説明

レーザ反応表面処理方法およびレーザ反応成形加工方法

【課題】鋳鉄をエキシマレーザによりアブレーション加工して表層部の黒鉛を分解除去し、その部分に陥没部を無数に形成させ摺動面を形成する方法は、装置価額が高価なエキシマレーザを使用しなければならず、汎用性が乏しい。また、黒鉛ブロック、窒化ケイ素部品などの難切削材の加工は切削工具による切削・除去加工が困難であり、その加工速度が非常に制限される。
【解決手段】本発明は、球状黒鉛鋳鉄や可鍛鋳鉄などの表面をより波長の長いレーザで加熱しつつ、反応ガスをノズルで供給し、表層部の黒鉛を炭素と酸素又は二酸化炭素(CO2)との反応させ、ガス化して除去し、陥没部を多数形成させる。この処理表面が摺動部品の摺動特性を改善できる。またカーボンブラックや窒化ケイ素などの難切削材料の切削・成形加工を反応ガスを用いて溝掘り加工、彫刻加工などの除去・成形加工をするレーザ反応加工を解決手段として提案している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダーライナーやピストンリングなどの摺動部品に適用されている鋳鉄部品摺動性、耐焼付き性を改善する技術に関係する。また、カーボン電極のようなカーボンブラック部品、炭化ケイ素および窒化ケイ素部品などの難切削材の成形加工技術に関係する。
【背景技術】
【0002】
現在、地球の温暖化などでの問題で、炭酸ガスの排出規制が各国でさけばれており、輸送機器のエンジンの効率向上や車体重の低減が検討されている。本提案は自動車や舶用エンジンなどのシリンダーライナーやブロックの摺動特性を改善する技術である。ディーゼルエンジンのシリンダーブロックおよびシリンダーライナーは片状黒鉛、球状黒鉛あるいは可鍛鋳鉄が使用されており、このシリンダーブロックまたはシリンダーライナーとピストンリングとの摩擦エネルギー損失はエンジンの摩擦エネルギー損出の約70%と非常に大きい。これまで摺動特性に優れた片状黒鉛鋳鉄材が適用されていたが、片状黒鉛鋳鉄材は強度が低い問題あり、そのため高負荷が係るディーゼルエンジンでは強度を補うため肉厚化が一般的に行われ使用されてきた。今日の環境対策課題から、小型で高出力のディーゼルエンジンの開発が要望され、省資源、省エネルギー化を図る必要がある。
これを改善する1方策として、エキシマレーザにより特殊表面処理し、鋳鉄製シリンダーライナーの片状黒鉛鋳鉄の表面をエキシマレーザで図1に示すように黒鉛のみアブレーション加工させて、そこに深さが数ミクロンメータのマイクロピットを多数形成させた結果、このマイクロピットにエンジン油が溜まり、摩擦抵抗が低減し、耐摩耗性も改善されたと報告されている。
また、黒鉛を用いた工業製品も多く、放電加工用電極、モーターの接触端子、摺動ブロックなどの製品、および摺動部品に用いられている窒化ケイ素や炭化ケイ素は機械切削が困難であり、炭素粉塵、炭化ケイ素および窒化ケイ素粉じんの処理の問題、加工速度が遅いこと、切削工具の摩耗が激しいことなど、現在も大きな問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
黒鉛(グラファイト)をその地(マトリックス)の中に持つ片状黒鉛鋳鉄、球状黒鉛鋳鉄、可鍛鋳鉄などが最近 光子エレルギーの高いエキシマレーザにより、アブレーション加工により、表層部のみこれらの黒鉛を除去し、陥没部を無数に形成させ、この表面が摺動部品の摺動面として働くとき、マシーン油などがこの陥没部に滞留することにより、摺動特性を改善し、機械摩擦抵抗エネルギーを低下させる方法が提案されている。この方法では、ハロゲンガスのような取り扱いにくい高価なガスを用たり、装置価額が高価なエキシマを使用しなければならず、汎用性が乏しい。また、加工対象物が黒鉛ブロックや黒鉛―銅ブロックまたは窒化ケイ素の場合は機械切削が困難であり、炭素粉塵や窒化ケイ素粉じんの処理の問題、加工速度が遅いこと、切削工具の摩耗が激しいこと、3次元部材をマシーニングセンターやエンドミル、ボール盤などによる切削加工、放電加工などで加工するのも困難であるなど、現在も大きな課題が残っている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、黒鉛(グラファイト)をその地(マトリックス)の中に持つ片状黒鉛鋳鉄、球状黒鉛鋳鉄、可鍛鋳鉄などのレーザ反応表面処理により、表層部のみこれらの黒鉛をC(炭素)と酸素又は二酸化炭素(CO2)との反応により除去し、陥没部を無数に形成する。