説明

光半導体ケース形成用白色熱硬化性シリコーン樹脂組成物及び光半導体ケース

【解決手段】(A)熱硬化性オルガノポリシロキサン(B)白色顔料(C)無機充填剤(但し、白色顔料を除く)(D)硬化触媒を必須成分とし、熱伝導率が1〜10W/mKであることを特徴とする光半導体ケース形成用白色熱硬化性シリコーン樹脂組成物。
【効果】白色性、耐熱性、耐光性を保持し、均一でかつ黄変が少なく、また熱伝導率が高い硬化物を与える光半導体ケース形成用白色熱硬化性シリコーン樹脂組成物及び該組成物の硬化物からなるLED用等の光半導体ケースを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白色性、耐熱性、耐光性を保持し、均一でかつ黄変が少なく、また熱伝導率が高い硬化物を与える光半導体ケース形成用白色熱硬化性シリコーン樹脂組成物及び該組成物の硬化物からなるLED用等の光半導体ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
LED(Light Emitting Diode)等の光半導体素子は、小型で効率よく鮮やかな色の発光をし、また半導体素子であるため球切れがなく、駆動特性に優れ、振動やON/OFF点灯の繰り返しに強い。そのため、種々のインジケータや光源として利用されている。このような光半導体素子を用いた光半導体装置のケース材のひとつとして、ポリフタルアミド樹脂(PPA)が現在広く使用されている。
【0003】
しかし、今日の光半導体技術の飛躍的な進歩により、光半導体装置の高出力化及び短波長化が著しいため、特に無着色・白色の材料として従来のPPA樹脂を用いた光半導体素子封止及びケースでは、長期間使用による劣化が著しく、色ムラの発生や剥離、機械的強度の低下等が起こり易く、このような問題を効果的に解決することが望まれている。
【0004】
更に詳述すると、特許第2656336号公報(特許文献1)には、封止樹脂が、エポキシ樹脂、硬化剤及び硬化促進剤を構成成分とするBステージ状光半導体封止用エポキシ樹脂組成物であって、上記構成成分が分子レベルで均一に混合されている樹脂組成物の硬化体で構成される光半導体装置が記載されている。ここでは、エポキシ樹脂として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂又はビスフェノールF型エポキシ樹脂が主として用いられ、トリグリシジルイソシアネート等を使用し得ることも記載されている。しかし、実施例では、トリグリシジルイソシアネートがビスフェノールA又はF型エポキシ樹脂に少量添加されて使用されているもので、本発明者らの検討によれば、このBステージ状光半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、特に高温・長時間の放置で黄変するという問題がある。
【0005】
更に、特開2000−196151号公報(特許文献2)、特開2003−224305号公報(特許文献3)、特開2005−306952号公報(特許文献4)には、LED発光素子封止用エポキシ樹脂組成物におけるトリアジン誘導体エポキシ樹脂の使用について記載されているが、いずれも高温・長時間の放置で黄変するという問題解決が十分ではなかった。
【0006】
更に、特開2006−140207号公報(特許文献5)には高熱伝導性を有する光反射用樹脂組成物についての記載がなされているが、該組成物はエポキシ樹脂組成物であるために、高温で長時間放置された場合や、LEDがUVLED、白色LED、青色LEDなどの高輝度タイプの場合に黄変するといった問題が発生する可能性があった。
【0007】
更に、特開2006−77234号公報(特許文献6)には、重量平均分子量が5×103以上のオルガノポリシロキサン及び縮合触媒を含有するLED素子封止用樹脂組成物が記載されている。しかし、このオルガノポリシロキサンは透明性を有する常温で液状のものでなければならないために、トランスファー成形や圧縮成形に適さないものである。
【0008】
更に、LEDより放出された熱は、LEDパッケージなどに使用されている透明封止剤やリフレクターを劣化させる要因となるため、輝度低下の原因となっていた。そこで、反射率が高く、かつ高熱伝導性を有する材料の開発が待たれていた。
【0009】
また、現在LED用等の光半導体ケースはリードフレームの上にLEDチップを搭載してワイヤボンディングした後、その上をエポキシ樹脂あるいはシリコーン樹脂で封止し、さらにLEDからの光が漏れないようにリフレクター材(反射材)で封止するのが一般的である。その際、封止する樹脂組成物にはリードフレームとの接着性が要求される。しかしながら、従来の封止樹脂はリードフレームへの接着性が弱く、実装する際に高温(215〜260℃)にさらされるため、半田リフロー工程において、リードと樹脂の界面で剥離が発生し、信頼性が保証できないという大きな問題が生じている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第2656336号公報
【特許文献2】特開2000−196151号公報
【特許文献3】特開2003−224305号公報
【特許文献4】特開2005−306952号公報
【特許文献5】特開2006−140207号公報
【特許文献6】特開2006−77234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、白色性、耐熱性、耐光性を保持し、均一でかつ黄変が少なく、また熱伝導率が高い硬化物を与える光半導体ケース形成用白色熱硬化性シリコーン樹脂組成物及び該組成物の硬化物からなるLED用等の光半導体ケースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、
(A)熱硬化性オルガノポリシロキサン
(B)白色顔料
(C)無機充填剤(但し、白色顔料を除く)
(D)硬化触媒
を必須成分とし、熱伝導率が1〜10W/mKである光半導体ケース形成用白色熱硬化性シリコーン樹脂組成物が、白色性、耐熱性、耐光性を保持し、均一でかつ黄変が少なく、また熱伝導率が高い硬化物を与え、LED用等の光半導体ケースに有用であることを見出した。
