説明

光電変換モジュール及び光電変換モジュールの製造方法

【課題】小型化を図ったとしても、封止用の半田の拡がりによる短絡が防止され、信頼性が高い光電変換モジュール及び光電変換モジュールの製造方法を提供する。
【解決手段】光電変換モジュール(24)は、透光性を有するとともに実装面を有する基板(26)と、基板(26)の実装面に実装された光電変換素子(30)と、基板(26)に対し半田からなる半田層(74)を介して固定され、基板(26)と協働して光電変換素子(30)を収容する気密室(68)を形成するカバー部材(34)と、実装面と対向するカバー部材(34)の面における、半田層(74)によって基板(26)に固定されるべき領域の近傍に設けられ、半田が付着性を有する半田吸着膜(72)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光電変換モジュール及び光電変換モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばデータセンターにおけるサーバとスイッチ間の接続やデジタルAV(オーディオ・ビジュアル)機器間の接続では、伝送媒体として、メタル線の外に、光ファイバーも用いられている。また、近年、携帯電話やパーソナルコンピュータ等の情報処理機器においても、伝送媒体として光ファイバーを用いること(光インターコネクト)が検討されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
光ファイバーを用いる場合、電気信号を光信号に、或いは、光信号を電気信号に変換する光電変換モジュールが必要になる。例えば、特許文献2が開示する光電変換モジュールは無機材料基板を備え、無機材料基板に光電変換素子が実装されている。そして、無機材料基板には、半田ボールを用いて、パッケージが気密を存して接合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−21459号公報
【特許文献2】特開2007−324303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光電変換モジュールの小型化が進むと、基板に設けられる導体パターンにおける配線の長さや間隔が短くなるとともに、半田ボールと配線との距離も短くなる。このため、基板とパッケージとを接合する際に、封止用の半田ボールが変形して拡がると、半田が不所望の配線に付着し、短絡する虞がある。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされ、その目的とするところは、小型化を図ったとしても、封止用の半田の拡がりによる短絡が防止され、信頼性が高い光電変換モジュール及び光電変換モジュールの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一態様によれば、透光性を有するとともに実装面を有する基板と、前記基板の実装面に実装された光電変換素子と、前記基板に対し半田からなる半田層を介して固定され、前記基板と協働して前記光電変換素子を収容する気密室を形成するカバー部材と、前記実装面と対向する前記カバー部材の面における、前記半田層によって前記基板に固定されるべき領域の近傍に設けられ、前記半田が付着性を有する半田吸着膜とを備える光電変換モジュールが提供される。
【0008】
また、本発明の一態様によれば、透光性を有するとともに実装面を有する基板へと分割される第1ウエハ、及び、半田からなる半田層を介して前記基板に固定され、前記基板と協働して光電変換素子を収容する気密室を形成するカバー部材へと分割される第2ウエハを準備する準備工程と、前記第1ウエハに、前記基板の各々に対応して前記光電変換素子を実装する実装工程と、前記第2ウエハにおける、前記半田層によって前記基板に固定されるべき領域の近傍に、前記半田が付着性を有する半田吸着膜を形成する成膜工程と、前記第1ウエハに、前記半田層を介して前記第2ウエハを固定する接合工程と、前記固定工程の後に、前記第1ウエハ及び前記第2ウエハを前記基板及び前記カバー部材へと分割する分割工程と、を備える光電変換モジュールの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、小型化を図ったとしても、封止用の半田の拡がりによる短絡が防止され、信頼性が高い光電変換モジュール及び光電変換モジュールの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1実施形態の光電変換モジュールを用いた光配線を備える携帯電話の概略的な構成を示す斜視図である。
