光デバイス、光走査装置及び画像形成装置
【課題】高次横モードの発振を抑制するとともに、光量変動の少ない光を射出することができる光デバイスを提供する。
【解決手段】 レーザチップ100は、面発光レーザアレイであり、各発光部は、基板上に下部半導体DBR、活性層を含む共振器構造体、上部半導体DBR、コンタクト層109が積層されている。そして、レーザ光の射出領域内に、該射出領域の中心部を挟むように設けられ、反射率を中心部の反射率よりも低くする透明な誘電体膜(115A、115B)を有し、Z軸方向からみたときに、誘電体膜によって挟まれる領域の内側に、電流通過領域108bが位置するように設定されている。
【解決手段】 レーザチップ100は、面発光レーザアレイであり、各発光部は、基板上に下部半導体DBR、活性層を含む共振器構造体、上部半導体DBR、コンタクト層109が積層されている。そして、レーザ光の射出領域内に、該射出領域の中心部を挟むように設けられ、反射率を中心部の反射率よりも低くする透明な誘電体膜(115A、115B)を有し、Z軸方向からみたときに、誘電体膜によって挟まれる領域の内側に、電流通過領域108bが位置するように設定されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光デバイス、光走査装置及び画像形成装置に係り、更に詳しくは、光を射出する光デバイス、該光デバイスを有する光走査装置、及び該光走査装置を備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
垂直共振器型の面発光レーザ素子(Vertical Cavity Surface Emitting Laser)は、基板に垂直な方向に光を射出するものであり、基板に平行な方向に光を射出する端面発光型の半導体レーザ素子よりも低価格、低消費電力、小型、2次元デバイスに好適、かつ、高性能であることから、近年、注目されている。
【0003】
面発光レーザ素子の応用分野としては、プリンタにおける光書き込み系の光源(発振波長:780nm帯)、光ディスク装置における書き込み用光源(発振波長:780nm帯、850nm帯)、光ファイバを用いるLAN(Local Area Network)などの光伝送システムの光源(発振波長:780nm帯、850nm帯、1.3μm帯、1.5μm帯)が挙げられる。さらには、ボード間、ボード内、集積回路(LSI:Large Scale Integrated circuit)のチップ間、及び集積回路のチップ内の光伝送用の光源としても期待されている。
【0004】
これらの応用分野においては、面発光レーザ素子から射出される光(以下では、「射出光」ともいう)は、横モードが単一で高出力であることが望まれている。特に、基本横モード発振で高出力である用途が多い。このためには、高次横モードの発振を抑制することが必要であり、様々な試みがなされている。
【0005】
例えば、特許文献1には、上部反射鏡層構造と下部反射鏡層構造との間に発光層を配置した半導体材料の層構造が基板の上に形成され、上部反射鏡層構造の上方には、平面視形状が円環形状をした上部電極が形成され、上部電極の内側が開口部になっており、該開口部の一部表面を被覆して、発振レーザ光の発振波長に対して透明な層が形成されている面発光半導体レーザ素子が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、発光中心領域を有する活性層と、該活性層を間にして設けられ、一方に光出射領域を有する一対の多層膜反射鏡と、光出射領域に対応して開口部を有する電極と、光出射領域に対応して設けられると共に、光出射領域のうち発光中心領域に対応する中央領域を囲む周辺領域の反射率が中央領域のそれよりも低くなるように構成された絶縁膜とを備えた面発光型半導体レーザが開示されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
ところで、本願の発明者らは、特許文献1に開示されている面発光半導体レーザ素子及び特許文献2に開示されている面発光型半導体レーザと同様な面発光レーザ素子をパッケージ部材で保持し、板状部材で封止した光デバイスを用いて、種々の実験を行っていたところ、光デバイスから射出される光束の光強度が、安定せず、所望の特性を得ることができない場合があった。
【0008】
そこで、本願の発明者らが、更なる実験及び検討を行ったところ、板状部材で反射された戻り光が、射出領域における反射率を低くした部分から電流通過領域に侵入し、光デバイスの光出力に悪影響を及ぼしているということを新たに見出した。
【0009】
本発明は、上述した発明者等の得た新規知見に基づいてなされたものであり、以下の構成を有する。
【0010】
本発明は、第1の観点からすると、面発光レーザ素子と、周囲が壁で囲まれている空間領域の底面上に前記面発光レーザ素子を保持するパッケージ部材とを備える光デバイスにおいて、前記面発光レーザ素子は、射出領域内に該射出領域の中心部を囲むようにあるいは挟むように設けられ、反射率を前記中心部の反射率よりも低くする透明な誘電体膜を有し、前記射出領域に直交する方向からみたときに、前記誘電体膜によって囲まれる領域あるいは挟まれる領域の内側に、前記面発光レーザ素子の電流通過領域が位置することを特徴とする光デバイスである。
【0011】
これによれば、高次横モードの発振を抑制するとともに、光量変動の少ない光を射出することができる。
【0012】
本発明は、第2の観点からすると、光によって被走査面を走査する光走査装置であって、本発明の光デバイスを有する光源と;前記光源からの光を偏向する偏向器と;前記偏光器で偏向された光を被走査面上に集光する走査光学系と;を備える光走査装置である。
【0013】
これによれば、光源が本発明の光デバイスを有しているため、高精度の光走査を行うことができる。
【0014】
本発明は、第3の観点からすると、少なくとも1つの像担持体と;前記少なくとも1つの像担持体に対して画像情報が含まれる光を走査する少なくとも1つの本発明の光走査装置と;を備える画像形成装置である。
【0015】
これによれば、本発明の光走査装置を備えているため、結果として、高品質の画像を形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係るレーザプリンタの概略構成を説明するための図である。
【図2】図1における光走査装置を示す概略図である。
【図3】図2における光源ユニットを説明するための図である。
【図4】光源ユニットに含まれている光デバイスを説明するための図(その1)である。
【図5】光源ユニットに含まれている光デバイスを説明するための図(その2)である。
【図6】図4のA−A断面図である。
【図7】パッケージ部材の平面図である。
【図8】図7のA−A断面図である。
【図9】レーザチップを説明するための図である。
【図10】レーザチップにおける複数の発光部の配列状態を説明するための図である。
【図11】各発光部の構成・構造を説明するための図(その1)である。
【図12】各発光部の構成・構造を説明するための図(その2)である。
【図13】各発光部の構成・構造を説明するための図(その3)である。
【図14】図14(A)及び図14(B)は、それぞれ傾斜基板を説明するための図である。
【図15】図15(A)及び図15(B)は、それぞれレーザチップの製造方法を説明するための図(その1)である。
【図16】図16(A)及び図16(B)は、それぞれレーザチップの製造方法を説明するための図(その2)である。
【図17】エッチングマスクを説明するための図である。
【図18】図17におけるメサ上面部分の拡大図である。
【図19】図19(A)は、レーザチップの製造方法を説明するための図(その3)であり、図19(B)は、図19(A)におけるメサ上面部分の拡大図である。
【図20】モードフィルタを説明するための図である。
【図21】レーザチップの製造方法を説明するための図(その4)である。
【図22】図21におけるメサ上面部分の拡大図である。
【図23】図23(A)及び図23(B)は、それぞれ低反射率領域及び高反射率領域を説明するための図である。
【図24】レーザチップの製造方法を説明するための図(その5)である。
【図25】図10のA−A断面図である。
【図26】戻り光を説明するための図である。
【図27】出力波形を説明するための図(その1)である。
【図28】出力波形を説明するための図(その2)である。
【図29】図29(A)及び図29(B)は、それぞれ面発光レーザアレイにおける各発光部のドループ率(計測値)を説明するための図である。
【図30】カバーガラスの反射率と「ドループばらつき」との関係を説明するための図である。
【図31】低反射率領域の変形例1を説明するための図である。
【図32】低反射率領域の変形例2を説明するための図である。
【図33】低反射率領域の変形例3を説明するための図である。
【図34】低反射率領域の変形例4を説明するための図である。
【図35】レーザチップの変形例を説明するための図(その1)である。
【図36】レーザチップの変形例を説明するための図(その2)である。
【図37】レーザチップの変形例におけるモードフィルタ近傍の透過電子顕微鏡像を説明するための図である。
【図38】カラープリンタの概略構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を図1〜図30を用いて説明する。図1には、一実施形態に係るレーザプリンタ1000の概略構成が示されている。
【0018】
このレーザプリンタ1000は、光走査装置1010、感光体ドラム1030、帯電チャージャ1031、現像ローラ1032、転写チャージャ1033、除電ユニット1034、クリーニングユニット1035、トナーカートリッジ1036、給紙コロ1037、給紙トレイ1038、レジストローラ対1039、定着ローラ1041、排紙ローラ1042、排紙トレイ1043、通信制御装置1050、及び上記各部を統括的に制御するプリンタ制御装置1060などを備えている。なお、これらは、プリンタ筐体1044の中の所定位置に収容されている。
【0019】
通信制御装置1050は、ネットワークなどを介した上位装置(例えばパソコン)との双方向の通信を制御する。
【0020】
感光体ドラム1030は、円柱状の部材であり、その表面には感光層が形成されている。すなわち、感光体ドラム1030の表面が被走査面である。そして、感光体ドラム1030は、図1における矢印方向に回転するようになっている。
【0021】
帯電チャージャ1031、現像ローラ1032、転写チャージャ1033、除電ユニット1034及びクリーニングユニット1035は、それぞれ感光体ドラム1030の表面近傍に配置されている。そして、感光体ドラム1030の回転方向に沿って、帯電チャージャ1031→現像ローラ1032→転写チャージャ1033→除電ユニット1034→クリーニングユニット1035の順に配置されている。
【0022】
帯電チャージャ1031は、感光体ドラム1030の表面を均一に帯電させる。
【0023】
光走査装置1010は、帯電チャージャ1031で帯電された感光体ドラム1030の表面を、上位装置からの画像情報に基づいて変調された光束により走査し、感光体ドラム1030の表面に画像情報に対応した潜像を形成する。ここで形成された潜像は、感光体ドラム1030の回転に伴って現像ローラ1032の方向に移動する。なお、この光走査装置1010の構成については後述する。
【0024】
トナーカートリッジ1036にはトナーが格納されており、該トナーは現像ローラ1032に供給される。
【0025】
現像ローラ1032は、感光体ドラム1030の表面に形成された潜像にトナーカートリッジ1036から供給されたトナーを付着させて画像情報を顕像化させる。ここでトナーが付着した潜像(以下では、便宜上「トナー像」ともいう)は、感光体ドラム1030の回転に伴って転写チャージャ1033の方向に移動する。
【0026】
給紙トレイ1038には記録紙1040が格納されている。この給紙トレイ1038の近傍には給紙コロ1037が配置されており、該給紙コロ1037は、記録紙1040を給紙トレイ1038から1枚づつ取り出し、レジストローラ対1039に搬送する。該レジストローラ対1039は、給紙コロ1037によって取り出された記録紙1040を一旦保持するとともに、該記録紙1040を感光体ドラム1030の回転に合わせて感光体ドラム1030と転写チャージャ1033との間隙に向けて送り出す。
【0027】
転写チャージャ1033には、感光体ドラム1030の表面のトナーを電気的に記録紙1040に引きつけるために、トナーとは逆極性の電圧が印加されている。この電圧により、感光体ドラム1030の表面のトナー像が記録紙1040に転写される。ここで転写された記録紙1040は、定着ローラ1041に送られる。
【0028】
定着ローラ1041では、熱と圧力とが記録紙1040に加えられ、これによってトナーが記録紙1040上に定着される。ここで定着された記録紙1040は、排紙ローラ1042を介して排紙トレイ1043に送られ、排紙トレイ1043上に順次スタックされる。
【0029】
除電ユニット1034は、感光体ドラム1030の表面を除電する。
【0030】
クリーニングユニット1035は、感光体ドラム1030の表面に残ったトナー(残留トナー)を除去する。残留トナーが除去された感光体ドラム1030の表面は、再度帯電チャージャ1031に対向する位置に戻る。
【0031】
次に、前記光走査装置1010の構成について説明する。
【0032】
この光走査装置1010は、一例として図2に示されるように、偏向器側走査レンズ11a、像面側走査レンズ11b、ポリゴンミラー13、光源ユニット14、シリンドリカルレンズ17、反射ミラー18、及び走査制御装置(図示省略)などを備えている。そして、これらは、光学ハウジング30の所定位置に組み付けられている。
