説明

光装置およびその製造方法

【課題】スループットの悪化を最小限に抑えつつ、ぐらつきを抑えることの可能な光装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】発光素子20および受光素子30がステム10の支持基板11の上面に実装されており、これら発光素子20および受光素子30がキャップ40で封止されている。発光素子20と光ファイバ(図示せず)とを光結合させるレンズレセプタクル50の筒先部53がキャップ40に接合されている。筒先部53の一部には、光透過率の大きな光透過構造53Aが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気信号を光信号に変換して出力する光送信機能、または光信号を電気信号に変換して出力する光受信機能を有する光装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光送受信モジュールの規格であるXFP(10Gigabit Small Form Factor Pluggable)では、電気信号を光信号に変換して出力する光送信装置や、光信号を電気信号に変換して出力する光受信装置などの光装置が実装されている。このような光装置では、例えば、発光素子または受光素子がステム(ヘッダ(header))の上面に実装されると共にキャップで封止されており、さらに、発光素子または受光素子と光ファイバとを光結合させるレンズレセプタクル(バレル(barrel))がキャップに接合されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第7476905号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従前から、光装置では、レンズレセプタクルとキャップとの接合には、UV硬化樹脂が用いられている。しかし、レンズレセプタクルとキャップとの隙間は極めて狭く、UV硬化樹脂は、レンズレセプタクルの下端とキャップとの間の、ごく限られた隙間にしか入り込めなかった。そのため、レンズレセプタクルをキャップに仮固定し、レンズレセプタクルの位置合わせをした後で、レンズレセプタクルがぐらついてしまうという問題があった。そこで、特許文献1では、UV硬化樹脂を隙間の奥深くにまで入り込ませるために、毛細管現象を利用することが提案されている。
【0005】
ところが、レンズレセプタクルは、種々の制約から、UV光を透過し難い材料によって構成されている。そのため、UV硬化樹脂を隙間の奥深くにまで入り込ませたとしても、隙間の奥深くにまで入り込んだUV硬化樹脂を硬化させるのに、長時間を要してしまい、スループットが極めて悪くなってしまうという問題があった。また、仮固定に要する時間を短縮するために、レンズレセプタクルの下端の近傍に存在するUV硬化樹脂だけを硬化させるようにした場合には、レンズレセプタクルのぐらつきを改善することができないという問題があった。
【0006】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、スループットの悪化を最小限に抑えつつ、ぐらつきを抑えることの可能な光装置およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の光装置は、光素子を備えると共に、光素子を支持する支持基板と、光素子と電気的に接続された接続端子とを有する台座部を備えている。この光装置は、さらに、光素子の上方に光透過窓を有すると共に光素子を封止する封止部と、封止部の周面と所定の間隙を介して対向する筒先部を有すると共に光素子と光ファイバとを光結合させる光結合部とを備えている。封止部の周面と筒先部との間隙には、封止部の周面と筒先部とを互いに接着する接着部が設けられている。ここで、筒先部は一部に光透過構造を有しており、光透過構造は筒先部のうち当該光透過構造以外の部位での透過率よりも大きな光透過率を有している。
【0008】
本発明の第2の光装置は、光素子を備えると共に、光素子を支持する支持基板と、光素子と電気的に接続された接続端子とを有する台座部を備えている。この光装置は、さらに、台座部の周面と所定の間隙を介して対向する筒先部を有すると共に光素子と光ファイバとを光結合させる光結合部とを備えている。台座部の周面と筒先部との間隙には、台座部の周面と筒先部とを互いに接着する接着部が設けられている。ここで、筒先部は一部に光透過構造を有しており、光透過構造は筒先部のうち当該光透過構造以外の部位での透過率よりも大きな光透過率を有している。
【0009】