このレーザ反応処理表面が摺動部品の摺動面として働くとき、マシーン油などがこの陥没部に滞留することにより、摺動特性を改善し、機械摩擦抵抗エネルギーを低下させることを基本特性とする。レーザ反応表面処理に用いるレーザ装置の種類はCO2レーザ、YAGレーザ、半導体レーザ、半導体レーザ誘起ファイバーレーザおよびディスクレーザなどを用いることができる。本レーザ反応表面処理では図2に示すように、エキシマシマレーザより波長の長いレーザ1を集光光学系2を通して、被加工物6の表面に焦点を外した数10μm以上のビームスポット径で表面に照射し、球状黒鉛鋳鉄などの表面に存在する黒鉛7にガスノズル3(または5)から酸素ガスなどの反応ガス4を供給しつつ加熱し、グラファイト(炭素)と酸素を反応させつつ加工すると、鋳鉄の中のグラファイトが反応除去され、図4に示すように多数のマイクロピット9が生じる方法を提案するものである。高価なエキシマレーザ装置でなく、より安価なレーザを用いて黒鉛を除去できると言う特徴がある。
【0005】
また、被加工物がカーボンブロックおよび黒鉛―銅ブロック部品の場合に、この表層部
に同時に酸素(O2ガス)、酸素を20%以上含むガス又は二酸化炭素(CO2)を図2に示すように吹き付けて、黒鉛と反応させることにより、炭素を二酸化炭素ガスまたは一酸化炭素ガスとして反応除去して、高速に成形加工する手法により、黒鉛を主体とするブロックや素材の切断、穴あけ、溝掘り加工、彫刻加工などの除去加工が容易となる。さらに、摺動部品などに多く適用されている窒化ケイ素部品や炭化ケイ素部品についても、図3に示すように、その表面に反応ガスである酸素、CO2ガス、COガスおよび又はこれらを2mass%以上含む混合ガスをガスノズルを用いて同軸又は軸外の方向から吹き付ける方法またはこれらガス雰囲気の中で照射加熱し、被加工物である炭化ケイ素および又は窒化ケイ素をこれら反応ガスと高温で反応させて、NOXガスまたはCNXとして分解除去する方法、およびこのような方法で切断、穴あけ、溝掘り加工、彫刻加工を含む除去加工および又は成形加工を行うことができる。
【0006】
請求項1の発明で示す加工法はレーザ波長が350nm以上から10.7μm以下のCO2レーザ、YAGレーザ、半導体レーザ、ファイバーレーザ、またはディスクレーザレーザを加工光学系で伝送・集光することによりレーザビームのビームスポット径を数10μm〜数mmに制御したレーザビームを用いて、黒鉛を2mass%以上含む鋳鉄の表面を、その融点以下の温度に加熱しつつ、この加熱部に反応性ガスである酸素、酸素を2mass%以上含む混合ガスおよびCO2ガスをガスノズルを用いて同軸又は軸外の方向から吹き付ける方法あるいはこれらガス雰囲気の中で照射加熱し、被加工物中の黒鉛をこれら反応ガスと反応させて、CO2ガスまたはCOガスとして分解除去する方法、およびこのような方法で被加工物表面に陥没部を無数に形成させることを特徴とするレーザ反応表面処理方法の提案である。
【0007】
請求項2のレーザ加工法は、レーザの波長が350nm以上から10.7μm以下の範囲のレーザを用いて、加工光学系でビーム伝送および集光することによりレーザビームのビームスポット径を数10μm〜数mmに制御したレーザビームで、黒鉛をマトリックスとするカーボンブロック、銅―黒鉛焼結ブロックを含むカーボン部品、および又は炭素工具又は炭素電極を含む部品の表層部を、これら被加工物の融点以下に加熱しつつ、この加熱部に同時に酸素(O2ガス)、酸素を含む混合ガス、および又は二酸化炭素(CO2)をガスノズルで吹き付けて、又はこれらガスの雰囲気下で、被加工物中の黒鉛とこれらガスを化学反応させることにより、黒鉛(炭素)を分解除去して成形することを特徴とする切断、穴あけ、溝掘り加工、彫刻加工を含むレーザ反応成形加工方法の提案である。
【0008】
請求項3では、レーザの波長が350nm以上から10.7μm以下の範囲のレーザを用いて、加工光学系でビーム伝送および集光することによりレーザビームのビームスポット径を数10μm〜数mmに制御したレーザビームで、被加工物である窒化ケイ素、および窒化ケイ素を2mass%以上含むセラミックスの表面をその融点以下の温度に加熱しつつ、その表面に反応ガスである酸素、CO2ガス、COガス、および又はこれらを2mass%以上含む混合ガスをガスノズルを用いて同軸又は軸外の方向から吹き付ける方法あるいはこれらガス雰囲気の中で照射加熱し、被加工物中の窒化ケイ素をこれら反応ガスと反応させて、NOXガスまたはCNXとして分解除去する方法、およびこのような方法で切断、穴あけ、溝掘り加工、彫刻加工を含む除去加工および又は造形加工を行うことを特徴とするレーザ反応加工方法の提案である。
