説明

光検知素子

【課題】 光検知素子の検知効率を高めることが望まれている。
【解決手段】 基板の上に、複数の量子ドットを含む量子ドット層が配置されている。量子ドット層の上に、再入射構造物が配置されている。再入射構造物は、量子ドット層を通過した光を反射して量子ドット層に再入射させると共に、第1の方向の偏光成分を、第1の方向とは異なる第2の方向の偏光成分に変換して量子ドット層に再入射させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、量子ドットを用いた光検知素子に関する。
【背景技術】
【0002】
量子ドット型光検知素子は、量子ドットを積層した量子ドット層と、量子ドット層を挟む半導体電極層とにより構成される。量子ドット層は、例えばAlGaAs層と、InAs量子ドットとを含む。InAs量子ドットを井戸とし、AlGaAs層をポテンシャル障壁として電子を3次元方向に閉じ込める量子井戸構造が、伝導帯に形成される。1つの量子井戸内に、離散的に分布する複数の量子準位が存在する。ある2つの量子準位の差に相当するエネルギを持つ光、例えば赤外線が入射すると、低エネルギ側の量子準位(遷移元準位)の電子が、赤外線を吸収し、高エネルギ側の量子準位(遷移先準位)に遷移する。この遷移は、サブバンド間遷移と呼ばれる。
【0003】
量子ドット層を挟む電極層の間に電圧を印加しておくと、遷移先準位に励起された電子が、例えばトンネル過程、熱励起等によってAlGaAs層の伝導帯内へ放出される。AlGaAs層の伝導帯から半導体電極層に到達した電子を電流として捉えることにより、赤外線を検知することができる。
【0004】
キャリアを2次元面内に閉じ込める(厚さ方向に閉じ込める)多重量子井戸(MQW)層の上に回折格子を配置した赤外線検知器が提案されている。MQW層は、赤外線のうちエピタキシャル面に垂直な電界の成分のみを吸収する。MQW層に垂直入射した赤外線は、そのままではMQW層で吸収されない。赤外線が、回折格子によって回折されて進行方向を変えることにより、MQW層で吸収される偏光成分を持つようになる。
【0005】
一方、量子ドット層は、エピタキシャル面に平行な電界成分をもつ光を吸収することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−231364号公報
【特許文献2】特開2000−156513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
光検知素子の検知効率を高めることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一観点によると、
基板の上に配置され、複数の量子ドットを含む量子ドット層と、
前記量子ドット層の上に配置され、前記量子ドット層を通過した光を反射して前記量子ドット層に再入射させると共に、第1の方向の偏光成分を、前記第1の方向とは異なる第2の方向の偏光成分に変換して前記量子ドット層に再入射させる再入射構造物と
を有する光検知素子が提供される。
【発明の効果】
【0009】
第1の方向の偏光成分を、第1の方向とは異なる第2の方向の偏光成分に変換して量子ドット層に再入射させることにより、検知効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1による光検知素子の斜視図である。
【図2】実施例1による光検知素子内を通過する光の経路及び偏光方向を示す平面図である。
【図3】実施例1による光検知素子内を通過する光の経路及び偏光方向を示す平面図である。
【図4】(4A)は、実施例1による光検知素子の量子ドットの量子準位を示す線図であり、(4B)は、波長、偏光方向、及び吸収確率の関係を示す図表である。
【図5】(5A)は、実施例1による光検知素子の吸収光量を、入射領域、偏光方向ごとに示す図表であり、(5B)は、比較例による光検知素子の吸収光量を、入射領域、偏光方向ごとに示す図表である。
【図6−1】(6A)及び(6B)は、実施例1による光検知素子の製造途中段階における断面図である。
【図6−2】(6C)及び(6D)は、実施例1による光検知素子の製造途中段階における断面図である。
【図6−3】(6E)及び(6F)は、実施例1による光検知素子の製造途中段階における断面図である。
【図6−4】(6G)は、実施例1による光検知素子の製造途中段階における断面図であり、(6H)は、実施例1による光検知素子の断面図である。
【図7】実施例2による赤外線撮像素子の複数の画素の平面図である。
【図8】(8A)は、実施例3による光検知素子内を通過する光の経路及び偏光方向を示す平面図であり、(8B)は、(8A)の一点鎖線8B−8Bにおける断面図であり、(8C)は、実施例3による光検知素子内を通過する光の経路及び偏光方向を示す平面図である。
【図9】実施例4による赤外線撮像素子の複数の画素の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[実施例1]
