説明

光素子集積装置およびその製造方法、並びに面発光レーザ装置

【課題】他の光学部品への集光特性を向上させることが可能な面発光レーザ装置を提供する。
【解決手段】面発光レーザ素子110の光出射面110Aに直接、光導波路120を設けて、そのコア層121の径を、面発光レーザ素子110のニアフィールドパターンと同等またはニアフィールドパターンよりも小さくする。面発光レーザ素子110で発生した光は、出射して広がってしまう前に、すなわちニアフィールドパターンでまだ広がらない状態で、光導波路120のコア層121に入る。コア層121に入った光は、ニアフィールドパターンから広がらない状態のまま、コア層121を導かれ、次の光学部品へ光結合される。よって、出射光の拡大が抑えられ、次の光学部品への集光特性が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、面発光レーザ素子および光導波路を備えた面発光レーザ装置、並びにこの面発光レーザ装置を本体に搭載した光素子集積装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、面発光レーザ素子の出射面にレンズを形成し、このレンズによりレーザ光を集光することが行われている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4074498号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、面発光レーザ素子の出射面に曲率半径を制御しながらレンズを形成することは、加工プロセスでは極めて困難であり、曲率半径のばらつきによりレーザ光の焦点距離が変わり、他の光学部品に光結合させる際に所望の集光特性が得られなくなってしまっていた。
【0005】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、面発光レーザ素子の集光特性を向上させることが可能な光素子集積装置およびその製造方法、並びに面発光レーザ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の光素子集積装置は、以下の(A),(B)の構成要素を備えたものである。
(A)第1光導波路を有し、表面に第1光導波路の光入射口が露出すると共に第1電極を有する本体
(B)表面に前記第2電極を有する面発光レーザ素子、および面発光レーザ素子の光出射面に直接設けられ、面発光レーザ素子のニアフィールドパターンと同等またはニアフィールドパターンよりも小さい径のコア層を有する第2光導波路を有し、第2光導波路の光出射口が第1光導波路の光入射口に接合されると共に、第2電極が第1電極に接続された面発光レーザ装置
【0007】
この光素子集積装置では、面発光レーザ素子で発生した光は、出射して広がってしまう前に、すなわちニアフィールドパターンでまだ広がらない状態で、第2光導波路のコア層に入り、第2光導波路の光出射口に直接接合された本体側の第1光導波路へ入射される。よって、出射光の拡大が抑えられ、本体側の第1光導波路への集光特性が向上する。
【0008】
本発明の光素子集積装置の製造方法は、以下の(A)〜(C)の工程を含むものである。
(A)本体の表面に第1電極を形成すると共に表面に光入射口が露出するよう第1光導波路を形成する工程
(B)表面に第2電極を有する面発光レーザ素子の光出射面に直接、面発光レーザ素子のニアフィールドパターンと同等またはニアフィールドパターンよりも小さい径のコア層を有する第2光導波路を設けることにより、面発光レーザ素子の光出射面に第2光導波路を有する面発光レーザ装置を形成する工程
(C)面発光レーザ装置を反転し、第2光導波路の光出射口を本体の光入射口に接合させると共に、第2電極を第1電極に接続させる工程
【0009】
本発明の面発光レーザ装置は、面発光レーザ素子と、面発光レーザ素子の光出射面に直接設けられ、面発光レーザ素子のニアフィールドパターンと同等またはニアフィールドパターンよりも小さい径のコア層を有する光導波路とを備えたものである。
【0010】
この面発光レーザ装置では、面発光レーザ素子で発生した光は、出射して広がってしまう前に、すなわちニアフィールドパターンでまだ広がらない状態で、光導波路のコア層に入る。よって、出射光の拡大が抑えられ、集光特性が向上する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の光素子集積装置、または本発明の光素子集積装置の製造方法によれば、表面に第2電極を有する面発光レーザ素子の光出射面に直接、面発光レーザ素子のニアフィールドパターンと同等またはニアフィールドパターンよりも小さい径のコア層を有する第2光導波路を設け、この第2光導波路の光出射口を本体の光入射口に接合させると共に、第2電極を第1電極に接続させるようにしたので、出射光の拡大を抑え、本体側の第1光導波路への集光特性を向上させることが可能となる。
【0012】
本発明の面発光レーザ装置によれば、面発光レーザ素子の光出射面に直接、面発光レーザ素子のニアフィールドパターンと同等またはニアフィールドパターンよりも小さい径のコア層を有する光導波路を設けるようにしたので、出射光の拡大を抑え、面発光レーザ素子の集光特性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る面発光レーザ装置の構成を表す断面図である。
【図2】図1に示した面発光レーザ装置の上面図である。
【図3】図1に示した面発光レーザ装置を他の光導波路に接続した構成を表す断面図である。
【図4】図1に示した面発光レーザ装置の製造方法を工程順に表す断面図である。
【図5】図4に続く工程を表す断面図である。
【図6】図5に続く工程を表す断面図である。
【図7】図6に続く工程を表す断面図である。
【図8】図7に続く工程を表す断面図である。
【図9】変形例に係る面発光レーザ装置の構成を表す断面図である。