【0009】
請求項4に示す加工法は、前記請求項1、2および3において用いるレーザの種類はCO2レーザ、YAGレーザ、半導体レーザ、ファイバーレーザ、またはディスクレーザで、連続発振モード又はパルス発振モードのレーザビームであることを特徴とするもので、レーザの加熱温度は被加工物と反応ガスが反応する温度以上にレーザ加熱するように、レーザビームをデフォーカシング(焦点外し)する加工光学系用いて行う方法、又は光ファイバーで伝送したレーザビームをレンズやミラーで集光して行うを特徴とする方法および又はこのレーザビームをビームスキャナーを含む加工光学系を用いて高速に走査させ反応加工することを特徴とするレーザ反応表面処理方法又はレーザ反応加工方法の実施システムについての提案である。
【0010】
請求項5に示す反応ガスの送給の仕方は、前記請求項1、2および3において、反応ガスを有効にレーザビーム照射部に供給するために、レーザ加工ヘッドには図2および3に示すようにレーザビームと同軸上に円筒状のガスノズルを外周部に配置する方法又は、加工ヘッドとは関係なく、別の位置に配置されたガスノズルを位置制御して、レーザビーム照射部(スポット部)に毎分数リットルから数10リットルのガスを0.05〜10MPaの圧力で供給して反応加工することを特徴とするレーザ反応表面処理方法又はレーザ反応加工方法を提案している。
【0011】
請求項6に示す 前記請求項1、2、3および4において、用いる反応ガスの種類は主として炭素と容易に反応する純粋な酸素ガス、酸素と不活性ガスとの混合ガス、酸素との窒素との混合ガス、CO2ガス、COガス、ハロゲンガスおよび又は酸素と二酸化炭素ガスとの混合ガスを用い、その送給方法はレーザ加工ヘッドと同軸に配置したガスノズルから供給する方法の他に、加工ヘッドとは関係なく、別の位置に配置されたガスノズルを位置制御して供給してレーザビーム照射部(スポット部)に毎分数リットルから数10リットルのガスを供給して反応加工するレーザ反応表面処理方法又はレーザ反応加工方法
【0012】
請求項7に示す方法は、前記請求項1、4、5および6に示すレーザ反応加工方法を用いて、鋳鉄製エンジンシリンダーライナーおよび又はピストンリングを含む摺動部品の表面を処理し、表面の黒鉛を分解除去し、複数の陥没部を形成させ、それをエンジン油の油溜りとすることにより、その摺動性を改善することを特徴とする方法の提案である。。
【0013】
請求項8に示す方法は 前記請求項1、3、4、5および6に示すレーザ反応加工方法を用いて、窒化ケイ素製の摺動部品の表面に溝加工をしたり、彫刻によりパターン化することを特徴とするレーザ反応加工方法を提案している。
【0014】
請求項9に示す加工方法は、前記請求項1、2,3、4、5および6に示すレーザ反応加工方法を用いて、窒化ケイ素部品、炭化ケイ素部品および又はカーボンブラックの仮焼結体、または焼結体の2次元的または3次元的分解除去による成形加工方法について提案している。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、エンジンシリンダーライナーやピストンリングなどの内面に、レーザ反応表面処理方法を適用すれば、その摩擦エネルギー損失を低減でき、低燃費のエンジンの実現に役立つ。また、難切削材料の成形加工にレーザ反応成形加工方法を適用すれば、加工時間の短縮し、難切削材の加工を高精度で容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】従来のエキシマレーザによる鋳鉄表面の黒鉛除去加工例である。
【図2】レーザ反応表面処理方法の概念図である。
【図3】レーザ反応成形加工方法の概念図である。
【図4】レーザ反応表面処理された球状黒鉛鋳鉄の表面観察例である。
【図5】第1実施形態であるエンジンシリンダーの内面処理の実施例である。
【図6】第2実施形態を説明する説明図である。
【図7】第3実施形態であるレーザホーニング加工の実施例である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施の形態を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0018】
