説明

低感度感光性レジスト下層膜形成組成物

【課題】 半導体装置のリソグラフィー工程においてフォトレジストの下層に使用される感光性レジスト下層膜形成組成物を提供する。
【解決手段】 感光性レジスト下層膜形成組成物を半導体基板上に塗布して焼成して感光性レジスト下層膜を形成する工程、感光性レジスト下層膜上にフォトレジスト層を形成する工程、前記レジスト下層膜とフォトレジスト層で被覆された半導体基板を第1のマスクパターンを用い第1の露光を行う工程、その後第1のマスクパターンとは異なる形状の第2のマスクパターンを用い第1の露光より低い露光量で第2の露光を行う工程、露光後に現像する工程、を含む半導体装置の製造方法に用いる上記感光性レジスト下層膜形成組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は半導体装置製造のリソグラフィープロセスにおいて使用される感光性レジスト下層膜形成組成物に係わる。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造において、フォトレジストを用いたリソグラフィーによる微細加工が行われている。微細加工はシリコンウェハー等の半導体基板上にフォトレジストの薄膜を形成し、その上にデバイスのパターンが描かれたマスクパターンを介して紫外線などの活性光線を照射し、現像し、得られたフォトレジストパターンを保護膜として基板をエッチング処理することにより、基板表面に、前記パターンに対応する微細凹凸を形成する加工法である。ところが、近年、デバイスの高集積度化が進み、使用される露光光もKrFエキシマレーザー(波長248nm)からArFエキシマレーザー(波長193nm)へと短波長化される傾向にある。しかしながら、これらのフォトリソグラフィー工程では基板からの露光光の反射による定在波の影響や、基板の段差による露光光の乱反射の影響によりフォトレジストパターンの寸法精度が低下するという問題が生ずる。そこで、この問題を解決すべく、フォトレジストと基板の間に反射防止膜(Bottom Anti−Reflective Coating、BARC)を設ける方法が広く検討されている。
【0003】
これらの反射防止膜は、その上に塗布されるフォトレジストとのインターミキシングを防ぐため、熱架橋性組成物を使用して形成されることが多い。その結果、形成された反射防止膜はフォトレジストの現像に使用されるアルカリ性現像液に不溶となる。そのため、半導体基板加工に先立つ反射防止膜の除去は、ドライエッチングによって行なうことが必要である(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
しかし、反射防止膜のドライエッチングによる除去と同時に、フォトレジストもドライエッチングにより除去される。そのため、基板加工に必要なフォトレジストの膜厚の確保が難しくなるという問題が生じる。特に解像性の向上を目的として、薄膜のフォトレジストが使用されるような場合に、重大な問題となる。
【0005】
また、半導体装置製造におけるイオン注入工程はフォトレジストパターンを鋳型として半導体基板に不純物を導入する工程である。そして、その工程では、基板表面に損傷を与えることを避けるため、フォトレジストのパターン形成に当たってはドライエッチング工程を行なうことができない。そのため、イオン注入工程のためのフォトレジストパターンの形成においては、ドライエッチングによる除去を必要とする反射防止膜をフォトレジストの下層に使用することができなかった。これまで、イオン注入工程で鋳型として用いられるフォトレジストパターンは、そのパターンの線幅が広く、基板からの露光光の反射による定在波の影響や、基板の段差による露光光の乱反射の影響を受けることが少なかったため染料入りフォトレジストやフォトレジスト上層に反射防止膜を用いることで反射による問題は解決されてきた。しかしながら近年の微細化に伴いイオン注入工程で用いられるフォトレジストにも微細なパターンが必要とされ始め、フォトレジスト下層の反射防止膜が必要となってきた。
【0006】
このようなことから、フォトレジストの現像に使用されるアルカリ性現像液に溶解し、フォトレジストと同時に現像除去することができる反射防止膜の開発が望まれていた。そして、これまでも、フォトレジストと同時に現像除去することができる反射防止膜についての検討がなされているが(例えば、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7参照。)、微細加工への適用性や、形成されるパターン形状などの点において、充分なものではなかった。
【特許文献1】米国特許第6156479号明細書
【特許文献2】特許第2686898号公報
【特許文献3】特開平9−78031号公報
【特許文献4】特開平11−72925号公報
【特許文献5】国際公開第03/057678号パンフレット
【特許文献6】国際公開第03/058345号パンフレット
【特許文献7】国際公開第05/111724号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであって、アルカリ性現像液に可溶であるレジスト下層膜、及びそのレジスト下層膜を形成するための組成物を提供することを目的とする。
【0008】
すなわち、本発明の目的は、半導体装置の製造に使用されるレジスト下層膜形成組成物を提供することにある。そして、上層に塗布、形成されるフォトレジストとのインターミキシングを起こさず、アルカリ性現像液に溶解し、フォトレジストと同時に現像除去可能なレジスト下層膜、及び該レジスト下層膜を形成するためのレジスト下層膜形成組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は第1観点として、感光性レジスト下層膜形成組成物を半導体基板上に塗布して焼成して感光性レジスト下層膜を形成する工程、感光性レジスト下層膜上にフォトレジスト層を形成する工程、前記レジスト下層膜とフォトレジスト層で被覆された半導体基板を第1のマスクパターンを用い第1の露光を行う工程、その後第1のマスクパターンとは異なる形状の第2のマスクパターンを用い第1の露光より低い露光量で第2の露光を行う工程、露光後に現像する工程、を含む半導体装置の製造方法に用いる上記感光性レジスト下層膜形成組成物、
第2観点として、第1の露光の露光量が第2の露光の露光量の2倍以上である第1観点に記載の感光性レジスト下層膜形成組成物、
第3観点として、第1の露光の露光量が50mJ/cm以上であり、第2の露光の露光量が50mJ/cm未満である第1観点又は第2観点に記載の感光性レジスト下層膜形成組成物、
第4観点として、リソグラフィー工程に用いられる感光性レジスト下層膜形成組成物が、窒素原子を含み且つ少なくとも2つのフェノール性水酸基又はカルボキシル基を含むアルカリ可溶性化合物、少なくとも2つのビニルエーテル基を有する化合物、光酸発生剤、及び溶剤を含むものである第1観点乃至第3観点のいずれか一つに記載の感光性レジスト下層膜形成組成物、
第5観点として、上記の窒素原子を含むアルカリ可溶性化合物が、ポリイミドである第4観点に記載の感光性レジスト下層膜形成組成物、
第6観点として、上記の窒素原子を含むアルカリ可溶性化合物が、ポリアミック酸である第4観点に記載の感光性レジスト下層膜形成組成物、
第7観点として、上記の窒素原子を含むアルカリ可溶性化合物が、アミノ基又はアミド基を含有する樹脂である第4観点に記載の感光性レジスト下層膜形成組成物、
第8観点として、少なくとも2つのビニルエーテル基を有する化合物が、式(1):
【0010】
【化1】

