説明

モータおよび回転駆動装置

【課題】ロータ側のマグネットとステータコイルを備えたステータ基板とがモータ軸線方向で対向する構造において、ステータ基板に対してマグネットが位置する側とは反対側で対向する補助ヨークをロータ側に設けた場合でも、ステータ基板が補助ヨークと接触することのないモータ、および該モータを備えた回転駆動装置を提供すること。
【解決手段】モータ1において、ロータ4側には補助ヨーク11aが取り付けられており、補助ヨーク11aはロータ4と一体に回転する。補助ヨーク11aは、磁性部材からなる補助ヨーク取り付け部材7において、回転軸5が嵌る筒部7aの出力側Laの端部で拡径する円環状の大径部7cからなる。ステータ基板3の外周側端部3eは、第1ハウジング部材21と第2ハウジング部材22とに挟持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータマグネットとステータコイルがモータ軸線方向で対向するタイプのモータ、および該モータを備えた回転駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ロータのマグネットとステータコイルがモータ軸線方向で対向する面対向タイプのモータは、図7(a)に示すように、モータハウジング2に回転可能に保持された回転軸5を備えたロータ4と、ロータ4のマグネット8に対してモータ軸線Lm方向で対向するステータコイル3aを備えたステータ基板3とを有している。ロータ4には、マグネット8の背面側にバックヨーク6が設けられ、ステータ基板3に対してマグネット8が位置する側とは反対側では、モータハウジング2等に固定された補助ヨーク7sが対向している。また、補助ヨーク7sは、ステータ基板3と重なってステータ基板3を支持している。
【0003】
しかしながら、図7(a)に示すモータでは、マグネット8が補助ヨーク7sに吸引されることに起因する大きなスラスト力がスラスト軸受5cに加わる。このため、スラスト軸受5cと回転軸5との摩擦力が大きく、かかる摩擦力に起因する大きなトルクロスが発生するという問題点がある。また、ロータ4が回転した際、補助ヨーク7sに渦電流が発生し、かかる渦電流は、ロータ4に対するブレーキとして作用するため、トルクロスが発生する原因となる。
【0004】
一方、図7(b)に示すように、ロータ4の一部で補助ヨーク19sを構成し、補助ヨーク19sがロータ4と一体に回転する構成のモータが提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
かかる特許文献1では、ロータフレーム19に、回転軸5が圧入された穴を備えた板状の円盤部19aと、円盤部19aの外周縁から回転軸5の周りを囲むようにモータ軸線Lm方向に向けて延在する肉薄の筒部19bと、筒部19bの端部から拡径する円板状の大径部19cとを設け、かかる大径部19cを補助ヨーク7sとして利用することが提案されている。なお、補助ヨーク7sがロータ4と一体回転する構造を採用した場合、ステータコイル3aを補助ヨーク7sで支持することができないため、特許文献1に記載のモータでは、ステータコイル3aの外周側端部をブラケット2sの端部2tに固着している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−205762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の構成のように、補助ヨーク19sがロータ4と一体に回転する構成の場合、補助ヨーク19sはステータコイル3aの近傍で回転することになるが、板状の円盤部19a、肉薄の筒部19bおよび板状の大径部19c(補助ヨーク19s)を備えたロータフレーム19では、各部分の寸法誤差等が補助ヨーク19sに累積される結果、補助ヨーク19sとステータコイル3aとの隙間寸法の精度が低い。このため、マグネット8と補助ヨーク19sとの間に磁気吸引力が作用した状態で、ロータ4が高速回転した際、ロータフレーム19がわずかでも変形すると、大径部19c(補助ヨーク19s)とステータコイル3aとが接触するおそれがある。
【0008】
次に、特許文献1に記載の構成のように、ステータコイル3aを補助ヨーク19sで支持することができないにもかかわらず、ステータコイル3aの外周側端部をブラケット2sの端部2tに重ねて固着しただけの構造では、ステータコイル3aのモータ軸線Lm方向における位置精度が低いため、ステータコイル3aが補助ヨーク19sと接触するおそれがある。
【0009】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、ロータ側のマグネットと、ステータコイルを備えたステータ基板とがモータ軸線方向で対向する構造において、ステータ基板に対してマグネットが位置する側とは反対側で対向する補助ヨークをロータ側に設けた場合でも、ステータ基板が補助ヨークと接触することのないモータ、および該モータを備えた回転駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明では、モータハウジングと、該モータハウジングに対して回転可能に保持された回転軸、および該回転軸に保持されたマグネット、および該マグネットに対してモータ軸線方向の一方側で対向するバックヨークを備えたロータと、前記マグネットに対して前記モータ軸線方向の他方側で対向するステータコイルを備えたステータ基板と、前記回転軸が嵌る筒部を備えた補助ヨーク取り付け部材と、該補助ヨーク取り付け部材において前記筒部から拡径して前記ステータ基板に前記モータ軸線方向の他方側で対向する部分に設けられた補助ヨークと、を有していることを特徴とする。
【0011】
本発明において、ロータ側には補助ヨークが取り付けられており、補助ヨークはロータと一体に回転する。このため、マグネットと補助ヨークとの間に作用する磁気吸引力が回転軸にスラスト力として作用しない。また、マグネットと補助ヨークとが一体に回転するため、補助ヨークに渦電流が発生しないので、渦電流に起因するブレーキがロータに加わることもない。このため、スラスト軸受と回転軸との間での摩擦や、渦電流に起因するトルクロスの発生を回避することができる。また、スラスト軸受を省略した構造を採用することもできる。また、補助ヨークは、補助ヨーク取り付け部材において筒部から拡径してステータ基板にモータ軸線方向の他方側で対向する部分に設けられたという簡素な構成であるため、補助ヨークの位置精度が高い。このため、マグネットと補助ヨークとの間に磁気吸引力が作用した状態でロータが高速回転した際、補助ヨークが多少変形してもステータ基板に接触するという事態を回避することができる。
