説明

位置決め装置

【課題】安価で簡易な構成によりスライダの位置検出を安定して行うことができるとともに、設計の自由度の高い位置決め装置を実現する。
【解決手段】互いに直交するX軸およびY軸の少なくとも1軸方向に位置制御されるスライダ1と、このスライダ1と対向する面に磁極の歯が形成されてスライダ1と平面モータを構成するプラテン10とを備えた位置決め装置において、
スライダ1の1軸方向の位置を検出するレゾルバ2と、
このレゾルバ2のスライダ1の進行方向側に隣接して配置されたレゾルバ2a,2bと、
このレゾルバ2a,2bの出力に基づいてレゾルバ2の出力を補正する補正部と、
この補正部からの出力に基づいてスライダ1の位置を算出する位置算出部と、
を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は位置決め装置に関し、詳しくは、平面モータを構成するプラテンに対するスライダの位置を制御する位置決め装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図9は従来の位置決め装置の一例を示す構成図である。四辺形のプラテン10上に四辺形のスライダA,Bが搭載されており、プラテン10上でそれぞれ個別にX軸方向およびY軸方向に位置制御される。プラテン10とスライダA,Bのそれぞれの対向面には所定ピッチの磁極の歯(以下単に歯という)が形成されており、平面モータを構成している。この平面モータを駆動することによって、スライダA,Bはそれぞれ指定された位置に移動する。
【0003】
スライダA,Bの側辺の3辺にはバーミラーが設けられている。プラテン10の各辺10a〜10dには複数のレーザ干渉計が固定配置されている。一方の対向する辺10a,10bに配置されたレーザ干渉計はスライダA,BのX軸方向の位置検出を行い、他方の対向する辺10c,10dに配置されたレーザ干渉計はスライダA,BのY軸方向の位置検出を行う。これらのレーザ干渉計は、出射したレーザ光とこのレーザ光が各スライダA,Bのバーミラーで反射されて戻ってくる反射光との干渉に基づき、スライダA,Bの位置検出を行う。下記特許文献1には、レーザ干渉計を用いてスライダの位置検出を行う位置決め装置が記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開2007−163418
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、スライダの位置検出に上記のようなレーザ干渉計を使用したシステムを採用すると、レーザ干渉計やバーミラーが高価であるため、多額の費用がかかるという問題がある。位置検出の精度や位置決め装置の規模によっては、スライダ1台につき3000万円に達する場合もある。さらに、レーザ干渉計に用いるレーザ光源は寿命が短く、1万〜数万時間程度で交換が必要となる。
【0006】
また、レーザ干渉計を使用したシステムでは、レーザ光を遮るものがあると位置検出ができないため、位置決め装置全体としての設計の自由度が低いという問題がある。たとえば図9の例では、スライダBのX軸方向の位置はプラテン10の辺10bに配置されたレーザ干渉計で検出されるが、スライダBがスライダAの背後(すなわちスライダAと辺10aの間)に回り込んでしまうと、辺10bのレーザ干渉計からのレーザ光がスライダAで遮られ、位置検出ができなくなってしまう。したがって、スライダA,Bの可動範囲は制約され、この点を考慮して位置決め装置を設計しなければならない。
【0007】
さらに、レーザ干渉計を使用したシステムでは、レーザ光を利用するため、温度や空気の揺らぎなどの周囲環境による影響が大きいという問題がある。
【0008】
本発明は、従来技術の問題をなくし、安価で簡易な構成によりスライダの位置検出を安定して行うことができるとともに、設計の自由度の高い位置決め装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記のような目的を達成するために、請求項1の発明は、
互いに直交するX軸およびY軸の少なくとも1軸方向に位置制御されるスライダと、このスライダと対向する面に磁極の歯が形成されてスライダと平面モータを構成するプラテンとを備えた位置決め装置において、
スライダの1軸方向の位置を検出する主レゾルバと、