【図10】図9に示した面発光レーザ装置の上面図である。
【図11】図9に示した面発光レーザ装置を他の光導波路に接続した構成を表す断面図である。
【図12】本発明の光素子集積装置の基本構成を説明するための図である。
【図13】図12に示した光素子集積装置に適用可能な電極パッドの一例を表す斜視図および断面図である。
【図14】電極パッドの他の例を表す斜視図および断面図である。
【図15】電極パッドの更に他の例を表す斜視図および断面図である。
【図16】本発明の第2の実施の形態に係る光素子集積装置の構成を表す図である。
【図17】本発明の第3の実施の形態に係る光素子集積装置の構成を表す図である。
【図18】図17に示した光素子集積装置の製造工程の一例を説明するための図である。
【図19】図18に続く工程を説明するための図である。
【図20】図19に続く工程を説明するための図である。
【図21】図20に続く工程を説明するための図である。
【図22】図21に続く工程を説明するための図である。
【図23】第4の実施の形態に係る光素子集積装置の構成を表す図である。
【図24】図23に示した光素子集積装置の製造工程の一例を説明するための図である。
【図25】図24に続く工程を説明するための図である。
【図26】図25に続く工程を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(面発光レーザ装置;光導波路が、コア層の周囲にクラッド層を有する例)
2.変形例(面発光レーザ装置;光導波路が、コア層と空気との屈折率差により光を閉じ込める例)
3.光素子集積装置の基本構成
4.第2の実施の形態(光素子集積装置;本体としてのスライダに面発光レーザ装置を搭載した例)
5.第3の実施の形態(光素子集積装置;本体の光入射口に親水性領域、その周囲に疎水性領域をそれぞれ有し、第2光導波路の光出射口に親水性領域を有する例)
6.第4の実施の形態(光素子集積装置;本体の第1電極と、面発光レーザ装置の第2電極とを熱硬化型の導電性接着剤により接続する例)
【0015】
(第1の実施の形態)
図1および図2は、本発明の第1の実施の形態に係る面発光レーザ装置の断面構成および上面構成をそれぞれ表したものである。なお、図1および図2は、模式的に表したものであり、実際の寸法、形状とは異なっている。この面発光レーザ装置は、例えばプラズモン磁気ヘッド(熱アシスト磁気ヘッド)、表示装置用バックライト、または通信システムに用いられるものであり、面発光レーザ素子110の光出射面110Aに光導波路120を一体的に備えている。
【0016】
面発光レーザ素子110は、例えば、n型GaAsよりなる基板111上に、n型DBR層112、活性層113、電流狭窄層114およびp型DBR層115を基板111側からこの順に積層した構造を有している。活性層113ないしp型DBR層115は、円柱状の柱状部116(メサ形状)とされている。
【0017】
n型DBR層112は、低屈折率層(図示せず)および高屈折率層(図示せず)を交互に積層して形成されている。低屈折率層は、例えば厚さがλ0/4n1(λ0は発振波長、n1は屈折率)のn型Alx1Ga1−x1As(0<x1≦1)、高屈折率層は、例えば厚さがλ0/4n2(n2は屈折率)のn型Alx2Ga1−x2As(0≦x2<x1)によりそれぞれ構成されている。
【0018】
活性層113は、例えばアンドープのAlx3Ga1−x3As(0≦x3≦1)により構成されている。
【0019】
電流狭窄層114は、中央に電流注入領域114Aを有し、電流注入領域114Aの外縁に電流狭窄領域114Bを有している。電流注入領域114Aは、例えばp型Alx4Ga1−x4As(0<x4≦1)により構成されている。電流狭窄領域114Bは、例えば、Al2 3(酸化アルミニウム)を含んで構成され、後述するように、柱状部116の側面から電流狭窄層114に含まれる高濃度のアルミニウム(Al)を酸化することにより得られるものである。従って、電流狭窄層114は電流を狭窄する機能を有し、活性層113のうち電流注入領域114Aと対向する領域が発光領域113Aとなっている。
【0020】
p型DBR層115は、低屈折率層(図示せず)および高屈折率層(図示せず)を交互に積層して形成されたものである。この低屈折率層は、例えば厚さがλ0/4n3 (n3 は屈折率)のp型Alx5Ga1−x5As(0<x5≦1)、高屈折率層は、例えば厚さがλ0/4n4(n4は屈折率)のp型Alx6Ga1−x6As(0≦x6<x5)によりそれぞれ構成されている。
【0021】
この面発光レーザ素子110はまた、光出射面110A、すなわちp型DBR層115の表面にp側電極117、基板111の裏面にn側電極118をそれぞれ有している。p側電極117は、例えばチタン(Ti),白金(Pt)および金(Au)をp側コンタクト層側からこの順に積層した構造を有しており、p型DBR層115と電気的に接続されている。p側電極117は、例えば、発光領域113Aに対応して開口部117Aを有するドーナツ形状となっている。n側電極118は、例えば、金(Au)とゲルマニウム(Ge)との合金,ニッケル(Ni)および金(Au)とを基板111側からこの順に積層した構造を有しており、基板111を介してn型DBR層112と電気的に接続されている。
【0022】
光導波路120は、例えば、コア層121の周囲にクラッド層122を有し、これらコア層121とクラッド層122との屈折率差により光を閉じ込めるものである。この光導波路120は、面発光レーザ素子110の光出射面110Aに直接一体的に設けられており、そのコア層121の径は、面発光レーザ素子110のニアフィールドパターン(NFP)と同等またはニアフィールドパターンよりも小さくなっている。これによりこの面発光レーザ装置では面発光レーザ素子110の集光特性を向上させることが可能となる。
【0023】
