説明

低コヒーレンス干渉計及び光学顕微鏡

【課題】外乱(例えば温度変化や振動)が測定精度に与える影響を抑制でき、測定レンジに依存しない高精度の測定が可能な低コヒーレンス干渉計を提供する。
【解決手段】本発明に係る低コヒーレンス干渉計1は、測定対象2の三次元形状又は膜厚測定に供される低コヒーレンス干渉計であって、白色光を射出する光源11と、白色光を測定対象に集光させ光軸方向に移動可能な対物レンズ14と、白色光を測定対象2に照射する物体光3と参照鏡17に照射する参照光4とに分波し、測定対象で反射された物体光3と参照鏡17で反射された参照光4を合波して白色干渉光を出力させる光分波合波器16と、光分波合波器16から出力された白色干渉光を検出する白色光検出器20と、対物レンズの光軸方向の移動量を測定するための移動量測定器30を備え、移動量測定器はレーザ光を射出するレーザ光源31と光軸上に形成されレーザ光を反射する反射膜32を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は低コヒーレンス干渉計及び光学顕微鏡に関する。詳しくは、測定対象の三次元形状測定又は膜厚測定に供され、対物レンズ位置の移動量測定を介して高さ方向の界面位置を精密に測定するための低コヒーレンス干渉計及び光学顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
測定対象の三次元形状測定又は膜厚測定において、対物レンズの光軸方向(高さ方向:Z方向)の基準位置からの移動量を測定する場合、Z軸ステージを高さ方向(Z方向)に移動させて対物レンズとの間隔を変化させ、測定対象に対する対物レンズ位置の移動量を測定していた。この移動量は、(A)Z軸ステージとしてステッピングモータを用いたアクチュエータ(移動レンジ約数百mm)を使用する場合は、アクチュエータに取り付けた精密リニアスケール(例えば回折格子を利用したガラススケール)により測定し、(B)Z軸ステージとしてピエゾアクチュエータ(移動レンジ約数百μm)を使用する場合は、ピエゾアクチュエータと組み合わせた静電容量センサにより測定していた。
【0003】
上記(A)の精密リニアスケールで対物レンズの移動量を測定する場合には、測定すべき移動量は対物レンズの光軸上における移動量であるのに、精密リニアスケールが設置されている位置が対物レンズの光軸から離れているため、外乱(例えば温度変化や振動)の影響により測定精度が低くなるという問題があった。また、上記(B)の静電容量センサで対物レンズの移動量を測定する場合には、静電容量センサの測定分解能は測定レンジに比例するため(一般的には0.03%程度で比例)、測定レンジが長くなると高い測定精度を保つことができないという問題、静電容量センサは対物レンズの光軸に近い位置に設置されるが厳密には光軸上ではないため外乱(例えば温度変化や振動)の影響により測定精度が低くなるという問題があった。
【0004】
ところで、光軸方向の対物レンズ移動量測定にレーザ光を使用する三次元形状測定装置が提案されている(例えば特許文献1)。この装置では、白色光源(広帯域光源)とレーザ光源(コヒーレント光源)とを共に測定対象と参照鏡に入射し、測定対象で反射された物体光と参照鏡で反射された参照光を合波してそれぞれ白色光の干渉縞とレーザ光の干渉縞を形成する。このとき、レーザ光の干渉縞によって測定対象に対する対物レンズ位置の移動量を求め、白色光の干渉縞を解析することでXY平面の各点における測定対象の表面位置(すなわち表面形状)を求める。レーザ光で対物レンズ位置の移動量を測定することで、レーザ光の高いコヒーレンス性により、測定レンジに依存しない高精度の測定ができる。
【0005】
また、レーザ光を光軸近傍で測定対象に照射することにより、アッベの原理を近似的に満たし、外乱(例えば温度変化や振動)の測定精度への影響を抑制することができる。なお、アッベの原理とは、高い測定精度を実現するためには測定物と基準(スケール)を同一の軸上に配置すべきという原理である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4180084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記レーザ光を使用する装置では測定対象にレーザ光を照射するため、測定対象の表面における傾斜、表面粗さ、吸収などの表面状態に影響を受けて、測定精度が不安定になるという問題があった。さらに、通常の三次元形状測定装置では薄膜の表側界面と裏側界面の光学的距離を測定することができるが、この装置は対物レンズ位置の移動量を測定対象で反射したレーザ光で測定するため、測定対象が薄膜である場合には、表裏界面での反射光の干渉によって測定対象に対する対物レンズ位置の移動量における測定精度が低下するという問題や、薄膜裏面での反射光の干渉縞による測定対象に対する対物レンズ位置の移動量測定の結果は、薄膜の屈折率のばらつきによって正確な値にならないという問題があった。
【0008】
本発明は、測定対象の三次元形状測定又は膜厚測定について、外乱(例えば温度変化や振動)による測定精度への影響を抑制でき、測定レンジに依存しない、かつ測定対象の表面状態に影響を受けない高精度な三次元形状測定又は膜厚測定を可能にする低コヒーレンス干渉計を提供することを目的とする。