黒鉛(グラファイト)を含む鋳鉄の摺動性、耐焼付き性を改善するため、図2-7および図4-9に示す鋳鉄中にある片状、球状、塊状の黒鉛(グラファイト)の内、表面に現れている黒鉛に図2-3および図3-3に示すガスノズルなどを用いて、酸素又は酸素を2Mass%以上含むCO2ガス、窒素ガス、不活性ガスおよび又はこれらの混合ガスである図2-4および図3-4に示す反応ガスを流しつつ、図2-1および図3-1に示す高出力レーザ(半導体レーザ、ファイバーレーザ、ディスクレーザ、CO2レーザなど)で図-2および図3-2に示す加工光学系でビームスポット径を調整しつつ照射・加熱すると、表面の黒鉛が酸素と次のような化学反応を起こし、COガスまたはCO2ガスになり、図4-11に示すようなマイクロピット(空洞)ができる。
2C+O2=2CO・・・・(1)
C+O2=CO2・・・・(2)
このマイクロピットが図5に示すように、このような方法でエンジンシリンダーの鋳鉄製シリンダーライナーやピストンリングの内面、多数形成すると、エンジン運転時にエンジン油がピストンとの間に油溜まりをつくり、これらの摩擦面の摩擦エネルギー損失を10数%低下させる効果が期待できる。この摩擦エネルギー損失の低減は、結果として摺動性を改善させ、エンジンの燃費を向上させる。 なお、この技術を適用するにはこのシリンダーライナーの内面を図5のような加工光学系を用いて、この加工光学系でシリンダーライナーを回転しつつ、表面のみレーザ照射して表面層の黒鉛のみ除去することが期待できる。
【実施例2】
【0019】
図6に示すような放電加工に用いる炭素電極を高精度で機械切削で加工するには、非常に時間を要するとともに、切削工具の摩耗が激しい。これを図2に示すようにノズルを用いて反応ガスを高めのガス圧で供給し、数100μmのビームスポット径でカーボンブラック円筒体からレーザ反応成形方法で切削・成形すれば、より短時間で、高精度で加工ができる。また、炭化ケイ素部品や窒化ケイ素部品についても、同様な方法が適用でき、複雑な形状の部品でも、高精度で、短時間に成形加工ができる。
【実施例3】
【0020】
炭化ケイ素部品または窒化ケイ素部品などのセラミックス部品に、レーザ反応成形加工方法を適用して、図7に示すようにホーニング加工、溝加工、および又は彫刻加工などを行うことができる。ホーニング加工された部品は高硬度であり、耐摩耗性が高いばかりでなく、この加工溝に機械油が入れば、摺動性の改善もできる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明は、自動車、高速列車、船舶、などのディーゼルエンジンのシリンダーライナーやピストンリングなどの摺動部品の摺動性を向上させることができ産業機械、航空宇宙機器、情報家電などの分野にも適用でき、それらの加工速度を著しく向上できる。
【符号の説明】
【0022】
1 レーザ
2 集光レンズ1
3 同軸型ガスノズル
4 反応ガス
5 同軸外ガスノズル
6 被加工物(黒鉛鋳鉄の例)
7 被加工物(黒鉛鋳鉄)中の黒鉛
8 被加工物(カーボンブラック部材または窒化ケイ素の場合)
9 鋳鉄中の片状黒鉛
10 表面の高低度測定結果
11 生成したマイクロピット
12 計測した走査線
13 シリンダー内面
14 レーザ照射部
15 プリズムミラー
16 光学系回転装置
17 被加工物のホーニング加工部分(溝加工)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザの波長が350nm以上から10.7μm以下の範囲のレーザを用いて、加工光学系でビーム伝送および集光することによりレーザビームのビームスポット径を数10μm〜数mmに制御したレーザビームで、黒鉛を2mass%以上含む鋳鉄の表面を、その融点以下の温度に加熱しつつ、この加熱部に反応性ガスである酸素、酸素を1mass%以上含む混合ガスおよびCO2ガスをガスノズルを用いて同軸又は軸外の方向から吹き付ける方法あるいはこれらガス雰囲気の中で照射加熱し、被加工物中の黒鉛をこれら反応ガスと反応させて、CO2ガスまたはCOガスとして分解除去する方法、およびこのような方法で被加工物表面に陥没部を無数に形成させるレーザ反応表面処理方法
【請求項2】
