説明

ロータリーエンコーダー及びタッチセンサー付き回転操作ノブ

【課題】 回転操作ノブへの操作を途中無接点にて電気的に外部に出力することができる、耐久性及び信頼性に優れたロータリーエンコーダー及びタッチセンサー付き回転操作ノブを提供することを課題とする。
【解決手段】 ホルダー10に回動可能に保持される回転操作ノブ14と、回転操作ノブ14を操作する人の手指が接触する位置に設けられた接触電極55と、接触電極55に接続されて回転操作ノブ14の回転操作に応じて移動する可動電極52と、可動電極52の移動軌跡に対向して可動電極52から離間して複数設けられた固定電極22と、接触電極55を通じて人体に接続された可動電極52の移動による接近によって各固定電極22に現れる電気的変化を検出する人体検知手段81、82とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体検知手段を備えたロータリーエンコーダー、または、タッチセンサー付き回転操作ノブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、回転操作ノブを操作することにより、スイッチ操作を行うようにしたロータリースイッチがある。(例えば、特許文献1)
【特許文献1】特開2004−303684号公報
【0003】
このロータリースイッチは、絶縁基板上に固定されたホルダーに回転可能にロータが取り付けられており、そのロータの絶縁基板側には接触端子を備えた可動接点が取り付けられている。一方、絶縁基板側には、前記可動接点の接触端子が接触する複数の固定接点が設けられている。接触端子は板ばねの力により常に絶縁基板の面に一定の圧力で接しており、ロータを回転させることにより、接触端子も同様に絶縁基板の上を接触しながら回転しつつ任意の固定接点に接続してスイッチ切換えを行う。
【0004】
しかし、上述した従来のロータリースイッチは、スイッチの切換えを接点同志の接触によって行っており、切換え時には少なからず接点同志にスパークを生じる。そのため、切換えを繰り返すたびに接点は劣化してくる。また板ばねの力で接触しているため、経時的にばねの力が弱まってくると接圧が不安定となり、耐久性に乏しいという問題点があった。
【0005】
また、特許文献2には、車両に採用されるスイッチボタンやロータリースイッチにタッチセンサーを設けて、その操作部に人が接触すると、ディスプレイ装置にその周辺のボタンのレイアウト画を表示させて、運転中のドライバーが視線を移動させなくとも意図するスイッチボタンやロータリースイッチに容易確実にアクセスできるようにしたものが開示されている。
【特許文献2】特開平05−077679号公報
【0006】
しかし、この特許文献2には、ロータリースイッチにタッチセンサーを設けるようにしたことは記載されているが、タッチセンサーの詳細構造については何も記載されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、前記従来の問題点に鑑みてなされたもので、回転操作ノブへの操作を途中無接点にて電気的に外部に出力することができる、耐久性及び信頼性に優れたロータリーエンコーダー及びタッチセンサー付き回転操作ノブを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記問題を解決するために本発明のロータリーエンコーダーは、ホルダーに回動可能に保持される回転操作ノブと、該回転操作ノブを操作する人の手指が接触する位置に設けられた接触電極と、該接触電極に接続されて前記回転操作ノブの回転操作に応じて移動する可動電極と、該可動電極の移動軌跡に対向して前記可動電極から離間して複数設けられた固定電極と、前記接触電極を通じて人体に接続された前記可動電極の移動による接近によって前記各固定電極に現れる電気的変化を検出する人体検知手段とを設けたことを特徴とする。
【0009】
上記構成では、接触電極を通じて人体に接続された可動電極の移動による接近によって各固定電極に現れる電気的変化を人体検知手段にて検出することにより、回転操作ノブの回転を検知するようにしている。これにより、回転操作ノブの回転の検出を可動電極と固定電極とが非接触で行うことができるため、接触不良、接点の摩耗等が発生することがなく、信頼性、耐久性を向上することができる。
【0010】
前記接触電極と前記可動電極は、前記回転操作ノブに施された導電性の被膜によって形成されるようにしてもよい。
【0011】
上記構成では、別部材の電極部材が不要であり、容易に接触電極と可動電極とを設けることができ、安価に製造することが可能となる。
【0012】