【0033】
なお、本明細書では、光源ユニット14からの光の射出方向をZ軸方向、このZ軸方向に垂直な平面内で互いに直交する2つの方向をX軸方向及びY軸方向として説明する。また、便宜上、主走査方向に対応する方向を「主走査対応方向」と略述し、副走査方向に対応する方向を「副走査対応方向」と略述する。
【0034】
光源ユニット14は、一例として図3に示されるように、レーザモジュール500と光学モジュール600を有している。
【0035】
レーザモジュール500は、光デバイス510、該光デバイス510を駆動制御するレーザ制御装置(図示省略)、前記光デバイス510及びレーザ制御装置が実装されているPCB(Printed Circuit Board)基板580を有している。
【0036】
光デバイス510は、一例として図4〜図6に示されるように、レーザチップ100、該レーザチップ100を保持するパッケージ部材200、及びカバーガラス300などを有している。
【0037】
なお、図4は、光デバイス510の平面図であり、図5は、図4におけるカバーガラス300を除いたときの図である。また、図6は、図4のA−A断面図である。なお、図5及び図6では、煩雑さを避けるため、レーザチップ100とパッケージ部材200とを繋ぐボンディングワイヤの図示は省略している。
【0038】
パッケージ部材200は、CLCC(Ceramic leaded chip carrier)と呼ばれるフラットパッケージであり、その+Z側には、周囲が壁で囲まれている空間領域を有している。
【0039】
このパッケージ部材200は、図7及び図7のA−A断面図である図8に示されるように、セラミック201と金属配線203の多層構造となっている。
【0040】
金属配線203は、パッケージ部材の周辺から中央に向かって伸びており、パッケージ側面の金属キャスター207に1対1に個別につながっている。
【0041】
空間領域の底面中央には、金属膜205が設けられている。この金属膜205は、ダイアタッチエリアとも呼ばれており、共通電極になっている。ここでは、4隅に位置する8本の金属配線が金属膜205に接続されている。
【0042】
また、空間領域の壁は、一例として1段の段付構造になっている。
【0043】
レーザチップ100は、空間領域121の底面のほぼ中央であって、金属膜205上にAuSn等の半田材を用いてダイボンドされている。すなわち、レーザチップ100は、周囲が壁で囲まれている領域の底面上に保持されている。
【0044】
そして、空間領域の壁の段部に、空間領域を密閉するようにカバーガラス300がエポキシ樹脂系接着剤で接合されている(図6参照)。これによって、レーザチップ100を保護している。ここでは、カバーガラス300の表面は、XY面に平行である。また、カバーガラス300は、表面に反射防止(AR)コートが施されており、レーザチップ100からの光に対する反射率は0.1%以下である。
【0045】
図3に戻り、前記光学モジュール600は、第1の部分610と第2の部分630から構成されている。第1の部分610は、ハーフミラー611、集光レンズ612、及び受光素子613を有している。また、第2の部分630は、カップリングレンズ631、及び開口板632を有している。
【0046】
第1の部分610は、光デバイス510の+Z側であって、レーザチップ100から射出された光の光路上にハーフミラー611が位置するように配置されている。ハーフミラー611に入射した光の一部は−Y方向に反射され、集光レンズ612を介して受光素子613で受光される。受光素子613は、受光光量に応じた信号(光電変換信号)をレーザモジュール500のレーザ制御装置に出力する。
【0047】
第2の部分630は、第1の部分610の+Z側であって、ハーフミラー611を透過した光の光路上にカップリング631が位置するように配置されている。カップリング631は、ハーフミラー611を透過した光を略平行光とする。開口板632は、開口部を有し、カップリング631を介した光を整形する。開口板632の開口部を通過した光が、光源ユニット14から射出される光となる。
【0048】
図2に戻り、シリンドリカルレンズ17は、光源ユニット14から射出された光を反射ミラー18を介してポリゴンミラー13の偏向反射面近傍に集光する。
【0049】
レーザチップ100とポリゴンミラー13との間の光路上に配置される光学系は、偏向器前光学系とも呼ばれている。本実施形態では、偏向器前光学系は、カップリングレンズ631と開口板632とシリンドリカルレンズ17と反射ミラー18とから構成されている。
【0050】
ポリゴンミラー13は、高さの低い正六角柱状部材からなり、側面に6面の偏向反射面が形成されている。そして、不図示の回転機構により、図2に示される矢印の方向に一定の角速度で回転されている。従って、光源ユニット14から射出され、シリンドリカルレンズ17によってポリゴンミラー13の偏向反射面近傍に集光された光は、ポリゴンミラー13の回転により一定の角速度で偏向される。
【0051】
偏向器側走査レンズ11aは、ポリゴンミラー13で偏向された光の光路上に配置されている。
【0052】
像面側走査レンズ11bは、偏向器側走査レンズ11aを介した光の光路上に配置されている。そして、この像面側走査レンズ11bを介した光が、感光体ドラム1030の表面に照射され、光スポットが形成される。この光スポットは、ポリゴンミラー13の回転に伴って感光体ドラム1030の長手方向に移動する。すなわち、感光体ドラム1030上を走査する。このときの光スポットの移動方向が「主走査方向」である。また、感光体ドラム1030の回転方向が「副走査方向」である。
【0053】
ポリゴンミラー13と感光体ドラム1030との間の光路上に配置される光学系は、走査光学系とも呼ばれている。本実施形態では、走査光学系は、偏向器側走査レンズ11aと像面側走査レンズ11bとから構成されている。なお、偏向器側走査レンズ11aと像面側走査レンズ11bの間の光路上、及び像面側走査レンズ11bと感光体ドラム1030の間の光路上の少なくとも一方に、少なくとも1つの折り返しミラーが配置されても良い。
【0054】
上記レーザチップ100は、一例として図9に示されるように、2次元的に配列されている32個の発光部、及び32個の発光部の周囲に設けられ、各発光部に対応した32個の電極パッドを有している。また、各電極パッドは、対応する発光部と配線部材によって電気的に接続されている。
【0055】
32個の発光部は、図10に示されるように、全ての発光部をZ軸方向に延びる仮想線上に正射影したときに、発光部間隔が等しく(図10では「c」)なるように配置されている。なお、本明細書では、「発光部間隔」とは2つの発光部の中心間距離をいう。
【0056】
ここでは、各発光部は、発振波長が780nm帯の垂直共振器型の面発光レーザ(Vertical Cavity Surface Emitting Laser:VCSEL)である。すなわち、レーザチップ100は、いわゆる面発光レーザアレイチップである。
【0057】
各発光部は、図11〜図13に示されるように、基板101、バッファ層102、下部半導体DBR103、下部スペーサ層104、活性層105、上部スペーサ層106、上部半導体DBR107、コンタクト層109、p側電極113、n側電極114、及びモードフィルタ115などを有している。なお、図11は、1つの発光部のXZ面に平行な切断図であり、図12は、該発光部のYZ面に平行な切断図である。また、図13は、該発光部の発光面を拡大した平面図である。
【0058】
基板101は、表面が鏡面研磨面であり、図14(A)に示されるように、鏡面研磨面(主面)の法線方向が、結晶方位[1 0 0]方向に対して、結晶方位[1 1 1]A方向に向かって15度(θ=15度)傾斜したn−GaAs単結晶基板である。すなわち、基板101はいわゆる傾斜基板である。ここでは、図14(B)に示されるように、結晶方位[0 −1 1]方向が+X方向、結晶方位[0 1 −1]方向が−X方向となるように配置されている。
【0059】
図11に戻り、バッファ層102は、基板101の+Z側の面上に積層され、n−GaAsからなる層である。
【0060】
下部半導体DBR103は、バッファ層102の+Z側に積層され、n−AlAsからなる低屈折率層と、n−Al0.3Ga0.7Asからなる高屈折率層のペアを40.5ペア有している。各屈折率層の間には、電気抵抗を低減するため、一方の組成から他方の組成へ向かって組成を徐々に変化させた厚さ20nmの組成傾斜層が設けられている。そして、各屈折率層はいずれも、隣接する組成傾斜層の1/2を含んで、発振波長をλとするとλ/4の光学的厚さとなるように設定されている。なお、光学的厚さがλ/4のとき、その層の実際の厚さDは、D=λ/4n(但し、nはその層の媒質の屈折率)である。
【0061】
下部スペーサ層104は、下部半導体DBR103の+Z側に積層され、ノンドープの(Al0.1Ga0.9)0.5In0.5Pからなる層である。
【0062】
活性層105は、下部スペーサ層104の+Z側に積層され、GaInAsP/GaInPの3重量子井戸構造の活性層である。各量子井戸層は0.7%の圧縮歪みを誘起する組成であるGaInAsPからなり、各障壁層は0.6%の引張歪みを誘起する組成であるGaInPからなる。
【0063】
上部スペーサ層106は、活性層105の+Z側に積層され、ノンドープの(Al0.1Ga0.9)0.5In0.5Pからなる層である。
【0064】
下部スペーサ層104と活性層105と上部スペーサ層106とからなる部分は、共振器構造体とも呼ばれており、その厚さが1波長の光学的厚さとなるように設定されている。なお、活性層105は、高い誘導放出確率が得られるように、電界の定在波分布における腹に対応する位置である共振器構造体の中央に設けられている。
【0065】
上部半導体DBR107は、上部スペーサ層106の+Z側に積層され、p−Al0.9Ga0.1Asからなる低屈折率層とp−Al0.3Ga0.7Asからなる高屈折率層のペアを25ペア有している。各屈折率層の間には、電気抵抗を低減するため、一方の組成から他方の組成へ向かって組成を徐々に変化させた組成傾斜層が設けられている。そして、各屈折率層はいずれも、隣接する組成傾斜層の1/2を含んで、λ/4の光学的厚さとなるように設定されている。
【0066】
上部半導体DBR107における低屈折率層の1つには、p−AlAsからなる被選択酸化層が厚さ30nmで挿入されている。この被選択酸化層108の挿入位置は、電界の定在波分布において、活性層105から3番目となる節に対応する位置である。
【0067】
コンタクト層109は、上部半導体DBR107の+Z側に積層され、p−GaAsからなる層である。
【0068】
なお、このように基板101上に複数の半導体層が積層されたものを、以下では、便宜上「積層体」ともいう。
【0069】
モードフィルタ115は、コンタクト層109の+Z側であって、射出領域内でその中心部から外れた部分に設けられ、該部分の反射率を中心部の反射率よりも低くする透明な誘電体膜からなる。
【0070】
次に、レーザチップ100の製造方法について簡単に説明する。なお、ここでは、所望の偏光方向(所望の偏光方向Pという)は、X軸方向であるものとする。
【0071】
(1)上記積層体を有機金属気相成長法(MOCVD法)あるいは分子線エピタキシャル成長法(MBE法)による結晶成長によって作成する(図15(A)参照)。
【0072】
ここでは、MOCVD法の場合には、III族の原料には、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリメチルガリウム(TMG)、トリメチルインジウム(TMI)を用い、V族の原料には、フォスフィン(PH3)、アルシン(AsH3)を用いている。また、p型ドーパントの原料には四臭化炭素(CBr4)、ジメチルジンク(DMZn)を用い、n型ドーパントの原料にはセレン化水素(H2Se)を用いている。
【0073】
(2)積層体の表面に一辺が25μmの正方形状のレジストパターンを形成する。
【0074】
(3)Cl2ガスを用いるECRエッチング法で、上記レジストパターンをフォトマスクとして四角柱状のメサ構造体(以下では、便宜上「メサ」と略述する)を形成する。ここでは、エッチングの底面は下部スペーサ層104中に位置するようにした。
【0075】
(4)フォトマスクを除去する(図15(B)参照)。
【0076】
(5)積層体を水蒸気中で熱処理する。これにより、被選択酸化層108中のAl(アルミニウム)がメサの外周部から選択的に酸化され、メサの中央部に、Alの酸化層108aによって囲まれた酸化されていない領域108bが残留する(図16(A)参照)。すなわち、発光部の駆動電流の経路をメサの中央部だけに制限する、いわゆる酸化狭窄構造体が形成される。上記酸化されていない領域108bが電流通過領域(電流注入領域)である。このようにして、例えば一辺が4μm〜6μm程度の略正方形状の電流通過領域が形成される。ここでは、一辺が4.5μmとなるようにした。
【0077】
(6)気相化学堆積法(CVD法)を用いて、SiNからなる保護層111を形成する(図16(B)参照)。ここでは、保護層111の光学的厚さがλ/4となるようにした。具体的には、SiNの屈折率nが1.86、発振波長λが780nmであるため、実際の膜厚(=λ/4n)は約105nmに設定した。
【0078】