また、対物レンズの移動量を高精度で測定可能な光学顕微鏡を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様に係る低コヒーレンス干渉計1は、例えば図1に示すように、測定対象2の三次元形状測定又は膜厚測定に供される低コヒーレンス干渉計であって、コヒーレンス長が短い低コヒーレンス光を射出する低コヒーレンス光源11と、低コヒーレンス光を測定対象2に集光させ、光軸方向に移動可能な対物レンズ14と、対物レンズ14の通過前又は通過後の低コヒーレンス光を測定対象2に照射する物体光3と参照鏡17に照射する参照光4とに分波し、かつ測定対象2で反射された物体光3と参照鏡17で反射された参照光4を合波して低コヒーレンス干渉光を出力させる光分波合波器16と、光分波合波器16から出力された低コヒーレンス干渉光を検出する低コヒーレンス光検出器20と、対物レンズ14の光軸方向の移動量を測定するための移動量測定器30を備え、移動量測定器30は、レーザ光を射出するレーザ光源31と、光軸上又は光軸の近傍に形成されレーザ光を反射する反射体32を有する。
【0010】
ここにおいて、三次元形状測定には、表面形状の測定だけでなく、測定対象の表面が透明膜の場合には膜厚分布の測定や膜内の欠陥(異物、傷など)分布の測定なども含まれる。また、コヒーレンス長が短いとは、重ね合わさった光波の可干渉距離が短いことをいい、自然光の場合は数波長程度(数μm程度)が一般的である。また、光軸方向とは、対物レンズ14の光軸をいうが、中を通る低コヒーレンス光の光軸及び低コヒーレンス光から分波された物体光3の光軸と一致する。また、反射体は反射膜、反射鏡を含み、入射光の一部を反射するものも含む。また、光軸上に形成されたとは反射体が光軸と交差することを意味する。
【0011】
本態様のように構成すると、測定対象2の三次元形状測定又は膜厚測定において、光軸上又は光軸の近傍に形成された反射体からの反射光を用いて測定するので、外乱(例えば温度変化や振動)による測定精度への影響を抑制でき、また、測定に用いるレーザ光のコヒーレンス長は数m程度から数十km程度と長いので、測定レンジに依存しない高精度の測定ができる。したがって、測定対象の三次元形状測定又は膜厚測定について、外乱(例えば温度変化や振動)による測定精度への影響を抑制でき、測定レンジに依存しない高精度の測定を可能にする低コヒーレンス干渉計を提供できる。また、対物レンズ14の表面に形成した反射体32からの反射光を用いて対物レンズ14の移動量を測定するので、測定対象表面の表面状態(表面粗さ、斜面、吸収など)による影響を受けない。
【0012】
また、本発明の第2の態様に係る低コヒーレンス干渉計1は、第1の態様に係る低コヒーレンス干渉計において、例えば図3に示すように、反射体は、光軸上で対物レンズ14に形成された反射膜32である。
【0013】
本態様のように構成すると、反射膜32は対物レンズ14に密着して形成されるので、反射膜32からのレーザ反射光を用いることにより、対物レンズ14の移動量を非常に精密に測定できる。また、光軸上に形成され、アッベの原理を満たすので外乱(例えば温度変化や振動)による測定精度への影響を受けない。
【0014】
上記課題を解決するために、本発明の第3の態様に係る低コヒーレンス干渉計1Aは、例えば図7に示すように、測定対象2の三次元形状測定又は膜厚測定に供される低コヒーレンス干渉計であって、コヒーレンス長が短い低コヒーレンス光を射出する低コヒーレンス光源11と、低コヒーレンス光を測定対象2に集光させ、光軸方向に移動可能な対物レンズ14と、対物レンズ14の通過前又は通過後の低コヒーレンス光を測定対象2に照射する物体光3と参照鏡17に照射する参照光4とに分波し、かつ測定対象2で反射された物体光3と参照鏡17で反射された参照光4を合波して低コヒーレンス干渉光を出力させる光分波合波器16と、光分波合波器16から出力された低コヒーレンス干渉光を検出する低コヒーレンス光検出器20と、対物レンズ14の光軸方向の移動量を測定するための移動量測定器30を備え、移動量測定器30は、レーザ光を射出するレーザ光源31と、対物レンズ14の近傍に設けられ対物レンズ14と一体的に移動するレーザ光を反射する反射体43を有する。
【0015】
ここにおいて、対物レンズ14の近傍とは、対物レンズの筐体40Bに接触しているか、筐体40Bから数mm以内の位置にあることを意味する。本態様のように構成すると、反射体43は対物レンズ14に対して固定された位置関係にあるので、反射体43で反射されるレーザ光を用いることにより、対物レンズ14の移動量を精密に測定できる。また、反射体43は比較的光軸に近い位置にあり、アッベの原理を近似的に満たすので外乱(例えば温度変化や振動)による測定精度への影響を抑制できる。したがって、測定対象の三次元形状測定又は膜厚測定について、温度変化や振動等の外乱による測定精度への影響を抑制でき、測定レンジに依存しない高精度の測定を可能にする低コヒーレンス干渉計を提供できる。また、対物レンズ14と一体的に移動する反射体43からの反射光を用いて対物レンズ14の移動量を測定するので、測定対象表面の表面状態(表面粗さ、斜面、吸収など)による影響を受けない。
【0016】
また、本発明の第4の態様に係る低コヒーレンス干渉計は、第3の態様に係る低コヒーレンス干渉計において、例えば図7に示すように、反射体は、対物レンズ14を当該低コヒーレンス干渉計1Aに取り付けるための対物レンズ取り付け部材40に形成された反射鏡43である。
【0017】
ここにおいて、対物レンズ取り付け部材40(40A又は40B)とは、対物レンズを当該低コヒーレンス干渉計1Aに取り付ける部材であり、対物レンズ14を保持する筐体40B及び筐体40Bを低コヒーレンス干渉計1Aに取り付けるためのレボルバ40Aを含む。本態様のように構成すると、反射鏡43は対物レンズ14の近傍にある対物レンズ取り付け部材に形成されるので、アッベの原理を近似的に満たし、外乱(例えば温度変化や振動)による測定精度への影響を抑制でき、また、反射体の取り付けを容易にできる。
【0018】
