説明

光モジュール

【課題】部品点数増加や構造の複雑化を抑制することができる光モジュールを提供する。
【解決手段】発光モジュール1は、箱型のパッケージ3と、当該パッケージ3の前側壁7aから延び出す円筒状のスリーブ部5と、を備えている。このスリーブ部5は、レンズ31を保持するレンズホルダ33を有している。そして、レンズホルダ33とパッケージ3の前側壁7aとは、プロジェクション溶接によって接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、箱形の本体部を備えた光モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような光モジュールとして、下記特許文献1に記載のバタフライ型パッケージを備えるものが知られている。図13に示すように、特許文献1に記載の光モジュール101では、箱形のパッケージ103の左右の側壁からリードピン105が延び出しており、リードピンが延び出していない前側壁107には、光学調芯部材、レンズ、アイソレータ等(いずれも不図示)が接続される窓109が形成されている。LD(レーザダイオード)素子111等の光デバイスは、パッケージ103の内部に搭載されている。またパッケージ103の内部には、上記LD素子111等の半導体素子に加えて、熱電変換素子113が搭載されている。LD素子111から出射された光は、窓109を通過して光学調芯部材に至り、光学調芯部材の先端に付属するスリーブ(不図示)を介して光ファイバ(不図示)に伝わる。
【特許文献1】特開2001−60635号公報
【特許文献2】特開2001−156194号公報
【特許文献3】特開平8−316503号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような光モジュール101において、パッケージを気密封止する必要がある場合には、パッケージの気密を保ちながらパッケージ側面を光が透過できるように、例えばサファイア板のような光透過部材を、窓109に組み付ける必要がある。また、このような光透過部材を組み付けた場合において、光ファイバとLD素子111とを光学的に最適に結合させようとすると、パッケージ103内でLD素子111と光透過部材との間に設置される第1レンズと、パッケージ103外で光透過部材と光ファイバとの間に設置される第2レンズと、の2つのレンズを設ける必要がある。その結果、光モジュール101の部品点数増加や、構造の複雑化を招くので、光モジュール101のコストアップに繋がってしまう。
【0004】
そこで、本発明は、部品点数増加や構造の複雑化を抑制することができる光モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る光モジュールは、箱型の本体部と、当該本体部の一側壁から延び出す円筒状のスリーブ部と、を備え、スリーブ部は、レンズを保持するレンズホルダを有し、レンズホルダと本体部の一側壁とは、抵抗溶接により接続されていることを特徴とする。
【0006】
この光モジュールでは、箱形の本体部の一側壁から延び出すスリーブ部は、レンズを保持するレンズホルダを有しており、このレンズホルダは本体部の一側壁に抵抗溶接されている。この構成により、本体内部の気密封止が必要な場合にも、レンズホルダのレンズによって本体部内部を気密封止することができる。従って、本体内部と外部との間で光を透過させながら本体内部を気密封止するための光透過部材等を別途設ける必要がなく、部品点数増加や構造の複雑化を抑制することができる。更に、このような光透過部材が不要であるので、レンズホルダが保持するレンズを適切な位置に配置することができ、本体内部と外部との間の適切な光結合を達成できる。その結果、光結合のためにレンズの数が増加することを抑制でき、構造が複雑化してしまうことを更に抑制することができる。
【0007】
また、本体部の一側壁を挟む二つの側壁の各々には、一側壁と平行に延びる溝が設けられていることが好ましい。このような溝を設けることにより、本体部とレンズホルダとを抵抗溶接するとき、本体部を溶接電極で把持し易くなる。従って、本体部とレンズホルダとを適切に加圧し押し当てながら両者を抵抗溶接することができる。
【0008】