図1に、実施例1による光検知素子の斜視図を示す。半導体基板10の上に下部電極層11が形成されている。半導体基板10には、例えば(001)面を表面とするGaAs基板が用いられる。下部電極層11は、例えばn型GaAsで形成される。下部電極層11の厚さは、例えば1μmであり、n型不純物であるSiの濃度は、例えば1×1018cm−3である。
【0012】
下部電極層11の上に、量子ドット層12が形成され、その上に上部電極層13が形成されている。量子ドット層12は、例えば、各々がAlGaAs障壁層と、障壁層の表面に分布する複数のInAs量子ドットとからなる9層の繰返し単位と、最上の繰返し単位の上に形成されたAlGaAs障壁層とを含む。上部電極層13は、例えばn型GaAsで形成される。障壁層の各々の厚さは、例えば50nmである。InAs量子ドットは、自己組織化形成法により形成される。上部電極層13の厚さは、例えば7μmであり、n型不純物であるSiの濃度は、例えば1×1018cm−3である。
【0013】
量子ドット層12及び上部電極層13は、正方形の第1領域21、正方形の第2領域22、及び直角二等辺三角形の中間領域23を接続した平面形状を有する。中間領域23の直角を挟む2つの辺が、それぞれ第1領域21及び第2領域22の1つの辺と共有される。中間領域23の直角を挟む2つの辺の各々の長さ、及び第1領域21及び第2領域22の正方形の1辺の長さは、例えば6μmである。
【0014】
半導体基板10の表面をxy面とし、法線方向をz軸の正の向きとするxyz直交座標系を定義する。第1領域21及び第2領域22の辺は、x軸またはy軸に平行である。中間領域23の直角を挟む辺の一方はx軸に平行であり、他方はy軸に平行である。第1領域21から中間領域23に向かう方向をx軸の正の向きとし、中間領域23から第2領域22に向かう方向をy軸の正の向きとする。
【0015】
中間領域23の上部電極層13の上面29は、半導体基板10の表面と平行である。第1領域21の上部電極層13の上面26、及び第2領域22の上部電極層13の上面27は、中間領域23から遠ざかるに従って低くなるように傾斜している。半導体基板10の表面に対する傾斜角は45°である。
【0016】
下部電極層11の上に下部電極15が形成され、中間領域23の上部電極層13の上に、上部電極16が形成されている。下部電極15及び上部電極16は、それぞれ下部電極層11及び上部電極層13にオーミック接触している。下部電極15及び上部電極16は、例えばAuGe層とAu層との2層構造を有する。
【0017】
直流電源17が、下部電極15と上部電極16との間に電圧を印加する。電流計18が、下部電極15と上部電極16との間を流れる電流を検出する。
【0018】
第1領域21、第2領域22、及び中間領域23の上部電極層13の上面が、反射金属膜で覆われている。図1においては、反射金属膜を図示していない。反射金属膜は、例えばTi層とAu層との2層構造を有する。
【0019】
第1領域21の半導体基板10の底面に垂直入射した赤外線30は、第1領域21の量子ドット層12を厚さ方向に通過して、上部電極層13の上面26に達する。上面26は、量子ドット層12を通過した光を、x軸の正の向きに反射する。上面26を「第1の反射面」ということとする。第1の反射面26で反射した光は、中間領域23内に進入し、上部電極層13の側面のうち、中間領域23の直角二等辺三角形の斜辺に対応する側面28に入射する。上部電極層13の屈折率が約3.3、大気の屈折率が約1.0であり、側面28への入射角が45°であるため、側面28に入射した赤外線は、y軸の正の向きに全反射する。側面28を、「中間反射面」ということとする。
【0020】
中間反射面28で反射した赤外線は、第2領域22内に進入し、上部電極層13の上面27に達する。上面27は、赤外線をz軸の負の向きに反射する。上面27を、「第2の反射面」ということとする。第2の反射面27で反射した赤外線は、量子ドット層12に再入射する。再入射する赤外線の進行方向は、第1領域21の量子ドット層12を通過する赤外線の進行方向と反平行である。
【0021】
このように、第1の反射面26、中間反射面28、及び第2の反射面27は、量子ドット層12を通過した光を、量子ドット層12に再入射させる機能を持つ。第1の反射面26、中間反射面28、及び第2の反射面27は、赤外線を量子ドット層12に再入射させるための「再入射構造物」として機能する。
【0022】
第2領域22の半導体基板10の底面に垂直入射した赤外線は、第1領域21に入射した赤外線と同じ経路を逆向き伝搬する。
【0023】
中間領域23の半導体基板10の底面に垂直入射した赤外線31は、量子ドット層12、上部電極層13を通過し、上部電極層13の上面29に達する。上面29は、赤外線をz軸の負の向きに反射する。上面29を、「第3の反射面」ということとする。第3の反射面29で反射した赤外線は、中間領域23の量子ドット層12に再入射する。
【0024】
図2Aを参照して、赤外線の偏光方向について説明する。図2Aは、実施例1による光検知素子の平面図を示す。x軸、y軸、z軸の正の向きが、それぞれ半導体基板10の[1−10]方向、[110]方向、[001]方向に対応する。ここで、ミラー指数の前に付したマイナス記号は、オーバーバーを意味する。
