事務機器のローラ回転検出装置付き軸受およびローラ駆動装置
【課題】 事務機器における感光ドラムや送りローラなどのローラを支持する軸受であって、省スペース化が可能で高分解能な絶対角度検出ができ、組立性が良く環境変化にも強いローラ回転検出装置付き軸受を提供する。
【解決手段】 このローラ回転検出装置付き軸受20は、事務機器における感光ドラムまたは送りローラ等のローラ2の回転軸3を支持する軸受である。軸受の内輪21またはローラ軸3に、回転中心O回りの円周方向異方性を有する磁気発生手段11を設ける。また外輪22には、前記磁気発生手段11に対向して磁気アレイセンサを取付ける。
【解決手段】 このローラ回転検出装置付き軸受20は、事務機器における感光ドラムまたは送りローラ等のローラ2の回転軸3を支持する軸受である。軸受の内輪21またはローラ軸3に、回転中心O回りの円周方向異方性を有する磁気発生手段11を設ける。また外輪22には、前記磁気発生手段11に対向して磁気アレイセンサを取付ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コピー機やプリンタ等の事務機器のローラ回転検出装置付き軸受およびローラ駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の機器における回転部の回転角度を検出する非接触式の回転検出装置として、光学式のものや磁気式のものが使用されるが、埃による影響を受けやすい光学式のものは環境の悪い条件では使いにくいことから、磁気式のものが使用されることが多い。
【0003】
図9は、磁気式の回転検出装置の従来例の一つを示す。この回転検出装置50は、軸受60の回転輪となる内輪61に設けた磁石51と、軸受60の固定輪となる外輪62に設けたホール素子やMR素子などからなるセンサ52とで構成される。内輪61の回転に伴う磁石51の磁極変化を、外輪62側のセンサ52で検出することにより内輪61の回転が検出される。
【0004】
事務機器では、良い環境下で使用できるため、光学式の回転検出装置が使用されることが多い。図10は、事務機器におけるドラムやローラ等の回転軸の回転を、従来の光学式の回転検出装置で検出する構成例を示す。この場合の光学式回転検出装置70は透過型エンコーダであって、発光素子および検出素子を搭載した検出器ブロック71と、周方向に等配した複数のスリットあるいは転写パターンを有する金属板やガラス板等からなる符号板72とで構成される。検出対象の回転軸73は軸受74を介して固定部材75に回転自在に支持され、この回転軸73に前記符号板72が取付けられている。検出器ブロック71は、その発光素子設置部と検出素子設置部とで前記符号板72を挟むようにして、固定部材75に取付けられ、回転軸73の回転に伴い符号板72を透過する透過光の有無を検出ブロック71で検出することで回転軸73の回転が検出される。
【0005】
図11は、事務機器におけるドラムやローラ等の回転軸の回転を、従来の回転検出装置が一体化されたロータリエンコーダで検出する構成例を示す。この場合、軸受80を介して固定部材81に支持された検出対象の回転軸82の軸端にロータリエンコーダ83が配置される。ロータリエンコーダ83を構成する回転検出装置は光学式のものに限らず、磁気式のものが使用される場合もある。回転軸82とロータリエンコーダ83とはカップリングで接続される場合もあるし、回転軸82をロータリエンコーダ83内に挿入する場合もある。
【0006】
このほか、回転検出装置付き軸受として、回転輪である内輪側に回転中心回りの方向性を有する磁気発生手段を配置すると共に、固定輪である外輪側に前記磁気発生手段の磁気を検出する磁気ラインセンサを、磁気発生手段に対向して配置したものが提案されている(例えば特許文献1)。
【特許文献1】特開2004−37133号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図9に示した磁気式の回転検出装置50では、
・磁石51の磁極を細かく形成する必要があり、組立時に磁石51とセンサ52とのギャップを厳しく管理しなければならない、
・分解能を上げるためには、磁石51において、より細かい磁極ピッチのパターンを形成する必要がある、
といった課題がある。
【0008】
図9のように軸受60と一体化する構造のまま回転検出装置50を小型化しようとすると、上記したように磁極ピッチが非常に微細化するため、磁石51とセンサ52を近接させないと、十分な信号出力を得ることができない。部品の製作精度や、組立精度を考慮すると、1回転当たり300パルス以上の分解能で回転検出するためには、外径40mm以上の大きさが必要となる。このため、事務機器におけるドラムなどの回転検出に使用する場合には、回転制御に必要とされる分解能を確保しつつ、コンパクト化も要請されることから、これらの要請を満たすことは困難である。
【0009】
図10に示した光学式の回転検出装置70では、符号板72における光学パターンを細かく形成することで分解能を上げて光ピックアップにより回転検出するため、符号板72の取付け精度やピックアップセンサの相対取付け位置精度を管理する必要がある。パターンを微細化せずに分解能を上げるには、回転検出装置70の径を大きくすればよいが、装置全体の寸法が大きくなってしまい小型化が困難となる。また、装置径が大きくなると符号板72の端面振れも大きくなり、それに伴うセンサギャップ変動、符号板72の回転中心の偏心、検出器ブロック71の傾きや径方向位置精度低下などにより検出信号が変動してしまうことから、組立上の精度管理または取付調整が必要となり、作業工程が複雑になってしまう。
【0010】
このような組立上の課題は、図11に示すように回転検出装置全体を一体化したロータリエンコーダ83とすることにより解決できるが、ロータリエンコーダ83の場合には、内部に組み込む構造部材が多く寸法が大きくなることから、事務機器等に組み込んで使用できるコンパクトな構造とすることが難しい。また、回転軸82とロータリエンコーダ83との結合機構が必要となるため、軸方向の収納スペースも大きくなる。さらに、ロータリエンコーダ83は機械的な負荷容量を支持できる構造になっていないので、機械的な構造部材としては使用できず、機械に別途付加する使用形態となる。
【0011】
また、従来の磁気式の回転検出装置は、絶対角を検出できるものが少なく、特に1回転までの角度しか検出できず、数回転の絶対角度が検出できるものは少ない。数回転の絶対角度の検出を可能とするためには、複雑な追加の構成が必要で、より大型化してしまう。光学式の回転検出装置においても、数回転の絶対角度を検出可能としたものは、大型化して高価になり、低コスト化の要望の厳しい事務機器用途して用いるには適さない。
【0012】
なお、特許文献1の回転検出装置付き軸受は、磁気ラインセンサを用いるものであるため種々の優れた性能を有するが、感光ドラムや送りローラ等のローラの回転軸の支持についての応用については開示されていない。
【0013】
