説明

ヘッドセットシステム

【課題】 低消費電力のもとに、ヘッドセットから発信者に応じて異なる着信音を出力させることができるヘッドセットシステムを提供する。
【解決手段】 ヘッドセットシステムは、携帯電話端末機10と、この携帯電話端末機10の使用者の身体に装着され、当該携帯電話端末機10との間で音声通信を行うヘッドセット20とを備える。携帯電話端末機10は、ブルートゥースモジュール11を介して、着信があった電話の発信者に関するデータをヘッドセット20に対して送信する。ヘッドセット20は、発信者に対応させて着信音として出力するように指定された複数種類の音声データをメモリに記憶しており、携帯電話端末機10から受信した発信者に関するデータに基づいて、メモリに記憶している複数種類の音声データの中から択一的に選択した音声データからなる着信音を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話端末機の使用者の身体に装着され、当該携帯電話端末機との間で音声通信を行うヘッドセットとを備えたヘッドセットシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、携帯電話端末機を直接把持せずにハンズフリーでの通話を行うために、使用者の身体に装着されるヘッドセットが利用されている。かかるヘッドセットは、ヘッドホンやイヤホン等の音声出力部とマイク等の音声入力部とから構成され、携帯電話端末機と所定のコードケーブル等を介して接続されることにより、当該携帯電話端末機によって受話した音声を受信して使用者に聴取可能に出力するとともに、使用者によって発話された音声を当該携帯電話端末機に対して送信することにより、通話を実現するものである。
【0003】
また、いわゆるブルートゥース(Bluetooth(登録商標))をはじめとする近年の近距離無線通信規格の普及にともない、所定のコードケーブル等を介さずに、携帯電話端末機との間で無線による音声通信を行うヘッドセットも開発されている。
【0004】
さらに、着信があった電話の発信者に応じて着信音を変更することにより、発信者を使用者に報知する技術も開発されている(例えば、特許文献1等参照。)。具体的には、この特許文献1には、局線又は専用線等に接続される外部インターフェース及び交換処理を行うスイッチを有するボタン電話主装置と、このボタン電話主装置に接続される複数のボタン電話機とを備えるボタン電話システムが開示されている。特に、このボタン電話システムにおいて、ボタン電話主装置は、交換処理の制御を行う中央処理装置と、着信音源駆動データを格納する記憶装置とを備えることにより、各ボタン電話機への着信音を発信者番号や着信番号によって任意の着信音を鳴動させることができるとしている。
【特許文献1】特開2002−218518号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述したブルートゥース規格に準拠した音声通信を行うことによってハンズフリー通話を実現する従来のヘッドセットシステムにおいては、着信時に1種類の着信音しか出力することができなかった。そのため、発信者に応じて着信音を変更できるようなヘッドセットシステムの開発が望まれている。
【0006】
ここで、携帯電話端末機においては、メモリ容量の増大化にともない、かかるメモリに複数種類の音声データを記憶することが可能となっている。そのため、ヘッドセットシステムにおいては、ヘッドセットから複数種類の着信音を出力させるために、携帯電話端末機に複数種類の音声データを記憶しておき、発信者毎に選択された音声データをヘッドセットに対して送信するための音声リンクを確立することにより、当該ヘッドセットから発信者毎に異なる着信音を出力させることも可能であると考えられる。
【0007】
しかしながら、音声リンクを確立させる手法は、着信がある度に、携帯電話端末機からヘッドセットに対して音声データを送信する必要があることから、極めて大きな電力を消費することになり、携帯電話端末機の使用可能時間が短くなってしまうという問題を招来する。
【0008】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、低消費電力のもとに、ヘッドセットから発信者に応じて異なる着信音を出力させることができるヘッドセットシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成する本発明に係るヘッドセットシステムは、携帯電話端末機と、前記携帯電話端末機の使用者の身体に装着され、当該携帯電話端末機との間で音声通信を行うヘッドセットとを備え、前記携帯電話端末機は、着信があった電話の発信者に関するデータを前記ヘッドセットに対して送信する通信手段を有し、前記ヘッドセットは、発信者に対応させて着信音として出力するように指定された複数種類の音声データを記憶する記憶手段と、前記携帯電話端末機から受信した前記発信者に関するデータに基づいて、前記記憶手段に記憶している複数種類の音声データの中から択一的に選択した音声データからなる着信音を出力する着信音出力手段とを有することを特徴としている。
【0010】
