説明

三次元形状計測装置

【課題】反射画像の輝度を適切な輝度に調整することができ、被計測物の三次元形状を正確に計測することが可能な三次元形状計測装置を提供すること。
【解決手段】三次元形状計測装置100は、輝度が正弦波状に変化する縞状の光パターンを異なる位相で複数回、被計測物に投影する投影手段10と、光パターンが投影された被計測物の反射画像を撮像する撮像手段20と、被計測物の反射画像を基に、被計測物の三次元座標を計測する計測手段31と、を有し、光パターンを被計測物に投影する前に、投影手段10より所定の光を被計測物に投影し、所定の光が投影された被計測物の反射画像における各画素の輝度階調値と、所定の光の輝度階調値と、を基に、被計測物の光の最大反射率を算出する反射率算出手段32と、最大反射率に応じて、撮像手段20が受光する受光量を調整する調整手段33と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、例えば機械部品などの被計測物の三次元形状を計測する三次元形状計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、特開2005−214653号公報(特許文献1)に示されるように、被計測物の物体表面の三次元形状を測定する方法の1つとして、位相シフト法が知られている。位相シフト法では、投影装置により被計測物に縞状の光パターンを投影し、被計測物の表面で乱反射された反射画像を投影装置の投影光軸と異なる方向から撮像装置で撮像する。そして、この撮像装置で撮像した濃淡画像を画像処理することで被計測物の3次元形状が計測される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−214653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、投影装置より投影される光の階調値と、撮像装置で撮像される反射画像の階調値とでは、単位階調値当たりの輝度のスケールが異なるため、同じ階調値であっても、実際に同じ輝度になるとは限らない。そのため、場合によっては、反射画像の一部の輝度が、撮像装置で階調値として検出可能な輝度を超えてしまい、被計測物の三次元形状が正確に計測されなくなる恐れがあった。
【0005】
本願発明は、上記背景技術に鑑みて発明されたもので、その目的は、反射画像の輝度を適切な輝度に調整することができ、被計測物の三次元形状を正確に計測することが可能な三次元形状計測装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本願発明の三次元形状計測装置は、輝度が正弦波状に変化する縞状の光パターンを異なる位相で複数回、被計測物に投影する投影手段と、前記光パターンが投影された前記被計測物の反射画像を撮像する撮像手段と、前記被計測物の反射画像を基に、前記被計測物の三次元座標を計測する計測手段と、を有し、前記光パターンを前記被計測物に投影する前に、前記投影手段より所定の光を前記被計測物に投影し、前記所定の光が投影された前記被計測物の反射画像における各画素の輝度階調値と、前記所定の光の輝度階調値と、を基に、前記被計測物の光の最大反射率を算出する反射率算出手段と、前記最大反射率に応じて、前記撮像手段が受光する受光量を調整する調整手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
この三次元形状計測装置において、前記投影手段は、光を投光する投光手段と、前記投光手段より投光される投光量を変化させる投光量変化手段と、前記投光手段により投光された光を基に、前記光パターンを形成する光パターン形成手段と、を有し、前記調整手段は、前記最大反射率を基に、前記投光量変化手段を用いて、前記投光手段により投光される投光量を調整することにより、前記撮像手段が受光する受光量を調整することが好ましい。
【0008】
この三次元形状計測装置において、前記撮像手段に対する露光量を変化させる露光量変化手段を有し、前記調整手段は、前記最大反射率を基に、前記露光量を調整することにより、前記撮像手段が受光する受光量を調整することが好ましい。
【0009】
