説明

光硬化性・熱硬化性樹脂組成物、その硬化物、ドライフィルム及び薄型パッケージ基板

【課題】ソルダーレジスト、パッケージ基板用レジストとして必要なはんだ耐熱性、密着性、電気絶縁性、HAST耐性に優れ、かつ硬化収縮が少なく反りの無い基板を提供できる光硬化性・熱硬化性樹脂組成物、及びその硬化物やドライフィルム等の提供。
【解決手段】(A)多核エポキシ化合物(a)と不飽和基含有モノカルボン酸(b)との反応生成物に多塩基酸無水物(c)を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂、(B)カルボキシル基含有ウレタン(メタ)アクリレート化合物、(C)光重合開始剤、(D)一分子中に2個以上の環状エーテル基及び/又は環状チオエーテル基を有する熱硬化性成分、(E)希釈剤、及び(F)硬化触媒を含有することを特徴とする感光性・熱硬化性樹脂組成物(A)を硬化物やドライフィルム等の作製に用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置用のパッケージ基板の製造に有用な光硬化性・熱硬化性樹脂組成物、及びその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の電子機器は携帯電話に代表されるように、小型軽量化、高性能化、多機能化の傾向にあり、これに対応して、これらの電子機器に使用される半導体集積回路(以下ICという。)も、一層の高集積化、小型化、薄型化が要求されている。このような要求に対応して、半導体ICを収納するパッケージも、リードフレームと封止樹脂を用いたQFP(クワッド・フラットパック・パッケージ)、SOP(スモール・アウトライン・パッケージ)等と呼ばれるICパッケージに代わって、ソルダーレジストを塗布した絶縁基板と封止樹脂を用いた、BGA(ボール・グリッド・アレイ)あるいはCSP(チップ・スケール・パッケージ)等と呼ばれるICパッケージが登場した。このようなパッケージにおいては、ソルダーレジストを塗布した絶縁プリント基板の片面に、ボール状のはんだを全面に配列し、他の片面にICチップを融着し、ワイヤボンディングあるいはバンプにより、プリント基板上の端子あるいは回路との電気的接続を行い、ICチップを樹脂封止している。
【0003】
このような構造のICパッケージには、前述したように、小型化、薄型化が要求される結果、ICチップを搭載するプリント基板を形成するコア材も薄型化が要求される。例えば、UT−CSPすなわち、ウルトラ・シン・チップ・スケール・パッケージと呼ばれるパッケージにおいては、コア材として厚さが30〜60μmのガラスエポキシ基板が用いられる。このようなICパッケージの製造工程としては、基板を構成するコア材の両面、すなわち、はんだボールが固着された面、およびICチップの入出力端子との接続用配線が形成された他の面に、これらのはんだボールおよび配線パターンを除く部分を被覆するようにレジストインクを塗布した後、これを硬化させ絶縁保護被膜を形成する。しかし、上記のように基板が極めて薄い場合、コア材表面に塗布されたレジストの焼成の際の硬化収縮により、基板に反りやうねりが生じ、チップ実装時に問題が生じている。さらに、ICパッケージの製造工程には、モールド工程あるいははんだ付工程など、プリント基板を例えば170〜270℃の高温に曝す工程も含まれている。このため、レジスト材料には、はんだ耐熱性等の高い耐熱性とともに、電気特性、PCT特性(プレッシャークッカーテスト) 等の高い信頼性が要求される。
さらに、コア材が薄くなることにより、レジストの硬化収縮による反りが問題となってきた。このようなコア材を用いた場合、ロール・ツー・ロール(roll−to−roll)法が用いられており、作業性、信頼性、膜厚精度、平滑性の観点からドライフィルムタイプのソルダーレジストが求められている。また、このようなドライフィルムタイプのソルダーレジストは、シート又はロール状にて供給され、その形態における特性上、樹脂組成物中に柔軟性・造膜性に優れた樹脂成分を含有させる必要性がある。
【0004】
従来、プリント基板の反りやうねりを防止するため、焼結時の硬化収縮の低いソルダーレジストインキとして、可とう性に優れたウレタン(メタ)アクリレート化合物を含有した感光性樹脂組成物用いるものが知られている(特許文献1参照)。しかし、この感光性樹脂を用いたソルダーレジストはプリント基板の反りやうねりを防止できるものの、上述したICパッケージの製造工程における高温の熱処理には耐えられず、また必要な電気特性が得られないという欠点がある。
また、従来、1分子中に少なくとも1個のカルボキシル基および2個の水酸基を有する化合物と、ジオール化合物と、ポリイソシアネート化合物との反応物の末端イソシアネート化合物に、1分子中に重合性不飽和基、カルボキシル基および少なくとも1個の水酸基を有する化合物を反応させて得られた感光性樹脂を含有するソルダーレジストが提案されている(特許文献2参照)。しかしながら、このような感光性樹脂も同様に、上述したような高温の熱処理に対して必要な耐熱性に不足しているという問題があった。
他方、従来、耐熱性、密着性、電気絶縁性に優れたソルダーレジスト用の感光性樹脂組成物も知られている(特許文献3参照)。この樹脂は耐熱性、密着性、電気絶縁性には優れており、ある程度厚みのあるコア材を用いる従来のパッケージ基板には有用であったが、上述したような極めて薄いコア材に対しては反りやうねりを防止するといった要求を満たすのは困難であった。
【特許文献1】特開2002−229201号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2003−192760号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開2001−278947号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記した従来技術の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、ソルダーレジスト、特に、半導体パッケージ基板用レジストとして必要なはんだ耐熱性、密着性、電気絶縁性、HAST耐性に優れ、かつ硬化収縮が少なく極薄のコア材に対しても反りの無い基板を提供できる光硬化性・熱硬化性樹脂組成物、その硬化物及びドライフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明の基本的な態様としては、
(A)下記一般式(1)で示される多核エポキシ化合物(a)と不飽和基含有モノカルボン酸(b)との反応生成物に多塩基酸無水物(c)を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂、
(B)カルボキシル基含有ウレタン(メタ)アクリレート化合物、
(C)光重合開始剤、
(D)一分子中に2個以上の環状エーテル基及び/又は環状チオエーテル基を有する熱硬化性成分、及び
(E)希釈剤
を含有することを特徴とする光硬化性・熱硬化性樹脂組成物が提供される。
また、上記組成物に、
(F)硬化触媒
を含有することを特徴とする光硬化性・熱硬化性樹脂組成物が提供される。
他の態様として、キャリアフィルムとキャリアフィルム上に形成された前記光硬化性・熱硬化性樹脂組成物からなる光硬化性・熱硬化性樹脂層とを有する光硬化性・熱硬化性のドライフィルムが提供される。ドライフィルムは光硬化性・熱硬化性樹脂層上に剥離可能なカバーフィルムを有していてもよい。
【0007】
さらに、前記光硬化性・熱硬化性樹脂組成物、又は前記ドライフィルムを、活性エネルギー線照射及び/ 又は加熱により硬化させることにより得られたことを特徴とする硬化物、及び所定の回路パターンの導体層を有する回路基板上に永久保護膜としてのソルダーレジスト皮膜が形成されたプリント配線板において、上記ソルダーレジスト皮膜が前記光硬化性・熱硬化性樹脂組成物、又は前記ドライフィルムの硬化塗膜からなることを特徴とするプリント配線板が提供される。
【化2】

【発明の効果】
【0008】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂は、異種の芳香環を規則的に繰り返し含有する線状多核エポキシアクリレート化合物、特に軟化点の高いビフェニル骨格とナフタレン骨格とが交互に共重合された交互共重合型の線状多核エポキシアクリレート化合物の多塩基酸無水付加物であるため、光硬化性成分として含有する本発明の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物は、光硬化性、アルカリ現像性や基材に対する密着性に優れると共に、耐熱性、耐水性、耐無電解めっき性、耐薬品性、電気絶縁性、フレキシブル性、PCT耐性等の優れる。そのためはんだ耐熱性、密着性、電気絶縁性、HAST耐性に優れていることから、高い絶縁信頼性を要求されるQFP、BGA、CSPなどのパッケージ基板に用いることができる。
また、本発明の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物又はドライフィルムは、硬化収縮が少なく反りの無い基板を提供できることから、TAB、T−BGA、T−CSP、UT−CSPにも対応できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、(A)下記一般式(1)で示される多核エポキシ化合物(a)と不飽和基含有モノカルボン酸(b)との反応生成物に多塩基酸無水物(c)を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂、
