説明

マスククリーニング装置

【課題】ドライ洗浄とウエット洗浄とを組み合わせてマスク部材をクリーニングする際に、その洗浄プロセスを円滑に運転させることができ、マスク部材を効率的にクリーニング処理を行えるようにする。
【解決手段】ロードステージ10と、レーザ光を用いたドライ洗浄ステージ11と、洗浄液にマスク部材4を浸漬させて行う第1のウエット洗浄ステージ12と、マスク部材4に対してシャワー洗浄を行う第2のウエット洗浄ステージ13と、マスク部材4に熱風を供給して行う乾燥ステージ14と、アンロードステージ15とから構成されるクリーニング装置において、ロードステージ10からドライ洗浄ステージ11にマスク部材4を搬送・移載する同期式マスク搬送手段20Cと、ステージ11〜15間にマスク部材4を搬送・移載する非同期式マスク搬送手段20Aとが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機ELディスプレイを製造する際に使用するマスク板をドライ洗浄とウエット洗浄との組み合わせによるクリーニングを行うためのマスククリーニング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機ELディスプレイは、液晶ディスプレイ等とは異なり、バックライトを必要としない等の利点がある。有機ELディスプレイを製造するに当っては、ガラス基板の表面にRGBの各色の電場発光素子の微小ドットパターンを形成するが、電場発光素子は有機材料からなるものであり、通常はガラス基板にこの有機材料のドットパターンの形成は真空蒸着により行われる。このために、マスク板が用いられるが、このマスク板は金属の薄板に所定のピッチ間隔をもって微小透孔を形成したマスクパターンを有するものから構成される。そして、マスク板は枠体に張力を持たせた状態にして固定されて、マスク部材を構成している。
【0003】
ガラス基板にマスク部材を装着し、真空チャンバ内の所定の位置に位置決めした状態で真空蒸着が行われるが、この真空蒸着を行う際には、当然、マスク部材にも有機材料が付着することになり、蒸着回数が多くなれば、有機材料のマスク部材への付着量が多くなり、マスクパターンに付着する有機材料によりマスクパターンに目詰まりが生じることから、所定回数蒸着を行う毎にマスク部材をクリーニングして、マスクパターンの精度を維持する必要がある。
【0004】
レーザ光を照射することによって、マスク部材に付着堆積している有機材料を除去することが、特許文献1に記載されている。この特許文献1によると、パルスレーザをマスク部材に照射して、このマスク部材に誘起された衝撃波により有機材料をマスク板から剥離される。これによって、有機材料が浮遊状態となるが、この浮遊物を集塵機に吸引させるように構成している。また、このレーザ光の照射によるドライ洗浄を行った後になおマスク部材に残留する有機材料を完全に除去するために、水やアルコール、若しくはHFE(ハイドロフルオロエーテル)等を用いてウエット洗浄を行い、最後に乾燥することも特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−117231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
レーザ光をマスク部材に照射してクリーニングするドライ洗浄を行うと、このマスククリーニングにより除去した有機材料を回収して、再使用することができる。電場発光素子を構成する有機材料は高価なものであることから、それを再使用することは、有機ELの製造装置のランニングコストを低減する上で望ましい。ドライ洗浄時には、レーザ光をマスク部材の全面にわたって走査させることから、有機ELディスプレイが大型になると、マスク部材も大型になるために、レーザ光の走査を行うのには長時間が必要となる。一方、マスク部材のウエット洗浄をディッピングを行うようにした場合には、マスク部材のサイズが洗浄時間を格別左右するものではない。また、シャワー洗浄や洗浄後の乾燥を行う際には、レーザ光の照射によるドライ洗浄ほどはマスク部材の寸法が処理時間に依存することはないものの、ディッピングによるウエット洗浄のように、殆どマスク部材のサイズの影響を受けないというわけでもない。
【0007】
以上のことから、マスク部材の洗浄プロセスとして、レーザ光の照射によるドライ洗浄を行い、次いでウエット洗浄し、最後にマスク部材の乾燥を行うように構成したときには、特にウエット洗浄をディッピングとシャワーというように、複数段で行うようにした場合には、各ステージを単純に並べただけでは、マスク部材の清浄化を迅速かつ効率的に行うことができないという問題点がある。
