説明

三次元形状測定装置

【課題】被検物の一部に単位距離あたりの形状変化が大きい部分があっても、データ取得時間を短くする。
【解決手段】検査光を被検物に照射する照射部21と、検査光と被検物とを相対移動させる移動部と、検査光が照射された被検物を撮像し、撮像結果を出力する撮像部22と、撮像部22の撮像結果に基づいて、前記被検物の三次元形状を前記相対移動の方向に間隔をおいて演算する座標算出部53と、被検物の形状に応じて前記間隔を変更する制御部41と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元形状測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被検物の三次元形状を非接触で測定する方法として、被検物にスリット光(シート光もしくはスポット光を走査して得られる)を照射して被検物の断面形状に対応して形成される光切断線から被検物の三次元形状を測定する光切断法(例えば、特許文献1を参照)が知られている。
【0003】
このような非接触式の三次元形状測定装置において、光照射方式を用いた撮像装置を搭載する測定ヘッドと被検物を保持する支持装置とが互いに直交する3軸方向(X、Y、Z方向)に相対移動可能である。また、三次元形状測定装置は、被検物を所定の回転軸(水平回転軸θ、チルト回転軸φなど)回りに相対回転可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−272927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通常光照射方式によるデータ取得においては、データ取り込み(スキャン)時の取り込み幅(ストライプ幅)を設定してデータを取り込む。この方式においては、被検物上において取得したい最小凹凸幅に合わせて取り込み幅を設定する。そのため、被検物の一部に単位距離あたりの形状変化が大きい部分がある場合には、データ取得時間が必要以上に長くなる傾向がある。
【0006】
そこで本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、被検物の一部に単位距離あたりの形状変化が大きい部分があっても、データ取得時間を短くすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題を解決するために、本発明は、検査光を被検物に照射する照射部と、前記検査光と前記被検物とを相対移動させる移動部と、前記検査光が照射された前記被検物を撮像し、撮像結果を出力する撮像部と、前記撮像部の撮像結果に基づいて、前記被検物の三次元座標を前記相対移動の方向に間隔をおいて演算する演算部と、前記被検物の形状に応じて前記間隔を変更する制御部と、を備えることを特徴とする三次元形状測定装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、被検物の一部に単位距離あたりの形状変化が大きい部分があっても、データ取得時間を短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態による三次元形状測定装置の概略構成を示す模式図である。
【図2】本発明の一実施形態による三次元形状測定装置のブロック図である。
【図3】被検物に照射光が当たっているときの、データ取り込みを説明するための図である。
【図4】データ取り込み時に取り込み幅を狭くする方法を説明するための図である。
【図5】予め取り込み幅を設定する処理の流れを示したフローチャートである。
【図6】データ取り込み時に、取り込み幅を変更する処理の流れを示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。本発明の実施形態では、測定対象の形状に応じて取り込み幅を動的に制御して、形状変化が緩やかな領域は高速にデータを取得することで、全体の測定時間の短縮および取得データ(点群)サイズを小さくする。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態による三次元形状測定装置の概略構成を示す模式図である。測定機本体1は、水平な基台2と、この基台2上に設けられた測定ヘッド13を支持する門型構造体10と、基台2上に設けられ被検物3を載置する支持装置30とを主体に構成される。
【0012】
門型構造体10は、基台2上にY方向(紙面に垂直な方向でこれを前後方向とする)に
