説明

乗用型芝刈車両

【課題】乗用型芝刈車両において、十分な走行駆動力を有し、旋回における後輪の回転速度と前輪の回転速度の間の適切な制御を行うことである。
【解決手段】乗用型芝刈車両10において、車輪40,42には、それぞれ車軸電動回転機50,52が接続される。制御部100は、標準的設定条件の下の制御とは別に、特別設定条件の下の制御を行う機能を有する。減速制御モジュール116は、標準的な走行速度よりも減速して旋回制御等を行う。片側車輪自由制御モジュール118は、旋回中心位置が片側車輪の位置であるとき、その片側車輪を自由状態にする制御を行う。旋回制限制御モジュール120は、旋回半径が小さすぎるとき、旋回半径を制限して制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は乗用型芝刈車両に係り、特に芝刈用ブレードまたは芝刈用リールを搭載し、作業者が乗り込んで操縦する乗用型芝刈車両に関する。
【背景技術】
【0002】
庭等の地表に植栽された芝等の草を刈るための装置は、芝以外の草の刈り込みに用いることも勿論できるが、一般的に芝刈機と呼ばれている。芝刈機としては、芝刈用のブレード等を備える芝刈工具を作業者が手に持って庭等を移動して芝を刈る手持芝刈機の他に、庭等の地表を車輪でもって移動できる車輪移動型芝刈装置がある。車輪移動型芝刈装置としては、作業者が手等で押しながら庭等を移動するものがあり、これらは一般的にウォークビハインド式芝刈機と呼ばれることがある。さらに大型のものとして、自力走行ができる車両に芝刈回転工具を搭載し、作業者が乗り込んで走行と芝刈の操縦を車上で行うものがあり、これらは乗用型芝刈車両と呼ぶことができる。
【0003】
乗用型芝刈車両は、車両の一種ではあるが、道路走行のために用いられるのではなく、もっぱら庭等のいわゆるオフロードで用いられ、芝刈作業のために地表を移動するものであり、車輪の駆動と、芝刈回転工具の駆動を行うための駆動源が搭載される。駆動源としては、内燃機関、内燃機関によって駆動される油圧モータ、電気モータ等が用いられている。
【0004】
例えば、特許文献1には、内燃機関のエンジンシャフトにロータを連結したエンジン・発電機一体型を搭載するハイブリッド動力装置が開示されている。動力装置として例示されている芝刈機は、複数の駆動輪にそれぞれ独立の電気モータが連結され、それぞれの駆動輪を独立的に可変速度で制御でき、これによって芝刈機のスムースな始動、停止、速度変更、方向転換、旋回を行うことができると述べられている。駆動輪の独立速度変更による旋回の例としては、いずれも左右後輪にそれぞれ電気モータが連結されているものが述べられている。
【0005】
特許文献2には、ハイブリッド芝刈機として、前方に配置されているエンジンに接続されたオルタネータによる電力で、芝刈刃駆動用のデッキモータ、独立制御される左右後輪駆動用の左右車輪モータ、左右前輪を車軸回りに約180度の範囲でステアリングさせるステアリングモータを駆動する構成が開示されている。ここで、芝刈機を旋回させるには、ステアリング制御部の入力から左右後輪の速度差を計算して車輪モータを制御すると共に、ステアリングモータにステアリング信号を与えて左右前輪の位置の制御を行う。これによって、左右後輪をステアリングさせることなく、芝刈機を旋回させることができると述べられている。なお、配置構成の特徴として、左右車輪モータは左右車輪のリムの中に設けられ、また、差動歯車機構がないので、フレームの下の左右車輪の間に空間が確保され、ここに刈られた芝を搬出する傾斜台を配置できることが述べられている。
【0006】
【特許文献1】特表2006−507789号公報
【特許文献2】米国特許第7017327B2号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
乗用型芝刈車両において旋回を行う方法として、特許文献1には左右後輪にそれぞれ独立に設けられた電気モータによって左後輪の回転速度と右後輪の回転速度とを異ならせることが開示されている。また、特許文献2においては、左右車輪モータによって左右後輪に速度差を与えると共に、ステアリングモータによって左右前輪の位置の制御を行ってステアリングを行うことが開示されている。
【0008】
芝刈作業においては、操縦者の熟練度や庭等の地表の状態等によって、特に注意を払って走行や旋回を行う必要がある場合がある。例えば、旋回操縦をする場合、操縦者が熟練者の場合は比較的速い走行速度の下でも旋回を自由に行うことができるが、初心者の場合には、走行速度を落とした方が旋回を適切に行える場合がある。また、旋回半径が小さい場合に、片側車輪を旋回中心位置として旋回を行うことがあるが、片側車輪の状態によっては、旋回中心位置となる片側車輪の旋回によって芝の植栽に損傷を与えることがある。また、傾斜地においては、旋回半径が小さすぎると、乗用型芝刈車両の重心の移動によって、車両そのものが不安定な状態になることがある。
【0009】
このように、芝刈作業の状況によっては、走行や旋回の制御をきめ細かくする必要が生じる場合がある。従来技術によれば、このようなきめ細かな制御について不十分である。
【0010】
本発明の目的は、芝刈作業の状況に適合して、走行や旋回に対しきめ細かな制御を行うことを可能にする乗用型芝刈車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る乗用型芝刈車両は、電動回転機によってそれぞれ独立に走行駆動される主駆動輪である左右車輪と、操向輪である少なくとも1つのキャスタ輪と、芝刈のために駆動される芝刈用ブレードまたは芝刈用リールと、旋回操作子による旋回指示入力に応じ、予め定めた標準設定条件に従い、または標準的設定条件と異なる特別設定条件に従って、左右車輪の各走行駆動を制御する制御部と、標準設定条件または特別設定条件のいずれかを指定する手段と、を備え、指定された設定条件に従って、旋回指示に対応する旋回中心位置の周りに左右車輪を旋回させることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る乗用型芝刈車両は、電動回転機によってそれぞれ独立に走行駆動される主駆動輪である左右車輪と、操向輪である少なくとも1つのキャスタ輪と、芝刈のために駆動される芝刈用ブレードまたは芝刈用リールと、旋回操作子による旋回指示入力に応じ、予め定めた標準設定条件に従い、または標準的設定条件と異なる特別設定条件として車両の移動速度あるいは車両の旋回速度の少なくとも一方が標準設定条件よりも減速される減速設定条件に従って、左右車輪の各走行駆動を制御する制御部と、標準設定条件または減速設定条件のいずれかを指定する手段と、を備え、指定された設定条件に従って、旋回指示に対応する旋回中心位置の周りに左右車輪を旋回させることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る乗用型芝刈車両において、旋回操作子は、ステアリング角度を旋回指示入力とするハンドル式あるいはモノレバー式のステアリング操作子であり、制御部は、ステアリング操作子の旋回指示入力に対応して、旋回中心位置を求め、旋回中心位置に対応する左右車輪のそれぞれの走行速度である左右車輪速度を求めて取得する手段と、取得された左右車輪速度に応じて左右車輪を走行駆動して旋回中心位置の周りに旋回させる駆動手段と、を含むことが好ましい。
【0014】
また、本発明に係る乗用型芝刈車両において、旋回操作子は、左右車輪速度を旋回指示入力とする2レバー式の操作子であり、制御部は、2レバー式操作子の旋回指示入力に対応して、旋回中心位置を求め、旋回中心位置に対応する左右車輪のそれぞれの走行速度である左右車輪速度を求めて取得する手段と、指示入力された左右車輪速度に応じて左右車輪を走行駆動して旋回中心位置の周りに旋回させる駆動手段と、を含むことが好ましい。
【0015】
また、本発明に係る乗用型芝刈車両において、制御部は、標準設定条件を実行するときは、左右車輪の中間位置における平均走行速度について、旋回の進行の間、一定速度に維持し、減速設定条件を実行するときは、平均走行速度を標準設定条件の一定速度から旋回の進行に応じて次第に減速することが好ましい。
【0016】
また、本発明に係る乗用型芝刈車両において、制御部は、旋回中心位置が左右車輪の内側の領域となり、一方側の車輪の速度と他方側の車輪の速度とが互いに逆方向となる場合に、標準設定条件を実行するときは、旋回中心位置が左右車輪の内側の領域に入るまでは平均走行速度を一定速度に維持し、旋回中心位置が左右車輪の内側の領域に入った後は、旋回中心位置が左右車両の中間位置に近づくにつれて平均走行速度を所定の条件の下で減速し、減速設定条件を実行するときは、平均走行速度を標準設定条件と同じとしたまま、一方側の車輪の速度を標準設定条件の下の速度より減速することが好ましい。
【0017】
また、本発明に係る乗用型芝刈車両は、電動回転機によってそれぞれ独立に走行駆動される主駆動輪である左右車輪と、操向輪である少なくとも1つのキャスタ輪と、芝刈のために駆動される芝刈用ブレードまたは芝刈用リールと、旋回操作子による旋回指示入力に応じ、予め定めた標準設定条件に従い、または標準的設定条件と異なる特別設定条件として旋回中心位置が左車輪の接地位置または右車輪の接地位置のいずれかであるときに、その旋回中心位置に対応する片側車輪を車軸周りに自由回転状態として、走行駆動及び制動を行わない片側車輪自由制御設定条件に従って、左右車輪の各走行駆動を制御する制御部と、標準設定条件または片側車輪自由制御設定条件のいずれかを指定する手段と、を備え、指定された設定条件に従って、旋回指示に対応する旋回中心位置の周りに左右車輪を旋回させることを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る乗用型芝刈車両において、旋回操作子は、左右車輪速度を旋回指示入力とする2レバー式の操作子であり、制御部は、旋回中心位置に対応する片側車輪についての操作子の旋回指示入力が電動回転機と片側車輪との間の接続を開放状態とするときに、片側車輪自由制御を行うことが好ましい。
【0019】
また、本発明に係る乗用型芝刈車両は、電動回転機によってそれぞれ独立に走行駆動される主駆動輪である左右車輪と、操向輪である少なくとも1つのキャスタ輪と、芝刈のために駆動される芝刈用ブレードまたは芝刈用リールと、旋回操作子による旋回指示入力に応じ、予め定めた標準設定条件に従い、または標準的設定条件と異なる特別設定条件として旋回中心位置が左右車輪の内側の領域に入る場合には、旋回中心位置を少なくとも左右車輪のいずれかの車輪の対地位置まで戻す旋回制限設定条件に従って、左右車輪の各走行駆動を制御する制御部と、標準設定条件または旋回制限設定条件のいずれかを指定する手段と、を備え、指定された設定条件に従って、旋回指示に対応する旋回中心位置の周りに左右車輪を旋回させることを特徴とする。
【0020】
また、本発明に係る乗用型芝刈車両において、車両の対地傾斜角度を検出する傾斜センサを備え、制御部は、傾斜センサの検出値が所定の閾値傾斜角度を超えるときを旋回制限設定条件の指定として、旋回制限条件の下で左右車輪の走行駆動を制御することが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
上記構成の少なくとも1つにより、乗用型芝刈車両は、電動回転機によってそれぞれ独立に走行駆動される主駆動輪である左右車輪と、操向輪である少なくとも1つのキャスタ輪を備え、旋回操作子による旋回指示入力に応じ、予め定めた標準設定条件に従い、または標準的設定条件と異なる特別設定条件に従って、左右車輪の各走行駆動を制御する。したがって、標準的な場合と異なる状況に適合して、走行や旋回に対しきめ細かな制御を行うことが可能となる。
【0022】
また、上記構成の少なくとも1つにより、乗用型芝刈車両は、電動回転機によってそれぞれ独立に走行駆動される主駆動輪である左右車輪と、操向輪である少なくとも1つのキャスタ輪を備え、旋回操作子による旋回指示入力に応じ、予め定めた標準設定条件に従い、または標準設定条件よりも減速される減速設定条件に従って、左右車輪の各走行駆動を制御する。したがって、標準的な場合と異なる状況に適合して、走行や旋回をゆっくりと低速で実行するきめ細かな制御を行うことが可能となる。
【0023】
また、上記構成の少なくとも1つにより、乗用型芝刈車両は、電動回転機によってそれぞれ独立に走行駆動される主駆動輪である左右車輪と、操向輪である少なくとも1つのキャスタ輪を備え、旋回操作子による旋回指示入力に応じ、予め定めた標準設定条件に従い、または標準的設定条件と異なる特別設定条件として旋回中心位置が左車輪の接地位置または右車輪の接地位置のいずれかであるときに、その旋回中心位置に対応する片側車輪を車軸周りに自由回転状態として、走行駆動及び制動を行わない片側車輪自由制御設定条件に従って、左右車輪の各走行駆動を制御する。つまり、旋回中心位置が片側車輪の接地位置である特別な状況の下で、その片側車輪について駆動力を与えることも制動をかけることもせず、自由状態とする。これにより、たとえば、芝の植栽の損傷等を抑制することができる。
【0024】