【0008】
本発明は以上の点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、ドライ洗浄とウエット洗浄とを組み合わせてマスク部材をクリーニングする際に、その洗浄プロセスを円滑に運転させることができ、マスク部材を効率的にクリーニングできるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するために、本発明は、有機ELのパターン形成のために用いたマスク部材のパターン形成時に付着した有機材料を除去する有機EL用マスク部材のクリーニングを行うマスククリーニング装置であって、洗浄すべきマスク部材のロードステージと、前記マスク部材に対してレーザ光を走査させることによって、このマスク部材に付着している有機材料を剥離させて回収するドライ洗浄ステージと、複数の洗浄ステージからなり、ドライ洗浄ステージで有機材料を除去したマスク部材を液に接触させることにより行われるウエット洗浄ステージと、前記ウエット洗浄ステージで洗浄されたマスク部材を乾燥させる乾燥ステージと、前記ロードステージから前記ドライ洗浄ステージに前記マスク部材を搬入するロード専用の同期式マスク搬送手段と、前記ドライ洗浄ステージから前記マスク部材を、前記ウエット洗浄ステージを構成する任意のウエット洗浄ステージに供給し、また任意のウエット洗浄ステージから任意のウエット洗浄ステージに供給し、さらに最終段のウエット洗浄ステージから前記乾燥ステージに移載する非同期式マスク搬送手段とから構成したことをその特徴とするものである。
【0010】
レーザ光を照射して行うドライ洗浄によって、マスク部材から大半の有機材料を除去することができる。具体的には、ドライ洗浄によって、マスク部材から有機材料を剥離させるようになし、このようにして剥離した有機材料を吸引することにより回収することができる。このようにして回収した有機材料は再精製して再使用することができる。マスク部材に付着している有機材料の回収効率を高くすることによって、有機材料の回収量が多くなり、しかも後続のウエット洗浄時における負荷も低減させることができる。ここで、ドライ洗浄の場合には、マスク部材のサイズと、レーザ光照射装置とによって洗浄時間は概略特定される。
【0011】
マスク板は金属製のものであり、一般的には熱膨張係数の小さいニッケル合金が用いられる。従って、ウエット洗浄を行うに当っては、このニッケル合金に対するダメージが最小限の洗浄用流体を用いる。また、異なる洗浄液を使用し、ディッピングをするか、シャワー洗浄とするか、超音波加振するか等によって、複合的な洗浄方式によりウエット洗浄が行われる。さらに、ウエット洗浄の後にはマスク部材を乾燥するが、この乾燥時にどの程度加熱するか等により1つのステージから他のステージへのマスク部材の移載タイミングは様々な要素により流動的なものとなる。そして、マスク部材のサイズが大きい場合には、レーザ光の照射によるドライ洗浄が最も長時間必要とし、ウエット洗浄及び乾燥はそれより短時間でプロセス処理を行うことができる。
【0012】
以上のことから、マスク部材の搬送手段を2種類設けている。一方の搬送手段は一定のタイミング毎にマスク部材を移載する同期式マスク搬送手段と、他方の搬送手段は任意のタイミングで作動する非同期式マスク搬送手段である。同期式マスク搬送手段は、ロードステージからドライ洗浄ステージにマスク部材を搬入するための専用のものとして用いられる。一方、非同期式マスク搬送手段は、任意のステージからマスク部材を取り出して、任意のステージに搬送するためのものである。
【0013】
ここで、ウエット洗浄は、ディッピングによる洗浄か、シャワー洗浄かが代表的なものであるが、これら以外のウエット洗浄であっても良い。洗浄液としては、純水やLC21等の洗浄液、IPA(イソプロピールアルコール)等のアルコール系洗浄液、HFE(ハイドロフルオロエーテル)等のフッ素系洗浄液を用いることができる。また、洗浄液を超音波加振することもできる。ディッピング洗浄やシャワー洗浄は1乃至複数段で行うこともできる。通常、シャワー洗浄は前段の洗浄液を洗い流すリンス工程とする。従って、洗浄液が異なる毎、洗浄方式が異なる毎に洗浄ステージを設け、非同期式マスク搬送手段によるマスク部材の搬送方向に向けて並べるようにする。そして、洗浄が終わった段階で、そのステージからマスク部材を取り出して、後続の洗浄ステージに、そして最終段の洗浄ステージから乾燥ステージに送り込まれることになる。マスク部材に洗浄液が長時間にわたって付着していたり、高熱が作用したりすると、マスク板にダメージを与えることになる。従って、マスク部材の各ステージでの処理が完了した後の取り出しタイミングの遅滞はできるだけ避けなければならない。非同期式マスク搬送手段を設けることによって、処理の終わったマスク部材は、円滑な動作で、迅速かつ確実に次の処理工程に移載することができる。