また、本発明の第5の態様に係る低コヒーレンス干渉計1は、第1ないし第4のいずれかの態様に係る低コヒーレンス干渉計において、例えば図1に示すように、移動量測定器30は、レーザ光源31から射出されたレーザ光を測定レーザ光5と参照レーザ光6に分波し、測定レーザ光5を反射体32に照射させ、反射体32で反射された測定レーザ光5を参照レーザ光6と合波し干渉させて干渉レーザ光を出力させるレーザ光干渉光学系33と、レーザ光干渉光学系33から出力された干渉レーザ光を検出するレーザ光検出器21と、レーザ光検出器21で検出された干渉レーザ光の強度の対物レンズ14の移動による変化に基づいて対物レンズ14の移動量を算出する移動量演算部23を有する。
【0019】
ここにおいて、移動量測定器30は対物レンズ14の移動量算出に係る部分であり、図1ではレーザ光源31、レーザ光干渉光学系33、レーザ光検出器21、移動量演算部23を有して構成される。また、レーザ光干渉光学系33はレーザ光の干渉に係る部分であり、図1ではビームスプリッタ35〜38(37は反射鏡でも良い)、ビームスプリッタ34、ビームスプリッタ13及び反射体32を有して構成される。また、干渉レーザ光の強度は測定レーザ光5と参照レーザ光6の光路長差に対して周期的に変化し(図4参照)、対物レンズ14の移動量に対しても周期的に変化するので、これを干渉波の波形とすると、干渉波の波数(サイクル数)と位相差の変化から移動量を算出できる。本態様のように構成すると、コヒーレンス性の高いレーザ光の干渉波の波形を用いて対物レンズの移動量を測定するので、移動量を精密に測定できる。
【0020】
また、本発明の第6の態様に係る共焦点顕微鏡は、第1ないし第5のいずれかの態様の低コヒーレンス干渉計を備える。このように構成すると、上記態様のコヒーレンス干渉計を備えるので、測定対象の三次元形状測定又は膜厚測定に用いる場合に、外乱(例えば温度変化や振動)による測定精度への影響を抑制でき、測定レンジに依存しない、かつ測定対象の表面状態に影響を受けない高精度の測定を可能にする共焦点顕微鏡を提供することができる。
【0021】
また、本発明の第7の態様に係る光学顕微鏡は、対物レンズ14の光軸方向の移動量を測定するための移動量測定器30を備え、移動量測定器30は、レーザ光を射出するレーザ光源31と、光軸上又は光軸の近傍に形成されレーザ光を反射する反射体を有する。
このように構成すると、本態様に係る移動量測定器は、外乱(例えば温度変化や振動)による測定精度への影響を抑制でき、測定レンジに依存しない高精度の測定ができ、また、測定対象表面の表面状態(表面粗さ、斜面、吸収など)による影響を受けないので、対物レンズの移動量を高精度で測定可能な光学顕微鏡を提供できる。
【0022】
また、本発明の第8の態様に係る光学顕微鏡は、対物レンズの光軸方向の移動量を測定するための移動量測定器を備え、移動量測定器は、レーザ光を射出するレーザ光源と、対物レンズの近傍に設けられ対物レンズと一体的に移動するレーザ光を反射する反射体を有する。
このように構成すると、本態様に係る移動量測定器は、外乱(例えば温度変化や振動)による測定精度への影響を抑制でき、測定レンジに依存しない高精度の測定ができ、また、測定対象表面の表面状態(表面粗さ、斜面、吸収など)による影響を受けないので、対物レンズの移動量を高精度で測定可能な光学顕微鏡を提供できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、測定対象の三次元形状測定又は膜厚測定において、外乱(例えば温度変化や振動)が測定精度に与える影響を抑制でき、測定レンジに依存しない、かつ測定対象の表面状態に影響を受けない高精度の測定を可能にする低コヒーレンス干渉計を提供することができる。
また、対物レンズの移動量を高精度で測定可能な光学顕微鏡を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施例1における低コヒーレンス干渉計の構成例を示す図である。
【図2】白色光による干渉を説明するための図である。
【図3】反射膜の模式図である。
【図4】レーザ光による干渉を説明するための図である。
【図5】実施例2における反射膜の形成を説明するための図である。
【図6】実施例3における反射膜の形成を説明するための図である。
【図7】実施例4における低コヒーレンス干渉計の構成例を示す図である。
【図8】実施例5における反射鏡の設置を説明するための図である。
【図9】実施例6における反射鏡の設置を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において、互いに同一又は相当する部分には同一符号を付し,重複した説明は省略する。
【実施例1】
【0026】
本実施例では、反射膜を対物レンズの表面に形成する例で、光分波合波器を対物レンズと一体化した干渉対物レンズを用いる例について説明する。
【0027】
図1に本実施例における低コヒーレンス干渉計1の構成例を示す。低コヒーレンス干渉計1は、測定対象2を搭載するXYステージ10と、光軸方向に移動可能な対物レンズ14と、低コヒーレンス光を射出し、対物レンズ14を通して測定対象2に照射する照射光学系と、照射光学系の途中に配置され、測定対象2に向かう低コヒーレンス光を測定対象2に照射する物体光3と参照鏡17に照射する参照光4とに分波し、かつ測定対象2で反射された物体光3と参照鏡17で反射された参照光4を合波して低コヒーレンス干渉光を出力させる光分波合波器16と、光分波合波器16から出力される低コヒーレンス干渉光を低コヒーレンス光検出器20に導く検出光学系と、対物レンズ14の光軸方向の移動量を測定するための移動量測定器30を備えて構成される。照射光学系は、低コヒーレンス光源11と、低コヒーレンス光源11から射出される低コヒーレンス光の光軸上にコリメータレンズ12、ビームスプリッタ34、ビームスプリッタ13がこの順序で配置され、また、ビームスプリッタ13で反射された低コヒーレンス光の光軸上に対物レンズ14、光分波合波器16及びXYステージ10がこの順序で配置されている。検出光学系は、光分波合波器16から出力される低コヒーレンス干渉光の光軸上に対物レンズ14、ビームスプリッタ13、結像レンズ18及び低コヒーレンス光検出器20がこの順序で配置されている。移動量測定器30は対物レンズ14の光軸方向の移動量を測定するもので、移動量測定器30はレーザ光源31、レーザ光干渉光学系33、レーザ光検出器21、移動量演算部23を有して構成される。また、レーザ光干渉光学系33はレーザ光の干渉に係る部分であり、ビームスプリッタ35〜38、ビームスプリッタ34、ビームスプリッタ13及び反射体としての反射膜32を有して構成される。以下に、本実施例における低コヒーレンス干渉計1の構成及び作用について説明する。
