光検出装置および生体情報測定装置
【課題】 測定環境における電磁波の影響を排除して微弱な光を検出する光検出装置および生体情報測定装置を提供すること。
【解決手段】 受光器22(光検出装置)は、電気的に接地されたシールドケース22aおよび入射窓22cを備えて、ケース内22a内に受光素子22bおよび増幅器23を収容している。これにより、外部に存在する雑音電界(ノイズ)の受光素子22bおよび増幅器23への伝播を防止することができる。また、増幅器23は、その出力インピーダンスが受光素子22bの出力インピーダンスに比して小さく、受光素子22bから出力された電気的な信号を増幅して低インピーダンスによって出力する。これにより、出力信号に対して雑音電界(ノイズ)の影響を極めて小さくして、出力信号のS/N比の悪化を防止することができる。
【解決手段】 受光器22(光検出装置)は、電気的に接地されたシールドケース22aおよび入射窓22cを備えて、ケース内22a内に受光素子22bおよび増幅器23を収容している。これにより、外部に存在する雑音電界(ノイズ)の受光素子22bおよび増幅器23への伝播を防止することができる。また、増幅器23は、その出力インピーダンスが受光素子22bの出力インピーダンスに比して小さく、受光素子22bから出力された電気的な信号を増幅して低インピーダンスによって出力する。これにより、出力信号に対して雑音電界(ノイズ)の影響を極めて小さくして、出力信号のS/N比の悪化を防止することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光検出装置、特に、測定環境における電磁波の影響を排除して微弱な光を検出する光検出装置およびこの光検出装置を用いて生体中の血流変化、血中酸素濃度、酸素飽和度、脈拍、その他の様々な生体の代謝に応じて、生体内を伝播する光が波長により異なる変化を生ずる性質に着目して生体情報を計測する生体情報測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、受光した光を電気的な信号に変換する光電変換素子を主要構成部品とする光検出装置を用いて、光の有する種々の情報を処理することが広く行われている。そして、このような光検出装置を応用した一例として、例えば、生体内部を簡便に無侵襲で計測できる生体情報測定装置を挙げることができる。この生体情報測定装置においては、例えば、下記特許文献1に示すように、生体表面に配置された光源から生体内部に光を出射し、生体内部を散乱、吸収されながら伝播して再び生体表面に到達した光を光検出装置、より具体的には、光電変換素子が受光して出力する電気的な信号に基づいて生体内部の情報(生体情報)を測定(計測)するようになっている。
【0003】
ところで、光電変換素子が極微弱な光を受光して電気的な信号を出力する場合、測定環境下に存在する電磁波による雑音電界(ノイズ)が光電変換素子による光の受光や電気的な信号の出力に対して悪影響を与える可能性がある。また、上述した従来の生体情報測定装置においては、例えば、生体の筋肉の活動に伴って発生する筋電位などが雑音電界(ノイズ)として光電変換素子による光の受光や電気的な信号の出力に対して悪影響を与える可能性がある。このような雑音電界(ノイズ)の影響を抑制することに関し、例えば、下記特許文献2に示されているような電磁的なシールド構造を用いて、光電変換素子を電磁的にシールドすることが有効である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3623743号
【特許文献2】特開2006−229922号公報
【発明の概要】
【0005】
ところで、上記特許文献2に示されているような電磁的なシールド構造を採用しても、光電変換素子に対する雑音電界(ノイズ)の影響を完全になくすことは不能である。また、一般的に、半導体を用いた光電変換素子は、ゼロバイアスや逆バイアスにより、その出力インピーダンスが高い。したがって、例えば、電磁的にシールドされている状態で、光電変換素子が極微弱な光を受光して電気的な信号を出力する場合、本来、受光した光に対応して出力される電気的な信号に加えて、極僅かに影響する雑音電界(ノイズ)が高インピーダンスによりノイズ信号として出力される場合がある。これにより、例えば、上述した生体情報のように、極微弱な光が有する情報を極めて精密に測定する必要がある場合においては、測定精度の低下が顕著となる場合がある。したがって、(極)微弱な光の有する種々の情報を処理する場合には、光電変換素子を電磁波等から電磁的にシールドすることに加えて、電磁波等に基づくノイズ信号を低減して良質な電気的な信号を出力することが極めて重要である。
【0006】
本発明は、上記した課題を解決するためになされたものであり、その目的は、測定環境における電磁波の影響を排除して微弱な光を検出する光検出装置およびこの光検出装置を用いて生体情報を計測する生体情報測定装置を提供することにある。
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、光を検出する光検出装置であって、導電性を有して接地された導電性ケースと、検出する光の波長に対する光学的透過性を有するとともに電気伝導性を有して前記導電性ケースに電気的に接続されて光を入射する窓部と、前記導電性ケース内に収容されて前記窓部から入射した光を受光して電気的な検出信号に変換する光電変換素子と、前記導電性ケース内に収容されて前記光電変換素子から出力される電気的な検出信号を増幅するするとともに前記光電変換素子の出力インピーダンスよりも小さな出力インピーダンスにより前記増幅した電気的な検出信号を出力する増幅回路とを備えたことにある。
【0008】
また、本発明の他の特徴は、生体内部を伝播する光を検出し、この検出した光の有する生体情報を測定する生体情報測定装置において、少なくとも2つの光源を有していて、所定の駆動信号に基づいて前記光源を発光させて異なる特定波長を有する近赤外光を生体内部に出射する光出射部と、導電性を有して接地された導電性ケースと、前記光出射部から出射される特定波長に対する光学的透過性を有するとともに電気伝導性を有して前記導電性ケースに電気的に接続されて光を入射する窓部と、前記導電性ケース内に収容されて前記窓部から入射した光を受光して電気的な検出信号に変換する光電変換素子と、前記導電性ケース内に収容されて前記光電変換素子から出力される電気的な検出信号を増幅するするとともに前記光電変換素子の出力インピーダンスよりも小さな出力インピーダンスにより前記増幅した電気的な検出信号を出力する増幅回路とを備えて、前記光出射部から出射されて生体内部を伝播した近赤外光を受光して検出するとともに同検出した近赤外光の光強度に対応して生体の代謝に関連する電気的な検出信号を出力する光検出部と、前記光出射部と前記光検出部の作動を統括的に制御し、前記光検出部から出力された電気的な検出信号に基づいて生体情報を算出する制御部とを備えたことにもある。
【0009】
これらの場合、前記窓部を、例えば、検出する光の波長または前記特定波長に対する光学的透過性を有する透明基材と、この透明基材の少なくとも一面側に積層されて、測定する波長または前記特定波長に対する光学的透過性を有するとともに電気伝導性を有する透明導電膜とで構成するとよい。
【0010】
この場合、前記透明導電膜を、例えば、検出する光の波長または前記特定波長を選択的に透過させる帯域透過性を有する少なくとも1層以上の誘電体膜と併せて、前記透明基材の少なくとも一面側に積層するようにするとよい。そして、前記窓部を構成する透明導電膜は、例えば、イットリウム−錫酸化物(ITO),亜鉛酸化物(ZnO)またはニオブ酸化物(NbO)を主成分として形成されるとよい。
【0011】
また、前記増幅回路は、例えば、入力インピーダンスの大きなオペアンプを備えているとよい。
【0012】
さらに、前記光電変換素子は、例えば、フォトダイオードまたはアバランシェフォトダイオードであるとよい。
【0013】
また、上記生体情報測定装置において、前記光源が、例えば、導電性を有して接地された導電性ケースと、前記特定波長に対する光学的透過性を有するとともに電気伝導性を有して前記導電性ケースに電気的に接続されて光を透過する窓部と、前記導電性ケース内に収容されて前記窓部から前記特定波長を有する近赤外光を出射する発光素子とを有するとよい。この場合、前記導電性ケース内に前記発光素子を複数収容するとよい。また、この場合、前記窓部を、例えば、前記特定波長に対する光学的透過性を有する透明基材と、この透明基材の少なくとも一面側に積層されて、前記特定波長に対する光学的透過性を有するとともに電気伝導性を有する透明導電膜とで構成するとよい。そして、この場合、前記窓部を構成する透明導電膜は、例えば、イットリウム−錫酸化物(ITO),亜鉛酸化物(ZnO)またはニオブ酸化物(NbO)を主成分として形成されるとよい。さらに、前記発光素子は、例えば、半導体レーザまたは発光ダイオードであるとよい。
【0014】
また、上記生体情報測定装置において、前記制御部が算出する前記生体情報は、例えば、前記生体の血管中における酸素と結合した酸素化ヘモグロビン濃度長変化および酸素と結合していない還元ヘモグロビン濃度長変化を表す情報であるとよい。
【0015】
また、上記生体情報測定装置において、前記光出射部は、生体の頭部に前記特定波長を有する近赤外光を出射し、前記光検出部は、前記生体の頭部を伝播した近赤外光を受光して前記電気的な検出信号を出力し、前記制御部は、前記生体の脳内における活動に関する生体情報を算出するとよい。
【0016】
また、上記生体情報測定装置において、前記光出射部は、前記所定の駆動信号をスペクトラム拡散変調するスペクトラム拡散変調手段を有し、前記光検出部は、前記電気的な検出信号をスペクトラム逆拡散して復調する復調手段を有するとよい。この場合、前記光出射部のスペクトラム拡散変調手段は、前記所定の駆動信号をスペクトラム拡散変調するための拡散符号系列を第1の周波数により生成する拡散符号系列生成手段と、同拡散符号系列生成手段によって生成された拡散符号系列を用いて前記所定の駆動信号をスペクトラム拡散して一次変調信号を出力する第1変調手段と、前記第1の周波数の2倍となる第2の周波数を用いて前記第1変調手段によって出力された一次変調信号を変調して二次変調信号を出力する第2変調手段とを有し、前記光検出部の復調手段は、前記電気的な検出信号の信号帯域のうち、直流および直流近傍の周波数における信号成分および前記第2の周波数以上の信号成分を除去して出力する信号成分除去手段と、前記近赤外光が前記生体内を伝播することに伴う遅延を加味した前記第2の周波数の2倍となる第3の周波数を用いて前記信号成分除去手段によって出力された電気的な検出信号をデジタル信号に変換する信号変換手段と、前記近赤外光を前記生体内で伝播させることに伴う遅延を加味した前記第2の周波数を用いて前記信号変換手段によって変換されたデジタル信号を復調して一次復調信号を出力する第1復調手段と、前記近赤外光を前記生体内で伝播させることに伴う遅延を加味した前記拡散符号系列を用いて前記一次復調信号をスペクトラム逆拡散して二次復調信号を出力する第2復調手段とを有するとよい。さらに、この場合、前記第2の周波数を、例えば、前記光検出部が前記生体内を伝播した近赤外光を有効に検出可能な有効検出帯域幅と一致させるとよい。
【0017】
また、上記生体情報測定装置において、前記光出射部は、所定の時間間隔を有して供給される前記所定の駆動信号を取得し、前記各光源が前記取得した所定の駆動信号に基づいて順次発光して、異なる特定波長を有する近赤外光を前記所定の時間間隔を有して順次出射するとよい。
【0018】
さらに、上記生体情報測定装置において、前記光出射部は、前記所定の駆動信号を周波数分割多重変調して変調信号を生成する周波数分割多重変調手段を有し、前記光検出部は、前記電気的な検出信号を周波数分割多重復調する復調手段を有するとよい。
【0019】
これらによれば、光検出装置(生体情報測定装置の光検出部)は、導電性ケースおよび窓部によって、光電変換素子および増幅回路が電磁シールドされる。これにより、測定環境に存在する電磁波等による雑音電界(ノイズ)が光電変換素子および増幅回路に影響を及ぼすことを効果的に防止することができる。また、このように電磁シールドされる雑音電界(ノイズ)が、僅かに光電変換素子および増幅回路に対して影響を及ぼす場合であっても、増幅回路の出力インピーダンスが光電変換素子の出力インピーダンスよりも小さいため、増幅回路を介して出力される電気的な検出信号のS/N比を高めることができる。したがって、例えば、極微弱な光を検出する状況においても、検出した光に対応した良質な電気的な検出信号を出力することができる。
【0020】
また、上記生体情報測定装置においては、光出射部は、例えば、スペクトラム拡散変調した駆動信号、または、所定の短い時間間隔有して供給された所定の駆動信号、あるいは、周波数分割多重変調した駆動信号に基づき、光源を発光させて複数の特定波長を有する近赤外光を生体内部に向けて出射することができる。一方、光検出部は、電磁的にシールドされた状態で生体内部を伝播した近赤外光を受光し、この受光した近赤外光すなわち生体内部の伝播に伴って減衰した極微弱な近赤外光の光強度(光量)に対応して生体の代謝に関連する電気的な検出信号を低インピーダンスにより出力することができる。ここで、光出射部が所定の駆動信号をスペクトラム拡散変調または周波数分割多重変量した駆動信号(変調信号)に基づいて光源を発光させて複数の特定波長を有する近赤外光を生体内部に向けて出射する場合には、光検出部は、電気的な検出信号をスペクトラム逆拡散復調または周波数分割多重変調することができる。そして、電気的な検出信号に基づいて、生体情報、例えば、生体の血管中における酸素化ヘモグロビン濃度長変化および還元ヘモグロビン濃度長変化や、酸素化ヘモグロビン濃度長変化および還元ヘモグロビン濃度長変化の和として算出できるトータルヘモグロビン濃度長変化、血流に伴って変化する脈波、あるいは、酸素飽和度などを算出することができる。
【0021】
したがって、生体情報測定装置においては、生体内部を伝播することによって減衰した極微弱な近赤外光であっても、光検出部は、例えば、生体に発生する筋電位などによる雑音電界(ノイズ)の影響を排除して、良質な電気的な検出信号を出力することができる。これにより、極めて正確に生体情報を計測(算出)することができる。また、生体情報測定装置においては、光源も電磁シールドすることができる。したがって、光源の作動に伴って発生する雑音電界(ノイズ)の放出(放射)を防止することができ、光検出部による光の検出に対する影響を大幅に低減することができる。これによっても、極めて正確に生体情報を計測(算出)することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態および各変形例に係る共通の生体情報測定装置の概略を示すブロック図である。
【図2】図1の光出射部の構成を概略的に示すブロック図である。
【図3】図2の光源の構成を示す概略的な断面図である。
【図4】図1の光検出部の構成を概略的に示すブロック図である。
【図5】図4の受光器および増幅器の構成を示す概略的な断面図である。
【図6】図5の増幅器の概略的な電気回路図である。
【図7】図1のコントローラの構成を概略的に示すブロック図である。
【図8】生体情報測定装置を脳内における生体情報の計測に適用した場合における入射位置と受光位置の配列を一部抜き出して示した図である。
【図9】ランバート・ベールの法則を説明するための概略的な図である。
【図10】酸素化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンの波長に対する分子吸光係数の変化を概略的に示したグラフである。
【図11】本発明の第1変形例に係る光源の構成を示す概略的な断面図である。
【図12】本発明の第2変形例に係る受光器の構成を示す概略的な断面図である。
【図13】本発明の第2変形例に係る受光器の構成を示す概略的な断面図である。
【図14】本発明の第3変形例に係る受光器の構成を示す概略的な断面図である。
【図15】本発明の第4変形例に係り、受光器および増幅器を収容する電磁シールドケースの構成を示す概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面を用いて説明する。図1は、本発明の実施形態に係る生体情報測定装置Sの構成を概略的に示したブロック図である。生体情報測定装置Sは、図1に示すように、特定波長を有する光を発生する複数の光出射部1と、光出射部1から出射された光が生体の内部を反射しながら伝播した後の光を検出する複数の光検出部2とを備えている。また、生体情報測定装置Sは、CPU、ROM、RAM、タイマなどからなるマイクロコンピュータを主要構成部品とし、光出射部1および光検出部2の作動を統括的に制御するとともに生体の代謝に関連する生体情報を算出して出力するコントローラ3と、算出された生体情報を所定の態様により表示する表示部4とを備えている。
【0024】
光出射部1は、図2に示すように、異なる特定波長を有する光を発生させる複数の光発生装置10から構成されている。なお、以下の説明においては、例示的に光出射部1を2つの光発生装置10から構成して、言い換えれば、1つの光出射部1が2つの特定波長を有する光を発生するように構成して実施する。しかしながら、光出射部1を構成する光発生装置10の数すなわち出射する光の特定波長の数については、これに限定されるものではなく、光出射部1を、例えば、3つ以上の光発生装置10から構成して実施可能であることはいうまでもない。このように、光発生装置10を多数設けることにより、後述するように得られる生体情報の定量性を十分に確保することができる。
【0025】
これらの光発生装置10は、それぞれ、特定波長を有する光をスペクトラム拡散変調して出射するようになっている。このため、各光発生装置10は、拡散符号系列として、例えば、65536ビット長の「+1」と「−1」からなるPN(Pseudorandom Noise)系列を発生させるための拡散符号系列発生器11を備えている。この拡散符号系列発生器11は、例えば、アダマール系列やM系列、あるいは、ゴールド符号系列をPN系列として発生する。
【0026】
なお、上述したアダマール系列、M系列、あるいは、ゴールド符号系列は、一般的なスペクトラム拡散変調に用いられるものと同様であるため、その発生方法に関する詳細な説明は省略するが、以下に簡単に説明しておく。アダマール系列は、「+1」と「−1」からなるアダマール行列の各行または各列を取り出して得られる系列である。M系列は、「0」または「+1」の状態を記憶する1ビットのレジスタをn段並べたシフトレジスタを用い、同シフトレジスタの中間から帰還した値と最終段における値との排他的論理和を初段に接続することにより得られる2値系列である。ただし、この2値系列をPN系列とするためには、レベル変換を行い、値「0」を「−1」に変換する。ゴールド符号系列は、基本的には、2種類のM系列を用意し、これらを加算して得られる符号系列である。このため、ゴールド符号系列は、M系列に比して、各段に系列数を増やすことができる行列である。そして、これらの系列の特徴として、異なる系列は互いに直交する性質を有しており、積和演算を行うことによって「0」すなわち自己以外には相関が「0」となることが挙げられる。