【図2】図1の携帯電話に用いられる第1マザー基板及び第2マザー基板ととともに、光配線を示す概略的な斜視図である。
【図3】第1実施形態の光電変換モジュールの外観を概略的に示す斜視図である。
【図4】第2マザー基板に取り付けられた状態の光電変換モジュールの概略的な断面図である。
【図5】図4中のV−V線に沿って光電変換モジュールを切断し、半田層、光電変換素子及びICチップを除いた状態にて、基板の実装面を概略的に示す平面図である。
【図6】図4中のV−V線に沿って光電変換モジュールを切断し、半田層を除いた状態にて、基板の実装面と対向するカバー部材の対向面を概略的に示す平面図である。
【図7】図3の光電変換モジュールにおける、半田吸着膜とグランド電極との接続構成を説明するための、基板とカバー部材との接合領域を拡大して概略的に示す断面図である。
【図8】図3の光電変換モジュールにおける、導体パターンの信号/電源線と信号/電源電極との接続構成を説明するための、基板とカバー部材との接合領域を拡大して概略的に示す断面図である。
【図9】図3の光電変換モジュールの製造方法における、保持溝及びミラーの形成工程を説明するための概略的な平面図である。
【図10】図3の光電変換モジュールの製造方法における、導体パターンの形成工程を説明するための概略的な平面図である。
【図11】図3の光電変換モジュールの製造方法における、絶縁層及び基板側ベース膜の成膜工程を説明するための概略的な平面図である。
【図12】図3の光電変換モジュールの製造方法における、光電変換素子及びICチップの実装工程を説明するための概略的な平面図である。
【図13】図3の光電変換モジュールの製造方法における、カバー部材の凹みの形成工程を説明するための概略的な平面図である。
【図14】図3の光電変換モジュールの製造方法における、カバー側ベース膜及び半田吸着膜の成膜工程を説明するための概略的な平面図である。
【図15】図3の光電変換モジュールの製造方法における、スルーホールの穿孔工程を説明するための概略的な平面図である。
【図16】第2実施形態として、図3の光電変換モジュールの第2マザー基板への他の実装方法を説明するための概略的な断面図である。
【図17】第3実施形態の光電変換モジュールの概略的な断面図である。
【図18】第4実施形態の光電変換モジュールの概略的な断面図である。
【図19】第5実施形態の光電変換モジュールの概略的な断面図である。
【図20】第6実施形態の光電変換モジュールの概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔第1実施形態〕
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、携帯電話10の外観を概略的に示す斜視図である。携帯電話10は例えば折り畳み型であり、第1ケース11と第2ケース12がヒンジを介して連結されている。第1ケース11には液晶パネル14が設置され、第2ケース12にはボタン16が設置され、利用者は、液晶パネル14に表示される画像から情報を得ることが出来る。
【0012】
図2は、第1ケース11及び第2ケース12内にそれぞれ配置された第1マザー基板18及び第2マザー基板20を示している。図示しないけれども、第1マザー基板18には液晶パネル14のドライブ回路を構成する電気部品が実装され、第2マザー基板20には、ボタン16と接続される入力回路、通信回路及び画像処理回路を構成する電気部品が実装されている。
【0013】
第1マザー基板18のドライブ回路と第2マザー基板20の画像処理回路とは、光配線22によって相互に接続されている。即ち、ドライブ回路は、画像処理回路から光配線22を通じて画像データを受け取り、受け取った画像データに基づいて画像を液晶パネル14に表示させる。
