説明

光送受信装置および光送受信モジュール

【課題】
一心双方向光送受信装置において、効果的に電気的クロストークを低減するための光送受信モジュールと回路基板との接続方法を提供する。
【解決手段】
発光素子を内蔵する少なくとも1つの送信アセンブリと、受光素子を内蔵する1つ又は複数の受信サブアセンブリと、前記送信サブアセンブリと前記受信サブアセンブリを固定する筐体と、を具える光送受信モジュールと、電子素子が実装された回路基板とを有する光送受信装置であって、前記受信サブアセンブリのステムを構成する少なくとも1つのステムベース部と前記送信サブアセンブリのステムを構成するステムベース部が前記回路基板のグランドパターンに直接接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一心双方向光通信に用いる光送受信装置およびそれに用いる光送受信モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一心双方向光通信に用いる光送受信装置は主に光送受信モジュール、送信回路部、受信回路部からなる。まず光送受信モジュールの構造について従来例を説明する。
【0003】
光送受信モジュールには発光素子と受光素子を搭載しており、通常はレーザダイオード(LD)とフォトダイオード(PD)を用いる。ステムは軟鋼をプレス成形しAuめっきしたステムベースに貫通孔を開け半導体素子を接続するリード端子を挿入し、低融点ガラスで支持するとともにケース端子をステムベースに溶接したものである。このステムに光素子や電子素子を実装、配線し、レンズ付きキャップで封止しサブアセンブリ化する。発光素子を実装したものを送信サブアセンブリ、受光素子を実装したものを受信サブアセンブリと呼ぶ。これらを分波フィルタを支持した筐体に挿入し、光ファイバと調心・固定することでモジュール化する。サブアセンブリは筐体に挿入するので筐体の方が大きいものが多い(特許文献1〜3)。また筐体とLD、PDの固定は光軸固定に関して長期信頼性で実績のあるYAG(Yttrium Aluminum Garnet)レーザ溶接が使われてきた。このようなことから、筐体やレンズ付キャップには溶接に適したステンレス鋼を使ってきた。LDから出た送信光はレンズで集光し、分波フィルタを通過して光ファイバに入る。逆に光ファイバからの受信光は分波フィルタで反射されレンズで集光されてPDに入る。この構造で一心双方向通信を実現している。
【0004】
送信サブアセンブリと受信サブアセンブリを一つの筐体に一体化した光送受信モジュールにおいてクロストーク対策は重要である。特にサイズが小型化し送信サブアセンブリと受信サブアセンブリの間の距離が減少していく昨今、その要求は厳しい。クロストークには光学的クロストークと電気的クロストークがあり、電気的クロストークには電波によるものと電流によるものがある。光学的クロストークは光素子や光学フィルタの性能、迷光抑制で対策する。一方電気的クロストークについては、動作時に送信サブアセンブリで高い繰り返し周波数の強力なパルス信号を発生し、送信サブアセンブリの大電流信号からのクロストークが、微弱信号を受信する受信サブアセンブリのノイズを発生する為、対応が難しい。
【0005】
一心双方向光通信に用いる光送受信装置として機器に実装する場合は、LD駆動回路を搭載した送信回路部と、ゲインアンプなどを搭載した受信回路部を一体化した回路基板、あるいはクロストーク対策のために分割した基板や可曲性基板に前記光送受信モジュールを構成する各サブアセンブリを実装してきた。図4にその接続状態を示す。光送受信モジュールの光送信部83のリードピン85、85、・・・及び光受信部84のリードピン86、86、・・・に対して、それらの先端部分が回路基板81に垂直となるようにリードフォーミングし、回路基板81に設けたリードピン接続用の孔部にリードピン85,85、・・・及びリードピン86,86、・・・を挿入して、回路基板81の裏面から半田付けした光送受信装置である。光送信部および光受信部のリードピンのうち1ピンはケース端子である。
【0006】