(B)カルボキシル基含有ウレタン(メタ)アクリレート化合物、
(C)光重合開始剤、
(D)一分子中に2個以上の環状エーテル基及び/又は環状チオエーテル基を有する熱硬化性成分、及び
(E)希釈剤
を含有することを特徴とする光硬化性・熱硬化性樹脂組成物が、はんだ耐熱性、密着性、電気絶縁性、HAST耐性に優れ、かつ硬化収縮が少なく反りの無い基板を提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、はんだ耐熱性、密着性、電気絶縁性、HAST耐性に優れる、前記一般式(1)で示される多核エポキシ化合物(a)と不飽和基含有モノカルボン酸(b)との反応生成物に多塩基酸無水物(c)を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂(A)と、硬化収縮が少なく反りの無い基板を提供できる前記カルボキシル基含有ウレタン(メタ)アクリレート化合物(B)を併用することにより、お互いの特性を低下させることなく、本発明の目的を達成出来ることを見出した。
【0011】
上記目的を達成する為に、前記カルボキシル基含有感光性樹脂(A)と前記カルボキシル基含有ウレタン(メタ)アクリレート化合物(B)の配合比率は、85:15〜15:85の割合で配合することが好ましい。
はんだ耐熱性、密着性、電気絶縁性、HAST耐性を重視する場合には、前記カルボキシル基含有感光性樹脂(A)の比率を上記範囲内で高くし、硬化収縮が少なく反りの無い特性を重視する場合には、前記カルボキシル基含有ウレタン(メタ)アクリレート化合物(B)の比率を上記範囲内で高くすればよい。
【0012】
前記カルボキシル基含有感光性樹脂(A)の比率が85質量%より高くなると反りが悪くなり、逆に15質量%より低くなると耐熱性が悪くなるため、好ましくない。
なお、本明細書において、カルボキシル基含有ウレタン(メタ)アクリレート化合物とは、カルボキシル基含有ウレタンアクリレート化合物、カルボキシル基含有ウレタンメタクリレート化合物、及びそれらの混合物を総称する用語で、他の類似の表現についても同様である。
【化3】

【0013】
以下、本発明の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物の構成成分について、詳細に説明する。
まず、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂について説明する。前記一般式(1)で示される多核エポキシ化合物(a)は、1分子中に2個のグリシジル基を有する芳香族エポキシ化合物(以下、二官能芳香族エポキシ化合物という)と、1分子中に2個のフェノール性水酸基を有する芳香族アルコール(以下、二官能芳香族アルコールという)とを原料として、後述するような公知のエーテル化触媒を用い、溶媒中又は無溶媒下、交互に重合させ、得られたアルコール性の二級の水酸基にエピハロヒドリンを、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等の非プロトン性極性溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類等の公知の溶媒中、苛性ソーダ等のアルカリ金属水酸化物の存在下、反応させて得られる。
【0014】
次に、前記一般式(1)で示される多核エポキシ化合物(a)に不飽和基含有モノカルボン酸を、後述する有機溶剤の存在下あるいは非存在下で、ハイドロキノンや酸素などの重合禁止剤、及びトリエチルアミン等の三級アミン、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物、トリフェニルホスフィン等のリン化合物などの反応触媒の共存下、通常80℃〜130℃で反応させることにより、エポキシアクリレート化合物が得られる。
【0015】
さらに、上記反応により生成したエポキシアクリレート化合物のアルコール性水酸基に多塩基酸無水物を反応させることにより、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂が得られるが、この反応において、多塩基酸無水物の使用量は、上記エポキシアクリレート化合物中のアルコール性水酸基に対して無水物基が99:1〜1:99の割合が適しており、好ましくは生成する活性エネルギー線硬化性樹脂の酸価が50〜120mgKOH/gとなるような付加量とする。反応は、後述する有機溶剤の存在下又は非存在下、通常50〜130℃で行う。このとき必要に応じて、トリエチルアミン等の三級アミン、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等の四級アンモニウム塩、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物、トリフェニルホスフィン等のリン化合物を触媒として添加してもよい。
【0016】
前記二官能芳香族エポキシ化合物としては、下記式(2)〜(5)で示されるような芳香環を有するビフェノール型ジグリシジルエーテル、ビキシレノール型ジグリシジルエーテル、ビスフェノール型ジグリシジルエーテル、ナフタレン型ジグリシジルエーテル等の少なくとも1種の二官能芳香族アルコールとの交互共重合体における一方のモノマー成分とすることにより、硬化物の強度、耐熱性、電気絶縁性等に優れたエポキシ化合物が得られる。
【化4】

【0017】
このようなビフェノール型、ビキシレノール型、ビスフェノール型又はナフタレン型のジグリシジルエーテルとしては、例えばビフェノール化合物、ビキシレノール化合物、ビスフェノール化合物又はジヒドロキシナフタレンとエピクロルヒドリンとの反応から製造されるものを使用することができる。また、市販のエポキシ化合物も使用することができ、例えば、ビフェノール型ジグリシジルエーテルとしては、油化シェルエポキシ(株)製の商品名「エピコートYL−6056」等、ビキシレノール型ジグリシジルエーテルとしては油化シェルエポキシ(株)製の商品名「エピコートYX―4000」等、ビスフェノール型ジグリシジルエーテルとしては旭チバ(株)製の商品名「アラルダイト#260」、「アラルダイト#6071」等のビスフェノールA型エポキシ化合物、或いは大日本インキ化学工業(株)製の商品名「エピクロン830S」等のビスフェノールF型エポキシ化合物、或いは大日本インキ化学工業(株)製の商品名「エピクロンEXA1514」等のビスフェノールS型エポキシ化合物、ナフタレン型ジグリシジルエーテルとしては、大日本インキ化学工業(株)製の商品名「エピクロンHP−4032(D)」等を挙げる事ができ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0018】
本発明に使用する二官能芳香族アルコールは、その構造に特徴があり、耐熱性を高くするために芳香環を有し、対称構造或いは剛直な構造を有したものを使用することができる。このような化合物としては、例えば1,4―ジヒドロキシナフタレン、1,5―ジヒドロキシナフタレン、1,6―ジヒドロキシナフタレン、2,6―ジヒドロキシナフタレン、2,7―ジヒドロキシナフタレン、2,8―ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシナフタレン誘導体、ビキシレノール、ビフェノール等のビフェノール誘導体、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、アルキル基置換ビスフェノール等のビスフェノール誘導体、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン等のハイドロキノン誘導体等を挙げることができ、これらを単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0019】
二官能芳香族エポキシ化合物と二官能芳香族アルコールとの反応に使用される触媒としては、グリシジル基とフェノール性水酸基が定量的に反応するホスフィン類、アルカリ金属化合物、アミン類を単独で又は併用して用いるのが好ましい。これ以外の触媒は、グリシジル基とフェノール性水酸基との反応で生成するアルコール性の水酸基と反応し、ゲル化するので好ましくない。
【0020】
ホスフィン類としては、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等のトリアルキルもしくはトリアリールホスフィン又はこれらと酸化物との塩類などが挙げられる。
アルカリ金属化合物としては、ナトリウム、リチウム、カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、ハロゲン化物、アルコラート、アミドなどが挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
アミン類としては、脂肪族又は芳香族の第一級、第二級、第三級、第四級アミン類などが挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。アミン類の具体例としては、トリエタノールアミン、N,N―ジメチルピペラジン、トリエチルアミン、トリ―n―プロピルアミン、ヘキサメチレンテトラミン、ピリジン、テトラメチルアンモニウムブロマイドなどが挙げられる。
【0022】
これらの触媒は、二官能芳香エポキシ化合物及び二官能芳香族アルコールの仕込量100質量部に対して0.001〜1質量部、好ましくは0.01〜1質量部の範囲で用いることが好ましい。この理由は、触媒の使用量が0.001質量部未満では反応に時間がかかり経済的でなく、一方、1質量部を超えるものについては逆に反応が早いため制御がし難くなるので好ましくない。
