説明

入退場管理システムおよび入退場管理方法

【課題】 柔軟な本人認証を行なうことができるようになる入退場管理システムおよび入退場管理方法を提供する。
【解決手段】 入退場対象エリアの出入口において、当該入退場対象エリアに対して入退場を希望する人物から固有の顔画像を取得し、この取得した顔画像をあらかじめ登録された辞書情報と照合することにより両情報の類似度を求め、この求めた類似度をあらかじめ設定される判定用閾値と比較することにより当該人物は本人であるか否かを認証し、この認証結果に基づき前記入退場対象エリアに対する当該人物の入退場を管理する入退場管理システムにおいて、実際に本人認証を行なう人物に対する前記判定用閾値を、既に認証済みの別の人物の入退場情報に基づき変動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば、人物の顔画像による顔認証等の生体認証を用いて、それぞれがゲートによって区切られた複数の入退場対象エリアに対する人物の入退場を管理する入退場管理システムおよび入退場管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種の入退場管理システムでは、たとえば、セキュリティを必要とする会議室や作業エリアなどの入退場対象エリアのゲートにおいて、当該入退場対象エリアに対して入退場を希望する人物から固有の生体情報として顔画像を取得し、この取得した顔画像の特徴情報をあらかじめ登録された辞書情報と照合することにより両情報の類似度を求め、この求めた類似度をあらかじめ設定される判定用閾値と比較することにより当該人物は本人であるか否かを認証し、この認証結果に基づき前記入退場対象エリアに対する当該人物の入退場を管理するようになっている(たとえば、特許文献1、2参照)。
【0003】
従来、このような入退場管理システムにおいて、本人認証を行なうための上記判定用閾値を変動させる場合、そのパラメータは認証対象者本人が所持する別の認証情報(ICカード、携帯電話機など)や認証対象者本人の位置情報といった、認証対象者に付随する別の情報であった。
【特許文献1】特開2002−117426号公報
【特許文献2】特開2006−161501号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の入退場管理システムでは、認証対象者本人の認証情報のみによって判定用閾値を変動させていたので、本人認証速度が遅くなるという問題がある。
また、たとえば、本人認証を行なう人物以外の入場者が既に存在する場合により柔軟な本人認証を行ないたいという要望があるが、それができないという問題もある。
【0005】
そこで、本発明は、実際に本人認証を行なう人物に対する前記判定用閾値を既に認証済みの別の人物の入退場情報に基づき変動させることで、柔軟な本人認証を行なうことができるようになる入退場管理システムおよび入退場管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の入退場管理システムは、入退場対象エリアの出入口において、当該入退場対象エリアに対して入退場を希望する人物から固有の生体情報を取得し、この取得した生体情報をあらかじめ登録された辞書情報と照合することにより両情報の類似度を求め、この求めた類似度をあらかじめ設定される判定用閾値と比較することにより当該人物は本人であるか否かを認証し、この認証結果に基づき前記入退場対象エリアに対する当該人物の入退場を管理する入退場管理システムにおいて、実際に本人認証を行なう人物Aに対する前記判定用閾値を、既に認証済みの別の人物Bの入退場情報に基づき変動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、実際に本人認証を行なう人物に対する前記判定用閾値を既に認証済みの別の人物の入退場情報に基づき変動させることで、柔軟な本人認証を行なうことができるようになる入退場管理システムおよび入退場管理方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