光導波路120は、例えば、樹脂材料、誘電体材料または半導体材料により構成されている。コア層121を構成する樹脂材料としては例えばアクリル,エポキシまたはシリコーンが挙げられ、誘電体材料としては例えば窒化ケイ素(SiNx)が挙げられ、半導体材料としては例えばレーザ光を吸収しない材料、具体的にはAlGaAs等が挙げられる。クラッド層122を構成する樹脂材料としては例えばアクリル,エポキシまたはシリコーンが挙げられ、誘電体材料としては例えば酸化ケイ素(SiOx)が挙げられ、半導体材料としては例えばレーザ光を吸収せず、屈折率がコア層121の構成材料よりも小さい材料、具体的にはAlGaAs等が挙げられる。
【0024】
コア層121の形状は、円柱または角柱など、ニアフィールドパターンに合わせて調整することが可能である。コア層121の寸法(径)は、例えばニアフィールドパターンが5μmである場合には、5μmないし3μm程度とすることが可能である。
【0025】
図3は、図1に示した面発光レーザ装置と他の光学部品130との接続構成の一例を表したものである。光学部品130は、例えば、コア層131の周囲にクラッド層132を有する光導波路である。光導波路120のコア層121の先端は、光学部品130のコア層131に直接接合されている。光導波路120と光学部品130とは、例えば、光吸収の小さい樹脂系光学接着剤(図示せず)により直接接触させて接合することが可能であり、結合効率を高く維持した状態で光結合が可能となっている。また、従来のようにレンズの焦点距離と実装距離を精密に制御する必要はなくなり、光導波路120の長さLを調整することにより光学部品130の実装位置を容易に調整することができる。光導波路120の長さLは、面発光レーザ装置の用途によって任意に選ぶことが可能である。
【0026】
なお、図3の光学部品130としては、光導波路のほか、例えばプラズモン磁気ヘッド用のグレーティングカプラを、光導波路120のコア層121の先端に直接接合することも可能である。
【0027】
この面発光レーザ装置は、例えば、次のようにして製造することができる。
【0028】
図4ないし図8は、この面発光レーザ装置の製造方法を工程順に表したものである。面発光レーザ素子110を製造するためには、n型GaAsからなる基板111上に、GaAs系化合物半導体を、例えばMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition:有機金属気相成長)法などのエピタキシャル結晶成長法により一括に形成する。この際、GaAs系化合物半導体の原料としては、例えば、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリメチルガリウム(TMG)、アルシン (AsH3)を用い、ドナー不純物の原料としては、例えばセレン化水素(H2 Se)を用い、アクセプタ不純物の原料としては、例えばジメチル亜鉛(DMZn)を用いる。
【0029】
具体的には、まず、図4に示したように、基板111上に、n型DBR層112,活性層113,電流狭窄層114,p型DBR層115を基板111側からこの順に積層する。
【0030】
次いで、同じく図4に示したように、p型DBR層115の表面のうち所定の領域にマスク(図示せず)を形成したのち、例えばドライエッチング法によりp型DBR層115,電流狭窄層114および活性層113を選択的に除去して柱状部116(メサ形状)を形成し、マスクを除去する。
【0031】
続いて、同じく図4に示したように、水蒸気雰囲気中において高温で酸化処理を行い、柱状部116(メサ)の側面から電流狭窄層114を選択的に酸化する。これにより電流狭窄層114の外縁領域が絶縁層(酸化アルミニウム)となって電流狭窄領域114Bが形成され、中央の未酸化領域が電流注入領域114Aとなる。
【0032】
そののち、同じく図4に示したように、例えば蒸着法により、出射面110Aすなわちp型DBR層115の表面に、開口部117Aを有するp側電極117を形成する。また、基板111の裏面にn側電極118を形成する。これにより、図1に示した面発光レーザ素子110が形成される。
【0033】
面発光レーザ素子110を形成したのち、図5に示したように、例えばスピンコート法により、上述した樹脂材料を面発光レーザ素子110に塗布して樹脂層121Aを形成し、フォトリソグラフィによる露光、現像および焼成を行う。これにより図6に示したように、面発光レーザ素子110のニアフィールドパターンと同等またはニアフィールドパターンよりも小さい径のコア層121が形成される。
【0034】
コア層121を形成したのち、図7に示したように、例えばスピンコート法により、上述した樹脂材料を面発光レーザ素子110に塗布して樹脂層122Aを形成し、フォトリソグラフィによる露光、現像および焼成を行う。これにより図8に示したように、コア層121の周囲にクラッド層122を有する光導波路120が形成される。必要に応じて、図3に示したように、コア層121の先端に光学部品130を接着剤(図示せず)で接合してもよい。以上により、図1ないし図3に示した面発光レーザ装置が完成する。
【0035】
なお、光導波路120を誘電体材料または半導体材料により構成する場合には、スピンコート法に代えて蒸着など他の方法により成膜し、フォトリソグラフィおよびエッチングによりパターニングしてもよい。
【0036】
この面発光レーザ装置では、p側電極117とn側電極118との間に所定の電圧が印加されると、電流狭窄層114により狭窄された電流が活性層113の利得領域である発光領域113Aに注入され、これにより電子と正孔の再結合による発光が生じる。この光には誘導放出によって生じた光だけでなく、自然放出によって生じた光も含まれているが、素子内で誘導放出が繰り返される結果、所定の波長λ0でレーザ発振が生じ、波長λ0を含む光が出射面110Aから外部へ出力される。
【0037】