また、本発明者らは、更に、(F)シランカップリング剤及び/又は(G)接着助剤として下記組成式(2)のエポキシ樹脂を添加することにより、この光半導体ケース形成用白色熱硬化性シリコーン樹脂組成物の硬化物が、基板への接着力が4MPa以上である良好な硬化物であることを見出し、本発明をなすに至った。
【0013】
従って、本発明は、下記光半導体ケース形成用白色熱硬化性シリコーン樹脂組成物及び光半導体ケースを提供する。
請求項1:
(A)熱硬化性オルガノポリシロキサン
(B)白色顔料
(C)無機充填剤(但し、白色顔料を除く)
(D)硬化触媒
を必須成分とし、熱伝導率が1〜10W/mKであることを特徴とする光半導体ケース形成用白色熱硬化性シリコーン樹脂組成物。
請求項2:
(B)成分の白色顔料が、平均粒径が0.05〜5.0μmの二酸化チタン、平均粒径がそれぞれ0.1〜3.0μmのチタン酸カリウム、酸化ジルコニウム、硫化亜鉛、酸化亜鉛、アルミナ、酸化マグネシウムから選ばれる1種又は2種以上であり、
(C)成分の無機充填剤が、平均粒径がそれぞれ4〜40μmのアルミナ、酸化亜鉛、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、ボロンナイトライドから選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1に記載の光半導体ケース形成用白色熱硬化性シリコーン樹脂組成物。
請求項3:
(B)成分の白色顔料と(C)成分の無機充填剤とからなる粉粒物の粒度分布が、0.4〜1.0μm、8〜18μm及び30〜50μmの3つの間に極大ピークを有することを特徴とする光半導体ケース形成用白色熱硬化性シリコーン樹脂組成物。
請求項4:
上記(C)成分の無機充填剤と上記(B)成分の白色顔料の合計量が、樹脂組成物全体に対して50〜95質量%の範囲であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光半導体ケース形成用白色熱硬化性シリコーン樹脂組成物。
請求項5:
(A)成分の熱硬化性オルガノポリシロキサンが、下記平均組成式(1)
1aSi(OR2b(OH)c(4-a-b-c)/2 (1)
(式中、R1は同一又は異種の炭素数1〜20の有機基、R2は同一又は異種の炭素数1〜4の有機基を示し、0.8≦a≦1.5、0≦b≦0.3、0.001≦c≦0.5、0.801≦a+b+c<2を満たす数である。)
で表されるシリコーンポリマーであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光半導体ケース形成用白色熱硬化性シリコーン樹脂組成物。
請求項6:
(B)成分の白色顔料が酸化チタンであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の光半導体ケース形成用白色熱硬化性シリコーン樹脂組成物。
請求項7:
(E)成分として、融点120〜140℃であるステアリン酸カルシウムを含む離型剤を全組成物に対して0.2〜5.0質量%含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の光半導体ケース形成用白色熱硬化性シリコーン樹脂組成物。
請求項8:
(F)シランカップリング剤及び/又は(G)接着助剤として、下記組成式(2)
【化1】


(式中、R01、R02、R03は炭素数1〜10の有機基を示し、R01、R02、R03のうち少なくとも1つはエポキシ基を含む。)
で表される1,3,5−トリアジン核誘導体エポキシ樹脂を含有する請求項1〜7のいずれか1項に記載の光半導体ケース形成用白色熱硬化性シリコーン樹脂組成物。
請求項9:
(D)成分の硬化触媒が有機金属縮合触媒であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の光半導体ケース形成用白色熱硬化性シリコーン樹脂組成物。
請求項10:
(D)成分の有機金属縮合触媒が安息香酸亜鉛であることを特徴とする請求項9に記載の光半導体ケース形成用白色熱硬化性シリコーン樹脂組成物。
請求項11:
請求項1〜10のいずれか1項に記載の光半導体ケース形成用白色熱硬化性シリコーン樹脂組成物の硬化物からなり、内部に透明樹脂で封止された光半導体が保持された光半導体ケース。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、白色性、耐熱性、耐光性を保持し、均一でかつ黄変が少なく、また熱伝導率が高い硬化物を与える光半導体ケース形成用白色熱硬化性シリコーン樹脂組成物及び該組成物の硬化物からなるLED用等の光半導体ケースを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の光半導体ケース形成用白色熱硬化性シリコーン樹脂組成物を用いた光半導体ケース(LEDリフレクター)の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
(A)熱硬化性オルガノポリシロキサン
本発明に係る(A)成分の熱硬化性オルガノポリシロキサンは、シラノール基含有オルガノポリシロキサンで、特に下記平均組成式(1)
1aSi(OR2b(OH)c(4-a-b-c)/2 (1)
(式中、R1は同一又は異種の炭素数1〜20の有機基、R2は同一又は異種の炭素数1〜4の有機基を示し、0.8≦a≦1.5、0≦b≦0.3、0.001≦c≦0.5、0.801≦a+b+c<2を満たす数である。)
で表されるシリコーンポリマーである。
【0017】
ここで、R1における有機基としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基等の炭素数1〜20の非置換又は置換1価炭化水素基が挙げられ、上記アルキル基としては、炭素数1〜10のアルキル基がより好ましく、直鎖状、分岐状及び環状のいずれであってもよく、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0018】