【0025】
半導体基板10の表面に第1領域21、第2領域22、及び中間領域23が画定されている。半導体基板10の第1領域21に、その底面から、y軸方向に直線偏光した赤外線が入射した場合について説明する。半導体基板10に入射した赤外線は、量子ドット層12を通過し、第1の反射面26でx軸の正の向きに反射され、その後、中間反射面28でy軸の正の向きに反射される。y軸の正の向きに伝搬する赤外線の偏光方向は、x軸に平行である。
【0026】
その後、第2の反射面27で、z軸の負の向きに反射され、量子ドット層12に再入射する。第1領域21の量子ドット層12を通過する赤外線の偏光方向がy軸に平行であるのに対し、第2領域22の量子ドット層12を通過する赤外線の偏光方向は、x軸に平行である。
【0027】
図2Bに、半導体基板10の第1領域21に入射した赤外線の偏光方向がx軸に平行である場合の、偏光方向の変化を示す。第1の反射面26で反射された後の赤外線の偏光方向はz軸に平行になる。中間反射面28で反射された後の赤外線の偏光方向もz軸に平行である。第2の反射面27で反射された後の赤外線の偏光方向はy軸に平行になる。このため、第2領域22の量子ドット層12を通過する赤外線の偏光方向は、y軸に平行である。
【0028】
このように、第1の反射面26、中間反射面28、及び第2の反射面27からなる再入射構造物は、量子ドット層12を通過した赤外線の偏光方向を90°回転させて、量子ドット層12に再入射させる。
【0029】
量子ドット層12の第2領域22を通過した後、再入射構造物によって第1領域21の量子ドット層12に再入射する場合も、同様に、偏光方向が90°回転する。
【0030】
図3Aに、半導体基板10の中間領域23に入射した赤外線の偏光方向がy軸に平行である場合の、偏光方向の変化を示す。中間領域23の量子ドット層12をz軸の正の向きに通過した赤外線は、第3の反射面29でz軸の負の向きに反射して、量子ドット層12に再入射する。量子ドット層12に再入射した赤外線の偏光方向は、当初の偏光方向と同一であり、y軸に平行である。
【0031】
図3Bに、半導体基板10の中間領域23に入射した赤外線の偏光方向がx軸に平行である場合の、偏光方向の変化を示す。第3の反射面29による反射で偏光方向は変化しないため、量子ドット層12に再入射する赤外線の偏光方向もx軸に平行である。
【0032】
図4Aに、各量子ドットで構成される3次元閉じ込め量子井戸の伝導帯の量子準位の一例を示す。x、y、z方向に関わる量子数を、それぞれn、n、nとする。量子数n、n、nで規定される量子準位を、|n>で表す。量子ドットは、その幾何学的形状の非対称性等に起因して、高次の量子準位はx、y、z方向に関して縮退していない。すなわち、量子準位|001>、|010>、及び|100>のエネルギレベルは、相互に異なる。
【0033】
遷移元準位を基底準位である|000>とする。基底準位と量子準位|001>とのエネルギ差に相当する波長をλzとし、基底準位と量子準位|010>とのエネルギ差に相当する波長をλyとし、基底準位と量子準位|100>とのエネルギ差に相当する波長をλxとする。
【0034】
図4Bに、波長、偏光方向、及び吸収確率の関係を示す。まず、波長λxの赤外線が量子ドット層に入射する場合について説明する。波長λxは、波長λy、λzとは異なるため、遷移先準位が|001>、|010>となるような遷移は生じない。また、波長がλxであっても、偏光方向がy軸に平行である場合には、遷移先準位が|100>となる遷移は生じない。波長λxで、かつ偏光方向がx軸に平行である赤外線が、基底準位の電子に吸収されることによって、遷移先準位が|100>となる遷移が生じる。この遷移確率(赤外線の吸収確率)をPとする。
【0035】
同様に、波長がλyで、偏光方向がx軸に平行な赤外線は、量子ドット層に吸収されない。波長がλyで、偏光方向がy軸に平行な赤外線は、量子ドット層に吸収される。この吸収確率をP1とする。
【0036】
高次の量子準位|100>等に励起された電子は、トンネル過程等によって量子ドット層12の障壁層の伝導帯に遷移する。電子が障壁層の伝導帯に遷移すると、電流計18(図1)により、電流変化として検出される。
【0037】
図5Aに、実施例1による光検知素子に波長λxの赤外線が入射した場合に、量子ドット層12(図1)で吸収される光量を、入射領域及び偏光方向ごとに示す。第1領域21に入射する波長λxの赤外線の光量を1とする。検出対象の物体から放射される赤外線のx偏光成分の光量と、y偏光成分の光量とは、等しいと考えられる。従って、第1領域21に入射する赤外線のx偏光成分及びy偏光成分の光量は、共に1/2になる。
【0038】
第2領域22の面積は、第1領域21の面積と等しいため、第2領域22に入射する赤外線の光量も1である。このため、第2領域22に入射する赤外線のx偏光成分及びy偏光成分の光量は、共に1/2になる。中間領域23の面積は、第1領域21の面積の1/2であるため、中間領域23に入射する赤外線の光量は、第1領域21に入射する赤外線の光量の1/2になる。このため、中間領域23に入射する赤外線のx偏光成分及びy偏光成分の光量は、共に1/4になる。
