説明

光走査装置

【課題】捻り振動を用いた光走査装置において温度変化による走査特性の変化を抑制する
【解決手段】光を反射させる反射面を有するミラー31と、ミラー31を捻り振動させるための回転軸kとなる弾性連結部16a,16bを備え、回転軸kを中心にしてミラー31を揺動させて光を走査する。そしてミラー支持枠32と熱アクチュエータ33が、ミラー31と弾性連結部16a,16bとを連結するとともに、温度が高くなるほどミラー31の回転軸k周りの慣性モーメントが低くなるようにミラー31を変位させる。なお、ミラー31の慣性モーメントを変化させるために、ミラー31の反射面は、円以外の形状(図では楕円形状)を有し、熱アクチュエータ33は、反射面に垂直な回転軸を中心にミラー31を回転させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ビームを走査する光走査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光走査装置の小型化を目的として、MEMS(Micro Electro Mechanical System)技術を利用した光走査装置が種々提案されている。
これに対して本願出願人は、反射面が表面に形成された第3フレームと、第3フレームに対し所定の隙間を介して設けられた第2フレームと、第2フレームに対し所定の隙間を介して設けられた第1フレームと、第1フレームに対し所定の隙間を介して設けられた第0フレームとを備え、さらに、第3フレームと第2フレームと第1フレームとをそれぞれの回転軸を中心に捻り振動可能に構成されることで、3自由度連成振動系を構成した光走査装置を提案している(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
このように構成された光走査装置では、第1フレームに固有の周期的加振力を作用させることにより、3自由度捻り振動子を共振状態にできる。そして、第2フレームと第3フレームそれぞれの振動に対応した周期的加振力を重畳して与えることにより、第2フレームと第3フレームをそれぞれ異なる周波数および振幅で振動させ、さらに第3フレームの反射面で光を反射させることで、光を2次元走査することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−129068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の光走査装置では、環境温度が変化すると3自由度捻り振動子の共振周波数が変化し、これにより、図27に示すように、走査振幅が低下するという問題があった。これは、回転軸を中心に捻り振動可能に構成するために、弾性変形可能な部材(以下、弾性変形部材という)を上記回転軸として利用しており、環境温度の変化に応じて弾性変形部材のバネ定数が変化することに起因している。
【0006】
本発明は、こうした問題に鑑みてなされたものであり、捻り振動を用いた光走査装置において温度変化による走査特性の変化を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためになされた請求項1に記載の光走査装置は、光ビームを反射させる反射面を有する反射部と、反射部を捻り振動させるための第1回転軸となる第1弾性変形部材とを備え、第1回転軸を中心にして反射部を揺動させることにより、反射面により反射された光ビームを走査する光走査装置である。
【0008】
ところで、第1弾性変形部材を回転軸として反射部を捻り振動させる場合の共振周波数fは、下式(1)で表される。
【0009】
【数1】

【0010】
なお式(1)において、kは第1弾性変形部材のバネ定数、Jは反射部の慣性モーメントである。
そして、第1弾性変形部材のバネ定数kは、下式(2)で表される。
【0011】
【数2】

【0012】
なお式(2)において、βは、第1弾性変形部材の断面の形状から決まる係数である。また、aは、第1弾性変形部材の断面の長辺の長さである。また、bは、第1弾性変形部材の断面の短辺の長さである。また、Eはヤング率(横弾性係数)である。また、νはポアソン比である。また、lは第1弾性変形部材の長さである。すなわち、ヤング率Eが低下するとバネ定数kが低下する。
【0013】
さらに、ヤング率Eは、温度をTとして、下式(3)で表される。
【0014】
【数3】

【0015】
なお式(3)において、E0は、0℃でのヤング率である。また、Δhtは温度係数である。すなわち、温度が高くなるほどヤング率Eは低下する。
したがって、温度の上昇に伴いヤング率Eが低下し、第1弾性変形部材のバネ定数kが低下すると、共振周波数fが低下する。
【0016】
これに対し、請求項1に記載の光走査装置では、連結変位部が、反射部と第1弾性変形部材とを連結するとともに、温度が高くなるほど反射部の第1回転軸周りの慣性モーメントが低くなるように反射部を変位させる。
【0017】
したがって、温度上昇に伴うヤング率の低下に対応して、反射部の第1回転軸周りの慣性モーメントを低下させることにより、温度上昇に伴う共振周波数の変化を抑制することができる。これにより、温度変化による走査特性の変化を抑制することができる。
【0018】
例えば図7に示すように、温度変化に伴いヤング率が変化すると共振周波数が変化する(図7の曲線L1を参照)。このときの仕様共振周波数からのずれ量をΔfaとする。一方、ヤング率が一定という条件の下で、温度変化に伴い反射部の第1回転軸周りの慣性モーメントが変化すると、共振周波数が変化する(図7の曲線L2を参照)。このときの仕様共振周波数からのずれ量をΔfbとする。
【0019】
したがって、温度変化によりヤング率と慣性モーメントが同時に変化した場合の仕様共振周波数からのずれ量は|Δfa―Δfb|となる。このため、|Δfa―Δfb|が、許容誤差Δεより小さくなるように設計することによって(図7の曲線L3を参照)、温度上昇に伴う共振周波数fの変化を抑制することができる。
【0020】
また、請求項1に記載の光走査装置において、反射部の第1回転軸周りの慣性モーメントを変化させるために、具体的には、請求項2に記載のように、反射部の反射面は、円以外の形状を有し、連結変位部は、反射部の変位として、反射面に垂直な回転軸である変位回転軸を中心に反射部を回転させるようにしてもよい。
【0021】
このように構成された光走査装置では、反射部の反射面は円以外の形状を有しているため、反射面に垂直な回転軸(変位回転軸)を中心とした反射部の回転に伴い、反射部において第1回転軸から最も遠い地点と第1回転軸との距離が変化する。例えば、反射面が楕円形状である場合には、長軸方向と短軸方向とで径が異なるため、反射部の回転に伴い上記距離が変化する。そして、この距離の変化により、慣性モーメントを変化させることができる。
【0022】
また、請求項1に記載の光走査装置において、反射部の第1回転軸周りの慣性モーメントを変化させるために、具体的には、請求項3に記載のように、連結変位部は、反射部の変位として、第1回転軸に直交する方向に沿って反射部を移動させるようにしてもよい。
【0023】
このように構成された光走査装置では、第1回転軸に直交する方向に沿った反射部の移動により、反射部と第1回転軸との距離が変化する。そして、この距離の変化により、慣性モーメントを変化させることができる。
【0024】
また、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の光走査装置において、請求項4に記載のように、連結変位部は、熱膨張率が互いに異なる材料からなる少なくとも2つの部材を積層して構成されるようにするとよい。
【0025】
このように構成された光走査装置では、温度が低くなると、熱膨張率が大きい部材が大きく収縮することにより、連結変位部が、熱膨張率が異なる2つの部材との接合面を挟んで、熱膨張率が大きい部材側に撓む。一方、温度が高くなると、熱膨張率が大きい部材が大きく膨張することにより、熱膨張率が小さい部材側に撓む。これにより、温度に応じた位置に自動的に反射部を変位させることができる。
【0026】
このように構成された光走査装置によれば、温度を検出する温度センサ、および温度検出結果に基づいて温度補正を行う制御回路などを用いることなく反射部を変位させることができるため、光走査装置の構成を簡略化することができる。
【0027】
また、請求項4に記載の光走査装置の光走査装置において、請求項5に記載のように、2つの部材は、シリコンを材料とする部材と、シリコンを熱酸化することにより形成される酸化シリコンを材料とする部材であるようにしてもよい。
【0028】
シリコンおよび酸化シリコンの熱膨張率はそれぞれ、(2.6×10-6)および(0.5×10-6)であり、熱膨張率が大きく異なる。そして、シリコンの一部を熱酸化することによって、シリコンと酸化シリコンとが積層された構造を形成することができるため、別々に形成された2つの部材を張り合わせるという工程が不要となり、製造工程を簡略化することができる。
【0029】
また、請求項4または請求項5に記載の光走査装置において、請求項6に記載のように、連結変位部は、熱膨張率が互いに異なる材料からなる2つの部材を積層して構成され、熱膨張率が互いに異なる材料からなる2つの部材のうち、一方の部材は、折り返し部がコ字状になるようにして棒状部材を複数回折り返した形状に形成され、他方の部材は、一方の部材と他方の部材とが交互に配置されるように、折り返した形状に形成された一方の部材に積層されるようにしてもよい。
【0030】
このように構成された光走査装置では、連結変位部における一方の部材(以下、変位第1部材という)は、折り返し部がコ字状になるようにして棒状部材を複数回折り返した形状に形成されている。このため、この連結変位部の一端を反射部に接続するとともに他端を第1弾性変形部材に接続した場合に、変位第1部材が直線状の部材である場合と比較して、変位第1部材の長さを長くすることができる。
【0031】
そして、他方の部材(以下、変位第2部材という)は、変位第1部材と変位第2部材とが交互に配置されるように、折り返した形状に形成された一方の部材に積層されるため、変位第1部材と変位第2部材とが積層された複数の部分は、温度変化に伴い同方向に変位する。そして、上述のように、変位第1部材が直線状の部材である場合と比較して、変位第1部材の長さを長くすることができるため、変位第1部材と変位第2部材とが積層された部分を長くすることができる。つまり、変位第1部材が直線状の部材である場合と比較して、温度変化に伴い変位させる部分を長くすることができる。
【0032】
したがって、このように構成された光走査装置によれば、変位第1部材が直線状の部材である場合と比較して、反射部の変位を大きくすることが可能となる。
また、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の光走査装置において、請求項7に記載のように、連結変位部は、第1弾性変形部材と同じ材料からなる基板部材と、圧電体を第1電極と第2電極との間で挟んで形成された圧電部材とを積層して構成され、第1電極と第2電極との間に、予め設定された一定値の電圧が常時印加されるようにしてもよい。
【0033】
このように構成された光走査装置において、圧電部材は、第1電極と第2電極との間に一定値の電圧が印加されることにより、第1電極から第2電極へ向かう方向に対して垂直な面(以下、電極対向面という)に沿って伸び又は縮みが発生する。
【0034】
なお、圧電体の物性値の一つである圧電定数d31は、圧電体に電圧が印加されたときの電極対向面に沿った伸縮のし易さを示す値であり、温度が高くなるほど、圧電定数d31の値が大きくなることが知られている。つまり、温度が変化すると、圧電定数d31の値が変化し、圧電体における電極対向面に沿った伸縮量が変化する。
【0035】
このため、温度が高くなると、圧電部材が電極対向面に沿って基板部材よりも縮むため、圧電部材と基板部材とが積層されて構成されている連結変位部は第1電極から第2電極へ向かう方向へ撓む。すなわち連結変位部は、温度が高くなるほど、電極対向面に沿った長さが短くなる。これにより、温度に応じた位置に自動的に反射部を変位させることができる。
【0036】
このように構成された光走査装置によれば、請求項4と同様に、光走査装置の構成を簡略化することができる。
また圧電体は、印加される電圧値が大きくなるほど、電極対向面に沿った伸縮量が大きくなることが知られている。
【0037】
このため、経年変化に伴い第1弾性変形部材の剛性が変化して光走査装置の共振周波数が変化することや、圧電部材の剛性が変化して電極対向面に沿った伸縮量が変化することに対し、第1電極と第2電極との間に印加される電圧値を調整することにより反射部の第1回転軸周りの慣性モーメントを変化させ、経年変化に伴う共振周波数の変化を抑制することが可能となる。
【0038】
また、請求項1〜請求項9の何れか1項に記載の光走査装置において、請求項10に記載のように、第1弾性変形部材を支持する第1支持部と、第1支持部に連結された弾性変形可能な第2弾性変形部材を有し、第2弾性変形部材を第2回転軸として第1支持部を揺動可能に支持する第2支持部とを備え、第2回転軸は、第1回転軸と交差するように配置してもよい。
【0039】
このように構成された光走査装置によれば、第1回転軸を中心とした揺動と、第2回転軸を中心とした揺動によって、反射部で反射する光ビームを2次元的に走査することができる。したがって、光ビームを2次元走査することができる光走査装置において、請求項1に記載の光走査装置と同様の効果を得ることができる。
【0040】