上記アルケニル基としては、炭素数2〜10のアルケニル基がより好ましく、例えばビニル基、アリール基、プロペニル基等が挙げられる。
上記アリール基としては、炭素数6〜10のものがより好ましく、例えばフェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等が挙げられる。
上記アラルキル基としては、炭素数7〜10のものがより好ましく、例えばベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。
また、上記非置換の1価炭化水素基の水素原子の1個又はそれ以上をハロゲン原子、シアノ基等で置換した置換1価炭化水素基であってもよい。
上記平均組成式(1)のR1は、これらの中でも、特にメチル基又はフェニル基であることが好ましい。
【0019】
上記平均組成式(1)中、R2は同一又は異種の炭素数1〜4の有機基であり、例えばアルキル基又はアルケニル基が挙げられる。また、OR2はシロキサン樹脂の末端基のうち、シラノ−ル基(Si−OH)以外の部分を示し、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基などが挙げられ、原料の入手が容易なメトキシ基、イソプロポキシ基が好ましい。
【0020】
上記平均組成式(1)中、a、b及びcは、0.8≦a≦1.5、0≦b≦0.3、0.001≦c≦0.5、0.801≦a+b+c<2を満たす数であり、より好ましくは、0.9≦a≦1.3、0.001≦b≦0.2、0.01≦c≦0.3、0.911≦a+b+c≦1.8である。R1の含有量aが0.8未満では硬くなり、クラック防止性が低下し、1.5を超えると有機基が多くなって疎水性が高くなり、かつ柔らかくなるため、クラック防止効果がなくなるだけでなく、ハジキ等の概観不良が生じる。OR2の含有量bが0.3を超えると末端基量が多くなり、分子量が小さくなる傾向であるため、クラック防止性能が発現しなくなる。OHの含有量cが0.5を超えると加熱硬化時の縮合反応に関与してくる比率が高まり、高硬度ではあるが、耐クラック性に乏しくなる。cが0.001未満では、融点が高くなる傾向があり、作業性に問題が生じる。cを制御する条件としては、アルコシキ基の完全縮合率を86〜96%にすることが好ましく、86%未満では、融点が低くなり、96%を超えると融点が高くなりすぎる傾向となる。
【0021】
このような上記平均組成式(1)の(A)成分は、一般に4官能シラン由来のQ単位(SiO4/2)、3官能シラン由来のT単位(R1SiO3/2)、2官能シラン由来のD単位(R1SiO2/2)、1官能シラン由来のM単位(R1SiO1/2)の組み合わせで表現することができるが、(A)成分をこの表記法で表した時、全シロキサン単位の総モル数に対し、R1SiO3/2で表されるT単位の含有モル数の比率が70モル%以上、望ましくは75モル%以上、特に望ましくは80モル%以上であることが好ましい。T単位が70モル%未満では、硬度、密着性、概観等の総合的なバランスが崩れる場合がある。なお、残部は、M、D、Q単位でよく、これらの和が30モル%以下であることが好ましい。融点に対しては、Q及びT単位が多くなるほど融点が高くなり、D,M単位が多くなるほど、融点が低くなる傾向がある。R1SiO3/2で表されるT単位の含有モル数の比率が70モル%以上、残りの30モル%以下がD単位であることがより好ましい。
【0022】
(A)成分の融点は、40〜130℃であり、好ましくは70〜80℃である。40℃未満の場合には、固体状でなくなり、固体表面のベタツキが多くなってトランスファー成形が難しくなり、130℃を超える場合は、流動性がなくなり、トランスファー成形が困難となる。
【0023】
このような(A)成分は、下記一般式(3)
1nSiX4-n (3)
(式中、R1は同一又は異種の炭素数1〜20の有機基であり、好ましくは炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基、又は炭素数7〜20のアラルキル基を示す。Xは塩素等のハロゲン原子又はアルコキシ基、特に炭素数1〜4のアルコキシ基で、nは1、2又は3である。)
で示されるオルガノシランの加水分解縮合物として得ることができる。
【0024】
この場合、Xとしては、固体状のオルガノポリシロキサンを得る点からは、ハロゲン原子、特に塩素原子であることが好ましい。
【0025】
また、上記平均組成式(3)におけるnは、1〜3の整数を表す。nが2又は3である場合、即ちR1が複数ある場合、各R1は互いに同一であってもよいし異なっていてもよい。nは、固形状のポリシロキサンを得ることができる点で、n=1であることが好ましい。
【0026】
上記平均組成式(3)で表されるシラン化合物としては、例えば、メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、メチルビニルジクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等のオルガノトリクロロシラン及びオルガノトリアルコキシシラン;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルフエニルジエトキシシラン等のジオルガノジアルコキシシラン等が挙げられる。特にメチルトリクロロシランを用いることが好ましい。また、これにフェニルトリクロロシランを併用することも有効である。
【0027】
なお、これらシラン化合物は、T単位を70モル%以上含むシラノール基含有オルガノポリシロキサンを得る点から、トリクロロシランやトリアルコキシシランの使用量を選定することが好ましい。
【0028】
上記加水分解性基を有するシラン化合物の加水分解及び縮合は、通常の方法で行えばよいが、例えば酢酸、塩酸、硫酸等の酸触媒、又は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等のアルカリ触媒の存在下で行うことが好ましい。例えば加水分解性基としてクロル基を含有するシランを使用する場合は、水添加によって発生する塩酸を触媒として、目的とする適切な分子量の加水分解縮合物を得ることができる。