延びて設けられたガイドレール(不図示)上をY方向に移動自在に設けられた支柱11と、両支柱11の間で水平に延びるように架け渡された水平フレーム12と、水平フレーム12上をX方向(左右方向)に移動自在に設けられたキャリッジ(不図示)に対してZ方向(上下方向)に移動自在に設けられた測定ヘッド13とを有して構成される。
【0013】
支持装置30は、被検物3を載置するステージ31と、基台2上に設けられステージ31を垂直(Z軸方向)に延びる回転軸θを中心として水平面内で回転可能、且つ、水平(X軸方向)に延びる回転軸φを中心として回転(揺動)可能に支持する支持テーブル32と、を有して構成される。
【0014】
制御ユニット40は、制御部41と、入力装置42と、ジョイスティック43と、モニタ44とを用いて構成されている。制御部41は、測定機本体1を制御する。詳細は後述する。入力装置42は、各種指示情報を入力するキーボードなどである。ジョイスティック43は、測定ヘッド13およびステージ31の移動を操作するための入力装置である。モニタは、計測画面、指示画面、計測結果等を表示する。
【0015】
図2は、本発明の一実施形態による三次元形状測定装置のブロック図である。
三次元形状測定装置は、測定機本体1と、制御ユニット40とを用いて構成されている。
測定機本体1は、駆動部16と、位置検出部17と光プローブ20とを有して構成されている。
【0016】
門型構造体10中には、入力される駆動信号に基づき測定ヘッド13を3方向(X、Y、Z方向)に電動で移動させるヘッド駆動部14と、測定ヘッド13の座標を検出し測定ヘッド13の座標値を表す信号を出力するヘッド位置検出部15と、が存在する。
【0017】
一方、支持装置30には、入力される駆動信号に基づきステージ31を回転軸θ、φ回りに電動でそれぞれ回転駆動させるステージ駆動部33と、ステージ31の座標を検出し、ステージ座標値を表す信号を出力するステージ位置検出部34とが設けられている。
【0018】
駆動部16は、ヘッド駆動部14とステージ駆動部33とを用いて構成されている。
ヘッド駆動部14は、支柱11をY方向に駆動するY軸用モータ、キャリッジをX方向に駆動するX軸用モータ、測定ヘッド13をZ方向に駆動するZ軸モータを有して構成される。ヘッド駆動部14は、駆動制御部54から供給される駆動信号を受け取る。ヘッド駆動部14は、その駆動信号に基づき測定ヘッド13を3方向(X、Y、Z方向)に電動で移動させる。
【0019】
ステージ駆動部33は、ステージ31を回転軸θ、φ回りにそれぞれ回転駆動するロータリ軸モータおよびチルト軸モータを有して構成される。ステージ駆動部33は、駆動制御部54から供給される駆動信号を受け取る。ステージ駆動部33は、その駆動信号に基づき測定ヘッド13を3方向(X、Y、Z方向)に電動で移動させる。
【0020】
位置検出部17は、ヘッド位置検出部15と、ステージ位置検出部34とを用いて構成されている。
ヘッド位置検出部15は、測定ヘッド13のX軸、Y軸、およびZ軸方向の位置をそれぞれ検出するX軸用エンコーダ、Y軸用エンコーダ、およびZ軸用エンコーダを有して構成される。ヘッド位置検出部15は、それらのエンコーダを用いて測定ヘッド13の座標を検出し、測定ヘッド13の座標値を表す信号を座標検出部51へ供給する。
【0021】
ステージ位置検出部34は、ステージ31の回転軸θ、φ回りの回転位置をそれぞれ検出するロータリ軸用エンコーダおよびチルト軸用エンコーダを有して構成される。ステージ位置検出部34は、それらのエンコーダを用いて、ステージ31の回転軸θ、φ回りの回転位置を検出し、検出した回転位置を表す信号を座標検出部51へ供給する。
【0022】
光プローブ20は、光切断方式により被検物3の表面形状を求めるために、スリット光照射部(照射部)21と、CCDカメラ(撮像部)22とを備えて構成される。
スリット光照明部(照射部)21は、間隔調整部52の光の照射を制御する制御信号に基づき、被検物3に直線上の光があたるように、被検物3に直線状のスリット光(パターン光の1種)を照射する。
【0023】
CCDカメラ22は、スリット光照射部21の照射方向に対して光軸を所定角度ずらして配置される。CCDカメラ22は、スリット光照明部(照射部)21からの照射光により被検物3の表面に形成される光切断線を撮像する。ここで、光切断線は、被検物3の断面形状に応じて形成される。CCDカメラ22は、撮像した画像情報を間隔調整部52へ供給する。
【0024】
続いて、制御ユニットについて説明する。
入力装置42は、各種指示情報を入力するキーボードなどを用いて構成される。入力装置42は、入力された指示情報を記憶部55へ供給する。