ここでは、面発光レーザ素子110の光出射面110Aに直接、光導波路120が設けられ、そのコア層121の径は面発光レーザ素子110のニアフィールドパターンと同等またはニアフィールドパターンよりも小さくなっている。そのため、面発光レーザ素子110で発生した光は、出射して広がってしまう前に、すなわちニアフィールドパターンでまだ広がらない状態で、光導波路120のコア層121に入る。コア層121に入った光は、ニアフィールドパターンから広がらない状態のまま、コア層121を導かれ、次の光学部品130へ光結合される。よって、出射光の拡大が抑えられ、次の光学部品130への集光特性が向上する。
【0038】
このように本実施の形態では、面発光レーザ素子110の光出射面110Aに直接、面発光レーザ素子110のニアフィールドパターンと同等またはニアフィールドパターンよりも小さい径のコア層121を有する光導波路120を設けるようにしたので、出射光の拡大を抑え、次の光学部品130への集光特性を向上させることが可能となる。また、従来のように光出射面110Aにレンズを設けることは不要となり、製造工程が簡素になると共に、レンズの曲率半径のばらつきによる焦点距離の変動がなくなり、所望の集光特性を確実に得ることが可能となる。
【0039】
(変形例)
なお、上記実施の形態では、光導波路120がコア層121の周囲にクラッド層122を有し、コア層121とクラッド層122との屈折率差により光を閉じ込める場合について説明したが、図9および図10に示したように、光導波路120は、クラッド層122を有さず、コア層121と空気との屈折率差により光を閉じ込めるものであってもよい。この場合も、図11に示したように、光導波路120のコア層121の先端は、他の光学部品130に直接接合されていてもよい。本変形例の面発光レーザ装置は、上記実施の形態と同様にして図4ないし図6に示した工程により製造することが可能であり、その作用および効果も上記実施の形態と同様である。
【0040】
以下、この面発光レーザ装置を備えた光素子集積装置について説明する。
【0041】
(光素子集積装置の基本構成)
図12は本発明の光素子集積装置1の基本構成を表したものである。この光素子集積装置1は、本体10に対して光源(光素子)として、上記第1の実施の形態の面発光レーザ装置20を一体化したものである。本体10には第1光導波路11が設けられ、この第1光導波路11の光入射口11Aが本体10の表面に露出している。面発光レーザ装置20は、第1の実施の形態と同様に、面発光レーザ素子110の光出射面110Aに第2光導波路120を有するものであり、この第2光導波路120の光出射口20Aが第1光導波路11の光入射口11Aに接合されるよう反転して本体10に搭載されている。
【0042】
本体10は、後述の近接場光を用いた記録ヘッドまたは熱アシスト磁気記録ヘッドに用いられるスライダなどの、第1光導波路11による光導波機能以外に本来の機能(記録機能,記録再生機能等など)を有するものをいう。例えば、本来の機能として光データ信号処理を行う光送受信モジュールなども、本発明の本体に含まれるものである。
【0043】
面発光レーザ装置20は、第1の実施の形態と同様に、面発光レーザ素子110の光出射面110Aに第2光導波路120を一体的に備えている。第2光導波路120は、第1の実施の形態と同様に、コア層121の周囲にクラッド層122を有し、これらコア層121とクラッド層122との屈折率差により光を閉じ込めるものである。この第2光導波路120は、面発光レーザ素子110の光出射面110Aに直接一体的に設けられており、そのコア層121の径は、面発光レーザ素子110のニアフィールドパターン(NFP)と同等またはニアフィールドパターンよりも小さくなっている。これによりこの光素子集積装置では、面発光レーザ素子110の集光特性を向上させることが可能となる。
【0044】
面発光レーザ素子110はまた、図12には示していないが、第2光導波路120の光出射口20Aと同一の面、すなわち面発光レーザ素子110の光出射面110Aと同一の面に、一対の電極のうち少なくとも1つの電極(あるいは電極パッド)を有している。図13(A),(B)〜図15(A),(B)はそれぞれ具体的な電極配置例を表したものであり、いずれの態様も本発明に適用可能である。
【0045】
図13(A),(B)の配置例は、2つの電極パッド27(p側電極27Aおよびn側電極27B)を光出射面110Aと同一面に設けたものである。n側電極27Bは基板21に達するよう設けられた開口内に埋設されており、その表面がp側電極27Aと同一面に露出している。図14(A),(B)の配置例は、一方の電極パッド(p側電極27A)を光出射面110Aと同一面に、他方の電極パッド(n側電極27B)を基板21の裏面に設けたものである。図15(A),(B)の配置例は、2つの電極パッド(p側電極27A,n側電極27B)を共に基板21の裏面に設けたものであるが、p側電極27Aは基板21の裏面から表面にかけて設けられた貫通電極により基板21の表面に露出している。
【0046】
この光素子集積装置1では、上記のように第2光導波路120の光出射口20Aを第1光導波路11の光入射口11Aに直接(あるいは高屈折率接着剤を介して)接合させると共に、本体10側の表面(光入射口11Aが形成された面)の面発光レーザ装置20の電極(電極パッド)に対向する位置に対向電極(電極パッド)を設け、これら電極同士を直接に接続させるものである。これにより光の利用効率および生産効率が向上する。
なお、本明細書では、本体10側の表面に設けた1または1組の電極を「第1電極」、面発光レーザ素子110の表面に設けた1または1組の電極を「第2電極」という。
【0047】
以下、光素子集積装置の具体的な実施の形態(第2ないし第4の実施の形態)について説明する。
【0048】
(第2の実施の形態)
