作業車両の変速スイッチ配置構造
【課題】変速スイッチを操作する際の手の移動量を可及的に小さくして、オペレータの疲労を軽減できるだけでなく、片手運転時間を短くする。また、変速スイッチを操作する際の視線の移動量も小さくし、オペレータの疲労をさらに軽減させる。
【解決手段】変速スイッチ(増速操作検出スイッチ25、減速操作検出スイッチ26)の操作に応じて走行変速装置(第一主変速装置5及び第二主変速装置8)を変速作動させるトラクタTにおいて、変速スイッチ(増速操作検出スイッチ25、減速操作検出スイッチ26)をステアリングコラム31に設ける。
【解決手段】変速スイッチ(増速操作検出スイッチ25、減速操作検出スイッチ26)の操作に応じて走行変速装置(第一主変速装置5及び第二主変速装置8)を変速作動させるトラクタTにおいて、変速スイッチ(増速操作検出スイッチ25、減速操作検出スイッチ26)をステアリングコラム31に設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変速スイッチの操作に応じて走行変速装置を変速作動させるトラクタなどの作業車両の変速スイッチ配置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
変速スイッチの操作に応じて走行変速装置を変速作動させる作業車両が知られている。例えば、特許文献1に示される作業車両は、走行動力伝動経路中に、油圧式の主変速装置と、手動式の副変速装置とを備えると共に、該副変速装置の変速レバー(以下、副変速レバーという)に、増速スイッチ、減速スイッチなどの変速スイッチを配置し、これら変速スイッチの操作に応じて主変速装置を変速作動させる構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−351335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の作業車両で主変速装置を変速操作する場合、ステアリングハンドルから片手を離して副変速レバーを握り、副変速レバーに設けられた変速スイッチを操作することになるが、副変速レバーは、通常、運転座席の側方近傍に配置されているので、ステアリングハンドルから副変速レバーまでの手の移動量が大きくなり、オペレータの疲労の原因となるだけでなく、片手運転時間が長くなるという問題がある。
【0005】
また、特許文献1の作業車両で主変速装置を変速操作する場合、副変速レバーの位置を目視確認した後、副変速レバーを握って変速スイッチを操作しつつ、メータパネル内に配置されている段数表示部で変速段を確認する必要があるので、視線の移動量が大きくなり、オペレータの疲労の原因となる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、変速スイッチの操作に応じて走行変速装置を変速作動させる作業車両において、前記変速スイッチをステアリングコラムに設けたことを特徴とする。
また、前記ステアリングコラムは、チルトハンドルを構成すると共に、ステアリングハンドルのチルト動作に一体的に追従し、前記変速スイッチは、ステアリングコラムに設けられる操作レバーの操作に応じて入り切りされることを特徴とする。
また、前記変速スイッチは、ステアリングコラムに設けられる前後進切換レバーの操作に応じて入り切りされることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明によれば、ステアリングハンドルの近傍に変速スイッチを配置できるので、変速スイッチを操作する際の手の移動量を可及的に小さくして、オペレータの疲労を軽減できるだけでなく、片手運転時間を短くすることができる。しかも、変速スイッチを操作する際の視線の移動量も小さくすることができるので、オペレータの疲労をさらに軽減することができる。
また、請求項2の発明によれば、レバー操作で変速スイッチを入り切りさせるので、変速スイッチを直接操作する場合に比べ、操作性を向上させることができる。しかも、操作レバーは、チルトハンドルを構成するステアリングコラムに設けられるので、オペレータの体格に合わせて変更されるステアリングハンドルのチルト動作に伴って、変速レバーの位置を常に適切な位置に変更することができる。
また、請求項3の発明によれば、前後進切換レバーを主変速レバーに兼用することができるので、別途専用の操作レバーを設ける場合に比べ、構造の簡略化やコストダウンを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】トラクタの側面図である。
【図2】トランスミッションケースの全体断面図である。
【図3】トラクタの油圧構成を示す油圧回路図である。
【図4】操作部の平面図である。
【図5】メータパネルの正面図である。
【図6】副変速装置が高速側に切り換えられた状態におけるシフトアップ制御の制御例を示すタイミングチャートである。
【図7】副変速装置が高速側に切り換えられた状態におけるシフトアップ制御の制御例を示すフローチャートである。
【図8】ステアリングハンドル周辺(左コラムカバー取外状態)を示す正面図である。
【図9】ステアリングハンドル周辺を示す斜視図である。
【図10】本発明の第二実施形態に係る操作部の平面図である。
【図11】本発明の第二実施形態に係る操作部の側面図である。
【図12】本発明の第二実施形態に係る操作部の側断面図である。
【図13】本発明の第二実施形態に係るステアリングハンドル周辺(コラムカバー取外状態)を示す側面図である。
【図14】本発明の第二実施形態に係る操作部のA矢視図である。
【図15】本発明の第二実施形態に係る操作部(ステアリングハンドル取外状態)のA矢視図である。
【図16】本発明の第二実施形態に係るステアリングハンドル周辺(ステアリングハンドル及びコラムカバー取外状態)のA矢視図である。
【図17】本発明の第二実施形態に係る操作部のB矢視図である。
【図18】本発明の第二実施形態に係る操作部の斜視図である。