本発明の第1の光装置および第2の光装置では、光結合部の筒先部一部に、光透過率の大きな光透過構造が設けられている。これにより、製造過程において、外部から光を、硬化前の接着部に向かって照射した場合には、硬化前の接着部のうち外部に露出している部分と、接着部のうち光透過構造に対応する部分とに、外部からの光を効率よく照射することができる。
【0010】
本発明の第1の光装置の製造方法は、下記の第1中間部品を用意した上で、以下の3つの工程を行うものである。
(A1)封止部の周面にUV硬化樹脂を付着する第1工程
(A2)筒先部を有すると共に光素子と光ファイバとを光結合させる光結合部を、封止部の周面と筒先部との間隙にUV硬化樹脂が入り込むように封止部に嵌め込む第2工程
(A3)UV硬化樹脂に対してUV光を照射することによりUV硬化樹脂を硬化させると共に筒先部を封止部の周面に接着する第3工程
【0011】
上述の第1中間部品は、光素子を備えると共に、光素子を支持する支持基板と、光素子と電気的に接続された接続端子とを有する台座部を備えており、さらに、光素子の上方に光透過窓を有すると共に光素子を封止する封止部を備えたものである。
【0012】
本発明の第2の光装置の製造方法は、下記の第2中間部品を用意した上で、以下の3つの工程を行うものである。
(B1)台座部の周面にUV硬化樹脂を付着する第1工程
(B2)筒先部を有すると共に光素子と光ファイバとを光結合させる光結合部を、台座部の周面と筒先部との間隙にUV硬化樹脂が入り込むように台座部に嵌め込む第2工程
(B3)UV硬化樹脂に対してUV光を照射することによりUV硬化樹脂を硬化させると共に筒先部を台座部の周面に接着する第3工程
【0013】
上述の第2中間部品は、光素子を備えると共に、光素子を支持する支持基板と、光素子と電気的に接続された接続端子とを有する台座部を備えたものである。
【0014】
本発明の第1の光装置の製造方法および第2の光装置の製造方法では、光結合部が、台座部の周面と筒先部との間隙または封止部の周面と筒先部との間隙にUV硬化樹脂が入り込むように台座部または封止部に嵌め込まれる。これにより、毛細管現象を利用しないで、UV硬化樹脂を隙間の奥深くにまで入り込ませることができる。ここで、本発明では、台座部または封止部の周面にUV硬化樹脂を付着することから、UV硬化樹脂の粘度は、毛細管現象を利用したときの粘度よりも高くなっている。従って、長時間、UV光を照射しなくても、UV硬化樹脂を広範囲に硬化させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の第1の光装置および第2の光装置によれば、製造過程において、外部から光を、硬化前の接着部に向かって照射した場合に、硬化前の接着部のうち外部に露出している部分と、接着部のうち光透過構造に対応する部分とに、外部からの光を効率よく照射することができるようにした。これにより、スループットの悪化を最小限に抑えつつ、ぐらつきを抑えることができる。
【0016】
本発明の第1の光装置の製造方法および第2の光装置の製造方法によれば、毛細管現象を利用しないで、UV硬化樹脂を隙間の奥深くにまで入り込ませるようにした。これにより、スループットの悪化を最小限に抑えつつ、ぐらつきを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施の形態に係る光送信装置の斜視図である。
【図2】図1の光送信装置の断面図である。
【図3】図1の光透過構造の一例を表す断面図である。
【図4】図1の光透過構造の第1変形例を表す断面図である。
【図5】図1の光透過構造の第2変形例を表す断面図である。
【図6】図1の光透過構造の第3変形例を表す断面図である。
【図7】図1の光透過構造の第4変形例を表す断面図である。
【図8】図1の光透過構造の第5変形例を表す断面図である。
【図9】図1の光透過構造の第6変形例を表す断面図である。
【図10】図1の光透過構造の第7変形例を表す断面図である。
【図11】図1の光送信装置の製造方法の一例について説明するための断面図である。
【図12】図11に続く工程について説明するための断面図である。
【図13】図1の光送信装置の一変形例の断面図である。
【図14】光受信装置の断面図である。
【図15】図14の光受信装置の一変形例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。

1.実施の形態(光送信装置、図1〜図12)
2.変形例
○キャップが設けられていない例(図13)
○光受信装置(図14、図15)
【0019】
<実施の形態>
図1は、本発明の一実施の形態に係る光送信装置1の概略構成を斜視的に表したものである。図2は図1の光送信装置1の断面構成を表したものである。なお、図1,図2は、模式的に表したものであり、実際の寸法,形状とは異なっている。
