説明

作業機械

【課題】下部走行体に4つ以上の上下位置を自由に調整可能な走行ユニットを備えた作業機械において、走行安定性を向上させるとともに、作業時の操作性・居住性を維持できる。
【解決手段】作業機械はサスペンション機構91〜93とサスペンション機構作動切替手段94,97,102とを備える。走行時は、サスペンション機構作動ON/OFFスイッチ97をONにすることにより、サスペンション機構が自動的にクローラユニット224aを接地させ、走行安定性を向上させることができる。フロント作業時は、サスペンション機構作動ON/OFFスイッチ97をOFFにすることにより、パイロットチェックバルブ92a,93aへのパイロット圧は遮断され、パイロットチェックバルブ92a,93aはアキュームレータ91aからの圧油の流れを許容せず、サスペンション機構が不作動となり、フロント作業時の操作性・居住性を維持できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物解体工事、廃棄物解体工事、道路工事、建設工事、土木工事、災害復旧作業等に使用される作業機械に係り、特に下部走行体に4つ以上の上下位置を自由に調整可能な走行ユニットを備えた作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
元々、掘削機械として開発されてきた油圧ショベルをべースとして、これまで各種解体、産業廃棄物処理などの様々な作業に対応した作業機械が開発されてきた。
【0003】
さらに近年、地震等の災害復旧作業や林業など、従来の2つの固定クローラまたは、4つの固定ホイールで構成される下部走行体では進入が困難な現場への対応に関する要望は多くなっている。たとえば、凹凸のある起伏の激しい路面に対する走行性の改善が求められている。
【0004】
このような要望に対し、例えば特許文献1は、下部走行体に4つの上下位置を自由に調整可能な走行ユニット(ホイール)を備えた作業機械を開示している。また、本願発明者は、先行出願(特願2009-086763)において、下部走行体に4つの上下位置を自由に調整可能な走行ユニット(クローラユニット)を備えた作業機械を提案している。
【0005】
このような作業機械は、下部走行体のセンタフレームの前後左右両端に、ピン結合を介して前後に揺動可能な油圧シリンダ機構が設けられており、油圧シリンダが伸縮され、走行ユニットが前後に揺動されることにより、走行ユニットの上下位置を自由に調整可能としている。
【0006】
路面の凹凸に合わせて4つの走行ユニットの上下位置を自由に調整することで、走行性を向上させることができる。
【0007】
ところで、特許文献2は、一般車両における複合型サスペンションを開示している。複合型サスペンションはバネ式サスペンションと油圧式サスペンションから構成され、両者が共同して車両振動を軽減することにより、良好な乗り心地を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6−257182号公報
【特許文献2】特開昭62−289418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
走行安定性に係る課題(第1課題)について説明する。このような作業機械は、更なる走行性、特に走行安定性が求められる。
【0010】
図12(A)は通常走行時の作業機械の接地状態を示す概略斜視図である。作業機械は4台のクローラユニット315a〜dを路面に接地させることにより、走行安定性を得ている。しかし、災害復旧作業の現場では、路面に予想できないような陥没がある可能性もある。図12(B)は路面陥没時の作業機械の接地状態を示す概略斜視図である。例えば、1台のクローラユニット315cの接地面が陥没して、クローラユニット315cが遊脚状態になったと仮定する。
【0011】
図13は、路面陥没時の作業機械の走行安定性を示す概略上面図である。作業フロント装置が重いため、作業機械の重心Mはやや前方にある。クローラユニット315cが遊脚状態になった場合でも、3台のクローラユニット315a,b,dの接地面が形成する支持多角形L1内部に重心Mが存在し、作業機械はクローラユニット315a,b,dにより支持され、走行安定性を確保できる(図13A参照)。その後、オペレータの操作により、クローラユニット315cに対応する油圧シリンダ機構を駆動させ、クローラユニット315cを接地させることにより、遊脚状態は解消し、作業機械は通常時同様の走行安定性を回復する。
【0012】
しかし、クローラユニット315bの接地面が陥没して、クローラユニット315bが遊脚状態になった場合、支持多角形L2内部に重心Mが存在しない。このとき、作業機械は陥没に合わせて傾く可能性が有り、走行安定性が著しく悪化する(図13B参照)。
【0013】
つぎに、操作性に係る課題(第2課題)について説明する。第1の課題に対し、作業機械に特許文献2記載の油圧式サスペンションを適用できるように、工夫すれば、課題を解決できる可能性がある。すなわち、遊脚状態になるとサスペンション機構が作動し、自動的にクローラユニット315cを接地させる。しかし、単純に作業機械にサスペンション機構を適用すると、以下のような新たな課題が発生する。
【0014】
作業機械は、作業フロント装置を用いて解体や掘削等の作業を行う。フロント作業中は断続的に図示しない作業フロント装置の先端に外力が加わる。作業フロント装置先端に外力が加わると、作業機械の重心Mが変化し、油圧シリンダ機構に加わる回路圧も変化する。この回路圧の変化に応じてサスペンション機構は作動し、クローラユニット315cの上下位置が変動する。その結果、作業フロント装置の先端位置も変動するため、オペレータは意図する作業ができず、操作性は著しく悪化する。また、運転室の上下位置も変動するため、乗り心地(居住性)も著しく悪化する。
【0015】
一方、フロント作業時には、作業面の安定性を確認してから作業を開始することが一般的であり、サスペンション機構作動の必要性は少ない。
【0016】