【0039】
第1領域21に入射した赤外線のx偏光成分が、第1領域21の量子ドット層12を通過するときの吸収確率は、図4Bに示したように、Pである。この赤外線は、中間領域23の量子ドット層12を通過しないため、中間領域23の量子ドット層12によって吸収されない。第2領域22の量子ドット層12を通過するときは、y方向に偏光しているため、吸収確率は0である。なお、下部電極層11及び上部電極層13で赤外線の吸収は、無視できるほど小さい。
【0040】
同様に、第1領域21に入射した赤外線のy偏光成分の吸収確率は、第2領域22においてPになり、第1領域21及び中間領域23においては0である。
【0041】
また、第2領域22に入射した赤外線のx偏光成分の吸収確率は、第2領域22においてPになり、その他の領域では0である。第2領域22に入射した赤外線のy偏光成分の吸収確率は、第1領域21においてPになり、その他の領域では0である。
【0042】
中間領域23に入射した赤外線が、量子ドット層12を最初に通過するときのx偏光成分の吸収確率はPである。量子ドット層12を通過するときに吸収されない確率は1−Pである。量子ドット層12を最初に通過したときに吸収されなかった赤外線が、量子ドット層12に再入射する。再入射する赤外線のx偏光成分の吸収確率は、P(1−P)になる。このため、中間領域23に入射する赤外線のx偏光成分の吸収確率は、P+P(1−P)になる。中間領域23に入射した赤外線のy偏光成分の吸収確率は0である。
【0043】
量子ドット層12に最初に入射する時点の光量に、吸収確率を乗じることにより、吸収光量が算出される。第1領域21、第2領域22、及び中間領域23に入射した赤外線の吸収光量の合計Peは、P(10−P)/4になる。
【0044】
図5Bに、第1の反射面26及び第2の反射面27が、共に半導体基板10の表面に平行である比較例の光検知素子によって吸収される光量を示す。比較例では、第1領域21及び第2領域22に入射した赤外線は、実施例1の中間領域23に入射した赤外線と同じ挙動を示す。
【0045】
このため、第1領域21及び第2領域22に入射した赤外線のx偏光成分の吸収確率は、それぞれ第1領域21及び第2領域22においてP+P(1−P)になる。その他の領域の吸収確率は0である。このため、第1の第1領域21、第2領域22、及び中間領域23に入射した赤外線の吸収光量の合計Prは、5P(2−P)/4になる。
【0046】
Pe−Pr=Pとなる。吸収確率Pは、0<P≦1であるた、Pの大きさに依らずPe>Prが成立する。すなわち、実施例1による光検知素子の吸収光量は、比較例による光検知素子の吸収光量よりも大きい。このため、赤外線検知感度の向上を図ることができる。
【0047】
次に、図6A〜図6Gを参照して、実施例1による光検知素子の製造方法について説明する。図6A〜図6Gは、図2Aの一点鎖線6A−6Aにおける断面に対応する。
【0048】
図6Aに示すように、半導体基板10の上に、下部電極層11を形成する。半導体基板10には、例えば(001)GaAs基板が用いられる。下部電極層11は、例えばn型GaAsで形成される。n型不純物にはSiが用いられ、その濃度は、例えば1×1018cm−3である。下部電極層11の厚さは、例えば1μmである。下部電極層11の成膜には、例えば分子線エピタキシャル法(MBE)が適用される。成膜時の基板温度は、例えば600℃とする。
【0049】
下部電極層11の上に、量子ドット層12を形成する。量子ドット層12の形成には、たとえばMBEが適用される。以下、量子ドット層12の形成方法について説明する。
【0050】
まず、下部電極層11の上に、AlGaAsからなる最も下の障壁層12Bを形成する。最も下の障壁層12Bの形成時に、基板温度を600℃から500℃まで低下させる。障壁層12BのAl組成比は、例えば0.2であり、その厚さは、例えば50nmである。
【0051】
基板温度を500℃に維持したまま、成長速度が毎秒0.2原子層になる条件で、2原子層分のInAs原料を供給する。この供給過程で、InAsに加わる圧縮歪が増し、InAsからなる量子ドット12Dが形成される。この形成方法は、「自己組織化形成法」と呼ばれる。
【0052】
量子ドット12Dを覆うように、AlGaAsからなる厚さ50nmの障壁層12Bを形成する。量子ドット12Dの形成と、その上の障壁層12Bの形成とを、合計9回繰り返す。最も上の障壁層12Bを形成するときに、基板温度を500℃から600℃まで上昇させる。
【0053】
基板温度を600℃に維持して、量子ドット層12の上に、上部電極層13を、MBEにより形成する。上部電極層13は、n型GaAsで形成される。n型不純物、及び不純物濃度は、下部電極層11のものと同一である。上部電極層13の厚さは、例えば7μmである。
【0054】