また、上記構成の少なくとも1つにより、乗用型芝刈車両は、電動回転機によってそれぞれ独立に走行駆動される主駆動輪である左右車輪と、操向輪である少なくとも1つのキャスタ輪を備え、旋回操作子による旋回指示入力に応じ、予め定めた標準設定条件に従い、または標準的設定条件と異なる特別設定条件として旋回中心位置が左右車輪の内側の領域に入る場合には、旋回中心位置を少なくとも左右車輪のいずれかの車輪の対地位置まで戻す旋回制限設定条件に従って、左右車輪の各走行駆動を制御する。したがって、旋回半径が小さくなりすぎることを防止し、例えば、傾斜地等において、小さな旋回半径の旋回によって乗用型芝刈車両が不安定状態になること等を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態につき詳細に説明する。以下においては、乗用型芝刈車両として、左右後輪を主駆動輪とし、左右前輪を操向輪とし、それぞれに独立に電動回転機を設けた4輪駆動型のものを説明するが、操向輪を1輪として、3輪駆動型としてもよい。
【0026】
また、乗用型芝刈車両の駆動源として、左右後輪の駆動源、操向輪の駆動源、芝刈用ブレードの駆動源としていずれも電動回転機を用いるものとして説明するが、これらの駆動源の一部あるいは全部について電動回転機以外の駆動源を用いるものとしてもよい。例えば、左右後輪の駆動源に油圧モータを用いるものとしてもよい。場合によっては、勿論、操向輪の駆動源、芝刈用ブレードの駆動源に油圧モータを用いるものとしてもよい。また、適当な動力伝達機構を介し、内燃機関を左右後輪、操向輪、芝刈用ブレードの駆動源として用いてもよい。
【0027】
また、電動回転機としては、電力を供給して車輪に対し回転駆動力を出力する電気モータとしての機能を有し、また、車輪に対し制動がかけられるときに回生エネルギを回収する発電機としての機能をも有するものを用いるものとして説明するが、単に電気モータとしての機能を有するものを用いることもできる。また、発電機を別途設けるものとしてもよい。
【0028】
また、以下では、電動回転電機等の電気的エネルギの供給源を電源ユニットとし、電源ユニットへの電力供給元としてエンジンおよび発電機を用いるいわゆるハイブリッド式乗用型芝刈車両として説明するが、エンジン、発電機を搭載せず、電源ユニットのみを使用する構成でもよい。この場合、エンジン等の搭載スペースを削減できる。電源ユニットとしては外部から充電電力の供給を受ける2次電池でもよく、燃料電池、太陽電池等のように自己発電機能を有するものでもよい。
【0029】
また、芝刈用回転工具として、地表に垂直に回転軸を有し、回転軸の周りに複数のブレードが配置されブレードを回転することで芝等を破断して刈り取る芝刈用ブレード型のものを説明するが、地表に平行に回転軸を有するシリンダに例えばらせん状の刃を配置し、芝等を挟み取って刈り取る芝刈用リール型のものを用いるものとしてもよい。
【0030】
また、以下に説明する乗用型芝刈車両における各要素の配置は、芝刈用ブレードによって刈り取られた除草の収納等に適した構成を説明するための一例であって、乗用型芝刈車両の仕様等によって適宜な変更を行うことが可能である。
【実施例1】
【0031】
図1、図2は、それぞれ、乗用型芝刈車両10の側面図と、乗用型芝刈車両10においてメインフレーム12上の構成要素の図示を省略した平面図である。図3は、乗用型芝刈車両10における電気系統構成要素に関するブロック図である。最初に、図1、図2を用いて、メインフレーム12を中心に、各構成要素の配置を説明し、その後に図3を用いて各構成要素の内容を説明する。
【0032】
図1、図2に示されるように、乗用型芝刈車両10は、メインフレーム12に、主駆動輪である左右車輪40,42、操向輪である左右キャスタ輪44,46と、芝刈回転工具としての芝刈用ブレードが設けられるモアデッキ20、芝刈作業のための操縦を行なう作業者が座る座席14等の各構成要素が取り付けられる芝刈に適した自走型のオフロード用車両である。
【0033】
メインフレーム12は、乗用型芝刈車両10の骨格を形成し、各構成要素が搭載される部材で、略矩形の平面形状を有する。メインフレーム12には、その前端部の底面側に左右キャスタ輪44,46が作動可能に取り付けられ、ほぼ中央部の上面側に座席14が設けられ、座席14と後端部との間の位置の底面側に左右車輪40,42が作動可能に取り付けられる。また、メインフレーム12の底面側で、左右キャスタ輪44,46と左右車輪40,42との間にモアデッキ20が配置される。つまり、メインフレーム12は、乗用型芝刈車両10を、後輪主駆動で、操向輪はモアデッキの前方に配置されるキャスタ輪である構成とする機能を有する骨格部材でもある。かかるメインフレーム12は、鋼材等の適当な強度を有する金属材料を使用し、梁構造等に成形されたものを用いることができる。
【0034】
また、メインフレーム12の底面側には、内燃機関であるエンジン22、エンジン22から電力を取り出す発電機24、発電機24等からの電力によって充電される蓄電装置である電源ユニット26等が配置される。また、左右車輪40,42の駆動源である車軸電動回転機50,52と、左右キャスタ輪44,46の駆動源である操向輪用電動回転機54,56と、ステアリングアクチュエータ60,62と、モアデッキ20の芝刈用ブレードの駆動源であるモア関係電動回転機32及び動力伝達軸機構34は、いずれもメインフレーム12の底面側に配置される。このように、乗用型芝刈車両10の走行駆動、及び芝刈駆動のために用いられる主要な構成要素は、メインフレーム12の底面側に配置される。
【0035】
なお、電源ユニット26、車軸電動回転機50,52、操向輪用電動回転機54,56、ステアリングアクチュエータ60,62、モア関係電動回転機32等の各構成要素の動作を総合的に制御するコントローラ28,29,30は、メインフレーム12の上面側あるいは底面側の適当な位置に配置される。コントローラ28,29,30は電気回路であるので、他の機構要素と比べて、分散配置を行うことが可能である。図1、図2の例では、メインフレーム12の上面側で座席14の下側の位置と、メインフレーム12の底面側で、車軸電動回転機50,52に近い2つの位置の、合計3箇所に分散してコントローラ28,29,30が配置される。これらのコントローラ28,29,30は、適当な信号ケーブル等で相互に接続される。ここで、車軸電動回転機50,52に近い位置に配置されるコントローラ28,29には、車軸電動回転機50,52に用いられるインバータ回路等のドライバー回路が主に配置され、座席14に近い位置に配置されるコントローラ30には、CPU等の制御論理回路が主に配置される。
【0036】
メインフレーム12の上面側には、座席14の他に、走行及び旋回のための2レバー式操作子70が配置される。また、座席14の後方には、モアデッキ20の芝刈用ブレードによって刈り取られた芝等の草を収容する収草タンク16が配置される。モアデッキ20と収草タンク16との間にはモアダクト18と呼ばれる傾斜台が設けられ、モアダクト18の一方端はモアデッキ20に開口し、他方端は収草タンク16に開口し、その中間に刈り取られた芝等の草を送るための送草ファン19が配置される。このように、メインフレーム12の上面側は、操縦のための空間を除けば、刈り取られた芝等の草を積載するための空間として用いられている。これによって、収草タンク16の収容能力を大きく設定することができる。
【0037】
モアダクト18は、メインフレーム12のほぼ中央部で、左右車輪40,42の中間部に配置される。このような配置が可能となったのは、左右車輪40,42の駆動源である車軸電動回転機50,52が、メインフレーム12の中央部に配置されずに、左右車輪40,42の各ホイールリムの中にそれぞれ配置されているからである。
【0038】
次に図3のブロック図を用いて、各構成要素の内容と、相互の関係について説明する。図3では、図1、図2で説明した要素と同様の要素には同一の符号が付してある。また、以下では、必要に応じ、図1、図2の符号を用いて説明する。
【0039】
エンジン22は、その出力軸が発電機24に接続され、発電機24を回転させることで、乗用型芝刈車両10の作動に必要な電力を発電させる機能を有する駆動源である。一例を上げると、約11,172Nm/sec(約15馬力)のエンジン22の出力は、約11.19kWの電力に相当するので、変換効率を考慮して必要な電力に対応する適当な出力能力のエンジン22を搭載すればよい。かかるエンジン22としては、たとえば、ガソリン、ディーゼル燃料、液体プロパン、天然ガス等を燃料とする内燃機関を用いることができる。
【0040】
発電機24は、エンジン22の機械的エネルギを電気エネルギに変換する機能を有するもので、通常オルタネータと呼ばれるものである。なお、発電機24は、電力を供給することでモータとして機能することができ、その機能によって、エンジン22のスターターとして用いることができる。図3において「スターター」とあるのは、発電機24の別の機能を示している。勿論、発電機24と別に、スターター装置を搭載することもできる。
【0041】
電源ユニット26は、発電機24によって生成された電気エネルギを蓄え、必要に応じ、車軸電動回転機50,52等の負荷に電力を供給する機能を有する2次電池である。かかる電源ユニット26としては、鉛蓄電池、リチウムイオン組電池、ニッケル水素組電池、キャパシタ等を用いることができる。
【0042】
なお、電源ユニット26は、エンジン22と発電機24からの電力供給系統とは別に、外部電源から充電電力の供給を受けることができる。図3において「AC110V又はその他の供給ユニット」とあるのは、いわゆるプラグインの方法で外部電源からの充電電力供給を受ける系統を示している。これによって、乗用型芝刈車両10が作動していないときに、外部電源により電源ユニット26を十分に充電でき、芝刈作業のときには、エンジン22を作動させることなく、電源ユニット26の電力のみで乗用型芝刈車両10を作動させることができる。
【0043】
モア関係電動回転機32は、電源ユニット26に接続され、モアデッキ20の芝刈用ブレードを回転駆動させる機能を有する。モア関係電動回転機32の作動は、座席14の近くに設けられるモア起動スイッチ(図3参照)のオン・オフによって制御される。すなわち、コントローラ28,29,30がモア起動スイッチのオン・オフ状態を検出し、その検出によって、モア関係電動回転機用ドライバーの作動を制御して、モア関係電動回転機32を作動させ、あるいは停止させる。
【0044】
図3には、2レバー式操作子70と、ハンドル式またはモノレバー式のステアリング操作子72とが示されているが、これは説明の便宜上併記したもので、実際の乗用型芝刈車両10には、いずれか一方が備えられる。図1、図2の例では、2レバー式操作子70が図示されている。
【0045】
2レバー式操作子70は、2つのレバーによって左右車輪40,42の回転数を調整する機能を有する操作子である。例えば、座席14の左側に左車輪42の回転数を調整する左車軸コントロールレバーが配置され、座席14の右側に右車輪40の回転数を調整する右車軸コントロールレバーが配置される。各レバーは、座席14に対して前後方向に移動することができる。各レバーの操作量は、適当なセンサを用いてコントローラ28,29,30に伝送され、左右車輪40,42に接続される車軸電動回転機50,52の作動が制御される。なお、後述のように、車軸電動回転機50,52の作動に合わせて、操向輪用電動回転機54,56の作動も制御することができる。
【0046】
例えば、前方にレバーを倒すと、車輪を前進側に回転させ、レバーの倒し方が大きいほど車輪の回転数が高くなり、前進速度が高速側となる。逆に後方にレバーを倒すと、車輪を後進側に回転させ、レバーの倒し方が大きいほど車輪の回転数が高くなり、後進速度が高速側となる。レバーが中間位置にあるときは、車輪の回転数がゼロである。このときは、いわゆるニュートラル状態とされ、車両停止状態となる。このように、2レバー式操作子70は、2つのレバーの操作によって、左右の車軸電動回転機50,52のそれぞれの回転数を独立に調整できる機能を有している。なお、後述のように、車軸電動回転機50,52の作動に合わせて、操向輪用電動回転機54,56の作動も制御する場合には、2レバー式操作子70は、2つのレバーの操作によって、左右の車軸電動回転機50,52のそれぞれの回転数を独立に調整でき、その車軸電動回転機50,52の回転数に応じて操向輪用電動回転機54,56の回転数を調整する機能を有していることになる。
【0047】
これに対し、ステアリング操作子72の構成の代表例は、丸いステアリングハンドルであるが、それと共にアクセルペダルが用いられる。以下では、ステアリングハンドルとアクセルペダルとを含んでステアリング操作子と呼ぶことにする。ここでアクセルペダルは、前進側と後退側とで別々に設けられる。場合によっては、1つのアクセルペダルで前進側と後退側とを兼ねることもできる。例えば、座席14の正面にステアリングハンドルが配置され、座席14の下側の左右に前進側アクセルペダルと後進側アクセルペダルが配置される。ステアリングハンドルは回転軸の周りに時計方向あるいは反時計方向に任意の角度で回転でき、各アクセルペダルは、任意の踏込量で踏み込むことができる。ステアリングハンドルの操作量、すなわちステアリング位置は、適当なセンサを用いてコントローラ28,29,30に伝送され、同様に各アクセルペダルの踏込量も適当なセンサを用いてコントローラ28,29,30に伝送され、左右車輪40,42に接続される車軸電動回転機50,52の作動が制御される。また、後述のように、車軸電動回転機50,52の作動に合わせて、操向輪用電動回転機54,56の作動も制御することができる。