なお、以下の説明では、人物の生体情報として顔画像を用いた場合を例として述べるが、顔画像以外に、指紋画像、静脈情報、虹彩情報、掌形画像、指画像などの他の生体情報を用いても同様に実施できる。
【0009】
図1は、本発明の実施の形態に係る入退場管理システムの構成を概略的に示すものである。この入退場管理システムは、たとえば、それぞれがゲートG1〜G4によって区切られたセキュリティを必要とする会議室や作業エリアなどの複数の入退場対象エリア(以降、単にエリアと略称することもある)P1〜P5を有し、これら入退場対象エリアP1〜P5に対する人物の入退場管理に適用した場合を示している。
【0010】
ゲートG1〜G4には、それぞれ人物認証装置11,12,13,14が設置されている。この人物認証装置11,12,13,14は、入退場対象エリアに対して入退場を希望する人物から固有の生体情報として顔画像を取得するカメラ(画像取得手段)、このカメラにより取得された画像から人物領域を検出する人物検出手段、この検出した人物領域から固有の顔情報を取得する顔情報取得手段、この取得した顔情報とあらかじめ登録された辞書情報とを照合することにより両情報の類似度を求め、この求めた類似度をあらかじめ設定される判定用閾値(以降、単に閾値と略称することもある)と比較することにより当該人物は本人であるか否かを認証する認証手段、この認証手段の認証結果に基づき入退場対象エリアに対する当該人物の入退場を許可するゲート制御手段、入退場対象エリアに対する入退場を許可した場合、当該人物の入退場情報(人物名や現在位置情報(エリア名)等)を後述する管理サーバ16へ送信する入退場情報送信手段、および、後述する管理サーバ16から送られる閾値更新情報に基づき上記判定用閾値を更新する閾値更新手段などを有している。
【0011】
人物認証装置11,12,13,14は、それぞれネットワーク(通信回線)15を介して管理装置としての管理室などの遠隔した部位に設置された管理サーバ16に接続されていて、互いに通信可能となっている。
【0012】
管理サーバ16は、ゲートG1〜G4にそれぞれ設置された人物認証装置11〜14を制御するとともに、これら人物認証装置11〜14における判定用閾値を決定する閾値決定処理などを行なうもので、入場者位置情報管理テーブルT1、人物関連情報テーブルT2、閾値管理テーブルT3、閾値変動を行なう変動対象者と閾値変動の値を決定するための第1の閾値決定テーブルT4、および、第2の閾値決定テーブルT5を有している。
【0013】
入場者位置情報管理テーブルT1は、たとえば、図2に示すように構成されていて、入場者がどのエリアにいるかを管理するもので、位置情報としてエリア番号(P1〜P5)が用いられる。
【0014】
閾値管理テーブルT3は、たとえば、図3に示すように構成されていて、全ての人物と全てのゲートG1〜G4(人物認証装置11〜14)に対する判定用閾値を管理する。図3の例では、全てのゲートG1〜G4に対して人物の進行方向ごとに判定用閾値の初期値として「80」が設定されている場合を示している。この閾値管理テーブルT3内の判定用閾値は、人物認証装置11〜14から送られる入退場情報に基づき更新されるもので、詳細は後述する。
【0015】
なお、人物関連情報テーブルT2、第1の閾値決定テーブルT4、および、第2の閾値決定テーブルT5については後で詳細を説明する。
【0016】
次に、このような構成において図4、図5に示すフローチャートを参照して全体的な処理動作を概略的に説明する。
【0017】
ゲートG1〜G4に設置された人物認証装置11〜14は、初期状態として入退場者待ち状態にある。
この状態において、人物認証装置11〜14が接近してくる人物(入退場者)を検出すると(ステップS1)、人物認証装置11〜14は、カメラにより取得された画像から人物領域を検出し、この検出した人物領域から固有の顔情報を取得し、この取得した顔情報とあらかじめ登録された辞書情報とを照合することにより両情報の類似度を求め、この求めた類似度をあらかじめ設定される判定用閾値と比較することにより当該人物は本人であるか否かを認証する(ステップS2)。