これまでは数百MHz以下の低速のデジタル伝送で使われることが多かった。そのため送信サブアセンブリと受信サブアセンブリをそれぞれのステムのケース端子を介してグランドパターンに接続することにより、ステム、キャップ、筐体の電位がグランドに等しくなり、レーザを駆動し電流を数10mA投入しても、電流によるクロストークも電波によるクロストークも抑制できた(特許文献4)。
【特許文献1】特開平6−160674号公報
【特許文献2】特表2003−524789号公報
【特許文献3】特開2004−012647号公報
【特許文献4】特開2005−217074号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが最近の一心双方向光通信に用いる光送受信モジュールは1.2GHz以上の高速デジタル伝送への適用や光CATVの映像信号に対応するためアナログ受信部を搭載したモジュールが求められる。アナログ受信の場合、例えばCATVでは周波数860MHz,BS放送再送信では1.3GHzで±0.5dBの帯域を保証しなければならず、高周波領域に至るまで搬送波レベルに対して−60dBc以下の低クロストーク特性が要求される。
【0008】
この光送受信モジュールを基板に接続する場合、従来のように送信サブアセンブリや受信サブアセンブリをそれぞれのステムのケース端子を介してグランドパターンに接続するだけでは不充分である。図9はLDをギガビットイーサーポン(GE−PON)のアイドル信号で駆動させる一方で、460MHzまでの60chの光CATV映像信号および765.25MHzの映像信号受信時のPD出力の1GHzまでの周波数スペクトルを示したものである。横軸は信号周波数で単位はMHz、縦軸は信号出力電圧で単位はdBμVである。解像帯域幅は30kHz,ビデオ帯域幅は1kHzである。100から460MHzまでの映像信号および765.25MHzの映像信号とともに500MHz,562.5MHz,687.5MHz,750MHz,812.5MHz,840MHz,875MHz,937.5MHz付近にLDのアイドル信号が見られる。図10はLDをGE−PONのアイドル信号で駆動させ、映像信号を受信しない場合のPD出力の1GHzまでの周波数スペクトルを示したものである。横軸は信号周波数で単位はMHz、縦軸は信号出力電圧で単位はdBμVである。解像帯域幅は30kHz,ビデオ帯域幅は1kHzである。信号光を受信するしないにかかわらずLDを駆動しているだけで500MHz,562.5MHz,687.5MHz,750MHz,810MHz,875MHz,937.5MHz付近にLD駆動のGE−PONのアイドル信号が乗っている。これは、送信サブアセンブリや受信サブアセンブリをそれぞれのステムのケース端子を介してグランドパターンに接続するだけではLD駆動時にLDから発生する電気的クロストークをグランドで吸収しきれない一方、ケース端子自体がL(インダクタンス)として作用していると考えられる。
【0009】
本発明は一心双方向光送受信装置において、効果的に電気的クロストークを低減するための光送受信モジュールと回路基板との接続方法を提供することを第1の目的とする。またこの接続方法を容易に実現する光送受信モジュールを提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の光送受信装置は、発光素子を内蔵する少なくとも1つの送信サブアセンブリと、受光素子を内蔵する1つまたは複数の受信サブアセンブリと、前記送信サブアセンブリと前記受信サブアセンブリを固定する筐体と、を具える光送受信モジュールと、電子素子が実装された回路基板とを有する光送受信装置であって、
前記受信サブアセンブリのステムを構成するステムベース部のうち少なくとも1つのステムベース部と前記送信サブアセンブリのステムを構成するステムベース部が前期回路基板のグランドパターンに直接接続されていることを特徴とする。
【0011】
送信サブアセンブリおよび受信サブアセンブリのステムベース部を回路基板のグランドパターンにリードピン等を介さずに直接接続した。これにより電気的クロストークが低減でき、LD駆動時にも高周波ノイズの無い良好な受信特性が得られた。