また、請求項1〜請求項9の何れか1項に記載の光走査装置において、請求項11に記載のように、第1弾性変形部材を支持する第1支持部と、第1支持部に連結された弾性変形可能な第2弾性変形部材を有し、第2弾性変形部材を第2回転軸として第1支持部を揺動可能に支持する第2支持部と、第2支持部に連結された弾性変形可能な第3弾性変形部材を有し、第3弾性変形部材を第3回転軸として第2支持部を揺動可能に支持する第3支持部とを備え、第2回転軸は、第1回転軸と交差するように配置され、第3回転軸は、第1回転軸および第2回転軸と交差するように配置され、反射部、第1支持部、第2支持部、第3支持部、第1弾性変形部材、弾性変形部材、および第3弾性変形部材が、固有の周期的外力が作用した場合に大きい回転角で捻り振動する3自由度連成振動系を構成し、3自由度連成振動系に固有の周期的外力を作用させることにより、反射面により反射された光ビームを走査するようにしてもよい。
【0041】
すなわち、請求項11に記載の光走査装置は、第3支持部を固定端として、第1弾性変形部材、第2弾性変形部材、第3弾性変形部材に対しての捻り自由度を持つ3自由度捻り振動子になっている。
【0042】
3自由度捻り振動子は、理論上3つの振動モードを持つ。すなわち、3つの振動モードはそれぞれ異なる共振周波数を持ち、各共振周波数に対する反射部、第1支持部、および第2支持部の捻り振動の角度振幅の比はそれぞれ異なる(これは振動モードと呼ばれる)。したがって、或る振動モードにおいて、第2支持部の角度振幅が大きくなると、この振動モードにおける角度振幅の比に応じて、反射部または第1支持部の角度振幅が大きくなる。
【0043】
そして、3自由度連成振動系に固有の周期的外力を作用させることにより、3自由度捻り振動子を共振状態にできる。
また、3つの振動モードの各々に対応した周波数の周期的加振力を与えれば、それぞれの振動モードを励振できる。また、複数の周波数の周期的加振力を重畳して与えれば、複数の振動モードを同時に励振できる。
【0044】
このため、反射部の角度振幅が大きい振動モードに対応する周期的加振力と、第1支持部の角度振幅が大きい振動モードに対応する周期的加振力とを重畳して与えることにより、反射部で反射する光ビームを2次元的に走査することができる。
【0045】
したがって、このように構成された光走査装置によれば、光ビームを2次元走査することができる光走査装置において、請求項1に記載の光走査装置と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】光走査装置1の構成を示す平面図である。
【図2】光走査装置1の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】熱アクチュエータ33における温度に応じた動作の変化を示す図である。
【図4】光反射部13における温度に応じた動作の変化を示す図である。
【図5】光走査装置1の製造工程を示す断面図である。
【図6】熱アクチュエータ33の製造工程を示す平面図である。
【図7】ヤング率および慣性モーメントと共振周波数との関係を示すグラフである。
【図8】第2,3実施形態における光反射部13の構成と動作を示す図である。
【図9】第4,5実施形態における光反射部13の構成と動作を示す図である。
【図10】第6,7実施形態における光反射部13の構成と動作を示す図である。
【図11】光走査装置401の構成を示す平面図である。
【図12】第8実施形態における光反射部413の構成と動作を示す図である。
【図13】棒状部材511,512の構成を示す断面図である。
【図14】棒状部材511,512における温度に応じた動作の変化を示す図である。
【図15】熱アクチュエータ510における温度に応じた動作の変化を示す図である。
【図16】第8実施形態における光走査装置401の製造工程を示す断面図である。
【図17】第9実施形態における光反射部413の構成と動作を示す図である。
【図18】熱アクチュエータ520における温度に応じた動作の変化を示す図である。
【図19】第9実施形態における光走査装置401の製造工程の前半部分を示す断面図である。
【図20】第9実施形態における光走査装置401の製造工程の後半部分を示す断面図である。
【図21】第10実施形態の光反射部413の構成と動作を示す図である。
【図22】第11実施形態の光反射部413の構成と動作を示す図である。
【図23】第12実施形態の光反射部413の構成を示す図である。
【図24】第11実施形態の光反射部413の動作を示す図である。
【図25】光走査装置201の構成を示す平面図である。
【図26】光走査装置901の構成を示す平面図である。
【図27】光走査装置における周波数と振幅との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0047】
(第1実施形態)
以下に本発明の第1実施形態を図面とともに説明する。
図1は、本発明が適用された実施形態の光走査装置1の構成を示す平面図である。
【0048】
光走査装置1は、図1に示すように、光ビームを走査する光ビーム走査部2と、光ビーム走査部2を支持する支持部3と、光ビーム走査部2に回転駆動力を印加する駆動部4と、光ビーム走査部2の回転角度を検出する角度検出部5とを備える。
【0049】
光ビーム走査部2は、外ジンバル11と内ジンバル12と光反射部13と弾性連結部14a,14bと弾性連結部15a,15bと弾性連結部16a,16bと、櫛歯電極部17,18,19,20とから構成される。
【0050】
これらのうち光反射部13は、ミラー31とミラー支持枠32と熱アクチュエータ33とから構成される。ミラー31は、楕円形状であり、アルミ薄膜の鏡面部が表面に形成される。またミラー支持枠32は、円形枠状であり、枠内にミラー31が配置される。また熱アクチュエータ33は、熱膨張率の異なる2つの材料を張り合わせて構成されており(詳細は後述する)、ミラー支持枠32の枠内に複数配置され、ミラー31とミラー支持枠32とを連結する。
【0051】
また内ジンバル12は、矩形枠状であり、枠内に光反射部13が配置される。また外ジンバル11は、矩形枠状であり、枠内に内ジンバル12が配置される。
また弾性連結部16aは、弾性変形可能な材料で構成されており、内ジンバル12の枠内に配置され、光反射部13と内ジンバル12とを連結する。また弾性連結部16bは、弾性変形可能な材料で構成されており、内ジンバル12の枠内に配置され、光反射部13を挟んで弾性連結部16aと反対側において、光反射部13と内ジンバル12とを連結する。なお、弾性連結部16aおよび弾性連結部16bは、光反射部13の重心JSを通る同一直線上に配置されており、光反射部13の回転軸kとなる。これにより光反射部13は、回転軸kを中心に捻り振動可能に構成される。
【0052】
また弾性連結部15aは、弾性変形可能な材料で構成されており、外ジンバル11の枠内に配置され、内ジンバル12と外ジンバル11とを連結する。また弾性連結部15bは、弾性変形可能な材料で構成されており、外ジンバル11の枠内に配置され、内ジンバル12を挟んで弾性連結部15aと反対側において、内ジンバル12と外ジンバル11とを連結する。なお、弾性連結部15aおよび弾性連結部15bは、光反射部13と内ジンバル12との重心JSを通る同一直線上に配置されており、光反射部13の回転軸jとなる。これにより内ジンバル12は、回転軸jを中心に捻り振動可能に構成される。
【0053】
また弾性連結部14aは、弾性変形可能な材料で構成されており、外ジンバル11の上辺11aと支持部3とを連結する。また弾性連結部14bは、弾性変形可能な材料で構成されており、外ジンバル11を挟んで弾性連結部14aと反対側において、外ジンバル11の下辺11bと支持部3とを連結する。なお、弾性連結部14aおよび弾性連結部14bは、光反射部13と内ジンバル12と外ジンバル11との重心JSを通る同一直線上に配置されており、外ジンバル11の回転軸iとなる。これにより外ジンバル11は、回転軸iを中心に捻り振動可能に構成される。
【0054】
また櫛歯電極部17は、外ジンバル11の左辺11cに沿って櫛歯状に形成されている。さらに櫛歯電極部18は、櫛歯電極部17の上方において、左辺11cに沿って櫛歯状に形成されている。
【0055】
また櫛歯電極部19は、外ジンバル11の右辺11dに沿って櫛歯状に形成されている。さらに櫛歯電極部20は、櫛歯電極部17の上方において、右辺11dに沿って櫛歯状に形成されている。
【0056】
次に支持部3は、上辺11aと連結されていない側の弾性連結部14aの端部と連結される上側支持部3aと、下辺11bと連結されていない側の弾性連結部14bの端部と連結される下側支持部3bとから構成される。
【0057】
さらに駆動部4は、櫛歯電極部17と一定間隔を空けて噛み合う櫛歯状に形成された櫛歯電極部4aと、櫛歯電極部19と一定間隔を空けて噛み合う櫛歯状に形成された櫛歯電極部4bとから構成される。
【0058】
また角度検出部5は、櫛歯電極部18と一定間隔を空けて噛み合う櫛歯状に形成された櫛歯電極部5aと、櫛歯電極部20と一定間隔を空けて噛み合う櫛歯状に形成された櫛歯電極部5bとから構成される。
【0059】
次に、光走査装置1の電気的構成について説明する。図2は、光走査装置1の電気的構成を示すブロック図である。
光走査装置1は、図2に示すように、光ビーム走査部2を回転駆動するための駆動信号としてのパルス電圧を出力する駆動信号発生回路41と、駆動信号発生回路41により出力された駆動信号を増幅して櫛歯電極部4a,4bに印加する増幅回路42と、櫛歯電極部5a,5bと櫛歯電極部18,20との間の静電容量を電圧値に変換するC−V変換回路43a,43b(以下、C−V変換回路43a,43bをまとめてC−V変換回路43ともいう)と、光ビームの発光源となる半導体レーザ44と、C−V変換回路43から出力される電圧をモニタし、この電圧値に基づいて半導体レーザ44を制御するとともに駆動信号発生回路41を制御する制御回路45とを備える。
【0060】
次に、光走査装置1の動作原理を説明する。
光走査装置1は、支持部3を固定端として、回転軸i,j,kに対しての捻り自由度を持つ3自由度捻り振動子になっている。
【0061】
3自由度捻り振動子は、理論上3つの振動モードを持つ。すなわち、3つの振動モードはそれぞれ異なる共振周波数を持ち、各共振周波数に対する各フレームの捻り振動の角度振幅の比はそれぞれ異なる(これは振動モードと呼ばれる)。以下、これら3つの振動モードをそれぞれ、振動モード1、振動モード2、振動モード3という。
【0062】
なお、櫛歯電極部4a,4bに電圧を印加すると、櫛歯電極部17,19との間に静電気力が発生する。また、外ジンバル11が1周期振動する間に櫛歯電極部17,19は櫛歯電極部4a,4bに2回最接近する。このため、共振周波数の2倍に近い周期的静電気力が加われば、3自由度捻り振動子を共振状態にできる(以下、共振状態にするための加振力を周期的加振力という)。また、櫛歯電極部17,19が櫛歯電極部4a,4bに接近する毎に、周期的加振力を作用させることができる。
【0063】
そして、振動モード1、振動モード2、振動モード3の各々に対応した周波数の周期的加振力を与えれば、それぞれの振動モードを励振できる。また、複数の周波数の周期的加振力を重畳して与えれば、複数の振動モードを同時に励振できる。
【0064】
ここで、例えば、
振動モード1の共振周波数f1を1000Hz、
振動モード2の共振周波数f2を5000Hz、
振動モード3の共振周波数f3を40000Hz、
振動モード1における外ジンバル11、内ジンバル12、光反射部13の振幅比r1を「1:−20:0.5」、
振動モード2における外ジンバル11、内ジンバル12、光反射部13の振幅比r2を「1:0.5:−0.1」、
振動モード3における外ジンバル11、内ジンバル12、光反射部13の振幅比r3を「1:0.01:−30」、
として設計した場合の、3自由度捻り振動子の動作を説明する。
【0065】
尚、各振動モードにおける振幅比は、左から外ジンバル11、内ジンバル12、光反射部13の順で記述している。例えば、上記の振幅比r1は、外ジンバル11の振幅が「1」とすると、内ジンバル12の振幅が「−20」、光反射部13の振幅が「0.5」となることを示す。
【0066】
また、3自由度捻り振動子の共振状態においては、理論上、各フレーム間の位相角は0度または180度となる。そこで、振幅比を記述する際に、位相角の差が0度の場合は符号を「+」、180度の場合は符号を「−」とする。例えば、上記の振幅比r1は、外ジンバル11と光反射部13との位相角の差が0度となり、外ジンバル11と内ジンバル12との位相角の差が180度となることを示す。
【0067】
そして、各振動モードの共振周波数と振幅比を上記のように設計すると、振動モード1では、主に内ジンバル12と、内ジンバル12に繋がった光反射部13とが1000Hzで大きく捻り振動する。また、振動モード3では、主に光反射部13が40000Hzで大きく捻り振動する。
【0068】
このため、光反射部13の鏡面部分でレーザ光を反射させるとともに、振動モード1と振動モード3とを同時に励振させることにより、振動モード3を主走査方向(40000Hz)、振動モード1を副走査方向(1000Hz)として、2次元的にレーザ光を走査することができる。
【0069】
次に、光走査装置1の動作について説明する。
制御回路45による制御に基づいて駆動信号発生回路41が駆動信号を出力すると、増幅回路42によりこの駆動信号の電圧値が増幅されて櫛歯電極部4a,4bに印加される。これにより、櫛歯電極部4a,4bと、櫛歯電極部17,19との間にパルス電圧が印加されて周期的に変化する静電引力が生じ、弾性連結部14a,14bが弾性変形してねじれることにより、光ビーム走査部2が弾性連結部14a,14bを回転軸iとして往復振動する。
【0070】
ここで、駆動信号発生回路41は、光反射部13の角度振幅が、外ジンバル11および内ジンバル12よりも大きい振動モードの共振周波数の2倍の周波数の駆動信号を出力するようになっており、これにより、光ビーム走査部2と弾性連結部14a,14bとからなる振動系が共振し、光ビーム走査部2が共振周波数で往復振動する。
