説明

伝導冷却パッケージレーザー及びそのパッケージ方法

【課題】伝導冷却パッケージレーザーのパッケージ方法を提供して、半導体レーザー特性が製造工程における高熱に影響されることを低減し、且つ半導体レーザーが生じる脆化・破砕の状況を低減する。
【解決手段】伝導冷却パッケージレーザー200のパッケージ方法及び構造であって、半導体レーザー素子210を第1のヒートスプレッダ230に溶接するステップと、アルミニウムニッケル多層薄膜複合材料240によって第1のヒートスプレッダ230を第2のヒートスプレッダ250に固定するステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレーザー装置及びそのパッケージ方法に関し、特に伝導冷却パッケージレーザー装置及びそのパッケージ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体レーザーは共振器を統合できるため、体積が小さく、発光効率が高いなどの特性を有する。また、発光媒体が固体で、長い寿命の特徴を持つため、近年に幅広く応用されている。
【0003】
しかしながら、半導体レーザーの放熱がその発光安定度に影響を与える要因であり、伝統的な伝導冷却パッケージレーザー装置のパッケージ方式においては、いずれもインジウム(Indium)、金錫(AuSn)、錫(Sn)、銀錫(AgSn)等の溶接材料を用い、加熱方式によって放熱フィンと放熱銅塊との間の接着パッケージ製造工程を行う。放熱フィンで高パワーレーザーが発出する発熱を放熱銅塊に転送し、大面積の放熱銅塊によって放熱を行う。
【0004】
しかしながら、放熱フィンを放熱銅塊に溶接する過程に、溶接の高熱が半導体レーザーの特性に影響を与え、例えば、反り(smile effect;微笑効果)等を生じる。また、製造工程における高熱も半導体材料に脆化・破砕の状況を生じやすい。
【0005】
このため、新規なパッケージ方式を提供し、前記欠点を解決することがとても重要な課題になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このため、本発明内容の1つの目的は、伝導冷却パッケージレーザーのパッケージ方法を提供して、半導体レーザー特性が製造工程における高熱に影響されることを低減し、且つ半導体レーザーが生じる脆化・破砕の状況を低減することにある。
【0007】
本発明内容の1つの目的は、伝導冷却パッケージレーザーを提供して、その製造工程における高熱影響によって自身の特性に影響を与えにくく、且つ脆化・破砕の状況を生じにくいものとすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1つの形態は伝導冷却パッケージレーザーのパッケージ方法を提供し、半導体レーザー素子を提供するステップと、半導体レーザー素子を第1のヒートスプレッダに溶接するステップと、アルミニウムニッケル多層薄膜複合材料によって第1のヒートスプレッダを第2のヒートスプレッダに固定するステップとを含む。
【0009】
前記本発明の実施例により、半導体レーザー素子を第1のヒートスプレッダに溶接するステップが、金錫半田材料によって半導体レーザー素子を第1のヒートスプレッダに溶接することを更に含む。
【0010】
前記本発明の実施例により、第1のヒートスプレッダを第2のヒートスプレッダに固定するステップが、溶接材料層を第1のヒートスプレッダとアルミニウムニッケル多層薄膜複合材料との間、又は第2のヒートスプレッダとアルミニウムニッケル多層薄膜複合材料との間に形成することを更に含む。
【0011】
前記本発明の実施例により、第1のヒートスプレッダを第2のヒートスプレッダに固定するステップが、該アルミニウムニッケル多層薄膜複合材料の側辺にエネルギーを加えることを更に含む。
【0012】
本発明のまた1つの形態が伝導冷却パッケージレーザーを提供する。この伝導冷却パッケージレーザーが第1のヒートスプレッダ、第2のヒートスプレッダ、アルミニウムニッケル多層薄膜複合材料及び半導体レーザー素子を含む。アルミニウムニッケル多層薄膜複合材料が第1のヒートスプレッダと第2のヒートスプレッダとの間に設けられる。半導体レーザー素子が第1のヒートスプレッダに溶接される。
【0013】
前記本発明の実施例による伝導冷却パッケージレーザーが溶接材料層を更に含み、それが第1のヒートスプレッダとアルミニウムニッケル多層薄膜複合材料との間、又は第2のヒートスプレッダとアルミニウムニッケル多層薄膜複合材料との間に位置される。