【0018】
この本人認証の結果、当該人物が本人でない場合は、エラー処理(入退場拒否など)を行ない(ステップS3)、当該人物が本人である場合は、入退場対象エリアに対する当該人物の入退場を許可し(ステップS4)、当該人物の入退場情報(人物名やエリア名等)を管理サーバ16へ送信する(ステップS5)。
【0019】
一方、管理サーバ16は、初期状態として人物認証装置11〜14からの入退場情報の通知待ち状態にある。
この状態において、管理サーバ16が人物認証装置11〜14から送信される入退場情報を受信すると(ステップS11)、管理サーバ16は、受信した入退場情報に基づき入場者位置情報管理テーブルT1内の位置情報を更新する(ステップS12)。
【0020】
次に、管理サーバ16は、更新した位置情報管理テーブルT1および閾値管理テーブルT3の各情報を参照することにより、各ゲートに対して変更する判定用閾値を決定し(詳細は後述)、この決定した判定用閾値で閾値管理テーブルT3内の閾値を更新する(ステップS13)。
【0021】
次に、管理サーバ16は、閾値管理テーブルT3の各情報を参照することにより、更新が必要なゲートG1〜G4の人物認証装置11〜14に対して閾値更新情報(更新された新たな判定用閾値)を送信する(ステップS14)。
【0022】
人物認証装置11〜14は、管理サーバ16から送られる閾値更新情報を受取ると、当該閾値更新情報に基づき、あらかじめ設定された判定用閾値を更新する。
【0023】
以下、ステップS13における各ゲートG1〜G4(人物認証装置11〜14)に対する閾値決定処理について詳細に説明する。
【0024】
まず、第1の実施の形態に係る閾値決定処理について説明する。
たとえば、図6に示すように、入退場対象エリアP3内に人物Bが入場した場合、ステップS12の入場者位置情報管理テーブル更新処理により、入場者位置情報管理テーブルT1の状態は図7に示すようになる。この例の場合、入退場者位置管理テーブルT1では、人物Bが入退場対象エリアP3内に存在すること示している。
【0025】
人物Bが入退場対象エリアP3に移動したときに、このことがゲートG2の人物認証装置12からの入退場情報により管理サーバ16に通知され、これをトリガとして管理サーバ16の処理が開始される。入退場者位置管理テーブルT1は、このときに更新される。
【0026】
第1の実施の形態では、入場済み人物Bがいる入退場対象エリアP3に隣接するゲートG2,G3(人物認証装置12,13)の判定用閾値を変動させるもので、そのために、ゲートG2,G3の入退場対象エリアP3に向かう方向の判定用閾値を変動させる。変動後(更新後)の閾値管理テーブルT3の状態は図8に示すようになる。この例の場合、閾値を「80」から「20」下げて「60」としている。
【0027】
以上のことから、第1の実施の形態における各ゲートG1〜G4(人物認証装置11〜14)に対する閾値決定処理の流れは図9に示すフローチャートのようになる。
【0028】
すなわち、まず、人物認証装置11〜14から受信した入退場情報内の位置情報から、判定用閾値を更新する対象となるゲート(人物認証装置)を決定する(ステップS21)。この例では、入退場対象エリアP3に人物Bがいるため、ゲートG2の入退場対象エリアP2からP3へ向かう方向と、ゲートG3の入退場対象エリアP4からP3へ向かう方向の本人認証に使用する判定用閾値が対象となる。
【0029】
次に、受信した入退場情報内の人物名(入退場者)が閾値管理テーブルT3内の人物であるか否かをチェックすることで(ステップS22)、閾値変更対象者を決定する。この例の場合、入退場者がBで、閾値変更対象者はAとCとなり、閾値管理テーブルT3内の人物A,Cの閾値を更新する(ステップS23)。この例では、ステップS21で決定した判定用閾値を更新するゲートG2,G3の閾値が「80」だったものを、ステップS22で決定した閾値変更対象者A,Cの閾値を「60」に低下させている。