【0071】
そして、この状態で光反射部13に半導体レーザ44から光ビームが照射されると、その光ビームが光反射部13の鏡面で反射されることにより出射されるとともに、光反射部13の往復振動に伴い、光反射部13の回転角度に応じた方向に走査される。
【0072】
一方、外ジンバル11の往復振動に伴い、櫛歯電極部5a,5bと櫛歯電極部18,20との距離も周期的に変化する。これにより、櫛歯電極部5a,5bと櫛歯電極部18,20との間の静電容量が、外ジンバル11の回転角度に応じて変化する。そして制御回路45は、これらの静電容量に基づき、外ジンバル11の回転角度を検出する。なお上述したように、3自由度捻り振動子の共振状態においては、理論上、振幅比が保たれるため、外ジンバル11の回転角度を検出することにより、光反射部13の回転角度を検出することができる。
【0073】
次に、熱アクチュエータ33および光反射部13の構成と動作について説明する。図3は、熱アクチュエータ33における温度に応じた動作の変化を示す図である。図4は、光反射部13における温度に応じた動作の変化を示す図である。
【0074】
熱アクチュエータ33は、図3(a)に示すように、シリコンを材料として棒状に形成された棒状部材51と、酸化シリコンを材料として棒状に形成された棒状部材52とが、その長手方向に直交する方向(以下、積層方向D1という)に沿って積層されて構成されている。また熱アクチュエータ33は、温度が室温である状況下で、棒状部材51および棒状部材52が直線状に延びるように形成されている。
【0075】
なお、シリコンおよび酸化シリコンの熱膨張率はそれぞれ、(2.6×10-6)および(0.5×10-6)である。このため、温度が室温より低い状況下では、図3(b)に示すように、シリコンは、酸化シリコンよりも大きく収縮する(矢印D2を参照)。これにより、熱アクチュエータ33は、温度が室温より低くなると、棒状部材51と棒状部材52との接合面を挟んで棒状部材51(シリコン)側に撓む。
【0076】
一方、温度が室温より高い状況下では、図3(c)に示すように、シリコンは、酸化シリコンよりも大きく膨張する(矢印D3を参照)。これにより、熱アクチュエータ33は、温度が室温より高くなると、棒状部材51と第2棒状部材52との接合面を挟んで棒状部材52(酸化シリコン)側に撓む。
【0077】
そして図4(a)に示すように、複数の熱アクチュエータ33はそれぞれ、ミラー31とミラー支持枠32との間に配置され、その一端がミラー支持枠32の内周部に接続されるとともに他端がミラー31の外周部に接続される。これによって、ミラー31とミラー支持枠32とが一体的に移動可能に連結される。
【0078】
さらに複数の熱アクチュエータ33は、ミラー31の円周方向に沿って、棒状部材51と棒状部材52とが交互に配置されるように設置される。そして上述のように、熱アクチュエータ33は、温度が室温より低いと棒状部材51(シリコン)側に撓む一方、温度が室温より高いと棒状部材52(酸化シリコン)側に撓む。
【0079】
したがって、複数の熱アクチュエータ33は、温度変化に応じて、ミラー31との接続端が、ミラー31の円周方向に沿って同方向に変位する。
例えば図4(a)に示すように、各熱アクチュエータ33において、棒状部材51と棒状部材52との接合面を挟んで反時計回り方向側に棒状部材52が配置されている場合には、温度が室温より高くなると、図4(b)に示すように、ミラー31との接続端が、ミラー31の円周方向に沿って反時計回りに変位する(矢印D4を参照)。温度が室温より高くなると棒状部材52側に撓むからである。これにより、ミラー31は、ミラー31の鏡面に直交する回転軸mを中心にして反時計周りに回転する(矢印D5を参照)。一方、温度が室温より低くなると、ミラー31は、回転軸mを中心にして時計回りに回転する。
【0080】
さらにミラー31は楕円形状である。このため、ミラー31の長軸Lと回転軸kとで成す角度θが小さくなるほど、回転軸k周りの慣性モーメントが小さくなる。したがって、温度が高くなるほど上記の角度θが小さくなるようにミラー31の位置を設定することにより、温度が高くなるほど回転軸k周りの慣性モーメントが小さくなるように構成することができる。
【0081】
次に、光走査装置1の製造方法を図5および図6を用いて説明する。図5は、光走査装置1の製造工程を示す断面図である。図6は、熱アクチュエータ33の製造工程を示す平面図である。
【0082】
光走査装置1は、図5(a)に示すように、例えばSOI(Silicon On Insulator)基板300を半導体プロセスで加工して製造されたものである。SOI基板300は、シリコン基板310上に埋込酸化膜層320と単結晶シリコン層330が順次積層された構造を有する。なお以下、シリコン基板310をハンドル層310、単結晶シリコン層330をデバイス層330という。
【0083】
まず、熱アクチュエータ33を作製するために、図5(b)に示すように、デバイス層330において熱アクチュエータ33が配置される領域331(以下、熱アクチュエータ配置領域331という)にDRIE(Deep Reactive Ion Etching)によりトレンチ332を形成した後に、デバイス層330の表面全体に亘って熱酸化処理を行う。これにより、デバイス層330の表面に熱酸化膜340が形成されるとともに、トレンチ332の側壁にも熱酸化膜340が形成される。また、ハンドル層310の裏面にも熱酸化膜350が形成される。
【0084】
具体的には、まず図6(a)に示すように、デバイス層330の熱アクチュエータ配置領域331において、酸化シリコンを材料とする棒状部材52が形成される部分に、櫛歯形状にパターニングし、紙面奥行き方向にDRIEによりトレンチ332を形成する。
【0085】
そして、熱酸化処理を行うことにより、図6(b)に示すように、トレンチ332の側壁に熱酸化膜340を形成する。シリコンの酸化反応により、トレンチ側壁部の体積が増えトレンチ332の幅が狭くなるとともに、櫛歯状突起333の幅も狭くなる。なお、図6(b)以降、実際には図5(b)で示すようにデバイス層330上に形成される熱酸化膜340の図示を、省略する。
【0086】
その後、さらに熱酸化処理を行うと、トレンチ332の幅がさらに狭くなり、トレンチの両側面から成長してきた熱酸化膜同士が密着すると共に、櫛歯状突起333も全て熱酸化され、図5(c)および図6(c)に示すように、一体化する。
【0087】
なお、後述するように、デバイス層エッチング領域342のデバイス層330をDRIEによりエッチングをし(図6(d)を参照)、その後、ハンドル層310に凹部370を形成し、埋込酸化膜320を除去することにより、熱アクチュエータ33が形成される(図6(e)を参照)。
【0088】
その後、熱酸化膜340上にアルミ薄膜を堆積しパターニングすることにより、図5(d)に示すように、ミラー31の鏡面部345を形成する。
また図5(e)に示すように、電極形成領域341とデバイス層エッチング領域342の熱酸化膜340をエッチングする。その後、図5(f)に示すように、電極形成領域341内のデバイス層330上にアルミ薄膜を堆積しパターニングすることにより、アルミ電極360を形成し、さらに図5(g)に示すように、デバイス層エッチング領域342のデバイス層330をDRIEによりエッチングする。
【0089】
その後、図5(h)に示すように、ハンドル層310の裏面の熱酸化膜350のうち光ビーム走査部2に対応する領域をエッチングにより除去し、さらに、図5(i)に示すように、除去されなかった熱酸化膜350をマスクとしてハンドル層310をエッチングすることにより、ハンドル層310に凹部370が形成される。
【0090】
また図5(j)に示すように、埋込酸化膜層320のうち凹部370の領域をエッチングにより除去し、さらに図5(k)に示すように、シリコン基板310の裏面の熱酸化膜350をエッチングにより除去する。これにより、光走査装置1は、光ビーム走査部2が回転可能となるように構成される。
【0091】
このように構成された光走査装置1は、光ビームを反射させる反射面を有するミラー31と、ミラー31を捻り振動させるための回転軸kとなる弾性連結部16a,16bとを備え、回転軸kを中心にしてミラー31を揺動させることにより、反射面により反射された光ビームを走査する。
【0092】
ところで、弾性連結部16a,16bを回転軸としてミラー31を捻り振動させる場合の共振周波数fは、下式(1)で表される。
【0093】
【数1】

【0094】
なお式(1)において、kは弾性連結部16a,16bのバネ定数、Jはミラー31の慣性モーメントである。
そして、弾性連結部16a,16bのバネ定数kは、下式(2)で表される。
【0095】
【数2】

【0096】
なお式(2)において、βは、弾性連結部16a,16bの断面の形状から決まる係数である。また、aは、弾性連結部16a,16bの断面の長辺の長さである。また、bは、弾性連結部16a,16bの断面の短辺の長さである。また、Eはヤング率(横弾性係数)である。また、νはポアソン比である。また、lは弾性連結部16a,16bの長さである。すなわち、ヤング率Eが低下するとバネ定数kが低下する。
【0097】
さらに、ヤング率Eは、温度をTとして、下式(3)で表される。
【0098】
【数3】

【0099】
なお式(3)において、E0は、0℃でのヤング率である。また、Δhtは温度係数である。すなわち、温度が高くなるほどヤング率Eは低下する。
したがって、温度の上昇に伴いヤング率Eが低下し、弾性連結部16a,16bのバネ定数kが低下すると、共振周波数fが低下する。
【0100】
これに対し、光走査装置1では、ミラー支持枠32と熱アクチュエータ33が、ミラー31と弾性連結部16a,16bとを連結するとともに、温度が高くなるほどミラー31の回転軸k周りの慣性モーメントが低くなるようにミラー31を変位させる。
【0101】
したがって、温度上昇に伴うヤング率Eの低下に対応して、ミラー31の回転軸k周りの慣性モーメントを低下させることにより、温度上昇に伴う共振周波数fの変化を抑制することができる。これにより、温度変化による走査特性の変化を抑制することができる。
【0102】
例えば図7に示すように、温度変化に伴いヤング率が変化すると共振周波数が変化する(図7の曲線L1を参照)。このときの仕様共振周波数からのずれ量をΔfaとする。一方、ヤング率が一定という条件の下で、温度変化に伴いミラー31の回転軸k周りの慣性モーメントが変化すると、共振周波数が変化する(図7の曲線L2を参照)。このときの仕様共振周波数からのずれ量をΔfbとする。
【0103】
したがって、温度変化によりヤング率と慣性モーメントが同時に変化した場合の仕様共振周波数からのずれ量は|Δfa―Δfb|となる。このため、|Δfa―Δfb|が、許容誤差Δεより小さくなるように設計することによって(図7の曲線L3を参照)、温度上昇に伴う共振周波数fの変化を抑制することができる。
【0104】
なお、ミラー31の回転軸k周りの慣性モーメントを変化させるために、ミラー31の反射面は、円以外の形状(本実施形態では楕円形状)を有し、熱アクチュエータ33は、反射面に垂直な回転軸mを中心にミラー31を回転させる。
【0105】
すなわち、ミラー31の反射面は円以外の形状を有しているため、反射面に垂直な回転軸mを中心としたミラー31の回転に伴い、ミラー31において回転軸kから最も遠い地点と回転軸kとの距離が変化する。本実施形態では、ミラー31の反射面が楕円形状であるため、長軸方向と短軸方向とで径が異なり、ミラー31の回転に伴い上記距離が変化する。そして、この距離の変化により、慣性モーメントを変化させることができる。
【0106】
また熱アクチュエータ33は、熱膨張率が互いに異なる材料からなる棒状部材51(シリコン)と棒状部材52(酸化シリコン)を積層して構成されている。したがって、温度が低くなると、熱膨張率が大きい棒状部材51が大きく収縮することにより、熱アクチュエータ33が、棒状部材51と棒状部材52との接合面を挟んで、熱膨張率が大きい棒状部材51側に撓む。一方、温度が高くなると、熱膨張率が大きい棒状部材51が大きく膨張することにより、熱膨張率が小さい棒状部材52側に撓む。これにより、温度に応じた位置に自動的に反射部を変位させることができる。
【0107】
これにより、温度を検出する温度センサ、および温度検出結果に基づいて温度補正を行う制御回路などを用いることなく反射部を変位させることができるため、光走査装置1の構成を簡略化することができる。
【0108】
また、熱膨張率が互いに異なる材料からなる棒状部材51,52は、シリコンを材料とする部材と、シリコンを熱酸化することにより形成される酸化シリコンを材料とする部材である。シリコンおよび酸化シリコンの熱膨張率はそれぞれ、(2.6×10-6)および(0.5×10-6)であり、熱膨張率が大きく異なる。そして、シリコンの一部を熱酸化することによって、シリコンと酸化シリコンとが積層された構造を形成することができるため、別々に形成された2つの部材を張り合わせるという工程が不要となり、製造工程を簡略化することができる。
【0109】
以上説明した実施形態において、ミラー31は本発明における反射部、回転軸kは本発明における第1回転軸、弾性連結部16a,16bは本発明における第1弾性変形部材、ミラー支持枠32と熱アクチュエータ33は本発明における連結変位部、回転軸mは本発明における変位回転軸、棒状部材51,52は本発明における熱膨張率が互いに異なる材料からなる2つの部材である。
【0110】
また、内ジンバル12は本発明における第1支持部、弾性連結部15a,15bは本発明における第2弾性変形部材、回転軸jは本発明における第2回転軸、外ジンバル11は本発明における第2支持部、弾性連結部14a,14bは本発明における第3弾性変形部材、回転軸iは本発明における第3回転軸、支持部3は本発明における第3支持部である。
【0111】
(第2実施形態)
