説明

レーザー高さ測定装置および部品実装機

【課題】正確に測定位置を制御でき、かつセンサの取り付け位置調整機構や位置調整作業を必要とせずに測定位置の制御精度を保つことができるレーザー高さ測定装置を提供する。
【解決手段】レーザー光L1を照射するレーザー光照射部61および対象物で反射されたレーザー光を検出する反射光検出部62を有するレーザー高さセンサ6と、レーザー高さセンサ6を平面内で移動させるセンサ移動機構(ヘッド駆動機構41〜43)と、所定の較正位置(光入射軸AO上)に配置された画像カメラ(部品カメラ5)と、レーザー光L1を減衰しつつ透過する減光フィルタ71と、レーザー高さセンサ6を較正位置AOに位置決めしてレーザー光L1を照射し、減光フィルタ71を透過したレーザー光を画像カメラ5で撮像してレーザー光画像を得るレーザー光撮像手段と、座標位置の補正値をレーザー光画像上でのレーザー光の位置に基づいて求める補正値取得手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー光を用いて対象物の高さを測定するレーザー高さ測定装置、および該レーザー高さ測定装置を組み込んで基板の上面高さを測定する部品実装機に関し、より詳細には、高さを測定する測定位置の補正手段に関する。
【背景技術】
【0002】
基板に生産作業を施す基板生産機として、はんだ印刷機、部品実装機、リフロー機、および基板検査機などがあり、これらを基板搬送装置で連結して基板生産ラインを構築するのが一般的になっている。このうち部品実装機は、基板を部品実装位置に搬入し位置決めし搬出する基板搬送装置と、部品を供給する部品供給装置と、部品供給装置から部品を採取して位置決めされた基板に装着する実装ヘッドおよび実装ヘッドを水平面内の直交2方向に駆動するヘッド駆動機構を有する部品移載装置と、実装ヘッドが部品供給装置から基板上に移動する途中で採取されている部品を撮像する部品カメラと、を備えている。部品実装機は、さらに、位置決めされた基板の位置やIDコードなどを確認するために基板カメラを実装ヘッドに備えている。
【0003】
近年、部品実装機の実装ヘッドにレーザー高さセンサを取り付けてヘッド駆動機構により位置決めされた基板の所定座標位置に移動させ、基板の高さを複数位置で測定する技術が提案されている。これにより、部品を装着する基板の上面の高さを正確に測定でき、基板に反りなどが生じていても円滑な部品装着動作を行える効果が生じる。レーザー高さセンサは、部品実装機に限定されず、特許文献1に例示されるように基板検査機などにも応用されている。特許文献1の基板検査装置は、レーザー変位センサ(レーザー高さセンサ)、変位計測手段、計測位置教示手段、および基板高さ演算手段を備え、基板上の検査対象の高さを求めて検査を行うようになっている。
【0004】
部品実装機の実装ヘッドに取り付けられたレーザー高さセンサは、ヘッド駆動機構により水平面内の直交2方向に駆動され、測定位置はヘッド駆動機構上の平面座標系の座標値を用いて制御される。そして、実装ヘッドの部品実装機基台に対する位置関係は、構成部材の寸法公差や取り付けおよび調整のばらつきなどにより構造上の寸法誤差が生じるため、前述の基板カメラの撮像データにより位置補正を行うのが一般的になっている。この位置補正は、基板カメラの実装ヘッドに対する位置関係の誤差も同時に解消する。さらに、この位置補正は、レーザー高さセンサの測定位置の補正にも同様に適用される。
【0005】
一方、レーザー高さセンサの高さ測定精度は、対象物である基板の表面状態に左右されがちである。例えば、測定に必要な面積範囲内で高さが一定でないと高さ測定精度が低下する。また、表面の材質によってレーザー光の反射率が変化し、ランドパターンなどでは反射率は高いが、基板素地では反射率が低く、高さ測定精度が低下する一因となり得る。例えば、測定位置を所定のマーカーやランドパターン内に設定しても、測定位置の制御誤差により実際の測定時にレーザー光の照射位置がマーカーやランドパターンからはみ出ると、高さ測定精度が低下する。この種の高さ測定の精度向上に関する技術例が特許文献2および3に開示されている。
【0006】
