説明

光学多層膜フィルタの除電機能。

【課題】最終層である光学多層膜フィルタの表面にITO等の透明電極材料を用いずに光学ローパスフィルタからの静電気を除去する。
【解決手段】水晶基板20に透明薄膜である高い屈折率の二酸化チタン32を1層目に蒸着し、2層目に低い屈折率の二酸化ケイ素33を蒸着し、交互に積層して複層にし、最終層のn層に低い屈折率のフッ化マグネシウム31を積層し、(n−1)層には低い屈折率の二酸化ケイ素33を積層する。n層と(n−1)層は光学多層膜フィルタ30のなかで唯一、低い屈折率の物質同士を重ね、2種類の物質で所定の薄厚を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は例えば水晶からなる光学ローパスフィルタ(OLPF:Optical
Low Pass Filter)の表面に形成する光学多層膜フィルタの帯電を除去する方法として、光学多層膜フィルタの表面に金属膜を形成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、デジタルビデオカメラやディジタルカメラの固体撮像素子であるCCD(Charge Coupled
Device)センサまたはCMOS(Complementary Metal-Oxide
Semiconductor)センサの前面にはガラス基板又は水晶基板などで構成された光学ローパスフィルタを設置している。光学的ローパスフィルタは、低い周波数成分を通し、高周波成分をカットすることで、主として輝度差が大きい細かな模様をボカしている。例えば、固体撮像素子は規則正しく並んだ細かい模様を撮影すると干渉縞(モアレ)が発生し、また逆光に輝く髪の毛など、輝度差が激しい輪郭部分は偽色(色モアレ)と呼ばれる色づきが発生してしまう。このため、光学ローパスフィルタはこうした干渉縞や偽色を低減するために、画像をわずかにボカすことでエッジを鈍らせ、干渉縞と偽色とを除去している。
【0003】
また、こうした光学ローパスフィルタの前面又は後面には、光学多層膜フィルタを設置している。光学多層膜フィルタは赤外線感度の良い固体撮像素子をより人間の視覚に近づけるために赤外線を除去して、人間が感じる可視光領域だけを通過させる役目をしている。光学ローパスフィルタの基板はガラス基板又は水晶基板であるため、その圧電効果により帯電し、光学ローパスフィルタが帯電すると、その表面の光学多層膜フィルタも帯電する。帯電した光学多層膜フィルタはゴミを吸着しやすくなり、特にレンズ交換式のデジタル一眼レフカメラにおいて、レンズ交換を行うたびに外気に触れ、外気中のチリ、ホコリなどのゴミを吸着しやすくなる。また、付着したゴミは帯電しているために、除去も難しくなる。
【0004】
特許文献1では光学多層膜フィルタの最終層に、酸化インジウムスズ(ITO:Indium Tin Oxide)を蒸着させ、光学多層膜フィルタの表面を導電体で形成する方法で帯電を除去していた。ITOは可視光の透過率が約90%あり、膜の光学特性を変化させない方法と用いられてきた。
【特許文献1】特開2007−298951
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ITOを蒸着する方法は屈折率の高い誘電体膜と低い誘電体膜とを交互に積層した最後にITOを蒸着させるため、蒸着層内を汚し、光学多層膜フィルタの特性を劣化させる問題がある。また、インジウムInは希少金属であり、ITOが液晶パネルや有機ELなどのFPD(フラット・パネル・ディスプレイ)に広く使われ、価格の高騰と将来の供給不足とが心配される。
【0006】
本発明の目的は、ITOに代わる光学多層膜フィルタを形成することにより、光学多層膜フィルタの表面に導電性を持たせ、光学ローパスフィルタからの静電気を除去することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の観点の光学多層膜フィルタは、高屈折率材料から成る高屈折率薄膜と、低屈折率材料から成る低屈折率薄膜とが交互に複数積層された多層膜を、透明基板上に成膜した光学多層膜フィルタである。そして、高屈折率材料及び低屈折率材料よりも小さな原子量で組成された蒸着材料を最終層に形成する。
この構成により、ITOを使用することなく導電性の高い光学多層膜フィルタを提供することができ、この光学多層膜フィルタは静電気が溜まることがなくゴミ、ホコリなどが付着することがない。
【0008】
第2の観点の光学多層膜フィルタは、可視光を透過し赤外光を反射させる赤外線カットフィルタを含む。
特にカメラなどの画像撮像装置などに使用される赤外線カットフィルタに対して帯電防止が達成できると、ゴミ、ホコリの影響が少なくなり効果が大きい。