以下に本発明の第2実施形態について図面とともに説明する。なお、第2実施形態では、第1実施形態と異なる部分のみを説明する。
【0112】
第2実施形態における光走査装置1は、光反射部13の構成が変更された点以外は第1実施形態と同じである。図8(a)は、第2実施形態における光反射部13の構成と動作を示す図である。
【0113】
第2実施形態の光反射部13は、図8(a)に示すように、熱アクチュエータ33の代わりに熱アクチュエータ60が設けられた点以外は第1実施形態と同じである。
熱アクチュエータ60は、シリコンを材料として棒状部材を偶数回折り返した形状に形成された折返部材61と、酸化シリコンを材料として棒状に形成された棒状部材62とから構成されている。
【0114】
折返部材61は、ミラー31からミラー支持枠32へ向かう方向またはミラー支持枠32からミラー31へ向かう方向(すなわち、円形状のミラー支持枠32の径方向)に延びる径方向部材66と、ミラー31の円周方向に沿って延びる周方向部材67とが交互に連結されて形成されている。また折返部材61は、その一端61aがミラー支持枠32の内周部に接続されるとともに他端61bがミラー31の外周部に接続される。
【0115】
そして、折返部材61を構成する複数の径方向部材66のそれぞれに対して、円形状のミラー支持枠32の径方向に沿って径方向部材66と棒状部材62とが交互に配置されるように棒状部材62が積層される。したがって、折返部材61を構成する複数の径方向部材66は、温度変化に応じて、ミラー31の円周方向に沿って同方向に変位する(矢印D11を参照)。
【0116】
さらに、複数の熱アクチュエータ60は、隣接する熱アクチュエータ60に対しても、径方向部材66と棒状部材62とが交互に配置されるように設置される。したがって、複数の熱アクチュエータ60は、温度変化に応じて、ミラー31との接続端が、ミラー31の円周に沿って同方向に変位する(矢印D12を参照)。
【0117】
このように構成された光走査装置1では、熱アクチュエータ60は、熱膨張率が互いに異なる材料からなる折返部材61と棒状部材62を積層して構成され、折返部材61は、折り返し部がコ字状になるようにして棒状部材を複数回折り返した形状に形成され、棒状部材62は、折返部材61と棒状部材62とが交互に配置されるように、折り返した形状に形成された折返部材61に積層される。このため、熱アクチュエータ60の一端をミラー31に接続するとともに他端をミラー支持枠32に接続した場合に、直線状の部材である場合と比較して、折返部材61の長さを長くすることができる。
【0118】
そして、棒状部材62は、折返部材61と棒状部材62とが交互に配置されるように、折り返した形状に形成された折返部材61に積層されるため、折返部材61と棒状部材62とが積層された複数の部分は、温度変化に伴い同方向に変位する。そして、上述のように、折返部材61は、直線状の部材である場合と比較して、折返部材61の長さを長くすることができるため、折返部材61と棒状部材62とが積層された部分を長くすることができる。つまり、直線状の部材である場合と比較して、温度変化に伴い変位させる部分を長くすることができる。したがって、折返部材61が直線状の部材である場合と比較して、ミラー31の変位を大きくすることが可能となる。
【0119】
このため、折返部材61と棒状部材62とで熱膨張率の差が小さい場合であっても、ミラー31の回転量を大きくすることができる。
さらに、回転量を大きくすることができるため、楕円形状のミラー31の長軸の長さが小さい場合であっても、ミラー31の回転軸k周りの慣性モーメントを大きく変化させることができる。これにより、ミラー31を小さくすることができる。
【0120】
以上説明した実施形態において、折返部材61は本発明における一方の部材、棒状部材62は本発明における他方の部材である。
(第3実施形態)
以下に本発明の第3実施形態について図面とともに説明する。なお、第3実施形態では、第1実施形態と異なる部分のみを説明する。
【0121】
第3実施形態における光走査装置1は、光反射部13の構成が変更された点以外は第1実施形態と同じである。図8(b)は、第3実施形態における光反射部13の構成と動作を示す図である。
【0122】
第3実施形態の光反射部13は、図8(b)に示すように、ミラー支持枠32と熱アクチュエータ33の代わりに熱アクチュエータ70が設けられた点以外は第1実施形態と同じである。
【0123】
熱アクチュエータ70は、シリコンを材料として棒状部材を折り返した形状に形成された複数(本実施形態では2つ)の折返部材71と、酸化シリコンを材料として棒状に形成された棒状部材72とから構成されている。
【0124】
折返部材71は、ミラー31の円周に沿って延びる周方向部材76と、ミラー31から周方向部材76へ向かう方向または周方向部材76からミラー31へ向かう方向(すなわち、楕円形状のミラー31の径方向)に延びる径方向部材77とが交互に連結されて形成されている。
【0125】
また複数の折返部材71のうち、少なくとも1つは、その一端71aが弾性連結部16aに接続されるとともに他端71bがミラー31の外周部に接続される一方、少なくとも1つは、その一端71aが弾性連結部16bに接続されるとともに他端71bがミラー31の外周部に接続される。
【0126】
そして、折返部材71を構成する周方向部材76に対して、ミラー31の径方向に沿って周方向部材76と棒状部材72とが交互に配置されるように棒状部材72が積層される。したがって、折返部材71は、温度変化に応じて、ミラー31の径方向に沿って変位する(矢印D21を参照)。さらに、熱アクチュエータ70を構成する2つの折返部材71は、ミラー31の回転軸mを中心にして点対称となるように配置される。これにより、2つの熱アクチュエータ70は、温度変化に応じて、ミラー31との接続端が、ミラー31の円周に沿って同方向に変位する(矢印D22を参照)。
【0127】
このように構成された光走査装置1では、ミラー支持枠32を用いることなく、熱アクチュエータ70により、ミラー31と弾性連結部16a,16bとを連結するとともに、温度が高くなるほどミラー31の回転軸k周りの慣性モーメントが低くなるようにミラー31を変位させることができる。
【0128】
以上説明した実施形態において、熱アクチュエータ70は本発明における連結変位部、折返部材71は本発明における一方の部材、棒状部材72は本発明における他方の部材である。
【0129】
(第4実施形態)
以下に本発明の第4実施形態について図面とともに説明する。なお、第4実施形態では、第1実施形態と異なる部分のみを説明する。
【0130】
第4実施形態における光走査装置1は、光反射部13の構成が変更された点以外は第1実施形態と同じである。図9(a)は、第4実施形態における光反射部13の構成と動作を示す図である。
【0131】
第4実施形態の光反射部13は、図9(a)に示すように、ミラー支持枠32と熱アクチュエータ33の代わりに熱アクチュエータ80が設けられた点以外は第1実施形態と同じである。
【0132】
熱アクチュエータ80は、シリコンを材料として棒状部材を折り返した形状に形成された複数(本実施形態では2つ)の折返部材81と、酸化シリコンを材料として棒状に形成された棒状部材82とから構成されている。
【0133】
折返部材81は、楕円形状のミラー31の短軸方向に沿って延びる短軸方向部材86と、ミラー31の長軸方向に沿って延びる長軸方向部材87とが交互に連結されて形成されている。なおミラー31は、その長軸が回転軸kと直交するように配置されている。
【0134】
また複数の折返部材81のうち、少なくとも1つは、その一端81aが弾性連結部16aに接続されるとともに他端81bがミラー31の外周部に接続される一方、少なくとも1つは、その一端81aが弾性連結部16bに接続されるとともに他端81bがミラー31の外周部に接続される。
【0135】
そして、折返部材81を構成する短軸方向部材86に対して、ミラー31の長軸方向に沿って短軸方向部材86と棒状部材82とが交互に配置されるように棒状部材82が積層される。したがって、折返部材81は、温度変化に応じて、ミラー31の長軸方向に沿って変位する(矢印D31を参照)。さらに、熱アクチュエータ80を構成する2つの折返部材81は、ミラー31の長軸を中心にして線対称となるように配置される。これにより、2つの熱アクチュエータ80は、温度変化に応じて、ミラー31との接続端が、ミラー31の長軸方向に沿って同方向に変位する(矢印D32を参照)。
【0136】
そして、楕円形状のミラー31の周縁部のうち回転軸kから最も離れている地点(点P31を参照)と回転軸kとの距離(距離I31を参照)が短くなるほど、回転軸k周りの慣性モーメントが小さくなる。したがって、温度が高くなるほど上記の距離が小さくなるように、熱アクチュエータ80とミラー31とを連結することにより、温度が高くなるほど回転軸k周りの慣性モーメントが小さくなるように構成することができる。
【0137】
このように構成された光走査装置1では、熱アクチュエータ80は、回転軸kに直交する方向に沿ってミラー31を移動させることにより、ミラー31と回転軸kとの距離を変化させる。そして、この距離の変化により、慣性モーメントを変化させることができる。
【0138】
以上説明した実施形態において、熱アクチュエータ80は本発明における連結変位部、折返部材81は本発明における一方の部材、棒状部材82は本発明における他方の部材である。
【0139】
(第5実施形態)
以下に本発明の第5実施形態について図面とともに説明する。なお、第5実施形態では、第1実施形態と異なる部分のみを説明する。
【0140】
第5実施形態における光走査装置1は、光反射部13の構成が変更された点以外は第1実施形態と同じである。図9(b)は、第5実施形態における光反射部13の構成と動作を示す図である。
【0141】
第5実施形態の光反射部13は、図9(b)に示すように、熱アクチュエータ33の代わりに熱アクチュエータ90が設けられた点以外は第1実施形態と同じである。
熱アクチュエータ90は、シリコンを材料として棒状に形成された棒状部材91と、酸化シリコンを材料として棒状に形成された棒状部材92とが、その長手方向に直交する方向に沿って積層されて構成されている。
【0142】
そして、複数の熱アクチュエータ90はそれぞれ、ミラー31とミラー支持枠32との間に配置され、その一端がミラー支持枠32の内周部に接続されるとともに他端がミラー31の外周部に接続される。
【0143】
さらに複数の熱アクチュエータ90は、ミラー31の長軸方向に沿って、棒状部材91と棒状部材92とが交互に配置されるように設置される。そして上述のように、熱アクチュエータ33は、温度が室温より低いと棒状部材91(シリコン)側に撓む一方、温度が室温より高いと棒状部材92(酸化シリコン)側に撓む。したがって、複数の熱アクチュエータ90は、温度変化に応じて、ミラー31との接続端が、ミラー31の長軸方向に沿って同方向に変位する(矢印D41を参照)。さらに、熱アクチュエータ90を構成する2つの棒状部材91は、ミラー31の長軸を中心にして線対称となるように配置される。これにより、複数の熱アクチュエータ90は、温度変化に応じて、ミラー31との接続端が、ミラー31の長軸方向に沿って同方向に変位する(矢印D42を参照)。
【0144】
そして、楕円形状のミラー31の周縁部のうち回転軸kから最も離れている地点(点P41を参照)と回転軸kとの距離(距離I41を参照)が短くなるほど、回転軸k周りの慣性モーメントが小さくなる。したがって、温度が高くなるほど上記の距離が小さくなるように、熱アクチュエータ90とミラー31とを連結することにより、温度が高くなるほど回転軸k周りの慣性モーメントが小さくなるように構成することができる。
【0145】
このように構成された光走査装置1では、熱アクチュエータ90は、回転軸kに直交する方向に沿ってミラー31を移動させることにより、ミラー31と回転軸kとの距離を変化させる。そして、この距離の変化により、慣性モーメントを変化させることができる。
【0146】
以上説明した実施形態において、ミラー支持枠32と熱アクチュエータ90は本発明における連結変位部、棒状部材91,92は本発明における熱膨張率が互いに異なる材料からなる2つの部材である。
【0147】
(第6実施形態)
以下に本発明の第6実施形態について図面とともに説明する。なお、第6実施形態では、第1実施形態と異なる部分のみを説明する。
【0148】
第6実施形態における光走査装置1は、光反射部13の構成が変更された点以外は第1実施形態と同じである。図10(a)は、第6実施形態における光反射部13の構成と動作を示す図である。
【0149】
第6実施形態の光反射部13は、図10(a)に示すように、ミラー31が楕円形状ではなく円形状である点と、ミラー支持枠32と熱アクチュエータ33の代わりに熱アクチュエータ100が設けられた点以外は第1実施形態と同じである。
【0150】
熱アクチュエータ100は、シリコンを材料として棒状部材を折り返した形状に形成された複数(本実施形態では2つ)の折返部材101と、酸化シリコンを材料として棒状に形成された棒状部材102とから構成されている。
【0151】
折返部材101は、ミラー31の鏡面に対して平行な方向(以下、鏡面方向という)に沿って延びる鏡面方向部材106と、ミラー31の鏡面に対して直交する方向(以下、鏡面直交方向という)に沿って延びる鏡面直交方向部材107とが交互に連結されて形成されている。
【0152】
また複数の折返部材101のうち、少なくとも1つは、その一端101aが弾性連結部16aに接続されるとともに他端101bがミラー31の外周部に接続される一方、少なくとも1つは、その一端101aが弾性連結部16bに接続されるとともに他端101bがミラー31の外周部に接続される。
【0153】