本発明の目的は、走行安定性を向上させるとともに、作業時の操作性・居住性を維持できる作業機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、運転室を設けた上部旋回体と、前記上部旋回体に設けられた作業フロント装置と、前記上部旋回体の下部に設けられ、少なくとも4台の上下位置を自由に調整可能な走行ユニットを含む下部走行体と、この走行ユニットを前後に揺動させて走行ユニットの上下位置を調整する油圧シリンダ機構を有する作業機械において、更に、前記走行ユニットが接地するように作動するサスペンション機構を備える。
【0018】
このように、サスペンション機構を備えることにより、走行ユニットが遊脚状態になった場合、サスペンション機構が作動し、走行ユニットが接地することにより、走行安定性を向上させることができる。
【0019】
(2)上記(1)において、好ましくは、更に、サスペンション機構の作動と不作動とを切替えるサスペンション機構作動切替手段を備える。
【0020】
フロント作業時は、サスペンション機構作動切替手段により、サスペンション機構が不作動となることにより、フロント作業時の操作性・居住性を維持できる。
【0021】
(3)上記(2)において、好ましくは、前記油圧シリンダ機構は、油圧シリンダと、この油圧シリンダに供給される圧油の方向と流量を制御する方向切替弁と、油圧シリンダボトム側と方向切替弁を接続するボトム側管路と、油圧シリンダロッド側と方向切替弁を接続するロッド側管路とを有し、前記サスペンション機構は、前記ボトム側管路から分岐して設けられるアキュミュレータと、このアキュミュレータとボトム側管路との間に設けられるボトム側パイロットチェック弁と、タンクとロッド側管路との間に設けられるロッド側パイロットチェック弁とを有する。
【0022】
これにより、サスペンション機構は、遊脚状態になった走行ユニットを接地させることができる。
【0023】
(4)上記(3)において、好ましくは、前記方向切替弁の切替制御を含む各種制御をおこなう制御手段を備え、前記サスペンション機構作動切替手段は、前記運転室に設けられたサスペンション機構作動ON/OFFスイッチと、前記制御手段の一機能であり、前記サスペンション機構作動ON/OFFスイッチからの指令に基づいて、サスペンション機構の作動と不作動との切替えを判定するサスペンション機構作動不作動判定機能と、このサスペンション機構作動不作動判定機能がサスペンション機構不作動と判定すると、前記ボトム側パイロットチェック弁およびロッド側パイロットチェック弁に供給されるパイロット圧を遮断する遮断弁とを有する。
【0024】
これにより、サスペンション機構作動切替手段は、サスペンション機構の作動と不作動とを手動で切替えることができる。
【0025】
(5)上記(4)において、好ましくは、前記制御手段は、作業機械の走行および走行停止に係る制御をおこなう走行制御機能を有し、前記サスペンション機構作動不作動判定機能は、走行制御機能による走行停止指令に基づいて、サスペンション機構の作動と不作動との切替えを判定する。
【0026】
これにより、サスペンション機構作動切替手段は、サスペンション機構の作動と不作動とを自動的に切替えることができる。
【0027】
(6)上記(5)において、好ましくは、前記サスペンション機構作動不作動判定機能は、サスペンション機構作動ON指令に基づいて、サスペンション機構作動と判定する場合でも、走行停止指令に基づいて、サスペンション機構不作動と判定すると、前記遮断弁に遮断指令を出力する。
【0028】
これにより、手動切替による切替し忘れを防止できるとともに、手動切替による切替え操作負担を軽減できる。
【0029】
(7)上記(4)において、好ましくは、前記制御手段は、前記作業フロント装置の作動および不作動に係る制御をおこなう作業フロント装置作動制御機能を有し、前記サスペンション機構作動不作動判定機能は、作業フロント装置作動制御機能による作業フロント装置作動指令に基づいて、サスペンション機構の作動と不作動との切替えを判定する。
【0030】
これにより、サスペンション機構作動切替手段は、サスペンション機構の作動と不作動とを自動的に切替えることができる。
【0031】
(8)上記(7)において、好ましくは、前記サスペンション機構作動不作動判定機能は、サスペンション機構作動ON指令に基づいて、サスペンション機構作動と判定する場合でも、作業フロント装置作動指令に基づいて、サスペンション機構不作動と判定すると、前記遮断弁に遮断指令を出力する。
【0032】
これにより、手動切替による切替し忘れを防止できるとともに、手動切替による切替え操作負担を軽減できる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、走行時はサスペンション機構が作動することにより、走行安定性を向上させることができる。また、フロント作業時は、サスペンション機構作動切替手段によりサスペンション機構不作動とすることにより、操作性・居住性を維持できる。これにより、走行安定性を向上させるとともに、作業時の操作性・居住性を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】第1実施形態における作業機械1を示す概略側面図である。
【図2】作業機械1の下部走行体2を示す概略上面図である。
【図3】作業機械の油圧システム構成を示す概略図である。
【図4】サスペンション機構の構成を示す概略図である。
【図5】下部走行体用電磁弁コントローラ86の機能ブロック図である。
【図6】サスペンション機構作動不作動判定機能102の処理フローを示す図である。
【図7】第2実施形態に係わる下部走行体用電磁弁コントローラ86の機能ブロック図である。
【図8】第2実施形態に係わるサスペンション機構作動不作動判定機能102の処理フローを示す図である。
【図9】変形例に係わるサスペンション機構作動不作動判定機能102の処理フローを示す図である。
【図10】第3実施形態に係わる下部走行体用電磁弁コントローラ86の機能ブロック図である。
【図11】第3実施形態に係わるサスペンション機構作動不作動判定機能102の処理フローを示す図である。
【図12】走行安定性に係る課題を説明する概略斜視図である。
【図13】走行安定性に係る課題を説明する概略上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