ジョイスティック43は、ユーザの操作を受けて、その操作に応じて測定ヘッド13やステージ31を移動させるための移動信号を生成して駆動制御部54へ供給する。
【0025】
制御部41は、座標検出部51と、間隔調整部52と、座標算出部(演算部)53と、駆動制御部54と、記憶部55と、移動指令部56と、データ出力部57と、取り込み幅算出部58と、フレーム間隔算出部59とを用いて構成されている。制御部41は、被検物3の形状に応じて、被検物3の三次元座標を相対移動の方向に演算する間隔を変更する。
【0026】
座標検出部51は、ヘッド位置検出部15およびステージ位置検出部34から出力される座標信号によって、光プローブ20およびステージ31の位置、すなわち水平方向における観察位置(光軸中心位置)と上下方向における観察位置とを検知し、座標として算出する。そして、座標検出部51は、光プローブ20の座標とステージ31の座標とを座標算出部53へ供給する。
【0027】
また、座標検出部51は、光プローブ20の座標とステージ31の座標とを用いて、光プローブ20とステージ31との相対的な移動経路、移動速度などを検出する。そして、座標検出部51は、その移動速度を示すデータをフレーム間隔算出部59へ供給する。
【0028】
間隔調整部52は、被検物の形状に応じて、CCDから画像を受け取る間隔であるフレームの取り出し間隔(フレーム間隔)を変更する。具体的な処理は、例えば以下の通りである。間隔調整部52は、座標計測開始前に記憶部55からサンプリング周波数を指定するデータを読み出す。間隔調整部52は、そのサンプリング周波数で、CCDカメラ22から画像情報を受け取る。また、予め設計データからフレーム間隔(CCDから画像を受け取る間隔)が決まっている場合、間隔調整部52は、記憶部55から現在のフレーム(CCDの1画像)から次のフレームまでの時間または所定時間毎に、受け取るフレームの数であるフレーム間隔を指定するデータを読み出す。
【0029】
一方、スキャン時にフレーム間隔を算出する場合、間隔調整部52は、フレーム間隔算出部59から供給されたフレーム間隔を指定するデータを受け取る。間隔調整部52は、受け取ったフレーム間隔を指定するデータに従って、あるフレームの画像情報を取り出す。そして、間隔調整部52は、取り出されたフレームの画像情報を、座標算出部53へ供給する。
【0030】
座標算出部(演算部)53は、CCDカメラ(撮像部)22の撮像結果に基づいて、被検物3の三次元座標を前記相対移動の方向に間隔をおいて演算する。具体的には、座標算出部53は、間隔調整部52から取り出されたフレームの画像情報を受け取る。座標算出部53は、座標検出部51から供給された光プローブ20の座標を受け取る。座標算出部53は、取り出されたフレームの画像情報と光プローブ20の座標とに基づき、各測定ポイントの座標値(三次元座標値)の点群データを算出する。
【0031】
具体的な算出方法は以下の通りである。まず、座標算出部53は、受け取った光プローブ20の座標から、光プローブ20に固定されたスリット光照射部(照射部)21の座標と、CCDカメラ(撮像部)22の座標を算出する。
ここで、スリット光照射部(照射部)21は光プローブ20に固定されているので、スリット光照射部(照射部)21の照射角度は、光プローブ20に対して固定である。また、CCDカメラ(撮像部)22も光プローブ20に固定されているので、CCDカメラ(撮像部)22の撮像角度は、光プローブ20に対して固定である。
【0032】
座標算出部53は、照射した光が被検物3に当たった点を、画像の画素毎に、三角測量を用いて算出する。ここで、照射した光が被検物3に当たった点の座標は、スリット光照射部(照射部)21の座標から照射部21の照射角度で描画される直線と、CCDカメラ(撮像部)22の座標から撮像部22の撮像角度で描画される直線とが交わる点の座標である。
【0033】
これによって、被検物3に照射されるスリット光を所定の方向に走査させることにより、光が照射された位置の座標を算出することができるので、被検物3の表面形状を求めることができる。
また、座標算出部53は、算出した三次元座標値の点群データを記憶部55に保存する。
【0034】
記憶部55は、入力装置42から供給された各種指示情報を測定条件テーブルとして保持する。ここで、測定条件テーブルは、測定条件や測定手順等の所定の移動指令データ、被検物3の測定開始点(最初の測定ポイント)および測定終了点(最後の測定ポイント)等の座標値、測定開始位置での測定目標方向、各測定ポイントの間隔(例えば、一定間隔の測定ピッチ)を表すデータなどを用いて構成されている。