そして、折返部材101を構成する鏡面方向部材106に対して、鏡面直交方向に沿って鏡面方向部材106と棒状部材102とが交互に配置されるように棒状部材102が積層される。したがって、折返部材101は、温度変化に応じて、鏡面直交方向に沿って変位する(矢印D51を参照)。さらに、熱アクチュエータ100を構成する2つの折返部材101は、ミラー31を挟んで図中で上下対称となるように配置される。これにより、2つの熱アクチュエータ100は、温度変化に応じて、ミラー31との接続端が、鏡面直交方向に沿って同方向に変位する(矢印D52を参照)。
【0154】
このように構成された光走査装置1では、熱アクチュエータ100は、回転軸kに直交する方向に沿ってミラー31を移動させることにより、ミラー31と回転軸kとの距離を変化させる。そして、この距離の変化により、慣性モーメントを変化させることができる。
【0155】
以上説明した実施形態において、熱アクチュエータ100は本発明における連結変位部、折返部材101は本発明における一方の部材、棒状部材102は本発明における他方の部材である。
【0156】
(第7実施形態)
以下に本発明の第7実施形態について図面とともに説明する。なお、第7実施形態では、第1実施形態と異なる部分のみを説明する。
【0157】
第7実施形態における光走査装置1は、光反射部13の構成が変更された点以外は第1実施形態と同じである。図10(b)は、第7実施形態における光反射部13の構成と動作を示す図である。
【0158】
第7実施形態の光反射部13は、図10(b)に示すように、ミラー31が楕円形状ではなく、円形状である点と、熱アクチュエータ33の代わりに熱アクチュエータ110が設けられた点以外は第1実施形態と同じである。
【0159】
ミラー31は、ミラー支持枠32の枠により内部に形成される開口部32aと、ミラー31における鏡面31aとは反対側の面31bとが対向するように配置される。
熱アクチュエータ110は、シリコンを材料として棒状に形成された棒状部材111と、酸化シリコンを材料として棒状に形成された棒状部材112とが、その長手方向に直交する方向に沿って積層されて構成されている。
【0160】
そして、複数の熱アクチュエータ110はそれぞれ、ミラー31とミラー支持枠32との間に配置され、その一端がミラー支持枠32の枠部に接続されるとともに他端がミラー31の外周部に接続される。これにより、ミラー31は、ミラー支持枠32の開口部32a上に配置されるように、複数の熱アクチュエータ110によって支持される。
【0161】
なお、熱アクチュエータ110は、棒状部材112が、ミラー支持枠32の開口部32aと対向するように配置されるとともに、棒状部材111が、棒状部材112を挟んで開口部32aとは反対側に配置される。そして熱アクチュエータ110は、温度が室温より低いと棒状部材111(シリコン)側に撓む一方、温度が室温より高いと棒状部材112(酸化シリコン)側に撓む(矢印D61を参照)。
【0162】
したがって、複数の熱アクチュエータ110は、温度変化に応じて、ミラー31との接続端が、ミラー31の鏡面に対して直交する方向に沿って同方向に変位する(矢印D62を参照)。
【0163】
このように構成された光走査装置1では、熱アクチュエータ110は、回転軸kに直交する方向に沿ってミラー31を移動させることにより、ミラー31と回転軸kとの距離を変化させる。そして、この距離の変化により、慣性モーメントを変化させることができる。
【0164】
以上説明した実施形態において、ミラー支持枠32と熱アクチュエータ110は本発明における連結変位部、棒状部材111,112は本発明における熱膨張率が互いに異なる材料からなる2つの部材である。
【0165】
(第8実施形態)
以下に本発明の第8実施形態について図面とともに説明する。
光走査装置401は、図11に示すように、光ビームを走査する光ビーム走査部402と、光ビーム走査部402を支持する支持部403と、光ビーム走査部402に回転駆動力を印加する駆動部404とを備える。
【0166】
光ビーム走査部402は、外ジンバル411と内ジンバル412と光反射部413と弾性連結部414a,414bと弾性連結部415a,415bと弾性連結部416a,416bとから構成される。
【0167】
これらのうち光反射部413は、ミラー431とミラー支持枠432とミラー支持弾性体500と熱アクチュエータ510とから構成される。ミラー431は、楕円形状であり、アルミ薄膜の鏡面部が表面に形成される。またミラー支持枠432は、円形枠状であり、枠内にミラー431が配置される。なお、ミラー支持弾性体500と熱アクチュエータ510の構成についての詳細は後述する。
【0168】
また内ジンバル412は、矩形枠状であり、枠内に光反射部413が配置される。また外ジンバル411は、矩形枠状であり、枠内に内ジンバル412が配置される。
また弾性連結部416aは、弾性変形可能な材料で構成されており、内ジンバル412の枠内に配置され、光反射部413と内ジンバル412とを連結する。また弾性連結部416bは、弾性変形可能な材料で構成されており、内ジンバル412の枠内に配置され、光反射部413を挟んで弾性連結部416aと反対側において、光反射部413と内ジンバル412とを連結する。なお、弾性連結部416aおよび弾性連結部416bは、光反射部413の重心JSを通る同一直線上に配置されており、光反射部413の回転軸kとなる。これにより光反射部413は、回転軸kを中心に捻り振動可能に構成される。
【0169】
また弾性連結部415aは、弾性変形可能な材料で構成されており、外ジンバル411の枠内に配置され、内ジンバル412と外ジンバル411とを連結する。また弾性連結部415bは、弾性変形可能な材料で構成されており、外ジンバル411の枠内に配置され、内ジンバル412を挟んで弾性連結部415aと反対側において、内ジンバル412と外ジンバル411とを連結する。なお、弾性連結部415aおよび弾性連結部415bは、光反射部413と内ジンバル412との重心JSを通る同一直線上に配置されており、光反射部413の回転軸jとなる。これにより内ジンバル412は、回転軸jを中心に捻り振動可能に構成される。
【0170】
また弾性連結部414aは、弾性変形可能な材料で構成されており、外ジンバル411の上辺411aと支持部403とを連結する。また弾性連結部414bは、弾性変形可能な材料で構成されており、外ジンバル411を挟んで弾性連結部414aと反対側において、外ジンバル411の下辺411bと支持部403とを連結する。なお、弾性連結部414aおよび弾性連結部414bは、光反射部413と内ジンバル412と外ジンバル411との重心JSを通る同一直線上に配置されており、外ジンバル411の回転軸iとなる。これにより外ジンバル411は、回転軸iを中心に捻り振動可能に構成される。
【0171】
次に支持部403は、上辺411aと連結されていない側の弾性連結部414aの端部と連結される上側支持部403aと、下辺411bと連結されていない側の弾性連結部414bの端部と連結される下側支持部403bと、駆動部404を支持する左側支持部403cおよび右側支持部403dとから構成される。
【0172】
さらに駆動部404は、圧電ユニモルフ404a,404b,404c,404dから構成される。圧電ユニモルフ404a,404b,404c,404dは、矩形板状に形成されており、その長手方向が回転軸iに直交するように配置される。
【0173】
そして圧電ユニモルフ404aは、その長手方向の一端が左側支持部403cに固定され、他端が外ジンバル411の上辺411aに連結される。圧電ユニモルフ404bは、その長手方向の一端が左側支持部403cに固定され、他端が外ジンバル411の下辺411bに連結される。圧電ユニモルフ404cは、その長手方向の一端が右側支持部403dに固定され、他端が外ジンバル411の上辺411aに連結される。圧電ユニモルフ404dは、その長手方向の一端が右側支持部403dに固定され、他端が外ジンバル411の下辺411bに連結される。
【0174】
これにより、圧電ユニモルフ404a,404b,404c,404dは、電圧が印加されると、外ジンバル411に連結されている側の端部が曲げ変位し、回転軸iを中心にして回転する方向に沿って外ジンバル411を移動させることができる。なお、圧電ユニモルフ404a,404b,404c,404dにはそれぞれ給電線FL1,FL2,FL3,FL4を介して電圧が印加される。
【0175】
そして、圧電ユニモルフ404aと圧電ユニモルフ4bとが同位相で曲げ振動するとともに圧電ユニモルフ404cと圧電ユニモルフ404dとが同位相で曲げ振動するように且つ圧電ユニモルフ404a,404bと圧電ユニモルフ404c,404dとが逆位相で曲げ振動するように、圧電ユニモルフ404a,404b,404c,404dへの電圧印加が制御される。これにより、外ジンバル411が回転軸iを中心にして回転振動する。そして、外ジンバル411を所定の共振周波数で振動させることにより、第1実施形態と同様にして、ミラー431で反射する光ビームを2次元的に走査することができる。
【0176】
次に、ミラー支持弾性体500および熱アクチュエータ510を説明する。
図12(a)に示すように、ミラー支持弾性体500および熱アクチュエータ510はそれぞれ、ミラー支持枠432の枠内に配置され、ミラー431とミラー支持枠432とを連結する。
【0177】
ミラー支持弾性体500は、シリコンを材料として棒状部材を偶数回折り返した形状に形成されている。そしてミラー支持弾性体500は、ミラー431からミラー支持枠432へ向かう方向またはミラー支持枠432からミラー431へ向かう方向(すなわち、円形状のミラー支持枠432の径方向)に延びる径方向部材501と、ミラー431の円周方向に沿って延びる周方向部材502とが、交互に連結されて形成されている。またミラー支持弾性体500は、その一端がミラー支持枠432の内周部に接続されるとともに他端がミラー431の外周部に接続される。さらにミラー支持弾性体500は、隣接する径方向部材501同士がミラー431の円周方向に沿って互いに対向するようにして、ミラー431とミラー支持枠432との間に配置される。
【0178】
熱アクチュエータ510は、2本の棒状部材511,512を備える。棒状部材511,512は、その一端がミラー支持枠432の内周部に接続されるとともに他端がミラー431の外周部に接続されている。さらに棒状部材511,512は、ミラー431の鏡面に対して平行な面に沿って互いに平行となるように配置されている。
【0179】
さらに棒状部材511,512は、図13に示すように、シリコンを材料として棒状に形成された棒状部材513と、酸化膜(本実施形態では酸化シリコン)514と、圧電膜516(本実施形態では、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT))を上部電極517と下部電極518とで挟んで棒状に形成された圧電棒状部材515とが、その長手方向に直交する方向に沿って積層されて構成されている。
【0180】
そして図14(a)に示すように、圧電棒状部材515に一定電圧が常時印加される。なお、熱アクチュエータ510には給電線FL5を介して電圧が印加される(図11を参照)。
【0181】
温度が変化しない場合には、印加される電圧値に応じて、圧電棒状部材515の長手方向(以下、X方向という)に沿って圧電棒状部材515が伸縮する。なお、圧電体の物性値である圧電定数d31の値は、温度が高くなるにつれて大きくなることが知られている。つまり、環境温度が変化すると圧電定数d31の値が変化し、これにより、圧電体の伸縮量が変化する。
【0182】
このため、温度が室温である状況下では、図14(a)に示すように、圧電棒状部材515に電圧を印加すると、圧電棒状部材515がX方向に縮む。これにより棒状部材511,512は、その積層方向(以下、Z方向という)に撓む。したがって棒状部材511,512は、Z方向に沿ってへこむ凹形状となり、X方向への縮みが発生する。
【0183】
そして、温度が室温より高い状況下では、圧電定数d31が大きくなるため、図14(b)に示すように、圧電棒状部材515のX方向への縮み量が大きくなる。これにより、棒状部材511,512のZ方向への撓みが大きくなる。したがって、X方向への縮み量は、室温時よりも大きくなる(図中の縮み量差ΔL1を参照)。
【0184】
一方、温度が室温より低い状況下では、圧電定数d31が小さくなるため、図14(c)に示すように、圧電棒状部材515のX方向への縮み量が小さくなる。これにより、棒状部材511,512のZ方向への撓みが小さくなる。したがって、X方向への縮み量は、室温時よりも小さくなる(図中の縮み量差ΔL2を参照)。
【0185】
このため、熱アクチュエータ510では、図15(a),(b)に示すように、低温時における長手方向長さL1(図15(a)を参照)よりも、高温時における長手方向長さL2(図15(b)を参照)のほうが短くなる。
【0186】
したがって、例えば図12(a)に示すように、2個の熱アクチュエータ510が、ミラー431の鏡面に直交する回転軸mに対して互いに対称になるように配置されている場合には、温度が室温より高くなると、図12(b)に示すように、熱アクチュエータ510が縮み、ミラー431は、回転軸mを中心にして反時計周りに回転する(矢印D71を参照)。一方、温度が室温より低くなると、ミラー431は、回転軸mを中心にして時計回りに回転する。
【0187】
さらにミラー431は楕円形状である。このため、第1実施形態と同様に、ミラー431の長軸と回転軸kとで成す角度が小さくなるほど、回転軸k周りの慣性モーメントが小さくなる。したがって、温度が高くなるほど上記の角度が小さくなるようにミラー431の位置を設定することにより、温度が高くなるほど回転軸k周りの慣性モーメントが小さくなるように構成することができる。
【0188】
次に、光走査装置401の製造方法を図16を用いて説明する。
