説明

内燃機関の制御装置

【課題】本発明は、内燃機関の制御装置に関し、掃気効果を利用した充填効率向上手法と、過給機による充填効率向上手法とを状況に応じて適切に組み合わせることにより、燃費改善とトルク増大とを両立することを目的とする。
【解決手段】本発明の内燃機関の制御装置は、小ターボ使用領域では小ターボ過給機16を主として作動させ、小ターボ使用領域より高回転高負荷側の大ターボ使用領域では大ターボ過給機18を主として作動させる。小ターボ過給機16の使用時であって、排気圧力レベルが低い場合には、排気圧力の脈動が谷となるタイミングをバルブオーバーラップ期間に一致させることにより、掃気効果を利用した充填効率の向上が可能である。そこで、排気圧力レベルが低い場合には、掃気効果を利用した充填効率の向上によりトルク増大と燃費改善とが両立できる小ターボ使用領域を拡大し、ポンプ損失が比較的大きい大ターボ使用領域を縮小する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2005−83285号公報には、燃料噴射弁の噴射方向を、第1吸気ポートに指向させると共に、第2吸気ポートを開閉させる第2吸気弁の開弁時期を、第1吸気ポートを開閉させる第1吸気弁の開弁時期に対して所定角度だけ進角させた過給機付エンジンの動弁装置が開示されている。この装置によれば、第2吸気弁の開弁時期を進角させることで、排気弁と吸気弁とが共に開弁するバルブオーバーラップ期間において、先ず第2吸気弁が開弁して燃料を伴わない過給された新気のみにてシリンダ内が掃気され、次いで第1吸気弁が開弁することで、新気と霧化された燃料との混合気がシリンダ内に供給される。このため、新気によるシリンダ内の掃気を効率よく行い、充填効率を高めると共に、燃料の吹き抜けを防止することができると同公報には記載されている。
【0003】
また、特開平10−176558号公報には、吸気弁及び排気弁の両方が開いているオーバーラップ期間の中心時期が、エンジンの低速回転低負荷運転域では上死点に略一致し、残りの運転域のうちの大部分においては上死点後となるよう吸気弁,排気弁の開,閉タイミングを可変制御し、もって排気脈動の負圧波をオーバーラップ時に同調させることにより、掃気効果を高めて吸入空気量を増加しトルクを増大するエンジンの運転制御装置が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2005−83285号公報
【特許文献2】特開2007−154684号公報
【特許文献3】特開平10−176558号公報
【特許文献4】特開平11−324746号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の技術のように、バルブオーバーラップ期間における掃気効果を利用することにより、充填効率を向上し、筒内空気量を増大させることが可能となる。
【0006】
ところで、充填効率(筒内空気量)を増大させる方法としては、過給を行う方法もある。しかしながら、過給機を作動させると、ポンプ損失(ターボ過給機の場合)あるいは機械損失(機械式過給機の場合)が増大するので、燃費が悪化する傾向がある。これに対し、掃気効果を利用した充填効率向上の手法は、燃費を悪化させることがなく、好ましい。
【0007】
その一方で、掃気効果を利用した充填効率向上の手法には、次のような問題がある。掃気効果が生ずるには、少なくともバルブオーバーラップ期間において排気圧力が吸気圧力より低くなることが条件となる。よって、この条件が満足されない場合には、掃気効果を利用して充填効率を向上することはできない。例えば、PM(Particulate Matter)等の粒子状物質を捕集する排気フィルタを備えたシステムの場合では、排気フィルタの目詰まりが進行すると、排気圧力レベルが上昇するので、バルブオーバーラップ期間において、吸気圧力と排気圧力との差圧が小さくなったり、排気圧力が吸気圧力より高くなったりする場合がある。そのような場合には、掃気効果が発揮されず、トルクの増大が図れないという問題がある。
【0008】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、掃気効果を利用した充填効率向上手法と、過給機による充填効率向上手法とを状況に応じて適切に組み合わせることにより、燃費改善とトルク増大とを両立することのできる内燃機関の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、上記の目的を達成するため、内燃機関の制御装置であって、
過給機と、
第1の運転領域では前記過給機を実質的に作動させず、前記第1の運転領域より高回転高負荷側の第2の運転領域では前記過給機を作動させる過給機切替手段と、
排気圧力レベルが所定レベルより低いか否かを判別する排気圧力レベル判別手段と、
排気圧力レベルが前記所定レベルより低い場合には、排気圧力レベルが前記所定レベルより高い場合と比べ、前記第1の運転領域を拡大し、前記第2の運転領域を縮小する領域変更手段と、
吸気弁開弁期間と排気弁開弁期間とが重なるバルブオーバーラップ期間を設けるとともに、排気圧力の脈動が谷となるタイミングを前記バルブオーバーラップ期間に一致させる充填効率向上手段と、
を備えることを特徴とする。
【0010】
また、第2の発明は、内燃機関の制御装置であって、
小過給機と、
前記小過給機より大容量の大過給機と、
小過給機使用領域では前記小過給機を主として作動させ、前記小過給機使用領域より高回転高負荷側の大過給機使用領域では前記大過給機を主として作動させる過給機切替手段と、
排気圧力レベルが所定レベルより低いか否かを判別する排気圧力レベル判別手段と、
排気圧力レベルが前記所定レベルより低い場合には、排気圧力レベルが前記所定レベルより高い場合と比べ、前記小過給機使用領域を拡大し、前記大過給機使用領域を縮小する領域変更手段と、
吸気弁開弁期間と排気弁開弁期間とが重なるバルブオーバーラップ期間を設けるとともに、排気圧力の脈動が谷となるタイミングを前記バルブオーバーラップ期間に一致させる充填効率向上手段と、