図16(A),(B)は本発明の第2の実施の形態に係る光素子集積装置2を表したものである。この光素子集積装置2は本体としてのスライダ10に面発光レーザ装置20を搭載したものであり、図16(A)は面発光レーザ装置20をスライダ10に搭載する前の状態、図16(B)は面発光レーザ装置20を搭載したのちのスライダ10の前方から見た状態をそれぞれ表している。なお、図16は模式的に表したものであり、実際の寸法、形状とは異なっている。
【0049】
スライダ10は、例えばプラズモン磁気ヘッド(熱アシスト磁気記録ヘッド)に用いられるもので、下面10Aに磁気記録部(図示せず)を有すると共に内部に上面から下面にかけて前述の第1光導波路11を有している。スライダ10は例えばAlTiC(アルミニウム・チタニウム・カーボン)により構成されている。スライダ10には支軸(図示せず)を介してアクチュエータが接続されており、支軸を中心として矢印A方向(トラッキング方向)に回転可能となっている。スライダ10の下方には回転可能な記録媒体Mが配置されている。スライダ10に設けられた磁気記録部は、回転する記録媒体Mに対して浮上しながら相対的に移動可能となっている。
【0050】
第1光導波路11は、例えば、高屈折率材料からなるコア層を低屈折率材料からなるクラッド層で覆ったものである。コア層およびクラッド層の構成材料は、例えば、第1の実施の形態で説明した第2光導波路120のコア層121およびクラッド層122の構成材料と同様である。この第1光導波路11をスライダ10の内部に埋設することにより、面発光レーザ装置20から出射されたレーザ光をスライダ10を介して記録媒体Mに導くようになっている。これによりこのスライダ10では磁気記録部による記録媒体Mへのデータの記録に先立ち、当該箇所を加熱して磁気記録のアシストを行うようになっている。
【0051】
第1光導波路11のコア層の寸法(径)は特に限定されないが、例えば2μmないし8μm程度である。第1光導波路11の形状は、特に限定されないが、例えば円柱または角柱などに調整することが可能である。
【0052】
スライダ10の表面には、後述の面発光レーザ素子110側の電極パッド27(p側電極27Aおよびn側電極27B)に対向する位置に一組の電極パッド12(12A,12B)が設けられている。これら電極パッド12A,12Bにはそれぞれ駆動配線13A,13Bを介して駆動電源が供給され、これにより面発光レーザ装置20が駆動され発光するようになっている。
【0053】
面発光レーザ装置20は、面発光レーザ素子110の光出射面110Aに光導波路120を一体的に備えている。
【0054】
面発光レーザ素子110は、例えば、n型GaAsよりなる基板21上に、n型DBR層22、活性層23、電流狭窄層24およびp型DBR層25を基板21側からこの順に積層した構造を有している。活性層23ないしp型DBR層25は円柱状の柱状部26(メサ形状)となっている。
【0055】
n型DBR層22は、低屈折率層(図示せず)および高屈折率層(図示せず)を交互に積層して形成されている。低屈折率層は、例えば厚さがλ0/4n1(λ0は発振波長、n1は屈折率)のn型Alx1Ga1−x1As(0<x1≦1)、高屈折率層は、例えば厚さがλ0/4n2(n2は屈折率)のn型Alx2Ga1−x2As(0≦x2<x1)によりそれぞれ構成されている。
【0056】
活性層23は、例えばアンドープのAlx3Ga1−x3As(0≦x3≦1)により構成されている。電流狭窄層24は、中央に電流注入領域24Aを有し、電流注入領域24Aの外縁に電流狭窄領域24Bを有している。電流注入領域24Aは、例えばp型Alx4Ga1−x4As(0<x4≦1)により構成されている。電流狭窄領域24Bは、例えばAl2 O3 (酸化アルミニウム)を含んで構成され、柱状部26の側面から電流狭窄層24に含まれる高濃度のアルミニウム(Al)を酸化することにより得られるものである。すなわち電流狭窄層24は電流を狭窄する機能を有し、活性層23のうち電流注入領域24Aと対向する領域が発光領域13Aとなっている。
【0057】
p型DBR層25は、低屈折率層(図示せず)および高屈折率層(図示せず)を交互に積層して形成されたものである。この低屈折率層は、例えば厚さがλ0/4n3(n3は屈折率)のp型Alx5Ga1−x5As(0<x5≦1)、高屈折率層は、例えば厚さがλ0/4n4( n4は屈折率)のp型Alx6Ga1−x6As(0≦x6<x5)によりそれぞれ構成されている。
【0058】
p側電極27Aは、例えばチタン(Ti),白金(Pt)および金(Au)をこの順に積層した構造を有する。n側電極27Bは、例えば金(Au)とゲルマニウム(Ge)との合金,ニッケル(Ni)および金(Au)とをこの順に積層した構造を有している。
【0059】
本実施の形態の面発光レーザ素子110は、図13に示した電極配置構造、すなわち光出射面110Aの両脇に、第2電極としてp側電極27Aおよびn側電極27Bが配置された構造を有するものである。
【0060】
第2光導波路120は、第1の実施の形態と同様に、コア層121の周囲にクラッド層122(いずれも図16には図示せず、図12参照。)を有し、これらコア層121とクラッド層122との屈折率差により光を閉じ込めるものである。この第2光導波路120は、面発光レーザ素子110の光出射面110Aに直接一体的に設けられており、そのコア層121の径は、面発光レーザ素子110のニアフィールドパターン(NFP)と同等またはニアフィールドパターンよりも小さくなっている。これによりこの面発光レーザ装置では面発光レーザ素子110の集光特性を向上させることが可能となる。
【0061】