また、スリーブ部は、レンズホルダの先端に連結されるスリーブ組立体を更に有し、レンズホルダとスリーブ組立体とは、YAG溶接によって接合されもよい。この場合、YAG溶接によって、レンズホルダとスリーブ組立体とを素早く接合することができるので、作業性を向上することができる。また、本体部の内部は、レンズによって気密封止されてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、部品点数増加や構造の複雑化を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る光モジュールの好適な一実施形態について詳細に説明する。
【0011】
図1及び図2に示すように、発光モジュール(光モジュール)1は、略直方体をなす箱型のパッケージ(本体部)3と、このパッケージ3の前側壁(一側面)7aから前方に延び出す筒状のスリーブ部5で構成されている。パッケージ3は、金属製のベース7を備えており、このベース7は、前方の一辺が立ち上がってなる上記の前側壁7aを備えている。更に、パッケージ3は、ベース7の上部を塞ぐ上蓋8を備えている。ここで、図1の状態における上方向をY方向、スリーブ部5が延び出す方向をZ方向、Y方向とZ方向との双方に直交する方向をX方向としてXYZ座標軸をとり、以下の説明に用いる。
【0012】
パッケージ3において、前側壁7aに対向する後側壁9側には、中間に多層セラミック基板11が配置されており、後側壁9の後方に突出したこの多層セラミック基板11の一配線面からは、複数のリードピン13が後方に伸び出している。なお、この発光モジュール1は、後側壁9側のみからリードピンが伸び出す形態であるが、後側壁9と、この後側壁9に直交する側壁15,15との三壁にセラミック基板を配し、当該三方の壁それぞれからリードピンが伸び出す形態も想定される。この場合、後述のプロジェクション溶接時において、両側壁15,15から伸び出すリードピンについては、プロジェクション溶接用のパッケージ側電極39(図8参照)に触れないように、この電極39との位置関係に留意しなければならない。プロジェクション溶接時にリードピンが電極に触れて大きな電流が流れた場合には、リードピンが溶接されてしまう可能性があるからである。
【0013】
このパッケージ3内の前方側において、ベース7上にはペルチェ素子17が搭載され、このペルチェ素子17の上側板上には、配線路が形成されたヒートシンク18が搭載されている。更にそのヒートシンク18上には、LD素子19及びサーミスタ21が搭載されている。また、パッケージ3内の後方側において、多層セラミック基板11の上面には、LD素子19の背面光を検知するPD(フォトダイオード)27が、チップキャリア23を介して搭載されている。なお、このPD27とLD素子19との間には、LD素子19を駆動するためのドライバICが搭載されてもよい。
【0014】
このパッケージ3の前側壁7aから前方に延び出す筒状のスリーブ部5は、レンズ31を保持するレンズホルダ33と、レンズホルダ33先端の前筒部33aに連結されたスリーブ組立体38とを備えている。このスリーブ組立体38は、上記前筒部33aの外周に嵌められたジョイントスリーブ40とジョイントスリーブ40の前方に接続されたスリーブ41とで構成されている。更に、このスリーブ41は、ブッシュ41a、内側スリーブ41b、外側スリーブ41cで構成されており、前方から挿入される光ファイバフェルール47を保持する機能を有している。また、この内側スリーブ41bの内側後端には、中心に結合ファイバ43を保持するスタブ45が保持される。
【0015】
この発光モジュール1に結合する光ファイバ49を保持する上記光ファイバフェルール47は、内側スリーブ41bの前方から挿入され、スタブ45に突き当たる。そして、このフェルール47の中心に保持された光ファイバ49とスタブ45中心の結合ファイバ43とが物理的に接触(Physical Contact)する。このような構成により、LD素子19から発した光は、レンズ31により結合ファイバ43の後端に集光され、この結合ファイバ43を介して、光ファイバ49に伝えられ当該光ファイバ49中を伝播する。
【0016】
続いて、この発光モジュール1の組立て工程について説明する。まず、図3に示すように、パッケージ3の内部に、ペルチェ素子17、ヒートシンク18、LD素子19、チップキャリア23、フォトダイオード27、及びサーミスタ21を固定し、必要な箇所にワイヤボンディングを施す。このパッケージ3のベース7は、主としてコバール製のものが用いられ、ベース7の前側壁7aには開口7bが形成されている。また、チップキャリア23を搭載しリードピン13とLD素子19とを結線する上記の多層セラミック基板11は、パッケージ3の側壁の一部として予め形成されている。
