説明

プログラム可能送信連続時間フィルタ

プログラム可能電流の送信連続時間フィルタ(TX−CTF)システムは無線周波数(RF)送信機に含まれ得る。TX−CTFの入力はベースバンド送信信号を受信することができ、TX−CTFの出力はアップコンバージョンミキサに供給されて、送信用のRFに変換され得る。TX−CTFは、フィルタパラメータをともに規定する増幅回路および受動回路を含む。TX−CTFはさらに、プログラム可能バイアス電流を増幅回路に供給するプログラム可能電流回路を含む。TX−CTFシステムはまた、1つ以上の送信機制御信号を受信し、これに応じて、TX−CTFに供給されるバイアス電流を制御する信号を生成する制御論理を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
2009年1月19日に出願され、明細書全体が引用によりこの明細書中に援用されている米国仮特許出願第61/145,638号の出願日時点の利点をここに主張する。
【0002】
背景
送信連続時間フィルタ(TX−CTF:transmit continuous-time filter)は、典型的にはいくつかのタイプの携帯電話の送信機部分(ハンドセットとも称する)に含まれる周波数選択回路である。TX−CTFは、典型的にはデジタル/アナログ変換器(DAC:digital-to-analog converter)の出力を受信し、DACエイリアシングおよびノイズを減衰させる。TX−CTFの出力は、典型的には、アクティブなアップコンバージョンミキサに供給され、ここで、信号がベースバンド周波数から送信用の所望の無線周波数(RF)帯域にアップコンバートされる。
【背景技術】
【0003】
いくつかの3モードの携帯電話ハンドセットは、広帯域符号分割多重アクセス(WCDMA:Wideband Code Division Multiple Access)変調と、移動電気通信用広域システム(GSM:Global System for Mobile telecommunication)規格で用いられるガウスの最小シフトキーイング(GMSK:Gaussian Minimum Shift Keying)変調と、広域展開用拡張データレート(EDGE:Enhanced Data Rates for Global Evolution)規格(GSM展開用拡張データレート規格としても公知である)で用いられる8位相シフトキーイング(8PSK:8-Phase Shift Keying)変調とをサポートしている。上述の3つのモードをすべて同じハンドセットで使用可能にすると、高い電流駆動能力、高いリニアリティ、低い入力参照ノイズおよび低い帯域通過リップルを含む厳格な性能要件がTX−CTFに対して課される。これらの要件のすべてを満たすTX−CTFを設計するには問題が生じるおそれがある。これらの課題に対して提案され得る、たとえば電流を上げる、などといった単純明快な解決策は他の問題を招く可能性がある。たとえば、TX−CTF電流消費が高いと、携帯電話ハンドセットのバッテリ上の電流ドレインが不所望に高くなる可能性がある。通話時間および待機時間(すなわち、バッテリへの再充電が必要になる前にハンドセットを使用することのできる時間の量)を最大限にすることができ、かつ、バッテリサイズを最小限にすることができるように、バッテリ電流ドレインを最小限にすることが望ましい。
【0004】
典型的なTX−CTF 10を図1に示す。典型的な携帯電話のハンドセット送信機が直交変調の形式を用いている場合、TX−CTF 10は、同相(I)部分12および直交(Q)部分14を含む。部分12および14が本質的に同一であるので、この明細書中においては部分12だけを詳細に記載する。部分12は2つの区域16および18を含む。区域16は、たとえば、二次の双二次段であり、区域18は、たとえば、一次の実極段であり得る。区域16は、第1の増幅器20と、たとえば、コンデンサ22、24および26、ならびに抵抗器28、30、32、34、36および38を含み得る受動回路とを含む。二次の双二次フィルタを特徴とするフィルタ極および/またはゼロなどの所望のフィルタパラメータを規定する構成で、受動回路が選択され、第1の増幅器20に接続され得る。同様に、区域18は、第2の増幅器40と、たとえば、コンデンサ42および44ならびに抵抗器46、48、50および52を含み得る受動回路とを含む。一次の実極フィルタを特徴とするフィルタ極および/またはゼロなどの所望のフィルタパラメータを規定する構成で、同様に、区域18の受動回路が選択され、第2の増幅器40に接続され得る。
【0005】
動作時に、差動入力信号Vl(図1において「V1_N」として表される負側および「V1_P」として表される正側)が段16に供給され、この段16が、信号V2(「V2_N」として表される負側および「V2_P」として表される正側)を出力する。次いで、信号V2が段18に供給され、この段18が、信号V3(「V3_N」として表される負側および「V3_P」として表される正側)を出力する。
【0006】
典型的な携帯電話ハンドセットの場合と同様に、TX−CTF 10の同相(I)出力および直交(Q)出力は、それぞれ、アクティブなアップコンバージョンミキサ54および56に供給される。アップコンバージョンミキサ54および56の各々は、典型的には、ギルバートセル(Gilbert cell)タイプであり、TX−CTF 10に対して高インピーダンス負荷を示す。TX−CTF 10は、低電流でも高いインピーダンス負荷を容易に駆動し、必要なリニアリティを維持することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
過度の電流を消費することなく、上述の性能基準または同様の性能基準を満たすことのできるTX−CTFを多重モードの携帯電話ハンドセットに設けることが望ましいだろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
概要
本発明の実施例は、無線周波数(RF)送信機におけるプログラム可能電流の送信連続時間フィルタ(TX−CTF)システムと、送信機の動作方法とに関する。TX−CTFの入力は、ベースバンド送信信号を受信することができ、TX−CTFの出力は、アップコンバージョンミキサに供給されて送信用のRFに変換される。TX−CTFは増幅回路および受動回路を含み、これらがともにフィルタパラメータを規定する。TX−CTFはさらに、プログラム可能バイアス電流を増幅回路に供給するプログラム可能電流回路を含む。TX−CTFシステムはまた制御論理を含む。この制御論理は、1つ以上の送信機制御信号を受信し、これに応じて、TX−CTFに供給されるバイアス電流を制御する信号を生成する。送信機制御信号は、たとえば、送信機変調モード信号、送信機帯域信号および送信機電力信号のうち1つ以上を含み得る。
【0009】
本発明の他のシステム、方法、特徴および利点は、添付の図面および以下の詳細な説明を検討すると当業者にとってより明確になるだろう。