【0009】
第3の観点の光学多層膜フィルタは、高屈折率薄膜及び低屈折率薄膜は酸化物であり、最終層の蒸着材料が非酸化物である。
非酸化物である最終層の蒸着材料の一部が、酸化物である高屈折率薄膜及び低屈折率薄膜と結びついて金属膜となり導電性の高いフィルタとしての役目を成す。
【0010】
第4の観点の光学多層膜フィルタにおいて、最終層の蒸着材料は、高屈折率薄膜及び低屈折率薄膜の酸素と反応して、最終層の蒸着材料の一部が酸化金属膜となる。
この構成により、フィルタに対して帯電防止が達成できる。
【0011】
第5の観点の光学多層膜フィルタの高屈折率薄膜は、TiO、Nb、Taのいずれか、又はTiO、Nb、Taのいずれかを主成分とした複合酸化物から成り、低屈折率薄膜は、SiO、Biのいずれか、又はLaとAlとの複合酸化物から成る酸化物である。
これらの材料が高屈折率薄膜又は低屈折率薄膜として適用できる。
【0012】
第6の観点の光学多層膜フィルタの最終層の蒸着材料は、MgF又はLiFである。
MgF又はLiFは原子量の小さく、高屈折率薄膜又は低屈折率薄膜に入り込む。
【0013】
第7の観点の光学多層膜フィルタの透明基板が、ガラス基板又は水晶基板である。
ガラス基板又は水晶基板が光学フィルタとして適している。
【0014】
第8の観点の光学多層膜フィルタの製造方法は、透明基板上に高屈折率材料から成る高屈折率薄膜と低屈折率材料から成る低屈折率薄膜とを交互に複数積層する第1蒸着工程と、高屈折率材料及び低屈折率材料よりも小さな原子量で組成された蒸着材料を最終層に蒸着する第2蒸着工程と、第1蒸着工程と第2蒸着工程との間に小さな原子量で組成された蒸着材料が高屈折率材料及び低屈折率材料に入り込みにくくする抑制工程と、を備えた。
抑制工程を設けることで、小さな原子量で組成された蒸着材料が高屈折率材料及び低屈折率材料に入り込みにくくなり、光学多層膜フィルタを製造することができる。
【0015】
第9の観点の光学多層膜フィルタの製造方法の抑制工程は、高屈折率材料及び低屈折率材料に水分を吸収させる工程である。
高屈折率材料及び低屈折率材料に水分が吸収されることにより、蒸着材料が高屈折率材料及び低屈折率材料に入り込みにくくなる。
【0016】
第10の観点の光学多層膜フィルタの製造方法において、第1蒸着工程では真空蒸着により高屈折率薄膜と低屈折率薄膜とを交互に形成し、抑制工程では真空蒸着を大気開放し、第2蒸着工程では再び真空蒸着により蒸着材料を蒸着する。
大気開放することで、大気中に含まれる水分(水蒸気)が高屈折率材料及び低屈折率材料に吸収される。このため大気開放という簡単な作業で導電性のよい光学多層膜フィルタを製造することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の光学多層膜フィルタは最終層である光学多層膜フィルタの表面にITO等の透明電極材料を用いずに金属膜を形成することで光学ローパスフィルタからの静電気を除去することにある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
<<実施例1>>
本発明の光学多層膜フィルタ30は光学ローパスフィルタである水晶基板20の表面に高い屈折率の酸化物と、低い屈折率の酸化物とを積層し、最終層に低い屈折率の非酸化物を積層することで、除電機能のもつ光学多層膜フィルタ30を提供する。例えば、光学多層膜フィルタ30は屈折率の高い材料として二酸化チタン(TiO)32を用い、屈折率の低い材料として二酸化ケイ素(SiO)33を用いている。光学多層膜フィルタ30は高屈折材料と低屈折材料とを20層から60層重ねることで、赤外線を除去し、最終層にフッ化マグネシウム(MgF)31を積層することで、帯電を除去する。
【0019】
<光学多層膜フィルタ30の製造方法>
光学多層膜フィルタ30は温度や湿度の変化に対する光学特性の変化が少ない、安定な薄膜形成が求められる。このため、光学多層膜フィルタ30はイオンアシスト蒸着(IAD:Ion Assisted Deposition)などの手法を用いて薄膜を形成している。イオンアシスト蒸着装置10は図1に示すような構成により、均一で安定な光学多層膜フィルタ30を形成している。
【0020】
図1で示すように、イオンアシスト蒸着装置10は真空チャンバ19の容器で囲まれ、イオンアシストするためのイオン源13を備えている。イオン源は蒸発物質にイオン22が運動エネルギーを与え、堆積する膜の結晶構造をアモルファス化する。アモルファス化することは薄膜の密度を向上させ、外気中においても波長シフトの起こりにくい特性を得ることができる。