【0012】
本発明において、前記補助ヨーク取り付け部材は、前記筒部から拡径して前記ステータ基板に前記モータ軸線方向の他方側で対向する大径部分を備えた磁性部材であって、前記大径部分によって前記補助ヨークが構成されていることが好ましい。かかる構成によれば、補助ヨーク取り付け部材の一部によって補助ヨークを構成することができるので、部品点数を削減することができる。
【0013】
本発明において、前記補助ヨーク取り付け部材は、前記筒部から拡径して前記ステータ基板に前記モータ軸線方向の他方側で対向する大径部分を備え、前記大径部分に前記補助ヨークが固定されている構成を採用してもよい。
【0014】
本発明において、前記モータハウジングは、複数のハウジング部材からなり、前記ステータ基板の外周側端部は、前記複数のハウジング部材のうち、前記モータ軸線方向で隣り合うハウジング部材の間に挟持されていることが好ましい。かかる構成によれば、ステータ基板については、モータ軸線方向における位置精度が高いので、ステータ基板と補助ヨークとが接触するという事態を回避することができる。
【0015】
本発明において、前記ステータ基板は、シート状あるいは薄板状の基材に積層された銅箔パターンによって前記ステータコイルが形成されてなる構成を採用することができる。かかる構成の場合、ステータ基板が薄いので、補助ヨークとモータ軸線方向で対向する部分の位置精度が低くなりやすいが、本発明では、補助ヨークの位置精度が高いため、ステータ基板と補助ヨークに接触するという事態が発生しない。
【0016】
本発明において、前記モータハウジングは、前記ロータの周りを周方向の全体あるいは略全体にわたって覆っていることが好ましい。かかる構成によれば、周方向の広い範囲にわたってステータ基板の外周側端部をハウジング部材で挟持した構造を採用することができるので、ステータ基板を確実に保持することができる。また、モータハウジングがロータの周りを周方向の全体あるいは略全体にわたって覆っている構造であれば、埃等の異物が内部に侵入することを防止することができる。
【0017】
本発明に係るモータを、第1被駆動部材と、第2被駆動部材と、前記第1被駆動部材および前記第2被駆動部材に対する回転駆動源としての第1アクチュエータおよび第2アクチュエータと、を有する回転駆動装置に適用する場合、前記第1アクチュエータおよび前記第2アクチュエータのうちの少なくとも一方が、本発明に係るモータからなることが好ましい。
【0018】
本発明において、前記第1被駆動部材は、周方向に第1透光部と第1遮光部とを備える第1シャッタ板であり、前記第2被駆動部材は、周方向に第2透光部と第2遮光部とを備える第2シャッタ板であり、前記第1透光部と前記第2透光部とは、回転中心軸線方向で重なることが可能な位置に形成されている構成を採用すれば、2つのシャッタ板を備えたロータリシャッタ装置を構成することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明において、ロータ側には、補助ヨークを備えた磁性部材が設けられており、補助ヨークはロータと一体に回転する。このため、マグネットと補助ヨークとの間に作用する磁気吸引力が回転軸にスラスト力として作用しない。このため、スラスト軸受と回転軸との間での摩擦に起因する大きなトルクロスが発生するという問題を回避できるとともに、スラスト軸受を省略した構造を採用することもできる。また、マグネットと補助ヨークとが一体に回転するため、補助ヨークに渦電流が発生しないので、渦電流に起因するブレーキがロータに加わることもない。また、補助ヨークは、ロータに取り付けた磁性部材において、回転軸が嵌る筒部拡径した部分であるため、マグネットと補助ヨークとの間に磁気吸引力が作用した状態でロータが回転しても補助ヨークが変形してステータコイルに接触するという事態を回避することができる。また、ステータ基板については、ハウジング部材で確実に挟持されているため、ロータが回転した際の振動等が加わっても、ステータ基板が変位して補助ヨークに接触するという事態も回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態1に係るモータの説明図である。
【図2】本発明の実施の形態2に係るモータの断面構造を模式的に示す説明図である。
【図3】本発明を適用したロータリシャッタ装置の外観等を示す説明図である。
【図4】図3に示すロータリシャッタ装置の縦断面図である。
【図5】図3に示すロータリシャッタ装置の動作を示す説明図である。
【図6】本発明を適用した別のロータリシャッタ装置の縦断面図である。
【図7】従来のモータの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の説明では、モータ軸線Lm方向のうち、回転軸が突出している側を出力側Laとし、回転軸が突出している側とは反対側を反出力側Lbとして説明する。従って、モータ軸線Lm方向の一方側を出力側Laとした場合、他方側は反出力側Lbであり、モータ軸線Lm方向の一方側を反出力側Lbとした場合、他方側は出力側Laである。また、以下の説明では、図7を参照して説明した構成との対応が分かりやすいように、対応する箇所には同一の符号を付して説明する。
【0022】
[実施の形態1]
(モータの構成)
図1は、本発明の実施の形態1に係るモータの説明図であり、図1(a)、(b)は、モータの断面構造を模式的に示す説明図、およびハウジング部材によってステータ基板の外周側端部を挟持する構造の一例を示す説明図である。
【0023】
図1(a)に示すモータ1は、ロータ4のマグネット8とステータコイル3aとがモータ軸線方向で対向する面対向タイプであり、モータハウジング2と、モータハウジング2に対してラジアル軸受5a、5bおよびスラスト軸受5cによって回転可能に保持された回転軸5を備えたロータ4と、ロータ4のマグネット8に対してモータ軸線Lm方向の反出力側Lbで対向するステータコイル3aを備えたステータ基板3とを有している。ロータ4には、マグネット8に対してモータ軸線Lm方向の出力側Laにバックヨーク6が設けられている。かかるバックヨーク6は、回転軸5が嵌る円筒部6aと、円筒部6aの反出力側Lbの端部で拡径する円板部6bと、円板部6bの外周側端部から反出力側Lbに向けて屈曲した円筒状の胴部6cとを備えており、胴部6cの内側に円環状のマグネット8が接着剤等により固定されている。
【0024】
(補助ヨークの構成)
