説明

ポリシラザン溶解用処理液、およびこれを用いた半導体装置の製造方法

【課題】安定したプロセス処理が可能な半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】半導体基板上に、ポリシラザンを溶剤に溶解してなる塗布液を供給する工程、前記半導体基板を回転させて、前記ポリシラザンを含む塗布膜を形成する工程、前記半導体基板の裏面に、リンス液を供給してバックリンスを施し、裏面を洗浄する工程、前記バックリンス後の前記半導体基板を乾燥して前記リンス液を除去する工程、および、前記半導体基板を熱処理して前記塗布膜から前記溶剤を除去し、シリコン酸化物を含む絶縁膜を得る工程を具備する方法である。前記溶剤および前記リンス液は、少なくとも一部にテルペン類を含み、酸価0.036mgKOH/g未満であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリシラザン溶解用処理液、およびこれを用いた半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の塗布膜として用いられるシリコン含有化合物としては、シロキサン類およびシラザン類が知られている。いずれも、低誘電率絶縁膜(Low−k)材料や層間絶縁膜(ILD)材料、あるいは埋め込み材料としての価値が高い。ポリシラザン(PSZ)を、PMD(Pre−Metal Dielectric)やIMD(Inter−Metal Dielectric)に用いることも提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
シロキサン類を溶解して塗布液を調製するための溶剤としては、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)等が用いられることが多い。ウェハのエッジカットや裏面洗浄(バックリンス)用のシンナー(リンス液)にも、同様のものが用いられている。
【0004】
リンス液は、シリコン含有化合物の種類に応じて選択され、例えば、シルセスキオキサンには、低分子のシロキサンが用いられる。ポリシラザン類には、キシレンやジ−n−ブチルエーテル、あるいはナフタレン系物質が用いられている(例えば、特許文献2,3,および4参照。)。
【0005】
また、二酸化炭素の排出量を低減しつつ、塗布法により高いスループットで絶縁膜を形成するために、α−ピネン等のテルペン類を溶剤またはリンス液として使用する方法が提案されている。(特許文献5および6参照。)
ポリシラザンは、水分やアルコール等の物質と反応してゲル化し、最終的にはシリカの固化物となって析出される。ポリシラザンのゲル化は、リンス液中に含まれる水分や不純物、空気中の水分などによって、あるいはポリシラザン自体の自己分解によって引き起こされる。ゲル化に伴なって、アンモニア、シランおよび水素を含有する有毒で発火性のある危険なガスが発生する。
【0006】
塗布装置内においては、塗布後の塗布液はリンス液と混合されて廃液ラインを経由し、コーターカップの下方に設置された廃液貯蔵庫内に収容される。塗布液がポリシラザンの場合、こうした廃液ラインや廃液貯蔵庫の中では、リンス液中に含まれる水分や不純物とポリシラザンが反応して、ゲル化するおそれがある。廃液は空気と接触していることから、空気中の水分を吸収してポリシラザンのゲル化が生じる。
【0007】
廃液貯蔵庫に蓋を設ければ、空気との接触が避けられるのでゲル化のおそれは低減されるものの、蓋の密着性が高すぎると、ガスの発生によって貯蔵庫内の内圧が上昇して破裂する危険がある。一方、通気性のよい蓋や逆止弁付きの蓋では、発生した危険なガスが大気中に拡散して取扱者の健康を害するおそれがある。
【0008】
廃液ラインでのゲル化や固化は配管内での詰まりを引き起こし、漏液などの災害を招くおそれがある。固化物はダストの原因となって、半導体装置の製造歩留まりの低下を引き起こす。ゲル化や固化は進行性であるため、定期的な装置のメンテナンスが欠かせない。
【0009】
ポリシラザンのゲル化や固化を防ぐために、廃液ラインや廃液貯蔵庫内に定期的にリンス液を流して洗浄が行なわれる。過剰のリンス液を供給してポリシラザンの濃度を低減して、ゲル化の遅延を図ることが行なわれている。こうした処置のためには、過剰のリンス液を使用する必要が生じる。
【0010】
これらの健康への影響・災害防止・塗布装置の維持管理等の理由から、ポリシラザンのゲル化を抑えることが求められている。
【特許文献1】特開2004−179614号公報
【特許文献2】特開2003−197611号公報
【特許文献3】特開2005−236050号公報
【特許文献4】特許3479648号公報
【特許文献5】特開2007−242956号公報
【特許文献6】特開2006−216704号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、ゲル化が起こりにくく人体への影響の少ないポリシラザン溶解用処理液、および安定したプロセス処理が可能な半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様にかかるポリシラザン溶解用処理液は、少なくとも一部にテルペン類を含み、酸価が0.036mgKOH/g未満であることを特徴とする。
【0013】
本発明の一態様にかかる半導体装置の製造方法は、半導体基板上に、ポリシラザンを溶剤に溶解してなる塗布液を供給し、前記ポリシラザンを含む塗布膜を形成する工程、
前記半導体基板の裏面にリンス液を供給してバックリンスを施し、裏面を洗浄する工程、
前記バックリンス後の前記半導体基板を乾燥して前記リンス液を除去する工程、および
前記半導体基板を熱処理して前記塗布膜から前記溶剤を除去し、シリコン酸化膜を含む絶縁膜を得る工程を具備し、