この主レゾルバのスライダの進行方向側に隣接して配置された副レゾルバと、
この副レゾルバの出力に基づいて主レゾルバの出力を補正する補正部と、
この補正部からの出力に基づいてスライダの位置を算出する位置算出部と、
を備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明は、
請求項1に記載の位置決め装置において、補正部は、副レゾルバの出力と、この副レゾルバの出力の理論値との差分を求め、主レゾルバの出力の補正値とすることを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明は、
請求項1または2に記載の位置決め装置において、補正部は、副レゾルバが主レゾルバの現在地を通過したときに得られた出力を用いて主レゾルバの現在地における出力を補正することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、
スライダの位置検出に、レーザ干渉計ではなくレゾルバを利用することによって、安価で簡易な構成によりスライダの位置検出を安定して行うことができるとともに、設計の自由度の高い位置決め装置を実現することができる。
また、副レゾルバの出力に基づいて主レゾルバの出力を補正する補正部を備えているため、主レゾルバの出力をリアルタイムに補正して、主レゾルバによる位置検出精度を高めることができる。
また、副レゾルバは主レゾルバのスライダの進行方向側に隣接して配置されているため、主レゾルバが通過するある地点における補正値の算出に必要なデータを、副レゾルバが先に通過することで事前に取得しておくことができる。
また、主レゾルバおよび副レゾルバが隣接して配置されているため、スライダの速度や加速度などのパラメータを、主レゾルバと副レゾルバとにおいてほぼ同等とみなすことができる。
【0013】
請求項2の発明によれば、
副レゾルバの出力とこの副レゾルバの出力の理論値との差分を主レゾルバの出力の補正値とするため、スライダの位置をより正確に検出することができる。
【0014】
請求項3の発明によれば、
演算部において、副レゾルバが主レゾルバの現在地を通過したときに得られた出力を用いて主レゾルバの現在地における出力を補正するため、スライダの位置をより正確に検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明では、レゾルバを用いてスライダの位置の検出を行う。レゾルバは、コアとコイルのみで構成されているため、レーザ干渉計など他のセンサに比較して構造が簡単で安価であり、また高い耐環境性を持っている。さらに、レゾルバにはレーザ干渉計のレーザ光源のように寿命の短い部品がないため、メンテナンスが容易である。まず、レゾルバによるスライダの位置検出の動作原理について説明する。
【0016】
図1はレゾルバによる位置検出の動作原理の説明図である。レゾルバのセンサ部200は、コア201と、このコア201に巻かれたコイル202で構成される。センサ部200はプラテン10上に所定の空隙を介して配置される。コア201のプラテン10と対向する面には、プラテン10の歯と同じピッチPで歯が形成されている。
【0017】
プラテン10とコア201との間には、プラテン10の歯とコア201の歯の相対位置に応じたインピーダンスZが存在する。コイル201に励磁電圧として一定振幅の矩形電圧を入力すると、コア201が励磁されてプラテン10との間に磁気回路Bが形成される。この磁気回路BはインピーダンスZにより影響を受けるため、結果としてコイル202の端子間電圧はプラテン10とコア201の相対位置に応じて変化する。そこで、コイル202の端子間電圧を取り出し、その振幅を検出信号とする。
【0018】
図1の(a)は、コア201の歯とプラテン10の歯との対向する面積が最大、すなわち位相差が0°となる相対位置を示している。このときインピーダンスZは最小となり、検出信号は最大となる。
一方、図1の(b)は、コア201の歯とプラテン10の歯との対向する面積が最小、すなわち位相差が180°となる相対位置を示している。このときインピーダンスZは最大となり、検出信号は最小となる。
【0019】
センサ部200がプラテン10上を移動すると、インピーダンスZは正弦波状に変化する。そのため、検出信号は、図1の(c)に示すように、ピッチPの周期で正弦波状に変化する。
