説明

レーザ干渉測定装置の横座標校正治具および横座標校正方法

【課題】収束光学系を有するレーザ干渉測定装置における測定面上の位置の校正が簡便かつ高精度に行えるレーザ干渉測定装置の横座標校正治具および横座標校正方法を提供すること。
【解決手段】横座標校正治具10は、マーカを有する画像を投影する画像投影手段19と、画像投影手段19を第1回動軸線A1まわりに回動自在に支持しかつ第1回動軸線が所定の回動中心Cを通る第1支持機構11と、第1支持機構を第2回動軸線A2まわりに回動自在に支持しかつ第2回動軸線が回動中心Cで第1回動軸線A1と交叉する第2支持機構12と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ干渉測定装置の横座標校正治具および横座標校正方法に関し、特に収束光学系を有するレーザ干渉測定装置における測定面上の位置の校正に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被測定物の表面性状あるいは表面形状を高精度に測定するために、レーザ干渉計あるいはレーザ干渉測定装置と呼ばれる装置が広く利用されている。
レーザ干渉測定装置で得られた測定値は、被測定物の表面の高さの測定値として取得され、被測定物の表面の形状の評価あるいは被測定物の加工工程へのフィードバックデータなどに利用されている。
このような用途においては、レーザ干渉測定装置から得られた測定データが、被測定物の表面上のどの位置に対応するのか、つまり横座標(レーザ光軸に直交する二次元位置)を正確に知る必要がある。すなわち、測定データに異常値があった場合、この異常値を生じた地点を正確に識別できなければ、補正等を正しく行うことができない。
【0003】
従来のレーザ干渉測定装置においては、干渉縞画像をCCDカメラのような二次元受光装置によって取得することが一般的である。このため、前述したレーザ干渉測定装置における横座標の評価は、このCCDカメラ等の受光装置に二次元配列された各受光素子が、被測定物の表面上のどの位置に対応するかを評価することにより行われる。
これら被測定物の表面位置と撮像装置との横座票の対応関係は、レーザ干渉測定装置に含まれる光学系の特性に起因する画像ひずみや、縦横の倍率の差異の影響によって、理想的な対応関係からずれた状態となる。
【0004】
レーザ干渉測定装置が平面形状を測定する用途であれば、既知である二次元アレイ状の形状を有する基準器等を測定することにより、横座標の評価や、その評価値を用いた補正などを行うことができる。
一方、収束光学系を用いて被測定物の球面状の表面の形状を測定する場合には、画像ひずみや縦横の倍率の差異に加えて、球面形状を二次元撮像装置の平面画像に展開する際にも画像ひずみが加わることになる。例えば、球面の赤道付近の画像は平面に投影しても変化が小さいが、画像の位置が赤道から離れるほど、平面に投影すると大きく異なる形状となる。このような球面形状の平面展開は非線形の変換であるため、より慎重な横座標の評価が要求される。
【0005】
このような収束光学系を用いる場合を考慮した干渉測定装置の横座標補正方法として、特許文献1あるいは特許文献2に示される方法が提案されている。
特許文献1には、被検物とあらかじめ輪郭形状が校正されている遮光物とを一体化して測定し、遮光物の測定形状と校正形状を比較することによって横座標を評価する方法が記載されている。同文献においては、球面をなす被検物に対応する評価方法の記述もある。
【0006】
特許文献2には、平面上に所定のパターンを有する反射光学素子を被検物が置かれる位置に設置し、そのパターンの測定値をあらかじめ校正された値と比較することにより横座標を校正することが記載されている。同文献において、反射光学素子の反射部は回折格子になっており、その光の反射角度は球面をなす被検物を測定する場合と同様になるよう構成されている。このような方法では、非線形性を有する横座標誤差の評価が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−327892号公報
【特許文献2】特開2002−206915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1の場合の輪郭形状は円形に限定されている。このような方法では、縦横の倍率の差異など次数の低い横座標誤差の評価には効果があるが、高次項を含む場合や非線形な横座標誤差の評価についての効果は限定的である。
一方、特許文献2によれば、非線形性を有する横座標誤差の評価が可能である。
しかし、特許文献2のような回折格子を作成することは、現状の技術水準においても大変な困難を伴うことが予想される。
【0009】
例えば、反射光学素子上の1点と素子の中心との距離をρ、その1点に到達する収束光束中の光線が干渉計の光学軸となす角をθとおくと、素子の中心から距離がρになる同心円状の位置で必要な反射角はθとなる。また、距離ρと角θとは、ρがTANθに比例する関係がある。つまり、反射光学素子は、中心からの距離ρにしたがってTANθに比例して滑らかに反射角が変化する光学特性が求められる。このような素子を厳密に作成することは容易ではない。
さらに、収束光学系中にこのような平面状の測定物を設置する場合、画像視野全面にわたって干渉計のフォーカスを合わせることが難しく、横座標を評価するための測定を高精度に実施することが難しい問題も考えられる。
【0010】