【0010】
図の簡単な説明
本発明は、添付の図面に関連付けるとよりよく理解することができる。図中の構成要素は必ずしも縮尺どおりではなく、本発明の原理を明確に説明することに重きが置かれている。さらに、図においては、同様の参照番号は、異なる図全体にわたって対応する部分を指している。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】アクティブなアップコンバージョンミキサに接続された公知のまたは先行技術の送信連続時間フィルタ(TX−CTF)を示すブロック図である。
【図2】本発明の具体的な実施例に従ったTX−CTFシステムを有する送信機部分を含む例示的な携帯電話ハンドセットを示すブロック図である。
【図3】図2の例示的な送信機部分を示すブロック図である。
【図4】図3の例示的なTX−CTFシステムを示すブロック図である。
【図5】図4のTX−CTFシステムの例示的な第2の増幅器システムを示すブロック図である。
【図6A】図5の第2の増幅器システムの例示的な決定論理を示すフロー図である。
【図6B】図6Aのフロー図の続きを示す図である。
【図7】図5の第2の増幅器システムの例示的な1段目のバイアス発生器回路のバイアス制御論理部分を示すブロック図である。
【図8】図5の第2の増幅器システムの例示的な1段目のバイアス発生器回路のPFET信号発生器部分を示すブロック図である。
【図9】図5の第2の増幅器システムの例示的な1段目のバイアス発生器回路のNFET信号発生器部分を示すブロック図である。
【図10】図5の第2の増幅器システムのプログラム可能電流の1段目を示すブロック図である。
【図11】図5の第2の増幅器システムのプログラム可能電流の2段目を示すブロック図である。
【図12】制御信号と結果として生じる1段目バイアス電流と間の例示的な関係を示す表である。
【図13】別の制御信号と結果として生じる2段目バイアス電流との間の例示的な関係を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
詳細な説明
図2および図3に図示のとおり、本発明の例示的または具体的な実施例においては、携帯電話のハンドセットなどの移動無線電気通信装置58は、無線周波数(RF)サブシステム60、アンテナ62、ベースバンドサブシステム64およびユーザインターフェイス区域66を含む。RFサブシステム60は、送信機部分68および受信機部分70を含む。送信機部分68の出力および受信機部分70の入力は、フロントエンドモジュール72を介してアンテナ62に結合される。このフロントエンドモジュール72は、送信機部分68によって生成される送信RF信号と、受信機部分70に供給される受信RF信号との両方を同時に通過させることを可能にする。しかし、以下に記載する送信機部分68のいくつかの要素については、上に列挙された要素は、従来からこのような移動無線電気通信装置に含まれていたタイプの要素であってもよい。これらの要素は、従来の要素として、この発明が関連する技術の通常の知識を有する人には十分に理解されるものであり、したがって、この明細書においてはさらに詳細には説明されない。しかしながら、このような移動無線電気通信装置の従来の送信機部分とは異なり、送信機部分68は、以下に記載される特徴を有する送信連続時間フィルタ(TX−CTF)システム74(図3)を含む。
【0013】
送信機部分68は、ベースバンドサブシステム64(図1)からデジタルベースバンド信号を入力として受信し、送信すべきRF信号を出力する。送信機部分68はさらに、デジタル/アナログ変換器76、デュアルモードモジュレータおよびアップコンバージョンミキサ78、ならびに電力増幅器システム80を含む。デジタル/アナログ変換器76は、デジタルベースバンド信号をアナログ形式に変換し、結果として生じるアナログベースバンド信号をTX−CTFシステム74に供給する。TX−CTFシステム74の出力は、デュアルモードモジュレータおよびアップコンバージョンミキサ78に供給される。デュアルモードモジュレータおよびアップコンバージョンミキサ78の出力は電力増幅器システム80に供給される。
【0014】
内部のマイクロプロセッサシステムまたは同様の論理(別個には図示せず)を介するベースバンドサブシステム64は、移動無線電気通信装置58のさまざまな動作局面を制御することができる。たとえば、ベースバンドサブシステム64は、送信機部分68の動作に影響を及ぼす1つ以上の接続82(たとえばデジタルバス)上で1つ以上の送信機制御信号を生成することができる。送信機制御信号は、たとえば、送信機変調モード信号、送信機帯域信号および送信機電力信号のうち1つ以上を含み得る。
【0015】
具体的な実施例においては、送信機変調モード信号は、少なくとも2つの変調モードのうち選択された1つのモードで動作するようモジュレータおよびアップコンバージョンミキサ78に指示することができる。当該技術において充分に理解されているように、マルチモード(たとえば2モードまたは3モード)の携帯電話ハンドセットは、セルラー電気通信基準の異なる地理的領域間でのローミングを可能にする。他の実施例においては、3つ以上のモードもあり得るが、この具体的な実施例においては、変調モードは、WCDMA規格に関連付けられるWCDMA変調と、GSM規格およびEDGE規格のいくつかの局面に関連付けられるGMSK変調とを含み得る。当該技術において充分に理解されているように、EDGE規格では、その9つの変調および符号化方式のうちの下方の4つの方式についてはGMSK変調が用いられるが、それらの9つの変調および符号化方式のうちの上方の5つの方式については高次の8PSK変調が用いられる。
【0016】
当該技術において充分に理解されている態様で、WCDMAモードで動作するようにとベースバンドサブシステム64が発したコマンドまたは命令を表わす送信機変調モード信号に応じて、送信機部分68は、WCDMA規格に従って、送信すべき信号を変調する。EDGE変調モードで動作するようにとベースバンドサブシステム64が発したコマンドまたは命令を表わす送信機変調モード信号に応じて、送信機部分68は、EDGE規格に従って、すなわちGMSK変調または8PSK変調で、送信すべき信号を変調する。GSMモードで動作するようにとベースバンドサブシステム64が発した送信機変調モードコマンドに応じて、送信機部分68は、GSM規格に従って、すなわちGMSK変調で、送信すべき信号を変調する。具体的な実施例においては、モードはGSM、EDGEおよびWCDMAのうち2つ以上を含むが、他の実施例においては、送信機変調モード信号に応じて選択されたモードは、これらのモード、または当該技術において公知の他の変調モードを含み得る。
【0017】
