に記載のプリプレグ。
【請求項4】
前記(A)成分のエポキシ樹脂がナフタレン型エポキシ樹脂および/またはビフェニル骨格型エポキシ樹脂である請求項1〜3のいずれかに記載のプリプレグ。
【請求項5】
前記繊維基材がガラスクロスである請求項1〜4のいずれかに記載のプリプレグ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のプリプレグにより絶縁層が形成されてなる多層プリント配線板。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載のプリプレグにより接着されてなるフレキシブルプリント配線板。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−105916(P2011−105916A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−265452(P2009−265452)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【出願人】(390022415)京セラケミカル株式会社 (424)
【Fターム(参考)】