【0035】
ここで、被検物3の測定開始点および測定終了点等の座標値は、入力装置42による当該座標値のキー入力の他、予めジョイスティック43の操作によって測定ヘッド13およびステージ31を移動させ、被検物3および光プローブ20を所望の姿勢に位置決めして、座標算出部53が、当該測定ポイントの座標値を算出する。そして、座標算出部53は、その座標値を示すデータを記憶部55に保存する。
【0036】
記憶部は、座標算出部53から供給された三次元座標値の点群データを測定データとして保持する。また、記憶部55は、座標検出部51から供給された各測定ポイントの座標値(三次元座標値)の点群データを保持する。また、記憶部55は、設計データ(CADデータ)を保持する。
【0037】
移動指令部56は、記憶部55から測定条件テーブルに登録された被検物3の測定開始点(最初の測定ポイント)および測定終了点(最後の測定ポイント)等を読み出す。移動指令部56は、被検物3の測定開始点および測定終了点から、被検物3に対するスキャンの移動経路を算出する。移動指令部56は、算出した移動経路にしたがって、測定ヘッド13およびステージ31を移動させるべく、駆動制御部54を介してヘッド駆動部14とステージ駆動部33とに移動指令を送信する。また、移動指令部56は、移動指令データ等に基づいて、駆動制御部54に制御信号を供給して光プローブ20の光学系の制御を行う。
【0038】
駆動制御部54は、ジョイスティック43からの操作信号に基づいて、または、移動指令部56からの指令信号に基づいて、ヘッド駆動部14およびステージ駆動部33に駆動信号を出力して、測定ヘッド13(光プローブ20)およびステージ31の駆動制御を行う。
【0039】
データ出力部57は、記憶部55から測定データ(全測定ポイントの座標値)等を読み出す。データ出力部57は、その測定データ(全測定ポイントの座標値)等をモニタ44に供給する。また、データ出力部57は、測定データ(全測定ポイントの座標値)等をプリンタ(不図示)へ出力する。
【0040】
モニタ44は、データ出力部57から供給された測定データ(全測定ポイントの座標値)等を受け取る。モニタ44は、受け取った測定データ(全測定ポイントの座標値)等を表示する。また、モニタ44は、計測画面、指示画面等を表示する。
【0041】
図3は、被検物3に照射光が当たっているときの、データ取り込みを説明するための図である。ここで、照射部21から照射されるライン光は、スキャン方向に垂直な光の線である。
領域61と領域62は、傾斜角度変化が少なく緩やかな傾斜であるため、単位スキャン方向の距離あたりのデータ取り込み(スキャン)面に垂直な方向の座標の変化量(以下、zの変化量と称す)が小さい。一方、領域63は、丸い穴が4つ存在するため、単位スキャン方向の距離あたりのスキャン面に垂直な方向の座標の変化量が大きくなるところが存在する。
【0042】
取り込み幅算出部58は、座標取り込み方向(スキャン方向)に隣り合う2点間(例えば、図4でt時のスキャン位置71とt時のスキャン位置72との間)で、スキャン面に垂直な方向の座標の変化量が所定の設定量以下で、かつ取り込み幅が大きくなるように取り込み幅を算出する。その結果、例えば図3において、領域61の取り込み幅w61と領域62の取り込み幅w62は、領域63の取り込み幅w63より幅が広くなる。
【0043】
取り込み幅算出部58は、算出した取り込み幅をフレーム間隔算出部59に供給する。
ここで、取り込み幅算出部58が座標の取り込み幅を算出する方法には、以下の2つの方法がある。
【0044】
<予め取り込み幅を設定する方法>
まず、予め取り込み幅を設定する方法について説明する。被検物3の設計データが存在する場合は、取り込み幅算出部58は、その設計データを記憶部55から読み出す。取り込み幅算出部58は、設計データ中の被検物3の表面の領域を、所定の領域に分割する。例えば、図3において、取り込み幅算出部58は、被検物3の表面の領域を、領域61と、領域62と、領域63と、に分割する。
【0045】
取り込み幅算出部58は、設計データから、被検物3表面の凹凸のうち最小の凹凸幅(以下、最小凹凸幅と称する)を算出する。取り込み幅算出部58は、被検物3表面をその最小凹凸幅に基づいた幅(例えば、最小凹凸幅の半分の幅)の正方形で分割し、その分割した正方形の4隅の点の座標を算出する。これによって、予め被検物3表面の座標を推定することができる。