【発明の効果】
【0014】
マスク部材の洗浄プロセスを円滑に運転させることによって、マスク板のダメージを最小限に抑制して、マスク部材を迅速かつ効率的に清浄化できる等の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】マスク部材の正面図である。
【図2】マスク部材に対するドライ洗浄を行う機構の構成説明図である。
【図3】マスククリーニング装置の全体構成を示す構成説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。まず、図1にマスク部材を示す。図中において、1はマスク板であって、マスク板1は薄い金属板に多数の微小透孔2を穿設したものから構成されている。マスク板1は枠体3に所定の張力を持った状態にして取り付けられて、マスク部材4が構成される。有機ELディスプレイを製造するに当っては、それぞれ微小透孔2の位置をずらせた3枚のものから構成され、単一のガラス基板に順次マスク部材4を位置決めした状態で対面させて、真空蒸着が行われる。
【0017】
真空蒸着を繰り返すと、マスク部材4に蒸着を行った有機材料が付着することになる。有機材料の付着は主に蒸着源と対面する側に臨む面であることから、マスク部材4に堆積した有機材料を除去するマスククリーニングが行われる。ここで、裏面側にも有機材料が回り込むこともあるのでマスククリーニングは好ましくは両面に対して行われる。
【0018】
マスククリーニング方式として、本発明では、図2に示すように、レーザ光を照射して行うレーザドライ洗浄が行われる。この方式は、有機材料が付着したマスク部材4を鉛直状態に保持して、レーザ発振器5からパルスレーザを照射し、このパルスレーザを対物レンズ6及びガルバノミラー7を順次介してマスク部材4に当てるようになし、このレーザ光を対物レンズ6によりマスク部材4におけるマスク板1の表面に照射することによって、マスク板1から有機材料を剥離する。そして、ガルバノミラー7によりレーザスポットを走査させることによって、マスク板1の全面にわたって有機材料を剥離する。
【0019】
マスク部材4の上部位置には送風部8が設けられており、またマスク部材4の下方位置に吸引部9が設けられている。レーザ光の照射によりマスク板1から剥離された有機材料は、送風部8及び吸引部9からなるダウンフロー空気流に搬送されて、吸引部9で回収される。これによって、剥離した有機材料がマスク板1に再付着するのを防止すると共に、回収した有機材料を再使用できるようにする。
【0020】
レーザ光を用いたマスククリーニングは以上のようにして行われるが、これだけではマスク部材4の全体が清浄化されるわけではない。そこで、レーザ光によるドライ洗浄の後に洗浄液を使用したウエット洗浄を行い、次いで乾燥することによって、マスク部材4の全体を清浄化する。このためのマスククリーニング装置は、図3に示した構成とする。
【0021】
図中において、10はロードステージ、11はレーザ光を用いたドライ洗浄ステージ、12は洗浄液にマスク部材4を浸漬させて行う第1のウエット洗浄ステージ、13はマスク部材4に対してシャワー洗浄を行う第2のウエット洗浄ステージ、14はマスク部材4に熱風を供給して行う乾燥ステージ、15はアンロードステージである。
【0022】
ロードステージ10には、洗浄すべきマスク部材4が所定の枚数だけストックされており、このロードステージ10からマスク部材4が1枚ずつ取り出されて、ドライ洗浄ステージ11に搬入されることになる。ドライ洗浄ステージ11では、図2に示したレーザ光の照射手段が設けられている。
【0023】
第1のウエット洗浄ステージ12では、ドライ洗浄されて、殆ど有機材料が除去されたマスク部材4が洗浄液に浸漬されて、ディッピングによる洗浄によって、枠体3及びマスク板1と枠体3との間の有機材料を溶出させる。この第1のウエット洗浄ステージ12で使用される洗浄液は、純水やLC21等の洗浄液、IPA等のアルコール系洗浄液、HFE等のフッ素系洗浄液等が用いられる。従って、複数の洗浄液を組み合わせて使用する場合には、この第1のウエット洗浄ステージ12による洗浄は2段乃至それ以上の段階を経て行うようにすることもできる。この場合には、それぞれ異なる洗浄液を充填した複数のディッピング槽で構成したサブステージを設けることになる。