を備えることを特徴とする。
【0011】
また、第3の発明は、第2の発明において、
前記小過給機および前記大過給機は、それぞれ、排気ガスによって作動するタービンを有するターボ過給機であり、
前記小過給機のタービンの下流側に前記大過給機のタービンが配置されていることを特徴とする。
【0012】
また、第4の発明は、第3の発明において、
前記過給機切替手段は、
前記小過給機のタービンをバイパスして排気ガスを通す小タービンバイパス通路と、
前記小タービンバイパス通路を開閉する小タービンバイパス通路開閉弁と、
を含み、
前記小過給機使用領域では、前記小タービンバイパス通路開閉弁を閉じ、前記大過給機使用領域では、前記小タービンバイパス通路開閉弁を開くことを特徴とする。
【0013】
また、第5の発明は、第4の発明において、
前記過給機切替手段は、
前記大過給機のタービンをバイパスして排気ガスを通す大タービンバイパス通路と、
前記大タービンバイパス通路を開閉する大タービンバイパス通路開閉弁と、
を更に含み、
前記小過給機使用領域では、前記小タービンバイパス通路開閉弁を閉じて前記大タービンバイパス通路開閉弁を開き、前記大過給機使用領域では、前記小タービンバイパス通路開閉弁を開いて前記大タービンバイパス通路開閉弁を閉じることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
第1の発明によれば、排気圧力レベルが低い場合には、排気圧力の脈動が谷となるタイミングをバルブオーバーラップ期間に一致させることにより、バルブオーバーラップ期間において排気圧力を吸気圧力より低くすることができるので、掃気効果を利用して充填効率(トルク)を向上することができる。そこで、第1の発明では、排気圧力レベルが低い場合には、排気圧力レベルが高い場合と比べ、過給機を実質的に使用しない第1の運転領域を拡大し、過給機を使用する第2の運転領域を縮小する。これにより、燃費に悪影響を与えない掃気効果による充填効率向上(トルク増大)の恩恵をより広い領域で享受することができるとともに、ポンプ損失あるいは機械損失の増大をもたらす過給機の使用領域を狭めることができる。このため、燃費改善とトルク増大とを両立することができる。また、排気圧力レベルが高く、掃気効果による充填効率向上(トルク増大)が見込めない場合には、過給機の使用領域を拡大することができる。これにより、排気圧力レベルが高い場合であっても、トルクの低下を確実に抑制することができる。
【0015】
第2の発明によれば、排気圧力レベルが低い場合には、排気圧力の脈動が谷となるタイミングをバルブオーバーラップ期間に一致させることにより、バルブオーバーラップ期間において排気圧力を吸気圧力より低くすることができるので、掃気効果を利用して充填効率(トルク)を向上することができる。そこで、第2の発明では、排気圧力レベルが低い場合には、排気圧力レベルが高い場合と比べ、掃気効果による充填効率向上(トルク増大)が可能な小過給機使用領域を拡大し、大過給機使用領域を縮小する。これにより、燃費に悪影響を与えない掃気効果による充填効率向上の恩恵をより広い領域で享受することができるとともに、ポンプ損失あるいは機械損失の増大をもたらす大過給機の使用領域を狭めることができる。このため、燃費改善とトルク増大とを両立することができる。また、排気圧力レベルが高く、掃気効果による充填効率向上(トルク増大)が見込めない場合には、高過給圧の得られる大過給機の使用領域を拡大することができる。これにより、排気圧力レベルが高い場合であっても、トルクの低下を確実に抑制することができる。
【0016】
第3の発明では、小ターボ過給機のタービンの下流側に大ターボ過給機のタービンが配置されている。大ターボ過給機の使用時は、タービンまでの排気経路が長くなり、排気系容積が大きくなる。このため、排気圧力の脈動が弱くなり、掃気効果による充填効率向上(トルク増大)が見込めない。一方、小ターボ過給機の使用時は、排気系容積が小さくなり、排気圧力の脈動を強くすることができるので、排気圧力レベルの低い場合であれば、掃気効果による充填効率向上が見込める。第3の発明によれば、排気圧力レベルが低い場合には、掃気効果による充填効率向上が見込め、ポンプ損失の少ない小ターボ過給機使用領域を拡大するので、燃費改善とトルク増大とを両立することができる。また、排気圧力レベルが高く、掃気効果による充填効率向上が見込めない場合には、高過給圧の得られる大ターボ過給機の使用領域を拡大することができる。これにより、排気圧力レベルが高い場合であっても、トルクの低下を確実に抑制することができる。
【0017】
第4の発明によれば、小過給機使用領域では、小タービンバイパス通路開閉弁を閉じ、大過給機使用領域では、小タービンバイパス通路開閉弁を開くことにより、簡単な構造で、小ターボ過給機と大ターボ過給機とを円滑かつ確実に切り替えることができる。
【0018】
第5の発明によれば、小過給機使用領域では、小タービンバイパス通路開閉弁を閉じて大タービンバイパス通路開閉弁を開き、大過給機使用領域では、小タービンバイパス通路開閉弁を開いて大タービンバイパス通路開閉弁を閉じることにより、簡単な構造で、小ターボ過給機と大ターボ過給機とを円滑かつ確実に切り替えることができる。また、小ターボ過給機が使用されているとき、大ターボ過給機のタービンをバイパスして排気ガスを流すことができるので、背圧を低くすることができる。このため、バルブオーバーラップ期間における掃気効果を利用して充填効率(トルク)を向上させる場合に、吸気圧力と排気圧力との差圧を十分に大きくすることができるので、掃気効果をより確実に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照してこの発明の実施の形態について説明する。なお、各図において共通する要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0020】
実施の形態1.