【0048】
例えば、ステアリングハンドルを中立位置として前進側アクセルペダルを踏み込むと、車輪を前進側に回転させ、踏込量が大きいほど車輪の回転数が高くなり、前進速度が高速側となる。これに代えて後進側アクセルペダルを踏み込むと、車輪を後進側に回転させ、踏込量が大きいほど車輪の回転数が高くなり、後進速度が高速側となる。これによって、乗用型芝刈車両10を任意の速度で前進または後進させることができる。
【0049】
前進側アクセルペダルを適当な踏込量の状態にしたまま、ステアリングハンドルを時計方向に回転すると、左車輪の回転数が右車輪の回転数よりも高くなり、乗用型芝刈車両10を走行させながら右旋回させることができる。ステアリングハンドルの回転量を大きくすると左車輪回転数と右車輪回転数の差が大きくなり、逆にステアリングハンドルの回転量を少なくすることで左車輪回転数と右車輪回転数の差を小さくできる。これにより旋回半径を調整できる。ステアリングハンドルを反時計方向に回転すると、右車輪の回転数が左車輪の回転数よりも高くなり、乗用型芝刈車両10を走行させながら左旋回させることができる。
【0050】
前進側アクセルペダルの踏込量を変化させることで、走行速度を変更しながら旋回させることもできる。後進側アクセルペダルを踏み込んでステアリングハンドルを操作することで、後進時における旋回を行うことができる。
【0051】
このように、ステアリング操作子72は、ステアリングハンドルの回転操作とアクセルペダルの踏込操作とによって、左右の車軸電動回転機50,52のそれぞれの回転数を独立に調整し、走行と旋回の操縦を行うことができる機能を有している。なお、後述のように、車軸電動回転機50,52の作動に合わせて、操向輪用電動回転機54,56の作動も制御する場合には、ステアリング操作子72は、ステアリングハンドルとアクセルペダルの操作によって、左右の車軸電動回転機50,52のそれぞれの回転数を独立に調整でき、その車軸電動回転機50,52の回転数に応じて操向輪用電動回転機54,56の回転数を調整する機能を有していることになる。
【0052】
車軸電動回転機50,52は、上記のように主駆動輪である左右車輪40,42を走行駆動するためのモータ/ジェネレータである。すなわち、車軸電動回転機50,52は、各出力軸がそれぞれ独立に左右車輪40,42の車軸に接続され、電源ユニット26からの電力供給によってモータとして機能して回転し左右車輪40,42を走行駆動する。また、ブレーキユニット等によって左右車輪40,42に制動がかけられるときは、発電機として機能して回生エネルギを回収し、電源ユニット26を充電する。かかる車軸電動回転機50,52としては、ブラシレスDC回転機を用いることができる。
【0053】
操向輪用電動回転機54,56は、操向輪である左右キャスタ輪44,46を走行駆動するためのモータ/ジェネレータである。すなわち、操向輪用電動回転機54,56は、各出力軸がそれぞれ独立に左右キャスタ輪44,46の車軸に接続され、電源ユニット26からの電力供給によってモータとして機能して回転し左右キャスタ輪44,46を走行駆動する。また、ブレーキユニット等によって左右キャスタ輪44,46に制動がかけられるときは、発電機として機能して回生エネルギを回収し、電源ユニット26を充電する。かかる操向輪用電動回転機54,56としては、ブラシレスDC回転機を用いることができる。なお、図3には、電動回転機の機能をモータとブレーキユニットとに分けて示されている。
【0054】
なお、図3に示されるように、場合によっては、キャスタ輪44,46に操向輪用電動回転機を設けないこともできる。この場合には、乗用型芝刈車両10は、2輪駆動として構成されることになる。
【0055】
左右ステアリングアクチュエータ60,62は、操向輪である左右キャスタ輪44,46を走行方向に対し任意の操向角度で回転させるための駆動装置である。ここで回転というのは、キャスタ輪44,46の車軸周りの回転ではなく、すなわち走行のための回転ではなく、車軸と地表に対しそれぞれ垂直方向である操向軸の周りの回転である。左右ステアリングアクチュエータ60,62は、各出力軸がそれぞれ独立に左右キャスタ輪44,46の操向軸に接続され、電源ユニット26からの電力供給によってモータとして機能して回転し左右キャスタ輪44,46を操向軸の周りに回転させる。必要があれば、モータと操向軸との間に歯車機構等の適当な動力伝達機構を設けることができる。かかる左右ステアリングアクチュエータ60,62としては、ブラシレスDC回転機を用いることができる。また、図3に示されるように、電動プランジャ等の電動アクチュエータ、油圧アクチュエータ等を用いてもよい。
【0056】
また、左右ステアリングアクチュエータ60,62と操向軸との間の接続関係を、連結と開放との間で切り換えるようにすることが望ましい。たとえば、左右ステアリングアクチュエータ60,62と操向軸との間を開放状態とすることで、キャスタ輪44,46が操向軸の周りに自由回転可能となり、左右車輪の走行に対応して操向角度が定まるものとすることができる。後述のように、車軸電動回転機50,52の作動に合わせて、操向輪用電動回転機54,56の作動も制御する場合には、キャスタ輪44,46は操向軸の周りに自由回転可能とし、左右車輪の走行に対応して操向角度が定まるものとすることが望ましい。
【0057】
また、左右ステアリングアクチュエータ60,62と操向軸との間を連結状態とすることで、コントローラ28,29,30の制御の下で、任意の操向角度にキャスタ輪44,46を向かせることができる。例えば、左右ステアリングアクチュエータ60,62と操向軸との間が開放状態であると、傾斜地あるいは凹凸地表等で、キャスタ輪44,46の操向角度が適切でなくなることがある。そのような場合に、適当な操向角度検出手段を用いて操向角度を監視し、適切な操向角度からの乖離が生じたときに、コントローラ28,29,30が左右ステアリングアクチュエータ60,62に指令を出すことで、適切な操向角度に戻させることができる。適切な操向角度に戻った後は、再び、左右ステアリングアクチュエータ60,62と操向軸との間を開放状態にするものとしてもよい。
【0058】
このように、キャスタ輪44,46には、操向輪用電動回転機54,56と、ステアリングアクチュエータ60,62とが設けられるので、これらの同時作動がある場合に機構が干渉しないような工夫が必要となる。図4から図7は、キャスタ輪における操向輪用電動回転機と、ステアリングアクチュエータの配置関係の例を示す断面図である。以下では、図1、図2における要素と同様の要素には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。また、以下では、図1、図2の符号を用いて説明する。
【0059】
これらの図はキャスタ輪44についてのものであり、それぞれ、操向輪用電動回転機54と、ステアリングアクチュエータに接続され操向軸の周りに回転可能な回転歯車59と、回転歯車59に固定され、キャスタ輪44の車軸が取り付けられるステアリングフレーム61とが示されている。これらの図において、地表面は紙面の左右方向、キャスタ輪44の車軸方向は紙面の左右方向、操向軸の方向は、紙面の上下方向に沿った方向である。ここで、図示されていないステアリングアクチュエータによって回転歯車59が回転されると、ステアリングフレーム61が操向軸の周りに回転し、キャスタ輪44が操向軸の周りに回転する。
【0060】
図4から図6は、操向輪用電動回転機54がステアリングフレーム61に取り付けられ、ステアリングフレーム61が操向軸の周りに回転するとき、同時に操向軸の周りに回転する構成である。このときに、操向輪用電動回転機54のケーブルが捩れないように、スリップリング64が設けられる。ステアリングフレーム61の内部には、操向輪用電動回転機54とキャスタ輪44の車軸との間に設けられる動力伝達機構55が収納される。図4と図5は動力伝達機構55が平歯車列機構の場合であり、図4と図5とではステアリングフレーム61に対する操向輪用電動回転機54の取り付け方向が異なっている。なお、図4、図5において、操向軸45とキャスタ輪44のタイヤ中心が一致していることが示されている。このようにすることで、操向抵抗を低減することができる。
【0061】
図6は、動力伝達機構55が傘歯車を含む機構の場合である。ここで図6(a)は、図4、図5と同様に正面図であるが、(b)は側面図を示す。この側面図では、ステアリングアクチュエータ60が示されている。また、正面図においては、図4、図5と同様に、操向軸45とキャスタ輪44のタイヤ中心が一致していることが示されているが、側面図においては、操向軸45とキャスタ輪44のタイヤ中心との間にオフセットが設けられていることが示されている。このオフセットは、キャスタトレイル47と呼ばれるもので、これを設けることで、操向が自由回転の状態において左右車輪の走行に対応して操向角度が定まりやすくなる。
【0062】
図7は、操向輪用電動回転機54がメインフレーム12に取り付けられ、その出力軸の方向が操向軸の方向と同じで、また回転歯車59の中心軸の方向と同じである構成を示す図である。なお、この構成でも傘歯車が用いられている。この構成の場合には、ステアリングフレーム61が回転しても操向輪用電動回転機54のケーブルが捩れることがない。なお、図7においては、動力伝達機構55とキャスタ輪44の車軸との間にワンウェイクラッチ66が設けられる例が図示されている。このワンウェイクラッチ66は、操向輪用電動回転機54の回転数が乗用型芝刈車両10の走行速度に対応する回転数よりも遅い場合に、操向輪用電動回転機54の動力をキャスタ輪44の車軸に伝達することを断つ機能を有する。これによって、4輪駆動において操向輪用電動回転機54が却って走行の負荷となることを防ぐことができる。
【0063】
再び図3に戻り、コントローラ28,29,30は、乗用型芝刈車両10の作動の全体を制御する機能を有する回路である。特に、2レバー式操作子70あるいはステアリング操作子72の状態に応じて、車軸電動回転機50,52、操向輪用電動回転機54,56等の作動を制御する機能を有する。そのほかに、モア関係電動回転機32の作動、ステアリングアクチュエータ60,62の作動、モアデッキ20の昇降、エンジン22の始動・停止等を制御する機能を有する。そのために、上記で説明した2レバー式操作子70の状態を検出するセンサの信号、モア起動スイッチのオン・オフ状態を示す信号の他、乗用型芝刈車両10の車両状態を検出する様々な信号がコントローラ28,29,30に入力される。これらの信号には、乗用型芝刈車両10の対地傾斜角度を検出する傾斜センサ68の信号等が含まれる。
【0064】
コントローラ28,29,30は、乗用型芝刈車両10の車両状態検出信号を処理して、各構成要素に対する制御信号を作り出すCPU等の制御論理回路およびメモリの部分と、車軸電動回転機50,52、操向輪用電動回転機54,56、ステアリングアクチュエータ60,62、モア関係電動回転機32等を駆動するドライバー回路の部分等で構成される。ドライバー回路には、例えばインバータ回路等が含まれる。なお、図3には、図2の内容に合わせ、車軸電動回転機50用のドライバー回路がコントローラ28,29として示されている。かかるコントローラ28,29,30は、上記のように、複数の回路ブロックで構成することができ、特にCPU等の制御論理回路およびメモリの部分は、車載に適したコンピュータ等で構成することができる。
【0065】
車軸電動回転機50,52、操向輪用電動回転機54,56の制御としては、基本的には、走行速度を目標値とする回転数制御が行われる。特に旋回時には、左右車輪の回転数の平均値である平均回転数によって走行速度が定まり、左右車輪の回転数の差である回転数差によって旋回半径等が定まるので、各電動回転機について相互に関連しながら、かつ相互に異なる目標回転数に対する制御が行われることになる。なお、旋回時を除く直線走行時には、走行速度が対地負荷との関係で定まるので、出力トルクを目標値とするトルク制御が行われる。トルク制御には、ベクトル制御を用いることができる。ここでベクトル制御とは、モータの磁束方向を基準として、基準軸方向に流れる電流とこれに直交する直交軸方向に流れる電流とをそれぞれ独立して調整し、磁束及びトルクを制御するものである。ベクトル制御は、センサレスベクトル制御とすることが好ましい。
【0066】
乗用型芝刈車両10は各種機能を有しているが、以下では旋回機能に関するものを説明する。旋回機能には、左右車輪とキャスタ輪とを共に走行駆動に用いるときの協調的作動制御機能と、各種の特別設定条件の下での制御機能とがあるので、以下では、いくつかの実施例に分けて説明する。
【実施例2】
【0067】
図8は、2レバー式操作子を備える場合の旋回機能に関する部分についてのブロック図である。なお、ステアリング操作子を備える場合については、実施例の項を改めて説明する。以下では、図1から図3で説明した要素と同様の要素には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。また、以下では、図1から図3の符号を用いて説明する。なお、図3におけるコントローラ28,29,30に対応する部分を図8では制御部100として示してある。制御部100の中で、旋回駆動モジュール112が、各電動回転機のためのドライバー回路部分を含むコントローラ28,29に対応し、その他の部分と、制御部100に接続される記憶部102とが制御論理回路部分を含むコントローラ30に対応することになる。