【0014】
〔光電変換モジュール〕
光配線22は、光ファイバー23と、光ファイバー23の両端に一体に設けられた第1実施形態の光電変換モジュール24,24とからなる。
図3は、光電変換モジュール24の外観を概略的に示す斜視図である。光電変換モジュール24は、透光性を有する基板26を備える。基板26は、例えば、樹脂、無機材料、又は、樹脂と無機材料の複合材料からなる。無機材料としては、ガラス、シリコン、及び、サファイアからなる群から選択される1種を用いることができる。
【0015】
例えば、基板26は、1ch(チャンネル)の場合、100μm以上500μm以下の範囲の厚さと、700μm以上5000μm以下の範囲の縦の長さと、700μm以上5000μm以下の範囲の横の長さとを有する。
【0016】
基板26の一方の面(実装面)には、光電変換素子30及びIC(集積回路)チップ32が例えばフリップチップ実装されている。
より詳しくは、第2マザー基板20に接続される光電変換モジュール24では、光電変換素子30は、LD(レーザダイオード)等の発光素子であり、ICチップ32は、光電変換素子30を駆動するための駆動回路を構成している。
【0017】
また、第1マザー基板18に接続される光電変換モジュール24では、光電変換素子30は、PD(フォトダイオード)等の受光素子であり、ICチップ32は、受光素子が出力した電気信号を増幅するための増幅回路を構成している。
なお、光電変換素子30は、面発光型又は面受光型であり、出射部又は入射部が実装面と対向するように配置される。
【0018】
また、基板26の実装面には、光電変換素子30及びICチップ32を覆うように、カバー部材34が気密を存して固定されている。カバー部材34は、例えば、樹脂、無機材料、又は、樹脂と無機材料の複合材料からなる。無機材料としては、例えば、ガラス、シリコン、及び、サファイアからなる群から選択される1種を用いることができる。
【0019】
好ましくは、カバー部材34の線膨張係数は、基板26の線膨張係数と同じであり、そのために、カバー部材34及び基板26は同一の材料によって構成される。
例えば、カバー部材34の厚さは400μm以上1000μm以下の範囲にあり、基板26の実装面と対向するカバー部材34の面の広さは、基板26の実装面に略等しい。
【0020】
本実施形態では、好ましい態様として、基板26及びカバー部材34の側面に、基板26及びカバー部材34の厚さ方向にて端から端まで延びる一連の凹部が複数形成され、各凹部の表面の全域に導電性を有する膜状の導電部材(側面電極)が形成されている。導電部材には、グランド電極36gと、信号又は電源用の電極(信号/電源電極)36sとがある。
なお以下では、グランド電極36g及び信号/電源電極36sをまとめて導電部材36ともいう。
導電部材36は、例えば、Au、Cu及びNiからなる群から選択される単一の金属若しくは合金の膜、又は、これらの膜の積層体からなる。好ましくは、導電部材36は、Cuめっき膜、Niめっき膜及びAuめっき膜がこの順で積層され、Auめっき膜が最表層に位置する積層体である。
【0021】
一方、基板26の実装面とは反対側の面(背面)には、保持溝38が設けられ、保持溝38に光ファイバー23の先端部が配置されている。そして、基板26の背面には、保持溝38を覆うように、板状の補強部材40が固定されている。補強部材40は、例えばガラスからなる。補強部材40の厚さは、例えば、100μm以上1000μm以下の範囲にある。
【0022】
図4は、第2マザー基板20に実装された状態の光電変換モジュール24の概略的な断面図である。
保持溝38は、基板26に沿って、光電変換素子30及びICチップ32の配列方向(以下、単に配列方向Dという)に延びている。保持溝38の断面形状は四角形状、則ち角張ったU字形状のU溝である。
【0023】
本実施形態では、好ましい態様として、配列方向Dでみて、ICチップ32側に位置する保持溝38の一端は、基板26の側面にて開口し、保持溝38の他端は壁面によって構成されている。光ファイバー23の先端部は、保持溝38内に接着剤で固定され、光ファイバー23の先端面は、保持溝38の他端の壁面に当接している。