前記溶剤および前記リンス液は、その少なくとも一部が、前述のポリシラザン溶解用処理液からなることを特徴とする。
【0014】
本発明の他の態様にかかる半導体装置の製造方法は、半導体基板上に、ポリシラザンを溶剤に溶解してなる塗布液を供給し、前記ポリシラザンを含む塗布膜を形成する工程、
前記半導体基板のエッジ部分にリンス液を供給して、エッジカットを施す工程、
前記エッジカット後の前記半導体基板を乾燥して前記リンス液を除去する工程、および
前記半導体基板を熱処理して前記塗布膜から前記溶剤を除去し、シリコン酸化膜を含む絶縁膜を得る工程を具備し、
前記溶剤および前記リンス液は、その少なくとも一部が、前述のポリシラザン溶解用処理液であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様によれば、ゲル化が起こりにくく人体への影響の少ないポリシラザン溶解用処理液、および安定したプロセス処理が可能な半導体装置の製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
本発明の実施形態にかかる処理液は、塗布法により絶縁膜を形成するためにシリコン含有化合物を溶解する溶剤として用いられる。また、塗布後には、ウェハのエッジカットやバックリンス用のリンス液として用いられる。
【0017】
図1乃至図8を参照して、塗布工程のフローを説明する。
【0018】
図1には、用いるコーター装置の構成を示す。図示するように、コーターカップ1内には、半導体ウェハ(図示せず)を支持するスピンチャック2が配置され、エッジカットノズル3aおよびバックサイドリンスノズル3bが設けられている。これらのノズルから、半導体ウェハの所定の領域にリンス液が供給される。コーターカップ1の外側には、溶剤が収容されたソルベントバス4、および塗布液を廃棄するダミーディスペンスポート6が配置されている。薬液ノズル5は、半導体ウェハ上に塗布液(薬液)を供給するために用いられる。図1においては、薬液ノズル5は、先端の乾燥を防ぐためにソルベントバス4中の溶剤蒸気中に保持されている。
【0019】
塗布に当たっては、まず、図2に示すように、半導体ウェハ7をスピンチャック2で支持し、真空吸着により固定する。ウェハは、冷却プレート(図示せず)に載置して一定温度となるように調節しておく。この際の条件は、例えば23℃で60秒間とすることができる。
【0020】
薬液ノズル5の先端部分の塗布液は、空気中の水分と反応することによって濃度が変化する。溶剤が蒸発した場合も塗布液の濃度が変わる。これを避けるため、半導体ウェハ7に塗布液を吐出する前に、清浄な塗布液を供給できる状態にしておく必要がある。そこで、図3に示すように、薬液ノズル5をダミーディスペントポート6へ移動して、ノズルに含まれている塗布液を廃棄する(ダミーディスペンス)。
【0021】
ダミーディスペンスを行なう前に、ノズル先端を溶剤で洗浄する場合もある。連続してウェハを処理する場合は、この工程を省略してもよい。
【0022】
続いて、図4に示すように薬液ノズル5を半導体ウェハ7上に移動して、塗布液を吐出して塗布膜8を形成する。吐出方式には、スタテッィク方式とダイナミック方式との2種類がある。スタティック方式は、静止しているウェハの中心部に塗布液を供給する方式をさす。一方、ダイナミック方式は、ウェハを回転させながら塗布液を供給する方式である。ダイナミックディスペンスは、少ない吐出量で膜厚均一性のよい膜を形成できるために広く用いられている。
【0023】
塗布膜8の形成に用いられる塗布液には、シリコン含有化合物としてポリシラザンが含有される。無機および有機のいずれのポリシラザンを用いてもよく、無機ポリシラザンとしては、例えば下記一般式(I)で表わされる繰り返し単位を有する直鎖状化合物が挙げられる。
【化1】

【0024】
こうした無機ポリシラザンの重量平均分子量は、690〜2000であることが好ましい。特に、一分子中に3〜10個のSiH3基を有し、化学分析による元素比率がSi:59〜61、N:31〜34およびH:6.5〜7.5の各重量%であるペルヒドロポリシラザン、およびポリスチレン換算平均分子量が3,000〜20,000の範囲内のペルヒドロポリシラザンが挙げられる。
【0025】
ペルヒドロポリシラザンは、任意の方法により製造することができる。基本的には分子内に鎖状部分と環状部分とを含み、例えば下記化学式で表わされる。
【化2】

【0026】
ペルヒドロポリシラザン構造の一例を、以下に示す。
【化3】

【0027】
また、下記一般式(II)で表わされる化合物、あるいはその変性物を用いることができる。数平均分子量は、約100〜50,000の範囲内が好ましい。
【化4】

【0028】
上記一般式(II)中、R1、R2およびR3は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、もしくはこれらの基以外でフルオロアルキル基等のケイ素に直結する基が炭素である基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基またはアルコキシ基である。ただし、R1、R2およびR3の少なくとも1つは水素原子である。
【0029】
具体的には、上記一般式(II)において、R1およびR2として水素原子が導入されるとともに、R3として有機基が導入されたポリオルガノ(ヒドロ)シラザンが挙げられる。また、−(R2SiHNH)−を繰り返し単位として、主として重合度が3〜5の環状構造を有するもの、(R3SiHNH)x[(R2SiH)1.5N]1-x(0.4<X<1)で表わされ、分子内に鎖状構造と環状構造とを同時に有するものを用いることもできる。
【0030】
