説明

三次元形状計測装置、三次元形状計測方法、三次元形状計測プログラム、および記録媒体

【課題】迅速かつ高精度に三次元形状情報を計測できる三次形状元計測装置を実現する。
【解決手段】位置に応じて周期的に輝度が変化する光パタンを、計測対象12が計測される搬送ステージ52上の一部の領域へ投影する投光部20と、光パタン照射領域14を撮像する第1のラインセンサ36と、光パタン非照射領域16を撮像する第2のラインセンサ38と、第1のラインセンサ36が撮像した画像82および第2のラインセンサ38が撮像した画像84から、背景情報を除去した画像86に含まれるある画素における光パタンの位相を、画像86における画素とその周辺の画素との輝度値に基づいて算出し、算出した位相に基づいて計測対象12の高さ情報を算出する画像解析・駆動制御部40とを備え、第1のラインセンサ36および第2のラインセンサ38は、それぞれ、光パタン照射領域14および光パタン非照射領域16を、同時に撮像できるように配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測対象に投影された光パタンを解析することによって、計測対象の三次元形状を計測する三次元形状計測装置、三次元形状計測方法、三次元形状計測プログラム、および記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像解析によって対象物の三次元形状情報を得る手段として、所定の撮像視野内に存在する計測対象に光パタンを投影し、計測対象の三次元形状に応じて変形した光パタンの変形量を解析する方法がある。代表的な方法としては、光切断法や空間コード法、縞解析法などが挙げられる。これらは全て三角測量の原理に基づいているが、中でも、縞解析法に関しては空間縞解析や時間縞解析など多くの手法が提案されており、高い計測精度を得る手法として知られている。
【0003】
ところで、通常これらの手法では、光パタンが投影された計測対象の読み取りにエリアセンサを用いているが、エリアセンサを用いると、計測対象が1撮像視野内に収まらないために、エリアセンサを縦及び横の双方に移動させながら1撮像視野ずつ複数回に分けて撮像する必要が度々生じ、撮像時間が長くなってしまうという問題が起こっている。
【0004】
このような問題に対する解決策として、例えば特許文献1、2では、エリアセンサの代わりにラインセンサを用いた三次元形状計測方法が提案されている。特許文献1の計測方法では、光パタンを投影した計測対象をラインカメラで撮像し、続いて、計測対象を搬送することによって投影される光パタンの位相をずらし、位相のずれた光パタンが投影された計測対象をまた別のラインカメラで撮像し、といったことを複数回繰り返し、撮像した複数枚の画像に含まれる光パタンを時間縞解析法(位相シフト法)に基づいて解析することによって三次元形状を測定している。
【0005】
また、特許文献2の三次元形状測定装置では、光パタンが投影された計測対象を、異なる位置に設置された2つのラインカメラによって別々に撮像し、撮像した2つの画像からステレオ法に基づいて三次元形状を測定している。
【0006】
このような問題に対する解決策として、例えば特許文献1では、エリアセンサの代わりにラインセンサを用いた三次元形状計測方法が提案されている。特許文献1の計測方法では、光パタンを投影した計測対象をラインカメラで撮像し、続いて、計測対象を搬送することによって投影される光パタンの位相をずらし、位相のずれた光パタンが投影された計測対象をまた別のラインカメラで撮像し、といったことを複数回繰り返し、撮像した複数枚の画像に含まれる光パタンを時間縞解析法(位相シフト法)に基づいて解析することによって三次元形状を測定している。
【0007】
また、特許文献2の三次元形状測定装置では、光パタンが投影された計測対象を、異なる位置に設置された2つのラインカメラによって別々に撮像し、撮像した2つの画像からステレオ法に基づいて三次元形状を測定している。
【特許文献1】特開2002−286433号公報(2002年10月3日公開)
【特許文献2】特開2004−117186号公報(2004年4月15日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来の技術は、ラインセンサの配置に困難を要したり、撮像に長時間を要したりするという問題を抱えている。
【0009】
例えば、特許文献1に記載の技術では、縞解析法として、計測対象に投影する光パタンの位相を変えながら、計測対象の同一の部分を同一の角度から複数回撮像する時間縞解析法を用いている。ここで、複数のラインセンサを用いて、直線方向に搬送される計測対象の同一部分を撮像するためには、全てのラインセンサを厳密に平行に配置しなければならない。その上、全てのラインセンサを、計測対象を載置する基準面から同一の距離になるように配置する必要もある。さらに、同じ角度から撮像するためには、全てのラインセンサを同じ姿勢で配置しなければならない。例えば特許文献1では4本のラインセンサを用いているが、これら4本のラインセンサを上記のように配置することは、実際には困難を要する。
【0010】
以上のように、特許文献1に記載の技術は、ラインセンサの配置が困難になってしまうという問題を有している。さらに、複数のラインセンサが必要なことから、計測装置の大型化、高価格化、又はトラブル頻度の上昇などを招くおそれもある。
【0011】
また、時間縞解析法を用いる際に、複数のラインセンサを用いる代わりに、1つのラインセンサで複数回計測対象を撮像する方法もあるが、この場合、並行処理ができないために、解析に必要な枚数分の画像を撮像するのに複数のラインセンサを用いる場合の数倍(例えば4枚の画像を撮像する場合は4倍など)の時間を要してしまう。よって、計測に要する時間が長くなってしまうという問題が生じる。
【0012】
一方、特許文献2に記載の技術では、2つのラインセンサによって得られた2つの画像からステレオ法によって三次元形状を計測しているが、ステレオ法によって三次元形状を計測するためには、2つのラインセンサの精確な幾何学的配置を知っておく必要がある。それゆえ、この場合もまた2つのラインセンサの配置を精確に行う必要があり、ラインセンサの配置が困難になってしまうという問題が生じる。さらに、特許文献2の方法は、ステレオ法を用いることから、三次元形状の測定精度をラインセンサの画素以下の分解能にするのが困難であり、それゆえ測定精度が悪くなってしまうという問題も有している。
【0013】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、広い視野に渡る計測対象の三次元形状情報を迅速かつ容易に計測できる三次元形状計測装置及び三次元形状計測方法を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る三次元形状計測装置は、上記課題を解決するために、ラインセンサにより読み取られた画像に含まれる或る画素における光パタンの位相を、画像における画素とその周辺の画素との輝度値に基づいて算出し、算出した位相に基づいて計測対象の高さ情報を算出する空間縞解析法を用いている。
【0015】
すなわち、本発明の三次元形状計測装置は、計測対象に投影された光パタンを解析することによって、計測対象の三次元形状を計測する三次元形状計測装置であって、位置に応じて周期的に輝度が変化する光パタンを、上記計測対象が設置される計測面の一部の領域へ投影する光パタン投影手段と、上記計測対象の光パタンが投影された光パタン照射領域を撮像する第1のラインセンサと、上記計測対象の光パタンが投影されていない光パタン非照射領域を撮像する第2のラインセンサと、上記第1および第2のラインセンサが撮像した画像から、背景情報を除去した画像に含まれる或る画素における光パタンの位相を、上記画像における上記画素とその周辺の画素との輝度値に基づいて算出し、算出した位相に基づいて上記計測対象の高さ情報を算出する処理手段とを備え、上記第1および第2のラインセンサは、それぞれ、上記光パタン照射領域および光パタン非照射領域を、同時に撮像できるように配置されていることを特徴としている。
【0016】
上記の構成によれば、三次元形状計測装置は、計測対象に投影された光パタンを画像として読み取るための第1のラインセンサと、光パタンが投影されていない計測対象の画像を読み取るための第2のラインセンサとを備えている。このように、エリアセンサでなくラインセンサを用いることによって、撮像領域をラインセンサの長手方向(副走査方向)に延長することができる。このため、ラインセンサに対して計測対象を副走査方向に相対的に移動させる回数を減らし(好ましくはゼロにし)つつ、高解像度で計測対象を撮像することができる。これにより、迅速かつ高精度に三次元形状情報を計測することができる。
【0017】
ここで、三次元形状計測装置は、計測対象に投影された光パタンを解析することによって、計測対象の形状情報を算出する。この光パタンは、位置に応じて周期的に輝度が変化するものであり、計測対象の或る位置に投影された光パタンの位相が基準となる位相からどの程度ずれているかに基づいて、計測対象のその位置における高さを算出することができる。