【0024】
また基板26の背面にはV溝が形成され、V溝の壁面には、例えばAu等の金属からなる蒸着膜が形成されている。蒸着膜はミラー42を構成し、ミラー42は、光電変換素子30と光ファイバー23の先端面とを、基板26を通して光学的に結合する光学要素を構成している。
なお、保持溝38及びV溝は、基板26とは別の部材で形成することもできる。例えば、樹脂材料を基板26の背面に塗布して樹脂層を形成し、この樹脂層に対して保持溝及びV溝を形成してもよい。
【0025】
補強部材40は接着剤からなる接着層44を介して、基板26の背面に固定されている。補強部材40は保持溝38を覆い、光ファイバー23の先端部を基板26とともに強固に保持する。補強部材40の基板26に接着される面の面積は、基板26の背面の面積よりも小さい。そして、基板26の背面の外縁近傍が一部露出するように、補強部材40は、基板26の背面に固定されている。
【0026】
第2マザー基板20は、例えばガラスエポキシ樹脂製のリジッドな基板本体46と、銅等の導体からなる導体パターン48とからなる。第2マザー基板20の導体パターン48は、例えば半田からなる接続部50によって、光電変換モジュール24の導電部材36に接続されている。
【0027】
基板26の実装面には、光電変換素子30とICチップ32とを電気的に接続し、ICチップ32と導電部材36とを電気的に接続するための導体パターン52が設けられている。導体パターン52は、例えば銅等からなる導電性を有する薄膜をエッチングすることによって形成される。
【0028】
光電変換素子30及びICチップ32は、入出力端子として、それぞれ複数の電極パッド54,56を有し、電極パッド54,56は、例えばAuからなるバンプ58,60を介して、基板26の導体パターン52に接続される。そして、導体パターン52は、基板26の側面の凹部まで延びており、導電部材36に接続されている。
【0029】
また、基板26の実装面上には、外縁に沿って絶縁層62が設けられている。絶縁層62は枠形状を有し、光電変換素子30及びICチップ32を囲んでいる。絶縁層62は、自身と交差する導体パターン52の部分を覆っている。例えば、絶縁層62は、0.5μm以上50μm以下の範囲の厚さと、10μm以上400μm以下の範囲の幅を有する。
絶縁層67は非導電性物質からなり、例えば、酸化シリコンや酸化アルミニウム等の無機酸化物からなる。絶縁層67は、物理蒸着や化学蒸着によって形成される。
【0030】
絶縁層62上には、基板側ベース膜64が形成されている。基板側ベース膜64は枠形状を有し、半田に対する親和性若しくは濡れ性を有する。換言すれば、半田は、基板側ベース膜64に対し付着性を有する。基板側ベース膜64は、例えば、Au、Cu及びCrからなる群から選択される単一の金属若しくは合金の膜、又は、これらの膜の積層体からなる。
【0031】
カバー部材34は、基板26の実装面と対向する面(対向面)の中央に凹み66を有する。好ましくは、凹み66の壁面において、開口縁近傍の領域は実装面に対して傾斜している。具体的には、凹み66の壁面は、曲面によって構成され、ボウル形状若しくはすり鉢形状有する。
凹み66の壁面は、実装面と協働して、光電変換素子30及びICチップ32を収容するための室(収容室)68を規定する。凹み66は、例えば、サンドブラストによって形成される。
【0032】
凹み66は、カバー部材34の対向面にて開口しており、対向面は、凹み66の開口の周りに、枠形状の接合領域を有する。カバー部材34の接合領域上には、カバー側ベース膜70が形成されている。カバー側ベース膜70は枠形状を有し、半田に対する親和性若しくは濡れ性を有する。カバー側ベース膜70は、例えば、Au、Cu及びCrからなる群から選択される単一の金属若しくは合金の膜、又は、これらの膜の積層体からなる。
【0033】