上記一般式(II)において、R1として水素原子が導入され、R2およびR3として有機基が導入されたポリシラザン、またR1およびR2として有機基が導入され、R3として水素原子が導入され、−(R12SiNR3)−を繰り返し単位として、主に重合度が3〜5の環状構造を有しているものもある。
【0031】
さらに、例えば一般式で表わされる架橋構造を分子内に有するポリオルガノ(ヒドロ)シラザンが挙げられる。
【化5】

【0032】
1SiX3(X:ハロゲン)をアンモニア分解することによって、架橋構造を有するポリシラザンR1Si(NH)xが得られる。また、R1SiX3および(R22SiX2を共アンモニア分解することによってポリシラザンが得られる。こうした化合物を用いることもできる。具体的には、以下に示す構造を有するポリシラザンである。
【化6】

【0033】
また、[(SiH2)n(NH)m]、または[(SiH2)rO]で表わされる繰り返し単位(n、m、rはそれぞれ1、2または3である)を有するポリシロキサザン、ペルヒドロポリシラザンにメタノール等のアルコールあるいはヘキサメチルジシラザンを末端N原子に付加して得られた変性ポリシラザン、アルミニウム等の金属を含有する金属含有ポリシラザンなどが挙げられる。
【0034】
さらに、ポリボロシラザン、無機シラザン高重合体や改質ポリシラザン、共重合シラザン、触媒的化合物を付加または添加してセラミックス化を促進した低温セラミックス化ポリシラザン、ケイ素アルコキシド付加ポリシラザン、グリシドール付加ポリシラザン、アセチルアセトナト錯体付加ポリシラザン、金属カルボン酸塩付加ポリシラザンのようなポリシラザンが挙げられる。
【0035】
上述したポリシラザンまたは変性物に、アミン類および/または酸類を添加してなる調製されたポリシラザン組成物を用いることもできる。
【0036】
ポリシラザンに加えて、シラン系化合物が含有されていてもよい。シラン系化合物は、例えば下記一般式で表わされる。
【化7】

【0037】
上記一般式(1)中、R11およびR12は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子または置換基である。置換基としては、例えば、アルキル基やアルコキシ基、アルケニル基、水酸基、アミノ基などが挙げられる。R11およびR12の両方に水素原子が導入された場合はシラン化合物である。
【0038】
さらに、ポリシロキサンやシルセスキオキサン、ポリシラシラザン等が含有されてもよい。また、上記化合物群の混合物や共重合体でもかまわない。
【0039】
上述したようなポリシラザン、および必要に応じて他のシリコン含有化合物を溶剤に溶解することによって、塗布液が調製される。溶剤は、エッジカットノズル3aやバックサイドリンスノズル3bから供給されるリンス液としても用いられる。一般的には、キシレンやジ−n−ブチルエーテルが溶剤として使用されるが、本発明の一実施形態においては、溶剤の少なくとも一部は特定の処理液によって構成される。具体的には、少なくとも一部にテルペン類を含み、酸価が0.036mgKOH/g未満の処理液であり、これについては後述する。
【0040】
塗布液の吐出が終了したら、図5に示すようにウェハ7を所定の回転数で回転させて、塗布膜8の膜厚を調整する。膜厚は、塗布液の粘度(濃度)および回転数によって決まる。このとき、薬液ノズル5はソルベントバス4へ戻って、そこで待機する。
【0041】
塗布膜8の膜厚が安定した後、エッジビードリムーブ(EBR)/バックリンスを行なう。具体的には、図6に示されるように、エッジカットノズル3aからリンス液9を供給して、ウェハエッジ部分の塗布膜を除去することにより、エッジカットが行なわれる。このとき、リンス液9と接触した塗布膜の端部が盛り上がったり、だれたりしないよう留意する。また、EBRと同時に、バックリンスノズル3bからリンス液9をウェハ裏面に供給して、ウェハ裏面に回り込んだ塗布液を洗い流すことによりバックリンスが行なわれる。
【0042】
リンス液の少なくとも一部は、溶剤の場合と同様の特定の処理液で構成される。すなわち、少なくとも一部にテルペン類を含み、酸価が0.036mgKOH/g未満の処理液である。
【0043】
EBR/バックリンス後には、図7に示されるようにリンス液の供給を停止し、ウェハ7を回転させて、エッジ部および裏面を乾燥させる。
【0044】
乾燥後には、図8に示されるようにウェハ7はコーター装置から除去されて、ホットプレート(図示せず)へ移される。ホットプレート上では、適切な温度でベークして塗布膜を乾燥させる。例えば150℃で180秒間ベークを行なって、塗布膜中から溶剤を除去して、塗布絶縁膜が形成される。
【0045】
その後、例えば冷却プレートによってウェハを冷却して、一連の塗布プロセスが終了する。冷却条件は、例えば23℃で60秒間とすることができる。
【0046】
リンス液は、塗布液と混合されて廃液ラインを流れ、最終的にコーターカップの下方に設置された廃液貯蔵庫(図示せず)に収容される。廃液ラインや貯蔵庫内では、ポリシラザンのゲル化や固化といった現象が生じる。これを防ぐため、従来は、定期的にリンス液を流して洗浄したり、ポリシラザンの濃度を薄めるため過剰のリンス液を供給することが行なわれてきた。
【0047】
鋭意検討した結果、本発明者らは、塗布液の溶剤およびリンス液には、ポリシラザンのゲル化を抑制し得る組成が存在することを見出して、本発明をなすにいたったものである。塗布液の溶剤およびリンス液は、その少なくとも一部が本発明の一実施形態にかかるポリシラザン溶解用処理液によって構成される。
【0048】
本発明の一実施形態にかかるポリシラザン溶解用処理液は、少なくとも一部にテルペン類を含む。一般に、テルペン類は、自然界に広く存在する物質であり、天然の植物精油中に多く含まれ、安全性に優れた化合物である。工業的には、植物の幹、葉、実から抽出され、なかでも松ヤニやオレンジの果皮から得られる化合物が多く利用されている。
