説明

光照射装置

【課題】基本的にはドーム型照明方式の考え方を用い、ローアングル光照明方式の不具合を解消しながらも、その場合に生じ得る照度不足や照度ムラといった新たな問題点を解決し、配線基板の検査をより精度良く行えるようにする。
【解決手段】光透過性及び光拡散性を有し、検査用カメラ300が撮影する検査領域20aを覆うように近接配置される概略平板状又はドーム状をなす光拡散部材2と、その光拡散部材2の外側に離間して配置され、前記検査領域20aに当該光拡散部材2を透過させて光を照射する複数の光照射部材4と、前記光拡散部材2に設けられた撮影用観測孔2aの周囲からカメラの方向に延びる筒状体3と、を備え、前記カメラが、それら筒状体3及び観測孔2aを介し前記検査領域20aを撮影できるように構成するとともに、前記筒状体3のカメラ側開口に、前記光照射部材4からの直射光が入らないように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板等の例えばラインカメラによる表面検査等において好適に用いられる光照射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
様々な配線基板の表面検査方式のうち、検査速度、検査精度の点で優れたものとして、ラインカメラ(ラインCCD等)を用いて配線基板上を走査しながら撮像していくラインスキャン方式のものが知られている。
【0003】
このラインスキャン方式においては、ある方向からローアングルのライン光を配線基板のライン状撮影領域に照射し、その反射光を配線基板に対向して配置したラインカメラで見ることでプリント配線の欠陥等を検査する。
【特許文献1】特開2006−258778
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、周知のように配線部分は、他の部分に比べて少し盛り上がる金属であり、しかもその表面がざらざらとした梨地状になっているため、ローアングル光を照射すると、その光はこの配線部分の特に光照射側の端縁で強く乱反射する。したがって、ラインカメラの撮影画像をみると、基本的に配線部分が明るく見えるが、特にローアングル光を配線に対して直交方向から照射すると、配線の側縁部分が強く光って、配線が太く見える。また,表面の凹凸部で異常な濃淡差を生じてしまう.
【0005】
しかしながら、プリント配線が非常に細密になってきている今般、ローアングル光による照明方式では光の照射方向によっては、上述した現象によって配線形状を正確に撮像できないといった不具合が生じ得る。
【0006】
これに対し、照明光を全方位、全照射立体角度から照射するドーム照明方式を用いれば、ある一定方向の線の太りといった不具合は解決できる。ところが今度は、発光面を均一な面発光とすると、非常に大きな照度が必要になると考えられる。また、光源の写り込みや照度むらも生じるため、面光源ではない光源から直射光を照射することはできない。こういった点が問題になって、これまでドーム照明方式が実際に適用された例は見当たらない。
【0007】
そこで本発明は、基本的にはドーム型照明方式の考え方を用い、ローアングル光照明方式の不具合を解消しながらも、その場合に生じ得る照度不足や写り込み、照度ムラといった新たな問題点を解決し、若干盛り上がった(又はくぼんだ)梨地状の光沢面を表面の一部に有する配線基板等のような検査対象の検査をより精度良く行えるようにすべく図ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、配線基板等の表面検査に用いられる表面検査用光照射装置であって、光透過性及び光拡散性を有し検査用カメラが撮影する検査領域を覆うように近接配置される概略平板状又はドーム型の光拡散部材と、その光拡散部材の外側に離間して配置され前記検査領域に当該光拡散部材を透過させて光を照射する複数の光照射部材と、前記光拡散部材に設けられた撮影用観測孔の周囲からカメラの方向に延びる筒状体と、を備え、前記カメラが、それら筒状体及び観測孔を介し、なおかつそれらに視野を遮られない状態で前記検査領域を撮影できるように構成するとともに、前記筒状体のカメラ側の開口に、前記光照射部材からの直射光(直接光)が入らないように構成し、検査領域にその直射光が照射されないようにしていることを特徴とする。
【0009】
前記筒状体は前記観測孔が充分小さければ遮光性を有する部材で形成してもかまわないが、前記観測孔が大きい場合は無視できない範囲で観測孔からの照明光が照射されないことになるため、大きな照度ムラを生じる恐れがある。これを解決するには、前記筒状体を、前記光拡散部材とほぼ同様の光透過性及び光拡散性を有するものとすればよい。このことによって、筒状体を介して観測孔からも照明光が供給されるようになる。
【0010】
その好適な具体的態様としては、前記筒状体と光拡散部材とを一体成型しているものを挙げることができる。
【0011】
本発明の効果が特に顕著となる具体的態様としては、前記カメラがラインカメラであり、観測孔が長孔状をなして、ライン状の検査領域に対向配置されるものを挙げることができる。
【発明の効果】
【0012】
