説明

低温でプラズマ励起原子膜の成膜によりシリコン酸化膜を成膜する方法

【課題】PEALDにより基板上に成膜するプロセスにおいて、基板上の有機膜にダメージを与えない方法を提供する。
【解決手段】PEALDにより、基板に形成されたレジストパターン又はエッチされたライン上にシリコン酸化膜を成膜する方法が、レジストパターン又はエッチされたラインが形成された基板をPEALDリアクターに与える工程と、基板が配置されたサセプタの温度を成膜温度として50℃未満に制御する工程と、成膜温度を50℃未満の一定の温度に実質的に又はほぼ維持しながら、PEALDリアクターにシリコン含有前駆体及び酸素供給反応ガスを導入して、レジストパターン又はエッチされたラインにシリコン酸化原子膜を成膜する工程と、前記レジストパターン又は前記エッチされたラインにシリコン酸化原子膜を成膜するために、実質的に又はほぼ一定の温度で成膜サイクルを複数回繰り返す工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、プラズマ励起原子膜の成膜(PEALD)によりシリコン酸化膜を成膜する方法に関し、特に、PEALDによる成膜の間に生ずるダメージによる、レジストのような有機膜の形状変形を抑制する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ALD−SiOは、従来300℃程度で成膜を行っていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年デバイスの高集積化に伴いリソグラフィの解像度以上の微細化に対応するため、レジスト上へコンフォーマルなSiOを成膜する要求が増加している。また、レジストは多種多様な種類があるが、どれも有機物であるために高温では消失してしまうといった問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明のある態様においては、PEALDにより基板上に積層構造を構築するプロセスにおいて、基板上の有機膜がダメージを受け形状変形を起こすことを抑制することができ、リソグラフィによる高度な微細化が可能となる。また、本発明のある態様においては、コンフォーマルなシリコン酸化膜を高い成膜速度で形成することができる。上記の少なくとも一つを実現するある態様においては、シリコン酸化膜をPEALDによりパターン化された有機膜上に成膜するが、その際に、成膜温度が低い領域で成膜速度を成膜温度の一次関数として制御することを特徴とする。
【0005】
ある態様においては成膜温度を約50℃未満、好ましくは約40℃以下、より好ましくは約30℃以下の一定の温度に制御することで、有機膜がSiOのPEALD成膜過程でダメージを受け形状変形を起こすことを有効に抑制することが可能となる。発明者の実験によれば50℃でもダメージによりレジスト形状が変形するケースもあり、従って、更なる低温成膜を実施するのが好ましく、約30℃以下の一定温度にするとレジストの種類によらずダメージを実質的に生じさせないことが可能となる。
【0006】
また、そのような温度領域においては、成膜速度は成膜温度の実質的に完全な一次関数あるいは略一次関数として制御することが可能であり、膜厚制御、成膜時間制御を著しく簡略化することができ、スループットを向上させることができる。なお、驚くことに成膜速度は成膜温度の負の一次関数となる。
【0007】
SiOのPEALDによる成膜のある態様では、ALDに一サイクル内で、シリコンを供給する前駆体ガスの導入と、RFパワーの印加をパルスとし、酸素を供給するガスの導入、パージガスの導入を一定とし、排気も一定に実施する。即ち、一サイクル内における、シリコンを供給する前駆体ガスの導入のパルスと、RFパワーの印加のパルスの長さ、インターバルを制御することで(ある態様ではこれら2つのパルスを制御するのみで)、PEALDによるSiOの成膜を制御する。
【0008】
なお、PEALD法を使用した場合、50℃未満の低温でSiOの成膜を実施する場合、従来使用しているようなサセプタヒーターでは温度制御が困難である。従来のサセプタヒーターでは50℃程度の制御が限界であり、それ未満の温度で成膜を行う場合はヒーターをOffにし、室温とするほか無いが、ヒーター等を用いない場合、常温20〜30℃程度となるが、温度安定性及び再現性がとれない。本発明のある態様では、サセプタ内を冷媒が循環するようにチラーユニットを備えた構造とすることで加熱冷却を可能とし、これにより例えば−10℃〜50℃(温度制御範囲としては−10℃〜80℃)で温度制御が可能となり、再現性の良好な低温成膜が可能となる。
【0009】