【0049】
テルペンとは、(C58)nの分子式で表わされるイソプレン則に基づく一連の化合物の総称であり、モノテルペン(n=2)およびセスキテルペン(n=3)などを含む。一般にテルペン系化合物としては、α−ピネン、β−ピネン、ジペンテン、リモネン、ミルセン、アロオシメン、カンフェンα−フェランドレン、α−テルピネン、γ−テルピネン、テルピノレン、パラメンタン、およびパラサイメン等のテルペン系炭化水素化合物;シネオール、ターピネオール、カルボン、メントール、ペリルアルコール、およびペリルアルデヒド等のテルペン系含酸素化合物が挙げられる。
【0050】
特に、テルペン類としては、α−ピネン、β−ピネン、ジペンテン、d−リモネン、および1,8−シネオールが好ましく、単独または2種以上を併用して使用することができる。
【0051】
本発明者らは、こうしたテルペン類の酸価に着目し、酸価が低減されたテルペン類がポリシラザンのゲル化を抑制するのに有効であることを見出した。酸価は、脂肪酸1gを中和するために要する水酸化カリウムの量を、ミリグラム単位で表わした数値である。テルペン類の酸価は、テルペンカルボン酸等の酸性成分の含有量に依存して決定され、含有量が多ければ高い値を示すものと推測される。市販されている通常のテルペン類の酸価は、0.08mgKOH/g以上である。
【0052】
本発明の実施形態においては、処理液の酸価は、0.036mgKOH/g未満に規定される。すなわち、塗布液を調製するための溶剤として用いる場合のみならず、リンス液として用いる場合も、処理液の酸価は、0.036mgKOH/g未満に規定される。溶剤およびリンス液といった処理液の酸価が0.036mgKOH/g以上となると、ポリシラザンのゲル化を抑制することができない。こうした知見は、本発明者らによって得られたものである。本発明の実施形態にかかる処理液の酸価は、0.03mgKOH/g以下が好ましく、0.02mgKOH/g以下がより好ましい。
【0053】
除去処理または吸着処理といった処理を施すことによって、処理液の酸価を0.036mgKOH/g未満に低減することができる。具体的には、精密蒸留処理、分子蒸留処理、薄膜蒸留処理、アルカリ処理、水洗処理、イオン交換樹脂処理、および活性炭素処理などの処理が挙げられる。こうした処理は、単独で行なっても複数を組み合わせて行なってもよい。
【0054】
例えば、アルカリ処理は、水酸化ナトリウムやアンモニア等の水溶液を用いて行なうことができる。大過剰のアルカリ水溶液を未処理のテルペン類に加えて、所定時間攪拌する。静置後、油水分離を行なって酸価が低減されたテルペン類が得られる。
【0055】
本発明の実施形態にかかる処理液は、含有水分量が250ppm以下であることが好ましい。250ppmを越えると、ポリシラザンのゲル化が発生しやすくなる。含有水分量は、200ppm以下であることがより好ましい。含有水分量が100ppm以下と低い場合であっても、酸価が0.036mgKOH/g以上となるとポリシラザンのゲル化の進行速度が速くなる。すなわち、ポリシラザンのゲル化に及ぼす影響は、含有水分量よりも酸価のほうが大きいことが、本発明者らによって見出された。
【0056】
ただし、テルペン類の極性が高くなると、水分が含有されやすくなるので、ポリシラザンのゲル化を引き起こし易い。一方、テルペン類の極性が低すぎると、ポリシラザンの溶解性が悪くなり、EBR特性が低下するおそれがある。
【0057】
処理液中には、直径0.5μm以上の微粒子が不可避的に混入する場合がある。こうした微粒子が溶剤中に存在した場合には、ウェハ表面に微粒子が付着し、パターンに欠陥を形成してしまうなどの不都合が生じる。また、リンス液中に存在した場合には、ウェハ裏面へ微粒子が付着し、製造装置の汚染を引き起こす等の悪影響が生じる。したがって、本発明の実施形態にかかる処理液においては、1ml中に含まれる直径0.5μm以上の微粒子は50個以下であることが好ましい。処理液中の微粒子の個数は、例えば、パーティクルカウンター等によって測定することができる。かかる微粒子の含有量は、10個以下であることがより好ましい。
【0058】
上述したようなテルペン類からなる処理液は、溶剤またはリンス液の少なくとも80重量%の量で含有されていれば、その効果が得られる。90重量%以上で含有されていれば、ポリシラザンのゲル化の進行を大幅に抑制することができる。
【0059】
溶剤の残部は、一般的な炭化水素溶媒等とすることができる。また、リンス液の残部も、一般的な炭化水素溶媒等とすることができる。
【0060】
(実施形態1)
下記表1に示すような、数種類の処理液を用意した。テルペン類(α−ピネン、d−リモネン、およびβ−ピネン)の酸価は、未処理品に大過剰の水酸化ナトリウムを添加してアルカリ処理を施すことにより低減した。未処理品の酸価は、0.08mgKOH/g以上である。
【0061】
未処理品の処理に当たっては、まず、酸価が0.08mgKOH/g以上の各テルペン類に対して、等量の20%水酸化ナトリウム水溶液を添加後、20分撹拌した。静置後、油水分離を行なって、目的のテルペン類を得た。テルペン類の酸価は、三菱化学製自動滴定装置GT−06を使用して測定した。
【0062】
また、各テルペン類の含有水分量を、平沼製作所製AQ−2000を使用して、カールフィッシャー法により求めた。油水分離後のテルペン類の含有水分量は、いずれも100ppm以下であったため、水を添加して含有水分量を150ppmに調整したテルペン類もあわせて用意した。
【0063】
比較のために、リンス液として従来用いられているナフタレン系処理液も用意した。
【0064】