光走査装置401を製造するために、まず図16(a)に示すように、SOI基板600に対して熱酸化処理を行う。SOI基板600は、シリコン基板610上に埋込酸化膜層620と単結晶シリコン層630が順次積層された構造を有する。このため、上記の熱酸化処理により、単結晶シリコン層630の表面に熱酸化膜640が形成されるとともに、シリコン基板610の裏面にも熱酸化膜650が形成される。
【0189】
そして、熱酸化膜640上にTi/Pt層660を堆積し、さらにTi/Pt層660上にPZT層670を堆積し、その後にパターニングする。これにより、図16(b)に示すように、熱アクチュエータ510の圧電膜516と下部電極518が形成される。
【0190】
さらに、Ti/Au層680を堆積しパターニングする。これにより、熱アクチュエータ510の上部電極517と、ミラー431の鏡面部685が形成される。
そして図16(c)に示すように、光ビーム走査部402の隙間に対応する領域(図16(c)では、ミラー431と熱アクチュエータ510との間の隙間)の単結晶シリコン層630をDRIEによりエッチングする。
【0191】
その後、図16(d)に示すように、シリコン基板610の裏面の熱酸化膜650のうち光ビーム走査部402に対応する領域をエッチングにより除去し、その後、除去されなかった熱酸化膜650をマスクとしてシリコン基板610をエッチングすることにより、シリコン基板610に凹部690が形成される。
【0192】
また図16(e)に示すように、埋込酸化膜層620のうち凹部690の領域と、シリコン基板610の裏面の熱酸化膜650をエッチングにより除去する。これにより光走査装置401は、光ビーム走査部402が回転可能となるように構成される。
【0193】
このように構成された光走査装置401では、熱アクチュエータ510は、弾性連結部416a,416bと同じ材料からなる棒状部材513と、圧電膜516を上部電極517と下部電極518との間で挟んで形成された圧電棒状部材515とを積層して構成され、上部電極517と下部電極518との間に、予め設定された一定値の電圧が常時印加される。
【0194】
そして圧電棒状部材515は、上部電極517と下部電極518との間に一定値の電圧が印加されることにより、上部電極517から下部電極518へ向かう方向に対して垂直な面(以下、電極対向面という)に沿って伸び又は縮みが発生する。
【0195】
なお、圧電体の物性値の一つである圧電定数d31は、圧電体に電圧が印加されたときの電極対向面に沿った伸縮のし易さを示す値であり、温度が高くなるほど、圧電定数d31の値が大きくなることが知られている。つまり、温度が変化すると、圧電定数d31の値が変化し、圧電体における電極対向面に沿った伸縮量が変化する。
【0196】
このため、温度が高くなると、圧電棒状部材515が電極対向面に沿って棒状部材513よりも縮むため、圧電棒状部材515と棒状部材513とが積層されて構成されている熱アクチュエータ510は上部電極517から下部電極518へ向かう方向へ撓む。すなわち熱アクチュエータ510は、温度が高くなるほど、電極対向面に沿った長さが短くなり、温度に応じた位置に自動的にミラー431を変位させることができる。
【0197】
これにより、温度を検出する温度センサ、および温度検出結果に基づいて温度補正を行う制御回路などを用いることなくミラー431を変位させることができるため、光走査装置401の構成を簡略化することができる。
【0198】
また圧電棒状部材515は、上部電極517と下部電極518との間に印加される電圧値が大きくなるほど、電極対向面に沿った伸縮量が大きくなる。
このため、経年変化に伴い弾性連結部416a,416bの剛性が変化して光走査装置401の共振周波数fが変化することや、圧電棒状部材515の剛性が変化して電極対向面に沿った伸縮量が変化することに対し、上部電極517と下部電極518との間に印加される電圧値を調整することによりミラー431の回転軸k周りの慣性モーメントを変化させ、経年変化に伴う共振周波数fの変化を抑制することが可能となる。
【0199】
なお、ミラー431の回転軸k周りの慣性モーメントを変化させるために、ミラー431の反射面は、円以外の形状(本実施形態では楕円形状)を有し、熱アクチュエータ510は、反射面に垂直な回転軸mを中心にミラー431を回転させる。
【0200】
すなわち、ミラー431の反射面は円以外の形状を有しているため、反射面に垂直な回転軸mを中心としたミラー431の回転に伴い、ミラー431において回転軸kから最も遠い地点と回転軸kとの距離が変化する。本実施形態では、ミラー431の反射面が楕円形状であるため、長軸方向と短軸方向とで径が異なり、ミラー431の回転に伴い上記距離が変化する。そして、この距離の変化により、慣性モーメントを変化させることができる。
【0201】
またミラー支持弾性体500は、シリコンを材料として棒状部材をミラー431の反射面に沿って偶数回折り返した形状に形成されている。このため、ミラー支持弾性体500は、熱アクチュエータ510がミラー431を変位させることによりミラー431の反射面に沿った面方向が変化するのを抑制するようにミラー431とミラー支持枠432とを連結してミラー431を支持する。
【0202】
これにより、熱アクチュエータ510がミラー431を変位させることに起因して、光走査装置401が光ビームを走査するときの走査方向が変動してしまうことを抑制することができる。
【0203】
また圧電膜516は、一般に利用されている圧電体のなかで圧電定数d31が最も大きいチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)からなるため、熱アクチュエータ510によるミラー431の変位量を大きくすることができる。
【0204】
以上説明した実施形態において、ミラー431は本発明における反射部、弾性連結部416a,416bは本発明における第1弾性変形部材、内ジンバル412は本発明における第1支持部、弾性連結部415a,415bは本発明における第2弾性変形部材、外ジンバル411は本発明における第2支持部、弾性連結部414a,414bは本発明における第3弾性変形部材、支持部403は本発明における第3支持部である。
【0205】
また、ミラー支持枠432と熱アクチュエータ510は本発明における連結変位部、棒状部材513は本発明における基板部材、圧電膜516は本発明における圧電体、上部電極517および下部電極518は本発明における第1電極および第2電極、圧電棒状部材515は本発明における圧電部材、ミラー支持弾性体500は本発明における連結支持部である。
【0206】
(第9実施形態)
以下に本発明の第9実施形態について図面とともに説明する。なお第9実施形態では、第8実施形態と異なる部分のみを説明する。
【0207】
第9実施形態における光走査装置401は、光反射部413の構成が変更された点以外は第8実施形態と同じである。
第9実施形態の光反射部413は、図17(a)に示すように、ミラー支持弾性体500が省略された点と、熱アクチュエータ510の代わりに熱アクチュエータ520が設けられた点以外は第8実施形態と同じである。
【0208】
熱アクチュエータ520は、2本の棒状部材521,522を備える。棒状部材521,522は、その一端がミラー支持枠432の内周部に接続されるとともに他端がミラー431の外周部に接続されている。さらに棒状部材521,522は、ミラー431の鏡面に対して平行な面に沿って互いに平行となるように配置されている。
【0209】
また棒状部材521,522は、図18(a)に示すように、シリコンを材料として棒状に形成された棒状部材523と、酸化膜(不図示)と、圧電膜(本実施形態では、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT))を上部電極と下部電極とで挟んで棒状に形成された圧電棒状部材524とが、その長手方向に直交する方向に沿って積層されて構成されている。
【0210】
但し、棒状部材521では、棒状部材523を挟んでミラー431の鏡面と同じ側に圧電棒状部材524が配置され、棒状部材522では、棒状部材523を挟んでミラー431の鏡面とは反対側に圧電棒状部材524が配置される。
【0211】
このため、X方向へ縮むことによりZ方向に沿って突出する向きは、棒状部材521と棒状部材522とで逆となる。
また、第8実施形態と同様に、熱アクチュエータ520では、図18(a),(b)に示すように、低温時における長手方向長さL1(図18(a)を参照)よりも、高温時における長手方向長さL2(図18(b)を参照)のほうが短くなる。
【0212】
したがって、例えば図17(a)に示すように、2個の熱アクチュエータ520が、ミラー431の鏡面に直交する回転軸mに対して互いに対称になるように配置されている場合には、温度が室温より高くなると、図17(b)に示すように、熱アクチュエータ520が縮み、ミラー431は、回転軸mを中心にして反時計周りに回転する(矢印D81を参照)。一方、温度が室温より低くなると、ミラー431は、回転軸mを中心にして時計回りに回転する。
【0213】
したがって、第8実施形態と同様に、温度が高くなるほど上記の角度が小さくなるようにミラー431の位置を設定することにより、温度が高くなるほど回転軸k周りの慣性モーメントが小さくなるように構成することができる。
【0214】
次に、光走査装置401の製造方法を図19および図20を用いて説明する。
光走査装置401を製造するために、まず図19(a)に示すように、シリコン基板700に対して熱酸化処理を行う。これにより、シリコン基板700の表面に熱酸化膜710が形成されるとともに、シリコン基板700の裏面にも熱酸化膜720が形成される。
【0215】
そして図19(b)に示すように、シリコン基板700の裏面側において棒状部材522が形成される部分に、棒状部材522の下部電極と上部電極に電圧を印加するためのトレンチ721,722を形成する。なおトレンチ721,722は、熱酸化膜720を貫通し、シリコン基板700内に底面を有する。
【0216】
そして、熱酸化処理を行うことにより、図19(c)に示すように、トレンチ721,722の側壁に熱酸化膜730を形成する。
その後、Ti/Pt層740を堆積しパターニングする。さらに、Ti/Au層750を堆積しパターニングする。これにより、図19(d)に示すように、トレンチ721内にTi/Pt層740が埋め込まれるとともに、トレンチ722内にTi/Au層750が埋め込まれる。
【0217】
さらに、Ti/Pt層760を堆積しパターニングし、その後にPZT層770を堆積しパターニングする。さらに、Ti/Au層780を堆積しパターニングする。これにより、図19(e)に示すように、トレンチ721の開口部上に棒状部材522の圧電棒状部材524が形成されるとともに、トレンチ722内のTi/Au層750と圧電棒状部材524の上部電極とが電気的に接続される。
【0218】
そして図19(f)に示すように、シリコン基板700の裏面側となる熱酸化膜720上に有機樹脂790を塗布する。その後、有機樹脂790を接着剤として、図19(g)に示すように、裏面に熱酸化膜800が形成されたシリコン基板810をシリコン基板700に張り合わせる。
【0219】
さらに図19(h)に示すように、トレンチ721内のTi/Pt層740とトレンチ722内のTi/Au層750が露出するまで、シリコン基板700の表面を研削研磨する。
【0220】
その後、熱酸化処理を行うことにより、図20(a)に示すように、シリコン基板700の表面においてTi/Pt層740およびTi/Au層750が露出している領域以外に熱酸化膜820を形成する。
【0221】
そして、シリコン基板700の表面側にTi/Pt層830を堆積しパターニングする。その後、シリコン基板700の表面側にPZT層840を堆積しパターニングする。さらに、シリコン基板700の表面側にTi/Au層850を堆積しパターニングする。
【0222】
これにより、図20(b)に示すように、シリコン基板700の裏面側のTi/Pt層740と電気的に接続されるTi/Pt層830のパターンがシリコン基板700の表面側に形成される。また、シリコン基板700の裏面側のTi/Au層750と電気的に接続されるTi/Au層850のパターンがシリコン基板700の表面側に形成される。さらに、シリコン基板700の表面側に、棒状部材521の圧電棒状部材524と、ミラー431の鏡面部855が形成される。
【0223】
そして図20(c)に示すように、光ビーム走査部2の隙間に対応する領域(図20(c)では、ミラー431と熱アクチュエータ520との間の隙間)のシリコン基板700をDRIEによりエッチングする。
【0224】
その後、図20(d)に示すように、シリコン基板810の裏面の熱酸化膜800のうち光ビーム走査部2に対応する領域をエッチングにより除去し、その後、除去されなかった熱酸化膜800をマスクとしてシリコン基板810をエッチングすることにより、シリコン基板810に凹部860が形成される。
【0225】
また図20(e)に示すように、有機樹脂790のうち凹部860の領域をエッチングにより除去する。そして図20(f)に示すように、熱酸化膜720のうち凹部860の領域と、シリコン基板810の裏面の熱酸化膜800をエッチングにより除去する。これにより、光走査装置401は、光ビーム走査部402が回転可能となるように構成される。
【0226】
このように構成された光走査装置401では、熱アクチュエータ520を構成する棒状部材521,522において、X方向へ縮むことによりZ方向に沿って突出する向きは、棒状部材521と棒状部材522とで逆となる。このため、熱アクチュエータ520は、熱アクチュエータ520がミラー431を変位させることによりミラー431の反射面に沿った面方向が変化するのを抑制するようにミラー431とミラー支持枠432とを連結してミラー431を支持する。
【0227】