この三次元形状計測装置において、前記撮像手段は、半導体撮像素子を含み、前記調整手段は、前記最大反射率を基に、前記半導体撮像素子から出力される画素信号の増幅率を調整することが好ましい。
【0010】
この三次元形状計測装置において、前記露光量変化手段は、前記撮像手段と前記被計測物との間に設けられ、前記被計測物からの反射光が透過するように設置された液晶パネルであり、前記調整手段は、当該液晶パネルの液晶配向を調整することにより前記露光量を変化させることが好ましい。
【0011】
この三次元形状計測装置において、この前記反射率算出手段は、輝度が均一な均一光を前記被計測物に投影し、当該均一光が投影された前記被計測物の反射画像における各画素の輝度階調値のうち、最も高い輝度階調値と、前記均一光の輝度階調値と、を基に、前記最大反射率を算出することが好ましい。
【0012】
この三次元形状計測装置において、前記反射率算出手段は、互いに輝度の異なる均一光を前記被計測物にそれぞれ投影した場合における前記被計測物の反射画像の各画素の輝度階調値を基に、前記最大反射率を算出することが好ましい。
【0013】
この三次元形状計測装置において、前記反射率算出手段は、所定の周期で明暗が反転する光パターンを前記被計測物に投影し、当該光パターンが投影された前記被計測物の反射画像における各画素の輝度階調値のうち、最も高い輝度階調値と、前記光パターンの明領域の輝度階調値と、を基に、前記最大反射率を算出することが好ましい。
【0014】
この三次元形状計測装置において、前記反射率算出手段は、輝度が正弦波状に変化する縞状の光パターンを前記被計測物に投影し、当該光パターンが投影された前記被計測物の反射画像における任意の画素の輝度階調値の変化を基に、当該光パターンの振幅と中心値とを算出し、当該光パターンの振幅と中心値とを基に、前記最大反射率を算出することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本願発明の三次元形状計測装置においては、被計測物の三次元形状の計測の際に、撮像手段で撮像可能な輝度を反射画像の輝度が超えるのを防ぐことができ、被計測物の三次元形状を正確に計測することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本願発明の第1実施形態に係る三次元形状計測装置のブロック図である。
【図2】投影装置より投光された均一光の輝度と反射画像の最大輝度との関係を示すグラフの一例である。
【図3】投影装置より投光された均一光の輝度と反射画像の最大輝度との関係を示すグラフの一例である。
【図4】本願発明の第2実施形態に係る三次元形状計測装置のブロック図である。
【図5】本願発明の第3実施形態に係る三次元形状計測装置のブロック図である。
【図6】本願発明の第4実施形態に係る三次元形状計測装置のブロック図である。
【図7】所定の周期で明暗が反転する複数の光パターンの一例である。
【図8】縞状の光パターンの位相情報を示すグラフの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ、各実施形態について説明する。
【0018】
(第1実施形態)
まず、本願発明の第1実施形態について説明する。
【0019】
まず、第1実施形態に係る三次元形状計測装置100の構成の一例について図1を用いて説明する。図1は、第1実施形態に係る三次元形状計測装置100の一例を示すブロック図である。図1において、矢印は信号の流れを示し、破線Lp1は投影光軸を示し、破線Lp2は反射光軸を示す。
【0020】
三次元形状計測装置100は、投影装置10と、撮像装置20と、処理装置30と、を備える。三次元形状計測装置100は、位相シフト法を用いて、被計測物Mの三次元形状を測定する装置である。具体的には、三次元形状計測装置100は、輝度が正弦波状に変化する縞状の光パターンを異なる位相で複数回、被計測物Mに投影し、それぞれの反射画像を撮像することで、被計測物Mの三次元形状を測定する。
【0021】