【0028】
測定対象2はXYステージ10上に搭載され、低コヒーレンス干渉計1により三次元形状の測定に供される。本実施例では、XYステージ10はZ方向(対物レンズ14の光軸方向)に固定されるが、XY方向(光軸に垂直な平面内)には移動可能であり、例えば、XY方向にはステッピングモータなどにより駆動される。低コヒーレンス光源11はコヒーレンス長が短い低コヒーレンス光(例としてハロゲンランプ光源)を射出する。例えば、ハロゲンランプなどの白色光源を使用できる。ハロゲンランプは近赤外光から可視光まで混合した白色光を射出し、コヒーレンス長は例えば数μm程度となる。本実施例では低コヒーレンス光としてこの白色光を使用する。かかる白色光を用いると、測定対象2に照射され反射される物体光3と参照鏡17に照射され反射される参照光4の光路長がほぼ一致した時に干渉縞が局所的に発生するので、得られた干渉縞を解析することで測定対象2の三次元形状を精密に測定できる。本実施例ではこの低コヒーレンス干渉計はマイケルソン型干渉計で構成されている。また、光源の波長帯域を制限するフィルタを用いて、波長帯域を制限した低コヒーレンス干渉計とすることもできる。
【0029】
図2は白色光による干渉を説明するための図である。横軸に光路長差を、縦軸に検出光強度を示す。物体光3と参照光4の光路長が一致した時に干渉は最大になり、最大の強度が得られる。そして、物体光3と参照光4の光路長の差がゼロである近傍で干渉は最大になり、最大の強度が得られる。そして、光路長差が白色光のコヒーレンス長以内(±lc以内)であるとき、局所的に干渉が生じ、検出光強度が光路長差の変化によって周期的に変動する干渉縞が発生する。干渉波のピークは包絡線を描き、光路長の差が大きくなるに従い徐々に小さくなり、光路長の差が±lcで干渉は消滅する。干渉縞の本数は数本程度である。
【0030】
図1に戻り、照射光学系において、低コヒーレンス光源11から射出される低コヒーレンス光の光軸上にコリメータレンズ12、ビームスプリッタ34、ビームスプリッタ13がこの順序で配置されている。また、ビームスプリッタ13で反射された低コヒーレンス光の光軸上に対物レンズ14、光分波合波器16及びXYステージ10がこの順序で配置されている。低コヒーレンス光源11から射出された低コヒーレンス光はコリメータレンズ12で略平行光束となり、ビームスプリッタ34を透過し、ビームスプリッタ13で反射され略平行光束となり、対物レンズ14に入射される。ビームスプリッタ34は後述するレーザ光干渉光学系33からの測定レーザ光5を白色光と合波するためのものである。ビームスプリッタ13は、白色光の一部を反射し、一部を透過する。例えば反射率50%、透過率50%とする。なお、低コヒーレンス光源11からの低コヒーレンス光を光ファイバを通し、光ファイバの出射端で拡散レンズによりコリメータレンズ12に投光しても良い。
【0031】
対物レンズ14は低コヒーレンス光を測定対象2に集光させる。ビームスプリッタ13から反射された低コヒーレンス光の光軸が対物レンズ14の光軸と一致している。本実施例では対物レンズ14は干渉対物レンズ15(図の一点鎖線内)の構成をしており、光分波合波器16及び参照鏡17と一体的に構成されている。光分波合波器16は、対物レンズ14を通った低コヒーレンス光を測定対象2に照射する物体光3と参照鏡17に照射する参照光4とに分波し、かつ測定対象2で反射されて戻ってきた物体光3と参照鏡17で反射されて戻ってきた参照光4を合波して低コヒーレンス干渉光を出力させる。光分波合波器16は、例えば、白色光の一部を反射し、一部を透過するビームスプリッタを使用でき、例えば反射率50%、透過率50%とする。対物レンズ14を通ってビームスプリッタ16に入射された光束は物体光3と参照光4に分波される。ビームスプリッタ16を透過した物体光3は、測定対象2に照射され、測定対象2で反射されてビームスプリッタ16に戻る。ビームスプリッタ16で反射された参照光4は、参照鏡17に照射され、参照鏡17で反射されてビームスプリッタ16に戻る。測定対象2で反射されて戻ってきた物体光3と参照鏡17で反射されて戻ってきた参照光4はビームスプリッタ16で合波されて、低コヒーレンス干渉光となり、対物レンズ14に向けて出力される。
【0032】
ビームスプリッタ16を透過して、測定対象2に照射され、測定対象2で反射されてビームスプリッタ16に戻る物体光3の光路長と、ビームスプリッタ16で反射されて、参照鏡17に照射され、参照鏡17で反射されてビームスプリッタ16に戻る参照光4の光路長がほぼ等しくなるときに物体光3は測定対象2で合焦し、参照光4は参照鏡17で合焦するようにビームスプリッタ16及び参照鏡17が配置される。物体光3の光路長と参照光4の光路長がほぼ一致する時に白色光の干渉縞が局所的に発生する。測定対象2の表面の高低差が白色光のコヒーレンス長以内であるときには、低コヒーレンス光検出器20で検出される像は面内で干渉縞が発生しているため、対物レンズ14の位置を移動せずに干渉縞解析によって表面形状を算出することできる。
【0033】