【0018】
ここで、計測対象の各部分に投影された光パタンの位相は、ラインセンサによって撮像された画像の輝度値から算出される。すなわち、光パタンの投影された計測対象の或る位置に対応する画素(以下「注目画素」という)の輝度値から、その輝度値に対応する位相を算出する。しかしながら、光パタンの位置(すなわち位相)と輝度値(すなわち変位)とが周期性を有する連続関数によって表される場合、ある1点の輝度値(変位)を与える位相は、同一周期内に最低でも2つ存在する。例えば、y=sinθによって表される関数において、変位y=0を与える位相θは0及びπの2つ存在する。従って、注目画素の輝度値(変位)のみから、その輝度値に対応する位相を1つに決定することはできない。
【0019】
この際、従来の技術では、時間縞解析法を用いることによって注目画素における位相を決定していた。つまり、注目画素の輝度値によってその輝度値に対応する位相を2つに絞り込んでおき、さらに、光パタンの位相をずらして撮像した別の画像における対応する画素の輝度値に基づいて、注目画素における光パタンの位相を1つの値に決定していた。このためには、計測対象の反射特性が厳密に一様であったとしても、計測対象の同一部分を撮像した画像が最低でも2つ必要となり、計測対象の同一部分に対して2回以上の延べ走査回数を必要とする。
【0020】
これに対して、本発明に係る三次元形状計測装置は、ラインセンサにより読み取られた画像に含まれる或る画素における光パタンの位相を、その画素とその周辺の画素との輝度値に基づいて算出する画像解析部を備えている。すなわち、注目画素における光パタンの位相を、その画素の輝度値に基づいて絞り込むとともに、注目画素の周辺における画素の輝度値に基づいて画素における光パタンの位相を1つの値に特定する。
【0021】
この原理について説明すると、周期性を有する連続関数において、或る1つの変位を与える位相は同一周期内に少なくとも2つ存在するが、その2つの位相の周辺における変位は、その2つの位相の間で異なっている。例えば、上記の例において変位y=0を与える位相θは0及びπの2つあるが、ここで、注目画素における位相が0の場合とπの場合とでは、周辺の画素の輝度値(変位)が異なることになる。もし、注目画素における位相が0の場合、例えば注目画素よりも少し位相が小さい側に存在する周辺画素の輝度値は、注目画素の輝度値よりも小さくなる。一方、注目画素における位相がπの場合は、注目画素よりも少し位相が小さい側に存在する周辺画素の輝度値が注目画素の輝度値よりも大きくなる。従って、注目画素の近傍における画素の輝度値に基づいて、光パタンの位相を1つに決定することができるのである。
【0022】
さらに、本発明の三次元形状計測装置では、光パタン投影手段が計測対象を設置する計側面の一部の領域に対して光パタンを投影している。第1のラインセンサは、上記光パタンが投影された光パタン照射領域を撮像する位置に配置され、第2のラインセンサは、上記光パタンが照射されていない光パタン非照射領域を撮像する位置に配置されている。
【0023】
計測精度を向上させるために、光パタンが投影された画像と、光パタンが投影されていない画像とを撮像し、各画像を比較することによって背景情報を除去する方法が考えられる。この場合、単独のラインセンサで画像を撮像する構成では、光パタンが投影された画像および光パタンが投影されていない画像を撮像するため、複数回の撮像が必要となる。
【0024】
また、複数回の撮像において撮像位置を正確に合わせるためにリニアスケーラなどを用いて精密な位置合わせを行う必要がある。また、複数回の撮像において、各回で撮像した画像を一時的に記憶し、計算に必要な画像が揃うまで記憶して置くための画像メモリが必要となる。また、光パタンの投影および非投影を切り替えるための可動式ミラーやハーフミラーなどの構造が必要となる(図16)。
【0025】
しかしながら、本発明の三次元形状計測装置では、上記光パタン照射領域および光パタン非照射領域は互いに重畳しないように配置され、第1のラインセンサおよび第2のラインセンサは同時に上記各領域を撮像することができるように配置されている。上記の構成によれば、上記第1および第2のラインセンサが撮像した画像から背景情報を除去した画像を算出する際に、計測対象を複数回移動させて全計測領域を撮像する必要がなくなり、1回の撮像で必要な画像を撮像することができるという効果を奏する。
【0026】
これによって、撮像に要する時間が短縮され、光パタンの照射および非照射を切り替えるためのハーフミラーなど機構が不要となり、複数回の撮像において正確に位置合わせを行うために必要なリニアスケーラが不要となり、コスト削減および撮像速度の高速化が可能となる。
【0027】
上記の三次元形状計測装置では、複数のラインセンサを含む撮像手段を備え、上記第1のラインセンサおよび第2のラインセンサとして、上記撮像手段のラインセンサのうち2つを用いることが好ましい。
【0028】
また、上記の三次元形状計測装置では、赤、緑、および青の3つのラインセンサからの検出結果を変換して光パタンなしの画像として用い、W/Bのラインセンサの検出結果を光パタンありの画像として用いてもよい。
【0029】
また、上記の三次元形状計測装置では、赤、緑、青、および白黒の色の輝度を検出するラインセンサを含むカラー撮像手段を備え、上記第1のラインセンサとして、白黒のラインセンサと、赤、緑、または青のいずれか1つの色のフィルタとを含むセンサを用い、上記第2のラインセンサとして、赤、緑、または青のうち上記フィルタと同じ色のラインセンサ用いてもよい。
【0030】
上記の構成によれば、複数のラインセンサ含むカメラや、R,G,B、W/Bの各色の輝度値を検出するラインセンサを含むカラーカメラなどを用いて、本発明の三次元形状計測装置を構成することができる。
【0031】
また、赤、緑、または青のいずれかの色、例えば緑のフィルタを白黒の色を検出するラインセンサに付与し、そのラインセンサと元の緑のラインセンサからの検出結果を用いてもよい。上記の様に構成すれば、同感度の2本のラインセンサを用いる場合と同様に検出を行うことができる。
【0032】
さらに、カラー画像を同時に取得することができるので、二次元検査を同時に行うことができる。
【0033】
また、上記の三次元形状計測装置では、第1のラインセンサを備えた第1の撮像手段と、第2のラインセンサを備えた第2の撮像手段と、上記第1のラインセンサの撮像視線を上記光パタン照射領域に対向させるように配置された第1のミラーと、上記第2のラインセンサの撮像視線を上記光パタン非照射領域に対向させるように配置された第2のミラーとを備えてもよい。
【0034】
上記の構成によれば、単独のラインセンサを備えた複数のカメラと、複数のミラーを組み合わせることによって、上記ラインセンサの撮影視線を容易に制御し、複数のカメラを用いて本発明の三次元形状計測装置を構成することができる。
【0035】
なお、上記第1のラインセンサおよび第2のラインセンサは、同一のレンズを通して上記光パタン照射領域および光パタン非照射領域を撮像する構成としてもよい。
【0036】
上記の構成によれば、同一のレンズを通して撮像するので、第1の撮像手段および第2の撮像手段の配置を決定する際に、撮像手段を含む部材をコンパクトに形成することができ、ミラーを用いて撮像視線を設定できる効果が特に有効である。
【0037】
上記の三次元形状計測装置では、上記光パタン照射領域に対して光パタンを形成し、上記光パタン非照射領域に対して均一照明を照射するための透過部および遮光部を含むパタン形成素子を備えてもよい。
【0038】
また、上記の三次元形状計測装置では、光パタン投影手段によって投影される光パタンと同等の光量の均一照明を上記光パタン非照射領域に対して照射する均一照明投射手段をさらに備えてもよい。
【0039】
上記の構成によれば、光パタンを計測面上に形成するためのパタン形成素子を用いて上記光パタン照射領域および光パタン非照射領域を形成したり、光パタンと同等の光量の均一照明を照射したりすることによって、光パタン照射領域および光パタン非照射領域の光量を同等に保つことができるので、背景情報を除去した画像を算出する精度を向上させることができる。
【0040】
本発明の三次元形状計測方法は、上記の問題を解決するために、計測対象に投影された光パタンを解析することによって、計測対象の三次元形状を計測する三次元形状計測装置における三次元形状計測方法であって、上記三次元形状計測装置は、光パタン投影手段と、第1のラインセンサと、第2のラインセンサとを備え、上記第1および第2のラインセンサは、それぞれ、上記計測対象の光パタンが投影された光パタン照射領域および上記計測対象の光パタンが投影されていない光パタン非照射領域を同時に撮像できるように配置されており、上記光パタン投影手段が位置に応じて周期的に輝度が変化する光パタンを上記計測対象が設置される計測面の一部の領域へ投影する光パタン投影ステップと、上記第1のラインセンサが上記光パタン照射領域を撮像すると共に、上記第2のラインセンサが上記光パタン非照射領域を撮像する撮像ステップと、上記第1および第2のラインセンサが撮像した画像から、背景情報を除去した画像に含まれる或る画素における光パタンの位相を、上記画像における上記画素とその周辺の画素との輝度値に基づいて算出し、算出した位相に基づいて上記計測対象の高さ情報を算出する算出ステップとを備えることを特徴としている。
