説明

二層保護皮膜及び関連方法

【課題】Ni基又はCo基超合金タービン部品の耐酸化性を改良する。
【解決手段】タービン部品の表面に、白金アルミナイドの第1内側層14と、第1内側層上に設けられたMCrAlX合金(式中、MはFe、Ni及びCoから選択され、Xはイットリウム又は他の希土類元素から選択される。)を含む第2外側耐酸化性層16とを堆積することによって、タービン部品表面に二層保護皮膜12を成膜する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は広義にはガスタービンエンジン技術に関し、特に過酷な条件に曝露されるタービン部品用の保護皮膜に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンエンジンは極端な温度環境下で作動する。多くの高温ガス流路部品を構成するニッケル及びコバルト基超合金は苛酷な条件に暴露され、酸化又は腐食損傷が超合金基材内部に入り込むことがある。このように損傷した部品は、いったん取り外して補修してから供用に戻す必要がある。しかし、補修プロセスで部品の肉厚が薄くなり、結局は部品の寿命が短くなる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の例示的な実施形態では、ニッケル基又はコバルト基超合金基材上に設けられた拡散PtAl(又はPdAl)の内側層と外側耐酸化性層とからなる二層皮膜について開示する。この構成によって、後述するように、ベース超合金部品が酸化及び腐食から保護される。
【0004】
さらに具体的には、内側PtAl(又はPdAl)拡散層は二段階で形成される。まずPt(又はPd)を電気メッキ、塗布又はスラリー法などの方法で堆積し、次いでアルミニウムを気相堆積その他の適当な方法で堆積する。外側耐酸化性層は、拡散内側層上に溶射されたMCrAlY合金と別の添加元素Xとからなる。ここでMはFe、Ni及びCoから選択され、Xは1種以上の酸化促進元素から選択される。
【0005】
外側耐酸化性層とNi基又はCo基超合金基材の間に内側PtAl(又はPdAl)拡散層を追加すると、外側耐酸化性層からニッケル基又はコバルト基超合金基材へのアルミニウムの拡散を遅らせる働きをする。外側耐酸化性層から基材へのアルミニウムの拡散は外側層の酸化に対する抵抗力を減じるので、この作用は重要である。基材又は超合金母材へのアルミニウムの拡散を遅くすることによって、基材の酸化及び腐食の速度が遅くなり、部品寿命が延びる。
【0006】
そこで、本明細書では、二層保護層について開示する。本発明は、その第1の態様では、超合金基材と該基材に設けられた二層保護皮膜とを含むタービン部品であって、上記二層保護皮膜が、白金(又はパラジウム)アルミナイドの第1内側層と、第1内側層上に設けられたMCrAlX合金(式中、MはFe、Ni及びCoから選択され、Xは希土類元素から選択される。)を含む第2外側耐酸化性層とを含む二層保護皮膜を表面に有するタービン部品を提供する。
【0007】
別の態様では、本発明は、Ni基又はCo基超合金タービン部品の耐酸化性を改良する方法であって、Ni基又はCo基超合金タービン部品の表面に第1内側拡散白金アルミナイド(又はパラジウムアルミナイド)層を形成し、第1内側層上にMCrAlX合金(式中、MはFe、Ni及びCoから選択される金属であり、Xは希土類元素から選択される。)を含む第2外側層を堆積することによって、タービン部品表面に二層保護皮膜を成膜することを含む方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、添付図面を参照しながら、本発明を詳細に説明する。
【0009】
図1において、基材10は任意のガスタービン部品、特に極端な温度環境に付される高温ガス流路部品の一部とすることができる。一実施形態では、部品基材は、かかる部品によく用いられるニッケル基又はコバルト基超合金である。酸化及び腐食による損傷から保護するため、基材10上に二層皮膜12を設けられる。
【0010】
皮膜12の第1内側層又はボンドコート14は、白金(又はパラジウム)アルミナイド(PtAl又はPdAl)から構成でき、即ちPtAl又はPdAl拡散アルミナイド皮膜層とすることができる。まず、白金(又はパラジウム)成分を、電気メッキ、塗布又はスラリー法などの適当な方法で堆積する。内側層14のアルミニウム成分は、気相堆積法(アバブザパック法又は化学気相堆積(CVD)法)或いはパック粉末(拡散浸透)法によって、好ましくはアルミナイドの形態で施工される。これらの方法では、スケール形成を低減もしくは遅らせるための、Si、Hf、Re、Ru、Ge、Pt、Pd、Taその他の適当な公知の酸化促進元素を添加してもよい。酸化促進元素の添加は、アルミナイド化の前の部品にメッキするか、粉末又はスラリーの形態でアルミナイド中に混合するか、或いは気相(アバブザパック又はCVD)に添加することによって行うことができる。また、Al又はAl+テープを部品(全体又は一部)の表面に配置し、拡散させることもできる。さらに、Al又はAl+を部品上にスパッタした後、拡散させることもできる。