【0068】
図8に示されるように、車輪40,42には、それぞれ車軸電動回転機(MDR,MDL)50,52が接続され、キャスタ輪44,46には、それぞれ操向輪用電動回転機(MSR,MSL)44,46が接続される。そして、2レバー式操作子70からは、制御部100に対し、左右車軸コントロールレバーの操作量信号74,75が伝送され、制御部100から、車軸電動回転機50,52と操向輪用電動回転機54,56にそれぞれ駆動信号78が伝送される。
【0069】
制御部100は、特に、左右車軸コントロールレバーの操作量信号74,75に基づいて、車軸電動回転機50,52と操向輪用電動回転機54,56に対する駆動信号78を生成し、車輪40,42とキャスタ輪44,46とを2レバー式操作子70の旋回指示に対応する旋回中心位置の周りに旋回させる機能を有する。
【0070】
制御部100は、2レバー式操作子70の操作量に応じた旋回指示入力を取得し、その指示内容から左右車輪の速度指示を取得する左右車輪速度取得モジュール106と、取得された左右車輪速度から旋回中心位置を求めて取得する旋回中心位置取得モジュール104と、旋回中心位置と左右車輪速度とに基づいてキャスタ輪速度を求めて取得するキャスタ輪速度取得モジュール108と、左右車輪速度から平均走行速度を求め取得する平均走行速度取得モジュール110と、左右車輪速度とキャスタ輪速度とに基づいて各電動回転機に対する制御信号を生成し車輪40,42とキャスタ輪44,46とを旋回中心位置の周りに旋回させる旋回駆動モジュール112とを含んで構成される。
【0071】
上記のように、制御部100は、コントローラ28,29,30の一部であるので、複数の回路ブロックで構成することができ、特に、旋回駆動モジュール112のドライバー部分を除いて車載用コンピュータで構成することができる。そして、上記各機能は、ソフトウェアで実現でき、具体的には、芝刈車両制御プログラムを実行することで実現できる。勿論、上記各機能の一部をハードウェアで実現することも可能である。
【0072】
制御部100に接続される記憶部102には、芝刈車両制御プログラムが記憶される。また、特に、左右車輪速度と旋回中心位置との間の関係を示す計算式またはマップ等、左右車輪速度と旋回中心位置とキャスタ輪速度との関係を示す計算式またはマップ等が記憶される。例えば、上記の旋回中心位置取得モジュール104においては、記憶部102から、左右車輪速度と旋回中心位置との間の計算式またはマップ等を読み出し、読み出された計算式またはマップ等に左右車輪速度を入力して、旋回中心位置を出力させることで、旋回中心位置を求め取得することができる。キャスタ輪速度取得モジュール108においても同様に、記憶部102から、左右車輪速度と旋回中心位置とキャスタ輪速度との間の計算式またはマップ等を読み出し、読み出された計算式またはマップ等に左右車輪速度と旋回中心位置を入力して、キャスタ輪速度を出力させることで、キャスタ輪速度を求め取得することができる。
【0073】
なお、図8における特別設定条件実行モジュール114の内容、及び傾斜センサ68とその対地傾斜角度の検出信号の内容等については、実施例の項を改めた上で説明する。
【0074】
上記構成の作用について、特に制御部100の各機能について、以下に詳細に説明するが、それに先立って、直線走行と、旋回走行とについて、図9、図10を用いて説明する。以下では、図1から図8の符号を用いて説明する。これらの図においては、乗用型芝刈車両10における車輪40,42、キャスタ輪44,46の平面図における状態が模式的に示されている。ここで、車輪40,42及びキャスタ輪44,46は、それぞれ独立に走行駆動されている。
【0075】
図9は直線走行の場合で、車輪40,42、キャスタ輪44,46の全てが、同一方向に同一速度で走行している。ここで同一速度とは、対地速度であり、車輪40,42の直径とキャスタ輪44,46の直径の相違によって、同一速度であっても、車輪40,42の回転数と、キャスタ輪44,46の回転数とは異なっている。
【0076】
図10は、旋回走行の場合で、(a)は、旋回中心位置130が、車輪40,42の車軸方向の延長上で車輪40,42の外側にある場合である。(b)は、旋回中心位置132が、車輪40,42のいずれか一方の接地位置にある場合である。このように、一方側の車輪の接地位置を中心として行われる旋回のことは、信地旋回と呼ばれる。(c)は、旋回中心位置134が車輪40,42の車軸上で、ちょうど両車輪の中間の位置にあり、さらに、車輪40,42の速度の絶対値が同じであるが、一方側車輪40の速度方向と他方側車輪42の速度方向とが互いに逆方向である場合である。この場合は、旋回中心位置134を中心として、乗用型芝刈車両10が旋回する。このような旋回は、超信地旋回、あるいはスピン旋回と呼ばれる。
【0077】
なお、図10の(a)から(c)は旋回走行の典型的な例を示したもので、これらの典型的場合の間の旋回が行われる場合もある。たとえば、旋回中心位置が車輪40,42の車軸上であり、車輪40,42の内側にあるが、車輪40,42の中間位置でなくいずれかの車輪側に偏っている場合等がある。いずれの場合でも、車輪40,42、及びキャスタ輪44,46は、乗用型芝刈車両10における平面配置関係を変更することなく、旋回中心位置を中心に旋回する。
【0078】
したがって、4輪駆動の場合、車輪40,42の速度と、キャスタ輪44,46の速度とは、乗用型芝刈車両10における平面配置関係によって定まる速度関係を満たすように制御が行われることが必要となる。適切な速度制御が行われない場合には、例えば車輪40,42の平均走行速度と、キャスタ輪44,46の平均走行速度とが異なってきて、旋回中心位置がずれ、所望の旋回が十分に行えなくなることがある。あるいは、キャスタ輪44,46が地表に対し滑り、芝の植栽を痛め、あるいは地表の状態を痛める恐れが生じる。
【0079】
次に、図8で説明した構成の作用について、図11のフローチャートを用いて説明する。図11のフローチャートは、操向輪であるキャスタ輪が走行駆動される乗用型芝刈車両の旋回時において、主駆動輪である左右車輪の速度と、操向輪であるキャスタ輪の速度とを協調的に制御する旋回制御の手順を示すフローチャートで、各手順は、芝刈車両制御プログラムの中の旋回制御処理についての各処理手順に対応する。以下では、図1から図10の符号を用いて説明する。
【0080】
乗用型芝刈車両10が運転始動すると、芝刈車両制御プログラムが起動する。そして、実際に2レバー式操作子70が操作されると、その旋回指示入力が取得される(S10)。具体的には、2レバー式操作子70の操作量信号74,75が旋回指示入力信号として制御部100に伝送される。
【0081】
制御部100はこの操作量信号74,75を取得し、その信号データから、2レバー式操作子70の操作によって指示される左右車輪速度を求めて取得する(S12)。この機能は、制御部100の左右車輪速度取得モジュール106によって実行される。図3で説明したように、操作量信号74,75は、左右コントロールレバーの操作量を示し、左コントロールレバーの操作量によって左車輪40の速度指示が与えられ、右コントロールレバーの操作量によって右車輪42の速度指示が与えられる。したがって、乗用型芝刈車両10における2レバー式操作子70について、予め操作量信号74,75の大きさと左右車輪40,42の速度との対応関係を求めておき、この対応関係に、S10で取得された操作量信号74,75の大きさを適用して、左右車輪40,42の指示速度を求めて取得することができる。
【0082】
なお、操作量信号74,75の大きさと左右車輪40,42の速度との対応関係は、計算式またはマップ等として記憶部102に記憶しておくことが好ましい。この場合、計算式を読み出して、操作量を入力する場合には、左右車輪速度を演算によって求めることになり、マップ等を読み出して、読み出されたマップ等に操作量を適用する場合には、演算によらずに、対応関係の読み出し等の処理によって左右車輪速度を取得することになる。
【0083】
次に、2レバー式操作子70の操作によって指示される旋回中心位置を左右車輪速度から求め取得する(S14)。この機能は、制御部100の旋回中心位置取得モジュール104によって実行される。
【0084】
図12は、左右車輪速度が与えられたときに、旋回中心位置を求める様子を説明する図である。以下では、図8の符号を用いて説明する。図12(a)は、図10(a)に対応する図で、車輪40、車輪42の配置と、これから求めようとする旋回中心位置130とが示されている。ここで、車輪40が旋回に対しての外側車輪でその対地速度がVoとして示され、車輪42が内側車輪でその対地速度がViとして示されている。また、車輪40と車輪42の車軸上で、車輪40と車輪42のちょうど中間位置における対地速度VMは、平均走行速度に対応するものであり、VM=(Vo+Vi)/2で与えられる。なお、平均走行速度を求めて取得する機能は、旋回中心位置取得モジュール104によって実行されるが、特にこの部分のみを取り出して利用することもあるので、図8では、制御部100の1つの機能として、平均走行速度取得モジュール110が図示されている。
【0085】
また、車輪40,42の間の間隔である主駆動輪トレッドは2Tで示され、車輪40,42の半径はrrで示されている。したがって、車輪40の車軸周りの回転数Noは、Vo/rr、車輪42の車軸周りの回転数Niは、Vi/rrで与えられる。
【0086】
図12(b)は、上記の記号を用いて、旋回中心位置130を求める計算過程を示す図である。ここで、旋回中心位置130は、車輪40と車輪42の車軸上で、車輪40と車輪42のちょうど中間位置からの距離Rで表すものとする。図12(b)に示されるように、旋回中心位置は、R=T×{(No+Ni)/(No−Ni)}で表わすことができる。したがって、乗用型芝刈車両10の構成によってTが定まれば、車輪40,42の速度Vo,Viに対応する回転数No,Niから旋回中心位置Rを求めることができる。
【0087】
再び図11に戻り、次に、左右車輪速度と旋回中心位置に基づいて、キャスタ輪の速度を求め取得する(S16)。この機能は、制御部100のキャスタ輪速度取得モジュール108によって実行される。
【0088】
図13と図14は、図12で求められた旋回中心位置Rを用いて、キャスタ輪の速度を求める様子を示す図である。以下では、図8、図12の符号を用いて説明する。図13(a)は、図10(a)、図12(a)に対応する図で、車輪40,42の配置と、キャスタ輪44,46の配置と旋回中心位置130とが示されている。ここで、これから求めようとするキャスタ輪44,46の速度について、旋回中心位置130から見て外側のキャスタ輪44の対地速度がVFo、内側のキャスタ輪46の対地速度がVFiで示されている。
【0089】
また、キャスタ輪44,46の間の間隔であるキャスタ輪トレッドは2t、車輪40,42の中間位置とキャスタ輪44,46の中間位置との間の距離であるホイールベース長さはW、キャスタ輪44,46の半径はrfで示されている。したがって、キャスタ輪44の車軸周りの回転数NFoは、VFo/rf、キャスタ輪46の車軸周りの回転数NFiは、VFi/rfで与えられる。
【0090】
なお、キャスタ輪44,46は、操向軸の周りに自由回転可能状態となっており、車輪40,42の走行に対応して操向角度が定まる状態である。具体的には、各キャスタ輪44,46の車軸方向は、各キャスタ輪44,46の接地位置と旋回中心位置130を結ぶ直線の方向となる。したがって、この直線の方向と、車輪40,42の車軸方向との間の角度が、各キャスタ輪44,46の操向角度となり、図13(a)では、それぞれθo,θiで示されている。また、各キャスタ輪44,46の接地位置と旋回中心位置130との間の距離は、それぞれRo,Riで示されている。
【0091】
図13(b)は、上記の記号を用いて、各キャスタ輪44,46の操向角度θo,θiを求める計算過程を示す図である。ここでは、図12で説明したようにして求められたRと、ホイールベース長Wと、キャスタ輪トレッドの1/2であるtとから、各キャスタ輪44,46の旋回中心位置に相当するRo,Riを求め、これとRとの関係から、操向角度θo,θiが求められる様子が示されている。ここで、Ro,Riは、各キャスタ輪の接地位置と旋回中心位置130との間の距離で与えられる。
【0092】
図14は、車輪40,42の平均走行速度VMに応じたキャスタ輪44,46の速度VFo,VFiを求める過程を示す図である。乗用型芝刈車両10の各構成要素は、旋回中心位置130の周りに同じ角速度で旋回するので、旋回中心位置130からの距離に比例して、対地速度が異なってくる。したがって、キャスタ輪44の速度VFoと、車輪40,42の平均走行速度VMの比は、旋回中心位置130からキャスタ輪44の接地位置までの距離Roと、旋回中心位置130から車輪40,42の中間位置までの距離Rとの比となる。図12からRが求められており、13(b)においてRoは求められているので、キャスタ輪44の速度VFo及びこれに対応する回転数NFoが図14で示されるように求められる。