本発明の態様および従来技術を越えて達成される効果を要約する目的のために、本発明の目的及び効果がここで説明される。もちろん、このような目的や効果のすべてが本発明の特定の実施例のいずれかに従って達成されるわけではないことは理解されるであろう。したがって、例えば、以下で教示する他の目的、効果を必ずしも達成することなく、ここで教示する一つの効果又は一群の効果を達成又は最適にする方法で本発明を実施又は成し遂げることができることは当業者であれば分かるであろう。
【0010】
さらに、本発明の態様、特徴及び利点は以下の詳細な説明により明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の一態様に従ったSiOALD膜の成長速度(nm/ cycle)と成膜温度(℃)との間の関係を示すグラフである。
【図2】図2は、本発明の一態様に従ったSiOALD膜の成長速度(nm/cycle)と成膜温度(℃)との間の関係、及び従来技術の方法にしたがったSiOALD膜の成長即と(nm/cycle)と成膜温度(℃)との間の関係を示すグラフである。
【図3】図3は、本発明の一態様に従ったPEALDによるSiOALD膜の成膜を行うための一サイクルに対する時間チャートである。
【図4】図4は、本発明の一態様に従ったSiOALD膜を使用した接触アレーの二重パターンニングを示す。
【図5】図5A及び図5Bは、それぞれ、本発明の一態様に従ったチラーユニットを備えたサセプタの略示平面図及び略示断面図である。
【図6】図6は、PEALDによるSiOALD膜の成膜温度に依存したレジストの形状変化を略示する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のこれら又は他の特徴は、本発明を限定することを意図するものではないが、好適実施例を図示する図面を参照して説明される。
【0013】
本発明は、限定の意図がない以下の実施例を包含する。
【0014】
一つの実施例として、プラズマ励起原子膜の成膜(PEALD)により、基板に形成されるレジストパターン又はエッチされたライン上に酸化シリコン膜を成膜する方法は、(i)レジストパターン又はエッチされたラインが形成された基板をPEALDリアクターに与える工程と、(ii)基板が配置されるサセプタの温度を成膜温度として50℃未満の温度に制御する工程と、(iii)成膜温度を50℃に満たない一定の温度に実質的に又はほぼ維持しながら、PEALDリアクターにシリコン含有前駆体及び酸素供給反応ガスを導入し、これによりレジストパターン又はエッチされたラインにシリコン酸化原子膜を成膜する工程と、(iv)レジストパターン又はエッチされたラインにシリコン酸化原子膜を成膜するために、実質的に又はほぼ一定の温度でサイクルを複数回繰り返す工程とを含む。
【0015】
ある態様として、成膜温度は、40℃以下又は30℃以下の実質的に又はほぼ一定の温度に制御される。
【0016】
上述した態様のいずれかにおいて、サイクル中に、パージガスがPEALDリアクターに導入され、過剰なシリコン含有前駆体が除去されてもよい。
【0017】
上述した態様のいずれかにおいて、サイクル中に、シリコン含有前駆体は第一のパルス中に導入されてもよく、またPRパワーは第二のパルス中に適用されてもよいが、ここで第一のパルスと第二のパルスは重なることがない。
【0018】
上述した態様のいずれかにおいて、酸素供給反応ガスは一定にして導入される。
【0019】
上述した態様のいずれかにおいて、サイクル中に、パージガスがPEALDリアクターに一定に導入されてもよい。
【0020】
上述した態様のいずれかにおいて、シリコン前駆体は、アミノシランガスであってもよい。一態様として、アミノシランガスは、BDEAS(bisdiethylaminosilane)、BEMAS(bisethylmethylaminosilane)、3DMAS(trisdimethylaminosilane)、およびHEAD(hexakisethylaminosilane)からなるグループから選択されるものでもよい。
【0021】
上述した形態のいずれかにおいて、酸素供給反応ガスはOガスであってもよい。
【0022】
上述した形態のいずれかにおいて、パージガスは希ガスであってもよい。一態様として、ArまたはHeがパージガスとして使用されてもよい。
【0023】
上述した態様のいずれかにおいて、サイクルは約1.5秒から3.0秒の期間であってもよい。他の態様では、サイクルは約1秒から約5秒の期間であってもよい。
【0024】
上述した実施例のいずれかにおいて、シリコン酸化膜の成長速度は、約0.12nm/cycle又はそれ以上であってもよい。一実施例では、シリコン酸化膜の成長速度は約0.125nm/cycleから約0.145nm/cycleであってもよい。