[システム構成の説明]
図1は、本発明の実施の形態1のシステム構成を説明するための図である。図1に示すシステムは、4サイクルのディーゼル機関10を備えている。ディーゼル機関10は、車両に搭載され、その動力源とされているものとする。ディーゼル機関10の各気筒から排出される排気ガスは、排気マニホールド12によって集合され、排気通路14に流入する。なお、本実施形態のディーゼル機関10は、直列4気筒型であるが、本発明におけるディーゼル機関の気筒数および気筒配置はこれに限定されるものではない。
【0021】
本実施形態のディーゼル機関10は、小ターボ過給機16と、この小ターボ過給機16より大容量の(高流量に適した)大ターボ過給機18とを備えている。後述するように、ディーゼル機関10では、比較的低回転低負荷側の運転領域では小ターボ過給機16が使用され、比較的高回転高負荷側の運転領域では大ターボ過給機18が使用される。
【0022】
大ターボ過給機18のタービン18aは、小ターボ過給機16のタービン16aの下流側に配置されている。すなわち、排気マニホールド12の直下の排気通路14は、小ターボ過給機16のタービン16aの入口に接続されている。そして、小ターボ過給機16のタービン16aの出口から延びる排気通路17は、大ターボ過給機18のタービン18aの入口に接続されている。
【0023】
小ターボ過給機16のタービン16aの上流側の排気通路14と下流側の排気通路17とは、小タービンバイパス通路20によって接続されている。小タービンバイパス通路20の途中には、この通路を開閉する開閉弁22が設置されている。
【0024】
また、大ターボ過給機18のタービン18aの上流側の排気通路17と下流側の排気通路19とは、大タービンバイパス通路24によって接続されている。大タービンバイパス通路24の途中には、この通路を開閉する開閉弁26が設置されている。
【0025】
大ターボ過給機18のタービン18aの下流側の排気通路19の途中には、排気ガス中の粒子状物質(以下、「PM(Particulate Matter)」で代表する)を捕捉するための排気フィルタ28が設けられている。図示を省略するが、排気フィルタ28の上流側または下流側に排気浄化触媒が設置されていてもよい。また、排気フィルタ28に触媒成分が担持されていてもよい。
【0026】
排気フィルタ28の近傍には、排気フィルタ28の上流側の圧力と下流側の圧力との差圧を検出する差圧センサ30が設置されている。排気フィルタ28にPMが蓄積することによって排気フィルタ28の通気抵抗が増大していくと、差圧センサ30で検出される差圧が大きくなっていく。このため、差圧センサ30によって、排気フィルタ28のPM蓄積量(目詰まり度合い)を検知することができる。排気フィルタ28のPM蓄積量(目詰まり度合い)が所定の基準値を超えた場合には、排気フィルタ28に捕集されたPMを燃焼除去するPM再生制御が実施される。PM再生制御では、ポスト噴射や排気系燃料添加等の方法によって排気通路14に未燃燃料を流通させ、その未燃燃料を排気フィルタ28で燃焼させることにより、排気フィルタ28を例えば600℃程度の高温にする。
【0027】
ディーゼル機関10の吸気通路32の入口付近には、エアクリーナ34が設けられている。吸気通路32は、エアクリーナ34の下流側で、第1通路32aと第2通路32bとに分岐している。第1通路32aの途中には小ターボ過給機16のコンプレッサ16bが配置されており、第2通路32bの途中には大ターボ過給機18のコンプレッサ18bが配置されている。両コンプレッサ16b,18bの下流側で、第1通路32aおよび第2通路32bは再度合流し、インタークーラ36へと接続されている。インタークーラ36の下流側の吸気通路32は、吸気マニホールド38に接続されている。
【0028】
エアクリーナ34を通って吸入された空気は、小ターボ過給機16のコンプレッサ16bあるいは大ターボ過給機18のコンプレッサ18bで圧縮された後、インタークーラ36で冷却され、吸気マニホールド38を経て各気筒に流入する。
【0029】
また、本実施形態のシステムは、ECU(Electronic Control Unit)50を更に備えている。ECU50には、上述した開閉弁22,26や、差圧センサ30、ディーゼル機関10が搭載された車両のアクセルペダルの踏み込み量(アクセル開度)を検出するアクセルポジションセンサ40等、各種のセンサおよびアクチュエータが電気的に接続されている。ECU50は、各センサの出力に基づき、所定のプログラムに従って各アクチュエータを作動させることにより、ディーゼル機関10の運転状態を制御する。
【0030】
図2は、図1に示すシステムにおけるディーゼル機関10の一つの気筒の断面を示す図である。以下、本実施形態のディーゼル機関10について更に説明する。ディーゼル機関10の気筒には、燃料を筒内に直接噴射するインジェクタ42が設置されている。各気筒のインジェクタ42は、図示しないコモンレールに接続されている。そのコモンレール内には、図示しないサプライポンプによって加圧された高圧の燃料が貯留されている。そして、上記コモンレール内から、各気筒のインジェクタ42へ燃料が供給される。
【0031】
ディーゼル機関10のクランク軸44の近傍には、クランク軸44の回転角度を検出するクランク角センサ46が取り付けられている。ECU50は、クランク角センサ46の信号に基づいて機関回転数を算出することができる。