この光素子集積装置2は、例えば次のようにして製造することができる。まず、第1の実施の形態と同様にして、面発光レーザ素子110の光出射面110Aに第2光導波路120を有する面発光レーザ装置20を形成する。その際、第2光導波路120のコア層121の径を、面発光レーザ素子110のニアフィールドパターン(NFP)と同等またはニアフィールドパターンよりも小さくする。次いで、面発光レーザ装置20を反転し、第2光導波路120の光出射口20Aを第1光導波路11の光入射口11Aに接合する。また、第2電極(p側電極27Aおよびn側電極27B)を第1電極(電極パッド12A,12B)に電気的に接続する。これにより、面発光レーザ素子装置20がスライダ10に搭載される。なお、この面発光レーザ装置20のスライダ10に対する位置決めおよび接合方法については後述の第3および第4の実施の形態の方法によることが望ましい。
【0062】
本実施の形態の光素子集積装置2では、スライダ10の駆動配線13A,13Bおよび電極パッド12A,12Bを通じて面発光レーザ素子110のp側電極27Aとn側電極27Bとの間に所定の電圧が印加される。これにより電流狭窄層24により狭窄された電流が活性層23の利得領域である発光領域23Aに注入され、電子と正孔の再結合による発光が生じる。この面発光レーザ素子110で発生したレーザ光は第2光導波路120およびスライダ10の第1光導波路11を経て、スライダ10の下方に配置された記録媒体Mに照射される。これにより磁気記録部による磁気記録に先立つ熱アシストが行われる。
【0063】
ここでは、面発光レーザ素子110の光出射面に直接、第2光導波路120が設けられており、この第2光導波路120のコア層が、面発光レーザ素子110のニアフィールドパターンと同等またはニアフィールドパターンよりも小さいので、面発光レーザ素子110で発生した光は、出射して広がってしまう前に、すなわちニアフィールドパターンでまだ広がらない状態で、第2光導波路120のコア層121に入り、更にスライダ10側の第1光導波路11へ入射される。よって、出射光の拡大が抑えられ、スライダ10側の第1光導波路11への集光特性が向上する。
【0064】
また、第2光導波路120の光出射口20Aがスライダ10に設けられた第1光導波路11の光入射口11Aに接合されているので、面発光レーザ素子110で発生したレーザ光は直接光導波路11へ入射される。そのため光損失が低減され、光結合効率が更に向上する。
【0065】
このように本実施の形態では、面発光レーザ素子110の光出射面110Aに直接、面発光レーザ素子110のニアフィールドパターンと同等またはニアフィールドパターンよりも小さい径のコア層121を有する第2光導波路120を設けるようにしたので、スライダ10側の第1光導波路11への集光特性を向上させることが可能となる。
【0066】
また、第2光導波路120の光出射口20Aをスライダ10の光入射口11Aに接合させると共に、面発光レーザ装置20側の第2電極(p側電極27Aおよびn側電極27B)をスライダ10側の第1電極(電極パッド12A,12B)に接続させるようにしたので、光損失を低減し、光結合効率を更に向上させることが可能となる。更に、光源として面発光レーザ素子110を用いるので、光出射口20Aと光入射口11Aとの位置合わせが容易になると共に、端面発光型レーザ素子のような劈開作業が不要となるため、ウエハ段階での検査が可能となる。よって、歩留まりおよび製造効率が向上する。
【0067】
(第3の実施の形態)
図17は本発明の第3の実施の形態に係る光素子集積装置3の断面構成を表したものである。この光素子集積装置3は、基本的には上記光素子集積装置2と共通するが、製造歩留り向上のために次の点において異なっている。すなわちこの光素子集積装置3では、第2光導波路120の光出射口20Aは親水処理がなされた親水性領域31A、スライダ10の光入射口11Aも同じく親水処理がなされた親水性領域31Bとなっている。
【0068】
一方、スライダ10の表面の光入射口11Aを除く領域は疎水処理がなされた疎水性領域32となっている。この疎水性領域32は少なくとも光入射口11Aの近傍にあればよい。また、第2光導波路120の光出射口20Aおよび第1光導波路11の光入射口11Aは高屈折率接着剤33によって互いに接合されている。電極パッド12Aとp側電極27A、電極パッド12Bとn側電極27Bとはそれぞれ低融点はんだ34により接合されている。
【0069】
親水性領域31A,31Bは、第2光導波路120の光出射口20Aおよび第1光導波路11の光入射口11Aに対してそれぞれ例えば酸素プラズマ処理を施すことによって形成されるものである。
【0070】
疎水性領域32は、疎水性材料、例えば、パーフルオロアルカン系(n−Cm H2m−2)などのフッ素系溶剤を塗布することにより形成される。この疎水性領域32は、ナノインプリント技術を用いることによって疎水性材料を第1光導波路11の光入射口11A以外の領域に転写することによって形成するようにしてもよい。
【0071】
高屈折率接着剤33は後述のように硬化されたのちは第1光導波路11の一部となり、面発光レーザ装置20から出射されるレーザ光をスライダ10の第1光導波路11に入射させる機能を有している。この高屈折率接着剤33としては、例えば光学屈折率が1.1以上を有するエポキシ系樹脂,シリコーン系樹脂またはアクリル系樹脂が挙げられる。但し、エポキシ系樹脂は青色光によって劣化し、屈折率が1.3〜1.4であり、これに対してシリコーン系樹脂は屈折率1.5前後の高い特性を有するためシリコーン系樹脂を用いることが好ましい。また、各色光に耐性を有し、光学的な反射を抑えるため各材料の屈折率に近い屈折率を有する接着剤であれば、エポキシ系、シリコーン系またはアクリル系樹脂以外の樹脂を用いてもよい。
【0072】
次に、図18ないし図20を参照してこの光素子集積装置3の製造方法について説明する。
【0073】