【図19】本発明の第三実施形態に係る操作部の平面図である。
【図20】本発明の第三実施形態に係る操作部の側断面である。
【図21】本発明の第三実施形態に係るステアリングハンドル周辺の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図1において、Tは農用のトラクタ(作業車両)であって、該トラクタTには、トランスミッションケース1が搭載されている。図2に示すように、トランスミッションケース1は、主クラッチ機構2を介してエンジンEの動力を入力すると共に、入力した動力を走行動力伝動経路3とPTO動力伝動経路4とに分岐させる。
【0010】
走行動力伝動経路3には、摩擦多板式の油圧クラッチC1〜C4を用いて構成され、4段の変速を行う第一主変速装置5と、摩擦多板式の油圧クラッチCF、CRを用いて構成され、走行動力の正逆転変速を行う前後進切換装置6と、常時噛合式の歯車変速装置を用いて構成され、3段の変速を行う副変速装置7と、摩擦多板式の油圧クラッチCL、CHを用いて構成され、高低2段の変速を行う第二主変速装置8とが設けられている。
【0011】
上記の構成によれば、前後進切換装置6による変速によって前進と後進の切り換えができると共に、第一主変速装置5と第二主変速装置8による変速の組み合せによって8段の走行変速が可能であり、さらに、副変速装置7による変速を組み合せることによって24段の走行変速が可能になる。
【0012】
第一主変速装置5、副変速装置7及び第二主変速装置8で変速された走行動力は、前車軸及び後車軸に伝動される。前車軸への動力伝動経路には、前車軸に伝達する動力を高低に変速又は切断する倍速伝動装置9が設けられており、該倍速伝動装置9による動力の変速又は切断によって、旋回時における前輪倍速駆動や4駆、2駆の切換えが行われるようになっている。
【0013】
PTO動力伝動経路4には、摩擦多板式の油圧クラッチを用いて構成されるPTOクラッチ10と、常時噛合式の歯車変速装置を用いて構成されるPTO変速装置11とが設けられており、走行状態に影響されない独立したPTO動力伝動系、すなわち、インディペンデントPTO仕様のPTO動力伝動経路4を構成している。
【0014】
本実施形態のトラクタTには、図3に示すような油圧回路が構成されている。この油圧回路は、2つの油圧ポンプP1、P2を備え、一方の油圧ポンプP1から供給される油圧で、倍速伝動装置9、リフトシリンダ12及びリフトロッドシリンダ13を動作させ、他方の油圧ポンプP2から供給される油圧で、ステアリングユニット14、第一主変速装置5、前後進切換装置6、第二主変速装置8、PTOクラッチ10及び自動ブレーキ旋回装置15を動作させるように構成されている。
【0015】
本実施形態では、第一主変速装置5の各油圧クラッチC1〜C4を、それぞれ電磁比例弁16a〜16dの昇圧制御にもとづいて択一的に作動制御し、第二主変速装置8の各油圧クラッチCL、CHを、電磁方向切換弁17の切換え制御にもとづいて作動制御する。このようにすると、第一主変速装置5及び第二主変速装置8の各油圧クラッチC1〜C4、CL、CHをすべて電磁比例弁で制御するものに比べ、走行変速装置を安価に構成することができる。また、変速の度に第二主変速装置8の油圧クラッチCL、CHを断続する必要がないので、第二主変速装置8に設けられる油圧クラッチCL、CHの耐久性を向上させるためのコストアップが回避される。尚、第二主変速装置8の油圧クラッチCL、CHを作動させる油路には、油圧クラッチCL、CHの接続状態を検出すための圧力スイッチ18が設けられ、また、油圧回路の適所には、作動油の温度を検出するための油温センサ19が設けられている。
【0016】
図1及び図4に示すように、トラクタTの機体上には、オペレータが乗車する操作部20が構成されている。操作部20には、オペレータが着座する運転席21が設けられると共に、走行操作や作業機22の操作を行うための各種操作具が設けられている。例えば、運転席21の前方には、機体を操向するためのステアリングハンドル23、前後進切換装置6を切り換えるための前後進切換レバー24、第一主変速装置5及び第二主変速装置8を変速操作するための変速スイッチ(増速操作検出スイッチ25、減速操作検出スイッチ26)、作業機22を昇降操作するための作業機昇降レバー27などが設けられ、運転席21の左側方には、副変速装置7を切り換えるための副変速レバー28などが設けられている。
【0017】
図5に示すように、運転席21の前方には、メータパネル29が設けられている。メータパネル29内には、タコメータや各種のモニタランプが設けられるだけでなく、各種の状態表示や設定表示を行う表示部30が設けられている。本実施形態の表示部30は、液晶パネルで構成されており、主変速装置5、8や副変速装置7の変速段数表示を行うようになっている。
【0018】
トラクタTには、マイコンなどを用いて構成される走行制御用の制御装置(図示せず)が設けられている。制御装置の入力側には、前述した圧力スイッチ18、油温センサ19、変速スイッチ(増速操作検出スイッチ25、減速操作検出スイッチ26)に加え、副変速レバー28の操作位置(高速、中速、低速、ニュートラル)を検出する4つの副変速スイッチ(図示せず)と、前後進切換レバー24の操作位置(前進、後進、ニュートラル)を検出する3つの前後進スイッチ(図示せず)と、車速を検出する車速センサ(図示せず)と、エンジン回転を検出するエンジン回転センサ(図示せず)とが接続される一方、出力側には、前述した電磁比例弁16a〜16d、電磁方向切換弁17、表示部30などが接続されている。
【0019】