(7)レーザ光の射出面となるメサ上面にp側電極コンタクトの窓開けを行うためのエッチングマスク(マスクMという)を作成する。ここでは、一例として図17に示されるように、メサの周囲、メサ上面の外周部、及びメサ上面の中心部を挟んで所望の偏光方向P(ここでは、X軸方向)に平行な方向に関して対向している2つの小領域(第1の小領域と第2の小領域)がエッチングされないようにマスクMを作成する。図18は、図17におけるメサ上面部を拡大した平面図である。ここでは、図18における符号L1を5μm、符号L2を2μm、符号L3を8μmとした。
【0079】
(8)BHFにて保護層111をエッチングし、p側電極コンタクトの窓開けを行う。
【0080】
この時、マスクMも横方向からエッチングされるため、保護層111のエッチング端近傍はZ軸方向に対して傾斜する。すなわち、傾斜面が形成される。この傾斜面の傾斜角はマスクMの厚さ、マスク形成時のベーク時間、ベーク温度、BHFの濃度などの条件を変えることで、任意の傾斜角とすることができる。
【0081】
ここでは、XY面に対する傾斜角を15°程度として、傾斜領域の幅を0.5μmとした。この形状制御は、透過型電子顕微鏡(TEM)写真を測長することで行うことができる。
【0082】
(9)マスクMを除去する(図19(A)及び図19(B)参照)。第1の小領域に残存している保護層111及び第2の小領域に残存している保護層111は、XZ断面の形状が台形状である。すなわち、各小領域に残存している保護層111は、表面がXY面に平行で光学的厚さがλ/4の部分(以下では、「平坦部」ともいう)と、表面がXY面に対して傾斜し、光学的厚さがλ/4から0に徐々に減少している部分(以下では、「傾斜部」ともいう)とから構成されている。
【0083】
そして、第1の小領域に残存している保護層111の平坦部がモードフィルタ115Aとなり、第2の小領域に残存している保護層111の平坦部がモードフィルタ115Bとなる。ここでは、モードフィルタ115Aとモードフィルタ115Bからモードフィルタ115が構成されている。
【0084】
ところで、上記マスクMは、L1=5μmとなるように形成されていたが、実際に作成されたモードフィルタでは、図20におけるR2は約4.5μmであった。また、図20におけるR1は約5.5μmであった。電流通過領域は、上述したように、一辺が4.5μmの略正方形としているため、図20におけるR3は約4.5μmである。そこで、R1>R3である。これらの寸法は、メサ断面の透過型電子顕微鏡(TEM)写真で確認できる。
【0085】
(10)メサ上面の光射出部となる領域に一辺14μmの正方形状のレジストパターンを形成し、p側の電極材料の蒸着を行なう。p側の電極材料としてはCr/AuZn/Auからなる多層膜、もしくはTi/Pt/Auからなる多層膜が用いられる。
【0086】
(11)光射出部となる領域に蒸着された電極材料をリフトオフし、p側電極113を形成する(図21参照)。このp側電極113で囲まれた領域が射出領域である。なお、図21におけるメサ上面を拡大した平面図が図22に示されている。本実施形態では、射出領域内の2つの小領域(第1の小領域、第2の小領域)に、光学的厚さがλ/4のSiNからなる透明な誘電体膜としてモードフィルタ115Aとモードフィルタ115Bが存在している。モードフィルタ115A及びモードフィルタ115Bが存在している部分の反射率は、射出領域の中心部の反射率よりも低くなる(図23(A)及び図23(B)参照)。すなわち、本実施形態では、射出領域内に低反射率領域と高反射率領域とが存在することとなる。
【0087】
(12)基板101の裏側を所定の厚さ(例えば100μm程度)まで研磨した後、n側電極114を形成する(図24参照)。ここでは、n側電極114はAuGe/Ni/Auからなる多層膜である。
【0088】
(13)アニールによって、p側電極113とn側電極114のオーミック導通をとる。これにより、メサは発光部となる。
【0089】
(14)チップ毎に切断する。なお、図10のA−A断面図が図25に示されている。
【0090】
そして、種々の後工程を経て、レーザチップ100となる。
【0091】
次に、レーザチップ100から射出され、カバーガラス300の−Z側の面で反射され、射出領域に入射する戻り光について図26を用いて説明する。
【0092】
射出領域の中心部に入射する戻り光B3は、射出領域の中心部の反射率が高いので、その大部分は反射される。
【0093】
保護層111の傾斜部に入射する戻り光B2は、保護層111の傾斜面で、その光路が電流通過領域から離れる方向に曲げられる。
【0094】
保護層111の平坦部、すなわちモードフィルタに入射する戻り光B1は、そのままの光路で、モードフィルタを透過する。
【0095】
この場合は、特許文献1に開示されている面発光半導体レーザ素子及び特許文献2に開示されている面発光型半導体レーザと同様な面発光レーザ素子よりも、電流通過領域に侵入する戻り光を少なくすることができる。その結果、光量変動の少ない安定したレーザ発振を行うことが可能となる。
【0096】
ところで、レーザモジュール及び光源ユニットは、図3の構成・構造を模した光学系を利用して評価される。評価項目は、射出される光の光量の時間変化(出力波形)であり、フォトダイオード(PD)を用いて検出する。正常な出力波形が図27に示されている。仮に、戻り光の影響があると、光量が不安定になり、その変動(光量変動)が観察される。
【0097】
よく現れる光量変動(異常波形)が、模式的に図28に示されている。図28に示されるように、異常波形は、出力波形の前半部分に現れることが多いが、これに限らず、後半部分に現れる場合もある。また、周波数も1kHzの場合や、もっと大きい、例えば、数100kHzの出力波形においても、異常変動が現れる。
【0098】
出力波形は、画像形成装置に必要な1ラインを安定して描くのに必要な特性である。画像形成装置によっては、数%レベルでの光量変動も問題となる。ここで、画像形成装置に必要な特性として、この特性を定量化する方法について説明する。
【0099】
環境温度25°、目標出力1.4mWとし、各発光部に、パルス周期が1ms、パルス幅が500μsの方形波電流パルスをそれぞれ供給したとき、供給後1μs(Ta)での光出力Pa、供給後480μs(Tb)での光出力Pbを用いて、次の(1)式で得られるDrをドループ率(単位:%)として定義する。
【0100】
Dr=(Pa−Pb)/Pa×100 ……(1)
【0101】
発明者らは、複数種類の面発光レーザ素子及び面発光レーザアレイを作成し、種々の実験を繰り返し行ったところ、複数の発光部を有する面発光レーザアレイにおいて、ドループ率の最大値Dr(max)とドループ率の最小値Dr(min)との差(以下、便宜上、「ドループばらつき」という)が3%以上になる面発光レーザアレイを用いると、出力画像における視認性が顕著に悪化するという新しい知見を得た。このことは、モードフィルタのない面発光レーザアレイにおいても、同様であった。
【0102】
一例として、40個の発光部(ch1〜ch40)を有する面発光レーザアレイについて、本実施形態と同様なモードフィルタを有する面発光レーザアレイ(便宜上、面発光レーザアレイAという)、及びモードフィルタをもたない面発光レーザアレイ(便宜上、面発光レーザアレイBという)を作成した。そして、各面発光レーザアレイにおいて、40個の発光部すべてのドループ率を計測した。面発光レーザアレイAの計測結果が図29(A)に示され、面発光レーザアレイBの計測結果が図29(B)に示されている。
【0103】
図29(A)によると、Dr(max)=2%、Dr(min)=0.5%であり、その差は1.5%であった。一方、図29(B)によると、Dr(max)=4%、Dr(min)=−1%であり、その差は5%であった。
【0104】
このことから、射出領域内に傾斜面を有するモードフィルタを設けることにより、戻り光への耐性が強くなり、異常波形が抑制され、その結果、光量変動を抑えることが可能となる。
【0105】
なお、面発光レーザアレイBは、光取り出し効率を面発光レーザアレイAと合わせるために、上部半導体DBRのペア数を面発光レーザアレイAよりも1ペア少なくしている。ここでは、面発光レーザアレイAは、上部半導体DBRのペア数が25ペアであるが、モードフィルタによって反射率が低下しているため、面発光レーザアレイBにおける上部半導体DBRのペア数を24ペアとすることによって、両者の光取り出し効率をほぼ一致させている。
【0106】
そこで、複数の画像形成装置において、それらのレーザモジュールに含まれる面発光レーザアレイを、「ドループばらつき」が3%以下の面発光レーザアレイにしたところ、いずれも、高品質な画像を形成することができた。
【0107】
次に、カバーガラスの反射率依存性について説明する。
【0108】
光デバイス510において、カバーガラス300表面の反射率のみを変えた複数の試料を作成し、それぞれの「ドループばらつき」を計測した。その計測結果が図30に示されている。なお、図30における反射率は片面の値であり、両面とも同等の反射率としている。また、測定に用いた光の波長は780nmである。図30によると、反射率が0.1%を超えると「ドループばらつき」が3%以上となり、画像品質が低下するおそれがある。そこで、本実施形態では、カバーガラス300として、反射率が0.1%以下のガラス板を用いている。
【0109】
以上説明したように、本実施形態に係る光デバイス510によると、レーザチップ100、該レーザチップ100を保持するパッケージ部材200、及びカバーガラス300などを有している。
【0110】
レーザチップ100は、面発光レーザアレイであり、各発光部は、基板101上にバッファ層102、下部半導体DBR103、活性層105を含む共振器構造体、上部半導体DBR107、コンタクト層109が積層されている。そして、レーザ光が射出される射出面上に、射出領域を取り囲んで設けられたp側電極113を有している。また、射出領域内に、該射出領域の中心部を挟むように設けられ、反射率を中心部の反射率よりも低くする透明な誘電体膜を有し、射出領域に直交する方向(ここでは、Z軸方向)からみたときに、誘電体膜によって挟まれる領域の内側に、電流通過領域が位置するように設定されている。
【0111】
この場合は、高次横モードの発振を抑制するとともに、光量変動の少ない光を射出することができる。
【0112】
ところで、特許文献1に開示されている面発光半導体レーザ素子及び特許文献2に開示されている面発光型半導体レーザでは、誘電体膜によって囲まれる領域の大きさは、電流通過領域の大きさよりも小さいか等しくなるように設定されている。
【0113】
そして、本実施形態に係る光走査装置1010は、光源ユニット14が光デバイス510を有しているため、高精度の光走査を行うことができる。
【0114】
また、レーザチップ100が複数の発光部を有しているため、同時に複数の光走査が可能となり、画像形成の高速化を図ることができる。
【0115】
また、レーザチップ100では、各発光部を副走査対応方向に延びる仮想線上に正射影したときの発光部間隔が等間隔cであるので、点灯のタイミングを調整することで感光体ドラム1030上では副走査方向に等間隔で発光部が並んでいる場合と同様な構成と捉えることができる。
【0116】
そして、例えば、上記間隔cを2.65μm、光走査装置1010の光学系の倍率を2倍とすれば、4800dpi(ドット/インチ)の高密度書込みができる。もちろん、主走査対応方向の発光部数を増加したり、副走査対応方向のピッチd(図10参照)を狭くして間隔cを更に小さくするアレイ配置としたり、光学系の倍率を下げる等を行えばより高密度化でき、より高品質の印刷が可能となる。なお、主走査方向の書き込み間隔は、発光部の点灯のタイミングで容易に制御できる。
【0117】
また、この場合には、レーザプリンタ1000では書きこみドット密度が上昇しても印刷速度を落とすことなく印刷することができる。また、同じ書きこみドット密度の場合には印刷速度を更に速くすることができる。
【0118】
また、この場合には、各発光部からの光束の偏光方向が安定して揃っているため、レーザプリンタ1000では、高品質の画像を安定して形成することができる。
【0119】
なお、上記実施形態では、各小領域の形状が長方形である場合について説明したが、これに限定されるものではない(例えば、図31参照)。
【0120】
また、偏光方向を考慮する必要がない場合には、一例として図32及び図33に示されるように等方的な形状の1つの領域を低反射率領域としても良い。
【0121】
また、上記実施形態において、所望の偏光方向PをY軸方向とする場合には、第1の小領域と第2の小領域が対向している方向を、Y軸方向にしても良い(図34参照)。
【0122】
また、上記実施形態では、保護層111がSiNの場合について説明したが、これに限らず、例えば、SiNx、SiOx、TiOx及びSiONのいずれかであっても良い。それぞれの材料の屈折率に合わせて膜厚を設計することで同様の効果を得ることができる。
【0123】
また、上記実施形態では、各モードフィルタが保護層111と同じ材質である場合について説明したが、これに限定されるものではない。
【0124】
また、上記実施形態において、一例として図35及び図36に示されるように、射出領域全面に、更に光学的厚さが2λ/4のSiNからなる誘電体膜117を積層しても良い。この誘電体膜117の実際の膜厚(=2λ/4n)は、SiNの屈折率nが1.86、発振波長λが780nmであるため、約210nmに設定される。なお、図35は、この場合の発光部のXZ面に平行な切断図であり、図36は、YZ面に平行な切断図である。
【0125】
このとき、射出領域の中心部は、光学的厚さが2λ/4のSiNからなる誘電体膜117で被覆される。また、各モードフィルタは、光学的厚さがλ/4のSiNからなる誘電体膜111と光学的厚さが2λ/4のSiNからなる誘電体膜117とから構成される。すなわち、各モードフィルタは、光学的厚さが3λ/4のSiNからなる誘電体膜から構成されることとなる。