図6Bに示すように、上部電極層13の上に、レジスト膜40を形成する。レジスト膜40に、y方向に長い開口40Aを形成する。開口40Aの幅は、例えば300nmである。開口40Aが形成されたレジスト膜40をエッチングマスクとして、上部電極層13に深さ300nmの凹部45を形成する。凹部45の形成には、例えば塩素系ガスを用いたドライエッチングが適用される。凹部45を形成した後、レジスト膜40を除去する。
【0055】
図6Cに示すように、上部電極層13の上にレジスト膜46を形成する。レジスト膜46に開口46Aを形成する。開口46Aは、図6Bの段階で形成されていた凹部45を、x軸の正の向きに300nmだけ広げた領域に整合する。開口46Aが形成されたレジスト膜46をエッチングマスクとして、上部電極層13をエッチングする。エッチングの深さは300nmとする。このエッチングにより、図6Bの段階で形成されていた凹部45が深くなるとともに、x軸の正の向きに広がる。その後、レジスト膜46を除去する。
【0056】
凹部45を深くするとともに、x軸の正の向きに広げる手順を、凹部45の幅が6μmになるまで繰り返す。
【0057】
図6Dに、凹部45の幅が6μmになったときの断面図を示す。凹部45のx軸の正の側に階段状の側面が形成される。この側面の、1段の高さ及び奥行きは、共に300nmになる。ただし、実際には、踏み面(テラス)と蹴上げ(ステップ)との境界線が明確に現れるわけではなく、波打った斜面になる。
【0058】
検知対象の赤外線の波長が約10μmであるとき、GaAsの上部電極層13内において、その波長は約3μmになる。凹部45の側面の1段の高さ及び奥行きは、赤外線の波長に比べて十分短い。このため、凹部45のx軸の正の側の側面に入射する赤外線には、幾何光学の反射の法則が適用される。凹部45のx軸の正の側の側面は、図1に示した第1の反射面26として機能する。凹部45の形成と同時に、図1の第2の反射面27として機能する側面を持った他の凹部が形成される。
【0059】
図6Eに示すように、上部電極層13の上面の一部を、レジスト膜48で覆う。レジスト膜48は、図1に示した第1の領域21、第2の領域22、及び中間領域23に対応する領域を覆う。
【0060】
図6Fに示すように、レジスト膜48をエッチングマスクとして、上部電極層13及び量子井戸層12をエッチングする。このエッチングには、例えば塩素系ガスを用いたドライエッチングが適用される。エッチングされた領域の底面に、下部電極層11が露出する。エッチング後、レジスト膜48を除去する。
【0061】
図6Gに示すように、露出した下部電極層11の上面の一部に、下部電極15を形成すると共に、上部電極層13の平坦面(図1の中間領域)の一部に上部電極16を形成する。下部電極15及び上部電極16は、AuGe層とAu層との2層を含み、それぞれ下部電極層11及び上部電極層13にオーミック接触する。下部電極15及び上部電極16の形成には、例えば金属蒸着法が適用される。
【0062】
図6Hに示すように、上部電極層13の上に、反射膜50を形成する。反射膜50は、図1に示した第1領域21、第2領域22、及び中間領域23の全域を覆う。反射膜50は、例えばTi層とAu層との2層を含む。反射膜50の形成には、例えば金属蒸着法が適用される。反射膜50は、上部電極16を覆うように形成してもよいし、上部電極16と重ならないように形成してもよい。
【0063】
上記実施例1では、赤外線の検知素子を例に挙げたが、実施例1による赤外線検知素子は、赤外線以外の光、例えば可視光等の検知素子にも応用可能である。検知対象の光の波長は、例えば、図4Aに示した基底準位と高次準位とのエネルギ差によって決まる。
【0064】
[実施例2]
図7に、実施例2による赤外線撮像素子の複数の画素の平面図を示す。実施例2による赤外線撮像素子の各画素55は、図1に示した実施例1による赤外線検知素子と同一の構造を有し、第1領域21、第2領域22、及び中間領域23を含む。
【0065】
実施例1では、例えば図2Aに示したように、中間領域23の中間反射面28より外側に、下部電極層11が露出していたが、実施例2では、相互に隣り合う2つの画素の中間反射面28が、微小間隙を隔てて相互に対向する。これにより、2つの画素が、立方体の底面と側面とを展開した展開図とほぼ等しい十字の平面形状を構成する。この十字の平面形状が、2次元面内に、密に配置されている。
【0066】
実施例2においては、図1に示した下部電極層11が、複数の画素で共有される。量子ドット層12及び上部電極層13は、画素ごとに電気的に分離されている。
【0067】
実施例2においては、各画素55が実施例1の光検知素子と同様の構造を有するため、画素ごとの赤外線の検知効率が高い。これにより、赤外線撮像素子の感度を高めることができる。
【0068】
[実施例3]
図8Aに、実施例3による赤外線検知素子の平面図を示す。実施例3による赤外線検知素子においては、第1領域21及び第2領域23の平面形状が、直角二等辺三角形であり、両者の斜辺同士が対向するように配置されている。第1領域21と第2領域22との斜辺の間に、両者を接続する中間領域23が配置されている。中間領域23の平面形状は、第1領域21及び第2領域22の斜辺を1つの辺として共有する多角形、例えば長方形である。第1領域21及び第2領域22の直角を挟む2つの辺は、それぞれx方向(基板の[1−10]方向)及びy方向(基板の[110]方向)に平行である。