【0027】
この拡散符号系列発生器11は、コントローラ3に設けられた後述のクロックジェネレータ32から供給されるクロック周波数2fを入力する。そして、入力したクロック周波数2fに基づき、拡散符号系列発生器11は、PN系列の生成周波数、言い換えれば、PN系列の最小発生間隔に相当するチップレートがf以下となるPN系列を発生させる。
【0028】
このように、拡散符号系列発生器11の発生したPN系列は、コントローラ3に出力されるとともに、第1乗算器12に出力される。第1乗算器12は、ベースバンド出力器13によって出力される直流信号と、拡散符号系列発生器11から供給されるPN系列との積を取り、直流信号をスペクトラム拡散変調する。なお、以下の説明においては、このスペクトラム拡散変調された直流信号を一次変調信号という。
【0029】
この一次変調信号は、第2乗算器14に出力される。第2乗算器14は、一次変調信号を入力するとともに、コントローラ3のクロックジェネレータ32から供給されるクロック周波数2fを入力する。そして、第2乗算器14は、入力した一次変調信号をクロック周波数2fで変調する。このように、一次変調信号をクロック周波数2fで変調することにより、この変調された一次変調信号は、周波数fにおける信号強度が最も強くなる。なお、以下の説明においては、この変調された一次変調信号を二次変調信号という。
【0030】
このように、第2乗算器14によって変調された二次変調信号は、光源ドライバ15に出力される。光源ドライバ15は、二次変調信号に基づいて、光源16に所定の駆動電圧を供給し、光源16を駆動(発光)させるものである。光源16は、図3に示すように、シールドケース16a内に収容された発光素子16bと、発光素子16bによる光を出射する出射窓16cとを備えている。
【0031】
シールドケース16aは、電磁シールドを行うための材料すなわち金属材料または導電性を有する樹脂材料などから形成されており、図3に示すように、シールド電極16a1を介して接地されている。発光素子16bは、例えば、半導体レーザや発光ダイオードであり、アノード電極16b1とカソード電極16b2が接続されている。そして、発光素子16bは、600〜1500nmの波長範囲のうちの特定波長を有する近赤外光(以下、被変調光という)を発光する。なお、以下の説明においては、光発生装置10を構成する2つの光源16のうち、一方の光源16は、例えば、840nmの特定波長を有する被変調光を発光し、他方の光源16は、例えば、770nmの特定波長を有する被変調光を発光するものとして説明する。
【0032】
出射窓16cは、発光素子16bによる特定波長を有する被変調光を光学的に透過する透明基材16c1(例えば、石英(コルツ)や光学的に透明な透明プラスチックなど)と、透明基材16c1の少なくとも一面側に形成された透明導電膜16c2とから構成されている。ここで、透明導電膜16c2の形成材料としては、イットリウム−錫酸化物(ITO(Indium Tin Oxide))、亜鉛酸化物(ZnO(Zinc Oxide))、または、ニオブ酸化物(NbO(Niobium Oxide))のうちから選択して採用するとよい。そして、透明導電膜16c2は、透明基材16c1に対して、例えば、周知の蒸着法などを用いて形成され、その形成膜厚としては、例えば、100nm程度とされている。なお、このように、出射窓16cを透明基材16c1および透明導電膜16c2から形成することに代えて、例えば、ITO,ZnO,NbOのバルク材料を薄片化して出射窓16cを形成することも可能である。さらに、透明導電膜16c2は、シールドケース16aに対して、導電性接着剤(例えば、シルバーペーストなど)やハンダなどの金属封止材を用いて、電気的に接続されている。
【0033】
そして、各光出射部1から出射された2つの異なる特定波長を有する被変調光は、光合成器17(例えば、光ファイバなど)を介して、生体内部に向けて入射される。なお、この場合、光合成器17を省略して、直接、各光出射部1から生体内部に向けて被変調光を入射するように実施することも可能である。
【0034】
光検出部2は、図4に示すように、生体内部を反射しながら伝播した極微弱な被変調光を検出し、同検出した被変調光が有する生体情報に関連する電気的な生体情報信号を出力するものである。このため、光検出部2は、光合成器21(例えば、光ファイバなど)を介して、光出射部1から出射されて生体中を伝播した被変調光を受光する受光器22を備えている。なお、この場合、光合成器21を省略して、直接、生体中を伝播した被変調光を受光器22が受光するように実施することも可能である。
【0035】
受光器22は、図5に示すように、シールドケース22a内に収容された光電変換素子としての受光素子22bと、受光素子22bに対して生体内を伝播した被変調光を透過させる入射窓22cとを備えている。シールドケース22aは、電磁シールドを行うための材料すなわち金属材料または導電性を有する樹脂材料などから形成されており、図5に示すように、グランド端子22a1を介して接地されている。受光素子22bは、例えば、SiまたはInGaAsなどの半導体を主要構成部品とするPINフォトダイオードやアラバンシェフォトダイオードであり、その有効検出帯域幅が2fに設定されている。そして、受光素子22bは、後述するように、シールドケース22a内に一体的に収容された増幅器23に対して電気的に接続されている。
【0036】
入射窓22cは、受光素子22bに対して特定波長を有する被変調光を光学的に透過する透明基材22c1(例えば、石英(コルツ)や光学的に透明な透明プラスチックなど)と、透明基材22c1の少なくとも一面側に形成された透明導電膜22c2とから構成されている。そして、透明導電膜22c2は、シールドケース22aに対して、導電性接着剤(例えば、シルバーペーストなど)やハンダなどの金属封止材を用いて、電気的に接続される。ここで、透明導電膜22c2の形成材料も、光出射部1の光源16における透明導電膜16c2と同様に、ITO,ZnO,NbOのうちから選択して採用するとよい。また、透明導電膜22c2の形成に関しても、透明導電膜16c2と同様に、例えば、周知の蒸着法などを用い、透明基材22c1に対して100nm程度の形成膜厚となるように形成される。なお、透明導電膜22c2の膜厚に関しては、これに限定されるものではなく、より大きな膜厚(例えば、500nm程度)を形成して実施することも可能である。さらに、この透明導電膜22c2も、ITO,ZnO,NbOのバルク材料を薄片化して入射窓22cを形成することが可能である。
【0037】
なお、本実施形態においては、受光素子22bとしてPinフォトダイオードやアラバンシェフォトダイオードを用いて実施するが、例えば、CCDやCMOSなどの光電変換素子を用いて2次元的な光学情報を取得することも可能である。この場合には、CCDやCMOSなどの表面に透明基材22c1に対応する透明な絶縁層を形成するとともにこの絶縁層を介して透明導電膜22c2を形成し、この透明導電膜22c2を接地されたシールドケース22aに電気的に接続するようにするとよい。
【0038】
増幅器23は、受光器22のシールドケース22a内に収容されて、受光器22(より詳しくは、受光素子22b)から出力された電気的な検出信号(アナログ信号)の強度を増幅する増幅回路(低雑音アンプ)である。このため、増幅器23は、図6に示すように、オペアンプ23aと、増幅した電気的な検出信号(アナログ信号)を出力する信号出力端子23bとを備えている。なお、信号出力端子23bの周囲には、詳細な図示を省略するが、絶縁性のあるガラスや非導電性のプラスチックなどにより、電気的な短絡が防止されている。また、信号出力端子23bは、例えば、同軸ケーブルに接続されるようになっており、この同軸ケーブルの外周金属層は受光器22のシールドケース22aに電気的に接続されるようになっている。
【0039】
オペアンプ23aは、入力インピーダンスが極めて高く(例えば、40MΩ程度)、出力インピーダンスが低い(例えば、150Ω程度)特性を有しており、+の電源端子23a1と−の電源端子23a2に接続されている。ところで、受光器22の受光素子22bは、被変調光を検出する際にゼロまたは逆バイアスされるため、その出力インピーダンスはメガオームに近い値となる。そして、このように出力インピーダンスが高い状態においては、微弱な電磁波すなわち雑音電界(ノイズ)によって誘起される電流が大きな雑音電圧を生じさせるため、増幅器23を介することなく電気的な検出信号(アナログ信号)を出力する場合には、出力される電気的な検出信号(アナログ信号)のS/N比を悪化させる。したがって、出力インピーダンスが低い状態とすれば雑音電界(ノイズ)の影響は小さくなるため、出力インピーダンスの小さなすなわち低インピーダンスのオペアンプ23aを介して電気的な検出信号(アナログ信号)を出力することにより、S/N比の悪化を防止して良質な検出信号を出力することができる。
【0040】
また、増幅器23を接地されたシールドケース22a内に収容することにより、増幅器23から出力される電気的な検出信号(アナログ信号)に対する外界の雑音電界の影響を効果的に防止することができる。これによっても、増幅器23(より詳しくは、オペアンプ23a)を介して出力される電気的な検出信号(アナログ信号)におけるS/N比の悪化を防止して良質な検出信号を出力することができる。そして、このように、増幅器23が増幅した電気的な検出信号(アナログ信号)は、信号出力端子23bを介して、ローパスフィルタ(LPF)24に出力される。
【0041】
LPF24は、例えば、ナイキストの第1基準を満たして符号間干渉を防ぐインパルス応答波形を実現するナイキストフィルタなどであり、そのカットオフ周波数が2fに設定されている。これにより、LPF24は、増幅器23から入力した検出信号(アナログ信号)のうち、その周波数が2fよりも大きな信号成分を除去(カット)してADコンバータ25に出力する。
【0042】
ADコンバータ25は、LPF24を通過した電気的な検出信号(アナログ信号)をデジタル信号に変換するものである。具体的には、ADコンバータ25は、コントローラ3のクロックジェネレータ32から後述のディレイ33によって適宜遅延されたクロック周波数4fを入力し、サンプリング周波数4fで電気的な検出信号(アナログ信号)をデジタル信号に変換する。ここで、受光器22の有効検出帯域幅2fの2倍のサンプリング周波数4fによってADコンバータ25がデジタル変換処理を実行することにより、一般に広く知られた標本化定理(サンプリング定理やナイキストの定理ともいわれる)が成立する。
【0043】
すなわち、標本化定理によれば、目的の信号を正確に再現するためには、目的の信号の周波数の少なくとも2倍以上のサンプリング周波数を用いてサンプリングする必要がある。ここで、標本化定理における「目的に信号」は受光器22が受光する生体内を伝播した被変調光の強度に対応して増幅器23から出力される「電気的な検出信号(アナログ信号)」であり、「目的の信号の周波数」は受光器22の有効検出帯域幅(あるいはLPF24のカットオフ周波数)と一致する2fであるため、サンプリング周波数を4fとすることにより、ADコンバータ25によるデジタル変換処理において標本化定理が成立する。言い換えれば、受光器22の有効検出帯域幅2f(あるいはLPF24のカットオフ周波数)に一致する被変調光が有する情報(すなわちアナログの検出信号)は、情報欠落などを生じることなく正確にデジタル信号に変換される。
【0044】
このように、ADコンバータ25は、サンプリング周波数4fで電気的な検出信号(アナログ信号)をデジタル信号に変換すると、同変換したデジタル信号を第1乗算器26に出力する。第1乗算器26は、変換されたデジタル信号を入力するとともに、コントローラ3のクロックジェネレータ32からディレイ33を介することによって遅延して供給されるクロック周波数2fを入力する。そして、第1乗算器26は、クロックジェネレータ32から入力したクロック周波数2fを用いてデジタル信号を復調する。なお、以下の説明においては、第1乗算器26によって復調された信号を一次復調信号という。このようにデジタル信号を復調すると、第1乗算器26は、一次復調信号を第2乗算器27に出力する。
【0045】
第2乗算器27は、第1乗算器26から入力した一次復調信号と、コントローラ3のディレイ33を介して光出射部1の拡散符号系列発生器11から遅延して供給されたPN系列との積を取る。このように、PN系列を取得することにより、第2乗算器27は、後に詳述するように、複数の光出射部1のうちの特定の光出射部1であり、かつ、特定の光出射部1を構成するいずれかの光発生装置10から出射された被変調光に対応する一次復調信号をスペクトラム逆拡散して復調することができる。そして、第2乗算器27は、スペクトラム逆拡散によって復調した電気的な検出信号(デジタル信号)すなわち二次復調信号を累算器28に出力する。
【0046】
累算器28は、供給された二次復調信号に対して、光出射部1の拡散符号系列発生器11によって発生されたPN系列を1周期以上に渡り加算する。そして、累算器28は、特定の光出射部1(より具体的には、特定の光出射部1を構成するいずれかの光発生装置10)から出射されて生体中で減衰した極微弱の被変調光、言い換えれば、生体情報を含む被変調光の強度に対応する生体情報信号をコントローラ3に出力する。ここで、図4に示すように、第2乗算器27および累算器28は、光出射部1から出射される特定波長の数に合わせて複数(本実施形態においては一つの光出射部1あたり2つ、複数の受光可能な光出射部1が存在する場合には、存在する各光出射部1の数を乗算した数)設けられる。これにより、生体中を伝播した各被変調光の強度に対応する生体情報信号を同時に得ることができる。
【0047】
コントローラ3は、図7に示すように、CPU、ROM、RAM、タイマなどからなるマイクロコンピュータを主要構成部品とする制御部31を備えている。また、コントローラ3には、上述したように光出射部1および光検出部2の作動を制御するために、クロックジェネレータ32とディレイ33とが設けられている。クロックジェネレータ32は、上述したように、光検出部2を構成する光受光部22の有効検出帯域幅に一致する、第1の周波数としての周波数fの2倍となる第2の周波数としてのクロック周波数2fと、このクロック周波数2fの2倍となる4fのクロック周波数を光出射部1および光検出部2に供給するものである。ディレイ33は、後述する各光出射部1の各拡散符号系列発生器11が発生して光検出部2に供給するPN系列符号およびクロックジェネレータ32が光検出部2に供給するクロック周波数4fまたはクロック周波数2fを適宜遅延させるものである。ここで、この場合、光出射部1から光検出部2に向けて伝播する光の経路ごとに遅延特性が異なる可能性があるため、ディレイ33を各光検出部2ごとに設けて実施することにより、生体情報をより正確に得ることができる。
【0048】
さらに、コントローラ3は、算出した生体情報を表すデータを表示部4に出力する。表示部4は、例えば、液晶ディスプレイなどから構成されており、コントローラ3から供給されたデータに基づき、所定の態様によって生体情報を表示する。
【0049】
次に、上記のように構成した生体情報測定装置Sの作動について説明する。なお、以下の説明においては、被験者の脳内における血流変化を観察する場合を例示して説明する。
【0050】
生体の動脈および静脈を流れる血液(以下、それぞれ、動脈血および静脈血という)は、酸素と結合したヘモグロビン(以下、このヘモグロビンを酸素化ヘモグロビンという)と酸素と結合していないヘモグロビン(以下、このヘモグロビンを還元ヘモグロビンという)とを含んでいる。そして、動脈血および静脈血におけるこれら酸素化ヘモグロビンの量と還元ヘモグロビンの量は、生体の活動によって変化するものである。ここで、酸素化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンは近赤外光の吸光度合いが異なるため、酸素化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンによる近赤外光の吸光度合いの差を算出することによって、生体の活動に伴う変化すなわち血流変化を観察することができる。したがって、生体情報測定装置Sのコントローラ3は、被験者の脳内を伝播した被変調光の強度に対応する生体情報信号を用いて、後述するように、脳内における動脈血中と静脈血中の酸素化ヘモグロビン濃度長変化ΔCoxyおよび還元ヘモグロビン濃度長変化ΔCdeoxyを生体情報として算出する。
【0051】
このため、本実施形態において生体情報測定装置Sを作動させる際には、図8に示すように、被験者の頭部T(例えば、前頭周辺位置)に対して複数の光出射部1および複数の光検出部2を装着する。具体的には、被験者の頭部Tの表面にて、丸印で示す位置a〜f(以下、入射位置a〜fという)にそれぞれ光出射部1から出射された被変調光が入射される。また、脳内(例えば、前頭葉周辺)を反射しながら伝播し、四角印で示す位置A〜F(以下、受光位置A〜Fという)に到達した極微弱の被変調光(以下、この被変調光を反射光ともいう)がそれぞれの光検出部2によって検出される。そして、入射位置a〜fと受光位置A〜Fとは、例えば、互いにマトリックス状に配置される。なお、以下の説明においては、入射位置a〜fに被変調光を出射する各光出射部1を光出射部a〜fと示し、受光位置A〜Fに到達した反射光を検出する各光検出部2を光検出部A〜Fと示す。
【0052】
なお、以下の説明においては、入射位置a〜fに被変調光を出射する各光出射部1を光出射部a〜fと示し、受光位置A〜Fに到達した反射光を検出する各光検出部2を光検出部A〜Fと示す。また、図6は、生体情報測定装置Sのごく一部を示したものである。このため、入射位置と受光位置との一対一の組み合わせ、すなわち、チャンネル数については、図示した数に限定されるものではない。したがって、より多くの入射位置と受光位置との組み合わせ(例えば、1000チャンネル程度)をマトリックス状に配置して、脳内を伝播した反射光が有する生体情報信号を用いて生体情報を計測することもできる。また、チャンネルの配置に関しては、マトリックス状に限定されるものではなく、例えば、千鳥配置や、ある光出射部1を中心として周囲に光検出部2を配置する、もしくは、ある光検出部2を中心として周囲に光出射部1を複数配置するドーナツ状の配置など、種々の配置の採用が可能である。
【0053】
このように、被験者に対して光出射部1および光検出部2を装着すると、例えば、オペレータは、図示しない入力装置を操作して生体情報測定装置Sを作動させる。具体的に説明すると、コントローラ3の制御部31は、光出射部a〜fおよび光検出部A〜Fを作動させる。