対物レンズ14は光軸方向(Z方向)に移動可能に構成される。本実施例ではXYステージ10を固定し、対物レンズ14を移動するものとする。例えば図示しないステッピングモータ、ピエゾアクチュエータ又はこれらの組み合わせによりZ方向に移動できる。ピエゾアクチュエータを用いると、移動量を測定する静電容量センサを対物レンズ14の近傍に設置できるため、精度が高い移動量測定が可能になるので好適である。これにより、測定対象表面の高低差が白色光のコヒーレンス長以上であるときには、対物レンズ14の位置を移動(走査しても良い)させながら低コヒーレンス光検出器20で検出される干渉縞の画像を撮像・収集し、これらの干渉縞に基づいて、画像の各画素における検出強度のZ方向位置依存性を解析することで、測定対象2の三次元形状を精密に測定できる。
【0034】
検出光学系において、ビームスプリッタ16から出力される低コヒーレンス干渉光の光軸上に対物レンズ14、ビームスプリッタ13、結像レンズ18及び低コヒーレンス光検出器20がこの順序で配置されている。ビームスプリッタ16から出力された低コヒーレンス干渉光は対物レンズ14を通って略平行光束となり、ビームスプリッタ13に入射される。ビームスプリッタ13を透過した白色光は結像レンズ18を通って低コヒーレンス光検出器20に入射される。低コヒーレンス光検出器20は低コヒーレンス干渉光を検出するもので、例えばCCDカメラを使用できる。一般的なCCDカメラ20は近赤外から可視光にかけて感度を有するが、低コヒーレンス干渉光(干渉縞を生じる部分)から離れた波長の光を波長帯域フィルタにより遮断しても良い。CCDカメラ20は低コヒーレンス干渉光による干渉縞画像を撮像する。CCDカメラ20は得られた干渉縞画像は解析装置22における白色光干渉解析部24で解析することにより、測定対象2の三次元形状を高精度に測定することができる。解析装置22として例えばパーソナルコンピュータ(PC)を使用できる。
【0035】
移動量測定器30は対物レンズ14の光軸方向の移動量を測定する。移動量測定器30はレーザ光源31、レーザ光干渉光学系33、レーザ光検出器21、移動量演算部23を有して構成される。また、レーザ光干渉光学系33はレーザ光の干渉に係る部分であり、ビームスプリッタ35〜38(37は反射鏡でも良い)、ビームスプリッタ34、ビームスプリッタ13及び反射体としての反射膜32を有して構成される。レーザ光源31はレーザ光を射出する。反射膜32はレーザ光を反射する。
【0036】
図3に、反射膜32の模式図を示す。反射膜32は対物レンズ14に形成される。例えば、対物レンズ14の測定対象2と反対側の面に形成される。反射膜32には一般的な誘電体多層膜(例えばダイクロイックミラーに用いられる)などを使用して、反射光の波長を選択することが好適である。例えば、対物レンズ14の表面に透明で屈折率の異なる2層が交互に積層された多層膜からなる反射膜32が形成される。多層膜は例えば蒸着により高屈折率層P1と低屈折率層P2を交互に積層して形成する。2層の膜厚を光路長がレーザ光の波長に適合するように調整することによりレーザ光が効率よく反射される。このように反射膜32は対物レンズ14に密着してその光軸上を含んで、すなわち光軸と交差するように形成されている。レーザ光は反射膜32の光軸上に局所的に照射され、アッベの原理を満たしている。したがって、外乱(例えば温度変化や振動)が測定精度に与える影響を受けにくい。また、反射膜32からの反射光を測定することにより、対物レンズ14それ自体の移動量を測定している。また、レーザ光で測定することにより、測定レンジに依存しない高精度の測定が可能である。また、対物レンズ14に形成した反射膜32からの反射光を用いて対物レンズ14の移動量を測定するので、測定対象2表面の表面状態(表面粗さ、斜面、吸収など)による影響を受けない。
【0037】
図1に戻り、レーザ光源31として例えばHe−Neレーザを使用できる。He−Neレーザ31から射出されたレーザ光(波長632.8nm)は、レーザ光干渉光学系33に入射される。He−Neレーザの代わりに各波長の半導体レーザやNd−YAGレーザ(波長1064nm)などを使用しても良い。レーザ光の波長が低コヒーレンス光の波長(干渉範囲の波長)または波長帯域を制限するフィルタの波長帯域から離れていれば、レーザ光は白色光の干渉縞に影響を及ぼさないので好適である。レーザ光干渉光学系33は、レーザ光源31から射出されたレーザ光を入射し、ビームスプリッタ35で測定レーザ光5と参照レーザ光6に分波する。参照レーザ光6はビームスプリッタ35からビームスプリッタ38に至る。測定レーザ光5はビームスプリッタ36で反射されてビームスプリッタ34で低コヒーレンス光学系に入射され、その後低コヒーレンス光と同様に(本実施例では測定レーザ光5の光軸と低コヒーレンス光の光軸は一致する)、ビームスプリッタ13で反射され、対物レンズ14に形成された反射膜32で反射され、ビームスプリッタ13、ビームスプリッタ34で反射された後に、低コヒーレンス光学系から分かれて、ビームスプリッタ36を透過後にビームスプリッタ37(反射鏡でも良い)で反射されてビームスプリッタ38に入射する。ビームスプリッタ38は測定レーザ光5と参照レーザ光6を合波して干渉レーザ光を出力する。
【0038】