特許文献2の三次元形状計測装置は、位置に応じて周期的に輝度が変化する光パタンを画像として読み取るラインセンサと、ラインセンサおよび計測対象の一方をラインセンサの主走査方向と異なる副走査方向に移動させる移動部と、移動部を制御するとともに画像を解析することによって計測対象の三次元形状を計測する画像解析部とを備えている。画像解析部は、複数の高さを有する校正用ターゲット、例えば3つ以上の平面を段状に有する校正用ターゲットを用いて校正を行うようになっている。これにより、校正用ターゲットを取り替えたり、高さを調整したりする必要がなく、高さの校正を迅速に行うことができる、とされている。
【0007】
また、特許文献3のレーザ光量制御装置は、レーザ光を射出するレーザ光源と、レーザ光を集光して射出する集光レンズと、レーザ光の一部を分離したモニタ光を検出する検出手段と、モニタ光の光量に基づいてレーザ光の光量を制御する光量制御手段とを備え、レーザ光の一部をモニタ光として反射する反射面を集光レンズが有することを特徴としている。さらに実施形態では、モニタ光の検出手段としてフォトダイオードが例示されている。この構成によれば、ビームスプリッタのような高価な部品を用いることなく安定性の高いモニタ光を得ることができ、装置の小型化、コストの削減を図ることができる、とされている。
【0008】
なお、レーザー高さセンサによる高さ測定の技術は、基板生産機に限定されるものではなく、幅広い分野の設備機械に適用し得る技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−30793号公報
【特許文献2】特開2008−170279号公報
【特許文献3】特開2003−110188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、部品実装機の実装ヘッドにレーザー高さセンサおよび基板カメラが組み込まれた構成では、従来、実装ヘッドの部品実装機基台に対する位置関係が基板カメラの撮像データにより較正されていた。このため、基板上の部品装着ポイントや撮像位置の制御精度は良好に保たれるが、レーザー高さセンサの測定位置の制御精度が低下するおそれがあった。なぜなら、実装ヘッドにレーザー高さセンサを組み付ける際にも基板カメラの場合と同様に構成部材の寸法公差や取り付けおよび調整のばらつきなどがあって、センサの実装ヘッドに対する位置関係に誤差が生じるにも拘わらず、較正および補正が行われていないからである。したがって、レーザー高さセンサの測定位置の制御精度を確保するために、センサの取り付け位置調整機構を設けて各部品実装機で個別に取り付け位置の調整を行い、装置ごとの個体差や調整者の調整作業のばらつきなどに特別な配慮を払う必要があった。
【0011】
一方、基板を小形化するために部品や回路パターンの軽薄短小化および部品実装の高密度化が近年進んでおり、レーザー高さセンサによる高さ測定に好適な測定位置が限られてきている。つまり、高さが一定でかつレーザー光の反射率が良好な測定範囲が限られ、測定範囲は1mm四方未満程度しか確保できなくなってきている。このため、レーザー高さセンサの測定高さの精度を向上するために、測定位置の制御精度を向上することが喫緊の課題となっている。
【0012】
これに対し、特許文献1および2の技術は測定高さ自体の較正および補正に関する技術であり、また、特許文献3の技術は測定に用いるレーザー光の光量調整に関する技術であり、いずれも測定位置の制御精度を維持および向上するものではない。
【0013】
本発明は、上記背景技術の問題点に鑑みてなされたものであり、高さを測定する際に正確に測定位置を制御でき、かつセンサの取り付け位置調整機構や位置調整作業を必要とせずに測定位置の制御精度を保つことができるレーザー高さ測定装置、および該レーザー高さ測定装置を組み込んだ部品実装機を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決する請求項1に係るレーザー高さ測定装置の発明は、対象物に向かってレーザー光を照射するレーザー光照射部、および前記対象物で反射されたレーザー光を検出する反射光検出部を有して前記対象物の高さを測定するレーザー高さセンサと、前記レーザー高さセンサを平面内で移動させるセンサ移動機構と、を備えるレーザー高さ測定装置であって、前記センサ移動機構上の平面座標系で表した所定の較正位置に配置された画像カメラと、前記較正位置に位置決めされた前記レーザー高さセンサのレーザー光照射部と前記画像カメラの光入射部との間に配置され