【0021】
また、イオンアシスト蒸着装置10は照射したイオン22(+)で薄膜に電荷が蓄積するため、中和器14で電子23(−)を照射し、電荷の蓄積を防止している。
【0022】
また、イオンアシスト蒸着装置10は真空チャンバ19内で高い屈折率の蒸発物質を飛散させる第1蒸発源11と、低い屈折率の蒸発物質を飛散させる第2蒸発源12とを備えている。各蒸発源の上部にはシャッタ16があり、シャッタ16の上部には基板ドーム15が設置されている。基板ドーム15の内側には水晶基板20を配置し、基板ドーム15を回転させることで、水晶基板20に蒸発物質21が均一に堆積することができる。
【0023】
イオンアシスト蒸着装置10の第1蒸着工程では第1蒸発源11と第2蒸発源12とに電子銃17で電子を照射することで、各蒸発源の物質を蒸発させ、上部のシャッタ16を交互に、また所定の時間開けることで、第1蒸発源11と第2蒸発源12との材料を所定の厚みに積層することができる。例えば第1蒸発源11には二酸化チタン32を入れ、第2蒸発源12に二酸化ケイ素33を入れる。なお、二酸化チタン32の成膜時には酸素ガスを供給しながら蒸着させる。
【0024】
イオンアシスト蒸着装置10の第2蒸着工程では、第1蒸発源11に代えて第3蒸発源(図示せず)を配置し、第3蒸発源にフッ化マグネシウム31を入れて電子銃17で電子を照射することでにフッ化マグネシウム31を蒸発させて、水晶基板20の最上膜を形成する。
【0025】
イオンアシスト蒸着装置10の真空チャンバ19は第1蒸着工程で常に真空引きし続け、二酸化チタン32と二酸化ケイ素33とを積層する。第1蒸着工程の終了後にイオンアシスト蒸着装置10は真空チャンバ19を一旦大気開放し、その後第2蒸着工程を開始する。大気開放することで大気中の水分(水蒸気)が真空チャンバ19内に入り、基板ドーム15に取り付けられた水晶基板20に水分が吸収される。第2蒸着工程を開始するにあたり、再度、イオンアシスト蒸着装置10は真空チャンバ19を真空引きし続け、フッ化マグネシウム31を積層する。
【0026】
第1蒸着工程後に真空チャンバ19を大気開放することは、第1蒸着工程の二酸化ケイ素層と二酸化チタン層とに水分が入り込み、第2蒸着工程のマグネシウムMgが適量に二酸化ケイ素層と二酸化チタン層とに入り込む効果がある。
【0027】
<光学多層膜フィルタ30の構成>
光学多層膜フィルタ30の光透過率は透明薄膜の屈折率と薄厚の積で決まるため、所望する赤外線を反射するように屈折率と薄厚と積層数とを設計する。一般的に薄厚は波長の反射率もしくは透過率が最大になるように波長の1/4前後に設計される。
【0028】
図2はイオンアシスト蒸着装置10で水晶基板20に薄膜を積層した構成図を示す。例えば、赤外線を除去するために、水晶基板20に透明薄膜である高い屈折率の二酸化チタン32を1層目に蒸着し、2層目に低い屈折率の二酸化ケイ素33を蒸着し、交互に積層することで複層にする。最終層のn層には低い屈折率のフッ化マグネシウム31を積層し、(n−1)層には低い屈折率の二酸化ケイ素33を積層している。n層と(n−1)層は光学多層膜フィルタ30のなかで唯一、低い屈折率の物質同士を重ね、2種類の物質で所定の薄厚を形成する。薄膜の積層数は積層方法により20層から60層に重ねる。
【0029】
最終層(n層)に積層したフッ化マグネシウム31のマグネシウムMgは低い屈折材用や高い屈折材料より小さな原子量を持ち、また酸素と結合しやすい性質のため、下層の二酸化ケイ素層に入り込み、酸素と結合することで、一酸化マグネシウム(MgO)が形成される。また、マグネシウム(Mg)は二酸化ケイ素層の下部の二酸化チタン層にも入り込み、一酸化マグネシウム(MgO)が形成されることで、一酸化チタン(TiO)が形成される。ちなみに、マグネシウム(Mg)の原子量は24.305、フッ素(F)の原子量は18.998、ケイ素(Si)の原子量は28.085、チタン(Ti)の原子量は47.867である。
【0030】
酸化マグネシウムと一酸化チタンとは共に金属膜であるため導電性がある。つまり、光学多層膜フィルタ30の表面に金属膜を形成することができ、除電効果を持つことができる。
【0031】
図3は適量にマグネシウム(Mg)が二酸化チタン層にまで入り込んだ光学多層膜フィルタ30を調べたグラフである。図3のグラフはX軸に光学多層膜フィルタ30の表面からの深さをとり、Y軸に各元素の量をカウントで示している。なお、光学多層膜フィルタ30に含まれるフッ素(F)又は酸素(O)はグラフを分かりやすくするため表示していない。
【0032】