【0032】
また、ディーゼル機関10は、排気弁56のバルブタイミングを可変とする排気VVT機構(排気可変動弁装置)58を備えている。本実施形態の排気VVT機構58は、排気弁56を駆動するカムシャフトの位相を変化させることにより、排気弁56の開弁期間の位相を早くしたり遅くしたりすることができる。すなわち、排気VVT機構58によれば、開弁期間一定のままで排気弁開き時期(Exhaust Valve Open:EVO)および排気弁閉じ時期(Exhaust Valve Close:EVC)を連続的に進角したり遅角したりすることができる。この排気VVT機構58は、ECU50に接続されている。
【0033】
なお、本発明における排気可変動弁装置は、排気VVT機構58に限定されるものではない。すなわち、本発明における排気可変動弁装置は、排気弁56の少なくとも開き時期を連続的または段階的に変化させることのできるものであれば、いかなる構成のものでもよく、例えば次に例示するようなものを用いることもできる。
(1)排気弁56とカムシャフトとの間に揺動カムなどを介在させることにより、排気弁56の開き時期を作用角(開弁期間)とともに変化させる作用角可変機構。
(2)排気弁56を開くためのカムを電気モータによって回転駆動することにより、排気弁56を任意の時期に開閉可能とする機構。
(3)排気弁56を電磁力によって駆動することにより任意の時期に開閉可能とする機構(電磁駆動弁)。
【0034】
また、図2の構成では、ディーゼル機関10は、吸気弁52のバルブタイミングを可変とする吸気VVT機構(吸気可変動弁装置)54を更に備えているが、本発明では、吸気弁52の開弁特性は固定とされていてもよい。すなわち、本発明では、吸気VVT機構54を設けず、通常の動弁機構により吸気弁52を駆動してもよい。
【0035】
[実施の形態1の特徴]
(過給機切替制御)
一般に、ターボ過給機を備えた内燃機関では、排気エネルギの小さい低回転低負荷側の運転領域においてタービンが有効に作動しないため、トルク不足、燃費悪化、応答性悪化(いわゆるターボラグ)等を生じ易いという課題がある。
【0036】
これに対し、本実施形態のディーゼル機関10では、排気エネルギの小さい低回転低負荷側の運転領域では小ターボ過給機16を使用し、排気エネルギの大きい高回転高負荷側の運転領域では大ターボ過給機18を使用する。小ターボ過給機16は、大ターボ過給機18に比して小容量とされているため、小さい排気エネルギでも有効に作動する。このため、本実施形態のディーゼル機関10では、低回転低負荷側の運転領域においても、過給を良好に行うことができ、トルク、燃費、応答性等の特性を十分に改善することができる。この点について、図3を参照して更に説明する。
【0037】
図3は、小ターボ過給機16および大ターボ過給機18の各々の過給特性を示す図である。同図に示すように、小ターボ過給機16は、低排気エネルギ側(低回転低負荷側)の領域では、大ターボ過給機18に比して高い過給圧を発生させる。これに対し、高排気エネルギ側の領域では、小ターボ過給機16の過給圧は頭打ちとなる。その一方で、大ターボ過給機18の過給圧は、排気エネルギの上昇とともに増大する。よって、低排気エネルギ側の領域では小ターボ過給機16を作動させ、高排気エネルギ側の領域では大ターボ過給機18を作動させることにより、全域において高い過給圧を得ることができる。
【0038】
なお、図3の横軸の排気エネルギは、排気ガスの量、温度および圧力によって定まり、高回転高負荷側ほど増大する値である。また、図3中の小ターボ過給機16の過給特性は、後述する充填効率向上制御を実行しなかった場合のものである。
【0039】
以下、小ターボ過給機16を作動させる運転領域を「小ターボ使用領域」と称し、大ターボ過給機18を作動させる運転領域を「大ターボ使用領域」と称する。ECU50には、小ターボ使用領域と大ターボ使用領域とを定めたマップが記憶されている。そして、ECU50は、クランク角センサ46およびアクセルポジションセンサ40の検出信号からディーゼル機関10の回転数および負荷を算出し、その回転数および負荷で規定される動作点が小ターボ使用領域にある場合には小ターボ過給機16を使用し、同動作点が大ターボ使用領域にある場合には大ターボ過給機18を使用する過給機切替制御を実行する。
【0040】
小ターボ使用領域においては、小タービンバイパス通路20に設けられた開閉弁22を閉状態とするとともに、大タービンバイパス通路24に設けられた開閉弁26を開状態とする。この状態では、排気マニホールド12からの排気ガスは、まず、小ターボ過給機16のタービン16aに流入し、このタービン16aを作動させる。タービン16aを出た排気ガスの流路は、開閉弁26が開いているため、大ターボ過給機18のタービン18aと、大タービンバイパス通路24とに分かれている。しかしながら、タービン16aを出た排気ガスのほとんどは、通気抵抗の小さい大タービンバイパス通路24に流入する。このため、大ターボ過給機18のタービン18aは実質的に作動しない。このようにして、小ターボ使用領域においては、小ターボ過給機16が主として作動する。
【0041】