<第1実施形態>
〜構成〜
図1は、第1実施形態における作業機械1を示す概略側面図である。作業機械1には、下部走行体2に上部旋回体3が旋回可能に取付けられ、上部旋回体2は図示しない旋回モータ9によって駆動される。その上部旋回体3に運転室4等が取付けられている。また、上部旋回体3後方にはカウンタウエイト8が設けられている。また上部旋回体3にはエンジン5、ポンプユニット7、上部旋回体用コントロールバルブ30(後述)が設けられている。なお、運転室4には、サスペンション機構作動ON/OFFスイッチ97(後述)が設けられている。
【0036】
また、上部旋回体3には支点40で回動自在にブーム10が設けられており、ブーム10には支点41で回動自在にアーム12が設けられており、アーム12には支点42で回動自在にバケット23が設けてある。ブーム10、アーム12、バケット23で作業フロント6が構成される。
【0037】
また、ブーム10は、上部旋回体3とブーム10とに連結されたブームシリンダ11により上下回動される。アーム12は、ブーム10とアーム12とに連結されたアームシリンダ13により上下回動される。バケット23は、リンク16を介してバケット23とリンク17を介してアーム12とに連結されたバケットシリンダ15により上下回動される。なお、バケット23は、グラップル20、カッタ21、ブレーカ22といった、図示しないその他の作業具のいずれか1つに任意に交換可能である。
【0038】
図2は作業機械1の下部走行体2を示す概略上面図である。図1,2を用いて下部走行体2の構成について説明する。
【0039】
下部走行体2のセンタフレーム201には、前後左右端部にそれぞれ脚ユニット202a〜dが設けられている。ここでは、左前部の脚ユニット202aについて代表させて、説明を行うが、残りの3つの脚ユニット202b〜dについても同様の構成である。
【0040】
左前の脚ユニット202aは、脚根元ブラケット203aから先端のクローラユニット224aまでの部位の総称であり、大別して、脚根元ブラケット203a、脚フレーム204a、脚先端ブラケット205a、クローラユニット224aから構成されている。
【0041】
下部走行体2のセンタフレーム201に対し、支点208aで上下揺動自在に脚根元ブラケット203aが設けられており、脚根元ブラケット203aには支点209aで左右揺動自在に脚フレーム204aが設けられており、脚フレーム204aには支点210aで回動自在に脚先端ブラケット205aが設けられている。
【0042】
また、脚上下シリンダ214aは脚根元ブラケット203aを前後揺動させ、センタフレーム201と脚根元ブラケット203aとに連結されている。脚左右シリンダ215aは脚フレーム204aを左右に揺動させ、脚根元ブラケット203aと脚フレーム204aとに連結されている。ステアリングシリンダ206aは脚先端ブラケット205aを左右に揺動させ、脚根元ブラケット203aと脚先端ブラケット205aとに連結されている。
【0043】
また、脚先端ブラケット205aの先には、クローラユニット224aが設けてある。クローラユニットは大別してサイドフレーム207a、サイドフレーム207aの周囲に巻回してある履帯222aから構成されている。
【0044】
脚先端部ラケット205aに対し、支点213aで上下揺動自在にサイドフレーム207aが設けてある。脚先端ブラケット205aとサイドフレーム207aの間には、アクチュエータが設けられておらず、サイドフレーム207aは支点213aを中心に受動的に揺動する。アイドラ217aはサイドフレーム207aの前端側に回動自在に設けられ、下部転輪218aはサイドフレーム207aの下部に回動自在に設けられ、上部転輪219aはサイドフレーム207a上部に回動自在に設けられている。
【0045】
駆動スプロケット220aはサイドフレーム207a後端側に設けられ、履帯222aはアイドラ217aと下部転輪218aと上部転輪219aと駆動スプロケット220aとに巻回して設けられ、駆動スプロケット220aが図示しない走行用油圧モータ221aの動作によりサイドフレーム207aに対し回動することにより、履帯222aがサイドフレーム207aに対し周回動作し、作業機械1を走行させる構造となっている。
【0046】
図3は作業機械の油圧システム構成を示す概略図である。
【0047】
油圧システムは、エンジン5と、エンジン5によって駆動されるポンプユニット7と、ポンプユニット7内に配置したメインポンプ70とパイロットポンプ71と、メインポンプ70の吐出先に設けられた上部旋回体用コントロールバルブ30と、上部旋回体用コントロールバルブ30のアクチュエータ油路39の先に設けられた複数の上部旋回体用アクチュエータ26(例えば旋回モータ9やアームシリンダ12など)と、上部旋回体用コントロールバルブ30の先にセンタジョイント88を介して設けられた下部走行体用コントロールバルブ50と、下部走行体用コントロールバルブ50のアクチュエータ油路59の先に設けられた複数の下部走行体用アクチュエータ27(例えば脚上下シリンダ214aや走行用油圧モータ221aなど)とから構成されている。油圧システムは、操作システムにより操作される。
【0048】
上部旋回体3の操作システムは、運転室4内に設けた上部旋回体用の操作装置80と、操作装置80に接続された上部旋回体用電磁弁コントローラ85と、上部旋回体用電磁弁コントローラ85からの出力電流に基づき上部旋回体用コントロールバルブ30の流量制御弁を切替える上部旋回体用電磁比例弁82とから構成されている。
【0049】
下部走行体2の操作システムは、運転室4内に設けた下部走行体用の操作装置81と、操作装置81の信号を下部走行体2に伝達する通信コントローラ84と、通信コントローラ84を介して操作装置81に接続された下部走行体用電磁弁コントローラ86と、下部走行体用電磁弁コントローラ86からの出力電流に基づき下部走行体用コントロールバルブ50の流量制御弁を切替える下部走行体用電磁比例弁83とから構成されている。
【0050】
また、センタジョイント88とスリップリング87は上部旋回体3と下部走行体2の接続部分に設けられており、上部旋回体3が下部走行体2に対し360度以上回転した場合にも、圧油と電気信号を下部走行体2に伝達することが可能な構成となっている。