【0020】
レゾルバは、このようなセンサ部200を2組用意し、図2に示すようにプラテン10に対する位相を90°ずらして配置して構成する。センサ部200の一方をsin相、他方をcos相とし、これらのセンサ部から得られる検出信号のアークタンジェントを取ることによって、レゾルバのプラテン10に対する位相差、すなわちプラテン10の歯に対する相対位置が求められる。なお、プラテン10のどの歯に対する相対位置かは、検出信号が原点位置から繰り返す正弦波の山の数をカウントして求められる。
以上により、原点位置を基準として、プラテン10上におけるレゾルバの位置を精度よく検出することができる。
【実施例1】
【0021】
図3は本発明をリニアモータに適用した実施例の構成を示す図である。
プラテン10上にはスライダ1が搭載されており、プラテン10上でX軸方向に位置制御される。プラテン10とスライダ1のそれぞれの対向面にはX軸方向に一定ピッチPで歯10aが形成されており、平面モータを構成している。この平面モータを駆動することによって、スライダ1はプラテン10上の指定されたX位置に移動する。なお、本図ではプラテン10の歯を一部省略して示している。
【0022】
スライダ1は矩形状をしており、スライダ1の各辺はX軸またはこのX軸に直交するY軸のいずれかに沿うようにプラテン10上に配置されている。
【0023】
スライダ1のX軸に沿った側面の一方に、X軸方向の位置を検出するレゾルバ2が固定されている。レゾルバ2はスライダ1の側面のX軸方向の中央部に配置されている。レゾルバ2の検出値は、スライダ1のX位置として、スライダ1を駆動する平面モータにフィードバックされ、位置制御や姿勢制御に利用される。
【0024】
レゾルバ2aが、レゾルバ2の+X方向側に隣接して配置されている。また、レゾルバ2bが、レゾルバ2の−X方向側に隣接して配置されている。レゾルバ2a,2bは、レゾルバ2と構成および性能が同じものを使用する。レゾルバ2a,2bは、レゾルバ2と同様に、X軸方向の位置の検出を行う。レゾルバ2,2a,2bのプラテン10との対向面にはX軸方向に一定ピッチPで歯が形成されており、これらの歯がプラテン10の歯と対向するように配置されている。
【0025】
図4はレゾルバ2,2a,2bの検出信号の例を示す図である。
レゾルバ2,2a,2bの検出信号には、理論値から構成される理想波形が存在する。理想波形は、プラテン10やスライダ1、レゾルバ自体の設計値に基づいて算出可能である。
しかし、プラテン10やスライダ1には、製作時の機械加工に起因して、寸法や歯ピッチに個体差が存在する。また、プラテン10とスライダ1を対向させた際のギャップにも個体差が存在する。そのため、レゾルバの検出信号には、プラテン10上でのスライダ1の位置に依存した振幅変化が生じる。
また、スライダ1とプラテン10との間に構成される平面モータ自体から、スライダ1の移動速度に応じた漏れ磁束が発生する。この漏れ磁束によっても、検出信号にオフセットや振幅変化などの影響が出る。
さらに、図2ではレゾルバのsin相、cos相を1極ずつしか示していないが、各相を複数の極を組み合わせて構成する場合がある。このような場合には、各極の信号を合成する際にsin相とcos相との間に位相ずれが生じることがある。
そのため、レゾルバ2,2a,2bから実際に得られる検出信号には、理想波形と比較して、オフセットや位相ずれ、振幅変化など種々の誤差が生じている。
【0026】
図4の(a)はレゾルバの理想波形(破線)に対しオフセットが生じた例、図4の(b)は振幅変化が生じた例、図4の(c)は位相ずれが生じた例である。実際にレゾルバ2,2a,2bから得られる検出信号は、オフセットや振幅変化、位相ずれなど種々の誤差が混在し、図4の(d)のような状態となっている。したがって、レゾルバの検出信号をそのまま用いても精度の高いスライダ位置の測定はできない。
【0027】
以下に本実施例の動作について説明する。まず、レゾルバ2とレゾルバ2aについて説明する。
スライダ1が+X方向に移動中であり、レゾルバ2がプラテン10上の地点Xを現在通過しているものとする。レゾルバ2aはレゾルバ2の進行方向側に配置されているため、レゾルバ2が地点Xを通過する少し前にレゾルバ2aが地点Xを通過する。