送信機帯域信号は、2つ以上の(周波数)帯域のうち選択された1つの帯域で動作するようモジュレータおよびアップコンバージョンミキサ78に指示し得る。他の実施例においては、3つ以上の帯域があり得るが、この具体的な実施例においては、高帯域および低帯域がある。当該技術において充分に理解されているように、デュアルバンド、トリバンド、クワッドバンドなどの携帯電話ハンドセットは、セルラー電気通信基準でさまざまな周波数帯域が特定されている地理的領域での動作を可能にする。選択された周波数帯域で動作するようにとベースバンドサブシステム64が発したコマンドを表わす送信機帯域信号に応じて、送信機部分68は、選択された周波数帯域に送信すべき信号をアップコンバートする。
【0018】
送信機電力信号は、送信機部分68が動作している出力電力を示すか、送信機部分68が動作するように指示されている出力電力を示すか、または、送信されたRF信号電力に何らかの態様で関連する1つ以上の信号を含み得る。たとえば、ベースバンドサブシステム64は、電力増幅器システム80に対して、そのゲインを選択された値に設定し、こうしてその入力信号を対応する電力レベルに増幅するよう指示する電力制御コマンドを発行することができる。電力増幅器システム80における制御回路84には閉ループフィードバックシステムが設けられており、この閉ループフィードバックシステムが、当該技術において充分に理解されているとおり、電力増幅器86を選択された電力レベで維持するか、または、他の条件に応じて他の調節を行う。選択可能な電力レベルはいくつあってもよいが、この明細書中における例示的な目的のためには、2つの選択可能な電力レベル、すなわち低電力レベルおよび高電力レベルがあればよい。当業者が理解しているように、低電力レベルおよび高電力レベルの値は、適用可能な規格(たとえばWCDMA、EDGE、GSMなど)に準拠したものであり得るが、この明細書中の例示的な目的のためには、少なくとも2つの異なる選択可能な電力レベルがあるだけでよいことが理解される。
【0019】
上述の送信機電力信号に加えて、または上述の送信機電力信号の代わりに含まれ得る別の送信機電力制御信号は、送信機部分68が実際に動作している測定または検出された電力レベルを示すことができる。送信機部分68が動作しているこのような測定された電力レベルを示す信号88は、閉ループフィードバック電力制御プロセスの一環として制御回路84において生成される。
【0020】
上述の送信機電力信号に加えて、または上述の送信機電力信号の代わりに含まれ得る別の送信機電力制御信号は、送信機の動作がより高い送信電力からより低い送信電力に移行している「バックオフ(back-off)」状態を示し得る。明確にする目的で図示していないが、送信機部分68は、たとえば、減衰回路を信号経路に切替えることによって、その送信電力をバックオフすることができる。このタイプのバックオフ方式はWCDMA規格から予期される。しかしながら、本発明の実施例においては、送信された電力制御信号は、このようなWCDMAバックオフ状態または他の同様の如何なるタイプのバックオフ状態をも示すことができる。
【0021】
TX−CTFシステム74は、上述の送信機制御信号のうち1つ以上の信号を受信し、これに応じて、その増幅回路に供給されるバイアス電流を調整する。これは以下にさらに詳細に記載されるとおりである。
【0022】
図4に図示のとおり、具体的な実施例においては、TX−CTFシステム74は同相(I)部分92および直交(Q)部分94を含む。同相部分92および直交部分94は本質的に同一であるので、この明細書においては同相部分92だけを詳細に記載する。同相部分92は、第1の区域96および第2の区域98を含む。区域96は、たとえば、二次の双二次フィルタを規定することができ、区域98は、たとえば、一次の実極フィルタを規定することができる。区域96は、第1の増幅器100と、たとえばコンデンサ102、104および106、ならびに抵抗器108、110、112、114、116および118を含み得る受動回路とを含む。二次の双二次フィルタを特徴とするフィルタ極およびゼロなどの所望のフィルタパラメータを規定する構成で、受動回路が選択され、第1の増幅器100に接続され得る。同様に、区域98は、第2の増幅器システム120と、たとえばコンデンサ122および124、ならびに抵抗器126、128、130および132を含み得る受動回路とを含む。一次の実極フィルタを特徴とするフィルタ極および/またはゼロなどの所望のフィルタパラメータを規定する構成で、区域98の受動回路が選択され、第2の増幅器システム120に接続され得る。具体的な実施例においては、区域96が二次の双二次フィルタを規定し、区域98が一次の実極フィルタを規定するが、他の実施例においては、どちらかの区域が他の好適な如何なるタイプの連続時間フィルタを含んでいてもよい。
【0023】
動作時には、差動入力信号Vl(図4において「V1_N」として表される負側および「V1_P」として表される正側)が区域96に供給され、この区域96が、信号V2(「V2_N」として表される負極および「V2_P」として表される正極)を出力する。次いで、信号V2が区域98に供給され、この区域98が、信号V3(「V3_N」として表される負極および「V3_P」として表される正極)を出力する。
【0024】
TX−CTFシステム74の同相(I)出力および直交(Q)出力は、モジュレータおよびアップコンバージョンミキサ78(図3)に供給される。具体的な実施例においては、モジュレータおよびアップコンバージョンミキサ78は、アクティブではなくパッシブなアップコンバージョンミキサ回路を含む。パッシブミキサは、その消費電流がより少なく、アクティブミキサよりも低い供給電圧で動作することができる。したがって、パッシブミキサを用いることは、電力消費を減らしたり、より低い供給電圧で回路を実現したりするのに有益であり、ハンドセットのバッテリをより小型にすることを可能にする。アクティブなアップコンバージョンミキサ回路と同様に、モジュレータおよびアップコンバージョンミキサ78のパッシブなアップコンバージョンミキサ回路は、信号の周波数変換を実行して、RF搬送周波数で信号をセンタリングする。しかしながら、パッシブなアップコンバージョンミキサ回路においては、周波数変換、すなわちアップコンバージョン、もまたモジュレータおよびアップコンバージョンミキサ78の入力インピーダンスの不利益な低下につながる可能性がある。したがって、TX−CTFシステム74に適切な電力レベルでモジュレータおよびアップコンバージョンミキサ78を駆動させるために、TX−CTFシステム74には、先のTX−CTF 10(図1)よりも実質的に低い出力インピーダンスが供給される。以下に記載される態様では、TX−CTFシステム74は、GMSK変調が必要とするリニアリティを犠牲にすることなく、また過剰な電流を消費することなく、このような低い出力インピーダンスを供給する。
【0025】