【0041】
上記の構成によれば、上述の三次元形状計測装置と同様の効果を奏する三次元形状計測方法を実現することができる。
【0042】
なお、上記三次元形状計測方法における算出ステップを、コンピュータ上で実行させることができる。
【発明の効果】
【0043】
本発明に係る三次元形状計測装置は、計測対象に投影された光パタンを解析することによって、計測対象の三次元形状を計測する三次元形状計測装置であって、位置に応じて周期的に輝度が変化する光パタンを、上記計測対象が設置される計測面の一部の領域へ投影する光パタン投影手段と、上記計測対象の光パタンが投影された光パタン照射領域を撮像する第1のラインセンサと、上記計測対象の光パタンが投影されていない光パタン非照射領域を撮像する第2のラインセンサと、上記第1および第2のラインセンサが撮像した画像から、背景情報を除去した画像に含まれる或る画素における光パタンの位相を、上記画像における上記画素とその周辺の画素との輝度値に基づいて算出し、算出した位相に基づいて上記計測対象の高さ情報を算出する処理手段とを備え、上記第1および第2のラインセンサは、それぞれ、上記光パタン照射領域および光パタン非照射領域を、同時に撮像できるように配置されている。
【0044】
これによって、ラインセンサに対して計測対象を主走査方向に相対的に移動させる回数を減らしつつ、高解像度で計測対象を撮像することができる。さらに、背景情報を除去した画像を算出する際に、1回の撮像で必要な光パタン照射領域および光パタン非照射領域の画像を撮像することができるので、コスト削減および撮像速度の高速化が可能な三次元形状計測装置を構成することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
〔実施の形態1〕
本発明の一実施形態について図1から図11に基づいて説明すると以下の通りである。
【0046】
図1は、本実施形態における三次元形状計測装置10の概略構成を示す図で、図1(a)は断面図、図1(b)は上面図である。図2は、三次元形状計測装置10の物理的構成を示す概念図である。図3は、三次元形状計測装置10の要部構成を示す機能ブロック図である。図1から図3に示すように、三次元形状計測装置10は、投光部(投影手段)20、撮像部30、画像解析・駆動制御部(処理部)40、および、搬送部50を備えている。
【0047】
投光部20は、計測対象12の表面に光パタンを投影するためのものである。また、投光部20は、図1に示すように、ハロゲンランプやキセノンランプなどの光源22、マクロレンズなどの投光レンズ24、光源22から照射された光にパタンを持たせるためのパタン生成素子26、および、光線を透過または遮光することで光パタンを照射する光パタン照射領域14および光パタン非照射領域16の境界を明確にするための光線分離部28を備えている。
【0048】
投影する光パタンとしては、正弦波、三角波、又は矩形波などの、位置に応じて周期性を有し、かつ位相を特定できるパタンであれば何れのものでもよいが、本実施形態では、計測分解能の向上に寄与する正弦波状の光パタンを用いるものとする。また、パタン生成素子26としては、ガラス又はフィルムを加工したものなどを用いることができる。なお、パタン生成素子26は、液晶などを用いて動的にパタンを生成してもよい。
【0049】
撮像部30は、上述のように、光パタンが投影された計測対象12を読み取り、その画像を取得するものである。また、撮像部30は、図1に示すように、第1のラインセンサ36と、第2のラインセンサ38と、マクロレンズなどの撮像レンズ32とを備えている。
【0050】
第1のラインセンサ36は光パタン照射領域14を撮像できるように、第2のラインセンサ38は光パタン非照射領域16を撮像できる位置に配置されている。また、光パタン照射領域14および光パタン非照射領域16は、第1のラインセンサ36および第2のラインセンサ38の撮像範囲を考慮して、各領域を重畳しないよう並べて配置している。
【0051】
搬送部50は、図2の矢印の方向(以下、主走査方向)、および該主走査方向と垂直な方向(以下「副走査方向」という)に計測対象12を水平移動させるためのものである。また、搬送部50は、図3に示すように、計測対象12を載置するための搬送ステージ52、搬送ステージ52を駆動するサーボモータ54などを備えている。
【0052】
搬送部50により計測対象12を主走査方向に移動させつつ撮像部30により逐次撮像することによって、計測対象12全体の三次元形状を計測することが可能になる。また、計測対象12が撮像部30の撮像範囲よりも副走査方向に広い場合には、搬送部50により計測対象12を副走査方向に移動させて撮像部30により逐次撮像すればよい。
【0053】
画像解析・駆動制御部40は、撮像部30によって撮像された画像に含まれる光パタンを縞解析法によって解析し、計測対象12の三次元形状を算出すると共に、コントローラ44に各種指示を行うものである。また、画像解析・駆動制御部40は、図3に示すように、撮像部30からの画像をデジタルデータで取り込むキャプチャボード42、各種の制御を行うCPU46、および各種の情報を記憶するRAM48を備えている。
【0054】
なお、本実施形態では、搬送部50は、計測対象12を移動させる構成としたが、計測対象12を移動させる代わりに、投光部20および撮像部30を主走査方向に、さらには副走査方向に移動させる構成としてもよい。すなわち、搬送部50は、計測対象12を投光部20および撮像部30に対して相対的に移動させるものであればよい。
【0055】
このような三次元形状計測装置10に備わる各部の構成について概略を説明する。本実施形態の三次元形状計測装置10では、撮像部30は、その副走査方向の軸が搬送ステージ52の計測面と平行になるように設置されている。
【0056】
撮像部30の光軸と搬送ステージ52の計測面とを平行にすることにより、計測対象12の上面を均一な倍率で撮像することができる。また、撮像部30の光軸(副走査方向の軸)と主走査方向とを垂直にしているので、搬送しながら撮影した複数のライン画像からなる2次元画像には、直角部分が直角部分として撮像される。
【0057】
また、投光部20は、その光軸が撮像部30の光軸に対して所定の角度を有するように設置されている。これにより、計測対象12に投影した光パタンのずれに基づいて、計測対象12の高さを算出することができる。なお、撮像部30および投光部20の幾何学的配置は設置時にあらかじめ計測しておいてもよいし、校正により算出してもよい。
【0058】
このような三次元形状計測装置10の動作について説明すると以下の通りである。まず、画像解析・駆動制御部40からコントローラ44を介しての命令によって、搬送部50のサーボモータ54が搬送ステージ52を初期設定位置にセットする。この初期設定位置は、撮像部30が計測対象12を撮像する際の主走査方向の撮像開始位置を決定するものであり、撮像部30の撮像領域が、搬送部50の搬送ステージ52に載せられた計測対象12の主走査方向における端部に来るような位置であることが好ましい。
【0059】
そして、投光部20が計測対象12に光パタンを投影する。撮像部30は、光パタンが投影された計測対象12を走査し、この計測対象12の画像を取得する。撮像部30によって取得された画像は、画像解析・駆動制御部40に送信され、画像解析・駆動制御部40のキャプチャボード42によってデジタルデータに変換される。そして、画像解析・駆動制御部40のCPU46が光パタンを解析することによって、計測対象12の高さ情報が算出される。
【0060】
ここで、本実施形態の三次元形状計測装置10では、画像中の光パタンを解析する際に、空間縞解析法を用いる構成となっている。これにより、撮像部30に備わった1本のラインセンサが1回走査して取得した画像から、計測対象12の、撮像部30の走査領域(撮像領域)内での各位置における高さを求めることができる。
【0061】
そして、搬送部50は、画像解析・駆動制御部40の制御によって、計測対象12を主走査方向に所定の距離だけ移動させる。これにより、計測対象12における撮像部30の撮像領域と投光部20によって投影される光パタンとが、所定の距離だけ主走査方向にずれることになる。この後、再び撮像部30が計測対象12を走査し、画像を取得する。ここで得られた画像には、計測対象12の、先ほどの走査領域よりも所定の距離だけ主走査方向にずれた領域が含まれることになる。得られた画像は、同様に画像解析・駆動制御部40に送信され、新しい走査領域内での各位置における三次元情報が求められる。
【0062】