まず、図18(A),(B)に示したように、第1の実施の形態と同様にして、面発光レーザ素子110の光出射面110Aに第2光導波路120を有する面発光レーザ装置20を形成する。その際、第2光導波路120のコア層121の径を、面発光レーザ素子110のニアフィールドパターン(NFP)と同等またはニアフィールドパターンよりも小さくする。次いで、同じく図18(A),(B)に示したように、スライダ10の第1光導波路11の近傍に一組の電極パッド12A,12Bを形成したのち、これら電極パッド12A,12B上に低融点はんだ34を蒸着する。一方、第2光導波路120の光出射口20Aおよびスライダ10に形成された第1光導波路11の光入射口11Aに対して、例えば酸素プラズマ処理による親水性処理を施すことにより親水性領域31A,31Bを形成する。また、スライダ10の表面の電極パッド12A,12Bおよび光入射口11Aを除く領域に、例えばフッ素系溶剤を塗布することにより疎水性領域32を形成する。
【0074】
続いて、図19(A),(B)に示したように、第2光導波路120の光出射口20Aに、その表面張力により中後部が盛り上がる形状をなすように熱硬化型の高屈折率接着剤33を滴下する。そののち、図20(A),(B)に示したように、面発光レーザ装置20を、第2光導波路120の光出射口20Aが下になるように反転させ、スライダ10の光入射口11Aに合うように軽く載せる。
【0075】
このとき本実施の形態では、第2光導波路120の光出射口20Aおよびスライダ10の光入射口11Aに親水性領域31A,31Bが形成される一方、光入射口11Aの周囲が疎水性領域32となっている。これにより高屈折率接着剤33の表面張力によって第2光導波路12020の光出射口20Aとスライダ10の光入射口11Aとが自動的に光路軸上で一致するようになる(図21(A),(B)、図22(A),(B))。ここに、図21(A),(B)はスライダ10を正面から見た状態、図22(A),(B)は同じく横から見た状態を表し、各図において(B)は(A)の要部(高屈折率接着剤33)を拡大して表したものである。このとき電極パッド12A,12Bおよびp側電極27A,n側電極27Bは、硬化前の高屈折率接着剤33が不安定にならないように高屈折率接着剤33の両サイドで面発光レーザ装置20を支える役割を持つ。
【0076】
このようにして第2光導波路120の光出射口20Aとスライダ10の光入射口11Aとが光路軸上で一致したのち、高屈折率接着剤33および電極パッド12A,12Bに蒸着させた低融点はんだ34に熱処理を施す。具体的には、100〜150℃の温度で加熱して高屈折率接着剤33を硬化させ、次いで、200℃以上で加熱し、面発光レーザ装置20のp側電極27A,n側電極27Bとスライダ10の電極パッド12A,12Bをそれぞれはんだ溶融により接合させる。これにより図17に示した光素子集積装置3が形成される。
【0077】
このように本実施の形態では、第2光導波路120の光出射口20Aおよびスライダ10の光入射口11Aに親水性領域31A,31Bを形成すると共にスライダ10の光入射口11Aの周囲に疎水性領域32を形成したので、面発光レーザ装置20をスライダ10に搭載させる際に、高屈折率接着剤33の表面張力によって自動的に光学的な位置合わせが行われ、精密な光学調整が可能となる。よって、より製造歩留りが向上する。
【0078】
(第4の実施の形態)
図23は、本発明の第4の実施の形態に係る光素子集積装置4の断面構成を表したものである。この光素子集積装置4は、上記光素子集積装置3の低融点はんだ34に代えて、熱硬化型の導電性接着材35を用いたものである。
【0079】
導電性接着材35としては、例えば、銀(Ag)ペースト、Ag−Sn,Au−Sn等のはんだシートを挙げることができる。
【0080】
次に、図24ないし図26を参照して、本実施の形態の光素子集積装置4の製造方法の一例について説明する。
【0081】
まず、図24(A),(B)に示したように、第1の実施の形態と同様にして、面発光レーザ素子110の光出射面110Aに第2光導波路120を有する面発光レーザ装置20を形成する。その際、第2光導波路120のコア層121の径を、面発光レーザ素子110のニアフィールドパターン(NFP)と同等またはニアフィールドパターンよりも小さくする。次いで、同じく図24(A),(B)に示したように、第2光導波路120の光出射口20Aおよびスライダ10の光導波路11に、それぞれ親水性領域31A,31Bを形成すると共に、スライダ10の電極パッド12A,12Bおよび光入射口11Aを除く領域に疎水性領域32を形成する。
【0082】
続いて、図25(A),(B)に示したように、第2光導波路120の光出射口20Aに熱硬化型の高屈折率接着剤33を滴下し、電極パッド12A,12Bには導電性接着材35を滴下する。そののち、図26(A),(B)に示したように、面発光レーザ装置20を光出射口20Aが下になるように反転させ、光出射口20Aおよびp側電極27A,n側電極27Bを、対応するスライダ10の光入射口11Aおよび電極パッド12A,12Bに軽く載せる。
【0083】
そののち、熱処理を施すことにより第2光導波路120の光出射口20Aとスライダ10の光入射口11Aとを接合させると共に、電極パッド27(p側電極27A,n側電極27B)と電極パッド12(電極パッド12A,12B)とを接合させる。具体的には、100〜150℃の温度で加熱し、高屈折率接着剤33を硬化させたのち、150〜160℃程度(最高180℃)の温度で加熱することにより導電性接着材35を硬化させる。これにより面発光レーザ装置20およびスライダ10を電気的および光学的に接合させる(図23)。
【0084】
このように本実施の形態では、導電性接着材35を用いることにより、200℃以下の低温の熱処理によって電極パッド27と電極パッド12とを接合させることができる。これにより、高屈折率接着剤33の表面張力を利用した第2光導波路120の光出射口20Aとスライダ10の光入射口11Aとの位置合わせを阻害することなく、電極パッド27と電極パッド12とを電気的に接合させることが可能となる。更に、光出射口20Aおよび光入射口11A、電極パッド27Aおよび電極パッド12A、電極パッド27Bおよび電極パッド12Bの3点で位置合わせを行うことにより、より精密な位置合わせが可能となる。