投影装置10は、縞状の光パターンを被計測物Mに投影する装置であり、主に、光源11と、当該光源11の光の投光方向に配置された透過型の液晶パネル12と、液晶パネル12を透過した光を被計測物Mに投影するレンズ13と、を備える。また、投影装置10は、光源11より投光される投光量を変化させる光源制御装置14を備える。撮像装置20は、光パターンが投影された被計測物Mの反射画像を撮像する装置であり、主に、半導体撮像素子22と、当該半導体撮像素子22の出力を信号処理して画素毎の輝度を得る信号処理回路21と、を備える。半導体撮像素子22としては、例えば、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)が挙げられる。なお、ここで、投影装置10は投影手段として機能する。具体的には、光源11が投光手段、光源制御装置14が投光量変化手段、液晶パネル12が光パターン形成手段としてそれぞれ機能する。また、撮像装置20が撮像手段として機能する。
【0022】
処理装置30は、例えばPC(Personal Computer)などのコンピュータであり、CPU(Central Processing Unit)、メモリやハードディスクを備え、投影装置10及び撮像装置20と通信インターフェースを介して接続されている。処理装置30は、メモリに記憶されたプログラムをCPUが実行することにより、計測手段31、反射率算出手段32及び調整手段33として機能する。以下、これらの手段について、具体的に説明する。
【0023】
計測手段31は、位相シフト法を用いて、被計測物Mの三次元形状を計測する。具体的には、計測手段31は、液晶パネル12を透過した光が縞状の光パターンを形成するように、投影装置10を制御して、液晶パネル12の液晶配向を変化させる。また、計測手段31は、撮像装置20の信号処理回路21から出力される画素信号を基に、縞状の光パターンが投影された被計測物Mの反射画像を取得する。計測手段31は、縞状の光パターンを異なる位相で複数回、被計測物Mに投影し、その度に反射画像を取得する。そして、計測手段31は、これら複数の反射画像を基に、被計測物Mの三次元形状を算出する。より詳細には、計測手段31は、位相を異ならせて光パターンを被計測物Mに投影したときの各画素の輝度階調値の変化を基に、各画素毎に、被計測物Mで反射された光パターンの位相変化を算出し、当該位相変化を基に、被計測物Mの三次元形状を算出する。
【0024】
反射率算出手段32及び調整手段33は、被計測物Mの光の最大反射率に応じて、撮像装置20が受光する受光量を調整する。具体的には、反射率算出手段32は、投影装置10を制御して、投影装置10より所定の光、例えば、輝度が均一な均一光を被計測物Mに投影するとともに、当該均一光が投影された被計測物Mの反射画像を取得する。そして、反射率算出手段32は、当該反射画像における各画素の輝度階調値を基に、被計測物Mの最大反射率を算出する。ここで、最大反射率とは、当該反射画像の最大輝度階調値と、当該所定の光(ここでは均一光)の輝度階調値との比率である。調整手段33は、算出された最大反射率に応じて、撮像装置20が受光する受光量を調整する。
【0025】
このように、第1実施形態に係る三次元形状計測装置100は、被計測物Mの三次元形状の測定を行う計測手段31に加え、受光量調整制御を行う反射率算出手段32及び調整手段33を有する。
【0026】
次に、反射率算出手段32及び調整手段33による受光量調整制御について具体的に説明する。先にも述べたように、位相シフト法では、縞状の光パターンが投影された被計測物Mの反射画像が撮像装置20により撮像される。ここで、投影装置10より投影される光の輝度階調値は、投影装置10の液晶パネル12の設定に応じて決定され、撮像装置20にて撮像される反射画像の輝度階調値は、撮像装置20の信号処理回路21の設定に応じて決定される。つまり、投影装置10より投影される光の輝度階調値と、当該反射画像における各画素の輝度階調値とでは、単位階調値当たりの輝度のスケールが異なることがあり、同じ輝度階調値であっても、実際に同じ輝度になるとは限らない。そのため、場合によっては、反射画像の一部の輝度が、撮像装置20で撮像可能な輝度を超えて飽和してしまい、被計測物Mの三次元形状が正確に計測されなくなる可能性がある。
【0027】
そこで、第1実施形態では、位相シフト法を用いた被計測物Mの三次元形状の計測が行われる前に、撮像装置20が受光する受光量を調整する受光量調整制御が行われる。
【0028】
第1実施形態に係る受光量調整制御の具体的な方法について説明する。
【0029】