このように、搬送部50が再び計測対象12を所定の距離だけ移動させ、撮像部30が計測対象12を撮像し、画像解析・駆動制御部40がライン画像を解析する処理を繰り返すことによって、計測対象12の全体の三次元形状が計測される。
【0063】
なお、計測対象12の三次元形状情報のうち、撮像部30の副走査方向の長さおよび主走査方向の長さ情報については、公知の方法によって計測する。具体的に説明すると、計測対象12の副走査方向の長さ情報は、ライン画像に撮像された計測対象の副走査方向の長さに基づいて算出する。一方、計測対象12の主走査方向の長さ情報は、搬送部50による移動速度に基づいて算出する。このように、計測対象12の副走査方向および主走査方向の長さ情報と、高さ情報とを求めることによって、計測対象12の三次元形状情報を得ることができる。また、副走査方向の長さは、キャリブレーション時に既知間隔のワークを撮像し、上記箇所から所望の解像度になるように撮像部の高さおよびピントを調節してもよい。上記調節によって、撮像視野より小さい未知のサイズのワークが搬送された場合でも、サイズを算出することが可能となる。
【0064】
なお、上記の所定の距離とは、撮像部30の撮像領域を撮像する解像度と同じであることが好ましい。これにより、上記の工程によって計測対象12の全領域を漏らすことなく迅速に計測することができる。
【0065】
また、所定の距離ごとの撮像は、搬送ステージ52を一定速度で移動させつつ、撮像部30に一定時間ごとに撮像させることによって実現することができる。この場合、コントローラ44が、キャプチャボード42を介して、例えば数KHzオーダーの一定時間ごとに撮像駆動信号を撮像部30に送信する。撮像部30は、この駆動信号をトリガとして光パタンの投影された計測対象12の画像を取得する。一方、コントローラ44は、同様の一定時間ごとの搬送駆動信号を搬送部50にも送信する。搬送部50のサーボモータ54は、この搬送駆動信号をトリガとして搬送ステージ52を一定速度で駆動する。これにより、所定の領域ずつ計測対象12を撮像することができる。
【0066】
なお、従来は、図16に示すように、光源からの光を集光レンズで集光した光線を、可動式ミラーが折りたたまれて除かれた状態で、ミラー、パタン投影チャート(パタン生成素子)、ハーフミラーを介して、計測対象に光パタンを投影するための光線投射経路と、可動式ミラー、ミラー、ハーフミラーを介して光パタンの存在しない均一照明を計測対象に投影するための光線投射経路とを切り替えていた。
【0067】
本実施形態では、図1のように、光源22から照射された光線を、パタン生成素子26に照射することで光パタンを形成する光線を生成し、光線分離部28を介することで、光パタン照射領域14および光パタン非照射領域16に光線を分離して計測対象12および計測面に照射している。第1のラインセンサ36および第2のラインセンサ38は、光パタン照射領域14および光パタン非照射領域16を、それぞれ同時に撮像できる位置に配置されているので、1回の撮像で光パタンを照射した画像および光パタンを照射しない画像を撮影することができる。
【0068】
これによって、複数回の撮像において撮像位置を正確に合わせるためにリニアスケーラなどを用いて精密な位置合わせを行う必要がなくなる。また、複数回の撮像において各回で撮像した画像を一時的に記憶して計算に必要な画像が揃うまで記憶して置くための画像メモリが不要となる。さらに、光パタンの投影および非投影を切り替えるための可動式ミラーやハーフミラーなどの構造が不要となる。これによって、従来の光パタン生成素子を用いたまま、計測時間を短縮し、各構造を構成するためのコスト削減を実現することができる。
【0069】
なお、光線分離部28を用いて光パタン照射領域14および光パタン非照射領域16に投射する光線を分離する代わりに、パタン生成素子26上に形成されるチャートの構成を変更することで、上記光パタン照射領域に対して光パタンを形成し、上記光パタン非照射領域に対して均一照明を照射するための透過部および遮光部を含む構成としてもよい。または、投光部20によって投影される光パタンと同等の光量の均一照明を、上記光パタン非照射領域に対して照射する均一照明投射部を備えてもよい。
【0070】
上記の構成によれば、光線分離部28を用いて光パタン照射領域14および光パタン非照射領域16に投射する光線を分離する場合と同様に、計測時間の短縮や各構造を構成するためのコスト削減を実現することができる。
【0071】
次に、画像解析・駆動制御部40における画像解析の詳細について説明する。まず、本実施形態の画像解析手法の原理について説明する。
【0072】
画像解析・駆動制御部40は、光パタンの投影された計測対象12のライン画像を空間縞解析法に基づいて解析する。空間縞解析法とは、三角測量の原理に基づくものである。以下では、三角測量の原理、縞解析法、空間縞解析法について順番に説明する。
【0073】
まず、三角測量の原理について説明する。説明を簡単にするため、基準面と垂直な光軸を有する撮像ユニットCcによって基準面P0からの高さがhの平面Phを観測する場合を考える。また、投光部Cpは、基準面P0から見て撮像ユニットCcと同じ高さに配置され、光パタンを基準面P0上の点Oの位置に向けて投影するものとする。
【0074】
基準面P0と平行で、高さhだけ離れた平面Phを観測する場合、点Oに向かう光パタンは点Pと交わる。このとき、撮像ユニットCcから見ると、基準面P0へ向けて投影された光パタンは、本来観測されるべき位置O(すなわち位置Q)から距離PQだけずれた位置Pに観測される。この位置ずれPQを位相差という。
【0075】
位相差を算出することができれば、次の式(1)
【0076】
【数1】

【0077】
によって高さhを算出することができる。
【0078】
次に、縞解析法について説明する。本実施形態では、計測対象12に投影する光パタンとして、正弦波状の光パタンを用いる。正弦波状の光パタンとは、輝度が正弦関数によって表されるグラデーションを有するパタンのことをいう。言い換えれば、位置と輝度との関係が正弦関数によって表される光パタンのことを正弦波状の光パタンという。
【0079】
ここで、計測対象12に照射する光パタンについて、図4および図5を参照して説明する。図4は、計測対象12の形状を示す図で、同図(a)は上面図であり、同図(b)は側面図である。図5は、計測対象12に光パタンを投影した場合に、計測対象12に投影された光パタンの歪みを示す図で、同図(a)は上面図であり、同図(b)は基準面での輝度変動と凸部での輝度変動を示す波形図である。
【0080】
光パタンを、図4(a)、図4(b)に示すような計測対象12に投影した場合、投影される光パタンを上面から観測すると図5(a)のようになる。すなわち、斜め方向から投影された光パタンは、高さを有する凸部において歪みを生じることになる。このように光パタンが投影された計測対象12を撮像部30によって走査すると、走査位置と輝度との関係は図5(b)のようになる。
【0081】
図5(b)に示すように、凸部のない基準面に投影された光パタンは、常に一定の周期で輝度が変化する。これに対して、凸部に投影された光パタンは凸部の傾斜によって輝度の周期が変化し、その結果、基準面に投影された光パタンに対して位相のずれを生じることになる。よって、実際に計測対象12に光パタンを投影して撮像した画像に含まれる或る位置の画素における光パタンの位相と、基準面に光パタンを投影した場合の同画素の位相(基準位相)との差を求めれば、その画素に対応する位置における計測対象12の高さを三角測量の原理に基づいて求めることができる。
【0082】
上記の位相差を算出するにあたって、基準位相は、基準面に光パタンを投影して撮像することなどによって予め求めておくことができる。一方、実際に計測対象に光パタンを投影して撮像した画像に含まれる各位置の画素における光パタンの位相の求め方には、大別して2通りある。空間縞解析法と時間縞解析法との相違点は、この位相の求め方にある。
【0083】
図5(b)に示すように、正弦関数では、ある一つの変位を与える位相が一周期内に2つ存在する。例えば、y=sinθによって表される関数において、変位y=0を与える位相θは0及びπの2つ存在する。また、変位y=1/2を与える位相θはπ/6及び5π/6の2つ存在する。このような理由から、撮像した画像において、単一の画素の輝度値(正弦関数の変位に相当)のみから、その画素における光パタンの位相を求めることはできない。
【0084】
ここで、従来用いられてきた手法である時間縞解析法では、所定の量だけ位相をずらした光パタンを計測対象に投影して再び計測対象を撮像し、2つの画像を解析することによって位相を1つに決定する。つまり、初めに撮像した画像における或る画素の輝度を基に、その画素における光パタンの位相を2つに絞り込み、次に撮像した画像におけるその画素の輝度を基に、光パタンの位相を1つに特定する。従って、時間縞解析法を用いる場合は、計測対象の反射特性が厳密に一様であったとしても、計測対象を最低でも2回撮像しなければならないことが分かる。
【0085】