そこで、レゾルバ2よりも少し前に地点Xを通過したレゾルバ2aの検出信号をレゾルバ2の補正用データとして取得しておき、この補正用データに基づいて地点Xにおける補正値を算出する。そして、この補正値でレゾルバ2の検出信号を補正し、スライダ1の位置検出を行う。
なお、レゾルバ2aとレゾルバ2は隣接しているため、それぞれが地点Xを通過する際のスライダの速度や加速度などのパラメータは、ほぼ同等とみなすことができる。
【0028】
レゾルバ2,2aから得られる検出信号は、図示しないA/D変換器によりデジタル化され、演算部3に入力される。
【0029】
図5は演算部3の詳細な構成を示す図である。
スライダ1の移動にともない、レゾルバ2aからの検出信号が順次メモリ3aに格納される。
【0030】
レゾルバ2が地点Xを通過した時刻をt1とし、このときレゾルバ2が取得した検出信号をSとする。
比較部3bは、時刻t1におけるスライダ1の速度や加速度に基づいて、レゾルバ2aが地点Xを通過した時刻t1’を算出する。そして、時刻t1’にレゾルバ2aが取得した検出信号SA’をメモリ3aから読み出す。比較部3bは、検出信号SA’を、レゾルバ2aが地点Xにおいて得るべき理想波形SAIと比較する。
【0031】
理想波形SAIは、プラテン10やスライダ1、レゾルバ自体の設計値に基づいて算出される理論値である。理想波形SAIは、レゾルバ2aが地点Xで静止状態にある場合に得られる理想的な波形である。理想波形SAIは、あらかじめ演算により算出しておき、比較部3bに記憶させておく。
【0032】
比較部3bは、レゾルバ2aの検出信号SA’から理想波形SAIを減算し、差分値を求める。この差分値は、レゾルバ2aが地点Xを通過した際に、レゾルバ2aの検出信号に含まれるオフセットや位相ずれ、振幅誤差などが種々混在した誤差である。比較部3bは、この差分値を、地点Xにおける種々の誤差を打ち消す補正値pとして、補正部3cに出力する。
【0033】
補正部3cにはレゾルバ2からの検出信号Sが入力される。補正部3cは、レゾルバ2の検出信号にレゾルバ2aと同じ誤差が生じているとみなし、検出信号Sから補正値pを減算する。検出信号Sから補正値pを減算することによって、検出信号Sに含まれるオフセットや位相ずれ、振幅変化などの種々の誤差が除去される。誤差が除去されたレゾルバ2の検出信号S”は、算出部3dに入力される。
【0034】
算出部3dは、補正部3cから入力された検出信号S”に基づいてレゾルバ2のX位置を算出する。算出されたレゾルバ2のX位置は演算部3の外部に出力され、スライダ1のX位置を示す位置データとして利用される。
なお、図5においては演算部3を機能ブロックで表現したが、実際にはプログラムがダウンロードされたCPUなどで構成される。
【0035】
ここまでスライダ1が+X方向に移動した場合について説明した。逆に、スライダ1が−X方向に移動する場合には、レゾルバ2bがレゾルバ2の進行方向側にあるレゾルバとなる。そこで、レゾルバ2bの検出信号を補正用データとして利用し、レゾルバ2の検出信号を補正する。
【0036】
本実施例は以上のように構成され、
スライダ1の位置検出に、レーザ干渉計ではなくレゾルバを利用することによって、安価で簡易な構成によりスライダ1の位置検出を安定して行うことができるとともに、設計の自由度の高い位置決め装置を実現することができる。
また、スライダ1の位置を検出するレゾルバ2の出力を、レゾルバ2a,2bの出力に基づいて補正することにより、レゾルバ2の出力をリアルタイムに補正して、スライダ1の位置検出を高い精度で行うことができる。
レゾルバ2aはレゾルバ2の+X方向側に隣接して配置されているため、スライダ1が+X方向に移動している場合に、レゾルバ2の補正用データをレゾルバ2aで事前に取得しておくことができる。
レゾルバ2bはレゾルバ2の−X方向側に隣接して配置されているため、スライダ1が−X方向に移動している場合に、レゾルバ2の補正用データをレゾルバ2bで事前に取得しておくことができる。
演算部3において、レゾルバ2aまたは2bがレゾルバ2の現在地Xを通過したときに得た出力を用いてレゾルバ2の出力を補正するため、スライダ1をより正確に位置制御することができる。
【0037】
また、レゾルバ2a,2bはそれぞれレゾルバ2に隣接しているため、レゾルバ2a,2bが地点Xを通過した際のスライダ1の速度や加速度などのパラメータを、レゾルバ2が地点Xを通過したときのパラメータとほぼ同等とみなすことができる。