まず、反射率算出手段32は、投影装置10を制御して、被計測物Mに均一光を投影するとともに、当該均一光が投影された被計測物Mの反射画像を撮像装置20より取得する。反射率算出手段32は、当該均一光が投影された被計測物Mの反射画像を取得すると、当該反射画像の最大輝度階調値を算出する。具体的には、反射率算出手段32は、当該反射画像における各画素の輝度階調値のうち、最も大きな輝度階調値を最大輝度階調値として算出する。反射率算出手段32は、当該反射画像の最大輝度階調値と当該均一光の輝度階調値との比率を最大反射率として算出する。調整手段33は、算出された最大反射率を基に、撮像装置20が受光する受光量を調整する。例えば、撮像装置20にて検出可能な輝度階調値の範囲が1〜255の間にある場合には、調整手段33は、当該反射画像の最大輝度階調値が「255」よりも小さくなるように、撮像装置20が受光する受光量を調整する。なお、以下では、撮像装置20が検出可能な輝度階調値の最大値(上述の例でいうと「255」)を「階調限界値」と称する。第1実施形態に係る三次元形状計測装置100では、調整手段33は、光源制御装置14を用いて、光源11より投光される投光量を調整することにより、撮像装置20で受光される受光量を調整する。
【0030】
最大反射率の算出方法について図2、図3を用いて具体的に説明する。図2、図3は、投影装置10より投影された均一光の輝度階調値と反射画像の最大輝度階調値との関係を示すグラフの一例である。なお、以下では、投影装置10より投影される光の輝度階調値を「L」を付けて示し、撮像装置20にて受光される光の輝度階調値を「R」を付けて示すこととする。
【0031】
図2は、三次元形状計測装置100を暗室に置いて計測を行うことを想定したときのグラフの一例である。図2に示すように、均一光の輝度と反射画像の最大輝度との関係は、線形グラフで示される。即ち、均一光の輝度が大きくなるほど、反射画像の最大輝度は大きくなる。図2に示す例では、三次元形状計測装置100を暗室に置いて計測を行うことを想定しているので、均一光の輝度が0Lとなる場合には、反射画像の最大輝度も0Rとなる。ここで、図2に示すグラフの傾きが最大反射率として算出される。
【0032】
例えば、図2のグラフ上の点Paに示すように、均一光の輝度が100Lに設定された場合において、当該均一光が投影されたときの被計測物Mの反射画像の最大輝度が120Rと算出されたとする。このとき、最大反射率は120R/100L=1.2R/Lと算出される。調整手段33は、当該最大反射率を基に、光源制御装置14を制御して、光源11より投光される投光量を調整する。例えば、撮像装置20の最大階調値が255Rの場合には、調整手段33は、光源11より投光される光の輝度階調値が255R/(1.2R/L)=212Lよりも小さくなるように光源11より投光される投光量を調整する。このようにすることで、反射画像の最大輝度階調値が255Rを超えるのを防ぐことができる。これにより、反射画像の輝度が、撮像装置20で階調値として検出可能な最大輝度を超えるのを防ぐことができ、被計測物Mの三次元形状を正確に計測することが可能となる。
【0033】
上述の例では、三次元形状計測装置100を暗室に置いて計測を行うとしているが、このようにする代わりに、環境光の存在する部屋に置いて計測を行うとしてもよい。
【0034】
図3は、三次元形状計測装置100を環境光の存在する部屋に置いて計測を行うことを想定したときのグラフの一例である。図2に示した例と同様、図3に示す例においても、均一光の輝度階調値と反射画像の最大輝度階調値との関係は、線形グラフで示され、グラフの傾きが最大反射率として算出される。ただし、図2に示した例と異なり、図3に示す例では、均一光の輝度階調値が0Lとなる場合であっても、環境光の影響により、反射画像の最大輝度階調値は0Rとならない。従って、図3に示すグラフの傾きを算出するためには、グラフ上の任意の2点の位置を知る必要がある。そこで、反射率算出手段32は、互いに輝度の異なる均一光を被計測物Mに投影したときの反射画像の最大輝度階調値をそれぞれ算出して、最大反射率を算出する。例えば、点Pcに示すように、均一光の輝度階調値が80Lのときに反射画像の最大輝度階調値が96Rとなり、点Pbに示すように、均一光の輝度階調値が130Lのときに反射画像の最大輝度階調値が156Rとなったとする。この場合、最大反射率は、(156R−96R)/(130L−80L)=1.2R/Lと算出される。このようにすることで、環境光の存在する状況下であっても、当該環境光の影響を除去しつつ、最大反射率を算出することができる。