この発明の目的は、省スペース化が可能で高分解能な絶対角度検出ができ、組立性が良く環境変化にも強い事務機器のローラ回転検出装置付き軸受を提供することである。
この発明の他の目的は、省スペース化が可能で高分解能な多回転の絶対角度検出ができ、組立性が良く環境変化にも強い事務機器のローラ駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明の事務機器のローラ回転検出装置付き軸受は、事務機器における感光ドラムまたは送りローラ等のローラの回転軸を支持する軸受であって、内輪またはローラ軸に設けられて回転中心回りの円周方向異方性を有する磁気発生手段、およびこの磁気発生手段と対向して外輪に取付けられた磁気アレイセンサを備えたものである。
【0015】
この構成によると、回転検出手段として磁気アレイセンサと磁気発生手段の組み合わせによるものを用いるため、磁界の分布測定により回転角度を検出できて、磁界の強さで検出するものと異なり、小型・高分解能となり、絶対角度の検出が可能な回転検出手段となる。また、磁界分布測定に基づく原理を利用するものであるため、永久磁石等の磁気発生手段の温度特性やギャップ設定の影響も受けず、環境変化に強いという特性が得られ、安定した検出が可能である。これにより、組付作業を簡便化できる。さらに、前記構成の回転検出手段は、回転角度を絶対値として検出してデジタル値で出力するため、アナログ信号のようなノイズの影響を受けることが少なく安定した信号伝送が行われ、信頼性を高めることができる。また、センサの信号を増幅して補正し、回転角度に換算するといった処理を、外部にAD変換回路や演算処理回路を設けて行う必要がないので、回路構成も簡単になる。その結果、省スペース化が可能で高分解能な絶対角度検出ができ、組立性が良く環境変化にも強い事務機器のローラ回転検出装置付き軸受とすることができる。
【0016】
この発明の事務機器のローラ駆動装置は、事務機器における感光ドラムまたは送りローラ等のローラを駆動する装置であって、駆動源と前記ローラとの間に、回転速度の互いに異なる複数の回転部材を有する減速機を備え、これら回転速度の互いに異なる回転部材に、回転中心回りの円周方向異方性を有する磁気発生手段を設け、これら各磁気発生手段と対向して固定部材に磁気アレイセンサをそれぞれ設け、各磁気アレイセンサの出力から対向する回転部材の回転角度を検出する複数の個別回転角度検出手段、およびこれら複数の個別回転角度検出手段の検出する回転角度から前記ローラの複数回転の回転角度を検出する多回転角度算出手段を設けたことを特徴とする。
この構成によると、減速機の回転速度の互いに異なる回転部材に対して、磁気発生手段と磁気アレイセンサとでなる回転検出手段を設けたため、これらの個別回転角度検出手段で検出された回転角度から、多回転角度算出手段により、ローラの複数回転の回転角度を絶対角度で検出することができる。各回転検出手段は、前記のように磁気発生手段と磁気アレイセンサとで磁界分布を測定するものであるため、小型・高精度化が可能である。これらのため、省スペースで、高分解能な多回転絶対角度検出ができ、また組立性が良く環境変化にも強い事務機器のローラ駆動装置とすることができる。
【発明の効果】
【0017】
この発明の事務機器のローラ回転検出装置付き軸受は、事務機器における感光ドラムまたは送りローラ等のローラの回転軸を支持する軸受であって、内輪またはローラ軸に設けられて回転中心回りの円周方向異方性を有する磁気発生手段、およびこの磁気発生手段と対向して外輪に取付けられた磁気アレイセンサを備えたものであるため、省スペース化が可能で、高分解能な絶対角度検出ができ、組立性が良く環境変化にも強い事務機器のローラ回転検出装置付き軸受とできる。
この発明の事務機器のローラ駆動装置は、事務機器における感光ドラムまたは送りローラ等のローラを駆動する装置であって、駆動源と前記ローラとの間に、回転速度の互いに異なる複数の回転部材を有する減速機を備え、これら回転速度の互いに異なる回転部材に、回転中心回りの円周方向異方性を有する磁気発生手段を設け、これら各磁気発生手段と対向して固定部材に磁気アレイセンサをそれぞれ設け、各磁気アレイセンサの出力から対向する回転部材の回転角度を検出する複数の個別回転角度検出手段、およびこれら複数の個別回転角度検出手段の検出する回転角度から前記ローラの複数回転の回転角度を検出する多回転角度算出手段を設けたため、省スペース化が可能で、高分解能な多回転の絶対角度検出ができ、組立性が良く環境変化にも強い事務機器のローラ駆動装置とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
この発明の第1の実施形態を図1ないし図6と共に説明する。図1は、この実施形態のローラ回転検出装置付き軸受が取付けられた事務機器におけるローラ支持部の断面図を示す。この事務機器のローラ回転検出装置付き軸受20は、コピー機の感光ドラムやプリンタの送りローラ等のローラ2の回転軸3を支持する軸受であって、ローラ2の回転角度を検出する回転検出装置1が一体に取付けられている。ローラ2の回転軸3は、左右の固定部材4A,4Bに跨がって回転自在に支持され、左側の固定部材4Aに設置されたモータ5により回転軸3が回転駆動される。左右の固定部材4A,4Bは、事務機器の筐体、または筐体内に設けられたフレーム等からなる。
回転軸3の右端は、上記ローラ回転検出装置付き軸受20を介して固定部材4Bに支持される。回転軸3の左端は、図示しない軸受を介して固定部材4Aに支持されている。
【0019】
図2は、前記ローラ回転検出装置付き軸受20の設置部の拡大断面図を示す。回転軸3の一端を支持する軸受20は、内輪21と外輪22の転走面間に転動体23を介在させた転がり軸受である。転動体23はボールからなり、この転がり軸受20は深溝玉軸受とされている。回転軸3が嵌合する内輪21は、転動体23を介して外輪22に支持されている。外輪22は、固定部材4Bに形成された軸受嵌合部6に嵌合されている。
【0020】
回転検出装置1は、転がり軸受20の内輪21側に配置された磁気発生手段11と、外輪22側に配置されたセンサ12とを備える。ここで言う内輪21側とは、内輪21または内輪21と共に回転する部材のことであり、外輪22側とは外輪22または外輪22に固定された部材のことである。
【0021】
磁気発生手段11は、軸受内輪21に取付けられた磁気発生手段取付部材26に取付けられている。この取付けにおいては、転がり軸受20の回転中心Oが磁気発生手段11の中心と一致するように、磁気発生手段取付部材26の回転軸3側とは反対側に向く片面中央に磁気発生手段11が固定される。これにより、磁気発生手段11は、ローラ2の回転に応じて回転し、その回転中心O回りをN磁極およびS磁極が旋回移動する。
なお、磁気発生手段1は、上記したように磁気発生手段取付部材26を介して軸受内輪21に設ける場合に限らず、ローラ回転軸3の軸端に直接に設けても良い。
【0022】