【0029】
加水分解及び縮合の際に添加される水の量は、上記加水分解性基を有するシラン化合物中の加水分解性基(例えばクロル基の場合)の合計量1モル当り、通常、0.9〜1.6モルであり、好ましくは1.0〜1.3モルである。この添加量が0.9〜1.6モルの範囲を満たすと、後述の組成物は作業性が優れ、その硬化物は強靭性が優れたものとなる。
【0030】
上記加水分解性基を有するシラン化合物は、通常、アルコール類、ケトン類、エステル類、セロソルブ類、芳香族化合物類等の有機溶剤中で加水分解して使用することが好ましい。具体的には、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、n−ブタノール、2−ブタノール等のアルコール類、芳香族化合物としてトルエン、キシレンが好ましく、組成物の硬化性及び硬化物の強靭性が優れたものとなるので、イソプロピルアルコール、トルエン併用系がより好ましい。
【0031】
この場合、加水分解及び縮合の反応温度は、好ましくは10〜120℃、より好ましくは20〜100℃である。反応温度がかかる範囲を満たすと、ゲル化することなく、次の工程に使用可能な固体の加水分解縮合物が得られる。
【0032】
具体的合成方法として、メチルトリクロロシランを用いる場合、トルエンに溶解したメチルトリクロロシランに、水及びイソプロピルアルコールを添加して部分加水分解(反応温度−5〜100℃)し、その後残存するクロル基の全量を加水分解する水を添加して、反応させることにより、融点76℃の固体シリコーンポリマーが得られる。
【0033】
こうして目的とするオルガノポリシロキサンが得られる。このオルガノポリシロキサンの融点は、50〜100℃であり、好ましくは、70〜80℃である。50℃未満及び100℃を超えた場合には、次工程の混合作業性で混練りが難しくなる問題が発生する。
【0034】
(B)白色顔料
本発明に係る(B)成分の白色顔料は、白色着色剤として、白色度を高めるために配合するものであり、白色顔料としては二酸化チタンを用いることが好ましく、この二酸化チタンの単位格子はルチル型、アナタース型、ブルカイト型のどれでも構わないが、ルチル型が好ましく使用される。また、平均粒径や形状も限定されないが、平均粒径は通常0.05〜5.0μmである。上記二酸化チタンは、樹脂や無機充填剤との相溶性、分散性を高めるため、AlやSiなどの含水酸化物等で予め表面処理することができる。
なお、平均粒径は、レーザー光回折法による粒度分布測定における質量平均値D50(又はメジアン径)として求めることができる。
【0035】
また、白色顔料(白色着色剤)として、二酸化チタン以外にそれぞれ平均粒径0.1〜3.0μmのチタン酸カリウム、酸化ジルコニウム、硫化亜鉛、酸化亜鉛、アルミナ、酸化マグネシウム等を単独で又は二酸化チタンと併用して使用することもできる。
【0036】
白色顔料の配合量は、(A)成分100質量部に対し、3〜200質量部、望ましくは5〜150質量部、特に望ましくは10〜120質量部が好ましい。3質量部未満では十分な白色度が得られない場合があり、該白色熱硬化性シリコーン樹脂組成物を硬化させた硬化物の波長400〜800nmでの反射率が初期値で70%以上、180℃,24時間劣化テスト後の反射率が70%以上の物性が得られなくなる。また、200質量部を超えると機械的強度向上の目的で添加する他の成分の割合が少なくなる問題が発生する。なお、この白色顔料は、白色熱硬化性シリコーン樹脂組成物全体に対し1〜50質量%であり、望ましくは5〜30質量%、特に8〜30質量%の範囲で含有することが好ましい。
【0037】
(C)無機充填剤
本発明に係る(C)成分の無機充填剤は、通常エポキシ樹脂組成物に配合されるものを使用することができる。例えば、溶融シリカ、溶融球状シリカ、結晶性シリカ等のシリカ類、アルミナ、酸化亜鉛、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、ボロンナイトライド等が挙げられるが、上記した白色顔料(白色着色剤)は除かれる。これらの無機充填剤は1種単独又は2種以上の使用が可能である。また、これら無機充填剤の形状は特に限定されないが、平均粒径は4〜40μmであり、特には7〜35μmであることが好ましい。なお、平均粒径は、レーザー光回折法による粒度分布測定における質量平均値D50(又はメジアン径)として求めることができる。
【0038】
特に、高熱伝導性および高流動性という点からアルミナが好適に用いられ、その粒径は成形性、流動性からみて、上記の通り平均粒径は4〜40μm、特には7〜35μmが好ましい。また、高流動化を得るためには、粒度分布が0.4〜1.0μmの微細領域、8〜18μmの中粒径領域、及び30〜50μmの粗領域ピークを有するように使用することが好ましい。この場合、0.1〜3.0μm、特に0.4〜1.0μmの微細領域のアルミナは白色顔料として作用する。なお、平均粒径は、レーザー光回折法による粒度分布測定における質量平均値D50(又はメジアン径)として求めることができる。
【0039】
即ち、本発明において、アルミナはその平均粒径が4〜40μmの場合には無機充填剤として、また平均粒径が0.1〜3.0μmの場合には白色顔料として働くものである。白色顔料としてのアルミナは光を反射する効果を有し、特に400nm以下の領域の波長を80%以上反射する効果を有する。しかし、微細領域のアルミナを組成物中に配合すると、著しい増粘が起こるため多量には配合できない。
【0040】
また、樹脂と無機充填剤との結合強度を強くするため、無機充填剤をシランカップリング剤、チタネートカップリング剤などのカップリング剤で予め表面処理したものを配合してもよい。
【0041】
このようなカップリング剤としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ官能性アルコキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ官能性アルコキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト官能性アルコキシシランなどを用いることが好ましい。なお、表面処理に用いるカップリング剤の配合量及び表面処理方法については特に制限されるものではないが150℃以上に放置した場合に処理フィラーが黄変しないものが好ましい。