【0020】
本実施の形態の光送信装置1は、一般に、TOSA(Transmitter Optical SubAssembly)と称されるものであり、外部から入力された電気信号を光信号に変換して出力するものである。光送信装置1は、例えば、ステム10、発光素子20、受光素子30、キャップ40およびレンズレセプタクル50を備えている。なお、ステム10は、本発明の「台座部」の一具体例に相当する。また、発光素子20は、本発明の「光素子」の一具体例に相当する。受光素子30も、本発明の「光素子」の一具体例に相当する。キャップ40は、本発明の「封止部」の一具体例に相当し、レンズレセプタクル50は、本発明の「光結合部」の一具体例に相当する。
【0021】
ステム10は、レンズレセプタクル50と共に、光送信装置1のパッケージを構成するものであり、例えば、発光素子20を支持する支持基板11と、支持基板11の裏面に配置された外枠基板12と、複数の接続端子13とを有している。支持基板11および外枠基板12は、例えば、円板形状となっており、双方の中心軸(図示せず)が互いに重なり合うように配置されている。支持基板11の側面(周面)11Aは、例えば、支持基板11の法線方向に平行な面となっている。同様に、外枠基板12の側面12A(周面)も、例えば、外枠基板12の法線方向に平行な面となっている。側面11Aの幅は、例えば、側面12Aの幅よりも厚くなっており、キャップ40またはレンズレセプタクル50が支持基板11に嵌合しやすいようになっている。外枠基板12の直径は、支持基板11の直径よりも大きくなっている。外枠基板12の外縁は、外枠基板12の中心軸を法線とする面内において外枠基板12の中心軸から放射方向に張り出した環状のフランジ12Bとなっている。フランジ12Bは、製造過程においてキャップ40またはレンズレセプタクル50を支持基板11に嵌合させるときの基準位置を規定する役割を有している。複数の接続端子13は、支持基板11および外枠基板12を貫通しており、例えば、外枠基板12側に長く突出しており、かつ支持基板11側に短く突出している。複数の接続端子13のうち外枠基板12側に長く突出している部分が、例えば光通信用の基板などに嵌め込まれる部分に相当する。一方、複数の接続端子13のうち支持基板11側に短く突出している部分が、ワイヤ(図示せず)などを介して発光素子20および受光素子30と電気的に接続される部分に相当する。複数の接続端子13は、支持基板11および外枠基板12に設けられた絶縁部材(図示せず)よって支持されている。複数の接続端子13と、支持基板11および外枠基板12とは、上記の絶縁部材によって互いに絶縁分離されている。さらに、個々の接続端子13についても、上記の絶縁部材によって互いに絶縁分離されている。
【0022】
発光素子20および受光素子30は、支持基板11の上面に実装されたものである。発光素子20は、例えば、サブマウント21上に配置された状態で、支持基板11の上面に実装されている。発光素子20は、電気信号を光信号に変換して出力するものであり、支持基板11の法線と平行な方向に光を出力するようになっている。発光素子20は、例えば、面発光型の半導体レーザ(VCSEL)であり、光軸が支持基板11の法線と平行となるように配置されている。発光素子20は、光軸が支持基板11の中心軸(図示せず)と重なり合うように配置されていることが好ましい。受光素子30は、発光素子20から出力される光の出力をモニターする目的で設けられたものである。受光素子30は、光信号を電気信号に変換して出力するものであり、支持基板11の法線と平行な方向に成分を有する光を検出するようになっている。受光素子30は、例えば、フォトダイオード(PD)であり、発光素子20から出力された光のうち後述の光透過窓42によって反射された光(反射光)が受光面(図示せず)に入射するように配置されている。なお、発光素子20および受光素子30は、別体で構成されていてもよいし、一体に構成されていてもよい。
【0023】
キャップ40は、発光素子20および受光素子30を封止するものである。キャップ40は、例えば、上端および下端に開口が設けられた筒部41を有している。筒部41の下端が、支持基板11の側面11Aに接しており、筒部41の内部空間に、発光素子20および受光素子30が位置している。キャップ40は、筒部41の上端側の開口を塞ぐようにして配置された光透過窓42を有している。光透過窓42は、例えば、図2に示したように、発光素子20の上方に対応する位置に配置されており、発光素子20から出力された光を透過する機能を有している。光透過窓42は、さらに、発光素子20から出力された光の一部を透過すると共に、発光素子20から出力された光の一部を反射するハーフミラーとしての機能も有している。