【0051】
図4はサスペンション機構の構成を示す概略図である。サスペンション機構は、4台の脚上下シリンダ214a〜d(図1)それぞれに設けられており、ここでは1台を代表させて説明する。
【0052】
下部走行体用コントロールバルブ50内には、脚上下用シリンダ214aに対応したメインスプール90aが設けてあり、メインスプール90aの一方の出力ポートが、ボトム側管路95aを介して、脚上下シリンダ214aのボトム側室99aに接続されており、メインスプール90aのもう一方の出力ポートが、ロッド側管路96aを介して、脚上下シリンダ214aのロッド側室100aに接続されている。
【0053】
下部走行体用電磁比例弁83(図3)のうち脚上下用シリンダ214aに対応した電磁弁がメインスプール90aを位置Aまたは位置Bに切替えることにより、メインポンプ70からの圧油がボトム側室99aまたはロッド側室100aのいずれかに供給され、脚上下用シリンダ214aが伸縮する。
【0054】
ボトム側管路95aは途中で分岐され、その分岐路はパイロットチェックバルブ92aを介して、アキュームレータ91aに接続されている。ロッド側管路96aも途中で分岐され、その分岐路はパイロットチェックバルブ93aを介して作動油タンク25に接続されている。パイロットチェックバルブ92a,93aは、基本的に、一方向のみの圧油の流れを許容する。パイロットチェックバルブ92a,93aに、パイロットポンプ71のパイロット圧が供給されると、パイロットチェックバルブ92a,93aは開放され、逆方向の圧油の流れも許容する。
【0055】
パイロットチェックバルブ92a,93aを開放するパイロットラインの上流には電磁弁94が設けられている。電磁弁94は電磁弁コントローラ86の出力電流に基づき励磁される。電磁弁94は、パイロットラインを連通する位置Cとパイロットラインを遮断する位置D(図示)の2つの切換位置を有している。電磁弁94は、非励磁時にはバネにより位置Dに維持され、励磁されると位置Cに切替わる。
【0056】
〜制御〜
図5は、下部走行体用電磁弁コントローラ86の機能ブロック図である。下部走行体用電磁弁コントローラ86は、基本機能101に加えて、サスペンション機構作動不作動判定機能102を有している。
【0057】
基本機能101は、操作装置81からの操作指令を入力し、この操作指令に基づき、下部走行体用電磁比例弁83のうち操作指令に対応する電磁弁に励磁電流を出力する。例えば、図4において、操作装置81から脚上下シリンダ214aにかかる操作指令を入力し、この操作指令に基づき、下部走行体用電磁比例弁83のうち脚上下シリンダ214aに対応する電磁弁に励磁電流を出力する。これにより、脚上下用シリンダ214aに対応したメインスプール90aの位置が切替わり、脚上下用シリンダ214aが伸縮する。他にも、基本機能101は、走行用油圧モータ221aの走行制御等の制御を行う。
【0058】
サスペンション機構作動不作動判定機能102は、運転室4に設けられたサスペンション機構作動ON/OFFスイッチ97からの指令に基づいて、サスペンション機構の作動と不作動との切替えを判定し、判定結果に基づいて電磁弁94に切替指令を出力する。
【0059】
図6は、サスペンション機構作動不作動判定機能102の処理フローを示す図である。サスペンション機構作動不作動判定機能102は、サスペンション機構作動ON/OFFスイッチ97から指令を入力し、ON/OFFを判定する(ステップS401)。サスペンション機構作動ON指令を入力すると、サスペンション機構作動と判定し、電磁弁94に連通指令を出力する。具体的には、励磁電流を出力し、電磁弁94を励磁して位置Cに切替わるように駆動する(ステップS402)。サスペンション機構作動OFF指令を入力すると、サスペンション機構不作動と判定し、電磁弁94に遮断指令を出力する。具体的には、励磁電流出力を停止し、電磁弁94を位置Dに維持する(ステップS403)。
【0060】
〜動作〜
サスペンション機構の基本動作について説明する。
【0061】
オペレータがクローラユニット224aの位置を下げるように操作装置81を操作すると、メインスプール90aは位置Aに切替わり、メインポンプ70からの圧油が脚上下シリンダ214aのボトム側室99aに供給され、ロッド側室100aからの戻り油はタンク25に戻され、脚上下シリンダ214aが伸張する。これにより、脚ユニット202aは後方に揺動され、その結果、クローラユニット224aは下方に移動する。
【0062】
クローラユニット224aが接地していた場合、作業機1を持ち上げるように動作し、クローラユニット224aには路面からの反力が発生する。その結果、ボトム側室99aの圧力が高くなる。ボトム側室99aの圧力は、ボトム側管路95aを介してパイロットチェックバルブ92aに伝達される。ボトム側室99aの圧力がアキュームレータ91aの圧力より高くなれば、パイロットチェックバルブ92aを通ってアキュームレータ91a側に圧油が移動する。したがって、アキュームレータ91aは常にボトム側室99aの最高圧と同等の圧力に蓄圧される。
【0063】
クローラユニット224aが遊脚状態になるとサスペンション機構が作動する。パイロットチェックバルブ92a,93aにパイロット圧が供給され、パイロットチェックバルブ92a,93aが開放され、アキュームレータ91aに蓄えられた圧油がボトム側管路95aを介して脚上下シリンダ214aのボトム側室99aに供給される。一方、パイロットチェックバルブ93aが開放されると、ロッド側室100aからの戻り油はタンク25に戻され、脚上下シリンダ214aが自動的に伸張する。アキュームレータ91aの圧力によるクローラユニット224aの押付カと同等の反力を路面から得られるまで、クローラユニット224aは下方に移動し自動的に接地状態となる。
【0064】
これにより、遊脚状態に係る課題を解決できる。
【0065】
走行時のサスペンション機構の動作について説明する。
【0066】