各処理液の酸価および含有水分量を、純度とともに下記表1にまとめる。
【表1】

【0065】
No.1〜10の処理液をリンス液として用いて、ポリシラザンを含む塗布液とそれぞれ混合し、溶解性およびゲル化について調べる。
AZエレクトロニックマテリアルズ社製のポリシラザン塗布液(Spinfil65001(ジブチルエーテル溶媒))を塗布液原料として用意した。
【0066】
ポリシラザン塗布液と各処理液とを9:1の容量比で混合して、溶解性を調べた。溶解性は、混合直後の混合液の状態を目視により確認して、濁りの有無によって評価した。全く濁りが生じなければ“○”であり、濁りが認められれば“×”である。
【0067】
さらに、それぞれの処理液と塗布液とを含有する各混合液を室温で放置して、ゲル化が開始するまでの日数を測定した。各処理液について得られた結果を、溶解性の評価とともに下記表2にまとめる。
【表2】

【0068】
上記表2に示されるように、酸価が0.08mgKOH/g以上の未処理のテルペン類(処理液No.3,6,9)は、いずれも溶解性が“×”であり、4日以内でゲル化が開始している。ナフタレン系リンス液(No.10)は、溶解性は良好であるものの、同様に4日でゲル化が生じた。
【0069】
これに対して、処理を施して酸価を低減した処理液(No.1,2,4,5,7,8)では、溶解性が良好であるのに加えて、ゲル化開始までの日数が8日と長い。含有水分量が150ppmの処理液(No.2,5,8)であっても酸価が低減されていれば、ゲル化抑制の効果は、何等損なわれない。
【0070】
次に、酸価が異なる複数のα−ピネンを用意し、前述と同様のポリシラザン塗布液と混合してゲル化の開始日数を調べた。酸価は、0.014〜0.08mgKOH/gの9種類とした。
【0071】
酸価とゲル化日数との関係を、図9のグラフに示す。酸価が0.08mgKOH/gの場合には4日でゲル化が開始しており、酸価が低減されても0.036mgKOH/gまでは、ゲル化開始日数は一定である。酸価が0.036mgKOH/g未満に低減された場合には、ゲル化開始日数が長くなることが示されている。
【0072】
このように、テルペン類の酸価が0.036mgKOH/g未満であれば、ゲル化が抑制されることが確認された。こうした結果に基づいて、本発明の実施形態にかかるポリシラザン溶解用処理液においては、テルペン類の酸価を0.036mgKOH/g未満に規定した。
【0073】
(実施形態2)
本実施形態においては、No.2の処理液をリンス液として用いて、ポリシラザン塗布膜を形成した。塗布液としては、実施形態1と同様のポリシラザン塗布液を用いた。
【0074】
塗布のプロセスレシピおよび各工程に要した時間を、下記表3に示す。まず、図2に示したようにコーターカップ1内のスピンチャック2上にウェハ7を載置する。図3に示すように薬液ノズル5をソルベントバス4から出し、短時間ダミーディスペンス(吐出)を行なって、ノズル先端の塗布液を新しい液にする。塗布液は薬液チューブ内を高圧ガスで加圧するか、あるいは送液ポンプで送り込むことで吐出される。(表3では、これらの詳細を省略している。)
次に、図4に示すようにウェハ7を1200rpmで回転させつつ、1ml/sの流量で2秒間塗布液をウェハ7上に吐出する。さらに、100rpmで短時間回転させて、図5に示すようにウェハ7の全面に塗布膜8を形成する。塗布液の吐出量は2mlである。所望の膜厚で塗布膜8が得られるように、任意の回転数で13秒間、ウェハ7を回転させる。塗布膜8は、溶剤を蒸発させながら乾燥し、最後に一定の膜厚に落ち着く。そのため、ある程度の回転時間が必要とされ、膜厚はこの回転数を変えることによって調節することができる。300mmウェハの場合、回転数は500〜2500rpmの間である。
【0075】
ウェハ7のエッジ部および裏面に回りこんだ塗布液を除去するために、図6に示すように、EBRおよびバックリンスを施す。これはウェハ7を中回転で回転させながら、このウェハ7の端部および裏面に、エッジカットノズル3aおよびバックサイドリンスノズル3bからリンス液9をそれぞれ供給することによって行なわれる。リンス液9の流量は、約10〜100ml/minである。最後に、図7に示すようにウェハ7を回転させることによって、ウェハ7の端部および裏面に供給されたリンス液9を乾燥させる。回転数は、例えば3000rpmとすることができる。回転時間は5秒で十分である。
【0076】
塗布工程における全体の処理時間はウェハ一枚当たり45秒であり、1分を切っている。
【表3】

【0077】
なお、リンス液としてナフタレン系溶剤を用いるプロセスでは、乾燥の工程に25秒以上の時間が必要であることが確認された。塗布工程における全体の処理時間はウェハ一枚当たり65秒であり、1分を越えている。これに加えて、上述したようにポリシラザンのゲル化が発生する。
【0078】
一方、酸価が低減されたα−ピネンをリンス液9として用いることによって、現状のプロセスに比べてウェハ一枚当り20秒の処理時間の短時間化を果たすことができる。全体の処理時間もウェハ一枚当り1分以内にすることが可能であり、しかも、ポリシラザンのゲル化は抑制される。
【0079】
(実施形態3)
以下、STI(Shallow Trench Isolation)埋め込み方法の実施形態を説明する。まず図10乃至図13を参照して、CMOS構造のメモリセルを製造する手順を説明する。
【0080】
まず、シリコン基板10の表面に、熱酸化法により二酸化シリコン膜(厚さ10nm程度)11を形成し、その上に減圧CVD法によりCMPストッパー膜12としての窒化シリコン膜(厚さ200nm程度)12を形成する。基板上に形成される膜の膜厚は、適宜変更することができる。例えば、CMPストッパー膜12の膜厚は、100〜300nm程度でもよい。
【0081】