本発明の主な目的は、収束光学系を有するレーザ干渉測定装置における測定面上の位置の校正が簡便かつ高精度に行えるレーザ干渉測定装置の横座標校正治具および横座標校正方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のレーザ干渉測定装置の横座標校正治具は、マーカを有する画像を投影する画像投影手段と、前記画像投影手段を第1回動軸線まわりに回動自在に支持しかつ前記第1回動軸線が所定の回動中心を通る第1支持機構と、前記第1支持機構を第2回動軸線まわりに回動自在に支持しかつ前記第2回動軸線が前記回動中心で前記第1回動軸線と交叉する第2支持機構と、を有することを特徴とする。
【0012】
このような本発明の横座標校正治具では、画像投影手段は第1支持機構および第2支持機構に支持され、第1回動軸線および第2回動軸線まわりに回動されることで任意の方向へ画像を投影することができる。
レーザ干渉測定装置の校正にあたっては、校正するレーザ干渉測定装置の収束光学系の焦点位置と横座標校正治具の回動中心とが一致するように配置する。この状態で、画像投影手段から画像を投影し、レーザ干渉測定装置の受光装置で受像する。投影される画像はその画像上の一点にマーカを有する。このマーカの座標(マーカの実測横座標、受光装置での横座標に相当)と、横座標校正治具の第1支持機構および第2支持機構の現在角度位置から算出される座標(マーカの基準横座標、被測定物での横座標に相当)との対応を調べることにより、レーザ干渉測定装置の収束光学系の歪み等を検出することができる。
このような横座標の対応を、受光装置上の一部ないし全ての地点について調べ、補正値を算出することで、レーザ干渉測定装置の横座標校正を簡便かつ高精度に行うことができる。
【0013】
本発明のレーザ干渉測定装置の横座標校正治具において、前記画像投影手段は、前記回動中心を曲率中心とする球面反射体であり、前記球面反射体の表面には前記マーカを形成する非反射領域が形成されている構成が採用できる。
このような本発明の横座標校正治具では、球面反射体をレーザ干渉測定装置の収束光学系の焦点位置に配置し、レーザ干渉測定装置のレーザ光源から収束光束を照射することで、球面反射体から反射光が反射され、レーザ干渉測定装置の受光装置に画像が投影される。この際、投影される画像には非反射領域に起因する暗部がマーカとして形成される。従って、前述した受光装置上のマーカと第1支持機構および第2支持機構の角度位置との関係に基づく校正を行うことができる。
【0014】
本発明のレーザ干渉測定装置の横座標校正治具において、前記画像投影手段は、前記回動中心が反射面上の一点に設定された平面反射体と、前記平面反射体に前記マーカを形成するレーザ光を照射するレーザ光源とを有する構成が採用できる。
このような本発明の横座標校正治具では、平面反射体をレーザ干渉測定装置の収束光学系の焦点位置に配置し、レーザ干渉測定装置の外部のレーザ光源からレーザ光を照射することで、平面反射体で反射されたレーザ光がレーザ干渉測定装置の受光装置に投影される。この際、受光装置で取得される画像にはレーザ光による光点がマーカとして形成される。従って、前述した受光装置上のマーカと第1支持機構および第2支持機構の角度位置との関係に基づく校正を行うことができる。
【0015】
なお、本発明の横座標校正治具において、画像投影手段は、前述した球面反射体あるいは平面反射体を用いた構成のほか、レーザ光源などの投光装置を収束光学系の焦点位置に配置し、受光装置にマーカとなる光点を生成する構成でもよい。
また、第1支持機構および第2支持機構としては、それぞれモータとエンコーダとを備えた高精度なステッピングモータ等を用いることができる。
【0016】
本発明のレーザ干渉測定装置の横座標校正方法は、前述した本発明のレーザ干渉測定装置の横座標校正治具を用い、前記レーザ干渉測定装置の収束光学系の焦点位置に前記横座標校正治具を設置し、前記回動中心と前記焦点位置とを合わせるとともに、前記レーザ干渉測定装置の受光装置に前記画像投影手段による画像を投影させておき、前記画像投影手段を前記第1回動軸線および前記第2回動軸線まわりに回動させて前記マーカを前記画像上の任意の位置へ移動させ、前記画像投影手段の前記第1回動軸線および前記第2回動軸線まわりの角度位置から前記マーカの基準横座標を算出し、前記受光装置で取得された画像における前記マーカの実測横座標を検出し、前記マーカの実測横座標と前記基準横座標とを比較して前記レーザ干渉測定装置の横座標を校正することを特徴とする。
【0017】
このような本発明の横座標校正方法では、マーカの座標(マーカの実測横座標、受光装置での横座標に相当)と、横座標校正治具の第1支持機構および第2支持機構の現在角度位置から算出される座標(マーカの基準横座標、被測定物での横座標に相当)との対応を調べることにより、レーザ干渉測定装置の収束光学系の歪み等を検出することができる。
このような横座標の対応を、受光装置上の一部ないし全ての地点について調べ、補正値を算出することで、レーザ干渉測定装置の横座標校正を簡便かつ高精度に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の校正対象のレーザ干渉測定装置を示す模式図。
【図2】本発明の第1実施形態の要部を示す模式図。
【図3】前記第1実施形態の機器構成を示す模式図。
【図4】前記第1実施形態における投影画像を示す模式図。
【図5】前記第1実施形態における投影画像を示す模式図。
【図6】前記第1実施形態の校正手順を示すフロー図。
【図7】本発明の第2実施形態の要部を示す模式図。