【0042】
無機充填剤の配合量は、(A)成分100質量部に対し50質量部以上、より好ましくは100質量部以上、更に好ましくは150質量部以上で、1,000質量部以下、より好ましくは950質量部以下、更に好ましくは900質量部以下、特には800質量部以下とすることができ、組成物全体の40〜92質量%、特に60〜90質量%が好ましく、また白色顔料との合計量が白色熱硬化性シリコーン樹脂組成物全体の50〜95質量%、特に75〜91質量%の範囲で含有することが好ましい。50質量%未満では、膨張係数が大きくなり、機械的強度が低下する。また95質量%を超えると、増粘による未充填不良や柔軟性が失われることで、素子内の剥離等の不良が発生する場合がある。
【0043】
(D)硬化触媒(縮合触媒)
本発明に係る(D)成分の縮合触媒は、上記(A)成分の熱硬化性オルガノポリシロキサンを硬化させる縮合触媒である。この縮合触媒は、(A)成分の安定性、被膜の硬度、無黄変性、硬化性などを考慮して選択される。例えば、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキサイド、テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド、n−ヘキシルアミン、トリブチルアミン、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、ジシアンジアミド等の塩基性化合物類;テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、チタンアセチルアセトナート、アルミニウムトリイソブトキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、ジルコニウムテトラ(アセチルアセトナート)、ジルコニウムテトラブチレート、コバルトオクチレート、コバルトアセチルアセトナート、鉄アセチルアセトナート、スズアセチルアセトナート、ジブチルスズオクチレート、ジブチルスズラウレート、オクチル酸亜鉛、安息香酸亜鉛、p−tert−ブチル安息香酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、アルミニウムトリイソプロポキシド等の含金属化合物類、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、アルミニウムビスエチルアセトアセテート・モノアセチルアセトネート、ジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)チタン等の有機チタンキレート化合物類が挙げられる。これらの中でも、オクチル酸亜鉛、安息香酸亜鉛、p−tert−ブチル安息香酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、アルミニウムトリイソプロポキシド、有機チタンキレート化合物類が好ましく、特に安息香酸亜鉛が好ましく使用される。
【0044】
硬化触媒の配合量は、(A)成分100質量部に対して0.0001質量部以上、特に0.01質量部以上であるが、望ましくは0.01〜10質量部、好ましくは0.1〜6質量部である。添加量がかかる範囲を満たすと、硬化性が良好であり、安定したものとなる。
【0045】
本発明は、上記成分に加え、下記の成分を配合できる。
(E)離型剤
本発明のシリコーン樹脂組成物には、内部離型剤を配合することができる。(E)成分の内部離型剤は、成形時の離型性を高めるために配合するものであり、全組成物に対して0.2〜5.0質量%含有するように添加するものである。内部離型剤としては、カルナバワックスをはじめとする天然ワックス、酸ワックス、ポリエチレンワックス、脂肪酸エステルをはじめとする合成ワックスなどがあるが、中でも融点120〜140℃であるステアリン酸カルシウムを用いるのが望ましく、本発明に係る離型剤は、高温放置下や光照射下においても、黄変性を抑え、かつ長時間に亘り、良好な離型性を継続して保持する。
【0046】
(F)シランカップリング剤
本発明のシリコーン樹脂組成物には樹脂と無機充填剤との結合強度を強くするため、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤などのカップリング剤を配合することができる。
このようなカップリング剤としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ官能性アルコキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ官能性アルコキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト官能性アルコキシシランなどを用いることが好ましい。なお、表面処理に用いるカップリング剤の配合量及び表面処理方法については、特に制限されるものではない。
【0047】
シランカップリング剤(F)の配合量は、(A)成分100質量部に対し0.1〜8.0質量部、好ましくは0.5〜6.0質量部添加することができる。0.1質量部未満であると、基材への接着効果が十分ではなく、また8.0質量部を超えると、粘度が極端に下がり、ボイドやフラッシュの原因となることがある。
【0048】
(G)接着助剤
本発明のシリコーン樹脂組成物には、接着助剤を配合する。接着助剤は接着性を高めるために配合するものであり、全組成物に対して0.2〜5.0質量%含有するように添加するものである。接着助剤としては下記組成式(2)
【化2】