、前記レーザー光照射部から前記光入射部に向かって照射されたレーザー光を減衰しつつ透過する減光フィルタと、前記レーザー高さセンサを前記較正位置に位置決めし、前記レーザー光照射部から前記光入射部に向かって前記レーザー光を照射し、前記減光フィルタを透過したレーザー光を前記画像カメラで撮像してレーザー光画像を得るレーザー光撮像手段と、前記レーザー高さセンサが前記センサ移動機構によって前記平面座標系の座標位置に移動されたときに前記レーザー光照射部から前記対象物に向かって照射されるレーザー光の前記平面座標系での座標位置の補正値を、前記レーザー光画像上での前記レーザー光の位置に基づいて求める補正値取得手段と、を備える。
【0015】
請求項2に係る発明は、請求項1において、前記レーザー高さ測定装置は部品が実装される基板の生産を行う基板生産機に組み込まれており、前記対象物は前記基板生産機の作業位置に水平姿勢でクランプされた基板であり、前記減光フィルタは、前記作業位置にクランプされた基板の上面と同じ高さに水平姿勢で配置される。
【0016】
請求項3に係る部品実装機の発明は、基板を部品実装位置に搬入し位置決めし搬出する基板搬送装置と、部品を供給する部品供給装置と、前記部品供給装置から前記部品を採取して前記位置決めされた基板に装着する実装ヘッドおよび前記実装ヘッドを水平面内の直交2方向に駆動するヘッド駆動機構を有する部品移載装置と、前記実装ヘッドが前記部品供給装置から前記基板上に移動する途中で採取されている部品を撮像する部品カメラと、を備え、前記実装ヘッドに、請求項1または2に記載のレーザー高さ測定装置の前記レーザー高さセンサが取り付けられ、前記部品移載装置の前記ヘッド駆動機構は、前記レーザー高さ測定装置の前記センサ移動機構に兼用され、前記部品カメラは、前記レーザー高さ測定装置の前記画像カメラに兼用され、前記レーザー高さ測定装置の前記減光フィルタは、前記部品カメラの光入射部上に、前記部品実装位置に位置決めされた前記基板の上面と同じ高さに水平姿勢で配置される。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係るレーザー高さ測定装置の発明では、センサ移動機構により較正位置に位置決めされたレーザー高さセンサのレーザー光照射部からレーザー光が照射され、レーザー光は減光フィルタを減衰しつつ透過して画像カメラに達し、レーザー光画像が得られる。レーザー光画像上のレーザー光の位置は、減光フィルタの作用によって高精度に求められ、較正位置からの偏移量を座標位置の補正値として求めることができる。これにより、レーザー高さセンサがセンサ移動機構によって任意の座標位置に移動されたときに、レーザー光の照射位置すなわち測定位置をこの補正値を用いて補正することができる。つまり、任意の座標位置で高さを測定する際に、センサ移動機構により補正値を考慮してレーザー高さセンサを移動させ、正確に測定位置を制御できる。
【0018】
また、センサの構成部材の寸法公差や取り付け作業のばらつきなどに起因する構造上の寸法誤差が生じていても、測定装置ごとに寸法誤差を補正値として求め、補正することができる。したがって、センサの取り付け位置調整機構や位置調整作業を必要とせずに測定位置の制御精度を保つことができる。
【0019】
請求項2に係る発明では、レーザー高さ測定装置は基板生産機に組み込まれており、対象物は水平姿勢でクランプされた基板とされ、減光フィルタは基板の上面と同じ高さに水平姿勢で配置される。このため、仮にレーザー高さセンサが傾斜して取り付けられてレーザー光の光軸が傾斜していても、較正位置における減光フィルタ上の座標位置の誤差と、基板の上面における座標位置の誤差とが略一致する。したがって、較正位置で求めた補正値を用いることにより、正確に基板上の任意の測定位置を制御できる。
【0020】
請求項3に係る部品実装機の発明では、実装ヘッドにレーザー高さセンサが取り付けられ、ヘッド駆動機構はセンサ移動機構に兼用され、部品カメラは画像カメラに兼用され、減光フィルタは部品カメラの光入射部上に基板の上面と同じ高さに水平姿勢で配置される。したがって、従来の部品実装機の構成を変更することなく、治具として減光フィルタを用いて補正値を求めることができ、正確に基板上の任意の測定位置を制御できる。これにより、基板の上面の高さを複数位置で正確に測定でき、基板に反りなどが生じていても円滑な部品装着動作が行える。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施形態の部品実装機を説明する斜視図である。