一方、空間縞解析法では、位相を求める画素(以下「注目画素」という)及びその周辺の画素の輝度に基づいて、注目画素における位相を算出する。例えば、上記の例において変位y=0を与える位相θは0及びπの2つあるが、ここで、注目画素における位相が0の場合とπの場合とでは、周辺の画素の輝度が異なることになる。もし、注目画素における位相が0の場合、例えば注目画素よりも少し位相が小さい側に存在する周辺画素の輝度値は、注目画素の輝度値よりも小さくなる。一方、注目画素における位相がπの場合は、注目画素よりも少し位相が小さい側に存在する周辺画素の輝度値が注目画素の輝度値よりも大きくなる。従って、注目画素の近傍の画素に基づいて、光パタンの位相を1つに決定することができる。このように、注目画素の近傍に存在する画素の輝度値に基づいて、注目画素における位相を決定するのが空間縞解析法の特徴である。
【0086】
本実施形態の三次元形状計測装置10に用いられる空間縞解析法の具体的な処理工程について以下に詳述するが、本発明はこれに限定されず、上述した縞解析法の原理に基づいたものであればどのようなものであってもよい。
【0087】
本実施形態では、撮像したライン画像から、光パタンを90°移相した移相光パタンを仮想的に作成する。ここで、投影する光パタンを、次の式(2)
【0088】
【数2】

【0089】
とすると、この光パタンを90°移相した移相光パタンは、次の式(3)
【0090】
【数3】

【0091】
と表される。従って、位置xにおける画素の位相φ(x)は、次の式(4)
【0092】
【数4】

【0093】
で求めることができる。
【0094】
ここで、I(x)の値は、副走査方向の位置xにおける画素の輝度値である。一方、I^(x)(以下、ハットのついたI(x)を便宜的にこのように記述する)の値の算出には、Hilbert変換を用いる。すなわち、移相光パタンによる位置xにおける輝度値I^(x)は、次の式(5)
【0095】
【数5】

【0096】
で表される。ここで、取得できる輝度データは画素ごとのデータ、つまり離散的なものであるため、上記の式(5)を次の式(6)
【0097】
【数6】

【0098】
のように近似する。この式(6)によって、I^(x)の値を求めることができる。
【0099】
以上より、輝度値I(x)を取得すれば、上記の式(6)からI^(x)の値を求め、上記の式(4)から位相φ(x)を求めることができる。そして、求めた位相φ(x)と基準面における位相φ(x)との位相差Δφ(x)により、上述した三角測量の原理に基づいて、位置xにおける高さzを算出することができる。
【0100】
高さzは、具体的には、基準面からの距離として算出され、次の式(7)
【0101】
【数7】

【0102】
によって求めることができる。なお、上記の式(7)において、A(x,z)及びB(x,z)は、パタン周期やカメラから基準面までの距離、パタンの投影角度などの幾何学的配置に依存して画素ごとに決まる関数である。
【0103】
次に、図6を用いて、投光部20の構成について詳細を説明する。図6は、投影される光パタンおよび投光部20を説明する図で、図6(a)は投光される光パタンの上面図であり、図6(b)は投光部20の投光器部分の構成を示す断面図である。投光部20は光源(ランプユニット)22、投影レンズ24a、パタン生成素子(チャート)26、コリメータレンズ、インテグレータレンズ、およびコンデンサレンズなどで構成された集光レンズ群24bを備えている。
【0104】
光源22から投影された光線は、各レンズを経由することで光線量や波長を調整された後にパタン生成素子26に照射される。照射された光線によって、パタン生成素子26上に形成された縞模様が投影レンズ24aによって拡大され、像が反転されて計測面に縞状の光パタンが形成される。
【0105】
なお、ここでは、パタン生成素子26として、右半分に光パタンを生成するためのチャートが、左半分に均一照明を透過するための透過領域が形成されている例を示したが、これに限るものではない。光線分離部28を用いて光線を光パタン照射領域14に照射するための光線および光パタン非照射領域16に照射するための光線に分離する構成であってもよいし、投影される光パタンと同等の光量の均一照明を上記光パタン非照射領域に対して照射する別の均一照明投射部を備えてもよい。
【0106】
図7(a)は、光パタンを投影した状態の光パタン照射領域14の一例を示しており、図7(b)は、光パタンを投影せずに均一照明を投光した光パタン非照射領域16の一例を示している。同図(b)に示すように、計測対象12に一様な輝度の光を照射しても、撮像した画像にはムラ(斑)が生じていることが理解できる。これは、計測対象12の各部位における反射特性の相違に起因する。上記ムラは、同図(a)に示すように、光パタンを投影した状態の光パタン照射領域14の画像にも生じることになり、上記光パタン照射領域14の画像を用いて算出される位相に誤差が生じることになる。
【0107】
図8は、高さ一定の計測対象12に関して、背景成分が除去されたライン画像の輝度値と、光パタン照射領域14の画像を用いて算出される位相とを示している。図示において、左側の縦軸は、背景除去後の信号量であり、右側の縦軸は、位相(rad)であり、かつ、横軸は、光パタン照射領域14の画像に含まれる画素の副走査方向の位置xである。
【0108】
図8を参照すると、背景成分が除去された光パタン照射領域14の画像の輝度値は、光パタンと同様の正弦関数となり、光パタン照射領域14の画像を用いて算出される位相は、増加率が一定となっており、上記ムラが除去されていることが理解できる。したがって、計測対象12の各部位における反射特性の相違に起因する誤差を軽減できるようになる。
【0109】
図9は、計測対象12に光パタンを投影した画像と、光パタンを投影していない計測対象12を撮影した画像とから、背景成分を除去した画像を作成した具体例を示す図である。画像82は計測対象12に光パタンを投影した画像、画像84は光パタンを投影していない計測対象12を撮影した画像、画像86は画像82および画像84から背景成分を除去して正規化した画像である。
【0110】
画像86からも分かるように、画像82および画像84を用いて背景成分を除去することで、光パタンがより明確に読み取ることができる。これによって、画像解析・駆動制御部40において、さらに正確な高さ計測を行うことができる。
【0111】
図10は、投影された光パタンの縞およびラインセンサの間隔の関係について説明する概念図である。図10(a)では、第1のラインセンサ36および第2のラインセンサ38が、撮像レンズ32を通して計測面に対向するように配置されている。領域37aおよび領域39bは、ラインセンサ36およびラインセンサ38の撮像領域である。このとき、ラインセンサ36およびラインセンサ38の間隔をN[μm]、領域37aおよび領域39bの間隔をL[μm]としている。
【0112】
また、図10(b)では、光パタンの縞と縞との間の距離が200[μm]となっている。しかしながら、この200[μm]の距離は光パタンが理想的に投影された場合に計測される距離であり、実際には縞模様が滲み、ボケによって領域Rに染み出している。このため、光パタン非照射領域16を第2のラインセンサ38で撮像する場合には、ボケによって染み出す範囲RよりもLだけ離れた領域に撮像場所を設定する必要がある。
【0113】
この場合、ライン間隔Lは、撮像部の副走査方向の解像度/セルピッチ×ラインセンサ間隔Nによって求めることができる(単位はμm)。
【0114】
次に、図11を用いて、本実施形態の三次元形状計測装置10で実際に三次元形状の計測を行う際の処理の手順について説明する。図11は、三次元形状計測装置10で三次元形状の計測処理の手順を示すフロー図である。
【0115】
計測処理が開始されると、まず、S1において、均一照明が照射された光パタン非照射領域16を第2のラインセンサ38が撮像するとともに、S2において、正弦波照明によって光パタンが投影された光パタン照射領域14の撮像が第1のラインセンサ36によって行われる。上記S1およびS2の処理は同時に行われ、上記各ラインセンサによる撮像画像が、画像解析・駆動制御部40のキャプチャボード42に送信される。
【0116】
次に、S3において、上記各ラインセンサによる撮像画像から、背景情報の除去を行う。具体例をあげると、例えば、図9における画像82から画像84を除算することによって画像86を求める。なお、その他の正規化方法を用いて背景情報を除去してもよい。上記のS1からS3の処理が、画像から縞解析を行うために前処理に当たる。
【0117】
なお、キャプチャボード42では、上記各ラインセンサによる撮影画像をリアルタイムで処理し、計測対象12の高さの計算を行う。具体的には、以下のS4からS7の処理を行うことで計測対象12の高さを求める。
【0118】
次に、S4において、縞解析を行って光パタンの位相がどれだけずれているかを計算する。具体例には、式5から式7で示したように、Hilbert変換法を用いて縞解析を行う。さらに、S5において、PLL(Phase Locked Loop)などを用いて位相ノイズの除去および位相接続を行う。上記のS4およびS5の処理が、画像から位相を算出する処理に当たる。