で表される1,3,5−トリアジン核誘導体エポキシ樹脂が使用される。ここで、R01、R02、R03としては炭素数1〜10のアルキル基等の有機基を示し、R01、R02、R03の少なくとも1つがエポキシ基を含む。エポキシ基を含むものとしては、グリシジル基、グリシドキシ基、等が挙げられ、例としてはR01、R02、R03が全てグリシジル基であるトリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアネートやモノアリルジグリシジルイソシアヌレート、1−アリル−3,5−(2−メチルエポキシプロピル)イソシアヌレート、1−(2−メチルプロペニル)−3,5−ジグリシジルイソシアヌレート、1−(2−メチルプロペニル)−3,5−(2−メチルエポキシプロピル)イソシアヌレートなどが使用される。接着助剤としては高温放置下や光照射下においても黄変しないものが望ましい。
【0049】
その他の添加剤
本発明の光半導体ケース形成用白色熱硬化性シリコーン樹脂組成物には、更に必要に応じて各種の添加剤を配合することができる。例えば、樹脂の性質を改善する目的で種々のウィスカー、シリコーンパウダー、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、有機合成ゴム等の添加剤を、本発明の効果を損なわない範囲で添加配合することができる。
【0050】
本発明の光半導体ケース形成用白色熱硬化性シリコーン樹脂組成物には、必要により、フェノール系、リン系、硫黄系酸化防止剤を配合してもよいが、添加しなくても従来の熱硬化性シリコーン樹脂組成物に比べて変色性は少ない。
【0051】
本発明の光半導体ケース形成用白色熱硬化性シリコーン樹脂組成物は、熱硬化性であり、例えば150〜185℃で30〜180秒の加熱により硬化するが、この場合、更に150〜180℃で2〜20時間の後硬化を行ってもよい。
【0052】
本発明の(A)〜(D)成分を必須成分とする光半導体ケース形成用白色熱硬化性シリコーン樹脂組成物を硬化して得られた硬化物は、その熱伝導率が1〜10W/mK、好ましくは1.5〜7W/mK、更に好ましくは2〜5W/mKである。熱伝導率が低すぎると光半導体素子から発生する熱を逃がすことができず、半導体装置の劣化を早めることがある。このような熱伝導率を得るためには、上記した熱導電性充填剤の添加により達成することができる。なお、熱伝導率の測定法は後述する通りである。
【0053】
かかる高熱伝導性を得るためには、(B)白色顔料及び/又は(C)無機充填剤として、特に(C)無機充填剤として高熱伝導性のものを高配合することにより達成される。かかる高熱伝導性充填剤としてはアルミナ、酸化亜鉛、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、ボロンナイトライド等が好ましいが、特にアルミナが好適である。
【0054】
なお、この無機充填剤は、白色顔料との合計量が白色熱硬化性シリコーン樹脂組成物全体の50〜95質量%、特に75〜91質量%の範囲で含有することが好ましい。この無機充填剤と白色顔料との合計量が50質量%未満では、十分な熱伝導性が得られず、熱伝導性を上げるためにこれらの充填量を95質量%を超えて増やすと、組成物の流動性が悪くなり成形が困難となる。
【0055】
この場合、無機充填剤と白色顔料とからなる粉粒物の粒度分布が、0.4〜1.0μm、好ましくは0.4〜0.7μm、8〜18μm、好ましくは12〜18μm、及び30〜50μm、好ましくは30〜38μmの3つの間に極大ピークを有するように使用することが好ましい。
【0056】
特に、高熱伝導性という点からアルミナが好適に用いられ、アルミナを(B)白色顔料及び/又は(C)無機充填剤として用いる場合には、全アルミナ中、平均粒径0.4〜1.0μmの微細領域のアルミナの割合が3〜20質量%、特に7〜18質量%、平均粒径8〜18μmの中粒径領域のアルミナの割合が30〜70質量%、特に40〜65質量%、平均粒径30〜50μmの粗領域のアルミナの割合が10〜40質量%、特に20〜30質量%であるように配合することが好ましい。この割合から外れると十分な流動性を得られなくなるおそれがある。
【0057】
また、この硬化物の波長450nmでの光反射率は、初期値で70%以上、特に80%以上、とりわけ85%以上、180℃,24時間劣化テスト後の反射率が70%以上、特に80%以上、とりわけ85%以上であることが好ましい。反射率が70%未満であるとLED用半導体素子ケース用として、使用上、使用時間が短くなる問題が発生する。また硬化物を、365nmピーク波長の高圧水銀灯を用いて24時間照射(60mW/cm)した後の波長450nmでの光反射率も70%以上、特に80%以上、とりわけ85%以上であることが好ましい。
【0058】
なお、このような反射率は、上記(A)成分として式(1)のシラノール基含有オルガノポリシロキサンを用いると共に、白色顔料、特に酸化チタンを上述した量で配合することにより達成することができる。
【0059】
本発明の光半導体ケース形成用白色熱硬化性シリコーン樹脂組成物は、これを成形して光半導体ケースを形成することができる。ここで、光半導体ケースは、内部に透明樹脂、例えばシリコーン樹脂、エポキシ樹脂等で封止したLED等の光半導体を保持、収容するものであり、この場合、光半導体を封止した透明樹脂との接触面が反射面(リフレクター)となるものである。
【0060】
従って、本発明の光半導体ケース形成用白色熱硬化性シリコーン樹脂組成物は、半導体・電子機器装置、特にはLED用ケース、フォトカプラー用の封止材として有効に利用できる。
【0061】
ここで、本発明の光半導体ケース形成用白色熱硬化性シリコーン樹脂組成物を用いた半導体素子の一例であるLEDリフレクターの断面図を図1に示す。図1で示されるLEDは、化合物半導体からなる半導体素子1がリードフレーム2にダイボンドされ、更にボンディングワイヤ3により別のリードフレーム(図示せず)にワイヤボンドされている。また、この半導体素子1と対向するように受光用の半導体素子(図示せず)がリードフレーム(図示せず)上にダイボンドされ、更にボンディングワイヤ(図示せず)により別のリードフレーム(図示せず)にワイヤボンディングされている。これらの半導体素子の間は透明封止樹脂4により充填されている。更に、この封止樹脂4により被覆された半導体素子は本発明の光半導体ケース形成用白色熱硬化性シリコーン樹脂組成物の硬化物(白色リフレクターとしての光半導体ケース)5により保持(樹脂封止)されている。なお、6はレンズである。