センサ12は、磁気発生手段11の磁気を感知して回転角度の情報を出力する手段である。センサ12は、軸受外輪22に取付けられたセンサ取付部材27に取付けられている。この取付けにおいては、転がり軸受20の回転中心Oの軸方向に向けて磁気発生手段11と対向するように、センサ取付部材27の回転軸3側に向く片面中央にセンサ12が固定される。
【0023】
図3は、回転検出装置1の原理構成を示す。磁気発生手段11は、発生する磁気が回転側部材の回転中心Oの回りの円周方向異方性を有するものであり、永久磁石の単体、あるいは永久磁石と磁性材の複合体からなる。ここでは、磁気発生手段11は、2つの永久磁石16を、1つの永久磁石16のN磁極がセンサ12に対向し、他の1つの永久磁石16のS磁極がセンサ12に対向し、かつこれら両磁極が前記回転中心Oで2分割されるように並べて構成される。
【0024】
センサ12は、図4に平面図で示すように、複数の磁気センサ素子13aで構成される磁気アレイセンサ13と、その磁気センサ素子13aの出力を回転信号または角度信号に変換する計算手段である変換回路14とを1つの半導体チップ15上に集積したものである。半導体チップ15上において、磁気センサ素子13aは、仮想の矩形上の4辺における各辺に沿って配置されて、4辺の磁気ラインセンサ13A〜13Dとされる。この場合に、前記矩形の中心は、転がり軸受20の回転中心Oに一致する。4辺の磁気ラインセンサ13A〜13Dは、同図の例では磁気センサ素子13aが一列に並んだものとしているが、磁気センサ素子13aが複列に平行に並んだものであっても良い。
【0025】
前記変換回路14は、磁気ラインセンサ13A〜13Dの矩形配置の内部に配置される。図2に示すように、半導体チップ15は、その素子形成面が前記磁気発生手段11と僅かなギャップを隔てて対向するように、回路基板17を介して前記センサ取付部材27に固定される。また、センサ取付部材27には、センサ12の信号を外部に取り出すケーブル28が取付けられている。
【0026】
このように、半導体チップ15上に磁気センサ素子13aと変換回路14とを集積して一体化すると、磁気センサ素子13aと変換回路14の配線が不要となり、センサ12のコンパクト化が可能で、断線等に対する信頼性も向上し、回転検出装置1の組立作業も容易になる。特に、上記したように矩形に配置された磁気ラインセンサ13A〜13Dの内部に変換回路14を配置すると、チップサイズをより小さくすることができる。
【0027】
図5および図6は、前記変換回路14による角度算出処理の説明図である。図5(A)〜図5(D)は、外輪22が回転している時の磁気ラインセンサ13A〜13Dによる出力波形図を示し、それらの横軸は各磁気ラインセンサ13A〜13Dにおける磁気センサ素子13aを、縦軸は検出磁界の強度をそれぞれ示す。
いま、図6に示す位置X1とX2に磁気ラインセンサ13A〜13Dの検出磁界のN磁極とS磁極の境界であるゼロクロス位置があるとする。この状態で、各磁気ラインセンサ13A〜13Dの出力は、図5(A)〜図5(D)に示す信号波形となる。したがって、ゼロクロス位置X1,X2は、磁気ラインセンサ13A,13Cの出力から直線近似することで算出できる。
角度計算は、次式(1)で行うことができる。
θ=tan-1(2L/b) ……(1)
ここでθは、磁気発生手段11の回転角度を絶対角度(アブソリュート値)で示した値である。2Lは、矩形に並べられる各磁気ラインセンサ13A〜13Dで構成される四角形の1辺の長さである。bは、ゼロクロス位置X1,X2間の横方向長さである。
ゼロクロス位置X1,X2が磁気ラインセンサ13B,13Dにある場合には、それらの出力から得られるゼロクロス位置データにより、上記と同様にして回転角度θが算出される。変換回路14で算出された回転角度θは前記ケーブル28により出力される。
【0028】
この構成のローラ回転検出装置付き軸受20によると、回転検出装置1として、磁気アレイセンサ13と磁気発生手段11の組み合わせによるものを用いるため、磁界の分布測定により回転角度を検出できて、磁界の強さで検出するものと異なり、小型・高分解能となり、絶対角度の検出が可能な回転検出手段となる。また、磁界分布測定に基づく原理を利用するものであるため、永久磁石等の磁気発生手段11の温度特性やギャップ設定の影響も受けず、環境変化に強いという特性が得られ、安定した検出が可能である。これにより、組付作業を簡便化できる。さらに、この構成の回転検出装置1は、回転角度を絶対値として検出してデジタル値で出力するため、アナログ信号のようなノイズの影響を受けることが少なく安定した信号伝送が行われ、信頼性を高めることができる。また、センサの信号を増幅して補正し、回転角度に換算するといった処理を、外部にAD変換回路や演算処理回路を設けて行う必要がないので、回路構成も簡単になる。その結果、省スペースが可能で高分解能な絶対角度検出ができ、組立性が良く環境変化にも強い事務機器のローラ回転検出装置付き軸受とすることができる。
【0029】
この発明の他の実施形態を図7および図8に示す。図7はこの実施形態のローラ駆動装置を備えた事務機器におけるローラ支持部の断面図を示す。この事務機器のローラ駆動装置30は、コピー機の感光ドラムやプリンタの送りローラ等のローラ2を駆動する装置であって、ローラ2の回転角度を検出する回転検出装置1Aが一体に取付けられている。ローラ2の回転軸3は、左右の固定部材7,8に跨がって回転自在に支持されている。具体的には、回転軸3の右端は転がり軸受9を介して固定部材8に支持され、回転軸3の左端も図示しない軸受を介して固定部材7に支持されている。ローラ回転軸3の左端を支持する固定部材7は断面方形のボックス状に形成され、この固定部材7の片方の側壁部7aにローラ回転軸3が支持されている。左右の固定部材7,8は、上記事務機器における筐体内に設けられたフレームまたは筐体自体からなる。
【0030】
ローラ駆動装置30は、駆動源であるモータ31と、このモータ31とローラ2の間に介在する減速機32を備える。モータ31は、前記ボックス状の固定部材7の側壁部7aに設置される。減速機32は、モータ31の出力軸31aに設けられた出力ギヤ33と、この出力ギヤ33に大径ギヤ部34aが噛み合う中間ギヤ34と、前記ローラ回転軸2の左端に設けられ前記中間ギヤ34の小径ギヤ部34bに噛み合う入力ギヤ35とで構成され、ボックス状の固定部材7の内部に配置される。すなわち、固定部材7は減速機32のギヤボックスを兼ねる。中間ギヤ34は、固定部材7の側壁部7aに回転自在に支持される。これにより、モータ出力軸31aの回転が所定の減速比で中間ギヤ34に伝達され、さらに中間ギヤ34の回転が所定の減速比で入力ギヤ35つまりローラ2に伝達される。
【0031】