【0012】
送信サブアセンブリと受信サブアセンブリのステムベースをグランドパターンにリードピン等を介さずに直接接続すると、ステムの浮遊電位がより強固に固定され、送信サブアセンブリ駆動時に生じる高周波ノイズをグランドへアースできる。特に送信サブアセンブリと受信サブアセンブリのステムベースを共にグランドパターンに落すことで低い電気的クロストークの光送受信モジュールを実現できる。さらにステムは表面にAuめっきを施しているために、半田付けする場合も半田の濡れ性がよく、電気的接続が容易であり電気的クロストークを低減しやすい。
【0013】
筐体をグランドパターンに直接接続しても効果は不十分である。筐体は送信サブアセンブリと受信サブアセンブリを光軸固定する際、高信頼性を確保するためにレーザ溶接する。溶接に最適な金属としては耐食性、強度、価格面からステンレス鋼が使われる。
【0014】
ところがステンレス鋼は普通の金属と比べて、電気抵抗が大きい。ステムに使われる軟鋼SPCC材が15Ω・cm程度に対して4〜5倍の70Ω・cm程度を有する。ステンレス鋼は耐食性が大きい金属であるが電気抵抗が大きく、しかも半田付けは困難である。
【0015】
筐体部を物理的に強引にグランドパターンに直接接続しても、電気抵抗が大きいためアースが不十分となる。接地が不充分な高インピーダンス部はさまざまの回路の影響を受け、それで電位が浮遊する。特に送信サブアセンブリで生じる高周波ノイズは充分に落しきれずに、一部が受信サブアセンブリ側に回りこんで電気的クロストークとして受信信号に重畳してしまう訳である。
【0016】
そのような訳で前記送信サブアセンブリのステムベース部と前記受信サブアセンブリのステムベース部が回路基板のグランドパターンに直接接続するほうが効果的に電気的クロストークを低減できる。
【0017】
もちろん前記送信サブアセンブリのステムベース部と前記受信サブアセンブリのステムベース部がすべて回路基板のグランドパターンに直接接続してもよい。それにより、すべてのステムの浮遊電位が固定され、低い電気的クロストークの光送受信モジュールを実現できる。
【0018】
また本発明の光送受信装置は、発光素子を内蔵する少なくとも1つの送信サブアセンブリと、受光素子を内蔵する1つまたは複数の受信サブアセンブリと、前記送信サブアセンブリと前記受信サブアセンブリを固定する筐体と、を具える光送受信モジュールと、電子素子が実装された回路基板とを有する光送受信装置であって、
前記受信サブアセンブリのステムを構成するステムベース部のうち少なくとも1つのステムベース部と前記送信サブアセンブリのステムを構成するステムベース部が回路基板のグランドパターンに直接半田付けされていることを特徴とする。ステムのベースはAuメッキを施しており、半田の濡れ性が良好であり、接触抵抗も小さくなる。
【0019】
また本発明の光送受信装置は、発光素子を内蔵する少なくとも1つの送信サブアセンブリと、受光素子を内蔵する1つまたは複数の受信サブアセンブリと、前記送信サブアセンブリと前記受信サブアセンブリを固定する筐体と、を具える光送受信モジュールと、電子素子が実装された回路基板とを有する光送受信装置であって、
前記受信サブアセンブリのステムを構成するステムベース部のうち少なくとも1つのステムベース部と前記送信サブアセンブリのステムを構成するステムベース部を回路基板のグランドパターンにフランジなどの金属部品で止めたことを特徴とする。これにより電気的クロストークが低減でき、LD駆動時にも高周波ノイズの無い良好な受信特性が得られる。
【0020】
また本発明の光送受信装置に搭載する光送受信モジュールは、アナログ信号光を受光するアナログフォトダイオードを内蔵する受光サブアセンブリを少なくとも1つ備えることを特徴とする。
【0021】
この接続方法は搬送波に対して−60dBcという電気的クロストーク仕様が厳しい光CATVアナログ信号の受信時に特に有効である。
【0022】