【0024】
レンズレセプタクル50は、発光素子20と光ファイバ(図示せず)とを光結合させるものである。レンズレセプタクル50は、例えば、光ファイバを支持するスリーブ51と、発光素子20から出力された光を集光するレンズ52と、キャップ40の周面(筒部41の側面41A)と所定の間隙を介して対向する環状の筒先部53と、とを有している。スリーブ51は、レンズレセプタクル50の端部(上端)に形成されており、光ファイバの先端が着脱自在に挿抜される円筒状の空隙51Aを有している。レンズ52は、光ファイバがスリーブ51に支持されているときの、その光ファイバの光軸(図示せず)上に配置されている。レンズ52は、発光素子20側に突出した凸レンズであり、発光素子20から出力された光をスリーブ51に支持された光ファイバに端面に集光するようになっている。
【0025】
なお、スリーブ51に光ファイバを装着したときにレンズ52の焦点距離に相当する箇所に光ファイバの端面が配置されるようにするためには、後述する位置合わせをレンズレセプタクル50に対して行うことが必要となる。この位置合わせを行う前に、後述する仮固定をレンズレセプタクル50に対して行うことが必要となる。本実施の形態では、筒先部53が、この仮固定に適した構造(光透過構造)を有している。以下では、筒先部53が有する光透過構造について詳細に説明する。
【0026】
筒先部53は、レンズレセプタクル50の両端のうちスリーブ51とは反対側の端部(下端)に形成されており、支持基板11、発光素子20および受光素子30を収容可能な円筒状の空隙を有している。筒先部53は、後述の光透過構造53Aが形成されていないとした場合に、例えば、n回回転対称(nは、例えば2、3、4などの正の整数)の形状となっている。筒先部53は、1または複数の光透過構造53Aを有している。光透過構造53Aは、当該筒先部53の一部に形成されており、筒先部53のうち当該光透過構造53A以外の部位での光透過率よりも大きな光透過率を有している。例えば、光透過構造53Aの透過率は、筒先部53のうち当該光透過構造53A以外の部位での光透過率の10倍以上となっている。なお、ここでの光透過率とは、UV光に対する透過率のことを指しており、筒先部53および光透過構造53Aに対して横方向からUV光を照射したときの透過率のことを指している。
【0027】
光透過構造53Aは、例えば、図3、図4、図5、または図6に示したように、筒先部53を貫通する貫通孔によって構成されている。このとき、貫通孔は、例えば、図3に示したように円柱形状となっている。貫通孔の内面は、例えば、図3に示したように横方向に平行となっていてもよいし、例えば、図4に示したようにテーパー形状となっていてもよいし、図5に示したように階段形状となっていてもよい。また、貫通孔の内面は、例えば、図6に示したようにテーパー形状であって、かつ階段形状となっていてもよい。
【0028】
なお、光透過構造53Aは、上述したような貫通孔以外の構造となっていてもよい。光透過構造53Aは、例えば、図7、図8、図9、または図10に示したように、当該筒先部53の外周面に窪みが形成され、その窪みの底面に当該筒先部53の一部が残った構造となっていてもよい。このとき、窪みの内面(側面)は、例えば、図7に示したように横方向に平行となっていてもよいし、例えば、図8に示したようにテーパー形状となっていてもよいし、図9に示したように階段形状となっていてもよい。また、窪みの内面(側面)は、例えば、図10に示したようにテーパー形状であって、かつ階段形状となっていてもよい。
【0029】
筒先部53に複数の光透過構造53Aが形成されている場合は、筒先部53に形成された複数の光透過構造53Aは、例えば、n回回転対称(nは、例えば2、3、4などの正の整数)の位置に形成されている。例えば、筒先部53に2つの光透過構造53Aが形成されている場合は、これら2つの光透過構造53Aは、支持基板11の中心軸を挟んで互いに対向する位置に形成されている。
【0030】
このような構成を有する光送信装置1は、例えば次のようにして製造することができる。図11、図12は、光送信装置1の製造過程を模式的に表したものである。まず、ステム10、発光素子20、受光素子30、キャップ40およびレンズレセプタクル50を用意したのち、支持基板11の上面に発光素子20および受光素子30を実装すると共に、発光素子20および受光素子30をキャップ40で封止する。このようにして、まず、中間部品100を作成する(図11)。
【0031】