【0011】
(ただし、Rは炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜18のアリール基、炭素数6〜25のアリールアルキル基、炭素数2〜10のアルキルカルボニル基、炭素数2〜10のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数2〜10のアルキルカルボニルアミノ基、及び炭素数2〜10のアリールオキシアルキル基から選ばれる2価の有機基であり、Rは炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数6〜18のアリール基から誘導される2〜4価の有機基であり、mは2〜4の整数である。)で示される化合物である第4観点乃至第7観点のいずれか一つに記載の感光性レジスト下層膜形成組成物、
第9観点として、更に三級アミンを含むものである第4観点乃至第8観点のいずれか一つに記載の感光性レジスト下層膜形成組成物、及び
第10観点として、更に吸光性化合物を含むものである第4観点乃至第8観点のいずれか一つに記載の感光性レジスト下層膜形成組成物である。
【発明の効果】
【0012】
本発明に用いる感光性レジスト下層膜形成組成物は、窒素原子を含み且つ少なくとも2つのフェノール性水酸基又はカルボキシル基を含むアルカリ可溶性化合物、少なくとも2つのビニルエーテル基を有する化合物、光酸発生剤、及び溶剤を含む組成物である。これらの感光性レジスト下層膜形成組成物は半導体基板に塗布後、溶媒が除去される温度で焼成され、その後の焼成により熱架橋が行われる。熱架橋はアルカリ可溶性化合物中のカルボキシル基又は水酸基とビニルエーテル基含有化合物との間でアセタール結合を形成し熱架橋が形成される。その後、フォトマスクを通して露光した部分は光酸発生剤の分解によって生じた酸により、アセタール結合が切れ、カルボキシル基を生成し、アルカリ可溶性(現像液に対する溶解性)を示し、現像される。
【0013】
本発明は、感光性レジスト下層膜形成組成物を半導体基板上に塗布し焼成してレジスト下層膜を形成し、その上部にフォトレジスト層(単にレジスト層とも呼ぶ。)を形成し、レジスト下層膜とフォトレジスト層で被覆された半導体基板を第1のマスクパターンを用い第1の露光を行い、その後第1のマスクパターンとは異なる形状の第2のマスクパターンにより第1の露光より低い露光量で露光を行い、その後に現像する工程により半導体装置を製造する方法に用いる上記感光性レジスト下層膜形成組成物である。第1の露光ではレジスト下層膜に露光光が到達する程の露光であるため、第1のフォトマスクのマスクパターンに従ってレジスト下層膜とフォトレジスト層が露光される。その後に、第2の露光ではフォトレジストまで露光光が到達する程の露光であるため、第2のフォトマスクのマスクパターンに従ってフォトレジスト層のみが露光される。第1の露光と第2の露光を行った後、現像液で両層の一括現像を行うと、フォトレジスト層もレジスト下層膜も露光された部分はアルカリ溶解性を示すため、レジスト下層膜は第1のマスクパターンの形状を示し、フォトレジスト層は第2のマスクパターンの形状を示す。この現象を利用して、一括現像によりビアトレンチ形状のホールを形成することが可能である。
本発明に用いる感光性レジスト下層膜は露光光に対して低感度であることが要求され、第2の露光ではレジスト下層膜は露光されない。レジスト下層膜を低感度にするために、露光量を低くすると共に、露光により光酸発生剤から発生した酸を、架橋結合の切断よりもアルカリ可溶性樹脂中に存在する窒素原子に結合させ、カルボキシル基の生成を抑え、アルカリ溶解性を低減させることにより、結果的に低感度化させようとするものである。また、レジスト下層膜形成組成物に任意に含有されるアミン化合物もアルカリ可溶性樹脂中の窒素原子と同様な作用を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明では、感光性レジスト下層膜形成組成物を半導体基板上に塗布して焼成して感光性レジスト下層膜を形成する工程、レジスト下層膜上にフォトレジスト層を形成する工程、前記レジスト下層膜とフォトレジスト層で被覆された半導体基板を第1のマスクパターンを用い第1の露光を行う工程、その後第1のマスクパターンとは異なる形状の第2のマスクパターンを用い第1の露光より低い露光量で第2の露光を行う工程、露光後に現像する工程を含む半導体装置の製造方法に用いる上記感光性レジスト下層膜形成組成物である。
【0015】
本発明に用いる感光性レジスト下層膜形成組成物は、窒素原子を含み且つ少なくとも2つのフェノール性水酸基又はカルボキシル基を含むアルカリ可溶性化合物、少なくとも2つのビニルエーテル基を有する化合物、光酸発生剤、及び溶剤を含むものである。
【0016】
本発明の感光性レジスト下層膜形成組成物における固形分の割合は、各成分が均一に溶解している限りは特に限定はないが、例えば0.5〜50質量%であり、また、例えば1〜30質量%であり、または、5〜20質量%である。ここで固形分とは、感光性レジスト下層膜形成組成物の全成分から溶剤成分を除いたものである。
【0017】
上記の窒素原子を含み且つ少なくとも2つの水酸基又はカルボキシル基を含むアルカリ可溶性化合物の窒素原子は、アミノ基、イミド基、及びアミド基等が挙げられる。
【0018】
上記の窒素原子を含み且つ少なくとも2つの水酸基又はカルボキシル基を含むアルカリ可溶性化合物は、感光性レジスト下層膜形成組成物の固形分中の含有量は、10質量%以上であり、例えば30〜99質量%、又は50〜90質量%、又は65〜85質量%である。
【0019】
そのような化合物としては樹脂が好ましく、例えばポリイミド、ポリアミック酸、又はアミノ基若しくはアミド基を含有する樹脂が挙げられる。以下の式で表される樹脂が挙げられる。式中p1、p2、p3及びp4はそれぞれ、樹脂中の各ユニットの割合であり、その和が100%となる値を表す。それら樹脂の分子量は、重量平均分子量として、例えば、500〜500000である。感光性レジスト下層膜形成組成物の半導体基板上への塗布性などの観点から、好ましくは、例えば、500〜200000であり、または1000〜100000であり、また例えば、2000〜50000であり、または3000〜30000である。
【0020】
本発明に用いるアルカリ可溶性化合物としては、ポリアミック酸が挙げられる。ポリアミック酸は、ジアミン化合物とテトラカルボン酸またはその誘導体であるテトラカルボン酸二無水物化合物やジカルボン酸ジハロゲン化物などとを反応することにより製造することができる。また、ビスシリル化ジアミン化合物とテトラカルボン酸二無水物化合物を用いた重合によりポリアミド酸シリルエステルを合成した後、酸によりシリルエステル部分を分解しポリアミック酸を製造することができる。本発明において用いられるポリアミック酸としては、例えば、式(2)〜(14)のポリアミック酸が挙げられる。そして、例えば、式(6)のポリアミック酸は、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物化合物と3,5−ジアミノ安息香酸及び2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニルとの反応によって得ることができる。
【0021】
【化2】