フォトリソグラフィーおよびドライエッチング法により、図10に示すように、CMPストッパー膜12および二酸化シリコン膜11を貫通してシリコン基板10に達するように、素子分離溝(STI溝)13を形成する。STI溝13の幅や深さはデバイス構造や世代によって変わり、代表的には幅30nm〜10μm程度、深さは200〜500nm程度であるが、これに限定されるものではない。
【0082】
次に、実施形態1と同様の塗布液を絶縁膜原料として用いて、スピンコーティング法によりSi基板10の全面に塗布して塗布膜を形成する。この際、No.1乃至2の処理液を用いて、シリコン基板10の裏面のバックリンスやエッジカットを行なう。上述したように、No.1乃至2の処理液を用いてバックリンスを行なうことによって、ポリシラザンのゲル化が抑制される。しかも、乾燥時間が短くなり処理速度が短縮されるという効果も得られる。
【0083】
なお、塗布膜の形成に先立って、二酸化シリコン膜等の他の膜を、窒化シリコン膜12の上に形成してもよい。塗布後、ホットプレート上で150℃3分のベーキングを行なって塗布膜中から溶剤を揮発除去して、図11に示すようなPHPS膜15を全面に形成する。
【0084】
次に、水蒸気を含む雰囲気中での酸化処理を施して、PHPS膜15を図12に示すように二酸化シリコン膜16に変化させる。酸化処理は、例えば、230℃以上900℃以下の温度で行なうことができる。温度が230℃未満の場合には、PHPS膜を酸化処理して得られる二酸化シリコン膜は、非常にポーラスとなる。このため、フッ酸を含む溶液で容易にエッチング除去されてしまい、任意の高さの素子分離絶縁膜を形成することが困難となる。一方、水蒸気を含む雰囲気で900℃を越える温度で酸化が行なわれると、STI溝13の側面が厚く酸化されてしまう。最悪の場合には、Si基板10に転位が生じることがあり、100nmクラスのデザインルールのデバイスのSTI形成方法として適切ではない。
【0085】
また、炉内の雰囲気および温度を安定にするために、酸化時間は5分以上であることが好ましい。ただし、過剰に長時間の酸化が行なわれると、STI溝13の側面が厚く酸化されてしまうおそれがある。したがって、酸化時間の上限は、60分程度にとどめることが望まれる。
【0086】
続いて、CMPなどの手法により二酸化シリコン膜16を選択的に除去して、図13に示すようにCMPストッパー膜12の表面を露出し、STI溝13内に二酸化シリコン膜16を残置する。以上の工程により、素子分離絶縁膜がSTI溝13内に埋め込み形成される。
【0087】
二酸化シリコン膜16は、不活性ガス雰囲気中で700℃以上1,100℃以下の熱処理により緻密化することができる。700℃未満では、二酸化シリコン膜16を十分に緻密化することが困難となる。一方、1,100℃を越えると、デバイスによっては先にイオン注入によって形成したチャネル層の拡散深さを深くしてしまうおそれがある。熱処理の時間は、1秒〜120分の範囲内で適宜選択すればよい。こうした条件で熱処理を施すことによって、二酸化シリコン膜16中から水分が除去されて、緻密化が達成され、結果としてデバイスの電気特性を向上させることができる。
【0088】
この緻密化はCMPを行なう前に施してもよい。
【0089】
本実施形態においては、STI溝内に素子分離絶縁膜を埋め込み形成する際、絶縁膜原料に含有されるポリシラザンのゲル化が抑制されるので、安定したプロセス処理が可能となる。
【0090】
(実施形態4)
図14乃至図18を参照して、NAND構造のメモリセルを製造する手順を説明する。
【0091】
まず、シリコン基板10の表面に、熱酸化法によりゲート絶縁膜(厚さ8nm以下)18を形成し、この上に第1のゲート(浮遊ゲート)電極膜19として、膜厚100nmの多結晶シリコン膜を形成する。第1のゲート電極膜19は、多結晶シリコン膜以外にWSi,CoSi等を用いて形成することもでき、その膜厚は100〜200nmの範囲内で適宜選択することができる。第1のゲート電極膜19の上には、CMPストッパー膜12として窒化シリコン膜(厚さ200nm程度)を減圧CVD法により形成する。CMPストッパー膜12としては、窒化シリコン膜の代わりに、100〜200nm程度の膜厚の多結晶シリコン膜を形成してもよい。
【0092】
フォトリソグラフィーおよびドライエッチング法により、図14に示すように、CMPストッパー膜12、第1のゲート電極膜19およびゲート絶縁膜18を貫通してSi基板10に達するように、STI溝13を形成する。STI溝13の幅や深さはデバイス構造や世代によって変わり、代表的には幅30nm〜10μm程度、深さは200〜500nm程度であるが、これに限定されるものではない。
【0093】
次に、実施形態1と同様の塗布液を絶縁膜原料として用いて、スピンコーティング法によりSi基板10の全面に塗布して塗布膜を形成する。この際、No.1乃至2の処理液を用いて、シリコン基板10の裏面のバックリンスやエッジカットを行なう。すでに説明したように、No.1乃至2の処理液を用いてバックリンスを行なうことによって、ポリシラザンのゲル化が抑制される。しかも、乾燥時間が短くなり処理速度が短縮されるという効果も得られる。こうして図15に示すようなPHPS膜15を形成し、実施形態3と同様に、水蒸気を含む雰囲気中で酸化処理を施して、図16に示すように二酸化シリコン膜16を形成する。
【0094】
さらに、CMPなどの手法により、CMPストッパー膜12上の二酸化シリコン膜16を選択的に除去して、図17に示すようにCMPストッパー膜12の表面を露出し、STI溝13内に二酸化シリコン膜16を残置する。以上の工程により、素子分離絶縁膜として二酸化シリコン膜16がSTI溝13内に埋め込み形成される。
【0095】