そして、制御装置は、オペレータの変速操作に応じて、主に電磁比例弁16a〜16d及び電磁方向切換弁17を制御し、各種の変速パターンを現出させる走行変速制御を行う。具体的には、変速スイッチの増速側(増速操作検出スイッチ25)の入り(ON)に応じて第一主変速装置5及び第二主変速装置8を変速させるシフトアップ制御、変速スイッチの減速側(減速操作検出スイッチ26)の入り(ON)に応じて第一主変速装置5及び第二主変速装置8を変速させるシフトダウン制御、副変速レバー28の操作に応じて第一主変速装置5及び第二主変速装置8を変速させる副変速操作連動制御、エンジン始動時における第一主変速装置5及び第二主変速装置8の初期変速段を設定する初期変速段設定制御、前後進切換レバー24の操作に応じて第一主変速装置5及び第二主変速装置8を変速させる前後進操作連動制御などが行われるようになっている。例えば、副変速装置7が高速側に切り換えられた状態で増速操作検出スイッチ25が入りとなった場合には、図6及び図7に示すような手順でシフトアップ制御が行われる。
【0020】
次に、ステアリングハンドル23の周辺構成及び変速スイッチの配置構成について、図8及び図9を参照して説明する。
【0021】
ステアリングハンドル23は、図示しないステアリング軸を介してステアリングコラム31に支持されている。ステアリングコラム31は、左右を向くチルト支軸32を中心として前後傾動自在に構成されると共に、任意の傾斜角で固定できるようになっている。つまり、ステアリングコラム31は、ステアリングハンドル23の前後傾斜を調節するチルトハンドル機構の一部を構成すると共に、ステアリングハンドル23のチルト動作に一体的に追従するようになっている。
【0022】
前後進切換レバー24及び作業機昇降レバー27も、ステアリングコラム31に支持されており、ステアリングハンドル23のチルト動作に一体的に追従するようになっている。前後進切換レバー24は、ステアリングコラム31の左側に前後操作自在に配置され、ニュートラル位置から前方への操作にもとづいて、機械的に連繋される前後進切換装置6が前進側に切換わる一方、ニュートラル位置から後方への操作にもとづいて、前後進切換装置6が後進側に切換わるようになっている。
【0023】
また、作業機昇降レバー27は、ステアリングコラム31の右側に上下操作自在に配置され、ニュートラル位置から上方への操作にもとづいて、作業機22が上昇制御され、ニュートラル位置から下方への操作にもとづいて、作業機22が下降制御されるようになっている。なお、作業機22の昇降制御は、作業機制御用の制御装置(図示せず)により実行されるが、本発明の要部ではないので、説明を省略する。
【0024】
変速スイッチは、増速操作検出スイッチ25と減速操作検出スイッチ26からなり、ステアリングコラム31に設けられる前後進切換レバー24の所定方向の操作(前後進切換操作とは異なる方向の操作)に応じて入り切りするように配置されている。例えば、前後進切換レバー24の基端部に、前後方向を向くレバー操作支点33を追加し、前後進切換レバー24の左右方向(上下方向)の操作を可能にすると共に、前後進切換レバー24の左方向の操作時に増速操作検出スイッチ25が入りとなるように配置し、前後進切換レバー24の右方向の操作時に減速操作検出スイッチ26が入りとなるように配置する。
【0025】
このようにすると、図9に示すように、前後進切換レバー24を前進側(前方)又は後進側(後方)に操作した状態において、前後進切換レバー24を左方向に操作すると、増速操作検出スイッチ25の入りに応じて、第一主変速装置5及び第二主変速装置8のシフトアップ制御が実行され、前後進切換レバー24を右方向に操作すると、減速操作検出スイッチ26の入りに応じて、第一主変速装置5及び第二主変速装置8のシフトダウン制御が実行されることになる。
【0026】
叙述の如く構成された本実施形態によれば、変速スイッチ(増速操作検出スイッチ25、減速操作検出スイッチ26)の操作に応じて走行変速装置(第一主変速装置5及び第二主変速装置8)を変速作動させるトラクタTにおいて、変速スイッチ(増速操作検出スイッチ25、減速操作検出スイッチ26)をステアリングコラム31に設けたので、ステアリングハンドル23の近傍に変速スイッチ(増速操作検出スイッチ25、減速操作検出スイッチ26)を配置でき、その結果、変速スイッチ(増速操作検出スイッチ25、減速操作検出スイッチ26)を操作する際の手の移動量を可及的に小さくして、オペレータの疲労を軽減できるだけでなく、片手運転時間を短くすることができる。しかも、変速スイッチ(増速操作検出スイッチ25、減速操作検出スイッチ26)を操作する際の視線の移動量も小さくすることができるので、オペレータの疲労をさらに軽減することができる。
【0027】
また、ステアリングコラム31は、チルトハンドルを構成すると共に、ステアリングハンドル23のチルト動作に一体的に追従し、変速スイッチ(増速操作検出スイッチ25、減速操作検出スイッチ26)は、ステアリングコラム31に設けられる操作レバー(前後進切換レバー24)の操作に応じて入り切りされるので、変速スイッチ(増速操作検出スイッチ25、減速操作検出スイッチ26)を直接操作する場合に比べ、操作性を向上させることができる。しかも、操作レバー(前後進切換レバー24)は、チルトハンドルを構成するステアリングコラム31に設けられるので、オペレータの体格に合わせて変更されるステアリングハンドル23のチルト動作に伴って、変速レバー(前後進切換レバー24)の位置を常に適切な位置に変更することができる。
【0028】
また、変速スイッチ(増速操作検出スイッチ25、減速操作検出スイッチ26)は、ステアリングコラム31に設けられる前後進切換レバー24の操作に応じて入り切りされるので、前後進切換レバー24を主変速レバーに兼用することができ、その結果、別途専用の操作レバーを設ける場合に比べ、構造の簡略化やコストダウンを図ることができる。
【0029】
次に、本発明の第二実施形態について、図10〜図18を参照して説明する。ただし、前記実施形態と共通の部分については、前記実施形態と符号を共通とすることにより、前記実施形態の説明を援用する。
【0030】