【0035】
以上に述べたことから分かるように、第1実施形態では、反射率算出手段32は、投影装置10より均一光を被計測物Mに投影する。そして、反射率算出手段32は、当該均一光が投影された被計測物Mの反射画像の最大輝度階調値と、当該均一光の輝度階調値と、を基に、被計測物Mの最大反射率を算出する。調整手段33は、算出された最大反射率に応じて、撮像装置20が受光する受光量を調整する。例えば、第1実施形態では、調整手段33は、算出された最大反射率に応じて、光源11より投光される投光量を調整する。このようにすることで、被計測物Mの三次元形状の計測の際に、撮像装置20で階調値として検出可能な輝度を反射画像の輝度が超えるのを防ぐことができ、被計測物Mの三次元形状を正確に計測することが可能となる。
【0036】
(第2実施形態)
次に、本願発明の第2実施形態について図4を用いて説明する。図4は、第2実施形態に係る三次元形状計測装置100aのブロック図である。図4に示す三次元形状計測装置100aにおいて、図1に示した三次元形状計測装置100と同じ構成要素については、同じ符号が付されている。ここで、第1実施形態に係る三次元形状計測装置100と異なり、第2実施形態に係る三次元形状計測装置100aは、撮像装置20に対する露光量を変化させることが可能な露光量変化手段の一例として、シャッター23を有する。
【0037】
先に述べた第1実施形態では、調整手段33は、算出された最大反射率に応じて、光源制御装置14を制御して、光源11より投光される投光量を調整するとしていた。これに対し、第2実施形態では、調整手段33は、光源制御装置14を用いる代わりに、シャッター23を用いて、撮像装置20の露光量を調整することとする。これによっても、撮像装置20が受光する受光量を調整することができる。以下、第2実施形態に係る受光量調整制御について具体的に説明する。
【0038】
第1実施形態で述べたのと同様の方法によって、反射率算出手段32は、投影装置10より均一光を被計測物Mに投影し、当該均一光が投影された被計測物Mの反射画像における最大輝度階調値と、当該均一光の輝度階調値と、を基に、被計測物Mの光の最大反射率を算出する。そして、調整手段33は、算出された最大反射率に応じて、撮像装置20のシャッター23を用いて、例えば露光時間を調整することで、撮像装置20に対する露光量を調整する。具体的には、調整手段33は、算出された最大反射率に応じて、被計測物Mの反射画像の最大輝度階調値が階調限界値よりも小さくなるように、撮像装置20に対する露光量を調整する。このようにしても、被計測物Mの三次元形状の計測の際に、撮像装置20で階調値として検出可能な輝度を反射画像の輝度が超えるのを防ぐことができ、被計測物Mの三次元形状を正確に計測することが可能となる。
【0039】
なお、ここで、撮像装置20に対する露光量を調整する方法として、調整手段33は、シャッター23を用いる代わりに、又は、加えて、信号処理回路21を制御して、撮像装置20の半導体撮像素子22の各画素から出力される画素信号の増幅率を各画素毎に調整するとしてもよい。つまり、半導体撮像素子22の各画素から出力される画素信号の増幅率を互いに異ならせるとしてもよい。この場合、信号処理回路21が露光量変化手段として機能する。例えば、反射画像の一部の画素の輝度階調値が階調限界値を超えており、当該一部の画素以外の画素の輝度階調値が階調限界値を超えていない場合には、調整手段33は、当該一部の画素から出力される画素信号の増幅率のみを低下させるとすればよい。これにより、反射画像における輝度階調値の差が極端に異なる画素を一度に計測することが可能となる。また、これによれば、受光量調整制御のために新たに装置を設けることなく、上述したのと同様の効果、即ち、撮像装置20で階調値として検出可能な輝度を反射画像の輝度が超えるのを防いで、被計測物Mの三次元形状を正確に計測することが可能となる。
【0040】
(第3実施形態)