前記複数の固定電極が所定の円周上に間隔を保って配置されるとともに、前記ホルダーが前記複数の固定電極の形成する円周と同軸上に固定された絶縁基板を設け、前記回転操作ノブは、前記固定電極が設けられた前記絶縁基板の面の面方向に対して垂直方向を回転軸とし、前記絶縁基板に対向する前記回転操作ノブの底面に設けられた前記可動電極が前記固定電極に対して前記回転操作ノブの回転軸方向に所定の距離だけ離間するように前記ホルダーに回動可能に保持されるようにしてもよい。
【0013】
また、前記問題を解決するために本発明のタッチセンサー付き回転操作ノブは、ホルダーに回動可能に保持される回転操作ノブと、該回転操作ノブを操作する人の手指が接触する位置に設けられた接触電極と、該接触電極に接続され前記回転操作ノブに設けられた可動検知電極と、前記回転操作ノブのすべての回動位置において前記可動検知電極に対向して前記可動検知電極から離間して設けられた固定検知電極と、前記接触電極を通じて人体に接続された前記可動検知電極によって前記固定検知電極に現れる電気的変化を検出する人体検知手段とを設けたことを特徴とする。
【0014】
上記構成では、接触電極を通じて人体に接続された可動検知電極によって固定検知電極に現れる電気的変化を人体検知手段によって検出することにより、回転操作ノブの接触電極への人体の接触を、可動検知電極から離間した固定検知電極に伝えることが可能である。そのため、回転操作ノブの接触電極に人体が接触した信号を外部に導出する導線や、接点部が不要なため、回転する操作ノブへのタッチセンサーの設定を容易に行うことができる。
【0015】
前記接触電極と前記可動検知電極は、前記回転操作ノブに施された導電性の被膜によって形成されるようにしてもよい。
【0016】
上記構成では、別部材の電極部材が不要であり、容易に接触電極と可動検知電極とを設けることができ、安価に製造することが可能となる。
【0017】
前記固定検知電極は絶縁基板上の所定の円周上に設けられるとともに、前記ホルダーは絶縁基板上における前記固定検知電極の所定の円周と同軸上に固定され、前記回転操作ノブは、前記固定検知電極が設けられた前記絶縁基板の面の面方向に対して垂直方向を回転軸とし、前記絶縁基板に対向する前記回転操作ノブの底面に設けられた前記可動検知電極が前記固定電極に対して前記回転操作ノブの回転軸方向に所定の距離だけ離間するように前記ホルダーに回動可能に保持されるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0018】
以上の説明から明らかなように請求項1の発明によれば、回転操作ノブの回転の検出を可動電極と固定電極とが非接触で行うことができるため、耐久性及び信頼性に優れたロータリーエンコーダーとすることができる。
【0019】
請求項2の発明によれば、接触電極と可動電極とを回転操作ノブに施された導電性の被膜によって形成するようにすれば、容易に接触電極と可動電極とを構成でき、安価に製造することが可能となる。
【0020】
請求項3の発明によれば、簡単な構成にてロータリーエンコーダーを製造することが可能である。
【0021】
また、以上の説明から明らかなように請求項4の発明によれば、回転操作ノブの接触電極への人体の接触を、可動検知電極から離間した固定検知電極に伝えることが可能であるため、回転する操作ノブへのタッチセンサーの設定を容易に行うことができる。
【0022】
請求項5の発明によれば、接触電極と可動検知電極とを回転操作ノブに施された導電性の被膜によって形成するようにすれば、容易に接触電極と可動検知電極とを構成でき、安価に製造することが可能となる。
【0023】
請求項6の発明によれば、簡単な構成にてタッチセンサー付き回転操作ノブを製造することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。
図1は本発明の一実施形態であるロータリーエンコーダーを採用した車両のヒーターコントロール装置1の分解斜視図、図2は組み立てられた状態のロータリーエンコーダー4の縦断面図である。なお、この明細書における「上」あるいは「下」の表現は、図2の向きを基準として用いている。
【0025】
図1に示すヒータコントロール装置1は、車両のインストルメントパネルのセンターパネル内に配置されるものであり、略箱状の樹脂成形品であるリアカバー2を備えている。リアカバー2は、後述する絶縁基板などの各部品を収納固定するものであり、内部の4隅には開口側に突出して設けられ、先端にネジ孔を有する4つの支持凸部2a(1つのみ図示)が形成されている。
【0026】
前記リアカバー2の支持凸部2aには絶縁基板3が図示しないネジにて固定される。この絶縁基板3には、左右両側にそれぞれ、車内の設定温度を切り替えるためのロータリーエンコーダー4と、吹き出し風の風量を切り替えるためのロータリーエンコーダー5とが同様の構造にて設けられている。また、中央部には、車両のリアガラスの曇りを取るリアデフォッガ装置(図示せず)、送風吹き出し口を切り替える送風モード切り替え装置(図示せず)、車内の除湿を行うエアコンプレッサー(図示せず)などの各制御機構を作動させるための複数のプッシュスイッチ6が設けられている。