これらの図に示すように、第二実施形態は、変速スイッチ(増速操作検出スイッチ、減速操作検出スイッチ)をステアリングコラム31に設けた点や、変速スイッチ(増速操作検出スイッチ、減速操作検出スイッチ)がステアリングコラム31に設けられる操作レバーの操作に応じて入り切りされる点は前記実施形態と同様であるが、ステアリングコラム31に専用の変速操作レバー50を設け、該変速操作レバー50の操作に応じて変速スイッチ(増速操作検出スイッチ、減速操作検出スイッチ)を入り切りする点が前記実施形態と相違している。なお、操作レバーの操作に応じて変速スイッチ(増速操作検出スイッチ、減速操作検出スイッチ)を入り切りするための構造は、前記実施形態と同様であるため、増速操作検出スイッチ及び減速操作検出スイッチの図示は省略する。
【0031】
変速操作レバー50は、ステアリングハンドル23の中心よりも前方に配置されている。このような配置構成にすると、オペレータの機体乗降時やペダル操作時において不意に変速操作レバー50に接触し、意図しない変速が行われることを防止できる。
【0032】
また、変速操作レバー50の操作部分は、ステアリングハンドル23の外径よりも外側に配置することが好ましい。このような配置構成にすると、図17に示すように、ステアリングハンドル23のスポーク間を介してメータパネル29を見る際に、変速操作レバー50の操作部分が邪魔になるという不都合を回避できる。
【0033】
また、ステアリングハンドル23の右側には、前述した作業機昇降レバー27や変速操作レバー50に加え、方向指示器(ウインカ)を点滅操作するための方向指示器レバー51が設けられている。ここで、本実施形態では、オペレータ側から見て、手前側に作業機昇降レバー27、奥側に変速操作レバー50、両レバー27、50間に方向指示器レバー51を配置している。
【0034】
図11に示すように、変速操作レバー50の操作方向は、作業機昇降レバー27の操作方向に対し、略直角になるように設定されている。例えば、ステアリングハンドル23の上面と平行で、かつ、前後方向となるように変速操作レバー50の操作方向を設定する。このようにすると、変速操作レバー50と作業機昇降レバー27の誤認に起因する誤操作を防止することができる。つまり、変速操作レバー50を作業機昇降レバー27と誤認して上下方向に操作しても、走行変速動作が行われることがなく、また、作業機昇降レバー27を変速操作レバー50と誤認して前後方向に操作しても、作業機昇降動作が行われることがない。
【0035】
また、本実施形態では、副変速レバー28に設けられる既存の変速スイッチ(増速スイッチ、減速スイッチ)52も併設しており、該変速スイッチ52の操作に応じた第一主変速装置5及び第二主変速装置8のシフトアップ制御やシフトダウン制御も行うようになっている。このようにすると、トラクタTの使用状況やオペレータの好みで変速操作レバー50、変速スイッチ52を選択的に使用することができる。
【0036】
また、本実施形態では、変速操作レバー50と変速スイッチ52を併設するにあたり、トラクタTの走行状態に応じて変速操作レバー50による変速操作を無効化することができる。例えば、副変速レバー28が高速位置に操作された高速走行状態(路上走行状態)において、変速操作レバー50の操作を無効にする。このようにすると、変速操作レバー50を方向指示器レバー51と誤認して操作する不都合を回避できる。つまり、変速操作レバー50の使用を、方向指示器レバー51を使用しない作業走行状態に限定することにより、変速操作レバー50の誤操作を減少させることができる。
【0037】
次に、本発明の第三実施形態について、図19〜図21を参照して説明する。ただし、前記実施形態と共通の部分については、前記実施形態と符号を共通とすることにより、前記実施形態の説明を援用する。
【0038】
これらの図に示すように、第三実施形態は、変速スイッチをステアリングコラム31に設けた点は前記実施形態と同様であるが、操作レバーを介することなく、ステアリングコラム31に設けた変速スイッチ60を直接操作する点が前記実施形態と相違している。
【0039】
本実施形態の変速スイッチ60は、2方向(増速方向及び減速方向)に傾倒操作可能で、かつ、自動中立復帰するレバー型2接点スイッチからなり、ステアリングコラム31の適所に配置される。例えば、本実施形態では、作業機昇降レバー27と同様、ステアリングハンドル23の右側に変速スイッチ60を配置することにより、耕耘作業時などオペレータが半身になり左手でステアリングハンドル23を握った状態でも、良好な操作性を確保することができる。
【0040】
また、本実施形態では、ステアリングハンドル23の右側に作業機昇降レバー27及び変速スイッチ60を配置するにあたり、変速スイッチ60のレバー部分を作業機昇降レバー27よりも短くすると共に、ステアリングハンドル23から変速スイッチ60までの距離を、ステアリングハンドル23から作業機昇降レバー27までの距離よりも長くしている。このようにすると、作業機昇降レバー27と変速スイッチ60の誤認を効果的に防止することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 トランスミッションケース
5 第一主変速装置
6 前後進切換装置
7 副変速装置
8 第二主変速装置
23 ステアリングハンドル
24 前後進切換レバー
25 増速操作検出スイッチ(変速スイッチ)
26 減速操作検出スイッチ(変速スイッチ)
31 ステアリングコラム
32 チルト支軸
33 レバー操作支点
50 変速操作レバー
60 変速スイッチ
T トラクタ
【技術分野】
【0001】
本発明は、変速スイッチの操作に応じて走行変速装置を変速作動させるトラクタなどの作業車両の変速スイッチ配置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