【0017】
次に、図4に示すように、レンズ31を保持するレンズホルダ33の後部を、ベース7の前側壁7aの開口7bに挿入する。そして、LD素子19を発光させながら、あるいは、LD素子19の発光端面を観察しながら、レンズホルダ33のフランジ33bの後面3cと前側壁7aの前面とを摺動させて、レンズ31とLD素子19とのXY平面内における位置関係を調整し、後述するプロジェクション溶接(抵抗溶接)によってレンズホルダ33をベース7の前側壁7aに固定する。
【0018】
ここで、従来であれば、このパッケージ3のような箱型のパッケージに対して、このような抵抗溶接を用いることは一般的ではなかった。抵抗溶接を用いるには、溶接装置の電極を特殊なものにする必要があったからである。従って、窓が設けられた箱形のパッケージに対しては、従来であれば、パッケージ内に第1レンズ、パッケージ外に第2レンズを搭載して、LD素子と結合ファイバとを光結合させていた。これに対し、発光モジュール1では、レンズホルダ33のパッケージ3への固定を、上記のようにプロジェクション溶接により行うこととしているので、パッケージ3内の気密封止は、窓材を兼ねたレンズ31により行われる。そして、この後、上蓋8をシームシール(パラレルシーラ)でベース7に取り付けることで、パッケージ3内を気密封止する。
【0019】
続いて、再び図2を参照すると、調芯部材としてのジョイントスリーブ40を、レンズホルダ33に対してZ方向(光軸方向)に摺動させると共に、ジョイントスリーブ40の前端面40aと、スリーブ41のブッシュ41aの後端面41dとをXY方向に摺動させながら、スリーブ41に挿入された光ファイバ49からの光出力が最適になるように、スリーブ41のXYZ位置を調整する。そして、最適位置になったところで、レンズホルダ33とジョイントスリーブ40との接合部BをYAG溶接で固定し、ブッシュ41aとジョイントスリーブ40との接合部CをYAG溶接で固定する。YAG溶接によって接合部B,Cを素早く接合することができるので、作業性を向上することができる。また、YAG溶接によれば、熱硬化性接着剤を利用した接合に比べて部品に加わる熱が小さいので、部品の熱膨張による調芯のズレを抑制することができる。以上のようにして、発光モジュール1が完成する。
【0020】
以下、図5〜図7を参照し、上述したレンズホルダ33とパッケージ3とのプロジェクション溶接について、更に詳細に説明する。
【0021】
プロジェクション溶接は、溶接される部品の一部に、断面が三角形状の突起部(プロジェクション部)を作っておき、溶接される部品同士を突起部先端の狭い面積で接触させ、その狭い接触箇所に瞬間的に大電流を流しながら加圧し、突起部を溶かして2つの部品を固定する方法である。このように、断面が三角形状の突起部を設けることで、溶接前における部品同士の接触面積が制限されるので、流れる電流の電流密度を高めることができる。なお、発光モジュール1のような光部品用途では、通常、2、3〜10kAの電流が流される。
【0022】
図5〜図7に示すように、この発光モジュール1においては、パッケージ3の前面3aと、レンズホルダ33のフランジ33bの後面33cとがプロジェクション溶接される。このレンズホルダ33の後面33cには、断面三角形状で円環状の突起部33dが予め形成されている。従って、レンズホルダ33の後部を、パッケージ3の開口7bに挿入したときには、レンズホルダ33とパッケージ3とが、突起部33dの先端において接触する。このような状態で、パッケージ3及びレンズホルダ33とを、抵抗溶接機36にセットし、レンズホルダ側電極37と、パッケージ側電極39との加圧により、レンズホルダ33とパッケージ3とを押し付けながら、レンズホルダ側電極37とパッケージ側電極39との間に大電流を流す。この電流が、突起部33d先端における狭い範囲を流れるので、この電流により突起部33dが溶けて、後面33cと前面3aとが溶接される。
【0023】
このようなプロジェクション溶接では、溶接される部品同士を強く押し付けるために、溶接電極により当該部品を加圧する必要がある。このため、図8に示すように、発光モジュール121の箱形のパッケージ123に、レンズホルダ125を接合する場合において、貫通穴の開いたパッケージ前壁123aにフランジ123bを設け、このフランジ123bの前面にレンズホルダ125をプロジェクション溶接することも考えられる。このようにすれば、フランジ123bとパッケージ前壁123aとの間のネック部123cをパッケージ側溶接電極に引っ掛けるようにすることで、溶接電極の加圧による応力を吸収することができ、溶接時の加圧に耐え得る構造が得られる。