【0022】
【化3】

【0023】
【化4】

【0024】
【化5】

【0025】
【化6】

【0026】
【化7】

【0027】
【化8】

【0028】
本発明に用いるアルカリ可溶性化合物としては、ポリイミドが挙げられる。ポリイミドは、テトラカルボン酸二無水物化合物と、フェノール性水酸基またはカルボキシル基を有するジアミン化合物から製造することができる。そのようなポリイミドとしては、例えば、式(16)〜(20)のポリイミドが挙げられる。そして、例えば、式(16)のポリイミドは、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物化合物と3,5−ジアミノ安息香酸及び2,2−ビス(3−アミノ−4−トルイル)ヘキサフルオロプロパンとの反応によって得ることができる。
【0029】
【化9】

【0030】
【化10】

【0031】
本発明に用いる窒素原子を含む且つ少なくとも2つのフェノール性水酸基又はカルボキシル基を含むアルカリ可溶性化合物が、アミノ基又はアミド基を含有する樹脂である。この樹脂としては以下の式(22)の樹脂が上げられる
上記のアルカリ可溶性化合物としては、式(22):
【0032】
【化11】

【0033】
で表されるユニットを有するポリマーを使用することができる。式中、R及びRはそれぞれ、水素原子またはメチル基を表す。ポリマーのアルカリ性現像液に対する溶解性の点から、式(22)のユニットはポリマーを構成する全ユニット中10%以上の割合で含まれていることが必要である。ポリマーにおける式(21)のユニットの割合は10%以上、または20%以上である。例えば10%〜100%であり、または15%〜80%、または20%〜70%、または25%〜50%である。
【0034】
式(22)で表されるユニットを有するポリマーは、N−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−メチル−N−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミドまたはN−メチル−N−(4−ヒドロキシフェニル)アクリルアミドを用い、N,N’−アゾビスイソブチロニトリル等の重合開始剤を使用した重合反応によって製造することができる。
【0035】
式(22)で表されるユニットを有するポリマーとしては、ポリマー中の式(22)の割合が前記の値を満たす範囲において、他のユニットを含むことができる。他のユニットは、ポリマー製造時に、アクリル酸エステル化合物、メタクリル酸エステル化合物、マレイミド化合物、アクリロニトリル、マレイン酸無水物、スチレン化合物及びビニル化合物等の重合可能な化合物を使用することによって、ポリマーに導入することができる。
【0036】
アクリル酸エステル化合物としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ベンジルアクリレート、ナフチルアクリレート、アントリルアクリレート、アントリルメチルアクリレート、フェニルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、モノ−(2−(アクリロイルオキシ)エチル)フタレート、2−エトキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、2−メチル−2−アダマンチルアクリレート、2−プロピル−2−アダマンチルアクリレート、8−メチル−8−トリシクロデシルアクリレート、8−エチル−8−トリシクロデシルアクリレート、及び5−アクリロイルオキシ−6−ヒドロキシノルボルネン−2−カルボキシリック−6−ラクトン等が挙げられる。
【0037】
メタクリル酸エステル化合物としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ナフチルメタクリレート、アントリルメタクリレート、アントリルメチルメタクリレート、フェニルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、メトキシトリエチレングリコールメタクリレート、モノ−(2−(メタクリロイルオキシ)エチル)フタレート、2−エトキシエチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、3−メトキシブチルメタクリレート、2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート、2−プロピル−2−アダマンチルメタクリレート、8−メチル−8−トリシクロデシルメタクリレート、8−エチル−8−トリシクロデシルメタクリレート、及び5−メタクリロイルオキシ−6−ヒドロキシノルボルネン−2−カルボキシリック−6−ラクトン等が挙げられる。
【0038】