【0093】
図14では、旋回中心位置130を示すRを左右車輪の回転数No,Niで書き換えているので、結局、キャスタ輪44の回転数NFoは、左右車輪の回転数No,Niと、乗用型芝刈車両10の構成によって定まるホイールベース長W,主駆動輪トレッド2T,キャスタ輪トレッド2t,主駆動輪半径rr,キャスタ輪半径rfとから求めることができる。キャスタ輪44の回転数NFiも同様に、左右車輪の回転数No,Niと、乗用型芝刈車両10の構成によって定まるW,T,t,rr,rfとから求めることができる。
【0094】
図12から図14で説明したように、左右車輪の速度あるいは回転数が与えられれば、乗用型芝刈車両10の構成によって定まるW,T,t,rr,rfを用いて、旋回中心位置Rと、キャスタ輪の速度あるいは回転数を求めることができる。したがって、予め分かっているW,T,t,rr,rfと、図12から図14で説明した計算式とを記憶部102に記憶させておき、左右車輪の回転数を適用することで、上記S14の旋回中心位置取得工程と、S16のキャスタ輪速度取得工程とを容易に実行できる。
【0095】
図15から図18は、実際に、乗用型芝刈車両10の構成によって定まるW,T,t,rr,rfを与え、車輪回転数No,Niを入力して、旋回中心位置Rと、キャスタ輪回転数NFo,NFiを求める様子を示す図である。図15は、乗用型芝刈車両10の構成によって定まるW,T,t,rr,rfの例を示す図で、図16は、図15の値を用い、図12から図14で説明した計算式を用い、平均走行速度VMに対応する平均回転数NMを100rpmとしたときに、車輪回転数No,Niを変化させて、回転数差Δ、旋回中心位置R、キャスタ輪回転数NFo,NFiを求めた結果を示す図である。
【0096】
図17と図18は、図16の結果をマップ化したもので、図17は、回転数差Δが与えられたときに旋回中心位置Rを求めるマップを示し、図18は、旋回中心位置Rが与えられたときにキャスタ輪回転数NFo,NFiを求めるマップである。これ以外にも、さまざまな対応関係を示すマップが作成可能である。たとえば、車輪回転数No,Niと旋回中心位置Rとの間の対応関係のマップ、車輪回転数No,Niとキャスタ輪回転数NFo,NFiとの間の対応関係マップ、車輪回転数No,Niと平均回転数NMとの間の対応関係マップ等が作成できる。
【0097】
記憶部102には、上記のように図12から図14で説明した計算式が記憶されるほか、これらの計算式に代えて、図16に示すような対応関係表、図17、図18のような対応関係マップ、及びその他の対応関係マップ等を記憶させることができる。例えば、図16から図18は、平均回転数NMを100rpmとした場合の対応関係表及びマップ群であるが、平均回転数NMをパラメータとして、それぞれについての旋回中心位置、キャスタ輪回転数等に関する対応関係表及びマップ群を予め作成して記憶部102に記憶させることができる。この場合には、図12から図14で説明した計算式を用いて演算をすることなく、記憶部102から必要な対応関係表または対応関係マップ群を読み出し、左右車輪回転数等を適用することで、旋回中心位置、キャスタ輪回転数等を容易に取得することができる。
【0098】
記憶部102には、階層構造を用いて、旋回中心位置とキャスタ輪回転数等に関する計算式、対応関係表、対応関係マップ等のデータが記憶される。階層構造の例としては、第1の階層に、乗用型芝刈車両の車種を検索キーとして、W,T,t,rr,rf等の車輪とキャスタ輪とに関する幾何学的配置寸法が記憶され、第2階層に、操作子の種類を検索キーとして、第3階層におけるパラメータと操作子の操作量との関係データが記憶され、第3階層に、検索キーとして、旋回中心位置R、キャスタ輪速度VFo,VFiまたはキャスタ輪回転数NFo,NFi、キャスタ輪の旋回中心位置に相当するRo,Ri、キャスタ輪の操向角度θo,θi、車輪速度Vo,Viまたは車輪回転数No,Ni、平均走行速度VMをまたは平均回転数NMを用い、検索キーに関連付けられる計算式、対応関係表、対応関係マップ等が記憶されるものとできる。
【0099】
たとえば、まず乗用型芝刈車両の車種として「XXX」を入力し、次に操作子の種類として「2レバー式」を入力し、その次に「旋回中心位置」を入力すると、車種「XXX」の実際のW,T,t,rr,rf等が適用された2レバー式の旋回中心位置に関する計算式が出力される。出力された計算式においては、さらに、車輪速度等の計算条件の入力が可能で、これらの入力を行うことで、その計算条件の下での旋回中心位置を演算させその結果を出力させることができる。
【0100】
上記の例で、「旋回中心位置」の入力の後で、「計算式、対応関係表、対応関係マップ」の選択を可能にする階層構造とすることもできる。例えば「対応関係表」を入力し、その後で「平均車輪速度=YYY」と入力することで、平均車輪速度=YYYに関する旋回中心位置の対応関係表が出力される。そして、出力された対応関係表においては、さらに、車輪速度等の計算条件の入力が可能で、これらの入力を行うことで、その計算条件の下での旋回中心位置を演算させその結果を出力させることができる。
【0101】
再び図11に戻り、次に、車輪速度とキャスタ輪速度、あるいは車輪回転数No,Niとキャスタ輪回転数NFo,NFiとに基づいて、車軸電動回転機と操向輪用電動回転機の駆動を制御して、乗用型芝刈車両を旋回駆動する(S18)。この機能は、制御部100の旋回駆動モジュール112によって実行される。具体的には、S12において取得された車輪速度あるいは車輪回転数No,Niを車軸電動回転機50,52にそれぞれ独立に与え、S16において取得されたキャスタ輪速度、あるいはキャスタ輪回転数NFo,NFiを操向輪用電動回転機54,56にそれぞれ独立に与え、これにより車輪40,42とキャスタ輪44,46とをそれぞれ関連付けながら独立にそれぞれの車軸の周りに回転させて、乗用型芝刈車両10を走行させながら旋回中心位置の周りに旋回させる。このときに、上記のように、乗用型芝刈車両10は、左右車輪のそれぞれの速度の平均値に相当する平均走行速度を有するので、平均走行速度で走行しながら、旋回することになる。
【0102】
図13、図14の説明から分かるように、ここで求めているキャスタ輪回転数NFo,NFiは、キャスタ輪を操向軸の周りに自由回転状態とし、主駆動輪の走行状態に応じて操向角度が定まるときに、乗用型芝刈車両の幾何学的配置寸法によってキャスタ輪が回転する回転数である。つまり、キャスタ輪に駆動源が接続されていない状態で、主駆動輪によって走行と旋回が行われたときのキャスタ輪が回転するその回転数でもある。このときには、キャスタ輪の車軸周りの回転は、乗用型芝刈車両の幾何学的配置寸法に適合しており、なんら無理のある回転をしていないので、旋回が所望どおり行われ、かつ、芝の植栽等を痛めることも少ない。しかしながら、この場合には、乗用型芝刈車両の走行及び旋回は、主駆動輪のみで行われるので、斜面等の条件の下ではトルクが不足する場合がある。
【0103】
図8の構成の乗用型芝刈車両10においては、このキャスタ輪の回転数の条件を維持しながら、操向輪用電動回転機54,56によってキャスタ輪44,46に駆動力を与えることができる。したがって、乗用型芝刈車両10全体としてトルクを増大させることができ、しかも、なんら無理のある回転をしていないので、旋回が所望どおり行われ、かつ、芝の植栽等を痛めることも少ない。このように、図16に示すような条件を守りながら、キャスタ輪44,46に駆動力を与えることで、乗用型芝刈車両10全体としてトルクを増大させながら、適切な旋回を行わせることができる。
【0104】
上記では、旋回中心位置が車輪40,42の外側にある場合、すなわち、図10(a)の場合について、キャスタ輪回転数を求める手順を説明したが、図10(b)の信地旋回の場合、(c)の超信地旋回の場合も、図12から図14に説明したと同様に、乗用型芝刈車両の幾何学的配置寸法を用い、車両速度と旋回中心位置とに基づいて、キャスタ輪回転数を求めることができる。
【0105】
そして、信地旋回の場合、すなわち、左右車輪速度について一方側の車輪の速度がゼロである場合は、一方側の車輪の接地位置を旋回中心位置として、その周りに他方側の車輪とキャスタ輪とを旋回させることになる。
【0106】
また、超信地旋回の場合、すなわち、左右車輪速度について、一方側の車輪速度と他方側の車輪速度とが、互いに逆方向である場合は、左右車輪の間の位置を旋回中心位置として、その周りに左右車輪とキャスタ輪とを旋回させることになる。
【0107】
また、上記では、主駆動輪の数が2、キャスタ輪の数が2である4輪駆動の乗用型芝刈車両について説明したが、キャスタ輪の数が1である3輪駆動の場合でも、図12から図14で説明したと同様に、乗用型芝刈車両の幾何学的配置寸法を用い、車両速度と旋回中心位置とに基づいて、キャスタ輪回転数を求めることができる。同様に、主駆動輪の数が2以外である場合、キャスタ輪の数が1または2以外である場合等についても、乗用型芝刈車両の幾何学的配置寸法を用い、車両速度と旋回中心位置とに基づいて、キャスタ輪回転数を求めることができる。
【0108】
また、上記では、キャスタ輪に対し操向輪用回転電動機によって駆動力が与えられるものとしているが、主駆動輪のみで十分走行等が可能のときは2輪駆動とし、トルクが不足するときにキャスタ輪による駆動を行うものとしてもよい。トルク不足の恐れを判断するためには、図8で示すように、乗用型芝刈車両10に傾斜センサ68を設け、対地傾斜角度信号80を制御部100に伝送し、制御部100において、対地傾斜角度が所定の閾値傾斜角度を超えるか否かを判断するものとできる。すなわち、閾値傾斜角度を超えると判断されるときにキャスタ輪による駆動を行わせ、超えないときは主駆動輪のみの駆動とすることができる。
【0109】
キャスタ輪に常時駆動力が与えられる構成とするときは、主駆動輪の駆動力をその分少なくすることができ、乗用型芝刈車両全体として、小型の回転電動機を揃えて用いることが可能となる。一方で、キャスタ輪による駆動を必要なときに用いる構成とするときは、たとえば、平地走行のようにトルクをあまり必要としないときに、乗用型芝刈車両の電力消費量を抑制することができる。
【0110】
また、上記では、キャスタ輪が操向軸周りに自由回転状態であるとして説明したが、図4から図7に関連して説明したように、ステアリングアクチュエータを用いて、キャスタ輪を操向軸周りに強制的に回転させ、所望の操向角度とすることが可能とする構成としてもよい。たとえば、地表の状態によっては、キャスタ輪が予期しない方向を向くことがあり、この状態を放置することで、所望の走行、旋回等が行わない場合が生じえる。そこで、キャスタ輪に操向角度を検出するセンサ等を設けて、操向角度を監視し、たとえば、図13(b)、図16で求められる計算操向角度から許容範囲を超えて、実際の操向角度が逸脱したときに、ステアリングアクチュエータを用いて計算操向角度に戻す制御を行うことができる。これによって、実際の地表状態に適合した走行と旋回とを確保することができる。
【実施例3】
【0111】
図19と図20は、ステアリング操作子を備える乗用型芝刈車両10のブロック図とフローチャートで、図8、図11に対応するものである。図8と図19とでは次の点が相違する。すなわち、図8が2レバー式操作子70を備え、制御部100に対し、左右車軸コントロールレバーの操作量信号74,75が伝送される。一方、図19がステアリング操作子72を備え、制御部100に対し、ステアリングハンドルの位置についての操作量信号76とアクセルペダルの踏込量についての操作量信号77が伝送される。その他の要素は同一のものとして示されているが、2レバー式操作子70とステアリング操作子72との間の相違に対応して、旋回中心位置取得モジュール104の内容と、左右車輪速度取得モジュール106の内容が若干異なる。そして、図11と図20においても、手順全体の内容は同じとして示されているが、旋回中心位置取得工程と左右車輪速度取得工程の順序が異なっている。
【0112】
そこで、図20の手順に従って、図19の構成における作用を、主に、2レバー式操作子70を備える場合との相違を中心にして、以下に説明する。
【0113】
ステアリング操作子72を備える乗用型芝刈車両10が運転始動すると、芝刈車両制御プログラムが起動する。そして、実際にステアリング操作子72が操作されると、その旋回指示入力が取得される(S10)。具体的には、ステアリング操作子72の操作量信号76,77が旋回指示入力信号として制御部100に伝送される。図3で説明したように、操作量信号76,77は、ステアリングハンドルの操作量すなわちステアリング位置についての操作量信号76と、アクセルペダルの踏込量についての操作量信号77である。
【0114】
そして、図3で例示的に説明したように、ステアリング位置が中立位置より時計方向側にあると、左車輪の回転数が右車輪の回転数よりも高くする指示であり、ステアリングハンドルの位置が中立位置から大きく離れるにつれて、左車輪回転数と右車輪回転数の差を大きくする指示であり、逆にステアリングハンドルの位置が中立位置に近づけるほど左車輪回転数と右車輪回転数の差を小さくする指示である。また、アクセルペダルの踏込量が大きいほど、走行速度を高速にする指示であり、踏込量が少ないほど、走行速度を低速にする指示である。したがって、アクセルペダルの踏込量の操作量信号77によって、平均走行速度が指示され、ステアリング位置の操作量信号76によって旋回中心位置に対応する左右車輪の速度差が指示されていることになる。なお、予め、アクセルペダルの踏込量の操作量信号77の大きさと平均走行速度との対応関係、ステアリング位置の操作量信号76の大きさと左右車輪の速度差との対応関係を求めておいて、例えば記憶部102に記憶しておくことが望ましい。