【0038】
なお、本実施例では、レゾルバ2の両側に配置された2つのレゾルバ2a,2bのうち、スライダの進行方向前方にあるレゾルバのみから補正用データを取得した。しかし、進行方向後方にあるレゾルバからも補正用データを取得し、レゾルバ2の補正に利用してもよい。レゾルバ2bがレゾルバ2と同じ地点を通過するのを待たなければならないため、スライダ1の位置検出の処理時間は長くなるが、レゾルバ2a,2bの両方の出力に基づいてレゾルバ2の出力を補正できるため、補正の精度を高めることができる。
【0039】
また、本実施例では、スライダ1にレゾルバを3つ搭載し、うち2つを補正用データ取得用とした。しかし、スライダ1に搭載するレゾルバを2つとし、スライダ1の進行方向に応じて補正用データを取得するレゾルバを切り替えてもよい。スライダ1に搭載するレゾルバの個数を減らすことができ、スライダ1の重量軽減やコストダウンの効果がある。
【0040】
なお、本実施例におけるX軸は、請求項における1軸方向に相当する。また、レゾルバ2は請求項の主レゾルバに相当し、レゾルバ2a,2bは副レゾルバに相当する。
【実施例2】
【0041】
図6は本発明を2次元方向の平面モータに適用した実施例の構成を示す図である。
プラテン10上にはスライダ1が搭載されており、プラテン10上でX軸方向およびY軸方向に位置制御される。プラテン10とスライダ1のそれぞれの対向面にはX軸方向およびY軸方向に一定ピッチPの格子状に歯10bが形成されており、平面モータを構成している。この平面モータを駆動することによって、スライダ1はプラテン10上の指定されたX位置およびY位置に移動する。なお、本図ではプラテン10の歯10bを一部のみに示している。
【0042】
スライダ1は矩形状をしており、スライダ1の各辺はX軸またはこのX軸に直交するY軸のいずれかに沿うようにプラテン10上に配置されている。
【0043】
スライダ1の各側面の中央部にレゾルバ20〜23が固定されている。スライダ1のX軸に沿う対向辺にレゾルバ20,21が配置され、Y軸に沿う対向辺にレゾルバ22,23が配置されている。レゾルバ20,21はX軸方向の位置を検出し、レゾルバ22,23はY軸方向の位置を検出する。レゾルバ20,21に基づいてスライダ1のX位置の検出を行い、レゾルバ22,23に基づいてスライダ1のY位置の検出を行う。また、レゾルバ20〜23から得られる位置情報に基づいて、スライダ1の回転角θを検出する。スライダ1のX位置、Y位置および回転角θは、スライダ1を駆動する平面モータにフィードバックされ、位置制御や姿勢制御に利用される。
【0044】
レゾルバ20の両側にレゾルバ20a,20bが固定されている。また、レゾルバ21の両側にレゾルバ21a,21bが固定されている。レゾルバ20a,21aは、それぞれレゾルバ20,21の+X方向側に隣接している。レゾルバ20b,21bは、それぞれレゾルバ20,21の−X方向側に隣接している。
【0045】
レゾルバ22の両側にレゾルバ22a,22bが固定されている。また、レゾルバ23の両側にレゾルバ23a,23bが固定されている。レゾルバ22a,23aは、それぞれレゾルバ22,23の−Y方向側に隣接している。レゾルバ22b,23bは、それぞれレゾルバ20,21の+Y方向側に隣接している。
【0046】
レゾルバ20a,20b,21a,21bは、レゾルバ20,21と同じく、X軸方向の位置を検出するレゾルバである。
また、レゾルバ22a,22b,23a,23bは、レゾルバ22,23と同じく、Y軸方向の位置を検出するレゾルバである。
レゾルバは、すべて構成および性能が同じものを使用する。
【0047】
スライダ1の各辺において、前記実施例1におけるレゾルバ2,2a,2bと同様の処理を行い、主レゾルバの位置検出の精度を高める。
すなわち、スライダ1が+X方向に移動する場合には、レゾルバ20a,21aは、それぞれレゾルバ20,21の進行方向側に位置する。そのため、レゾルバ20,21がX軸方向のある地点Xを通過する少し前に、レゾルバ20a,21aがその地点Xを通過する。
そこで、レゾルバ20,21よりも少し前に地点Xを通過したレゾルバ20a,21aの検出信号を補正用データとして取得し、レゾルバ20,21の検出信号の補正に利用する。