凹凸のある起伏の激しい路面を走行するとき、オペレータは、運転室4に設けられたサスペンション機構作動ON/OFFスイッチ97をONにする。これにより、サスペンション機構が作動する(S401→S402)。走行中、例えばクローラユニット224aの接地面が陥没して、クローラユニット224aが遊脚状態になった場合、サスペンション機構は、自動的にクローラユニット224aを接地させる。
【0067】
これにより、走行安定性を向上させることができる。
【0068】
なお、整地された路面を走行するとき、サスペンション機構作動ON/OFFスイッチ97をOFFにしてもよい。
【0069】
障害物踏破時のサスペンション機構の動作について説明する。
【0070】
災害復旧作業の現場では、路面に予想できないような障害物がある可能性もある。オペレータはクローラユニット224aの位置を上げるように操作装置81を操作する。メインスプール90aは位置Bに切替わり、メインポンプ70からの圧油が脚上下シリンダ214aのロッド側室100aに供給され、ボトム側室99aからの戻り油はタンク25に戻され、脚上下シリンダ214aが短縮する。これにより、脚ユニット202aは前方に揺動され、その結果、クローラユニット224aは上方に移動する。クローラユニット224aが障害物の上方に位置するまで、クローラユニット224aを上方に移動することにより、作業機械1は障害物を踏破できる。
【0071】
一方、クローラユニット224aを上方に移動する際、一時的に遊脚状態になるが、このときサスペンション機構が作動すると、クローラユニット224aを上方に移動する動作と干渉してしまい、作業機械1の踏破性が低下する。
【0072】
そのため、オペレータは、サスペンション機構作動ON/OFFスイッチ97をOFFにする。パイロットチェックバルブ92a,93aへのパイロット圧は遮断され、パイロットチェックバルブ92a,93aはアキュームレータ91aからの圧油の流れを許容せず、サスペンション機構が不作動となる(S401→S403)。
【0073】
これにより、踏破性を維持することができる。
【0074】
フロント作業時のサスペンション機構の動作について説明する。
【0075】
作業機械1は、作業フロント6を用いて解体や掘削等の作業を行う。フロント作業中は断続的に作業フロント装置6の先端に外力が加わる。作業フロント6先端に外力が加わると、作業機械1の重心Mが変化し、油圧システムに発生する回路圧も変化する。例えば、はつり作業において、ブレーカ22に反力が作用すると、作業機械1の重心Mが後方に移動し、クローラユニット224aに作用する接地面からの反力は減少する。これに伴う回路圧の変化に応じてサスペンション機構が作動すると、脚上下シリンダ214aが自動的に伸張する。その結果、ブレーカ22の先端位置も上方に移動するため、オペレータは意図する作業ができず、操作性は著しく悪化する。また、運転室4の位置も上方に移動するため、居住性も著しく悪化する。
【0076】
そのため、オペレータは、サスペンション機構作動ON/OFFスイッチ97をOFFにする。パイロットチェックバルブ92a,93aへのパイロット圧は遮断され、パイロットチェックバルブ92a,93aはアキュームレータ91aからの圧油の流れを許容せず、サスペンション機構が不作動となる(S401→S403)。
【0077】
一方、フロント作業時には、作業面の安定性を確認してから作業を開始することが一般的であり、サスペンション機構作動の必要性は少ない。
【0078】
これにより、フロント作業時の操作性・居住性を維持できる。
【0079】
なお、フロント作業時であっても、例えば均し作業など作業フロント6先端に加わる外力が少なく、一方で、作業面の崩壊により遊脚状態に係る課題が発生するおそれがある場合は、サスペンション機構作動ON/OFFスイッチ97をONにしてもよい。
【0080】
〜効果〜
以上のように構成した本実施形態においては、走行時は、サスペンション機構作動ON/OFFスイッチ97をONにすることにより、走行安定性を向上させることができる。障害物踏破時、フロント作業時は、サスペンション機構作動ON/OFFスイッチ97をOFFにすることにより、踏破性やフロント作業時の操作性・居住性を維持できる。
【0081】
〜その他〜
本実施形態では、走行ユニットとして、クローラユニット224a〜dを用いたが、ホイールを用いてもよい。
【0082】
<第2実施形態>
〜構成〜
第2実施形態における構成は、第1実施形態における構成と共通する。
【0083】
〜制御〜
本発明の第2実施形態を図7、図8を用いて説明する。図7は、第2実施形態に係わる下部走行体用電磁弁コントローラ86の機能ブロック図である。図5に示した構成と同等のものには同じ符号を付している。
【0084】
図5において、説明の簡略化のため、走行用油圧モータ221aの走行制御は、基本機能101の一機能である旨を説明したが、図8では基本機能101の一機能として走行制御機能103aを明示している。
【0085】
走行制御機能103aは、操作装置81から走行用油圧モータ221aにかかる操作指令を入力し、この操作指令に基づき、下部走行体用電磁比例弁83のうち走行用油圧モータ221aに対応する電磁弁に励磁電流(走行指令)を出力する。これにより、走行用油圧モータ221aに対応した下部走行体用コントロールバルブ50内のメインスプールの位置が切替わり、走行用油圧モータ221aが回転する。
【0086】
同時に、走行制御機能103aは、この走行指令をサスペンション機構作動不作動判定機能102にも出力する。操作装置81から走行用油圧モータ221aにかかる操作指令が全くない場合は、走行停止指令を出力する。
【0087】
サスペンション機構作動不作動判定機能102は、走行停止指令に基づいて、サスペンション機構の作動と不作動との切替えを判定し、判定結果に基づいて電磁弁94に切替指令を出力する。
【0088】
図8は、第2実施形態に係わるサスペンション機構作動不作動判定機能102の処理フローを示す図である。サスペンション機構作動不作動判定機能102は、サスペンション機構作動ON/OFFスイッチ97から指令を入力し、ON/OFFを判定する(ステップS401)。サスペンション機構作動ON指令を入力すると、更に走行制御機能103aによる走行停止指令の有無を判定する(ステップS404)。
【0089】