干渉レーザ光はレーザ光検出器21に入射され、検出される。レーザ光検出器21は例えば光電センサを使用できる。光電センサ21での検出信号を解析装置22に送信し、解析装置22では移動量演算部23にてレーザ光の干渉縞を解析することにより、高精度で対物レンズ14の移動量を測定できる。解析装置22にはパーソナルコンピュータ(PC)を使用できる。これら、ビームスプリッタ34〜38及びビームスプリッタ13、反射膜32はレーザ光干渉光学系33を構成する。レーザ光干渉光学系33における測定レーザ光5の光路長と参照レーザ光6の光路長の差を変化させたとき、干渉レーザ光強度が周期的に変化する。これら2つの光路長が一致すると又は2つの光路長の差異がレーザ光の半波長の整数倍であるとき干渉レーザ光の強度が最大になる。また、レーザ光は反射膜32の局所に照射され、反射されれば良いが、本実施例ではビームスプリッタ13の中心に照射され、対物レンズ14の中心に向かって、光軸上を進み、光軸上で反射膜32から反射される。レーザ光を光軸上に照射する(すなわち光軸上の反射膜32で反射させる)とアッベの原理を満たすので好適であるが、厳密な光軸上でなくても光軸の近傍であればアッベの原理を近似的に満たすので、外乱(例えば温度変化や振動)が測定精度への影響を抑制できる。
【0039】
図4はレーザ光による干渉を説明するための図である。横軸にZ方向移動量を、縦軸に検出光強度を示す。干渉縞の波長は、レーザ光の波長の1/2になる。このように移動量に対して干渉縞が繰り返されるので、対物レンズ14の移動量は干渉縞の数と位相差により測定できる。すなわち、移動量測定器30は、レーザ光検出器21で検出された干渉レーザ光の検出光強度を移動量演算部23に送信し、移動量演算部23は、レーザ光検出器21で検出された干渉レーザ光の強度の対物レンズ14の移動による変化に基づいて対物レンズ14の移動量を算出する。干渉レーザ光の強度は測定レーザ光5と参照レーザ光6の光路長差に対して周期的に変化し、対物レンズ14の移動量に対しても周期的に変化するので、これを干渉波の波形とすると、干渉波の波数(サイクル数)と位相差の変化から移動量を算出できる。
【0040】
以上より、本実施例によれば、測定対象の三次元形状測定又は膜厚測定において、光軸上に形成された反射膜からの反射光を用いて測定するので、外乱(例えば温度変化や振動)による測定精度に与える影響を抑制し、また、測定に用いるレーザ光のコヒーレンス長は長いので、測定レンジに依存しない高精度の測定ができる。また、対物レンズに形成した反射膜からの反射光を用いて対物レンズの移動量を測定するので、測定対象表面の表面状態(表面粗さ、斜面、吸収など)による影響を受けない。
【実施例2】
【0041】
図5は実施例2における反射膜32の形成を説明するための図である。実施例1では対物レンズ14が1つとして説明したが、実施例2では複数のレンズで構成された対物レンズを用い、その1つの対物レンズ14Aに反射膜32を形成する例を説明する。実施例1との差異点を主に説明する。対物レンズ14の測定対象2と反対側のレンズ14Aの測定対象2と反対側の面に反射膜32を形成する。レンズ14Aの表面に透明で屈折率の異なる2層が交互に積層された多層膜からなる反射膜32が形成される。レンズ14Aは筐体40Bに保持され、筐体40Bはレボルバ40Aにより低コヒーレンス干渉計に取り付けられる。その他の構成は実施例1と同様であり、実施例1と同様の効果を奏する。
【実施例3】
【0042】
図6は実施例3における反射膜の形成を説明するための図である。実施例1では対物レンズ14にレーザ光を反射する反射膜32を形成する例を説明したが、本実施例では反射体として透明基板42に形成された多層膜32Bを用いる例を説明する。実施例1との差異点を主に説明する。例えばガラス基板などの透明基板上に屈折率の異なる2層が交互に積層された多層膜を蒸着して多層膜フィルタ42を形成する。例えば対物レンズ14を装着した筐体40Bの測定対象2と反対側にレボルバ40Aを取り付け、筐体40Bとレボルバ40Aの間に多層膜フィルタ42を挟む。これにより、多層膜フィルタ42に照射されたレーザ光は多層膜からなる反射膜32Bにより反射される。白色干渉縞近傍の波長の光は多層膜フィルタ42を透過する。透明基板に多層膜32Bを形成するので、対物レンズ14に直接形成するよりも、簡易に形成、取り扱いができる。その他の構成は実施例1と同様であり、実施例1と同様の効果を奏する。
【実施例4】
【0043】
実施例1では対物レンズ14にレーザ光を反射する反射膜32を形成する例を説明したが、本実施例では対物レンズ取り付け部材40(40A又は40B)に反射鏡43を形成する例を説明する。したがって、実施例1では反射膜32が対物レンズ14の表面に配置されるが、本実施例では反射鏡43が対物レンズ14と一体的に移動する対物レンズ取り付け部材40に配置される。
【0044】
図7に実施例4における低コヒーレンス干渉計1Aの構成例を示す。図7(a)に低コヒーレンス干渉計1Aの構成例を、図7(b)に反射鏡43の設置部分の例を示す。実施例1との差異を主に説明する。対物レンズ取り付け部材40は、対物レンズ14を低コヒーレンス干渉計1Aに取り付けるための部材であり、対物レンズ14を保持する筐体40B及び筐体40Bを低コヒーレンス干渉計1Aに取り付けるためのレボルバ40Aを含む。対物レンズ14は筐体40Bに保持され、筐体40Bは低コヒーレンス干渉計1Aに取り付られている。例えば反射鏡43はレボルバ40Aの測定対象2と反対側の面上に配置され、対物レンズ14と一体的に移動し、レーザ反射光を用いて対物レンズ14の移動量を測定するので、測定レンジに依存せず、かつ測定対象表面の表面状態による影響を受けずに、移動量を精密に測定できる。また、レボルバ40Aは物体光3の対物レンズ14への入射を妨げない位置にあるので、白色干渉縞の観察に影響を与えない。反射鏡43は対物レンズ14の光軸に対して垂直に設置され、反射鏡43に入射されたレーザ光の反射光は入射光の光路を戻る。反射鏡43は対物レンズ14の近傍に配置されるので、厳密にはアッベの原理を満たさないが、アッベの原理を近似的に満たすものといえる。したがって、外乱(例えば温度変化や振動)が測定精度への影響を抑制できる。また、反射膜32の対物レンズ14への形成に比して、レボルバ40Aへの反射鏡43の取り付けは、貼り付ければ良いので容易である。
【0045】