また本発明の光送受信モジュールは、回路基板のグランドパターンに直接接続されるステムを構成するステムベース部の半径は、該光送受信モジュールの筐体の回路基板への最近接部と前記筐体軸心との距離以上大きい事を特徴とする。すなわちステムベース部が筐体よりも回路基板側に出っ張っている事を特徴とする。この構造であれば、特別な構造上・配線上の工夫も要らずにステムベースをグランドパターンに容易に直接接続できる。
【0023】
また本発明の光送受信モジュールは前記ステムベース部のグランドパターンと接する部分は平面であることを特徴とする。この構造であれば、ステムを構成するステムベース部をグランドパターンに容易に安定して接続でき、生産性が向上する。
【0024】
また本発明の光送受信モジュールは前記ステムベース部に、グランドパターンに直接接続するためのフランジを有することを特徴とする。この構造であれば、特別な構造上・配線上の工夫も要らずにステムベースをグランドパターンに容易に直接接続できる。
【0025】
また本発明の光送受信モジュールは、前記ステムベース部に設けられた前記フランジに前記ステムベース部と前記グランドパターンをつなぐステンレスよりも低い抵抗率の部分を有することを特徴とする。この構造であれば、回路基板に切り欠きを入れ、そこに光送受信モジュールを配置することに対応できるようになる。すなわち両面実装基板にも特別な構造上・配線上の工夫も要らずにステムベースをグランドパターンに容易に直接接続できる上、ステムベース部を固定するので円周方向のねじれを抑制できる。またこれにより小型で低クロストークの光送受信装置を実現できる。
【発明の効果】
【0026】
以上のように光送受信装置において、発光サブアセンブリと受光サブアセンブリのステムベースをグランドパターンに直接接続することによって効果的に電気的クロストークを低減できる。また電気的クロストークを容易に低減できる光送受信モジュールを実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の構成について、光送受信装置に本発明を適用した実施例とともに説明する。なお実施例を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号をつけ、その繰り返しは省略する。
【実施例1】
【0028】
図3は本発明の実施例1で使用している一送信二受信の光送受信モジュールの構成を示す断面図である。
【0029】
図3に示すように光送受信モジュール1は送信サブアセンブリ10、アナログ受信サブアセンブリ20、受信サブアセンブリ30、分波フィルタを支持する筐体40、及び光ファイバ50を主体にして構成される。この種のモジュールは一心双方向光通信や光加入者伝送システムの送受信に使われる。
【0030】
前記送信サブアセンブリは波長λ1(例えば1.3μm)の送信光を放射するLD素子15をステム11に搭載し、このLD素子15をステム11およびレンズキャップ17で形成されるキャビティ内に気密封止している。レンズ18は鉛ガラスで形成された非球面レンズであるが、用途に応じて例えば球レンズでもよい。レンズキャップ17は例えばステンレス合金で形成される。LD素子15は例えばInP基板に成長したInGaAsPの活性層を有するFP−LD(Fabry-Perot Laser Diode)であるが、用途に応じてDFB−LD(Distribution Feedback Laser Diode)でもよい。ステム11は軟鋼で形成されAuメッキされる。
【0031】
前記受信サブアセンブリ30は波長λ2(例えば1.49μm)の受信光に感度のあるPD素子32をステム31に搭載して、このPD素子32をステム31およびレンズキャップ33で形成されるキャビティ内に気密封止している。レンズ34は例えばBK7で形成される球レンズである。キャップ33はステンレス鋼で形成される。PD素子32は例えばInGaAsの受光層を有するPIN−PDを用いても良いし、InGaAsの受光層を有するアバランシェフォトダイオードを用いてもよい。前記受信サブアセンブリ30は前記PD素子32とともにトランスインピーダンスアンプIC(図示せず)やダイキャップ(図示せず)を実装・接続する構成でも良い。ステム31は軟鋼で形成されAuメッキされる。
【0032】