【0126】
この場合は、射出領域全部が誘電体膜117に被覆されていることとなるため、射出領域の酸化や汚染を抑制することができる。なお、射出領域の中心部は、誘電体膜117に覆われているが、その光学的厚さをλ/2の偶数倍としているため、反射率を低下させることがなく、誘電体膜117がない場合と同等の光学特性が得られる。
【0127】
すなわち、反射率を低下させたい部分の光学的厚さがλ/4の奇数倍、それ以外の部分の光学的厚さがλ/4の偶数倍であれば、上記実施形態のレーザチップ100と同様な横モード抑制効果を得ることができる。
【0128】
なお、実際に作製したレーザチップにおけるモードフィルタ近傍の透過電子顕微鏡写真の一例が図37に示されている。
【0129】
また、上記実施形態では、傾斜部の傾斜角が15°程度の場合について説明したが、これに限定されるものではない。
【0130】
また、上記実施形態では、基板が傾斜基板の場合について説明したが、これに限定されるものではなく、基板が非傾斜基板であっても良い。
【0131】
また、上記実施形態において、前記レーザチップ100に代えて、レーザチップ100と同様の発光部が1次元配列されたレーザチップを用いても良い。
【0132】
また、上記実施形態では、発光部の発振波長が780nm帯の場合について説明したが、これに限定されるものではない。感光体の特性に応じて、発光部の発振波長を変更しても良い。
【0133】
また、上記光デバイス510は、画像形成装置以外の用途にも用いることができる。その場合には、レーザチップ100の発振波長は、その用途に応じて、650nm帯、850nm帯、980nm帯、1.3μm帯、1.5μm帯等の波長帯であっても良い。この場合に、活性層を構成する半導体材料は、発振波長に応じた混晶半導体材料を用いることができる。例えば、650nm帯ではAlGaInP系混晶半導体材料、980nm帯ではInGaAs系混晶半導体材料、1.3μm帯及び1.5μm帯ではGaInNAs(Sb)系混晶半導体材料を用いることができる。
【0134】
また、各反射鏡の材料及び構成を発振波長に応じて選択することにより、任意の発振波長に対応した発光部を形成することができる。例えば、AlGaInP混晶などのAlGaAs混晶以外のものを用いることができる。なお、低屈折率層及び高屈折率層は、発振波長に対して透明で、かつ可能な限り互いの屈折率差が大きく取れる組み合わせが好ましい。
【0135】
なお、上記実施形態では、光走査装置1010がプリンタに用いられる場合について説明したが、プリンタ以外の画像形成装置、例えば、複写機、ファクシミリ、又は、これらが集約された複合機にも用いることができる。
【0136】
また、上記実施形態では、画像形成装置としてレーザプリンタ1000の場合について説明したが、これに限定されるものではない。
【0137】
また、レーザ光によって発色に可逆性を与えることができる媒体(例えば、用紙)に直接、レーザ光を照射する画像形成装置であっても良い。
【0138】
例えば、媒体が、いわゆるリライタブルペーパーであっても良い。これは、例えば紙や樹脂フィルム等の支持体上に、以下に説明するような材料が記録層として塗布されている。そして、レーザ光による熱エネルギー制御によって発色に可逆性を与え、表示/消去を可逆的に行うものである。
【0139】
透明白濁型リライタブルマーキング法とロイコ染料を用いた発消色型リライタブルマーキング法があり、いずれも適用できる。
【0140】
透明白濁型は、高分子薄膜の中に脂肪酸の微粒子を分散したもので、110℃以上に加熱すると脂肪酸の溶融により樹脂が膨張する。その後、冷却すると脂肪酸は過冷却状態になり液体のまま存在し、膨張した樹脂が固化する。その後、脂肪酸が固化収縮して多結晶の微粒子となり樹脂と微粒子間に空隙が生まれる.この空隙により光が散乱されて白色に見える。次に、80℃から110℃の消去温度範囲に加熱すると、脂肪酸は一部溶融し、樹脂は熱膨張して空隙を埋める。この状態で冷却すると透明状態となり画像の消去が行われる。
【0141】
ロイコ染料を用いたリライタブルマーキング法は、無色のロイコ型染料と長鎖アルキル基を有する顕消色剤との可逆的な発色及び消色反応を利用している。レーザ光により加熱されるとロイコ染料と顕消色剤が反応して発色し、そのまま急冷すると発色状態が保持される。そして、加熱後、ゆっくり冷却すると顕消色剤の長鎖アルキル基の自己凝集作用により相分離が起こり、ロイコ染料と顕消色剤が物理的に分離されて消色する。
【0142】
また、媒体が、紫外光を当てるとC(シアン)に発色し、可視光のR(レッド)の光で消色するフォトクロミック化合物、紫外光を当てるとM(マゼンタ)に発色し、可視光のG(グリーン)の光で消色するフォトクロミック化合物、紫外光を当てるとY(イエロー)に発色し、可視光のB(ブルー)の光で消色するフォトクロミック化合物が、紙や樹脂フィルム等の支持体上に設けられた、いわゆるカラーリライタブルペーパーであっても良い。
【0143】
これは、一旦紫外光を当てて真っ黒にし、R・G・Bの光を当てる時間や強さで、Y・M・Cに発色する3種類の材料の発色濃度を制御してフルカラーを表現し、仮に、R・G・Bの強力な光を当て続ければ3種類とも消色して真っ白にすることもできる。
【0144】
このような、光エネルギー制御によって発色に可逆性を与えるものも上記実施形態と同様な光走査装置を備える画像形成装置として実現できる。
【0145】
また、像担持体として銀塩フィルムを用いた画像形成装置であっても良い。この場合には、光走査により銀塩フィルム上に潜像が形成され、この潜像は通常の銀塩写真プロセスにおける現像処理と同等の処理で可視化することができる。そして、通常の銀塩写真プロセスにおける焼付け処理と同等の処理で印画紙に転写することができる。このような画像形成装置は光製版装置や、CTスキャン画像等を描画する光描画装置として実施できる。
【0146】
また、一例として図38に示されるように、複数の感光体ドラムを備えるカラープリンタ2000であっても良い。
【0147】
このカラープリンタ2000は、4色(ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー)を重ね合わせてフルカラーの画像を形成するタンデム方式の多色カラープリンタであり、ブラック用の「感光体ドラムK1、帯電装置K2、現像装置K4、クリーニングユニットK5、及び転写装置K6」と、シアン用の「感光体ドラムC1、帯電装置C2、現像装置C4、クリーニングユニットC5、及び転写装置C6」と、マゼンタ用の「感光体ドラムM1、帯電装置M2、現像装置M4、クリーニングユニットM5、及び転写装置M6」と、イエロー用の「感光体ドラムY1、帯電装置Y2、現像装置Y4、クリーニングユニットY5、及び転写装置Y6」と、光走査装置2010と、転写ベルト2080と、定着ユニット2030などを備えている。
【0148】
各感光体ドラムは、図38中の矢印の方向に回転し、各感光体ドラムの周囲には、回転方向に沿って、それぞれ帯電装置、現像装置、転写装置、クリーニングユニットが配置されている。各帯電装置は、対応する感光体ドラムの表面を均一に帯電する。帯電装置によって帯電された各感光体ドラム表面に光走査装置2010により光が照射され、各感光体ドラムに潜像が形成されるようになっている。そして、対応する現像装置により各感光体ドラム表面にトナー像が形成される。さらに、対応する転写装置により、転写ベルト2080上の記録紙に各色のトナー像が転写され、最終的に定着ユニット2030により記録紙に画像が定着される。
【0149】
光走査装置2010は、前記光デバイス510と同様な光デバイスを含む光源ユニットを、色毎に有している。そこで、上記光走査装置1010と同様の効果を得ることができる。また、カラープリンタ2000は、この光走査装置2010を備えているため、上記レーザプリンタ1000と同様の効果を得ることができる。
【0150】
ところで、カラープリンタ2000では、各部品の製造誤差や位置誤差等によって色ずれが発生する場合がある。このような場合であっても、点灯させる発光部を選択することで色ずれを低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0151】
以上説明したように、本発明の光デバイスによれば、高次横モードの発振を抑制するとともに、光量変動の少ない光を射出することができるのに適している。また、本発明の光走査装置によれば、高精度の光走査を行うのに適している。また、本発明の画像形成装置によれば、高品質の画像を形成するのに適している。
【符号の説明】
【0152】
11a…偏向器側走査レンズ(走査光学系の一部)、11b…像面側走査レンズ(走査光学系の一部)、13…ポリゴンミラー(偏向器)、14…光源ユニット、100…レーザチップ(面発光レーザアレイ)、101…基板、103…下部半導体DBR(半導体多層膜反射鏡の一部)、104…下部スペーサ層(共振器構造体の一部)、105…活性層、106…上部スペーサ層(共振器構造体の一部)、107…上部半導体DBR(半導体多層膜反射鏡の一部)、108…被選択酸化層、108b…電流通過領域、113…p側電極(電極)、115…モードフィルタ(誘電体膜)、115A…モードフィルタ(誘電体膜の一部)、115B…モードフィルタ(誘電体膜の一部)、200…パッケージ部材、300…カバーガラス(板状部材)、510…光デバイス、1000…レーザプリンタ(画像形成装置)、1010…光走査装置、1030…感光体ドラム(像担持体)、2000…カラープリンタ(画像形成装置)、2010…光走査装置、K1,C1,M1,Y1…感光体ドラム(像担持体)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0153】
【特許文献1】特開2001−156395号公報
【特許文献2】特開2006−210429号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、光デバイス、光走査装置及び画像形成装置に係り、更に詳しくは、光を射出する光デバイス、該光デバイスを有する光走査装置、及び該光走査装置を備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
垂直共振器型の面発光レーザ素子(Vertical Cavity Surface Emitting Laser)は、基板に垂直な方向に光を射出するものであり、基板に平行な方向に光を射出する端面発光型の半導体レーザ素子よりも低価格、低消費電力、小型、2次元デバイスに好適、かつ、高性能であることから、近年、注目されている。
【0003】
面発光レーザ素子の応用分野としては、プリンタにおける光書き込み系の光源(発振波長:780nm帯)、光ディスク装置における書き込み用光源(発振波長:780nm帯、850nm帯)、光ファイバを用いるLAN(Local Area Network)などの光伝送システムの光源(発振波長:780nm帯、850nm帯、1.3μm帯、1.5μm帯)が挙げられる。さらには、ボード間、ボード内、集積回路(LSI:Large Scale Integrated circuit)のチップ間、及び集積回路のチップ内の光伝送用の光源としても期待されている。
【0004】
これらの応用分野においては、面発光レーザ素子から射出される光(以下では、「射出光」ともいう)は、横モードが単一で高出力であることが望まれている。特に、基本横モード発振で高出力である用途が多い。このためには、高次横モードの発振を抑制することが必要であり、様々な試みがなされている。
【0005】
例えば、特許文献1には、上部反射鏡層構造と下部反射鏡層構造との間に発光層を配置した半導体材料の層構造が基板の上に形成され、上部反射鏡層構造の上方には、平面視形状が円環形状をした上部電極が形成され、上部電極の内側が開口部になっており、該開口部の一部表面を被覆して、発振レーザ光の発振波長に対して透明な層が形成されている面発光半導体レーザ素子が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、発光中心領域を有する活性層と、該活性層を間にして設けられ、一方に光出射領域を有する一対の多層膜反射鏡と、光出射領域に対応して開口部を有する電極と、光出射領域に対応して設けられると共に、光出射領域のうち発光中心領域に対応する中央領域を囲む周辺領域の反射率が中央領域のそれよりも低くなるように構成された絶縁膜とを備えた面発光型半導体レーザが開示されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
ところで、本願の発明者らは、特許文献1に開示されている面発光半導体レーザ素子及び特許文献2に開示されている面発光型半導体レーザと同様な面発光レーザ素子をパッケージ部材で保持し、板状部材で封止した光デバイスを用いて、種々の実験を行っていたところ、光デバイスから射出される光束の光強度が、安定せず、所望の特性を得ることができない場合があった。
【0008】
そこで、本願の発明者らが、更なる実験及び検討を行ったところ、板状部材で反射された戻り光が、射出領域における反射率を低くした部分から電流通過領域に侵入し、光デバイスの光出力に悪影響を及ぼしているということを新たに見出した。
【0009】
本発明は、上述した発明者等の得た新規知見に基づいてなされたものであり、以下の構成を有する。
【0010】