また、実施例1の光学系からビームスプリッタ34(図1参照)が除かれ、ビームスプリッタ13が白色光及びレーザ光を対物レンズ14の方向に向けて反射する。レーザ光はビームスプリッタ13の端の方の局所に照射され、反射鏡43に向かって反射される。このためレーザ光は対物レンズ14には入射されず、低コヒーレンス光の干渉には影響を与えない。また、反射鏡43からの反射光はビームスプリッタ13で反射されてビームスプリッタ36に向かい、対物レンズ14から出力される低コヒーレンス干渉光はビームスプリッタ13を透過して結像レンズ18に向かう。
【0046】
He−Neレーザ31から射出されたレーザ光(波長632.8nm)は、レーザ光干渉光学系33Aに入射される。He−Neレーザの代わりに各波長の半導体レーザやNd−YAGレーザ(波長1064nm)などを使用しても良い。レーザ光干渉光学系33Aは、レーザ光源31から射出されたレーザ光を入射し、ビームスプリッタ35で測定レーザ光5と参照レーザ光6に分波する。参照レーザ光6はビームスプリッタ35からビームスプリッタ38に至る。測定レーザ光5はビームスプリッタ36を透過してビームスプリッタ13で低コヒーレンス光学系に入射され、その後低コヒーレンス光の光路に沿って進む。ただし、本実施例では測定レーザ光5はビームスプリッタ13の端に近い部分に局所的に入射され、測定レーザ光5の光軸と低コヒーレンス光の光軸は平行であるが、一致しない。ビームスプリッタ13で反射された測定レーザ光5は、レボルバ40Aの測定対象2と反対側の面に設置された反射鏡43で反射された後に、ビームスプリッタ13で反射され、低コヒーレンス光学系から分かれてビームスプリッタ36及びビームスプリッタ37(反射鏡でも良い)で反射され、ビームスプリッタ38に入射する。ビームスプリッタ38は測定レーザ光5と参照レーザ光6を合波して干渉レーザ光を出力する。干渉レーザ光はレーザ光検出器21に入射され、検出される。
【0047】
移動量測定器30はレーザ光源31、レーザ光干渉光学系33、レーザ光検出器21、移動量演算部23を有して構成される。また、レーザ光干渉光学系33はレーザ光の干渉に係る部分であり、ビームスプリッタ35〜38、ビームスプリッタ13及び反射体としての反射鏡43を有して構成される。
【0048】
その他の構成は実施例1と同様であり、白色光の干渉縞が局所的に発生し、また、対物レンズ14の移動量をレボルバ40Aに配置された反射鏡43からのレーザ光の反射を測定することにより、対物レンズ14の移動量を測定できる。反射鏡43は対物レンズ14の近傍に設けられ対物レンズ14と一体的に移動する。したがって、測定対象の三次元形状測定又は膜厚測定において、外乱(例えば温度変化や振動)が測定精度に与える影響を抑制でき、また、測定レンジに依存しない高精度の測定ができる。
【実施例5】
【0049】
図8は実施例5における反射鏡43の設置を説明するための図である。実施例4では反射鏡43がレボルバ40Aに設置される例を説明したが、本実施例では反射鏡43が対物レンズ14の筐体40Bに設置される例を説明する。すなわち、反射鏡43が対物レンズ14の筐体40Bに密着した位置に固定され、レボルバ40Aに穴あけ加工がされ、ビームスプリッタ13で反射されたレーザ光は穴44を通って反射鏡43に照射され、反射鏡43から反射され、ビームスプリッタ13に戻る。なお、反射鏡43の位置を対物レンズ14と同じ高さ(Z座標)とすると、外乱(例えば温度変化や振動)が測定精度に与える影響をさらに抑制できる。その他の構成は実施例4と同様であり、実施例4と同様の効果を奏する。
【実施例6】
【0050】
図9は実施例6における反射鏡43の設置を説明するための図である。図9(a)は対物レンズ14とレボルバ40Aを側面から見た図、図9(b)はこれらを上面から見た図である。実施例4では反射鏡43がレボルバ40Aに設置される例を説明したが、本実施例では反射鏡43が対物レンズ14の筐体40Bとレボルバ40Aに挟まれて設置される例を説明する。すなわち、反射鏡43が対物レンズ14の筐体40Bに密着した位置に筐体40Bとレボルバ40Aに挟まれて設置され、レボルバ40Aに穴あけ加工がされ、ビームスプリッタ13で反射された低コヒーレンス光は穴44を通って反射鏡43に照射され、反射鏡43から反射され、ビームスプリッタ13に入射される。その他の構成は実施例4と同様であり、実施例4と同様の効果を奏する。
【0051】
また、本発明のレーザ光干渉光学系を共焦点顕微鏡に組み込むことができる。かかる共焦点顕微鏡は、本発明のコヒーレンス干渉計を備えるので、測定対象の三次元形状測定又は膜厚測定に用いる場合に、外乱(例えば温度変化や振動)による測定精度への影響を抑制でき、測定レンジに依存しない、かつ測定対象の表面状態に影響を受けない高精度の測定が可能になる。
【0052】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で実施例に種々変更を加えられることは明白である。
【0053】
例えば、以上の実施例における低コヒーレンス干渉計を構成している光学部品の位置関係や構成順序を変更可能である。例えば、実施例1または実施例4では低コヒーレンス干渉計をマイケルソン型干渉計で構成する例を説明したが、光分波合波器と対物レンズの位置の上下関係を逆にしても良い。また、低コヒーレンス干渉計を光分波合波器と対物レンズの位置の上下関係を逆にして物体光の対物レンズと参照光の対物レンズの2つの対物レンズを有するリニク型干渉計で構成することも可能であり、また、光分波合波器を対物レンズ筐体内部に形成しているミラウ型干渉計で構成することも可能である。また、実施例4では反射鏡をレボルバの上面に配置する例を説明したが、レボルバの上面から開けた穴の底に配置しても良い。この場合、穴底の位置、すなわち反射鏡43の位置を対物レンズ14と同じ高さ(Z座標)とすると、外乱(例えば温度変化や振動)による測定精度への影響を抑制できる。また、実施例1の反射膜32に代えて、対物レンズ14の光軸上で、反射鏡を対物レンズ14の表面に局所的に設置しても良い。この場合、低コヒーレンス光及び低コヒーレンス干渉光の一部が対物レンズ14の透過を妨げられるが、局所的なので、白色光の干渉縞への影響は小である。また、反射膜や反射鏡の構成や配置、その他の低コヒーレンス干渉計を構成する各部品の選択、配置などを適宜変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、三次元形状や膜厚の測定機器及び光学顕微鏡に利用される。