ビニル化合物としては、ビニルエーテル、メチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、及びプロピルビニルエーテル等が挙げられる。
【0039】
スチレン化合物としては、スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、及びヒドロキシスチレン等が挙げられる。
【0040】
マレイミド化合物としては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、及びN−シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。
【0041】
本発明の感光性レジスト下層膜形成組成物における式(22)で表されるユニットを有するポリマーとしては、例えば式(23)〜(28)のポリマーが挙げられる。式中q1、q2、q3及びq4はそれぞれ、ポリマー中の各ユニットの割合であり、q1は10%以上であり、かつ、それらの和が100%となる値を表す。
【0042】
【化12】

【0043】
【化13】

【0044】
上記のアルカリ可溶性化合物として、フェノール性水酸基またはカルボキシル基を有するユニットと、フェノール性水酸基またはカルボキシル基を有さないユニットとからなる樹脂が用いられる場合、その樹脂におけるフェノール性水酸基またはカルボキシル基を有するユニットの割合としては、樹脂を構成する全ユニット中1%以上であることが好ましい。形成されたレジスト下層膜のアルカリ性現像液に対する溶解性の観点から、好ましくは、5%〜99%であり、または10%〜90%であり、または、30%〜70%である。
【0045】
また、窒素原子を含み且つ少なくとも2つのフェノール性水酸基又はカルボキシル基を含むアルカリ可溶性化合物としては、また、式(29):
【0046】
【化14】

【0047】
で表される化合物を使用することができる。式(29)中、R、R及びRは、それぞれ、式(30)で表される基を表す。式(30)中、Rは1乃至3個の水酸基を有するベンゼン環、ナフタレン環またはアントラセン環を表す。
【0048】
このような化合物は、トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレートと、1〜3個の水酸基を有する安息香酸化合物、ナフトエ酸化合物またはアントラセンカルボン酸化合物とを反応させることによって製造することができる。反応は、例えば、有機溶剤中、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド等の触媒存在下、反応時間0.5〜30時間、反応温度20〜200℃から適宜条件を選択して行なうことができる。
【0049】
1乃至3個の水酸基を有する安息香酸化合物としては例えば、4−ヒドロキシ安息香酸、2−クロロ−4−ヒドロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ−5−メチル安息香酸、3−ヒドロキシ安息香酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシ安息香酸、3,5−ジブロモ−2,4−ジヒドロキシ安息香酸、3−ヨ−ド−5−ニトロ−4−ヒドロキシ安息香酸、3,5−ジヨード−2−ヒドロキシ安息香酸、2,4,6−トリヨード−3−ヒドロキシ安息香酸、2,4,6−トリブロモ−3−ヒドロキシ安息香酸、3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸及び2−ブロモ−4,6−ジメチル−3−ヒドロキシ安息香酸等が挙げられる。
【0050】
1乃至3個の水酸基を有するナフトエ酸化合物としては例えば、2−ヒドロキシ−1−ナフトエ酸、7−ヒドロキシ−1−ナフトエ酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、1−ヒドロキシ−4−フェニル−3−ナフトエ酸、5−ヒドロキシ−1−ナフトエ酸、3,7−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸、2,4−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸及び1,6−ジブロモ−2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸等が挙げられる。
【0051】
1乃至3個の水酸基を有するアントラセンカルボン酸化合物としては例えば、10−ヒドロキシ−アントラセン−9−カルボン酸等が挙げられる。
【0052】
本発明に用いられる式(29)で表される化合物としては、例えば、式(31)〜(34)の化合物が挙げられる。
【0053】
【化15】