【図2】(1)はレーザー高さセンサの構成および高さ検出方式を模式的に説明する図であり、(2)は高さ測定の対象物および測定位置を模式的に説明する図である。
【図3】実施形態の部品実装機に組み込まれたレーザー高さ測定装置の測定位置の較正実施状況を説明する図である。
【図4】図3のレーザー高さセンサから連結部までの範囲を拡大した部分斜視図である。
【図5】減光フィルタを有する較正治具の構造を示す斜視断面図である。
【図6】実施形態で得られたレーザー光画像の画像例であり、(1)は全領域画像、(2)は(1)の中央部分の拡大画像を示している。
【図7】較正治具を使用しない場合に得られたレーザー光画像の画像例であり、(1)は全領域画像、(2)は(1)の中央部分の拡大画像を示している。
【図8】減光フィルタが透過レーザー光の位置を高精度化する作用を説明する別のレーザー光画像例であり、(1)は減光フィルタ使用時、(2)は減光フィルタ未使用時を示している。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態の部品実装機について、図1〜図8を参考にして説明する。図1は、実施形態の部品実装機1を説明する斜視図である。実施形態の部品実装機1には、本発明のレーザー高さ測定装置が組み込まれている。部品実装機1は、基板搬送装置2、部品供給装置3、部品移載装置4、および部品カメラ5を基台9に組み付けるとともに、部品移載装置4の実装ヘッド44にレーザー高さセンサ6を取り付け、各装置2〜6を図略の制御コンピュータから制御するようにして構成する。
【0023】
基板搬送装置2は、第1および第2ガイドレール21、22、一対のコンベアベルト、およびクランプ装置などにより構成されている。第1および第2ガイドレール21、22は、基台9の上部中央を横断して搬送方向(X軸方向)に延在し、かつ互いに平行するように基台9に組み付けられている。第1および第2ガイドレール21、22の直下に、互いに平行に配置された一対のコンベアベルトが並設されている。コンベアベルトは、コンベア搬送面に基板Kを戴置した状態で搬送方向(X方向)に輪転して、基板Kを基台9の中央部に設定された部品実装位置に搬入および搬出する。また、基台9の中央部のコンベアベルトの下方にクランプ装置が設けられている。クランプ装置は、基板Kを押し上げて水平姿勢でクランプし、部品実装位置に位置決めする。図1には、部品実装位置に位置決めされた基板Kが示されている。
【0024】
部品供給装置3はフィーダ方式の装置であり、部品実装機1の長手方向の前部(図1の左前側)に設けられている。部品供給装置3は、着脱可能な多数のカセット式フィーダ31がセットされて構成されている。カセット式フィーダ31は、本体32と、本体32の後部に設けられた供給リール33と、本体32の先端に設けられた部品取出部34とを備えている。供給リール33には多数の部品が所定ピッチで封入された細長いテープ(図示省略)が巻回保持され、このテープがスプロケット(図示省略)により所定ピッチで引き出され、部品が封入状態を解除されて部品取出部34に順次送り込まれるようになっている。
【0025】
部品移載装置4は、X軸方向およびY軸方向に移動可能なXYロボットタイプの装置である。部品移載装置4は、一対のY軸レール41、42、実装ヘッド44、吸着ノズル45、基板カメラ46などにより構成されている。一対のY軸レール41、42は基台9の長手方向の後部(図1の右奥側)から前部の部品供給装置3の上方にかけて配設されている。Y軸レール41、42上に、移動台43が水平2方向(XY方向)に移動可能に支持されている。移動台43には、実装ヘッド44が設けられている。実装ヘッド44には、負圧により部品を吸着採取する吸着ノズル45が下向きに突設され、さらに基板Kの上面を撮像する基板カメラ46が下向きに設けられている。
【0026】
部品移載装置4の実装ヘッド44は2つのサーボモータにより水平2方向(XY方向)に駆動され、さらに吸着ノズル45は別のサーボモータにより昇降方向に駆動される。これにより、吸着ノズル45は、部品供給装置3のカセット式フィーダ31から部品を吸着採取して位置決めされた基板K上の装着ポイントに装着する。基板カメラ46は、位置決めされた基板Kのフィデューシャルマークを読み取り、基板Kの部品実装位置に対する位置誤差を検出して、吸着ノズル45が部品を装着するときの位置制御に反映する。