【符号の説明】
【0055】
1,1A 低コヒーレンス干渉計
2 測定対象
3 物体光
4 参照光
5 測定レーザ光
6 参照レーザ光
10 XYステージ
11 低コヒーレンス光源(ハロゲンランプ)
12 コリメータレンズ
13 ビームスプリッタ
14、14A 対物レンズ
15 干渉対物レンズ
16 光分波合波器(ビームスプリッタ)
17 参照鏡
18 結像レンズ
20 低コヒーレンス光検出器(CCDカメラ)
21 レーザ光検出器
22 解析装置
23 移動量演算部
24 白色光干渉解析部
30 移動量測定器
31 レーザ光源(He−Neレーザ)
32,32A,32B 反射体(反射膜)
33,33A レーザ光干渉光学系
34 ビームスプリッタ
35〜38 ビームスプリッタ
40 対物レンズ取り付け部材
40A レボルバ
40B 筐体
42 多層膜フィルタ
43 反射体(反射鏡)
44 穴
P1 高屈折率層
P2 低屈折率層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象の三次元形状測定又は膜厚測定に供される低コヒーレンス干渉計であって;
コヒーレンス長が短い低コヒーレンス光を射出する低コヒーレンス光源と;
前記低コヒーレンス光を測定対象に集光させ、光軸方向に移動可能な対物レンズと;
前記対物レンズの通過前又は通過後の前記低コヒーレンス光を前記測定対象に照射する物体光と参照鏡に照射する参照光とに分波し、かつ前記測定対象で反射された物体光と前記参照鏡で反射された参照光を合波して低コヒーレンス干渉光を出力させる光分波合波器と;
前記光分波合波器から出力された低コヒーレンス干渉光を検出する低コヒーレンス光検出器と;
前記対物レンズの前記光軸方向の移動量を測定するための移動量測定器を備え;
前記移動量測定器は、レーザ光を射出するレーザ光源と、前記光軸上又は前記光軸の近傍に形成され前記レーザ光を反射する反射体を有する;
低コヒーレンス干渉計。
【請求項2】
前記反射体は、前記光軸上で前記対物レンズに形成された反射膜である;
請求項1に記載の低コヒーレンス干渉計。
【請求項3】
測定対象の三次元形状測定又は膜厚測定に供される低コヒーレンス干渉計であって;
コヒーレンス長が短い低コヒーレンス光を射出する低コヒーレンス光源と;
前記低コヒーレンス光を測定対象に集光させ、光軸方向に移動可能な対物レンズと;
前記対物レンズの通過前又は通過後の前記低コヒーレンス光を前記測定対象に照射する物体光と参照鏡に照射する参照光とに分波し、かつ前記測定対象で反射された物体光と前記参照鏡で反射された参照光を合波して低コヒーレンス干渉光を出力させる光分波合波器と;
前記光分波合波器から出力された低コヒーレンス干渉光を検出する低コヒーレンス光検出器と;
前記対物レンズの前記光軸方向の移動量を測定するための移動量測定器を備え;
前記移動量測定器は、レーザ光を射出するレーザ光源と、前記対物レンズの近傍に設けられ前記対物レンズと一体的に移動する前記レーザ光を反射する反射体を有する;
低コヒーレンス干渉計。
【請求項4】
前記反射体は、前記対物レンズを当該低コヒーレンス干渉計に取り付けるための対物レンズ取り付け部材に形成された反射鏡である;
請求項3に記載の低コヒーレンス干渉計。
【請求項5】
前記移動量測定器は、
前記レーザ光源から射出されたレーザ光を測定レーザ光と参照レーザ光に分波し、前記測定レーザ光を前記反射体に照射させ、前記反射体で反射された測定レーザ光を前記参照レーザ光と合波し干渉させて干渉レーザ光を出力させるレーザ光干渉光学系と;
前記レーザ光干渉光学系から出力された干渉レーザ光を検出するレーザ光検出器と;
前記レーザ光検出器で検出された干渉レーザ光の強度の前記対物レンズの移動による変化に基づいて前記対物レンズの移動量を算出する移動量演算部を有する;
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の低コヒーレンス干渉計。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の低コヒーレンス干渉計を備える;
共焦点顕微鏡。
【請求項7】
対物レンズの光軸方向の移動量を測定するための移動量測定器を備え;
前記移動量測定器は、レーザ光を射出するレーザ光源と、前記光軸上又は前記光軸の近傍に形成され前記レーザ光を反射する反射体を有する;
光学顕微鏡。
【請求項8】
対物レンズの光軸方向の移動量を測定するための移動量測定器を備え;
前記移動量測定器は、レーザ光を射出するレーザ光源と、前記対物レンズの近傍に設けられ前記対物レンズと一体的に移動する前記レーザ光を反射する反射体を有する;
光学顕微鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−237183(P2010−237183A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−88480(P2009−88480)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【Fターム(参考)】