【0062】
この場合、本発明の光半導体ケース形成用白色熱硬化性シリコーン樹脂組成物の成形封止の最も一般的な方法としては、トランスファー成形法や圧縮成形法が挙げられる。
【0063】
トランスファー成形法では、トランスファー成形機を用い、成形圧力5〜20N/mm2、成形温度は120〜190℃で30〜500秒、特に150〜185℃で30〜180秒で行うことが好ましい。また、圧縮成形法では、コンプレッション成形機を用い、成形温度は120〜190℃で30〜600秒、特に130〜160℃で120〜300秒で行うことが好ましい。更に、いずれの成形法においても、後硬化を150〜185℃で2〜20時間行うことができる。
【実施例】
【0064】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0065】
実施例、比較例で使用した原料を以下に示す。
(A)熱硬化性オルガノポリシロキサン
[合成例]
メチルトリクロロシラン100質量部、トルエン200質量部を1Lのフラスコに入れ、氷冷下で水8質量部、イソプロピルアルコール60質量部の混合液を液中滴下した。内温は−5〜0℃で5〜20時間かけて滴下し、その後加熱して還流温度で20分間撹拌した。その後室温まで冷却し、水12質量部を30℃以下、30分間で滴下し、20分間撹拌した。更に水25質量部を滴下後、40〜45℃で60分間撹拌した。その後水200質量部を入れて有機層を分離した。この有機層を中性になるまで洗浄し、その後共沸脱水、濾過、減圧ストリップをすることにより、下記式で示される無色透明の固体(融点76℃)36.0質量部の熱硬化性オルガノポリシロキサン(A−1)を得た。
(CH31.0Si(OC370.07(OH)0.101.4
【0066】
(B)白色顔料及び(C)無機充填剤
B−1 二酸化チタン;ルチル型、平均粒径0.28μm(CR−95:石原産業(株)製)
C−1 アルミナA;
平均粒径0.5μmのアルミナ15質量%((株)アドマテック製AO−502)
平均粒径10μmのアルミナ60質量%((株)アドマテック製AO−41R)
平均粒径28μmのアルミナ25質量%(昭和電工(株)製CB−A30S)
からなる平均粒径10μmの混合物
C−2 アルミナB;
平均粒径0.5μmのアルミナ10質量%((株)アドマテック製AO−502)
平均粒径10μmのアルミナ65質量%((株)アドマテック製AO−41R)
平均粒径38μmのアルミナ25質量%(昭和電工(株)製CB−A40)
からなる平均粒径11μmの混合物
C−3 アルミナC;平均粒径50μm(昭和電工(株)製CB−A50S)
C−4 球状溶融シリカ;平均粒径30μm(電気化学工業(株)製FB−570)
(D)硬化触媒
D−1 安息香酸亜鉛(和光純薬工業(株)製)
【0067】
[実施例1〜6、比較例1〜4]
表1,2に示す配合において、(A)熱硬化性オルガノポリシロキサン、(B)白色顔料、(C)無機充填剤、(D)硬化触媒を配合し、ロール混合にて製造し、冷却、粉砕して白色シリコーン樹脂組成物を得た。
【0068】
これらの組成物につき、以下の諸特性を測定した。結果を表1,2に示す。なお、成形は全てトランスファー成形機で行った。
《スパイラルフロー》
スパイラルフローの金型を用い175℃,6.86MPa、成形時間90秒の条件でスパイラルフローを測定した
《成形硬度》
175℃,6.86MPa、成形時間90秒の条件で10mm×4mm×100mmの棒を成形した時の熱時硬度をショアーD硬度計で測定した。
《曲げ強度、曲げ弾性率》
JIS−K6911規格に準じた金型を使用して、175℃,6.9N/mm2、成形時間90秒の条件で成形した試験片を室温(25℃)にて、曲げ強度、曲げ弾性率を測定した。
《耐熱性・黄変性》
175℃,6.9N/mm2、成形時間90秒の条件で直径50mm×厚さ3mmの円盤を成形し、180℃で24時間放置した後、またIRリフロー後、耐熱黄変性として表面の変化を目視で測定した。
《光反射率》
175℃,6.9N/mm2、成形時間90秒の条件で直径50mm×厚さ3mmの円盤(硬化物)を成形し、成形直後、180℃で24時間放置後、UV照射(365nmピーク波長の高圧水銀灯60mW/cm)24時間後の波長450nmにおける光反射率をエス・デイ・ジ−(株)製X−rite8200を使用して測定した。
《熱伝導率》
175℃,6.9N/mm2、成形時間90秒の条件でトランスファー成形した後、180℃で4時間後硬化させ、得られた直径50mm×6mmの試験片を上部ヒーターと熱量計及び下部ヒーターの間にサンドイッチ状に挿入し、空気圧にて一定に密着させ、50℃で定常状態に達した後の試験片両面間の温度差、熱量計出力から自動的に熱コンダクタンスを算出し、この熱コンダクタンスの値と試験片の厚さとの積から熱伝導率を求めた。
【0069】
【表1】

【0070】
【表2】

【0071】
表1,2によれば、優れた流動性、硬化性、機械強度、白色性、耐熱性、耐光性を保持し、高い熱伝導率を有する硬化物を与える白色熱硬化性シリコーン樹脂組成物を得ることができ、従って、該組成物の硬化物でLED用リフレクターが封止された半導体装置は有用であることが確認できた。
【0072】
[実施例7〜9、比較例5,6]
この実施例7〜9及び比較例5,6で用いた原料は以下の通りである。
(A)熱硬化性オルガノポリシロキサン
実施例1〜6と同様の熱硬化性オルガノポリシロキサン(A−1)
(B)白色顔料
B−1 二酸化チタン(CR−95:石原産業(株)製商品名)
(C)無機充填剤
C−1 アルミナA;実施例1〜6と同じ
C−4 球状溶融シリカ : 平均粒径30μm (電気化学工業(株)製FB−570)
(D)硬化触媒
D−1 安息香酸亜鉛(和光純薬工業(株)製)
(E)離型剤
E−1 ステアリン酸カルシウム(和光純薬工業(株)製)
(F)シランカップリング剤
F−1 3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン(KBM−803:信越化学工業
(株)製商品名)