これにより、熱アクチュエータ520がミラー431を変位させることに起因して、光走査装置401が光ビームを走査するときの走査方向が変動してしまうことを抑制することができる。
【0228】
以上説明した実施形態において、ミラー支持枠432と熱アクチュエータ520は本発明における連結変位部、棒状部材523は本発明における基板部材、圧電棒状部材524は本発明における圧電部材である。
【0229】
(第10実施形態)
以下に本発明の第10実施形態について図面とともに説明する。なお第10実施形態では、第8実施形態と異なる部分のみを説明する。
【0230】
第10実施形態における光走査装置401は、光反射部413の構成が変更された点以外は第8実施形態と同じである。
第10実施形態の光反射部413は、図21(a)に示すように、楕円形状のミラー431がその長軸LAと回転軸kとを直交させるようにして配置されている点と、ミラー支持弾性体500の代わりにミラー支持弾性体530が設けられた点と、熱アクチュエータ510の代わりに熱アクチュエータ540が設けられた点以外は第8実施形態と同じである。
【0231】
ミラー支持弾性体530は、シリコンを材料とした曲線状の棒状部材である。そしてミラー支持弾性体530は、その一端がミラー支持枠432の内周部に接続されるとともに他端がミラー431の外周部に接続されている。
【0232】
熱アクチュエータ540は、シリコンを材料として棒状に形成された棒状部材と、酸化膜と、圧電膜(本実施形態では、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT))を上部電極と下部電極とで挟んで棒状に形成された圧電棒状部材とが、その長手方向に直交する方向に沿って積層されて構成されている。
【0233】
そして熱アクチュエータ540は、その長手方向がミラー431の長軸LAと平行になるようにして、ミラー431とミラー支持枠432との間に配置されている。
したがって、熱アクチュエータ540は、温度変化に応じて、ミラー431の長軸方向に沿って伸縮する。
【0234】
そして、例えば図21(a)に示すように、低温時において、ミラー431の短軸SAが回転軸kを挟んで熱アクチュエータ540と反対側に配置されるように、熱アクチュエータ540とミラー431とを連結することにより、温度が高くなると、図21(b)に示すように、楕円形状のミラー431の周縁部のうち回転軸kから最も離れている地点(点P91を参照)と回転軸kとの距離(距離I91を参照)が短くなるように移動し(矢印D91を参照)、回転軸k周りの慣性モーメントが小さくなる。
【0235】
したがって、温度が高くなるほど上記の距離が小さくなるように、熱アクチュエータ540とミラー431とを連結することにより、温度が高くなるほど回転軸k周りの慣性モーメントが小さくなるように構成することができる。
【0236】
このように構成された光走査装置401では、熱アクチュエータ540は、回転軸kに直交する方向に沿ってミラー431を移動させることにより、ミラー431と回転軸kとの距離を変化させる。そして、この距離の変化により、慣性モーメントを変化させることができる。
【0237】
またミラー支持弾性体530は、シリコンを材料として棒状部材をミラー431の反射面に沿って曲線状にした形状に形成されている。このため、ミラー支持弾性体530は、熱アクチュエータ540がミラー431を変位させることによりミラー431の反射面に沿った面方向が変化するのを抑制するようにミラー431とミラー支持枠432とを連結してミラー431を支持する。
【0238】
これにより、熱アクチュエータ540がミラー431を変位させることに起因して、光走査装置401が光ビームを走査するときの走査方向が変動してしまうことを抑制することができる。
【0239】
以上説明した実施形態において、ミラー支持枠432と熱アクチュエータ540は本発明における連結変位部、ミラー支持弾性体530は本発明における連結支持部である。
(第11実施形態)
以下に本発明の第11実施形態について図面とともに説明する。なお第11実施形態では、第8実施形態と異なる部分のみを説明する。
【0240】
第11実施形態における光走査装置401は、光反射部413の構成が変更された点以外は第8実施形態と同じである。
第11実施形態の光反射部413は、図22(a)に示すように、楕円形状のミラー431がその長軸LAと回転軸kとを直交させるようにして配置されている点と、ミラー支持弾性体500の代わりにミラー支持弾性体550が設けられた点と、てこ部560が追加された点と、熱アクチュエータ510の代わりに熱アクチュエータ570が設けられた点以外は第8実施形態と同じである。
【0241】
ミラー支持弾性体550は、シリコンを材料として棒状部材を複数回折り返した形状に形成されている。そしてミラー支持弾性体550は、ミラー431からミラー支持枠432へ向かう方向またはミラー支持枠432からミラー431へ向かう方向(すなわち、円形状のミラー支持枠432の径方向)に延びる径方向部材551と、ミラー431の円周方向に沿って延びる周方向部材552とが、交互に連結されて形成されている。またミラー支持弾性体550は、その一端がミラー支持枠432の内周部に接続されるとともに他端がミラー431の外周部に接続される。さらにミラー支持弾性体550は、隣接する周方向部材552同士がミラー支持枠432の径方向に沿って互いに対向するようにして、ミラー431とミラー支持枠432との間に配置される。
【0242】
てこ部560は、ミラー431の長軸LAを挟んだ両側において、ミラー431とミラー支持枠432との間に配置される。そして、てこ部560は、シリコンを材料として、接続ブロック561と、弾性リンク562と、接続ブロック支持弾性体563と、弾性リンク支持体564とを備えた形状に形成されている。
【0243】
接続ブロック561は、ミラー431とミラー支持枠432との間に配置され、熱アクチュエータ570と連結される。
弾性リンク562は、接続ブロック561とミラー431との間に配置され、その一端が接続ブロック561に接続されるとともに他端がミラー431の外周部に接続される。
【0244】
接続ブロック支持弾性体563は、接続ブロック561とミラー支持枠432との間に配置され、その一端が接続ブロック561に接続されるとともに他端がミラー支持枠432の内周部に接続される。
【0245】
弾性リンク支持体564は、弾性リンク562とミラー支持枠432との間に配置され、その一端が弾性リンク562に接続されるとともに他端がミラー支持枠432の内周部に接続される。
【0246】
熱アクチュエータ570は、シリコンを材料として棒状に形成された棒状部材と、酸化膜と、圧電膜(本実施形態では、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT))を上部電極と下部電極とで挟んで棒状に形成された圧電棒状部材とが、その長手方向に直交する方向に沿って積層されて構成されている。
【0247】
そして熱アクチュエータ570は、その長手方向がミラー431の長軸LAと平行になるようにして、接続ブロック561とミラー支持枠432との間に配置され、その一端が接続ブロック561に接続されるとともに他端がミラー支持枠432の内周部に接続される。したがって、熱アクチュエータ540は、温度変化に応じて、ミラー431の長軸方向に沿って伸縮する。
【0248】
そして、例えば図22(a)に示すように、低温時において、ミラー431の短軸SAが回転軸kを挟んで熱アクチュエータ570と同じ側に配置されるように、てこ部560を介して熱アクチュエータ570とミラー431とを連結することにより、温度が高くなると、図22(b)に示すように、楕円形状のミラー431の周縁部のうち回転軸kから最も離れている地点(点P101を参照)と回転軸kとの距離(距離I101を参照)が短くなるように移動し(矢印D101を参照)、回転軸k周りの慣性モーメントが小さくなる。
【0249】
したがって、温度が高くなるほど上記の距離が小さくなるように、熱アクチュエータ570とミラー431とを連結することにより、温度が高くなるほど回転軸k周りの慣性モーメントが小さくなるように構成することができる。
【0250】
このように構成された光走査装置401では、熱アクチュエータ570は、回転軸kに直交する方向に沿ってミラー431を移動させることにより、ミラー431と回転軸kとの距離を変化させる。そして、この距離の変化により、慣性モーメントを変化させることができる。
【0251】
なお、弾性リンク562と弾性リンク支持体564とは、てこ機構を形成している。すなわち、弾性リンク562の一端に位置する接続ブロック561を熱アクチュエータ570で変位させると、弾性リンク支持体564と弾性リンク562との接続点565(図22(a)を参照)を支点としてミラー431が変位する。
【0252】
そして、熱アクチュエータ570から接続点565(支点)までの距離を、接続点565(支点)からミラー431までの距離より短くすることで、熱アクチュエータ570の変位が小さくても、ミラー431の変位を大きくすることができる。
【0253】
またミラー支持弾性体550は、シリコンを材料として棒状部材をミラー431の反射面に沿って複数回折り返した形状に形成されている。このため、ミラー支持弾性体550は、熱アクチュエータ570がミラー431を変位させることによりミラー431の反射面に沿った面方向が変化するのを抑制するようにミラー431とミラー支持枠432とを連結してミラー431を支持する。
【0254】
これにより、熱アクチュエータ570がミラー431を変位させることに起因して、光走査装置401が光ビームを走査するときの走査方向が変動してしまうことを抑制することができる。
【0255】
以上説明した実施形態において、ミラー支持枠432と熱アクチュエータ570は本発明における連結変位部、ミラー支持弾性体550は本発明における連結支持部である。
(第12実施形態)
以下に本発明の第12実施形態について図面とともに説明する。なお第12実施形態では、第8実施形態と異なる部分のみを説明する。
【0256】
第12実施形態における光走査装置401は、光反射部413の構成が変更された点以外は第8実施形態と同じである。
第12実施形態の光反射部413は、図23に示すように、ミラー431が楕円形状ではなく円形状である点と、ミラー支持弾性体500と熱アクチュエータ510の代わりに熱アクチュエータ580が設けられた点以外は第1実施形態と同じである。
【0257】
ミラー431は、図24(a)に示すように、ミラー支持枠432の枠により内部に形成される開口部432aと、ミラー431における鏡面431aとは反対側の面431bとが対向するように配置される。
【0258】
熱アクチュエータ580は、鏡面直交方向部材581と、鏡面方向部材582と、圧電棒状部材583とを備える。
鏡面直交方向部材581は、ミラー支持枠432の枠から、ミラー支持枠432を挟んでミラー431が配置されている側に向かって、ミラー431の鏡面に対して直交する方向(矢印D111を参照。以下、鏡面直交方向という)に沿って延びる。
【0259】
鏡面方向部材582は、ミラー431の鏡面に対して平行な方向(以下、鏡面方向という)に沿って延びる。そして鏡面方向部材582は、その一端が、鏡面直交方向部材581におけるミラー支持枠432と連結されていない側の端部に接続されるとともに、他端がミラー431の外周部に接続される。これにより、ミラー431は、ミラー支持枠32の開口部432a上に配置されるように、複数の熱アクチュエータ580によって支持される。
【0260】
圧電棒状部材583は、圧電膜(本実施形態では、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT))を上部電極と下部電極とで挟んで棒状に形成される。そして圧電棒状部材583は、酸化膜(不図示)を介して鏡面方向部材582上に積層される。
【0261】
なお熱アクチュエータ580は、鏡面方向部材582が、ミラー支持枠432の開口部432aと対向するように配置されるとともに、圧電棒状部材583が、鏡面方向部材582上の開口部432aと同じ側に配置される。
【0262】
これにより熱アクチュエータ580は、温度が高くなると、図24(b)に示すように、積層されている鏡面方向部材582と圧電棒状部材583のZ方向への撓みが大きくなり、ミラー431と回転軸kとの距離が小さくなるようにミラー431が鏡面直交方向に沿って移動し、回転軸k周りの慣性モーメントが小さくなる。
【0263】
このように構成された光走査装置401では、熱アクチュエータ580は、回転軸kに直交する方向に沿ってミラー31を移動させることにより、ミラー431と回転軸kとの距離を変化させる。そして、この距離の変化により、慣性モーメントを変化させることができる。
【0264】
以上説明した実施形態において、ミラー支持枠432と熱アクチュエータ580は本発明における連結変位部、鏡面方向部材582は本発明における基板部材、圧電棒状部材583は本発明における圧電部材である。
【0265】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採ることができる。
例えば上記実施形態においては、熱アクチュエータとしてシリコンと酸化シリコンとを組み合わせたものを示した。しかし、シリコンに対して熱膨張率の異なる材料であれば、酸化シリコン以外の材料も選択可能であり、例えば、アルミ等の金属材料、ポリイミド、SU8等の樹脂材料を用いてもよい。
【0266】