次に、本願発明の第3実施形態について図5を用いて説明する。図5は、第3実施形態に係る三次元形状計測装置100bのブロック図である。図5に示す三次元形状計測装置100bにおいて、図4に示した三次元形状計測装置100aと同じ構成要素については、同じ符号が付されている。ここで、第2実施形態に係る三次元形状計測装置100aと異なり、第3実施形態に係る三次元形状計測装置100bは、透過型の液晶パネル23aを有する。
【0041】
先に述べた第2実施形態では、調整手段33は、シャッター23を用いて、撮像装置20に対する露光量を調整するとしていた。これに対し、第3実施形態では、調整手段33は、露光量変化手段として、シャッター23を用いる代わりに、液晶パネル23aを用いて、撮像装置20に対する露光量を調整することとする。ここで、図5に示すように、液晶パネル23aは、撮像装置20と被計測物Mとの間に設けられ、被計測物Mからの反射光が透過するように設置されている。以下、第3実施形態に係る受光量調整制御について具体的に説明する。
【0042】
第1実施形態で述べたのと同様の方法によって、反射率算出手段32は、投影装置10より均一光を被計測物Mに投影し、当該均一光が投影された被計測物Mの反射画像における各画素の輝度を基に、被計測物Mの光の最大反射率を算出する。そして、調整手段33は、算出された最大反射率に応じて、液晶パネル23aの液晶配向を制御して、撮像装置20に対する露光量を調整する。具体的には、調整手段33は、算出された最大反射率に応じて、被計測物Mの反射画像の最大輝度階調値が階調限界値よりも小さくなるように、撮像装置20に対する露光量を調整する。このようにしても、被計測物Mの三次元形状の計測の際に、撮像装置20で階調値として検出可能な輝度を反射画像の輝度が超えるのを防ぐことができ、被計測物Mの三次元形状を正確に計測することが可能となる。また、液晶パネル23aでは、パネル上の領域に応じて、透過率を異ならせることができる。従って、この方法によれば、半導体撮像素子22の各画素毎に、露光量を異ならせることができる。例えば、反射画像の一部の画素の輝度階調値が階調限界値を超えている場合には、当該一部の画素に対応する液晶パネル23a上の領域の透過率を低下させればよい。これによっても、反射画像における各画素の輝度階調値の差が極端に異なる場合において、各画素を一度に計測することが可能となる。また、この方法によれば、撮像装置20の半導体撮像素子22の各画素から出力される画素信号の増幅率を調整する方法と比較して、画素信号に発生するノイズの発生を抑えることができる。
【0043】
(第4実施形態)
次に、本願発明の第4実施形態について図6を用いて説明する。図6は、第4実施形態に係る三次元形状計測装置100cのブロック図である。図6に示す三次元形状計測装置100cにおいて、図1に示した三次元形状計測装置100と同じ構成要素については、同じ符号が付されている。
【0044】
第4実施形態に係る受光輝度調整制御について説明する。上述したように、位相シフト法では、輝度が正弦波状に変化する縞状の光パターンを異なる位相で複数回、被計測物に投影し、それぞれの反射画像を撮像することで、被計測物の三次元形状が測定される。しかしながら、位相シフト法では、被計測物Mで反射された光パターンの位相変化を知る事ができるものの、光パターンの一端から他端に向かって数えて何周期目の縞が反射画像上でどの位置にあるかを推定することは難しい。そこで、第4実施形態では、空間コード化法を用いて、半導体撮像素子22の各画素について、光パターンの一端から他端に向かって数えて何周期目の縞(以下、「縞次数」と称する)が来るかが推定される。ここで、空間コード法を用いた縞次数の計算は空間コード算出手段32aによって行われる。
【0045】
具体的には、位相シフト法を用いた被計測物の三次元形状の測定が計測手段31により行われる前に、空間コード算出手段32aは、投影装置10を制御して、所定の周期で明暗が反転する複数の光パターンを被計測物Mに投影する。光パターンの具体例としては、図7(a)〜(c)に示すように、明領域Ar1と暗領域Ar2とが交互に並んだ光パターンが挙げられる。そして、空間コード算出手段32aは、光パターンが投影された被計測物Mの反射画像を基に、縞次数を算出する。
【0046】