【0027】
前記ロータリーエンコーダー4は、絶縁基板3と、絶縁基板3に固定されるホルダー10と、ホルダー10の外周側に回動可能に保持されるロータ12と、ロータ12の外周に操作部として固定されるロータリーノブ14と、ホルダー10の内周側に押圧操作可能に保持されるプッシュノブ16と、照明用の光を透過して夜間にロータリーエンコーダー4の位置を分かりやすくするガーニッシュ18とを備えている。なお、本実施形態において回転操作ノブはロータ12とロータリーノブ14とによって構成されている。
【0028】
絶縁基板3は、所定の回路を構成するための印刷パターンを両面に設けたものであり、ロータリーエンコーダー4を取り付ける一方の面3aには、ロータ12の回転軸を径中心としてリング状に形成された固定検知電極20と、固定検知電極20の外側に固定検知電極20と同心円上に配列された複数の固定電極22とが設けられている。また、固定検知電極20の中心位置には、プッシュスイッチ25が設けられている。このプッシュスイッチ25は、図示しないバネなどで図2中上側に付勢された操作部25aを備えている。さらに、固定検知電極20の内側の絶縁基板3上にはホルダー10を固定するための2つのネジ孔26と、ガーニッシュ18を通して照明するための複数のLED28が設けられている。
【0029】
固定検知電極20は、人体検知手段である後述する人体検知回路に電気的に接続され、この固定検知電極20に人の手などが接近すると、その接近を人体検知回路によって検知できるようになっている。
【0030】
固定電極22は、図5に示すように、ロータ12の回転軸を中心として同一円周上に10個(それぞれにA1〜A5、B1〜B5の符号を設定)配置されている。そのうち、隣接した固定電極A1〜A5と隣接した固定電極B1〜B5とは、連結パターン23a、23bによってそれぞれ5個一組で連結されてA電極郡24aとB電極郡24bとを構成している。A電極郡24aおよびB電極郡24bは、それぞれ後述する別の人体検知回路に電気的に接続されている。そして、少なくともどれか1つの固定電極A1〜A5、B1〜B5に人の手などが接近すると、その接近を人体検知回路によって検知できるようになっている。各A、B電極郡24a、24b内のそれぞれ個々の固定電極A1〜A5、B1〜B5は所定角度(本実施形態では36°)間隔で配置されている。また、A電極郡24aの固定電極A1〜A5に対向したB電極郡24bのそれぞれの固定電極B1〜B5は、対向した位置から時計回り方向に所定角度(本実施形態では3.6°)だけずれた位置に配置されている。
【0031】
ホルダー10は略有底円筒形状であり、絶縁基板上3の前記所定の円周上に配置された固定検知電極20及び固定電極22の中心軸と同軸上の位置に固定されている。このホルダー10は、内部にプッシュノブ16を移動可能に保持する筒状部30を有する。この筒状部30の内部は貫通しており、内周面の対向する位置には軸方向に直線的に延びる一対の凸状部31と、90°ずれた位置に軸方向に直線的に延びる一対のレール状部32とが形成されている。このレール状部32の上側端部の内溝内には係止壁33がそれぞれ形成されている。さらに、ホルダー10の底面には、底面から円筒状に突出した2つのネジ受け部34と、ネジ受け部34の外側に設けられて円筒状に突出した案内凸部35と、案内凸部35の外側のホルダー10の底面上にリング状に設けられたクリック用波状部36とが形成されている。
【0032】
ロータ12は、ホルダー10の外周壁に外嵌する円筒部40と、円筒部40の下端部より径内側および径外側方向に突出して設けられたフランジ部41とによって構成されている。円筒部40の上縁内側にはホルダー10の外周壁の上縁に係止する爪状のハンガー部42が90°間隔で4つ設けられている。そして、このハンガー部42がホルダー10の外周壁の上縁に係止することによって、ロータ12は、絶縁基板3の面3aの面方向に対して垂直方向を回転軸とし、ロータ12のフランジ部41の底面が絶縁基板3に対して所定距離(本実施形態では、0.5mm)だけ離間した状態で回動可能に吊り下げられる。また、フランジ部41の内側端部の上面には、円筒状に突出した係止凸部43が設けられ、この係止凸部43がホルダー10の案内凸部35の内側に内嵌することで、ロータ12の径方向のぶれが防止される。ホルダー10のクリック用波状部36に対応するフランジ部41の上面の位置には、内部にボール44とスプリング45とを収納する収納部46が形成され、ロータ12回動時にはスプリング45によって付勢されたボール44がクリック用波状部36上を摺動してクリック感が得られ、ロータ12を所定の回転ピッチ(本実施形態では18°)ごとに停止保持できるように構成されている。