【0023】
二官能芳香族エポキシ樹脂化合物と二官能芳香族アルコールは、不活性ガス気流中或いは空気中で前記触媒下、130℃〜180℃の温度範囲で反応させることが好ましい。
【0024】
前記一般式(1)で示される多核エポキシ化合物(a)は、後述するような公知の溶媒中、アルカリ金属水酸化物との存在下にて、前述した二官能芳香族エポキシ化合物と二官能芳香族アルコールとの反応生成物におけるアルコール性水酸基とエピハロヒドリンと反応させることによって作製することができる。
【0025】
前記エピハロヒドリンとしては、例えばエピクロルヒドリン、エピブロムヒドリン、エピヨードヒドリン、β―メチルエピクロルヒドリン、β―メチルエピブロムヒドリン、β―メチルエピヨードヒドリンなどが用いられる。
【0026】
前記一般式(1)で示される多核エポキシ化合物(a)において、前記エピハロヒドリンの使用量は前述の二官能芳香族エポキシ化合物と二官能芳香族アルコールとの反応生成物におけるアルコール性水酸基1当量に対して約0.1倍当量以上使用すればよい。但し、水酸基1当量に対して15倍当量を超える量の使用は、容積効率が悪くなり好ましくない。
【0027】
また、溶媒としては、ジメチルスルホキシド、N,N―ジメチルホルムアミド、N,N―ジメチルアセトアミド等の非プロトン性極性溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類等の公知の溶媒が挙げられる。この溶媒の使用量は、前記二官能芳香族エポキシ化合物と二官能芳香族アルコールとの反応生成物に対して5〜300質量%が好ましい。この理由は、5質量%未満ではアルコール性水酸基とエピハロヒドリンとの反応が遅くなり、一方、300質量%を超えると容積効率が悪くなり好ましくない。
【0028】
また、アルカリ金属水酸化物としては、苛性ソーダ、苛性カリ、水酸化リチウム、水酸化カルシウムなどが使用でき、特に苛性ソーダが好ましい。このアルカリ金属水酸化物の使用量は、前記二官能芳香族エポキシ化合物と前記二官能芳香族アルコールとの反応生成物においてエポキシ化したいアルコール性水酸基1当量に対して0.5〜2倍当量とすることが好ましい。
【0029】
二官能芳香族エポキシ化合物と二官能芳香族アルコールとの反応生成物におけるアルコール性水酸基とエピハロヒドリンとの反応温度は、20〜100℃が好ましい。この理由は、反応温度が20℃未満であると反応が遅くなり、長時間の反応が必要となり、一方、反応温度が100℃を超えると副反応が多く起こり好ましくない。
【0030】
また、二官能芳香族エポキシ化合物と二官能芳香族アルコールとの反応生成物における前記アルコール性水酸基と前記エピハロヒドリンとの反応は、ジメチルスルホキシド又は四級アンモニウム塩又は1,3―ジメチル―2―イミドゾリンとアルカリ金属水酸化物の共存下、該アルカリ金属水酸化物の量を調整することにより行うこともできる。その際、溶剤としてメタノールやエタノール等のアルコール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン等の環状エーテル化合物などを併用しても構わない。
【0031】
四級アンモニウム塩としてはテトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、トリメチルアンモニウムクロライドなどが用いうる具体例として挙げられ、その使用量は原料として使用するエポキシ樹脂のエポキシ化させたい水酸基1当量に対して0.3〜50gが好ましい。エポキシ化させたい水酸基1当量に対して0.3g未満の場合、原料として使用するエポキシ樹脂のアルコール性水酸基とエピハロヒドリンとの反応が遅くなり、長時間の反応が必要となるので好ましくない。一方、エポキシ化させたい水酸基1当量に対して50gを超えると、増量した硬化はほとんどなくなると共に、コストが高くなり好ましくない。
【0032】
前記一般式(1)で示される多核エポキシ化合物(a)に、不飽和基含有モノカルボン酸(b)を反応させて不飽和エポキシアクリレートに化合物を得るにあたっては、前記一般式(1)で示される多核エポキシ化合物に、該化合物中に含まれるエポキシ基1モルに対して不飽和基含有モノカルボン酸を0.8〜1.3モルの割合で配合し、不活性溶媒中又は無溶剤で、60〜150℃、好ましくは70〜130℃に加熱して、好ましくは空気の存在下に反応を行う。反応中の重合によるゲル化を防止するため、メチルハイドロキノン、ハイドロキノン等のハイドロキノン類;p−ベンゾキノン、p−トルキノン等のベンゾキノン類などの公知慣用の重合禁止剤を用いるのが好ましい。また、反応時間を短縮するために、エステル化触媒を用いるのが好ましく、エステル化触媒としては、例えば、N,N―ジメチルアニリン、ピリジン、トリエチルアミン等の三級アミン及びその塩酸塩又は臭素酸塩;テトラメチルアンモニウムクロライド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等の四級アンモニウム塩;パラトルエンスルホン酸等のスルホン酸;ジメチルスルホキシド、メチルスルホキシド等のスルホニウム塩;トリフェニルホスフィン、トリ―n―ブチルホスフィン等のホスフィン類;塩化リチウム、臭化リチウム、塩化第一錫、塩化亜鉛等の金属ハロゲン化物などの公知慣用のものを用いることができる。不活性溶剤としては、例えばトルエン、キシレンなどを用いることができる。
【0033】
前記不飽和基含有モノカルボン酸(b)の代表的なものとしては、アクリル酸、メタアクリル酸、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、フェニルグリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸カプロラクトン付加物など水酸基含有アクリレートの不飽和二塩基酸無水物付加物などが挙げられる。ここで特に好ましいのはアクリル酸、メタアクリル酸である。これら不飽和基含有モノカルボン酸は単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0034】
前記反応により生成したエポキシアクリレート化合物のアルコール性水酸基に多塩基酸無水物(c)を反応させて、本発明のカルボキシル基含有感光性樹脂(A)が得られるが、この反応において、前記多塩基酸無水物(c)の使用量は、上記反応生成物中のアルコール性水酸基に対して無水物基が99:1〜1:99の割合が適しており、50〜200mgKOH/g、好ましくは50〜120mgKOH/gの範囲内にある酸価を有することが望ましい。前記カルボキシル基含有感光性樹脂(A)の酸価が50mgKOH/gよりも低いときは、アルカリ水溶液に対する溶解性が悪くなり、形成した塗膜の現像が困難になる。一方、200mgKOH/gよりも高くなると、露光の条件によらず露光部の表面まで現像されてしまい、好ましくない。
【0035】
反応は、後述する有機溶剤の存在下又は非存在下でハイドロキノンや酸素等の重合禁止剤の存在下、通常50〜130℃で行う。このとき必要に応じて、トリエチルアミン等の三級アミン、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等の四級アンモニウム塩、2―
エチル―4―メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物、トリフェニルホスフィン等のリン化合物等を触媒として添加してもよい。
【0036】
前記多塩基酸無水物(c)としては、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水ナジック酸、3,6−エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、テトラブロモ無水フタル酸等の脂環式二塩基酸無水物;無水コハク酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、オクテニル無水コハク酸、ペンタドデセニル無水コハク酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸等の脂肪族又は芳香族二塩基酸無水物、あるいはビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等の脂肪族又は芳香族四塩基酸二無水物が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。これらの中でも、脂環式二塩基酸無水物が特に好ましい。
【0037】
本発明のカルボキシル基含有感光性樹脂(A)の数平均分子量は、400〜10,000、好ましくは500〜7,000、より好ましくは500〜3,000である。活性エネルギー線硬化性樹脂の数平均分子量が400未満では、得られる硬化物の強靭性が十分でなく、一方、10,000を超えると溶媒に対する溶解性が低下するので好ましくない。
【0038】
次に、本発明の第二の特徴であるカルボキシル基含有ウレタン(メタ)アクリレート化合物(B)は、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート化合物(d)、ジメチロールアルカン酸(e)、及びジイソシアネート化合物(f)を反応させて得られる化合物、及び/又はヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート化合物(d)、ジメチロールアルカン酸(e)、ジイソシアネート化合物(f)、及びポリマーポリオール(g)を反応させて得られる化合物であり、酸価が30〜100mgKOH/gとなる化合物である。