【図8】前記第2実施形態の機器構成を示す模式図。
【図9】前記第2実施形態における投影画像を示す模式図。
【図10】前記第2実施形態における投影画像を示す模式図。
【図11】前記第2実施形態の校正手順を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
〔校正対象〕
先ず、本発明の校正対象となる収束光学系を有するレーザ干渉測定装置について、図1に基づいて説明する。
図1において、レーザ干渉測定装置1は、フィゾー型レーザ干渉計であり、基本構成としてレーザ光源2、ハーフミラー3、コリメータレンズ4、参照基準器5、観察光学系6A、受光装置6および演算処理装置7を備えている。
さらに、レーザ干渉測定装置1は、被測定物9の測定球面9Aを測定するために、収束光学系8を備えている。
収束光学系8は、参照基準器5をレンズで形成して透過した測定光を測定球面9Aの曲率中心である焦点位置8Aに収束させるものであり、参照基準器5の参照面も焦点位置8Aを中心とする球面状の参照球面5Aとされている。
【0020】
このようなレーザ干渉測定装置1においては、レーザ光源2から射出されたレーザ光は、ハーフミラー3で反射された後、コリメータレンズ4によって平行光束に変換される。コリメータレンズ4からの平行光束は、参照基準器5に入射されて収束光に変換される。
参照基準器5において、入射された収束光の一部は参照球面5Aによって反射され、参照光としてコリメータレンズ4、ハーフミラー3へと戻される。一方、参照球面5Aを透過した残りの収束光は、焦点位置8Aにおいて焦点を結び、それ以降は球面状に発散する発散光となる。発散光は、被測定物9の測定球面9Aによって反射され、測定光となって参照基準器5、コリメータレンズ4、ハーフミラー3へと戻される。
【0021】
従って、ハーフミラー3では、参照球面5Aで反射されて戻ってきた参照光と、測定球面9Aで反射されて戻ってきた測定光とが混合されて干渉し、観察光学系6Aを通して受光装置6に投影され、受光装置6により参照光と測定光との干渉縞を含む画像が取得される。
ここで、参照基準器5をその光軸方向に微少量移動させると、参照球面5Aと測定球面9Aとの間の距離が変化し、位相状態が異なる複数の画像を取得することができる。演算処理装置7では、受光装置6で得られた複数の干渉縞画像を用いて位相接続演算を行うことにより、測定球面9Aの表面形状を算出することができる。
【0022】
以上に述べたレーザ光源2、ハーフミラー3、コリメータレンズ4、参照基準器5、観察光学系6A、受光装置6、演算処理装置7および収束光学系8(被測定物9を除く)により、本発明の校正対象としてのレーザ干渉測定装置1が構成されている。
【0023】
〔第1実施形態〕
図2から図6には、本発明の第1実施形態が示されている。
本実施形態は、前述した図1のレーザ干渉測定装置1に、本発明に基づく横座標校正治具10(図2参照)を適用し、本発明の横座標校正方法に基づく手順によりレーザ干渉測定装置1の横座標を校正するものである。
【0024】
図2において、横座標校正治具10は、第1支持機構11、第2支持機構12、フレーム13および画像投影手段19を有する。
第1支持機構11は、フレーム13に設置され、画像投影手段19を第1回動軸線A1まわりに回動自在に支持するものであり、第1回動軸線A1は所定の回動中心Cを通る。
第2支持機構12は、フレーム13を介して第1支持機構11を第2回動軸線A2まわりに回動自在に支持するものであり、第2回動軸線A2は回動中心Cで第1回動軸線A1と交叉する。
【0025】
第1支持機構11および第2支持機構12には、演算処理装置7からの動作指令に基づいて各々を回動させるモータ等の図示しない駆動装置が装着されている。また、第1支持機構11および第2支持機構12には、各々の回動角度位置を検出する角度検出器が装着され、演算処理装置7においては第1回動軸線A1まわりの角度位置および第2回動軸線A2まわりの角度位置を検出することができ、各々の角度位置から画像投影手段19の向きを割り出すことが可能である。
【0026】
画像投影手段19は、受光装置6にマーカを有する画像を投影するものであり、球面反射体18およびその表面に形成された非反射領域17を備えている。
球面反射体18は、第1支持機構11で支持された球体であり、表面は回動中心Cを曲率中心とする球面とされている。球面反射体18の表面は、全面または少なくとも一方の半球部分が反射面とされている。
非反射領域17は、球面反射体18の表面に形成されて周囲とは反射性能が異なる状態とされた領域であり、例えば球面反射体18の表面に微少な刻印等を加工することで照射される光を散乱する状態あるいは吸収する状態としたものである。
【0027】
本実施形態では、前述した図2の横座標校正治具10を、前述した図1のレーザ干渉測定装置1に組み込んで校正作業を行う。
図3において、レーザ干渉測定装置1およびこれを構成するレーザ光源2、ハーフミラー3、コリメータレンズ4、参照基準器5、観察光学系6A、受光装置6および演算処理装置7は、それぞれ先に図1で説明した通りである。
レーザ干渉測定装置1の収束光学系8には、光線角度設定機構として、横座標校正治具10が設置されている。
横座標校正治具10は、第1支持機構11の第1回動軸線A1および第2支持機構12の第2回動軸線A2がともに収束光学系8の光軸A8に対して直交する姿勢とされ、かつ横座標校正治具10の回動中心Cと収束光学系8の焦点位置8Aとが互いに一致する位置となるように、レーザ干渉測定装置1に対して配置を調整される。