本発明は、第1の観点からすると、面発光レーザ素子と、周囲が壁で囲まれている空間領域の底面上に前記面発光レーザ素子を保持するパッケージ部材とを備える光デバイスにおいて、前記面発光レーザ素子は、射出領域内に該射出領域の中心部を囲むようにあるいは挟むように設けられ、反射率を前記中心部の反射率よりも低くする透明な誘電体膜を有し、前記射出領域に直交する方向からみたときに、前記誘電体膜によって囲まれる領域あるいは挟まれる領域の内側に、前記面発光レーザ素子の電流通過領域が位置することを特徴とする光デバイスである。
【0011】
これによれば、高次横モードの発振を抑制するとともに、光量変動の少ない光を射出することができる。
【0012】
本発明は、第2の観点からすると、光によって被走査面を走査する光走査装置であって、本発明の光デバイスを有する光源と;前記光源からの光を偏向する偏向器と;前記偏光器で偏向された光を被走査面上に集光する走査光学系と;を備える光走査装置である。
【0013】
これによれば、光源が本発明の光デバイスを有しているため、高精度の光走査を行うことができる。
【0014】
本発明は、第3の観点からすると、少なくとも1つの像担持体と;前記少なくとも1つの像担持体に対して画像情報が含まれる光を走査する少なくとも1つの本発明の光走査装置と;を備える画像形成装置である。
【0015】
これによれば、本発明の光走査装置を備えているため、結果として、高品質の画像を形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係るレーザプリンタの概略構成を説明するための図である。
【図2】図1における光走査装置を示す概略図である。
【図3】図2における光源ユニットを説明するための図である。
【図4】光源ユニットに含まれている光デバイスを説明するための図(その1)である。
【図5】光源ユニットに含まれている光デバイスを説明するための図(その2)である。
【図6】図4のA−A断面図である。
【図7】パッケージ部材の平面図である。
【図8】図7のA−A断面図である。
【図9】レーザチップを説明するための図である。
【図10】レーザチップにおける複数の発光部の配列状態を説明するための図である。
【図11】各発光部の構成・構造を説明するための図(その1)である。
【図12】各発光部の構成・構造を説明するための図(その2)である。
【図13】各発光部の構成・構造を説明するための図(その3)である。
【図14】図14(A)及び図14(B)は、それぞれ傾斜基板を説明するための図である。
【図15】図15(A)及び図15(B)は、それぞれレーザチップの製造方法を説明するための図(その1)である。
【図16】図16(A)及び図16(B)は、それぞれレーザチップの製造方法を説明するための図(その2)である。
【図17】エッチングマスクを説明するための図である。
【図18】図17におけるメサ上面部分の拡大図である。
【図19】図19(A)は、レーザチップの製造方法を説明するための図(その3)であり、図19(B)は、図19(A)におけるメサ上面部分の拡大図である。
【図20】モードフィルタを説明するための図である。
【図21】レーザチップの製造方法を説明するための図(その4)である。
【図22】図21におけるメサ上面部分の拡大図である。
【図23】図23(A)及び図23(B)は、それぞれ低反射率領域及び高反射率領域を説明するための図である。
【図24】レーザチップの製造方法を説明するための図(その5)である。
【図25】図10のA−A断面図である。
【図26】戻り光を説明するための図である。
【図27】出力波形を説明するための図(その1)である。
【図28】出力波形を説明するための図(その2)である。
【図29】図29(A)及び図29(B)は、それぞれ面発光レーザアレイにおける各発光部のドループ率(計測値)を説明するための図である。
【図30】カバーガラスの反射率と「ドループばらつき」との関係を説明するための図である。
【図31】低反射率領域の変形例1を説明するための図である。
【図32】低反射率領域の変形例2を説明するための図である。
【図33】低反射率領域の変形例3を説明するための図である。
【図34】低反射率領域の変形例4を説明するための図である。
【図35】レーザチップの変形例を説明するための図(その1)である。
【図36】レーザチップの変形例を説明するための図(その2)である。
【図37】レーザチップの変形例におけるモードフィルタ近傍の透過電子顕微鏡像を説明するための図である。
【図38】カラープリンタの概略構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を図1〜図30を用いて説明する。図1には、一実施形態に係るレーザプリンタ1000の概略構成が示されている。
【0018】
このレーザプリンタ1000は、光走査装置1010、感光体ドラム1030、帯電チャージャ1031、現像ローラ1032、転写チャージャ1033、除電ユニット1034、クリーニングユニット1035、トナーカートリッジ1036、給紙コロ1037、給紙トレイ1038、レジストローラ対1039、定着ローラ1041、排紙ローラ1042、排紙トレイ1043、通信制御装置1050、及び上記各部を統括的に制御するプリンタ制御装置1060などを備えている。なお、これらは、プリンタ筐体1044の中の所定位置に収容されている。
【0019】
通信制御装置1050は、ネットワークなどを介した上位装置(例えばパソコン)との双方向の通信を制御する。
【0020】
感光体ドラム1030は、円柱状の部材であり、その表面には感光層が形成されている。すなわち、感光体ドラム1030の表面が被走査面である。そして、感光体ドラム1030は、図1における矢印方向に回転するようになっている。
【0021】
帯電チャージャ1031、現像ローラ1032、転写チャージャ1033、除電ユニット1034及びクリーニングユニット1035は、それぞれ感光体ドラム1030の表面近傍に配置されている。そして、感光体ドラム1030の回転方向に沿って、帯電チャージャ1031→現像ローラ1032→転写チャージャ1033→除電ユニット1034→クリーニングユニット1035の順に配置されている。
【0022】
帯電チャージャ1031は、感光体ドラム1030の表面を均一に帯電させる。
【0023】
光走査装置1010は、帯電チャージャ1031で帯電された感光体ドラム1030の表面を、上位装置からの画像情報に基づいて変調された光束により走査し、感光体ドラム1030の表面に画像情報に対応した潜像を形成する。ここで形成された潜像は、感光体ドラム1030の回転に伴って現像ローラ1032の方向に移動する。なお、この光走査装置1010の構成については後述する。
【0024】
トナーカートリッジ1036にはトナーが格納されており、該トナーは現像ローラ1032に供給される。
【0025】
現像ローラ1032は、感光体ドラム1030の表面に形成された潜像にトナーカートリッジ1036から供給されたトナーを付着させて画像情報を顕像化させる。ここでトナーが付着した潜像(以下では、便宜上「トナー像」ともいう)は、感光体ドラム1030の回転に伴って転写チャージャ1033の方向に移動する。
【0026】
給紙トレイ1038には記録紙1040が格納されている。この給紙トレイ1038の近傍には給紙コロ1037が配置されており、該給紙コロ1037は、記録紙1040を給紙トレイ1038から1枚づつ取り出し、レジストローラ対1039に搬送する。該レジストローラ対1039は、給紙コロ1037によって取り出された記録紙1040を一旦保持するとともに、該記録紙1040を感光体ドラム1030の回転に合わせて感光体ドラム1030と転写チャージャ1033との間隙に向けて送り出す。
【0027】
転写チャージャ1033には、感光体ドラム1030の表面のトナーを電気的に記録紙1040に引きつけるために、トナーとは逆極性の電圧が印加されている。この電圧により、感光体ドラム1030の表面のトナー像が記録紙1040に転写される。ここで転写された記録紙1040は、定着ローラ1041に送られる。
【0028】
定着ローラ1041では、熱と圧力とが記録紙1040に加えられ、これによってトナーが記録紙1040上に定着される。ここで定着された記録紙1040は、排紙ローラ1042を介して排紙トレイ1043に送られ、排紙トレイ1043上に順次スタックされる。
【0029】
除電ユニット1034は、感光体ドラム1030の表面を除電する。
【0030】
クリーニングユニット1035は、感光体ドラム1030の表面に残ったトナー(残留トナー)を除去する。残留トナーが除去された感光体ドラム1030の表面は、再度帯電チャージャ1031に対向する位置に戻る。
【0031】
次に、前記光走査装置1010の構成について説明する。
【0032】
この光走査装置1010は、一例として図2に示されるように、偏向器側走査レンズ11a、像面側走査レンズ11b、ポリゴンミラー13、光源ユニット14、シリンドリカルレンズ17、反射ミラー18、及び走査制御装置(図示省略)などを備えている。そして、これらは、光学ハウジング30の所定位置に組み付けられている。
【0033】
なお、本明細書では、光源ユニット14からの光の射出方向をZ軸方向、このZ軸方向に垂直な平面内で互いに直交する2つの方向をX軸方向及びY軸方向として説明する。また、便宜上、主走査方向に対応する方向を「主走査対応方向」と略述し、副走査方向に対応する方向を「副走査対応方向」と略述する。
【0034】
光源ユニット14は、一例として図3に示されるように、レーザモジュール500と光学モジュール600を有している。
【0035】
レーザモジュール500は、光デバイス510、該光デバイス510を駆動制御するレーザ制御装置(図示省略)、前記光デバイス510及びレーザ制御装置が実装されているPCB(Printed Circuit Board)基板580を有している。
【0036】
光デバイス510は、一例として図4〜図6に示されるように、レーザチップ100、該レーザチップ100を保持するパッケージ部材200、及びカバーガラス300などを有している。
【0037】
なお、図4は、光デバイス510の平面図であり、図5は、図4におけるカバーガラス300を除いたときの図である。また、図6は、図4のA−A断面図である。なお、図5及び図6では、煩雑さを避けるため、レーザチップ100とパッケージ部材200とを繋ぐボンディングワイヤの図示は省略している。
【0038】
パッケージ部材200は、CLCC(Ceramic leaded chip carrier)と呼ばれるフラットパッケージであり、その+Z側には、周囲が壁で囲まれている空間領域を有している。
【0039】
このパッケージ部材200は、図7及び図7のA−A断面図である図8に示されるように、セラミック201と金属配線203の多層構造となっている。
【0040】
金属配線203は、パッケージ部材の周辺から中央に向かって伸びており、パッケージ側面の金属キャスター207に1対1に個別につながっている。
【0041】
空間領域の底面中央には、金属膜205が設けられている。この金属膜205は、ダイアタッチエリアとも呼ばれており、共通電極になっている。ここでは、4隅に位置する8本の金属配線が金属膜205に接続されている。
【0042】
また、空間領域の壁は、一例として1段の段付構造になっている。
【0043】
レーザチップ100は、空間領域121の底面のほぼ中央であって、金属膜205上にAuSn等の半田材を用いてダイボンドされている。すなわち、レーザチップ100は、周囲が壁で囲まれている領域の底面上に保持されている。
【0044】
そして、空間領域の壁の段部に、空間領域を密閉するようにカバーガラス300がエポキシ樹脂系接着剤で接合されている(図6参照)。これによって、レーザチップ100を保護している。ここでは、カバーガラス300の表面は、XY面に平行である。また、カバーガラス300は、表面に反射防止(AR)コートが施されており、レーザチップ100からの光に対する反射率は0.1%以下である。
【0045】
図3に戻り、前記光学モジュール600は、第1の部分610と第2の部分630から構成されている。第1の部分610は、ハーフミラー611、集光レンズ612、及び受光素子613を有している。また、第2の部分630は、カップリングレンズ631、及び開口板632を有している。
【0046】
第1の部分610は、光デバイス510の+Z側であって、レーザチップ100から射出された光の光路上にハーフミラー611が位置するように配置されている。ハーフミラー611に入射した光の一部は−Y方向に反射され、集光レンズ612を介して受光素子613で受光される。受光素子613は、受光光量に応じた信号(光電変換信号)をレーザモジュール500のレーザ制御装置に出力する。
【0047】
第2の部分630は、第1の部分610の+Z側であって、ハーフミラー611を透過した光の光路上にカップリング631が位置するように配置されている。カップリング631は、ハーフミラー611を透過した光を略平行光とする。開口板632は、開口部を有し、カップリング631を介した光を整形する。開口板632の開口部を通過した光が、光源ユニット14から射出される光となる。
【0048】
図2に戻り、シリンドリカルレンズ17は、光源ユニット14から射出された光を反射ミラー18を介してポリゴンミラー13の偏向反射面近傍に集光する。
【0049】
レーザチップ100とポリゴンミラー13との間の光路上に配置される光学系は、偏向器前光学系とも呼ばれている。本実施形態では、偏向器前光学系は、カップリングレンズ631と開口板632とシリンドリカルレンズ17と反射ミラー18とから構成されている。
【0050】