一方、大ターボ使用領域においては、小タービンバイパス通路20に設けられた開閉弁22を開状態とするとともに、大タービンバイパス通路24に設けられた開閉弁26を閉状態とする。この状態では、開閉弁22が開いているため、排気マニホールド12から流入した排気ガスの流路は、小ターボ過給機16のタービン16aと、小タービンバイパス通路20とに分かれている。しかしながら、排気マニホールド12からの排気ガスのほとんどは、通気抵抗の小さい小タービンバイパス通路20に流入する。このため、小ターボ過給機16のタービン16aは実質的に作動しない。小タービンバイパス通路20を通過して排気通路17に流入した排気ガスは、次に、大ターボ過給機18のタービン18aに流入し、このタービン18aを作動させる。このようにして、大ターボ使用領域においては、大ターボ過給機18が主として作動する。
【0042】
(充填効率向上制御)
また、本実施形態のシステムは、排気弁56の開弁期間と吸気弁52の開弁期間とが重なったバルブオーバーラップ期間(吸排気上死点付近)における掃気効果を利用することによってディーゼル機関10の充填効率ηvを向上させる充填効率向上制御を実行可能になっている。図4は、充填効率向上制御を説明するための図である。
【0043】
排気圧力(排気マニホールド圧力)は、各気筒の排気弁56から排気ガスが間欠的に排出されるのに伴って、脈動(変動)する。図4中の破線の波形は、排気弁開き時期がベースの時期となるように排気VVT機構58が制御されている場合における排気圧力の脈動を示す。この波形に示すように、排気弁開き時期がベースの時期となるように制御されている場合には、排気圧力の脈動の谷のタイミングは、吸気弁52の開き時期(Intake Valve Open:IVO)よりも前の時期になっている。
【0044】
これに対し、図4中の実線の波形は、排気弁開き時期がベースの時期よりも遅い時期となるように排気VVT機構58が制御されている場合における排気圧力の脈動を示す。排気弁開き時期を遅くするほど、排気ガスが排気ポートへ放出されるタイミングが遅くなるので、排気圧力の波形(位相)は、図4中で右側にシフトする。よって、排気弁開き時期を遅らせる量を適度に設定することにより、図4に示すように、排気圧力の脈動の谷のタイミングをバルブオーバーラップ期間に一致させることができる。充填効率向上制御においては、上記のように、排気弁開き時期をベースより遅くすることにより、排気圧力の脈動の谷のタイミングがバルブオーバーラップ期間に一致するように制御される。
【0045】
一方、図4中の一点鎖線は、吸気圧力(吸気マニホールド圧力)を示している。図4に示すように、吸気圧力はクランク角によらずほぼ一定である。このため、充填効率向上制御の実行によって排気圧力の脈動の谷のタイミングをバルブオーバーラップ期間に一致させると、バルブオーバーラップ期間において吸気圧力を排気圧力より高くすることができる。このため、吸気弁52が開いたとき、吸気弁52から筒内に流入する新気によって筒内の既燃ガスを速やかに排気ポートへ追い出すことができる。このようにして、高い掃気効果が得られ、筒内の既燃ガスを円滑かつ確実に新気に置換することができる。その結果、残留ガスを十分に低減することができ、その分、筒内に充填される新気の量を増やすことができる。つまり、充填効率ηvを増大させることができ、ディーゼル機関10のトルクを増大することができる。
【0046】
本実施形態のシステムでは、小ターボ過給機16が使用されている状態では、上記のような充填効率向上制御の効果を十分に得ることができる。これに対し、大ターボ過給機18が使用されている状態では、上記充填効率向上制御の効果を十分に得ることができない。その理由は次の通りである。
【0047】
排気圧力の脈動は、排気マニホールド12およびこれに連通する空間の容積(これらを合わせて以下「排気系容積」と称する)が小さいほど、強くなる(振幅が小さくなる)。これは、排気系容積が小さいほど、排気弁56から排気ガスが排出されたときに排気マニホールド圧力がより高く上昇し、その反作用として排気行程後期の排気マニホールド圧力がより低くなるからである。逆に、排気系容積が大きいほど、排気圧力の脈動は、弱くなる(振幅が小さくなる)。
【0048】
小ターボ過給機16が使用されている状態では、開閉弁20が閉じられるので、小タービンバイパス通路20には排気ガスが流れない。そして、排気の圧力波は、小ターボ過給機16のタービン16aの入口で反射する。このため、小ターボ過給機16のタービン16aの入口までが排気系容積となるので、排気系容積は小さくなる。よって、排気圧力の脈動の振幅が大きくなり、脈動の谷での排気圧力は十分に低くなる。このため、バルブオーバーラップ期間において吸気圧力と排気圧力との差圧を十分に大きくすることができるので、掃気効果が十分に発揮され、充填効率およびトルクを十分に向上することができる。
【0049】
一方、大ターボ過給機18が使用されている状態では、開閉弁20が開かれるので、小タービンバイパス通路20を介して排気通路17が排気マニホールド12と連通する。この場合、排気の圧力波は、大ターボ過給機18のタービン18aの入口で反射する。このため、大ターボ過給機18のタービン18aの入口までが排気系容積となる。よって、小タービンバイパス通路20や排気通路17が排気系容積に加わることとなり、排気系容積が拡大する。その結果、排気圧力の脈動の振幅が小さくなり、脈動の谷での排気圧力が低くならず、バルブオーバーラップ期間において吸気圧力と排気圧力との差圧を十分に大きくすることができない。このため、掃気効果が十分に発揮されず、充填効率およびトルクを十分に向上することができない。