このように構成した本発明によれば、光拡散部材を検査領域の近傍に配置するとともに、その外側の離間した位置に光照射部材を配置するようにしているので、多数の光照射部材を無理なく設けることができ、それらからの光を検査領域に集光させて十分な照度を得ることができる。
【0013】
一方、それだけの構成であると、光照射部材を離間配置していることから、光拡散部材に設けた観測孔から光照射部材からの直接光が入り込み、撮影画像に光照射部材の写り込みが生じたり(一種の照度ムラとも言える)、観測孔のエッジが光って検査の邪魔をしたりするところ、本発明では、観測孔の周囲からカメラの方向に延びる筒状体を設けて、光照射部材からの直接光が入り込まない構成にしているので、上述した不具合を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
本実施形態に係る光照射装置100は、図1に示すように、ラインカメラ300を用いて配線基板200の表面を走査しながら検査をするときに用いられるものである。そしてその構成としては、図1、図2等に示すように、ケーシング1と、前記ラインカメラ300が撮影するライン状検査領域20aを覆うように近接配置される概略ドーム型の光拡散部材2と、その光拡散部材2に設けられた観測孔2aの周囲からラインカメラ300の方向に延びる筒状体3と、前記光拡散部材2の外側から当該光拡散部材2を透過させて前記検査領域20aに光を照射する複数の光照射部材4と、を備えている。
【0015】
各部を説明する。
ケーシング1は、遮光性のある素材で作られた中空のもので、ラインカメラ300に取り付けるための取付ポート1aを一面に有し、その対向面に光拡散部材2を取り付けるための開口部1bを有している。そしてその内部に、前述した光拡散部材2、光照射部材4、筒状体3等を保持する。
【0016】
光拡散部材2は、図2〜図7に示すように、例えば透明樹脂の表面にサンドブラスト加工などを施して、光拡散性と透光性とを具備させた部分球形をなす等厚な板材であり、その中央部分には厚み方向に貫通する前記観測孔2aが設けられている。この観測孔2aは、長孔状をなすものであり、後でも述べるが、ラインカメラ300で配線基板200を見たときに、その視野に検査領域20aが入るほぼ最小の大きさに設定されている。
【0017】
光照射部材4は、図2に示すように、連続して200mA以上の電流で駆動できる超高輝度タイプのいわゆるパワーLED41と、そのLED41に取り付けた透明な光学素子42とからなるもので、LED41から出た光を光学素子42で反射屈折させ、より指向性の強い光にして射出するものである。なお、前記光学素子42は、LED41から所定角度以上側方に広がる光はその側周面で内方に全反射させ、それ以外の光とともに先端面から屈折させて照射する高効率複合タイプのものである。
【0018】
この実施形態では、このような光照射部材4が、多数、ケーシング1の内壁面に設けた部分凹球面状をなす保持面1cに敷設保持されて、前記光拡散部材2を覆うように配置されている。各光照射部材4は、検査領域20aのほぼ中心に向かって光を照射するように各々の向きが設定されており、ライン状検査領域20aの長さとほぼ同径あるいはそれより若干大きい径の概略円形状の光照射領域AR(図1参照)が形成されるように構成してある。
【0019】
なお、光照射部材4と光拡散部材2との離間距離は、離れれば離れるほど、光照射部材4の配置面積を大きくとれ、また放熱も有利になるので、多くの光照射部材4を配することができる。したがって、必要な照度を担保するだけの光照射部材4の個数と、そのときの放熱量から、前記離間距離を定めればよい。具体的に、光照射部材4と光拡散部材2との離間距離を、検査領域20aと光拡散部材2と離間距離の、2倍〜5倍くらいに設定している。
【0020】
筒状体3は、図2〜図7に示すように、観測孔2aの周囲からラインカメラ300方向に延びるほぼ等厚のもので、ラインカメラ300の撮像軸Cにその中心軸を合致させて配置されている。この筒状体3は、観測孔2a近傍では、観測孔2aの外形に合わせて横断面が長孔形状をなし、そこからラインカメラ300側に行くに連れ、徐々に横断面が拡大しながらその形状が変化して、ラインカメラ300側の端面3aでは、横断面がほぼ円形状をなすように構成されている。なお、このように横断面形状を変化させているのは、本実施形態のラインカメラ300の対物レンズが円形状であり、それに合わせたためであって、横断面形状を、例えば比例的に大きくなるように設定してももちろんかまわない。要は、ラインカメラ300から、筒状体3及び観測孔2aを介して、配線基板200の検査領域20aを見たときに、筒状体3及び観測孔2aの内面が、検査領域20aに著しく干渉しないぎりぎり(最小)の大きさに構成しておけばよいのである。
【0021】
この筒状体3の延伸長さは、光照射部材4と光照射部材4との離間距離にほぼ等しいか、それより長ければ良い。要は、筒状体3のラインカメラ300側の端面が、光照射部材4の光照射面より外側に位置させて、その端面に光照射部材4からの直射光が入らないようにすればよい。
【0022】
さらにこの実施形態では、この筒状体3を、前記光拡散部材2と同じ素材で型によって一体に成形するとともに、その表面にサンドブラスト加工などを施して、前記光拡散部材2と同様の光拡散性と透光性とを具備させている。
【0023】