【0039】
前記カルボキシル基含有ウレタン(メタ)アクリレート化合物(B)は、基本的には、線状のウレタン結合を有するカルボキシル基含有の感光性樹脂であるため、柔軟性を有しており、硬化収縮による反りを低減させる効果がある。
【0040】
前記カルボキシル基含有ウレタン(メタ)アクリレート化合物(B)の合成に用いられるヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート化合物(d)は、基本的には、ヒドロキシル基を1つ有する(メタ)アクリレート化合物(d−1)、又はヒドロキシル基を2個有する(メタ)アクリレート(d−2)である。
【0041】
前記ヒドロキシル基を1つ有する(メタ)アクリレート化合物(d−1)としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートや、グリシジル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸の反応物などが挙げられる。このようなヒドロキシル基を1個有する(メタ)アクリレート化合物は、本発明のカルボキシル基含有ウレタン(メタ)アクリレート化合物の末端に付加し、分子成長を止める停止剤として働く。
【0042】
一方、ヒドロキシル基を2個有する(メタ)アクリレート(d−2)としては、二官能エポキシ化合物に、(メタ)アクリル酸を付加した二官能エポキシ(メタ)アクリレート化合物や、二官能オキセタン化合物に、(メタ)アクリル酸を付加した二官能オキセタン(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。
具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂などの芳香環を持った二官能エポキシ樹脂の(メタ)アクリレート化物が好ましい。これら二官能エポキシ(メタ)アクリレート化物の分子量としては、450〜2,000の範囲内に入るものが、硬化塗膜特性の面から、好ましい。
【0043】
前記ジメチロールアルカン酸(e)は、三級のカルボキシル基と一級の水酸基を2個持つ化合物であり、具体的には、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロールペンタン酸、ジメチロールヘキサン酸などが挙げられる。これらの中で、硬化塗膜の特性等の面から、ジメチロールプロピオン酸、及びジメチロールブタン酸が好ましい。
【0044】
前記ジイソシアネート化合物(f)としては、フェニレンジイソシアネート、トルイレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、トリメチルフェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。これらの中で、特に、イソホロンジイソシアネートが、反応のコントロールが容易なことから、好ましい。
【0045】
本発明の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物に用いられるカルボキシル基含有ウレタン(メタ)アクリレート化合物(B)の合成には、更に、硬化収縮を低減させるために、ポリマーポリオール(g)を用いても良い。
【0046】
前記ポリマーポリオール(g)としては、基本的には、三次元化し難いジオール化合物が好ましいが、分岐構造を持たせるため、トリオール類を添加することもできる。
具体的には、ポリエーテルポリオール類、ポリエステルポリオール類、ポリカーボネートポリオール類、ポリブタジエングリコール類などが挙げられる。
特に、ジオール又はビスフェノール類と、ジメチルカーボネートなどの炭酸エステル類から誘導されるポリカーボネートポリオールが、耐薬品性等の面から、好ましい。
【0047】
これらのヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート化合物(d)、前記ジメチロールアルカン酸(e)、前記ジイソシアネート化合物(f)、又は更に、前記ポリマーポリオール(g)は、公知慣用の方法でウレタン化することにより、本発明で用いられるカルボキシル基含有ウレタン(メタ)アクリレート化合物(B)を合成することができる。
具体的には、イソシアネート基と水酸基が、当量比が0.8〜1.05となり、かつ得られるカルボキシル基含有ウレタン(メタ)アクリレート化合物(B)の酸価が、30〜100mgKOH/gとなるように仕込み、反応させる。反応条件としては、三次元化し難い、金属触媒を用いて、無溶剤又は非プロトン性溶剤中で、常温〜150℃、好ましくは、60〜120℃で反応させることにより、合成することができる。
前記カルボキシル基含有ウレタン(メタ)アクリレート化合物(B)の酸価が、30mgKOH/g未満の場合、希アルカリ水溶液による現像性が得られなくなるので、好ましくない。一方、酸価が、100mgKOH/gを超えた場合、耐現像性が得られなくなったり、無電解めっき耐性等が低下するので好ましくない。
【0048】
本発明の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物は、前記カルボキシル基含有感光性樹脂(A)、及び前記カルボキシル基含有ウレタン(メタ)アクリレート化合物(B)を効率良く、光硬化させるため、(C)光重合開始剤が用いられる。
前記光重合開始剤(C)としては、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインとベンゾインアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシー2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシー2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン等のアセトフェノン類;2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン等のアミノアセトフェノン類;2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンジル、ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;又はキサントン類;(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−ペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、エチル−2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルフォスフィネイト等のフォスフィンオキサイド類、更に(2−(アセチルオキシイミノメチル)チオキサンテン−9−オン)、(1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム))等のオキシムエステル類が、挙げられる。
【0049】
これら公知慣用の光重合開始剤を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。前記光重合開始剤(C)の配合割合は、前記カルボキシル基含有感光性樹脂(A)、及び前記カルボキシル基含有ウレタン(メタ)アクリレート化合物(B)の合計量100質量部に対して、0.01〜30質量部が適当であるが、上記のオキシム系光重合開始剤の場合、0.01〜20質量部、好ましくは0.01〜5質量部が適当である。光重合開始剤の使用量が上記範囲より少ない場合、光硬化性が悪くなり、一方、多い場合は硬化塗膜特性が低下するので好ましくない。
【0050】
また、本発明の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物は、光開始助剤として3級アミン化合物やベンゾフェノン化合物を含有することができる。そのような3級アミン類としては、エタノールアミン類、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン(日本曹達社製ニッソキュアーMABP)、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル(日本化薬社製カヤキュアーEPA)、2−ジメチルアミノ安息香酸エチル(インターナショナルバイオ−シンセエティックス社製Quantacure DMB)、4−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル(インターナショナルバイオ−シンセエティックス社製Quantacure BEA)、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエチルエステル(日本化薬社製カヤキュアーDMBI)、4−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル(Van Dyk社製Esolol 507)、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン(保土ヶ谷化学社製EAB)等が挙げられる。これら公知慣用の3級アミン化合物は、単独で又は2種類以上の混合物として使用できる。特に好ましい3級アミン化合物は、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノンであるが、特にこれらに限られるものではなく、波長300〜420nmの領域で光を吸収し、水素引き抜き型光重合開始剤と併用することによって増感効果を発揮するものであれば、光重合開始剤、光開始助剤に限らず、単独であるいは複数併用して使用できる。