【0050】
上述したように、本実施形態では、小ターボ過給機16が使用されている場合には、充填効率向上制御によって空気量およびトルクを増大することができる。ただし、充填効率向上制御の効果が生ずるには、バルブオーバーラップ期間において排気圧力が吸気圧力より十分に低くなることが必要である。このため、排気フィルタ28の目詰まり等の原因によって排気圧力レベル(平均的な排気圧力)が上昇した場合には、バルブオーバーラップ期間において排気圧力が吸気圧力より十分に低くならず、充填効率向上制御の効果が減退する。
【0051】
すなわち、排気フィルタ28のPM蓄積量が多くなり、排気フィルタ28の通気抵抗が大きくなった状況下では、図4に示すような排気圧力の波形が圧力増大方向(図4中の上方向)にシフトする。このため、排気圧力の脈動の谷のタイミングをバルブオーバーラップ期間に一致させたとしても、吸気圧力を排気圧力より十分に低くすることができなかったり、あるいは吸気圧力よりも排気圧力の方が大きくなったりする。このような場合には、掃気効果が発揮されにくいので、空気量およびトルクを十分に高めることができない。
【0052】
以上説明したようなことから、小ターボ過給機16使用時および大ターボ過給機18使用時の空気量特性は、図5に示すようになる。図5中の実線のグラフは、排気圧力レベルが高い場合(排気フィルタ28のPM蓄積量が多い場合)における小ターボ過給機16使用時の空気量特性であり、図5中の破線のグラフは、排気圧力レベルが低い場合(排気フィルタ28のPM蓄積量が少ない場合)における小ターボ過給機16使用時の空気量特性であり、図5中の一点鎖線のグラフは、大ターボ過給機18使用時の空気量特性である。
【0053】
前述したように、小ターボ過給機16使用時において、排気圧力レベルが低い場合には充填効率向上制御の効果が十分に発揮されるのに対し、排気圧力レベルが高い場合には充填効率向上制御の効果が発揮されにくい。このため、図5から分かるように、小ターボ過給機16使用時において、排気圧力レベルが低い場合には、排気圧力レベルが高い場合と比べ、空気量およびトルクを増大させることができる。
【0054】
一方、大ターボ過給機18使用時には、前述したように、充填効率向上制御の効果はほとんど得られない。このため、大ターボ過給機18使用時の空気量特性は、排気圧力レベルが高い場合であっても低い場合であっても同じである。
【0055】
過給機切替制御において、小ターボ過給機16使用状態から大ターボ過給機18使用状態へ切り替える最適なポイントは、両者の空気量特性が逆転するポイントである。従って、排気圧力レベルが高い場合の最適切替ポイントは、図5中で実線と一点鎖線とが交差する点Aとなる。これに対し、排気圧力レベルが低い場合の最適切替ポイントは、図5中で破線と一点鎖線とが交差する点Bとなる。図5から分かるように、点B(排気圧力レベルが低い場合の最適切替ポイント)は、点A(排気圧力レベルが高い場合の最適切替ポイント)に比して、排気エネルギが高い側、すなわち高回転高負荷側にある。このように、排気圧力レベルが低い場合には、排気圧力レベルが高い場合と比べ、最適な過給機切替ポイントが高回転高負荷側へシフトする。このため、排気圧力レベルが低い場合には、排気圧力レベルが高い場合と比べ、小ターボ過給機16と大ターボ過給機18との切替ポイントを高回転高負荷側へシフトさせることが理想である。
【0056】
図6は、上記の理想を実現するために本実施形態においてECU50が用いるマップである。図6中の実線は、排気圧力レベルが高い場合における最適な過給機切替ポイントを連ねたラインである。ECU50は、排気圧力レベルが所定の判定レベルより高いことが検知された場合には、図6中の実線を境に、低回転低負荷側を小ターボ使用領域、高回転高負荷側を大ターボ使用領域として、過給機切替制御を実行する。
【0057】
一方、図6中の破線は、排気圧力レベルが低い場合における最適な過給機切替ポイントを連ねたラインである。ECU50は、排気圧力レベルが上記判定レベルより低いことが検知された場合には、図6中の破線を境に、低回転低負荷側を小ターボ使用領域、高回転高負荷側を大ターボ使用領域として、過給機切替制御を実行する。
【0058】
すなわち、本実施形態では、排気圧力レベルが判定レベルより低い場合には、排気圧力レベルが判定レベルより高い場合と比べ、小ターボ使用領域を拡大し、大ターボ使用領域を縮小することとしている。これにより、排気圧力レベルが高い場合と低い場合との何れの場合であっても、最適な切替ポイント、つまり過渡的な空気量を最大にできるようなポイントで、小ターボ過給機16と大ターボ過給機18とを切り替えることができる。
【0059】
これに対し、本発明と異なり、過給機切替ラインを常に一定にした場合には、過渡的な空気量を最大とすることができない。例えば、図5中で、排気圧力レベルが低い場合、つまり掃気効果による充填効率向上が見込める場合に、排気圧力レベルが高い場合の最適切替ポイントで過給機を切り替えたと仮定すると、空気量は点C→点A→点Bの経路で変化する。このため、本来の最適切替ポイントである点Bで小ターボ過給機16に切り替えた場合と比べ、図5中で三角形ABCで表される面積の分だけ、過渡的な空気量の低下が生ずる。これに対し、本実施形態の制御によれば、点Bまで小ターボ過給機16の使用を継続するので、点Bまで充填効率向上制御の恩恵を受けることができる。その結果、空気量は点C→点Bの経路で変化する。すなわち、過渡的な空気量の低下を回避することができる。