その算出結果から、全ての取り込み区間で、スキャン面に垂直な方向の座標の変化量が所定の設定量の範囲内に収まるように、領域毎に1つの取り込み幅を算出する。
【0046】
例えば、図3において、取り込み幅算出部58は、領域61において、領域61における全ての取り込み区間でスキャン面に垂直な方向の座標の変化量が所定の設定量の範囲内に収まるように、取り込み幅w61を算出する。同様に、取り込み幅算出部58は、領域62において取り込み幅w62を算出する。また、同様に、取り込み幅算出部58は、領域63において取り込み幅w63を算出する。
【0047】
取り込み幅算出部58は、被検物3表面の座標に関係づけられた取り込み幅をフレーム間隔算出部59へ供給する。
【0048】
<スキャン時に取り込み幅を算出する方法>
次に、スキャン時に取り込み幅を算出する方法について説明する。図4は、スキャン時に取り込み幅を狭くする方法を説明するための図である。
時刻t時のスキャン座標は(x、z)であり、次の時刻t時のスキャン座標は(x、z)である。wは現在の取り込み幅、sはスキャン面に垂直な方向の座標の変化量の設定量、hはx座標がxからxに移動したときのスキャン面に垂直な方向の座標の変化量である。
【0049】
制御ユニット40が、ある取り込み幅wでスキャンを開始する。取り込み幅算出部58は、座標算出部53から被検物3の座標を順次受け取る。取り込み幅算出部58は、現在照射部21が照射した位置のz座標と、フレームが間引かれた画像情報のうち現在から1つ前の画像情報を取得した時に照射部21が照射した位置のz座標との差分であるスキャン面に垂直な方向の座標の変化量hを算出する。
【0050】
スキャン面に垂直な方向の座標の変化量hが、予め決められた設定量s以上に変化した場合は、取り込み幅算出部58は、現在の取り込み幅wに、s/hを乗じて、新たな取り込み幅w×s/hを算出する。そして、取り込み幅算出部58は、その新たな取り込み幅w×s/hを、フレーム間隔算出部59に供給する。
【0051】
フレーム間隔算出部59は、新たな取り込み幅w×s/hを受け取る。フレーム間隔算出部59は、その新たな取り込み幅w×s/hと、移動速度と、サンプリング周波数とから、新たなフレーム間隔を算出する。
【0052】
続いて、設定量以内に収まっていた座標まで戻ってから、再度スキャンする手順を説明する。取り込み幅算出部58は、設定量以内に収まっていた座標まで戻す距離を算出する。具体的には、例えば、取り込み幅算出部58は、図4において、t時のスキャン位置72からt時のスキャン位置71までの距離(この場合、取り込み幅w)を算出する。そして、取り込み幅算出部58は、その距離を駆動制御部54へ供給する。
【0053】
駆動制御部54は、取り込み幅算出部58から供給された距離を受け取る。駆動制御部54は、ヘッド駆動部16またはステージ駆動部33を制御して、光プローブ20の位置を供給された距離だけ戻す。次に、間隔調整部52は、新しいフレーム間隔で再度画像情報の取り込みを開始する。
【0054】
例えば、図4において、駆動制御部54は、ヘッド駆動部14またはステージ駆動部33を制御して、スキャンのx座標をxの地点からxの地点まで戻す。
そして、間隔調整部52は、その新たなフレーム間隔で、CCDカメラ22から供給された画像情報を取り出しながら、画像情報を取り込む。
【0055】
一方、スキャン面に垂直な方向の座標の変化量hが予め決められた設定量sより小さくなった場合は、取り込み幅算出部58は、現在の取り込み幅wに、s/hを乗じて、新たな取り込み幅w×s/hを算出する。これによって、取り込み幅がs/h倍に広くなる。
そして、間隔調整部52は、その新たな取り込み幅でスキャンを続行する。なお、この場合、制御ユニット40は、スキャン位置を戻して、スキャンし直すように制御する必要はない。
【0056】
フレーム間隔算出部59は、座標検出部51から供給された移動速度を受け取る。フレーム間隔算出部59は、記憶部55からサンプリング周波数を読み出す。
そして、設計データから取り込み幅を算出した場合は、フレーム間隔算出部59は、被検物3表面の座標に関係づけられた取り込み幅を受け取る。一方、取り込み時にスキャン面に垂直な方向の座標の変化量に応じて取り込み幅を変更する場合には、フレーム間隔算出部59は、取り込み幅算出部58から供給された取り込み幅を順次受け取る。
【0057】
フレーム間隔算出部59は、受け取った移動速度と、取り込み幅と、読み出したサンプリング周波数とから、データの取り込み幅が受け取った取り込み幅になるように、被検物3の領域毎に、現在のフレームから次のフレームまでの間にあるフレームの数であるフレーム間隔を指定するデータを算出する。