【0054】
まず、光出射部a〜fによる光の出射について説明する。生体情報測定装置Sの作動が開始されると、コントローラ3の制御部31は、光出射部a〜fに対して、840nmと770nmの特定波長を有する被変調光を発生(発光)させるために、まず、ベースバンド出力器13を作動させる。これにより、2つの光発生装置10は、それぞれ、840nmと770nmの特定波長を有する被変調光の発光を同時に開始する。
【0055】
すなわち、光出射部a〜fの各光発生装置10においては、それぞれの拡散符号系列発生器11が、例えば、PN系列としてゴールド符号系列を発生する。そして、拡散符号系列発生器11は、発生したPN系列をコントローラ3の制御部31に対して出力するとともに、第1乗算器12に出力する。これにより、第1乗算器12は、ベースバンド出力器13から供給された直流信号(ベースバンド信号)とPN系列との積を取り、直流信号をスペクトラム拡散変調する。
【0056】
続いて、スペクトラム拡散変調された一次変調信号は、第2乗算器14に出力される。そして、第2乗算器14がクロックジェネレータ32から供給されるクロック周波数2fを用いて一次変調信号を変調した二次変調信号を光源ドライバ15に供給することにより、各光出射部a〜fの2つの光源16は、それぞれ、特定波長を有する被変調光を入射位置a〜fに出射する。
【0057】
ここで、上述したように、光源16においては、発光素子16bが接地されたシールドケース16a内に収容されており、被変調光がシールドケース16aに電気的に接続された出射窓16cを透過して出射される。これにより、発光素子16bが発光動作する際に発生する電磁波すなわち雑音電界(ノイズ)は、シールドケース16aの導電性により外部に漏えいすることが防止されるとともに、出射窓16cの透明導電膜16c2がシールドケース16aに電気的に接続されることにより外部に漏えいすることが防止される。すなわち、光源16は、特定波長を有する被変調光は入射位置a〜fに出射するものの、発光動作に伴って発生する雑音電界(ノイズ)が外部に漏えいすることは効果的に防止することができる。これにより、発生した雑音電界(ノイズ)が、例えば、生体(人体)を介して光検出部A〜Fに伝播し、受光器22による反射光の検出に悪影響を与えることを防止することができる。したがって、光検出部A〜Fによる反射光の検出精度を向上させることができ、その結果、生体情報の計測精度を向上させることができる。
【0058】
このように、光源16から入射位置a〜fのそれぞれに出射された被変調光は、被験者の頭部Tの頭蓋骨を透過して、例えば、前頭葉周辺に入射し、脳内を乱反射しながら、言い換えれば、減衰しながら伝播する。そして、各光出射部a〜fのそれぞれによって出射された2つの被変調光すなわち反射光は、ふたたび頭部Tの頭蓋骨を透過し、頭部Tの表面に到達する。
【0059】
次に、光検出部A〜Fによる反射光の検出について説明する。頭部Tの表面に到達したそれぞれの反射光は、受光位置A〜Fに対応する光検出部A〜Fにより検出される。すなわち、光検出部A〜Fにおいては、各受光器22が受光位置A〜Fのそれぞれに到達した反射光をすべて受光し、同受光した反射光に応じた電気的な検出信号(アナログ信号)を時系列的に増幅器23に出力する。そして、増幅器23は入力した電気的な検出信号を増幅し、LPF24は、この増幅された検出信号を通過させることにより周波数が2fよりも大きな信号成分をカットする。
【0060】
ここで、上述したように、受光器22においては、受光素子22bが接地されたシールドケース22a内に収容されており、反射光がシールドケース22aに電気的に接続された入射窓22cを透過して入射される。これにより、例えば、被験者の動作に伴い発生する筋電位による雑音電界(ノイズ)や光検出部A〜Fの外界に存在する雑音電界(ノイズ)は、シールドケース22aの導電性により内部への伝播が遮断されるとともに、入射窓22cの透明導電膜22c2がシールドケース22aに電気的に接続されることにより内部への伝播が遮断される。また、増幅器23は受光器22のシールドケース22a内に収容されるため、増幅器23に伝播する外部の雑音電界(ノイズ)も遮断される。
【0061】
また、受光器22から出力される電気的な検出信号(アナログ信号)は、低インピーダンスの増幅器23によって増幅され、信号出力端子23bを介して出力されるため、出力される電気的な検出信号(アナログ信号)に対して、外部に存在する雑音電界(ノイズ)が乗ることを防止することができる。さらに、増幅器23の信号出力端子23bには同軸ケーブルが接続されているため、信号出力端子23bを介してLPF24に出力される電気的な検出信号(アナログ信号)に対して、外部に存在する雑音電界(ノイズ)が乗ることを防止することができる。
【0062】
すなわち、受光器22においては、特定波長を有する反射光を受光位置A〜Fにて入射するものの、筋電位その他の電磁波すなわち雑音電界(ノイズ)が受光素子22bに伝播することを効果的に遮断することができる。また、増幅器23においては、筋電位その他の電磁波すなわち雑音電界(ノイズ)が伝播することが遮断されるとともに、増幅した電気的な検出信号(アナログ信号)を低インピーダンスでLPF24に出力することにより外部に存在する雑音電界(ノイズ)が電気的な検出信号(アナログ信号)に乗ることを防止することができる。これにより、雑音電界(ノイズ)が受光器22による反射光の検出および増幅器23による電気的な検出信号(アナログ信号)の出力に対して悪影響を与えることを防止することができる。したがって、光検出部A〜Fによる反射光の検出精度を向上させることができ、その結果、生体情報の計測精度を向上させることができる。
【0063】
続いて、ADコンバータ25がLPF24を通過した電気的な検出信号(アナログ信号)をサンプリング周波数4fでデジタル変換処理を行う。そして、同デジタル変換処理された電気的な検出信号(デジタル信号)は、第1乗算器26に出力され、第1乗算器26は入力した電気的な検出信号(デジタル信号)をクロック周波数2fを用いて復調し、同復調した検出信号すなわち一次復調信号を第2乗算器27に出力する。このように復調処理することにより、復調信号は、受光器22の有効検出帯域幅2fの全体を使った信号となる。言い換えれば、受光器22によって受光し得る被変調光が有する情報、例えば、前頭葉周辺を伝播した被変調光の減衰状態(すなわち、反射光の光強度)を欠落させることなく、正確にデジタル信号化した一次復調信号を第2乗算器27に出力することができる。
【0064】
ところで、受光位置A〜Fには、入射位置a〜fから出射されたそれぞれの被変調光が反射光として到達する。例えば、受光位置Aには、周辺に位置する入射位置a,b,c,dから出射された被変調光はいうまでもなく、入射位置e,fから出射された被変調光も反射光として到達する。このような状況において、コントローラ3の制御部31は、受光位置Aに到達した反射光のうち、例えば、入射位置a,b,c,dから出射された被変調光の反射光に対応する生体情報信号のみが得られるように、光検出部Aを制御する。この制御部31による制御を具体的に説明する。
【0065】
コントローラ3の制御部31は、上述したように、各光発生装置10の拡散符号系列発生器11からPN系列を取得する。一方、光検出部Aの第2乗算器27は、コントローラ3の制御部31を介して、光出射部a〜fの拡散符号系列発生器11によって発生されたPN系列を取得する。このとき、制御部31は、ディレイ33を介して、光出射部a,b,c,dの各拡散符号系列発生器11が発生した異なるPN系列を光検出部Aの対応する第2乗算器27に供給する。
【0066】
これにより、各第2乗算器27は、第1乗算器26から出力された一次復調信号とコントローラ3の制御部31から供給された対応するPN系列との積を取り、言い換えれば、スペクトラム逆拡散して得られた二次復調信号をそれぞれの累算器28に出力する。そして、各累算器28は、出力された二次復調信号をPN系列の1周期以上に渡り加算する。このように、出射された被変調光に対応する第2乗算器27と累算器28による積和処理により、二次復調信号と供給されたPN系列との相関を取ることができ、光出射部a,b,c,dのそれぞれから出射された複数の被変調光に対応した複数の生体情報信号を同時に出力することができる。
【0067】
すなわち、上述したように、PN系列に関しては、異なる系列が互いに直交する性質、言い換えれば、異なる系列同士の積の値が「0」となる性質を有している。このため、コントローラ3の制御部31がある第2乗算器27に対して、例えば、光出射部aの対応する拡散符号系列発生器11によるPN系列を供給した場合には、第1乗算器26から出力された一次復調信号のうち、光出射部aから出射された特定の被変調光に対応する一次復調信号以外の一次復調信号と光出射部aのPN系列との積の値は「0」となる。このため、累算器28によってPN系列の1周期以上に渡り加算される二次復調信号も「0」となり、相関は「0」となる。
【0068】
したがって、コントローラ3の制御部31から供給されたPN系列を有しない(または一致しない)二次復調信号、言い換えれば、生体情報信号は、選択的に排除され、特定の第2乗算器27および累算器28からは光出射部aから出射された特定の被変調光の反射光に対応する生体情報信号のみがコントローラ3の制御部31に出力される。同様に、コントローラ3の制御部31が他の第2乗算器27に対して、例えば、光出射部aの他方に対応する拡散符号系列発生器11によるPN系列を供給することによって、これらの第2乗算器27および累算器28からは光出射部aから出射された他方の特定の被変調光の反射光に対応する生体情報信号が同時にコントローラ3に出力される。さらに、同様にして、コントローラ3の制御部31から第2乗算器27に対して他の光出射部b,c,dのPN系列がそれぞれ供給された場合には、光出射部b,c,dから出射された複数の被変調光の反射光に対応するそれぞれの生体情報信号が同時にコントローラ3の制御部31に出力される。ここで、光検出部Aは光出射部a〜dによって出射された被変調光を検出するため、光検出部Aと光出射部a、光検出部Aと光出射部b、光検出部Aと光出射部c、光検出部Aと光出射部dの4つのチャンネルが形成されている。
【0069】
これにより、光検出部Aは、光出射部a〜fから出射された特定波長を有する被変調光のうち、光出射部a〜dによって出射された被変調光の反射光に対応する生体情報信号をコントローラ3の制御部31に出力する。なお、光検出部B〜Fについても、光検出部Aと同様にして、コントローラ3の制御部31によって制御されることにより、光出射部a〜fのうちの特定の光出射部から出射された被変調光の反射光に対応する生体情報信号を複数同時に出力する。
【0070】
このように光検出部A〜Fから生体情報信号が出力されると、コントローラ3の制御部31は、出力された生体情報信号を用いて、被検者の脳内(例えば、前頭葉周辺)における酸素化ヘモグロビン濃度長変化ΔCoxyおよび還元ヘモグロビン濃度長変化ΔCdeoxyを算出する。なお、以下に酸素化ヘモグロビン濃度長変化ΔCoxyおよび還元ヘモグロビン濃度長変化ΔCdeoxyの算出を具体的に説明するが、この算出方法自体については、本発明の特徴とする部分ではない。すなわち、酸素化ヘモグロビン濃度長変化ΔCoxyおよび還元ヘモグロビン濃度長変化ΔCdeoxyは生体情報測定装置Aによって計測可能な生体情報として例示的に示すものである。このため、酸素化ヘモグロビン濃度長変化ΔCoxyおよび還元ヘモグロビン濃度長変化ΔCdeoxyの算出方法については、従来から周知の種々の方法を採用することができ、以下に説明することは計算方法を限定することを意図するものではない。
【0071】
上述したように、動脈血および静脈血における酸素化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンは、異なる吸光特性によって近赤外光を吸光する。この酸素化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンにおける近赤外光の吸光特性は、一般的にランバート・ベール(Lambert-Beer)の法則に従って、下記式1で表すことができる。
−ln(R(λ)/Ro(λ))=εoxy(λ)×Coxy×d+εdeoxy(λ)×Cdeoxy×d+α(λ)+S(λ) …式1
【0072】
ただし、前記式1中のR(λ)、Ro(λ)およびdは、図9に概略的に示すように、それぞれ、波長λの検出光量、波長λの出射光量および検出領域の光路長を表すものである。また、前記式1中のεoxy(λ)は、波長λに対する酸素化ヘモグロビンの分子吸光係数を表し、εdeoxy(λ)は、波長λに対する還元ヘモグロビンの分子吸光係数を表すものである。また、前記式1中のCoxyは、酸素化ヘモグロビンの濃度を表し、Cdeoxyは、還元ヘモグロビンの濃度を表すものである。さらに、前記式1中のα(λ)は、血液中のヘモグロビン以外の色素(例えば、細胞中のミトコンドリアでの酸素の需供を反映するチトクロームaa33など)の光吸収による減衰量を表し、S(λ)は、生体組織の光散乱による減衰量を表すものである。
【0073】
このように、前記式1に従えば、840nmの波長を有する近赤外光と770nmの波長を有する近赤外光を用いた場合における酸素化ヘモグロビンの濃度Coxyと還元ヘモグロビンの濃度Cdeoxyを計算することができる。したがって、これら酸素化ヘモグロビンの濃度Coxyと還元ヘモグロビンの濃度Cdeoxyの比Coxy/Cdeoxyを計算することにより、血流変化を計算することができる。
【0074】
また、例えば、脳内に存在する毛細血管について、血流変化前の吸光特性を前記式1に従って表せば、血流変化後の吸光特性は下記式2に示すように表すことができる。
−ln(growthR(λ)/Ro(λ))=εoxy(λ)×growthCoxy×d+εdeoxy(λ)×growthCdeoxy×d+growthα(λ)+S(λ) …式2
ただし、前記式2中のgrowthR(λ)、growthCoxy、growthCdeoxyおよびgrowthα(λ)は、心拍動に伴う血流変化によって増加または減少変化した値を表すものであって、それぞれ、血流変化後の検出光量、血流変化後の酸素化ヘモグロビンの濃度、血流変化後の還元ヘモグロビンの濃度および血流変化後のヘモグロビン以外の色素の光吸収による減衰量を表すものである。
【0075】
ここで、血液中のヘモグロビンの光吸収量は、ヘモグロビン以外の色素の光吸収量に比して極めて大きいため、前記式1中のα(λ)をα(λ)=growthα(λ)とすることができる。これにより、前記式2から前記式1を差し引けば、下記式3が成立する。
−ln(growthR(λ)/R(λ))=εoxy(λ)×ΔCoxy+εdeoxy(λ)×ΔCdeoxy …式3
ここで、前記式3中のΔCoxyおよびΔCdeoxyは、それぞれ、下記式4および式5によって表されるものである。
ΔCoxy=(growthCoxy−Coxy)×d …式4
ΔCdeoxy=(growthCdeoxy−Cdeoxy)×d …式5
【0076】
そして、図10にてヘモグロビンの光吸光スペクトルを概略的に示すように、吸光特性のコントラスト比が明確となる特定波長としてλ=770nmや840nmの近赤外光を用いて計測した結果に基づいて前記式3を解くことにより、ディメンジョンとして光路長を含む酸素化ヘモグロビン濃度長変化ΔCoxyおよび還元ヘモグロビン濃度長変化ΔCdeoxy、あるいは、トータルヘモグロビン濃度長変化(ΔCoxy+ΔCdeoxy)を相対的に計算することができる。
【0077】
そして、コントローラ3の制御部31は、算出した酸素化ヘモグロビン濃度長変化ΔCoxyおよび還元ヘモグロビン濃度長変化ΔCdeoxyすなわち生体情報を算出し、この算出した生体情報を表示部4に出力する。そして、表示部4は、例えば、2次元的または3次元的な態様により、脳内の血流変化を表示する。
【0078】
以上の説明からも理解できるように、生体情報測定装置Sにおいては、生体内部を伝播することによって減衰した極微弱な反射光(被変調光)であっても、光検出部2の受光器22は、シールドケース22aおよび入射窓22cによって電磁シールドされるため、例えば、生体に発生する筋電位などによる雑音電界(ノイズ)の影響を排除して、反射光(被変調光)を検出することができる。また、増幅器23が受光器22のシールドケース22a内に収容されるため、増幅器の伝播する雑音電界(ノイズ)も遮断される。さらに、増幅器23はオペアンプを備えて低インピーダンスにより電気的な検出信号(アナログ信号)を出力することができる。このため、出力される電気的な検出信号(アナログ信号)に対して、外部に存在する雑音電界(ノイズ)が乗ることを防止して、良好な信号出力性能(良好なS/N比)を確保することができる。これにより、コントローラ3の制御部31は極めて正確に生体情報を計測(算出)することができる。
【0079】
また、生体情報測定装置Sにおいては、光出射部1の光源16もシールドケース16aおよび出射窓16cによって電磁シールドすることができる。したがって、光源16の発光素子16bの作動に伴って発生する雑音電界(ノイズ)の放出(放射)を防止することができ、光検出部2の受光器22による極微弱な反射光の検出に対する影響を大幅に低減することができる。これによっても、コントローラ3の制御部31は極めて正確に生体情報を計測(算出)することができる。
【0080】
a.第1変形例
上記実施形態においては、光出射部1が2つの光発生装置10から構成され、各光発生装置10がそれぞれ1つの光源16を備えて、2つの特定波長を有する被変調光を出射するように実施した。この場合、1つのシールドケース16a内に複数の発光素子16bを収容し、1つの光源16から複数の特定波長を有する被変調光を出射するように実施することも可能である。具体的に例示して説明すると、例えば、1つの光源16から2つの特定波長を有する被変調光を出射する場合には、図11に示すように、シールドケース16a内に2つの発光素子16bを収容する。ここで、2つの発光素子16bを収容する場合には、図8に示すように、各発光素子16bに接続されるアノード電極16b1を共通の電極とし、各発光素子16bに接続されるカソード電極16b2はそれぞれ別個に接続するようにするとよい。なお、この場合においても、上記実施形態と同様に、シールドケース16aはシールド電極16a1を介して電気的に設置される。
【0081】
このように、1つの光源16から複数の特定波長を有する被変調光を出射することにより、測定対象に応じて出射すべき被変調光の数(すなわち出射すべき特定波長の数)が増加させる必要がある場合であっても、光出射部1が有する光発生装置10の数を少なくすることができる。その結果、光出射部1自体を小型化することができ、測定部位(例えば、被験者の頭部T)に対して光出射部1を密に配置することができる。これにより、生体情報を計測する際の解像度を上げて計測精度を向上させることができ、より正確な生体情報を得ることができる。