【0024】
また、第2のウエット洗浄ステージ13はシャワー洗浄を行うものであり、このシャワー洗浄は純水を使用し、必要に応じて純水を超音波加振した状態で、マスク部材4に向けて噴射するように構成する。ここで、第2のウエット洗浄ステージ13は洗浄液を使用して行われた第1のウエット洗浄ステージ12での洗浄後の洗浄液を洗い流すリンス工程として機能する。
【0025】
さらに、前述のようにしてウエット洗浄されたマスク部材4は、乾燥ステージ14に搬入されて、熱風を吹き付けることによって、マスク部材4に付着している液滴を除去する。そして、このようにして乾燥させたマスク部材4は、アンロードステージ15に送り込まれて、このアンロードステージ15で所定数のマスク部材4がストックされると、系外に搬送される。
【0026】
ここで、ドライ洗浄ステージ11,第1のウエット洗浄ステージ12,第2のウエット洗浄ステージ13及び乾燥ステージ14はマスク部材4を処理する処理ステージである。マスク部材4を出し入れするための搬入・搬出口11a〜14aを上部位置に設けたチャンバ11C〜14Cを有するものであって、各チャンバ11C〜14Cはそれぞれ各ステージに固定的に保持されている。これに対して、ロードステージ10及びアンロードステージ15については、上部に搬入・搬出口10a,15aを設けた収納ボックス10B,15Bを台車10T,15Tから構成されて、台車10T,15Tは自走または手動操作により搬送されて、収納ボックス10B,15Bがこれらロードステージ10,15に導入・排出される。
【0027】
そして、ロードステージ10からは、マスク部材4が1枚ずつ取り出されて、ドライ洗浄ステージ11,第1のウエット洗浄ステージ12,第2のウエット洗浄ステージ13及び乾燥ステージ14に順次供給されて、それぞれの処理ステージで所定の処理が行われるものであり、このマスク部材4の各ステージ10〜15間に搬送・移載するために、マスク搬送手段20C,20Aが設けられている。マスク搬送手段20Cは、ロードステージ10からドライ洗浄ステージ11にマスク部材4を搬送・移載するためのものであり、またマスク搬送手段20Aは、ドライ洗浄ステージ11からアンロードステージ15までの各ステージ間にマスク部材4を搬送するものである。
【0028】
マスク搬送手段20Cも、またマスク搬送手段20Aも同一の構成となっている。即ち、図3から明らかなように、21は水平ガイド部材であって、この水平ガイド部材21にはX軸ガイド21Xを備えており、このX軸ガイド21XにはX軸移動体22が係合しており、これによってX軸移動体22は図示しない駆動手段によってX軸方向、つまりステージ10〜15の並び方向に移動可能となっている。X軸移動体22は上下方向に長手となり、この上下方向へのZ軸ガイド22Zが形成されている。そして、このZ軸ガイド22ZにはZ軸移動体23が装着されており、このZ軸移動体23は図示しない駆動手段によりZ軸方向、つまり上下方向に移動可能となっている。さらに、Z軸移動体23にはアーム24が取り付けられており、このアーム24は各ステージ10〜15側に向けて突出している。さらに、アーム24には、2本のハンド25,25が設けられており、これらのハンド25は所定の長さを有するものであって、それらの下端部にマスク部材4の枠体3をクランプするクランプ部材が設けられている。
【0029】
マスク搬送手段20Cは、ドライ洗浄ステージ11での洗浄処理が終了する毎に、新たに洗浄すべきマスク部材4をロードステージ10から取り出して、ドライ洗浄ステージ11の搬入・搬出口11aからチャンバ11Cに搬入するためのものであり、同期式マスク搬送手段である。
【0030】
一方、マスク搬送手段20Aは、処理ステージであるドライ洗浄ステージ11,第1のウエット洗浄ステージ12,第2のウエット洗浄ステージ13及び乾燥ステージ14と、アンロードステージ15との間でマスク部材4を受け渡しするためのものであり、任意のステージ間でマスク部材4の搬送・移載が行われるものであって、非同期式マスク搬送手段である。
【0031】