また、モータ1には、ステータコイル3aに鎖交する磁界を効率よく形成することを目的に、マグネット8の背後にバックヨーク6が設けられている一方、ステータコイル3aに対してマグネット8が位置する側とは反対側(反出力側Lb)に円環状の補助ヨーク11aが設けられており、本形態において、補助ヨーク11aは、ロータ4に取り付けられている。かかる構成を実現するにあたって、補助ヨーク11aは、回転軸5が嵌る筒部7aを備えた補助ヨーク取り付け部材7において筒部7aから拡径してステータ基板3に反出力側Lbで対向する部分に設けられている。
【0025】
より具体的には、補助ヨーク取り付け部材7は、回転軸5が嵌る筒部7aと、筒部7aの出力側Laの端部で拡径する円環状の大径部7cとを備えた磁性部材であり、かかる補助ヨーク取り付け部材7において、大径部7cは、ステータコイル3aに対してマグネット8が位置する側とは反対側(反出力側Lb)に位置する補助ヨーク11aとして機能する。
【0026】
(モータハウジングおよびステータ基板の構成)
モータハウジング2は、複数のハウジング部材から構成されており、本形態において、モータハウジング2は、反出力側Lbでラジアル軸受5aおよびスラスト軸受5cを保持するカップ状の第1ハウジング部材21と、出力側Laでラジアル軸受5bを保持するカップ状の第2ハウジング部材22とから構成されている。
【0027】
ステータ基板3は、シート状あるいは薄板状の基材3bに積層された銅箔パターンによってステータコイル3aが形成されてなるシート状部材であり、銅箔パターンの表面には絶縁層が形成されている。かかるシート状のステータ基板3としては、FPコイル(ファインパターンコイル/旭化成エレクトロニクス株式会社の登録商標)を例示することができる。
【0028】
ステータ基板3は、モータハウジング2に用いた複数のハウジング部材のうち、モータ軸線方向で隣接するハウジング部材に挟持されている。より具体的には、まず、モータハウジング2において、第1ハウジング部材21は、出力側Laに向けて突出した円筒状の胴部21eを備えており、かかる胴部21eは、全周にわたって連続して形成されている。また、第2ハウジング部材22は、反出力側Lbに向けて突出した円筒状の胴部22eを備えており、かかる胴部22eは、全周にわたって連続して形成されている。従って、モータハウジング2は、ロータ4等が配置されている空間を全周にわたって覆っている。また、第1ハウジング部材21および第2ハウジング部材22において、胴部21e、22eの端部21a、22a同士はモータ軸線方向で近接している。また、ステータ基板3の外周側端部3eは、略全周にわたって胴部21e、22eの端部21a、22aの間に位置し、略全周にわたって胴部21e、22eの端部21a、22aによって挟持されている。かかる構成の場合、ステータ基板3のうち、外部に引き出す個所も胴部21e、22eの端部21a、22aによって挟持された構造となる。
【0029】
ここで、ステータ基板3の外周側端部3eについては、第1ハウジング部材21と第2ハウジング部材22とを結合した際に挟持されたままの状態であってもよいし、第1ハウジング部材21および第2ハウジング部材22に対して接着されている構成であってもよい。
【0030】
また、図1(b)に示すように、胴部21e、22eの端部21a、22aに対しては、ステータ基板3を外部に引き出す個所を除いて、互いに逆向きの段部21f、22fを形成しておき、かかる段部21f、22fによって、ステータ基板3の外周側端部3eが挟持されている構造であってもよい。
【0031】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態のモータ1において、ロータ4側には補助ヨーク11aが取り付けられており、補助ヨーク11aはロータ4と一体に回転する。このため、マグネット8と補助ヨーク11aとの間に作用する磁気吸引力が回転軸5にスラスト力として作用しない。また、マグネット8と補助ヨーク11aとが一体に回転するため、補助ヨーク11aに渦電流が発生しないので、渦電流に起因するブレーキがロータ4に加わることもない。このため、スラスト軸受5cと回転軸5との間での摩擦や、渦電流に起因するトルクロスの発生を回避することができる。また、スラスト軸受5cを省略した構造を採用することもできる。
【0032】
また、補助ヨーク11aは、回転軸5が嵌る筒部7aを備えた補助ヨーク取り付け部材7において筒部7aの端部から拡径してステータ基板3に反出力側Lbで対向する部分に設けられたという簡素な構成であるため、補助ヨーク11aの位置精度が高い。すなわち、補助ヨーク11aは、磁性部材からなる補助ヨーク取り付け部材7において、回転軸5が嵌る筒部7aの出力側Laの端部で拡径する円環状の大径部7cからなるという簡素な構成であるため、各部分での寸法誤差が補助ヨーク11aの位置精度に累積されるということがない。従って、補助ヨーク11aの位置精度が高いので、マグネット8と補助ヨーク11aとの間に磁気吸引力が作用した状態でロータ4が高速回転した際、補助ヨーク11aが多少変形してもステータ基板3に接触するという事態を回避することができる。
【0033】
また、モータハウジング2は、複数のハウジング部材(第1ハウジング部材21および第2ハウジング部材22)からなり、ステータ基板3の外周側端部3eは、第1ハウジング部材21と第2ハウジング部材22とに挟持されている。このため、ステータ基板3については、モータ軸線Lm方向における位置精度が高いので、ステータ基板3と補助ヨーク11aとが接触するという事態を回避することができる。
【0034】
また、本形態において、ステータ基板3は、薄いので、補助ヨーク11aとモータ軸線Lm方向で対向する部分の位置精度が低くなりやすいが、本形態では、補助ヨーク11aの位置精度が高いため、ステータ基板3において補助ヨーク11aと対向する部分が多少位置ずれしても、補助ヨーク11aに接触するという事態が発生しない。
【0035】
また、モータハウジング2は、ロータ4の周りを周方向の全体あるいは略全体にわたって覆っているため、周方向の広い範囲にわたってステータ基板3の外周側端部3eを第1ハウジング部材21と第2ハウジング部材22との間で挟持した構造を採用することができるので、ステータ基板3を確実に保持することができる。また、モータハウジング2がロータの周りを周方向の全体あるいは略全体にわたって覆っている構造であれば、埃等の異物が内部に侵入することを防止することができる。
【0036】
[実施の形態2]
図2は、本発明の実施の形態2に係るモータの断面構造を模式的に示す説明図である。なお、本形態の基本的な構成は、実施の形態1と同様であるため、共通する部分には同一の符号を付してそれらの説明を省略する。
【0037】