【0082】
b.第2変形例
上記実施形態においては、光検出部2における受光器22の入射窓22cを透明基材22c1と透明導電膜22c2とから構成して実施した。この場合、より反射光の検出精度を向上させるために、図12および図13に示すように、光学フィルタ22c3を設けて実施することも可能である。ここで、光学フィルタ22c3は、反射光の特定波長のみを透過させる光学的な特性を有するものであり、例えば、図12に示すカラーフィルタや、短波長の光を除去(カット)するカットフィルタ、あるいは、図13に示す異なる屈折率を有する誘電体層を積層した帯域透過フィルタなどを採用することができる。
【0083】
このように、受光器22の入射窓22cに光学フィルタ22c3を設けることにより、計測環境に存在する外光(例えば、照明の光など)が入射窓22cを介して受光素子22bに入射することを確実に遮断することができる。その結果、外光の入射に伴うノイズ(雑音)成分を除去することができて、反射光の光強度に対応する生体情報信号のS/N比を高めることができる。したがって、計測精度を向上させることができ、より正確な生体情報を得ることができる。
【0084】
c.第3変形例
上記実施形態においては、光検出部2における受光器22の入射窓22cを、平板状の透明基材22c1と、この基材22c1の少なくとも一面側に形成された透明導電膜22c2とから構成して実施した。この場合、より反射光の検出精度を高めるために、図14に示すように、透明基材22c1をレンズ形状に形成し、このレンズ形状に形成した透明基材22c1の少なくとも一面側に透明導電膜22c2を形成して実施することも可能である。なお、図14においては、レンズ形状に形成した透明基材22c1の他面側に光学フィルタ22c3が形成されている。このように、受光器22の入射窓22cをレンズ形状とすることにより、効率よく極微弱な反射光を集光したり平行光化することができるため、受光素子22bに入射する反射光の光強度を高めることができる。その結果、反射光の光強度に対応する生体情報信号のS/N比を高めることができて計測精度を向上させることができ、より正確な生体情報を得ることができる。
【0085】
d.第4変形例
上記実施形態においては、光検出部2の受光器22がシールドケース22aを備えており、このシールドケース22a内に受光素子22bと増幅器23を一体的に収容して実施した。この場合、受光器22と増幅器23とを別体にして実施することも可能である。この場合、図15に示すように、電気的に互いに接続された受光器22と増幅器23とに対して影響を及ぼす外界の電磁波を遮断するために、光検出部2は、受光器22と増幅器23とを収容して電磁シールドする電磁シールドケース29を備えている。なお、この場合、受光器22の入射窓22cにおいては、透明導電膜22c2の形成を省略することができる。
【0086】
電磁シールドケース29は、本体部29aと入射窓29bを備えている。本体部29aは、外界の電磁波を遮断するために金属材料または導電性を有する樹脂材料から形成されて、増幅器23のグランド端子23cを介して接地されている。入射窓29bは、受光器22に対して反射光を光学的に透過するものであり、透明導電膜29b1、誘電体多層フィルタ29b2およびカバーガラス29b3とから構成される。透明導電膜29b1は、例えば、上述したITO,ZnO,NbOのバルク材料を薄片化して形成される。そして、透明導電膜29b1は、導電性を有する本体部29aに対して、例えば、導電性接着剤を介して電気的に接続されている。誘電多層フィルタ29b2は、異なる屈折率を有する誘電体層を積層した帯域透過フィルタであり、透明導電膜29b1上に積層される。カバーガラス29b3は、例えば、石英(コルツ)や光学的に透明な透明プラスチックなどから形成されて、誘電多層フィルタ29b2上に積層される。
【0087】
このように、電磁シールドケース29を設け、このケース29内に受光器22および増幅器23を収容する場合であっても、上記実施形態と同様に、特定波長を有する反射光を受光器22が受光することができるとともに、外界からの電磁波を遮断することができる。また、このように電磁シールドケース29を設けることにより、受光器22として、一般に市場に提供されている汎用の受光器(フォトダイオードやアバランシェフォトダイオードなど)を採用することができるため、製造コストを低減することも可能となる。
【0088】
本発明の実施にあたっては、上記実施形態および上記各変形例に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。
【0089】
例えば、上記実施形態および各変形例においては、増幅器23を一体的に収容した受光器22を、生体中を伝播した極微弱な反射光を検出して電気的な検出信号を低インピーダンス化して出力する生体情報測定装置Sに適用して実施した。このように、増幅器23を一体的に収容した受光器22は、外界の電磁波を遮断して極微弱の光を精度よく検出して良好な検出信号を出力することができる。このため、増幅器23を一体的に収容した受光器22を他の計測対象や他の計測環境での計測に利用して、極微弱な光を検出することはもちろん可能である。
【0090】
また、上記実施形態および各変形例においては、光が生体内を伝播することによって大きく減衰することおよび生体情報の計測解像度を高めることを考慮して、ベースバンド信号をスペクトラム拡散およびクロック周波数2fで変調した二次変調信号に基づいて各光発生装置10の光源16の発光タイミングを同時にして、光出射部1が被変調光を発光するように実施した。これに対して、計測対象や計測環境に応じて、各光発生装置10における光源16の発光タイミングを所定の短い時間間隔で異ならせて、近赤外光などの光をパルス発光するように実施することも可能である。
【0091】
この場合、光出射部1においては、上記実施形態および各変形例における光出射部1の光発生装置10から拡散符号系列発生器11、第1乗算器12および第2乗算器14が省略されて、ベースバンド出力器13、光源ドライバ15および光源16から構成される。そして、コントローラ3の制御部31は、所定のタイミングによりベースバンド出力器13を作動させることにより、光源ドライバ15が光源16を駆動(発光)させる。
【0092】
また、この場合においては、光出射部1の変更に伴って、光検出部2も変更される。すなわち、光検出部2においては、上記実施形態および各変形例における光検出部2の第1乗算器26、第2乗算器27および累算器28が省略されて、受光器22、増幅器23、LPF24およびADコンバータ25から構成される。このように、光源16の発光タイミングを所定の短い時間間隔で異ならせて、近赤外光などの光をパルス発光するように実施した場合であっても、上記実施形態および各変形例と同様の効果が期待できる。
【0093】
また、上記実施形態および各変形例においては、光出射部1がベースバンド信号をスペクトラム拡散およびクロック周波数2fで変調した二次変調信号を生成し、2つの被変調光が互いに干渉することなく出射されるように実施した。これに対して、ベースバンド出力器13からのベースバンド信号を周波数分割多重(Frequency Division Multiplexer:FDM)変調することによって変調信号を生成し、2つの被変調光の干渉を防止するように実施することも可能である。
【0094】
この場合においては、上記実施形態および各変形例における光出射部1の拡散符号系列発生器11、第1乗算器12および第2乗算器14が省略されて、周波数分割多重変調器が設けられる。また、この場合においては、上記実施形態および各変形例における光検出部2の第1乗算器26、第2乗算器27および累算器28が省略されて、周波数分割多重復調器が設けられる。なお、周波数分割多重変調器および周波数分割多重復調器の作動については、従来から広く知られている方法を適用して変調処理および復調処理が実施可能であるため、その詳細な説明については省略する。そして、このように、周波数分割多重変調することによって変調信号を生成して被変調光を発光するように実施した場合であっても、上記実施形態および各変形例と同様の効果が期待できる。
【0095】
また、上記実施形態および各変形例においては、光出射部1の光源16がスペクトラム拡散変調された二次変調信号に基づいて同時に発光するように実施した。しかし、スペクトラム拡散変調された二次変調信号に基づいて、光源ドライバ15が光源16を順次発光させるように実施可能であることはいうまでもない。
【0096】
さらに、上記実施形態および各変形例においては、生体内の血液の吸光特性を利用して、生体情報測定装置Sが被験者の脳内における酸素化ヘモグロビン濃度長変化ΔCoxyおよび還元ヘモグロビン濃度長変化ΔCdeoxyを生体情報として計測(算出)し、脳内の血流変化を観察するように実施した。しかしながら、光出射部1を構成する光発生装置10が発生する近赤外光の特定波長を適宜変更することにより、他の吸光特性、例えば、生体の密度、水分や、血中のグルコース濃度(血糖値)、脂質量、あるいは、脈拍などの変化に伴う吸光特性、例えば、酸素飽和度などを計測可能であることはいうまでもない。このように、他の吸光特性を利用する場合であっても、本発明に係る生体情報測定装置Sを用いることにより、生体情報をより正確に計測(算出)することができる。
【符号の説明】
【0097】
1…光出射部、10…光発生装置、11…拡散符号系列発生器、12…第1乗算器、13…ベースバンド出力器、14…第2乗算器、15…光源ドライバ、16…光源、2…光検出部、22…受光器、22a…シールドケース、22b…受光素子、22c…入射窓、22c1…透明基材、22c2…透明導電膜、23…増幅器、23a…オペアンプ、24…LPF、25…ADコンバータ、26…第1乗算器、27…第2乗算器、28…累算器、29…電磁シールドケース、3…コントローラ、31…制御部、32…クロックジェネレータ、33…ディレイ、4…表示部、S…生体情報測定装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、光検出装置、特に、測定環境における電磁波の影響を排除して微弱な光を検出する光検出装置およびこの光検出装置を用いて生体中の血流変化、血中酸素濃度、酸素飽和度、脈拍、その他の様々な生体の代謝に応じて、生体内を伝播する光が波長により異なる変化を生ずる性質に着目して生体情報を計測する生体情報測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、受光した光を電気的な信号に変換する光電変換素子を主要構成部品とする光検出装置を用いて、光の有する種々の情報を処理することが広く行われている。そして、このような光検出装置を応用した一例として、例えば、生体内部を簡便に無侵襲で計測できる生体情報測定装置を挙げることができる。この生体情報測定装置においては、例えば、下記特許文献1に示すように、生体表面に配置された光源から生体内部に光を出射し、生体内部を散乱、吸収されながら伝播して再び生体表面に到達した光を光検出装置、より具体的には、光電変換素子が受光して出力する電気的な信号に基づいて生体内部の情報(生体情報)を測定(計測)するようになっている。
【0003】
ところで、光電変換素子が極微弱な光を受光して電気的な信号を出力する場合、測定環境下に存在する電磁波による雑音電界(ノイズ)が光電変換素子による光の受光や電気的な信号の出力に対して悪影響を与える可能性がある。また、上述した従来の生体情報測定装置においては、例えば、生体の筋肉の活動に伴って発生する筋電位などが雑音電界(ノイズ)として光電変換素子による光の受光や電気的な信号の出力に対して悪影響を与える可能性がある。このような雑音電界(ノイズ)の影響を抑制することに関し、例えば、下記特許文献2に示されているような電磁的なシールド構造を用いて、光電変換素子を電磁的にシールドすることが有効である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3623743号
【特許文献2】特開2006−229922号公報
【発明の概要】
【0005】
ところで、上記特許文献2に示されているような電磁的なシールド構造を採用しても、光電変換素子に対する雑音電界(ノイズ)の影響を完全になくすことは不能である。また、一般的に、半導体を用いた光電変換素子は、ゼロバイアスや逆バイアスにより、その出力インピーダンスが高い。したがって、例えば、電磁的にシールドされている状態で、光電変換素子が極微弱な光を受光して電気的な信号を出力する場合、本来、受光した光に対応して出力される電気的な信号に加えて、極僅かに影響する雑音電界(ノイズ)が高インピーダンスによりノイズ信号として出力される場合がある。これにより、例えば、上述した生体情報のように、極微弱な光が有する情報を極めて精密に測定する必要がある場合においては、測定精度の低下が顕著となる場合がある。したがって、(極)微弱な光の有する種々の情報を処理する場合には、光電変換素子を電磁波等から電磁的にシールドすることに加えて、電磁波等に基づくノイズ信号を低減して良質な電気的な信号を出力することが極めて重要である。
【0006】
本発明は、上記した課題を解決するためになされたものであり、その目的は、測定環境における電磁波の影響を排除して微弱な光を検出する光検出装置およびこの光検出装置を用いて生体情報を計測する生体情報測定装置を提供することにある。
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、光を検出する光検出装置であって、導電性を有して接地された導電性ケースと、検出する光の波長に対する光学的透過性を有するとともに電気伝導性を有して前記導電性ケースに電気的に接続されて光を入射する窓部と、前記導電性ケース内に収容されて前記窓部から入射した光を受光して電気的な検出信号に変換する光電変換素子と、前記導電性ケース内に収容されて前記光電変換素子から出力される電気的な検出信号を増幅するするとともに前記光電変換素子の出力インピーダンスよりも小さな出力インピーダンスにより前記増幅した電気的な検出信号を出力する増幅回路とを備えたことにある。
【0008】
また、本発明の他の特徴は、生体内部を伝播する光を検出し、この検出した光の有する生体情報を測定する生体情報測定装置において、少なくとも2つの光源を有していて、所定の駆動信号に基づいて前記光源を発光させて異なる特定波長を有する近赤外光を生体内部に出射する光出射部と、導電性を有して接地された導電性ケースと、前記光出射部から出射される特定波長に対する光学的透過性を有するとともに電気伝導性を有して前記導電性ケースに電気的に接続されて光を入射する窓部と、前記導電性ケース内に収容されて前記窓部から入射した光を受光して電気的な検出信号に変換する光電変換素子と、前記導電性ケース内に収容されて前記光電変換素子から出力される電気的な検出信号を増幅するするとともに前記光電変換素子の出力インピーダンスよりも小さな出力インピーダンスにより前記増幅した電気的な検出信号を出力する増幅回路とを備えて、前記光出射部から出射されて生体内部を伝播した近赤外光を受光して検出するとともに同検出した近赤外光の光強度に対応して生体の代謝に関連する電気的な検出信号を出力する光検出部と、前記光出射部と前記光検出部の作動を統括的に制御し、前記光検出部から出力された電気的な検出信号に基づいて生体情報を算出する制御部とを備えたことにもある。
【0009】
これらの場合、前記窓部を、例えば、検出する光の波長または前記特定波長に対する光学的透過性を有する透明基材と、この透明基材の少なくとも一面側に積層されて、測定する波長または前記特定波長に対する光学的透過性を有するとともに電気伝導性を有する透明導電膜とで構成するとよい。
【0010】
この場合、前記透明導電膜を、例えば、検出する光の波長または前記特定波長を選択的に透過させる帯域透過性を有する少なくとも1層以上の誘電体膜と併せて、前記透明基材の少なくとも一面側に積層するようにするとよい。そして、前記窓部を構成する透明導電膜は、例えば、イットリウム−錫酸化物(ITO),亜鉛酸化物(ZnO)またはニオブ酸化物(NbO)を主成分として形成されるとよい。
【0011】
また、前記増幅回路は、例えば、入力インピーダンスの大きなオペアンプを備えているとよい。
【0012】
さらに、前記光電変換素子は、例えば、フォトダイオードまたはアバランシェフォトダイオードであるとよい。
【0013】
また、上記生体情報測定装置において、前記光源が、例えば、導電性を有して接地された導電性ケースと、前記特定波長に対する光学的透過性を有するとともに電気伝導性を有して前記導電性ケースに電気的に接続されて光を透過する窓部と、前記導電性ケース内に収容されて前記窓部から前記特定波長を有する近赤外光を出射する発光素子とを有するとよい。この場合、前記導電性ケース内に前記発光素子を複数収容するとよい。また、この場合、前記窓部を、例えば、前記特定波長に対する光学的透過性を有する透明基材と、この透明基材の少なくとも一面側に積層されて、前記特定波長に対する光学的透過性を有するとともに電気伝導性を有する透明導電膜とで構成するとよい。そして、この場合、前記窓部を構成する透明導電膜は、例えば、イットリウム−錫酸化物(ITO),亜鉛酸化物(ZnO)またはニオブ酸化物(NbO)を主成分として形成されるとよい。さらに、前記発光素子は、例えば、半導体レーザまたは発光ダイオードであるとよい。
【0014】
また、上記生体情報測定装置において、前記制御部が算出する前記生体情報は、例えば、前記生体の血管中における酸素と結合した酸素化ヘモグロビン濃度長変化および酸素と結合していない還元ヘモグロビン濃度長変化を表す情報であるとよい。
【0015】
また、上記生体情報測定装置において、前記光出射部は、生体の頭部に前記特定波長を有する近赤外光を出射し、前記光検出部は、前記生体の頭部を伝播した近赤外光を受光して前記電気的な検出信号を出力し、前記制御部は、前記生体の脳内における活動に関する生体情報を算出するとよい。
【0016】
また、上記生体情報測定装置において、前記光出射部は、前記所定の駆動信号をスペクトラム拡散変調するスペクトラム拡散変調手段を有し、前記光検出部は、前記電気的な検出信号をスペクトラム逆拡散して復調する復調手段を有するとよい。この場合、前記光出射部のスペクトラム拡散変調手段は、前記所定の駆動信号をスペクトラム拡散変調するための拡散符号系列を第1の周波数により生成する拡散符号系列生成手段と、同拡散符号系列生成手段によって生成された拡散符号系列を用いて前記所定の駆動信号をスペクトラム拡散して一次変調信号を出力する第1変調手段と、前記第1の周波数の2倍となる第2の周波数を用いて前記第1変調手段によって出力された一次変調信号を変調して二次変調信号を出力する第2変調手段とを有し、前記光検出部の復調手段は、前記電気的な検出信号の信号帯域のうち、直流および直流近傍の周波数における信号成分および前記第2の周波数以上の信号成分を除去して出力する信号成分除去手段と、前記近赤外光が前記生体内を伝播することに伴う遅延を加味した前記第2の周波数の2倍となる第3の周波数を用いて前記信号成分除去手段によって出力された電気的な検出信号をデジタル信号に変換する信号変換手段と、前記近赤外光を前記生体内で伝播させることに伴う遅延を加味した前記第2の周波数を用いて前記信号変換手段によって変換されたデジタル信号を復調して一次復調信号を出力する第1復調手段と、前記近赤外光を前記生体内で伝播させることに伴う遅延を加味した前記拡散符号系列を用いて前記一次復調信号をスペクトラム逆拡散して二次復調信号を出力する第2復調手段とを有するとよい。さらに、この場合、前記第2の周波数を、例えば、前記光検出部が前記生体内を伝播した近赤外光を有効に検出可能な有効検出帯域幅と一致させるとよい。