二酸化シリコン膜16は、CMP前またはCMP後の工程において、不活性ガス雰囲気中で700℃以上1,100℃以下の熱処理により緻密化することができる。700℃未満では、二酸化シリコン膜16を十分に緻密化することが困難となる。一方、1,100℃を越えると、デバイスによっては先にイオン注入によって形成したチャネル層の拡散深さを深くしてしまうおそれがある。熱処理の時間は、1秒〜120分の範囲内で適宜選択すればよい。こうした条件で熱処理を施すことによって、二酸化シリコン膜16中から水分が除去されて、緻密化が達成され、結果としてデバイスの電気特性を向上させることができる。
【0096】
引き続いて、リン酸溶液を用いたエッチングによりCMPストッパー膜12を除去し、希フッ酸溶液を用いたウェットエッチングにより二酸化シリコン酸化膜16の上部を除去する。これによって、第1のゲート電極膜19の側面の上部の一部が100nm程度露出する。さらに、常法により電極間絶縁膜20を堆積し、その上に第2のゲート(制御ゲート)電極膜21を形成して、図18に示すようなNAND構造のメモリセルを得る。電極間絶縁膜20には、CVD法によるシリコン酸化膜/シリコン窒化膜/シリコン酸化膜(総膜厚20nm程度)などが用いられ、第2のゲート電極膜21には、CVD法による多結晶シリコン膜/タングステン膜(総膜厚50nm程度)が用いられる。
【0097】
本実施形態においては、NAND構造のメモリセルにおける素子分離絶縁膜として二酸化シリコン膜を埋め込み形成する際、絶縁膜原料に含有されるポリシラザンのゲル化が抑制されるので、安定したプロセス処理が可能となる。
【0098】
(実施形態5)
塗布液を半導体基板上に供給する前に、半導体基板に不純物領域およびゲート電極を含む半導体素子を形成する工程、絶縁膜に貫通孔を設けて不純物領域を露出する工程、および、貫通孔に導電材料を埋め込む工程を設けて、PMD(Pre−Metal Dielectric)を形成することができる。
【0099】
図19乃至図23を参照して、こうした方法について説明する。
【0100】
不純物領域25a,25bおよびゲート電極26を含むトランジスターが形成されたシリコン基板24の全面に、図19に示すように層間絶縁膜27を形成する。図示していないが、ゲート電極26はゲート絶縁膜を介して、シリコン基板24上に設けられている。
【0101】
実施形態1と同様の塗布液を絶縁膜原料として用いて、スピンコーティング法により基板全面に塗布して塗布膜を形成する。この際、No.1乃至2の処理液を用いて、シリコン基板24の裏面のバックリンスやエッジカットを行なう。すでに説明したように、No.1乃至2の処理液を用いてバックリンスを行なうことによって、ポリシラザンのゲル化が抑制される。しかも、乾燥時間が短くなり処理速度が短縮されるという効果も得られる。塗布後、ホットプレート上でベーキングを行なって、塗布膜中から溶剤を揮発除去する。こうして、図20に示すようにPSZ膜28が形成される。
【0102】
なるべく平坦性が得られるような塗布液を調製しておくと、平坦化プロセスCMPを省略することができる。次に、水蒸気を含む雰囲気中で酸化処理を施して、PSZ膜28を二酸化シリコン膜40に変化させる。酸化処理は、ゲート電極を酸化させない温度で行ない、600℃以下が望ましい。この後、さらに酸化を進めるために不活性ガス雰囲気下でアニールを行なってもよい。平坦化するために、二酸化シリコン膜40にCMPを施すこともできる。
【0103】
二酸化シリコン膜40上には、図21に示すようにSiN膜29を形成する。このSiN膜29は、エッチングストッパーとして作用し、例えばCVDにより200nm程度の膜厚で堆積することができる。
【0104】
続いて、常法によりリソグラフィーおよびRIEエッチングを行なって、図22に示すようにSiN膜29、二酸化シリコン膜40および層間絶縁膜27にコンタクトホール30を設ける。
【0105】
得られたコンタクトホール30内には、常法により導電材料を埋め込んで、図23に示すようにメタル配線31を形成する。さらに、全面に層間絶縁膜32を形成する。
【0106】
本実施形態においては、ポリシラザンを用いてPMDを形成するにあたって、絶縁膜原料に含有されるポリシラザンのゲル化が抑制されるので、安定したプロセス処理が可能となる。
【0107】
(実施形態6)
塗布液を半導体基板上に供給する前に、半導体基板に第一の配線を設ける工程、絶縁膜に貫通孔を設けて前記第一の配線を露出する工程、および貫通孔に導電材料を埋め込んで第二の配線を形成する工程をさらに設けて、IMD(Inter−Metal Dielectric)を形成することができる。
【0108】
図24乃至図26を参照して、こうした方法について説明する。
【0109】
メタル配線(例えばW)35が設けられたシリコン基板34上に、図24に示すようにSiN膜36およびPSZ膜37を順次形成する。PSZ膜37は、次のような手法により形成することができる。すなわち、前述の実施形態1と同様の塗布液を絶縁膜原料として用いて、スピンコーティング法により基板全面に塗布して塗布膜を形成する。この際、No.1乃至2の処理液を用いて、シリコン基板24の裏面のバックリンスやエッジカットを行なう。すでに説明したように、No.1乃至2の処理液と用いてバックリンスを行なうことによって、リシラザンのゲル化が抑制される。しかも、乾燥時間が短くなり処理速度が短縮されるという効果も得られる。
【0110】
塗布後、ホットプレート上でベーキングを行なって塗布膜中から溶剤を揮発除去する。次に、水蒸気を含む雰囲気中での酸化処理を施して、PSZ膜37を二酸化シリコン膜41に変化させる。この酸化処理は、配線に影響を及ぼさないよう低温で行なうことが望まれる。
【0111】