入力ギヤ35が設けられるローラ回転軸3の左側の軸端には、ローラ回転軸3の回転中心O1回りの円周方向異方性を有する磁気発生手段41Aが設けられる。ローラ回転軸3が支持される前記固定部材7の側壁部7aと対向するもう片方の側壁部7bには、回路基板47を介して前記磁気発生手段41Aと軸方向に対向するセンサ42Aが設けられている。磁気発生手段41Aとセンサ42Aとで、第1の回転検出部40Aが構成される。これら磁気発生手段41Aおよびセンサ42Aの構成は、図1〜図6で示した第1の実施形態における回転検出装置1と同じであり、これにより入力ギヤ35の回転角度つまりローラ3の回転角度が検出される。センサ42Aを構成する半導体チップの素子形成面には磁気アレイセンサ(図示せず)と個別回転角度検出手段44Aの回路が集積されている。この場合の個別回転角度検出手段44Aは、第1の実施形態における変換回路14と同じものであり、ここでは説明を分かりやすくするためにセンサ42Aから分離したブロック図で示している。
【0032】
中間ギヤ34の前記固定部材7の側壁部7bと対向する片面には、中間ギヤ34の回転中心O2回りの円周方向異方性を有する磁気発生手段41Bが設けられる。固定部材7の側壁部7bには、前記回路基板47を介して前記磁気発生手段41Bと軸方向に対向するセンサ42Bが設けられおり、磁気発生手段41Bとセンサ42Bとで第2の回転検出部40Bが構成される。これら磁気発生手段41Bおよびセンサ42Bの構成も、第1の実施形態における回転検出装置1と同じであり、これにより中間ギヤ34の回転角度が検出される。センサ42Bを構成する半導体チップの素子形成面には磁気アレイセンサ(図示せず)と個別回転角度検出手段44Bの回路が集積されている。この場合の個別回転角度検出手段44Bも、第1の実施形態における変換回路14と同じものであり、ここではセンサ42Bから分離したブロック図で示している。
【0033】
上記各個別回転角度検出手段44A,44Bの検出する回転角度は多回転角度算出手段45に入力される。多回転角度算出手段45は、各個別回転角度検出手段44A,44Bの検出する回転角度から、ローラ2の複数回転の回転角度を検出するものである。このローラ駆動装置30に取付けられる上記回転検出装置1Aは、第1および第2の回転検出部40A,40Bと、前記多回転角度算出手段45とで構成される。
【0034】
次に、上記ロータ駆動装置30の動作について説明する。モータ31の回転出力は減速機32を介して減速回転されローラ2に伝達され、ローラ2(入力ギヤ35)の回転は中間ギヤ34の回転に対して所定の減速比で減速される。このとき、回転検出装置1Aを構成する第1の回転検出部40Aによってローラ2(入力ギヤ35)の回転が検出され、第2の回転検出部40Bによって中間ギヤ34の回転が検出される。入力ギヤ35と中間ギヤ34は所定の減速比で回転するため、第1の回転検出部40Aの個別回転角検出手段44Aが検出する回転角度S1と、第2の回転検出部40Bの個別回転角度検出手段44Bが検出する回転角度S2の差は、ローラ回転軸3の回転に比例して変化する。
【0035】
これらの検出される回転角度S1,S2と、回転角度差(S2−S2)の信号波形を図8に示す。同図の例では、入力ギヤ35が4回転する間に、中間ギヤ34が7回転する場合を示している。なお、これらの各信号波形図において、縦軸は検出された絶対角度(0〜360度)を、横軸は時間軸を表している。この場合、上記角度回転角度差(S2−S1)は、ローラ回転軸3(入力ギヤ35)の4回転で0〜360度の変化となる。この回転角度差(S2−S2)は回転検出装置1Aの多回転角度算出手段45によって算出される。
【0036】
したがって、このローラ駆動装置30では、ローラ2の4回転にわたる回転角度を、回転検出装置1Aによって絶対角度として検出することができる。なお、中間ギヤ34と入力ギヤ35の減速比を変えれば、検出できるローラ2の多回転検出範囲を変えることができるので、絶対角度位置の検出が必要な多回転が何回転の場合の用途においても適用することができる。
また、このローラ駆動装置30では、駆動源であるモータ31の出力するトルクを増加させるために設置される減速機32に、磁気発生手段41A,41Bや磁気アレイセンサ等からなるセンサ42A,42Bを組み込むことで、ローラ回転軸3の回転を多回転にわたって検出する回転検出装置1Aを構成しているので、設置スペースをほとんど増加させることなく、ローラ2の多回転検出機能を付加することが可能となる。
回転検出装置1Aを構成する各回転検出部40A,40Bの効果は、図1〜図6で示した先の実施形態における回転検出装置1の場合と同じである。
【0037】
なお、図7のローラ駆動装置30において、回転体であるローラ2の回転軸3を支持する軸受、および第1の回転検出部40Aおよび第2の回転検出部40Bを、その回転検出の対象となる回転体である入力ギヤ35および中間ギヤ34を支持する軸受に対して、図2の例と同様に組み付け、その軸受を回転検出装置付き軸受としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】この発明の一実施形態にかかるローラ回転検出装置付き軸受が取付けられた事務機器におけるローラ支持部の断面図である。
【図2】ローラ回転検出装置付き軸受の設置部の拡大断面図である。
【図3】同ローラ回転検出装置の概念構成を示す斜視図である。
【図4】同ローラ回転検出装置における半導体チップ上での磁気アレイセンサおよび変換回路の配置例を示す平面図である。
【図5】磁気アレイセンサにおける各磁気ラインセンサの出力波形図である。
【図6】変換回路による計算例の説明図である。
【図7】この発明の他の実施形態にかかるローラ駆動装置を備えた事務機器におけるローラ支持部の断面図である。
【図8】ローラ回転軸と中間ギヤとの回転角の関係を示す説明図である。
【図9】従来の回転検出装置付き軸受の断面図である。
【図10】光学式のローラ回転検出装置の従来例を示す断面図である。
【図11】ロータリエンコーダ式のローラ回転検出装置の従来例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0039】
1,1A…回転検出装置
2…ローラ
3…ローラ回転軸
11…磁気発生手段
13…磁気アレイセンサ
20…ローラ回転検出装置付き軸受
21…内輪
22…外輪
30…ローラ駆動装置
32…減速機
34…中間ギヤ(回転部材)
35…入力ギヤ(回転部材)
41A,41B…磁気発生手段
42A,42B…センサ
44A,44B…個別回転角度検出手段
【技術分野】
【0001】
この発明は、コピー機やプリンタ等の事務機器のローラ回転検出装置付き軸受およびローラ駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の機器における回転部の回転角度を検出する非接触式の回転検出装置として、光学式のものや磁気式のものが使用されるが、埃による影響を受けやすい光学式のものは環境の悪い条件では使いにくいことから、磁気式のものが使用されることが多い。
【0003】
図9は、磁気式の回転検出装置の従来例の一つを示す。この回転検出装置50は、軸受60の回転輪となる内輪61に設けた磁石51と、軸受60の固定輪となる外輪62に設けたホール素子やMR素子などからなるセンサ52とで構成される。内輪61の回転に伴う磁石51の磁極変化を、外輪62側のセンサ52で検出することにより内輪61の回転が検出される。