図2に示すように、本形態のモータ1も、実施の形態1と同様、ロータ4のマグネット8とステータコイル3aとがモータ軸線方向で対向する面対向タイプであり、モータハウジング2と、モータハウジング2に対してラジアル軸受5a、5bおよびスラスト軸受5cによって回転可能に保持された回転軸5を備えたロータ4と、ロータ4のマグネット8に対してモータ軸線方向の反出力側Lbで対向するステータコイル3aを備えたステータ基板3とを有している。ロータ4には、マグネット8に対してモータ軸線Lm方向の出力側Laにバックヨーク6が設けられている。
【0038】
また、本形態でも、実施の形態1と同様、モータ1には、ステータコイル3aに対してマグネット8が位置する側とは反対側(反出力側Lb)に円環状の補助ヨーク11bが設けられており、本形態において、補助ヨーク11bは、ロータ4に取り付けられている。
【0039】
かかる構成を実現するにあたって、補助ヨーク11bは、回転軸5が嵌る筒部9aを備えた補助ヨーク取り付け部材9において筒部9aから拡径してステータ基板3に反出力側Lbで対向する部分に設けられている。より具体的には、補助ヨーク取り付け部材9は、回転軸5が嵌る筒部9aと、筒部9aの反出力側Lbの端部で拡径する円環状の大径部9cとを備えた非磁性部材であり、かかる補助ヨーク取り付け部材9において、大径部9cの出力側Laの面には、円環状の磁性板からなる補助ヨーク11bが接着剤等により固定されている。このように、ステータコイル3aに対してマグネット8が位置する側とは反対側(反出力側Lb)に、ロータ4と一体に回転する補助ヨーク11bが配置されている。その他の構成は実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0040】
このように構成したモータ1においても、補助ヨーク11bは、回転軸5が嵌る筒部9aを備えた補助ヨーク取り付け部材9において筒部9aの端部から拡径してステータ基板3に反出力側で対向する部分に設けられたという簡素な構成であるため、補助ヨーク11bの位置精度が高い。すなわち、補助ヨーク11bは、非磁性の補助ヨーク取り付け部材9において筒部9aから拡径する円環状の大径部9cに固定された磁性板からなるという簡素な構成であるため、各部分での寸法誤差が補助ヨーク11bの位置精度に累積されるということがない。従って、補助ヨーク11aの位置精度が高いので、マグネット8と補助ヨーク11bとの間に磁気吸引力が作用した状態でロータ4が高速回転した際、補助ヨーク11bが多少変形してもステータ基板3に接触するという事態を回避することができる等、実施の形態1と同様な効果を奏する。
【0041】
[回転駆動装置(ロータリシャッタ装置)への適用例1]
図3は、本発明を適用したロータリシャッタ装置の外観等を示す説明図であり、図3(a)、(b)は、ロータリシャッタ装置を後方から見た斜視図、およびロータリシャッタ装置の縦断面図である。図4は、図3に示すロータリシャッタ装置の縦断面図である。
【0042】
(全体構成)
図3に示すように、ロータリシャッタ装置1000は、回転中心軸線L上に第1シャッタ板20(第1回転板/第1被駆動部材)、第2シャッタ板30(第2回転板/第2被駆動部材)、および回転駆動機構40がこの順に同軸状に配置された構造を備えている。以下の説明では、回転中心軸線L方向において、第1シャッタ板が配置されている側を前側とすると、回転駆動機構40は、第1シャッタ板20および第2シャッタ板30の後側に配置されている。第1シャッタ板20および第2シャッタ板30は、回転駆動機構40よりも大径の円板である。第1シャッタ板20は、透光部と遮光部とを備えており、円形側面の半径方向L1の所定の位置には、180度の角度範囲に渡って形成された扇形の第1開口部20a(第1透光部)が形成されている。第2シャッタ板30も透光部と遮光部とを備えており、第1シャッタ板20と同一形状をしている。第2シャッタ板30の円形側面の半径方向L1の所定の位置には、180度の角度範囲に渡って形成された扇形の第2開口部30a(第2透光部)が形成されている。第1シャッタ板20と第2シャッタ板30とは狭い間隔で対峙しており、図3では、第1開口部20aと第2開口部30aの位相は90度ずれている。また、第1開口部20aと第2開口部30aの重なり部分によって90度の角度範囲に渡る扇形のシャッタ開口50が形成されている。シャッタ開口50は、回転駆動機構40の外周面よりも外周側に位置している。
【0043】
かかるロータリシャッタ装置1000が撮影カメラに組み込まれる場合には、図中の想像線(二点鎖線)で示すように、第1シャッタ板20の前方に撮影レンズ60が配置され、第2シャッタ板30の後方にCCD等の露光部70が配置される。第1シャッタ板20および第2シャッタ板30が回転駆動機構40によって回転駆動されると、撮影レンズ60と露光部70の間をシャッタ開口50が通過する。回転駆動機構40は、例えば、撮影カメラの駆動制御部80によって駆動制御される。
【0044】
図4に示すように、回転駆動機構40は、第1アクチュエータ90、第2アクチュエータ10、波動歯車機構110、およびこれらの周りを周方向の全体あるいは略全体にわたって覆うモータハウジング120を備えている。モータハウジング120は、第1シャッタ板20および第2シャッタ板30側に位置する筒状の第1ハウジング部材121と、第1ハウジング部材121の後側に連結されている円筒状の第2ハウジング部材122と、第2ハウジング部材122の後側に連結されている有底円筒状の第3ハウジング部材123を備えている。第1ハウジング部材121および第2ハウジング部材122の内側には、前側から波動歯車機構110と第1アクチュエータ90とが配置されている。また、第2ハウジング部材122および第3ハウジング部材123の内側には第2アクチュエータ10が配置されている。波動歯車機構110は、この波動歯車機構110と第1ハウジング部材121の内周面131との間の回転中心軸線L方向で離間した位置に挿入された2つのベアリング150、160によって、第1ハウジング部材121に対して、回転中心軸線Lを中心に回転自在に支持されている。また、波動歯車機構110、第1アクチュエータ90および第2アクチュエータ10は回転中心軸線L上で同軸に配置されている。
【0045】
波動歯車機構110は、撓み噛み合い式波動歯車機構であるハーモニックドライブシステム(登録商標)であり、内歯111aを備えた筒状のサーキュラスプライン111(第1入力用回転部材)と、サーキュラスプライン111の内側に配置されており円筒部分112aの外周面に内歯111aよりも2枚歯数の少ない外歯112bを備えるカップ状のフレックススプライン112(出力用回転部材)と、このフレックススプライン112を撓ませて外歯112bを部分的に内歯111aに噛合させるとともに、噛合位置を円周方向に移動させることにより、サーキュラスプライン111とフレックススプライン112との間に相対回転を発生させるウエーブジェネレータ113(第2入力用回転部材)とを備えている。波動歯車機構110は、サーキュラスプライン111およびウエーブジェネレータ113の回転速度により、フレックススプライン112の回転速度が規定される変速機構である。