【0119】
その後、S6において、照射した光パタンの位相と、計測する前の校正(キャリブレーション)で前もって取得したパラメータや位相から三次元座標との対応付けを行い、S7において、計測対象と三次元座標との交点座標、すなわち、計測する三次元形状の高さを求めて(測距)、三次元形状の計測処理を終了する。
【0120】
以上のように、本実施形態の三次元形状計測装置10は、計測対象12に投影された光パタンを解析することによって、計測対象12の三次元形状を計測する三次元形状計測装置10であって、位置に応じて周期的に輝度が変化する光パタンを、計測対象12が計測される搬送ステージ52上の一部の領域へ投影する投光部20と、計測対象12の光パタンが投影された光パタン照射領域14を撮像する第1のラインセンサ36と、計測対象12の光パタンが投影されていない光パタン非照射領域16を撮像する第2のラインセンサ38と、第1のラインセンサ36が撮像した画像82および第2のラインセンサ38が撮像した画像84から、背景情報を除去した画像86に含まれるある画素における光パタンの位相を、画像86における画素とその周辺の画素との輝度値に基づいて算出し、算出した位相に基づいて計測対象12の高さ情報を算出する画像解析・駆動制御部40とを備え、第1のラインセンサ36および第2のラインセンサ38は、それぞれ、光パタン照射領域14および光パタン非照射領域16を、同時に撮像できるように配置されている。
【0121】
上記の構成によれば、三次元形状計測装置10は、計測対象12投影された光パタンを画像82として読み取るための第1のラインセンサ36と、光パタンが投影されていない計測対象12の画像84を読み取るための第2のラインセンサ38とをそなえている。このように、エリアセンサでなくラインセンサを用いることによって、撮像領域をラインセンサの長手方向に延長している。このため、ラインセンサに対して計測対象12を副走査方向に相対的に移動させる回数を減らしつつ、高解像度で計測対象12を撮像している。これにより、迅速かつ高精度に三次元形状情報を計測している。
【0122】
さらに、本実施形態の三次元形状計測装置10では、投光部20が計測対象12を設置する搬送ステージ52の一部の領域に対して光パタンを投影している。第1のラインセンサ36は、光パタンが投影された光パタン照射領域14を撮像する位置に配置され、第2のラインセンサ38は、光パタンが照射されていない光パタン非照射領域16を撮像する位置に配置されている。
【0123】
これによって、撮像に要する時間が短縮され、光パタンの照射および非照射を切り替えるためのハーフミラーなど機構が不要となり、複数回の撮像において正確に位置合わせを行うために必要なリニアスケーラが不要となり、コスト削減および撮像速度の高速化が可能となっている。
【0124】
また、本実施形態の三次元形状計測装置10では、複数のラインセンサを含む撮像部30を備え、第1のラインセンサ36および第2のラインセンサ38として、撮像部30のラインセンサのうち2つを用いている。上記の構成では、複数のラインセンサを含むカメラを用いて、本実施形態の三次元形状計測装置10を構成している。
【0125】
また、本実施形態の三次元形状計測装置10では、光パタン照射領域14に対して光パタンを形成するための光線を透過し、光パタン非照射領域16に対して均一照明を透過する光線分離部28を備えている。
【0126】
上記の構成によれば、パタン生成素子26に投射されるものと同一の光源を用いて、光パタン照射領域14用の光線および光パタン非照射領域16用の光線を透過または遮光することによって光線を分離することによって、光パタン照射領域14および光パタン非照射領域16の光量を同等に保ち、背景情報を除去した画像を算出する精度を向上させている。
【0127】
なお、本実施形態では、光線分離部28を用いて光パタン照射領域14および光パタン非照射領域16の光量を同等に保っているが、光パタンを計測面上に形成するためのチャートなどのパタン形成素子を用いて上記光パタン照射領域および光パタン非照射領域を形成することによって、光パタン照射領域および光パタン非照射領域の光量を同等に保つ構成としてもよい。
【0128】
本実施形態の三次元形状計測方法では、計測対象12に投影された光パタンを解析することによって、計測対象12の三次元形状を計測する三次元形状計測装置10における三次元形状計測方法であって、三次元形状計測装置10は、投光部20と、第1のラインセンサ36と、第2のラインセンサ38とを備え、第1のラインセンサ36および第2のラインセンサ38は、それぞれ、計測対象12の光パタンが投影された光パタン照射領域14および計測対象12の光パタンが投影されていない光パタン非照射領域16を同時に撮像できるように配置されており、位置に応じて周期的に輝度が変化する光パタンを、計測対象12が設置される搬送ステージ52の一部の領域へ投影する光パタン投影ステップと、光パタン照射領域14を撮像すると共に、光パタン非照射領域16を撮像する撮像ステップと、第1のラインセンサ36が撮像した画像82および第2のラインセンサ38が撮像した画像84から、背景情報を除去した画像86に含まれる或る画素における光パタンの位相を、画像86における画素とその周辺の画素との輝度値に基づいて算出し、算出した位相に基づいて計測対象12の高さ情報を算出する算出ステップとを備えている。
【0129】
なお、上記三次元形状計測方法を、コンピュータの制御によりコンピュータ上で実行させることができる。
【0130】
〔実施の形態2〕
次に、本発明の別の実施形態について図12および図13に基づいて説明すると以下の通りである。本実施形態の三次元形状計測装置10は、図1に示す三次元形状計測装置10に比べて、撮像部30内のラインカメラの構成が異なり、その他の構成は同様である。なお、上記実施形態で説明した構成と同様の機能を有する構成には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0131】
図12は、本実施形態に係る三次元形状計測装置10で用いられるカラー撮像カメラ(カラー撮像手段)が備える、赤、緑、青、および白黒の色の輝度を検出する各ラインセンサの配置について説明する図である。なお、図12では、ラインセンサとして複数のCCD(Charge Coupled Device)を備えたカラーセンサとして、Kodak社のKLI−4104(CSL8000CL)を例示している。
【0132】
図12のGreenLineは緑色、RedLineは赤色、BlueLineは青色、およびB/WLineは黒および白の輝度をそれぞれ検出するCCDである。図12の上側はカラー撮像カメラの主走査方向を示し、左端の点線が最初の有効画素を示している。右端の点線が最後の有効画素を示し、最初の有効画素の光学中心に白および黒の輝度を検出する撮像素子が割り当てられている。
【0133】
緑、赤、および青の各ラインとして示された四角形は、それぞれ、1番目、2番目、……4080番目の撮像素子を示しており、1つの四角形が10μmの撮像素子の面積を表している。白および黒のラインとして示された四角形は、それぞれ、1番目、2番目、……8060番目の撮像素子を示しており、1つの四角形が5μmの撮像素子の面積を表している。このように、白および黒の撮像素子は、緑、赤、および青の撮像素子と比較して倍の精細度を持っている。
【0134】
緑および赤のラインの間隔、ならびに、赤および青のラインの間隔は80μmであり、それぞれのラインの光学中心からの間隔は90μmとなっている。青および黒/白のラインの間隔は、115μmであり、それぞれのラインの光学中心からの間隔は122.5μmになっている。
【0135】
本実施形態では、白黒の検出を行うラインセンサの検出結果を第1のラインセンサの輝度情報として、赤、青、および緑のラインセンサの検出結果を輝度に変換して、第2のラインセンサの輝度情報としている。
【0136】
図13は、上記のような赤、青、緑、および白黒のCCDを持つラインセンサを用いて各色の輝度を計測した結果のグラフを示す図である。図13のグラフの横軸は波長[μm]を、縦軸は各色に対する感度特性[V/μJ/cm]を示している。本実施形態では、RGBをY(輝度)に変換することによって、赤、緑、および青の感度特性を、白/黒の感度特性に合わせている。
【0137】
図13のグラフで、線62は青の感度特性を、線64は緑の感度特性を、線66は赤の感度特性を、線68は、赤、青、緑のフィルタを取り付ける前の感度特性を示している。線70は、白および黒の感度特性を示している。
【0138】
このように、青の感度特性62、緑の感度特性64、および赤の感度特性66に係数を掛けて加算することで白および黒の感度特性70に近い特性を作り出し、赤、青、緑、および白黒のいずれのセンサを用いても、第1のラインセンサ36または第2のラインセンサ38として用いることができる。
【0139】