【0027】
上述のY軸レール41、42、移動台43、および2つのサーボモータは、実装ヘッド44を水平面内の直交2方向に駆動するヘッド駆動機構を構成している。また、部品実装位置や装着ポイントは、ヘッド駆動機構上の平面座標系の座標値で表される。実装ヘッド44の基台9に対する相対的な位置関係は、平面座標系で表した基準位置に実装ヘッド44を移動させたときの基板カメラ46の撮像データにより予め較正されている。つまり、平面座標系の任意の座標位置で適用される補正値が予め求められている。したがって、実装ヘッド44やヘッド駆動機構を構成する構成部材の寸法公差や取り付けおよび調整のばらつきなどにより構造上の寸法誤差が生じていても、補正値が用いられることで実装ヘッド44の位置の制御精度は良好に保たれる。
【0028】
部品カメラ5は、基板搬送装置2と部品供給装置3との間の基台9の上面に、上向きに設けられている。部品カメラ5は、吸着ノズル45が部品供給装置3から基板K上に移動する途中で吸着採取されている部品の状態を撮像して検出するものである。部品カメラ5が部品の吸着位置や回転角のずれ、リードの曲がりなどを検出すると、必要に応じて部品装着動作が微調整され、装着が困難な部品は廃棄される。部品カメラ5の周辺の詳細構造は後で説明する。
【0029】
部品実装機1は、図略の制御コンピュータを備えている。制御コンピュータは、生産する基板の基板種と装着される部品種との対応関係を始めとする諸情報、基板カメラ46や部品カメラ5の撮像データ、および図略のセンサの検出情報などに基づいて、部品装着動作を制御する。
【0030】
次に、レーザー高さ測定装置について説明する。レーザー高さ測定装置を構成するレーザー高さセンサ6は、図1に示されるように、実装ヘッド44の下側に基板カメラ46と並んで下向きに取り付けられている。したがって、レーザー高さセンサ6は実装ヘッド44によって移動され、ヘッド駆動機構はレーザー高さセンサ6を移動させるセンサ移動機構に兼用されている。図2の(1)はレーザー高さセンサ6の構成および高さ検出方式を模式的に説明する図であり、(2)は高さ測定の対象物および測定位置を模式的に説明する図である。
【0031】
図2の(1)に示されるように、レーザー高さセンサ6は、隣接配置されたレーザー光照射部61および反射光検出部62を有している。レーザー光照射部61は、下方に配置された対象物である基板Kに向かって、レーザー光L1を下向きに照射する。レーザー光L1は基板Kの上面で反射され、反射レーザー光L2が反射光検出部62に入射する。反射光検出部62は、反射レーザー光L2の検出位置の違いから、対象物の高さHを検出する。図2の(1)では、基板Kが正規の高さHにあるときの反射レーザー光L2と、基板Kxが正規よりも上方の高さH3にあるときの反射レーザー光L3とが例示されている。
【0032】
また、図2の(2)に示されるように、レーザー高さセンサ6の高さ測定の対象物は基板Kの上面であり、複数の測定位置で高さ測定を行う。図には、基板KのY軸方向の3箇所y1、y2、およびy3の測定位置が例示されている。実際には、X軸方向の3箇所も考慮し、基板K上の合計9箇所の格子点を測定位置として高さ測定を行う。この場合、基板Kが平板でかつ水平姿勢を保っていると、全測定位置で同じ高さHが測定される。また、図中に破線で例示されるように、反りのある基板Kxでは、各測定位置でそれぞれ異なった高さh1〜h3が測定される。また、基板Kが水平姿勢でなく傾斜してクランプされた場合も、各測定位置で異なった高さが測定される。なお、合計9箇所の測定位置は例であって、所望する任意数量の任意の測定位置をヘッド駆動機構上の平面座標系の座標値を用いて設定することができる。
【0033】
また、部品カメラ5は、レーザー高さ測定装置の測定位置の較正を行うための画像カメラに兼用されている。部品カメラ5の位置は、センサ移動機構すなわちヘッド駆動機構上の平面座標系の特定の座標位置で表されており、特定の座標位置が較正位置に該当する。さらに、レーザー高さ測定装置の測定位置の較正を行うための治具として、減光フィルタ7を用いる。