このような本発明に係るヘッドセットシステムにおいては、携帯電話端末機からヘッドセットに対して、発信者毎に異なる音声データを送信するのではなく、音声データよりもデータサイズが大幅に小さい発信者に関するデータを送信し、このデータに基づいて、ヘッドセットの記憶手段に記憶されている複数種類の音声データの中から択一的に選択された音声データを出力する。したがって、本発明に係るヘッドセットシステムにおいては、携帯電話端末機の消費電力を抑制し、当該携帯電話端末機の使用可能時間の短縮化を防止することができるとともに、ヘッドセットから複数種類の着信音を出力させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、低消費電力のもとに、ヘッドセットから発信者に応じて異なる着信音を出力させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
本発明の実施の形態として示すヘッドセットシステムは、図1に示すように、携帯電話端末機10と、この携帯電話端末機10の使用者の身体に装着されるヘッドセット20とを備える。
【0014】
携帯電話端末機10は、いわゆるブルートゥース(Bluetooth(登録商標))規格に準拠した通信方式に基づいて音声通信を行うブルートゥースモジュール11を有する。ここで、ブルートゥースは、赤外線通信に比べ、通信距離が長く、障害物に対する耐性が強い通信方式であり、赤外線通信のように機器同士を直進性の見通しの位置関係となるように設定する必要がない通信方式である。一方、赤外線通信は、ブルートゥース規格に準拠した通信よりも低消費電力で信号の送受信を行うことが可能な通信方式である。
【0015】
一方、ヘッドセット20は、携帯電話端末機10との間で音声通信を行うことが可能に構成され、当該携帯電話端末機10に対応して、ブルートゥース規格に準拠した通信方式に基づいて音声通信を行うブルートゥースモジュール21を有する。
【0016】
このような携帯電話端末機10及びヘッドセット20から構成されるヘッドセットシステムにおいては、通話時には、ブルートゥース規格に準拠した通信方式に基づいて、携帯電話端末機10とヘッドセット20との間で音声通信を行う。すなわち、ヘッドセット20は、携帯電話端末機10による通話モードの場合には、ブルートゥースモジュール11,21間で通信路を確立し、ブルートゥース規格に準拠した通信方式に基づいて、当該携帯電話端末機10によって受話した音声を受信し、ヘッドホンやイヤホン等を介して使用者に聴取可能に出力するとともに、使用者によって発話された音声を、マイク等を介して取り込み、当該携帯電話端末機10に対して送信する。
【0017】
ここで、ヘッドセット20は、図示しないメモリに、発信者に対応させて着信音として出力するように指定された複数種類の音声データを記憶しており、携帯電話端末機10から受信した発信者に関するデータに基づいて、メモリに記憶している複数種類の音声データの中から択一的に選択した音声データからなる着信音をヘッドホンやイヤホン等の着信音出力手段を介して使用者に聴取可能に出力する。このとき、携帯電話端末機10及びヘッドセット20は、ブルートゥースモジュール11,21を介して、発信者に関するデータの送受信を行う。
【0018】
具体的には、ヘッドセットシステムにおいては、ブルートゥース規格で規定されているいわゆるACL(Asynchronous Connection Less link;非同期コネクションレスリンク)チャネルを用い、外部機器から移動機の呼制御を行うためのいわゆるATコマンドを携帯電話端末機10とヘッドセット20との間で送受信することにより、着信があった電話の発信者に関するデータの送受信を行うことができる。ここで、発信者に関するデータは、ATコマンドとそれに対応するリザルトコードからなることから、音声データに比べてデータサイズが大幅に小さく、極めて小さな電力で送受信を行うことができるものである。
【0019】
この場合、ヘッドセット20は、例えば図2に示すような一連の手順にしたがって、着信音の出力制御を行う。なお、ここでは、説明の便宜上、第1の電話番号及び第2の電話番号のそれぞれに対応する着信音として使用する2種類の音声データA,Bがヘッドセット20のメモリに記憶されている場合について説明する。
【0020】
まず、ヘッドセット20は、同図に示すように、ステップS1において、ブルートゥースモジュール21を介して携帯電話端末機10のブルートゥースモジュール11とハンドシェイク接続してACLリンクを確立することにより、携帯電話端末機10との間でデータの送受信が可能な状態に移行する。
【0021】
続いて、ヘッドセット20は、ステップS2において、ブルートゥースモジュール21を介して、AT+CLIP=1のコマンドを携帯電話端末機10に対して送信する。ここで、+CLIPコマンドとは、着信中の発信者電話番号の表示設定等を行うために使用されるものである。ヘッドセット20は、携帯電話端末機10に対してAT+CLIP=1のコマンドを送信することにより、着信があった場合に、当該コマンドに対応する非請求リザルトコード+CLIPとして、発信者の電話番号を当該携帯電話端末機10から通知されるように設定することができる。なお、非請求リザルトコードとは、ATコマンドの入力がある度に応答されるリザルトコードとは異なり、携帯電話端末機10に着信があった場合や当該携帯電話端末機10の状態が変化した場合等に、自動的にヘッドセット20に対して送信されるリザルトコードである。このように、ヘッドセット20は、予め携帯電話端末機10に対してAT+CLIP=1のコマンドを送信しておくことにより、当該携帯電話端末機10に着信があった場合には、その通知を受け取ることが可能となる。