さらに、球面反射体18の位置は、受光装置6に投影された画像に干渉縞が略生じない状態(いわゆる干渉縞画像が概ねヌルの状態)になるように微調整される。
【0028】
レーザ干渉測定装置1の収束光学系8に組み込まれた横座標校正治具10は、レーザ光源2から参照基準器5を経て照射される収束光を受けるとともに、球面反射体18で照射された光を反射し、測定光と同じ経路で受光装置6に画像を投影させる。
図4において、受光装置6に投影される投影画像60は、横座標校正治具10からの反射光を受光装置6で受光し、演算処理装置7で位相接続演算を行った結果の画像である。
投影画像60の内側には、球面反射体18からの反射光に起因する明部が円形の視野範囲61として観測され、その内側には非反射領域17に起因する暗部がマーカ62として観測される。
【0029】
視野範囲61の明部は、通常の表面形状の測定では測定球面9Aで反射された測定光が参照光とともに投影され、測定球面9Aの表面形状を示す濃淡もしくはカラーの画像として表示される。これに対し、本実施形態の校正動作中は、測定球面9Aで反射された測定光ではなく球面反射体18からの反射光が戻される。球面反射体18として形状偏差が非常に小さい球を用い、その位置を前記の通りに微調整することにより、干渉縞画像は概ねヌルの状態として観測される。この場合、視野範囲61の明部は均一な濃淡の画像が算出されたものとなる。
マーカ62の暗部は、球面反射体18からの反射光が受光装置6に到達しないために干渉が生じず、演算処理装置7による位相接続演算では表面形状の情報を持たない領域として処理される。従って、投影画像60においては、画像全体の二値化処理などにより、表面形状の情報を有する明部である視野範囲61と、同情報を有さない暗部であるマーカ62とを容易に識別することができる。
そして、マーカ62となる暗部については、その領域の重心位置を計算することにより、マーカ62の投影画像60上の位置あるいは視野範囲61上の位置を特定することができ、これをマーカ62がある地点の実測横座標とすることができる。
【0030】
横座標校正治具10は、第1支持機構11および第2支持機構12で球面反射体18を回動させることにより、マーカ62の画像を与える光束の向きを変化させる光線角度設定機構として機能し、受光装置6に投影される投影画像60に現れるマーカ62を移動させることができる。
先ず、第1支持機構11および第2支持機構12をいずれも角度位置=0に設定すると、非反射領域17の位置が球面反射体18の基準位置つまり収束光学系8の光軸A8に直交する表面となり、投影画像60上の視野範囲61の中心にマーカ62が現れる状態とされる。
次に、第1支持機構11および第2支持機構12を回動させ、球面反射体18を任意の角度に向けることにより、球面反射体18の表面における非反射領域17の位置も変化し、収束光学系8の光軸A8に対して二次元的な任意の角度に振り向けられる。このとき、投影画像60においては、視野範囲61内のマーカ62の位置も移動する。
【0031】
図5において、第1支持機構11および第2支持機構12の双方の角度位置=0の状態では位置62Aにあったマーカ62は、第1支持機構11および第2支持機構12を回動させることで位置62Bへと移動する。
この際、演算処理装置7により、第1支持機構11および第2支持機構12におけるそれぞれの角度位置から、球面反射体18の表面における非反射領域17の位置を算出することができる。そして、球面反射体18の表面における非反射領域17の位置から、受光装置6に投影される投影画像60における本来あるべき地点の基準横座標を算出することができる。
従って、横座標校正治具10側で算出される非反射領域17に基づくマーカ62の基準横座標と、前述した投影画像60上の実際のマーカ62の実測横座標とを比較することにより、レーザ干渉測定装置1の現在位置における横座標の校正を行うことができる。
【0032】
レーザ干渉測定装置1の校正作業においては、前述した操作を横座標校正治具10における複数の角度位置(投影画像60上の複数の地点)に対して実行し、横座標校正治具10の第1支持機構11および第2支持機構12の設定角度に基づく基準横座標と、投影画像60上のマーカ62の実測横座標とを対応させて記録してゆく。このようにして得られる基準横座標と実測横座標との対応関係が、レーザ干渉測定装置1の横座標校正値となる。
【0033】
実際の校正作業では、例えば万遍無く設定した複数の角度(第1支持機構11および第2支持機構12の設定角度)に対して、前述した基準横座標と実測横座標との対応関係を記録したマップを作成する方法、任意間隔の角度に対して評価した対応関係を内挿によって補完する方法、または角度位置を変数とした関数を当てはめる方法、といった方法で校正値を取得することができる。
なお、取得したい校正値を演算処理装置7に記憶させておき、位相演算結果に校正値を反映させることによって形状算出結果の横座標を自動的に補正することも可能である。
【0034】
以上に述べたように、本実施形態の横座標校正治具10は、レーザ干渉測定装置1に設置することで、その横座標の比較ないし校正が可能となる。
本実施形態の横座標校正治具10においてレーザ干渉測定装置1の横座標校正は、図6に示す手順で行われる。
【0035】
図6において、先ず校正対象のレーザ干渉測定装置1に、横座標校正治具10を設置する(処理S11)。
設置にあたっては、横座標校正治具10の球面反射体18の回動中心Cが、レーザ干渉測定装置1の収束光学系8の焦点位置8Aに一致するように(図3参照)、位置を調整する(処理S12)