パッシブなアップコンバージョンミキサ回路を使用することにより、アクティブなアップコンバージョンミキサ回路を用いて転送されるよりも、TX−CTFシステム74からRF出力に転送されるノイズが実質的により大きくなることも留意され得る。送信機部分68(図2)から出てくるこのようなノイズは、不所望にも受信機部分70にまで繋がる可能性がある。高度の送信機ノイズは適切なトランシーバ動作を妨げる可能性があり、WCDMA、GSM、EDGEまたは他の規格によって確立された許容しきい値を上回る可能性がある。しかしながら、WCDMAモードでの動作などのハンドセット動作のいくつかの例においては、WCDMA規格によって確立されたノイズの許容しきい値は送信電力に依存している。たとえば、ハンドセットが高電力レベルで送信を行なっているとき、ノイズの低い方のしきい値が許容される。逆に、ハンドセットが低電力レベルで送信を行なっているとき、ノイズの高い方のしきい値が許容される。加えて、送信機が、上述のWCDMAバックオフ状態で動作しているとき、すなわち、送信機電力がより高いレベルからより低いレベルに下げられているとき、電力が低下するのに応じて、許容されるノイズしきい値が上げられる。送信機電力に対する許容されたノイズしきい値のこのような上昇の一例として、1デシベルごとの電力低下に対して、許容されたノイズしきい値が1デシベルずつ上げられる例が挙げられる。TX−CTFシステム74における低いノイズの場合、高い電流が必要となる。逆に、TX−CTFシステム74における高いノイズはより低い電流で得ることができる。以下に記載される態様では、TX−CTFシステム74は、上述の低電力状態、高電力状態およびバックオフ送信機電力状態などのハンドセット動作状態に応じて、より低いノイズしきい値を設定することによって、電流消費の最小化を促進する。
【0026】
同相(I)部分92の第2の増幅器システム120(図4)が、図5においてさらに詳細に示される。直交(Q)部分94は別のこのような第2の増幅器システムを含んでいるが、この他の第2の増幅器システムは、第2の増幅器システム120と同一であるので、この明細書中では説明されない。
【0027】
図5に図示のとおり、第2の増幅器システム120は、プログラム可能電流の1段目134、プログラム可能電流の2段目136および決定論理138を含む。図示される実施例においては、決定論理138は上述の送信機制御信号を受信し、これに応じて、プログラム可能電流の1段目134およびプログラム可能電流の2段目136の増幅回路(以下において説明)に供給されるバイアス電流を制御またはプログラムする。決定論理138は、供給すべきバイアス電流の量の決定を可能にする如何なる好適な論理をも含み得る。たとえば、決定論理138は、図6Aおよび図6Bのフロー図によって表わされる論理に従ってプログラムされたマイクロプロセッサまたはデジタル信号プロセッサ(図示せず)を含み得る。プログラム可能電流の1段目134に供給すべきバイアス電流の量を表わしている決定論理138の1つの出力は、3ビットのデジタルワードまたは信号、ビットISET0、ISET1およびISET2を含むISET、によって具体的な実施例において表わされる。プログラム可能電流の2段目136に供給すべきバイアス電流の量を表わしている決定論理138の別の出力は、3ビットのデジタルワードまたは信号、ビットAB0、AB1およびAB2を含むAB、によって具体的な実施例において表わされる。(信号名「AB」は、具体的な実施例においては、プログラム可能な2段目136におけるABクラスの増幅回路を指している。)インバータ論理139は、信号ABをその補数と共にプログラム可能電流の2段目136に供給する。
【0028】
図6Aおよび図6Bに示されるように、決定論理138は、たとえば、ハンドセット動作状態に応じて、プログラム可能電流の1段目134およびプログラム可能電流の2段目136の動作に関連するいくつかの論理区域を含み得る。プログラム可能電流の1段目134およびプログラム可能電流の2段目136が、第2の区域98の第2の増幅器システム120に含まれていることが、図4に関する上の記載から想起されるはずである。図6Aおよび図6Bに関して以下にさらに詳細に記載するように、第1の論理区域139は、送信機変調モードと送信機電力との組合せに応じてプログラム可能電流の1段目134に供給すべきバイアス電流の量を決定し、第2の論理区域141は、送信機帯域に応じてプログラム可能電流の2段目136に供給すべきバイアス電流の量を決定し、第3の論理区域143は、送信機電力の組合せに応じて、かつ送信機WCDMA電力のバックオフ状態が存在しているかどうかに応じて、プログラム可能電流の2段目134およびプログラム可能電流の2段目136のうちの1つまたはそれら両方に供給すべきバイアス電流の量を決定し、第4の論理区域145は、送信機変調モードに応じてプログラム可能電流の2段目136に供給すべきバイアス電流の量を決定する。これらの論理区域は、具体的な実施例においては明確にする目的で、連続するものとして図示および説明されているが、これらの論理区域は他の好適な態様で互いに一体化することもできる。たとえば、他の実施例においては、このような論理区域は並列に動作可能であるか、または代替的には、ソフトウェアの形式の評価またはハードウェアにおける論理のネットワークの評価などの単独の論理演算の形式で組合せることができる。
【0029】
プログラム可能電流の1段目134に供給されるべきバイアス電流の総量およびプログラム可能電流の2段目136に供給されるべきバイアス電流の総量に対する、論理区域139、141、143および145によって示される寄与分を合わせて合計を決定することができる。図6Aおよび図6Bのフロー図によって表わされる論理は、単に例示的なものとして意図されたものであり、この明細書中の教示に鑑みると、他の好適な論理が、本発明が関連する技術の知識を有する人にとっては容易に想起されるだろう。図6Aおよび図6Bのフロー図によって表わされる論理が、明確にする目的で他のトランシーバ動作とは切り離して図示されていることにも留意されたい。当業者は、トランシーバにおける動作状態に変化が起こったりすると、このような論理が適切な時点で適用されることになっていることを理解している。
【0030】
論理区域139に関して、ブロック140によって示されるように、送信機変調モードがWCDMAである場合、および、ブロック142によって示されるように、送信機電力が低いことを送信機電力信号が示している場合、ブロック144によって示されるように、決定論理138が、プログラム可能電流の1段目134に供給されるバイアス電流を(バイアス電流レベルがプログラム可能となる予め定められた何らかの範囲または度合いに対して)より低いレベルまたは引下げられたレベルに調整するためのISET信号を出力する。たとえば、上述のとおり、ISET信号が示すデジタル合計に対して(予め定められた範囲または度合いの数から選択された)より小さい数を与えることにより、バイアス電流をより低いレベルまたは引下げられたレベルに調整することができる。ブロック140によって示されるように、送信機変調モードがWCDMAである場合、および、ブロック142によって示されるように、送信機電力が高いことを送信機電力信号が示している場合、ブロック146によって示されるように、決定論理138は、プログラム可能電流の1段目134に供給されるバイアス電流をより高いレベルまたは引上げられたレベルに調整するためにISET信号を出力する。たとえば、上述のとおり、バイアス電流は、ISET信号が表わすデジタル合計に対してより大きな数を与えることによってより低いレベルに調整することができる。
