説明

マイクロセラミックスコイル及びその製造方法

【課題】新規なマイクロセラミックスコイル及びその簡易な製造方法を提供する。
【解決手段】マイクロサイズの主としてセラミックスからなるコイル。例えば、コイルの幅は0.1μm〜100μm、厚さは1nm〜10μmである。このコイルは、パターニングされたレジスト上に主としてセラミックスからなる薄膜を形成し、前記レジストを剥離液で溶解させて作製できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロセラミックスコイル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、カーボンナノチューブを導電性、熱伝導性、電磁波シールド性等の機能の付与要素として用い、例えばポリアミド、ポリエステル、ポリエーテル、ポリイミド等の有機ポリマー、あるいはガラス、セラミックス材料等の無機ポリマー等をマトリックスとして用い、それらを複合して、導電性、熱伝導性、電磁波シールド性等の機能を有する構造材料用複合材とすることが知られている。また、カーボンマイクロコイルが電磁波シールド材等に利用されることも知られている。カーボンナノチューブ又はカーボンマイクロコイルは、その特異な特性からして、機能性コーティング剤等の多くの分野で利用することが期待されている。特許文献1〜3には、具体的なカーボンナノチューブ又はカーボンマイクロコイル、又はそれを利用した機能性コーティング剤が開示されている。
【特許文献1】特開2006−321716号公報
【特許文献2】特開2000−026760号公報
【特許文献3】特開平11−043827号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、さらに容易に製造できるマイクロセラミックスコイルが求められていた。
本発明の目的は、新規なマイクロセラミックスコイル及びその簡易な製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によれば、以下のマイクロセラミックスコイル及びその製造方法が提供される。
1.マイクロサイズの主としてセラミックスからなるコイル。
2.コイルの幅が0.1μm〜100μm、厚さが1nm〜10μmの1記載のコイル。
3.セラミックスが金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物又は金属炭窒化物である1又は2記載のコイル。
4.パターニングされたレジスト上に主としてセラミックスからなる薄膜を形成し、前記レジストを剥離液で溶解させて作製するマイクロサイズの主としてセラミックスからなるコイルの製造方法。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、新規なマイクロセラミックスコイル及びその簡易な製造方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明のコイルは、マイクロサイズであり、主としてセラミックスからなる(本明細書では、本発明のコイルをマイクロセラミックスコイル又はセラミックスコイルともいう)。
マイクロサイズとは、概ねコイルの外径が1μm〜100μm、ピッチが50μm〜0μmのことである。
【0007】
セラミックスとして、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物又は金属炭窒化物を例示できる。
金属酸化物として、酸化インジウム、酸化インジウム・酸化亜鉛(IZO)、酸化インジウム・酸化スズ・酸化亜鉛(ITZO)、酸化亜鉛・酸化スズ(ZTO)、酸化インジウム・酸化亜鉛(IZO)、酸化インジウム・酸化スズ(ITO)、アモルファス酸化インジウム・酸化スズ(a−ITO)、酸化チタン・酸化ニオブ、酸化スズ・酸化亜鉛、酸化スズ・酸化アンチモン、フッ素ドープ酸化スズ、酸化ガリウム、酸化チタン、酸化二オブ及び、これらの組合せを例示できる。
【0008】
金属窒化物として、窒化チタン、窒化アルミ、窒化ホウ素、窒化クロム、窒化ガリウム、窒化マグネシウム、窒化モリブデン、窒化シリコン、窒化タンタル、窒化タングステン、窒化イットリウム、窒化ジルコニウム及び、これらの組合せを例示できる。
金属炭化物として、炭化ホウ素、炭化ハフニウム、炭化モリブデン、炭化二オブ、炭化シリコン、炭化タンタル、炭化チタン、炭化バナジウム、炭化タングステン、炭化ジルコニウム及び、これらの組合せを例示できる。
金属炭窒化物として、チタン炭窒化物、タングステン・チタン炭窒化物、タングステン・チタン・タンタル炭窒化物及び、これらの組合せを例示できる。
【0009】
本発明のコイルは、セラミックスが有する優れた導電性、半導体性、抵抗発熱性、静電気防止性、電磁波シールド性、電界シールド性等の諸機能を備える。
【0010】
本発明のコイルは、パターニングされたレジスト上に主としてセラミックスからなる薄膜を形成し、レジストを剥離液で溶解させて作製できる。