前記アナログ受信サブアセンブリ20は波長λ3(例えば1.55μm)の受信光に感度のあるPD素子22をステム21に搭載して、このPD素子22をステム21およびレンズキャップ23で形成されるキャビティ内に気密封止している。レンズ24は例えばBK7で形成される球レンズである。キャップ23はステンレス鋼で形成される。PD素子22は光−電気変換の直線性に優れ、相互変調2次歪IMD2が−70dBc以下の例えばInGaAsの受光層を有するPIN−PDを用いても良い。ステム21は軟鋼で形成されAuメッキされる。
【0033】
筐体は分波フィルタ42、カットフィルタ43、および支持ケース41からなる。分波フィルタ42は波長λ1の送信光に対して透過的で、波長λ2の受信光に対して反射的である。分波フィルタは波長選択的透明鏡であり、例えばバリウムホウケイサンガラス上に誘電体多層膜を蒸着して分波特性を形成する。カットフィルタ43は波長λ2の単色性を高め光学的クロストークを低減するために設ける。これもバリウムホウケイサンガラス上に誘電体多層膜を蒸着して波長特性を形成する。支持ケース41は筐体本体でもあり、分波フィルタ42、カットフィルタ43を備え、送信サブアセンブリ10、アナログ受信サブアセンブリ20、受信サブアセンブリ30、光ファイバ50を支持する。支持ケース41は溶接に適したステンレス鋼からなり、送信サブアセンブリ10から光ファイバ50への光路、分波フィルタ42を支持する略45度の傾斜面、送信サブアセンブリ10を支持する円筒内面、カットフィルタ43を固定する円筒状窪み、アナログ受信サブアセンブリ20、受信サブアセンブリ30、光ファイバ50を固定する固定面を切削により、一体物で形成する。
【0034】
次に組み立て手順は以下の通りである。まず筐体の支持ケース41に分波フィルタ42とカットフィルタ43をUV硬化樹脂で貼り付ける。次に光ファイバ50と送信サブアセンブリ10を挿入して、調心を行ったのち、支持ケース41と送信サブアセンブリ10をYAGレーザ溶接により固定する。その後再度光ファイバ50の調心を行い光ファイバと筐体を同じくYAGレーザ溶接により固定する。次に受信サブアセンブリ30およびアナログ受信サブアセンブリ20を調心し同じくYAGレーザ溶接により固定する。
【0035】
本発明の光送受信モジュールはLDと光ファイバの光軸方向の調心を送信サブアセンブリ10を光軸方向にスライドさせて行うので分波フィルタ42−光ファイバ50間の距離は常に一定となり、PDの受光感度はLDの調心により影響を受けない特徴がある。本発明の光送受信モジュールは前述のように受信サブアセンブリ30とアナログ受信サブアセンブリ20を有して1送信2受信構造としてもよいし、受信サブアセンブリ30もしくはアナログ受信サブアセンブリ20のみを有する1波長送信1波長受信構造としても良い。アナログ受信サブアセンブリ20に搭載するPDには空間電荷効果を抑制し、光電気変換特性の直線性に優れたアナログ受信専用PDが用いられる。この場合、光送受信モジュールとしてはさらにクロストークを低減する必要がある。
【0036】
次に前記光送受信モジュールを使った光送受信装置について説明する。図1は本発明の一心双方向光送受信装置を示したものである。1送信2受信構造の一心双方向光モジュール1と回路基板2からなる。
【0037】
回路基板2は送信回路部2b、受信回路部2c、およびアナログ受信回路部2aからなり、送信回路部2bにはパワー制御機能、異常検出機能、消光比制御機能を有し、LD駆動IC4が、受信回路部2cはデジタル受信IC6が、アナログ受信回路2aは利得制御機能を有し、アナログ受信IC3とゲインアンプ、インピーダンス整合器、受信光モニター回路(いずれも図示せず)等がそれぞれ実装される。
【0038】