【0034】
図3は、実施形態の部品実装機1に組み込まれたレーザー高さ測定装置の測定位置の較正実施状況を説明する図であり、一部は断面が示されている。また、図4は、図3のレーザー高さセンサ6から連結部53までの範囲を拡大した部分斜視図である。図3において、レーザー高さセンサ6は、ヘッド駆動機構によって平面座標系で表された較正位置に位置決めされている。つまり、レーザー高さセンサ6のレーザー光照射部61が、部品カメラ5の鉛直真上に位置決めされている。部品カメラ5は、鉛直方向の光入射軸AOを有し、支持台52を介して基台9上に取り付けられている。部品カメラ5の上部中央は、上方からの光が入射する光入射部51となっている。部品カメラ5の上方には筒状の連結部53が配設され、連結部53の上側には上向きに開いた底のない椀状の上端部材54が配設されている。部品カメラ5、連結部53、および上端部材54は、光入射軸AOを共有しており、さらに、レーザー高さセンサ6が較正位置に正確に位置決めされると、レーザー光L1の光軸が光入射軸AOに重なるようになっている。
【0035】
連結部53の内壁の一つの側面には、多数のLEDよりなる落射光源531が設けられている。また、連結部53の内部を斜めに横切ってハーフミラー532が設けられている。ハーフミラー532は、落射光源531から照射された水平方向の落射光を鉛直上向きに反射し、上方からの光を部品カメラ5の光入射部51に向けて透過する。連結部53の開いた上面は、透明なカバーガラス533により覆われている。上端部材54の椀状の内面には、多数のLEDよりなる側射光源541が設けられている。落射光源531および側射光源541は、部品カメラ5が吸着ノズル45に吸着採取されている部品の状態を撮像するときに、部品を鉛直下方および斜め側方から照明するようになっている。落射光源531および側射光源541は、レーザー高さ測定装置の測定位置を較正するときには消灯される。
【0036】
上端部材54の椀状の開いた上面に、減光フィルタ71を有する較正治具7がセットされている。図5は、減光フィルタ71を有する較正治具7の構造を示す斜視断面図である。較正治具7は、光入射軸AOを中心とする略軸対称形状であり、上側の大径の母板72、下側の小径の押え板73、その間の減光フィルタ71、および押えねじ74で構成されている。母板72および押え板73は中央に通過穴を有し、両者72、73の間で通過穴を塞ぐように減光フィルタ71が配置されて挟持されている。母板72と押え板73とは、押えねじ74により固定されている。減光フィルタ71は、樹脂製フィルムからなり、レーザー高さセンサ6から照射されるレーザー光L1を所定の減衰率で減衰させつつ透過させる。減光フィルタ71のレーザー光減衰率は、後述する透過レーザー光の位置の高精度化が良好となるように適宜選定する。
【0037】
較正治具7は、常時の部品装着動作時には使用されず、レーザー高さ測定装置の測定位置を較正するときに、上端部材54の上面に内向きに設けられた内フランジ542の上にセットされて使用される。このとき、図3に示されるように、減光フィルタ71は、レーザー高さセンサ6のレーザー光照射部61と部品カメラ5の光入射部51との間に配置される。また、レーザー高さセンサ6に対する減光フィルタ71の高さHが、部品実装位置に位置決めされた基板Kの上面の正規高さH(図2参照)と一致するようになっている。なお、実施形態では較正治具7のセットおよび取り外しを人手により行うが、これに限定されず、セット機構を付加して自動で行うようにしてもよい。
【0038】
図3に示される状況で、レーザー光撮像手段および補正値取得手段からなる較正を行う。レーザー光撮像手段では、まず、ヘッド駆動機構によりレーザー高さセンサ6を較正位置、すなわち部品カメラ5の光入射軸AOの鉛直上方に位置決めする。次に、レーザー光照射部61から部品カメラ5の光入射部51に向かってレーザー光L1を下向きに照射する。すると、レーザー光L1は、減光フィルタ71を減衰しつつ透過して透過レーザー光となり、部品カメラ5の光入射部51に達する。部品カメラ5は、透過レーザー光を撮像してレーザー光画像を得る。
【0039】