【0014】
前記本発明の実施例による伝導冷却パッケージレーザーにおいて、半導体レーザー素子が金錫半田材料によって第1のヒートスプレッダに溶接される。
【発明の効果】
【0015】
本発明がアルミニウムニッケル多層薄膜複合材料を第1のヒートスプレッダと第2のヒートスプレッダとの間に設け、その特性によって、製造工程における発熱が半導体レーザー素子に影響を与えず、これにより半導体レーザー素子の特性に対する影響を避け、且つ製造工程が簡単で、容易に実現される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
下記図面の簡単な説明は、本発明の前記または他の目的、特徴、メリット、実施形態をより分かりやすくするためのものである。
【図1】本発明の実施例の方法のフローチャートである。
【図2A】本発明による一実施例の側面模式図である。
【図2B】図2AにおけるA部の拡大図である。
【図3】アルミニウムニッケル多層薄膜複合材料の使用前と使用後の出力パワー測定図である。
【図4A】アルミニウムニッケル多層薄膜複合材料の使用前の半導体レーザーアレイ平面度測定図である。
【図4B】アルミニウムニッケル多層薄膜複合材料の使用後の半導体レーザーアレイ平面度測定図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の特徴の一つは、伝導冷却パッケージレーザーのパッケージ過程において、アルミニウムニッケル多層薄膜複合材料の特性を利用し、レーザーの特性がパッケージ製造工程における高熱に影響されることを低減することにある。本発明の精神及び応用範囲を制限しない限り、当該技術に熟知するものが本発明の精神を了解した後、本発明の応用範囲を変更でき、各種応用上の要求を満たす。
【0018】
図1を参照し、それが本発明の伝導冷却パッケージレーザーのパッケージ方法のステップフローチャートである。まず、ステップ110に、半導体レーザー素子を提供し、そしてステップ120に、半導体レーザー素子を第1のヒートスプレッダに溶接し、そしてステップ130に、アルミニウムニッケル多層薄膜複合材料によって第1のヒートスプレッダを第2のヒートスプレッダに固定する。
【0019】
ステップ120について、半導体レーザー素子を第1のヒートスプレッダに溶接するステップは、金錫半田材料によって半導体レーザー素子を第1のヒートスプレッダに溶接してもよい。
【0020】
ステップ130に用いるアルミニウムニッケル多層薄膜複合材料は複数種のナノレベル材料からなり、例えば、アルミニウムとニッケルのナノレベル薄膜で数百層を積層してなる。この薄膜複合材料は自身伝導反応を有し、最初に微小熱エネルギー又は電気パルスを加え、短時間内にアルミニウムニッケル多層薄膜複合材料に高熱を生じてはんだを融解する。この特性によって、各実施例は半導体レーザー素子を破損しない状況下で、ヒートスプレッダを直接固定する。
【0021】
また、アルミニウムニッケル多層薄膜複合材料によって第1のヒートスプレッダを第2のヒートスプレッダに固定するステップが、溶接材料層を第1のヒートスプレッダと第2のヒートスプレッダとアルミニウムニッケル多層薄膜複合材料との間にそれぞれ形成することを更に含む。即ち、アルミニウムニッケル多層薄膜複合材料と第1のヒートスプレッダ及び第2のヒートスプレッダとの間にそれぞれ溶接材料層を有する。
【0022】
固定方式については、エネルギーをアルミニウムニッケル多層薄膜複合材料の側辺に加えるように、アルミニウムニッケル多層薄膜複合材料の自身伝導反応の特性によって、短時間内に溶接材料層を融解して第1のヒートスプレッダと第2のヒートスプレッダを固定する。
【0023】
本実施例において、先端放電の方式を用い、電気パルスをアルミニウムニッケル多層薄膜複合材料に加えてそれに反応を生じさせ、溶接材料層を融解し、アルミニウムニッケル多層薄膜複合材料に初期エネルギーを加えるが、これに限られなく、熱エネルギー又は光エネルギーをその側辺又はその他のエネルギー加えの箇所に加えてもよい。更に圧力を加える方式で、第1のヒートスプレッダと第2のヒートスプレッダを固定する目的に達する。
【0024】
本発明の実施例の伝導冷却パッケージレーザー構造を更に了解するように、図2Aを参照する。図2Aは本発明の実施例の伝導冷却パッケージレーザー構造の側面模式図である。
【0025】