【0017】
また、上記生体情報測定装置において、前記光出射部は、所定の時間間隔を有して供給される前記所定の駆動信号を取得し、前記各光源が前記取得した所定の駆動信号に基づいて順次発光して、異なる特定波長を有する近赤外光を前記所定の時間間隔を有して順次出射するとよい。
【0018】
さらに、上記生体情報測定装置において、前記光出射部は、前記所定の駆動信号を周波数分割多重変調して変調信号を生成する周波数分割多重変調手段を有し、前記光検出部は、前記電気的な検出信号を周波数分割多重復調する復調手段を有するとよい。
【0019】
これらによれば、光検出装置(生体情報測定装置の光検出部)は、導電性ケースおよび窓部によって、光電変換素子および増幅回路が電磁シールドされる。これにより、測定環境に存在する電磁波等による雑音電界(ノイズ)が光電変換素子および増幅回路に影響を及ぼすことを効果的に防止することができる。また、このように電磁シールドされる雑音電界(ノイズ)が、僅かに光電変換素子および増幅回路に対して影響を及ぼす場合であっても、増幅回路の出力インピーダンスが光電変換素子の出力インピーダンスよりも小さいため、増幅回路を介して出力される電気的な検出信号のS/N比を高めることができる。したがって、例えば、極微弱な光を検出する状況においても、検出した光に対応した良質な電気的な検出信号を出力することができる。
【0020】
また、上記生体情報測定装置においては、光出射部は、例えば、スペクトラム拡散変調した駆動信号、または、所定の短い時間間隔有して供給された所定の駆動信号、あるいは、周波数分割多重変調した駆動信号に基づき、光源を発光させて複数の特定波長を有する近赤外光を生体内部に向けて出射することができる。一方、光検出部は、電磁的にシールドされた状態で生体内部を伝播した近赤外光を受光し、この受光した近赤外光すなわち生体内部の伝播に伴って減衰した極微弱な近赤外光の光強度(光量)に対応して生体の代謝に関連する電気的な検出信号を低インピーダンスにより出力することができる。ここで、光出射部が所定の駆動信号をスペクトラム拡散変調または周波数分割多重変量した駆動信号(変調信号)に基づいて光源を発光させて複数の特定波長を有する近赤外光を生体内部に向けて出射する場合には、光検出部は、電気的な検出信号をスペクトラム逆拡散復調または周波数分割多重変調することができる。そして、電気的な検出信号に基づいて、生体情報、例えば、生体の血管中における酸素化ヘモグロビン濃度長変化および還元ヘモグロビン濃度長変化や、酸素化ヘモグロビン濃度長変化および還元ヘモグロビン濃度長変化の和として算出できるトータルヘモグロビン濃度長変化、血流に伴って変化する脈波、あるいは、酸素飽和度などを算出することができる。
【0021】
したがって、生体情報測定装置においては、生体内部を伝播することによって減衰した極微弱な近赤外光であっても、光検出部は、例えば、生体に発生する筋電位などによる雑音電界(ノイズ)の影響を排除して、良質な電気的な検出信号を出力することができる。これにより、極めて正確に生体情報を計測(算出)することができる。また、生体情報測定装置においては、光源も電磁シールドすることができる。したがって、光源の作動に伴って発生する雑音電界(ノイズ)の放出(放射)を防止することができ、光検出部による光の検出に対する影響を大幅に低減することができる。これによっても、極めて正確に生体情報を計測(算出)することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態および各変形例に係る共通の生体情報測定装置の概略を示すブロック図である。
【図2】図1の光出射部の構成を概略的に示すブロック図である。
【図3】図2の光源の構成を示す概略的な断面図である。
【図4】図1の光検出部の構成を概略的に示すブロック図である。
【図5】図4の受光器および増幅器の構成を示す概略的な断面図である。
【図6】図5の増幅器の概略的な電気回路図である。
【図7】図1のコントローラの構成を概略的に示すブロック図である。
【図8】生体情報測定装置を脳内における生体情報の計測に適用した場合における入射位置と受光位置の配列を一部抜き出して示した図である。
【図9】ランバート・ベールの法則を説明するための概略的な図である。
【図10】酸素化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンの波長に対する分子吸光係数の変化を概略的に示したグラフである。
【図11】本発明の第1変形例に係る光源の構成を示す概略的な断面図である。
【図12】本発明の第2変形例に係る受光器の構成を示す概略的な断面図である。
【図13】本発明の第2変形例に係る受光器の構成を示す概略的な断面図である。
【図14】本発明の第3変形例に係る受光器の構成を示す概略的な断面図である。
【図15】本発明の第4変形例に係り、受光器および増幅器を収容する電磁シールドケースの構成を示す概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面を用いて説明する。図1は、本発明の実施形態に係る生体情報測定装置Sの構成を概略的に示したブロック図である。生体情報測定装置Sは、図1に示すように、特定波長を有する光を発生する複数の光出射部1と、光出射部1から出射された光が生体の内部を反射しながら伝播した後の光を検出する複数の光検出部2とを備えている。また、生体情報測定装置Sは、CPU、ROM、RAM、タイマなどからなるマイクロコンピュータを主要構成部品とし、光出射部1および光検出部2の作動を統括的に制御するとともに生体の代謝に関連する生体情報を算出して出力するコントローラ3と、算出された生体情報を所定の態様により表示する表示部4とを備えている。
【0024】
光出射部1は、図2に示すように、異なる特定波長を有する光を発生させる複数の光発生装置10から構成されている。なお、以下の説明においては、例示的に光出射部1を2つの光発生装置10から構成して、言い換えれば、1つの光出射部1が2つの特定波長を有する光を発生するように構成して実施する。しかしながら、光出射部1を構成する光発生装置10の数すなわち出射する光の特定波長の数については、これに限定されるものではなく、光出射部1を、例えば、3つ以上の光発生装置10から構成して実施可能であることはいうまでもない。このように、光発生装置10を多数設けることにより、後述するように得られる生体情報の定量性を十分に確保することができる。
【0025】
これらの光発生装置10は、それぞれ、特定波長を有する光をスペクトラム拡散変調して出射するようになっている。このため、各光発生装置10は、拡散符号系列として、例えば、65536ビット長の「+1」と「−1」からなるPN(Pseudorandom Noise)系列を発生させるための拡散符号系列発生器11を備えている。この拡散符号系列発生器11は、例えば、アダマール系列やM系列、あるいは、ゴールド符号系列をPN系列として発生する。
【0026】
なお、上述したアダマール系列、M系列、あるいは、ゴールド符号系列は、一般的なスペクトラム拡散変調に用いられるものと同様であるため、その発生方法に関する詳細な説明は省略するが、以下に簡単に説明しておく。アダマール系列は、「+1」と「−1」からなるアダマール行列の各行または各列を取り出して得られる系列である。M系列は、「0」または「+1」の状態を記憶する1ビットのレジスタをn段並べたシフトレジスタを用い、同シフトレジスタの中間から帰還した値と最終段における値との排他的論理和を初段に接続することにより得られる2値系列である。ただし、この2値系列をPN系列とするためには、レベル変換を行い、値「0」を「−1」に変換する。ゴールド符号系列は、基本的には、2種類のM系列を用意し、これらを加算して得られる符号系列である。このため、ゴールド符号系列は、M系列に比して、各段に系列数を増やすことができる行列である。そして、これらの系列の特徴として、異なる系列は互いに直交する性質を有しており、積和演算を行うことによって「0」すなわち自己以外には相関が「0」となることが挙げられる。
【0027】
この拡散符号系列発生器11は、コントローラ3に設けられた後述のクロックジェネレータ32から供給されるクロック周波数2fを入力する。そして、入力したクロック周波数2fに基づき、拡散符号系列発生器11は、PN系列の生成周波数、言い換えれば、PN系列の最小発生間隔に相当するチップレートがf以下となるPN系列を発生させる。
【0028】
このように、拡散符号系列発生器11の発生したPN系列は、コントローラ3に出力されるとともに、第1乗算器12に出力される。第1乗算器12は、ベースバンド出力器13によって出力される直流信号と、拡散符号系列発生器11から供給されるPN系列との積を取り、直流信号をスペクトラム拡散変調する。なお、以下の説明においては、このスペクトラム拡散変調された直流信号を一次変調信号という。
【0029】
この一次変調信号は、第2乗算器14に出力される。第2乗算器14は、一次変調信号を入力するとともに、コントローラ3のクロックジェネレータ32から供給されるクロック周波数2fを入力する。そして、第2乗算器14は、入力した一次変調信号をクロック周波数2fで変調する。このように、一次変調信号をクロック周波数2fで変調することにより、この変調された一次変調信号は、周波数fにおける信号強度が最も強くなる。なお、以下の説明においては、この変調された一次変調信号を二次変調信号という。
【0030】
このように、第2乗算器14によって変調された二次変調信号は、光源ドライバ15に出力される。光源ドライバ15は、二次変調信号に基づいて、光源16に所定の駆動電圧を供給し、光源16を駆動(発光)させるものである。光源16は、図3に示すように、シールドケース16a内に収容された発光素子16bと、発光素子16bによる光を出射する出射窓16cとを備えている。
【0031】
シールドケース16aは、電磁シールドを行うための材料すなわち金属材料または導電性を有する樹脂材料などから形成されており、図3に示すように、シールド電極16a1を介して接地されている。発光素子16bは、例えば、半導体レーザや発光ダイオードであり、アノード電極16b1とカソード電極16b2が接続されている。そして、発光素子16bは、600〜1500nmの波長範囲のうちの特定波長を有する近赤外光(以下、被変調光という)を発光する。なお、以下の説明においては、光発生装置10を構成する2つの光源16のうち、一方の光源16は、例えば、840nmの特定波長を有する被変調光を発光し、他方の光源16は、例えば、770nmの特定波長を有する被変調光を発光するものとして説明する。
【0032】
出射窓16cは、発光素子16bによる特定波長を有する被変調光を光学的に透過する透明基材16c1(例えば、石英(コルツ)や光学的に透明な透明プラスチックなど)と、透明基材16c1の少なくとも一面側に形成された透明導電膜16c2とから構成されている。ここで、透明導電膜16c2の形成材料としては、イットリウム−錫酸化物(ITO(Indium Tin Oxide))、亜鉛酸化物(ZnO(Zinc Oxide))、または、ニオブ酸化物(NbO(Niobium Oxide))のうちから選択して採用するとよい。そして、透明導電膜16c2は、透明基材16c1に対して、例えば、周知の蒸着法などを用いて形成され、その形成膜厚としては、例えば、100nm程度とされている。なお、このように、出射窓16cを透明基材16c1および透明導電膜16c2から形成することに代えて、例えば、ITO,ZnO,NbOのバルク材料を薄片化して出射窓16cを形成することも可能である。さらに、透明導電膜16c2は、シールドケース16aに対して、導電性接着剤(例えば、シルバーペーストなど)やハンダなどの金属封止材を用いて、電気的に接続されている。
【0033】
そして、各光出射部1から出射された2つの異なる特定波長を有する被変調光は、光合成器17(例えば、光ファイバなど)を介して、生体内部に向けて入射される。なお、この場合、光合成器17を省略して、直接、各光出射部1から生体内部に向けて被変調光を入射するように実施することも可能である。
【0034】
光検出部2は、図4に示すように、生体内部を反射しながら伝播した極微弱な被変調光を検出し、同検出した被変調光が有する生体情報に関連する電気的な生体情報信号を出力するものである。このため、光検出部2は、光合成器21(例えば、光ファイバなど)を介して、光出射部1から出射されて生体中を伝播した被変調光を受光する受光器22を備えている。なお、この場合、光合成器21を省略して、直接、生体中を伝播した被変調光を受光器22が受光するように実施することも可能である。
【0035】
受光器22は、図5に示すように、シールドケース22a内に収容された光電変換素子としての受光素子22bと、受光素子22bに対して生体内を伝播した被変調光を透過させる入射窓22cとを備えている。シールドケース22aは、電磁シールドを行うための材料すなわち金属材料または導電性を有する樹脂材料などから形成されており、図5に示すように、グランド端子22a1を介して接地されている。受光素子22bは、例えば、SiまたはInGaAsなどの半導体を主要構成部品とするPINフォトダイオードやアラバンシェフォトダイオードであり、その有効検出帯域幅が2fに設定されている。そして、受光素子22bは、後述するように、シールドケース22a内に一体的に収容された増幅器23に対して電気的に接続されている。
【0036】
入射窓22cは、受光素子22bに対して特定波長を有する被変調光を光学的に透過する透明基材22c1(例えば、石英(コルツ)や光学的に透明な透明プラスチックなど)と、透明基材22c1の少なくとも一面側に形成された透明導電膜22c2とから構成されている。そして、透明導電膜22c2は、シールドケース22aに対して、導電性接着剤(例えば、シルバーペーストなど)やハンダなどの金属封止材を用いて、電気的に接続される。ここで、透明導電膜22c2の形成材料も、光出射部1の光源16における透明導電膜16c2と同様に、ITO,ZnO,NbOのうちから選択して採用するとよい。また、透明導電膜22c2の形成に関しても、透明導電膜16c2と同様に、例えば、周知の蒸着法などを用い、透明基材22c1に対して100nm程度の形成膜厚となるように形成される。なお、透明導電膜22c2の膜厚に関しては、これに限定されるものではなく、より大きな膜厚(例えば、500nm程度)を形成して実施することも可能である。さらに、この透明導電膜22c2も、ITO,ZnO,NbOのバルク材料を薄片化して入射窓22cを形成することが可能である。
【0037】
なお、本実施形態においては、受光素子22bとしてPinフォトダイオードやアラバンシェフォトダイオードを用いて実施するが、例えば、CCDやCMOSなどの光電変換素子を用いて2次元的な光学情報を取得することも可能である。この場合には、CCDやCMOSなどの表面に透明基材22c1に対応する透明な絶縁層を形成するとともにこの絶縁層を介して透明導電膜22c2を形成し、この透明導電膜22c2を接地されたシールドケース22aに電気的に接続するようにするとよい。
【0038】
増幅器23は、受光器22のシールドケース22a内に収容されて、受光器22(より詳しくは、受光素子22b)から出力された電気的な検出信号(アナログ信号)の強度を増幅する増幅回路(低雑音アンプ)である。このため、増幅器23は、図6に示すように、オペアンプ23aと、増幅した電気的な検出信号(アナログ信号)を出力する信号出力端子23bとを備えている。なお、信号出力端子23bの周囲には、詳細な図示を省略するが、絶縁性のあるガラスや非導電性のプラスチックなどにより、電気的な短絡が防止されている。また、信号出力端子23bは、例えば、同軸ケーブルに接続されるようになっており、この同軸ケーブルの外周金属層は受光器22のシールドケース22aに電気的に接続されるようになっている。
【0039】
オペアンプ23aは、入力インピーダンスが極めて高く(例えば、40MΩ程度)、出力インピーダンスが低い(例えば、150Ω程度)特性を有しており、+の電源端子23a1と−の電源端子23a2に接続されている。ところで、受光器22の受光素子22bは、被変調光を検出する際にゼロまたは逆バイアスされるため、その出力インピーダンスはメガオームに近い値となる。そして、このように出力インピーダンスが高い状態においては、微弱な電磁波すなわち雑音電界(ノイズ)によって誘起される電流が大きな雑音電圧を生じさせるため、増幅器23を介することなく電気的な検出信号(アナログ信号)を出力する場合には、出力される電気的な検出信号(アナログ信号)のS/N比を悪化させる。したがって、出力インピーダンスが低い状態とすれば雑音電界(ノイズ)の影響は小さくなるため、出力インピーダンスの小さなすなわち低インピーダンスのオペアンプ23aを介して電気的な検出信号(アナログ信号)を出力することにより、S/N比の悪化を防止して良質な検出信号を出力することができる。
【0040】
また、増幅器23を接地されたシールドケース22a内に収容することにより、増幅器23から出力される電気的な検出信号(アナログ信号)に対する外界の雑音電界の影響を効果的に防止することができる。これによっても、増幅器23(より詳しくは、オペアンプ23a)を介して出力される電気的な検出信号(アナログ信号)におけるS/N比の悪化を防止して良質な検出信号を出力することができる。そして、このように、増幅器23が増幅した電気的な検出信号(アナログ信号)は、信号出力端子23bを介して、ローパスフィルタ(LPF)24に出力される。
【0041】
LPF24は、例えば、ナイキストの第1基準を満たして符号間干渉を防ぐインパルス応答波形を実現するナイキストフィルタなどであり、そのカットオフ周波数が2fに設定されている。これにより、LPF24は、増幅器23から入力した検出信号(アナログ信号)のうち、その周波数が2fよりも大きな信号成分を除去(カット)してADコンバータ25に出力する。
【0042】