補正値取得手段では、レーザー光画像上での透過レーザー光の位置に基づいて補正値を求める。例えば、ヘッド駆動機構による較正位置の位置制御に殆ど誤差がない場合、透過レーザー光の位置はレーザー光画像の画像領域の中央となる。この場合、補正値はゼロでよい。ところが、ヘッド駆動機構による較正位置の位置制御に誤差がある場合、透過レーザー光の位置はレーザー光画像の画像領域の中央から偏移する。この場合、偏移量に相当する補正値を設定する。補正値は、レーザー高さセンサ6が基板K上の座標位置に移動されたときに、その座標位置を補正するために用いられる。
【0040】
なお、前述した較正は、部品実装機1を製造した直後、および定期点検などでヘッド駆動機構の再調整や一部の構成部品の交換をした直後に実施すればよく、日々の始動時に毎回実施する必要はない。
【0041】
次に、前述のように構成された実施形態の部品実装機1におけるレーザー高さ測定装置の作用について説明する。図6は、実施形態で得られたレーザー光画像の画像例であり、(1)は全領域画像、(2)は(1)の中央部分の拡大画像を示している。図6の(1)のレーザー光画像の全領域画像で、透過レーザー光は略中央の小さな輝点P1で示されている。また、中央部分の縦22ピクセル×横28ピクセルを拡大した(2)で、透過レーザー光は数ピクセルの輝点P1によって示されている。そして、輝点P1の位置は、直交する細線の交点で示される光入射軸AOの位置に一致している。したがって、この場合は補正値をゼロとする。仮に、透過レーザー光の輝点P1の位置が光入射軸AOの位置から偏移していた場合、偏移量に相当する補正値を設定する。
【0042】
一方、図7は、較正治具7を使用しない場合に得られたレーザー光画像の画像例であり、(1)は全領域画像、(2)は(1)の中央部分の拡大画像を示している。較正治具7を使用しない場合、図7の(1)のレーザー光画像の全領域画像で、透過レーザー光は不規則な形状の輝くエリアP2で示されている。また、中央部分を拡大した(2)で、輝くエリアP2は拡大画像の大部分を占めている。このため、透過レーザー光の位置を正確に判別することは困難であり、正確な補正値を求めることができない。
【0043】
図6と図7を比較すれば明らかなように、減光フィルタ71には、透過レーザー光の位置を高精度化する作用がある。一般的に、レーザー高さセンサ6のレーザー光照射部61では、内部の乱反射などの原因により、レーザー光L1は光軸を中心として周辺にも多少の成分を有している。減光フィルタ71は、レーザー光L1の周辺の成分を抑え、光軸中心の成分だけを抽出する作用がある。
【0044】
図8は、減光フィルタ71が透過レーザー光の位置を高精度化する作用を説明する別のレーザー光画像例であり、(1)は減光フィルタ71使用時、(2)は減光フィルタ71未使用時を示している。図8の(1)に示される減光フィルタ71使用時に、透過レーザー光は小さな輝くエリアP3で示されている。また、このレーザー光画像からエリアP3の光入射軸AOに対する偏移量、すなわち補正値を正確に求めることができる。一方、(2)に示される減光フィルタ71未使用時に、透過レーザー光は広く輝くエリアP4で示されている。さらに、格子状に多数の輝点が生じている。このため、透過レーザー光の位置は推定できても、光入射軸AOに対する偏移量、すなわち補正値を正確に求めることが難しい。
【0045】
実施形態のレーザー高さ測定装置を組み込んだ部品実装機1によれば、レーザー光画像上の透過レーザー光の位置が減光フィルタ71の作用によって高精度に求められ、光入射軸AO(較正位置)からの偏移量を座標位置の補正値として求めることができる。さらに、レーザー高さセンサ6がヘッド駆動機構によって基板K上の任意の座標位置に移動されたときに、レーザー光の照射位置すなわち測定位置をこの補正値を用いて補正することができる。つまり、基板K上の任意の座標位置で高さ測定を行う際に、ヘッド駆動機構により補正値を考慮してレーザー高さセンサ6を移動させ、正確に測定位置を制御できる。
【0046】
また、レーザー高さセンサ6の構成部材の寸法公差や取り付け作業のばらつきなどに起因する構造上の寸法誤差が生じていても、部品実装機1ごとに寸法誤差を補正値として求め、補正することができる。したがって、レーザー高さセンサ6の取り付け位置調整機構や位置調整作業を必要とせずに測定位置の制御精度を保つことができる。
【0047】
さらに、従来の部品実装機1の構成を変更することなく、減光フィルタ71を有する較正治具7を用いて補正値を求めることができ、正確に基板K上の任意の測定位置を制御できる。これにより、基板Kの上面の高さを複数位置で正確に測定でき、基板Kに反りなどが生じていても円滑な部品装着動作が行える。