【0060】
逆に、図5中で、排気圧力レベルが高い場合、つまり掃気効果による充填効率向上が見込めない場合に、排気圧力レベルが低い場合の最適切替ポイントで過給機を切り替えたと仮定すると、空気量は点A→点D→点Bのように変化する。このため、本来の最適切替ポイントである点Aで大ターボ過給機18に切り替えた場合と比べ、図5中で三角形ABDで表される面積の分だけ、過渡的な空気量が低下する。これに対し、本実施形態の制御によれば、点Aで大ターボ過給機18に切り替えることにより、大ターボ過給機18による過給を早期に開始することができる。その結果、掃気効果を利用した充填効率向上が不十分であることを大ターボ過給機18による過給によって補うことができ、空気量は点A→点Bの経路で変化する。すなわち、上記のような過渡的な空気量の低下を回避することができる。
【0061】
ところで、ターボ過給機を作動させると、一般に、内燃機関のポンプ損失が増大する。このポンプ損失の増大は、内燃機関の燃費を悪化させる方向に作用する。本実施形態のシステムでは、小ターボ過給機16を使用している状態の方が大ターボ過給機18を使用している状態よりもポンプ損失が小さい。このため、燃費の観点からは、小ターボ過給機16を使用する方が有利である。一方、掃気効果を利用した充填効率向上制御は、燃費に悪影響を及ぼすことはない。
【0062】
上述したように、本実施形態によれば、排気圧力レベルが判定レベルより低い場合、つまり掃気効果を利用した充填効率向上制御が有効である場合には、燃費性能がより良好な小ターボ過給機18の使用領域を拡大し、充填効率向上制御の恩恵をより広範囲で享受することができる。このため、燃費を十分に低減することができる。
【0063】
なお、排気圧力レベルの検出方法については、本実施形態では、差圧センサ30で検出される排気フィルタ28の前後の差圧と、排気圧力レベルとの間に相関があることを利用して、差圧センサ30で検出される差圧から排気圧力レベルを算出することができる。本発明では、排気圧力レベルの検出方法は上記の方法に限定されるものではなく、例えば、排気マニホールド圧力を検出するセンサを設け、そのセンサでの検出値から排気圧力レベル(平均排気圧力)を算出するようにしてもよい。
【0064】
また、図6に示す例では、排気圧力レベルの高低に応じて過給機切替ライン(小ターボ使用領域と大ターボ使用領域との境界)を2段階に変化させているが、本発明では、排気圧力レベルに応じて過給機切替ラインをより多段階に、あるいは連続的に、変化させるようにしてもよい。
【0065】
また、本実施形態では、小ターボ過給機16が使用されているとき、大ターボ過給機18のタービン18aをバイパスして排気ガスを流すことができるので、背圧を低くすることができる。このため、バルブオーバーラップ期間における掃気効果を利用して充填効率(トルク)を向上させる場合に、吸気圧力と排気圧力との差圧を十分に大きくすることができるので、掃気効果をより確実に得ることができる。一方、本発明では、大タービンバイパス通路24およびこれを開閉する開閉弁26を備えない構成であってもよい。大タービンバイパス通路24および開閉弁26を備えない構成の場合、小ターボ使用領域では、小ターボ過給機16のタービン16aによってエネルギが回収された後の排気ガス(つまり排気エネルギの小さい排気ガス)が大ターボ過給機18のタービン18aに流入することとなるので、大ターボ過給機18は有効に作動せず、小ターボ過給機16が主として作動することとなる。また、大タービンバイパス通路24および開閉弁26を備えない構成の場合であっても、小ターボ使用領域において、大ターボ過給機18のタービン18aの入口面積を可変とする可変ノズル(図示せず)を開くなどの方法によって背圧を低減することにより、大タービンバイパス通路24がある場合に比較的近い効果を得ることも可能である。
【0066】
また、本実施形態では、本発明をディーゼル機関(圧縮着火内燃機関)の制御に適用した場合について説明したが、本発明は、ディーゼル機関の制御に限定されるものではなく、火花点火内燃機関の制御に適用することも可能である。
【0067】
また、本実施形態では、過給機がターボ過給機である場合について説明したが、本発明は、過給機が内燃機関の出力軸によって駆動される機械式過給機である場合にも適用可能である。本実施形態のシステムのように小過給機と大過給機とを備える場合には、何れか一方が機械式過給機で他方がターボ過給機であっても、両方が機械式過給機であってもよい。
【0068】
また、本実施形態では、小過給機と大過給機とを備えるシステムを例に説明したが、本発明では、過給機が一つで、低回転低負荷側の運転領域では過給機を使用せず、高回転高負荷側の運転領域で過給機を使用するシステムにも適用可能である。
【0069】