なお、レゾルバ20a,21aとレゾルバ20,21はそれぞれ隣接しているため、それぞれが地点Xにおいて位置を検出する際のスライダの速度や加速度などのパラメータはほぼ同等とみなすことができる。
【0048】
逆に、スライダ1が−X方向に移動する場合には、レゾルバ20b,21bは、それぞれレゾルバ20,21の進行方向側に位置する。そのため、レゾルバ20,21がX軸方向のある地点Xを通過する少し前に、レゾルバ20b,21bがその地点Xを通過する。
そこで、レゾルバ20,21よりも少し前に地点Xを通過したレゾルバ20b,21bの検出信号を補正用データとして取得し、レゾルバ20,21の検出信号の補正に利用する。
なお、レゾルバ20b,21bとレゾルバ20,21はそれぞれ隣接しているため、それぞれが地点Xにおいて位置を検出する際のスライダの速度や加速度などのパラメータはほぼ同等とみなすことができる。
【0049】
同様に、スライダ1が−Y方向に移動する場合には、レゾルバ22a,23aは、それぞれレゾルバ22,23の進行方向側に位置する。そのため、レゾルバ22,23がY軸方向のある地点Yを通過する少し前に、レゾルバ22a,23aがその地点Yを通過する。
そこで、レゾルバ22,23よりも少し前に地点Yを通過したレゾルバ22a,23aの検出信号を補正用データとして取得し、レゾルバ22,23の検出信号の補正に利用する。
なお、レゾルバ22a,23aとレゾルバ22,23はそれぞれ隣接しているため、それぞれが地点Yにおいて位置を検出する際のスライダの速度や加速度などのパラメータはほぼ同等とみなすことができる。
【0050】
スライダ1が+Y方向に移動する場合には、レゾルバ22b,23bは、それぞれレゾルバ22,23の進行方向側に位置する。そのため、レゾルバ22,23がY軸方向のある地点Yを通過する少し前に、レゾルバ22b,23bがその地点Yを通過する。
そこで、レゾルバ22,23よりも少し前に地点Yを通過したレゾルバ22b,23bの検出信号を補正用データとして取得し、レゾルバ22,23の検出信号の補正に利用する。
なお、レゾルバ22b,23bとレゾルバ22,23はそれぞれ隣接しているため、それぞれが地点Yにおいて位置を検出する際のスライダの速度や加速度などのパラメータはほぼ同等とみなすことができる。
【0051】
図7は本実施例における演算部を示す図である。
レゾルバ20,20a,20bから得られる検出信号は、図示しないA/D変換器によりデジタル化され、演算部30に入力される。また、レゾルバ21,21a,21bから得られる検出信号は、図示しないA/D変換器によりデジタル化され、演算部31に入力される。
演算部30,31は、前記実施例1における演算部3と同じ構成のものである。演算部30,31は、スライダ1が+X方向に移動している場合にはレゾルバ20a,21aの出力を利用してレゾルバ20,21の出力を補正する。また、演算部30,31は、スライダ1が−X方向に移動している場合にはレゾルバ20b,21bの出力を利用してレゾルバ20の出力を補正する。
【0052】
同様に、レゾルバ22,22a,22bから得られる検出信号は、図示しないA/D変換器によりデジタル化され、演算部32に入力される。演算部32は、スライダ1の進行方向に応じてレゾルバ22aまたは22bから取得した検出信号を利用して、レゾルバ22の出力を補正する。
また、レゾルバ23,23a,23bから得られる検出信号は、図示しないA/D変換器によりデジタル化され、演算部33に入力される。演算部33は、スライダ1の進行方向に応じてレゾルバ23aまたは23bから取得した検出信号を利用して、レゾルバ23の出力を補正する。
【0053】
演算部30〜33は、前記実施例1と同様に、プログラムがダウンロードされたCPUなどで構成される。
【0054】
本実施例は以上のように構成され、スライダ1の複数個所に本発明を適用することによって、スライダ1のX位置、Y位置の検出精度を高めることができる。
【0055】
なお、前記実施例1および本実施例では、各レゾルバがスライダ1の側面外部に取り付けられていた。しかし、レゾルバは、スライダ1のプラテン10との対向面の平面モータが構成されていない辺縁部に埋設されていてもよい。
【0056】
図8は、本実施例の位置決め装置において、レゾルバをスライダ1のプラテン10との対向面に埋設して設けた例を示す図である。図8はスライダ1の対向面を上から透かし見た図である。