【0046】
サーキュラスプライン111は、サーキュラスプライン111の外周面111bと第1ハウジング部材121の内周面131との間に挿入されているベアリング150、160によって、回転中心軸線Lを中心に回転自在の状態で支持されている。サーキュラスプライン111の前端面111cには、サーキュラスプライン111と一体回転するようにキャップ170を介して中央部に中空部分を有する第1環状ハブ180が同軸に取り付けられている。この第1環状ハブ180(取付部材)には、第2シャッタ板30が第1環状ハブ180と同軸に接着剤で接着固定されている。また、サーキュラスプライン111の後端面111dには、締結ボルト190により、第1アクチュエータ90のロータ91が同軸に接続されている。従って、第1アクチュエータ90が回転駆動されると、サーキュラスプライン111と、このサーキュラスプライン111に、キャップ170および第1環状ハブ180を介して固定された第2シャッタ板が回転する。
【0047】
第1環状ハブ180は、筒状部分181と筒状部分181の軸線方向の途中から外周側に突出している円環状板部分182を備えており、筒状部分181の後端面181aは、キャップ170に固定されている。筒状部分181の前端部分181bには円環状段部181cが形成されている。第2シャッタ板30は、この第2シャッタ板30の中心部に形成されている円形開口30bが円環状段部181cに嵌められた状態で接着剤により固定されることによって第1環状ハブ180に固定されている。円環状板部分182は、第1円環状段部181cに固定された第2シャッタ板30と隙間を開けた位置で対向しており、円環状板部分182の後端面182aの外周側部分には、円環状溝182b(凹部)が形成されている。この円環状溝182b内に接着剤(調整部材)を塗布することにより、第1環状ハブ180に固定された第2シャッタ板30の回転バランスが調整可能となっている。
【0048】
フレックススプライン112のダイヤフラム部分112cの中央の円環状ボス部分112dからは、このフレックススプライン112と一体に形成された出力軸114が同軸状態で前方に延びている。出力軸114は、第1環状ハブ180の中空部分を貫通し、前端部分114aが第2シャッタ板30よりも前方に突出している。前端部分114aには第2環状ハブ200(取付部材)が出力軸114と一体回転するように同軸に取り付けられており、この第2環状ハブ200に第1シャッタ板20が接着剤で接着固定されている。
【0049】
第2環状ハブ200は、筒状部分201と筒状部分201の軸線方向の途中から外周側に突出している円環状板部分202を備えている。筒状部分201の前端部は出力軸114の前端部分114aに係止具210を用いて固定されている。円環状板部分202は、第1環状ハブ180よりも厚肉に形成されており、後端側から第1円環状段部202aと第1円環状段部202aよりも大径の第2円環状段部202bが形成されている。第1シャッタ板20は、この第1シャッタ板20の中心部に形成されている円形開口20bが第1円環状段部202aに嵌め込まれた状態で、接着剤により固定されることによって第2環状ハブ200に固定されている。円環状板部分202における第2円環状段部202bよりも外周側の部分202cは、第1円環状段部202aに固定された第1シャッタ板20と隙間を開けた位置で対向しており、円環状板部分202の前端面202dの外周側部分には、円環状溝202eが形成されている。この円環状溝202e内に接着剤(調整部材)を塗布することにより、第2環状ハブ200に固定された第1シャッタ板20の回転バランスが調整可能となっている。
【0050】
ウエーブジェネレータ113には、第2アクチュエータ10の回転軸100が同軸に接続されている。従って、ウエーブジェネレータ113は第2アクチュエータ10によって回転可能となっている。回転軸100の前端部分100aはウエーブジェネレータ113から更に前方に突出しており、フレックススプライン112の円環状ボス部分112dの内側に位置している。回転軸100の前端部分100aの外周面と円環状ボス部分112dの内周面との間にはベアリング220が挿入されており、このベアリング220を介して、回転軸100とフレックススプライン112とは、回転中心軸線Lを中心として相互に回転自在に支持されている。従って、第2アクチュエータ10が回転駆動されると、回転軸100が回転し、ウエーブジェネレータ113と、フレックススプライン112と、出力軸114に第2環状ハブ200を介して固定された第1シャッタ板20とが回転する。
【0051】
第1アクチュエータ90は、前側から、円環状板部91aと、円環状板部91aの中央部分から後側に延びる小径筒状の回転軸99と、円環状板部91aおよび回転軸99にバックヨーク92を介して固着されている円環状のマグネット93とを備えたロータ91を有しており、ロータ91のマグネット93に回転中心軸線L方向で対向するように円環状のステータ基板94が設けられている。かかるステータ基板94はステータコイル94aを備えている。ロータ91は、サーキュラスプライン111に連結されているので、サーキュラスプライン111とともにベアリング150、160によって回転中心軸線Lを中心に回転自在に支持されている。
【0052】
第2アクチュエータ10は、前側から、回転軸100と、バックヨーク104と、バックヨーク104を介して回転軸100に固定された円環状のマグネット102とを有するロータ101を有しており、ロータ101のマグネット102に回転中心軸線L方向で対向するようにステータ基板103が設けられている。かかるステータ基板103はステータコイル103aを備えている。
【0053】
回転軸100のうち、ロータ101のバックヨーク104よりも前側に突出している部分は、波動歯車機構110の内側まで延びている。かかる回転軸100は、回転軸100の前端部分100aが円環状ボス部分112dの内周面に配置されたベアリング220によってモータハウジング120に回転自在に支持され、回転軸100の後端部分100bは、第3ハウジング部材123の円形端板141に固定されたベアリング230によって支持されることにより、モータハウジング120に回転自在に支持されている。なお、第1アクチュエータ90と波動歯車機構110の間には、回転軸100を囲むように、波動歯車機構110のオイルシール270が配置されている。