【0033】
また、ロータ12の円筒部40の外周面及びのフランジ部41の表面は、図3に示すように、導電性のメッキ47が加飾されている。そして、図4に示すように、ロータ12のフランジ部41の底面に、絶縁基板3の固定検知電極20に対向して円筒状に突出する円筒状突出部48と、絶縁基板3の固定電極22に対向して円筒状突出部48から90°間隔で四方に延びた十字状突出部49とを形成することにより、その突出部分の底面のメッキ47を電極として利用し、それぞれを可動検知電極50及び4つの可動電極52として構成している。この可動検知電極50及び可動電極52は、絶縁基板3の固定検知電極20及び固定電極22と所定距離(本実施形態では、およそ0.5mm)だけ離間しており、4つの可動電極52はロータ12の回動操作に応じてそれぞれ固定電極22の上を移動する。
【0034】
そして、ロータ12のメッキ47に人の手などが接触すると、メッキ47を介して人体と可動検知電極50及び可動電極52とが電気的に接続された状態となり、絶縁基板3の固定検知電極20及び固定電極22に対して、この可動検知電極50および可動電極52の位置まで人体が接近したのと等価な状態となる。これにより、ロータ12への人体の接触は、可動検知電極50と常に対向する固定検知電極20に接続された人体検知回路によって検知することができる。
【0035】
また、4つの可動電極52(それぞれ時計回り順にY1、X1、Y2、X2の符号を設定)が所定の順番でA電極郡24aとB電極郡24bの電極上を交互に通過するように、ロータ12の回転ピッチ、固定電極22の間隔、固定電極22のA電極郡24aとB電極郡24bとの対向する電極の位置が設定されている。これにより、ロータ12のメッキ47に人の手などが接触した状態でロータ12を時計回りに回転すると、メッキ47を介して人体と電気的に接続された可動電極52がA電極郡24a、B電極郡24bの順でそれぞれの電極の上を交互に通過する。一方、ロータ12を反時計回りに回動させた場合には、可動電極52がB電極郡24b、A電極郡24aの順でそれぞれの電極の上を交互に通過する。したがって、可動電極X1、X2、Y1、Y2と固定電極A1〜A5、B1〜B5とのそれぞれの接近を人体検知回路によって検知するとともに、A、B電極郡24a、24bへそれぞれ接続された人体検知回路の人体を検知する順番を検知することにより、ロータ12の回転量及び回転方向を電気的に出力することができる。
【0036】
再び図1、2を参照すると、ロータ12の外周には、円筒状のロータリーノブ14が固定されており、ロータリーノブ14を回転操作すると一緒にロータ12も回動するようになっている。このロータリーノブ14の外周面及び底面には導電性のメッキ55が加飾されており、このメッキ55が接触電極を構成している。このロータリーノブ14の底面は、図3に示すように、ロータ12のメッキ47が施されたフランジ部41の上面と接触しており、ロータリーノブ14の外周面のメッキ55(接触電極)に人の手などが接触すると、ロータリーノブ14及びロータ12のメッキ55、47を介して可動検知電極50及び可動電極52が電気的に人体に接続された状態となる。このように、メッキ47、55を電気信号の導線として利用することにより、ロータリーノブ14とロータ12とのメッキ55、47同士が接触するように構成して組付けるだけで、ロータリーノブ14のメッキ55(接触電極)とロータ12の可動検知電極50および可動電極52との電気的な接続を容易に行うことができる。
【0037】
尚、本実施形態においては、導電性の加飾としてメッキを用いたが、これに限定されることはなく、導電性の塗料、スパッタリング及び蒸着等により導電性の被膜を形成してもよい。また、ロータ12及びロータリーノブ14自体を導電性部材で形成してもよいし、別部材の電極をロータ12及びロータリーノブ14に設けるようにしてもよい。さらに、ロータリーノブ14とロータ12とを一体的に形成してもよい。
【0038】
ガーニッシュ18は、透光性の樹脂材料にて円筒状に形成され、ホルダー10の筒状部30の外周に配置される。ガーニッシュ18の上面には、操作機能を表す文字などが印刷された印刷部18aが設けられている。この印刷部18aは、絶縁基板3に設置されたLED28の光がガーニッシュ18内を通過して照明されるものであり、夜間でもロータリーエンコーダー4の位置が容易に認識できるようになっている。
【0039】