【0051】
本発明の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物は、硬化物の耐熱性を向上させるために、一分子中に2個以上の環状エーテル基及び/又は環状チオエーテル基を有する前記熱硬化性成分(D)(以下、環状(チオ)エーテル化合物と略す場合がある。)を配合している。
このような一分子中に2個以上の環状エーテル基及び/又は環状チオエーテル基を有する熱硬化性成分(D)としては、一分子中に3、4または5員環の環状エーテル基、又は環状チオエーテル基のいずれか一方又は2種類の基を2個以上有する化合物であり、例えば、一分子内に少なくとも2つ以上のエポキシ基を有する化合物、すなわち多官能エポキシ化合物(D−1)、一分子内に少なくとも2つ以上のオキセタン基を有する化合物、すなわち多官能オキセタン化合物(D−2)、一分子内に2個以上のチオエーテル基を有する化合物、すなわちエピスルフィド樹脂などが挙げられる。
【0052】
前記多官能性エポキシ化合物(D−1)としては、例えば、ジャパンエポキシレジン社製のエピコート828、エピコート834、エピコート1001、エピコート1004、大日本インキ化学工業社製のエピクロン840、エピクロン850、エピクロン1050、エピクロン2055、東都化成社製のエポトートYD−011、YD−013、YD−127、YD−128、ダウケミカル社製のD.E.R.317、D.E.R.331、D.E.R.661、D.E.R.664、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社のアラルダイド6071、アラルダイド6084、アラルダイドGY250、アラルダイドGY260、住友化学工業社製のスミ−エポキシESA−011、ESA−014、ELA−115、ELA−128、旭化成工業社製のA.E.R.330、A.E.R.331、A.E.R.661、A.E.R.664等(何れも商品名)のビスフェノールA型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン社製のエピコートYL903、大日本インキ化学工業社製のエピクロン152、エピクロン165、東都化成社製のエポトートYDB−400、YDB−500、ダウケミカル社製のD.E.R.542、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のアラルダイド8011、住友化学工業社製のスミ−エポキシESB−400、ESB−700、旭化成工業社製のA.E.R.711、A.E.R.714等(何れも商品名)のブロム化エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン社製のエピコート152、エピコート154、ダウケミカル社製のD.E.N.431、D.E.N.438、大日本インキ化学工業社製のエピクロンN−730、エピクロンN−770、エピクロンN−865、東都化成社製のエポトートYDCN−701、YDCN−704、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のアラルダイドECN1235、アラルダイドECN1273、アラルダイドECN1299、アラルダイドXPY307、日本化薬社製のEPPN−201、EOCN−1025、EOCN−1020、EOCN−104S、RE−306、住友化学工業社製のスミ−エポキシESCN−195X、ESCN−220、旭化成工業社製のA.E.R.ECN−235、ECN−299等(何れも商品名)のノボラック型エポキシ樹脂;大日本インキ化学工業社製のエピクロン830、ジャパンエポキシレジン社製エピコート807、東都化成社製のエポトートYDF−170、YDF−175、YDF−2004、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のアラルダイドXPY306等(何れも商品名)のビスフェノールF型エポキシ樹脂;東都化成社製のエポトートST−2004、ST−2007、ST−3000(商品名)等の水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン社製のエピコート604、東都化成社製のエポトートYH−434、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のアラルダイドMY720、住友化学工業社製のスミ−エポキシELM−120等(何れも商品名)のグリシジルアミン型エポキシ樹脂;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のアラルダイドCY−350(商品名)等のヒダントイン型エポキシ樹脂;ダイセル化学工業社製のセロキサイド2021、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のアラルダイドCY175、CY179等(何れも商品名)の脂環式エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン社製のYL−933、ダウケミカル社製のT.E.N.、EPPN−501、EPPN−502等(何れも商品名)のトリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン社製のYL−6056、YX−4000、YL−6121(何れも商品名)等のビキシレノール型もしくはビフェノール型エポキシ樹脂又はそれらの混合物;日本化薬社製EBPS−200、旭電化工業社製EPX−30、大日本インキ化学工業社製のEXA−1514(商品名)等のビスフェノールS型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン社製のエピコート157S(商品名)等のビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン社製のエピコートYL−931、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のアラルダイド163等(何れも商品名)のテトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のアラルダイドPT810、日産化学工業社製のTEPIC等(何れも商品名)の複素環式エポキシ樹脂;日本油脂社製ブレンマーDGT等のジグリシジルフタレート樹脂;東都化成社製ZX−1063等のテトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂;新日鉄化学社製ESN−190、ESN−360、大日本インキ化学工業社製HP−4032、EXA−4750、EXA−4700等のナフタレン基含有エポキシ樹脂;大日本インキ化学工業社製HP−7200、HP−7200H等のジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂;日本油脂社製CP−50S、CP−50M等のグリシジルメタアクリレート共重合系エポキシ樹脂;さらにシクロヘキシルマレイミドとグリシジルメタアクリレートの共重合エポキシ樹脂;エポキシ変性のポリブタジエンゴム誘導体(例えばダイセル化学工業製PB−3600等)、CTBN変性エポキシ樹脂(例えば東都化成社製のYR−102、YR−450等)等が挙げられるが、これらに限られるものではない。これらのエポキシ樹脂は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも特にノボラック型エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂又はそれらの混合物が好ましい。
【0053】
前記多官能オキセタン化合物(D−2)としては、ビス[(3−メチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、1,4−ビス[(3−メチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、(3−メチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート、(3−メチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレートやそれらのオリゴマー又は共重合体等の多官能オキセタン類の他、オキセタンとノボラック樹脂、ポリ(p−ヒドロキシスチレン)、カルド型ビスフェノール類、カリックスアレーン類、カリックスレゾルシンアレーン類、又はシルセスキオキサンなどの水酸基を有する樹脂とのエーテル化物などが挙げられる。その他、オキセタン環を有する不飽和モノマーとアルキル(メタ)アクリレートとの共重合体なども挙げられる。
【0054】
一分子中に2個以上の環状チオエーテル基を有する化合物としては、例えば、ジャパンエポキシレジン社製のビスフェノールA型エピスルフィド樹脂 YL7000などが挙げられる。また、同様の合成方法を用いて、ノボラック型エポキシ樹脂のエポキシ基の酸素原子を硫黄原子に置き換えたエピスルフィド樹脂なども用いることができる。
【0055】