【0022】
そして、ヘッドセット20は、携帯電話端末機10に着信があった場合には、ステップS3において、ブルートゥースモジュール21を介して、当該携帯電話端末機10から送信された非請求リザルトコードRING+CLIPを受信する。ここで、非請求リザルトコードRINGとは、上述したAT+CLIP=1のコマンドの応答として、着信があった旨の通知であり、発信者の電話番号や、この電話番号が国際番号であるか国内番号であるかの種別等の情報が含まれるものである。ヘッドセット20は、受信した非請求リザルトコードRING+CLIPに基づいて、発信者の電話番号を特定することが可能となる。
【0023】
ヘッドセット20は、このようにして発信者の電話番号を特定すると、ステップS4において、特定した電話番号が第1の電話番号であった場合には、ステップS5において、メモリに記憶されている2種類の音声データのうち、当該第1の電話番号に対応する音声データAを選択し、これを着信音として出力する。一方、ヘッドセット20は、ステップS4において、特定した電話番号が第2の電話番号であった場合には、ステップS6において、メモリに記憶されている2種類の音声データのうち、当該第2の電話番号に対応する音声データBを選択し、これを着信音として出力する。なお、ヘッドセット20は、ステップS4において、特定した電話番号が第1の電話番号及び第2の電話番号のいずれでもなかった場合には、予め設定されている所定の音声データに基づく着信音を出力し、一連の処理を終了する。
【0024】
このように、本発明の実施の形態として示すヘッドセットシステムにおいては、携帯電話端末機10からヘッドセット20に対して、発信者毎に異なる音声データを送信するのではなく、音声データよりもデータサイズが大幅に小さい発信者に関するデータを送信し、このデータに基づいて、ヘッドセット20のメモリに記憶されている複数種類の音声データの中から択一的に選択された音声データを出力する。これにより、このヘッドセットシステムにおいては、携帯電話端末機10の消費電力を抑制し、当該携帯電話端末機10の使用可能時間の短縮化を防止することができる。したがって、このヘッドセットシステムにおいては、低消費電力のもとに、ヘッドセット20から発信者に応じて異なる着信音を出力させることができる。
【0025】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではない。例えば、上述した実施の形態では、ブルートゥース規格に準拠した通信方式を用いるものとして説明したが、本発明は、有線又は無線の種別を問わず、任意の通信方式を用いる場合に適用することができる。
【0026】
このように、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能であることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の形態として示すヘッドセットシステムの構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態として示すヘッドセットシステムにおけるヘッドセットにおいて、着信音の出力制御を行う際の一連の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0028】
10 携帯電話端末機
11,21 ブルートゥースモジュール
20 ヘッドセット


【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯電話端末機と、
前記携帯電話端末機の使用者の身体に装着され、当該携帯電話端末機との間で音声通信を行うヘッドセットとを備え、
前記携帯電話端末機は、着信があった電話の発信者に関するデータを前記ヘッドセットに対して送信する通信手段を有し、
前記ヘッドセットは、発信者に対応させて着信音として出力するように指定された複数種類の音声データを記憶する記憶手段と、前記携帯電話端末機から受信した前記発信者に関するデータに基づいて、前記記憶手段に記憶している複数種類の音声データの中から択一的に選択した音声データからなる着信音を出力する着信音出力手段とを有することを特徴とするヘッドセットシステム。
【請求項2】
前記通信手段は、ブルートゥース規格に準拠した通信方式に基づいて音声通信を行うものであり、
前記携帯電話端末機及び前記ヘッドセットは、上記ブルートゥース規格で規定されている非同期コネクションレスリンクチャネルを用いるとともに、当該ヘッドセットから当該携帯電話端末機の呼制御を行うためのコマンドを用い、前記発信者に関するデータの送受信を行うことを特徴とする請求項1記載のヘッドセットシステム。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−104122(P2007−104122A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−288913(P2005−288913)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000006220)ミツミ電機株式会社 (1,651)
【Fターム(参考)】