【0004】
事務機器では、良い環境下で使用できるため、光学式の回転検出装置が使用されることが多い。図10は、事務機器におけるドラムやローラ等の回転軸の回転を、従来の光学式の回転検出装置で検出する構成例を示す。この場合の光学式回転検出装置70は透過型エンコーダであって、発光素子および検出素子を搭載した検出器ブロック71と、周方向に等配した複数のスリットあるいは転写パターンを有する金属板やガラス板等からなる符号板72とで構成される。検出対象の回転軸73は軸受74を介して固定部材75に回転自在に支持され、この回転軸73に前記符号板72が取付けられている。検出器ブロック71は、その発光素子設置部と検出素子設置部とで前記符号板72を挟むようにして、固定部材75に取付けられ、回転軸73の回転に伴い符号板72を透過する透過光の有無を検出ブロック71で検出することで回転軸73の回転が検出される。
【0005】
図11は、事務機器におけるドラムやローラ等の回転軸の回転を、従来の回転検出装置が一体化されたロータリエンコーダで検出する構成例を示す。この場合、軸受80を介して固定部材81に支持された検出対象の回転軸82の軸端にロータリエンコーダ83が配置される。ロータリエンコーダ83を構成する回転検出装置は光学式のものに限らず、磁気式のものが使用される場合もある。回転軸82とロータリエンコーダ83とはカップリングで接続される場合もあるし、回転軸82をロータリエンコーダ83内に挿入する場合もある。
【0006】
このほか、回転検出装置付き軸受として、回転輪である内輪側に回転中心回りの方向性を有する磁気発生手段を配置すると共に、固定輪である外輪側に前記磁気発生手段の磁気を検出する磁気ラインセンサを、磁気発生手段に対向して配置したものが提案されている(例えば特許文献1)。
【特許文献1】特開2004−37133号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図9に示した磁気式の回転検出装置50では、
・磁石51の磁極を細かく形成する必要があり、組立時に磁石51とセンサ52とのギャップを厳しく管理しなければならない、
・分解能を上げるためには、磁石51において、より細かい磁極ピッチのパターンを形成する必要がある、
といった課題がある。
【0008】
図9のように軸受60と一体化する構造のまま回転検出装置50を小型化しようとすると、上記したように磁極ピッチが非常に微細化するため、磁石51とセンサ52を近接させないと、十分な信号出力を得ることができない。部品の製作精度や、組立精度を考慮すると、1回転当たり300パルス以上の分解能で回転検出するためには、外径40mm以上の大きさが必要となる。このため、事務機器におけるドラムなどの回転検出に使用する場合には、回転制御に必要とされる分解能を確保しつつ、コンパクト化も要請されることから、これらの要請を満たすことは困難である。
【0009】
図10に示した光学式の回転検出装置70では、符号板72における光学パターンを細かく形成することで分解能を上げて光ピックアップにより回転検出するため、符号板72の取付け精度やピックアップセンサの相対取付け位置精度を管理する必要がある。パターンを微細化せずに分解能を上げるには、回転検出装置70の径を大きくすればよいが、装置全体の寸法が大きくなってしまい小型化が困難となる。また、装置径が大きくなると符号板72の端面振れも大きくなり、それに伴うセンサギャップ変動、符号板72の回転中心の偏心、検出器ブロック71の傾きや径方向位置精度低下などにより検出信号が変動してしまうことから、組立上の精度管理または取付調整が必要となり、作業工程が複雑になってしまう。
【0010】
このような組立上の課題は、図11に示すように回転検出装置全体を一体化したロータリエンコーダ83とすることにより解決できるが、ロータリエンコーダ83の場合には、内部に組み込む構造部材が多く寸法が大きくなることから、事務機器等に組み込んで使用できるコンパクトな構造とすることが難しい。また、回転軸82とロータリエンコーダ83との結合機構が必要となるため、軸方向の収納スペースも大きくなる。さらに、ロータリエンコーダ83は機械的な負荷容量を支持できる構造になっていないので、機械的な構造部材としては使用できず、機械に別途付加する使用形態となる。
【0011】
また、従来の磁気式の回転検出装置は、絶対角を検出できるものが少なく、特に1回転までの角度しか検出できず、数回転の絶対角度が検出できるものは少ない。数回転の絶対角度の検出を可能とするためには、複雑な追加の構成が必要で、より大型化してしまう。光学式の回転検出装置においても、数回転の絶対角度を検出可能としたものは、大型化して高価になり、低コスト化の要望の厳しい事務機器用途して用いるには適さない。
【0012】
なお、特許文献1の回転検出装置付き軸受は、磁気ラインセンサを用いるものであるため種々の優れた性能を有するが、感光ドラムや送りローラ等のローラの回転軸の支持についての応用については開示されていない。
【0013】
この発明の目的は、省スペース化が可能で高分解能な絶対角度検出ができ、組立性が良く環境変化にも強い事務機器のローラ回転検出装置付き軸受を提供することである。
この発明の他の目的は、省スペース化が可能で高分解能な多回転の絶対角度検出ができ、組立性が良く環境変化にも強い事務機器のローラ駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明の事務機器のローラ回転検出装置付き軸受は、事務機器における感光ドラムまたは送りローラ等のローラの回転軸を支持する軸受であって、内輪またはローラ軸に設けられて回転中心回りの円周方向異方性を有する磁気発生手段、およびこの磁気発生手段と対向して外輪に取付けられた磁気アレイセンサを備えたものである。
【0015】
この構成によると、回転検出手段として磁気アレイセンサと磁気発生手段の組み合わせによるものを用いるため、磁界の分布測定により回転角度を検出できて、磁界の強さで検出するものと異なり、小型・高分解能となり、絶対角度の検出が可能な回転検出手段となる。また、磁界分布測定に基づく原理を利用するものであるため、永久磁石等の磁気発生手段の温度特性やギャップ設定の影響も受けず、環境変化に強いという特性が得られ、安定した検出が可能である。これにより、組付作業を簡便化できる。さらに、前記構成の回転検出手段は、回転角度を絶対値として検出してデジタル値で出力するため、アナログ信号のようなノイズの影響を受けることが少なく安定した信号伝送が行われ、信頼性を高めることができる。また、センサの信号を増幅して補正し、回転角度に換算するといった処理を、外部にAD変換回路や演算処理回路を設けて行う必要がないので、回路構成も簡単になる。その結果、省スペース化が可能で高分解能な絶対角度検出ができ、組立性が良く環境変化にも強い事務機器のローラ回転検出装置付き軸受とすることができる。