【0030】
なお、上記説明では、入場済み人物Bがいる入退場対象エリアP3に隣接するゲートG2,G3(人物認証装置12,13)の判定用閾値を変動させる場合について説明したが、たとえば、ゲートG1に本人認証を行なう人物Aが存在する場合、人物Aが存在するゲートG1から人物Bが存在する入退場対象エリアP3へ至る経路に存在するゲートG1,G2を閾値変動対象とし、ゲートG1の入退場対象エリアP1からP2へ向かう方向と、ゲートG2の入退場対象エリアP2からP3へ向かう方向の本人認証に使用する判定用閾値を変動させてもよい。
【0031】
また、入退場対象エリアP1〜P5のうちある入退場対象エリアに人物Bが入場した場合、全てのゲートG1〜G4(人物認証装置11〜14)に対する判定用閾値を変動させてもよい。
【0032】
さらに、上記説明では、ある入退場対象エリアに人物が移動することで、その入退場対象エリアに関連するゲートの判定用閾値を変動させるようにしたが、当該人物が再び他のエリアへ移動した場合に、元の入退場対象エリアで関連していたゲートの判定用閾値を元の値に戻すようにしてもよい。たとえば、前記例でいえば、入退場対象エリアP3にいる人物Bが入退場対象エリアP2に移動した場合、ゲートG3(人物認証装置13)の判定用閾値を元の値「80」に戻すものである。これは、以降の説明においても同様のことがいえる。
【0033】
次に、第2の実施の形態に係る閾値決定処理について説明する。
第2の実施の形態の場合、たとえば、人物A,Bに関係を持つことができるようにして、人物Bが入場しているかそうでないかという情報のみで判定用閾値を変動させるゲートを決定するもので、人物間に閾値変更を行なう判定のための人物関連情報テーブルT2を用いる。人物関連情報テーブルT2の管理情報は、たとえば、図10に示すようになり、入退場者が閾値変更できる閾値変更対象者を管理するようになっている。
【0034】
第2の実施の形態の場合の閾値管理テーブルT3は、たとえば、図11、図12に示すようになる。図11は、入退場対象エリアP2への入場者が人物Bのみの場合(かつ、エリアに隣接するゲートのみ閾値変更する場合)を示し、図12は、入退場対象エリアP2への入場者が人物Cのみの場合(かつ、エリアに隣接するゲートのみ閾値変更する場合)を示している。
【0035】
以上のことから、第2の実施の形態における各ゲートG1〜G4(人物認証装置11〜14)に対する閾値決定処理の流れは図13に示すフローチャートのようになる。
【0036】
すなわち、まず、人物認証装置11〜14から受信した入退場情報内の位置情報から、判定用閾値を更新する対象となるゲート(人物認証装置)を決定する(ステップS31)。この例では、入場者がいる入退場対象エリアに隣接するゲートが対象となる。
【0037】
次に、受信した入退場情報をキーとして人物関連情報テーブルT2を検索し、閾値変更対象者が閾値管理テーブルT3内の人物であるか否かをチェックすることで(ステップS32)、閾値変更対象者を決定する。この例の場合、入場者が人物Bであれば閾値変更対象者は人物A,Cとなり、入場者が人物Cの場合、閾値変更対象者は人物Bのみとなり、閾値管理テーブルT3内の人物A,Cの閾値あるいは人物Bの閾値を更新する(ステップS33)。この例では、ステップS31で決定した判定用閾値を更新するゲートG2,G3の閾値が「80」だったものを、ステップS32で決定した閾値変更対象者A,CあるいはBの閾値を「60」に低下させている。
【0038】
なお、上述した第2の実施の形態の変形例として、閾値変更を拒否する人物を登録する方法も考えられるる。その場合の人物関連情報テーブルT2の管理情報は、たとえば、図14に示すようになり、入退場者が閾値変更を拒否する閾値変更拒否対象者を管理するようになっている。
【0039】
この場合の閾値管理テーブルT3は、たとえば、図15、図16に示すようになる。図15は、入退場対象エリアP2への入場者が人物Bのみの場合(かつ、エリアに隣接するゲートのみ閾値変更する場合)を示し、図16は、入退場対象エリアP2への入場者が人物Cのみの場合(かつ、エリアに隣接するゲートのみ閾値変更する場合)を示している。