グラフで分かるように光学多層膜フィルタ30の表面より50nm付近までn層のマグネシウム(Mg)がピークを示し、(n−2)層まで徐々に減少し、二酸化チタン層にも入り込んでいる様子が分かる。二酸化チタン層にはマグネシウム(Mg)が図3の破線枠Aで示すように10カウントから50カウントの幅で混入し、一酸化マグネシウムと一酸化チタンとが形成されている。(n−3)層以下にはマグネシウムMgが10カウント以下になり、真空チャンバ19内を浮遊するマグネシウム(Mg)が混入しているものと考えられる。
【0033】
(n−1)層の二酸化ケイ素層は光学多層膜フィルタ30の表面より70nm付近でケイ素Siのピークがあり、(n−2)層では2桁程度低いカウントとなっている。また、(n−2)層の二酸化チタン層のチタンTiは(n−3)層で3桁程度低いカウントとなっており、各層の主元素が入れ替わっていることが分かる。
【0034】
以上より、イオンアシスト蒸着装置10は所定厚でそれぞれの物質が蒸着され、マグネシウムMgの特性により、適度に下層まで入り込んでいる様子が分かる。これにより光学多層膜フィルタ30は赤外線を除去し、また金属膜を形成することができ帯電を除去することができる。
【0035】
図4はマグネシウムMgが二酸化チタン層に入り込みすぎた、不良品の光学多層膜フィルタ30を示す。図4の破線枠Bで示すようにマグネシウムMgは(n−2)層の二酸化チタン層で100カウントから200カウント程度の量が入り込んでいるのが分かる。
【0036】
不良品の光学多層膜フィルタ30は第1蒸着工程で二酸化チタン32と二酸化ケイ素33とを積層した後に、真空状態を維持したまま、第2蒸着工程のフッ化マグネシウム31を積層する。真空状態のまま第2蒸着工程に移ると、マグネシウムMgは水分に阻害されることなく二酸化チタン層までより多く入り込む。この結果、一酸化マグネシウムと一酸化チタンとがより多く形成されるため除電効果を持つことができるが、光学多層膜フィルタ30は金属成分が増えすぎて黒くなってしまい赤外線除去フィルタの役目をなさない。
【0037】
本実施形態の良品の光学多層膜フィルタ30は除電性能のテストを行うと、帯電したフィルタの除電効果がよくわかる。たとえば、除電性能のテストは光学多層膜フィルタ30をワイピングクロスなどで擦り、500V以上の静電気を帯電させる。次に光学多層膜フィルタ30の表面とアースとを接続すると帯電した静電気は0Vになり、除電されることがわかる。たとえば、第1蒸着工程終了後の光学多層膜フィルタ30を同じ方法で除電性能のテストを行うと、第1蒸着工程終了後の光学多層膜フィルタ30は光学多層膜フィルタ30の表面とアースとを接続しても数百Vの静電気が残り、帯電が除去されてないことが分かる。
【0038】
<<実施例2>>
実施例2は実施例1での光学多層膜フィルタ30をデジタルスチルカメラの撮像モジュール100に適用した場合を示す。図5はデジタルスチルカメラの撮像モジュール100の構成図である。撮像モジュール100は光学ローパスフィルタである水晶基板20と、光学ローパスフィルタの前面に蒸着した光学多層膜フィルタ30と、CCDセンサまたはCMOSセンサなどの固体撮像素子40と、固体撮像素子40の駆動部50と、で構成されている。
【0039】
入射光70はレンズ60を通過し、撮像モジュール100に入射する。撮像モジュール100に入った光は、光学多層膜フィルタ30を通過して赤外線が除去され、光学ローパスフィルタである水晶基板20を通過することでモアレの原因である、高周波成分が除去される。処理された入射光は固体撮像素子40で電気信号に変換される。固体撮像素子40は駆動部50で駆動し画像処理部(図示せず)へ伝送する。
【0040】
光学多層膜フィルタ30の表面にはアースが接続され、圧電素子である水晶基板20で帯電した静電気を除去する。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の実施形態では光学ローパスフィルタの水晶基板に光学多層膜フィルタ30を直接蒸着したが、ガラス基板などの他の透明基板に光学多層膜フィルタ30を蒸着させる方法でもよい。
【0042】
また、本発明の実施形態では高い屈折材料として、二酸化チタン(TiO)を用いていたが五酸化タンタル(Ta五酸化ニオブ(Nb)の酸化物や、これらを主成分とした複合酸化物であっても良い。
【0043】
また、本発明の実施形態では低い屈折材料として、二酸化ケイ素(SiO)を用いていたが酸化ビスマス(Bi)の酸化物や、酸化ランタン(La)と酸化アルミニウム(Al)との複合酸化物であっても良い。
【0044】