【0016】
この発明の事務機器のローラ駆動装置は、事務機器における感光ドラムまたは送りローラ等のローラを駆動する装置であって、駆動源と前記ローラとの間に、回転速度の互いに異なる複数の回転部材を有する減速機を備え、これら回転速度の互いに異なる回転部材に、回転中心回りの円周方向異方性を有する磁気発生手段を設け、これら各磁気発生手段と対向して固定部材に磁気アレイセンサをそれぞれ設け、各磁気アレイセンサの出力から対向する回転部材の回転角度を検出する複数の個別回転角度検出手段、およびこれら複数の個別回転角度検出手段の検出する回転角度から前記ローラの複数回転の回転角度を検出する多回転角度算出手段を設けたことを特徴とする。
この構成によると、減速機の回転速度の互いに異なる回転部材に対して、磁気発生手段と磁気アレイセンサとでなる回転検出手段を設けたため、これらの個別回転角度検出手段で検出された回転角度から、多回転角度算出手段により、ローラの複数回転の回転角度を絶対角度で検出することができる。各回転検出手段は、前記のように磁気発生手段と磁気アレイセンサとで磁界分布を測定するものであるため、小型・高精度化が可能である。これらのため、省スペースで、高分解能な多回転絶対角度検出ができ、また組立性が良く環境変化にも強い事務機器のローラ駆動装置とすることができる。
【発明の効果】
【0017】
この発明の事務機器のローラ回転検出装置付き軸受は、事務機器における感光ドラムまたは送りローラ等のローラの回転軸を支持する軸受であって、内輪またはローラ軸に設けられて回転中心回りの円周方向異方性を有する磁気発生手段、およびこの磁気発生手段と対向して外輪に取付けられた磁気アレイセンサを備えたものであるため、省スペース化が可能で、高分解能な絶対角度検出ができ、組立性が良く環境変化にも強い事務機器のローラ回転検出装置付き軸受とできる。
この発明の事務機器のローラ駆動装置は、事務機器における感光ドラムまたは送りローラ等のローラを駆動する装置であって、駆動源と前記ローラとの間に、回転速度の互いに異なる複数の回転部材を有する減速機を備え、これら回転速度の互いに異なる回転部材に、回転中心回りの円周方向異方性を有する磁気発生手段を設け、これら各磁気発生手段と対向して固定部材に磁気アレイセンサをそれぞれ設け、各磁気アレイセンサの出力から対向する回転部材の回転角度を検出する複数の個別回転角度検出手段、およびこれら複数の個別回転角度検出手段の検出する回転角度から前記ローラの複数回転の回転角度を検出する多回転角度算出手段を設けたため、省スペース化が可能で、高分解能な多回転の絶対角度検出ができ、組立性が良く環境変化にも強い事務機器のローラ駆動装置とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
この発明の第1の実施形態を図1ないし図6と共に説明する。図1は、この実施形態のローラ回転検出装置付き軸受が取付けられた事務機器におけるローラ支持部の断面図を示す。この事務機器のローラ回転検出装置付き軸受20は、コピー機の感光ドラムやプリンタの送りローラ等のローラ2の回転軸3を支持する軸受であって、ローラ2の回転角度を検出する回転検出装置1が一体に取付けられている。ローラ2の回転軸3は、左右の固定部材4A,4Bに跨がって回転自在に支持され、左側の固定部材4Aに設置されたモータ5により回転軸3が回転駆動される。左右の固定部材4A,4Bは、事務機器の筐体、または筐体内に設けられたフレーム等からなる。
回転軸3の右端は、上記ローラ回転検出装置付き軸受20を介して固定部材4Bに支持される。回転軸3の左端は、図示しない軸受を介して固定部材4Aに支持されている。
【0019】
図2は、前記ローラ回転検出装置付き軸受20の設置部の拡大断面図を示す。回転軸3の一端を支持する軸受20は、内輪21と外輪22の転走面間に転動体23を介在させた転がり軸受である。転動体23はボールからなり、この転がり軸受20は深溝玉軸受とされている。回転軸3が嵌合する内輪21は、転動体23を介して外輪22に支持されている。外輪22は、固定部材4Bに形成された軸受嵌合部6に嵌合されている。
【0020】
回転検出装置1は、転がり軸受20の内輪21側に配置された磁気発生手段11と、外輪22側に配置されたセンサ12とを備える。ここで言う内輪21側とは、内輪21または内輪21と共に回転する部材のことであり、外輪22側とは外輪22または外輪22に固定された部材のことである。
【0021】
磁気発生手段11は、軸受内輪21に取付けられた磁気発生手段取付部材26に取付けられている。この取付けにおいては、転がり軸受20の回転中心Oが磁気発生手段11の中心と一致するように、磁気発生手段取付部材26の回転軸3側とは反対側に向く片面中央に磁気発生手段11が固定される。これにより、磁気発生手段11は、ローラ2の回転に応じて回転し、その回転中心O回りをN磁極およびS磁極が旋回移動する。
なお、磁気発生手段1は、上記したように磁気発生手段取付部材26を介して軸受内輪21に設ける場合に限らず、ローラ回転軸3の軸端に直接に設けても良い。
【0022】
センサ12は、磁気発生手段11の磁気を感知して回転角度の情報を出力する手段である。センサ12は、軸受外輪22に取付けられたセンサ取付部材27に取付けられている。この取付けにおいては、転がり軸受20の回転中心Oの軸方向に向けて磁気発生手段11と対向するように、センサ取付部材27の回転軸3側に向く片面中央にセンサ12が固定される。
【0023】
図3は、回転検出装置1の原理構成を示す。磁気発生手段11は、発生する磁気が回転側部材の回転中心Oの回りの円周方向異方性を有するものであり、永久磁石の単体、あるいは永久磁石と磁性材の複合体からなる。ここでは、磁気発生手段11は、2つの永久磁石16を、1つの永久磁石16のN磁極がセンサ12に対向し、他の1つの永久磁石16のS磁極がセンサ12に対向し、かつこれら両磁極が前記回転中心Oで2分割されるように並べて構成される。
【0024】
センサ12は、図4に平面図で示すように、複数の磁気センサ素子13aで構成される磁気アレイセンサ13と、その磁気センサ素子13aの出力を回転信号または角度信号に変換する計算手段である変換回路14とを1つの半導体チップ15上に集積したものである。半導体チップ15上において、磁気センサ素子13aは、仮想の矩形上の4辺における各辺に沿って配置されて、4辺の磁気ラインセンサ13A〜13Dとされる。この場合に、前記矩形の中心は、転がり軸受20の回転中心Oに一致する。4辺の磁気ラインセンサ13A〜13Dは、同図の例では磁気センサ素子13aが一列に並んだものとしているが、磁気センサ素子13aが複列に平行に並んだものであっても良い。
【0025】
前記変換回路14は、磁気ラインセンサ13A〜13Dの矩形配置の内部に配置される。図2に示すように、半導体チップ15は、その素子形成面が前記磁気発生手段11と僅かなギャップを隔てて対向するように、回路基板17を介して前記センサ取付部材27に固定される。また、センサ取付部材27には、センサ12の信号を外部に取り出すケーブル28が取付けられている。