【0058】
設計データから取り込み幅を算出した場合は、フレーム間隔算出部59は、算出した被検物3の領域毎のフレーム間隔を指定するデータを記憶部55に保存する。
一方、取り込み時にスキャン面に垂直な方向の座標の変化量に応じて取り込み幅を変更する場合には、フレーム間隔算出部59は、算出したフレーム間隔を指定するデータを間隔調整部52へ順次供給する。
【0059】
図5は、予め取り込み幅を設定する処理の流れを示したフローチャートである。被検物3の設計データが存在する場合は、取り込み幅算出部58は、その設計データを記憶部55から読み出す(ステップS501)。次に、取り込み幅算出部58は、設計データ中の被検物3の表面の領域を、所定の領域に分割する(ステップS502)。
【0060】
次に、取り込み幅算出部58は、分割した領域毎に、被検物3表面の最小凹凸幅に基づいた幅(例えば、最小凹凸幅の半分の幅)でスキャンした場合の、被検物3表面の座標を推定する(ステップ S503)。次に、取り込み幅算出部58は、その被検物3の座標点から、スキャン面に垂直な方向の座標の変化量を算出する(ステップS504)。取り込み幅算出部58は、算出した変化量が所定の範囲内に収まるように、領域毎に1つの取り込み幅を算出する(ステップS505)。
【0061】
次に、取り込み幅算出部58は、その取り込み幅をフレーム間隔算出部59へ供給する。フレーム間隔算出部59は、その取り込み幅に基づいて、被検物3中の領域毎にフレーム間隔を算出する(ステップS506)。フレーム間隔算出部59は、被検物3の領域毎のフレーム間隔を記憶部55に保存する。
以上で、本フローチャートは終了する。
【0062】
なお、取り込み幅算出部58は、被検物3表面の最小凹凸幅に基づいた幅(例えば、最小凹凸幅の半分の幅)でスキャンした場合の被検物3表面の座標を推定したが、これに限らず、設定可能な最小の取り込み幅で(例えば、50μm)でスキャンした場合の被検物3の座標点を推定してもよい。
また、取り込み幅算出部58は、領域毎に1つの取り込み幅を算出したが、これに限らず、領域毎に複数の取り込み幅を算出してもよい。
【0063】
以上により、被検物3において、スキャン面に垂直な方向の座標の変化量が小さい領域のデータを間引くことができる。これによって、スキャンの時間を短縮することができる。
【0064】
図6は、データ取り込み時に、取り込み幅を変更する処理の流れを示したフローチャートである。
まず、駆動制御部54が、照射部21が照射したライン光が移動するように駆動部16を制御する。そして、間隔調整部52は、ある取り込み間隔で、CCDカメラ22から供給された画像情報を順次取り込む(ステップS601)。次に、取り込み幅算出部58が算出したスキャン面に垂直な方向の座標の変化量hが、予め決められた設定量s未満の場合(ステップS602 NO)、制御ユニット40はステップS606の処理に進む。
【0065】
一方、取り込み幅算出部58が算出したスキャン面に垂直な方向の座標の変化量hが、予め決められた設定量s以上に変化した場合は(ステップS602 YES)、取り込み幅算出部58は、現在の取り込み幅wに、s/hを乗じて、新たな取り込み幅w×s/hを算出する(ステップS603)。
【0066】
次に、取り込み幅算出部58は、その新たな取り込み幅w×s/hを、フレーム間隔算出部59に供給する。フレーム間隔算出部59は、供給された新たな取り込み幅w×s/hを受け取る。フレーム間隔算出部59は、受け取った新たな取り込み幅w×s/hから、新たなフレーム間隔を算出する(ステップS604)。そして、フレーム間隔算出部59は、その新たなフレーム間隔を、間隔調整部52へ供給する。
【0067】
取り込み幅算出部58は、設定量以内に収まっていた領域の最終点を算出する。取り込み幅算出部58は、その設定量以内に収まっていた領域の最終点を駆動制御部54へ供給する。駆動制御部54は、設定量以内に収まっていた領域の最終点まで戻るよう駆動部16を制御する(ステップS605)。次に、間隔調整部52は、その新たなフレーム間隔で、CCDカメラ22から供給された画像情報を間引きながら、画像情報を取り込む。
【0068】
次に、被検物3中にスキャンする箇所が有る場合(ステップS606 NO)、制御ユニット40は、ステップS601の処理に戻る。一方、制御ユニット40は、被検物3中にスキャンする箇所が無い場合(ステップS606 YES)、制御ユニット40は、スキャンを終了する。以上で、本フローチャートは終了する。