ADコンバータ25は、LPF24を通過した電気的な検出信号(アナログ信号)をデジタル信号に変換するものである。具体的には、ADコンバータ25は、コントローラ3のクロックジェネレータ32から後述のディレイ33によって適宜遅延されたクロック周波数4fを入力し、サンプリング周波数4fで電気的な検出信号(アナログ信号)をデジタル信号に変換する。ここで、受光器22の有効検出帯域幅2fの2倍のサンプリング周波数4fによってADコンバータ25がデジタル変換処理を実行することにより、一般に広く知られた標本化定理(サンプリング定理やナイキストの定理ともいわれる)が成立する。
【0043】
すなわち、標本化定理によれば、目的の信号を正確に再現するためには、目的の信号の周波数の少なくとも2倍以上のサンプリング周波数を用いてサンプリングする必要がある。ここで、標本化定理における「目的に信号」は受光器22が受光する生体内を伝播した被変調光の強度に対応して増幅器23から出力される「電気的な検出信号(アナログ信号)」であり、「目的の信号の周波数」は受光器22の有効検出帯域幅(あるいはLPF24のカットオフ周波数)と一致する2fであるため、サンプリング周波数を4fとすることにより、ADコンバータ25によるデジタル変換処理において標本化定理が成立する。言い換えれば、受光器22の有効検出帯域幅2f(あるいはLPF24のカットオフ周波数)に一致する被変調光が有する情報(すなわちアナログの検出信号)は、情報欠落などを生じることなく正確にデジタル信号に変換される。
【0044】
このように、ADコンバータ25は、サンプリング周波数4fで電気的な検出信号(アナログ信号)をデジタル信号に変換すると、同変換したデジタル信号を第1乗算器26に出力する。第1乗算器26は、変換されたデジタル信号を入力するとともに、コントローラ3のクロックジェネレータ32からディレイ33を介することによって遅延して供給されるクロック周波数2fを入力する。そして、第1乗算器26は、クロックジェネレータ32から入力したクロック周波数2fを用いてデジタル信号を復調する。なお、以下の説明においては、第1乗算器26によって復調された信号を一次復調信号という。このようにデジタル信号を復調すると、第1乗算器26は、一次復調信号を第2乗算器27に出力する。
【0045】
第2乗算器27は、第1乗算器26から入力した一次復調信号と、コントローラ3のディレイ33を介して光出射部1の拡散符号系列発生器11から遅延して供給されたPN系列との積を取る。このように、PN系列を取得することにより、第2乗算器27は、後に詳述するように、複数の光出射部1のうちの特定の光出射部1であり、かつ、特定の光出射部1を構成するいずれかの光発生装置10から出射された被変調光に対応する一次復調信号をスペクトラム逆拡散して復調することができる。そして、第2乗算器27は、スペクトラム逆拡散によって復調した電気的な検出信号(デジタル信号)すなわち二次復調信号を累算器28に出力する。
【0046】
累算器28は、供給された二次復調信号に対して、光出射部1の拡散符号系列発生器11によって発生されたPN系列を1周期以上に渡り加算する。そして、累算器28は、特定の光出射部1(より具体的には、特定の光出射部1を構成するいずれかの光発生装置10)から出射されて生体中で減衰した極微弱の被変調光、言い換えれば、生体情報を含む被変調光の強度に対応する生体情報信号をコントローラ3に出力する。ここで、図4に示すように、第2乗算器27および累算器28は、光出射部1から出射される特定波長の数に合わせて複数(本実施形態においては一つの光出射部1あたり2つ、複数の受光可能な光出射部1が存在する場合には、存在する各光出射部1の数を乗算した数)設けられる。これにより、生体中を伝播した各被変調光の強度に対応する生体情報信号を同時に得ることができる。
【0047】
コントローラ3は、図7に示すように、CPU、ROM、RAM、タイマなどからなるマイクロコンピュータを主要構成部品とする制御部31を備えている。また、コントローラ3には、上述したように光出射部1および光検出部2の作動を制御するために、クロックジェネレータ32とディレイ33とが設けられている。クロックジェネレータ32は、上述したように、光検出部2を構成する光受光部22の有効検出帯域幅に一致する、第1の周波数としての周波数fの2倍となる第2の周波数としてのクロック周波数2fと、このクロック周波数2fの2倍となる4fのクロック周波数を光出射部1および光検出部2に供給するものである。ディレイ33は、後述する各光出射部1の各拡散符号系列発生器11が発生して光検出部2に供給するPN系列符号およびクロックジェネレータ32が光検出部2に供給するクロック周波数4fまたはクロック周波数2fを適宜遅延させるものである。ここで、この場合、光出射部1から光検出部2に向けて伝播する光の経路ごとに遅延特性が異なる可能性があるため、ディレイ33を各光検出部2ごとに設けて実施することにより、生体情報をより正確に得ることができる。
【0048】
さらに、コントローラ3は、算出した生体情報を表すデータを表示部4に出力する。表示部4は、例えば、液晶ディスプレイなどから構成されており、コントローラ3から供給されたデータに基づき、所定の態様によって生体情報を表示する。
【0049】
次に、上記のように構成した生体情報測定装置Sの作動について説明する。なお、以下の説明においては、被験者の脳内における血流変化を観察する場合を例示して説明する。
【0050】
生体の動脈および静脈を流れる血液(以下、それぞれ、動脈血および静脈血という)は、酸素と結合したヘモグロビン(以下、このヘモグロビンを酸素化ヘモグロビンという)と酸素と結合していないヘモグロビン(以下、このヘモグロビンを還元ヘモグロビンという)とを含んでいる。そして、動脈血および静脈血におけるこれら酸素化ヘモグロビンの量と還元ヘモグロビンの量は、生体の活動によって変化するものである。ここで、酸素化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンは近赤外光の吸光度合いが異なるため、酸素化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンによる近赤外光の吸光度合いの差を算出することによって、生体の活動に伴う変化すなわち血流変化を観察することができる。したがって、生体情報測定装置Sのコントローラ3は、被験者の脳内を伝播した被変調光の強度に対応する生体情報信号を用いて、後述するように、脳内における動脈血中と静脈血中の酸素化ヘモグロビン濃度長変化ΔCoxyおよび還元ヘモグロビン濃度長変化ΔCdeoxyを生体情報として算出する。
【0051】
このため、本実施形態において生体情報測定装置Sを作動させる際には、図8に示すように、被験者の頭部T(例えば、前頭周辺位置)に対して複数の光出射部1および複数の光検出部2を装着する。具体的には、被験者の頭部Tの表面にて、丸印で示す位置a〜f(以下、入射位置a〜fという)にそれぞれ光出射部1から出射された被変調光が入射される。また、脳内(例えば、前頭葉周辺)を反射しながら伝播し、四角印で示す位置A〜F(以下、受光位置A〜Fという)に到達した極微弱の被変調光(以下、この被変調光を反射光ともいう)がそれぞれの光検出部2によって検出される。そして、入射位置a〜fと受光位置A〜Fとは、例えば、互いにマトリックス状に配置される。なお、以下の説明においては、入射位置a〜fに被変調光を出射する各光出射部1を光出射部a〜fと示し、受光位置A〜Fに到達した反射光を検出する各光検出部2を光検出部A〜Fと示す。
【0052】
なお、以下の説明においては、入射位置a〜fに被変調光を出射する各光出射部1を光出射部a〜fと示し、受光位置A〜Fに到達した反射光を検出する各光検出部2を光検出部A〜Fと示す。また、図6は、生体情報測定装置Sのごく一部を示したものである。このため、入射位置と受光位置との一対一の組み合わせ、すなわち、チャンネル数については、図示した数に限定されるものではない。したがって、より多くの入射位置と受光位置との組み合わせ(例えば、1000チャンネル程度)をマトリックス状に配置して、脳内を伝播した反射光が有する生体情報信号を用いて生体情報を計測することもできる。また、チャンネルの配置に関しては、マトリックス状に限定されるものではなく、例えば、千鳥配置や、ある光出射部1を中心として周囲に光検出部2を配置する、もしくは、ある光検出部2を中心として周囲に光出射部1を複数配置するドーナツ状の配置など、種々の配置の採用が可能である。
【0053】
このように、被験者に対して光出射部1および光検出部2を装着すると、例えば、オペレータは、図示しない入力装置を操作して生体情報測定装置Sを作動させる。具体的に説明すると、コントローラ3の制御部31は、光出射部a〜fおよび光検出部A〜Fを作動させる。
【0054】
まず、光出射部a〜fによる光の出射について説明する。生体情報測定装置Sの作動が開始されると、コントローラ3の制御部31は、光出射部a〜fに対して、840nmと770nmの特定波長を有する被変調光を発生(発光)させるために、まず、ベースバンド出力器13を作動させる。これにより、2つの光発生装置10は、それぞれ、840nmと770nmの特定波長を有する被変調光の発光を同時に開始する。
【0055】
すなわち、光出射部a〜fの各光発生装置10においては、それぞれの拡散符号系列発生器11が、例えば、PN系列としてゴールド符号系列を発生する。そして、拡散符号系列発生器11は、発生したPN系列をコントローラ3の制御部31に対して出力するとともに、第1乗算器12に出力する。これにより、第1乗算器12は、ベースバンド出力器13から供給された直流信号(ベースバンド信号)とPN系列との積を取り、直流信号をスペクトラム拡散変調する。
【0056】
続いて、スペクトラム拡散変調された一次変調信号は、第2乗算器14に出力される。そして、第2乗算器14がクロックジェネレータ32から供給されるクロック周波数2fを用いて一次変調信号を変調した二次変調信号を光源ドライバ15に供給することにより、各光出射部a〜fの2つの光源16は、それぞれ、特定波長を有する被変調光を入射位置a〜fに出射する。
【0057】
ここで、上述したように、光源16においては、発光素子16bが接地されたシールドケース16a内に収容されており、被変調光がシールドケース16aに電気的に接続された出射窓16cを透過して出射される。これにより、発光素子16bが発光動作する際に発生する電磁波すなわち雑音電界(ノイズ)は、シールドケース16aの導電性により外部に漏えいすることが防止されるとともに、出射窓16cの透明導電膜16c2がシールドケース16aに電気的に接続されることにより外部に漏えいすることが防止される。すなわち、光源16は、特定波長を有する被変調光は入射位置a〜fに出射するものの、発光動作に伴って発生する雑音電界(ノイズ)が外部に漏えいすることは効果的に防止することができる。これにより、発生した雑音電界(ノイズ)が、例えば、生体(人体)を介して光検出部A〜Fに伝播し、受光器22による反射光の検出に悪影響を与えることを防止することができる。したがって、光検出部A〜Fによる反射光の検出精度を向上させることができ、その結果、生体情報の計測精度を向上させることができる。
【0058】
このように、光源16から入射位置a〜fのそれぞれに出射された被変調光は、被験者の頭部Tの頭蓋骨を透過して、例えば、前頭葉周辺に入射し、脳内を乱反射しながら、言い換えれば、減衰しながら伝播する。そして、各光出射部a〜fのそれぞれによって出射された2つの被変調光すなわち反射光は、ふたたび頭部Tの頭蓋骨を透過し、頭部Tの表面に到達する。
【0059】
次に、光検出部A〜Fによる反射光の検出について説明する。頭部Tの表面に到達したそれぞれの反射光は、受光位置A〜Fに対応する光検出部A〜Fにより検出される。すなわち、光検出部A〜Fにおいては、各受光器22が受光位置A〜Fのそれぞれに到達した反射光をすべて受光し、同受光した反射光に応じた電気的な検出信号(アナログ信号)を時系列的に増幅器23に出力する。そして、増幅器23は入力した電気的な検出信号を増幅し、LPF24は、この増幅された検出信号を通過させることにより周波数が2fよりも大きな信号成分をカットする。
【0060】
ここで、上述したように、受光器22においては、受光素子22bが接地されたシールドケース22a内に収容されており、反射光がシールドケース22aに電気的に接続された入射窓22cを透過して入射される。これにより、例えば、被験者の動作に伴い発生する筋電位による雑音電界(ノイズ)や光検出部A〜Fの外界に存在する雑音電界(ノイズ)は、シールドケース22aの導電性により内部への伝播が遮断されるとともに、入射窓22cの透明導電膜22c2がシールドケース22aに電気的に接続されることにより内部への伝播が遮断される。また、増幅器23は受光器22のシールドケース22a内に収容されるため、増幅器23に伝播する外部の雑音電界(ノイズ)も遮断される。
【0061】
また、受光器22から出力される電気的な検出信号(アナログ信号)は、低インピーダンスの増幅器23によって増幅され、信号出力端子23bを介して出力されるため、出力される電気的な検出信号(アナログ信号)に対して、外部に存在する雑音電界(ノイズ)が乗ることを防止することができる。さらに、増幅器23の信号出力端子23bには同軸ケーブルが接続されているため、信号出力端子23bを介してLPF24に出力される電気的な検出信号(アナログ信号)に対して、外部に存在する雑音電界(ノイズ)が乗ることを防止することができる。
【0062】
すなわち、受光器22においては、特定波長を有する反射光を受光位置A〜Fにて入射するものの、筋電位その他の電磁波すなわち雑音電界(ノイズ)が受光素子22bに伝播することを効果的に遮断することができる。また、増幅器23においては、筋電位その他の電磁波すなわち雑音電界(ノイズ)が伝播することが遮断されるとともに、増幅した電気的な検出信号(アナログ信号)を低インピーダンスでLPF24に出力することにより外部に存在する雑音電界(ノイズ)が電気的な検出信号(アナログ信号)に乗ることを防止することができる。これにより、雑音電界(ノイズ)が受光器22による反射光の検出および増幅器23による電気的な検出信号(アナログ信号)の出力に対して悪影響を与えることを防止することができる。したがって、光検出部A〜Fによる反射光の検出精度を向上させることができ、その結果、生体情報の計測精度を向上させることができる。
【0063】
続いて、ADコンバータ25がLPF24を通過した電気的な検出信号(アナログ信号)をサンプリング周波数4fでデジタル変換処理を行う。そして、同デジタル変換処理された電気的な検出信号(デジタル信号)は、第1乗算器26に出力され、第1乗算器26は入力した電気的な検出信号(デジタル信号)をクロック周波数2fを用いて復調し、同復調した検出信号すなわち一次復調信号を第2乗算器27に出力する。このように復調処理することにより、復調信号は、受光器22の有効検出帯域幅2fの全体を使った信号となる。言い換えれば、受光器22によって受光し得る被変調光が有する情報、例えば、前頭葉周辺を伝播した被変調光の減衰状態(すなわち、反射光の光強度)を欠落させることなく、正確にデジタル信号化した一次復調信号を第2乗算器27に出力することができる。
【0064】
ところで、受光位置A〜Fには、入射位置a〜fから出射されたそれぞれの被変調光が反射光として到達する。例えば、受光位置Aには、周辺に位置する入射位置a,b,c,dから出射された被変調光はいうまでもなく、入射位置e,fから出射された被変調光も反射光として到達する。このような状況において、コントローラ3の制御部31は、受光位置Aに到達した反射光のうち、例えば、入射位置a,b,c,dから出射された被変調光の反射光に対応する生体情報信号のみが得られるように、光検出部Aを制御する。この制御部31による制御を具体的に説明する。
【0065】
コントローラ3の制御部31は、上述したように、各光発生装置10の拡散符号系列発生器11からPN系列を取得する。一方、光検出部Aの第2乗算器27は、コントローラ3の制御部31を介して、光出射部a〜fの拡散符号系列発生器11によって発生されたPN系列を取得する。このとき、制御部31は、ディレイ33を介して、光出射部a,b,c,dの各拡散符号系列発生器11が発生した異なるPN系列を光検出部Aの対応する第2乗算器27に供給する。
【0066】
これにより、各第2乗算器27は、第1乗算器26から出力された一次復調信号とコントローラ3の制御部31から供給された対応するPN系列との積を取り、言い換えれば、スペクトラム逆拡散して得られた二次復調信号をそれぞれの累算器28に出力する。そして、各累算器28は、出力された二次復調信号をPN系列の1周期以上に渡り加算する。このように、出射された被変調光に対応する第2乗算器27と累算器28による積和処理により、二次復調信号と供給されたPN系列との相関を取ることができ、光出射部a,b,c,dのそれぞれから出射された複数の被変調光に対応した複数の生体情報信号を同時に出力することができる。
【0067】
すなわち、上述したように、PN系列に関しては、異なる系列が互いに直交する性質、言い換えれば、異なる系列同士の積の値が「0」となる性質を有している。このため、コントローラ3の制御部31がある第2乗算器27に対して、例えば、光出射部aの対応する拡散符号系列発生器11によるPN系列を供給した場合には、第1乗算器26から出力された一次復調信号のうち、光出射部aから出射された特定の被変調光に対応する一次復調信号以外の一次復調信号と光出射部aのPN系列との積の値は「0」となる。このため、累算器28によってPN系列の1周期以上に渡り加算される二次復調信号も「0」となり、相関は「0」となる。
【0068】
したがって、コントローラ3の制御部31から供給されたPN系列を有しない(または一致しない)二次復調信号、言い換えれば、生体情報信号は、選択的に排除され、特定の第2乗算器27および累算器28からは光出射部aから出射された特定の被変調光の反射光に対応する生体情報信号のみがコントローラ3の制御部31に出力される。同様に、コントローラ3の制御部31が他の第2乗算器27に対して、例えば、光出射部aの他方に対応する拡散符号系列発生器11によるPN系列を供給することによって、これらの第2乗算器27および累算器28からは光出射部aから出射された他方の特定の被変調光の反射光に対応する生体情報信号が同時にコントローラ3に出力される。さらに、同様にして、コントローラ3の制御部31から第2乗算器27に対して他の光出射部b,c,dのPN系列がそれぞれ供給された場合には、光出射部b,c,dから出射された複数の被変調光の反射光に対応するそれぞれの生体情報信号が同時にコントローラ3の制御部31に出力される。ここで、光検出部Aは光出射部a〜dによって出射された被変調光を検出するため、光検出部Aと光出射部a、光検出部Aと光出射部b、光検出部Aと光出射部c、光検出部Aと光出射部dの4つのチャンネルが形成されている。
【0069】