ここで、第4実施形態では、空間コード算出手段32aは、図7(a)〜(c)に示す光パターンが投影された被計測物Mの反射画像における各画素の輝度階調値のうち、最も高い輝度階調値を最大輝度階調値として算出する。そして、空間コード算出手段32aは、当該最大輝度階調値と、当該光パターンの明領域の輝度階調値と、を基に、最大反射率を算出する。従って、空間コード算出手段32aは、反射率算出手段としても機能する。そして、第1実施形態で述べたのと同様にして、調整手段33は、算出された最大反射率に応じて、光源11より投光される投光量を調整する。このようにしても、被計測物Mの三次元形状の計測の際に、撮像装置20で撮像可能な輝度を反射画像の輝度が超えるのを防ぐことができ、被計測物Mの三次元形状を正確に計測することが可能となる。
【0047】
なお、第4実施形態では、調整手段33は、算出された最大反射率に応じて、投影装置10の投光より投光される光の輝度を調整するとしているが、これに限られるものではない。このようにする代わりに、又は、加えて、第2又は第3実施形態で述べた方法を用いて、撮像装置20に対する露光量を調整するとしてもよい。
【0048】
(第5実施形態)
次に、本願発明の第5実施形態について説明する。第5実施形態に係る三次元形状計測装置の構成は、第1実施形態に係る三次元形状計測装置100と同様の構成である。
【0049】
第5実施形態では、位相シフト法を用いた被計測物Mの三次元形状の計測が行われる前に、反射率算出手段32は、輝度が正弦波状に変化する縞状の光パターンを異なる位相で複数回、被計測物Mに投影し、当該縞状の光パターンが投影された被計測物Mの反射画像を取得する。そして、反射率算出手段32は、当該反射画像における任意の1つの画素の輝度階調値の変化を基に、当該光パターンの振幅と中心値とを算出し、当該光パターンの振幅と中心値と、を基に、最大反射率を算出する。以下、図8を用いて具体的に説明する。
【0050】
図8は、被計測物Mで反射された光パターンの位相情報を示すグラフの一例である。図8に示す例では、反射率算出手段32は、縞状の光パターンを異なる位相で3回、被計測物Mに投影している。図8において、点P1、P2、P3はそれぞれ、縞状の光パターンが位相を変えて被計測物Mに投影されたときの、任意の画素での位相と輝度階調値との関係を示している。反射率算出手段32は、点P1、P2、P3を基に、最小二乗法などを用いて、正弦波を当てはめ、当該正弦波の中心値及び振幅を求める。これにより、被計測物Mで反射された光パターンの位相情報が得られる。反射率算出手段32は、中心値に振幅を足した値L1を、反射画像の最大輝度階調値として算出する。なお、ここで、値L2は階調限界値を示している。そして、反射率算出手段32は、反射画像の最大輝度階調値L1と、投影装置10より投影される光パターンの輝度階調値の最大値との比率を最大反射率として算出する。調整手段33は、算出された最大反射率に応じて、光源11より投光される投光量を調整する。このようにしても、被計測物Mの三次元形状の計測の際に、撮像装置20で階調値として検出可能な輝度を反射画像の輝度が超えるのを防ぐことができ、被計測物Mの三次元形状を正確に計測することが可能となる。
【0051】
なお、第5実施形態では、調整手段33は、算出された最大反射率に応じて、投影装置10より投光される投光量を調整するとしているが、これに限られるものではない。このようにする代わりに、又は、加えて、第2又は第3実施形態で述べた方法を用いて、撮像装置20に対する露光量を調整するとしてもよいのは言うまでもない。
【0052】
(変形例)
本願発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う三次元計測装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。例えば、上記では、第1乃至第5実施形態を別個に説明したが、第1乃至第5実施形態における制御及び構成要素を適宜組み合わせてもよいのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0053】
10 投影装置(投影手段)
20 撮像装置(撮像手段)
23、23a 露光量変化手段
30 処理装置
31 計測手段
32 反射率算出手段
33 調整手段