プッシュノブ16は、前記ホルダー10の筒状部30内に配置される略円筒有底状のスライド部60を有し、このスライド部60の上端部には操作機能を表す文字などが印刷された押圧部62が固定されている。このスライド部60の外周面には、ホルダー10の凸状部31及びレール状部32に対応して溝部64が形成されており、プッシュノブ16はホルダー10の筒状部30内にスライド移動可能に配置される。レール状部32に対応する溝部64内には、ホルダー10の係止壁33に係合する係合爪66が設けられており、係合爪66とホルダー10の係止壁33とが係合することによってプッシュノブ16のホルダー10からの抜け出しを規制している。スライド部60の底面には、前記プッシュスイッチ25の操作部25aに当接する押圧凸部68が形成されており、プッシュノブ16を押圧操作することによって、プッシュスイッチ25の操作部25aが押込まれて接点状態の切り替えが行われる。
【0040】
上記したロータリーエンコーダー4の前面側には、図1に示すように、ヒータコントロール装置1のパネル7が配置される。このパネル7には、ロータリーエンコーダー4、5のロータリーノブ14が操作に必要な長さだけ挿通して配置される装着孔72が左右側にそれぞれ形成されている。また、パネル7の中央部には、絶縁基板3のプッシュスイッチ6を操作するための複数の操作ノブ74がそれぞれスライド可能に保持され、各操作ノブ74を押圧操作することにより、所定のスイッチ操作が行われる。
【0041】
次に、ヒータコントロール装置1の制御回路について説明する。
図7はヒータコントロール装置1の制御回路のブロック図を示し、80は固定検知電極20に接続された人体検知手段としての第1人体検知回路、81は固定電極22のA電極郡24aに接続された人体検知手段としての第2人体検知回路、82は固定電極22のB電極郡24bに接続された人体検知手段としての第3人体検知回路、6、25は上述した各プッシュスイッチ、83はヒータコントロール装置1の制御を行う制御部、84は吹き出し風の温度調整、風量、吹き出し口などの切り替えを行うモータなどの各制御機構、85はロータリーエンコーダー4のレイアウト、操作状況をディスプレイ86に表示するディスプレイ制御部、87はロータリーエンコーダー4の操作位置を記憶する記憶部である。
【0042】
第1人体検知回路80は、例えば、図8に示すように、公知の矩形波発振回路である2つの発振回路90a、90bを有しており、発振回路90a、90bの各入力側は同調コンデンサ91で接続され、固定検知電極20が発振回路90aの入力側に接続されている。発振回路90a、90bの出力は検波回路92に接続され、検波回路92の出力は出力回路93に接続されている。
【0043】
検波回路92は、入力電圧がしきい値より大きいときにHIレベル、しきい値より小さい時にLOレベルとして認識し、入力の値によって所定の電圧を出力する論理演算素子のひとつであり、2つの入力に異なる値(HIとLO)が入力されているときに電圧を出力し、2つの入力に等しい値が入力されているときに電圧を出力しない第1排他論理和素子94からなっている。第1排他論理和素子94の出力は出力回路93のダイオード95に入力され、コンデンサ96と抵抗97で接地されて第2排他論理和素子98の一方の入力に接続され、第2排他論理和素子98の他方の入力は接地されている。そして、第2排他論理和素子98の出力が出力端子99になっている。
【0044】
また、図8には、人体が固定検知電極20に接近したときの等価回路を2点鎖線で示している。人体は、固定検知電極20をキャパシタンス102、抵抗104およびインダクタンス106で接地する回路100とみなすことができる。
【0045】
次に、以上の回路構成の第1人体検知回路80の動作を説明する。
発振回路90aと90bとの発振の周期が一致している場合、発振回路90aと90bの等価な点の電位は等しくなるので同調コンデンサ91の両端の電位は同じである。しかし、発振回路90aと90bとの発振の周期がずれている場合、同調コンデンサ91の両端の電位が異なり、いずれか一方の発振回路90aまたは90bの帰還電流の一部が同調コンデンサ91を介して他方の発振回路90aまたは90bに流れる。これによって位相が進んでいる方の発振回路90aまたは90bの周期が長くなり、位相が遅れている方の発振回路90aまたは90bの周期が短くなることで同調コンデンサ91の両端の電位が等しくなるように発振回路90aと90bとの発振を同調させる。
【0046】
そして、発振回路90aおよび90bの出力が同調されているときには第1排他論理和素子94の2つの入力が常に等しいので検波回路92からは電圧が出力されない。すると、第2排他論理和素子98の2つの入力は常に入力がないLOレベルの状態になるので第2排他論理和素子98も常に出力端子99に電圧を出力しない。
【0047】