光送受信モジュールの送信サブアセンブリ10の各リード端子は送信回路部に、アナログ受信サブアセンブリ20の各リード端子はアナログ受信回路部に、受信サブアセンブリ30の各リード端子はアナログ受信回路部にそれぞれリードフォームした後に接続する。その際、図2のように各サブアセンブリのステムベース部11,21,31は共通のグランドパターンに直接接続される。グランドパターンへの接続は直接半田付け7で行ったが図6のようにフランジなどの金属部品8で止めても良い。回路基板のグランドパターンに直接接続されるステムベース部を構成するステムの半径が、該光送受信モジュールの筐体の回路基板への最近接部と前記筐体軸心との距離以上である事を特徴とする光送受信モジュールであればグランドパターンに直接接続しやすい。またさらにアナログ受信回路部と送信回路部の間には銅薄板製の遮蔽壁5を設け、これを共通のグランドパターンに直接接続してもよい。これらの対策により、LD駆動時に大電流が振り込まれても、受信部には電気的クロストークに起因するノイズは充分に抑制された。図11には受光信号の周波数特性を示す。横軸は信号周波数で単位はMHz、縦軸は信号出力電圧で単位はdBμVである。解像帯域幅は30kHz,ビデオ帯域幅は1kHzである。図10で見られたようなLD固有のノイズが見られない。
【実施例2】
【0039】
光送受信モジュールの構成は実施例1と同じである。図7に示すように光送受信モジュールの送信サブアセンブリおよび受信サブアセンブリのステムベース部を筐体より大きく設計し、回路基板側をカットして平坦部を設けたところ、パッケージベース部とグランドパターンとの直接接続が確実かつ容易になり、図11と同様に電気的クロストークも低減した。
【実施例3】
【0040】
光送受信モジュールの構成は実施例2と同じである。図8に示すように光送受信モジュールの送信サブアセンブリおよび受信サブアセンブリのステムベース部の回路基板側に平坦部を設けたところ、パッケージベース部とグランドパターンとの直接接続が確実かつ容易になり、図11と同様に電気的クロストークも低減した。
【実施例4】
【0041】
光送受信モジュールの構成は実施例1と同じである。ステムベース部にステムベース部と回路基板のグランドパターンを直接接続するフランジを有する。フランジは燐青銅製であり、ステムベース部と前記グランドパターンをつなぐ金メッキ部分を有するが、銅合金製やステンレス製でステムベース部とグランドパターンをつなぐ金メッキ部分を有するフランジでもよい。フランジはステムベース部に半田付けした。図12(A)に示すように回路基板には矩形の切り欠きを入れ、そこに光送受信モジュールを配置した。なおこの図ではICや遮蔽板は省略した。各光素子のリードを回路基板の対応する端子に接続するとともにフランジでステムベース部と回路基板のグランドパターンを直接接続したところ図11と同様に電気的クロストークが減少した。
【0042】
上記において、本発明の実施の形態および実施例について説明を行ったが、上記に開示された本発明の実施の形態および実施例は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれら発明の実施の形態に限定されない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】(A)は本発明の光送受信装置の部品配置を示す概略説明図である。(B)は(A)のA−A’線での断面図である。
【図2】本発明の光送受信装置で、光送受信モジュールのサブアセンブリのステムベースを直接半田付けによりグランドパターンに直接接続した状態を示す図。
【図3】本発明の光送受信モジュールの構成を示す断面図である。
【図4】従来の光送受信装置で、光送受信モジュールを回路基板に接続した状態を示す説明図である。
【図5】従来の光送受信装置で、光送受信モジュールの筐体を回路基板に接続した状態を示す説明図である。
【図6】本発明の光送受信装置で、光送受信モジュールのサブアセンブリのステムベースをフランジによりグランドパターンに直接接続した状態を示す説明図である。
【図7】ステムベース部を一部カットして平坦部を設けた本発明の光送受信モジュールを一心双方向光送受信装置の回路基板のグランドパターンに直接接続した状態を示す説明図である。
【図8】ステムベース部に平坦部を設けた本発明の光送受信モジュールを一心双方向光送受信装置の回路基板のグランドパターンに直接接続した別の例を示す説明図である。
【図9】従来の光送受信装置において、信号送受信時にアナログ受信部で受信した信号の出力の周波数特性を示す説明図である。