伝導冷却パッケージレーザー200が第1のヒートスプレッダ230、第2のヒートスプレッダ250、アルミニウムニッケル多層薄膜複合材料240及び半導体レーザー素子210を含む。アルミニウムニッケル多層薄膜複合材料240が第1のヒートスプレッダ230と第2のヒートスプレッダ250との間に設けられる。半導体レーザー素子210が第1のヒートスプレッダ230に溶接される。半導体レーザー素子210は金錫半田220によって第1のヒートスプレッダ230に溶接されてもよく、金錫半田220の共金ドット溶接の特性によって、より高い信頼性を得る。
【0026】
続いて、図2Aと図2Bを同時に参照する。図2Bは図2AのA部の拡大図である。伝導冷却パッケージレーザー200が溶接材料層242と244を更に含み、第1のヒートスプレッダ230と第2のヒートスプレッダ250及びアルミニウムニッケル多層薄膜複合材料240との間に位置する。即ち、アルミニウムニッケル多層薄膜複合材料240と第1のヒートスプレッダ230及び第2のヒートスプレッダ250との間にそれぞれ溶接材料層242と244を有する。
【0027】
本実施例において、溶接材料層242と244が半田である。第1のヒートスプレッダ230と第2のヒートスプレッダ250は金属であり、好ましいのは銅である。
【0028】
異なる実施例の設計に応じて、その他の材料を選んでもよい。例えば、第1のヒートスプレッダ230と第2のヒートスプレッダ250を異なる金属に置換してもよく、又は溶接材料層242と244の材質をインジウム(Indium)、金錫(AuSn)、錫(Sn)等に変えてもよい。インジウムはんだによって高熱伝導性及び特定の膨張係数の特性を持ち、適当な放熱材料間に良好な接合性と高熱伝導性を提供できる。言い換えれば、異なる放熱材料の特性によって、適合の応力特性を有する溶接材質を選び、溶接の強度と放熱効率を向上し、伝導冷却パッケージレーザーの寿命を延長する。
【0029】
本発明実施例中の半導体レーザー素子210は、例えば、レーザー結晶基板又はその他の面発光、辺発光半導体レーザーウエハー等の半導体レーザーである。製造工程に先端放電を用いる方式はエネルギーをアルミニウムニッケル多層薄膜複合材料の側辺に加え、初期エネルギーを供給した後、アルミニウムニッケル多層薄膜複合材料240の自身伝導反応の特性によって、極めて短時間(約数ミリ秒)に局部的な高熱を生じ、アルミニウムニッケル多層薄膜複合材料240の両面にある溶接材料層242と244を融解し、第1のヒートスプレッダ230と第2のヒートスプレッダ250を固定する。
【0030】
このアルミニウムニッケル多層薄膜複合材料240の特性によって、室温に近い環境下で製造工程を行うことができ、且つ反応を生じる時間が短く、反応区域がアルミニウムニッケル多層薄膜複合材料の付近に制限されるため、半導体レーザー素子の特性に影響を与えず、レーザー材料の完全性が向上し、且つ製造工程が簡単で、容易に実現と導入がなされる。
【0031】
続いて、図3を参照し、この図はアルミニウムニッケル多層薄膜複合材料の使用前と使用後の出力パワー測定図である。図において、実線の部分がアルミニウムニッケル多層薄膜複合材料を用いる半導体レーザー電流の出力パワーに対する測定値であり、点線の部分がアルミニウムニッケル多層薄膜複合材料を用いない半導体レーザー電流の出力パワーに対する測定値である。図によって分かるように、アルミニウムニッケル多層薄膜複合材料を用いる半導体レーザーの大部分の入力電流がいずれもよい出力パワーを有し、特に電流値がより大きい範囲に、アルミニウムニッケル多層薄膜複合材料を用いる半導体レーザー出力パワーがいずれもアルミニウムニッケル多層薄膜複合材料を用いない半導体レーザーよりもっとよい性能を有する。
【0032】
また、図4Aと図4Bを同時に参照する。図4Aと図4Bはアルミニウムニッケル多層薄膜複合材料の使用前と使用後の半導体レーザーアレイ平面度の測定図である。図4Aはアルミニウムニッケル多層薄膜複合材料の使用前の半導体レーザーアレイ平面度の測定図である。図によって分かるように、その反り(微笑効果)がとても深刻であり、レーザー光がスムーズに発光できない。これに対し、図4Bはアルミニウムニッケル多層薄膜複合材料の使用後の半導体レーザーアレイ平面度の測定図である。図によって分かるように、アルミニウムニッケル多層薄膜複合材料が大幅に反り(微笑効果)を低減し、アレイレーザーを平坦にし、各界面間の間隙(Void)の形成を低減し、放熱を更に均一にする。これにより、レーザー発光パワー及び効率が向上され、且つアレイにおいて各レーザーの発光角度が平面に近づいて、レーザーアレイの発光特性を向上する。
【0033】