【0054】
(ロータリシャッタ装置1000の動作)
図5は、図3に示すロータリシャッタ装置の動作を示す説明図であり、図5(a)、(b)、(c)、(d)は、2枚のシャッタ板を同一速度で回転させている状態を示す説明図、ウエーブジェネレータをサーキュラスプラインに対して90度相対回転させた状態を示す説明図、ウエーブジェネレータをサーキュラスプラインに対して180度相対回転させた状態を示す説明図、およびウエーブジェネレータをサーキュラスプラインに対して360度相対回転させた状態を示す説明図である。なお、図5中の矢印Aはサーキュラスプライン111の回転を示し、矢印Bはウエーブジェネレータ113の回転を示し、点線の矢印Cは、フレックススプライン112の回転を示している。
【0055】
本形態のロータリシャッタ装置1000において、初期状態では、シャッタ開口50の開口角度は、例えば、90度に設定されている。ロータリシャッタ装置1000を動作させる場合には、図5(a)に示すように、駆動制御部80は、第1シャッタ板20と第2シャッタ板30とを所定の回転速度で時計回りに一体に回転させる。
【0056】
すなわち、駆動制御部80は、第1アクチュエータ90と第2アクチュエータ10とを同一の回転速度で時計回りに回転駆動し、サーキュラスプライン111とウエーブジェネレータ113とを同一の回転速度で回転させる。これにより、サーキュラスプライン111、フレックススプライン112およびウエーブジェネレータ113からなる波動歯車機構110の全体が一体に回転するので、第1シャッタ板20と第2シャッタ板30は同一の回転速度で一体に回転する。本例のロータリシャッタ装置1000では、シャッタ速度を高速にする場合には、第1シャッタ板20および第2シャッタ板30は5000〜10000回転/秒の回転速度で回転させられる。シャッタ速度を低速にする場合には、200〜500回転/秒の回転速度で回転させられる。
【0057】
次に、露光時間を変更する場合には、駆動制御部80は、第1シャッタ板20の第1開口部20aと第2シャッタ板30の第2開口部30aの位相を変えて、シャッタ開口50の開口角度を変える。
【0058】
より具体的には、駆動制御部80は、第1アクチュエータ90と第2アクチュエータ10とを異なる回転速度で回転駆動する。本例では、シャッタ開口50を絞るために、第1アクチュエータ90の回転速度を第2アクチュエータ10に対して相対的に遅らせて、第2アクチュエータ10に接続されたウエーブジェネレータ113を、第1アクチュエータ90に接続されたサーキュラスプライン111に対して時計回りに相対回転させる。
【0059】
図5(b)に示すように、サーキュラスプライン111に対してウエーブジェネレータ113が時計回りに90度相対回転すると、フレックススプライン112は弾性変形して、サーキュラスプライン111の内歯111aとの噛合位置を時計回りに移動させる。ウエーブジェネレータ113が90度相対回転すると、フレックススプライン112はサーキュラスプライン111の歯数1枚分の半分の角度R90だけ、サーキュラスプライン111に対して反時計周りに移動する。
【0060】
図5(c)に示すように、サーキュラスプライン111に対してウエーブジェネレータ113が180度相対回転すると、フレックススプライン112はサーキュラスプライン111の歯数1枚分の角度R180だけ、サーキュラスプライン111に対して反時計周りに移動する。
【0061】
さらに、図5(d)に示すように、サーキュラスプライン111に対してウエーブジェネレータ113が360度相対回転すると、フレックススプライン112はサーキュラスプライン111よりも歯数が2枚少ないので、サーキュラスプライン111の歯数2枚分の角度R360だけ、サーキュラスプライン111に対して反時計周りに移動する。この結果、シャッタ開口50の開口角度は狭くなり、シャッタ開口50が絞られる。
【0062】
すなわち、サーキュラスプライン111の内歯111aの歯数をm、サーキュラスプライン111とフレックススプライン112との歯数の差をn(n=2)、サーキュラスプライン111に対するウエーブジェネレータ113の相対回転角度をθとすると、フレックススプライン112とサーキュラスプライン111との間に、下式(1)で求められる位相差Rθが発生する。
Rθ=n・θ/m (1)
【0063】
また、この位相差Rθが第1開口部20aと第2開口部30aの位相に反映されるので、駆動制御部80は、第1アクチュエータ90と第2アクチュエータ10の相対回転速度および相対回転させる期間に基づいて、サーキュラスプライン111に対するウエーブジェネレータ113の相対回転角度θを制御することにより、シャッタ開口50の開口角度を高精度で設定できる。
【0064】
シャッタ開口50の開口角度が所望の角度に設定された後は、駆動制御部80は、再び、第1シャッタ板20と第2シャッタ板30とを所定の回転速度で一体に回転させる。すなわち、図5(a)に示すように、第1アクチュエータ90と第2アクチュエータ10とを同一の回転速度で回転駆動することにより、波動歯車機構110全体を一体に回転させる。
【0065】
なお、シャッタ開口50の開口角度を所望の角度に設定する動作は、第1アクチュエータ90と第2アクチュエータ10とを同一の回転速度で回転駆動している動作から、引き続き連続して行なわれる。また、シャッタ開口50の開口角度を所望の角度に設定後に、第1アクチュエータ90と第2アクチュエータ10とを同一の回転速度で回転駆動させる動作も、引き続き連続して行なわれる。
【0066】
このように、本形態のロータリシャッタ装置1000では、波動歯車機構110を1つ用いるだけで、第1シャッタ板20および第2シャッタ板30を同一速度で一体に回転させることができるとともに、第1シャッタ板20および第2シャッタ板30を相対回転させて第1開口部20aと第2開口部30aの位相を変化させることができる。また、第1アクチュエータ90および第2アクチュエータ10から第1シャッタ板20および第2シャッタ板30に至る駆動力伝達経路上に存在する回転部材が3つと少ないので、第1シャッタ板20および第2シャッタ板30を高速で回転させるのに適している。また、駆動力伝達経路上に存在する回転部材の数が少なければ、第1シャッタ板20および第2シャッタ板30の位相を変化させる際に、駆動力伝達経路上で発生する誤差が低減される。この結果、本例のロータリシャッタ装置1000によれば、波動歯車機構110の変速比により規定される式(1)に基づいて、シャッタ開口50の開口角度を高精度で制御できる。