【0024】
しかしながら、発光モジュール121のこの様な構造は、一見して明らかな様に、パッケージ123に特殊な構成を採用することになり、コストメリットが失われる。更には、パッケージ123の内部に搭載されたLD素子127からレンズ129までの距離を長く設定しなければならず、光学的な面でも不利を招いてしまう。
【0025】
また、再び図7を参照すると、プロジェクション溶接においは、溶接時の大電流が溶接には関係ない部分に流れて、パッケージ3及びその内部に搭載された部品を破損しないように、パッケージ側電極39とパッケージ3との接点はできるだけ、溶接部Aに近い方が好ましい。そのようにすれば、レンズホルダ側電極37から流れこんだ大電流は、パッケージの3内部に向かうことなく、溶接部Aを通過して直ちにパッケージ側電極39に流れこみ、パッケージ3内部の部品の破損等を抑制できるからである。なお、溶接時の電流は、逆に、パッケージ側電極39からレンズホルダ側電極37に流れ込む向きであってもよい。
【0026】
このため、発光モジュール1では、図7及び図9に示すように、パッケージ3両側の一対の側壁15,15には、前側壁7aに平行なY方向に延びる一対のスリット(溝)15a,15aが設けられている。そして、パッケージ側電極39には、このパッケージ3を両側から把持する一対の把持部39aが設けられており、この把持部39a,39aが上記スリット15a,15aに差し込まれてパッケージ3がパッケージ側電極39に固定される。このように、発光モジュール1は、パッケージ3の溶接部Aの後方に設けられたスリット15aを有しているので、プロジェクション溶接の際に、電極37,39によるZ方向の加圧力を確実に受け止めることが可能になる。その結果、より信頼性の高い溶接が可能になり、発光モジュール1の気密不良が発生し難い。
【0027】
また、このような構成により、パッケージ側電極39とパッケージ3との接点が、溶接部Aに近くなるので、レンズホルダ側電極37から流れこんだ大電流が、パッケージの3内部に向かうことなく、溶接部Aを通過して直ちにパッケージ側電極39の把持部39aに流れこむことになる。その結果、溶接時の大電流が溶接には関係ない部分に流れることを抑制することができ、パッケージ3及びその内部に搭載された部品の破損を抑制することができる。また、上記した発光モジュール121のような特殊な構成も必要ないので、低コスト化の妨げになることも少ない。
【0028】
また、一般に、プロジェクション溶接を使って組み立てる光モジュールとしては、図10に示すような、いわゆる同軸タイプの光モジュールが挙げられる。この同軸タイプの光モジュール141では、光軸に沿って、溶接部143、光デバイス145、スリーブ147(又は結合ファイバ)という順に並んでいる。これに対し、上述の発光モジュール1では、光軸に沿ってLD素子19、溶接部A、スリーブ41(又は結合ファイバ)の順に並んでおり(図2参照)、光モジュール141とは溶接部とスリーブ(又は結合ファイバ)との位置関係が逆転している。また、発光モジュール1では、溶接部Aの直近にレンズ31が搭載されている点においても光モジュール141と異なっている。
【0029】
このため、発光モジュール1においては、プロジェクション溶接の際に大電流が通過する箇所の直近に、レンズ31といった部品が存在することになるので、このような部品が大電流により破壊されないように、プロジェクション溶接用の電極の形状には特別な留意が払われなければならない。従って、上述の発光モジュール1のプロジェクション溶接に用いられる抵抗溶接機36においては、上述したように、特にパッケージ側電極39に特別な形状を採用することで、レンズ31等の部品の破壊が抑制されている。
【0030】
図11には、従来のバタフライ型パッケージモジュールの一例として、光モジュール151を示す。この光モジュール151において、パッケージ153の前面に設けられる光透過部155には、光を透過し且つ、パッケージ153内部の気密を確保するために、光学ガラスあるいはサファイア板からなる光透過板157を取り付ける必要があった。このような光透過板157のコスト比が、この種のバタフライ型パッケージモジュールの低コスト化を妨げる一要因であった。なお、光学ガラスよりも硬性の点で優れるサファイア板を、光透過板157として採用する場合にあっては、特に、低コスト化の妨げになる。