レーザの波長が350nm以上から10.7μm以下の範囲のレーザを用いて、加工光学系でビーム伝送および集光することによりレーザビームのビームスポット径を数10μm〜数mmに制御したレーザビームで、黒鉛をマトリックスとするカーボンブロック、銅―黒鉛焼結ブロックを含むカーボン部品、および又は炭素工具又は炭素電極を含む部品の表層部を、これら被加工物の融点以下に加熱しつつ、この加熱部に同時に酸素(O2ガス)、酸素を含む混合ガス、および又は二酸化炭素(CO2)をガスノズルで吹き付けて、又はこれらガスの雰囲気下で、被加工物中の黒鉛とこれらガスを化学反応させることにより、黒鉛(炭素)を分解除去するレーザ反応加工方法、および被加工物をこのような方法で切断、穴あけ、溝掘り加工、彫刻加工を含む除去加工および又は造形加工を行うレーザ反応加工方法
【請求項3】
レーザの波長が350nm以上から10.7μm以下の範囲のレーザを用いて、加工光学系でビーム伝送および集光することによりレーザビームのビームスポット径を数10μm〜数mmに制御したレーザビームで、被加工物である窒化ケイ素、および窒化ケイ素を2mass%以上含むセラミックスの表面をその融点以下の温度に加熱しつつ、その表面に反応ガスである酸素、CO2ガス、COガスおよび又はこれらを2mass%以上含む混合ガスをガスノズルを用いて同軸又は軸外の方向から吹き付ける方法あるいはこれらガス雰囲気の中で照射加熱し、被加工物中の窒化ケイ素をこれら反応ガスと反応させて、NOXガスまたはCNXとして分解除去する方法、およびこのような方法で切断、穴あけ、溝掘り加工、彫刻加工を含む除去加工および又は造形加工を行うレーザ反応加工方法。
【請求項4】
前記請求項1、2および3において用いるレーザの種類はCO2レーザ、YAGレーザ、半導体レーザ、ファイバーレーザ、またはディスクレーザで、連続発振モード又はパルス発振モードのレーザビームであることを特徴とするもので、レーザの加熱温度は被加工物と反応ガスが反応する温度以上にレーザ加熱するように、レーザビームをデフォーカシング(焦点外し)する加工光学系用いて行う方法、又は光ファイバーで伝送したレーザビームをレンズやミラーで集光して行うを特徴とする方法および又はこのレーザビームをビームスキャナーを含む加工光学系を用いて高速に走査させ反応加工するレーザ反応表面処理方法又はレーザ反応加工方法
【請求項5】
前記請求項1、2および3において、反応ガスを有効にレーザビーム照射部に供給するために、レーザ加工ヘッドにはレーザビームと同軸上に円筒状のガスノズルを外周部に配置する方法、又は加工ヘッドとは関係なく、別の位置に配置されたガスノズルを位置制御して軸外に配置する方法で、レーザビーム照射部(スポット部)に毎分数リットルから数10リットルのガスを毎分数リットルから数10リットルのガスを0.05〜10MPaの圧力で供給して反応加工するレーザ反応表面処理方法又はレーザ反応加工方法
【請求項6】
前記請求項1、2、3および4において、用いる反応ガスの種類は主として炭素と容易に反応する純粋な酸素ガス、酸素と不活性ガスとの混合ガス、酸素との窒素との混合ガス、CO2ガス、COガス、ハロゲンガスおよび又は酸素と二酸化炭素ガスとの混合ガスを用い、その送給方法はレーザ加工ヘッドと同軸に配置したガスノズルから供給する方法の他に、加工ヘッドとは関係なく、別の位置に配置されたガスノズルを位置制御し、レーザビーム照射部(スポット部)に毎分数リットルから数10リットルのガスを供給して反応加工するレーザ反応表面処理方法又はレーザ反応加工方法
【請求項7】
前記請求項1、4、5および6に示すレーザ反応加工方法を用いて、鋳鉄製エンジンシリンダーライナーおよび又はピストンリングを含む摺動部品の表面を処理し、表面の黒鉛を分解除去し、複数の陥没部を形成させ、それをエンジン油の油溜りとすることにより、その摺動性を改善する方法。
【請求項8】
前記請求項1、3、4、5および6に示すレーザ反応加工方法を用いて、窒化ケイ素製の摺動部品の表面に溝加工をしたり、彫刻によりパターン化した溝加工を行う方法。
【請求項9】
前記請求項1、2,3、4、5および6に示すレーザ反応加工方法を用いて、窒化ケイ素部品および又はカーボンブラックの仮焼結体、または焼結体の2次元的または3次元的分解除去による成形加工。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−25295(P2011−25295A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−174978(P2009−174978)
【出願日】平成21年7月28日(2009.7.28)
【出願人】(594044912)株式会社齋藤工業 (7)
【出願人】(501417549)
【Fターム(参考)】