【0054】
【化16】

【0055】
本願発明に用いられる少なくとも2つのビニルエーテル基を有する化合物は、2乃至20個、3乃至10個または4乃至6個のビニルエーテル基を有する化合物が好ましい。
【0056】
本発明で用いられる少なくとも二つのビニルエーテル基を有する化合物には特に限定はないが、例えばビス(4−(ビニロキシメチル)シクロヘキシルメチル)グルタレート、トリ(エチレングリコール)ジビニルエーテル、アジピン酸ジビニルエステル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリス(4−ビニロキシ)ブチルトリメリテート、ビス(4−(ビニロキシ)ブチル)テレフタレート、ビス(4−(ビニロキシ)ブチルイソフタレート、及びシクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル等を挙げることができる。これらの化合物は一種の使用でもよく、また、二種以上を同時に使用することができる。上記の少なくとも2つのビニルエーテル基を有する化合物は、アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して10〜150質量部、又は20〜100質量部、又は30〜80質量部である。10質量部未満の場合、レジスト下層膜の硬化が不十分でフォトレジストとインターミキシングすることがある。また、150質量部を超える場合も架橋密度の低下によりフォトレジストとインターミキシングする可能性がある。
【0057】
本発明の感光性レジスト下層膜形成組成物は光酸発生剤を含む。光酸発生剤としては、露光に使用される光の照射によって酸を発生する化合物が挙げられる。例えば、ジアゾメタン化合物、オニウム塩化合物、スルホンイミド化合物、ニトロベンジル化合物、ベンゾイントシレート化合物、ハロゲン含有トリアジン化合物、及びシアノ基含有オキシムスルホネート化合物等の光酸発生剤が挙げられる。これらの中でオニウム塩化合物の光酸発生剤が好適である。
【0058】
オニウム塩化合物の具体例としては、例えば、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフエート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムノナフルオロノルマルブタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムパーフルオロノルマルオクタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムカンファースルホネート、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムカンファースルホネート及びビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート等のヨードニウム塩化合物、及びトリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロノルマルブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムカンファースルホネート及びトリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート等のスルホニウム塩化合物等が挙げられる。
【0059】
スルホンイミド化合物の具体例としては、例えば、N−(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(ノナフルオロ−ノルマルブタンスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(カンファースルホニルオキシ)スクシンイミド及びN−(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ナフタルイミド等が挙げられる。上記の光酸発生剤はアルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、1〜120質量部、又は2〜10質量部である。光酸発生剤の使用割合が1質量部未満の場合には、発生する酸の割合が少なくなり、その結果、露光部のアルカリ性現像液に対する溶解性が低下し現像後に残渣が存在することがある。20質量部を超える場合にはレジスト下層膜形成組成物の保存安定性が低下することがあり、その結果、フォトレジストの形状に影響を与えることがある。
【0060】
本発明の感光性レジスト下層膜形成組成物は、吸光性化合物を含有することができる。
【0061】
吸光性化合物としては、使用する露光波長に吸収をもつ化合物であれば特に限定されるものではない。アントラセン環、ナフタレン環、ベンゼン環、キノリン環、トリアジン環等の芳香環構造を有する化合物が好ましく使用される。また、レジスト下層膜のアルカリ性現像液への溶解性を阻害しないという観点から、フェノール性水酸基、カルボキシル基、水酸基又はスルホン酸基を有する化合物が好ましい。
【0062】
例えば、波長248nmの光に対して大きな吸収をもつ吸光性化合物としては、アントラセンカルボン酸、ヒドロキシメチルアントラセン、及び3,7−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸等が挙げられる。
【0063】
吸光性化合物としては、また、下記式(35)、(36)または(37)で表されるユニットを有するポリマーや、式(38)で表される化合物などが挙げられる。式(38)中、Arは、炭素原子数1〜5のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ニトロ基、シアノ基、炭素原子数1〜5のチオアルキル基、フェノキシ基、アセチル基、炭素原子数1〜5のアルコキシカルボニル基及びビニル基からなる群から選ばれる基で置換されていてもよいベンゼン環、ナフタレン環又はアントラセン環を表す。
【0064】
【化17】