【0031】
更には、このような光透過板157が存在すると、結合ファイバとLD素子とを光学的に最適に結合させるために、パッケージ153の内外にそれぞれレンズを設ける2レンズ系の構成を採用せざるを得ない。従って、この場合、光モジュールの部品点数増加や、構造の複雑化を招き、パッケージの更なるコストアップに繋がってしまう。また、上記構成を採用する場合には、光透過部155の光線断面を比較的大きくし、光透過板157の面積を広くしなければならない。このような制限は、光透過板157の材料として好適なサファイア自体が高価なことに加え、その光透過板157の面積を削減する余地も少ないので、光モジュール151の低コスト化のネックとなっていた。
【0032】
これに対し、上述の発光モジュール1(図2参照)では、レンズ31が装着されたレンズホルダ33が抵抗溶接によってパッケージ3内部を封止するように前側壁7aに接合されるので、レンズホルダ33のレンズ31によってパッケージ3内部を気密封止することができる。従って、上記の光透過板157のようなものを別途設ける必要がなく、部品点数増加や構造の複雑化を抑制することができる。更に、このような光透過板157が不要であるので、レンズ31をパッケージ3の開口7bに近い位置に配置することができ、レンズ1個でもLD素子19と結合ファイバ43との適切な光結合を達成できる。その結果、パッケージ3内を気密封止する場合にも、光結合のためにレンズの数を増加させる必要がなく、構造が複雑化してしまうことを更に抑制することができる。
【0033】
また、光モジュール101(図13参照)のようなバタフライ型パッケージを有するモジュールにおいて、LD素子111と光ファイバ(あるいはスリーブを含む光学調芯部材)との調芯は、まずパッケージ103にLD111を搭載した上で、特殊治具を用意し、窓109を上方に向けてパッケージ103を縦に置いた状態で、上方から調芯部材を窓109に重ねる。そして、実際にLD素子111を発光させつつ調芯部材の先端に付属するファイバからの出射光をモニターして行う。そして、調芯後に調芯部材中の各部品、及び調芯部材と窓109とを、YAG溶接により固定するのが一般的である。
【0034】
しかしながら、このような光モジュール101にあっては、レンズの位置に合わせて、LD111を実装(通常は半田付け)する必要があるため、レンズとLD111との相対位置関係がばらつきやすい。特に、前側壁107に直交する方向においては、各部品の寸法公差を吸収することができないので、ばらつきが大きくなる傾向にある。この結果、光ファイバとLD111とを光学的に最適に結合させようとすると、光ファイバのレンズに対する位置関係がばらつくことになる。つまり、光ファイバのパッケージ103に対する位置関係が、ばらつきやすい。
【0035】
特に、近年のバタフライ型パッケージでは、パッケージ内において断面L字形状のレンズ保持ブロックを用いる形態に代えて、LD素子を効率よく冷却すべく、パッケージ内において平板状ベンチをペルチェ上に搭載し、この平板状ベンチ上にレンズを搭載する形態が採用されている。かかる形態においては、パッケージ内部の底面からのレンズの中心(光軸中心)の高さがほぼ固定されてしまう。そして、この高さのばらつきは、パッケージ内に設置された第1レンズと、パッケージ外に設置された第2レンズとを備えるような2レンズ系のモジュールでも吸収しきれない場合がある。
【0036】
これに対して、発光モジュール1(図2参照)においては、上述したように、LD素子19をパッケージ3内に実装した後で、レンズ31を、LD素子19に合わせて位置調整し固定することができる。従って、上記光透過板157のような光透過板を用いる場合にも、LD素子19との位置ズレのマージンを考慮する必要がなくなり、光透過板の面積を小さくすることができるため、コストダウンが可能になる。また、LD素子19に位置合わせして、レンズ31が固定されることから、LD素子19とレンズ31との位置関係の精度を高めることができ、位置ズレに対してシビアなレンズ31を採用することが可能になる。その結果、前述の光透過板が不要になり、コストダウンが可能になる。
【0037】
また、発光モジュール1は、LD素子19に対して、レンズ31を位置あわせして固定できる構造なので、LD素子19とレンズ31との位置バラつきが小さくなる。このため、LD素子19と結合ファイバ43との光結合効率のばらつきが小さくなる。更に、結合ファイバ43のレンズ31に対する位置ばらつきも小さくなり、結合ファイバ43とパッケージ3との位置ばらつきも小さくすることができる。