このような環状(チオ)エーテル化合物(D)の配合量は、前記カルボキシル基含有感光性樹脂(A)、及び前記カルボキシル基含有ウレタン(メタ)アクリレート化合物(B)のカルボキシル基の合計量1当量に対して、0.5〜2.0当量、好ましくは、0.8〜1.5当量となる範囲である。前記環状(チオ)エーテル化合物(D)の配合量が、上記範囲より少ない場合、カルボキシル基が残り、耐熱性、耐アルカリ性、電気絶縁性などが低下するので、好ましくない。一方、上記範囲を超えた場合、低分子量の環状(チオ)エーテル化合物(D)が残存することにより、塗膜の強度などが低下するので、好ましくない。
【0056】
さらに、本発明の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物は、前記カルボキシル基含有感光性樹脂(A)、及び前記カルボキシル基含有ウレタン(メタ)アクリレート化合物(B)の合成や組成物の調製のため、又は光硬化性を向上させるため、(E)希釈剤が用いられる。前記希釈剤(E)としては、非反応性の希釈剤として、有機溶剤(E−1)、又は反応性の希釈剤として、重合性モノマー(E−2)を使用できる。
【0057】
前記有機溶剤(E−1)としては、ケトン類、芳香族炭化水素類、グリコールエーテル類、グリコールエーテルアセテート類、エステル類、アルコール類、脂肪族炭化水素、石油系溶剤などが挙げることができる。より具体的には、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールブチルエーテルアセテート等のグリコールエーテルアセテート類;酢酸エチル、酢酸ブチル及び上記グリコールエーテル類の酢酸エステル化物などのエステル類;エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤などである。このような有機溶剤(E−1)は、単独で又は2種以上の混合物として用いられる。
前記有機溶剤(E−1)の配合量は、特に限定されるものではなく、コーティング性や乾燥塗膜の膜厚確保の面に配慮して決めることができるが、前記カルボキシル基含有感光性樹脂(A)、及び前記カルボキシル基含有ウレタン(メタ)アクリレート化合物(B)の合計量100質量部に対して300質量部以下が好ましい。
【0058】
また、反応性の希釈剤である前記重合性モノマー(E−2)としては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレートなどのヒドロキシアルキルアクリレート類;エチレングリコール、メトキシテトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコールのモノ又はジアクリレート類;N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドなどのアクリルアミド類;N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリレートなどのアミノアルキルアクリレート類;ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス−ヒドロキシエチルイソシアヌレートなどの多価アルコール又はこれらのエチレオキサイド付加物もしくはプロピレンオキサイド付加物などの多価アクリレート類;フェノキシアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、及びこれらのフェノール類のエチレンオキサイド付加物もしくはプロピレンオキサイド付加物などのアクリレート類;グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレートなどのグリシジルエーテルのアクリレート類;及びメラミンアクリレート、及び/又は上記アクリレートに対応する各メタクリレート類などが挙げられる。これらの中で、特に分子中に2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物である多官能(メタ)アクリレート化合物が、光硬化性に優れ、好ましい。
【0059】
さらに、ビスフェノールA、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールおよびクレゾールノボラック型エポキシ樹脂などの多官能エポキシ樹脂に、アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート樹脂や、さらにそのエポキシアクリレート樹脂の水酸基に、ペンタエリスリトールトリアクリレートなどのヒドロキシアクリレートとイソホロンジイソシアネートなどのジイソシアネートのハーフウレタン化合物を反応させたエポキシウレタンアクリレート化合物などが挙げられる。このようなエポキシアクリレート系樹脂は、指触乾燥性を低下させることなく、光硬化性を向上させることができる。
【0060】
前記重合性モノマー(E−2)の配合量は、前記カルボキシル基含有感光性樹脂(A)、及び前記カルボキシル基含有ウレタン(メタ)アクリレート化合物(B)の合計量100質量部に対して、120質量部以下、より好ましくは、10〜70質量部の割合である。前記配合量が、120質量部を超えた場合、電気絶縁性等が低下したり、塗膜が脆くなるので好ましくない。
【0061】
本発明の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物は、前記カルボキシル基含有感光性樹脂(A)及び前記カルボキシル基含有ウレタン(メタ)アクリレート化合物(B)のカルボキシル基と、分子中に2個以上の環状エーテル基及び/又は環状チオエーテル基を有する前記熱硬化性成分(D)の硬化反応を促進するため、(F)硬化触媒を配合することが好ましい。
前記硬化触媒(F)としては、例えば、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4−(ジメチルアミノ)−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メトキシ−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メチル−N,N−ジメチルベンジルアミン等のアミン化合物、アジピン酸ヒドラジド、セバシン酸ヒドラジド等のヒドラジン化合物;トリフェニルホスフィン等のリン化合物など、また市販されているものとしては、例えば四国化成工業社製の2MZ−A、2MZ−OK、2PHZ、2P4BHZ、2P4MHZ(いずれもイミダゾール系化合物の商品名)、サンアプロ社製のU−CAT3503N、U−CAT3502T(いずれもジメチルアミンのブロックイソシアネート化合物の商品名)、DBU、DBN、U−CATSA102、U−CAT5002(いずれも二環式アミジン化合物及びその塩)などがある。特に、これらに限られるものではなく、エポキシ樹脂やオキセタン化合物の熱硬化触媒、もしくはエポキシ基及び/又はオキセタニル基とカルボキシル基の反応を促進するものであればよく、単独で又は2種以上を混合して使用してもかまわない。また、密着性付与剤としても機能するグアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メラミン、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン、2−ビニル−2,4−ジアミノ−S−トリアジン、2−ビニル−4,6−ジアミノ−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物等のS−トリアジン誘導体を用いることもでき、好ましくはこれら密着性付与剤としても機能する化合物を上記のような熱硬化触媒と併用する。
【0062】
前記硬化触媒(F)の配合量は通常の量的割合で充分であり、例えば全樹脂組成物100質量部に対して、0.1〜20質量部、好ましくは0.5〜15.0質量部の割合である。前記硬化触媒(F)の配合量が、上記範囲より少ない場合、硬化時間が長くなり、作業性が低下するとともに、銅箔等の酸化が激しくなるので好ましくない。一方、前記硬化触媒(F)の配合量が、上記範囲を超えた場合、電気特性が低下したり、あるいは仮乾燥後の放置ライフが短くなるので、好ましくない。
【0063】
また、本発明の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物は、さらに硬化物の密着性、機械的強度、線膨張係数などの特性を向上させる目的で、無機充填材を配合することができる。例えば、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、酸化ケイ素粉、微粉状酸化ケイ素、無定形シリカ、タルク、クレー、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、雲母粉などの公知慣用の無機充填剤が使用できる。その配合比率は樹脂組成物の0〜80質量%である。
【0064】
本発明の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物は、さらに必要に応じて、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック、ナフタレンブラックなどの公知慣用の着色剤、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、t−ブチルカテコール、ピロガロール、フェノチアジンなどの公知慣用の熱重合禁止剤、微粉シリカ、有機ベントナイト、モンモリロナイトなどの公知慣用の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系などの消泡剤及び/又はレベリング剤、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系等のシランカップリング剤などのような公知慣用の添加剤類を配合することができる。