【0065】
吸収性化合物は単独または二種以上の組合せで使用することができる。吸光性化合物が使用される場合、その含有量としては、アルカリ可溶性化合物100質量部に対して、例えば1〜300質量部であり、または1〜200質量部であり、また、例えば3〜100質量部であり、または、5〜50質量部である。吸収性化合物が300質量部を超える場合は感光性レジスト下層膜のアルカリ性現像液への溶解性が低下することがあり、また、感光性レジスト下層膜がフォトレジストとインターミキシングを起こすようになることがある。
【0066】
吸光性化合物を使用する場合、その種類や含有量を変えることによって、感光性レジスト下層膜の減衰係数(k値)や屈折率(n値)を調整することができる。
【0067】
本発明の感光性レジスト下層膜形成組成物は、アミン化合物を含むことができる。アミン化合物を添加することにより、レジスト下層膜の露光時の感度調節を行うことができる。即ち、アミンが露光時に光酸発生剤より発生された酸と反応し、感光性レジスト下層膜の感度を低下させることが可能である。これにより第2の露光時に感光性レジスト下層膜が露光せずに、選択的に上層のレジストが露光することが可能である。また、露光部の感光性レジスト下層膜中の光酸発生剤より生じた酸の未露光部レジスト下層膜への拡散を抑えることができる。
【0068】
アミン化合物としては、特に制限はないが、例えば、トリエタノールアミン、トリブタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリノルマルプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリノルマルブチルアミン、トリ−tert−ブチルアミン及びジアザビシクロオクタン等の3級アミンや、ピリジン及び4−ジメチルアミノピリジン等の芳香族アミンを挙げることができる。更に、ベンジルアミン及びノルマルブチルアミン等の1級アミンや、ジエチルアミン及びジノルマルブチルアミン等の2級アミンも挙げられる。
【0069】
アミン化合物は単独または二種以上の組合せで使用することができる。アミン化合物が使用される場合、その含有量としては、アルカリ可溶性化合物100質量部に対して、例えば0.001〜5質量部であり、または0.01〜1質量部であり、また、例えば0.1〜0.5質量部である。アミン化合物の含有量が前記値より大きい場合には、感度が低下しすぎる場合がある。
【0070】
本発明の感光性レジスト下層膜形成組成物は界面活性剤を含むことができる。界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等のノニオン系界面活性剤、エフトツプEF301、EF303、EF352((株)トーケムプロダクツ製)、メガファックF171、F173(大日本インキ化学工業(株)製)、フロラードFC430、FC431(住友スリーエム(株)製)、アサヒガードAG710、サーフロンS−382、SC101、SC102、SC103、SC104、SC105、SC106(旭硝子(株)製)等のフッ素系界面活性剤、オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業(株)製)等を挙げることができる。これらの界面活性剤の配合量は、本発明の感光性レジスト下層膜形成組成物の全成分中、通常0.2質量%以下、好ましくは0.1質量%以下である。これらの界面活性剤は単独で添加してもよいし、また2種以上の組合せで添加することもできる。
【0071】
本発明の感光性レジスト下層膜形成組成物は、その他必要に応じてレオロジー調整剤、接着補助剤等を含んでいてもよい。
【0072】
本発明の感光性レジスト下層膜形成組成物は、上記の各成分を適当な溶剤に溶解させることによって調製でき、均一な溶液状態で用いられる。
【0073】
そのような溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、及びN−メチルピロリドン等を用いることができる。これらの溶剤は単独または2種以上の組合せで使用することができる。さらに、プロピレングリコールモノブチルエーテル及びプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等の高沸点溶剤を混合して使用することができる。
【0074】
調製された感光性レジスト下層膜形成組成物の溶液は、孔径が0.2μm程度のフィルタなどを用いて濾過した後、使用することが好ましい。このように調製された感光性レジスト下層膜形成組成物の溶液は、室温で長期間の貯蔵安定性にも優れる。
【0075】
以下、本発明の感光性レジスト下層膜形成組成物の使用について説明する。
【0076】
基板(例えば、シリコン/二酸化シリコン被覆半導体基板、シリコンナイトライド基板、ガラス基板、ITO基板等)の上に、スピナー、コーター等の適当な塗布方法により本発明の感光性レジスト下層膜形成組成物が塗布され、その後、焼成することにより感光性レジスト下層膜が形成される。焼成する条件としては、焼成温度80℃〜250℃、焼成時間0.3〜60分間の中から適宜、選択される。好ましくは、焼成温度130℃〜250℃、焼成時間0.5〜5分間である。ここで、感光性レジスト下層膜の膜厚としては、例えば0.01〜3.0μmであり、また、例えば0.03〜1.0μmであり、例えば、0.05〜0.5μmである。
【0077】
本発明の感光性レジスト下層膜形成組成物から形成される感光性レジスト下層膜は、形成時の焼成条件によりビニルエーテル化合物が架橋することによって強固な膜となる。そして、その上に塗布されるフォトレジスト溶液に一般的に使用されている有機溶剤、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、トルエン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ピルビン酸メチル、乳酸エチル及び乳酸ブチル等に対する溶解性が低いものとなる。このため、本発明の感光性レジスト下層膜形成組成物より形成される感光性レジスト下層膜はフォトレジストとのインターミキシングを起こさないものとなる。焼成時の温度が、上記範囲より低い場合には架橋が不十分となりフォトレジストとインターミキシングを起こすことがある。また、焼成温度が高すぎる場合も架橋が切断されフォトレジストとのインターミキシングを起こすことがある。
【0078】
次いで感光性レジスト下層膜の上に、フォトレジストの層が形成される。フォトレジストの層の形成は、一般的な方法、すなわち、フォトレジスト溶液の感光性レジスト下層膜上への塗布及び焼成によって行なうことができる。