【0067】
なお、第1アクチュエータ90および第2アクチュエータ10を、フレックススプライン112およびウエーブジェネレータ113に接続し、第1シャッタ板20をフレックススプライン112またはウエーブジェネレータ113に取り付け、第2シャッタ板30をサーキュラスプライン111に取り付けても、上記の同様の作用効果を得ることができる。また、波動歯車機構110の代わりに、内歯歯車と、太陽歯車と、内歯歯車および太陽歯車と噛合する遊星歯車を備えた遊星キャリアからなる3つの回転部材を備える遊星歯車機構を用いることもできる。この場合には、例えば、内歯歯車がサーキュラスプライン111に対応し、太陽歯車がウエーブジェネレータ113に対応し、遊星キャリアがフレックススプライン112に対応するようにして、ロータリシャッタ装置を構成することができる。なお、遊星歯車機構を用いる場合には、内歯歯車、太陽歯車および遊星キャリアの3つの回転部材のうちのいずれか2つの回転部材に第1モータおよび第2モータを接続し、残りの1つの回転部材と、第1モータまたは第2モータが接続された回転部材に第1シャッタ板と第2シャッタ板とを取り付ければ、上記と同様の作用効果を得ることができる。
【0068】
(補助ヨーク等の構成)
本形態のロータリシャッタ装置1000においては、第1シャッタ板20および第2シャッタ板30に対する回転駆動源として2つのアクチュエータ(第1アクチュエータ90および第2アクチュエータ10)が用いられており、これらのアクチュエータのうち、第2アクチュエータ10については、実施の形態1に係るモータ1(図1参照)の構造が採用され、第1アクチュエータ90については、実施の形態2に係るモータ1(図2参照)の構造が採用されている。
【0069】
より具体的には、まず、第1アクチュエータ90において、ステータ基板94の外周側端部は、第1ハウジング部材121と第2ハウジング部材122との間に挟持され、第2アクチュエータ10において、ステータ基板103の外周側端部は、第2ハウジング部材122と第3ハウジング部材123との間に挟持されている。
【0070】
また、第1アクチュエータ90において、ロータ91に補助ヨーク11bを設けるにあたって、補助ヨーク11bは、回転軸99が嵌る筒部9aを備えた補助ヨーク取り付け部材9において筒部9aから拡径してステータ基板94に後側で対向する部分に設けられている。より具体的には、補助ヨーク取り付け部材9は、回転軸99が嵌る筒部9aと、筒部9aの後側の端部で拡径する円環状の大径部9cとを備えた非磁性部材であり、かかる補助ヨーク取り付け部材9において、大径部9cの前側の面には、円環状の磁性板からなる補助ヨーク11bが接着剤等により固定されている。
【0071】
また、第2アクチュエータ10において、ロータ101に補助ヨーク11aを設けるにあたって、補助ヨーク11aは、回転軸100が嵌る筒部7aを備えた補助ヨーク取り付け部材7において筒部7aから拡径してステータ基板103に後側で対向する部分に設けられている。より具体的には、補助ヨーク取り付け部材7は、回転軸100が嵌る筒部7aと、筒部7aの前側の端部で拡径する円環状の大径部7cとを備えた磁性部材であり、かかる大径部7cによって補助ヨーク11aが構成されている。
【0072】
このため、第1アクチュエータ90および第2アクチュエータ10は、実施の形態1、2で説明した効果を奏する。
【0073】
[回転駆動装置(ロータリシャッタ装置)への適用例2]
図6は、本発明を適用した別のロータリシャッタ装置の縦断面図である。なお、本形態の基本的な構成は、図3〜図5を参照して説明した形態と同様であるため、共通する部分には同一の符号を付してそれらの説明を省略する。
【0074】
図6に示すように、本形態のロータリシャッタ装置2000において、回転駆動機構40は、第1アクチュエータ90、第2アクチュエータ10、波動歯車機構110、およびこれらの周りを周方向の全体あるいは略全体にわたって覆うモータハウジング120を備えており、モータハウジング120は、複数のハウジング部材126〜129からなる。ハウジング部材125の内側には、第1第1アクチュエータ90が配置され、ハウジング部材128、129の内側には、波動歯車機構110および第2アクチュエータ10が配置されている。また、波動歯車機構110、第1アクチュエータ90および第2アクチュエータ10は回転中心軸線L上で同軸に配置されている。
【0075】
かかるロータリシャッタ装置2000において、第1アクチュエータ90は、回転軸95に円筒状の連結部材96を介してマグネット93が固定されたロータ91を備えており、かかるロータ91において、マグネット93の背後(前側)にはバックヨーク97が設けられている。また、マグネット93に対して後側で対向する位置には、ステータコイル93aを備えたステータ基板94が2枚、重ねて配置されている。ステータ基板94において、ステータコイル93aは絶縁膜(図示せず)で覆われており、ステータ基板94を重ねて配置しても短絡が発生することはない。本形態では、回転軸95に第1環状ハブ180が固定され、かかる第1環状ハブ180には、第1シャッタ板20が連結されている。
【0076】
また、ロータリシャッタ装置2000において、第2アクチュエータ10は、回転軸100に円筒状の連結部材106を介してマグネット102が固定されたロータ101を備えており、かかるロータ101において、マグネット102の背後(後側)にはバックヨーク104が設けられている。また、マグネット102に対して前側で対向する位置には、ステータコイル103aを備えたステータ基板103が2枚、重ねて配置されている。ステータ基板103において、ステータコイル103aは絶縁膜(図示せず)で覆われており、ステータ基板103を重ねて配置しても短絡が発生することはない。
【0077】
波動歯車機構110は、撓み噛み合い式波動歯車機構であるハーモニックドライブシステム(登録商標)であり、筒状のサーキュラスプライン111(第1入力用回転部材)と、サーキュラスプライン111の内側に配置されたカップ状のフレックススプライン112(出力用回転部材)と、このフレックススプライン112を撓ませて噛合位置を円周方向に移動させるウエーブジェネレータ113(第2入力用回転部材)とを備えている。
【0078】
ここで、ウエーブジェネレータ113は、第2アクチュエータ10の回転軸100に連結され、サーキュラスプライン111は、第2シャッタ板30が連結された第2環状ハブ200が連結されている。このため、第1シャッタ板20は、第1アクチュエータ90によって直接駆動される一方、第2シャッタ板30は、波動歯車機構110を介して第2アクチュエータ10によって駆動される。従って、図6を参照して説明した動作と略同様な動作を第1シャッタ板20および第2シャッタ板30に行わせることができる。