【0069】
第1領域21及び第2領域22の、直角を挟む2つの辺の長さは、例えば6μmであり、第1領域21と第2領域22との間隔は、例えば2μmである。
【0070】
図8Bに、図8Aの一点鎖線8B−8Bにおける断面図を示す。実施例3による赤外線検知素子の積層構造は、図1に示した実施例1の半導体基板10から上部電極層13までの積層構造と同一である。各層の材料及び厚さも、実施例1の場合と同一である。第1領域21及び第2領域22の上面は、中間領域23から遠ざかるに従って低くなるように傾斜している。その傾斜角は45°である。
【0071】
中間領域23の上面の一部に上部電極16(図8A)が配置されており、下部電極層11の上面の一部に下部電極15(図8B)が配置されている。上部電極層13の上面には、反射膜50が形成されている。実施例1の場合と同様に、第1領域21の斜面が第1反射面26として作用し、第2領域22の斜面が第2反射面27として作用する。
【0072】
半導体基板10の第1領域21に、その底面から、y方向に直線偏光した赤外線が入射した場合の素子内の赤外線の伝搬について説明する。x軸をy軸の正の向きに45°回転させた方向をu軸の正の向きとし、y軸をx軸の負の向きに45°回転させた方向をv軸の正の向きと定義する。
【0073】
半導体基板10に垂直入射した赤外線は、量子ドット層12を通過し、第1反射面26でu軸の正の向き(基板の[100]方向)に反射される。その後、中間領域23の上部電極層13を通過し、第2反射面27でz軸の負の向きに反射される。第2反射面27で反射された赤外線は、量子ドット層12に再入射する。実施例3では、第1反射面26及び第2反射面27の2つの反射面が、再入射構造物としての機能を有する。
【0074】
y方向の電界をu軸方向の成分(u成分)とv軸方向の成分(v成分)とに分解する。ここでは、u成分とv成分とを、その位相関係まで考慮する必要があるため、第1領域21の半導体基板10に入射する赤外線のu成分及びv成分を、共に正とする。分解されたu成分及びv成分を図8Bに示す。
【0075】
第1反射面26で反射すると、正のu成分及び正のv成分は、それぞれ負のz成分及び負のv成分に変換される。第2反射面27で反射すると、負のz成分及び負のv成分は、それぞれ負のu成分及び正のv成分に変換される。負のu成分及び正のv成分を合成すると、x軸に平行な成分となる。すなわち、y軸に平行に直線偏光した赤外線は、第1反射面26及び第2反射面27で反射することにより、x軸に平行に直線偏光した赤外線となって量子ドット層12に再入射する。
【0076】
図8Cに示すように、x軸に平行に直線偏光して第1領域21の量子ドット層12を通過した赤外線は、y軸に平行に直線偏光した赤外線となって、第2領域22の量子ドット層12に再入射する。このように、第1領域21の量子ドット層12を通過した赤外線のx偏光成分及びy偏光成分は、それぞれ偏光方向が90°回転して、y偏光成分及びx偏光成分に変換され、第2領域22の量子ドット層12に入射する。
【0077】
同様に、第2領域22の量子ドット層12を通過した赤外線のx偏光成分及びy偏光成分は、それぞれ偏光方向が90°回転して、y偏光成分及びx偏光成分に変換され、第1領域21の量子ドット層12に再入射する。
【0078】
中間領域23に入射した赤外線の偏光方向の変化は、実施例1の光検知素子の中間領域23に入射した赤外線の偏光方向の変化と同一である。
【0079】
量子ドット層12を、検知対象の波長の赤外線が通過するとき、x方向の偏光成分の吸収確率とy方向の偏光成分の吸収確率とが異なる。例えば、x方向の偏光成分の吸収確率がPであり、y方向の偏光成分の吸収確率が0である。実施例3においては、実施例1と同様に、y方向の偏光成分をx方向の変更成分に変換して、量子ドット層12で吸収することができる。このため、実施例3による赤外線検知素子おいても、実施例1と同様に、検知効率を高めることができる。
【0080】
実施例3において、中間領域23は、実施例1の中間反射面28としての機能を持たない。上部電極16を形成するために、中間領域23が確保されている。上部電極16を第1領域21または第2領域22に配置すれば、中間領域23を確保する必要はない。すなわち、第1領域21に第2領域22を直接接触させてもよい。
【0081】
また、第1領域21及び第2領域22の平面形状は、必ずしも直角二等辺三角形である必要はない。例えば、u軸またはv軸に平行な辺を持つ長方形としてもよい。
【0082】
[実施例4]
図9に、実施例4による赤外線撮像素子の複数の画素の平面図を示す。実施例4による赤外線撮像素子の各画素55は、図8A〜図8Cに示した実施例3による赤外線検知素子と同一の構造を有し、第1領域21、第2領域22、及び中間領域23を含む。複数の画素55は、x方向及びy方向を、行方向及び列方向とする行列状に配置されている。実施例4による赤外線撮像素子の下部電極層11(図8Bの下部電極層11に相当)は、複数の画素55で共有される。
【0083】