変速スイッチの操作に応じて走行変速装置を変速作動させる作業車両が知られている。例えば、特許文献1に示される作業車両は、走行動力伝動経路中に、油圧式の主変速装置と、手動式の副変速装置とを備えると共に、該副変速装置の変速レバー(以下、副変速レバーという)に、増速スイッチ、減速スイッチなどの変速スイッチを配置し、これら変速スイッチの操作に応じて主変速装置を変速作動させる構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−351335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の作業車両で主変速装置を変速操作する場合、ステアリングハンドルから片手を離して副変速レバーを握り、副変速レバーに設けられた変速スイッチを操作することになるが、副変速レバーは、通常、運転座席の側方近傍に配置されているので、ステアリングハンドルから副変速レバーまでの手の移動量が大きくなり、オペレータの疲労の原因となるだけでなく、片手運転時間が長くなるという問題がある。
【0005】
また、特許文献1の作業車両で主変速装置を変速操作する場合、副変速レバーの位置を目視確認した後、副変速レバーを握って変速スイッチを操作しつつ、メータパネル内に配置されている段数表示部で変速段を確認する必要があるので、視線の移動量が大きくなり、オペレータの疲労の原因となる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、変速スイッチの操作に応じて走行変速装置を変速作動させる作業車両において、前記変速スイッチをステアリングコラムに設けたことを特徴とする。
また、前記ステアリングコラムは、チルトハンドルを構成すると共に、ステアリングハンドルのチルト動作に一体的に追従し、前記変速スイッチは、ステアリングコラムに設けられる操作レバーの操作に応じて入り切りされることを特徴とする。
また、前記変速スイッチは、ステアリングコラムに設けられる前後進切換レバーの操作に応じて入り切りされることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明によれば、ステアリングハンドルの近傍に変速スイッチを配置できるので、変速スイッチを操作する際の手の移動量を可及的に小さくして、オペレータの疲労を軽減できるだけでなく、片手運転時間を短くすることができる。しかも、変速スイッチを操作する際の視線の移動量も小さくすることができるので、オペレータの疲労をさらに軽減することができる。
また、請求項2の発明によれば、レバー操作で変速スイッチを入り切りさせるので、変速スイッチを直接操作する場合に比べ、操作性を向上させることができる。しかも、操作レバーは、チルトハンドルを構成するステアリングコラムに設けられるので、オペレータの体格に合わせて変更されるステアリングハンドルのチルト動作に伴って、変速レバーの位置を常に適切な位置に変更することができる。
また、請求項3の発明によれば、前後進切換レバーを主変速レバーに兼用することができるので、別途専用の操作レバーを設ける場合に比べ、構造の簡略化やコストダウンを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】トラクタの側面図である。
【図2】トランスミッションケースの全体断面図である。
【図3】トラクタの油圧構成を示す油圧回路図である。
【図4】操作部の平面図である。
【図5】メータパネルの正面図である。
【図6】副変速装置が高速側に切り換えられた状態におけるシフトアップ制御の制御例を示すタイミングチャートである。
【図7】副変速装置が高速側に切り換えられた状態におけるシフトアップ制御の制御例を示すフローチャートである。
【図8】ステアリングハンドル周辺(左コラムカバー取外状態)を示す正面図である。
【図9】ステアリングハンドル周辺を示す斜視図である。
【図10】本発明の第二実施形態に係る操作部の平面図である。
【図11】本発明の第二実施形態に係る操作部の側面図である。
【図12】本発明の第二実施形態に係る操作部の側断面図である。
【図13】本発明の第二実施形態に係るステアリングハンドル周辺(コラムカバー取外状態)を示す側面図である。
【図14】本発明の第二実施形態に係る操作部のA矢視図である。
【図15】本発明の第二実施形態に係る操作部(ステアリングハンドル取外状態)のA矢視図である。
【図16】本発明の第二実施形態に係るステアリングハンドル周辺(ステアリングハンドル及びコラムカバー取外状態)のA矢視図である。
【図17】本発明の第二実施形態に係る操作部のB矢視図である。
【図18】本発明の第二実施形態に係る操作部の斜視図である。
【図19】本発明の第三実施形態に係る操作部の平面図である。
【図20】本発明の第三実施形態に係る操作部の側断面である。
【図21】本発明の第三実施形態に係るステアリングハンドル周辺の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図1において、Tは農用のトラクタ(作業車両)であって、該トラクタTには、トランスミッションケース1が搭載されている。図2に示すように、トランスミッションケース1は、主クラッチ機構2を介してエンジンEの動力を入力すると共に、入力した動力を走行動力伝動経路3とPTO動力伝動経路4とに分岐させる。
【0010】
走行動力伝動経路3には、摩擦多板式の油圧クラッチC1〜C4を用いて構成され、4段の変速を行う第一主変速装置5と、摩擦多板式の油圧クラッチCF、CRを用いて構成され、走行動力の正逆転変速を行う前後進切換装置6と、常時噛合式の歯車変速装置を用いて構成され、3段の変速を行う副変速装置7と、摩擦多板式の油圧クラッチCL、CHを用いて構成され、高低2段の変速を行う第二主変速装置8とが設けられている。
【0011】
上記の構成によれば、前後進切換装置6による変速によって前進と後進の切り換えができると共に、第一主変速装置5と第二主変速装置8による変速の組み合せによって8段の走行変速が可能であり、さらに、副変速装置7による変速を組み合せることによって24段の走行変速が可能になる。
【0012】