ステップS404において、走行停止指令無(走行指令有)と判定されると、サスペンション機構作動と判定し、電磁弁94に連通指令を出力する。具体的には、励磁電流を出力し、電磁弁94を励磁して位置Cに切替わるように駆動する(ステップS402)。
【0090】
ステップS401においてサスペンション機構作動OFF指令を入力すると、または、ステップS404において、走行停止指令有(走行指令無)と判定されると、サスペンション機構不作動と判定し、電磁弁94に遮断指令を出力する。具体的には、励磁電流出力を停止し、電磁弁94を位置Dに維持する(ステップS403)。
【0091】
〜動作〜
走行時のサスペンション機構の動作について説明する。
【0092】
凹凸のある起伏の激しい路面を走行するとき、オペレータは、サスペンション機構作動ON/OFFスイッチ97をONにする。このとき、走行制御機能103aは走行指令を出力している(走行停止指令無)。これにより、サスペンション機構が作動する(S401→S404→S402)。これにより、走行安定性を向上させることができる。
【0093】
障害物踏破時のサスペンション機構の動作について説明する。
【0094】
作業機械1が障害物を踏破するように、クローラユニット224aを上方に移動する際、オペレータは、サスペンション機構作動ON/OFFスイッチ97をOFFにする。パイロットチェックバルブ92a,93aへのパイロット圧は遮断され、パイロットチェックバルブ92a,93aはアキュームレータ91aからの圧油の流れを許容せず、サスペンション機構が不作動となる(S401→S403)。これにより、踏破性を維持することができる。
【0095】
なお、このとき、走行制御機能103aは走行停止指令を出力しているが、サスペンション機構作動不作動判定機能102は、これに影響されず、上記のように、サスペンション機構不作動と判定する。
【0096】
フロント作業時のサスペンション機構の動作について説明する。
【0097】
フロント作業中は、オペレータは、サスペンション機構作動ON/OFFスイッチ97をOFFにする。パイロットチェックバルブ92a,93aへのパイロット圧は遮断され、パイロットチェックバルブ92a,93aはアキュームレータ91aからの圧油の流れを許容せず、サスペンション機構が不作動となる(S401→S403)。これにより、フロント作業時の操作性・居住性を維持できる。
【0098】
ただし、サスペンション機構作動ON/OFFスイッチ97はオペレータによる手動切替であり、切替えし忘れることも有り得る。また、手動切替はオペレータの操作負担となる。
【0099】
本実施形態では、サスペンション機構作動不作動判定機能102は、サスペンション機構作動ON指令に基づいて、サスペンション機構作動と判定する場合でも、走行停止指令に基づいて、サスペンション機構不作動と判定する(S401→S404→S403)。オペレータがサスペンション機構作動ON/OFFスイッチ97をONのまま切替え忘れたとしても、フロント作業のため走行を停止すると、走行制御機能103aは走行停止指令を出力し、これに基づき、サスペンション機構作動不作動判定機能102は、サスペンション機構不作動と判定する。すなわち、自動的に、サスペンション機構を不作動にできる。
【0100】
これにより、切替し忘れを防止できるとともに、切替え操作負担を軽減できる。
【0101】
〜効果〜
以上のように構成した本実施形態においては、第1実施形態と同様に、走行安定性を向上させるとともに、障害物踏破時、フロント作業時の操作性・居住性を維持できる。
【0102】
更に、本実施形態においては、切替し忘れを防止できるとともに、切替え操作負担を軽減できる。
【0103】
〜変形例〜
特殊な例として、フロント作業時であっても、例えば均し作業など作業フロント6先端に加わる外力が少なく、一方で、作業面の崩壊により遊脚状態に係る課題が発生するおそれがある場合もある。このような場合、フロント作業中でもサスペンション機構が作動していることが好ましい。
【0104】
しかし、オペレータが意図的にサスペンション機構作動ON/OFFスイッチ97をONのままにしたとしても、自動的にサスペンション機構が不作動となり、遊脚状態に係る課題が発生した場合に対応できない。
【0105】
したがって、本実施形態の自動切替を無効にできる機能を更に付加してもよい。オペレータは、運転室4に設けられたモニタを介して自動切替無効を設定する。
【0106】
図9は、変形例に係わるサスペンション機構作動不作動判定機能102の処理フローを示す図である。サスペンション機構作動不作動判定機能102は、サスペンション機構作動ON指令を入力すると、さらに、自動切替無効化が設定されているか否かを判定し、自動切替無効化が設定されていると判定すると、走行停止指令に影響されず、サスペンション機構作動と判定する(S401→S405→S402)。
【0107】
このように、自動切替を無効とすることで、走行停止時であっても、サスペンション機構が作動し、遊脚状態が発生した場合にも対応できる。
【0108】
<第3実施形態>
〜構成〜
第3実施形態における構成は、第1実施形態における構成と共通する。
【0109】
〜制御〜
本発明の第3実施形態を図10、図11を用いて説明する。図10は、第3実施形態に係わる下部走行体用電磁弁コントローラ86の機能ブロック図である。図5に示した構成と同等のものには同じ符号を付している。
【0110】
図5において、下部走行体用電磁弁コントローラ86の機能ブロック図について説明し、上部旋回体用電磁弁コントローラ85の機能について省略したが、図10では上部旋回体用電磁弁コントローラ85の機能ブロック図もあわせて明示している。
【0111】
上部旋回体用電磁弁コントローラ85の基本機能105は、操作装置80からの操作指令を入力し、この操作指令に基づき、上部旋回体用電磁比例弁82のうち操作指令に対応する電磁弁に励磁電流を出力する。例えば、操作装置80からアームシリンダ12にかかる操作指令を入力し、この操作指令に基づき、上部旋回体用電磁比例弁82のうちアームシリンダ12に対応する電磁弁に励磁電流を出力する。これにより、上部旋回体用コントロールバルブ30のうちアームシリンダ12に対応したメインスプールの位置が切替わり、アームシリンダ12が伸縮する。他にも、基本機能105は、ブームシリンダ11やバケットシリンダ15の駆動制御や、旋回モータ9の回転制御等の制御を行う。