【0031】
論理区域141に関して、ブロック148によって示されるように、送信機が低周波数帯域で動作している場合、ブロック150によって示されるように、決定論理138は、プログラム可能電流の2段目136に供給されたバイアス電流をより低いレベルまたは引下げられたレベルに調整するためにAB信号を出力する。送信機が低周波数帯域で動作していない(すなわち、高周波数帯域で動作している)場合、決定論理138は、ブロック152によって示されるように、プログラム可能電流の2段目136に供給されるバイアス電流をより高いレベルまたは引上げられたレベルに調整するためにAB信号を出力する。
【0032】
論理区域143に関して、ブロック154によって示されるように、送信機が電力バックオフ状態で動作している場合、決定論理138は、ブロック156によって示されるように、ISET信号およびAB信号のうちの1つまたはこれら両方の組合せを出力して、プログラム可能電流の1段目134およびプログラム可能電流の2段目136のうちの1つまたは両方に供給されるバイアス電流をそれぞれより低いレベルまたは引下げられたレベルに調整する。
【0033】
さらに、いくつかの実施例においては、バイアス電流がこの態様で調整された後、但し、送信機が電力バックオフ状態のままで、決定論理138はさらに、プログラム可能電流の1段目134およびプログラム可能電流の2段目136のうちの1つまたは両方に供給されるバイアス電流を異なるバイアス電流レベル、すなわち、プログラム可能電流の1段目134およびプログラム可能電流の2段目136に供給されるバイアス電流レベルの異なる組合せ、に調整するようISET信号を変更することができる。たとえば、決定論理138は、初めに、プログラム可能電流の1段目134に供給されるバイアス電流だけを低下させ、プログラム可能電流の2段目136に供給されるバイアス電流を低下させない可能性もある。その後のある時点において(たとえば、ミリセカンドのオーダで)は、送信機が電力バックオフ状態のままである一方で、決定論理138は、プログラム可能電流の1段目134に供給されるバイアス電流とプログラム可能電流の2段目136に供給されるバイアス電流との両方をさらに低下させ得るかまたは調整させ得る。次いで、送信機が依然として電力バックオフ状態のままであるさらに後の時点で、決定論理138は、プログラム可能電流の2段目136に供給されるバイアス電流だけをさらに低下または調整させ得るが、プログラム可能電流の1段目134に供給されるバイアス電流についてはさらに低下または調整させ得ない。上述の調整シーケンスは、単なる例として意図されたものに過ぎず、この明細書中の教示を鑑みると当業者に想到されるだろう。
【0034】
論理区域145に関して、ブロック162によって示されるように、送信機がWCDMA変調モードで動作している場合、ブロック164によって示されるように、決定論理138がAB信号を出力して、プログラム可能電流の2段目136に供給されるバイアス電流をより低いレベルまたは引下げられたレベルに調整する。送信機がWCDMA変調モードで動作していない場合、ブロック166によって示されるように、決定論理138がAB信号を出力して、プログラム可能電流の2段目136に供給されるバイアス電流をより高いレベルまたは引上げられたレベルに調整する。
【0035】
第2の増幅器システム120におけるバイアス制御論理168(図5)は、ISET信号に応じて、PFET(pチャネル電界効果トランジスタ)デジタル制御ワードまたは信号、ビットPCTRL2、PCTRL3、PCTRL4、PCTRL5、PCTRL6およびPCTRL7を含むPCTRL、さらには、NFET(nチャネル電界効果トランジスタ)デジタル制御ワードまたは信号、ビットNCTRL2、NCTRL3、NCTRL4、NCTRL5、NCTRL6およびNCTRL7を含むNCTRLを生成する。バイアス制御論理168のうち信号NCTRLを生成する部分は、信号PCTRLを生成する部分と同一であるので、この明細書においては、信号NCTRLを生成する部分だけを図示および説明する。この明細書中において記載されるさまざまな信号におけるビットの数は単に例示的なものにすぎず、他の実施例においては、このような信号が他の如何なる好適な数のビットをも有し得ることに留意されたい。
【0036】
図7に図示のとおり、バイアス制御論理168のうち信号NCTRLを生成する部分は、たとえば、インバータ170、172、174、176、178、180、182、184、186、188および190;NORゲート192、194および196;NANDゲート198;ORゲート200;ならびにANDゲート202、204および206などの組合せ論理のネットワークを含み得る。図7に示される組合せ論理は単に例示的なものにすぎず、当業者であれば、信号NCTRLが他のさまざまな方法で生成可能であることを理解する。
【0037】
再び図5を参照すると、信号PCTRLおよび固定されたまたは一定のPFETバイアス電圧VB_Pに応じて、1段目のPFET信号発生器208が1セットのPFET制御電圧、すなわち、VB_P1、VB_P2、VB_P3、VB_P4、VB_P5、VB_P6およびVB_P7を生成する。同様に、信号NCTRLおよび固定されたまたは一定のNFETバイアス電圧VB_Nに応じて、1段目のNFET信号発生器210が1セットのNFET制御電圧VB_N1、VB_N2、VB_N3、VB_N4、VB_N5、VB_N6およびVB_N7を生成する。
【0038】
図8にさらに図示されるように、1段目のPFET信号発生器208は6対のPFETを含む。各々の対においては、1つのPFETは、PFETゲートに与えられたビットPCTRL2〜PCTRL7のうちの1つによって制御され、他のPFETは、PFETゲートに与えられたそのビットの補数によって制御される。同様に、図9にさらに図示されるように、1段目のNFET信号発生器210は6対のNFETを含む。各々の対においては、1つのNFETが、NFETゲートに与えられるビットNCTRL2〜NCTRL7のうちの1つによって制御され、他のNFETは、NFETゲートに与えられるそのビットの補数によって制御される。
【0039】
図10に図示のとおり、プログラム可能電流の1段目134は、差動入力信号Vl(すなわち、信号V1_NおよびV1_P)、制御信号VB_PおよびVB_N、固定されたまたは一定の供給電圧VDD、固定されたまたは一定の共通モード帰還電圧V_CMFB、ならびに固定されたまたは一定のカスコードトランジスタ・バイアス電圧V_CASCを受信し、これに応じて、信号V2(すなわち信号V2_NおよびV2_P)を出力する。プログラム可能電流の1段目134は、14のPFETを含むPFETブランチ212と、14のNFETを含むNFETブランチ214とを含む。PFETブランチ212およびNFETブランチ214は増幅器トランジスタ215に制御可能またはプログラム可能バイアス電流を供給する。上述のとおり、図5および図10に示されるプログラム可能電流の1段目134は、システムの同相(I)側に含まれ、同一のプログラム可能電流の1段目は、システムの直交(Q)側に含まれているが、明確にする目的で図示されていない。