【0079】
このように構成したロータリシャッタ装置2000においては、第1シャッタ板20および第2シャッタ板30に対する回転駆動源として2つのアクチュエータ(第1アクチュエータ90および第2アクチュエータ10)が用いられており、これらのアクチュエータのうち、第2アクチュエータ10については、実施の形態1に係るモータ1(図1参照)の構造が採用され、第1アクチュエータ90については、実施の形態2に係るモータ1(図2参照)の構造が採用されている。
【0080】
より具体的には、まず、第1アクチュエータ90において、ステータ基板94の外周側端部は、回転中心軸線L方向で隣り合うハウジング部材125、126との間に挟持され、第2アクチュエータ10において、ステータ基板103の外周側端部は、回転中心軸線L方向で隣り合うハウジング部材128、129の間に挟持されている。
【0081】
また、第1アクチュエータ90において、ロータ91に補助ヨーク11bを設けるにあたって、補助ヨーク11bは、第1環状ハブ180を補助ヨーク取り付け部材9として利用して設けられている。すなわち、第1環状ハブ180(補助ヨーク取り付け部材9)は、回転軸95が嵌る筒部9aから拡径してステータ基板94に後側で対向する部分に設けられている。より具体的には、補助ヨーク取り付け部材9(第1環状ハブ180)は、回転軸95が嵌る筒部9aと、筒部9aの後側の端部で拡径する円環状の大径部9cとを備えた非磁性部材であり、かかる補助ヨーク取り付け部材9において、大径部9cの前側の面には、円環状の磁性板からなる補助ヨーク11bがスペーサ11cを介して接着剤等により固定されている。
【0082】
また、第2アクチュエータ10において、ロータ101に補助ヨーク11aを設けるにあたって、補助ヨーク11aは、回転軸100が嵌る筒部7aを備えた補助ヨーク取り付け部材7において筒部7aから拡径してステータ基板103に前側で対向する部分に設けられている。より具体的には、補助ヨーク取り付け部材7は、回転軸100が嵌る筒部7aと、筒部7aの前側の端部で拡径する円環状の大径部7cとを備えた磁性部材であり、かかる大径部7cによって補助ヨーク11aが構成されている。
【0083】
このため、第1アクチュエータ90および第2アクチュエータ10は、実施の形態1、2で説明した効果を奏する。
【符号の説明】
【0084】
1 モータ
2、120 モータハウジング
3、94、103 ステータ基板
3a、94a、103a ステータコイル
4、91、101 ロータ
5、95、99、100 回転軸
6、92、97、104 バックヨーク
7、9 補助ヨーク取り付け部材
7a、9a 筒部
7c、9c 大径部
8、932、102 マグネット
11a、11b 補助ヨーク
10 第2アクチェータ
21、121 第1ハウジング部材
22、122 第2ハウジング部材
90 第1アクチェータ
125〜129 ハウジング部材
1000、2000 ロータリシャッタ装置(回転駆動装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータハウジングと、
該モータハウジングに対して回転可能に保持された回転軸、および該回転軸に保持されたマグネット、および該マグネットに対してモータ軸線方向の一方側で対向するバックヨークを備えたロータと、
前記マグネットに対して前記モータ軸線方向の他方側で対向するステータコイルを備えたステータ基板と、
前記回転軸が嵌る筒部を備えた補助ヨーク取り付け部材と、
該補助ヨーク取り付け部材において前記筒部から拡径して前記ステータ基板に前記モータ軸線方向の他方側で対向する部分に設けられた補助ヨークと、
を有していることを特徴とするモータ。
【請求項2】
前記補助ヨーク取り付け部材は、前記筒部から拡径して前記ステータ基板に前記モータ軸線方向の他方側で対向する大径部分を備えた磁性部材であって、
前記大径部分によって前記補助ヨークが構成されていることを特徴とする請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記補助ヨーク取り付け部材は、前記筒部から拡径して前記ステータ基板に前記モータ軸線方向の他方側で対向する大径部分を備え、
前記大径部分に前記補助ヨークが固定されていることを特徴とする請求項1に記載のモータ。
【請求項4】
前記モータハウジングは、複数のハウジング部材からなり、
前記ステータ基板の外周側端部は、前記複数のハウジング部材のうち、前記モータ軸線方向で隣り合うハウジング部材の間に挟持されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載のモータ。
【請求項5】
前記ステータ基板は、シート状あるいは薄板状の基材に積層された銅箔パターンによって前記ステータコイルが形成されてなることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載のモータ。
【請求項6】
前記モータハウジングは、前記ロータの周りを周方向の全体あるいは略全体にわたって覆っていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載のモータ。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか一項に記載のモータを備えた回転駆動装置であって、
第1被駆動部材と、
第2被駆動部材と、
前記第1被駆動部材および前記第2被駆動部材に対する回転駆動源としての第1アクチュエータおよび第2アクチュエータと、を有し、
前記第1アクチュエータおよび前記第2アクチュエータのうちの少なくとも一方が前記モータからなることを特徴とする回転駆動装置。
【請求項8】
前記第1被駆動部材は、周方向に第1透光部と第1遮光部とを備える第1シャッタ板であり、
前記第2被駆動部材は、周方向に第2透光部と第2遮光部とを備える第2シャッタ板であり、
前記第1透光部と前記第2透光部とは、回転中心軸線方向で重なることが可能な位置に形成されていることを特徴とする請求項7に記載の回転駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−157087(P2012−157087A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−11212(P2011−11212)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】