次に、キャップ40の周面(筒部41の側面)にUV硬化樹脂60を付着する(図11)。このとき、UV硬化樹脂60を、キャップ40の周面を1周するように付着することが好ましい。また、UV硬化樹脂60の材料としては、UV光だけでなく熱によっても硬化する材料であることが好ましい。
【0032】
次に、レンズレセプタクル50を、キャップ40の周面と筒先部53との間隙にUV硬化樹脂60が入り込むようにキャップ40に嵌め込む(図11)。このとき、UV硬化樹脂60は、筒先部53に押されて、筒先部53の先端(レンズレセプタクル50の下端)とキャップ40または支持基板11との間に形成される間隙に入り込む。そして、筒先部53がフランジ12Bの近傍にまで達する頃には、UV硬化樹脂60は、筒先部53とキャップ40または支持基板11との間に形成される間隙の奥深くにまで入り込み、光透過構造53Aとの対向領域にまで入り込む。このとき、光透過構造53Aが貫通孔によって構成されている場合には、貫通孔の内部にUV硬化樹脂60が露出する。
【0033】
次に、UV光発生装置70を筒先部53の近傍に設置し、UV硬化樹脂60に対してUV光Lを照射することによりUV硬化樹脂60を硬化させる。これにより、筒先部53がキャップ40または支持基板11の周面に接着され、仮固定が完了する。このとき、UV硬化樹脂60は、筒先部53のうち光透過率の高い部位である光透過構造53Aとの対向部分と、筒先部53の近傍において外部に露出している部分との合計2箇所において、主に硬化する。
【0034】
次に、スリーブ51に光ファイバを装着したときにレンズ52の焦点距離に相当する箇所に光ファイバの端面が配置されるようにするために、レンズレセプタクル50の位置合わせを行う。続いて、発熱装置(図示せず)を筒先部53の近傍に設置し、UV硬化樹脂60に対して熱を加えることによりUV硬化樹脂60全体を硬化させる。これにより、筒先部53がキャップ40または支持基板11の周面にしっかりと接着され、本固定が完了する。このようにして、本実施の形態の光送信装置1が製造される。
【0035】
本実施の形態の光送信装置1では、外部から電気信号が入力されると、電気信号が発光素子20において光信号に変換され、発光素子20からレーザ光がレンズ52に向かって出力される。出力されたレーザ光は、レンズ52で集光されて、スリーブ51に装着された光ファイバの端面に入射し、光ファイバ内を伝播していく。このようにして、光送信が行われる。
【0036】
ところで、本実施の形態では、レンズレセプタクル50の筒先部53の一部に、光透過率の大きな光透過構造53Aが設けられている。これにより、製造過程において、外部から光を、硬化前のUV硬化樹脂60に向かって照射した場合には、硬化前のUV硬化樹脂60のうち光透過構造53Aに対応する部分と、硬化前のUV硬化樹脂60のうち外部に露出している部分とに、外部からの光を効率よく照射することができる。その結果、素早く仮固定を終わらすことができるだけでなく、レンズレセプタクル50のぐらつきを抑えることができる。このように、本実施の形態では、スループットの悪化を最小限に抑えつつ、ぐらつきを抑えることができる。
【0037】
また、本実施の形態では、製造過程において、レンズレセプタクル50が、キャップ40の周面と筒先部53との間隙にUV硬化樹脂60が入り込むようにキャップ40に嵌め込まれる。これにより、毛細管現象を利用しないで、UV硬化樹脂60を隙間の奥深くにまで入り込ませることができる。ここで、本実施の形態では、キャップ40の周面にUV硬化樹脂60を付着することから、UV硬化樹脂60の粘度は、毛細管現象を利用したときの粘度よりも高くなっている。従って、長時間、UV光Lを照射しなくても、UV硬化樹脂60を広範囲に硬化させることができるので、スループットの悪化を最小限に抑えつつ、ぐらつきを抑えることができる。
【0038】
<第1の実施の形態の変形例>
上記実施の形態では、光透過窓42にハーフミラーの機能を持たせていた。しかし、ハーフミラーが不要な場合、例えば、発光素子20から出力された光を直接、受光素子30に入射させることができるようになっている場合には、ハーフミラーの機能をなくすることが可能である。また、種々の理由から、キャップ40そのものが不要な場合には、例えば、図13に示したように、キャップ40を省略してもよい。ただし、そのようにした場合には、支持基板11の側面11Aには、レンズレセプタクル50の筒先部53が嵌合することになる。
【0039】
本変形例における光送信装置は、例えば次のようにして製造することができる。まず、ステム10、発光素子20、受光素子30およびレンズレセプタクル50を用意したのち、支持基板11の上面に発光素子20および受光素子30を実装する。このようにして、まず、中間部品を作成する。