調整ができたら、レーザ干渉測定装置1のレーザ光源2からレーザ光を照射し、収束光学系8内に設置された球面反射体18で反射させて受光装置6にマーカ62および視野範囲61を含む投影画像60を投影する(処理S13)。
【0036】
受光装置6にマーカ62を含む投影画像60が投影された状態で、横座標校正治具10の第1支持機構11および第2支持機構12を動かし、球面反射体18を回動させることにより、受光装置6に投影された投影画像60上のマーカ62の位置を移動させる(図5参照)(処理S14)。
演算処理装置7により、現在時点での第1支持機構11および第2支持機構12の回動角度を読み出し、球面反射体18の角度位置からマーカ62の基準横座標を算出する(処理S15)。
演算処理装置7により、受光装置6で取得された投影画像60から、視野範囲61を基準としたマーカ62の実測横座標を検出する(処理S16)。
これらにより得られた基準横座標および実測横座標のデータは演算処理装置7に一対にして記録される。
【0037】
これらの処理S14〜S16は、球面反射体18を回動させてマーカ62の位置を変更しつつ、必要な地点の基準横座標および実測横座標が得られるまで繰り返す。
全ての必要な地点の基準横座標および実測横座標が得られたら、検出を終了する(処理S17)。
演算処理装置7により、先に記録されたマーカ62の複数位置における基準横座標および実測横座標のデータを読み出し、各地点での基準横座標および実測横座標の相違から横座標としての補正値を算出してゆき、これによりレーザ干渉測定装置1の横座標の校正が行われる(処理S18)。
校正が完了したら、校正対象のレーザ干渉測定装置1から、横座標校正治具10を取り外す(処理S19)。
この後、収束光学系8に被測定物9を設置することで、校正されたレーザ干渉測定装置1による測定球面9Aの表面形状の測定を行うことができる。
【0038】
このような本実施形態によれば、以下のような効果が得られる。
横座標校正治具10は、画像投影手段19が第1支持機構11および第2支持機構12に支持され、第1回動軸線A1および第2回動軸線A2まわりに回動されることで、任意の方向へ画像を投影することができる。
レーザ干渉測定装置1の校正にあたっては、校正するレーザ干渉測定装置1の収束光学系8の焦点位置8Aと横座標校正治具10の回動中心Cとが一致するように配置したうえで、画像投影手段19から画像を投影し、レーザ干渉測定装置1の受光装置6で受像する。投影される投影画像60は、その視野範囲61上の一点にマーカ62を有する。このマーカ62の座標(実測横座標)と、横座標校正治具10の第1支持機構11および第2支持機構12の現在角度位置から算出される座標(基準横座標)との対応を調べることにより、レーザ干渉測定装置1の収束光学系8の歪み等を検出することができる。
このような横座標の対応を、受光装置6上の一部ないし全ての地点について調べ、補正値を算出することで、レーザ干渉測定装置1の横座標校正を簡便かつ高精度に行うことができる。
【0039】
本実施形態の横座標校正治具10では、画像投影手段19として表面に非反射領域17が形成された球面反射体18を用い、この球面反射体18をレーザ干渉測定装置1の収束光学系8の焦点位置8Aに配置し、レーザ干渉測定装置1のレーザ光源2から収束光束を照射することで、球面反射体18から反射光が反射され、レーザ干渉測定装置1の受光装置6に投影画像60が投影される。この際、投影画像60には非反射領域17に起因する暗部がマーカ62として形成される。従って、前述した受光装置6上のマーカ62と第1支持機構11および第2支持機構12の角度位置との関係に基づく校正を行うことができる。
【0040】
従って、本実施形態の横座標校正治具10では、投影画像60を得るための光源としてレーザ干渉測定装置1のレーザ光源2を共用することができ、装置構成を簡略にできる。
さらに、横座標校正治具10としては、表面に非反射領域17が形成された球面反射体18と、これを支持する第1支持機構11および第2支持機構12があればよいため、治具としてのコンパクト化が図れ、被測定物9に入れ替えて収束光学系8に設置することも容易であり、治具としてのコストも低く抑えることができる。
【0041】
〔第2実施形態〕
図7から図11には、本発明の第2実施形態が示されている。
本実施形態は、前述した図1のレーザ干渉測定装置1に、本発明に基づく横座標校正治具20(図7参照)を適用し、本発明の横座標校正方法に基づく手順によりレーザ干渉測定装置1の横座標を校正するものである。
【0042】
図7において、横座標校正治具20は、第1支持機構21、第2支持機構22、フレーム23および画像投影手段29を有する。
第1支持機構21は、フレーム23に設置され、画像投影手段29を第1回動軸線A1まわりに回動自在に支持するものであり、第1回動軸線A1は所定の回動中心Cを通る。
第2支持機構22は、フレーム23を介して第1支持機構21を第2回動軸線A2まわりに回動自在に支持するものであり、第2回動軸線A2は回動中心Cで第1回動軸線A1と交叉する。
【0043】
第1支持機構21および第2支持機構22には、演算処理装置7からの動作指令に基づいて各々を回動させるモータ等の図示しない駆動装置が装着されている。また、第1支持機構21および第2支持機構22には、各々の回動角度位置を検出する角度検出器が装着され、演算処理装置7においては第1回動軸線A1まわりの角度位置および第2回動軸線A2まわりの角度位置を検出することができ、各々の角度位置から画像投影手段29の向きを割り出すことが可能である。