【0069】
以上により、被検物3のスキャン中に、スキャン面に垂直な方向の座標の変化量が所定の設定量よりも大きい場合、スキャンの取り込み幅を小さくすることができる。これによって、スキャンの取り込み幅をスキャン面に垂直な方向の座標の変化量に応じて、動的に変更することができるので、スキャンの時間を短縮することができる。
【0070】
なお、本発明の実施形態では、図1に示すブリッジ型の三次元形状測定装置について説明したがこれに限らず、多関節型アームの先端に非接触センサを有するプローブを取り付けた形状測定装置であって、測定者が手動で操作することにより被検査物体の形状を測定するように構成された装置であってもよい。また、本実施形態では、フレームの取り出し間隔を変更するようにしたが、フレームの取り出し間隔を一定とし被検物3のスキャン速度を変更しても良い。
【0071】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0072】
1 測定機本体
3 被検物
11 支柱
12 水平フレーム
13 測定ヘッド
14 ヘッド駆動部
15 ヘッド位置検出部
16 駆動部
17 位置検出部
20 光プローブ
21 スリット光照射部(照射部)
22 CCDカメラ(撮像部)
30 支持装置
31 ステージ
33 ステージ駆動部
14 ヘッド駆動部
33 ステージ駆動部
34 ステージ位置検出部
40 制御ユニット
42 入力装置
43 ジョイスティック
44 モニタ
51 座標算出部
52 間隔調整部
53 座標算出部(演算部)
54 駆動制御部
55 記憶部
56 移動指令部
57 データ出力部
58 取り込み幅算出部
59 フレーム間隔算出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査光を被検物に照射する照射部と、
前記検査光と前記被検物とを相対移動させる移動部と、
前記検査光が照射された前記被検物を撮像し、撮像結果を出力する撮像部と、
前記撮像部の撮像結果に基づいて、前記被検物の三次元座標を前記相対移動の方向に間隔をおいて演算する演算部と、
前記被検物の形状に応じて前記間隔を変更する制御部と、
を備えることを特徴とする三次元形状測定装置。
【請求項2】
前記被検物の設計データを記憶する記憶部を更に備え、
前記制御部は、前記設計データに基づいて前記間隔を算出することを特徴とする請求項1に記載の三次元形状測定装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記被検物の設計データから前記パターン光が照射する領域を複数に分割し、前記領域毎に前記間隔を算出することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の三次元形状測定装置。
【請求項4】
前記制御部は、隣り合う2点間において、前記被検物の表面に垂直な方向の三次元形状の変化量が所定の設定量以下になるように、前記間隔を算出することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の三次元形状測定装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記演算された三次元形状に基づいて、前記照射部がパターン光を照射する面に垂直な方向の座標の変化量を算出し、前記座標の変化量が所定の設定量以下になるように、前記変化量と前記設定量とに基づいて、前記間隔を更新することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の三次元形状測定装置。
【請求項6】
前記演算部の前記撮像結果の取得タイミングと、前記移動部の前記相対移動の速度との少なくとも一方を変更することにより、前記間隔の変更を行うことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の三次元形状測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−141245(P2012−141245A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−655(P2011−655)
【出願日】平成23年1月5日(2011.1.5)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】