【図10】従来の光送受信装置において、信号送信時にアナログ受信部で受信した信号の出力の周波数特性を示す説明図である。
【図11】本発明の一心双方向光送受信装置において、信号送信時にアナログ受信部で受信した信号の出力の周波数特性を示す説明図である。
【図12】(A)は本発明の一心双方向光送受信モジュールを切り欠きを設けた回路基板に実装した形態を示す説明図の上面図である。(B)は(A)の側面図である。
【符号の説明】
【0044】
1 光送受信モジュール
2 回路基板
3 アナログ受信IC
4 LD駆動IC
5 遮蔽壁
6 デジタル受信IC
7 半田
8 フランジ
10 送信サブアセンブリ
11 ステム
15 LD素子
17 レンズキャップ
18 レンズ
20 アナログ受信サブアセンブリ
21 ステム
22 PD素子
23 レンズキャップ
24 レンズ
30 受信サブアセンブリ
31 ステム
32 PD素子
33 レンズキャップ
34 レンズ
40 筐体
41 支持ケース
42 分波フィルタ
43 カットフィルタ
49 筐体
50 光ファイバ
85 リードピン
86 リードピン
90 光送受信モジュール
91 ステム
92 ステム
93 ステム
94 グランドパターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子を内蔵する少なくとも1つの送信サブアセンブリと、受光素子を内蔵する1つまたは複数の受信サブアセンブリと、前記送信サブアセンブリと前記受信サブアセンブリを固定する筐体と、を具える光送受信モジュールと、電子素子が実装された回路基板とを有する光送受信装置であって、
前記受信サブアセンブリのステムを構成するステムベース部のうち少なくとも1つのステムベース部と前記送信サブアセンブリのステムを構成するステムベース部が前記回路基板のグランドパターンに直接接続されていることを特徴とする光送受信装置。
【請求項2】
前記直接接続は前記ステムベース部と前記回路基板のグランドパターンとの直接半田付けであることを特徴とする請求項1に記載の光送受信装置。
【請求項3】
前記直接接続は前記ステムベース部と前記回路基板のグランドパターンとのフランジによる固定であることを特徴とする請求項1に記載の光送受信装置。
【請求項4】
前記光送受信モジュールはアナログ信号光を受光するアナログフォトダイオードを内蔵する受信サブアセンブリを少なくとも1つ具えることを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載の光送受信装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4に記載の光送受信装置に用いられる光送受信モジュールであって、回路基板のグランドパターンに直接接続されるステムを構成するステムベース部の半径が、該光送受信モジュールの筐体の回路基板への最近接部と前記筐体軸心との距離以上である事を特徴とする光送受信モジュール。
【請求項6】
前記ステムベース部のグランドパターンと接する部分は平面であり、前記ステムベース部の外形中心から該平面までの距離をステムベース部の半径としたことを特徴とする請求項5に記載の光送受信モジュール。
【請求項7】
前記ステムベース部に、グランドパターンに直接接続するためのフランジを有することを特徴とする請求項5ないし6に記載の光送受信モジュール。
【請求項8】
前記フランジには前記ステムベース部と前記グランドパターンをつなぐステンレスよりも低い抵抗率の部分を有することを特徴とする請求項7に記載の光送受信モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−34807(P2008−34807A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−149398(P2007−149398)
【出願日】平成19年6月5日(2007.6.5)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】