【0040】
この例の場合、入退場対象エリアP2に人物Bが入場した場合、図14の人物関連情報テーブルT2を参照すると、人物A,Cともに人物Bからの閾値変更を拒否すると登録してある。このため、人物Bが入退場対象エリアP2内に存在していても、図15に示すように、閾値管理テーブルT3は更新されない。
【0041】
これに対し、入退場対象エリアP2に人物Cが入場していた場合、図14の人物関連情報テーブルT2を参照すると、人物Aの拒否対象者に人物Cが含まれていないため、図16に示すように、閾値管理テーブルT3内の人物Aに対する閾値情報は更新される。これに対し、人物Bは人物Cが拒否対象者であるため、人物Bの閾値情報は更新されない。
【0042】
なお、当該変形例におけるフローチャートによる閾値決定処理の流れの説明は図13とほぼ同等のため省略する。
【0043】
次に、第3の実施の形態に係る閾値決定処理について説明する。
第3の実施の形態の場合、たとえば、人物A,Bに上下関係を持たせ、人物Bが入場しているかそうでないかという情報と、人物Aと人物Bの上下関係で、判定用閾値を変化させるゲートを決定するもので、閾値変動を行なう変動対象者と閾値変動の値を決定するための第1の閾値決定テーブルT4または第2の閾値決定テーブルT5を用いる。第1の閾値決定テーブルT4の管理情報は、たとえば、図17に示すようになり、入退場者が変更できる閾値とその対象者を管理するようになっている。また、第2の閾値決定テーブルT5の管理情報は、たとえば、図18に示すようになり、入退場者が閾値変更できる閾値変更対象者とその変動閾値を管理するようになっている。第1の閾値決定テーブルT4または第2の閾値決定テーブルT5を参照することにより閾値管理テーブルT3を更新する。
【0044】
以上のことから、第3の実施の形態における各ゲートG1〜G4(人物認証装置11〜14)に対する閾値決定処理の流れは図19に示すフローチャートのようになる。
【0045】
すなわち、まず、人物認証装置11〜14から受信した入退場情報内の位置情報から、判定用閾値を更新する対象となるゲート(人物認証装置)を決定する(ステップS41)。この例では、入場者がいる入退場対象エリアに隣接するゲートが対象となる。
【0046】
次に、受信した入退場情報をキーとして人物関連情報テーブルT2を検索し、閾値変更対象者が閾値管理テーブルT3内の人物であるか否かをチェックすることで(ステップS42)、閾値変更対象者を決定する。この例の場合、入場者が人物Bであれば、図17の第1の閾値決定テーブルT4を用いた場合、閾値変更対象者は人物C,Aで、その変動閾値は「20」、「10」となり、図18の第2の閾値決定テーブルT5を用いた場合、閾値変更対象者は人物A,Cで、その変動閾値は「20」、「10」となる。
【0047】
次に、閾値管理テーブルT3内の上記のように決定した閾値変更対象者に該当する閾値を、第1の閾値決定テーブルT4あるいは第2の閾値決定テーブルT5に登録されている該当する閾値で更新する(ステップS43)。上記例の場合、第1の閾値決定テーブルT4を用いた場合、人物Cの閾値を「20」に、人物Aの閾値を「10」に低下させ、第2の閾値決定テーブルT5を用いた場合、人物Aの閾値を「20」に、人物Cの閾値を「10」に低下させている。
【0048】
このように、第1、第2の実施の形態では閾値の変動値が固定であったが、第3の実施の形態では入退場情報から閾値変動を行なう対象者とその閾値変動の値を決定して閾値管理テーブルT3を更新するものである。
【0049】
次に、第4の実施の形態に係る閾値決定処理について説明する。
第4の実施の形態の場合、閾値の算出を行なう際に、複数の入場者が同一エリアにいると判定された場合、単一の入場者がいる場合に比べ閾値を大きく変動させるもので、図18に示した第2の閾値決定テーブルT5を用いる。
【0050】