公知に用いるインジウム(Indium)、金錫(AuSn)、錫(Sn)、銀錫(AgSn)等の溶接材料では、加熱方式による放熱フィン及び放熱銅塊間の接着パッケージ製造工程において、溶接の高熱が半導体レーザーの特性に影響を与えるが、それに比べて、本発明の実施例では、アルミニウムニッケル多層薄膜複合材料を用いることにより反応区域が極めて小さい範囲に制限され、且つ反応時間が非常に短く、パッケージ過程の全体において、両ヒートスプレッダを溶接するステップが半導体の特性に対し影響を与えない。
【0034】
また、適当な溶接材料とヒートスプレッダ材料を用いてもよく、それらの間により小さい応力を持ち、且つ放熱効率を向上し、伝導冷却パッケージレーザーの寿命と安定性を延長する。
【0035】
本発明が実施形態で以上のように開示されたが、しかし本発明を限定するものではなく、当該技術に熟知する者によって、本発明の精神と範囲から逸脱しない限り、各種の変更と修正することができ、このため、本発明の保護範囲は特許請求の範囲に規定される。
【符号の説明】
【0036】
100:フロー 110:ステップ 120:ステップ 130:ステップ
200:伝導冷却パッケージレーザー 210:半導体レーザー素子 220:半田 230:第1のヒートスプレッダ 240:アルミニウムニッケル多層薄膜複合材料 242:溶接材料層 244:溶接材料層 250:第2のヒートスプレッダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体レーザー素子を提供するステップと、
前記半導体レーザー素子を第1のヒートスプレッダに溶接するステップと、
アルミニウムニッケル多層薄膜複合材料によって前記第1のヒートスプレッダを第2のヒートスプレッダに固定するステップと
を含む伝導冷却パッケージレーザーのパッケージ方法。
【請求項2】
前記半導体レーザー素子を第1のヒートスプレッダに溶接するステップが、金錫半田材料によって前記半導体レーザー素子を前記第1のヒートスプレッダに溶接することを更に含む請求項1に記載のパッケージ方法。
【請求項3】
前記第1のヒートスプレッダを前記第2のヒートスプレッダに固定するステップが、溶接材料層を前記第1のヒートスプレッダと前記アルミニウムニッケル多層薄膜複合材料との間、又は前記第2のヒートスプレッダと前記アルミニウムニッケル多層薄膜複合材料との間に形成することを更に含む請求項1に記載のパッケージ方法。
【請求項4】
前記第1のヒートスプレッダを前記第2のヒートスプレッダに固定するステップが、エネルギーを前記アルミニウムニッケル多層薄膜複合材料の側辺に加えることを更に含む請求項3に記載のパッケージ方法。
【請求項5】
前記第1のヒートスプレッダを第2のヒートスプレッダに固定するステップが、電気エネルギー、熱エネルギー又は光エネルギーを前記アルミニウムニッケル多層薄膜複合材料の側辺に加えることを更に含む請求項3に記載のパッケージ方法。
【請求項6】
少なくとも、
第1のヒートスプレッダと、
第2のヒートスプレッダと、
前記第1のヒートスプレッダと前記第2のヒートスプレッダの間に設けられるアルミニウムニッケル多層薄膜複合材料と、
前記第1のヒートスプレッダに溶接される半導体レーザー素子と
を含む伝導冷却パッケージレーザー。
【請求項7】
前記第1のヒートスプレッダと前記アルミニウムニッケル多層薄膜複合材料との間、又は前記第2のヒートスプレッダと前記アルミニウムニッケル多層薄膜複合材料との間に位置される溶接材料層を更に含む請求項6に記載の伝導冷却パッケージレーザー。
【請求項8】
前記溶接材料層が半田、インジウム又は金錫である請求項7に記載の伝導冷却パッケージレーザー。
【請求項9】
前記第2のヒートスプレッダが銅金属である請求項6に記載の伝導冷却パッケージレーザー。
【請求項10】
前記半導体レーザー素子が金錫半田材料によって前記第1のヒートスプレッダに溶接される請求項6に記載の伝導冷却パッケージレーザー。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【公開番号】特開2012−80053(P2012−80053A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−256687(P2010−256687)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【出願人】(509328135)華信光電科技股▲ふん▼有限公司 (2)
【Fターム(参考)】