【0115】
このように、ステアリング操作子72を備える乗用型芝刈車両10においては、S10において、旋回指示入力として、平均走行速度と左右車輪の速度差とを取得することになる。なお、2レバー式操作子70を備える乗用型芝刈車両10においては、図11で説明したように、左右車輪のそれぞれの速度を旋回指示入力として取得する。
【0116】
次に、取得した旋回指示入力から、旋回中心位置を求めて取得し(S14)、左右車輪速度を求めて取得する(S12)。この機能は、制御部100の旋回中心位置取得モジュール104、左右車輪速度取得モジュール106によって実行される。具体的には、図12から図14で説明した計算式において、平均走行速度VMに対応する平均回転数NM=(No+Ni)/2と、速度差に対応する回転数差Δ=(No−Ni)を与えて、旋回中心位置Rを求め、また、左右車輪のそれぞれの速度に対応する回転数No,Niを求める。計算式を用いずに、例えば図16のような対応関係表を平均走行速度ごとに予め作成して記憶部102に記憶し、これを読み出し、平均走行速度VMに対応する平均回転数NMを適用して、旋回中心位置Rと、左右車輪のそれぞれの回転数No,Niを取得するものとしてもよい。
【0117】
このように、ステアリング操作子72を備える乗用型芝刈車両10においては、平均走行速度と左右車輪の速度差とに基づき、旋回中心位置と左右車輪速度を求めて取得する。なお、2レバー式操作子70を備える乗用型芝刈車両10においては、図11で説明したように、左右車輪のそれぞれの速度を旋回指示入力として取得し、これに基づき旋回中心位置を求めて取得する。
【0118】
上記のように、ステアリング操作子72を備える乗用型芝刈車両10と、2レバー式操作子70を備える乗用型芝刈車両10においては、旋回指示入力が異なるので、旋回中心位置と左右車輪速度を求めて取得する手順とその内容が異なる。しかし、いずれにせよ、乗用型芝刈車両10の幾何学的配置寸法を用い、図12から図14で説明した計算式、または計算式に相当する対応関係表や対応マップ群に基づいて、旋回中心位置と左右車輪速度を求めて取得することは同じである。
【0119】
そして、図20に示されるように、旋回中心位置と左右車輪速度とが取得されると、その後のキャスタ輪速度取得工程(S16)、旋回駆動工程(S18)が実行されるが、これらの工程の内容は、ステアリング操作子72を備える乗用型芝刈車両10と、2レバー式操作子70を備える乗用型芝刈車両10において同じである。したがって、ステアリング操作子72を備える乗用型芝刈車両10においても、2レバー式操作子70を備える乗用型芝刈車両10と同様に、乗用型芝刈車両10全体としてトルクを増大させながら、適切な旋回を行わせることができる。
【0120】
このように、ステアリング操作子72を備える乗用型芝刈車両10と、2レバー式操作子70を備える乗用型芝刈車両10においては、旋回指示入力が異なることから、旋回中心位置と左右車輪速度とを求めて取得する処理手順が相違する。しかし、演算処理に用いる計算式の内容、あるいは検索処理に用いる対応関係表や対応関係マップ群等の内容は同じである。したがって、幾何学的配置寸法が同様な乗用型芝刈車両においては、芝刈車両制御プログラムの中に、予めステアリング操作子か2レバー式操作子かの選択工程を組み入れ、統一的なプログラムとし、具体的な乗用型芝刈車両の仕様に応じて、選択を確定させるものとすることができる。このようにすることで、芝刈車両制御プログラムの種類を抑制することができる。
【実施例4】
【0121】
図8、図19において、制御部100は、特別設定条件実行モジュール114の機能を有している。特別設定条件とは、標準設定条件に対応するもので、通常の制御モードにおける設定条件とは異なる条件のことである。ここでは、その中の減速制御モジュール116の機能について説明する。以下では、図1から図20における符号を用いて説明する。実施例2で説明した旋回制御においては、旋回指示入力に対し左右車輪の速度変化がリアルタイムで応答するものとしている。例えば、ステアリング操作子72の場合では、ステアリングハンドルをゆっくり回転すると、刻々の各時刻におけるステアリングハンドルの位置の操作量に応じ、その時刻において、左右車輪の速度の変更が行われる。実際にはコントローラ28,29,30の処理時間のための遅れと、電動回転機等の各機構部品の応答遅れ等で、いくらかの遅れ時間があるが、ステアリングハンドルの時々刻々の操作量に応じて、即座に左右車輪の速度が変更される建前となっている。この制御モードを通常制御モードと呼ぶことにすると、実施例2,3は、標準的設定条件の下の制御である通常制御モードについて説明したものである。
【0122】
芝刈作業において、地表状態等のために、通常よりはゆっくりと旋回を行うことが望ましいことが生じえる。例えば、信地旋回や超信地旋回のように旋回半径が小さい場合は、乗用型芝刈車両10の車体全体が小さな旋回半径で回転することになるので、芝刈作業の観点からも、操縦者の安全等の観点からも、通常よりはゆっくり旋回することが望ましい。また、地表の凹凸が激しい場合や、急斜面で芝刈を行う場合においても、急旋回を避け、通常よりはゆっくり旋回することが望ましい。
【0123】
このように、地表状態等のために、通常よりもゆっくり旋回することが望ましい場合には、操縦者が、ステアリングハンドルをゆっくり回転させる工夫をする。2レバー式操作子70の場合には、2つのコントロールレバーについてバランスをとりながら、ゆっくりと倒す工夫をする。このような操作は、かなりの熟練を要し、初心者では困難な場合がある。図8の減速制御モジュール116は、このような場合に、自動的に通常よりもゆっくり旋回するように、芝刈車両制御プログラムの中に組み入れられた減速制御モードを実行するものである。
【0124】
減速制御モジュール116の作用を図21のフローチャートを用いて説明する。最初は、通常制御モードで制御が行われているが、その通常制御モードの処理の中で、旋回指示入力があるか否かが判断される(S20)。旋回指示入力の有無は、2レバー式操作子70の場合は、2つのコントロールレバーの少なくとも1つが中立位置から移動したことが検出されたか否かで判断され、ステアリング操作子72の場合は、ステアリングハンドルの位置が中立位置にあるか否かで判断される。
【0125】
旋回指示入力があると判断されると、減速制御モードが指定されているか否かが判断される(S22)。減速制御モードを実行するには、通常制御モードから減速制御モードに切り換える必要があるが、この切換は、操縦者の指定によって行うことができる。例えば、座席14の近傍に、「通常運転モード/減速運転モード」の選択スイッチを設け、操縦者によって通常運転モードが選択されると、その選択信号を取得して、制御部100は、通常制御モードが指定されたものとし、一方で減速運転モードが操縦者によって選択されると、その選択信号を取得して、減速制御モードが指定されたものとすることができる。あるいは、「減速運転モード」スイッチを設けて、標準状態としては通常制御モードとし、この減速運転モードスイッチがオンされると、そのオン信号を取得したときに限って、制御部100は、減速制御モードが指定されたものとすることができる。
【0126】
また、乗用型芝刈車両10の車両状態に応じて減速制御モードを自動的に指定するものとしてもよい。例えば、図8、図19に示される傾斜センサ68を用い、傾斜センサ68からの対地傾斜角度信号を制御部100が取得し、所定の閾値傾斜角度を超えるときに、減速制御モードが指定されたものとして、通常制御モードから減速制御モードに切り換えるものとできる。また、通常制御モードにおいては、上記のように旋回中心位置を求めて取得するが、取得された旋回中心位置Rの値を所定の閾値旋回中心位置と比較して、旋回中心位置Rが閾値旋回中心位置よりも左右車輪の中心位置側にある場合に、減速制御モードが指定されたものとして、通常制御モードから減速制御モードに切り換えるものとできる。
【0127】
減速制御モードが指定されていると判断されると、減速条件の下で旋回駆動が実行される(S24)。この工程の実行が、減速制御モジュール116の実質的機能である。S22の判断が否定的な場合には、標準設定条件の下の通常制御モードが実行される(S26)。
【0128】
減速条件の下での旋回駆動の様子を図22から図27を用いて説明する。これらの図は、横軸に、操縦者による旋回角度の指示内容をとり、縦軸に車輪回転数をとり、左右車輪のそれぞれの回転数と、左右車輪の回転数の平均値である平均回転数の旋回角度指示に対する変化を図示したものである。横軸の旋回角度の指示は、θで示されており、4/4が旋回指示入力において限度一杯の値を示しており、1/4,2/4,3/4がそれぞれ限度一杯の値に対し、1/4,2/4,3/4半分の値を示している。たとえば、ステアリングハンドルの場合、左右にそれぞれ120度ずつ回転可能とすると、120度の操作量が4/4に相当する。180度回転可能なときは、180度の操作量が4/4に相当する。
【0129】
図22は、通常制御モードのときの旋回駆動の様子を説明する図である。図22において、3本の特性線は、外側車輪の回転数特性線140、内側車輪の回転数特性線142、外側車輪回転数と内側車輪回転数の平均である平均回転数特性線144である。図12(a)における記号を用いると、回転数特性線140は、外側車輪40の回転数Noの旋回角度θについての特性線であり、回転数特性線142は、内側車輪42の回転数Niの旋回角度θについての特性線であり、回転数特性線144は、平均走行速度VMに対応する回転数の旋回角度θについての特性線である。
【0130】
図22の例では、回転数特性線140で示されるNoは旋回角度θが増加するにつれ直線的に増加し、回転数特性線142で示されるNiは旋回角度θが増加するにつれ直線的に減少し、平均回転数、すなわち(No+Ni)は、旋回角度θについて一定のN2に維持される様子が示されている。つまり、ここでは、乗用型芝刈車両10の平均走行速度VMを一定にしたまま、指示された旋回角度θが大きくなるにつれて、外側車輪40の回転数Noと内側車輪42の回転数Niの差である回転数差を直線的に大きくして、旋回が行われている。この例では、旋回における平均走行速度が一定となる。これが通常制御モードにおける旋回特性である。
【0131】
図22において、回転数特性線140等が旋回角度=0から始まっていないが、これは、2レバー式操作子70またはステアリング操作子72に、旋回指示について不感帯があるためである。図23以下についても同様である。
【0132】
なお、図22において、破線で示されているのは、この通常制御モードの範囲内のオプションとして、外側車輪の回転数特性線140、内側車輪の回転数特性線142を若干変更可能としたものである。このオプションは、例えば、熟練者と初心者の操縦性を考慮したものである。このオプションは、座席14の近傍に設けられた「アグレッシブモード/スローモード」選択スイッチの操作によって指定することができる。図22においては、通常制御モードよりも若干高速で旋回を行うアグレッシブモード特性線146,148、通常制御モードよりも若干低速で旋回を行うスローモード特性線147,149として示されている。若干とは、平均走行速度について±10%の範囲で変更可能な程度である。以下に述べる減速モードは、平均走行速度または平均回転数について、−10%から−50%程度の範囲で減速を行うことが可能である。
【0133】
図23は、減速制御モードの代表的な例を説明する図である。図22と比較すると、平均回転数についての回転数特性線154が、旋回角度θが増加するにつれ、低下することが示されている。なお、外側車輪の回転数特性線150と、内側車輪の回転数特性線152との差で示される回転数差は、図22と同じとしてある。したがって、指示された旋回角度θが大きくなるにつれて、外側車輪40の回転数Noと内側車輪42の回転数Niの差である回転数差を直線的に大きくして、旋回が行われていることは図22と同じであるが、平均回転数、すなわち(No+Ni)は、旋回角度θが増加するにつれて、次第に低速となっている。つまり、ここでは、乗用型芝刈車両10の平均回転数NMまたは平均走行速度VMが、旋回の進行に応じて、次第に減速されている。これによって、通常制御モードに比較して、旋回をゆっくり行うことができる。減速の程度は、設定によって可変できる。可変の程度は、上記のように、通常制御モードにおける平均走行速度または平均回転数に対し−10%から−50%の範囲で任意に設定できる。たとえば、座席14の近傍の「通常運転モード/減速運転モード」の選択スイッチの横に、ボリュームスイッチ等を設け、その操作によって、減速の程度を任意に設定するものとできる。
【0134】