しかし、図8に示すように、固定検知電極20に人体が接近して接地回路100を構成すると、発振回路90aの帰還電流の一部が固定検知電極20を介して人体から大地に流れることによって発振回路90aの発振周波数が変化する。発振周波数の変化がわずかであれば、同調コンデンサ91の作用によって発振回路90aと90bの周期が一致するように同調されるが、発振周波数の変化が大きくなると、同調コンデンサ91によっても周期を同調させることができなくなる。そして、図9に示すように、発振回路90aと90bとの発振周期がずれると、第1排他論理和素子94は矩形波を出力する。この出力は、ダイオード95、コンデンサ96および抵抗97で平滑化され、図示するように、第2排他論理和素子98に入力される平滑化した電圧は、第2排他論理和素子98のしきい値よりも大きな値となる。このため、発振回路90aと90bの発振周期がずれていると、第2排他論理和素子98は、出力端子99に連続して電圧を出力する。このように、固定検知電極20に人体が接近すると第1人体検知回路80はHIレベルの電圧を出力する。
【0048】
尚、本実施形態の第1人体検知回路80では、固定検知電極20は発振回路90aおよび90bの発振になんら寄与していない。このため、さらなる電極を並列に接続しても、発振回路90aと90bの同調に影響を及ぼすことがなく、さらなる電極に人体が接近したときは、発振回路90aと90bの発振周期のずれとして検知できるようになる。つまり、発振回路90a、90b、検波回路92および出力回路93などに変更を加えることなく、電極を増減することができる。したがって、第1人体検知回路80の構成は、複数の固定電極A1〜A5、B1〜B5が接続された第2、第3人体検知回路82にも採用が可能であり、本実施形態では第2、3の人体検知回路81、82も同様の構成となっている。
【0049】
また、図7に示すディスプレイ制御部85は、例えば車両のインストルメントパネルのセンターパネルの上に配置されたディスプレイ86に、制御部83の指示によってロータリーエンコーダー4のレイアウト画、操作状況を表示するものであり、ロータリーエンコーダー4のレイアウト画88(図10に図示)及び操作位置を記憶するメモリー85aを有している。
【0050】
次に、ヒータコントロール装置1の動作について説明する。
例えば運転者が車内の設定温度を切り替えるロータリーエンコーダー4のロータリーノブ14を手で触ると、運転者の体がロータリーノブ14およびロータ12のメッキ55、47を介して可動検知電極50に接続される。すると、可動検知電極50の位置まで人体が接近したのと等価な状態となり、可動検知電極50に対向する固定検知電極20に接地回路100(人体)が接続された状態となる。すると、上述したように第1人体検知回路80がこのロータリーノブ14への人体の接触を検知してHIレベルの信号を出力する。このHIレベル信号が制御部83に入力されると、制御部83はディスプレイ制御部85に設定温度を切り替えるロータリーエンコーダー4のレイアウト画を表示する信号を出力し、ディスプレイ制御部85は、図10に示すように、メモリー85aに記憶されている所定のロータリーエンコーダー4のレイアウト画88をディスプレイ86に出力する。
【0051】
これにより、例えば運転者が運転中に手探りにてロータリーエンコーダー4を操作しようとした場合でも、ロータリーエンコーダー4のロータリーノブ14に手を触れるだけでロータリーエンコーダー4のレイアウト画88がセンターパネル上に設置されたディスプレイ86に表示されるため、目線をあまり動かすことなく、手で触れたロータリーエンコーダー4の機能を確認することができる。
【0052】
また、運転者がロータリーノブ14に手を触れた状態でロータリーノブ14を図6(a)に示す基準位置から時計回りに回転操作すると、一緒にロータ12および可動電極52も時計回りに回転する。すると、ロータリーノブ14およびロータ12のメッキ55、47を介して人体に接続された可動電極Y1が、図6(b)に示すように、固定電極A1とちょうど対向する最接近位置まで移動する。このとき、可動電極Y1と固定電極A1との対向する面積が最大となり、固定電極A1に接地回路100(人体)が接続された状態となる。すると、固定電極A1に接続された第2人体検知回路81がHIレベル信号を制御部83に出力する。
【0053】
また、ロータリーノブ14をさらに時計回りに回転操作すると、今度は可動電極Y2が、固定電極B5との最接近位置まで移動する。これにより、固定電極B5に接地回路100が接続された状態となり、電極B5に接続された第3人体検知回路82がHIレベル信号を制御部83に出力する。そして、図6(c)に示すロータリーノブ14が1ピッチだけ時計回りに回転した状態では、スプリング45によって付勢されたボール44がホルダー10のクリック用波状部36の凹部内に当接して、ロータリーノブ14およびロータ12が停止保持された状態となる。
【0054】