【0025】
上述した態様のいずれかにおいて、サセプタの温度は次の式に従ってセットできる。
y=−0.0005x+0.1397
ここで、yは成長速度(nm/cycle)で、xは成膜温度(℃)である。他の形態では、成長速度(nm/ cycle)がy10%であってもよい。
【0026】
上述した形態のいずれかにおいて、成膜温度は、冷媒をサセプタ内に形成された導管に通過させることで調節することができる。
【0027】
上述した形態のいずれかにおいて、RFパワーは容量結合された平行な電極を使用して適用されてもよく、サセプタは下側電極のように機能し、一つの基板を保持する。
【0028】
上述の方法のいずれかは、また基板がPEALD内に入れる前に、(I)シリコン酸化膜の成長速度と成膜温度との間の関係を定義する標準的な曲線を得る工程、(II)一サイクル中でのシリコン酸化膜の成長速度をセットする工程、(III)標準的な曲線を使用してセットされた成長速度に基づいて成膜温度を得る工程をさらに含んでもよい。一形態において、標準的な曲線は、y=−0.0005x+0.1397であってもよく、ここでyは成長速度(nm/cycle)、xは成膜温度(℃)である。
【0029】
本発明は、典型的な形態を参照して下述されるが、形態は本発明を限定することを意図するものではない。
【0030】
本発明のある態様における一つの特徴は、成膜温度の調節のための装置構成である。従来のサセプタヒーターでは50℃程度の制御が限界でありそれ以下の温度で成膜を行う場合はヒーターをOffし室温とするしか無い。ヒーター等を用いない場合、常温20〜30℃程度となるが温度安定性及び再現性がとれない。冷媒をチラーユニットにより循環させることで加熱冷却が可能となるサセプタを導入し、これにより−10〜80℃の温度制御が可能となり再現性の良好な低温成膜が可能となる。
【0031】
本発明のある態様におけるほかの特徴は、有機膜などのレジスト上への成膜における、レジストダメージの抑制である。成膜温度を下げることにより、従来の高温ALD−SiOプロセスにおいて発生していたレジスト上への成膜によるレジストダメージ及び消失を防ぐことが可能になる。
【0032】
本発明のある態様におけるその他の特徴は、膜成長速度の向上である。成膜温度を下げるに従い成膜温度を向上させることができる。これにより、スループットを向上させることができる。
【0033】
以下、本発明のある態様における装置構成について説明する。本発明はこれに限定されるものではない。図5Aはチラーユニットを備えたサセプタの一例を示す平面図であり、図5Bは図5Aの5B線に沿って断面を取ったときの縦断面図である。トッププレート51とサセプタ53の間に冷媒(エチレングリコールなど)を流すための溝54を図5Aのように渦状に形成したプレート52を設け、そこに冷媒を流し循環させる。冷媒は該プレートの中心付近に設けられた入口56から渦状溝に流入し、外側に向かって渦状に流動し、外周付近に設けられた溝の終わり57から該プレートの中心付近に設けられた出口55から排出される。チラーにより−10〜80℃の範囲で温度の調整を行うことが可能である。成膜温度範囲を80℃から−10℃と広げることにより、多種の有機膜へのダメージに対応することが可能となるが、ある態様では、有機膜のダメージ抑制の観点より50℃未満、好ましくは40℃以下、更には30℃以下に調整する(別の態様では更に20℃以下、10℃以下、0℃以下に調整する)。冷媒の流動速度、流動量は、トッププレートが所望の一定温度になるように適宜調整することができる。
【0034】
なお、流路は中心から外側に向かう渦状に限定されず、外側から中心へ向かう渦状、あるいは、外周の一端から他の端へ向かうジグザグ状であってもよい。あるいは、中心から外周へ向かって複数の流路を放射状に形成してもよい。上記の態様では、流路の全長は少なくとも外周の2倍以上、好ましくは3倍以上である。
【0035】
また、温度を下げることでレジスト形状変化の改善傾向が見られるので−10℃によりさらに低温の場合でもよいが、−10℃より下げる場合はチラーユニットではなく更に大掛かりな冷却機構が必要になる。
【0036】
冷媒としてはある態様においては以下のものを適宜選択して用いることができる。エチレングリコールやグリセリンなどの不凍液、空冷(室温以上)、水冷(0℃以上)、窒素ガス、液体窒素、二酸化炭素、アンモニア、液体ヘリウム、水素、プロパン、ブタン、イソブタンなどの炭化水素系ガス、フロン類、ハロゲン化炭化水素類など。
【0037】
冷却方法としては、チラーなどによる冷媒循環型、ペルチェ素子を用いた電子冷却、Nガスなどによる圧送型等、適宜選択して用いることができる。
【0038】