【0079】
本発明の感光性レジスト下層膜の上に形成されるフォトレジストとしては露光光に感光しポジ型の挙動を示すものであれば特に限定はない。ノボラック樹脂と1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステルとからなるポジ型フォトレジスト、酸により分解してアルカリ溶解速度を上昇させる基を有するバインダーと光酸発生剤からなる化学増幅型フォトレジスト、酸により分解してフォトレジストのアルカリ溶解速度を上昇させる低分子化合物とアルカリ可溶性バインダーと光酸発生剤とからなる化学増幅型フォトレジスト、酸により分解してアルカリ溶解速度を上昇させる基を有するバインダーと酸により分解してフォトレジストのアルカリ溶解速度を上昇させる低分子化合物と光酸発生剤からなる化学増幅型フォトレジストなどがある。例えば、シプレー社製商品名APEX−E、住友化学工業(株)製商品名PAR710、及び信越化学工業(株)製商品名SEPR430等が挙げられる。
【0080】
感光性レジスト下層膜形成組成物を半導体基板上に塗布して焼成して感光性レジスト下層膜を形成する工程、感光性レジスト下層膜上にフォトレジスト層を形成する工程、前記感光性レジスト下層膜とフォトレジスト層で被覆された半導体基板を第1のフォトマスクを用い第1の露光を行う工程、その後第1のフォトマスクとは異なる第2のフォトマスクを用い第1の露光より低い露光量で第2の露光を行う工程、露光後に現像する工程を含み半導体装置が製造される。
【0081】
露光は所定のマスクを通して露光が行なわれる。露光には、KrFエキシマレーザー(波長248nm)、ArFエキシマレーザー(波長193nm)及びF2エキシマレーザー(波長157nm)等を使用することができる。露光後、必要に応じて露光後加熱(postexposure bake)が行なわれる。露光後加熱の条件としては、加熱温度80℃〜150℃、加熱時間0.3〜60分間の中から適宜、選択される。
【0082】
感光性レジスト下層膜とフォトレジスト層で被覆された半導体基板を第1のフォトマスクを用い第1の露光を行い、その後第1のフォトマスクとは異なる第2のフォトマスクにより第1の露光より低い露光量で露光を行い、その後に現像する工程により半導体装置を製造することができる。上記露光は第1の露光の露光量が第2の露光の露光量の2倍以上であることが好ましい。通常、第1の露光の露光量が50mJ/cm以上であり、第2の露光の露光量が50mJ/cm未満で行われる。第1の露光では感光性レジスト下層膜に露光光が到達する程の露光であるため、第1のフォトマスクのマスクパターンに従って感光性レジスト下層膜とフォトレジスト層が露光される。その後に、第2の露光ではフォトレジストまで露光光が到達する程の露光であるため、第2のフォトマスクのマスクパターンに従ってフォトレジスト層のみが露光される。本発明の感光性レジスト下層膜形成組成物から形成される感光性レジスト下層膜は、露光時に反射防止膜に含まれている光酸発生剤から発生する酸の作用によって、フォトレジストの現像に使用されるアルカリ性現像液に可溶となる。
【0083】
第1の露光と第2の露光を行った後、現像液で両層の一括現像を行うと、フォトレジスト層も感光性レジスト下層膜も露光された部分はアルカリ溶解性を示すため、感光性レジスト下層膜は第1のマスクパターンの形状を示し、フォトレジスト層は第2のマスクパターンの形状を示す。この現象を利用して、一括現像によりビアトレンチ形状のホールを形成することが可能である。
【0084】
次いで、アルカリ性現像液によって現像が行なわれる。これにより、露光された部分のフォトレジスト及びその下層部分のレジスト下層膜が除去される。
【0085】
アルカリ性現像液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、コリンなどの水酸化四級アンモニウムの水溶液、エタノールアミン、プロピルアミン、エチレンジアミンなどのアミン水溶液等のアルカリ性水溶液を例として挙げることができる。さらに、これらの現像液に界面活性剤などを加えることもできる。
【0086】
現像の条件としては、温度5℃〜50℃、時間10〜300秒から適宜選択される。本発明の感光性レジスト下層膜形成組成物から形成される感光性レジスト下層膜は、フォトレジストの現像に汎用されている2.38質量%の水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液を用いて室温で容易に現像を行なうことができる。
【0087】
本発明の感光性レジスト下層膜は、基板とフォトレジストとの相互作用の防止するための層、フォトレジストに用いられる材料又はフォトレジストへの露光時に生成する物質の半導体基板への悪作用を防ぐ機能を有する層、加熱焼成時に半導体基板から生成する物質の上層フォトレジストへの拡散を防ぐ機能を有する層、及び半導体基板誘電体層によるフォトレジストのポイズニング効果を減少させるためのバリア層等として使用することも可能である。
【0088】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、これによって本発明が限定されるものではない。
【実施例】
【0089】
実施例1
(ポリアミド酸の合成)
4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(0.1mol,42.02g)、3,5−ジアミノ安息香酸(0.1mol,12.79g)及びビス(4−アミノフェニルスルホン)(0.1mol,5.22g)をプロピレングリコールモノメチルエーテル340.19g中40℃で24時間反応後、無水フタル酸(0.1mol,3.11g)及びプロピレングリコールモノメチルエーテル17.64gを加え、室温で5時間反応することによって、ポリアミド酸(式(15))を含む溶液[A]を得た。得られたポリアミド酸のGPC分析を行ったところ、重量平均分子量Mw=8200(標準ポリスチレン換算)、数平均分子量Mn=5200であり、p1:p2のモル比は1:1であった。
【0090】
(アルカリ可溶性ポリイミドの合成)
前記の溶液[A](0.042mol分,150g)にN−メチルピロリドン272g、5倍量の無水酢酸(0.210mol,21.4g)及び6倍量のピリジン(0.252mol,19.9g)を加えて、40℃で2時間反応を行った。この溶液をメタノール中1500mlに投入し、生じた沈殿物をろ別し乾燥してポリイミド(式(21))を得た。ポリイミド(式(21))のGPC分析を行ったところ、重量平均分子量Mw=7100(標準ポリスチレン換算)、数平均分子量Mn=4800であり、p1:p2のモル比は1:1であった。