図18の第2の閾値決定テーブルT5のように、変動対象者ごとに閾値を持たせておく。たとえば、入退場対象エリアP3に人物BとCがいた場合、人物Aに対する閾値は人物Bが人物Aに対する閾値変動値として設定された「20」と、人物Cが人物Aに対する閾値変動値として設定された「10」を利用して決定する。一番単純な具体例としては、両閾値の合計値である「20+10=30」を閾値の変動値として利用することで、この場合は人物Aの閾値は「80−30=50」に設定される。
【0051】
このように、第4の実施の形態では、たとえば、人物Bが単独で入場していた場合に比べて、人物B,Cが同時に入場していた場合の方が判定用閾値をより大きく下げることができる。
【0052】
以上説明したように上記実施の形態によれば、入退場対象エリアに誰かが存在する場合に入場者に対する判定用閾値を下げることによって、入場者が容易に入退場対象エリアエリアへ入ることができるようになる。
【0053】
また、入退場対象エリアに入ることを許される人物をグループ分けしておき、入場済みの人物のグループと入場者のグループとの関係にしたがって入退場の判定用閾値を変動させることで、既に入場している人物と同じグループの人物は容易に入場できるようになり、別のグループの人物は初期状態の認証を受ける必要がある状態になる。
【0054】
たとえば、セキュリティを必要とする会議室や作業エリアを利用する場合に、同一グループの人物は容易に入場できるようにし、他の人物は初期状態の認証を必要とすることができるようになる。
また、逆に、VIP(重要人物)のようなグループを設定することで、そのグループに関連する人物がいるエリアに対するVIPグループ以外の人物の入場を厳しくすることもできる。
【0055】
また、入退場対象エリアにいる人数によって判定用閾値を変化させることで、入退場対象エリアに沢山の人物がいるのであれば、入場する人物に対する条件を緩めて入場を容易にできるようになる。さらに、これらを組合わせることで、より細かい条件設定が可能となる。
【0056】
なお、前記実施の形態では、判定用閾値を下げる場合について説明したが、本発明これに限定されるものではなく、逆に判定用閾値を上げる場合にも同様に適用できる。たとえば、VIPユーザのいる入退場対象エリアへのゲートに対する判定用閾値を高くすることで、当該エリアに対して入場を厳しくするようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施の形態に係る入退場管理システムの構成を概略的に示す模式図。
【図2】入場者位置情報管理テーブルの一例を説明する模式図。
【図3】閾値管理テーブルの一例を説明する模式図。
【図4】人物認証装置の処理動作を概略的に説明するフローチャート。
【図5】管理サーバの処理動作を概略的に説明するフローチャート。
【図6】閾値決定処理を説明するための模式図。
【図7】第1の実施の形態に係る閾値決定処理における入場者位置情報管理テーブルの状態を示す模式図。
【図8】第1の実施の形態に係る閾値決定処理における閾値管理テーブルの状態を示す模式図。
【図9】第1の実施の形態に係る閾値決定処理の流れを説明するフローチャート。
【図10】第2の実施の形態に係る閾値決定処理における人物関連情報テーブルの状態を示す模式図。
【図11】第2の実施の形態に係る閾値決定処理における閾値管理テーブルの状態を示す模式図。
【図12】第2の実施の形態に係る閾値決定処理における閾値管理テーブルの別の状態を示す模式図。
【図13】第2の実施の形態に係る閾値決定処理の流れを説明するフローチャート。
【図14】第2の実施の形態に係る閾値決定処理の変形例における人物関連情報テーブルの状態を示す模式図。
【図15】第2の実施の形態に係る閾値決定処理の変形例における閾値管理テーブルの状態を示す模式図。
【図16】第2の実施の形態に係る閾値決定処理の変形例における閾値管理テーブルの別の状態を示す模式図。
【図17】第3の実施の形態に係る閾値決定処理における第1の閾値決定テーブルの状態を示す模式図。