第一主変速装置5、副変速装置7及び第二主変速装置8で変速された走行動力は、前車軸及び後車軸に伝動される。前車軸への動力伝動経路には、前車軸に伝達する動力を高低に変速又は切断する倍速伝動装置9が設けられており、該倍速伝動装置9による動力の変速又は切断によって、旋回時における前輪倍速駆動や4駆、2駆の切換えが行われるようになっている。
【0013】
PTO動力伝動経路4には、摩擦多板式の油圧クラッチを用いて構成されるPTOクラッチ10と、常時噛合式の歯車変速装置を用いて構成されるPTO変速装置11とが設けられており、走行状態に影響されない独立したPTO動力伝動系、すなわち、インディペンデントPTO仕様のPTO動力伝動経路4を構成している。
【0014】
本実施形態のトラクタTには、図3に示すような油圧回路が構成されている。この油圧回路は、2つの油圧ポンプP1、P2を備え、一方の油圧ポンプP1から供給される油圧で、倍速伝動装置9、リフトシリンダ12及びリフトロッドシリンダ13を動作させ、他方の油圧ポンプP2から供給される油圧で、ステアリングユニット14、第一主変速装置5、前後進切換装置6、第二主変速装置8、PTOクラッチ10及び自動ブレーキ旋回装置15を動作させるように構成されている。
【0015】
本実施形態では、第一主変速装置5の各油圧クラッチC1〜C4を、それぞれ電磁比例弁16a〜16dの昇圧制御にもとづいて択一的に作動制御し、第二主変速装置8の各油圧クラッチCL、CHを、電磁方向切換弁17の切換え制御にもとづいて作動制御する。このようにすると、第一主変速装置5及び第二主変速装置8の各油圧クラッチC1〜C4、CL、CHをすべて電磁比例弁で制御するものに比べ、走行変速装置を安価に構成することができる。また、変速の度に第二主変速装置8の油圧クラッチCL、CHを断続する必要がないので、第二主変速装置8に設けられる油圧クラッチCL、CHの耐久性を向上させるためのコストアップが回避される。尚、第二主変速装置8の油圧クラッチCL、CHを作動させる油路には、油圧クラッチCL、CHの接続状態を検出すための圧力スイッチ18が設けられ、また、油圧回路の適所には、作動油の温度を検出するための油温センサ19が設けられている。
【0016】
図1及び図4に示すように、トラクタTの機体上には、オペレータが乗車する操作部20が構成されている。操作部20には、オペレータが着座する運転席21が設けられると共に、走行操作や作業機22の操作を行うための各種操作具が設けられている。例えば、運転席21の前方には、機体を操向するためのステアリングハンドル23、前後進切換装置6を切り換えるための前後進切換レバー24、第一主変速装置5及び第二主変速装置8を変速操作するための変速スイッチ(増速操作検出スイッチ25、減速操作検出スイッチ26)、作業機22を昇降操作するための作業機昇降レバー27などが設けられ、運転席21の左側方には、副変速装置7を切り換えるための副変速レバー28などが設けられている。
【0017】
図5に示すように、運転席21の前方には、メータパネル29が設けられている。メータパネル29内には、タコメータや各種のモニタランプが設けられるだけでなく、各種の状態表示や設定表示を行う表示部30が設けられている。本実施形態の表示部30は、液晶パネルで構成されており、主変速装置5、8や副変速装置7の変速段数表示を行うようになっている。
【0018】
トラクタTには、マイコンなどを用いて構成される走行制御用の制御装置(図示せず)が設けられている。制御装置の入力側には、前述した圧力スイッチ18、油温センサ19、変速スイッチ(増速操作検出スイッチ25、減速操作検出スイッチ26)に加え、副変速レバー28の操作位置(高速、中速、低速、ニュートラル)を検出する4つの副変速スイッチ(図示せず)と、前後進切換レバー24の操作位置(前進、後進、ニュートラル)を検出する3つの前後進スイッチ(図示せず)と、車速を検出する車速センサ(図示せず)と、エンジン回転を検出するエンジン回転センサ(図示せず)とが接続される一方、出力側には、前述した電磁比例弁16a〜16d、電磁方向切換弁17、表示部30などが接続されている。
【0019】
そして、制御装置は、オペレータの変速操作に応じて、主に電磁比例弁16a〜16d及び電磁方向切換弁17を制御し、各種の変速パターンを現出させる走行変速制御を行う。具体的には、変速スイッチの増速側(増速操作検出スイッチ25)の入り(ON)に応じて第一主変速装置5及び第二主変速装置8を変速させるシフトアップ制御、変速スイッチの減速側(減速操作検出スイッチ26)の入り(ON)に応じて第一主変速装置5及び第二主変速装置8を変速させるシフトダウン制御、副変速レバー28の操作に応じて第一主変速装置5及び第二主変速装置8を変速させる副変速操作連動制御、エンジン始動時における第一主変速装置5及び第二主変速装置8の初期変速段を設定する初期変速段設定制御、前後進切換レバー24の操作に応じて第一主変速装置5及び第二主変速装置8を変速させる前後進操作連動制御などが行われるようになっている。例えば、副変速装置7が高速側に切り換えられた状態で増速操作検出スイッチ25が入りとなった場合には、図6及び図7に示すような手順でシフトアップ制御が行われる。
【0020】
次に、ステアリングハンドル23の周辺構成及び変速スイッチの配置構成について、図8及び図9を参照して説明する。
【0021】
ステアリングハンドル23は、図示しないステアリング軸を介してステアリングコラム31に支持されている。ステアリングコラム31は、左右を向くチルト支軸32を中心として前後傾動自在に構成されると共に、任意の傾斜角で固定できるようになっている。つまり、ステアリングコラム31は、ステアリングハンドル23の前後傾斜を調節するチルトハンドル機構の一部を構成すると共に、ステアリングハンドル23のチルト動作に一体的に追従するようになっている。
【0022】
前後進切換レバー24及び作業機昇降レバー27も、ステアリングコラム31に支持されており、ステアリングハンドル23のチルト動作に一体的に追従するようになっている。前後進切換レバー24は、ステアリングコラム31の左側に前後操作自在に配置され、ニュートラル位置から前方への操作にもとづいて、機械的に連繋される前後進切換装置6が前進側に切換わる一方、ニュートラル位置から後方への操作にもとづいて、前後進切換装置6が後進側に切換わるようになっている。