【0040】
図11に図示されるように、プログラム可能電流の2段目136は、差動入力信号V2(すなわち信号V2_NおよびV2_P)、制御信号AB0、AB1およびA2、ならびにそれらの補数、固定されたまたは一定の2段目のPFETバイアス電圧VAB_P、固定されたまたは一定の2段目のNFETバイアス電圧VAB_N、ならびに供給電圧VDDを受信し、これに応じて、信号V3(すなわち信号V3_NおよびV3_P)を出力する。プログラム可能電流の2段目136は3つのブランチ216、218および220を含む。ブランチ216は「オン」状態のままであり(すなわち、信号AB0がハイのままであり)、システムの動作のすべてのインスタンスにおいて同じバイアス電流を与える一方で、ブランチ218および220は、バイアス電流の制御可能な部分またはプログラム可能部分を与えるのに用いられる。図5および図11に示されるプログラム可能電流の2段目136は、システムの同相(I)側に含まれ、同一のプログラム可能電流の2段目はシステムの直交(Q)側に含まれているが、明確にする目的で図示されていない。
【0041】
動作時には、出力信号V3は、TX−CTFシステム74(図4)を用いて、入力信号Vlをフィルタリングした結果を表わし、この場合、第2の増幅器システム120の増幅回路に供給されたバイアス電流が、1つ以上の送信機制御信号に応じて制御またはプログラムされる。
【0042】
図12における表は、ISET信号と、プログラム可能電流の1段目134(図10)におけるPFETブランチ212およびNFETブランチ214の各々に供給される結果として生じるバイアス電流と、システムのうち組合された同相側と直交(Q)側とにおけるこれらのPFETおよびNFETに供給されるバイアス電流の合計との間の関係の一例を示す。
【0043】
図13における表は、AB信号と、プログラム可能電流の2段目136(図10)におけるブランチ218および220の各々に供給される結果として生じるバイアス電流と、システムのうち組合された同相側と直交(Q)側とにおけるこれらのブランチに供給されるバイアス電流の合計との間の関係の一例を示す。
【0044】
具体的な実施例に関して上述された態様では、この発明は送信機動作状態に応じてTX−CTFのノイズ特性およびリニアリティを調整する。マルチモードトランシーバが関係するさまざまな規格(たとえばGMSK、EDGE、WCDMAなど)によって指定される性能要件を満たすために、低ノイズおよび高リニアリティを提供することが望ましいが、この発明がない場合、さまざまなすべての動作状態下でさまざまな規格すべての性能要件すべてを同時に満たすには、高い電流消費を犠牲にすれば可能となるだろう。最低の平均電力消費でこのような性能要件を満たすために、この発明は、送信機動作状態で要求されるのと同程度の低いノイズおよび高いリニアリティを提供する。
【0045】
上述のとおり、プログラム可能電流の1段目134に供給されるバイアス電流を変化させることにより、プログラム可能電流の1段目134の増幅回路におけるノイズが変化する。プログラム可能電流の1段目134に供給されるバイアス電流が高ければ高いほど、結果として、プログラム可能電流の1段目134の増幅回路におけるノイズが低くなる。プログラム可能電流の1段目134に供給されるバイアス電流が低ければ低いほど、結果として、プログラム可能電流の1段目134の増幅回路におけるノイズが高くなる。プログラム可能電流の1段目134の増幅回路のノイズ特性は、TX−CTFシステム74全体のノイズ、そして、最終的には送信機部分68(図2)全体のノイズの主な原因となる。たとえばWCDMAモードでは、ノイズ要件は送信機出力電力に依存している。送信電力が高ければ高いほど、より低いノイズが求められ、逆の場合にも同様となる。また、バックオフ状態では、ノイズ要件は緩和される。変調モード、送信電力およびバックオフ状態のうち1つ以上に応じてプログラム可能電流の1段目134をプログラムすることにより、TX−CTFシステム74は、このような動作状態で必要とされる場合にのみ低ノイズ特性を提供し、これにより、TX−CTFシステム74全体の平均電力消費を最小限にし、そして最終的には、送信機部分68全体を可能な限り小さくする。
【0046】
同様に、上述のとおり、プログラム可能電流の2段目136に供給されるバイアス電流を変化させることにより、プログラム可能電流の2段目136の増幅回路における出力電流駆動およびリニアリティが変化する。プログラム可能電流の2段目136に供給されるバイアス電流が高ければ高いほど、結果として、プログラム可能電流の2段目136の増幅回路における出力電流駆動能力およびリニアリティがより高くなる。プログラム可能電流の2段目136に供給されるバイアス電流が低ければ低いほど、結果として、プログラム可能電流の2段目136の増幅回路における出力電流駆動能力およびリニアリティがより低くなる。TX−CTFシステム74の高い直線特性が必要である場合、たとえば、送信機部分68がGMSKモードである場合、または、デュアルモードモジュレータおよびアップコンバージョンミキサ78の入力インピーダンスがより低い場合、たとえば、送信機部分68が高周波数帯域で動作している場合、高い電流駆動能力が必要となる。逆に、直線特性の低いTX−CTFシステム74で十分である場合、たとえば、送信機部分68がWCDMAモードである場合、または、デュアルモードモジュレータおよびアップコンバージョンミキサ78の入力インピーダンスがより高い場合、たとえば、送信機部分68が低周波数帯域で動作している場合、より低い電流駆動能力で十分となる。送信機モードおよび周波数帯域のうちのいずれかまたはこれら両方に応じてプログラム可能電流の2段目136をプログラムすることにより、このような動作状態で必要とされる場合にのみTX−CTFシステム74が高い直線特性を提供し、これにより、TX−CTFシステム74全体の平均電力消費を最小限にし、そして最終的には、送信機部分68全体を可能な限り小さくする。
【0047】
本発明のさまざまな実施例を記載してきたが、より多くの実施例および実現例がこの発明の範囲内で実現可能となることが当業者には明らかになるだろう。たとえば、好適な送信機制御信号の例、および供給すべきバイアス電流の量を決定する際のそれら信号の使用の例が記載されるが、この明細書中の教示を鑑みると他の例も当業者に容易に想到されるだろう。したがって、本発明は添付の特許請求の範囲外には限定されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線周波数(RF)送信機のためのシステムであって、