ある態様では、PEALDによるAiO膜の成膜における温度以外の条件としては例えば以下の通りである。
【0039】
RFパワー(13.56MHz) : 20〜100W
成膜圧力 : 約400Pa
Si含有前駆体流量 : 300〜500sccm
酸素流量 : 100〜1000sccm
パージガス(例えばAr)流量 : 約1500sccm
【0040】
また、ある態様では例えば圧力は100Paから1000Pa程度の間で選択することができ、また、パージガス流量も1000sccmから2500sccm程度の間で選択することができる。
【0041】
また、PEALDの一サイクルにおけるタイミングチャートの一例を図3に示す。まず、パージガスをリアクターに流し安定化させるが、パージガスは常に一定流量でリアクター内を流れているようにする。次にSi前駆体を一つのパルスとして、酸素反応ガスは一定流量で継続的にリアクターに導入し、Si前駆体パルスが停止したのち、RFパワーを一つのパルスとして印加する。Si前駆体パルスとRFパワーのパルスは重複しない。パージガスが継続的に流入しているのと同様に、リアクターは常に排気され、一定圧力が維持されている。Si前駆体がパルスで導入されている最中もパージガスは流入しているが、Si前駆体のパルスが停止した後は、パージガスと酸素反応ガスのみの流入となり、実質的にSi前駆体を基板表面からパージすることができる。
【0042】
図3は一サイクルを示しているが、一サイクルはある態様では約1.5秒から約3秒程度である。一サイクルにおけるSiO膜の膜厚は図1に示すように成膜温度にほぼ完全に一次関数的に依存しており、成膜温度が低くなると、成膜速度は増加する。ある態様においては、成膜温度を約40℃以下としたときに成膜速度は約0.12nm/cycle以上(例えば、0.12nm/cycle〜0.15nm/cycle)である(後述する実施例)。なお、上記のPEALDのサイクルにおいて、ある態様では酸素反応ガスやパージガスをパルス状で導入してもよい。また、各ガスは一種類に限らず、複数種類の混合ガスであってもよい。
【0043】
驚くことに、上記のPEALDによるSiO膜では成膜速度はほぼ完全に一次関数的に負の傾きで成膜温度に依存しており、これは従来のPEALDによる金属膜の成膜速度と著しく異なっている。図2に金属膜(W)のPEALDによる成膜速度と成膜温度の関係の一例を示す。成膜温度が上昇すると成膜速度も上昇する。また、原子膜を形成するために比較的高温で処理する必要があり、通常は200度以上(典型的には300度以上)の温度である。200℃よりも低くなると成膜速度は著しく低下する。一方、PEALDによるSiO膜では低温で成膜速度が高く、高温になると低下する。また、100℃を越える温度では成膜速度と成膜速度には一時関数的な関連から離れていく。
【0044】
図1の例では成膜速度yは、xを成膜温度として、y=−0.0005x+0.1397の関係となっている。このような検量線を事前に求めておくことにより、所望の膜厚にするための温度と時間の関係を正確に把握することができ、正確な成膜制御を容易に実現することができる。例えば、所望の膜厚と成膜温度を設定した場合は、成膜時間を的確に算定することができる。また、成膜サイクルが一定の場合に、所望の膜厚を得るための成膜温度を的確に設定することもできる。SiOの膜厚は、目的により異なるがある態様では5nm〜40nm程度である。サイクル数としては40〜330程度である。
【0045】
ここでの説明で、条件及び/又は構成が特定されていないところもあるが、当業者であれば、ここで開示した内容から、日常の実験を通じてこのような条件及び/又は構成を容易に与えることができる。
【0046】
本発明は、本発明の限定を意図しない特定の例を参照して詳細に説明される。特定の例において適用された数値は、少なくとも50%の範囲で修正を行えるが、その範囲の端点は含まれる場合もあり、含まれない場合もある。
【0047】
実施例
基板の上に有機膜として、ArFレーザー用のフォトレジストであり、アクリル酸、またはメタクリル酸エステルの重合体及び共重合体のアルキル置換体を基本とした組成からなる構造を有した3種類のフォトレジストA、B、C(ライン幅40nm、厚み120nm)をそれぞれ形成し、その上にSiO膜をPEALDにより成膜した。成膜の条件は以下の通りであった。
【0048】
Si含有前駆体 : BDEAS
Si含有前駆体流量 :500sccn
Si含有前駆体パルス :0.5秒
酸素流量 :600sccm
Ar流量 :1.5sccm
RFパワー(13.56MHz) : 50W
RFパワーパルス :0.3秒
Si含有前駆体パルスとRFパワーパルスのインターバル(RFパワー印加前のパージ):0.3秒