1a,1bはスライダ1のプラテン10との対向面にX軸方向に形成された歯である。また、1c,1dはスライダ1のプラテン10との対向面にY軸方向に形成された歯である。これらの歯がプラテン10の歯とそれぞれX軸方向用およびY軸方向用の平面モータを構成している。
【0057】
1eは、スライダ1のプラテン10との対向面の辺縁部であり、歯1a〜1dが形成されていない部分である。この辺縁部1eに各レゾルバを埋設する。レゾルバ20〜23をスライダ1の辺縁部1eの各辺中央に埋設する。レゾルバ20a,20bをレゾルバ20の両側に埋設する。レゾルバ21a,21bをレゾルバ21の両側に埋設する。レゾルバ22a,22bをレゾルバ22の両側に埋設する。レゾルバ23a,23bをレゾルバ23の両側に埋設する。
【0058】
レゾルバをスライダ1に埋設することによって、スライダ1の省スペース化を図ることができる。また、レゾルバをスライダ1にねじ止め固定した場合よりも、スライダに対する取り付け位置が正確になる。
【0059】
なお、図8では本実施例の位置決め装置においてレゾルバをスライダ1のプラテン10との対向面に埋設した例を示したが、前記実施例1の位置決め装置においても、レゾルバをスライダ1のプラテン10との対向面に埋設して設けてもよい。
【0060】
なお、本実施例におけるレゾルバ20〜23は請求項の主レゾルバに相当する。また、レゾルバ20a,20b,21a,21b,22a,22b,23a,23bは副レゾルバに相当する。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】レゾルバによる位置検出の動作原理を説明図である。
【図2】レゾルバの構成を示す図である。
【図3】本発明の実施例1を示す図である。
【図4】レゾルバの検出信号の例を示す図である。
【図5】演算部3の構成を示す図である。
【図6】本発明の実施例2を示す図である。
【図7】実施例2の演算部を示す図である。
【図8】実施例2の変形例を示す図である。
【図9】従来例の位置決め装置の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0062】
1 スライダ
2,2a,2b レゾルバ
3 演算部
3a メモリ
3b 比較部
3c 補正部
3d 算出部
10 プラテン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直交するX軸およびY軸の少なくとも1軸方向に位置制御されるスライダと、このスライダと対向する面に磁極の歯が形成されて前記スライダと平面モータを構成するプラテンとを備えた位置決め装置において、
前記スライダの前記1軸方向の位置を検出する主レゾルバと、
この主レゾルバの前記スライダの進行方向側に隣接して配置された副レゾルバと、
この副レゾルバの出力に基づいて前記主レゾルバの出力を補正する補正部と、
この補正部からの出力に基づいて前記スライダの位置を算出する位置算出部と、
を備えたことを特徴とする位置決め装置。
【請求項2】
前記補正部は、前記副レゾルバの出力と、この副レゾルバの出力の理論値との差分を求め、前記主レゾルバの出力の補正値とすることを特徴とする請求項1に記載の位置決め装置。
【請求項3】
前記補正部は、前記副レゾルバが前記主レゾルバの現在地を通過したときに得られた出力を用いて前記主レゾルバの現在地における出力を補正することを特徴とする請求項1または2に記載の位置決め装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図9】
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【図3】
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【図6】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−8064(P2010−8064A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−164247(P2008−164247)
【出願日】平成20年6月24日(2008.6.24)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】