【図18】第3の実施の形態に係る閾値決定処理における第2の閾値決定テーブルの状態を示す模式図。
【図19】第3の実施の形態に係る閾値決定処理の流れを説明するフローチャート。
【符号の説明】
【0058】
G1〜G4…ゲート、P1〜P5…入退場対象エリア、11,12,13,14…人物認証装置、15…ネットワーク(通信回線)、16…管理サーバ(管理装置)、T1…入場者位置情報管理テーブル、T2…人物関連情報テーブル、T3…閾値管理テーブル、T4…第1の閾値決定テーブル、T5…第2の閾値決定テーブル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入退場対象エリアの出入口において、当該入退場対象エリアに対して入退場を希望する人物から固有の生体情報を取得し、この取得した生体情報をあらかじめ登録された辞書情報と照合することにより両情報の類似度を求め、この求めた類似度をあらかじめ設定される判定用閾値と比較することにより当該人物は本人であるか否かを認証し、この認証結果に基づき前記入退場対象エリアに対する当該人物の入退場を管理する入退場管理システムにおいて、
実際に本人認証を行なう人物Aに対する前記判定用閾値を、既に認証済みの別の人物Bの入退場情報に基づき変動させることを特徴とする入退場管理システム。
【請求項2】
それぞれがゲートによって区切られた複数の入退場対象エリアの各ゲートにおいて、当該入退場対象エリアに対して入退場を希望する人物から固有の生体情報を取得し、この取得した生体情報をあらかじめ登録された辞書情報と照合することにより両情報の類似度を求め、この求めた類似度をあらかじめ設定される判定用閾値と比較することにより当該人物は本人であるか否かを認証し、この認証結果に基づき前記入退場対象エリアに対する当該人物の入退場を管理する入退場管理システムにおいて、
前記複数の入退場対象エリアのうちある入退場対象エリアに人物Bが入場した場合、当該人物Bが存在する入退場対象エリアに隣接するゲートに対する前記判定用閾値を変動させることを特徴とする入退場管理システム。
【請求項3】
それぞれがゲートによって区切られた複数の入退場対象エリアの各ゲートにおいて、当該入退場対象エリアに対して入退場を希望する人物から固有の生体情報を取得し、この取得した生体情報をあらかじめ登録された辞書情報と照合することにより両情報の類似度を求め、この求めた類似度をあらかじめ設定される判定用閾値と比較することにより当該人物は本人であるか否かを認証し、この認証結果に基づき前記入退場対象エリアに対する当該人物の入退場を管理する入退場管理システムにおいて、
実際に本人認証を行なう人物Aが存在し、かつ、前記複数の入退場対象エリアのうちある入退場対象エリアに人物Bが入場していた場合、前記人物Aが存在するゲートから前記人物Bが存在する入退場対象エリアへ至る経路に存在するゲートに対する前記判定用閾値を変動させることを特徴とする入退場管理システム。
【請求項4】
それぞれがゲートによって区切られた複数の入退場対象エリアの各ゲートにおいて、当該入退場対象エリアに対して入退場を希望する人物から固有の生体情報を取得し、この取得した生体情報をあらかじめ登録された辞書情報と照合することにより両情報の類似度を求め、この求めた類似度をあらかじめ設定される判定用閾値と比較することにより当該人物は本人であるか否かを認証し、この認証結果に基づき前記入退場対象エリアに対する当該人物の入退場を管理する入退場管理システムにおいて、
前記複数の入退場対象エリアのうちある入退場対象エリアに人物Bが入場した場合、前記複数のゲートの全てに対する前記判定用閾値を変動させることを特徴とする入退場管理システム。
【請求項5】
それぞれがゲートによって区切られた複数の入退場対象エリアの各ゲートにおいて、当該入退場対象エリアに対して入退場を希望する人物から固有の生体情報を取得し、この取得した生体情報をあらかじめ登録された辞書情報と照合することにより両情報の類似度を求め、この求めた類似度をあらかじめ設定される判定用閾値と比較することにより当該人物は本人であるか否かを認証し、この認証結果に基づき前記入退場対象エリアに対する当該人物の入退場を管理する入退場管理システムにおいて、