【0023】
また、作業機昇降レバー27は、ステアリングコラム31の右側に上下操作自在に配置され、ニュートラル位置から上方への操作にもとづいて、作業機22が上昇制御され、ニュートラル位置から下方への操作にもとづいて、作業機22が下降制御されるようになっている。なお、作業機22の昇降制御は、作業機制御用の制御装置(図示せず)により実行されるが、本発明の要部ではないので、説明を省略する。
【0024】
変速スイッチは、増速操作検出スイッチ25と減速操作検出スイッチ26からなり、ステアリングコラム31に設けられる前後進切換レバー24の所定方向の操作(前後進切換操作とは異なる方向の操作)に応じて入り切りするように配置されている。例えば、前後進切換レバー24の基端部に、前後方向を向くレバー操作支点33を追加し、前後進切換レバー24の左右方向(上下方向)の操作を可能にすると共に、前後進切換レバー24の左方向の操作時に増速操作検出スイッチ25が入りとなるように配置し、前後進切換レバー24の右方向の操作時に減速操作検出スイッチ26が入りとなるように配置する。
【0025】
このようにすると、図9に示すように、前後進切換レバー24を前進側(前方)又は後進側(後方)に操作した状態において、前後進切換レバー24を左方向に操作すると、増速操作検出スイッチ25の入りに応じて、第一主変速装置5及び第二主変速装置8のシフトアップ制御が実行され、前後進切換レバー24を右方向に操作すると、減速操作検出スイッチ26の入りに応じて、第一主変速装置5及び第二主変速装置8のシフトダウン制御が実行されることになる。
【0026】
叙述の如く構成された本実施形態によれば、変速スイッチ(増速操作検出スイッチ25、減速操作検出スイッチ26)の操作に応じて走行変速装置(第一主変速装置5及び第二主変速装置8)を変速作動させるトラクタTにおいて、変速スイッチ(増速操作検出スイッチ25、減速操作検出スイッチ26)をステアリングコラム31に設けたので、ステアリングハンドル23の近傍に変速スイッチ(増速操作検出スイッチ25、減速操作検出スイッチ26)を配置でき、その結果、変速スイッチ(増速操作検出スイッチ25、減速操作検出スイッチ26)を操作する際の手の移動量を可及的に小さくして、オペレータの疲労を軽減できるだけでなく、片手運転時間を短くすることができる。しかも、変速スイッチ(増速操作検出スイッチ25、減速操作検出スイッチ26)を操作する際の視線の移動量も小さくすることができるので、オペレータの疲労をさらに軽減することができる。
【0027】
また、ステアリングコラム31は、チルトハンドルを構成すると共に、ステアリングハンドル23のチルト動作に一体的に追従し、変速スイッチ(増速操作検出スイッチ25、減速操作検出スイッチ26)は、ステアリングコラム31に設けられる操作レバー(前後進切換レバー24)の操作に応じて入り切りされるので、変速スイッチ(増速操作検出スイッチ25、減速操作検出スイッチ26)を直接操作する場合に比べ、操作性を向上させることができる。しかも、操作レバー(前後進切換レバー24)は、チルトハンドルを構成するステアリングコラム31に設けられるので、オペレータの体格に合わせて変更されるステアリングハンドル23のチルト動作に伴って、変速レバー(前後進切換レバー24)の位置を常に適切な位置に変更することができる。
【0028】
また、変速スイッチ(増速操作検出スイッチ25、減速操作検出スイッチ26)は、ステアリングコラム31に設けられる前後進切換レバー24の操作に応じて入り切りされるので、前後進切換レバー24を主変速レバーに兼用することができ、その結果、別途専用の操作レバーを設ける場合に比べ、構造の簡略化やコストダウンを図ることができる。
【0029】
次に、本発明の第二実施形態について、図10〜図18を参照して説明する。ただし、前記実施形態と共通の部分については、前記実施形態と符号を共通とすることにより、前記実施形態の説明を援用する。
【0030】
これらの図に示すように、第二実施形態は、変速スイッチ(増速操作検出スイッチ、減速操作検出スイッチ)をステアリングコラム31に設けた点や、変速スイッチ(増速操作検出スイッチ、減速操作検出スイッチ)がステアリングコラム31に設けられる操作レバーの操作に応じて入り切りされる点は前記実施形態と同様であるが、ステアリングコラム31に専用の変速操作レバー50を設け、該変速操作レバー50の操作に応じて変速スイッチ(増速操作検出スイッチ、減速操作検出スイッチ)を入り切りする点が前記実施形態と相違している。なお、操作レバーの操作に応じて変速スイッチ(増速操作検出スイッチ、減速操作検出スイッチ)を入り切りするための構造は、前記実施形態と同様であるため、増速操作検出スイッチ及び減速操作検出スイッチの図示は省略する。
【0031】
変速操作レバー50は、ステアリングハンドル23の中心よりも前方に配置されている。このような配置構成にすると、オペレータの機体乗降時やペダル操作時において不意に変速操作レバー50に接触し、意図しない変速が行われることを防止できる。
【0032】
また、変速操作レバー50の操作部分は、ステアリングハンドル23の外径よりも外側に配置することが好ましい。このような配置構成にすると、図17に示すように、ステアリングハンドル23のスポーク間を介してメータパネル29を見る際に、変速操作レバー50の操作部分が邪魔になるという不都合を回避できる。
【0033】
また、ステアリングハンドル23の右側には、前述した作業機昇降レバー27や変速操作レバー50に加え、方向指示器(ウインカ)を点滅操作するための方向指示器レバー51が設けられている。ここで、本実施形態では、オペレータ側から見て、手前側に作業機昇降レバー27、奥側に変速操作レバー50、両レバー27、50間に方向指示器レバー51を配置している。