以上のように、赤、緑、および青の3つのラインセンサからの検出結果を変換して光パタンなしの画像として用い、W/Bのラインセンサの検出結果を光パタンありの画像として用いることで、同感度の2本のラインセンサを用いる場合と同様に検出を行うことができる。
【0140】
なお、上記の例では、R、G、Bの輝度の検出をW/Bの輝度に変換する場合について示したが、R、G、またはBのいずれかの色、例えばGのフィルタをW/Bの色を検出するラインセンサに付与し、そのラインセンサと元のGのラインセンサからの検出結果を用いてもよい。
【0141】
〔実施の形態3〕
次に、本発明の別の実施形態について図14に基づいて説明すると以下の通りである。図14は、本実施形態に係る三次元形状計測装置10の概略構成を示す図である。なお、上記実施形態で説明した構成と同様の機能を有する構成には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0142】
図14の三次元形状計測装置10では、第1のラインセンサ36および第2のラインセンサ38が、それぞれ、単独のラインセンサを備えたカメラに備えられ、各カメラのラインセンサに対応して、撮像視線を計測面に対向させるミラー34を備える点が上述の実施形態と異なり、その他の構成は同様である。
【0143】
図14では、第1のラインセンサ36を備える第1のカメラと、第2のラインセンサ38を備える第2のカメラを、計測対象面と水平方向に向かい合わせ、両カメラの間に傾けたミラー34を配置することで、第1のラインセンサ36および第2のラインセンサ38の撮像視線を計測対象面上の光パタン照射領域14および光パタン非照射領域16へ対向させている。
【0144】
上述のように、第1のカメラおよび第2のカメラの間にミラーを配置することによって、第1のラインセンサ36および第2のラインセンサ38の撮影視線を容易に制御することができるので、第1のカメラおよび第2のカメラのサイズや形状といった物理的制約に縛られることなく、各ラインセンサを容易に配置することができる。
【0145】
以上のように、本実施形態の三次元形状計測装置10では、第1のラインセンサ36を備えた第1のカメラと、第2のラインセンサ38を備えた第2のカメラと、上記第1のラインセンサ36の撮像視線を光パタン照射領域14に対向させるように配置された第1のミラーと、第2のラインセンサ38の撮像視線を光パタン非照射領域16に対向させるように配置された第2のミラーとを備えている。
【0146】
また、第1のラインセンサ36および第2のラインセンサ38は、同一の撮像レンズ32を通して光パタン照射領域14および光パタン非照射領域16を撮像している。
【0147】
上記の構成によれば、単独のラインセンサを備えた複数のカメラと、複数のミラー34を組み合わせることによって、ラインセンサ36・38の撮影視線を容易に制御し、複数のカメラを用いて三次元形状計測装置10を構成することができる。
【0148】
また、同一の撮像レンズ32を通して撮像するので、第1のカメラおよび第2のカメラの配置を決定する際に、カメラを含む部材をコンパクトに形成することができ、ミラー34を用いて撮像視線を設定できる効果が特に有効である。
【0149】
〔実施の形態4〕
上述の実施形態では、投光部20および撮像部30をそれぞれ1つずつ備えた三次元形状計測装置10について説明したが、投光部20および撮像部30の組み合わせは、上述の例に限らない。例えば、図15の(a)から(e)のように、複数の組み合わせであってもよい。
【0150】
図15は、視野を広くするために複数の投光部20および撮像部30を組み合わせた三次元形状計測装置10の構成を示す概略図である。
【0151】
図15(a)は、2つのラインセンサ36および38と、2つの投光部20aおよび20bを用いて三次元形状計測装置10を構成した例である。図15(b)は、図15(a)の構成から1つのラインセンサ、1つの投光部を省略して三次元形状計測装置10を構成した例である。この場合、副走査方向へ搬送ステージ52を移動させるためのXステージを追加する必要があるが、装置の構成は簡略化されるためコストを低減することができる。
【0152】
図15(c)は、2つのラインセンサおよび1つの投光部20を用いて三次元形状計測装置10を構成した例である。この場合、投光部20の投光レンズ24を広角化する必要があるため収差を補正する難易度が上昇し、輻輳でなくなるため精度がだしにくく精度を再検討する必要がある。
【0153】
図15(d)は1つの撮像部30および1つの投光部20を用いて三次元形状計測装置10を構成した例である。この場合、計測を想定している基板の大きさが250mm×330mmの、いわゆるMサイズの基盤の走査を想定しており、解像度を大きくすることで、1カメラ、1プロジェクタの構成をとることができる。撮像部30の撮像素子を高画素化、具体的には、例えばXYの縦横の長さを20[μm]で12500[ピクセル]備えるような、20μm×12500=250mm程度の精細度が必要となり、撮像および投光する範囲が広くなるため、投光レンズ24および撮像レンズ32を広角化する必要がある。なお、両レンズを広角化することで計測面までの距離が大きくなり、三次元形状計測装置10の剛性が低下するなどの問題が生じる可能性がある。
【0154】
図15(e)は、1つの撮像部30および2つの投光部20aおよび20bを用いて三次元形状計測装置10を構成した例である。この場合には、投光部20aおよび20bが投光する光パタンの接合部(点線の円の部分)で整合がとれなくなるという問題が生じる可能性がある。
【0155】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0156】
なお、本実施形態では、光源31および投光レンズを用いて光パタンを投影する例について説明したが、これに限るものではない。プロジェクターのようなもので干渉縞を投影してもよいし、回折格子に応用してもよい。
【0157】
最後に、三次元形状計測装置10の各ブロック、特に画像解析・駆動制御部40は、ハードウェアロジックによって構成してもよいし、次のようにCPUを用いてソフトウェアによって実現してもよい。
【0158】
すなわち、三次元形状計測装置10は、各機能を実現する制御プログラムの命令を実行するCPU(central processing unit)、上記プログラムを格納したROM(read only memory)、上記プログラムを展開するRAM(random access memory)、上記プログラムおよび各種データを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)などを備えている。そして、本発明の目的は、上述した機能を実現するソフトウェアである三次元形状計測装置10の制御プログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を、上記三次元形状計測装置10に供給し、そのコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成可能である。
【0159】
上記記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/DVD/CD−R等の光ディスクを含むディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュROM等の半導体メモリ系などを用いることができる。
【0160】
また、三次元形状計測装置10を通信ネットワークと接続可能に構成し、通信ネットワークを介して上記プログラムコードを供給してもよい。この通信ネットワークとしては、特に限定されず、例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(virtual private network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、特に限定されず、例えば、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL回線等の有線でも、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。なお、本発明は、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。
【産業上の利用可能性】
【0161】
本発明の三次元形状計測装置10は、第1および第2のラインセンサは、それぞれ、照射領域および非照射領域を、同時に撮像できるように配置されており、光パタンの位相を、画像における上記画素とその周辺の画素との輝度値に基づいて算出し、算出した位相に基づいて上記計測対象の高さ情報を算出するため、背景情報を除去した画像を算出する際に、1回の撮像で必要な画像を撮像することができるので、コスト削減および撮像速度の高速化が可能な三次元形状計測装置を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0162】