また、本実施形態では、小ターボ過給機16が前記第2の発明における「小過給機」に、大ターボ過給機18が前記第1の発明における「過給機」および前記第2の発明における「大過給機」に、小ターボ使用領域が前記第1の発明における「第1の運転領域」および前記第2の発明における「小過給機使用領域」に、大ターボ使用領域が前記第1の発明における「第2の運転領域」および前記第2の発明における「大過給機使用領域」に、それぞれ相当している。また、ECU50が、図6に示すマップに従って小ターボ過給機16使用状態と大ターボ過給機18使用状態とを切り替えることにより前記第1および第2の発明における「過給機切替手段」が、差圧センサ30で検出される差圧から算出した排気圧力レベルが所定の判定レベルより高いか低いかを判定することにより前記第1および第2の発明における「排気圧力レベル判別手段」が、排気圧力レベルに基づいて図6に示すマップの過給機切替ラインを変化させることより前記第1および第2の発明における「領域変更手段」が、バルブオーバーラップ期間において掃気が生ずるように排気VVT機構58(必要に応じて更に吸気VVT機構54)を制御することにより前記第1および第2の発明における「充填効率向上手段」が、それぞれ実現されている。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の実施の形態1のシステム構成を説明するための図である。
【図2】本発明の実施の形態1のシステムにおけるディーゼル機関の一つの気筒の断面を示す図である。
【図3】小ターボ過給機および大ターボ過給機の各々の過給特性を示す図である。
【図4】充填効率向上制御を説明するための図である。
【図5】小ターボ過給機使用時および大ターボ過給機使用時の空気量特性を示す図である。
【図6】小ターボ使用領域および大ターボ使用領域を示すマップである。
【符号の説明】
【0071】
10 ディーゼル機関
12 排気マニホールド
14,17,19 排気通路
16 小ターボ過給機
16a タービン
16b コンプレッサ
18 大ターボ過給機
18a タービン
18b コンプレッサ
20 小タービンバイパス通路
22 開閉弁
24 大タービンバイパス通路
26 開閉弁
28 排気フィルタ
30 差圧センサ
32 吸気通路
34 エアクリーナ
36 インタークーラ
38 吸気マニホールド
50 ECU
52 吸気弁
54 吸気VVT機構
56 排気弁
58 排気VVT機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
過給機と、
第1の運転領域では前記過給機を実質的に作動させず、前記第1の運転領域より高回転高負荷側の第2の運転領域では前記過給機を作動させる過給機切替手段と、
排気圧力レベルが所定レベルより低いか否かを判別する排気圧力レベル判別手段と、
排気圧力レベルが前記所定レベルより低い場合には、排気圧力レベルが前記所定レベルより高い場合と比べ、前記第1の運転領域を拡大し、前記第2の運転領域を縮小する領域変更手段と、
吸気弁開弁期間と排気弁開弁期間とが重なるバルブオーバーラップ期間を設けるとともに、排気圧力の脈動が谷となるタイミングを前記バルブオーバーラップ期間に一致させる充填効率向上手段と、
を備えることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
小過給機と、
前記小過給機より大容量の大過給機と、
小過給機使用領域では前記小過給機を主として作動させ、前記小過給機使用領域より高回転高負荷側の大過給機使用領域では前記大過給機を主として作動させる過給機切替手段と、
排気圧力レベルが所定レベルより低いか否かを判別する排気圧力レベル判別手段と、
排気圧力レベルが前記所定レベルより低い場合には、排気圧力レベルが前記所定レベルより高い場合と比べ、前記小過給機使用領域を拡大し、前記大過給機使用領域を縮小する領域変更手段と、
吸気弁開弁期間と排気弁開弁期間とが重なるバルブオーバーラップ期間を設けるとともに、排気圧力の脈動が谷となるタイミングを前記バルブオーバーラップ期間に一致させる充填効率向上手段と、
を備えることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項3】
前記小過給機および前記大過給機は、それぞれ、排気ガスによって作動するタービンを有するターボ過給機であり、
前記小過給機のタービンの下流側に前記大過給機のタービンが配置されていることを特徴とする請求項2記載の内燃機関の制御装置。
【請求項4】
前記過給機切替手段は、
前記小過給機のタービンをバイパスして排気ガスを通す小タービンバイパス通路と、
前記小タービンバイパス通路を開閉する小タービンバイパス通路開閉弁と、
を含み、
前記小過給機使用領域では、前記小タービンバイパス通路開閉弁を閉じ、前記大過給機使用領域では、前記小タービンバイパス通路開閉弁を開くことを特徴とする請求項3記載の内燃機関の制御装置。
【請求項5】
前記過給機切替手段は、
前記大過給機のタービンをバイパスして排気ガスを通す大タービンバイパス通路と、
前記大タービンバイパス通路を開閉する大タービンバイパス通路開閉弁と、
を更に含み、
前記小過給機使用領域では、前記小タービンバイパス通路開閉弁を閉じて前記大タービンバイパス通路開閉弁を開き、前記大過給機使用領域では、前記小タービンバイパス通路開閉弁を開いて前記大タービンバイパス通路開閉弁を閉じることを特徴とする請求項4記載の内燃機関の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−103084(P2009−103084A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−277310(P2007−277310)
【出願日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】