続いて、ロータリーノブ14を時計回り方向にさらに1ピッチだけ回転操作すると、今度は可動電極X1が固定電極A4の上を通過した後、さらに可動電極X2が固定電極B2の上を通過する。これにより、固定電極A4に接続された第2人体検知回路81がHIレベル信号を制御部83に出力した後、固定電極B2に接続された第3人体検知回路82がHIレベル信号を制御部83に出力する。そして、以後、ロータリーノブ14の時計回り方向への回転に応じて可動接点がY1、Y2、X1、X2の順に、A電極郡24aとB電極郡24bの電極上を交互に通過して、第2、3の人体検知回路81、82の順にHIレベル信号が出力される。
【0055】
一方、ロータリーノブ14を図6(a)に示す基準位置から反時計回り方向に1ピッチだけ回転操作すると、可動電極X2が固定電極B3の上を通過した後、さらに可動電極X1が固定電極A3の上を通過する。これにより、固定電極B3に接続された第3人体検知回路82がHIレベル信号を制御部83に出力した後、固定電極A3に接続された第2人体検知回路81がHIレベル信号を制御部83に出力する。
【0056】
また、ロータリーノブ14を図6(e)の状態からさらに反時計回り方向に1ピッチだけ回転操作すると、今度は可動電極Y1が固定電極B1の上を通過した後、可動電極Y2が固定電極A5の上を通過する。これにより、固定電極B1に接続された第3人体検知回路82がHIレベル信号を制御部83に出力した後、固定電極A5に接続された第2人体検知回路81がHIレベル信号を制御部83に出力する。そして、以後、ロータリーノブ14の反時計回り方向への回転に応じて可動接点がX2、X1、Y1、Y2の順に、B電極郡24bとA電極郡24aの電極上を交互に通過して、第3、2の人体検知回路82、81の順にHIレベル信号が制御部83に出力される。
【0057】
そして、制御部83は、この第2、3人体検知回路81、82から出力されるHIレベル信号の数と順番をもとに、ロータリーノブ14の回転量と回転方向を判断する。そして、このロータリーノブ14の回転量と回転方向の情報をもとに、例えば、室内の温度の制御を行う制御機構84の設定温度を変更して、所望の設定温度となるように制御機構84を作動させる。また、記憶部87には、設定温度などの設定位置が記憶され、次回のロータリーノブ14の操作時には、この設定位置を基準として設定位置の再設定が行われる。
【0058】
また制御部83は、記憶部87に記憶された設定位置をもとに、現在の設定位置をディスプレイ制御部85を介してディスプレイ86に表示し、ロータリーノブ14の回転量と回転方向に応じて、図10に示すように、ディスプレイ86に表示された設定位置を示す表示点89を点灯、または消灯させて、設定の切り替えをディスプレイ86を見ながら行うことができるようにしている。このように構成すれば、操作者が運転中でも、あまり目線を動かすことなく、ロータリーノブ14を操作して所望の設定位置に切り替えることができる。
【0059】
また、このロータリーエンコーダー4の中央のプッシュノブ16を押圧操作してプッシュノブ16を後退させると、プッシュノブ16の押圧凸部68に押圧されたプッシュスイッチ25の操作部25aが押されて図示しない接点がオンされる。このオン信号が制御部83へ送信されて、例えば、エアコンの温度調整を自動で行うオートモードがオンされる等の所定の制御機構84の状態設定が行われる。そして、押し操作を止めるとプッシュスイッチ25内のスプリングの付勢力により操作部25aが移動して接点部の導通が解除され、プッシュノブ16を元の位置まで復帰させる。
【0060】
以上の説明から明らかなように、本実施形態のロータリーエンコーダーでは、可動電極と固定電極とが非接触で回転操作ノブの回転操作を電気的に出力することが可能であり、耐久性及び信頼性に優れたロータリーエンコーダーとすることができる。また、回転操作ノブの接触電極への人体の接触を、可動検知電極から離間した固定検知電極に伝えることが可能であるため、回転する操作ノブへのタッチセンサーの設定を容易に行うことができる。
【0061】
なお、本実施形態においては、固定検知電極20および可動検知電極50をリング状に形成したが、これに限定されるものではなく、回転操作ノブのすべての回転位置において可動検知電極と固定検知電極とが常に対向するように形成されていればよい。例えば、可動検知電極を小さい四角状の電極とし、固定検知電極は、前記可動検知電極の回転円軌道に対向する円周を含む四角状の電極であってもよい。また、回転操作ノブの回転軸上に可動検知電極と固定検知電極とを設ければ、可動検知電極は回転移動しないので、両電極の大きさを小さくすることができる。
【0062】