送信機におけるRF信号へのアップコンバージョンよりも前にベースバンド送信信号を受信する入力を有するプログラム可能電流の送信連続時間フィルタ(TX−CTF)を含み、前記TX−CTFは、TX−CTFの少なくとも1つのフィルタパラメータをともに規定するよう受動回路に結合された増幅回路を含み、プログラム可能電流のTX−CTFはさらに、増幅回路に少なくとも1つのプログラム可能バイアス電流を供給するためのプログラム可能電流回路を含み、前記システムはさらに、
1つ以上の送信機制御信号を受信するための制御論理を含み、前記制御論理は、1つ以上の送信機制御信号に応じて少なくとも1つのバイアス電流を制御する、システム。
【請求項2】
1つ以上の送信機制御信号に応じて少なくとも1つのバイアス電流を制御することで、プログラム可能電流のTX−CTFのリニアリティおよびプログラム可能電流のTX−CTFのノイズ特性のうち少なくとも1つを制御する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
1つ以上の送信機制御信号は、送信機変調モード、送信機帯域および送信機電力のうち少なくとも1つを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
プログラム可能電流のTX−CTFの出力に結合された入力を有するパッシブなアップコンバージョンミキサをさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
プログラム可能電流のTX−CTFは、
ベースバンド送信信号を受信するための入力を有するプログラム可能電流の第1のCTF段を含み、前記プログラム可能電流の第1のCTF段は、
第1のCTF段の増幅回路と、
プログラム可能な第1のCTF段の電流回路とを含み、前記プログラム可能な第1のCTF段の電流回路は、第1のCTF段の増幅回路にプログラム可能バイアス電流を供給し、プログラム可能バイアス電流が第1のデジタルプログラミングデータに応じて生成され、前記プログラム可能電流のTX−CTFはさらに、
プログラム可能電流の第1のCTF段の出力を受信するための入力を有するプログラム可能電流の第2のCTF段を含み、前記プログラム可能電流の第2のCTF段は、
第2のCTF段の増幅回路と、
プログラム可能な第2のCTF段の電流回路とを含み、前記プログラム可能な第2のCTF段の電流回路は、第2のCTF段の増幅回路にプログラム可能バイアス電流を供給し、プログラム可能バイアス電流が第2のデジタルプログラミングデータに応じて生成され、
制御論理は、1つ以上の送信機制御信号に応じて第1のデジタルプログラミングデータおよび第2のデジタルプログラミングデータを生成する、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
1つ以上の送信機制御信号は、少なくとも低い送信電力および高い送信電力を示す送信機電力信号を含み、
制御論理は、高い送信電力を示す送信機電力信号に応じて、プログラム可能な第1のCTF段の電流回路に高いバイアス電流を生成させる第1のデジタルプログラミングデータを生成し、
制御論理は、低い送信電力を示す送信機電力信号に応じて、プログラム可能な第1のCTF段の電流回路に低いバイアス電流を生成させる第1のデジタルプログラミングデータを生成する、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
1つ以上の送信機制御信号は、少なくとも広帯域符号分割多重アクセス(WCDMA)モードおよび別のモードを示す送信機変調モード信号をさらに含み、
制御論理は、送信機変調モード信号がWCDMAモードを示す場合、高い送信電力を示す送信機電力信号に応じて、プログラム可能な第1のCTF段の電流回路に高いバイアス電流を生成させるために第1のデジタルプログラミングデータを生成するよう適合され、
制御論理は、送信機変調モード信号がWCDMAモードを示す場合、低い送信電力を示す送信機電力信号に応じて、プログラム可能な第1のCTF段の電流回路に低いバイアス電流を生成させるために第1のデジタルプログラミングデータを生成するよう適合される、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
1つ以上の送信機制御信号は、少なくとも低い送信周波数および高い送信周波数を示す送信機帯域信号を含み、
制御論理は、低い送信周波数を示す送信機帯域信号に応じて、プログラム可能な第2のCTF段の電流回路に低いバイアス電流を生成させるために第2のデジタルプログラミングデータを生成するよう適合され、
制御論理は、高い送信周波数を示す送信機帯域信号に応じて、プログラム可能な第2のCTF段の電流回路に高いバイアス電流を生成させるために第2のデジタルプログラミングデータを生成するよう適合される、請求項5に記載のシステム。
【請求項9】
1つ以上の送信機制御信号は、少なくとも広帯域符号分割多重アクセス(WCDMA)モードおよびガウスの最小シフトキーイング(GMSK)モードを示す送信機変調モード信号を含み、
制御論理は、WCDMAモードを示す送信機変調モード信号に応じて、プログラム可能な第2のCTF段の電流回路に低いバイアス電流を生成させるために第2のデジタルプログラミングデータを生成するよう適合され、
制御論理は、GMSKモードを示す送信機変調モード信号に応じて、プログラム可能な第2のCTF段の電流回路に高いバイアス電流を生成させるために第2のデジタルプログラミングデータを生成するよう適合される、請求項5に記載のシステム。
【請求項10】
1つ以上の送信機制御信号は、少なくとも低い送信電力と、高い送信電力と、送信信号を減衰させることによってより高い送信電力からより低い送信電力へとバックオフする状態とを示す1つ以上の送信機電力信号を含み、
制御論理は、送信信号を減衰させることによってより高い送信電力からより低い送信電力へとバックオフする状態を示す送信機電力信号に応じて、プログラム可能な第1のCTF段の電流回路およびプログラム可能な第2のCTF段の電流回路のうち少なくとも1つに低いバイアス電流を生成させるために、第1のデジタルプログラミングデータおよび第2のデジタルプログラミングデータのうち少なくとも1つを生成するよう適合される、請求項5に記載のシステム。
【請求項11】
より高い送信電力からより低い送信電力へとバックオフする状態は、WCDMAバックオフ状態を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
無線周波数(RF)送信機を動作させる方法であって、
プログラム可能電流の送信連続時間フィルタ(TX−CTF)の入力にベースバンド送信信号を供給するステップを含み、TX−CTFは、少なくとも1つのフィルタパラメータをともに規定するよう受動回路に結合された増幅回路を含み、増幅回路はプログラム可能バイアス電流を受信し、前記方法はさらに、
1つ以上の送信機制御信号に応じて増幅回路へのバイアス電流を制御するステップと、