図23においては、内側車輪の回転数特性線152が、旋回角度を一杯にしてもせいぜい回転数=0であり、逆方向に回転することがない。図10(b)で説明したように、内側車輪の接地位置に回転中心位置が来て、内側車輪の回転数=0となる状態が信地旋回であるが、図23の場合には、信地旋回を十分行うことができない。信地旋回を十分に行うには、内側車輪の回転数特性線の回転数=0となるところが旋回角度で2/4から4/5の間であることが好ましい。そのためには、平均回転数を下げるか、または旋回角度θに対する回転数差の変化を大きくするように、2レバー式操作子70またはステアリング操作子72を操作すればよい。
【0135】
図24は、平均回転数を下げて、内側車輪の回転数特性線162が旋回角度3/4近傍で回転数=0となるようにしたときの減速制御モードの様子を説明する図である。ここでも、平均回転数についての回転数特性線164が、旋回の進行に応じて、次第に減速されている。これによって、信地旋回を含む旋回制御において、通常制御モードに比較して、旋回をゆっくり行うことができる。なお、旋回角度が3/4を超えるあたりから外側車輪の回転数特性線160の増加傾向が抑制されてくるのは、内側車輪の回転数が逆方向となるためである。
【0136】
図25は、旋回角度θに対する回転数差の変化を大きくするようにして、内側車輪の回転数特性線172が旋回角度3/4近傍で回転数=0となるようにしたときの減速制御モードの様子を説明する図である。ここでも、平均回転数についての回転数特性線174が、旋回の進行に応じて、次第に減速されている。これによって、信地旋回を含む旋回制御において、通常制御モードに比較して、旋回をゆっくり行うことができる。ここでは、旋回角度が3/4を超えるあたりから外側車輪の回転数特性線170の増加傾向が抑制され、むしろ減速されてくるのは、内側車輪の逆転回転数が次第に大きくなるためである。
【0137】
図24、図25においては、平均回転数についての回転数特性線164,174が、旋回角度を一杯にしても回転数=0とならない。図10(c)で説明したように、内側車輪と外側車輪のちょうど中間の位置に回転中心位置が来て、内側車輪の回転数と外側車輪の回転数とが、絶対値が同じで回転方向が互いに逆方向である状態が超信地旋回、あるいはスピン旋回であるが、図24、図25の場合には、超信地旋回あるいはスピン旋回を十分行うことができない。超信地旋回あるいはスピン旋回を十分に行うには、平均回転数の回転数特性線が回転数=0となるところが、少なくとも旋回角度の可変範囲内であることが好ましい。そのための1つの方法は、信地旋回の状態になった後に、平均回転数を下げて、旋回角度の可変範囲内で、平均回転数=0とするように、2レバー式操作子70またはステアリング操作子72を操作することである。
【0138】
図26は、平均回転数を一定のまま、旋回角度θに対する回転数差の変化を大きくして、内側車輪の回転数特性線182を旋回角度3/4の近傍で回転数=0とし、信地旋回の状態とした後、平均回転数の回転数特性線184を減速し、旋回角度4/4までの間に、平均回転数=0とする制御の様子を示す図である。この制御は、超信地旋回を実行するための通常制御モードである。ここでは、信地旋回を超える領域186において、旋回中心位置が左右車両の中間位置に近づくにつれ、平均回転数あるいは平均走行速度が減速してゼロに近づく様子が示されている。
【0139】
なお、内側車輪の回転数特性線182は、旋回角度3/4近傍で回転数=0となり、その後は逆方向に次第に回転数が増加する。これに対応して、外側車輪の回転数特性線180は、旋回角度3/4近傍で最大回転数となった後、次第に回転数が減少し、内側車輪の回転数と絶対値が同じとなるまで減速する。そして、外側車輪の回転数と内側車輪の回転数とが絶対値が同じで、互いに回転方向が逆となるときに、平均回転数=0となって、超信地旋回あるいはスピン旋回と呼ばれる状態となる。
【0140】
図27は、図26に対応する減速制御モードの様子を説明する図である。ここでは、平均回転数に関する回転数特性線194は、図26における平均回転数に関する回転数特性線184と同じである。そして、外側車輪の回転数特性線190が、標準制御モードにおける回転数特性線180におけるよりも一層減速される。これに応じて、内側車輪の回転数特性線192も、逆方向の回転数の増加が抑制される。このようにして、これによって、超信地旋回を含む旋回制御において、通常制御モードに比較して、旋回をゆっくり行うことができる。
【0141】
上記のように、外側車輪の回転数特性線、内側車輪の回転数特性線、平均回転数についての回転数特性線を変更することで、通常制御モードから減速制御モードに変更することができる。この変更は、演算処理によって実行することもできるが、記憶部102に、通常制御モードにおける各種の回転数特性線と、減速制御モードにおける各種の回転数特性線を記憶し、減速運転モードの選択に応じて、必要な回転数特性線を読み出し、読み出された回転数特性線に従って、外側車輪と内側車輪の回転数制御を実行するものとできる。記憶部102には、減速度、平均回転数、回転数差等を検索キーとして、階層構造によって各種の回転数特性線を記憶するものとできる。
【0142】
なお、上記では、通常制御モードと減速制御モードとの間で選択ができるものとし、通常制御モードは、実施例2,3における3輪または4輪駆動を前提として、説明した。ここで、図21のフローチャート、図22から図27の説明から分かるように、減速制御モードは、主駆動輪である左右車輪の回転数制御のみに関するものである。したがって、キャスタ輪に駆動力を与える3輪駆動または4輪駆動等のみならず、キャスタ輪に駆動力を与えず、主駆動輪のみに駆動力を与える2輪駆動等についても、減速制御モードの適用が可能である。
【実施例5】
【0143】
図8、図19において、制御部100は、特別設定条件実行モジュール114の機能を有している。ここでは、その中の片側車輪自由制御モジュール118の機能について説明する。以下では、図1から図20における符号を用いて説明する。
【0144】
旋回制御において、片側車輪の接地位置に旋回中心位置が来て、その片側車輪の対地速度、すなわち回転数がゼロの場合に、これを信地旋回と呼ぶことを述べた。信地旋回においては、旋回中心位置にある片側車輪は固定位置とされるが、もう一方の車輪、つまり外側車輪が回転することに応じて、旋回中心位置の周りに片側車輪が旋回する。この旋回は、片側車輪の車軸回りに駆動力が与えられない状態で行われるので、仮に、片側車輪において、その車軸周りの回転が完全に拘束されているとすると、片側車輪が地表に接する面で、地表を旋回しながら擦ることになり、これにより、芝の植栽を痛め、あるいは地表状態を痛める恐れがある。
【0145】
特に、2レバー式操作子の場合で、駆動源がオイルモータ等の油圧アクチュエータのときに問題が生じやすい。すなわち、駆動源が油圧アクチュエータの場合には、コントロールレバーが中立状態のときには、車両が停止状態と判断して、車両の予期せぬ移動を防止するために、ダイナミックブレーキ等の制動がかけられる。信地旋回のとき、2レバー式操作子においては、片側車輪の制御に対応するコントロールレバーが対地速度=0、すなわち中立位置とされる。上記のように、コントロールレバーが中立状態である片側車輪に対し制動がかけられるものとすると、片側車輪において、その車軸周りの回転が完全に拘束されることになる。油圧アクチュエータでなくても、コントロールレバーが中立状態のときに、その車輪に対し制動をかける方式の制御系であれば、同様のことが生じえる。
【0146】
ステアリング操作子の場合には、信地旋回のときにステアリングハンドルが中立状態にないので、このような問題が生じない。
【0147】
片側車輪自由制御モジュール118は、上記のような問題点に対処するもので、信地旋回のときには、旋回中心位置にある片側車輪を、車軸周りに制動をかけることなく、地表との関係で自由に回転可能にする。これによって、信地旋回における芝の植栽の損傷等を抑制することができる。
【0148】
図28は、片側車輪自由制御の手順を示すフローチャートである。最初は、通常制御モードで制御が行われているが、その通常制御モードの処理の中で、旋回指示入力があるか否かが判断される(S30)。この工程の内容は、図21におけるS20の内容と同じである。すなわち、旋回指示入力の有無は、2レバー式操作子70の場合は、2つのコントロールレバーの少なくとも1つが中立位置から移動したことが検出されたか否かで判断され、ステアリング操作子72の場合は、ステアリングハンドルの位置が中立位置にあるか否かで判断される。
【0149】
旋回指示入力があると判断されると、次に旋回中心位置が信地旋回位置にあるか否かが判断される(S32)。信地旋回位置にあるか否かは、図12に関連して説明した旋回中心位置Rが主駆動輪トレッドの1/2にあるか否かで判断できる。なお、2レバー式操作子70の場合は、一方のコントロールレバーが中立位置にあり、他方のコントロールレバーが中立位置にないことでも補助的に判断できる。
【0150】
信地旋回位置にあると判断されると、次に、旋回中心位置にある車輪の車軸と駆動源とが開放状態とする指示があるか否かが判断される(S34)。この判断は、例えば2レバー式操作子70において、コントロールレバーが中立状態であるか否かで判断できる。なお、ステアリング操作子72の場合は、S34の工程を省略することができる。
【0151】
そして、S34における判断が肯定の場合、あるいはS32における判断が肯定されS34の工程が省略される場合に、S36に進み、旋回中心位置にある片側車輪について自由制御が実行される。すなわち、車軸周りに駆動力を与えないことは勿論、制動をかけることもなく、片側車輪が地表との関係に適応して、車軸周りに自由に回転可能な状態にする。具体的には、片側車輪のブレーキユニットに対する指令を非制動とする。
【0152】
なお、S32において判断が否定の場合、S32の判断が肯定でありS34の判断が肯定であるときは、車両が停止中であることがあるので、S36に進まず、標準設定条件の下の通常制御モードが実行される(S38)。
【0153】
なお、上記では、通常制御モードと片側車輪自由制御モードとの間の切換は、S32の判断によって行うものとしたが、これ以外に、特にモード切換スイッチを設け、モード切換スイッチがオンのときのみに、図28の処理手順を実行するものとしてもよい。たとえば、芝の植栽の状態管理が厳しい庭園、ゴルフ場等の場合に、モード切換スイッチをオンにすることで、信地旋回の際の芝の損傷を気にすることなく、芝刈作業を実行することができる。
【0154】
また、片側車輪自由制御モードに切り換える前の通常制御モードとしては、実施例2,3における3輪または4輪駆動を前提として、説明した。ここで、図28のフローチャートの説明から分かるように、片側車輪自由制御モードは、主駆動輪である左右車輪の回転数制御のみに関するものである。したがって、キャスタ輪に駆動力を与える3輪駆動または4輪駆動等のみならず、キャスタ輪に駆動力を与えず、主駆動輪のみに駆動力を与える2輪駆動等についても、片側車輪自由制御モードの適用が可能である。
【実施例6】
【0155】
図8、図19において、制御部100は、特別設定条件実行モジュール114の機能を有している。ここでは、その中の旋回制限制御モジュール120の機能について説明する。以下では、図1から図20における符号を用いて説明する。
【0156】
実施例2,3においては、旋回制御は、2レバー式操作子70またはステアリング操作子72の旋回指示入力に応じ、信地旋回も超信地旋回も行うものとして説明した。ここで、超信地旋回は、旋回中心位置が主駆動輪である左右車輪の内側に来るため、乗用型芝刈車両10が小さい旋回半径で大きな角度で旋回することになり、小回りのよい旋回を行うことができる。しかし、地表状態によっては、このような小さい旋回半径、大きな旋回角度を実行することが乗用型芝刈車両10を不安定な状態とする可能性がある。たとえば、急斜面において、超信地旋回を実行すると、乗用型芝刈車両10の重心が短時間の間に移動し、場合によっては、重心移動に伴って車両自体が大きく移動する恐れがある。
【0157】
旋回制限制御モジュール120は、超信地旋回が指示された場合でも、旋回半径の大きさを制限し、信地旋回の位置まで戻す機能を有するものである。これにより、無理な旋回を防止することができる。
【0158】
図29は、旋回制限制御の手順を示すフローチャートである。最初は、通常制御モードで制御が行われているが、その通常制御モードの処理の中で、旋回指示入力があるか否かが判断される(S40)。この工程の内容は、図21におけるS20の内容等と同じである。すなわち、旋回指示入力の有無は、2レバー式操作子70の場合は、2つのコントロールレバーの少なくとも1つが中立位置から移動したことが検出されたか否かで判断され、ステアリング操作子72の場合は、ステアリングハンドルの位置が中立位置にあるか否かで判断される。
【0159】
旋回指示入力があると判断されると、次に対地傾斜角度が閾値傾斜角度を超えるか否かが判断される(S42)。対地傾斜角度の検出には、図8、図19に示されている傾斜センサ68を用い、その検出データを対地傾斜角度信号80として制御部100が取得することで行われる。閾値傾斜角度は、乗用型芝刈車両10の重心位置等に基づき、経験的に設定することができる。例えば、閾値傾斜角度を+20度から−15度等と設定することができる。ここで符号が+のときは登り坂、符号が−のときは下り坂であることを示す。勿論、これ以外の値に閾値傾斜角度を設定することができる。