RFパワーパルスとSi含有前駆体パルスのインターバル(RFパワー印加後のパージ):0.3秒
成膜圧力 :400Pa
一サイクルの長さ :1.5秒
【0049】
サセプタとしては図5A、5Bに示したものを使用した。冷媒としてはエチレングリコールを使い、チラーユニットにより冷媒流量、冷媒温度を調整して、サセプタの温度(トッププレートの表面温度)をそれぞれ80℃、50℃、30℃に調整した。膜厚はそれぞれ9nmとした。なお、成膜温度と成膜速度の関係は図1に示す関係が成立するので、それぞれの温度における成膜時間を高い精度で設定することができる。
【0050】
図6は、その結果を、断面図を観察することで評価した模式図である。PEALDによるSiO膜形成時の成膜温度により有機膜であるフォトレジストが形状変形を起こしていることが観察された。即ち、フォトレジストBでは、SiOの成膜温度が80℃の場合、50℃の場合は、ほぼ完全に消失していた。フォトレジストCでは、SiOの成膜温度が50℃の場合、完全には消失していなかったが、かなりの部分が消失し顕著な形状変形を起こしていた。フォトレジストAでは、SiOの成膜温度が50℃の場合でも、ほぼ原型を維持していた。このように成膜温度が50℃程度ではフォトレジストによっては顕著に形状変形を起こす。一方、成膜温度が30℃の場合は、いずれのフォトレジストでも原型をほぼ維持しており形状変形を起こしていなかった。
【0051】
従来ALDの成膜温度は300℃以上の高温プロセスであり、有機膜などのレジストパターンは消失してしまう。またPEALDによって50℃程度の成膜が可能であるが従来の加熱用サセプタでは安定した温度制御が難しく、またそれ以下の温度では使用できない。このため一部のレジストを使用したアプリケーションには適応が出来ないといった問題があった。本発明のある態様によれば、冷媒を循環させるサセプタを用いることで、成膜温度−10〜80℃において有機膜等のレジストダメージによる形状変形の改善及び、消失を防ぐことが可能になる。特に成膜温度を50℃未満、好ましくは40℃以下とすることでレジストダメージを確実に抑制することが可能となる。また、膜成膜速度を向上させることができる。
【0052】
このようなSiO膜はスペーサー技術に好適に適用することができ、たとえばダブルパターニングに応用することができる。図4A−4Fはその一例を示した模式図である。この例では、SiO膜をネガティブモードのダブルパターニングスペーサーとして機能し、パターントランスファーのためのエッチマスクとして使用する。
【0053】
図4Aでは基板41の上にパターニングする層42(例えばPoly-silicon)が形成され、その上に有機膜であるフォトレジストのラインあるいはエッチされたライン43が形成されている。
【0054】
図4Bでは、スペーサー材料44としてSiO膜を本発明のいずれかの態様に従うPEALDによりフォトレジストのラインあるいはエッチされたライン43及びパターニンングする層42上に形成する。図4Cでは、該スペーサー材料44をエッチングし、該ライン43の上端のみがスペーサー材料44から露出し、また該ライン43間でパターニングする層42を露出させ、スペーサー材料をライン42の側壁部のみを残して除去する(45)。
【0055】
図4Dでは、該ライン43を除去しスペーサー材料45のみを残す(46)。図4Eでは、該スペーサー材料46をハードマスクとして使ってパターニングする層42をエッチングし、パターン47を形成する。このとき、スペーサー材料の一部がパターン47の上端に残っている(48)。
【0056】
図4Fでは、残ったスペーサー材料48を除去し、パターニングを完了する。本発明のこのような態様によれば、有機膜であるフォトレジスト材料43がSiO膜のPEALDによる形成過程でダメージを受けることなく、形状変形を起こすことを抑制することができ、その結果、SiO膜によるスペーサーのパターニングが解像度よくエッチングすることができる。ダブルパターニングにおいては、有機膜が形状変形を受けないことが重要であり、本発明の態様を適用することは極めて有効である。なお、当業者であれば、本発明の態様におけるSiO膜が、本明細書の開示に基づきその他のパターニング技術、スペーサー技術に適用できることを理解し実施することができる。
【0057】
本発明の思想及び態様から離れることなく多くのさまざまな修正が可能であることは当業者の知るところである。したがって、言うまでもなく、本発明の形式は例示に過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ励起原子膜の成膜(PEALD)により、基板に形成されたレジストパターン又はエッチされたライン上にシリコン酸化膜を成膜する方法であって、