また、本実施形態においては、人体検知手段を、上述した構成の人体検知回路としたが、これに限定されるものではなく、例えば、固定電極または固定検知電極に電気的に接続される人体のキャパシタンス、抵抗およびインダクタンスの少なくともどれか1つの素子成分の影響による電気的変化を検出することにより、回転操作ノブの回転および回転操作ノブへの人体の接触を検知するようにしてもよい。また、例えば、可動電極または可動固定電極が人体によって接地されることによる固定電極または固定検知電極と接地間との静電容量の変化を検出することによって、人体の接近を検知するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の実施の形態に係るロータリーエンコーダー及びタッチセンサー付き回転操作ノブを採用したヒーターコントロール装置の分解斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るロータリーエンコーダーの縦断面図である。
【図3】図2の要部拡大図である。
【図4】ロータの底面図である。
【図5】絶縁基板の平面図である。
【図6】可動電極と固定電極との関係を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態に係るロータリーエンコーダー及びタッチセンサー付き回転操作ノブを採用したヒーターコントロール装置の制御回路を示すブロック図である。
【図8】人体検知回路を示す回路図である。
【図9】図8の人体検知回路の検波回路の出力および出力回路内での信号の波形を示すグラフである。
【図10】ディスプレイを示す平面図である。
【符号の説明】
【0064】
10…ホルダー、12…ロータ(回転操作ノブ)、14…ロータリーノブ(回転操作ノブ)、20…固定検知電極、22…固定電極、50…可動検知電極、52…可動電極、55…メッキ(接触電極)、80、81、82…人体検知回路(人体検知手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホルダーに回動可能に保持される回転操作ノブと、該回転操作ノブを操作する人の手指が接触する位置に設けられた接触電極と、該接触電極に接続されて前記回転操作ノブの回転操作に応じて移動する可動電極と、該可動電極の移動軌跡に対向して前記可動電極から離間して複数設けられた固定電極と、前記接触電極を通じて人体に接続された前記可動電極の移動による接近によって前記各固定電極に現れる電気的変化を検出する人体検知手段とを設けたことを特徴とするロータリーエンコーダ。
【請求項2】
前記接触電極と前記可動電極は、前記回転操作ノブに施された導電性の被膜によって形成されたことを特徴とする請求項1に記載のロータリーエンコーダ。
【請求項3】
前記複数の固定電極が所定の円周上に間隔を保って配置されるとともに、前記ホルダーが前記複数の固定電極の形成する円周と同軸上に固定された絶縁基板を設け、前記回転操作ノブは、前記固定電極が設けられた前記絶縁基板の面の面方向に対して垂直方向を回転軸とし、前記絶縁基板に対向する前記回転操作ノブの底面に設けられた前記可動電極が前記固定電極に対して前記回転操作ノブの回転軸方向に所定の距離だけ離間するように前記ホルダーに回動可能に保持されていることを特徴とする請求項1または2に記載のロータリーエンコーダー。
【請求項4】
ホルダーに回動可能に保持される回転操作ノブと、該回転操作ノブを操作する人の手指が接触する位置に設けられた接触電極と、該接触電極に接続され前記回転操作ノブに設けられた可動検知電極と、前記回転操作ノブのすべての回動位置において前記可動検知電極に対向して前記可動検知電極から離間して設けられた固定検知電極と、前記接触電極を通じて人体に接続された前記可動検知電極によって前記固定検知電極に現れる電気的変化を検出する人体検知手段とを設けたことを特徴とするタッチセンサー付き回転操作ノブ。
【請求項5】
前記接触電極と前記可動検知電極は、前記回転操作ノブに施された導電性の被膜によって形成されたことを特徴とする請求項4に記載のタッチセンサー付き回転操作ノブ。
【請求項6】
前記固定検知電極は絶縁基板上の所定の円周上に設けられるとともに、前記ホルダーは絶縁基板上における前記固定検知電極の所定の円周と同軸上に固定され、前記回転操作ノブは、前記固定検知電極が設けられた前記絶縁基板の面の面方向に対して垂直方向を回転軸とし、前記絶縁基板に対向する前記回転操作ノブの底面に設けられた前記可動検知電極が前記固定電極に対して前記回転操作ノブの回転軸方向に所定の距離だけ離間するように前記ホルダーに回動可能に保持されていることを特徴とする請求項4または5に記載のタッチセンサー付き回転操作ノブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−80778(P2007−80778A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−270138(P2005−270138)
【出願日】平成17年9月16日(2005.9.16)
【出願人】(000138462)株式会社ユーシン (241)
【Fターム(参考)】