【0160】
S42の判断が肯定されると、つぎに、旋回中心位置が超信地旋回に当たるか否かが判断される(S44)。この判断は、図12に関連して説明した旋回中心位置Rが主駆動輪トレッドの1/2未満であるか否かで判断できる。
【0161】
S44の判断が肯定されると、信地旋回まで旋回中心位置が戻される旋回制限が行われる(S46)。具体的には、旋回中心位置Rが主駆動輪トレッドの1/2以上になるように、左右車輪の回転数が変更される。なお、S42の判断が否定される場合、S44の判断が否定される場合には、標準設定条件の下の通常制御モードが実行される(S48)。
【0162】
なお、上記では、通常制御モードと旋回制限制御モードとの間の切換は、S42の判断によって行うものとした。したがって、傾斜センサが、通常制御モードか旋回制限制御モードかの指定を行う手段に相当することになる。これ以外に、特にモード切換スイッチを設け、モード切換スイッチがオンのときのみに、図29の処理手順を実行するものとしてもよい。たとえば、地表が凹凸が激しい場合、あるいは、障害物が多い場合等の場合に、モード切換スイッチをオンにすることで、旋回半径の大きさを気にすることなく、芝刈作業を実行することができる。
【0163】
また、旋回制限制御モードに切り換える前の通常制御モードとしては、実施例2,3における3輪または4輪駆動を前提として、説明した。ここで、図29のフローチャートの説明から分かるように、旋回制限制御モードは、主駆動輪である左右車輪の回転数制御のみに関するものである。したがって、キャスタ輪に駆動力を与える3輪駆動または4輪駆動等のみならず、キャスタ輪に駆動力を与えず、主駆動輪のみに駆動力を与える2輪駆動等についても、旋回制限制御モードの適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0164】
【図1】本発明に係る実施の形態における乗用型芝刈車両の側面図である。
【図2】本発明に係る実施の形態における乗用型芝刈車両においてメインフレーム上の構成要素の図示を省略した平面図である。
【図3】本発明に係る実施の形態の乗用型芝刈車両における電気系統構成要素に関するブロック図である。
【図4】本発明に係る実施の形態において、キャスタ輪における操向輪用電動回転機と、ステアリングアクチュエータの配置関係の1つの例を示す断面図である。
【図5】本発明に係る実施の形態において、キャスタ輪における操向輪用電動回転機と、ステアリングアクチュエータの配置関係の1つの例を示す断面図である。
【図6】本発明に係る実施の形態において、キャスタ輪における操向輪用電動回転機と、ステアリングアクチュエータの配置関係の1つの例を示す断面図である。
【図7】本発明に係る実施の形態において、キャスタ輪における操向輪用電動回転機と、ステアリングアクチュエータの配置関係の1つの例を示す断面図である。
【図8】本発明に係る実施の形態において、2レバー式操作子を備える場合の旋回機能に関する部分についてのブロック図である。
【図9】本発明に係る実施の形態において、直線走行の場合の様子を説明する図である。
【図10】本発明に係る実施の形態において、旋回走行の場合を説明する図である。
【図11】本発明に係る実施の形態において、旋回制御の手順を示すフローチャートである。
【図12】本発明に係る実施の形態において、左右車輪速度が与えられたときに、旋回中心位置を求める様子を説明する図である。
【図13】本発明に係る実施の形態において、旋回中心位置を用いて、キャスタ輪の操向角度等を求める様子を示す図である。
【図14】本発明に係る実施の形態において、旋回中心位置を用いて、キャスタ輪の速度等を求める様子を示す図である。
【図15】本発明に係る実施の形態において、乗用型芝刈車両の構成によって定まるW,T,t,rr,rfの例を示す図である。
【図16】本発明に係る実施の形態において、車輪回転数を変化させて、回転数差、旋回中心位置、キャスタ輪回転数を求めた結果を示す図である。
【図17】図16の結果に基づき、回転数差と旋回中心位置との関係をマップ化する様子を示す図である。
【図18】図16の結果に基づき、旋回中心位置とキャスタ輪回転数との関係をマップ化する様子を示す図である。
【図19】本発明に係る実施の形態において、ステアリング操作子を備える乗用型芝刈車両のブロック図である。
【図20】図19の構成の下における旋回制御の手順を示すフローチャートである。
【図21】本発明に係る実施の形態において、減速制御の手順を示すフローチャートである。
【図22】本発明に係る実施の形態において、減速条件の下での旋回駆動の様子を説明する図である。
【図23】本発明に係る実施の形態において、減速条件の下での旋回駆動の様子を説明する図である。
【図24】本発明に係る実施の形態において、減速条件の下での旋回駆動の様子を説明する図である。
【図25】本発明に係る実施の形態において、減速条件の下での旋回駆動の様子を説明する図である。
【図26】本発明に係る実施の形態において、減速条件の下での旋回駆動の様子を説明する図である。
【図27】本発明に係る実施の形態において、減速条件の下での旋回駆動の様子を説明する図である。
【図28】本発明に係る実施の形態において、片側車輪自由制御の手順を示すフローチャートである。
【図29】本発明に係る実施の形態において、旋回制限制御の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0165】
10 乗用型芝刈車両、12 メインフレーム、14 座席、16 収草タンク、18 モアダクト、19 送草ファン、20 モアデッキ、22 エンジン、24 発電機、26 電源ユニット、28,29,30 コントローラ、32 モア関係電動回転機、34 動力伝達軸機構、40,42 車輪、44,46 キャスタ輪、45 操向軸、47 キャスタトレイル、50,52 車軸電動回転機、54,56 操向輪用電動回転機、55 動力伝達機構、59 回転歯車、60,62 ステアリングアクチュエータ、61 ステアリングフレーム、64 スリップリング、66 ワンウェイクラッチ、68 傾斜センサ、70 2レバー式操作子、72 ステアリング操作子、74,75,76,77 操作量信号、78 駆動信号、80 対地傾斜角度信号、100 制御部、102 記憶部、104 旋回中心位置取得モジュール、106 左右車輪速度取得モジュール、108 キャスタ輪速度取得モジュール、110 平均走行速度取得モジュール、112 旋回駆動モジュール、114 特別設定条件実行モジュール、116 減速制御モジュール、118 片側車輪自由制御モジュール、120 旋回制限制御モジュール、130,132,134 旋回中心位置、140,142,144,150,152,154,160,162,164,170,172,174,180,182,184,190,192,194 回転数特性線、146,148 アグレッシブモード特性線、147,149 スローモード特性線、186 領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動回転機によってそれぞれ独立に走行駆動される主駆動輪である左右車輪と、
操向輪である少なくとも1つのキャスタ輪と、
芝刈のために駆動される芝刈用ブレードまたは芝刈用リールと、
旋回操作子による旋回指示入力に応じ、予め定めた標準設定条件に従い、または標準的設定条件と異なる特別設定条件に従って、左右車輪の各走行駆動を制御する制御部と、
標準設定条件または特別設定条件のいずれかを指定する手段と、
を備え、指定された設定条件に従って、旋回指示に対応する旋回中心位置の周りに左右車輪を旋回させることを特徴とする乗用型芝刈車両。
【請求項2】
電動回転機によってそれぞれ独立に走行駆動される主駆動輪である左右車輪と、
操向輪である少なくとも1つのキャスタ輪と、
芝刈のために駆動される芝刈用ブレードまたは芝刈用リールと、
旋回操作子による旋回指示入力に応じ、予め定めた標準設定条件に従い、または標準的設定条件と異なる特別設定条件として車両の移動速度あるいは車両の旋回速度の少なくとも一方が標準設定条件よりも減速される減速設定条件に従って、左右車輪の各走行駆動を制御する制御部と、
標準設定条件または減速設定条件のいずれかを指定する手段と、
を備え、指定された設定条件に従って、旋回指示に対応する旋回中心位置の周りに左右車輪を旋回させることを特徴とする乗用型芝刈車両。
【請求項3】
請求項2に記載の乗用型芝刈車両において、
旋回操作子は、ステアリング角度を旋回指示入力とするハンドル式あるいはモノレバー式のステアリング操作子であり、
制御部は、
ステアリング操作子の旋回指示入力に対応して、旋回中心位置を求め、旋回中心位置に対応する左右車輪のそれぞれの走行速度である左右車輪速度を求めて取得する手段と、
取得された左右車輪速度に応じて左右車輪を走行駆動して旋回中心位置の周りに旋回させる駆動手段と、
を含むことを特徴とする乗用型芝刈車両。
【請求項4】
請求項2に記載の乗用型芝刈車両において、
旋回操作子は、左右車輪速度を旋回指示入力とする2レバー式の操作子であり、
制御部は、
2レバー式操作子の旋回指示入力に対応して、旋回中心位置を求め、旋回中心位置に対応する左右車輪のそれぞれの走行速度である左右車輪速度を求めて取得する手段と、
指示入力された左右車輪速度に応じて左右車輪を走行駆動して旋回中心位置の周りに旋回させる駆動手段と、
を含むことを特徴とする乗用型芝刈車両。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の乗用型芝刈車両において、
制御部は、
標準設定条件を実行するときは、左右車輪の中間位置における平均走行速度について、旋回の進行の間、一定速度に維持し、
減速設定条件を実行するときは、平均走行速度を標準設定条件の一定速度から旋回の進行に応じて次第に減速することを特徴とする乗用型芝刈車両。
【請求項6】
請求項5に記載の乗用型芝刈車両において、
制御部は、
旋回中心位置が左右車輪の内側の領域となり、一方側の車輪の速度と他方側の車輪の速度とが互いに逆方向となる場合に、
標準設定条件を実行するときは、旋回中心位置が左右車輪の内側の領域に入るまでは平均走行速度を一定速度に維持し、旋回中心位置が左右車輪の内側の領域に入った後は、旋回中心位置が左右車両の中間位置に近づくにつれて平均走行速度を所定の条件の下で減速し、
減速設定条件を実行するときは、平均走行速度を標準設定条件と同じとしたまま、一方側の車輪の速度を標準設定条件の下の速度より減速することを特徴とする乗用型芝刈車両。
【請求項7】
電動回転機によってそれぞれ独立に走行駆動される主駆動輪である左右車輪と、
操向輪である少なくとも1つのキャスタ輪と、
芝刈のために駆動される芝刈用ブレードまたは芝刈用リールと、
旋回操作子による旋回指示入力に応じ、予め定めた標準設定条件に従い、または標準的設定条件と異なる特別設定条件として旋回中心位置が左車輪の接地位置または右車輪の接地位置のいずれかであるときに、その旋回中心位置に対応する片側車輪を車軸周りに自由回転状態として、走行駆動及び制動を行わない片側車輪自由制御設定条件に従って、左右車輪の各走行駆動を制御する制御部と、
標準設定条件または片側車輪自由制御設定条件のいずれかを指定する手段と、
を備え、指定された設定条件に従って、旋回指示に対応する旋回中心位置の周りに左右車輪を旋回させることを特徴とする乗用型芝刈車両。
【請求項8】
請求項6に記載の乗用型芝刈車両において、
旋回操作子は、左右車輪速度を旋回指示入力とする2レバー式の操作子であり、
制御部は、旋回中心位置に対応する片側車輪についての操作子の旋回指示入力が電動回転機と片側車輪との間の接続を開放状態とするときに、片側車輪自由制御を行うことを特徴とする乗用型芝刈車両。
【請求項9】
電動回転機によってそれぞれ独立に走行駆動される主駆動輪である左右車輪と、
操向輪である少なくとも1つのキャスタ輪と、
芝刈のために駆動される芝刈用ブレードまたは芝刈用リールと、
旋回操作子による旋回指示入力に応じ、予め定めた標準設定条件に従い、または標準的設定条件と異なる特別設定条件として旋回中心位置が左右車輪の内側の領域に入る場合には、旋回中心位置を少なくとも左右車輪のいずれかの車輪の対地位置まで戻す旋回制限設定条件に従って、左右車輪の各走行駆動を制御する制御部と、
標準設定条件または旋回制限設定条件のいずれかを指定する手段と、
を備え、指定された設定条件に従って、旋回指示に対応する旋回中心位置の周りに左右車輪を旋回させることを特徴とする乗用型芝刈車両。
【請求項10】
請求項8に記載の乗用型芝刈車両において、
車両の対地傾斜角度を検出する傾斜センサを備え、
制御部は、
傾斜センサの検出値が所定の閾値傾斜角度を超えるときを旋回制限設定条件の指定として、旋回制限条件の下で左右車輪の走行駆動を制御することを特徴とする乗用型芝刈車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2008−168870(P2008−168870A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−6220(P2007−6220)
【出願日】平成19年1月15日(2007.1.15)
【出願人】(000125853)株式会社 神崎高級工機製作所 (210)
【Fターム(参考)】