送信機におけるアップコンバータに対してプログラム可能電流のTX−CTFの出力を供給するステップとを含む、方法。
【請求項13】
アップコンバータに対してプログラム可能電流のTX−CTFの出力を供給するステップは、パッシブミキサに対してプログラム可能TX−CTFの出力を供給するステップを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
1つ以上の送信機制御信号は、送信機変調モード、送信機帯域および送信機電力のうち少なくとも1つを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
プログラム可能電流のTX−CTFは、ベースバンド送信信号を受信する入力を有するプログラム可能電流の第1のCTF段と、プログラム可能電流の第1のCTF段の出力を受信する入力を有するプログラム可能電流の第2のCTF段とを含み、1つ以上の送信機制御信号は、少なくとも低い送信電力および高い送信電力を示す送信機電力信号を含み、1つ以上の送信機制御信号に応じてバイアス電流を制御するステップは、
高い送信電力を示す送信機電力信号に応じて、プログラム可能電流の第1のCTF段に高いバイアス電流を供給するステップと、
低い送信電力を示す送信機電力信号に応じて、プログラム可能電流の第1のCTF段に低いバイアス電流を供給するステップとを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
プログラム可能電流のTX−CTFは、ベースバンド送信信号を受信する入力を有するプログラム可能電流の第1のCTF段と、プログラム可能電流の第1のCTF段の出力を受信する入力を有するプログラム可能電流の第2のCTF段とを含み、1つ以上の送信機制御信号はさらに、少なくとも広帯域符号分割多重アクセス(WCDMA)モードおよび別のモードを示す送信機変調モード信号を含み、1つ以上の送信機制御信号に応じてバイアス電流を制御するステップは、
高い送信電力を示す送信機電力信号とWCDMAモードを示す送信機変調モード信号とに応じて、プログラム可能電流の第1のCTF段に高いバイアス電流を供給するステップと、
低い送信電力を示す送信機電力信号とWCDMAモードを示す送信機変調モード信号とに応じて、プログラム可能電流の第1のCTF段に低いバイアス電流を供給するステップとを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
プログラム可能電流のTX−CTFは、ベースバンド送信信号を受信する入力を有するプログラム可能電流の第1のCTF段と、プログラム可能電流の第1のCTF段の出力を受信する入力を有するプログラム可能電流の第2のCTF段とを含み、1つ以上の送信機制御信号は、少なくとも低い送信周波数および高い送信周波数を示す送信機帯域信号を含み、1つ以上の送信機制御信号に応じてバイアス電流を制御するステップは、
低い送信周波数を示す送信機帯域信号に応じて、プログラム可能電流の第2のCTF段に低いバイアス電流を供給するステップと、
高い送信周波数を示す送信機帯域信号に応じて、プログラム可能電流の第2のCTF段に高いバイアス電流を供給するステップとを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
プログラム可能電流のTX−CTFは、ベースバンド送信信号を受信する入力を有するプログラム可能電流の第1のCTF段と、プログラム可能電流の第1のCTF段の出力を受信する入力を有するプログラム可能電流の第2のCTF段とを含み、1つ以上の送信機制御信号は、少なくとも低い送信電力と、高い送信電力と、送信信号を減衰させることによってより高い送信電力からより低い送信電力へとバックオフする状態とを示す1つ以上の送信機電力信号を含み、1つ以上の送信機制御信号に応じてバイアス電流を制御するステップは、
送信信号を減衰させることによってより高い送信電力からより低い送信電力へとバックオフする状態を示す送信機電力信号に応じて、プログラム可能電流の第1のCTF段およびプログラム可能電流の第2のCTF段のうち少なくとも1つに低いバイアス電流を供給するステップを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
より高い送信電力からより低い送信電力へとバックオフする状態は、WCDMAバックオフ状態を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
無線周波数(RF)送信機のためのシステムであって、
1つ以上の送信機制御信号を受信し、1つ以上の送信機制御信号に応じて第1のデジタルプログラミングデータおよび第2のデジタルプログラミングデータを供給するための制御論理と、
ベースバンド送信信号を受信するための入力を有するプログラム可能電流の第1のCTF段とを含み、プログラム可能電流の第1のCTF段は、
第1のCTF段の増幅回路と、
プログラム可能な第1のCTF段の電流回路とを含み、プログラム可能な第1のCTF段の電流回路は、プログラム可能バイアス電流を第1のCTF段の増幅回路に供給し、プログラム可能バイアス電流が第1のデジタルプログラミングデータに応じて生成され、前記システムはさらに、
プログラム可能電流の第1のCTF段の出力を受信するための入力を有するプログラム可能電流の第2のCTF段を含み、プログラム可能電流の第2のCTF段は、
第2のCTF段の増幅回路と、
プログラム可能な第2のCTF段の電流回路とを含み、プログラム可能な第2のCTF段の電流回路は、プログラム可能バイアス電流を第2のCTF段の増幅回路に供給し、プログラム可能バイアス電流が第2のデジタルプログラミングデータに応じて生成され、
制御論理は、1つ以上の送信機制御信号に応じて第1のデジタルプログラミングデータおよび第2のデジタルプログラミングデータを生成し、前記システムはさらに、
プログラム可能電流のTX−CTFの出力に結合された入力を有するパッシブなアップコンバージョンミキサを含む、システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2012−515501(P2012−515501A)
【公表日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−546240(P2011−546240)
【出願日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際出願番号】PCT/US2009/054417
【国際公開番号】WO2010/082957
【国際公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【出願人】(503031330)スカイワークス ソリューションズ,インコーポレイテッド (30)
【氏名又は名称原語表記】SKYWORKS SOLUTIONS,INC.
【Fターム(参考)】