100 三次元形状計測装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
輝度が正弦波状に変化する縞状の光パターンを異なる位相で複数回、被計測物に投影する投影手段と、
前記光パターンが投影された前記被計測物の反射画像を撮像する撮像手段と、
前記被計測物の反射画像を基に、前記被計測物の三次元座標を計測する計測手段と、を有する三次元形状計測装置であって、
前記光パターンを前記被計測物に投影する前に、前記投影手段より所定の光を前記被計測物に投影し、前記所定の光が投影された前記被計測物の反射画像における各画素の輝度階調値と、前記所定の光の輝度階調値と、を基に、前記被計測物の光の最大反射率を算出する反射率算出手段と、
前記最大反射率に応じて、前記撮像手段が受光する受光量を調整する調整手段と、を備えることを特徴とする三次元形状計測装置。
【請求項2】
前記投影手段は、光を投光する投光手段と、前記投光手段より投光される投光量を変化させる投光量変化手段と、前記投光手段により投光された光を基に、前記光パターンを形成する光パターン形成手段と、を有し、
前記調整手段は、前記最大反射率を基に、前記投光量変化手段を用いて、前記投光手段により投光される投光量を調整することにより、前記撮像手段が受光する受光量を調整することを特徴とする請求項1に記載の三次元形状計測装置。
【請求項3】
前記撮像手段に対する露光量を変化させる露光量変化手段を有し、
前記調整手段は、前記最大反射率を基に、前記露光量を調整することにより、前記撮像手段が受光する受光量を調整することを特徴とする請求項1又は2に記載の三次元形状計測装置。
【請求項4】
前記撮像手段は、半導体撮像素子を含み、
前記調整手段は、前記最大反射率を基に、前記半導体撮像素子から出力される画素信号の増幅率を調整することを特徴とする請求項3に記載の三次元形状計測装置。
【請求項5】
前記露光量変化手段は、前記撮像手段と前記被計測物との間に設けられ、前記被計測物からの反射光が透過するように設置された液晶パネルであり、
前記調整手段は、当該液晶パネルの液晶配向を調整することにより、前記露光量を変化させることを特徴とする請求項3又は4に記載の三次元形状計測装置。
【請求項6】
前記反射率算出手段は、輝度が均一な均一光を前記被計測物に投影し、当該均一光が投影された前記被計測物の反射画像における各画素の輝度階調値のうち、最も高い輝度階調値と、前記均一光の輝度階調値と、を基に、前記最大反射率を算出することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の三次元形状計測装置。
【請求項7】
前記反射率算出手段は、互いに輝度の異なる均一光を前記被計測物にそれぞれ投影した場合における前記被計測物の反射画像の各画素の輝度階調値を基に、前記最大反射率を算出することを特徴とする請求項6に記載の三次元形状計測装置。
【請求項8】
前記反射率算出手段は、所定の周期で明暗が反転する光パターンを前記被計測物に投影し、当該光パターンが投影された前記被計測物の反射画像における各画素の輝度階調値のうち、最も高い輝度階調値と、前記光パターンの明領域の輝度階調値と、を基に、前記最大反射率を算出することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の三次元形状計測装置。
【請求項9】
前記反射率算出手段は、輝度が正弦波状に変化する縞状の光パターンを前記被計測物に投影し、当該光パターンが投影された前記被計測物の反射画像における任意の画素の輝度階調値の変化を基に、当該光パターンの振幅と中心値とを算出し、当該光パターンの振幅と中心値とを基に、前記最大反射率を算出することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の三次元形状計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−68176(P2012−68176A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−214632(P2010−214632)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】