ポリゴンミラー13は、高さの低い正六角柱状部材からなり、側面に6面の偏向反射面が形成されている。そして、不図示の回転機構により、図2に示される矢印の方向に一定の角速度で回転されている。従って、光源ユニット14から射出され、シリンドリカルレンズ17によってポリゴンミラー13の偏向反射面近傍に集光された光は、ポリゴンミラー13の回転により一定の角速度で偏向される。
【0051】
偏向器側走査レンズ11aは、ポリゴンミラー13で偏向された光の光路上に配置されている。
【0052】
像面側走査レンズ11bは、偏向器側走査レンズ11aを介した光の光路上に配置されている。そして、この像面側走査レンズ11bを介した光が、感光体ドラム1030の表面に照射され、光スポットが形成される。この光スポットは、ポリゴンミラー13の回転に伴って感光体ドラム1030の長手方向に移動する。すなわち、感光体ドラム1030上を走査する。このときの光スポットの移動方向が「主走査方向」である。また、感光体ドラム1030の回転方向が「副走査方向」である。
【0053】
ポリゴンミラー13と感光体ドラム1030との間の光路上に配置される光学系は、走査光学系とも呼ばれている。本実施形態では、走査光学系は、偏向器側走査レンズ11aと像面側走査レンズ11bとから構成されている。なお、偏向器側走査レンズ11aと像面側走査レンズ11bの間の光路上、及び像面側走査レンズ11bと感光体ドラム1030の間の光路上の少なくとも一方に、少なくとも1つの折り返しミラーが配置されても良い。
【0054】
上記レーザチップ100は、一例として図9に示されるように、2次元的に配列されている32個の発光部、及び32個の発光部の周囲に設けられ、各発光部に対応した32個の電極パッドを有している。また、各電極パッドは、対応する発光部と配線部材によって電気的に接続されている。
【0055】
32個の発光部は、図10に示されるように、全ての発光部をZ軸方向に延びる仮想線上に正射影したときに、発光部間隔が等しく(図10では「c」)なるように配置されている。なお、本明細書では、「発光部間隔」とは2つの発光部の中心間距離をいう。
【0056】
ここでは、各発光部は、発振波長が780nm帯の垂直共振器型の面発光レーザ(Vertical Cavity Surface Emitting Laser:VCSEL)である。すなわち、レーザチップ100は、いわゆる面発光レーザアレイチップである。
【0057】
各発光部は、図11〜図13に示されるように、基板101、バッファ層102、下部半導体DBR103、下部スペーサ層104、活性層105、上部スペーサ層106、上部半導体DBR107、コンタクト層109、p側電極113、n側電極114、及びモードフィルタ115などを有している。なお、図11は、1つの発光部のXZ面に平行な切断図であり、図12は、該発光部のYZ面に平行な切断図である。また、図13は、該発光部の発光面を拡大した平面図である。
【0058】
基板101は、表面が鏡面研磨面であり、図14(A)に示されるように、鏡面研磨面(主面)の法線方向が、結晶方位[1 0 0]方向に対して、結晶方位[1 1 1]A方向に向かって15度(θ=15度)傾斜したn−GaAs単結晶基板である。すなわち、基板101はいわゆる傾斜基板である。ここでは、図14(B)に示されるように、結晶方位[0 −1 1]方向が+X方向、結晶方位[0 1 −1]方向が−X方向となるように配置されている。
【0059】
図11に戻り、バッファ層102は、基板101の+Z側の面上に積層され、n−GaAsからなる層である。
【0060】
下部半導体DBR103は、バッファ層102の+Z側に積層され、n−AlAsからなる低屈折率層と、n−Al0.3Ga0.7Asからなる高屈折率層のペアを40.5ペア有している。各屈折率層の間には、電気抵抗を低減するため、一方の組成から他方の組成へ向かって組成を徐々に変化させた厚さ20nmの組成傾斜層が設けられている。そして、各屈折率層はいずれも、隣接する組成傾斜層の1/2を含んで、発振波長をλとするとλ/4の光学的厚さとなるように設定されている。なお、光学的厚さがλ/4のとき、その層の実際の厚さDは、D=λ/4n(但し、nはその層の媒質の屈折率)である。
【0061】
下部スペーサ層104は、下部半導体DBR103の+Z側に積層され、ノンドープの(Al0.1Ga0.9)0.5In0.5Pからなる層である。
【0062】
活性層105は、下部スペーサ層104の+Z側に積層され、GaInAsP/GaInPの3重量子井戸構造の活性層である。各量子井戸層は0.7%の圧縮歪みを誘起する組成であるGaInAsPからなり、各障壁層は0.6%の引張歪みを誘起する組成であるGaInPからなる。
【0063】
上部スペーサ層106は、活性層105の+Z側に積層され、ノンドープの(Al0.1Ga0.9)0.5In0.5Pからなる層である。
【0064】
下部スペーサ層104と活性層105と上部スペーサ層106とからなる部分は、共振器構造体とも呼ばれており、その厚さが1波長の光学的厚さとなるように設定されている。なお、活性層105は、高い誘導放出確率が得られるように、電界の定在波分布における腹に対応する位置である共振器構造体の中央に設けられている。
【0065】
上部半導体DBR107は、上部スペーサ層106の+Z側に積層され、p−Al0.9Ga0.1Asからなる低屈折率層とp−Al0.3Ga0.7Asからなる高屈折率層のペアを25ペア有している。各屈折率層の間には、電気抵抗を低減するため、一方の組成から他方の組成へ向かって組成を徐々に変化させた組成傾斜層が設けられている。そして、各屈折率層はいずれも、隣接する組成傾斜層の1/2を含んで、λ/4の光学的厚さとなるように設定されている。
【0066】
上部半導体DBR107における低屈折率層の1つには、p−AlAsからなる被選択酸化層が厚さ30nmで挿入されている。この被選択酸化層108の挿入位置は、電界の定在波分布において、活性層105から3番目となる節に対応する位置である。
【0067】
コンタクト層109は、上部半導体DBR107の+Z側に積層され、p−GaAsからなる層である。
【0068】
なお、このように基板101上に複数の半導体層が積層されたものを、以下では、便宜上「積層体」ともいう。
【0069】
モードフィルタ115は、コンタクト層109の+Z側であって、射出領域内でその中心部から外れた部分に設けられ、該部分の反射率を中心部の反射率よりも低くする透明な誘電体膜からなる。
【0070】
次に、レーザチップ100の製造方法について簡単に説明する。なお、ここでは、所望の偏光方向(所望の偏光方向Pという)は、X軸方向であるものとする。
【0071】
(1)上記積層体を有機金属気相成長法(MOCVD法)あるいは分子線エピタキシャル成長法(MBE法)による結晶成長によって作成する(図15(A)参照)。
【0072】
ここでは、MOCVD法の場合には、III族の原料には、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリメチルガリウム(TMG)、トリメチルインジウム(TMI)を用い、V族の原料には、フォスフィン(PH3)、アルシン(AsH3)を用いている。また、p型ドーパントの原料には四臭化炭素(CBr4)、ジメチルジンク(DMZn)を用い、n型ドーパントの原料にはセレン化水素(H2Se)を用いている。
【0073】
(2)積層体の表面に一辺が25μmの正方形状のレジストパターンを形成する。
【0074】
(3)Cl2ガスを用いるECRエッチング法で、上記レジストパターンをフォトマスクとして四角柱状のメサ構造体(以下では、便宜上「メサ」と略述する)を形成する。ここでは、エッチングの底面は下部スペーサ層104中に位置するようにした。
【0075】
(4)フォトマスクを除去する(図15(B)参照)。
【0076】
(5)積層体を水蒸気中で熱処理する。これにより、被選択酸化層108中のAl(アルミニウム)がメサの外周部から選択的に酸化され、メサの中央部に、Alの酸化層108aによって囲まれた酸化されていない領域108bが残留する(図16(A)参照)。すなわち、発光部の駆動電流の経路をメサの中央部だけに制限する、いわゆる酸化狭窄構造体が形成される。上記酸化されていない領域108bが電流通過領域(電流注入領域)である。このようにして、例えば一辺が4μm〜6μm程度の略正方形状の電流通過領域が形成される。ここでは、一辺が4.5μmとなるようにした。
【0077】
(6)気相化学堆積法(CVD法)を用いて、SiNからなる保護層111を形成する(図16(B)参照)。ここでは、保護層111の光学的厚さがλ/4となるようにした。具体的には、SiNの屈折率nが1.86、発振波長λが780nmであるため、実際の膜厚(=λ/4n)は約105nmに設定した。
【0078】
(7)レーザ光の射出面となるメサ上面にp側電極コンタクトの窓開けを行うためのエッチングマスク(マスクMという)を作成する。ここでは、一例として図17に示されるように、メサの周囲、メサ上面の外周部、及びメサ上面の中心部を挟んで所望の偏光方向P(ここでは、X軸方向)に平行な方向に関して対向している2つの小領域(第1の小領域と第2の小領域)がエッチングされないようにマスクMを作成する。図18は、図17におけるメサ上面部を拡大した平面図である。ここでは、図18における符号L1を5μm、符号L2を2μm、符号L3を8μmとした。
【0079】
(8)BHFにて保護層111をエッチングし、p側電極コンタクトの窓開けを行う。
【0080】
この時、マスクMも横方向からエッチングされるため、保護層111のエッチング端近傍はZ軸方向に対して傾斜する。すなわち、傾斜面が形成される。この傾斜面の傾斜角はマスクMの厚さ、マスク形成時のベーク時間、ベーク温度、BHFの濃度などの条件を変えることで、任意の傾斜角とすることができる。
【0081】
ここでは、XY面に対する傾斜角を15°程度として、傾斜領域の幅を0.5μmとした。この形状制御は、透過型電子顕微鏡(TEM)写真を測長することで行うことができる。
【0082】
(9)マスクMを除去する(図19(A)及び図19(B)参照)。第1の小領域に残存している保護層111及び第2の小領域に残存している保護層111は、XZ断面の形状が台形状である。すなわち、各小領域に残存している保護層111は、表面がXY面に平行で光学的厚さがλ/4の部分(以下では、「平坦部」ともいう)と、表面がXY面に対して傾斜し、光学的厚さがλ/4から0に徐々に減少している部分(以下では、「傾斜部」ともいう)とから構成されている。
【0083】
そして、第1の小領域に残存している保護層111の平坦部がモードフィルタ115Aとなり、第2の小領域に残存している保護層111の平坦部がモードフィルタ115Bとなる。ここでは、モードフィルタ115Aとモードフィルタ115Bからモードフィルタ115が構成されている。
【0084】
ところで、上記マスクMは、L1=5μmとなるように形成されていたが、実際に作成されたモードフィルタでは、図20におけるR2は約4.5μmであった。また、図20におけるR1は約5.5μmであった。電流通過領域は、上述したように、一辺が4.5μmの略正方形としているため、図20におけるR3は約4.5μmである。そこで、R1>R3である。これらの寸法は、メサ断面の透過型電子顕微鏡(TEM)写真で確認できる。
【0085】
(10)メサ上面の光射出部となる領域に一辺14μmの正方形状のレジストパターンを形成し、p側の電極材料の蒸着を行なう。p側の電極材料としてはCr/AuZn/Auからなる多層膜、もしくはTi/Pt/Auからなる多層膜が用いられる。
【0086】
(11)光射出部となる領域に蒸着された電極材料をリフトオフし、p側電極113を形成する(図21参照)。このp側電極113で囲まれた領域が射出領域である。なお、図21におけるメサ上面を拡大した平面図が図22に示されている。本実施形態では、射出領域内の2つの小領域(第1の小領域、第2の小領域)に、光学的厚さがλ/4のSiNからなる透明な誘電体膜としてモードフィルタ115Aとモードフィルタ115Bが存在している。モードフィルタ115A及びモードフィルタ115Bが存在している部分の反射率は、射出領域の中心部の反射率よりも低くなる(図23(A)及び図23(B)参照)。すなわち、本実施形態では、射出領域内に低反射率領域と高反射率領域とが存在することとなる。
【0087】
(12)基板101の裏側を所定の厚さ(例えば100μm程度)まで研磨した後、n側電極114を形成する(図24参照)。ここでは、n側電極114はAuGe/Ni/Auからなる多層膜である。
【0088】
(13)アニールによって、p側電極113とn側電極114のオーミック導通をとる。これにより、メサは発光部となる。
【0089】
(14)チップ毎に切断する。なお、図10のA−A断面図が図25に示されている。
【0090】
そして、種々の後工程を経て、レーザチップ100となる。
【0091】
次に、レーザチップ100から射出され、カバーガラス300の−Z側の面で反射され、射出領域に入射する戻り光について図26を用いて説明する。
【0092】
射出領域の中心部に入射する戻り光B3は、射出領域の中心部の反射率が高いので、その大部分は反射される。
【0093】
保護層111の傾斜部に入射する戻り光B2は、保護層111の傾斜面で、その光路が電流通過領域から離れる方向に曲げられる。
【0094】
保護層111の平坦部、すなわちモードフィルタに入射する戻り光B1は、そのままの光路で、モードフィルタを透過する。
【0095】
この場合は、特許文献1に開示されている面発光半導体レーザ素子及び特許文献2に開示されている面発光型半導体レーザと同様な面発光レーザ素子よりも、電流通過領域に侵入する戻り光を少なくすることができる。その結果、光量変動の少ない安定したレーザ発振を行うことが可能となる。