行方向及び列方向に隣り合う画素55は、相互に90°回転させた姿勢で配置されている。すなわち、相互に隣り合う画素55の中間領域23の長手方向(第1領域21及び第2領域22の斜辺の延在する方向)は、直交する。
【0084】
赤外線撮像素子の表面には、中間領域23を尾根とし、第1領域21及び第2領域22の直角の頂点の部分を窪みとする起伏が形成される。行方向及び列方向に隣り合う画素55は、相互に90°回転させた姿勢で配置されているため、この起伏の尾根の部分と窪みの部分とが、近接しない。このため、起伏の急峻な側壁が露出することを防止することができる。なお、画素55の境界には、画素55を電気的に分離するための溝が形成される。この溝は、第1領域21及び第2領域22の直角の頂点よりも深い。この溝の両側の側壁の高さは等しい。
【0085】
実施例4においては、各画素55が実施例3の光検知素子と同様の構造を有するため、画素55ごとの赤外線の検知効率が高い。このため、赤外線撮像素子の感度を高めることができる。
【0086】
上記実施例1〜実施例4では、量子ドット層12に入射する赤外線の偏光方向を90°回転させて、量子ドット層12に再入射させる場合を示したが、偏光方向の回転角は、必ずしも90°である必要はない。第1の方向の偏光成分の吸収確率と、第2の方向の偏光成分の吸収確率とが異なるような量子ドット層12を用いた場合、再入射構造物が、第1の方向の成分を第2の方向の偏光成分に変換して量子ドット層12に再入射させることにより、検知効率を高めることができる。
【0087】
一例として、図4Bにおいて、波長λx、偏光方向yの赤外線の吸収確率が0ではなくQである場合について説明する。
【0088】
図5Aにおいて、入射領域が第1領域21、偏光方向がxの赤外線の第2領域における吸収確率は、0ではなくQ(1−P)になる。また、入射領域が第1領域21、偏光方向がyの赤外線の第1領域における吸収確率は、0ではなくQになり、第2領域における吸収確率はP(1−Q)になる。このとき、第1領域21に入射した赤外線の吸収光量Pe1は、P+Q−PQになる。
【0089】
図5Bにおいて、入射領域が第1領域21、偏光方向がyの赤外線の吸収確率は、0ではなく、Q+Q(1−Q)になる。このとき、第1領域21に入射した赤外線の吸収光量Pr1は、P+Q−(P+Q)/2になる。
【0090】
Pe1−Pr1は、(P−Q)/2となる。吸収確率PとQとが等しくない場合、(P−Q)/2>0であるため、常にPe1>Pr1が成立する。すなわち、実施例1(図5Aに対応)による光検知素子の吸収光量が、比較例(図5Bに対応)による光検知素子の吸収光量よりも高いことがわかる。
【0091】
特に、実施例1及び実施例3で説明したように、第1の方向(x方向)及び第2の方向(y方向)の一方の偏光成分の吸収確率が0であり、第1の方向と第2の方向とが直角の関係である場合に、検知効率を高める効果が顕著である。
【0092】
上記実施例では、量子ドット層12内の量子ドット12DをInAsで形成し、障壁層12BをAlGaAsで形成したが、その他の化合物半導体を用いてもよい。例えば、量子ドット12D及び障壁層12Bに、GaAs、またはInAs、GaAs、AlAs、からなる混晶を用いてもよい。この場合、量子ドット12Dの伝導帯に、電子の基底準位と、少なくと1つの高次準位が存在するように、量子ドット12Dと障壁層12Bとの材料を組み合わせることが好ましい。
【0093】
また、下部電極層11及び上部電極層13に、GaAs、AlAs、InAs、またはこれらの混晶を用いてもよい。この場合、検知対象の光の波長域において透明な材料を用いることが好ましい。
【0094】
上記実施例1〜実施例4では、量子ドット層12を最初に通過する領域(例えば第1領域21)と、再入射する領域(例えば第2領域22)とが、異なる位置に配置されていたが、両者が重なるような構成にしてもよい。
【0095】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【0096】
以上の実施例1〜実施例4を含む実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0097】
(付記1)
基板の上に配置され、複数の量子ドットを含む量子ドット層と、
前記量子ドット層の上に配置され、前記量子ドット層を通過した光を反射して前記量子ドット層に再入射させると共に、第1の方向の偏光成分を、前記第1の方向とは異なる第2の方向の偏光成分に変換して前記量子ドット層に再入射させる再入射構造物と
を有する光検知素子。
【0098】
(付記2)
第1の波長の、前記第1の方向の偏光成分が前記量子ドット層を通過するときの吸収確率と、前記第1の波長の、前記第2の方向の偏光成分が前記量子ドット層を通過するときの吸収確率とが異なる付記1に記載の光検知素子。
【0099】
(付記3)
前記再入射構造物は、前記量子ドット層の第1の領域を厚さ方向に通過した光を、前記量子ドット層の、前記第1の領域とは異なる第2の領域に再入射させ、再入射する光の進行方向は、前記第1の領域を厚さ方向に通過する光の進行方向と反平行である付記1または2に記載の光検知素子。