これにより、光検出部Aは、光出射部a〜fから出射された特定波長を有する被変調光のうち、光出射部a〜dによって出射された被変調光の反射光に対応する生体情報信号をコントローラ3の制御部31に出力する。なお、光検出部B〜Fについても、光検出部Aと同様にして、コントローラ3の制御部31によって制御されることにより、光出射部a〜fのうちの特定の光出射部から出射された被変調光の反射光に対応する生体情報信号を複数同時に出力する。
【0070】
このように光検出部A〜Fから生体情報信号が出力されると、コントローラ3の制御部31は、出力された生体情報信号を用いて、被検者の脳内(例えば、前頭葉周辺)における酸素化ヘモグロビン濃度長変化ΔCoxyおよび還元ヘモグロビン濃度長変化ΔCdeoxyを算出する。なお、以下に酸素化ヘモグロビン濃度長変化ΔCoxyおよび還元ヘモグロビン濃度長変化ΔCdeoxyの算出を具体的に説明するが、この算出方法自体については、本発明の特徴とする部分ではない。すなわち、酸素化ヘモグロビン濃度長変化ΔCoxyおよび還元ヘモグロビン濃度長変化ΔCdeoxyは生体情報測定装置Aによって計測可能な生体情報として例示的に示すものである。このため、酸素化ヘモグロビン濃度長変化ΔCoxyおよび還元ヘモグロビン濃度長変化ΔCdeoxyの算出方法については、従来から周知の種々の方法を採用することができ、以下に説明することは計算方法を限定することを意図するものではない。
【0071】
上述したように、動脈血および静脈血における酸素化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンは、異なる吸光特性によって近赤外光を吸光する。この酸素化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンにおける近赤外光の吸光特性は、一般的にランバート・ベール(Lambert-Beer)の法則に従って、下記式1で表すことができる。
−ln(R(λ)/Ro(λ))=εoxy(λ)×Coxy×d+εdeoxy(λ)×Cdeoxy×d+α(λ)+S(λ) …式1
【0072】
ただし、前記式1中のR(λ)、Ro(λ)およびdは、図9に概略的に示すように、それぞれ、波長λの検出光量、波長λの出射光量および検出領域の光路長を表すものである。また、前記式1中のεoxy(λ)は、波長λに対する酸素化ヘモグロビンの分子吸光係数を表し、εdeoxy(λ)は、波長λに対する還元ヘモグロビンの分子吸光係数を表すものである。また、前記式1中のCoxyは、酸素化ヘモグロビンの濃度を表し、Cdeoxyは、還元ヘモグロビンの濃度を表すものである。さらに、前記式1中のα(λ)は、血液中のヘモグロビン以外の色素(例えば、細胞中のミトコンドリアでの酸素の需供を反映するチトクロームaa33など)の光吸収による減衰量を表し、S(λ)は、生体組織の光散乱による減衰量を表すものである。
【0073】
このように、前記式1に従えば、840nmの波長を有する近赤外光と770nmの波長を有する近赤外光を用いた場合における酸素化ヘモグロビンの濃度Coxyと還元ヘモグロビンの濃度Cdeoxyを計算することができる。したがって、これら酸素化ヘモグロビンの濃度Coxyと還元ヘモグロビンの濃度Cdeoxyの比Coxy/Cdeoxyを計算することにより、血流変化を計算することができる。
【0074】
また、例えば、脳内に存在する毛細血管について、血流変化前の吸光特性を前記式1に従って表せば、血流変化後の吸光特性は下記式2に示すように表すことができる。
−ln(growthR(λ)/Ro(λ))=εoxy(λ)×growthCoxy×d+εdeoxy(λ)×growthCdeoxy×d+growthα(λ)+S(λ) …式2
ただし、前記式2中のgrowthR(λ)、growthCoxy、growthCdeoxyおよびgrowthα(λ)は、心拍動に伴う血流変化によって増加または減少変化した値を表すものであって、それぞれ、血流変化後の検出光量、血流変化後の酸素化ヘモグロビンの濃度、血流変化後の還元ヘモグロビンの濃度および血流変化後のヘモグロビン以外の色素の光吸収による減衰量を表すものである。
【0075】
ここで、血液中のヘモグロビンの光吸収量は、ヘモグロビン以外の色素の光吸収量に比して極めて大きいため、前記式1中のα(λ)をα(λ)=growthα(λ)とすることができる。これにより、前記式2から前記式1を差し引けば、下記式3が成立する。
−ln(growthR(λ)/R(λ))=εoxy(λ)×ΔCoxy+εdeoxy(λ)×ΔCdeoxy …式3
ここで、前記式3中のΔCoxyおよびΔCdeoxyは、それぞれ、下記式4および式5によって表されるものである。
ΔCoxy=(growthCoxy−Coxy)×d …式4
ΔCdeoxy=(growthCdeoxy−Cdeoxy)×d …式5
【0076】
そして、図10にてヘモグロビンの光吸光スペクトルを概略的に示すように、吸光特性のコントラスト比が明確となる特定波長としてλ=770nmや840nmの近赤外光を用いて計測した結果に基づいて前記式3を解くことにより、ディメンジョンとして光路長を含む酸素化ヘモグロビン濃度長変化ΔCoxyおよび還元ヘモグロビン濃度長変化ΔCdeoxy、あるいは、トータルヘモグロビン濃度長変化(ΔCoxy+ΔCdeoxy)を相対的に計算することができる。
【0077】
そして、コントローラ3の制御部31は、算出した酸素化ヘモグロビン濃度長変化ΔCoxyおよび還元ヘモグロビン濃度長変化ΔCdeoxyすなわち生体情報を算出し、この算出した生体情報を表示部4に出力する。そして、表示部4は、例えば、2次元的または3次元的な態様により、脳内の血流変化を表示する。
【0078】
以上の説明からも理解できるように、生体情報測定装置Sにおいては、生体内部を伝播することによって減衰した極微弱な反射光(被変調光)であっても、光検出部2の受光器22は、シールドケース22aおよび入射窓22cによって電磁シールドされるため、例えば、生体に発生する筋電位などによる雑音電界(ノイズ)の影響を排除して、反射光(被変調光)を検出することができる。また、増幅器23が受光器22のシールドケース22a内に収容されるため、増幅器の伝播する雑音電界(ノイズ)も遮断される。さらに、増幅器23はオペアンプを備えて低インピーダンスにより電気的な検出信号(アナログ信号)を出力することができる。このため、出力される電気的な検出信号(アナログ信号)に対して、外部に存在する雑音電界(ノイズ)が乗ることを防止して、良好な信号出力性能(良好なS/N比)を確保することができる。これにより、コントローラ3の制御部31は極めて正確に生体情報を計測(算出)することができる。
【0079】
また、生体情報測定装置Sにおいては、光出射部1の光源16もシールドケース16aおよび出射窓16cによって電磁シールドすることができる。したがって、光源16の発光素子16bの作動に伴って発生する雑音電界(ノイズ)の放出(放射)を防止することができ、光検出部2の受光器22による極微弱な反射光の検出に対する影響を大幅に低減することができる。これによっても、コントローラ3の制御部31は極めて正確に生体情報を計測(算出)することができる。
【0080】
a.第1変形例
上記実施形態においては、光出射部1が2つの光発生装置10から構成され、各光発生装置10がそれぞれ1つの光源16を備えて、2つの特定波長を有する被変調光を出射するように実施した。この場合、1つのシールドケース16a内に複数の発光素子16bを収容し、1つの光源16から複数の特定波長を有する被変調光を出射するように実施することも可能である。具体的に例示して説明すると、例えば、1つの光源16から2つの特定波長を有する被変調光を出射する場合には、図11に示すように、シールドケース16a内に2つの発光素子16bを収容する。ここで、2つの発光素子16bを収容する場合には、図8に示すように、各発光素子16bに接続されるアノード電極16b1を共通の電極とし、各発光素子16bに接続されるカソード電極16b2はそれぞれ別個に接続するようにするとよい。なお、この場合においても、上記実施形態と同様に、シールドケース16aはシールド電極16a1を介して電気的に設置される。
【0081】
このように、1つの光源16から複数の特定波長を有する被変調光を出射することにより、測定対象に応じて出射すべき被変調光の数(すなわち出射すべき特定波長の数)が増加させる必要がある場合であっても、光出射部1が有する光発生装置10の数を少なくすることができる。その結果、光出射部1自体を小型化することができ、測定部位(例えば、被験者の頭部T)に対して光出射部1を密に配置することができる。これにより、生体情報を計測する際の解像度を上げて計測精度を向上させることができ、より正確な生体情報を得ることができる。
【0082】
b.第2変形例
上記実施形態においては、光検出部2における受光器22の入射窓22cを透明基材22c1と透明導電膜22c2とから構成して実施した。この場合、より反射光の検出精度を向上させるために、図12および図13に示すように、光学フィルタ22c3を設けて実施することも可能である。ここで、光学フィルタ22c3は、反射光の特定波長のみを透過させる光学的な特性を有するものであり、例えば、図12に示すカラーフィルタや、短波長の光を除去(カット)するカットフィルタ、あるいは、図13に示す異なる屈折率を有する誘電体層を積層した帯域透過フィルタなどを採用することができる。
【0083】
このように、受光器22の入射窓22cに光学フィルタ22c3を設けることにより、計測環境に存在する外光(例えば、照明の光など)が入射窓22cを介して受光素子22bに入射することを確実に遮断することができる。その結果、外光の入射に伴うノイズ(雑音)成分を除去することができて、反射光の光強度に対応する生体情報信号のS/N比を高めることができる。したがって、計測精度を向上させることができ、より正確な生体情報を得ることができる。
【0084】
c.第3変形例
上記実施形態においては、光検出部2における受光器22の入射窓22cを、平板状の透明基材22c1と、この基材22c1の少なくとも一面側に形成された透明導電膜22c2とから構成して実施した。この場合、より反射光の検出精度を高めるために、図14に示すように、透明基材22c1をレンズ形状に形成し、このレンズ形状に形成した透明基材22c1の少なくとも一面側に透明導電膜22c2を形成して実施することも可能である。なお、図14においては、レンズ形状に形成した透明基材22c1の他面側に光学フィルタ22c3が形成されている。このように、受光器22の入射窓22cをレンズ形状とすることにより、効率よく極微弱な反射光を集光したり平行光化することができるため、受光素子22bに入射する反射光の光強度を高めることができる。その結果、反射光の光強度に対応する生体情報信号のS/N比を高めることができて計測精度を向上させることができ、より正確な生体情報を得ることができる。
【0085】
d.第4変形例
上記実施形態においては、光検出部2の受光器22がシールドケース22aを備えており、このシールドケース22a内に受光素子22bと増幅器23を一体的に収容して実施した。この場合、受光器22と増幅器23とを別体にして実施することも可能である。この場合、図15に示すように、電気的に互いに接続された受光器22と増幅器23とに対して影響を及ぼす外界の電磁波を遮断するために、光検出部2は、受光器22と増幅器23とを収容して電磁シールドする電磁シールドケース29を備えている。なお、この場合、受光器22の入射窓22cにおいては、透明導電膜22c2の形成を省略することができる。
【0086】
電磁シールドケース29は、本体部29aと入射窓29bを備えている。本体部29aは、外界の電磁波を遮断するために金属材料または導電性を有する樹脂材料から形成されて、増幅器23のグランド端子23cを介して接地されている。入射窓29bは、受光器22に対して反射光を光学的に透過するものであり、透明導電膜29b1、誘電体多層フィルタ29b2およびカバーガラス29b3とから構成される。透明導電膜29b1は、例えば、上述したITO,ZnO,NbOのバルク材料を薄片化して形成される。そして、透明導電膜29b1は、導電性を有する本体部29aに対して、例えば、導電性接着剤を介して電気的に接続されている。誘電多層フィルタ29b2は、異なる屈折率を有する誘電体層を積層した帯域透過フィルタであり、透明導電膜29b1上に積層される。カバーガラス29b3は、例えば、石英(コルツ)や光学的に透明な透明プラスチックなどから形成されて、誘電多層フィルタ29b2上に積層される。
【0087】
このように、電磁シールドケース29を設け、このケース29内に受光器22および増幅器23を収容する場合であっても、上記実施形態と同様に、特定波長を有する反射光を受光器22が受光することができるとともに、外界からの電磁波を遮断することができる。また、このように電磁シールドケース29を設けることにより、受光器22として、一般に市場に提供されている汎用の受光器(フォトダイオードやアバランシェフォトダイオードなど)を採用することができるため、製造コストを低減することも可能となる。
【0088】
本発明の実施にあたっては、上記実施形態および上記各変形例に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。
【0089】
例えば、上記実施形態および各変形例においては、増幅器23を一体的に収容した受光器22を、生体中を伝播した極微弱な反射光を検出して電気的な検出信号を低インピーダンス化して出力する生体情報測定装置Sに適用して実施した。このように、増幅器23を一体的に収容した受光器22は、外界の電磁波を遮断して極微弱の光を精度よく検出して良好な検出信号を出力することができる。このため、増幅器23を一体的に収容した受光器22を他の計測対象や他の計測環境での計測に利用して、極微弱な光を検出することはもちろん可能である。
【0090】
また、上記実施形態および各変形例においては、光が生体内を伝播することによって大きく減衰することおよび生体情報の計測解像度を高めることを考慮して、ベースバンド信号をスペクトラム拡散およびクロック周波数2fで変調した二次変調信号に基づいて各光発生装置10の光源16の発光タイミングを同時にして、光出射部1が被変調光を発光するように実施した。これに対して、計測対象や計測環境に応じて、各光発生装置10における光源16の発光タイミングを所定の短い時間間隔で異ならせて、近赤外光などの光をパルス発光するように実施することも可能である。
【0091】
この場合、光出射部1においては、上記実施形態および各変形例における光出射部1の光発生装置10から拡散符号系列発生器11、第1乗算器12および第2乗算器14が省略されて、ベースバンド出力器13、光源ドライバ15および光源16から構成される。そして、コントローラ3の制御部31は、所定のタイミングによりベースバンド出力器13を作動させることにより、光源ドライバ15が光源16を駆動(発光)させる。
【0092】
また、この場合においては、光出射部1の変更に伴って、光検出部2も変更される。すなわち、光検出部2においては、上記実施形態および各変形例における光検出部2の第1乗算器26、第2乗算器27および累算器28が省略されて、受光器22、増幅器23、LPF24およびADコンバータ25から構成される。このように、光源16の発光タイミングを所定の短い時間間隔で異ならせて、近赤外光などの光をパルス発光するように実施した場合であっても、上記実施形態および各変形例と同様の効果が期待できる。
【0093】
また、上記実施形態および各変形例においては、光出射部1がベースバンド信号をスペクトラム拡散およびクロック周波数2fで変調した二次変調信号を生成し、2つの被変調光が互いに干渉することなく出射されるように実施した。これに対して、ベースバンド出力器13からのベースバンド信号を周波数分割多重(Frequency Division Multiplexer:FDM)変調することによって変調信号を生成し、2つの被変調光の干渉を防止するように実施することも可能である。
【0094】
この場合においては、上記実施形態および各変形例における光出射部1の拡散符号系列発生器11、第1乗算器12および第2乗算器14が省略されて、周波数分割多重変調器が設けられる。また、この場合においては、上記実施形態および各変形例における光検出部2の第1乗算器26、第2乗算器27および累算器28が省略されて、周波数分割多重復調器が設けられる。なお、周波数分割多重変調器および周波数分割多重復調器の作動については、従来から広く知られている方法を適用して変調処理および復調処理が実施可能であるため、その詳細な説明については省略する。そして、このように、周波数分割多重変調することによって変調信号を生成して被変調光を発光するように実施した場合であっても、上記実施形態および各変形例と同様の効果が期待できる。
【0095】
また、上記実施形態および各変形例においては、光出射部1の光源16がスペクトラム拡散変調された二次変調信号に基づいて同時に発光するように実施した。しかし、スペクトラム拡散変調された二次変調信号に基づいて、光源ドライバ15が光源16を順次発光させるように実施可能であることはいうまでもない。
【0096】
さらに、上記実施形態および各変形例においては、生体内の血液の吸光特性を利用して、生体情報測定装置Sが被験者の脳内における酸素化ヘモグロビン濃度長変化ΔCoxyおよび還元ヘモグロビン濃度長変化ΔCdeoxyを生体情報として計測(算出)し、脳内の血流変化を観察するように実施した。しかしながら、光出射部1を構成する光発生装置10が発生する近赤外光の特定波長を適宜変更することにより、他の吸光特性、例えば、生体の密度、水分や、血中のグルコース濃度(血糖値)、脂質量、あるいは、脈拍などの変化に伴う吸光特性、例えば、酸素飽和度などを計測可能であることはいうまでもない。このように、他の吸光特性を利用する場合であっても、本発明に係る生体情報測定装置Sを用いることにより、生体情報をより正確に計測(算出)することができる。
【符号の説明】
【0097】
1…光出射部、10…光発生装置、11…拡散符号系列発生器、12…第1乗算器、13…ベースバンド出力器、14…第2乗算器、15…光源ドライバ、16…光源、2…光検出部、22…受光器、22a…シールドケース、22b…受光素子、22c…入射窓、22c1…透明基材、22c2…透明導電膜、23…増幅器、23a…オペアンプ、24…LPF、25…ADコンバータ、26…第1乗算器、27…第2乗算器、28…累算器、29…電磁シールドケース、3…コントローラ、31…制御部、32…クロックジェネレータ、33…ディレイ、4…表示部、S…生体情報測定装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を検出する光検出装置であって、
導電性を有して接地された導電性ケースと、
検出する光の波長に対する光学的透過性を有するとともに電気伝導性を有して前記導電性ケースに電気的に接続されて光を入射する窓部と、