【0096】
ところで、レーザモジュール及び光源ユニットは、図3の構成・構造を模した光学系を利用して評価される。評価項目は、射出される光の光量の時間変化(出力波形)であり、フォトダイオード(PD)を用いて検出する。正常な出力波形が図27に示されている。仮に、戻り光の影響があると、光量が不安定になり、その変動(光量変動)が観察される。
【0097】
よく現れる光量変動(異常波形)が、模式的に図28に示されている。図28に示されるように、異常波形は、出力波形の前半部分に現れることが多いが、これに限らず、後半部分に現れる場合もある。また、周波数も1kHzの場合や、もっと大きい、例えば、数100kHzの出力波形においても、異常変動が現れる。
【0098】
出力波形は、画像形成装置に必要な1ラインを安定して描くのに必要な特性である。画像形成装置によっては、数%レベルでの光量変動も問題となる。ここで、画像形成装置に必要な特性として、この特性を定量化する方法について説明する。
【0099】
環境温度25°、目標出力1.4mWとし、各発光部に、パルス周期が1ms、パルス幅が500μsの方形波電流パルスをそれぞれ供給したとき、供給後1μs(Ta)での光出力Pa、供給後480μs(Tb)での光出力Pbを用いて、次の(1)式で得られるDrをドループ率(単位:%)として定義する。
【0100】
Dr=(Pa−Pb)/Pa×100 ……(1)
【0101】
発明者らは、複数種類の面発光レーザ素子及び面発光レーザアレイを作成し、種々の実験を繰り返し行ったところ、複数の発光部を有する面発光レーザアレイにおいて、ドループ率の最大値Dr(max)とドループ率の最小値Dr(min)との差(以下、便宜上、「ドループばらつき」という)が3%以上になる面発光レーザアレイを用いると、出力画像における視認性が顕著に悪化するという新しい知見を得た。このことは、モードフィルタのない面発光レーザアレイにおいても、同様であった。
【0102】
一例として、40個の発光部(ch1〜ch40)を有する面発光レーザアレイについて、本実施形態と同様なモードフィルタを有する面発光レーザアレイ(便宜上、面発光レーザアレイAという)、及びモードフィルタをもたない面発光レーザアレイ(便宜上、面発光レーザアレイBという)を作成した。そして、各面発光レーザアレイにおいて、40個の発光部すべてのドループ率を計測した。面発光レーザアレイAの計測結果が図29(A)に示され、面発光レーザアレイBの計測結果が図29(B)に示されている。
【0103】
図29(A)によると、Dr(max)=2%、Dr(min)=0.5%であり、その差は1.5%であった。一方、図29(B)によると、Dr(max)=4%、Dr(min)=−1%であり、その差は5%であった。
【0104】
このことから、射出領域内に傾斜面を有するモードフィルタを設けることにより、戻り光への耐性が強くなり、異常波形が抑制され、その結果、光量変動を抑えることが可能となる。
【0105】
なお、面発光レーザアレイBは、光取り出し効率を面発光レーザアレイAと合わせるために、上部半導体DBRのペア数を面発光レーザアレイAよりも1ペア少なくしている。ここでは、面発光レーザアレイAは、上部半導体DBRのペア数が25ペアであるが、モードフィルタによって反射率が低下しているため、面発光レーザアレイBにおける上部半導体DBRのペア数を24ペアとすることによって、両者の光取り出し効率をほぼ一致させている。
【0106】
そこで、複数の画像形成装置において、それらのレーザモジュールに含まれる面発光レーザアレイを、「ドループばらつき」が3%以下の面発光レーザアレイにしたところ、いずれも、高品質な画像を形成することができた。
【0107】
次に、カバーガラスの反射率依存性について説明する。
【0108】
光デバイス510において、カバーガラス300表面の反射率のみを変えた複数の試料を作成し、それぞれの「ドループばらつき」を計測した。その計測結果が図30に示されている。なお、図30における反射率は片面の値であり、両面とも同等の反射率としている。また、測定に用いた光の波長は780nmである。図30によると、反射率が0.1%を超えると「ドループばらつき」が3%以上となり、画像品質が低下するおそれがある。そこで、本実施形態では、カバーガラス300として、反射率が0.1%以下のガラス板を用いている。
【0109】
以上説明したように、本実施形態に係る光デバイス510によると、レーザチップ100、該レーザチップ100を保持するパッケージ部材200、及びカバーガラス300などを有している。
【0110】
レーザチップ100は、面発光レーザアレイであり、各発光部は、基板101上にバッファ層102、下部半導体DBR103、活性層105を含む共振器構造体、上部半導体DBR107、コンタクト層109が積層されている。そして、レーザ光が射出される射出面上に、射出領域を取り囲んで設けられたp側電極113を有している。また、射出領域内に、該射出領域の中心部を挟むように設けられ、反射率を中心部の反射率よりも低くする透明な誘電体膜を有し、射出領域に直交する方向(ここでは、Z軸方向)からみたときに、誘電体膜によって挟まれる領域の内側に、電流通過領域が位置するように設定されている。
【0111】
この場合は、高次横モードの発振を抑制するとともに、光量変動の少ない光を射出することができる。
【0112】
ところで、特許文献1に開示されている面発光半導体レーザ素子及び特許文献2に開示されている面発光型半導体レーザでは、誘電体膜によって囲まれる領域の大きさは、電流通過領域の大きさよりも小さいか等しくなるように設定されている。
【0113】
そして、本実施形態に係る光走査装置1010は、光源ユニット14が光デバイス510を有しているため、高精度の光走査を行うことができる。
【0114】
また、レーザチップ100が複数の発光部を有しているため、同時に複数の光走査が可能となり、画像形成の高速化を図ることができる。
【0115】
また、レーザチップ100では、各発光部を副走査対応方向に延びる仮想線上に正射影したときの発光部間隔が等間隔cであるので、点灯のタイミングを調整することで感光体ドラム1030上では副走査方向に等間隔で発光部が並んでいる場合と同様な構成と捉えることができる。
【0116】
そして、例えば、上記間隔cを2.65μm、光走査装置1010の光学系の倍率を2倍とすれば、4800dpi(ドット/インチ)の高密度書込みができる。もちろん、主走査対応方向の発光部数を増加したり、副走査対応方向のピッチd(図10参照)を狭くして間隔cを更に小さくするアレイ配置としたり、光学系の倍率を下げる等を行えばより高密度化でき、より高品質の印刷が可能となる。なお、主走査方向の書き込み間隔は、発光部の点灯のタイミングで容易に制御できる。
【0117】
また、この場合には、レーザプリンタ1000では書きこみドット密度が上昇しても印刷速度を落とすことなく印刷することができる。また、同じ書きこみドット密度の場合には印刷速度を更に速くすることができる。
【0118】
また、この場合には、各発光部からの光束の偏光方向が安定して揃っているため、レーザプリンタ1000では、高品質の画像を安定して形成することができる。
【0119】
なお、上記実施形態では、各小領域の形状が長方形である場合について説明したが、これに限定されるものではない(例えば、図31参照)。
【0120】
また、偏光方向を考慮する必要がない場合には、一例として図32及び図33に示されるように等方的な形状の1つの領域を低反射率領域としても良い。
【0121】
また、上記実施形態において、所望の偏光方向PをY軸方向とする場合には、第1の小領域と第2の小領域が対向している方向を、Y軸方向にしても良い(図34参照)。
【0122】
また、上記実施形態では、保護層111がSiNの場合について説明したが、これに限らず、例えば、SiNx、SiOx、TiOx及びSiONのいずれかであっても良い。それぞれの材料の屈折率に合わせて膜厚を設計することで同様の効果を得ることができる。
【0123】
また、上記実施形態では、各モードフィルタが保護層111と同じ材質である場合について説明したが、これに限定されるものではない。
【0124】
また、上記実施形態において、一例として図35及び図36に示されるように、射出領域全面に、更に光学的厚さが2λ/4のSiNからなる誘電体膜117を積層しても良い。この誘電体膜117の実際の膜厚(=2λ/4n)は、SiNの屈折率nが1.86、発振波長λが780nmであるため、約210nmに設定される。なお、図35は、この場合の発光部のXZ面に平行な切断図であり、図36は、YZ面に平行な切断図である。
【0125】
このとき、射出領域の中心部は、光学的厚さが2λ/4のSiNからなる誘電体膜117で被覆される。また、各モードフィルタは、光学的厚さがλ/4のSiNからなる誘電体膜111と光学的厚さが2λ/4のSiNからなる誘電体膜117とから構成される。すなわち、各モードフィルタは、光学的厚さが3λ/4のSiNからなる誘電体膜から構成されることとなる。
【0126】
この場合は、射出領域全部が誘電体膜117に被覆されていることとなるため、射出領域の酸化や汚染を抑制することができる。なお、射出領域の中心部は、誘電体膜117に覆われているが、その光学的厚さをλ/2の偶数倍としているため、反射率を低下させることがなく、誘電体膜117がない場合と同等の光学特性が得られる。
【0127】
すなわち、反射率を低下させたい部分の光学的厚さがλ/4の奇数倍、それ以外の部分の光学的厚さがλ/4の偶数倍であれば、上記実施形態のレーザチップ100と同様な横モード抑制効果を得ることができる。
【0128】
なお、実際に作製したレーザチップにおけるモードフィルタ近傍の透過電子顕微鏡写真の一例が図37に示されている。
【0129】
また、上記実施形態では、傾斜部の傾斜角が15°程度の場合について説明したが、これに限定されるものではない。
【0130】
また、上記実施形態では、基板が傾斜基板の場合について説明したが、これに限定されるものではなく、基板が非傾斜基板であっても良い。
【0131】
また、上記実施形態において、前記レーザチップ100に代えて、レーザチップ100と同様の発光部が1次元配列されたレーザチップを用いても良い。
【0132】
また、上記実施形態では、発光部の発振波長が780nm帯の場合について説明したが、これに限定されるものではない。感光体の特性に応じて、発光部の発振波長を変更しても良い。
【0133】
また、上記光デバイス510は、画像形成装置以外の用途にも用いることができる。その場合には、レーザチップ100の発振波長は、その用途に応じて、650nm帯、850nm帯、980nm帯、1.3μm帯、1.5μm帯等の波長帯であっても良い。この場合に、活性層を構成する半導体材料は、発振波長に応じた混晶半導体材料を用いることができる。例えば、650nm帯ではAlGaInP系混晶半導体材料、980nm帯ではInGaAs系混晶半導体材料、1.3μm帯及び1.5μm帯ではGaInNAs(Sb)系混晶半導体材料を用いることができる。
【0134】
また、各反射鏡の材料及び構成を発振波長に応じて選択することにより、任意の発振波長に対応した発光部を形成することができる。例えば、AlGaInP混晶などのAlGaAs混晶以外のものを用いることができる。なお、低屈折率層及び高屈折率層は、発振波長に対して透明で、かつ可能な限り互いの屈折率差が大きく取れる組み合わせが好ましい。
【0135】
なお、上記実施形態では、光走査装置1010がプリンタに用いられる場合について説明したが、プリンタ以外の画像形成装置、例えば、複写機、ファクシミリ、又は、これらが集約された複合機にも用いることができる。
【0136】
また、上記実施形態では、画像形成装置としてレーザプリンタ1000の場合について説明したが、これに限定されるものではない。
【0137】
また、レーザ光によって発色に可逆性を与えることができる媒体(例えば、用紙)に直接、レーザ光を照射する画像形成装置であっても良い。
【0138】
例えば、媒体が、いわゆるリライタブルペーパーであっても良い。これは、例えば紙や樹脂フィルム等の支持体上に、以下に説明するような材料が記録層として塗布されている。そして、レーザ光による熱エネルギー制御によって発色に可逆性を与え、表示/消去を可逆的に行うものである。
【0139】
透明白濁型リライタブルマーキング法とロイコ染料を用いた発消色型リライタブルマーキング法があり、いずれも適用できる。
【0140】
透明白濁型は、高分子薄膜の中に脂肪酸の微粒子を分散したもので、110℃以上に加熱すると脂肪酸の溶融により樹脂が膨張する。その後、冷却すると脂肪酸は過冷却状態になり液体のまま存在し、膨張した樹脂が固化する。その後、脂肪酸が固化収縮して多結晶の微粒子となり樹脂と微粒子間に空隙が生まれる.この空隙により光が散乱されて白色に見える。次に、80℃から110℃の消去温度範囲に加熱すると、脂肪酸は一部溶融し、樹脂は熱膨張して空隙を埋める。この状態で冷却すると透明状態となり画像の消去が行われる。
【0141】
ロイコ染料を用いたリライタブルマーキング法は、無色のロイコ型染料と長鎖アルキル基を有する顕消色剤との可逆的な発色及び消色反応を利用している。レーザ光により加熱されるとロイコ染料と顕消色剤が反応して発色し、そのまま急冷すると発色状態が保持される。そして、加熱後、ゆっくり冷却すると顕消色剤の長鎖アルキル基の自己凝集作用により相分離が起こり、ロイコ染料と顕消色剤が物理的に分離されて消色する。
【0142】