【0044】
画像投影手段29は、受光装置6にマーカを有する画像を投影するものであり、平面反射体28およびその表面にレーザ光を照射するレーザ光源27を備えている。
平面反射体28は、平坦な反射面を有し、第1支持機構21および第2支持機構22で回転自在に支持されている。
平面反射体28において、第1回動軸線A1は平面反射体28の反射面を横断するように配置され、第1回動軸線A1および第2回動軸線A2の交点である回動中心Cは平面反射体28の反射面上の一点にくるように設定されている。
このため、平面反射体28が第1支持機構21および第2支持機構22により第1回動軸線A1および第2回動軸線A2まわりに回動されても、反射面上の回動中心Cにあたる一点はその位置を維持し、向きだけが変化することになる。
【0045】
レーザ光源27は、第1支持機構21および第2支持機構22の外部に固定され、回転自在に支持されてはいない。
レーザ光源27から照射されるレーザ光は、平面反射体28の反射面上の回動中心Cにあたる一点に投光されるように配置を調整されている。
レーザ光源27は、照射するレーザ光の光量が、校正対象であるレーザ干渉測定装置1における参照光(レーザ光源2から参照基準器5で反射されて受光装置6に戻される)の光量より十分高く設定されている。
【0046】
本実施形態では、前述した図7の横座標校正治具20を、前述した図1のレーザ干渉測定装置1に組み込んで校正作業を行う。
図8において、レーザ干渉測定装置1およびこれを構成するレーザ光源2、ハーフミラー3、コリメータレンズ4、参照基準器5、観察光学系6A、受光装置6および演算処理装置7は、それぞれ先に図1で説明した通りである。
レーザ干渉測定装置1の収束光学系8には、光線角度設定機構として、横座標校正治具20が設置されている。
【0047】
横座標校正治具20は、第1支持機構21の第1回動軸線A1および第2支持機構22の第2回動軸線A2がともに収束光学系8の光軸A8に対して直交する姿勢とされ、かつ横座標校正治具20の回動中心Cと収束光学系8の焦点位置8Aとが互いに一致する位置となるように、レーザ干渉測定装置1に対して配置を調整される。
平面反射体28は、第1回動軸線A1まわりの角度位置が収束光学系8の光軸A8に対して45度(レーザ光源27から第1回動軸線A2に沿って照射されるレーザ光を収束光学系8の光軸A8に沿って反射する状態)であり、第2回動軸線A2まわりの角度位置が収束光学系8の光軸A8と直交する状態を初期位置として調整されている。
【0048】
レーザ干渉測定装置1の収束光学系8に組み込まれた横座標校正治具20は、レーザ光源27から照射されるレーザ光を平面反射体28で反射させ、収束光学系8の測定光と同じ経路を辿って受光装置6に画像を投影させる。
図9において、受光装置6に投影される投影画像64は、レーザ干渉測定装置1の参照光および横座標校正治具20からの投影光を受光装置6で受光した光強度画像である。
投影画像64の内側には、レーザ干渉測定装置1の参照光(レーザ光源2から参照基準器5で反射されて受光装置6に戻される)に起因するやや暗い円形の視野範囲65が観測され、その内側にはレーザ光源27からの強いレーザ光に起因する明るい光点がマーカ66として観測される。
【0049】
視野範囲65は、通常の表面形状の測定では測定球面9Aで反射された測定光が参照光とともに投影され、測定球面9Aの表面形状を示す濃淡もしくはカラーの画像として表示される。これに対し、本実施形態の校正動作中は、測定球面9Aで反射された測定光がなく、参照光だけが投影されるため、視野範囲65は概ね均一な濃淡の光強度画像となる。
マーカ66は、レーザ光源27から平面反射体28で反射されて受光装置6に到達するものであり、受光装置6ではレーザ干渉測定装置1の参照光と重なり合うことになるが、光源が異なるため干渉縞を生じることがない。従って、投影画像64においては、画像全体の二値化処理などにより、比較的暗い視野範囲65と、十分に明るいマーカ66とを容易に識別することができる。
そして、マーカ66については、その領域の重心位置を計算することにより、マーカ66の投影画像64上の位置あるいは視野範囲65上の位置を特定することができ、これをマーカ66がある地点の実測横座標とすることができる。
【0050】
横座標校正治具20は、第1支持機構21および第2支持機構22で平面反射体28を回動させることにより、マーカ66の画像を与える光束の向きを変化させる光線角度設定機構として機能し、受光装置6に投影される投影画像64に現れるマーカ66を移動させることができる。
先ず、第1支持機構21および第2支持機構22をいずれも所期位置に設定すると、レーザ光源27から第1回動軸線A2に沿って照射されるレーザ光が収束光学系8の光軸A8に沿って反射され、投影画像64上の視野範囲65の中心にマーカ66が現れる状態となる。
次に、第1支持機構21および第2支持機構22を回動させ、平面反射体28を任意の角度に向けることにより、平面反射体28で反射されるレーザ光の向きが収束光学系8の光軸A8に対して二次元的な任意の角度に振り向けられる。このとき、投影画像64においては、視野範囲65内のマーカ66の位置も移動する。
【0051】
図10において、第1支持機構21および第2支持機構22が所期位置の状態では位置66Aにあったマーカ66は、第1支持機構21および第2支持機構22を回動させることで位置66Bへと移動する。