【0038】
また、上記光モジュール141(図10参照)のような一般的な同軸タイプの光モジュールでは、気密封止される空間は、CAP149の内側のごく狭い空間に限られる。従って、ペルチェ素子など多くの部品をモジュール内に入れるのは困難である。しかし、箱形のパッケージ3をもつ発光モジュール1では、同軸タイプに比較して部品の搭載エリアが大きく、パッケージ3内に比較的容易に部品を実装することができる。
【0039】
また、図12には、発光モジュール1におけるLD素子19の結線/配線を、他の形態に変更した光モジュール171を示す。この光モジュール171では、多層セラミック基板173が平面視L字型の形状をなしており、パッケージ3内部で全面に配置されている。この多層セラミック基板173が切り欠かれた位置においてベース上にペルチェ素子175、LDサブマウント177が設けられている。そして、LD素子19を駆動する信号の配線は、LD素子19側方の結線部Eにおいて、多層セラミック基板173とLDサブマウント177との間のワイヤリングにより結線されている。このような構成により、LD素子19を駆動する信号の配線としては、インピーダンス整合された多層セラミック基板173の配線が、LD素子19の直近にまで布線されることになる。従って、この信号の配線におけるLDサブマウント177上での配線長を短くすることができ、LDサブマウント177上における配線のインピーダンス整合が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係る光モジュールの一実施形態である発光モジュールを示す一部破断斜視図である。
【図2】図1の発光モジュールを示す他の一部破断斜視図である。
【図3】図1の発光モジュールのパッケージを示す一部破断斜視図である。
【図4】図1の発光モジュールのパッケージ及びレンズホルダを示す一部破断斜視図である。
【図5】パッケージとレンズホルダとをセットした状態の抵抗溶接機を示す斜視図である。
【図6】図5における抵抗溶接機を示す縦断斜視図である。
【図7】図5における抵抗溶接機を示す縦断面図である。
【図8】他の光モジュールを示す一部破断斜視図である。
【図9】図1の発光モジュールを示す斜視図である。
【図10】更に他の光モジュールを示す一部破断斜視図である。
【図11】更に他の光モジュールを示す一部破断斜視図である。
【図12】更に他の光モジュールを示す平面図である。
【図13】従来の光モジュールを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0041】
1…発光モジュール(光モジュール)、3…パッケージ(本体部)、5…スリーブ部、7a…前側壁(一側壁)、15…側壁、15a…スリット(溝)、31…レンズ、33…レンズホルダ、38…スリーブ組立体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱型の本体部と、当該本体部の一側壁から延び出す円筒状のスリーブ部と、を備え、
前記スリーブ部は、レンズを保持するレンズホルダを有し、前記レンズホルダと前記本体部の前記一側壁とは、抵抗溶接により接続されていることを特徴とする光モジュール。
【請求項2】
前記本体部の前記一側壁を挟む二つの側壁の各々には、前記一側壁と平行に延びる溝が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の光モジュール。
【請求項3】
前記スリーブ部は、前記レンズホルダの先端に連結されるスリーブ組立体を更に有し、
前記レンズホルダと前記スリーブ組立体とは、YAG溶接によって接合されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の光モジュール。
【請求項4】
前記本体部の内部は、前記レンズによって気密封止されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の光モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−298738(P2007−298738A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−126470(P2006−126470)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】