二酸化シリコン膜41には、常法によりリソグラフィーおよびRIEエッチングを行なって、図25に示すようにコンタクトホール38を形成する。さらに、下層のSiN膜36をエッチング除去して、メタル配線35を露出する。
【0112】
次に、常法によりコンタクトホール38内に金属(例えばAl)を埋め込んで、図26に示すように、メタル配線39が形成される。
【0113】
本実施形態においては、ポリシラザンを用いてIMDを形成するにあたって、絶縁膜原料に含有されるポリシラザンのゲル化が抑制されるので、安定したプロセス処理が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】本発明の一実施形態における半導体装置の製造方法を表わす工程断面図。
【図2】図1に続く工程を表わす断面図。
【図3】図2に続く工程を表わす断面図。
【図4】図3に続く工程を表わす断面図。
【図5】図4に続く工程を表わす断面図。
【図6】図5に続く工程を表わす断面図。
【図7】図6に続く工程を表わす断面図。
【図8】図7に続く工程を表わす断面図。
【図9】処理液の酸価とポリシラザンのゲル化開始日数との関係を表わすグラフ図。
【図10】本発明の一実施形態における半導体装置の製造方法を表わす工程断面図。
【図11】図10に続く工程を表わす断面図。
【図12】図11に続く工程を表わす断面図。
【図13】図12に続く工程を表わす断面図。
【図14】本発明の他の実施形態における半導体装置の製造方法を表わす工程断面図。
【図15】図14に続く工程を表わす断面図。
【図16】図15に続く工程を表わす断面図。
【図17】図16に続く工程を表わす断面図。
【図18】図17に続く工程を表わす断面図。
【図19】本発明の他の実施形態における半導体装置の製造方法を表わす工程断面図。
【図20】図19に続く工程を表わす断面図。
【図21】図20に続く工程を表わす断面図。
【図22】図21に続く工程を表わす断面図。
【図23】図22に続く工程を表わす断面図。
【図24】本発明の他の実施形態における半導体装置の製造方法を表わす工程断面図。
【図25】図24に続く工程を表わす断面図。
【図26】図25に続く工程を表わす断面図。
【符号の説明】
【0115】
1…コーターカップ; 2…スピンチャック; 3a…エッジカットノズル
3b…バックサイドリンスノズル; 4…ソルベントバス; 5…薬液ノズル
6…ダミーディスペンスポート; 7…半導体ウェハ; 8…塗布膜; 9…リンス液
S…塗布液; 10…シリコン基板; 11…SiO2
12…CMPストッパー膜; 13…STI溝
15…ペルヒドロポリシラザン(PHPS)膜; 16…SiO2
18…ゲート絶縁膜; 19…第1のゲート(浮遊ゲート)電極膜
20…電極間絶縁膜; 21…第2のゲート(制御ゲート)電極膜
24…シリコン基板; 25a,25b…不純物領域; 26…ゲート電極
27…層間絶縁膜; 28…ポリシラザン(PSZ)膜; 29…SiN膜
30…コンタクトホール; 31…配線; 32…層間絶縁膜; 34…シリコン基板
35…メタル配線; 36…SiN膜; 37…PSZ膜; 38…コンタクトホール
39…メタル配線; 40…SiO2膜; 41…SiO2膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部にテルペン類を含み、酸価が0.036mgKOH/g未満であることを特徴とするポリシラザン溶解用処理液。
【請求項2】
前記テルペン類は、α−ピネン、β−ピネンおよびd−リモネンからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載のポリシラザン溶解用処理液。
【請求項3】
半導体基板上に、ポリシラザンを溶剤に溶解してなる塗布液を供給し、前記ポリシラザンを含む塗布膜を形成する工程、
前記半導体基板の裏面にリンス液を供給してバックリンスを施し、裏面を洗浄する工程、
前記バックリンス後の前記半導体基板を乾燥して前記リンス液を除去する工程、および
前記半導体基板を熱処理して前記塗布膜から前記溶剤を除去し、シリコン酸化膜を含む絶縁膜を得る工程を具備し、
前記溶剤および前記リンス液は、その少なくとも一部が、請求項1または2に記載のポリシラザン溶解用処理液からなることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項4】
半導体基板上に、ポリシラザンを溶剤に溶解してなる塗布液を供給し、前記ポリシラザンを含む塗布膜を形成する工程、
前記半導体基板のエッジ部分にリンス液を供給して、エッジカットを施す工程、
前記エッジカット後の前記半導体基板を乾燥して前記リンス液を除去する工程、および
前記半導体基板を熱処理して前記塗布膜から前記溶剤を除去し、シリコン酸化膜を含む絶縁膜を得る工程を具備し、
前記溶剤および前記リンス液は、その少なくとも一部が、請求項1または2に記載のポリシラザン溶解用処理液であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記塗布液を前記半導体基板上に供給する前に、前記半導体基板に溝を設ける工程をさらに具備し、前記絶縁膜は、前記溝内に埋め込まれることを特徴とする請求項3または4に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2010−16046(P2010−16046A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−172427(P2008−172427)
【出願日】平成20年7月1日(2008.7.1)
【出願人】(000117319)ヤスハラケミカル株式会社 (85)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】