【0040】
次に、支持基板11の側面11AにUV硬化樹脂60を付着する(図11)。このとき、UV硬化樹脂60を、側面11Aを1周するように付着することが好ましい。また、UV硬化樹脂60の材料としては、UV光だけでなく熱によっても硬化する材料であることが好ましい。
【0041】
次に、レンズレセプタクル50を、支持基板11の側面11Aと筒先部53との間隙にUV硬化樹脂60が入り込むようにキャップ40に嵌め込む。このとき、UV硬化樹脂60は、筒先部53に押されて、筒先部53の先端(レンズレセプタクル50の下端)と支持基板11との間に形成される間隙に入り込む。そして、筒先部53がフランジ12Bの近傍にまで達する頃には、UV硬化樹脂60は、筒先部53と支持基板11との間に形成される間隙の奥深くにまで入り込み、光透過構造53Aとの対向領域にまで入り込む。このとき、光透過構造53Aが貫通孔によって構成されている場合には、貫通孔の内部にUV硬化樹脂60が露出する。
【0042】
次に、UV光発生装置70を筒先部53の近傍に設置し、UV硬化樹脂60に対してUV光Lを照射することによりUV硬化樹脂60を硬化させる。これにより、筒先部53がキャップ40または支持基板11の周面に接着され、仮固定が完了する。このとき、UV硬化樹脂60は、筒先部53のうち光透過率の高い部位である光透過構造53Aとの対向部分と、筒先部53の近傍において外部に露出している部分との合計2箇所において、主に硬化する。
【0043】
次に、スリーブ51に光ファイバを装着したときにレンズ52の焦点距離に相当する箇所に光ファイバの端面が配置されるようにするために、レンズレセプタクル50の位置合わせを行う。続いて、発熱装置(図示せず)を筒先部53の近傍に設置し、UV硬化樹脂60に対して熱を加えることによりUV硬化樹脂60全体を硬化させる。これにより、筒先部53が支持基板11の周面にしっかりと接着され、本固定が完了する。このようにして、本変形例における光送信装置が製造される。
【0044】
本変形例における光送信装置でも、レンズレセプタクル50の筒先部53の一部に、光透過率の大きな光透過構造53Aが設けられている。これにより、製造過程において、外部から光を、硬化前のUV硬化樹脂60に向かって照射した場合には、硬化前のUV硬化樹脂60のうち光透過構造53Aに対応する部分と、硬化前のUV硬化樹脂60のうち外部に露出している部分とに、外部からの光を効率よく照射することができる。その結果、素早く仮固定を終わらすことができるだけでなく、レンズレセプタクル50のぐらつきを抑えることができる。このように、本変形例でも、スループットの悪化を最小限に抑えつつ、ぐらつきを抑えることができる。
【0045】
また、本変形例では、製造過程において、レンズレセプタクル50が、支持基板11の側面11Aと筒先部53との間隙にUV硬化樹脂60が入り込むように支持基板11に嵌め込まれる。これにより、毛細管現象を利用しないで、UV硬化樹脂60を隙間の奥深くにまで入り込ませることができる。ここで、本変形例では、支持基板11の側面11AにUV硬化樹脂60を付着することから、UV硬化樹脂60の粘度は、毛細管現象を利用したときの粘度よりも高くなっている。従って、長時間、UV光Lを照射しなくても、UV硬化樹脂60を広範囲に硬化させることができるので、スループットの悪化を最小限に抑えつつ、ぐらつきを抑えることができる。
【0046】
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、種々変形可能である。
【0047】
例えば、上記実施の形態では、本発明を光送信装置に対して適用した場合について説明したが、光受信装置、いわゆるROSA(Receiver Optical SubAssembly)に対してももちろん適用することが可能である。例えば、図14に示したように、上記実施の形態の光送信装置1において、発光素子20およびサブマウント21をなくし、受光素子30を支持基板11の中心軸上に配置した光受信装置2において、筒先部53の一部に、光透過率の大きな光透過構造53Aを設けるようにしてもよい。また、例えば、図15に示したように、図14に記載の光受信装置2において、キャップ40を省略したものにおいて、筒先部53の一部に、光透過率の大きな光透過構造53Aを設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1…光送信装置、2…光受信装置、10…ステム、11…支持基板、11A,12A…側面、12…外枠基板、12B…フランジ、13…接続端子、20…発光素子、21…サブマウント、30…受光素子、40…キャップ、41…筒部、42…光透過窓、50…レンズレセプタクル、51…スリーブ、52…レンズ52…筒先部、53A…光透過構造、60…UV硬化樹脂、70…UV光発生装置、100…中間部品。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光素子と、