【0011】
図1は、本発明のセラミックスコイルの製造方法の一実施形態を示す。
基板1の上にレジストパターン3を形成する(図1(a))。その上にセラミックス薄膜5a,bを形成する(図1(b))。次いで、レジスト3を剥離液で溶解させる(図1(c))。レジスト3の上にあったセラミックス薄膜5aがマイクロコイルとなる。
【0012】
レジストは、公知の方法でパターニングできる。
薄膜も公知の方法で形成できる。例えば、セラミックスからなるターゲットを用いてスパッタリングにより形成する。また、セラミックスを樹脂に分散した分散液から形成する。例えば、ITO等の超微粒子を界面活性剤、水溶性樹脂に分散し、塗布・乾燥することにより、大部分がITOからなる薄膜が形成できる。このように、薄膜は、セラミックスだけから形成されてもよく、また、樹脂や添加剤を含んで形成されていてもよい。
【0013】
レジストは任意のレジストを用いることができる。
レジストのパターンと同じパターンにセラミックスの薄膜が形成されるが、パターンの幅がセラミックスコイルの幅となる。また、レジスト上のセラミックスの薄膜の厚さが、セラミックスコイルの厚さとなる。パターンの幅は、適宜設定できるが、通常0.1μm〜100μm程度である。レジスト上に形成されるセラミックスの薄膜の厚さも、適宜設定できるが、通常、1nm〜10μm程度である。
【0014】
精密にパターニングされたレジスト上に、セラミックス膜作製し、レジストを剥離すれば、均一な厚さと幅を持つマイクロセラミックスコイルを製造できる。レジストのパターンとセラミックス薄膜の厚さを適宜選択することにより、所望の幅と厚さを有するマイクロセラミックスコイルを容易に製造できる。
【0015】
剥離液は、レジストを溶解するが、セラミックスの薄膜は実質的に溶解しない。剥離液がレジストを溶解すると、セラミックスの薄膜は、コイル状となって、レジストから遊離する。セラミックスコイルが混入した剥離液からは、濾過、沈殿、デカンデーション等の適当な方法によりセラミックスコイルを取り出すことができる。
【0016】
剥離液は、レジストを溶解しセラミックスの薄膜を溶解しない任意の溶液を使用できる。
本発明に使用できるアルカリ液剥離用レジストを用いた場合の剥離液を以下に例示する。
【0017】
アミン系化合物及び非プロトン性極性化合物を含む剥離液を使用できる。
アミン系化合物の例としては、モノエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、メチルメタノールアミン、エチルエタノールアミン、ジメタノールアミン、アミノエトキシエタノールアミン、ジエタノールアミン等が挙げられる。
非プロトン性極性化合物の例としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルイミダゾール、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
配合量は、例えば、アミン系化合物を20〜80重量%、非プロトン性極性化合物を80〜20重量%、又はアミン系化合物を30〜70重量%、非プロトン性極性化合物を70〜30重量%とすることができる。
アミン系化合物、非プロトン性極性化合物及びカルボン系化合物を含む剥離液を使用できる。
【0018】
エチレンカーボネートを含む剥離液を使用できる。
【0019】
エチレンカーボネートとカルボン系化合物を含む剥離液を使用できる。
カルボン系化合物の例示は上記の通りである。
カルボン系化合物の配合量は、例えば、0.5〜5重量%、特2〜4重量%にとすることができる。
【0020】
下記式で表されるアルコキシアクリルアミド化合物を含む剥離液を使用できる。
−O−CHCH−CO−NR
(式中、R、R、Rは、それぞれ独立に、炭素数1から10のアルキル基である。)
アルコキシアクリルアミド化合物の例としては、N,N-ジメチル−n-ブトキシアクリルアミド、N,N-ジエチル−n-ブトキシアクリルアミド等が挙げられる。
アルコキシアクリルアミド化合物は水溶性であるので、この剥離液は、水を含んで水溶液とすることができる。この場合、通常、水の含有量は、約50重量%未満である。
本発明に使用できる酸剥離用レジストを用いた場合は、酸性水溶液等を用いればよい。
その場合、セラミックスコイルは、酸性水溶液に耐性のあるセラミックスを用いることができる。
【0021】
このようにして製造できるセラミックスコイルのサイズは、製造方法により変わり得るため限定されないが、通常、幅が0.1μm〜100μm、厚さが10nm〜10μmであり、特に幅が1μm〜50μm、厚さが50nm〜1μmである。幅を図2に示す。厚さはコイルを形成するセラミックス薄膜の厚さである。
【実施例】
【0022】
実施例1