実際に本人認証を行なう人物Aが存在し、かつ、前記複数の入退場対象エリアのうちある入退場対象エリアに人物Bが入場していた場合で、前記人物Aが前記人物Bとあらかじめ定められたグループ関係にあると判断できる場合、前記複数のゲートに対する前記判定用閾値を変動させることを特徴とする入退場管理システム。
【請求項6】
それぞれがゲートによって区切られた複数の入退場対象エリアの各ゲートにおいて、当該入退場対象エリアに対して入退場を希望する人物から固有の生体情報を取得し、この取得した生体情報をあらかじめ登録された辞書情報と照合することにより両情報の類似度を求め、この求めた類似度をあらかじめ設定される判定用閾値と比較することにより当該人物は本人であるか否かを認証し、この認証結果に基づき前記入退場対象エリアに対する当該人物の入退場を管理する入退場管理システムにおいて、
実際に本人認証を行なう人物Aが存在し、かつ、前記複数の入退場対象エリアのうちある入退場対象エリアに人物Bが入場していた場合で、前記人物Aと前記人物Bとがあらかじめ定められた上下関係にあると判断できる場合、その上下関係にに基づき前記複数のゲートに対する前記判定用閾値を変動させることを特徴とする入退場管理システム。
【請求項7】
前記人物Bが入場している入退場対象エリアに当該人物B以外の人物Cも入場している場合、前記ゲートに対する前記判定用閾値を、前記人物Bが単独で入場していた場合に比べてより大きく変動させることを特徴とする請求項2から請求項6のいずれかに記載の入退場管理システム。
【請求項8】
それぞれがゲートによって区切られた複数の入退場対象エリアの各ゲートにそれぞれ設置され、当該入退場対象エリアに対して入退場を希望する人物から固有の生体情報を取得し、この取得した生体情報をあらかじめ登録された辞書情報と照合することにより両情報の類似度を求め、この求めた類似度をあらかじめ設定される判定用閾値と比較することにより当該人物は本人であるか否かを認証し、この認証結果に基づき前記入退場対象エリアに対する当該人物の入退場を許可する人物認証装置と、この複数の人物認証装置と通信回線を介して接続された管理装置とを有して構成され、
前記人物認証装置は、
前記入退場対象エリアに対する入退場を許可した場合、当該人物の入退場情報を前記管理装置へ送信する手段を具備し、
前記管理装置は、
前記人物認証装置から送信される入退場情報を受取ると、その入退場情報に基づき当該人物とは別の人物に対する判定用閾値を決定する手段と、
この決定した判定用閾値を閾値更新情報として前記人物認証装置へ送信すると手段を具備し、
前記人物認証装置は、さらに、
前記管理装置から送信される閾値更新情報を受取ると、その閾値更新情報に基づき前記あらかじめ設定される判定用閾値を更新する手段を具備したことを特徴とする入退場管理システム。
【請求項9】
入退場対象エリアの出入口において、当該入退場対象エリアに対して入退場を希望する人物から固有の生体情報を取得し、この取得した生体情報をあらかじめ登録された辞書情報と照合することにより両情報の類似度を求め、この求めた類似度をあらかじめ設定される判定用閾値と比較することにより当該人物は本人であるか否かを認証し、この認証結果に基づき前記入退場対象エリアに対する当該人物の入退場を管理する入退場管理方法において、
実際に本人認証を行なう人物Aに対する前記判定用閾値を、既に認証済みの別の人物Bの入退場情報に基づき変動させることを特徴とする入退場管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−3009(P2010−3009A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−159515(P2008−159515)
【出願日】平成20年6月18日(2008.6.18)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】