【0011】
基材10上に内側拡散アルミナイド層14を形成した後、皮膜12の外側保護(耐酸化性)層16を適当な溶射法で施工する。外側層16は、好ましくはMCrAlY合金に添加剤Xを追加したものである。MはFe、Ni及び/又はCoから選択される金属であり、Xはイットリウム又は他の希土類元素である。非限定的で例示的な実施形態では、10〜25重量%のCr、5〜15重量%のAl、0.1〜8重量%のX、並びに0〜65重量%のCo、0〜65重量%のNi及び0〜65重量%のFeからなる残部のMである。第2層は、真空プラズマ溶射、高速フレーム溶射(HVOF)、大気圧プラズマ溶射及びワイヤアーク溶射法などの粉末式又はワイヤ式溶射法によって施工される。
【0012】
二層皮膜12内に内側PtAl(又はPdAl)拡散層14を設けることによって、外側保護層16から基材10へのアルミニウムの拡散が遅くなる。基材へのアルミニウムの拡散を遅らせることによって、外側保護層16の耐酸化性が一段と長期間維持され、こうして基材10(ひいてはガスタービン部品)の寿命が長くなる。
【0013】
本発明の二層保護皮膜12は、タービン高温ガス流路の過酷な条件に曝露されるあらゆるニッケル基又はコバルト基超合金タービン部品に適用できることは明らかである。
【0014】
以上、本発明を現時点で最も実用的で好ましい実施形態と思料される形態について説明してきたが、本発明は開示した実施形態に限定されるものではなく、様々な変更及び均等な構成も本発明の技術的範囲に属するものとして包含する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】超合金タービン部品基材上に設けられた二層保護皮膜の断面図。
【符号の説明】
【0016】
10 基材
12 二層保護皮膜
14 第1内側層
16 外側保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超合金基材と該基材に設けられた二層保護皮膜とを含むタービン部品であって、上記二層保護皮膜が、
拡散した白金又はパラジウムとアルミニウムとからなる第1内側層と、
第1内側層上に設けられたMCrAlX合金(式中、MはFe、Ni及びCoから選択され、Xは希土類元素から選択される。)を含む第2外側耐酸化性層
とを含む二層保護皮膜を表面に有するタービン部品。
【請求項2】
前記合金基材がニッケル基又はコバルト基超合金からなる、請求項1記載のタービン部品。
【請求項3】
第1内側層が離散した白金成分及びアルミニウム成分を含む、請求項1記載のタービン部品。
【請求項4】
第1内側層が離散した白金成分及びアルミニウム成分を含む、請求項2記載のタービン部品。
【請求項5】
当該部品がガスタービンの高温ガス流路部品である、請求項1記載のタービン部品。
【請求項6】
第1内側層が1種以上の酸化促進元素を含む、請求項1記載のタービン部品。
【請求項7】
Ni基又はCo基超合金タービン部品の耐酸化性を改良する方法であって、Ni基又はCo基超合金タービン部品の表面に第1内側白金又はパラジウム拡散アルミナイド層を形成し、第1内側層上にMCrAlX合金(式中、MはFe、Ni及びCoから選択される金属であり、Xはイットリウム又は他の希土類元素から選択される。)を含む第2外側層を溶射することによって、タービン部品表面に二層保護皮膜を成膜することを含む方法。
【請求項8】
前記タービン部品表面にまず白金又はパラジウムを堆積し、次いでアルミニウムを堆積することによって、第1内側層を2つの別個の段階で形成する、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記白金又はパラジウムを電気メッキによって堆積する、請求項7記載の方法。
【請求項10】
前記アルミニウムを気相堆積法によって堆積する、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記溶射段階が、真空プラズマ溶射、高速フレーム溶射、大気プラズマ及びワイヤアーク溶射法から選択される粉末式又はワイヤ式溶射法を含む、請求項7記載の方法。
【請求項12】
前記白金又はパラジウムを塗布法又はスラリー法によって堆積する、請求項7記載の方法。
【請求項13】
前記MCrAlX合金が、10〜25重量%のCr、5〜15重量%のAl、0.1〜8重量%のX、及び各々0〜65重量%のCo、Ni及びFeからなる残部のMからなる、請求項7記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−74174(P2009−74174A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−240175(P2008−240175)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】