【0026】
このように、半導体チップ15上に磁気センサ素子13aと変換回路14とを集積して一体化すると、磁気センサ素子13aと変換回路14の配線が不要となり、センサ12のコンパクト化が可能で、断線等に対する信頼性も向上し、回転検出装置1の組立作業も容易になる。特に、上記したように矩形に配置された磁気ラインセンサ13A〜13Dの内部に変換回路14を配置すると、チップサイズをより小さくすることができる。
【0027】
図5および図6は、前記変換回路14による角度算出処理の説明図である。図5(A)〜図5(D)は、外輪22が回転している時の磁気ラインセンサ13A〜13Dによる出力波形図を示し、それらの横軸は各磁気ラインセンサ13A〜13Dにおける磁気センサ素子13aを、縦軸は検出磁界の強度をそれぞれ示す。
いま、図6に示す位置X1とX2に磁気ラインセンサ13A〜13Dの検出磁界のN磁極とS磁極の境界であるゼロクロス位置があるとする。この状態で、各磁気ラインセンサ13A〜13Dの出力は、図5(A)〜図5(D)に示す信号波形となる。したがって、ゼロクロス位置X1,X2は、磁気ラインセンサ13A,13Cの出力から直線近似することで算出できる。
角度計算は、次式(1)で行うことができる。
θ=tan-1(2L/b) ……(1)
ここでθは、磁気発生手段11の回転角度を絶対角度(アブソリュート値)で示した値である。2Lは、矩形に並べられる各磁気ラインセンサ13A〜13Dで構成される四角形の1辺の長さである。bは、ゼロクロス位置X1,X2間の横方向長さである。
ゼロクロス位置X1,X2が磁気ラインセンサ13B,13Dにある場合には、それらの出力から得られるゼロクロス位置データにより、上記と同様にして回転角度θが算出される。変換回路14で算出された回転角度θは前記ケーブル28により出力される。
【0028】
この構成のローラ回転検出装置付き軸受20によると、回転検出装置1として、磁気アレイセンサ13と磁気発生手段11の組み合わせによるものを用いるため、磁界の分布測定により回転角度を検出できて、磁界の強さで検出するものと異なり、小型・高分解能となり、絶対角度の検出が可能な回転検出手段となる。また、磁界分布測定に基づく原理を利用するものであるため、永久磁石等の磁気発生手段11の温度特性やギャップ設定の影響も受けず、環境変化に強いという特性が得られ、安定した検出が可能である。これにより、組付作業を簡便化できる。さらに、この構成の回転検出装置1は、回転角度を絶対値として検出してデジタル値で出力するため、アナログ信号のようなノイズの影響を受けることが少なく安定した信号伝送が行われ、信頼性を高めることができる。また、センサの信号を増幅して補正し、回転角度に換算するといった処理を、外部にAD変換回路や演算処理回路を設けて行う必要がないので、回路構成も簡単になる。その結果、省スペースが可能で高分解能な絶対角度検出ができ、組立性が良く環境変化にも強い事務機器のローラ回転検出装置付き軸受とすることができる。
【0029】
この発明の他の実施形態を図7および図8に示す。図7はこの実施形態のローラ駆動装置を備えた事務機器におけるローラ支持部の断面図を示す。この事務機器のローラ駆動装置30は、コピー機の感光ドラムやプリンタの送りローラ等のローラ2を駆動する装置であって、ローラ2の回転角度を検出する回転検出装置1Aが一体に取付けられている。ローラ2の回転軸3は、左右の固定部材7,8に跨がって回転自在に支持されている。具体的には、回転軸3の右端は転がり軸受9を介して固定部材8に支持され、回転軸3の左端も図示しない軸受を介して固定部材7に支持されている。ローラ回転軸3の左端を支持する固定部材7は断面方形のボックス状に形成され、この固定部材7の片方の側壁部7aにローラ回転軸3が支持されている。左右の固定部材7,8は、上記事務機器における筐体内に設けられたフレームまたは筐体自体からなる。
【0030】
ローラ駆動装置30は、駆動源であるモータ31と、このモータ31とローラ2の間に介在する減速機32を備える。モータ31は、前記ボックス状の固定部材7の側壁部7aに設置される。減速機32は、モータ31の出力軸31aに設けられた出力ギヤ33と、この出力ギヤ33に大径ギヤ部34aが噛み合う中間ギヤ34と、前記ローラ回転軸2の左端に設けられ前記中間ギヤ34の小径ギヤ部34bに噛み合う入力ギヤ35とで構成され、ボックス状の固定部材7の内部に配置される。すなわち、固定部材7は減速機32のギヤボックスを兼ねる。中間ギヤ34は、固定部材7の側壁部7aに回転自在に支持される。これにより、モータ出力軸31aの回転が所定の減速比で中間ギヤ34に伝達され、さらに中間ギヤ34の回転が所定の減速比で入力ギヤ35つまりローラ2に伝達される。
【0031】
入力ギヤ35が設けられるローラ回転軸3の左側の軸端には、ローラ回転軸3の回転中心O1回りの円周方向異方性を有する磁気発生手段41Aが設けられる。ローラ回転軸3が支持される前記固定部材7の側壁部7aと対向するもう片方の側壁部7bには、回路基板47を介して前記磁気発生手段41Aと軸方向に対向するセンサ42Aが設けられている。磁気発生手段41Aとセンサ42Aとで、第1の回転検出部40Aが構成される。これら磁気発生手段41Aおよびセンサ42Aの構成は、図1〜図6で示した第1の実施形態における回転検出装置1と同じであり、これにより入力ギヤ35の回転角度つまりローラ3の回転角度が検出される。センサ42Aを構成する半導体チップの素子形成面には磁気アレイセンサ(図示せず)と個別回転角度検出手段44Aの回路が集積されている。この場合の個別回転角度検出手段44Aは、第1の実施形態における変換回路14と同じものであり、ここでは説明を分かりやすくするためにセンサ42Aから分離したブロック図で示している。
【0032】
中間ギヤ34の前記固定部材7の側壁部7bと対向する片面には、中間ギヤ34の回転中心O2回りの円周方向異方性を有する磁気発生手段41Bが設けられる。固定部材7の側壁部7bには、前記回路基板47を介して前記磁気発生手段41Bと軸方向に対向するセンサ42Bが設けられおり、磁気発生手段41Bとセンサ42Bとで第2の回転検出部40Bが構成される。これら磁気発生手段41Bおよびセンサ42Bの構成も、第1の実施形態における回転検出装置1と同じであり、これにより中間ギヤ34の回転角度が検出される。センサ42Bを構成する半導体チップの素子形成面には磁気アレイセンサ(図示せず)と個別回転角度検出手段44Bの回路が集積されている。この場合の個別回転角度検出手段44Bも、第1の実施形態における変換回路14と同じものであり、ここではセンサ42Bから分離したブロック図で示している。
【0033】
上記各個別回転角度検出手段44A,44Bの検出する回転角度は多回転角度算出手段45に入力される。多回転角度算出手段45は、各個別回転角度検出手段44A,44Bの検出する回転角度から、ローラ2の複数回転の回転角度を検出するものである。このローラ駆動装置30に取付けられる上記回転検出装置1Aは、第1および第2の回転検出部40A,40Bと、前記多回転角度算出手段45とで構成される。