【0065】
本発明の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物は、例えば前記希釈剤(E)で塗布方法に適した粘度に調整し、回路形成された基板上に、ディップコート法、フローコート法、ロールコート法、バーコーター法、スクリーン印刷法、カーテンコート法等の方法により全面塗布し、60〜100℃の温度で組成物中に含まれる有機溶剤を揮発乾燥(仮乾燥)させることにより、タックフリーの塗膜を形成できる。その後、接触式(又は非接触方式)により、パターンを形成したフォトマスクを通して選択的に活性エネルギー線により露光し、未露光部を希アルカリ水溶液(例えば0.3〜3%炭酸ソーダ水溶液)により現像してレジストパターンが形成される。
【0066】
上記回路形成された基板に使用される基材としては、紙フェノール、紙エポキシ、ガラス布エポキシ、ガラスポリイミド、ガラス布/不繊布エポキシ、ガラス布/紙エポキシ、合成繊維エポキシ、フッ素・ポリエチレン・PPO・シアネートエステル等を用いた高周波回路用銅張積層版等の材質を用いたもので全てのグレード(FR−4等)の銅張積層版、その他ポリイミドフィルム、PETフィルム、ガラス基板、セラミック基板、ウエハ板等を挙げることができる。
【0067】
アルカリ水溶液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、アミン類などのアルカリ水溶液が使用できる。
また、活性エネルギー線照射に用いられる照射光源としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ又はメタルハライドランプなどが適当である。その他、レーザー光線なども活性エネルギー線として利用できる。
前記現像方法としては、ディッピング法、シャワー法、スプレー法、ブラシ法等によることができ、現像液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、アミン類などのアルカリ水溶液が使用できる。
【0068】
さらに、例えば140〜180℃の温度に加熱して熱硬化させることにより、前記カルボキシル基含有感光性樹脂(A)、及び前記カルボキシル基含有ウレタン(メタ)アクリレート化合物(B)のカルボキシル基と、一分子中に2個以上の環状エーテル基及び/又は環状チオエーテル基を有する前記熱硬化性成分(D)が反応し、耐熱性、耐薬品性、耐吸湿性、密着性、電気特性などの諸特性に優れた硬化塗膜を形成することができる。
【0069】
本発明の光硬化性・熱硬化性組成物をドライフィルムとして使用する場合を以下に示す。
光硬化性・熱硬化性ドライフィルムはキャリアフィルムと前記光硬化性・熱硬化性樹脂組成物をキャリアフィルムまたはカバーフィルムに塗布・乾燥して得られる光硬化性・熱硬化性樹脂層と、樹脂層上に剥離可能なカバーフィルムを有するものである。
キャリアフィルムとしては、10〜150μmの厚みのPET等のポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム等が用いられる。
光硬化性・熱硬化性樹脂層は、光硬化性・熱硬化性組成物をブレードコーター、リップコーター、コンマコーター、フィルムコーター等でキャリアフィルムまたはカバーフィルムに10〜150μmの厚さで均一に塗布し乾燥して形成される。
カバーフィルムとしては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等を使用することができるが、光硬化性・熱硬化性樹脂層との接着力が、支持フィルムよりも小さいものが良い。
カバーフィルムを剥がし、光硬化性・熱硬化性樹脂層と回路形成された基材を重ね、ラミネーター等を用いて張り合わせ、回路形成された基材上に光硬化性・熱硬化性樹脂層を形成する。形成された光硬化性・熱硬化性樹脂層は、前記と同様に露光、現像、加熱硬化して、硬化塗膜を形成することができる。キャリアフィルムは、露光前又は露光後のいずれかに剥離すれば良い。
【実施例】
【0070】
以下に実施例および比較例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明が下記実施例に限定されるものではないことはもとよりである。
【0071】
合成例1:本発明のカルボキシル基含有感光性樹脂の合成
ガス導入管、撹拌装置、冷却管、温度計、及びアルカリ金属水酸化物水溶液の連続滴下用の滴下ロートを備えた反応容器に水酸基当量80g/当量の1,5―ジヒドロキシナフタレン224部とビスフェノールA型エポキシ樹脂のエピコート828(ジャパンエポキシレジン社製、エポキシ当量189g/当量)1075部を仕込み、窒素雰囲気下にて、撹拌下110℃で溶解させた。その後、トリフェニルホスフィン0.65部を添加し、反応容器内の温度を150℃まで昇温し、温度を150℃で保持しながら、約90分間反応させ、エポキシ当量452g/当量のエポキシ化合物(4―a)を得た。次にフラスコ内の温度を40℃まで冷却し、エピクロルヒドリン1920部、トルエン1690部、テトラメチルアンモニウムブロマイド70部を加え、撹拌下45℃まで昇温し保持する。その後、48%水酸化ナトリウム水溶液364部を60分間かけて連続滴下し、その後、さらに6時間反応させた。反応終了後、過剰のエピクロルヒドリン及びトルエンの大半を減圧蒸留して回収し、副生塩とジメチルスルホキシドを含む反応生成物をメチルイソブチルケトンに溶解させ、水洗した。有機溶媒層と水層を分離後、有機溶媒層よりメチルイソブチルケトンを減圧蒸留して留去し、エポキシ当量277g/当量の多核エポキシ化合物(4−b)を得た。得られた多核エポキシ化合物(4−b)は、エポキシ当量から計算すると、エポキシ化合物(4−a)におけるアルコール性水酸基1.98個のうち約1.59個がエポキシ化されている。従って、アルコール性水酸基のエポキシ化率は約80%である。次に多核エポキシ化合物(4−b)277部を撹拌装置、冷却管及び温度計を備えたフラスコに入れ、カルビトールアセテート290部を加え、加熱溶解し、メチルハイドロキノン0.46部と、トリフェノルホスフィン1.38部を加え、95〜105℃に加熱し、アクリル酸72部を徐々に滴下し、16時間反応させた。この反応生成物を、80〜90℃まで冷却し、テトラヒドロフタル酸無水物129部を加え、8時間反応させた。反応は、電位差摘定による反応液の酸価、全酸化測定を行い、得られる付加率にて追跡し、反応率95%以上を終点とした。このようにして得られたカルボキシル基含有活性エネルギー線硬化性樹脂(4−c)は、固形分62%、酸価100mgKOH/gであった。次に、活性エネルギー線硬化樹脂(2−a)と(4−c)を、固形物が(2−a):(4−c)=1:1となる割合で混合する。このようにして得られた活性エネルギー線硬化性樹脂は、固形物61%,酸価100mgKOH/gであった。以下、この反応溶液をワニスAと称す。
【0072】
合成例2:カルボキシル基を有するウレタン(メタ)アクリレート化合物の合成
温度計、撹拌機および環流冷却器を備えた5Lセパラブルフラスコに、ポリマーポリオールとしてポリカプロラクトンジオール(ダイセル化学工業社製PLACCEL208、分子量830) 1,245g、カルボキシル基を有するジヒドロキシル化合物としてジメチロールプロピオン酸 201g、ポリイソシアナートとしてイソホロンジイソシアナート 777g及びヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートとして2−ヒドロキシエチルアクリレート 119g、さらにp−メトキシフェノール及びジ−t−ブチル−ヒドロキシトルエンを各々0.5gずつ投入した。撹拌しながら60℃まで加熱して停止し、ジブチル錫ジラウレート0.8gを添加した。反応容器内の温度が低下し始めたら再度加熱して、80℃で撹拌を続け、赤外線吸収スペクトルでイソシアナート基の吸収スペクトル(2280cm−1)が消失したことを確認して反応を終了し、粘稠液体のウレタンアクリレート化合物を得た。PMAを用いて不揮発分=50質量%に調整した。固形物の酸価47mgKOH/g、不揮発分50%のカルボキシル基を有するウレタン(メタ)アクリレート化合物を得た。以下、この反応溶液をワニスBと称す。
【0073】
合成例3:本発明とは異なる汎用のカルボキシル基含有感光性樹脂の合成
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エピクロンN−695、大日本インキ化学工業社製、エポキシ当量220)330gを、ガス導入管、撹拌装置、冷却管及び温度計を備えたフラスコに入れ、PMA340gを加え、加熱溶解し、ハイドロキノン0.46gと、トリフェニルホスフィン1.38gを加えた。この混合物を95〜105℃に加熱し、アクリル酸108gを徐々に滴下し、16時間反応させた。この反応生成物を、80〜90℃まで冷却し、テトラヒドロフタル酸無水物68gを加え、8時間反応させ、冷却させた。固形物の酸価50mgKOH/g、不揮発分60%のカルボキシル基含有感光性樹脂を得た。以下、この反応溶液をワニスCと称す。
【0074】
実施例1〜3及び比較例1〜3
前記合成例1〜3で得られたワニスA、ワニスB、及びワニスCを用いた表1に示す配合成分を、3本ロールミルで混練し、光硬化性・熱硬化性樹脂組成物を得た。
【表1】

【0075】
性能評価:
<ドライフィルム作製>
上記実施例1〜3及び比較例1〜3のアルカリ現像型で熱硬化性を有する光硬化性・熱硬化性樹脂組成物をそれぞれ、アプリケーターを用いて、乾燥後膜厚が30μmになるようにPETフィルム(三菱ポリエステル社製 R310:16μm)に塗布し、40〜100℃で乾燥させドライフィルムを得た。