【図1】本発明の実施形態を示すものであり、三次元形状計測装置の要部構成を示す断面図および上面図図である。
【図2】上記三次元形状計測装置の物理的構成を示す概念図である。
【図3】上記三次元形状計測装置の要部構成を示す機能ブロック図である。
【図4】上記三次元形状計測装置で計測する計測対象の形状を示す図であって、(a)は上面図であり、同図(b)は側面図である。
【図5】上記計測対象に光パタンを投影した場合に、上記計測対象に投影された光パタンの歪みを示す図であって、(a)は上面図であり、(b)は基準面での輝度変動と凸部での輝度変動を示す波形図である。
【図6】投影される光パタンおよび投光部20を説明する図で、(a)は投光される光パタンの上面図であり、(b)は投光部20の投光器部分の構成を示す断面図である。
【図7】計測対象に光パタンまたは均一照明を投光した様子を示す図であり、(a)は、光パタンを投影した状態の光パタン照射領域の一例を示しており、(b)は、光パタンを投影せずに均一照明を投光した光パタン非照射領域の一例を示している。
【図8】上記三次元形状計測装置において、高さ一定の計測対象に関して、背景成分が除去されたライン画像の輝度値と、光パタン照射領域の画像を用いて算出される位相とのグラフを表す図である。
【図9】計測対象に光パタンを投影した画像と、光パタンを投影していない計測対象を撮影した画像とから、背景成分を除去した画像を作成した具体例を示す図である。
【図10】(a)および(b)は、投影された光パタンの縞およびラインセンサの間隔の関係について説明する概念図である。
【図11】上記三次元形状計測装置において、三次元形状計測装置10で三次元形状の計測処理の手順を示すフロー図である。
【図12】別の実施形態を示す図であり、三次元形状計測装置で用いられるカラー撮像カメラが備える、赤、緑、青、および白黒の色の輝度を検出する各ラインセンサの配置について説明する図である。
【図13】上記の三次元形状計測装置を用いて各色の輝度を計測した結果のグラフを示す図である。
【図14】さらに別の実施形態を示す図であり、三次元形状計測装置の要部構成を示す断面図および上面図である。
【図15】さらに別の実施形態を示す図であり、三次元形状計測装置の様々な構成を示す側面図である。
【図16】従来技術を示すものであり、光パタンを投影する状態および投影しない状態を切り替える構成を示す側面図である。
【符号の説明】
【0163】
10 三次元形状計測装置
12 計測対象
14 光パタン照射領域
16 光パタン非照射領域
20 投光部(投影手段)
22 光源
24 投光レンズ
26 パタン生成素子(光パタン投影手段)
28 光線分離部
30 撮像部
31 光源
32 撮像レンズ
34 ミラー
36 第1のラインセンサ
37 第1の領域
38 第2のラインセンサ
39 第2の領域
40 画像解析・駆動制御部(処理手段)
42 キャプチャボード
44 コントローラ
46 CPU
48 RAM
50 搬送部
52 搬送ステージ
54 サーボモータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測対象に投影された光パタンを解析することによって、計測対象の三次元形状を計測する三次元形状計測装置であって、
位置に応じて周期的に輝度が変化する光パタンを、上記計測対象が設置される計測面の一部の領域へ投影する光パタン投影手段と、
上記計測対象の光パタンが投影された光パタン照射領域を撮像する第1のラインセンサと、
上記計測対象の光パタンが投影されていない光パタン非照射領域を撮像する第2のラインセンサと、
上記第1および第2のラインセンサが撮像した画像から、背景情報を除去した画像に含まれる或る画素における光パタンの位相を、上記画像における上記画素とその周辺の画素との輝度値に基づいて算出し、算出した位相に基づいて上記計測対象の高さ情報を算出する処理手段とを備え、
上記第1および第2のラインセンサは、それぞれ、上記光パタン照射領域および光パタン非照射領域を同時に撮像できるように配置されていることを特徴とする三次元形状計測装置。
【請求項2】
複数のラインセンサを含む撮像手段を備え、
上記第1のラインセンサおよび第2のラインセンサとして、上記撮像手段のラインセンサのうち2つを用いることを特徴とする請求項1に記載の三次元形状計測装置。
【請求項3】
赤、緑、青、および白黒の色の輝度を検出するラインセンサを含むカラー撮像手段を備え、
上記第1のラインセンサとして、白黒のラインセンサを用い、
上記第2のラインセンサとして、赤、緑、ならびに青のラインセンサを用いることを特徴とする請求項1に記載の三次元形状計測装置。
【請求項4】
赤、緑、青、および白黒の色の輝度を検出するラインセンサを含むカラー撮像手段を備え、
上記第1のラインセンサとして、白黒のラインセンサと、赤、緑、または青のいずれか1つの色のフィルタとを含むセンサを用い、
上記第2のラインセンサとして、赤、緑、または青のうち上記フィルタと同じ色のラインセンサ用いることを特徴とする請求項1に記載の三次元形状計測装置。
【請求項5】
第1のラインセンサを備えた第1の撮像手段と、
第2のラインセンサを備えた第2の撮像手段と、
上記第1のラインセンサの撮像視線を上記光パタン照射領域に対向させるように配置された第1のミラーと、
上記第2のラインセンサの撮像視線を上記光パタン非照射領域に対向させるように配置された第2のミラーとを備えることを特徴とする請求項1に記載の三次元形状計測装置。
【請求項6】
上記第1のラインセンサおよび第2のラインセンサは、同一のレンズを通して上記光パタン照射領域および光パタン非照射領域を撮像することを特徴とする請求項4に記載の三次元形状計測装置。
【請求項7】
上記光パタン照射領域に対して光パタンを形成し、上記光パタン非照射領域に対して均一照明を照射するための透過部および遮光部を含むパタン形成素子を備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の三次元形状計測装置。
【請求項8】
光パタン投影手段によって投影される光パタンと同等の光量の均一照明を上記光パタン非照射領域に対して照射する均一照明投射手段をさらに備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の三次元形状計測装置。
【請求項9】
計測対象に投影された光パタンを解析することによって、計測対象の三次元形状を計測する三次元形状計測装置における三次元形状計測方法であって、
上記三次元形状計測装置は、光パタン投影手段と、第1のラインセンサと、第2のラインセンサとを備え、
上記第1および第2のラインセンサは、それぞれ、上記計測対象の光パタンが投影された光パタン照射領域および上記計測対象の光パタンが投影されていない光パタン非照射領域を同時に撮像できるように配置されており、
上記光パタン投影手段が位置に応じて周期的に輝度が変化する光パタンを上記計測対象が設置される計測面の一部の領域へ投影する光パタン投影ステップと、
上記第1のラインセンサが上記光パタン照射領域を撮像すると共に、上記第2のラインセンサが上記光パタン非照射領域を撮像する撮像ステップと、
上記第1および第2のラインセンサが撮像した画像から、背景情報を除去した画像に含まれる或る画素における光パタンの位相を、上記画像における上記画素とその周辺の画素との輝度値に基づいて算出し、算出した位相に基づいて上記計測対象の高さ情報を算出する算出ステップとを備えることを特徴とする三次元形状計測方法。
【請求項10】
計測対象に投影された光パタンを解析することによって、計測対象の三次元形状を計測する三次元形状計測装置における三次元形状計測方法を実行するプログラムであって、
上記三次元形状計測装置は、
位置に応じて周期的に輝度が変化する光パタンを、上記計測対象が設置される計測面の一部の領域へ投影する光パタン投影手段と、
上記計測対象の光パタンが投影された光パタン照射領域を撮像する第1のラインセンサと、
上記計測対象の光パタンが投影されていない光パタン非照射領域を撮像する第2のラインセンサとを備え、
上記第1および第2のラインセンサは、それぞれ、上記光パタン照射領域および光パタン非照射領域を同時に撮像できるように配置されており、
上記第1および第2のラインセンサが撮像した画像から、背景情報を除去した画像に含まれる或る画素における光パタンの位相を、上記画像における上記画素とその周辺の画素との輝度値に基づいて算出し、算出した位相に基づいて上記計測対象の高さ情報を算出する算出ステップをコンピュータに実行させる三次元形状計測プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−31150(P2009−31150A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−196192(P2007−196192)
【出願日】平成19年7月27日(2007.7.27)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】