【0112】
作業フロント6は、ブームシリンダ11,アームシリンダ12,バケットシリンダ15が基本機能105により制御されることにより、制御される。
【0113】
同時に、上部旋回体用電磁弁コントローラ85の基本機能105は、作業フロント6に係る操作指令をサスペンション機構作動不作動判定機能102にも出力する。
【0114】
サスペンション機構作動不作動判定機能102は、この操作指令に基づいて、サスペンション機構の作動と不作動との切替えを判定し、判定結果に基づいて電磁弁94に切替指令を出力する。
【0115】
図11は、第3実施形態に係わるサスペンション機構作動不作動判定機能102の処理フローを示す図である。サスペンション機構作動不作動判定機能102は、サスペンション機構作動ON/OFFスイッチ97から指令を入力し、ON/OFFを判定する(ステップS401)。サスペンション機構作動ON指令を入力すると、更に作業フロント6に係る操作指令の有無を判定する(ステップS406)。
【0116】
ステップS406において、操作指令無と判定されると、この状態が一定時間経過したか判定する(ステップS407)。一定時間が経過するまで、ステップS406、ステップS406の判定を繰り返す。一定時間、操作指令無と判定されると、サスペンション機構作動と判定し、電磁弁94に連通指令を出力する。具体的には、励磁電流を出力し、電磁弁94を励磁して位置Cに切替わるように駆動する(ステップS402)。
【0117】
ステップS401においてサスペンション機構作動OFF指令を入力すると、または、ステップS406において、操作指令指令有と判定されると、サスペンション機構不作動と判定し、電磁弁94に遮断指令を出力する。具体的には、励磁電流出力を停止し、電磁弁94を位置Dに維持する(ステップS403)。
【0118】
〜動作〜
走行時のサスペンション機構の動作について説明する。
【0119】
凹凸のある起伏の激しい路面を走行するとき、オペレータは、サスペンション機構作動ON/OFFスイッチ97をONにする。走行中は、作業フロント6にかかる操作がされることはない。これにより、サスペンション機構が作動し(S401→S406→S407→S402)、走行安定性を向上させることができる。
【0120】
障害物踏破時のサスペンション機構の動作について説明する。
【0121】
作業機械1が障害物を踏破するように、クローラユニット224aを上方に移動する際、オペレータは、サスペンション機構作動ON/OFFスイッチ97をOFFにする。パイロットチェックバルブ92a,93aへのパイロット圧は遮断され、パイロットチェックバルブ92a,93aはアキュームレータ91aからの圧油の流れを許容せず、サスペンション機構が不作動となる(S401→S403)。これにより、踏破性を維持することができる。
【0122】
なお、このとき、作業フロント6にかかる操作がされることは少ないが、サスペンション機構作動不作動判定機能102は、これに影響されず、上記のように、サスペンション機構不作動と判定する。
【0123】
フロント作業時のサスペンション機構の動作について説明する。
【0124】
フロント作業中は、オペレータは、サスペンション機構作動ON/OFFスイッチ97をOFFにする。パイロットチェックバルブ92a,93aへのパイロット圧は遮断され、パイロットチェックバルブ92a,93aはアキュームレータ91aからの圧油の流れを許容せず、サスペンション機構が不作動となる(S401→S403)。これにより、フロント作業時の操作性・居住性を維持できる。
【0125】
ただし、サスペンション機構作動ON/OFFスイッチ97はオペレータによる手動切替であり、切替えし忘れることも有り得る。また、手動切替はオペレータの操作負担となる。
【0126】
本実施形態では、サスペンション機構作動不作動判定機能102は、サスペンション機構作動ON指令に基づいて、サスペンション機構作動と判定する場合でも、作業フロント6に係る操作指令に基づいて、サスペンション機構不作動と判定する(S401→S406→S403)。オペレータがサスペンション機構作動ON/OFFスイッチ97をONのまま切替え忘れたとしても、フロント作業のため基本機能105は作業フロント6に係る操作指令を出力し、これに基づき、サスペンション機構作動不作動判定機能102は、サスペンション機構不作動と判定する。すなわち、自動的に、サスペンション機構を不作動にできる。
【0127】
これにより、切替し忘れを防止できるとともに、切替え操作負担を軽減できる。
【0128】
また、フロント作業中、作業と作業との間に、一時的に作業フロント6にかかる操作がなされない場合もあるが、一定時間経過しなければ、サスペンション機構は作動しない(S401→S406→S407→S406→S403)。
【0129】
これにより、フロント作業中のオペレータの意図せぬ切替を防止できる。また、作業フロント停止時のショックによって、脚上下シリンダ214a内の圧油が移動し、サスペンション機構が作動することを防止できる。
【0130】
〜効果〜
以上のように構成した本実施形態においては、第1実施形態と同様に、走行安定性を向上させるとともに、障害物踏破時、フロント作業時の操作性・居住性を維持できる。
【0131】
更に、本実施形態においては、切替し忘れを防止できるとともに、切替え操作負担を軽減できる。
【0132】
〜変形例〜
第2実施形態の変形例と同様に、本実施形態の自動切替を無効にできる機能を更に付加してもよい。これにより、フロント作業中であっても、サスペンション機構が作動し、遊脚状態が発生した場合にも対応できる。
【符号の説明】
【0133】
1 作業機械
2 下部走行体
3 上部旋回体
4 運転室
5 エンジン
6 作業フロント
7 ポンプユニット
8 カウンタウエイト
9 旋回モータ
10 ブーム
11 ブームシリンダ
12 アーム
13 アームシリンダ
15 バケットシリンダ
20 グラップル
21 カッタ
22 ブレーカ
23 バケット
25 作動油タンク
26 上部旋回体用アクチュエータ