また、凹み66の壁面には、カバー側ベース膜70の内縁に一体に連なる半田吸着膜72が形成されている。好ましくは、半田吸着膜72は、凹み66の壁面全域に渡って形成されている。半田吸着膜72は、半田に対する親和性若しくは濡れ性を有し、好ましくは導電性を有する。半田吸着膜72は、例えば、Au、Cu及びCrからなる群から選択される単一の金属若しくは合金の膜、又は、これらの膜の積層体からなる。半田吸着膜72は、例えば、カバー側ベース膜70と同時に、物理蒸着又は化学蒸着によって形成することができる。
【0034】
基板側ベース膜64は、カバー側ベース膜70と対向するように配置される。好ましくは、基板側ベース膜64は、カバー側ベース膜70よりも収容室68の内側に向けて延びている。基板側ベース膜64とカバー側ベース膜70は、半田からなる半田層74によって相互に気密に接続される。半田は、例えば、Au−Sn合金又はSn−Ag合金である。
【0035】
従って、収容室68は気密室であり、収容室68には、乾燥ガスが充填され、好ましくは不活性ガスが充填されている。不活性ガスは、例えば、He等の希ガスや窒素ガスである。あるいは、収容室68は真空状態若しくは減圧状態であってもよい。
【0036】
図5は、図4中のV−V線に沿って光電変換モジュール24を切断し、半田層74、光電変換素子30及びICチップ32を除いた状態にて、基板26の実装面を概略的に示す平面図である。図5に示したように、基板側ベース膜64の外縁は、絶縁層62の外縁よりも内側に位置している。
【0037】
なお、実装面に設けられた導体パターン52には、グランド電極36gに接続されたグランド線52gと、信号/電源電極36sに接続された信号/電源線52sとがある。グランド線52g及び信号/電源線52sは、いずれも絶縁層62を跨ぐように延びている。
【0038】
図6は、図4中のV−V線に沿って光電変換モジュール24を切断し、半田層74を除いた状態にて、基板26の実装面と対向するカバー部材34の対向面を概略的に示す平面図である。
【0039】
カバー側ベース膜70は、基板側ベース膜64と対向する領域に設けられ、絶縁層62の外縁よりも内側に位置している。なお、カバー部材34は、カバー側ベース膜70を囲むように、対向面の外縁から基板に向けて突出する、枠形状の突起部34aを有する。このため、カバー部材34においては、突起部34aと凹み66の間に存在する平坦な枠形状の領域に、カバー側ベース膜70が設けられている。
【0040】
本実施形態では、好ましい態様として、半田吸着膜72が、凹み66の壁面の全域に形成され、且つ、接地される。そのために、突起部34aは、グランド電極36g近傍には設けられていない。
図7は、グランド電極36gとカバー側ベース膜70との接続構成を説明するために、基板26とカバー部材34との接合領域を拡大して概略的に示す断面図である。図7に示したように、グランド電極36gは、カバー側ベース膜70、半田層74、及び、基板側ベース膜64の端に接続される。
【0041】
図8は、信号/電源電極36sと信号/電源線52sとの接続構成を説明するために、基板26とカバー部材34との接合領域を拡大して概略的に示す断面図である。図8に示したように、信号/電源電極36sは、絶縁層62から延出した信号/電源線52sの端部に接続されている。一方、信号/電源電極36sと、カバー側ベース膜70、半田層74、及び、基板側ベース膜64との間には、突起部34a及び絶縁層62が存在し、これらの間の直接的な接触が阻止されている。
【0042】
以下、上述した光電変換モジュール24の好ましい製造方法について説明する。
まず、図9に示したように、基板26の材料として第1ウエハ75を用意する。第1ウエハ75は、最終的に、一点鎖線に沿って切断することによって、複数の基板26へと分割される。
用意した第1ウエハ75の一方の面に、分割後に得られる基板26の各々に対応して、V溝及び保持溝38を形成し、V溝に金属膜を蒸着してミラー42を形成する。
なお、第1ウエハ75の一方の面に、樹脂材料を塗布して樹脂層を形成し、この樹脂層に対し、露光及び現像のプロセスで保持溝38を形成するととともに、ダイシング等によりV溝を形成してもよい。
【0043】
それから、図10に示したように、第1ウエハ75の他方の面に、導体パターン52を形成する。例えば、第1ウエハ75の他方の面の全域に、金属膜をめっきしてから、金属膜をエッチングすることによって、導体パターン52が形成される。