また、本発明の実施形態では最終層にフッ化マグネシウム(MgF)を用いていたがフッ化リチウム(LiF)を用いても良い。なお、リチウム(Li)の原子量は6.941である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】イオンアシスト蒸着装置10の構成図を示す斜視図である。
【図2】水晶基板20に薄膜を積層した構成図である。
【図3】良品の光学多層膜フィルタ30における薄膜の構成を調べたグラフである。
【図4】不良品の光学多層膜フィルタ30における薄膜の構成を調べたグラフである。
【図5】デジタルスチルカメラの撮像モジュール100の構成図である。
【符号の説明】
【0046】
10 … イオンアシスト蒸着装置
11 … 第1蒸発源
12 … 第2蒸発源
13 … イオン源
14 … 中和器
15 … 基板ドーム
16 … シャッタ
17 … 電子銃
19 … 真空チャンバ
20 … 水晶基板
21 … 蒸発物質
22 … イオン(+)
23 … 電子(−)
30 … 光学多層膜フィルタ
31 … フッ化マグネシウム
32 … 二酸化チタン
33 … 二酸化ケイ素
40 … 固体撮像素子
50 … 駆動部
100 … 撮像モジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高屈折率材料から成る高屈折率薄膜と、低屈折率材料から成る低屈折率薄膜とが交互に複数積層された多層膜を、透明基板上に成膜した光学多層膜フィルタであって、
前記高屈折率材料及び前記低屈折率材料よりも小さな原子量で組成された蒸着材料を最終層に形成することを特徴とする光学多層膜フィルタ。
【請求項2】
前記光学多層膜フィルタは、可視光を透過し赤外光を反射させる赤外線カットフィルタを含むことを特徴とする光学多層膜フィルタ。
【請求項3】
前記高屈折率薄膜及び前記低屈折率薄膜は酸化物であり、最終層の蒸着材料が非酸化物であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光学多層膜フィルタ。
【請求項4】
前記最終層の蒸着材料は、前記高屈折率薄膜及び前記低屈折率薄膜の酸素と反応して、最終層の蒸着材料の一部が酸化金属膜となることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の光学多層膜フィルタ。
【請求項5】
前記高屈折率薄膜は、TiO、Nb、Taのいずれか、又はTiO、Nb、Taのいずれかを主成分とした複合酸化物から成り、前記低屈折率薄膜は、SiO、Biのいずれか、又はLaとAlとの複合酸化物から成る酸化物であることを特徴とする請求項3に記載の光学多層膜フィルタ。
【請求項6】
前記最終層の蒸着材料は、MgF又はLiFであることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の光学多層膜フィルタ。
【請求項7】
前記透明基板が、ガラス基板又は水晶基板であることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の光学多層膜フィルタ。
【請求項8】
透明基板上に高屈折率材料から成る高屈折率薄膜と低屈折率材料から成る低屈折率薄膜とを交互に複数積層する第1蒸着工程と、
前記高屈折率材料及び前記低屈折率材料よりも小さな原子量で組成された蒸着材料を最終層に蒸着する第2蒸着工程と、
前記第1蒸着工程と前記第2蒸着工程との間に、小さな原子量で組成された蒸着材料が前記高屈折率材料及び前記低屈折率材料に入り込みにくくする抑制工程と、
を備えたことを特徴とする光学多層膜フィルタの製造方法。
【請求項9】
前記抑制工程は、前記高屈折率材料及び前記低屈折率材料に水分を吸収させる工程であることを特徴とする請求項8に記載の光学多層膜フィルタの製造方法。
【請求項10】
前記第1蒸着工程では、真空蒸着により高屈折率薄膜と低屈折率薄膜とを交互に形成し、
前記抑制工程では、前記真空蒸着を大気開放し、
前記第2蒸着工程では、再び真空蒸着により前記蒸着材料を蒸着することを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の光学多層膜フィルタの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−145710(P2009−145710A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−324227(P2007−324227)
【出願日】平成19年12月17日(2007.12.17)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】