<基板作製>
回路形成されたFR−4基板をバフ研磨した後、上記方法にて作製したフィルムを真空ラミネーター(名機製作所製 MVLP−500)を用いて0.8MPa、80℃、1分、133.3Paの条件で加熱ラミネートして評価基板を得た。
【0076】
(1)はんだ耐熱性
上記のそれぞれの評価基板を用い、コダックNo.2のステップタブレットを当て、6段となる露光量を求めた。上記の各評価基板にソルダーレジストパターンが描かれたネガパターンを当て、前記結果の露光量を照射し、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液を用い、スプレー圧0.2MPaの現像機で、現像し、パターン形成した。その後、150℃、60分間、熱硬化して、硬化塗膜を得た。
この硬化塗膜に、ロジン系フラックスを塗布し、260℃のはんだ槽に30秒間浸漬し、硬化塗膜の状態を以下の基準で評価した。
○:硬化塗膜にふくれ、剥がれ、変色がないもの
△:硬化塗膜に若干ふくれ、剥がれ、変色があるもの
×:硬化塗膜にふくれ、剥がれ、変色があるもの
【0077】
(2)無電解金めっき耐性
上記と同様に、露光・現像した後、熱硬化して、評価基板を作製した。各評価基板を、30℃の酸性脱脂液(日本マクダーミッド社製、Metex L−5Bの20vol%水溶液)に3分間浸漬して脱脂し、次いで流水中に3分間浸漬して水洗した。この評価基板を14.3wt%過硫酸アンモン水溶液に室温で3分間浸漬し、ソフトエッチングを行い、次いで流水中に3分間浸漬して水洗した。10vol%硫酸水溶液に室温で試験基板を1分間浸漬した後、流水中に30秒〜1分間浸漬して水洗した。この評価基板を30℃の触媒液(メルテックス社製、メタルプレートアクチベーター350の10vol%水溶液)に7分間浸漬し、触媒付与を行った後、流水中に3分間浸漬して水洗した。触媒付与を行った評価基板を、85℃のニッケルめっき液(メルテックス社製、メルプレートNi−865Mの20vol%水溶液、pH4.6)に20分間浸漬して、無電解ニッケルめっきを行った。10vol%硫酸水溶液に室温で評価基板を1分間浸漬した後、流水中に30秒〜1分間浸漬して水洗した。次いで、試験基板を95℃の金めっき液(メルテックス社製、オウロレクトロレスUP15vol%とシアン化金カリウム3vol%の水溶液、pH6)に10分間浸漬して無電解金めっきを行った後、流水中に3分間浸漬して水洗し、さらに60℃の温水に3分間浸漬して湯洗した。十分に水洗後、水をよくきり、乾燥し、無電解金めっきをした評価基板を得た。 このように無電解金めっきをした基板を用いて、セロハン粘着テープによるピールテストを行い、塗膜の剥がれ・変色について、次の基準で評価した。
○:全く変化が認められない。
△:塗膜がほんの僅かに剥がれ、又は変色が認められた。
×:塗膜に剥がれが認められる。
【0078】
(3)PCT耐性
上記と同様に、露光・現像した後、熱硬化して、評価基板を作製した。この評価基板を、121℃、2気圧、湿度100%の高圧高温高湿槽に168時間入れ、硬化塗膜の状態変化を評価した。以下の評価基準で評価した。
○:剥がれ、変色そして溶出なし。
△:剥がれ、変色、溶出のいずれかがあり。
×:剥がれ、変色そして溶出が多く見られる。
【0079】
(5)HAST試験後の絶縁性
上記と同様に、クシ型電極(ライン/スペース=50ミクロン/50ミクロン)が形成されたFR−4基板に、前記光硬化性・熱硬化性樹脂組成物を全面印刷し、露光・現像した後、熱硬化して評価基板を作製した。この評価基板を、130℃、湿度85%の雰囲気下の高温高湿槽に入れ、電圧5Vを荷電し、168時間、HAST試験を行なった。HAST試験後の電気絶縁性を、測定した。
○:1010Ω以上
△:1010〜10Ω
×:10Ω以下
【0080】
(6)反りの評価
上記と同様に、基材厚60ミクロンのFR−4基板に、前記光硬化性・熱硬化性樹脂組成物を全面印刷し、露光・現像した後、熱硬化して評価基板を作製した。この評価基板(400mm×300mm)を試験片とし、平面上で試験片の4隅を測定し、その値の合計を、そり変形量として測定した。
○:20mm以下
△:20mm〜40mm
×:40mm以上
【0081】
上記のようにして、実施例1〜3及び比較例1〜3の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物を評価した結果を、以下の表2に示した。
【表2】

【0082】
表2から明らかなように、本発明の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物は、ソルダーレジストやパッケージ基板用レジストに求められる、はんだ耐熱性、無電解金めっき耐性、PCT耐性、HAST試験後の絶縁性に優れており、さらに、QFP、BGA、CSPなどのパッケージ基板に用いられる薄板を用いても、反りが少ないことが判る。
一方、汎用のカルボキシル基含有感光性樹脂とカルボキシル基含有ウレタン(メタ)アクリレート化合物(B)を用いた比較例1は、反りが大きく、PCT耐性、HAST試験後の絶縁性も劣っていた。
また、本発明のカルボキシル基含有感光性樹脂(A)のみを使用した比較例2は、指触乾燥性が劣り、反りもあった。
さらに、カルボキシル基含有ウレタン(メタ)アクリレート化合物(B)のみを使用した比較例3は、はんだ耐熱性に劣っていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(1)で示される多核エポキシ化合物(a)と不飽和基含有モノカルボン酸(b)との反応生成物に多塩基酸無水物(c)を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂、
(B)カルボキシル基含有ウレタン(メタ)アクリレート化合物、
(C)光重合開始剤、
(D)一分子中に2個以上の環状エーテル基及び/又は環状チオエーテル基を有する熱硬化性成分、及び
(E)希釈剤
を含有することを特徴とする光硬化性・熱硬化性樹脂組成物。
【化1】

【請求項2】
前記カルボキシル基含有ウレタン(メタ)アクリレート化合物(B)が、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート化合物(d)、ジメチロールアルカン酸(e)、及びジイソシアネート化合物(f)を反応させて得られる化合物であり、その酸価が30〜100mgKOH/gであることを特徴とする請求項1に記載の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記カルボキシル基含有ウレタン(メタ)アクリレート化合物(B)が、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート化合物(d)、ジメチロールアルカン酸(e)、ジイソシアネート化合物(f)、及びポリマーポリオール(g)を反応させて得られる化合物であり、その酸価が30〜100mgKOH/gであることを特徴とする請求項1に記載の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記ジメチロールアルカン酸(e)が、ジメチロールプロピオン酸及びジメチロールブタン酸のいずれか少なくとも1種であることを特徴とする請求項2又は3に記載の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記カルボキシル基含有感光性樹脂(A)と前記カルボキシル基含有ウレタン(メタ)アクリレート化合物(B)の配合比率は、85:15〜15:85の割合であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
さらに(F)硬化触媒を含有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
キャリアフィルムと前記請求項1乃至6のいずれか一項に記載の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物を、キャリアフィルムに塗布・乾燥して得られる光硬化性・熱硬化性樹脂層を有してなる光硬化性・熱硬化性のドライフィルム。
【請求項8】
前記光硬化性・熱硬化性樹脂層上に、剥離可能なカバーフィルムを更に有してなる請求項7に記載の光硬化性・熱硬化性のドライフィルム
【請求項9】
前記請求項1乃至6のいずれか一項に記載の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物、又は前記請求項7又は8に記載のドライフィルムを、活性エネルギー線照射及び加熱により硬化させることにより得られたことを特徴とする硬化物。
【請求項10】
所定の回路パターンの導体層を有する回路基板上に永久保護膜としてのソルダーレジスト皮膜が形成されたプリント配線板において、上記ソルダーレジスト皮膜が前記請求項1乃至6のいずれか一項に記載の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物、又は前記請求項7又は8に記載のドライフィルムの硬化塗膜からなることを特徴とする薄型パッケージ基板。

【公開番号】特開2008−189803(P2008−189803A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−25467(P2007−25467)
【出願日】平成19年2月5日(2007.2.5)
【出願人】(591021305)太陽インキ製造株式会社 (327)
【Fターム(参考)】