【0044】
次に、図11に示したように、第1ウエハ75の他方の面に、絶縁層62を形成し、更に、絶縁層62の上に基板側ベース膜64を形成する。絶縁層62は、例えば、形成すべき領域以外をマスクにて覆ってから、物理蒸着又は化学蒸着を行うことによって形成することができる。
【0045】
また、基板側ベース膜62は、形成すべき領域以外をマスクにて覆ってから、無電解めっき若しくは電解めっきを行うことによって、又は、物理蒸着や化学蒸着を行うことによって形成することができる。
この後、図12に示したように、第1ウエハ75の他方の面に、光電変換素子30及びICチップ32を例えばフリップチップ実装によって実装する(実装工程)。
【0046】
この一方で、図13に示すように、カバー部材34の材料として、第2ウエハ76を用意する。そして、第2ウエハ76の一方の面に、例えばサンドブラストによって、突起部34a及び凹み66を形成する。
次に、図14に示すように、第2ウエハ76の一方の面に、カバー側ベース膜70及び半田吸着膜72を形成する(成膜工程)。カバー側ベース膜70及び半田吸着膜72は、例えば、形成すべき領域以外をマスクにて覆ってから、無電解めっき若しくは電解めっきを行うことによって、又は、物理蒸着や化学蒸着を行うことによって形成することができる。
【0047】
それから、半田層74となる半田を、カバー側ベース膜70上に付与する。この際、付与される半田は線状であってもよいし、ボール状であってもよい。
この後、不活性ガス雰囲気下にて、光電変換素子30及びICチップ32が実装された第1ウエハ75に、半田が付与された第2ウエハ76を重ねて加熱し、第1ウエハ75と第2ウエハ76を半田によって接合する(接合工程)。この接合の際、半田が半田層74を形成する。
【0048】
次に、例えばドリル、サンドブラスト又はエッチング等によって、好ましくはドリルによって、図15に示すように、第1ウエハ75及び第2ウエハ76を貫通するスルーホール78を形成する(穿孔工程)。それから、スルーホール78の壁面に、無電解めっき若しくは電解めっきを施し、めっき膜を形成する(めっき工程)。めっき膜は、Cu、Ni、Auの順に施され、金めっきがめっき膜の表層であるのが好ましい。
【0049】
この後、ダイシング装置を用いて、1点鎖線にて示した切断線にて、相互に接合された第1ウエハ75及び第2ウエハ76を切断する(分割工程)。この切断の際、めっき膜が導電性部材36へと分割される。かくして、分割工程が終了すると、複数の光電変換モジュール24の半完成品が得られる。
最後に、得られた半完成品の保持溝38に光ファイバー23の先端部を配置してから、半完成品の基板38に接着剤を用いて補強部材40を接着し、光電変換モジュール24が完成する。
【0050】
上述した第1実施形態の光電変換モジュール24では、加熱によって半田が溶けて半田層74を形成するとき、基板側ベース膜64とカバー側ベース膜70の間からはみ出した余分な半田が、半田吸着膜72上に拡がり、基板26の実装面上には拡がらない。このため、この光電変換モジュール24では、小型化を図ったとしても、余分な半田による短絡が生じない。
【0051】
上述した第1実施形態の光電変換モジュール24では、半田層74と基板26の実装面との間に絶縁層62が設けられているので、導体パターン52の形状が制限されることはない。つまり、実装面における配線の自由度が高く、実装面の端にも配線を形成することができる。
【0052】
上述した第1実施形態の光電変換モジュール24では、凹み66の壁面の開口近傍の領域が実装面に対して傾斜しているので、はみ出した半田が、半田吸着膜72上へと拡がり易い。このため、余分な半田が基板26の実装面上に拡がることが確実に防止される。
【0053】
上述した第1実施形態の光電変換モジュール24では、半田吸着膜72が凹み66の全域を覆っており、一つの導電部材36を通じて半田吸着膜72を接地することによって、優れたシールド性が得られる。
【0054】
上述した第1実施形態の光電変換モジュール24では、好ましい態様として、基板26とカバー部材34が同一の材料からなるので、線膨張係数が等しく、基板26からのカバー部材34の剥離が防止される。