この際、演算処理装置7により、第1支持機構21および第2支持機構22におけるそれぞれの角度位置から、受光装置6に投影される投影画像64における本来あるべき地点の基準横座標を算出することができる。
従って、横座標校正治具20側で算出されるマーカ66の基準横座標と、前述した投影画像64上の実際のマーカ66の実測横座標とを比較することにより、レーザ干渉測定装置1の現在位置における横座標の校正を行うことができる。
【0052】
レーザ干渉測定装置1の校正作業においては、前述した操作を横座標校正治具20における複数の角度位置(投影画像64上の複数の地点)に対して実行し、横座標校正治具20の第1支持機構21および第2支持機構22の設定角度に基づく基準横座標と、投影画像64上のマーカ66の実測横座標とを対応させて記録してゆく。このようにして得られる基準横座標と実測横座標との対応関係が、レーザ干渉測定装置1の横座標校正値となる。
【0053】
実際の校正作業では、例えば万遍無く設定した複数の角度(第1支持機構21および第2支持機構22の設定角度)に対して、前述した基準横座標と実測横座標との対応関係を記録したマップを作成する方法、任意間隔の角度に対して評価した対応関係を内挿によって補完する方法、または角度位置を変数とした関数を当てはめる方法、といった方法で校正値を取得することができる。
なお、取得したい校正値を演算処理装置7に記憶させておき、位相演算結果に校正値を反映させることによって形状算出結果の横座標を自動的に補正することも可能である。
【0054】
以上に述べたように、本実施形態の横座標校正治具20は、レーザ干渉測定装置1に設置することで、その横座標の比較ないし校正が可能となる。
本実施形態の横座標校正治具20においてレーザ干渉測定装置1の横座標校正は、図11に示す手順で行われる。
【0055】
図11において、先ず校正対象のレーザ干渉測定装置1に、横座標校正治具20を設置する(処理S21)。
設置にあたっては、横座標校正治具20の平面反射体28の回動中心Cが、レーザ干渉測定装置1の収束光学系8の焦点位置8Aに一致するように(図8参照)、位置を調整する(処理S22)
調整ができたら、横座標校正治具20のレーザ光源27からレーザ光を照射し、収束光学系8内に設置された平面反射体28で反射させて受光装置6にマーカ66および視野範囲65を含む投影画像64を投影する(処理S23)。
【0056】
受光装置6にマーカ66を含む投影画像64が投影された状態で、横座標校正治具20の第1支持機構21および第2支持機構22を動かし、平面反射体28を回動させることにより、受光装置6に投影された投影画像64上のマーカ66の位置を移動させる(図5参照)(処理S24)。
演算処理装置7により、現在時点での第1支持機構21および第2支持機構22の回動角度を読み出し、平面反射体28の角度位置からマーカ66の基準横座標を算出する(処理S25)。
演算処理装置7により、受光装置6で取得された投影画像64から、視野範囲65を基準としたマーカ66の実測横座標を検出する(処理S26)。
これらにより得られた基準横座標および実測横座標のデータは演算処理装置7に一対にして記録される。
【0057】
これらの処理S24〜S26は、平面反射体28を回動させてマーカ66の位置を変更しつつ、必要な地点の基準横座標および実測横座標が得られるまで繰り返す。
全ての必要な地点の基準横座標および実測横座標が得られたら、検出を終了する(処理S27)。
演算処理装置7により、先に記録されたマーカ66の複数位置における基準横座標および実測横座標のデータを読み出し、各地点での基準横座標および実測横座標の相違から横座標としての補正値を算出してゆき、これによりレーザ干渉測定装置1の横座標の校正が行われる(処理S28)。
校正が完了したら、校正対象のレーザ干渉測定装置1から、横座標校正治具20を取り外す(処理S29)。
この後、収束光学系8に被測定物9を設置することで、校正されたレーザ干渉測定装置1による測定球面9Aの表面形状の測定を行うことができる。
【0058】
このような本実施形態によれば、以下のような効果が得られる。
横座標校正治具20は、画像投影手段29が第1支持機構21および第2支持機構22に支持され、第1回動軸線A1および第2回動軸線A2まわりに回動されることで、任意の方向へ画像を投影することができる。
レーザ干渉測定装置1の校正にあたっては、校正するレーザ干渉測定装置1の収束光学系8の焦点位置8Aと横座標校正治具20の回動中心Cとが一致するように配置したうえで、画像投影手段29から画像を投影し、レーザ干渉測定装置1の受光装置6で受像する。投影される投影画像64は、その視野範囲65上の一点にマーカ66を有する。このマーカ66の座標(実測横座標)と、横座標校正治具20の第1支持機構21および第2支持機構22の現在角度位置から算出される座標(基準横座標)との対応を調べることにより、レーザ干渉測定装置1の収束光学系8の歪み等を検出することができる。
このような横座標の対応を、受光装置6上の一部ないし全ての地点について調べ、補正値を算出することで、レーザ干渉測定装置1の横座標校正を簡便かつ高精度に行うことができる。
【0059】
本実施形態の横座標校正治具20では、画像投影手段29として第1支持機構21および第2支持機構22で回動支持された平面反射体28を用い、この平面反射体28の回動中心Cをレーザ干渉測定装置1の収束光学系8の焦点位置8Aに配置し、横座標校正治具20のレーザ光源27からレーザ光を照射することで平面反射体28から反射光が反射され、収束光学系8を測定光と同じ経路で戻り、レーザ干渉測定装置1の受光装置6に投影画像64が投影される。この際、投影画像64にはレーザ光源27からのレーザ光による光点がマーカ66として形成される。従って、前述した受光装置6上のマーカ66と第1支持機構21および第2支持機構22の角度位置との関係に基づく校正を行うことができる。