【0100】
(付記4)
前記再入射構造物は、
前記量子ドット層の前記第1領域を、前記基板側から上方に通過した光を、前記基板の表面に平行な方向に反射する第1の反射面と、
前記第1の反射面で反射した光を、前記第2領域に向けて反射する中間反射面と、
前記中間反射面で反射して前記第2領域に導入された光を、前記基板の厚さ方向に反射し、前記量子ドット層に再入射させる第2の反射面と
を含む付記3に記載の光検知素子。
【0101】
(付記5)
前記中間反射面による光の偏向角は90°である付記4に記載の光検知素子。
【0102】
(付記6)
前記基板は、III−V族化合物半導体の(001)基板であり、
前記第1の反射面は、前記量子ドット層を通過した光を、前記基板の[1−10]方向に反射し、前記第中間反射面は、前記第1の反射面で反射した光を、前記基板の[110]方向に反射する付記4または5に記載の光検知素子。
【0103】
(付記7)
前記再入射構造物は、
前記量子ドット層の第1領域を、前記基板側から上方に通過した光を、前記基板の表面に平行であって前記第1の方向に対して斜めの方向に反射する第1の反射面と、
前記第1領域とは異なる第2領域に配置され、前記第1の反射面で反射された光を、前記基板の厚さ方向に反射して、前記量子ドット層に再入射させる第2の反射面と
を含む付記3に記載の光検知素子。
【0104】
(付記8)
前記基板は、III−V族化合物半導体の(001)基板であり、
前記第1の反射面は、前記量子ドット層を通過した光を、前記基板の[100]方向に反射する付記7に記載の光検知素子。
【0105】
(付記9)
さらに、
前記量子ドット層に厚さ方向の電界を印加する電極を有する付記1乃至8のいずれか1項に記載の光検知素子。
【符号の説明】
【0106】
10 半導体基板
11 下部電極層
12 量子ドット層
12B 障壁層
12D 量子ドット
13 上部電極層
15 下部電極
16 上部電極
17 電源
18 電流計
21 第1領域
22 第2領域
23 中間領域
26 上面(第1の反射面)
27 上面(第2の反射面)
28 側面(中間反射面)
29 上面(第3の反射面)
30、31 赤外線
40 レジスト膜
40A 開口
45 凹部
46 レジスト膜
46A 開口
48 レジスト膜
50 反射膜
55 画素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上に配置され、複数の量子ドットを含む量子ドット層と、
前記量子ドット層の上に配置され、前記量子ドット層を通過した光を反射して前記量子ドット層に再入射させると共に、第1の方向の偏光成分を、前記第1の方向とは異なる第2の方向の偏光成分に変換して前記量子ドット層に再入射させる再入射構造物と
を有する光検知素子。
【請求項2】
第1の波長の、前記第1の方向の偏光成分が前記量子ドット層を通過するときの吸収確率と、前記第1の波長の、前記第2の方向の偏光成分が前記量子ドット層を通過するときの吸収確率とが異なる請求項1に記載の光検知素子。
【請求項3】
前記再入射構造物は、前記量子ドット層の第1の領域を厚さ方向に通過した光を、前記量子ドット層の、前記第1の領域とは異なる第2の領域に再入射させ、再入射する光の進行方向は、前記第1の領域を厚さ方向に通過する光の進行方向と反平行である請求項1または2に記載の光検知素子。
【請求項4】
前記再入射構造物は、
前記量子ドット層の前記第1領域を、前記基板側から上方に通過した光を、前記基板の表面に平行な方向に反射する第1の反射面と、
前記第1の反射面で反射した光を、前記第2領域に向けて反射する中間反射面と、
前記中間反射面で反射して前記第2領域に導入された光を、前記基板の厚さ方向に反射し、前記量子ドット層に再入射させる第2の反射面と
を含む請求項3に記載の光検知素子。
【請求項5】
前記再入射構造物は、
前記量子ドット層の第1領域を、前記基板側から上方に通過した光を、前記基板の表面に平行であって前記第1の方向に対して斜めの方向に反射する第1の反射面と、
前記第1領域とは異なる第2領域に配置され、前記第1の反射面で反射された光を、前記基板の厚さ方向に反射して、前記量子ドット層に再入射させる第2の反射面と
を含む請求項3に記載の光検知素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図6−3】
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【図6−4】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−169473(P2012−169473A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−29601(P2011−29601)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、防衛省、「2波長赤外線センサ(その2)」試作研究請負契約、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】