【0055】
上述した第1実施形態の光電変換モジュール24では、好ましい態様として、基板側ベース膜64がカバー側ベース膜70よりも内側に延びているので、半田層74の幅、則ちシール幅が広くなり、良好な気密性が確実に得られる。
【0056】
また、上述した第1実施形態の光電変換モジュール24の製造方法によれば、成膜工程、穿孔工程及びめっき工程等の主要な工程が、第1ウエハ75及び第2ウエハ76に対して行われるので、光電変換モジュール24の大量生産が可能である。このため、光電変換モジュール24は安価にて提供される。
【0057】
〔第2実施形態〕
以下、第2実施形態について、図16を参照して説明する。
第2実施形態は、光電変換モジュール24の基板26側が、第2マザー基板20に固定されている点においてのみ第1実施形態と異なる。この場合、第2マザー基板20には、補強部材40を受け入れる凹み80として、孔、切欠又はU溝等が設けられる。
第2実施形態の場合、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0058】
〔第3実施形態〕
以下、第3実施形態の光電変換モジュール82について、図17を参照して説明する。
上述した第1実施形態の光電変換モジュール24では、実装面の端において、導体パターン52が導電部材36に接続されていたが、光電変換モジュール82のように、導体パターン52が、他の経路にて導電部材36に接続されていてもよい。具体的には、他の経路として、基板26にスルーホールを設け、スルーホールに充填されたスルーホール導体84と、基板26の背面に設けられた他の導体パターン86とを設けてもよい。このスルーホール、スルーホール導体84及び導体パターン86は、実装工程の前に形成される。
第3実施形態の場合、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0059】
〔第4実施形態〕
以下、第4実施形態の光電変換モジュール88について、図18を参照して説明する。
上述した第1実施形態の光電変換モジュール24では、好ましい態様として、光ファイバー23の先端部が基板26の背面の保持溝38に固定されていたが、他の固定手段によって固定されていてもよい。
例えば、光電変換モジュール88のように、光電変換素子30の光軸と光ファイバー23の光軸とが一致するように、基板26の背面に対し垂直に光ファイバー23の先端部を固定してもよい。
【0060】
この場合、光ファイバー23の先端部を固定するフェルール90が、基板26の背面に対し接着層44によって固定される。そして、必要に応じて、光電変換素子30と光ファイバー23との間にはレンズ92が設けられる。好ましくは、レンズ92は、基板26の背面に一体に形成される。レンズ92の形成工程は、例えば、ミラー42を形成する工程に代えて行うことができる。
第4実施形態の場合、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0061】
〔第5実施形態〕
以下、第5実施形態の光電変換モジュール94について、図19を参照して説明する。
上述した第1実施形態の光電変換モジュール24では、好ましい態様として、カバー部材34の側面にも凹部が形成され、導電部材36がカバー部材34の凹部を覆っていたが、光電変換モジュール94のように、カバー部材34側の凹部を省略し、基板26の側面の凹部の表面にのみ、導電部材36を設けてもよい。
【0062】
この場合、第1ウエハ61と第2ウエハ62の接合工程の前に、穿孔工程及びめっき工程が行われる。
第5実施形態の場合、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0063】
〔第6実施形態〕
以下、第6実施形態の光電変換モジュール96について、図19を参照して説明する。
上述した第1実施形態の光電変換モジュール24では、好ましい態様として、基板26の側面及びカバー部材34の側面に凹部が形成され、導電部材36が基板26の凹部及びカバー部材34の凹部を覆っていたが、光電変換モジュール96のように、基板26側の凹部を省略し、カバー部材34の側面の凹部の表面にのみ、導電部材36を設けてもよい。