本発明のマスククリーニング装置は以上のように構成されるものである。まず、ロードステージ10には、所定枚数のマスク部材4がストックされており、このようにしてストックしたマスク部材4をマスク搬送手段20Cにより1枚取り出して、ドライ洗浄ステージ11に搬入する。即ち、マスク搬送手段20Cの水平ガイド部材21のX軸ガイド21Xに沿ってX軸移動体22をロードステージ10の収納ボックス10Bに形成した搬入・搬出口10aに対面する位置まで移動させて、X軸移動体22に設けたZ軸ガイド22Zに沿ってZ軸移動体23を下降させる。その結果、アーム24に設けたハンド25が下降して、収納ボックス10B内に挿入される。そこで、ハンド25に設けたクランプ部材により1枚のマスク部材4を取り出すようにする。
【0032】
その後に、Z軸移動体23を上昇させて、X軸移動体22をドライ洗浄ステージ11の上部位置に移動させ、その後に再びZ軸移動体23を下降させることによって、搬入・搬出口11aからチャンバ11Cに供給して、チャンバ11C内にマスク部材4を保持させるようにして、Z軸移動体23を上昇させる。これによって、マスク部材4におけるマスク板1に向けてレーザ発振器5からレーザ光を照射するようになし、ガルバノミラー7によりマスク板1に沿ってレーザ光を走査させることによって、マスク板1から有機材料を剥離させ、送風部8から吸引部9に向けてのダウンフロー空気流により剥離した有機材料を吸引部9に回収する。
【0033】
ドライ洗浄ステージ11での洗浄が終了すると、マスク搬送手段20Cではなく、マスク搬送手段20Aを駆動して、ドライ洗浄が終了したマスク部材4を取り出して、第1のウエット洗浄ステージ12に送り込む。そして、マスク部材4がドライ洗浄ステージ11から取り出されると、マスク搬送手段20Cにより新たなマスク部材4がロードステージ10からドライ洗浄ステージ11に供給される。この第1のウエット洗浄ステージ12に移行したマスク部材4は、第1のウエット洗浄ステージ12において、チャンバ12Cを構成するディッピング槽で洗浄液により洗浄が行われる。その結果、マスク板1のドライ洗浄後に僅かに残存する有機材料と、枠体3及びマスク板1と枠体3との境界部の有機材料が除去される。
【0034】
次いで、マスク部材4は、第1のウエット洗浄ステージ12から第2のウエット洗浄ステージ13に搬送・移載されて、この第2のウエット洗浄ステージ13で、シャワー洗浄及びリンスが行われる。このときのマスク部材4の搬送も、マスク搬送手段20Aにより行われる。さらに、第2のウエット洗浄ステージ13での処理が終了すると、マスク部材4は乾燥ステージ14に供給されて、この乾燥ステージ14で熱風乾燥される。そして、乾燥処理が行われたマスク部材4はアンロードステージ15に移載される。これら第2のウエット洗浄ステージ13から乾燥ステージ14へのマスク部材4の移載も、乾燥ステージ14からアンロードステージ15へのマスク部材4の移載も、同様に、マスク搬送手段20Aにより行われる。
【0035】
ここで、マスク部材4に付着している有機材料は、その大半がドライ洗浄ステージ11において除去されているので、第1のウエット洗浄ステージ12における洗浄時の負荷が軽減されて、チャンバ12C内の洗浄液の汚損が抑制される。従って、この第1のウエット洗浄ステージ12における処理時間が、また後続の第2のウエット洗浄ステージ13における処理時間も短縮することができ、マスク部材4に対するダメージは最小限に抑制できる。しかも、ステージ11〜15間で自在に移動できるマスク搬送手段20Aにより、ロードステージ10からドライ洗浄ステージ11にマスク部材4を移載するマスク搬送手段20Cとは独立に駆動されるので、的確なタイミングでマスク搬送手段20Aを駆動することができる。
【0036】
ところで、ドライ洗浄ステージ11,第1のウエット洗浄ステージ12,第2のウエット洗浄ステージ13及び乾燥ステージ14からなる処理ステージにおいて、ドライ洗浄ステージ11はマスク板1の全面にわたってレーザ光の照射走査を行わなければならないことから、長い時間を必要とする。特に、大型のマスク板1の場合には、それだけレーザ光の照射走査の面積が広くなるので、より長い時間が必要となる。これに対して、ドライ洗浄ステージ11で大半の有機材料がマスク部材4から除去されているので、第1のウエット洗浄ステージ12以後の処理はドライ洗浄ステージ11のように長い処理時間を必要としない。特に、マスク板1のサイズが大きい場合であっても、小型のマスク板と処理時間が大きくは変わらない。
【0037】