【0048】
なお、本発明のレーザー高さ測定装置は、部品実装機1以外の基板生産機や、他の業種の設備機械にも組み込むことができる。その他、本発明は様々な応用や変形が可能である。
【符号の説明】
【0049】
1:部品実装機
2:基板搬送装置 21、22:第1および第2ガイドレール
3:部品供給装置 31:カセット式フィーダ
4:部品移載装置 41、42:Y軸レール移動台 43:移動台
44:実装ヘッド 45:吸着ノズル 46:基板カメラ
5:部品カメラ(画像カメラ) 51:光入射部 53:連結部 54:上端部材
6:レーザー高さセンサ 61:レーザー光照射部 62:反射光検出部
7:較正治具 71:減光フィルタ 72:母板 73:押え板 74:押えねじ
9:基台
L1:レーザー光 L2、L3:反射レーザー光 AO:光入射軸
K、Kx、Ky:基板 H、H3、h1〜h3:高さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に向かってレーザー光を照射するレーザー光照射部、および前記対象物で反射されたレーザー光を検出する反射光検出部を有して前記対象物の高さを測定するレーザー高さセンサと、前記レーザー高さセンサを平面内で移動させるセンサ移動機構と、を備えるレーザー高さ測定装置であって、
前記センサ移動機構上の平面座標系で表した所定の較正位置に配置された画像カメラと、
前記較正位置に位置決めされた前記レーザー高さセンサのレーザー光照射部と前記画像カメラの光入射部との間に配置され、前記レーザー光照射部から前記光入射部に向かって照射されたレーザー光を減衰しつつ透過する減光フィルタと、
前記レーザー高さセンサを前記較正位置に位置決めし、前記レーザー光照射部から前記光入射部に向かって前記レーザー光を照射し、前記減光フィルタを透過したレーザー光を前記画像カメラで撮像してレーザー光画像を得るレーザー光撮像手段と、
前記レーザー高さセンサが前記センサ移動機構によって前記平面座標系の座標位置に移動されたときに前記レーザー光照射部から前記対象物に向かって照射されるレーザー光の前記平面座標系での座標位置の補正値を、前記レーザー光画像上での前記レーザー光の位置に基づいて求める補正値取得手段と、
を備えるレーザー高さ測定装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記レーザー高さ測定装置は部品が実装される基板の生産を行う基板生産機に組み込まれており、前記対象物は前記基板生産機の作業位置に水平姿勢でクランプされた基板であり、
前記減光フィルタは、前記作業位置にクランプされた基板の上面と同じ高さに水平姿勢で配置されるレーザー高さ測定装置。
【請求項3】
基板を部品実装位置に搬入し位置決めし搬出する基板搬送装置と、部品を供給する部品供給装置と、前記部品供給装置から前記部品を採取して前記位置決めされた基板に装着する実装ヘッドおよび前記実装ヘッドを水平面内の直交2方向に駆動するヘッド駆動機構を有する部品移載装置と、前記実装ヘッドが前記部品供給装置から前記基板上に移動する途中で採取されている部品を撮像する部品カメラと、を備え、
前記実装ヘッドに、請求項1または2に記載のレーザー高さ測定装置の前記レーザー高さセンサが取り付けられ、
前記部品移載装置の前記ヘッド駆動機構は、前記レーザー高さ測定装置の前記センサ移動機構に兼用され、
前記部品カメラは、前記レーザー高さ測定装置の前記画像カメラに兼用され、
前記レーザー高さ測定装置の前記減光フィルタは、前記部品カメラの光入射部上に、前記部品実装位置に位置決めされた前記基板の上面と同じ高さに水平姿勢で配置される部品実装機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−16570(P2013−16570A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147017(P2011−147017)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【出願人】(000237271)富士機械製造株式会社 (775)
【Fターム(参考)】