【0064】
この場合、第1ウエハ61と第2ウエハ62の接合工程の前に、穿孔工程及びめっき工程が行われる。
第6実施形態の場合、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0065】
本発明は、上述した第1乃至第6実施形態に限定されることはなく、第1乃至第6実施形態のうち2つ以上を適宜組み合わせた形態や、これらの形態に変更を加えた形態も含む。
最後に、本発明の光電変換モジュールを備える光配線は、携帯電話以外の情報処理機器、ネットワーク機器、デジタルAV機器、及び、家電製品に適用可能である。より詳しくは、光電変換モジュールは、例えば、パーソナルコンピュータ、スイッチングハブ、及び、HDMIケーブル等にも適用可能である。
【符号の説明】
【0066】
20 第2マザー基板
22 光配線
23 光ファイバー
24 光電変換モジュール
26 基板
30 光電変換素子
32 ICチップ
34 カバー部材
36 導電部材
38 保持溝
40 補強部材
52 導体パターン
62 絶縁層
68 収容室(気密室)
72 半田吸着膜
74 半田層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性を有するとともに実装面を有する基板と、
前記基板の実装面に実装された光電変換素子と、
前記基板に対し半田からなる半田層を介して固定され、前記基板と協働して前記光電変換素子を収容する気密室を形成するカバー部材と、
前記実装面と対向する前記カバー部材の面における、前記半田層によって前記基板に固定されるべき領域の近傍に設けられ、前記半田が付着性を有する半田吸着膜と
を備える光電変換モジュール。
【請求項2】
前記カバー部材は、前記実装面と対向する面に前記気密室を形成する凹みを有し、
前記凹みの壁面の開口近傍の領域は前記実装面に対して傾斜し、
前記半田吸着膜は、少なくとも、前記凹みの壁面の開口近傍の領域に設けられている、
請求項1に記載の光電変換モジュール。
【請求項3】
前記実装面に形成された導電性を有する導体パターンと、
前記導体パターンと前記半田層との間に設けられた、絶縁性を有する絶縁層と
を更に備える請求項1又は2に記載の光電変換モジュール。
【請求項4】
前記半田吸着膜は、前記凹みの壁面の全域を覆っている
請求項2に記載の光電変換モジュール。
【請求項5】
前記半田吸着膜は、導電性を有し且つ接地されている
請求項4に記載の光電変換モジュール。
【請求項6】
前記基板及び前記カバー部材は同じ材料からなる、
請求項1乃至5の何れか一項に記載の光電変換モジュール。
【請求項7】
前記基板及び前記カバー部材は、シリコン、ガラス及びサファイアからなる群のうちから選択された一種からなる、
請求項1乃至6の何れか一項に記載の光電変換モジュール。
【請求項8】
透光性を有するとともに実装面を有する基板へと分割される第1ウエハ、及び、半田からなる半田層を介して前記基板に固定され、前記基板と協働して光電変換素子を収容する気密室を形成するカバー部材へと分割される第2ウエハを準備する準備工程と、
前記第1ウエハに、前記基板の各々に対応して前記光電変換素子を実装する実装工程と、
前記第2ウエハにおける、前記半田層によって前記基板に固定されるべき領域の近傍に、前記半田が付着性を有する半田吸着膜を形成する成膜工程と、
前記第1ウエハに、前記半田層を介して前記第2ウエハを固定する接合工程と、
前記固定工程の後に、前記第1ウエハ及び前記第2ウエハを前記基板及び前記カバー部材へと分割する分割工程と、
を備える光電変換モジュールの製造方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−160526(P2012−160526A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−18140(P2011−18140)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】