前記導電性ケース内に収容されて前記窓部から入射した光を受光して電気的な検出信号に変換する光電変換素子と、
前記導電性ケース内に収容されて前記光電変換素子から出力される電気的な検出信号を増幅するするとともに前記光電変換素子の出力インピーダンスよりも小さな出力インピーダンスにより前記増幅した電気的な検出信号を出力する増幅回路とを備えたことを特徴とする光検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載した光検出装置において、
前記窓部を、
検出する光の波長に対する光学的透過性を有する透明基材と、
この透明基材の少なくとも一面側に積層されて、測定する波長に対する光学的透過性を有するとともに電気伝導性を有する透明導電膜とで構成したことを特徴とする光検出装置。
【請求項3】
請求項2に記載した光検出装置において、
前記透明導電膜を、
検出する光の波長を選択的に透過させる帯域透過性を有する少なくとも1層以上の誘電体膜と併せて、前記透明基材の少なくとも一面側に積層したことを特徴とする光検出装置。
【請求項4】
請求項2に記載した光検出装置において、
前記窓部を構成する透明導電膜は、
イットリウム−錫酸化物(ITO),亜鉛酸化物(ZnO)またはニオブ酸化物(NbO)を主成分として形成されることを特徴とする光検出装置。
【請求項5】
請求項1に記載した光検出装置において、
前記増幅回路は、
入力インピーダンスの大きなオペアンプを備えていることを特徴とする光検出装置。
【請求項6】
請求項1に記載した光検出装置において、
前記光電変換素子は、
フォトダイオードまたはアバランシェフォトダイオードであることを特徴とする光検出装置。
【請求項7】
生体内部を伝播する光を検出し、この検出した光の有する生体情報を測定する生体情報測定装置において、
少なくとも2つの光源を有していて、所定の駆動信号に基づいて前記光源を発光させて異なる特定波長を有する近赤外光を生体内部に出射する光出射部と、
導電性を有して接地された導電性ケースと、前記光出射部から出射される特定波長に対する光学的透過性を有するとともに電気伝導性を有して前記導電性ケースに電気的に接続されて光を入射する窓部と、前記導電性ケース内に収容されて前記窓部から入射した光を受光して電気的な検出信号に変換する光電変換素子と、前記導電性ケース内に収容されて前記光電変換素子から出力される電気的な検出信号を増幅するするとともに前記光電変換素子の出力インピーダンスよりも小さな出力インピーダンスにより前記増幅した電気的な検出信号を出力する増幅回路とを備えて、前記光出射部から出射されて生体内部を伝播した近赤外光を受光して検出するとともに同検出した近赤外光の光強度に対応して生体の代謝に関連する電気的な検出信号を出力する光検出部と、
前記光出射部と前記光検出部の作動を統括的に制御し、前記光検出部から出力された電気的な検出信号に基づいて生体情報を算出する制御部とを備えたことを特徴とする生体情報測定装置。
【請求項8】
請求項7に記載した生体情報測定装置において、
前記窓部を、
前記特定波長に対する光学的透過性を有する透明基材と、
この透明基材の少なくとも一面側に積層されて、前記特定波長に対する光学的透過性を有するとともに電気伝導性を有する透明導電膜とで構成したことを特徴とする生体情報測定装置。
【請求項9】
請求項8に記載した生体情報測定装置において、
前記透明導電膜を、
前記特定波長を選択的に透過させる帯域透過性を有する少なくとも1層以上の誘電体膜と併せて、前記透明基材の少なくとも一面側に積層したことを特徴とする生体情報測定装置。
【請求項10】
請求項8に記載した生体情報測定装置において、
前記窓部を構成する透明導電膜は、
イットリウム−錫酸化物(ITO),亜鉛酸化物(ZnO)またはニオブ酸化物(NbO)を主成分として形成されることを特徴とする生体情報測定装置。
【請求項11】
請求項7に記載した生体情報測定装置において、
前記増幅回路は、
入力インピーダンスの大きなオペアンプを備えていることを特徴とする生体情報測定装置。
【請求項12】
請求項7に記載した生体情報測定装置において、
前記光電変換素子は、
フォトダイオードまたはアバランシェフォトダイオードであることを特徴とする生体情報測定装置。
【請求項13】
請求項7に記載した生体情報測定装置において、
前記光源が、
導電性を有して接地された導電性ケースと、
前記特定波長に対する光学的透過性を有するとともに電気伝導性を有して前記導電性ケースに電気的に接続されて光を透過する窓部と、
前記導電性ケース内に収容されて前記窓部から前記特定波長を有する近赤外光を出射する発光素子とを有することを特徴とする生体情報測定装置。
【請求項14】
請求項13に記載した生体情報測定装置において、
前記導電性ケース内に前記発光素子を複数収容したことを特徴とする生体情報測定装置。
【請求項15】
請求項13に記載した生体情報測定装置において、
前記窓部を、
前記特定波長に対する光学的透過性を有する透明基材と、
この透明基材の少なくとも一面側に積層されて、前記特定波長に対する光学的透過性を有するとともに電気伝導性を有する透明導電膜とで構成したことを特徴とする生体情報測定装置。
【請求項16】
請求項15に記載した生体情報測定装置において、
前記窓部を構成する透明導電膜は、
イットリウム−錫酸化物(ITO),亜鉛酸化物(ZnO)またはニオブ酸化物(NbO)を主成分として形成されることを特徴とする生体情報測定装置。
【請求項17】
請求項13に記載した生体情報測定装置において、
前記発光素子は、
半導体レーザまたは発光ダイオードであることを特徴とする生体情報測定装置。
【請求項18】
請求項7に記載した生体情報測定装置において、
前記制御部が算出する前記生体情報は、
前記生体の血管中における酸素と結合した酸素化ヘモグロビン濃度長変化および酸素と結合していない還元ヘモグロビン濃度長変化を表す情報であることを特徴とする生体情報測定装置。
【請求項19】
請求項7に記載した生体情報測定装置において、
前記光出射部は、生体の頭部に前記特定波長を有する近赤外光を出射し、
前記光検出部は、前記生体の頭部を伝播した近赤外光を受光して前記電気的な検出信号を出力し、
前記制御部は、前記生体の脳内における活動に関する生体情報を算出することを特徴とする生体情報測定装置。
【請求項20】
請求項7に記載した生体情報測定装置において、
前記光出射部は、
前記所定の駆動信号をスペクトラム拡散変調するスペクトラム拡散変調手段を有し、
前記光検出部は、
前記電気的な検出信号をスペクトラム逆拡散して復調する復調手段を有することを特徴とする生体情報測定装置。
【請求項21】
請求項20に記載した生体情報測定装置において、
前記光出射部のスペクトラム拡散変調手段は、
前記所定の駆動信号をスペクトラム拡散変調するための拡散符号系列を第1の周波数により生成する拡散符号系列生成手段と、同拡散符号系列生成手段によって生成された拡散符号系列を用いて前記所定の駆動信号をスペクトラム拡散して一次変調信号を出力する第1変調手段と、前記第1の周波数の2倍となる第2の周波数を用いて前記第1変調手段によって出力された一次変調信号を変調して二次変調信号を出力する第2変調手段とを有し、
前記光検出部の復調手段は、
前記電気的な検出信号の信号帯域のうち、直流および直流近傍の周波数における信号成分および前記第2の周波数以上の信号成分を除去して出力する信号成分除去手段と、前記近赤外光が前記生体内を伝播することに伴う遅延を加味した前記第2の周波数の2倍となる第3の周波数を用いて前記信号成分除去手段によって出力された電気的な検出信号をデジタル信号に変換する信号変換手段と、前記近赤外光を前記生体内で伝播させることに伴う遅延を加味した前記第2の周波数を用いて前記信号変換手段によって変換されたデジタル信号を復調して一次復調信号を出力する第1復調手段と、前記近赤外光を前記生体内で伝播させることに伴う遅延を加味した前記拡散符号系列を用いて前記一次復調信号をスペクトラム逆拡散して二次復調信号を出力する第2復調手段とを有することを特徴とする生体情報測定装置。
【請求項22】
請求項21に記載した生体情報測定装置において、
前記第2の周波数を、前記光検出部が前記生体内を伝播した近赤外光を有効に検出可能な有効検出帯域幅と一致させたことを特徴とする生体情報測定装置。
【請求項23】
請求項7に記載した生体情報測定装置において、
前記光出射部は、
所定の時間間隔を有して供給される前記所定の駆動信号を取得し、前記各光源が前記取得した所定の駆動信号に基づいて順次発光して、異なる特定波長を有する近赤外光を前記所定の時間間隔を有して順次出射することを特徴とする生体情報測定装置。
【請求項24】
請求項7に記載した生体情報測定装置において、
前記光出射部は、
前記所定の駆動信号を周波数分割多重変調して変調信号を生成する周波数分割多重変調手段を有し、
前記光検出部は、
前記電気的な検出信号を周波数分割多重復調する復調手段を有することを特徴とする生体情報測定装置。
【請求項1】
光を検出する光検出装置であって、
導電性を有して接地された導電性ケースと、
検出する光の波長に対する光学的透過性を有するとともに電気伝導性を有して前記導電性ケースに電気的に接続されて光を入射する窓部と、
前記導電性ケース内に収容されて前記窓部から入射した光を受光して電気的な検出信号に変換する光電変換素子と、
前記導電性ケース内に収容されて前記光電変換素子から出力される電気的な検出信号を増幅するするとともに前記光電変換素子の出力インピーダンスよりも小さな出力インピーダンスにより前記増幅した電気的な検出信号を出力する増幅回路とを備えたことを特徴とする光検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載した光検出装置において、
前記窓部を、
検出する光の波長に対する光学的透過性を有する透明基材と、
この透明基材の少なくとも一面側に積層されて、測定する波長に対する光学的透過性を有するとともに電気伝導性を有する透明導電膜とで構成したことを特徴とする光検出装置。
【請求項3】
請求項2に記載した光検出装置において、
前記透明導電膜を、
検出する光の波長を選択的に透過させる帯域透過性を有する少なくとも1層以上の誘電体膜と併せて、前記透明基材の少なくとも一面側に積層したことを特徴とする光検出装置。
【請求項4】
請求項2に記載した光検出装置において、
前記窓部を構成する透明導電膜は、
イットリウム−錫酸化物(ITO),亜鉛酸化物(ZnO)またはニオブ酸化物(NbO)を主成分として形成されることを特徴とする光検出装置。
【請求項5】
請求項1に記載した光検出装置において、
前記増幅回路は、
入力インピーダンスの大きなオペアンプを備えていることを特徴とする光検出装置。
【請求項6】
請求項1に記載した光検出装置において、
前記光電変換素子は、
フォトダイオードまたはアバランシェフォトダイオードであることを特徴とする光検出装置。
【請求項7】
生体内部を伝播する光を検出し、この検出した光の有する生体情報を測定する生体情報測定装置において、
少なくとも2つの光源を有していて、所定の駆動信号に基づいて前記光源を発光させて異なる特定波長を有する近赤外光を生体内部に出射する光出射部と、
導電性を有して接地された導電性ケースと、前記光出射部から出射される特定波長に対する光学的透過性を有するとともに電気伝導性を有して前記導電性ケースに電気的に接続されて光を入射する窓部と、前記導電性ケース内に収容されて前記窓部から入射した光を受光して電気的な検出信号に変換する光電変換素子と、前記導電性ケース内に収容されて前記光電変換素子から出力される電気的な検出信号を増幅するするとともに前記光電変換素子の出力インピーダンスよりも小さな出力インピーダンスにより前記増幅した電気的な検出信号を出力する増幅回路とを備えて、前記光出射部から出射されて生体内部を伝播した近赤外光を受光して検出するとともに同検出した近赤外光の光強度に対応して生体の代謝に関連する電気的な検出信号を出力する光検出部と、
前記光出射部と前記光検出部の作動を統括的に制御し、前記光検出部から出力された電気的な検出信号に基づいて生体情報を算出する制御部とを備えたことを特徴とする生体情報測定装置。
【請求項8】
請求項7に記載した生体情報測定装置において、
前記窓部を、
前記特定波長に対する光学的透過性を有する透明基材と、
この透明基材の少なくとも一面側に積層されて、前記特定波長に対する光学的透過性を有するとともに電気伝導性を有する透明導電膜とで構成したことを特徴とする生体情報測定装置。
【請求項9】
請求項8に記載した生体情報測定装置において、
前記透明導電膜を、
前記特定波長を選択的に透過させる帯域透過性を有する少なくとも1層以上の誘電体膜と併せて、前記透明基材の少なくとも一面側に積層したことを特徴とする生体情報測定装置。
【請求項10】
請求項8に記載した生体情報測定装置において、
前記窓部を構成する透明導電膜は、
イットリウム−錫酸化物(ITO),亜鉛酸化物(ZnO)またはニオブ酸化物(NbO)を主成分として形成されることを特徴とする生体情報測定装置。
【請求項11】
請求項7に記載した生体情報測定装置において、
前記増幅回路は、
入力インピーダンスの大きなオペアンプを備えていることを特徴とする生体情報測定装置。
【請求項12】
請求項7に記載した生体情報測定装置において、
前記光電変換素子は、
フォトダイオードまたはアバランシェフォトダイオードであることを特徴とする生体情報測定装置。
【請求項13】
請求項7に記載した生体情報測定装置において、
前記光源が、
導電性を有して接地された導電性ケースと、
前記特定波長に対する光学的透過性を有するとともに電気伝導性を有して前記導電性ケースに電気的に接続されて光を透過する窓部と、
前記導電性ケース内に収容されて前記窓部から前記特定波長を有する近赤外光を出射する発光素子とを有することを特徴とする生体情報測定装置。
【請求項14】
請求項13に記載した生体情報測定装置において、
前記導電性ケース内に前記発光素子を複数収容したことを特徴とする生体情報測定装置。
【請求項15】
請求項13に記載した生体情報測定装置において、
前記窓部を、
前記特定波長に対する光学的透過性を有する透明基材と、
この透明基材の少なくとも一面側に積層されて、前記特定波長に対する光学的透過性を有するとともに電気伝導性を有する透明導電膜とで構成したことを特徴とする生体情報測定装置。
【請求項16】
請求項15に記載した生体情報測定装置において、
前記窓部を構成する透明導電膜は、
イットリウム−錫酸化物(ITO),亜鉛酸化物(ZnO)またはニオブ酸化物(NbO)を主成分として形成されることを特徴とする生体情報測定装置。
【請求項17】
請求項13に記載した生体情報測定装置において、
前記発光素子は、
半導体レーザまたは発光ダイオードであることを特徴とする生体情報測定装置。
【請求項18】
請求項7に記載した生体情報測定装置において、
前記制御部が算出する前記生体情報は、
前記生体の血管中における酸素と結合した酸素化ヘモグロビン濃度長変化および酸素と結合していない還元ヘモグロビン濃度長変化を表す情報であることを特徴とする生体情報測定装置。
【請求項19】
請求項7に記載した生体情報測定装置において、
前記光出射部は、生体の頭部に前記特定波長を有する近赤外光を出射し、
前記光検出部は、前記生体の頭部を伝播した近赤外光を受光して前記電気的な検出信号を出力し、
前記制御部は、前記生体の脳内における活動に関する生体情報を算出することを特徴とする生体情報測定装置。
【請求項20】
請求項7に記載した生体情報測定装置において、
前記光出射部は、
前記所定の駆動信号をスペクトラム拡散変調するスペクトラム拡散変調手段を有し、
前記光検出部は、
前記電気的な検出信号をスペクトラム逆拡散して復調する復調手段を有することを特徴とする生体情報測定装置。
【請求項21】
請求項20に記載した生体情報測定装置において、
前記光出射部のスペクトラム拡散変調手段は、
前記所定の駆動信号をスペクトラム拡散変調するための拡散符号系列を第1の周波数により生成する拡散符号系列生成手段と、同拡散符号系列生成手段によって生成された拡散符号系列を用いて前記所定の駆動信号をスペクトラム拡散して一次変調信号を出力する第1変調手段と、前記第1の周波数の2倍となる第2の周波数を用いて前記第1変調手段によって出力された一次変調信号を変調して二次変調信号を出力する第2変調手段とを有し、
前記光検出部の復調手段は、
前記電気的な検出信号の信号帯域のうち、直流および直流近傍の周波数における信号成分および前記第2の周波数以上の信号成分を除去して出力する信号成分除去手段と、前記近赤外光が前記生体内を伝播することに伴う遅延を加味した前記第2の周波数の2倍となる第3の周波数を用いて前記信号成分除去手段によって出力された電気的な検出信号をデジタル信号に変換する信号変換手段と、前記近赤外光を前記生体内で伝播させることに伴う遅延を加味した前記第2の周波数を用いて前記信号変換手段によって変換されたデジタル信号を復調して一次復調信号を出力する第1復調手段と、前記近赤外光を前記生体内で伝播させることに伴う遅延を加味した前記拡散符号系列を用いて前記一次復調信号をスペクトラム逆拡散して二次復調信号を出力する第2復調手段とを有することを特徴とする生体情報測定装置。
【請求項22】
請求項21に記載した生体情報測定装置において、
前記第2の周波数を、前記光検出部が前記生体内を伝播した近赤外光を有効に検出可能な有効検出帯域幅と一致させたことを特徴とする生体情報測定装置。
【請求項23】
請求項7に記載した生体情報測定装置において、
前記光出射部は、
所定の時間間隔を有して供給される前記所定の駆動信号を取得し、前記各光源が前記取得した所定の駆動信号に基づいて順次発光して、異なる特定波長を有する近赤外光を前記所定の時間間隔を有して順次出射することを特徴とする生体情報測定装置。
【請求項24】
請求項7に記載した生体情報測定装置において、
前記光出射部は、
前記所定の駆動信号を周波数分割多重変調して変調信号を生成する周波数分割多重変調手段を有し、
前記光検出部は、
前記電気的な検出信号を周波数分割多重復調する復調手段を有することを特徴とする生体情報測定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−276407(P2010−276407A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−127695(P2009−127695)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【出願人】(501222910)株式会社スペクトラテック (12)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【出願人】(501222910)株式会社スペクトラテック (12)
【Fターム(参考)】
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