【0034】
次に、上記ロータ駆動装置30の動作について説明する。モータ31の回転出力は減速機32を介して減速回転されローラ2に伝達され、ローラ2(入力ギヤ35)の回転は中間ギヤ34の回転に対して所定の減速比で減速される。このとき、回転検出装置1Aを構成する第1の回転検出部40Aによってローラ2(入力ギヤ35)の回転が検出され、第2の回転検出部40Bによって中間ギヤ34の回転が検出される。入力ギヤ35と中間ギヤ34は所定の減速比で回転するため、第1の回転検出部40Aの個別回転角検出手段44Aが検出する回転角度S1と、第2の回転検出部40Bの個別回転角度検出手段44Bが検出する回転角度S2の差は、ローラ回転軸3の回転に比例して変化する。
【0035】
これらの検出される回転角度S1,S2と、回転角度差(S2−S2)の信号波形を図8に示す。同図の例では、入力ギヤ35が4回転する間に、中間ギヤ34が7回転する場合を示している。なお、これらの各信号波形図において、縦軸は検出された絶対角度(0〜360度)を、横軸は時間軸を表している。この場合、上記角度回転角度差(S2−S1)は、ローラ回転軸3(入力ギヤ35)の4回転で0〜360度の変化となる。この回転角度差(S2−S2)は回転検出装置1Aの多回転角度算出手段45によって算出される。
【0036】
したがって、このローラ駆動装置30では、ローラ2の4回転にわたる回転角度を、回転検出装置1Aによって絶対角度として検出することができる。なお、中間ギヤ34と入力ギヤ35の減速比を変えれば、検出できるローラ2の多回転検出範囲を変えることができるので、絶対角度位置の検出が必要な多回転が何回転の場合の用途においても適用することができる。
また、このローラ駆動装置30では、駆動源であるモータ31の出力するトルクを増加させるために設置される減速機32に、磁気発生手段41A,41Bや磁気アレイセンサ等からなるセンサ42A,42Bを組み込むことで、ローラ回転軸3の回転を多回転にわたって検出する回転検出装置1Aを構成しているので、設置スペースをほとんど増加させることなく、ローラ2の多回転検出機能を付加することが可能となる。
回転検出装置1Aを構成する各回転検出部40A,40Bの効果は、図1〜図6で示した先の実施形態における回転検出装置1の場合と同じである。
【0037】
なお、図7のローラ駆動装置30において、回転体であるローラ2の回転軸3を支持する軸受、および第1の回転検出部40Aおよび第2の回転検出部40Bを、その回転検出の対象となる回転体である入力ギヤ35および中間ギヤ34を支持する軸受に対して、図2の例と同様に組み付け、その軸受を回転検出装置付き軸受としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】この発明の一実施形態にかかるローラ回転検出装置付き軸受が取付けられた事務機器におけるローラ支持部の断面図である。
【図2】ローラ回転検出装置付き軸受の設置部の拡大断面図である。
【図3】同ローラ回転検出装置の概念構成を示す斜視図である。
【図4】同ローラ回転検出装置における半導体チップ上での磁気アレイセンサおよび変換回路の配置例を示す平面図である。
【図5】磁気アレイセンサにおける各磁気ラインセンサの出力波形図である。
【図6】変換回路による計算例の説明図である。
【図7】この発明の他の実施形態にかかるローラ駆動装置を備えた事務機器におけるローラ支持部の断面図である。
【図8】ローラ回転軸と中間ギヤとの回転角の関係を示す説明図である。
【図9】従来の回転検出装置付き軸受の断面図である。
【図10】光学式のローラ回転検出装置の従来例を示す断面図である。
【図11】ロータリエンコーダ式のローラ回転検出装置の従来例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0039】
1,1A…回転検出装置
2…ローラ
3…ローラ回転軸
11…磁気発生手段
13…磁気アレイセンサ
20…ローラ回転検出装置付き軸受
21…内輪
22…外輪
30…ローラ駆動装置
32…減速機
34…中間ギヤ(回転部材)
35…入力ギヤ(回転部材)
41A,41B…磁気発生手段
42A,42B…センサ
44A,44B…個別回転角度検出手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
事務機器における感光ドラムまたは送りローラ等のローラの回転軸を支持する軸受であって、内輪またはローラ軸に設けられて回転中心回りの円周方向異方性を有する磁気発生手段、およびこの磁気発生手段と対向して外輪に取付けられた磁気アレイセンサを備える事務機器のローラ回転検出装置付き軸受。
【請求項2】
事務機器における感光ドラムまたは送りローラ等のローラを駆動する装置であって、駆動源と前記ローラとの間に、回転速度の互いに異なる複数の回転部材を有する減速機を備え、これら回転速度の互いに異なる回転部材に、回転中心回りの円周方向異方性を有する磁気発生手段を設け、これら各磁気発生手段と対向して固定部材に磁気アレイセンサをそれぞれ設け、各磁気アレイセンサの出力から対向する回転部材の回転角度を検出する複数の個別回転角度検出手段、およびこれら複数の個別回転角度検出手段の検出する回転角度から前記ローラの複数回転の回転角度を検出する多回転角度算出手段を設けたことを特徴とするローラ駆動装置。
【請求項1】
事務機器における感光ドラムまたは送りローラ等のローラの回転軸を支持する軸受であって、内輪またはローラ軸に設けられて回転中心回りの円周方向異方性を有する磁気発生手段、およびこの磁気発生手段と対向して外輪に取付けられた磁気アレイセンサを備える事務機器のローラ回転検出装置付き軸受。
【請求項2】
事務機器における感光ドラムまたは送りローラ等のローラを駆動する装置であって、駆動源と前記ローラとの間に、回転速度の互いに異なる複数の回転部材を有する減速機を備え、これら回転速度の互いに異なる回転部材に、回転中心回りの円周方向異方性を有する磁気発生手段を設け、これら各磁気発生手段と対向して固定部材に磁気アレイセンサをそれぞれ設け、各磁気アレイセンサの出力から対向する回転部材の回転角度を検出する複数の個別回転角度検出手段、およびこれら複数の個別回転角度検出手段の検出する回転角度から前記ローラの複数回転の回転角度を検出する多回転角度算出手段を設けたことを特徴とするローラ駆動装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−85890(P2007−85890A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−275103(P2005−275103)
【出願日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]