ガラス基板として、約100mm×100mm×0.7mmの正方形状のガラス基板を用意し、純水シャワーにて洗浄した後、レジストをスピンコーターにて塗布形成した。レジストは日本ゼオン製ネガ型レジスト:ZTN2464−27を用いた。続いて、約80℃にて、約15分間オーブンで加熱した後、マスクを通して露光強度300mJ/cmにて露光した。マスクとして、約20μmのラインと約90μmのスペースを順に配設したストライプマスクを用いた。
次に、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドの約2.8重量%の水溶液にて、現像し、上記ライン・スペースのストライプパターンを得た。現像後、純水シャワー洗浄、エアーブローにより洗浄水を飛ばした後、約130℃にて、約15分オーブンにて加熱した。
【0023】
次に、上記ガラス基板上に、IZO(In:ZnO=約90:10重量%)のターゲットを用いて、厚さ約100nmの薄膜をスパッタ法にて成膜した。
剥離液I(モノエタノールアミン:ジメチルスルホキシド=30:70重量%)及び剥離液II(モノエタノールアミン:ジメチルスルホキシド=70:30重量%)を約35℃に加温した後に、上記で得られたガラス基板を、それぞれの剥離液中に2分間浸漬し、レジスト剥離を行った。
【0024】
溶解液を0.5ミクロンメッシュのフィルタを用いて濾過した。得られた粉体をアセトンで洗浄しレジスト材を完全に溶解し、乾燥機で60℃10時間乾燥した。得られたセラミックスコイルを図2及び図3に示す。光学顕微鏡で測定したところ、幅20μm、のコイルが得られていた。得られたコイルの厚みを走査型電子顕微鏡にて測定したところ、厚さ100nmの均一なセラミックスコイルが得られた(図2及び図3参照)。
コイルは極めて密に規則正しく巻いた中空状であり、コイルの外径は5μm、コイルピッチはゼロ、コイル長さは約10mmであり、繊維軸は空洞であった。
【0025】
実施例2
剥離液として、以下の剥離液を用いた他は実施例1と同様に実施したが、いずれの場合も同様のコイル状のIZO薄膜が得られた。
・n−ブトキシ−N,N−ジメチルアクリルアミド
・n−ブトキシ−N,N−ジメチルアクリルアミドと水(水が30重量%)
・エチレンカーボネート
【0026】
実施例3
セラミックス膜として、以下のセラミックス膜を用いた他は実施例1と同様に実施したが、いずれの場合も同様のコイル状のセラミックス薄膜が得られた。
・酸化インジウム・酸化スズ(酸化スズが5〜15重量%)
・アモルファス酸化インジウム・酸化スズ(酸化スズが5〜15重量%)
・酸化チタン・酸化ニオブ(酸化ニオブが0.1〜5重量%)
・酸化スズ・酸化亜鉛(酸化亜鉛が5〜40重量%)
・酸化スズ・酸化アンチモン(酸化アンチモンが0.5〜5重量%)
・フッ素ドープ酸化スズ(フッ素を0.01〜1重量%ドープ)
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明のマイクロセラミックスコイルは、抵抗発熱材、静電気防止材、電磁波シールド材、電界シールド材、導電材、半導体材等として種々の分野に好適に用いることができる。また、本発明のマイクロセラミックスコイルは、その形態からもたらされる特性を利用して、FRPやFRM等の三次元強化用繊維、電磁波吸収材、電極材料、マイクロメカニカル素子、マイクロスイッチング素子、マイクロセンサー、マイクロフィルター、高温耐蝕性パッキング、吸着剤、触媒材料、触媒担体等、種々の機能性材料として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明のマイクロセラミックスコイルの製造方法の一実施形態を示す。
【図2】実施例1で得られたマイクロセラミックスコイルの顕微鏡写真である。
【図3】実施例1で得られたマイクロセラミックスコイルの顕微鏡写真である。
【符号の説明】
【0029】
1 基板
3 レジスト
5a,b セラミックス薄膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロサイズの主としてセラミックスからなるコイル。
【請求項2】
コイルの幅が0.1μm〜100μm、厚さが1nm〜10μmの請求項1記載のコイル。
【請求項3】
セラミックスが金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物又は金属炭窒化物である請求項1又は2記載のコイル。
【請求項4】
パターニングされたレジスト上に主としてセラミックスからなる薄膜を形成し、前記レジストを剥離液で溶解させて作製するマイクロサイズの主としてセラミックスからなるコイルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−147133(P2009−147133A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−323283(P2007−323283)
【出願日】平成19年12月14日(2007.12.14)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】