【0060】
従って、本実施形態の横座標校正治具20では、投影画像64を得るためにレーザ光源27からのレーザ光を平面反射体28で反射させる構成を採用する。レーザ光源27は一般的なレーザ光源を用いることができる。また、平面反射体28は平面鏡であればよく、球面状の反射面などに比べてコストを低減しつつ精度を向上することができる。
さらに、横座標校正治具20としては、一般的なレーザ光源27、平面反射体28、これを支持する第1支持機構21および第2支持機構22があればよいため、治具としてのコンパクト化が図れ、被測定物9に入れ替えて収束光学系8に設置することも容易であり、治具としてのコストも低く抑えることができる。
【0061】
〔他の実施形態〕
本発明は、前述した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲内の変形等は本発明に含まれるものである。
前記各実施形態では、レーザ干渉測定装置1はフィゾー型干渉計として説明したが、レーザ干渉計の形式はこれに限定されず、たとえばトワイマングリーン型干渉計などを用いる場合においても同様の原理により、横座標の特定が可能である。なお、トワイマングリーン型干渉計を用いる場合には、参照光を遮光することによって測定光のみの光強度画像を簡単に取得することが可能であるため、例えば第1実施形態において、非反射領域17の画像上における位置の検出をより簡単に行うことができる。
前記第1実施形態において、球面反射体18と非反射領域17とを逆にした構成(マーカ62が明部で周囲が暗部となる)としても原理としては同一である。しかし、この場合、球面反射体18の回動中心Cをレーザ干渉測定装置1の収束光学系の焦点位置8Aと一致させるための測定において干渉する領域が限定され、干渉縞画像を確認することが難しくなる。そのため、前記第1実施例に示す構成とすることが望ましい。
【符号の説明】
【0062】
1…レーザ干渉測定装置
2…レーザ光源
3…ハーフミラー
4…コリメータレンズ
5…参照基準器
5A…参照球面
6…受光装置
6A…観察光学系
7…演算処理装置
8…収束光学系
8A…焦点位置
9…被測定物
9A…測定球面
10,20…横座標校正治具
11,21…第1支持機構
12,22…第2支持機構
13,23…フレーム
17…非反射領域
18…球面反射体
19,29…画像投影手段
27…レーザ光源
28…平面反射体
60,64…投影画像
61,65…視野範囲
62,66…マーカ
A1…第1回動軸線
A2…第2回動軸線
A8…収束光学系の光軸
C…回動中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マーカを有する画像を投影する画像投影手段と、
前記画像投影手段を第1回動軸線まわりに回動自在に支持しかつ前記第1回動軸線が所定の回動中心を通る第1支持機構と、
前記第1支持機構を第2回動軸線まわりに回動自在に支持しかつ前記第2回動軸線が前記回動中心で前記第1回動軸線と交叉する第2支持機構と、を有することを特徴とするレーザ干渉測定装置の横座標校正治具。
【請求項2】
請求項1に記載したレーザ干渉測定装置の横座標校正治具において、
前記画像投影手段は、前記回動中心を曲率中心とする球面反射体であり、前記球面反射体の表面には前記マーカを形成する非反射領域が形成されていることを特徴とするレーザ干渉測定装置の横座標校正治具。
【請求項3】
請求項1に記載したレーザ干渉測定装置の横座標校正治具において、
前記画像投影手段は、前記回動中心が反射面上の一点に設定された平面反射体と、前記平面反射体に前記マーカを形成するレーザ光を照射するレーザ光源とを有することを特徴とするレーザ干渉測定装置の横座標校正治具。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れかに記載のレーザ干渉測定装置の横座標校正治具を用い、
前記レーザ干渉測定装置の収束光学系の焦点位置に前記横座標校正治具を設置し、前記回動中心と前記焦点位置とを合わせるとともに、
前記レーザ干渉測定装置の受光装置に前記画像投影手段による画像を投影させておき、
前記画像投影手段を前記第1回動軸線および前記第2回動軸線まわりに回動させて前記マーカを前記画像上の任意の位置へ移動させ、
前記画像投影手段の前記第1回動軸線および前記第2回動軸線まわりの角度位置から前記マーカの基準横座標を算出し
前記受光装置で取得された画像における前記マーカの実測横座標を検出し、
前記マーカの実測横座標と前記基準横座標とを比較して前記レーザ干渉測定装置の横座標を校正することを特徴とするレーザ干渉測定装置の横座標校正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−24756(P2013−24756A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−160606(P2011−160606)
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【出願人】(000137694)株式会社ミツトヨ (979)
【Fターム(参考)】