27 下部走行体用アクチュエータ
30 上部旋回体用コントロールバルブ
39 アクチュエータ油路
40〜42 支点
50 下部走行体用コントロールバルブ
59 アクチュエータ油路
70 メインポンプ
71 パイロットポンプ
80 操作装置(上部旋回体用)
81 操作装置(下部走行体用)
82 電磁比例弁(上部旋回体用)
83 電磁比例弁(下部走行体用)
84 通信用コントローラ
85 電磁弁コントローラ(上部旋回体用)
86 電磁弁コントローラ(下部走行体用)
87 スリップリング
88 センタジョイント
90a〜d メインスプール(脚上下シリンダ用)
91a〜d アキュームレータ
92a〜d パイロットチェックバルブ(アキュームレータ接続)
93a〜d パイロットチェックバルブ(タンク接続)
94 電磁弁(サスペンション切替)
95a〜d ボトム側管路
96a〜d ロッド側管路
97 サスペンション機構作動ON/OFFスイッチ
99a〜d ボトム側室(脚上下シリンダ)
100a〜d ロッド側室(脚上下シリンダ)
101 基本機能(下部走行体用電磁弁コントローラ)
102 サスペンション機構作動不作動判定機能
103a〜d 走行制御機能
105 基本機能(上部旋回体用電磁弁コントローラ)
201 センタフレーム
202a〜d 脚ユニット
203a〜d 脚根元ブラケット
204a〜d 脚フレーム
205a〜d 脚先端ブラケット
206a〜d ステアリングシリンダ
207a〜d サイドフレーム
208a〜d 支点(センタフレームー脚根元ブラケット)
209a〜d 支点(脚根元ブラケット−脚フレーム)
210a〜d 支点(脚フレーム−脚先端ブラケット)
211a〜d 支点(脚根元ブラケット−リンクロッド)
212a〜d 支点(リンクロッド−脚先端ブラケット)
213a〜d 支点(サイドフレーム受動軸)
214a〜d 脚上下シリンダ
215a〜d 脚左右シリンダ
217a〜d アイドラ
218a〜d 下側転輪
219a〜d 上側転輪
220a〜d 駆動スプロケット
221a〜d 走行用油圧モータ
222a〜d 履帯
223a〜d 角度センサ
224a〜d クローラユニット
315a〜d クローラユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転室を設けた上部旋回体と、前記上部旋回体に設けられた作業フロント装置と、前記上部旋回体の下部に設けられ、少なくとも4台の上下位置を自由に調整可能な走行ユニットを含む下部走行体と、この走行ユニットを前後に揺動させて走行ユニットの上下位置を調整する油圧シリンダ機構を有する作業機械において、
更に、前記走行ユニットが接地するように作動するサスペンション機構を
備えることを特徴とする作業機械。
【請求項2】
請求項1記載の作業機械において、
更に、サスペンション機構の作動と不作動とを切替えるサスペンション機構作動切替手段を
備えることを特徴とする作業機械。
【請求項3】
請求項2記載の作業機械において、
前記油圧シリンダ機構は、油圧シリンダと、この油圧シリンダに供給される圧油の方向と流量を制御する方向切替弁と、油圧シリンダボトム側と方向切替弁を接続するボトム側管路と、油圧シリンダロッド側と方向切替弁を接続するロッド側管路とを有し、
前記サスペンション機構は、前記ボトム側管路から分岐して設けられるアキュミュレータと、このアキュミュレータとボトム側管路との間に設けられるボトム側パイロットチェック弁と、タンクとロッド側管路との間に設けられるロッド側パイロットチェック弁とを有する
ことを特徴とする作業機械。
【請求項4】
請求項3記載の作業機械において、
前記方向切替弁の切替制御を含む各種制御をおこなう制御手段を備え、
前記サスペンション機構作動切替手段は、
前記運転室に設けられたサスペンション機構作動ON/OFFスイッチと、
前記制御手段の一機能であり、前記サスペンション機構作動ON/OFFスイッチからの指令に基づいて、サスペンション機構の作動と不作動との切替えを判定するサスペンション機構作動不作動判定機能と、
このサスペンション機構作動不作動判定機能がサスペンション機構不作動と判定すると、前記ボトム側パイロットチェック弁およびロッド側パイロットチェック弁に供給されるパイロット圧を遮断する遮断弁と
を有することを特徴とする作業機械。
【請求項5】
請求項4記載の作業機械において、
前記制御手段は、作業機械の走行および走行停止に係る制御をおこなう走行制御機能を有し、
前記サスペンション機構作動不作動判定機能は、走行制御機能による走行停止指令に基づいて、サスペンション機構の作動と不作動との切替えを判定する
ことを特徴とする作業機械。
【請求項6】
請求項5記載の作業機械において、
前記サスペンション機構作動不作動判定機能は、サスペンション機構作動ON指令に基づいて、サスペンション機構作動と判定する場合でも、走行停止指令に基づいて、サスペンション機構不作動と判定すると、前記遮断弁に遮断指令を出力する
ことを特徴とする作業機械。
【請求項7】
請求項4記載の作業機械において、
前記制御手段は、前記作業フロント装置の作動および不作動に係る制御をおこなう作業フロント装置作動制御機能を有し、
前記サスペンション機構作動不作動判定機能は、作業フロント装置作動制御機能による作業フロント装置作動指令に基づいて、サスペンション機構の作動と不作動との切替えを判定する
ことを特徴とする作業機械。
【請求項8】
請求項7記載の作業機械において、
前記サスペンション機構作動不作動判定機能は、サスペンション機構作動ON指令に基づいて、サスペンション機構作動と判定する場合でも、作業フロント装置作動指令に基づいて、サスペンション機構不作動と判定すると、前記遮断弁に遮断指令を出力する
ことを特徴とする作業機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−46080(P2012−46080A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−190210(P2010−190210)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】