【0085】
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形が可能である。例えば、上記実施の形態においては本体10として熱アシスト磁気記録ヘッドに用いられるスライダを例に挙げて説明したが、このほか、光送受信モジュールを用いることも可能である。
【0086】
また、例えば、上記実施の形態では、面発光レーザ素子10の構成を具体的に挙げて説明したが、全ての層を備える必要はなく、また、他の層を更に備えていてもよい。
【0087】
更に、例えば、上記実施の形態において説明した各層の材料、または成膜方法および成膜条件などは限定されるものではなく、他の材料としてもよく、または他の成膜方法としてもよい。
【0088】
加えて、例えば、上記実施の形態では、面発光レーザ素子110をGaAs系化合物半導体により構成した場合について説明したが、他の材料系、例えば、GaInP系(赤系)材料またはAlGaAs系(赤外系)や、GaN系(青緑色系)などにより構成することも可能である。
【符号の説明】
【0089】
1〜4…光素子集積装置、10…本体(スライダ)、11…第1光導波路、11A…光入射口、12…電極パッド(12A…p側電極、12B…n側電極)、20…面発光レーザ装置、20A…光出射口、21…基板、22…n型DBR層、23…活性層、24…電流狭窄層、24A…電流注入領域、24B…電流狭窄領域、25…p型DBR層、26…柱状部、27…電極パッド(27A…p側電極、27B…n側電極)、27C…開口部、31A,31B…親水性領域、32A,32B…疎水性領域、33…高屈折率接着剤、34…低融点はんだ、35…導電性接着材、110…面発光レーザ素子、110A…光出射面、111…基板、112…n型DBR層、113…活性層、114…電流狭窄層、114A…電流注入領域、114B…電流狭窄領域、115…p型DBR層、116…柱状部、117…p側電極、117A…開口部、118…n側電極、120…第2光導波路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1光導波路を有し、表面に前記第1光導波路の光入射口が露出すると共に第1電極を有する本体と、
表面に前記第2電極を有する面発光レーザ素子、および前記面発光レーザ素子の光出射面に直接設けられ、前記面発光レーザ素子のニアフィールドパターンと同等またはニアフィールドパターンよりも小さい径のコア層を有する第2光導波路を有し、前記第2光導波路の光出射口が前記第1光導波路の光入射口に接合されると共に、前記第2電極が前記第1電極に接続された面発光レーザ装置と
を備えた光素子集積装置。
【請求項2】
前記第2光導波路の光出射口および前記本体の光入射口は、高屈折率接着剤により接合されている
請求項1記載の光素子集積装置。
【請求項3】
前記高屈折率接着剤は、光学屈折率が1.1以上のエポキシ系樹脂,シリコーン系樹脂またはアクリル系樹脂である
請求項2記載の光素子集積装置。
【請求項4】
前記本体の光入射口に親水性領域、前記光入射口の周囲に疎水性領域をそれぞれ有する
請求項1記載の光素子集積装置。
【請求項5】
前記第2導波路の光出射口に親水性領域を有する
請求項4記載の光素子集積装置。
【請求項6】
前記本体は、近接場光を用いた記録ヘッドまたは熱アシスト磁気記録ヘッドに用いられるスライダである
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の光素子集積装置。
【請求項7】
本体の表面に第1電極を形成すると共に前記表面に光入射口が露出するよう第1光導波路を形成する工程と、
表面に前記第2電極を有する面発光レーザ素子の光出射面に直接、前記面発光レーザ素子のニアフィールドパターンと同等またはニアフィールドパターンよりも小さい径のコア層を有する第2光導波路を設けることにより、前記面発光レーザ素子の光出射面に前記第2光導波路を有する面発光レーザ装置を形成する工程と、
前記面発光レーザ装置を反転し、前記第2光導波路の光出射口を前記本体の光入射口に接合させると共に、前記第2電極を前記第1電極に接続させる工程と
を含む光素子集積装置の製造方法。
【請求項8】
前記第2光導波路の光出射口および前記本体の光入射口にそれぞれ親水性領域を形成すると共に、前記光入射口の周囲に疎水性領域を形成したのち、前記光出射口に高屈折率接着剤を滴下し、前記高屈折率接着剤を介して前記光出射口と前記光入射口とを接合させる
請求項7記載の光素子集積装置の製造方法。
【請求項9】
前記疎水性領域をコーティング法またはナノインプリント技術による転写法により形成する
請求項8に記載の光素子集積装置の製造方法。
【請求項10】
前記本体は、近接場光を用いた記録ヘッドまたは熱アシスト磁気記録ヘッドに用いられるスライダである
請求項7ないし9のいずれか1項に記載の光素子集積装置の製造方法。
【請求項11】
面発光レーザ素子と、
前記面発光レーザ素子の光出射面に直接設けられ、前記面発光レーザ素子のニアフィールドパターンと同等またはニアフィールドパターンよりも小さい径のコア層を有する光導波路と
を備えた面発光レーザ装置。
【請求項12】
前記光導波路は、前記コア層と空気との屈折率差により光を閉じ込める
請求項11記載の面発光レーザ装置。
【請求項13】
前記光導波路は、前記コア層の周囲にクラッド層を有し、前記コア層と前記クラッド層との屈折率差により光を閉じ込める
請求項11記載の面発光レーザ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2011−96857(P2011−96857A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−249472(P2009−249472)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】