しかして、このように構成した光照射装置100によれば、光拡散部材2によって、検査領域20aに対する平面視ほほ全ての方向及びほぼ全ての立体角から光を照射できるうえに、光拡散部材2を検査領域20aの近傍に配置するとともに、その外側の離間した位置に光照射部材4を配置するようにしているので、多数の光照射部材4を無理なく設けることができ、それらからの光を検査領域20aに集光させて十分な照度を得ることができる。
【0024】
一方、それだけの構成であると、光照射部材4を離間配置していることから、光拡散部材2に設けた観測孔2aから光照射部材4からの直接光が入り込み、撮影画像に光照射部材4の映り込みが生じたり(一種の照度ムラとも言える)、観測孔2aのエッジが光って検査の邪魔をしたりするところ、本光照射装置100では、観測孔2aの周囲からカメラの方向に延びる筒状体3を設けて、光照射部材4からの直接光が入り込まない構成にしているので、上述した不具合を防止することができる。
【0025】
さらに、前記筒状体3を、前記光拡散部材2とほぼ同様の光透過性及び光拡散性を有するものとしているので、筒状体3を介して観測孔2aからも照明光が供給されるようになり、検査領域20aにおける照度ムラを可及的に小さくすることができる。また筒状体3と光拡散部材2とを一体成形しているので、製作も非常に容易である。
【0026】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0027】
例えば、前記筒状体を遮光性部材で形成してもかまわない。その場合、外面を白色にしておくことが照度の関係で好ましいが、その外面での反射光がケーシング内で変に反射し、迷光が増加する懸念が大きい場合は、黒色にしておくほうが良い。
【0028】
光拡散部材は、前記実施形態よりもさらに深く湾曲するドーム型でもよいし、そのドーム型にしても、部分球状に限られず、部分楕円球のものなどでもよい。その場合は光照射部材もそれに合わせて部分楕円凹球面に配置するのが好ましい。さらに、検査領域により近接させるなどの状況であれば、平板またはそれに近いものでもかまわない。
【0029】
また観測孔を、前記実施形態では、ライン状検査領域にあわせて長孔状(スリット状)としていたが、例えばエリア検査であれば、円状あるいは正方形状のものなどにしてもよい。それに応じて筒状体の外形状がかわるのはもちろんである。
【0030】
さらに言うならば、本光照射装置を配線基板検査のみならず、他のワーク表面検査に適用することも可能である。
【0031】
その他本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態における光照射装置の使用態様を示す概略斜視図。内部構造を示す概略図。
【図2】同実施形態における光照射装置の内部構造を示す縦断面概略図。
【図3】同実施形態における光拡散部材及び筒状体を示す斜視図。
【図4】同実施形態における光拡散部材及び筒状体を示す下方から見た斜視図。
【図5】同実施形態における光拡散部材及び筒状体を示す平面図。
【図6】図4におけるA−A線断面図
【図7】図4におけるB−B線断面図
【符号の説明】
【0033】
100・・・表面検査用光照射装置
200・・・配線基板
300・・・カメラ
20a・・・検査領域
2・・・光拡散部材
2a・・・観測孔
3・・・筒状体
4・・・光照射部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象の表面検査に用いられるものであって、
光透過性及び光拡散性を有し、検査用カメラが撮影する検査領域を覆うように近接配置される概略平板状又はドーム状をなす光拡散部材と、
その光拡散部材の外側に離間して配置され、前記検査領域に当該光拡散部材を透過させて光を照射する複数の光照射部材と、
前記光拡散部材に設けられた撮影用観測孔の周囲からカメラの方向に延びる筒状体と、を備え
前記カメラが、それら筒状体及び観測孔を介し、かつそれらに視野をほとんど遮られない状態で前記検査領域を撮影できるように構成するとともに、前記筒状体のカメラ側開口に、前記光照射部材からの直射光が入らないように構成していることを特徴とする表面検査用光照射装置。
【請求項2】
前記検査対象が配線基板である請求項1記載の表面検査用光照射装置。
【請求項3】
前記筒状体が、前記光拡散部材とほぼ同様の光透過性及び光拡散性を有するものである請求項1又は2記載の表面検査用光照射装置。
【請求項4】
前記筒状体が、遮光性を有するものである請求項1又は2記載の表面検査用光照射装置。
【請求項5】
前記筒状体と光拡散部材とを一体成型している請求項1乃至4いずれか記載の表面検査用光照射装置。
【請求項6】
前記カメラがラインカメラであり、観測孔が長孔状をなして、ライン状の検査領域に対向配置されるものである請求項1乃至5いずれか記載の表面検査用光照射装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2008−102103(P2008−102103A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−287013(P2006−287013)
【出願日】平成18年10月20日(2006.10.20)
【出願人】(596099446)シーシーエス株式会社 (121)
【Fターム(参考)】