また、媒体が、紫外光を当てるとC(シアン)に発色し、可視光のR(レッド)の光で消色するフォトクロミック化合物、紫外光を当てるとM(マゼンタ)に発色し、可視光のG(グリーン)の光で消色するフォトクロミック化合物、紫外光を当てるとY(イエロー)に発色し、可視光のB(ブルー)の光で消色するフォトクロミック化合物が、紙や樹脂フィルム等の支持体上に設けられた、いわゆるカラーリライタブルペーパーであっても良い。
【0143】
これは、一旦紫外光を当てて真っ黒にし、R・G・Bの光を当てる時間や強さで、Y・M・Cに発色する3種類の材料の発色濃度を制御してフルカラーを表現し、仮に、R・G・Bの強力な光を当て続ければ3種類とも消色して真っ白にすることもできる。
【0144】
このような、光エネルギー制御によって発色に可逆性を与えるものも上記実施形態と同様な光走査装置を備える画像形成装置として実現できる。
【0145】
また、像担持体として銀塩フィルムを用いた画像形成装置であっても良い。この場合には、光走査により銀塩フィルム上に潜像が形成され、この潜像は通常の銀塩写真プロセスにおける現像処理と同等の処理で可視化することができる。そして、通常の銀塩写真プロセスにおける焼付け処理と同等の処理で印画紙に転写することができる。このような画像形成装置は光製版装置や、CTスキャン画像等を描画する光描画装置として実施できる。
【0146】
また、一例として図38に示されるように、複数の感光体ドラムを備えるカラープリンタ2000であっても良い。
【0147】
このカラープリンタ2000は、4色(ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー)を重ね合わせてフルカラーの画像を形成するタンデム方式の多色カラープリンタであり、ブラック用の「感光体ドラムK1、帯電装置K2、現像装置K4、クリーニングユニットK5、及び転写装置K6」と、シアン用の「感光体ドラムC1、帯電装置C2、現像装置C4、クリーニングユニットC5、及び転写装置C6」と、マゼンタ用の「感光体ドラムM1、帯電装置M2、現像装置M4、クリーニングユニットM5、及び転写装置M6」と、イエロー用の「感光体ドラムY1、帯電装置Y2、現像装置Y4、クリーニングユニットY5、及び転写装置Y6」と、光走査装置2010と、転写ベルト2080と、定着ユニット2030などを備えている。
【0148】
各感光体ドラムは、図38中の矢印の方向に回転し、各感光体ドラムの周囲には、回転方向に沿って、それぞれ帯電装置、現像装置、転写装置、クリーニングユニットが配置されている。各帯電装置は、対応する感光体ドラムの表面を均一に帯電する。帯電装置によって帯電された各感光体ドラム表面に光走査装置2010により光が照射され、各感光体ドラムに潜像が形成されるようになっている。そして、対応する現像装置により各感光体ドラム表面にトナー像が形成される。さらに、対応する転写装置により、転写ベルト2080上の記録紙に各色のトナー像が転写され、最終的に定着ユニット2030により記録紙に画像が定着される。
【0149】
光走査装置2010は、前記光デバイス510と同様な光デバイスを含む光源ユニットを、色毎に有している。そこで、上記光走査装置1010と同様の効果を得ることができる。また、カラープリンタ2000は、この光走査装置2010を備えているため、上記レーザプリンタ1000と同様の効果を得ることができる。
【0150】
ところで、カラープリンタ2000では、各部品の製造誤差や位置誤差等によって色ずれが発生する場合がある。このような場合であっても、点灯させる発光部を選択することで色ずれを低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0151】
以上説明したように、本発明の光デバイスによれば、高次横モードの発振を抑制するとともに、光量変動の少ない光を射出することができるのに適している。また、本発明の光走査装置によれば、高精度の光走査を行うのに適している。また、本発明の画像形成装置によれば、高品質の画像を形成するのに適している。
【符号の説明】
【0152】
11a…偏向器側走査レンズ(走査光学系の一部)、11b…像面側走査レンズ(走査光学系の一部)、13…ポリゴンミラー(偏向器)、14…光源ユニット、100…レーザチップ(面発光レーザアレイ)、101…基板、103…下部半導体DBR(半導体多層膜反射鏡の一部)、104…下部スペーサ層(共振器構造体の一部)、105…活性層、106…上部スペーサ層(共振器構造体の一部)、107…上部半導体DBR(半導体多層膜反射鏡の一部)、108…被選択酸化層、108b…電流通過領域、113…p側電極(電極)、115…モードフィルタ(誘電体膜)、115A…モードフィルタ(誘電体膜の一部)、115B…モードフィルタ(誘電体膜の一部)、200…パッケージ部材、300…カバーガラス(板状部材)、510…光デバイス、1000…レーザプリンタ(画像形成装置)、1010…光走査装置、1030…感光体ドラム(像担持体)、2000…カラープリンタ(画像形成装置)、2010…光走査装置、K1,C1,M1,Y1…感光体ドラム(像担持体)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0153】
【特許文献1】特開2001−156395号公報
【特許文献2】特開2006−210429号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
面発光レーザ素子と、周囲が壁で囲まれている空間領域の底面上に前記面発光レーザ素子を保持するパッケージ部材とを備える光デバイスにおいて、
前記面発光レーザ素子は、射出領域内に該射出領域の中心部を囲むようにあるいは挟むように設けられ、反射率を前記中心部の反射率よりも低くする透明な誘電体膜を有し、
前記射出領域に直交する方向からみたときに、前記誘電体膜によって囲まれる領域あるいは挟まれる領域の内側に、前記面発光レーザ素子の電流通過領域が位置することを特徴とする光デバイス。
【請求項2】
前記板状部材で反射された戻り光が前記射出領域内に入射し、
前記誘電体膜の端部近傍は、入射した戻り光の光路を、前記電流通過領域から遠ざかる方向に曲げる構造を有することを特徴とする請求項1に記載の光デバイス。
【請求項3】
前記誘電体膜の端部近傍は、前記射出領域に平行な面に対して傾斜した傾斜面を有することを特徴とする請求項2に記載の光デバイス。
【請求項4】
前記射出領域から射出される光は直線偏光であり、
前記直線偏光の偏光方向及び前記射出領域に直交する方向のいずれにも直交する方向は、前記傾斜面に平行であることを特徴とする請求項3に記載の光デバイス。
【請求項5】
前記傾斜面の光学的な傾斜幅は、「発振波長/4」以上であることを特徴とする請求項3又は4に記載の光デバイス。
【請求項6】
前記誘電体膜における中心部分の光学的な厚さは、「発振波長/4」の奇数倍であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の光デバイス。
【請求項7】
前記誘電体膜は、SiNx、SiOx、TiOx及びSiONのいずれかの膜であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の光デバイス。
【請求項8】
前記射出領域内における相対的に反射率が高い領域は、光学的な厚さが「発振波長/4」の偶数倍である透明な誘電体膜で被覆されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の光デバイス。
【請求項9】
前記複数の発光部において、各発光部に、パルス周期が1ms、パルス幅が500μsの方形波電流パルスをそれぞれ供給したとき、
供給後1μsでの光出力Pa、供給後480μsでの光出力Pbを用いて、(Pa−Pb)/Pb×100の最大値と最小値との差が3未満であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の光デバイス。
【請求項10】
前記壁と前記底面とで囲まれている領域を密閉する透明な板状部材を備え、
前記板状部材は、前記面発光レーザ素子から射出されたレーザ光に対する表面での反射率が0.1%以下であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の光デバイス。
【請求項11】
前記面発光レーザ素子は、複数の発光部を有する面発光レーザアレイであることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の光デバイス。
【請求項12】
光によって被走査面を走査する光走査装置であって、
請求項1〜11のいずれか一項に記載の光デバイスを有する光源と;
前記光源からの光を偏向する偏向器と;
前記偏光器で偏向された光を被走査面上に集光する走査光学系と;を備える光走査装置。
【請求項13】
少なくとも1つの像担持体と;
前記少なくとも1つの像担持体に対して画像情報が含まれる光を走査する少なくとも1つの請求項12に記載の光走査装置と;を備える画像形成装置。
【請求項14】
前記画像情報は、多色のカラー画像情報であることを特徴とする請求項13に記載の画像形成装置。
【請求項1】
面発光レーザ素子と、周囲が壁で囲まれている空間領域の底面上に前記面発光レーザ素子を保持するパッケージ部材とを備える光デバイスにおいて、
前記面発光レーザ素子は、射出領域内に該射出領域の中心部を囲むようにあるいは挟むように設けられ、反射率を前記中心部の反射率よりも低くする透明な誘電体膜を有し、
前記射出領域に直交する方向からみたときに、前記誘電体膜によって囲まれる領域あるいは挟まれる領域の内側に、前記面発光レーザ素子の電流通過領域が位置することを特徴とする光デバイス。
【請求項2】
前記板状部材で反射された戻り光が前記射出領域内に入射し、
前記誘電体膜の端部近傍は、入射した戻り光の光路を、前記電流通過領域から遠ざかる方向に曲げる構造を有することを特徴とする請求項1に記載の光デバイス。
【請求項3】
前記誘電体膜の端部近傍は、前記射出領域に平行な面に対して傾斜した傾斜面を有することを特徴とする請求項2に記載の光デバイス。
【請求項4】
前記射出領域から射出される光は直線偏光であり、
前記直線偏光の偏光方向及び前記射出領域に直交する方向のいずれにも直交する方向は、前記傾斜面に平行であることを特徴とする請求項3に記載の光デバイス。
【請求項5】
前記傾斜面の光学的な傾斜幅は、「発振波長/4」以上であることを特徴とする請求項3又は4に記載の光デバイス。
【請求項6】
前記誘電体膜における中心部分の光学的な厚さは、「発振波長/4」の奇数倍であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の光デバイス。
【請求項7】
前記誘電体膜は、SiNx、SiOx、TiOx及びSiONのいずれかの膜であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の光デバイス。
【請求項8】
前記射出領域内における相対的に反射率が高い領域は、光学的な厚さが「発振波長/4」の偶数倍である透明な誘電体膜で被覆されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の光デバイス。
【請求項9】
前記複数の発光部において、各発光部に、パルス周期が1ms、パルス幅が500μsの方形波電流パルスをそれぞれ供給したとき、
供給後1μsでの光出力Pa、供給後480μsでの光出力Pbを用いて、(Pa−Pb)/Pb×100の最大値と最小値との差が3未満であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の光デバイス。
【請求項10】
前記壁と前記底面とで囲まれている領域を密閉する透明な板状部材を備え、
前記板状部材は、前記面発光レーザ素子から射出されたレーザ光に対する表面での反射率が0.1%以下であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の光デバイス。
【請求項11】
前記面発光レーザ素子は、複数の発光部を有する面発光レーザアレイであることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の光デバイス。
【請求項12】
光によって被走査面を走査する光走査装置であって、
請求項1〜11のいずれか一項に記載の光デバイスを有する光源と;
前記光源からの光を偏向する偏向器と;
前記偏光器で偏向された光を被走査面上に集光する走査光学系と;を備える光走査装置。
【請求項13】
少なくとも1つの像担持体と;
前記少なくとも1つの像担持体に対して画像情報が含まれる光を走査する少なくとも1つの請求項12に記載の光走査装置と;を備える画像形成装置。
【請求項14】
前記画像情報は、多色のカラー画像情報であることを特徴とする請求項13に記載の画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図38】
【図37】
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【図36】
【図38】
【図37】
【公開番号】特開2011−119370(P2011−119370A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−274035(P2009−274035)
【出願日】平成21年12月2日(2009.12.2)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月2日(2009.12.2)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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