【0034】
図11に示すように、変速操作レバー50の操作方向は、作業機昇降レバー27の操作方向に対し、略直角になるように設定されている。例えば、ステアリングハンドル23の上面と平行で、かつ、前後方向となるように変速操作レバー50の操作方向を設定する。このようにすると、変速操作レバー50と作業機昇降レバー27の誤認に起因する誤操作を防止することができる。つまり、変速操作レバー50を作業機昇降レバー27と誤認して上下方向に操作しても、走行変速動作が行われることがなく、また、作業機昇降レバー27を変速操作レバー50と誤認して前後方向に操作しても、作業機昇降動作が行われることがない。
【0035】
また、本実施形態では、副変速レバー28に設けられる既存の変速スイッチ(増速スイッチ、減速スイッチ)52も併設しており、該変速スイッチ52の操作に応じた第一主変速装置5及び第二主変速装置8のシフトアップ制御やシフトダウン制御も行うようになっている。このようにすると、トラクタTの使用状況やオペレータの好みで変速操作レバー50、変速スイッチ52を選択的に使用することができる。
【0036】
また、本実施形態では、変速操作レバー50と変速スイッチ52を併設するにあたり、トラクタTの走行状態に応じて変速操作レバー50による変速操作を無効化することができる。例えば、副変速レバー28が高速位置に操作された高速走行状態(路上走行状態)において、変速操作レバー50の操作を無効にする。このようにすると、変速操作レバー50を方向指示器レバー51と誤認して操作する不都合を回避できる。つまり、変速操作レバー50の使用を、方向指示器レバー51を使用しない作業走行状態に限定することにより、変速操作レバー50の誤操作を減少させることができる。
【0037】
次に、本発明の第三実施形態について、図19〜図21を参照して説明する。ただし、前記実施形態と共通の部分については、前記実施形態と符号を共通とすることにより、前記実施形態の説明を援用する。
【0038】
これらの図に示すように、第三実施形態は、変速スイッチをステアリングコラム31に設けた点は前記実施形態と同様であるが、操作レバーを介することなく、ステアリングコラム31に設けた変速スイッチ60を直接操作する点が前記実施形態と相違している。
【0039】
本実施形態の変速スイッチ60は、2方向(増速方向及び減速方向)に傾倒操作可能で、かつ、自動中立復帰するレバー型2接点スイッチからなり、ステアリングコラム31の適所に配置される。例えば、本実施形態では、作業機昇降レバー27と同様、ステアリングハンドル23の右側に変速スイッチ60を配置することにより、耕耘作業時などオペレータが半身になり左手でステアリングハンドル23を握った状態でも、良好な操作性を確保することができる。
【0040】
また、本実施形態では、ステアリングハンドル23の右側に作業機昇降レバー27及び変速スイッチ60を配置するにあたり、変速スイッチ60のレバー部分を作業機昇降レバー27よりも短くすると共に、ステアリングハンドル23から変速スイッチ60までの距離を、ステアリングハンドル23から作業機昇降レバー27までの距離よりも長くしている。このようにすると、作業機昇降レバー27と変速スイッチ60の誤認を効果的に防止することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 トランスミッションケース
5 第一主変速装置
6 前後進切換装置
7 副変速装置
8 第二主変速装置
23 ステアリングハンドル
24 前後進切換レバー
25 増速操作検出スイッチ(変速スイッチ)
26 減速操作検出スイッチ(変速スイッチ)
31 ステアリングコラム
32 チルト支軸
33 レバー操作支点
50 変速操作レバー
60 変速スイッチ
T トラクタ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変速スイッチの操作に応じて走行変速装置を変速作動させる作業車両において、前記変速スイッチをステアリングコラムに設けたことを特徴とする作業車両の変速スイッチ配置構造。
【請求項2】
前記ステアリングコラムは、チルトハンドルを構成すると共に、ステアリングハンドルのチルト動作に一体的に追従し、前記変速スイッチは、ステアリングコラムに設けられる操作レバーの操作に応じて入り切りされることを特徴とする請求項1記載の作業車両の変速スイッチ配置構造。
【請求項3】
前記変速スイッチは、ステアリングコラムに設けられる前後進切換レバーの操作に応じて入り切りされることを特徴とする請求項1又は2記載の作業車両の変速スイッチ配置構造。
【請求項1】
変速スイッチの操作に応じて走行変速装置を変速作動させる作業車両において、前記変速スイッチをステアリングコラムに設けたことを特徴とする作業車両の変速スイッチ配置構造。
【請求項2】
前記ステアリングコラムは、チルトハンドルを構成すると共に、ステアリングハンドルのチルト動作に一体的に追従し、前記変速スイッチは、ステアリングコラムに設けられる操作レバーの操作に応じて入り切りされることを特徴とする請求項1記載の作業車両の変速スイッチ配置構造。
【請求項3】
前記変速スイッチは、ステアリングコラムに設けられる前後進切換レバーの操作に応じて入り切りされることを特徴とする請求項1又は2記載の作業車両の変速スイッチ配置構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2011−25842(P2011−25842A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−174364(P2009−174364)
【出願日】平成21年7月27日(2009.7.27)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月27日(2009.7.27)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]