また上記実施形態においては、図5(e)に示す熱アクチュエータ配置領域331において、熱アクチュエータ配置領域331の左側のデバイス層エッチング領域342は、DRIEにより熱アクチュエータ配置領域331の左側にデバイス層が残るように形成されている一方、熱アクチュエータ配置領域331の右側のデバイス層エッチング領域342は、DRIEにより熱アクチュエータ配置領域331の右側にデバイス層が残らないように形成されているものを示した(図5(g)を参照)。しかし、マスクのアライメントずれを考慮して、熱アクチュエータ配置領域331の右側のデバイス層エッチング領域342を、DRIEにより熱アクチュエータ配置領域331の右側にデバイス層が残るように数μmずらして形成してもよい。
【0267】
また上記実施形態においては、3自由度連成振動系を構成する光走査装置1を適用したものを示したが、以下に示す光走査装置に本発明の連結変位部を適用してもよい。
図25は、本発明が適用された実施形態の光走査装置201の構成を示す平面図である。
【0268】
光走査装置201は、図25に示すように、光ビームを走査する光ビーム走査部202と、光ビーム走査部202を支持する支持部203と、光ビーム走査部202に回転駆動力を印加する駆動部204とを備える。
【0269】
光ビーム走査部202は、ジンバル211と光反射部212と弾性連結部213a,213bと弾性連結部214a,214bと櫛歯電極部215,216,217,218とから構成される。
【0270】
これらのうち光反射部212は、第1実施形態の光反射部13と同様に、ミラー31とミラー支持枠32と熱アクチュエータ33とから構成される。
またジンバル211は、矩形枠状であり、枠内に光反射部212が配置される。
【0271】
また弾性連結部214aは、弾性変形可能な材料で構成されており、ジンバル211の枠内に配置され、光反射部212とジンバル211とを連結する。また弾性連結部214bは、弾性変形可能な材料で構成されており、ジンバル211の枠内に配置され、光反射部212を挟んで弾性連結部214aと反対側において、光反射部212とジンバル211とを連結する。なお、弾性連結部214aおよび弾性連結部214bは、光反射部212の回転軸kとなる。これにより光反射部212は、回転軸kを中心に捻り振動可能に構成される。
【0272】
また弾性連結部213aは、弾性変形可能な材料で構成されており、ジンバル211の上辺211aと支持部203とを連結する。また弾性連結部213bは、弾性変形可能な材料で構成されており、ジンバル211を挟んで弾性連結部213aと反対側において、ジンバル211の下辺211bと支持部203とを連結する。なお、弾性連結部213aおよび弾性連結部213bは、ジンバル211の回転軸iとなる。これによりジンバル211は、回転軸iを中心に捻り振動可能に構成される。
【0273】
また櫛歯電極部215は、ミラー支持枠32の下半円部に沿って櫛歯状に形成されている。さらに櫛歯電極部216は、ミラー支持枠32の上半円部に沿って櫛歯状に形成されている。
【0274】
また櫛歯電極部217は、ジンバル211の左辺211cに沿って櫛歯状に形成されている。さらに櫛歯電極部218は、ジンバル211の右辺211dに沿って櫛歯状に形成されている。
【0275】
次に駆動部204は、櫛歯電極部215,216,217,218それぞれと一定間隔を空けて噛み合う櫛歯状に形成された櫛歯電極部204a,204b,204c,204dから構成される。
【0276】
次に支持部203は、上辺211aと連結されていない側の弾性連結部213aの端部と連結される上側支持部203aと、下辺211bと連結されていない側の弾性連結部213bの端部と連結される下側支持部203bと、櫛歯電極部217と対向していない側の櫛歯電極部204cの端部と連結される左側支持部203cと、櫛歯電極部218と対向していない側の櫛歯電極部204dの端部と連結される右側支持部203dとから構成される。
【0277】
また、櫛歯電極部204a,204bは、櫛歯電極部215,216と噛み合うように配置された状態でジンバル211と連結される。
このように構成された光走査装置201において、櫛歯電極部215,216と、櫛歯電極部204a,204bとの間にパルス電圧を印加することにより、周期的に変化する静電引力が生じ、弾性連結部214a,214bが弾性変形してねじれることにより、光反射部212が弾性連結部214a,214bを回転軸kとして往復振動する。さらに、櫛歯電極部217,218と、櫛歯電極部204c,204dとの間にパルス電圧を印加することにより、周期的に変化する静電引力が生じ、弾性連結部213a,213bが弾性変形してねじれることにより、ジンバル211が弾性連結部213a,213bを回転軸iとして往復振動する。
【0278】
このように構成された光走査装置201によれば、回転軸kを中心とした揺動と、回転軸iを中心とした揺動によって、ミラー31で反射する光ビームを2次元的に走査することができる。さらに、光走査装置201では、ミラー支持枠32と熱アクチュエータ33が、ミラー31と弾性連結部214a,214bとを連結するとともに、温度が高くなるほどミラー31の回転軸k周りの慣性モーメントが低くなるようにミラー31を変位させることができる。したがって、温度上昇に伴うヤング率の低下に対応して、ミラー31の回転軸k周りの慣性モーメントを低下させることにより、温度上昇に伴う共振周波数の変化を抑制することができる。これにより、温度変化による走査特性の変化を抑制することができる。
【0279】
なお、弾性連結部214a,214bは本発明における第1弾性変形部材、ジンバル211は本発明における第1支持部、弾性連結部213a,213bは本発明における第2弾性変形部材、回転軸iは本発明における第2回転軸、支持部203は本発明における第2支持部である。
【0280】
また上記実施形態においては、3自由度連成振動系を構成する光走査装置401を適用したものを示したが、以下に示す光走査装置に本発明の連結変位部を適用してもよい。
光走査装置901は、図26に示すように、光反射部212の代わりに第8実施形態の光反射部413を設けた点と、櫛歯電極部204a,204bの代わりに圧電ユニモルフ904a,904bを設けて回転軸kを中心に光反射部413を振動させる点と、櫛歯電極部204c,204dの代わりに圧電ユニモルフ904c,904dを設けて回転軸iを中心に光反射部413を振動させる点以外は光走査装置201と同じである。
【0281】
なお、圧電ユニモルフ904a,904b,904c,904dにはそれぞれ給電線FL11,FL12,FL13,FL14を介して電圧が印加され、光反射部413の熱アクチュエータ510には給電線FL15を介して電圧が印加される。
【符号の説明】
【0282】
1,401,901…光走査装置、2…光ビーム走査部、3…支持部、4…駆動部、5…角度検出部、11…外ジンバル、12…内ジンバル、13,413…光反射部、14a,14b,15a,15b,16a,16b,416a,416b…弾性連結部、17,18,19,20…櫛歯電極部、31…ミラー、32,432…ミラー支持枠、33,60,70,80,90,100,110,510,520,540,570,580…熱アクチュエータ、41…駆動信号発生回路、42…増幅回路、43…C−V変換回路、44…半導体レーザ、45…制御回路、51,52,62,72,82,91,92,102,111,112…棒状部材、61,71,81,91,101…折返部材、201…光走査装置、202…光ビーム走査部、203…支持部、204…駆動部、211…ジンバル、212…光反射部、213a,213b,214a,214b…弾性連結部、215,216,217,218…櫛歯電極部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ビームを反射させる反射面を有する反射部(31,431)と、
前記反射部を捻り振動させるための第1回転軸となる第1弾性変形部材(16a,16b,214a,214b,416a,416b)とを備え、
前記第1回転軸を中心にして前記反射部を揺動させることにより、前記反射面により反射された光ビームを走査する光走査装置(1,201,401,901)であって、
前記反射部と前記第1弾性変形部材とを連結するとともに、温度が高くなるほど前記反射部の前記第1回転軸周りの慣性モーメントが低くなるように前記反射部を変位させる連結変位部(32,432,33,60,70,80,90,100,110,510,520,540,570,580)を備える
ことを特徴とする光走査装置。
【請求項2】
前記反射部の前記反射面は、円以外の形状を有し、
前記連結変位部(32,432,33,60,70,510,520)は、前記反射部の変位として、前記反射面に垂直な回転軸である変位回転軸を中心に前記反射部を回転させる
ことを特徴とする請求項1に記載の光走査装置。
【請求項3】
前記連結変位部(32,432,80,90,100,110,540,570,580)は、前記反射部の変位として、前記第1回転軸に直交する方向に沿って前記反射部を移動させる
ことを特徴とする請求項1に記載の光走査装置。
【請求項4】
前記連結変位部(32,33,60,70,80,90,100,110)は、
熱膨張率が互いに異なる材料からなる少なくとも2つの部材を積層して構成される
ことを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の光走査装置。
【請求項5】
前記2つの部材は、
シリコンを材料とする部材と、シリコンを熱酸化することにより形成される酸化シリコンを材料とする部材である
ことを特徴とする請求項4に記載の光走査装置。
【請求項6】
前記連結変位部(32,60,70)は、
熱膨張率が互いに異なる材料からなる2つの部材を積層して構成され、
熱膨張率が互いに異なる材料からなる2つの部材のうち、
一方の部材(61,71,81,101)は、折り返し部がコ字状になるようにして棒状部材を複数回折り返した形状に形成され、
他方の部材(62,72,82,102)は、前記一方の部材と前記他方の部材とが交互に配置されるように、前記折り返した形状に形成された前記一方の部材に積層される
ことを特徴とする請求項4または請求項5に記載の光走査装置。
【請求項7】
前記連結変位部(432,510,520,540,570,580)は、
前記第1弾性変形部材(416a,416b)と同じ材料からなる基板部材(513,523,582)と、圧電体(516)を第1電極(517)と第2電極(518)との間で挟んで形成された圧電部材(515,524,583)とを積層して構成され、
前記第1電極と前記第2電極との間に、予め設定された一定値の電圧が常時印加される
ことを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の光走査装置。
【請求項8】
前記連結変位部が前記反射部(431)を変位させることにより前記反射面に沿った面方向が変化するのを抑制するように前記反射部と前記連結変位部とを連結して前記反射部を支持する連結支持部(500,530,550)を備える
ことを特徴とする請求項7に記載の光走査装置。
【請求項9】
前記圧電体は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)からなる
ことを特徴とする請求項7または請求項8に記載の光走査装置。
【請求項10】
前記第1弾性変形部材(214a,214b)を支持する第1支持部(211)と、
前記第1支持部に連結された弾性変形可能な第2弾性変形部材(213a,213b)を有し、該第2弾性変形部材を第2回転軸として前記第1支持部を揺動可能に支持する第2支持部(203)とを備え、
前記第2回転軸は、前記第1回転軸と交差するように配置され、
前記第2回転軸を中心にして前記第1支持部を揺動させると共に、前記第1回転軸を中心にして前記反射部を揺動させることにより、前記反射面により反射された光ビームを2次元に走査する
ことを特徴とする請求項1〜請求項9の何れか1項に記載の光走査装置(201,901)。
【請求項11】
前記第1弾性変形部材(16a,16b,416a,416b)を支持する第1支持部(12,412)と、
前記第1支持部に連結された弾性変形可能な第2弾性変形部材(15a,15b,415a,415b)を有し、該第2弾性変形部材を第2回転軸として前記第1支持部を揺動可能に支持する第2支持部(11,411)と、
前記第2支持部に連結された弾性変形可能な第3弾性変形部材(14a,14b,414a,414b)を有し、該第3弾性変形部材を第3回転軸として前記第2支持部を揺動可能に支持する第3支持部(3,403)とを備え、
前記第2回転軸は、前記第1回転軸と交差するように配置され、
前記第3回転軸は、前記第1回転軸および前記第2回転軸と交差するように配置され、
前記反射部(31,431)、前記第1支持部、前記第2支持部、前記第3支持部、前記第1弾性変形部材、前記弾性変形部材、および前記第3弾性変形部材が、固有の周期的外力が作用した場合に大きい回転角で捻り振動する3自由度連成振動系を構成し、
前記3自由度連成振動系に前記固有の周期的外力を作用させることにより、前記第3回転軸を中心にして前記第2支持部を揺動させるとともに、前記第2回転軸を中心にして前記第1支持部を揺動させ、さらに前記第1回転軸を中心にして前記反射部を揺動させることにより、前記反射面により反射された光ビームを2次元に走査する
ことを特徴とする請求項1〜請求項9の何れか1項に記載の光走査装置(1,401)。

【図2】
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【図7】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2013−76984(P2013−76984A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−178262(P2012−178262)
【出願日】平成24年8月10日(2012.8.10)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】