前記光素子を支持する支持基板と、前記光素子と電気的に接続された接続端子とを有する台座部と、
前記光素子の上方に光透過窓を有すると共に前記光素子を封止する封止部と、
前記封止部の周面と所定の間隙を介して対向する筒先部を有すると共に前記光素子と光ファイバとを光結合させる光結合部と、
前記封止部の周面と前記筒先部との間隙に、前記封止部の周面と前記筒先部とを互いに接着する接着部と
を備え、
前記筒先部は、一部に光透過構造を有し、
前記光透過構造は、前記筒先部のうち当該光透過構造以外の部位での光透過率よりも大きな光透過率を有している
光装置。
【請求項2】
前記光透過構造は、前記筒先部を貫通する1または複数の貫通孔によって構成されている
請求項1に記載の光装置。
【請求項3】
前記1または複数の貫通孔は、円柱形状となっている
請求項2に記載の光装置。
【請求項4】
前記1または複数の貫通孔の内面は、テーパー形状となっている
請求項2に記載の光装置。
【請求項5】
前記1または複数の貫通孔の内面は、階段形状となっている
請求項2に記載の光装置。
【請求項6】
前記光透過構造は、前記複数の貫通孔によって構成され、
前記複数の貫通孔は、回転対称の位置に形成されている
請求項2に記載の光装置。
【請求項7】
前記光透過構造は、前記筒先部の外周面に形成された1または複数の窪みによって構成されている
請求項1に記載の光装置。
【請求項8】
前記1または複数の窪みは、円柱形状となっている
請求項7に記載の光装置。
【請求項9】
前記1または複数の窪みの内面は、テーパー形状となっている
請求項7に記載の光装置。
【請求項10】
前記1または複数の窪みの内面は、階段形状となっている
請求項7に記載の光装置。
【請求項11】
前記光透過構造は、前記複数の窪みによって構成され、
前記複数の窪みは、回転対称の位置に形成されている
請求項7に記載の光装置。
【請求項12】
光素子と、
前記光素子を支持する支持基板と、前記光素子と電気的に接続された接続端子とを有する台座部と、
前記台座部の周面と所定の間隙を介して対向する筒先部を有すると共に前記光素子と光ファイバとを光結合させる光結合部と、
前記台座部の周面と前記筒先部との間隙に、前記台座部の周面と前記筒先部とを互いに接着する接着部と
を備え、
前記筒先部は、一部に光透過構造を有し、
前記光透過構造は、前記筒先部のうち当該光透過構造以外の部位での光透過率よりも大きな光透過率を有している
光装置。
【請求項13】
光素子と、
前記光素子を支持する支持基板と、前記光素子と電気的に接続された接続端子とを有する台座部と、
前記光素子の上方に光透過窓を有すると共に前記光素子を封止する封止部と
を備えた中間部品を用意する第1工程と、
前記封止部の周面にUV硬化樹脂を付着する第2工程と、
筒先部を有すると共に前記光素子と光ファイバとを光結合させる光結合部を、前記封止部の周面と前記筒先部との間隙に前記UV硬化樹脂が入り込むように前記封止部に嵌め込む第3工程と、
前記UV硬化樹脂に対してUV光を照射することにより前記UV硬化樹脂を硬化させると共に前記筒先部を前記封止部の周面に接着する第4工程と
を含む光装置の製造方法。
【請求項14】
光素子と、
前記光素子を支持する支持基板と、前記光素子と電気的に接続された接続端子とを有する台座部と
を備えた中間部品を用意する第1工程と、
前記台座部の周面にUV硬化樹脂を付着する第2工程と、
筒先部を有すると共に前記光素子と光ファイバとを光結合させる光結合部を、前記台座部の周面と前記筒先部との間隙に前記UV硬化樹脂が入り込むように前記台座部に嵌め込む第3工程と、
前記UV硬化樹脂に対してUV光を照射することにより前記UV硬化樹脂を硬化させると共に前記筒先部を前記台座部の周面に接着する第4工程と
を含む光装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−44600(P2011−44600A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−192121(P2009−192121)
【出願日】平成21年8月21日(2009.8.21)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】