【0091】
(感光性レジスト下層膜形成組成物の調製)
ポリイミド(式(21))2.99gにトリス(4−ビニロキシ)ブチルトリメリレート1.20g、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート0.12g、トリエタノールアミン0.012g、及び乳酸エチル100.96gを添加し室温で30分間撹拌して感光性レジスト下層膜形成組成物の溶液[1]を調製した。
【0092】
(感光性レジスト下層膜形成組成物の評価)
この感光性レジスト下層膜形成組成物の溶液[1]をシリコンウェハー基板上にスピナーを用いて塗布した後、ホットプレート上で160℃、60秒間焼成して膜厚70nmの感光性レジスト下層膜を形成した。得られた感光性レジスト下層膜はプロピレングリコール、乳酸エチル及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに不溶であった。このレジスト下層膜をエリプソメーターで測定した結果、波長248nmでの屈折率(n値)は1.83、減衰係数(k値)は0.37、波長193nmでの屈折率(n値)は1.42、減衰係数(k値)は0.32であった。
【0093】
上記感光性レジスト下層膜上にArF用ポジ型フォトレジストをスピナーを用いて塗布した後、ホットプレート上で130℃、90秒間焼成して膜厚200nmの感光性レジスト下層膜を形成した。ライン/スペースパターンが形成されるように設定された第1のマスクを通して、ArFエキシマレーザー(波長193nm)を200mJ/cmで露光した後、第2のマスクに変えてArFエキシマレーザーを25mJ/cmで露光した。130℃で90秒間露光後加熱を行った後、現像液として2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(東京応化工業(株)製、商品名NMD−3)を用いて60秒間パドル現像を行った。S−4800形電界放出形走査電子顕微鏡((株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いてパターンの断面形状を観察した結果、第1の露光部はレジスト下層膜とフォトレジスト層が溶解して矩形の抜きパターンを形成しており、第2の露光部はフォトレジスト層のみが溶解して矩形の抜きパターンを形成していた。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明によれば感光性レジスト下層膜とその上層のフォトレジスト層を、2つのマスクを用いて2段階に露光した後、現像液で一括現像する方法に係わる。レジスト下層膜とフォトレジスト層を第一のマスクで露光し、その後フォトレジスト層を第二のマスクで露光を行うことにより、一括現像により下層と上層の異なるマスクパターンを形成することが可能である。これによりビアトレンチ構造を簡単に作成することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光性レジスト下層膜形成組成物を半導体基板上に塗布して焼成して感光性レジスト下層膜を形成する工程、感光性レジスト下層膜上にフォトレジスト層を形成する工程、前記レジスト下層膜とフォトレジスト層で被覆された半導体基板を第1のマスクパターンを用い第1の露光を行う工程、その後第1のマスクパターンとは異なる形状の第2のマスクパターンを用い第1の露光より低い露光量で第2の露光を行う工程、露光後に現像する工程、を含む半導体装置の製造方法に用いる上記感光性レジスト下層膜形成組成物。
【請求項2】
第1の露光の露光量が第2の露光の露光量の2倍以上である請求項1に記載の感光性レジスト下層膜形成組成物。
【請求項3】
第1の露光の露光量が50mJ/cm以上であり、第2の露光の露光量が50mJ/cm未満である請求項1又は請求項2に記載の感光性レジスト下層膜形成組成物。
【請求項4】
リソグラフィー工程に用いられる感光性レジスト下層膜形成組成物が、窒素原子を含み且つ少なくとも2つのフェノール性水酸基又はカルボキシル基を含むアルカリ可溶性化合物、少なくとも2つのビニルエーテル基を有する化合物、光酸発生剤、及び溶剤を含むものである請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の感光性レジスト下層膜形成組成物。
【請求項5】
上記の窒素原子を含むアルカリ可溶性化合物が、ポリイミドである請求項4に記載の感光性レジスト下層膜形成組成物。
【請求項6】
上記の窒素原子を含むアルカリ可溶性化合物が、ポリアミック酸である請求項4に記載の感光性レジスト下層膜形成組成物。
【請求項7】
上記の窒素原子を含むアルカリ可溶性化合物が、アミノ基又はアミド基を含有する樹脂である請求項4に記載の感光性レジスト下層膜形成組成物。
【請求項8】
少なくとも2つのビニルエーテル基を有する化合物が、式(1):
【化1】


(ただし、Rは炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜18のアリール基、炭素数6〜25のアリールアルキル基、炭素数2〜10のアルキルカルボニル基、炭素数2〜10のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数2〜10のアルキルカルボニルアミノ基、及び炭素数2〜10のアリールオキシアルキル基から選ばれる2価の有機基であり、Rは炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数6〜18のアリール基から誘導される2〜4価の有機基であり、mは2〜4の整数である。)で示される化合物である請求項4乃至請求項7のいずれか1項に記載の感光性レジスト下層膜形成組成物。
【請求項9】
更に三級アミンを含むものである請求項4乃至請求項8のいずれか1項に記載の感光性レジスト下層膜形成組成物。
【請求項10】
更に吸光性化合物を含むものである請求項4乃至請求項8のいずれか1項に記載の感光性レジスト下層膜形成組成物。

【公開番号】特開2008−116926(P2008−116926A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−255284(P2007−255284)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000003986)日産化学工業株式会社 (510)
【Fターム(参考)】