レジストパターン又はエッチされたラインが形成された基板をPEALDリアクターに与えられる工程と、
前記基板が配置されたサセプタの温度を成膜温度として50℃未満に制御する工程と、
前記成膜温度を50℃未満の一定の温度に維持しながら、PEALDリアクターにシリコン含有前駆体及び酸素供給反応ガスを導入し、これによりレジストパターン又はエッチされたラインにシリコン酸化原子膜を成膜する工程と、
前記レジストパターン又は前記エッチされたラインにシリコン酸化原子膜を成膜するために、一定の温度でサイクルを複数回繰り返す工程と、
を含む方法。
【請求項2】
前記成膜温度が、40℃以下の一定の温度に制御する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記成膜温度が、30℃以下の一定の温度に制御する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
サイクル中に、前記シリコン含有前駆体が、過剰なシリコン含有前駆体を除去するために、PEALDリアクターに導入される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記シリコン含有前駆体が第一のパルス中に導入され、RFパワーが第二のパルス中に適用される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記酸素供給反応ガスが一定に導入される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
サイクル中に、パージガスがPEALDリアクターに一定に導入される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記シリコン含有前駆体がアミノシランガスである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記アミノシランガスが、ビスジエチレルアミノシラン(BDEAS)、ビスエチルメチルアミノシラン(BEMAS)、トリスジメチルアミノシラン(3DMAS)、およびヘキサキスエチルアミノシラン(HEAD)からなるグループから選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記酸素供給反応ガスがOである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記パージガスが希ガスである、請求項4に記載の方法。
【請求項12】
成膜サイクルが約1.5秒から3.0秒の期間である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記シリコン酸化膜の成長速度が約0.120nm/cycle以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、
サセプタの温度が以下の式に従ってセットされ、
y=−0.0005x+0.1397
ここで、yは成長速度(nm/cycle)で、xは成膜温度(℃)である、方法。
【請求項15】
成膜温度が、サセプタ内に形成された導管に冷媒を通過させることにより調節される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
RFパワーが容量結合された平行な電極を使用して適用され、前記サセプタが下方電極として機能し、一枚の基板を保持する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
さらに、
基板がPEALDリアクターに与えられる前に、
シリコン酸化膜の成長速度と成膜温度との間の関係を定義する標準的な曲線を得る工程と、
一成膜サイクル中のシリコン酸化膜層の成長速度をセットする工程と、
前記標準的な曲線を使用して、セットされた成長速度に基づいて成膜温度を得る工程と、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
標準的な曲線が、y=−0.0005x+0.1397であり、ここで、yは成長速度(nm/cycle)で、xは成膜温度(℃)である、請求項17に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−245518(P2010−245518A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−58415(P2010−58415)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000227973)日本エー・エス・エム株式会社 (68)
【Fターム(参考)】