ロードステージ10からドライ洗浄ステージ11へのマスク部材4の移載は一定時間毎に行われる。この移載は同期式のマスク搬送手段20Cで行うものであり、マスク搬送手段20Cは所定時間毎に定期的にマスク部材4を移載するものである。そして、マスク搬送手段20Aは、マスク部材4をドライ洗浄ステージ11,第1のウエット洗浄ステージ12,第2のウエット洗浄ステージ13,乾燥ステージ14,アンロードステージ15の順に移行させるためのものであって、それぞれ移載のタイミングが異なっている。これら5つのステージ11〜15間でのマスク部材4の搬送・移載はマスク搬送手段20Aにより行う。従って、マスク搬送手段20Aは非同期式搬送手段となる。
【0038】
ここで、第1のウエット洗浄ステージ12では、洗浄液の濃度や温度等により処理時間が変化する。また、第2のウエット洗浄ステージ12では、シャワー洗浄の供給量及び供給圧、さらに温度等により処理時間が変化する。さらに、乾燥ステージ14では、温度や風量により処理時間が変化する。そこで、これらのプロセス要素を適宜設定することによって、マスク部材4に与えるダメージを最小のものとなし、しかもできるだけ処理時間を短くなるように設定するのが望ましい。
【0039】
いずれにしろ、これらの処理ステージでは、それぞれ異なる処理時間を必要とするものであり、これらの処理ステージではマスク搬送手段20Aにより搬送・移載されるようになっている。このように2個のマスク搬送手段20C,20Aを設けることによって、マスク部材4の各ステージ10〜15への搬送・移載が迅速かつ容易に行うことができる。即ち、マスク部材4を最初に搬送・移載するものであり、しかも一定のタイミングでマスク部材4を搬送・移載するものについては、マスク搬送手段20Cで行うようになし、また2番目以後の移載であって、しかも移載のタイミングが異なるステージ間では、もうひとつのマスク搬送手段20Aを用いて搬送・移載することによって、マスク部材4を円滑に移載できるようになる。
【0040】
以上によって、ドライ洗浄とウエット洗浄という異なる洗浄方式を組み合わせて行うマスククリーニングと、しかもウエット洗浄後のマスク部材4の乾燥とを迅速かつ効率的に行うことができ、マスク部材4を遅滞なく、円滑に各ステージに搬送することができるようになる。
【符号の説明】
【0041】
1 マスク板 2 微小透孔
3 枠体 4 マスク部材
10 ロードステージ 11 ドライ洗浄ステージ
12 第1のウエット洗浄ステージ 13 第2のウエット洗浄ステージ
14 乾燥ステージ 15 アンロードステージ
20C 同期式マスク搬送手段 20A 非同期式マスク搬送手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機ELのパターン形成のために用いたマスク部材に、パターン形成時に付着した有機材料を除去する有機EL用マスク部材のクリーニングを行うマスククリーニング装置であって、
洗浄すべきマスク部材のロードステージと、
前記マスク部材に対してレーザ光を走査させることによって、このマスク部材に付着している有機材料を剥離させて回収するドライ洗浄ステージと、
複数の洗浄ステージからなり、ドライ洗浄ステージで有機材料を除去したマスク部材を液に接触させることにより行われるウエット洗浄ステージと、
前記ウエット洗浄ステージで洗浄されたマスク部材を乾燥させる乾燥ステージと、
前記ロードステージから前記ドライ洗浄ステージに前記マスク部材を搬入するロード専用の同期式マスク搬送手段と、
前記ドライ洗浄ステージから前記マスク部材を、前記ウエット洗浄ステージを構成する任意のウエット洗浄ステージに供給し、また任意のウエット洗浄ステージから任意のウエット洗浄ステージに供給し、さらに最終段のウエット洗浄ステージから前記乾燥ステージに移載する非同期式マスク搬送手段と
から構成したことを特徴とするマスククリーニング装置。
【請求項2】
前記ウエット洗浄ステージは、ディッピングによる洗浄を行う1または複数の第1のウエット洗浄ステージと、シャワー洗浄を行う1または複数の第2のウエット洗浄ステージとを含むものであることを特徴とする請求項1記載のマスククリーニング装置。
【請求項3】
前記乾燥ステージの後段には、所定枚数の清浄化されたマスク部材を収納するアンロードステージを設ける構成としたことを特徴とする請求項1または請求項2記載のマスククリーニング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−72921(P2011−72921A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−227150(P2009−227150)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】