F−2 3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(KBM−403:信越化学工
業(株)製商品名)
(G)接着助剤
G−1 トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアネート(TEPIC−S:日産
化学工業(株)製商品名、エポキシ当量100)
【0073】
表3に示す通りに配合し、下記に示す接着試験により諸特性を測定した。結果を表3に併記する。
《接着試験》
20×20mmの3種類の金属(Ag,Cu,Pd)フレーム基板上に上記シリコーン樹脂組成物を温度175℃、成形圧力70kgf/mm2、成形時間90秒の条件で成形し、接着用テストピースを作製し、180℃、4時間ポストキュアした後、温度260℃でのIRリフローを3回行った後の室温での接着力を万能ボンドテスター(DAGE SERIES 4000)を用いて0.2mm/秒の速度で接着片を弾くことでそれぞれ測定した。
【0074】
【表3】

【0075】
表3によれば、熱伝導性に優れ、金属基板への接着力に優れる白色熱硬化性シリコーン樹脂組成物を得ることができ、従って、該組成物の硬化物でLED用リフレクターが封止された半導体装置は有用であることが確認できた。
【符号の説明】
【0076】
1 半導体素子
2 リードフレーム(AgメッキCuフレーム又はNiPdAuメッキCuフレーム)
3 ボンディングワイヤ
4 透明封止樹脂
5 白色リフレクター(熱硬化性シリコーン樹脂組成物の硬化物)
6 レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)熱硬化性オルガノポリシロキサン
(B)白色顔料
(C)無機充填剤(但し、白色顔料を除く)
(D)硬化触媒
を必須成分とし、熱伝導率が1〜10W/mKであることを特徴とする光半導体ケース形成用白色熱硬化性シリコーン樹脂組成物。
【請求項2】
(B)成分の白色顔料が、平均粒径が0.05〜5.0μmの二酸化チタン、平均粒径がそれぞれ0.1〜3.0μmのチタン酸カリウム、酸化ジルコニウム、硫化亜鉛、酸化亜鉛、アルミナ、酸化マグネシウムから選ばれる1種又は2種以上であり、
(C)成分の無機充填剤が、平均粒径がそれぞれ4〜40μmのアルミナ、酸化亜鉛、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、ボロンナイトライドから選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1に記載の光半導体ケース形成用白色熱硬化性シリコーン樹脂組成物。
【請求項3】
(B)成分の白色顔料と(C)成分の無機充填剤とからなる粉粒物の粒度分布が、0.4〜1.0μm、8〜18μm及び30〜50μmの3つの間に極大ピークを有することを特徴とする光半導体ケース形成用白色熱硬化性シリコーン樹脂組成物。
【請求項4】
上記(C)成分の無機充填剤と上記(B)成分の白色顔料の合計量が、樹脂組成物全体に対して50〜95質量%の範囲であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光半導体ケース形成用白色熱硬化性シリコーン樹脂組成物。
【請求項5】
(A)成分の熱硬化性オルガノポリシロキサンが、下記平均組成式(1)
1aSi(OR2b(OH)c(4-a-b-c)/2 (1)
(式中、R1は同一又は異種の炭素数1〜20の有機基、R2は同一又は異種の炭素数1〜4の有機基を示し、0.8≦a≦1.5、0≦b≦0.3、0.001≦c≦0.5、0.801≦a+b+c<2を満たす数である。)
で表されるシリコーンポリマーであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光半導体ケース形成用白色熱硬化性シリコーン樹脂組成物。
【請求項6】
(B)成分の白色顔料が酸化チタンであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の光半導体ケース形成用白色熱硬化性シリコーン樹脂組成物。
【請求項7】
(E)成分として、融点120〜140℃であるステアリン酸カルシウムを含む離型剤を全組成物に対して0.2〜5.0質量%含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の光半導体ケース形成用白色熱硬化性シリコーン樹脂組成物。
【請求項8】
(F)シランカップリング剤及び/又は(G)接着助剤として、下記組成式(2)
【化1】


(式中、R01、R02、R03は炭素数1〜10の有機基を示し、R01、R02、R03のうち少なくとも1つはエポキシ基を含む。)
で表される1,3,5−トリアジン核誘導体エポキシ樹脂を含有する請求項1〜7のいずれか1項に記載の光半導体ケース形成用白色熱硬化性シリコーン樹脂組成物。
【請求項9】
(D)成分の硬化触媒が有機金属縮合触媒であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の光半導体ケース形成用白色熱硬化性シリコーン樹脂組成物。
【請求項10】
(D)成分の有機金属縮合触媒が安息香酸亜鉛であることを特徴とする請求項9に記載の光半導体ケース形成用白色熱硬化性シリコーン樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の光半導体ケース形成用白色熱硬化性シリコーン樹脂組成物の硬化物からなり、内部に透明樹脂で封止された光半導体が保持された光半導体ケース。

【図1】
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【公開番号】特開2010−18786(P2010−18786A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−133738(P2009−133738)
【出願日】平成21年6月3日(2009.6.3)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】